特表2020-533478(P2020-533478A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-533478少なくとも1つのタンニン生成物および燃料比を高めた樹皮生成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-533478(P2020-533478A)
(43)【公表日】2020年11月19日
(54)【発明の名称】少なくとも1つのタンニン生成物および燃料比を高めた樹皮生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08H 99/00 20100101AFI20201023BHJP
   C10L 5/44 20060101ALI20201023BHJP
【FI】
   C08H99/00
   C10L5/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-535953(P2020-535953)
(86)(22)【出願日】2018年9月11日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月6日
(86)【国際出願番号】SE2018050907
(87)【国際公開番号】WO2019054916
(87)【国際公開日】20190321
(31)【優先権主張番号】17190555.7
(32)【優先日】2017年9月12日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520079452
【氏名又は名称】セドラ、スコーグセガーナ、エコノミスク、フェーレニング
【氏名又は名称原語表記】SODRA SKOGSAGARNA EKONOMISK FORENING
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】フレードリク、ソルハーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ナルチス、メシッチ
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015BB04
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】少なくとも1つのタンニン生成物および燃料比を高めた樹皮生成物の製造方法を開示する。
【解決手段】本発明によれば、この方法は、樹皮を粉砕する工程;粉砕された樹皮を圧縮して、タンニン物質を含んでなる第1液体抽出物を回収する工程;圧縮された樹皮に第1水性含侵組成物を、pH7未満で、および45〜80℃の範囲内の温度で含浸させる工程;含浸させられた樹皮を脱水して、タンニン物質と脱水された樹皮生成物を含んでなる第2液体抽出物を回収する工程;第2液体抽出液の少なくとも一部を、含浸工程に再循環させ、その際、第1水性含浸組成物は、第2液体抽出物の前記再循環部分と所望により新鮮な水の混合物を含んでなる工程;所望により、前記第1液体抽出物を前記第2液体抽出物の非再循環部分と混合させる工程;および第1タンニン生成物および第2タンニン生成物または混合タンニン生成物を得るために、前記第1液体抽出物に、および前記第2液体抽出物の前記非再循環部分に、または所望により混合した第1と第2液体抽出物に、亜硫酸塩を1〜25重量%の濃度に添加する工程を含んでなる。この方法から得られたタンニン生成物および樹皮生成物も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタンニン生成物および燃料比を高めた樹皮生成物の製造方法であって、以下の工程:
(a)樹皮を平均樹皮粒径1〜200mmに粉砕する工程;
(b)粉砕された樹皮を圧縮して、タンニン物質を含んでなる第1液体抽出物を回収する工程;
(c)圧縮された樹皮に第1水性含侵組成物を、10〜120分間に、pH7未満で、および45〜80℃の範囲内の温度で含浸させる工程;
(d)含浸させられた樹皮を脱水して、タンニン物質と脱水された樹皮生成物を含んでなる第2液体抽出物を回収する工程;
(e)第2液体抽出液の少なくとも一部を、含浸工程に再循環させ、その際、第1水性含浸組成物は、第2液体抽出物の前記再循環部分と所望により新鮮な水の混合物を含んでなる工程;
(f)所望により、前記第1液体抽出物を前記第2液体抽出物の非再循環部分と混合させる工程;および
(g)第1タンニン生成物および第2タンニン生成物または混合タンニン生成物を得るために、前記第1液体抽出物に、および前記第2液体抽出物の前記非再循環部分に、または所望により混合した第1と第2液体抽出物に、亜硫酸塩を1〜25重量%の濃度に添加する工程
を含んでなる方法。
【請求項2】
(h)工程(g)からの、前記第1タンニン生成物および前記第2タンニン生成物または前記混合タンニン生成物を、乾燥重量で、少なくとも10%の、少なくとも20%の、少なくとも30%の、少なくとも40%の、または少なくとも50%の濃度にまで蒸発させる工程
をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)前記第1タンニン生成物および前記第2タンニン生成物または前記混合タンニン生成物の乾燥粉末生成物を得るために、工程(g)または工程(h)からの、前記第1タンニン生成物および前記第2タンニン生成物または前記複合タンニン生成物を乾燥させる工程
をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(g)において、前記第1液体抽出物に、および前記第2液体抽出物の前記非再循環部分に、または所望により混合した第1と第2液体抽出物に、2〜24重量%の、4〜22重量%の、5〜20重量%の、または10〜15重量%の範囲内で、亜硫酸塩を添加する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)における含浸が、15〜60分間、または15〜30分間に行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、前記圧縮された樹皮に、重量比(樹皮:第1水性含浸組成物)で、1:3〜1:10の、1:4〜1:8の、または1:4〜1:6の範囲内で、第1水性含浸組成物を添加する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)における温度が、50〜70℃の、または55〜65℃の範囲内である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)におけるpHが6.5未満、または6未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
再循環させた第2液体抽出物を新鮮な水に対して、重量比(第2抽出物:新鮮な水)で、1:2〜6:1の、1:1〜5:1の、1.5:1〜4:1の、または2:1〜3:1の範囲内で添加して、第1水性含浸組成物を得る、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)からの前記脱水された樹皮生成物をさらに処理し、水溶液で、好ましくは新鮮な水を用いて60〜80℃の温度で、洗浄し、その後脱水して、第3液体抽出物および洗浄・脱水された樹皮生成物を生成し、かつ前記第3液体抽出物を再循環させ、再循環させた第2液体抽出物および所望により新鮮な水と混合して、工程(c)のための前記第1水性含浸組成物を形成する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)において、樹皮を、2〜200mmの、5〜150mmの、または10〜100mmの範囲内の平均樹皮粒径に粉砕する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)からの粉砕された前記樹皮が、15〜50%の、20〜45%の、または25〜35%の乾燥含量を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)において、樹皮を、40〜60%の、45〜55%の、または45〜50%の乾燥含量に圧縮する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1、2、または3に記載の方法により得られるタンニン生成物。
【請求項15】
請求項1または10に記載の方法により得られる樹皮生成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのタンニン生成物および燃料比を高めた樹皮生成物の製造方法に関する。また、開示された方法により得られる、少なくとも1つのタンニン生成物並びに燃料比を高めた樹皮生成物が開示される
【背景技術】
【0002】
製材およびパルプ工場の操業において、樹皮は多くの場合、副生成物であり、工場内または局地的な地域暖房プラント内でのエネルギーを生み出すための燃焼に使用される。
【0003】
燃料比の高い副生成物である一方、樹皮はまた、種々の成分が豊富な副生成物である。例えば、水、水性溶媒および低級アルコールのような溶剤による、そのような成分の抽出は、接着剤、結合剤、薬剤等として使用することができる、一般にタンニンと呼ばれる物質を生成させることが知られており、そのようなプロセスは、例えば、US5238680、EP1071842、およびGB2063856に開示されている。他の成分も、木材微粉から抽出されることが知られており、例えば、アラビノガラクタンであり、これは、例えば、印刷、鉱業、生物学的研究および食品業界の商業用途の広い範囲で使用される。US5756098は、木材微粉からアラビノガラクタンを抽出する1つの方法を開示している。
【0004】
樹皮やその他の木材微粉から、種々の成分を抽出する場合、樹皮やその他の木材微粉がまだエネルギーを生み出すための燃焼に未だ使用可能であることを明確にすることも重要である。従って、その抽出方法は、樹皮の燃料比を減少させてはならないのである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、樹皮からタンニン生成物を抽出し、そして同時に、この製造方法から生じる樹皮の燃料比を高める製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、安定しており、かつ良好な品質および色の皮革製品を得るのに良好な皮なめしを提供する、少なくとも1つのタンニン生成物を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、燃料比を高めた樹皮生成物を提供することである。
【0008】
本発明の第1態様によれば、これらの、およびその他の目的は、以下の工程を含んでなる、少なくとも1つのタンニン生成物および燃料比を高めた樹皮生成物の製造方法によって、完全または少なくとも部分的に達成される:
(a)樹皮を平均樹皮粒径1〜200mmに粉砕する工程;
(b)粉砕された樹皮を圧縮して、タンニン物質を含んでなる第1液体抽出物を回収する工程;
(c)圧縮された樹皮に第1水性含侵組成物を、10〜120分間に、pH7未満で、および45〜80℃の範囲内の温度で含浸させる工程;
(d)含浸させられた樹皮を脱水して、タンニン物質と脱水された樹皮生成物を含んでなる第2液体抽出物を回収する工程;
