(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
エピトープを含む)に特異的に結合する、TCRなどの、結合タンパク質;そのような抗原特異的結合タンパク質を発現する細胞;そのような抗原特異的結合タンパク質をコードする核酸;および細胞がBRAF
を発現する疾患または障害、例えばがんの処置において、使用するための組成物を提供する。ある特定の態様では、本開示は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(例えば、ヒト白血球抗原、HLA)に会合するBRAF
(a)配列番号29〜32のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列、または最大で5つのアミノ酸置換、挿入および/もしくは欠失を有する配列番号29〜32のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列を有する、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメインと、TCRβ鎖可変(Vβ)ドメインとを含む結合タンパク質;
(b)Vαドメインと、配列番号33〜35のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列、または最大で5つのアミノ酸置換、挿入および/もしくは欠失を有する配列番号33〜35のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列を有する、Vβドメインとを含む結合タンパク質;または
(c)(a)のVαドメインと(b)のVβドメインとを含む結合タンパク質
であって、
BRAFV600E変異を含有するBRAFペプチドを含む細胞表面のHLA複合体と特異的に結合することができ、前記BRAFV600E変異を含有しないBRAFペプチドを含む細胞表面のHLA複合体には結合しない、結合タンパク質。
配列番号1〜4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%同一であるVαドメインを含み、配列番号5〜7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%同一であるVβドメインを含み、ただし、(a)CDRの少なくとも3または4つが変異を有さず、(b)変異を有するCDRが、アミノ酸置換、挿入および/または欠失を最大で3つしか有さない、請求項1または2に記載の結合タンパク質。
前記Vαドメインが、配列番号1〜4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号1〜4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
前記Vβドメインが、配列番号5〜7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号5〜7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
前記TCRが、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するβ鎖(Cβ)定常ドメインを含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
前記BRAFV600Eペプチドが、約7〜約27個のアミノ酸、約10〜約25個のアミノ酸、または約12〜約20個のアミノ酸、または約15〜約19個のアミノ酸を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
前記免疫系細胞が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4−CD8−二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せである、請求項28に記載の発現ベクター。
前記T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである、請求項29または30に記載の発現ベクター。
請求項24もしくは25に記載の異種ポリヌクレオチドまたは請求項26〜33のいずれか一項に記載の発現ベクターを含む宿主細胞であって、その細胞表面で、前記異種ポリヌクレオチドによりコードされる結合タンパク質を発現する、宿主細胞。
(a)前記Vαドメインをコードする前記異種ポリヌクレオチドの部分が、配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である、および/または
(b)前記Vβドメインをコードする前記異種ポリヌクレオチドの部分が、配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である、請求項34に記載の宿主細胞。
前記Vαドメインをコードする前記異種ポリヌクレオチドの部分が、配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなる、請求項34または35に記載の宿主細胞。