(e)第2液体抽出液の少なくとも一部を、含浸工程に再循環させ、その際、第1水性含浸組成物は、第2液体抽出物の前記再循環部分と所望により新鮮な水の混合物を含んでなる工程;
(f)所望により、前記第1液体抽出物を前記第2液体抽出物の非再循環部分と混合させる工程;および
(g)第1タンニン生成物および第2タンニン生成物または混合タンニン生成物を得るために、前記第1液体抽出物に、および前記第2液体抽出物の前記非再循環部分に、または所望により混合した第1と第2液体抽出物に、亜硫酸塩を1〜25重量%の濃度に添加する工程。
【0009】
この方法により優れたなめし特性を有する、少なくとも1つのタンニン生成物が提供され、そして同時に、燃料比を高めた樹皮生成物が提供される。
【0010】
本発明によるプロセスは、連続式またはバッチ式のプロセスとすることができる。1つの実施形態によれば、このプロセスは連続式プロセスである。
【0011】
1つの実施形態では、本発明の方法は、次のさらなる工程を含んでなる:
(h)工程(g)からの、前記第1タンニン生成物および前記第2タンニン生成物または前記混合タンニン生成物を、乾燥重量で、少なくとも10%の、少なくとも20%の、少なくとも30%の、少なくとも40%の、または少なくとも50%の濃度にまで蒸発させる工程。
【0012】
別の実施形態では、本発明の方法は、次の追加の工程を含んでなる:
(i)前記第1タンニン生成物および前記第2タンニン生成物または前記混合タンニン生成物の乾燥粉末生成物を得るために、工程(g)または工程(h)からの、前記第1タンニン生成物および前記第2タンニン生成物または前記複合タンニン生成物を乾燥させる工程。
【0013】
1つの実施形態では、工程(i)における前記の乾燥は、噴霧乾燥または凍結乾燥である。別の実施形態では、工程(i)における前記の乾燥は、噴霧乾燥であり、また、さらなる実施形態では、工程(i)における前記の乾燥は、粒子の凝集を含んでなる噴霧乾燥である。
【0014】
本発明の方法のさらなる実施形態では、工程(g)において特に、前記第1液体抽出物に、および前記第2液体抽出物の前記非再循環部分に、または所望により混合した第1と第2液体抽出物に、2〜24重量%の、4〜22重量%の、5〜20重量%の、または10〜15重量%の範囲内で、亜硫酸塩を添加する。
【0015】
1つの実施形態では、混合した第1一と第2液体抽出物は、第1液体抽出物を第2液体抽出物に対して、2:1〜1:5、1:1〜1:4、または1:2〜1:3の範囲内の比で含む。
【0016】
また本方法のさらに別の実施形態では、工程(c)における含浸が、15〜60分間、または15〜30分間に行われる。
【0017】
本発明の方法の1つの実施形態では、工程(c)において特に、前記圧縮された樹皮に、重量比(樹皮:第1水性含浸組成物)で、1:3〜1:10の、1:4〜1:8の、または1:4〜1:6の範囲内で、第1水性含浸組成物を添加する。
【0018】
本方法の1つの実施形態では、工程(c)における温度は、通常の大気圧下で、50〜70℃の、または55〜65℃の範囲内である。
【0019】
本発明の方法の別の実施形態では、工程(c)におけるpHは、6.5未満、または6未満である。
【0020】
本発明の方法のさらなる実施形態では、再循環させた第2液体抽出物を新鮮な水に対して、重量比(第2抽出物:新鮮な水)で、1:2〜6:1の、1:1〜5:1の、1.5:1〜4:1の、または2:1〜3:1の範囲内で添加して、第1水性含浸組成物を得る。
【0021】
本発明の方法のまた別の実施形態では、工程(d)からの前記脱水された樹皮生成物をさらに処理し、水溶液で、好ましくは新鮮な水を用いて60〜80℃の温度で、洗浄し、その後脱水して、第3液体抽出物および洗浄・脱水された樹皮生成物を生成する。第3液体抽出物を再循環させ、再循環させた第2液体抽出物および所望により新鮮な水と混合して、工程(c)のための前記第1水性含浸組成物を形成する。
【0022】
第3液体抽出物を再循環して、再循環された第2液体抽出物と混合する実施形態では、第3液体抽出物は、第1水性含侵組成物中における新鮮な水の実質的部分を置き換える。1つの実施形態では、新鮮な水と混合される第3液体抽出物に対する第2液体抽出物の割合は、重量比で、1:4〜20:1、1:2〜10:1、1:1〜5:1、1.5:1〜4:1、または2:1〜3:1の範囲内である。
【0023】
本発明の方法の1つの実施形態では、工程(a)において、樹皮を、2〜200mmの、5〜150mmの、または10〜100mmの範囲内の平均樹皮粒径に粉砕する。平均樹皮粒径は、SS−EN ISO 17827−1:2016規格に従って測定される。
【0024】
本発明の方法の別の実施形態では、工程(a)からの粉砕された樹皮は、15〜50%の、20〜45%の、または25〜35%の乾燥含量を有する。
【0025】
本発明の方法の1つの実施形態では、樹皮は、アカシア、ケブラチョ、松、カラマツまたはトウヒ等の樹皮種を含有する任意のタンニンからのものでよいが、特にトウヒ、カラマツおよびマツのような針葉樹種、特にトウヒからのものでよい。
【0026】
本発明の方法のまた別の実施形態では、工程(b)において、樹皮は、40〜60%の、45〜55%の、または45〜50%の乾燥含量に圧縮される。
【0027】
1つの実施形態では、本発明の方法は、オープン、並流、向流、または並−および向流とすることができる。1つの実施形態において、第1液体抽出物に関するプロセスはオープンであり、また、第2と第3液体抽出物に関しては、向流である。
【0028】
本発明の第2態様によれば、これらの、およびその他の目的は、本発明の第1態様に従う方法により得られるタンニン生成物によって、完全または少なくとも部分的に達成される。
【0029】
本発明の第2態様の1つの実施形態によれば、工程(g)からの方法により得られるタンニン生成物は、2%より多い、4%より多い、6%より多い、または8%より多い乾燥重量を有する。
【0030】
本発明の第2態様の別の実施形態によれば、工程(h)からの方法により得られるタンニン生成物は、10%より多い、20%より多い、30%より多い、40%より多い、または50%より多い乾燥重量を有する。
【0031】
本発明の第2態様のさらなる実施形態によれば、工程(i)からの方法により得られたタンニン生成物は、90%より多い、95%より多い、または97%より多い乾燥重量を有する。
【0032】
1つの実施形態によれば、タンニン生成物は、少なくとも1.0、より好ましくは少なくとも1.2、そして最も好ましくは少なくとも1.5の渋みを有する。
【0033】
本発明の第3態様によれば、これらの、およびその他の目的はまた、本発明の第1態様に従う方法により得られる樹皮生成物によって、完全または少なくとも部分的に達成される。
【0034】
1つの実施形態によれば、樹皮生成物は、原材料の本来のエネルギー価よりも、93%より多い、好ましくは95%より多い、そして最も好ましくは97%より多いエネルギー価を有する。
【0035】
本発明の、その他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な開示から、添付の特許請求の範囲から、並びに図面から、明らかである。本発明は、特徴のすべての可能な組合せに関する。
【0036】
一般的には、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書において明示的に定義されない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈される。「ある1つの(a)/ある1つの(an)/その(the)[要素、デバイス、成分、手段、工程等]」へのすべての言及は、別段の記載がない限り、前記要素、デバイス、成分、手段、工程等の少なくとも1つの事例に言及しているものとしてオープンに解釈される。本明細書に開示されるいずれの方法の工程も、明示的に述べられない限り、開示された正確な順序で実行される必要はない。
【0037】
本明細書において、用語「含んでなる」およびその用語の変形は、他の添加剤、成分、整数または工程を排除することを意図しない。
【0038】
本明細書において、用語「タンニン物質」および「タンニン生成物」は、皮革製品を製造するためのなめし工程において皮なめしを起こさせる組成物を有する、物質または生成物を意味する。
【0039】
本明細書において、用語「タンニン生成物」は、前記第1液体抽出物、前記第2液体抽出物、または前記第1と第2液体抽出物の混合物から得られるタンニン生成物を指す。
【0040】
本明細書において、用語「亜硫酸塩」は、亜硫酸塩、重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩を指し、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸カリウム、およびメタ重亜硫酸カリウムを含む群から選択される。
【0041】
本明細書において、用語「燃料比を高めた樹皮生成物」は、未加工の樹皮と比較して、燃焼に対して改良された樹皮生成物を指す。この燃料比を高めた樹皮生成物は、ほぼ同じエネルギー価を有するが、増大した、乾燥重量と硫黄含量を有し、これは燃焼の観点から肯定的であり、また、減少した塩素含量を有するが、これは、燃焼中に硬い表面を形成するリスクを下げるので重要である。
【0042】
本明細書において、タンニン生成物の、「渋み」という用語は、ISO 5403−2:2011に従って測定される渋みを指す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の現在好ましいとされる実施形態の一例を示す、添付の概略図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0044】
図1図1は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図2図2は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図3図3は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図4図4は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図5図5は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図6図6は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図7図7は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図8図8は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図9図9は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図10図10は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図11図11は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
図12図12は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の工程図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0045】