前記Vβドメインをコードする前記異種ポリヌクレオチドの部分が、配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなる、請求項34〜36のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記Vαドメインをコードする前記異種ポリヌクレオチドの部分が、TCRα鎖定常ドメインをコードする部分に連結されており、前記α鎖定常ドメインをコードする前記部分が、配列番号27のポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列を含むか、または配列番号27のポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列からなる、請求項34〜37のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記Vβドメインをコードする前記異種ポリヌクレオチドの部分が、TCRβ鎖定常ドメインをコードする部分に連結されており、前記β鎖定常ドメインをコードする前記部分が、配列番号28のポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列を含むか、または配列番号28のポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列からなる、請求項34〜38のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記Vαドメインをコードする前記部分が、配列番号18のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号18のポリヌクレオチド配列からなり、前記Vβドメインをコードする前記部分が、配列番号22のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号22のポリヌクレオチド配列からなる、請求項34〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記Vαドメインをコードする前記部分が、配列番号19のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号19のポリヌクレオチド配列からなり、前記Vβドメインをコードする前記部分が、配列番号23のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号23のポリヌクレオチド配列からなる、請求項34〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記Vαドメインをコードする前記部分が、配列番号20のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号20のポリヌクレオチド配列からなり、前記Vβドメインをコードする前記部分が、配列番号23のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号23のポリヌクレオチド配列からなる、請求項34〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記Vαドメインをコードする前記部分が、配列番号21のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号21のポリヌクレオチド配列からなり、前記Vβドメインをコードする前記部分が、配列番号24のポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号24のポリヌクレオチド配列からなる、請求項34〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記ポリヌクレオチドの一部分が、自己切断ペプチドをコードし、TCRα鎖をコードする部分とTCRβ鎖をコードする部分の間に配置されている、請求項34〜43のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記自己切断ペプチドをコードする前記部分が、配列番号44〜48のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号44〜48のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなる、請求項44に記載の宿主細胞。
前記コードされた自己切断ペプチドが、配列番号49〜52のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号49〜52のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる、請求項45に記載の宿主細胞。
前記免疫系細胞が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4−CD8−二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せである、請求項47に記載の宿主細胞。
前記T細胞により発現される前記結合タンパク質またはTCRが、内在性TCRと比較して、CD3タンパク質とより効率的に会合することができる、請求項50または51に記載の宿主細胞。
PD−1遺伝子、LAG3遺伝子、TIM3遺伝子、CTLA4遺伝子、HLA成分遺伝子、TCR成分遺伝子またはそれらの任意の組合せの染色体遺伝子ノックアウトを含む、請求項47〜52のいずれか一項に記載の宿主細胞。
前記染色体遺伝子ノックアウトが、α1マクログロブリン遺伝子、α2マクログロブリン遺伝子、α3マクログロブリン遺伝子、β1ミクログロブリン遺伝子またはβ2ミクログロブリン遺伝子から選択されるHLA成分遺伝子のノックアウトを含む、請求項53に記載の宿主細胞。
前記染色体遺伝子ノックアウトが、TCRα可変領域遺伝子、TCRβ可変領域遺伝子、TCR定常領域遺伝子またはそれらの組合せから選択されるTCR成分遺伝子のノックアウトを含む、請求項53または54に記載の宿主細胞。
(i)請求項34〜52のいずれか一項に記載の宿主細胞または(ii)請求項57に記載の組成物の有効量を含む単位用量であって、前記宿主細胞が、必要に応じて約107細胞/m2〜約1011細胞/m2の用量でのものである、単位用量。
(i)少なくとも約30%の操作されたCD4+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約30%の操作されたCD8+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、ナイーブT細胞を実質的に含有しない、請求項58に記載の単位用量。