本発明の方法の実施形態を示す添付図面に関連して、以下に本発明を一層十分に説明する。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に以下に記載される実施形態に限定して解釈するべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、徹底かつ完全のために、また、本発明の範囲を十分に当業者に伝えるために提供される。
【0046】
図1〜12は、本発明の第1態様の実施形態に従う方法の異なる工程図を示す。
【0047】
本発明の方法に使用される樹皮は、製材工場またはパルプ工場からの副生成物である。樹皮は、丸太を製材工場またはパルプ工場内で処理する前に、丸太から剥がされる。
【0048】
本発明の方法の第1工程(この工程は図1〜12のすべてに共通である)は、樹皮を1〜200mmの大きさに粉砕することである。樹皮の乾燥重量は、木の種類や季節による変化に依存するが、粉砕された樹皮は、通常、15〜50%、20〜45%、または25〜35%の乾燥重量を有する。
【0049】
本発明の方法の第2工程(この工程はまた、図1〜12のすべてに共通である)は、粉砕された樹皮を圧縮して、第1液体抽出液および圧縮された樹皮を得る。圧縮は、プラグスクリューフィーダ中で行うことができ、そこではスクリューの圧力を介して第1液体抽出物が、粉砕された樹皮から除去される。圧縮は、樹皮が40〜60%、45〜55%、または45〜50%の乾燥含量に圧縮されるような圧力で行われる。
【0050】
本発明の方法の第3工程(この工程はまた、図1〜12のすべてに共通である)は、圧縮された樹皮を第1水性含浸組成物で含浸させる。含浸は、10〜120分間、15〜60分間、または15〜30分間に行われる。含浸時の温度は、45〜80℃、50〜70℃、または55〜65℃である。含浸の間、pHは、7未満、6.5未満、または6未満である。圧縮された樹皮および第1水性含浸液は、1つの実施形態において、垂直に配置された搬送スクリューの最初の下端で共に混合され、その後、垂直に配置された搬送スクリュー内で上方向に搬送され、そして滞留槽に排出される。しかし、別の実施形態では、圧縮された樹皮および第1水性含浸液は、滞留槽内で直接、共に混合することができる。含浸時間は、圧縮された樹皮と第1水性含浸液が接触するとすぐに開始する。最初に圧縮され、次いで液体と接触するスポンジと同様に、圧縮された樹皮は、第1水性含浸液を急速に吸収して膨張する。このように、第1水性含浸液は樹皮に、迅速かつ樹皮中深く含浸する。
【0051】
本発明の方法の第4工程(この工程はまた、図1〜12のすべてに共通である)において、その後、含浸させられた4樹皮を脱水し、第2液体抽出物および脱水された樹皮を得る。この脱水はまた、第2工程におけるように、プラグスクリューフィーダで行うことができるだけでなく、通常のスクリュープレス、デシケーター等のその他の脱水装置も可能である。
【0052】
図1〜3、7〜9の工程図に示すように、この第4工程で得られる脱水された樹皮は、この方法に入る樹皮と比較して燃料比を高めた樹皮生成物として得られる。このことに関する詳細については、以下の表7および実施例8が参照される。
【0053】
この第4工程で得られる第2液体抽出物を部分的に再循環して、所望により新鮮な水と共に、第1水性含浸液の一部を形成する。1つの実施形態では、第2液体抽出物の再循環される部分は、得られる第2液体抽出物の25〜95%に達するが、得られる第2液体抽出物の40〜90%、50〜85%、60〜80%、または約75%になってもよい。第2液体抽出物の一部を再循環させることにより、新鮮な水を添加する必要性が低下される。同時に、樹皮生成物の液相中での乾燥含量の増加がある。
【0054】
再循環される第2液体抽出物と新鮮な水の割合は、第1水性含侵組成物を得るために、重量比(第2液体抽出物:新鮮な水)で、1:2〜6:1の範囲内、1:1〜5:1の範囲内、1.5:1〜4:1の範囲内、または2:1〜3:1の範囲内とすることができる。含浸工程(第3工程)内の温度は、入ってくる新鮮な水で調整されるが、垂直に配置された搬送スクリューおよび/または滞留槽内の加熱手段によっても調整することができる。このような加熱手段は、搬送スクリューおよび/または滞留槽に対する加熱ジャケット、外部熱交換器、含浸工程もしくは滞留槽での直接蒸気、あるいは滞留槽内における任意の適切な浸漬加熱装置であってもよい。
【0055】
本発明の方法の第5工程(この工程はまた、図1〜12のすべての実施形態に共通である)において、亜硫酸塩をそれぞれの抽出物、すなわち、第1抽出物および第2抽出物に添加する。しかし、図1〜6に任意として示されているように、また、図7〜12に必須として示されているように、前記の第1および第2抽出物は、亜硫酸塩の添加の前に混合してもよく、または混合する(図7〜12に、第5’工程として示されている)。前記抽出物に、1〜25重量%の範囲内で、2〜24重量%の範囲内で、4〜22重量%の範囲内で、5〜20重量%の範囲内で、または10〜15重量%の範囲内で亜硫酸塩を添加して、タンニン生成物を得る。これらの範囲は、[タンニン生成物の乾燥重量]対[亜硫酸塩の乾燥重量]として与えられる。亜硫酸塩は、溶液としてのタンニン生成物に、乾燥重量で、好ましくは10%より多く、20%より多く、または30%より多く添加することができる。
【0056】
図1、4、7および10の工程図に示すように、第5工程において得られたタンニン生成物は、最終のタンニン生成物として得られる。この工程で得られたタンニン生成物は、通常、2%より多い、4%より多い、6%より多い、または8%より多い乾燥重量を有する。
【0057】
しかし、いくつかの実施形態では、第5工程で得られた、このタンニン生成物をさらに処理することができる。図2、3、5、6、8、9、11および12に示される実施形態では、第5工程で得られたタンニン生成物は、本発明の方法の第6工程でさらに処理される。この第6工程では、タンニン生成物を、より高い乾燥重量まで蒸発させる。1つの実施形態では、蒸発は、タンニン生成物が、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%の乾燥重量を有する程度まで行なわれる。蒸発の間、温度は、好ましくは100℃未満、90℃未満、80℃未満、または70℃未満とすることができる。図2、5、8および11の工程図に示されているように、この第6工程により得られるタンニン生成物は、最終のタンニン生成物である。この蒸発は、任意の型のエバポレーター、例えば、流下膜式エバポレーター、上昇膜式エバポレーター、薄膜式エバポレーターなどで行なうことができ、1つの実施形態では、流下膜式エバポレーターが使用される。
【0058】
しかし、いくつかのさらなる実施形態では、この第6工程の後に得られるこのタンニン生成物をさらに処理することができる。図3、6、9および12に示される実施形態では、第6工程から得られるタンニン生成物をさらに本発明の方法の第7工程で処理する。この第7工程では、第6工程からのタンニン生成物を、前記タンニン生成物の乾燥粉末生成物を得るために乾燥する。この乾燥は、噴霧乾燥または凍結乾燥とすることができる。1つの実施形態では、乾燥は噴霧乾燥であり、また、1つの実施形態では、噴霧乾燥が粒子の凝集を含む。噴霧乾燥の間、入ってくる空気の温度を、150〜250℃の範囲内、または180〜220℃の範囲内の温度とすることができ、また、出てくる空気の温度を、75〜100℃の範囲内、または80〜95℃の範囲内の温度とすることができる。1つの実施形態では、乾燥粉末生成物は、10%未満、5%未満、または3%未満の水分濃度である。
【0059】
第4工程後に得られる、脱水された樹皮生成物の燃料比を高めるために、図4〜6および図10〜12に示すように、脱水された樹皮生成物を、第8工程において水性溶液でもう一度洗浄し、その後、第9工程において脱水することができる。
【0060】
第9工程におけるこの脱水はまた、第2工程におけるように、プラグスクリューフィーダで行うことができるだけでなく、通常のスクリュープレス、デシケーター等のその他の脱水装置も可能である。
【0061】
第9工程から得られる脱水された樹皮生成物は、第4工程で得られる脱水された樹皮生成物よりも高い燃料比を有しており、さらなる詳細は以下の表7および実施例8が参照される。
【0062】
第3液体抽出物はまた、第9工程の脱水を行う際にも得られ、そしてこの第3液体抽出物は、含浸の第3工程に再循環され、その際、この第3液体抽出物は、第2液体抽出物の再循環部分と、所望により新鮮な水と共に、混合される。第3液体抽出物は、第1水性含浸組成物中の新鮮な水の実質的部分を置き換える。1つの実施形態では、第2液体抽出物の、所望により新鮮な水と混合された第3液体抽出物に対する割合は、重量比で、1:4〜20:1、1:2〜10:1、1:1〜5:1、1.5:1〜4:1、または2:1〜3:1の範囲内である。
【0063】
所望により新鮮な水と混合された第3液体抽出物に関し、1つの実施形態では、70%より多くが、第3液体抽出物によって構成される(従って、30%未満の新鮮な水が添加されている)。別の実施形態では、80%より多くが、第3液体抽出物によって構成される(従って、20%未満の新鮮な水が添加されている)。別の実施形態では、90%より多くが、第3液体抽出物によって構成される(従って、10%未満の新鮮な水が添加されている)。さらに別の実施形態では、100%が第3液体抽出物によって構成される(従って、新鮮な水が添加されていない)。
【実施例】
【0064】
本発明を、ここで、本発明の理解をさらに進め、かつ、タンニン生成物および樹皮生成物の特性を調べる際に使用される異なるテストモデルに関する情報を提供するために、非限定的な実施例により説明する。
【0065】
実施例1
抽出およびなめしの実験的プラント
パルプ工場からのトウヒの樹皮(間伐品質)を、丸太材から皮を剥き、実験的粉砕機で平均サイズ50mmに粉砕した。抽出は、チップビン、プラグスクリューフィーダ、含浸機、貯留槽、および間に搬送スクリューを有する実験的装置で行った。
【0066】
乾燥含量30%のトウヒの樹皮を、蒸気付加が可能なチップビンに加えた。チップビンの底部から、樹皮を搬送スクリューによって、乾燥重量として計算して約54Kg/時の速度で、プラグスクリューフィーダ(PSF)に供給した。その際、過剰な流体および付加的な流体を樹皮から分離し、樹皮の乾燥含量を45%とした。第1抽出物である分離された流体を、PSFの下で収集した。樹皮を、新鮮な水が重量比、約1:6(乾燥樹皮:水)で添加された含浸工程にさらに搬送した。温度は約75℃であった。垂直搬送スクリューで樹皮を、含浸工程のトップまで、かつ、貯留槽の上部に水平に持ち上げ、その底部から含浸させられた樹皮を搬送し、容器に収集した。60分の滞留時間後、その間、温度が約65℃に低下したが、樹皮をチップビン内に移し換え、PSFからの第2抽出物を収集した。貯留槽に残る樹皮も収集した。100μmのフィルタを通しての平面スクリーニングおよび濾過の後、純粋な抽出物または50:50の比で混合した抽出物(第1および第2抽出物の混合物)を、入ってくる温度180℃および出ていく温度85〜90℃を使用して、実験室用噴霧乾燥装置で噴霧乾燥した。供給流は10ml/分で、収率は75%であった。