前記がんが、ヘアリー細胞白血病、黒色腫、甲状腺がん、例えば低分化甲状腺がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、乳頭がん、非ホジキンリンパ腫、膠芽腫、および毛様細胞性星細胞腫から選択される、請求項61に記載の方法。
前記免疫系細胞が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4−CD8−二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、樹状細胞またはそれらの任意の組合せである、請求項67に記載の方法。
前記免疫系細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである、請求項67または68に記載の方法。
前記がんが、ヘアリー細胞白血病、黒色腫、甲状腺がん、例えば甲状腺乳頭がんおよび低分化甲状腺がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、乳頭がん、非ホジキンリンパ腫、膠芽腫、および毛様細胞性星細胞腫、乳がん、卵巣がん、ランゲルハンス細胞組織球症、または肉腫(例えば、線維肉腫(線維芽細胞肉腫)、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫;血管肉腫(血管の肉腫)、カポジ肉腫、脂肪肉腫、多形性肉腫、もしくは滑膜肉腫)から選択される、請求項71に記載の方法。
前記宿主細胞がサイトカイン投与前に少なくとも3または4回、前記対象に投与されたことを条件に、前記サイトカインが逐次的に投与される、請求項79に記載の方法。
前記免疫抑制治療が、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ、またはそれらの任意の組合せから選択される、請求項82に記載の方法。
前記免疫抑制剤の前記阻害剤が、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG3、CTLA4、B7−H3、B7−H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、アデノシン、A2aR、免疫抑制性サイトカイン、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、PVRIG、PVRL2、KIR、LAIR1、CEACAM−1、CEACAM−3、CEACAM−5、CD160、Treg細胞、またはそれらの任意の組合せを阻害する、請求項87に記載の方法。
前記免疫抑制剤の前記阻害剤が、抗体もしくはその抗原結合断片、融合タンパク質、小分子、RNAi分子、リボザイム、アプタマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項87または88に記載の方法。
前記免疫抑制剤の前記阻害剤が、ピディリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、MEDI0680、AMP−224、BMS−936558、BMS−936559、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、MPDL3280A、LAG525、IMP321、IMP701、9H12、BMS−986016、イピリムマブ、トレメリムマブ、アバタセプト、ベラタセプト、エノブリツズマブ、376.96、抗B7−H4抗体もしくは抗原結合断片、リリルマブ、レボ−1−メチルトリプトファン、エパカドスタット、エブセレン、インドキシモド、NLG919、1−メチル−トリプトファン(1−MT)−チラパザミン、N(オメガ)−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)、N−オメガ−ヒドロキシ−ノル−1−アルギニン(ノル−NOHA)、L−NOHA、2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸(ABH)、S−(2−ボロノエチル)−L−システイン(BEC)、CA−170、COM902、COM701、もしくはその抗原結合断片、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項89に記載の方法。
前記アゴニストが、ウレルマブ、MEDI6469、MEDI6383、MEDI0562、レナリドミド、ポマリドミド、CDX−1127、TGN1412、CD80、CD86、CP−870,893、rhuCD40L、SGN−40、IL−2、GSK3359609、mAb 88.2、JTX−2011、Icos 145−1、Icos 314−8またはそれらの任意の組合せから選択される、請求項91に記載の方法。
治療用抗体、化学療法、放射線治療、外科手術のうちの1つもしくは複数またはそれらの任意の組合せを前記対象に投与することをさらに含む、請求項64〜92のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ある特定の態様では、本開示は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(例えば、ヒト白血球抗原、HLA)に会合するBRAF
V600Eペプチド抗原などの、BRAF
V600Eペプチド抗原と特異的に結合することができる、T細胞受容体(TCR)などの、結合タンパク質を提供する。本開示の結合タンパク質は、例えば、BRAF
V600E発現を特徴とする過剰増殖性疾患、例えばがんを処置するための治療に有用である。
【0013】
背景として、がん関連変異によって生じる抗原は、治療的介入の魅力的な標的であるが、一般に、個々の患者に特有のものである。したがって、がんの必須「駆動因子」変異によって生じる抗原は、がん細胞に特異的でもあり、患者集団において高頻度に出現もするので、興味深い。BRAFタンパク質は、細胞成長シグナル伝達に関与し、その一方で、変異型BRAFは、多数のがんに関係付けられる(例えば、Frasca et al., Endocrine-Related Cancer 15:191(2008)を参照されたい)。特に、BRAF遺伝子の第15番エクソンにおいて生じる置換変異V600E(BRAF