【0067】
3つの異なる試験を行なった。第1の試験は、チップビンへ蒸気を加えず、かつ、含浸工程への重亜硫酸ナトリウムの添加なしで行なった。第2の試験は、チップビンへ蒸気を加え、かつ、含浸工程への重亜硫酸ナトリウムの添加なしで行ない、また、第3の試験は、チップビンへ蒸気を加えないが、乾燥樹皮に対して50kg/tの重亜硫酸ナトリウムを含浸工程に加えて行なった。抽出物への重亜硫酸ナトリウム2g/lの分離添加は、試験No.1〜6において行なった。
【0068】
その後、搬送スクリューへの入り口が絶えず詰まってしまい、手動で供給することが必要だったため、蒸気を樹皮に加えるときにプロセスを進行させることが一層困難であった。
【0069】
最終粉末を、分光光度計法を用いて、タンニン含量について分析した。この方法は、タンニンの赤色アントシアニジンへの酸化分解に基づいており、これは波長550nmでの吸光度によって定量化される。50mlの濃塩酸と混合した950mlのn−ブタノールから作成した1つと、16.6mlの濃塩酸を水で100mlに希釈して作成した1つの、2つの溶液を調製し、次いで、25mlの2N塩酸中に溶解された硫酸第二鉄アンモニウムを加えた。試験管に、6mlのn−ブタノール溶液および水に溶解した粉末試料1ml(1g/l)を加えた。振盪後、鉄(III)を含有する2番目の溶液0.2mlを加えた。試験管を60分間、沸騰水浴中に保持した後、吸光度をUV−VIS分光光度計(島津UV−1201)で測定し、そして基準(ミモザタンニン)に対して較正した。
【0070】
なめしのラボ試験用に、約5cm×5cmの牛皮の7片を、水で40%の濃度に希釈したなめし剤を含む7つの別々の小浴に入れた。なめし試験用に、牛皮100gに対して乾燥なめし剤50gを使用した。
【0071】
抽出物の調製、それらのタンニン含量およびなめし効果が、表1にテストNo.1〜7として示される。
【表1】
【0072】
抽出工程2からの抽出物への重亜硫酸ナトリウムの分離添加は、重亜硫酸ナトリウムのプロセス中での添加であった参照例に比較して有益であった。プロセス中での蒸気付加がなかった場合に、革なめし効果がより良好であった。タンニン含量は、なめし効果に対して決定的ではなかった。
【0073】
実施例2
樹皮の評価
実施例1からの樹皮のエネルギー価の分析は、ユーロフィン(Eurofins)法(SS−EN 14918:2010)を用いて行なった。結果を表2に示す。
【表2】
【0074】
上記の表から明らかなように、乾燥樹皮のエネルギー価は、プロセスへの重亜硫酸ナトリウム添加なしの試験に対し、より高かった。明らかに、重亜硫酸ナトリウムを添加しないプロセスからの樹皮は、テストNo.4のプロセスと比較して、より良好な燃料比を有する。
【0075】
実施例3
抽出およびなめしの実験的プラント
樹皮抽出物を含有するタンニンの実験的な製造を、一般的に実施例1に記載した実験的規模の機器で行なった。この試験に対し、樹皮抽出物の再循環のために装置を拡大した。製材工場からのトウヒの樹皮を、丸太材から皮を剥き、実験的粉砕機で平均サイズ50mmに粉砕した。抽出は、プラグスクリューフィーダ、含浸機、貯留槽および搬送スクリュー、並びに小さなタンクおよびポンプを間に有する実験的装置で行った。テストNo.1〜6に記載したように、異なるプロセス設定を試験した。
【0076】
乾燥含量約30%のトウヒの樹皮を、搬送バンド上で生産プラグスクリューフィーダ(PSF)に乾燥重量54kg/時の製造速度で加えた。その際、過剰な流体および追加の流体を樹皮から分離し、乾燥含量45%の樹皮とした。第1抽出物である分離された流体を、約30℃の温度を有するPSFの下で収集し、そして含浸工程に、完全に再循環させたか、または再循環させなかった。新鮮な温水および/または再循環された抽出物からなる抽出液が約80℃の温度で約1:5(樹皮:抽出液)の割合で添加された含浸工程に、樹皮をさらに搬送した。垂直搬送スクリューで樹皮を、含浸工程のトップまで、かつ、温度が60〜65℃の貯留槽の上部に水平に持ち上げた。貯留槽の滞留時間は30分であった。樹皮を、脱水装置により脱水し、試料を取り出したストレージに搬送した。脱水装置からの第2抽出物は約50℃の温度を有し、そして含浸工程に再循環されたか、または再循環されなかったのいずれかであった。第2抽出物を再循環させた場合、第2抽出物の約25%の小流量が生じた。ボウスクリーニング(bow screening)(レコ(Reko)社、150μm)、沈降および100μmのフィルタを通した濾過の後、第1抽出物および第2抽出物を製造した。重亜硫酸ナトリウムが乾燥樹皮重量t当たり50kgの濃度で熱水と共に添加されたテストNo.3の場合を除き、乾燥抽出物の重量に基づいて計算して重量比で5%の分離添加を行なった。噴霧乾燥を、実施例1に従って行ない、そして牛皮のなめしを実施例2に従って行なった。このタンニン含量を実施例1に従う分光光度計法で測定した。抽出物の、非なめし部分およびなめし部分の合計は総可溶性物質であり、残り(100%まで)は非可溶性であった。渋みは、非なめし部分に対するなめし部分の比であり、ISO 5403−2:2011に従って測定した。
【0077】
抽出物の調製が、表3にテストNo.1〜6として示され、そしてそれらのタンニン含量およびタンニン効果が表4にテストNo.1〜6として示される。
【表3】
【表4】
明らかに、オープンプロセスからの第1抽出物および向流プロセスの第2抽出物が、タンニン含量、タンニン部分および渋みに基づいて最良の抽出物であった。
【0078】
実施例4
実験的抽出
樹皮抽出物を含有するタンニンの実験的製造を、実施例1に一般的に記載した実験的規模の装置で行なった。この試験のために、抽出物の向流再循環用の装置を使用した。パルプ工場からのトウヒの樹皮(間伐品質)を、丸太材から皮を剥き、実験的粉砕機で平均サイズ50mmに粉砕した。
【0079】
乾燥含量約30%のトウヒの樹皮を、搬送バンド上で生産プラグスクリューフィーダ(PSF)に乾燥重量60kg/時の製造速度で加えた。その際、過剰な流体および追加の流体を樹皮から分離し、乾燥含量45%の樹皮とした。第1抽出物である分離された流体を、温度:21.7℃、pH:4.1および流量:84kg/時で、PSFの下で収集した。
【0080】
新鮮な温水および再循環抽出物からなる抽出液が約60℃の温度で、1:4(樹皮:抽出液)の割合で添加された含浸工程に、樹皮をさらに搬送した。再循環抽出物に対する新鮮な温水の比は、約1:2であった。垂直搬送スクリューで樹皮を、含浸工程のトップまで、かつ、貯留槽の上部に水平に持ち上げた。貯留槽の滞留時間は30分であった。樹皮を、脱水装置により脱水し、試料を取り出したストレージに搬送した。脱水装置からの第2抽出物は温度:41.5℃およびpH:4.2であり、そしてメジャーな部分(74%)まで含浸工程に再循環した。ボウスクリーニング(レコ(Reko)社、BG300L、150μm)、沈殿および100μmのフィルタ(クリスチャンバーナー(Christian Berner)社、トップライン(TopLine) TBF0101)を通した濾過の後、濃度:4.7%およびpH:4.2の、第1抽出物および第2抽出物を、50:50の割合で、159.6kg/時の速度で製造した。
【0081】
実施例5
重亜硫酸塩の添加
実施例4に従って調製した、各々4.7%抽出物の約5リットルの6つの試料を収集し、重亜硫酸ナトリウムを、乾燥抽出物に対して、重量比で0〜25%の濃度で添加した。次いで、試料を別々に、(実施例1に従い)実験室用噴霧乾燥機で同じ条件で噴霧乾燥し、タンニン含量を、(実施例1に記載した)分光測光装置により測定した。結果は以下の表5に示される。
【表5】
【0082】
実施例6
皮の調製
なめし用に使用される生の牛皮を、以下の手順により4日間で調製した:
1.生の皮を24時間、水分を補給し、塩分を取り除いた。
2.毛および天然脂肪を、界面活性剤、炭酸カルシウム(石灰)および硫化ナトリウムで除去した。
3.皮を、その肉側を洗い、清掃し、次いで、適当な厚さに裂きとり、その後、それらを水および炭酸カルシウムの中に留めた(すなわち、ライミング段階)。
4.皮の脱灰、続いての洗浄および酸洗い(pH:4)。
【0083】
実施例7
実験室的なめし
実験室的なめし試験のために、実施例6により調整した、同一の皮からの約5cm×5cmの6片を、水で濃度50%まで希釈したなめし剤を含有する6つの別々の小浴に入れた。なめし試験のために、皮の重量に対して重量比で50%の乾燥抽出物を入れた。結果は表6に示される。
【表6】
【0084】
この実験室的なめし試験から、最適な迅速かつ最終のなめし効果、並びに最終的ななめし皮革の許容される色は、試料CおよびDにより、すなわち、乾燥樹皮抽出物に対して重量比で10〜15%の重亜硫酸ナトリウムの添加により、達成できることが明らかである。
【0085】
実施例8
樹皮の評価
実施例4から得られた樹皮の分析を、ユーロフィン(Eurofins)エネルギーパッケージ(SS−EN 14918:2010、SS−EN ISO 16994:2015およびSS−EN ISO 16994:2015修正版)に従って行なった。
【0086】
実施例4の付加的な実施形態では、付加的な洗浄工程を加えた。抽出された樹皮を、ミキサー内で温水と混合し、脱水装置により脱水し、そして樹皮抽出物をプロセスにおいて向流で含浸機に再循環させ、そこに先に加えられていた温水を置き換えた。結果は以下の表7に示される。
【表7】
【0087】
上記の表から明らかなように、抽出済みの場合または抽出および脱水済みの場合、エネルギー価が減少したが、それぞれ、1%および2%未満の減少である。同時に、乾燥含量および硫黄含量は増加したが、これは燃焼の観点から肯定的である。塩素含量は減少したが、これは、燃焼中に硬い表面を形成するリスクを下げるので重要である。このようにして、燃料比を高めた樹皮生成物が、本発明に従う方法によって提供される。
【0088】
実施例9
実験的乾燥
実施例4の実験的抽出を、52時間連続して行なった。乾燥抽出物に対して重量比で15%の重亜硫酸ナトリウムの添加を除き、濾過後の収率は、8.3%であった。
実験的乾燥を、蒸発および噴霧乾燥の2段階で行なった。
【0089】
蒸発は、60〜70℃の温度で、二重効用流下膜式蒸発器で行ない、乾燥含量を第1蒸発缶の後に最初に約20%、そして最終的には50.8%とした。蒸発工程での収率は88%であった。
【0090】
噴霧乾燥を、実験的な流動化された噴霧乾燥機で、流入温度200℃および流出温度92〜94℃を使用して行なった。供給流量は35〜36kg/時であり、収率は94%であった。
【0091】
最終的な、凝集した噴霧乾燥粉末は、水への非常に迅速な溶解性、約4%の許容可能な水分量および皮なめし工場でのトウヒ樹皮のタンニンでこれまでに得た最高のなめし効率を有するという、優れた品質を備えていた。皮は、実施例6に従って調製した。
【0092】
全体的な製造の収率は、重亜硫酸ナトリウムを除いて6.8%であり、また、重亜硫酸ナトリウムを含んで7.8%であった。タンニン含量は、実施例1に従って測定して、平均52%(6つの試料)であった。
【0093】
当業者は、付記された特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態の多くの変形が可能であることを理解する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】