V600E)は、BRAFを活性化して成長シグナル伝達経路を駆動し、これは発癌の初期事象である。この変異は、ヘアリー細胞白血病の全ての事例、悪性黒色腫症例の約半分、および進行した甲状腺がん、肺がんおよび結腸がんを有する患者の有意な数に見られる。
【0014】
本明細書に記載される組成物および方法には、ある特定の実施形態では、BRAF
V600E発現に関連する疾患および状態の処置への治療的有用性がある。そのような疾患には、様々な形態の過剰増殖性障害、例えば、ヘアリー細胞白血病、黒色腫、甲状腺がん(低分化甲状腺がんを含む)、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、乳頭がん、非ホジキンリンパ腫、膠芽腫、および毛様細胞性星細胞腫、乳がん、卵巣がん、ランゲルハンス細胞組織球症、および肉腫(例えば、線維肉腫(線維芽細胞肉腫)、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫;血管肉腫(血管の肉腫)、カポジ肉腫、脂肪肉腫、多形性肉腫、および滑膜肉腫)が含まれる。これらの非限定的な例および関連する使用は、本明細書に記載され、BRAF
V600E抗原特異的T細胞応答の、例えばBRAF
V600Eペプチドに特異的TCRを発現する組換えT細胞の使用による、in vitro、ex vivoおよびin vivoでの刺激を含む。
【0015】
本開示をより詳細に示す前に、本明細書で使用されるある特定の用語の定義を提供することは、本開示の理解の助けになり得る。さらなる定義は、本開示を通して示される。
【0016】
本説明では、任意の濃度範囲、百分率範囲、比の範囲、または整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙されている範囲内の任意の整数の値、および適宜、それらの分数(例えば、整数の十分の一および百分の一)を含むと理解するべきである。また、任意の物理的特徴、例えば、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さに関して本明細書で列挙される任意の数値範囲は、別段の指示がない限り、列挙されている範囲内の任意の整数を含むと理解すべきである。本明細書で使用される用語「約」は、別段の指示がない限り、示されている範囲、値または構造の±20%を意味する。用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書で使用される場合、列挙されている構成要素のうちの「1または複数」を指すと理解すべきである。選択肢(例えば、「または」)の使用は、それらの選択肢のうち1つ、両方、またはそれらの任意の組合せを意味すると理解すべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む(include)」、「有する」および「含む(comprise)」は、同義で使用され、これらの用語およびそれらの異表記は、非限定的と解釈されることを意図したものである。
【0017】
さらに、本明細書に記載される構造および置換基の様々な組合せから得られる個々の化合物または化合物の群は、あたかも各化合物または化合物の群が個々に示されたのと同程度に、本願により開示されると理解すべきである。したがって、特定の構造または特定の置換基の選択は、本開示の範囲内である。
【0018】
用語「から本質的になる」は、「含む」と同等ではなく、特許請求された発明の明記された材料もしくはステップ、または特許請求された発明の基本的特徴に実質的に影響を与えない材料もしくはステップを指す。例えば、タンパク質のドメイン、領域もしくはモジュール(例えば、結合ドメイン、ヒンジ領域、リンカーモジュール)またはタンパク質(これは、1もしくは複数のドメイン、領域もしくはモジュールを有し得る)は、ドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わせて、ドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質の長さの多くても20%(例えば、多くても15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%)に寄与し、ドメイン(複数可)、領域(複数可)、モジュール(複数可)またはタンパク質の活性(例えば、結合性タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響を与えない(すなわち、活性の低減が、50%を超えない、例えば、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下である)、伸長、欠失、変異またはそれらの組合せ(例えば、アミノ末端もしくはカルボキシ末端にある、またはドメイン間にあるアミノ酸)を含む場合、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0019】
本明細書で使用される場合、「免疫系細胞」は、2つの主要な系列、骨髄系前駆細胞(これは、骨髄系細胞、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球および顆粒球を生じさせる)およびリンパ系前駆細胞(これは、リンパ系細胞、例えば、T細胞、B細胞およびナチュラルキラーT(NK−T)細胞を含むナチュラルキラー(NK)細胞を生じさせる)、を生じさせる、骨髄中の造血幹細胞に由来する免疫系の任意の細胞を意味する。例示的な免疫系細胞としては、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、CD4
−CD8
−二重陰性T細胞、γδT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、および樹状細胞が挙げられる。マクロファージおよび樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」と呼ばれることもあり、「抗原提示細胞」または「APC」は、ペプチドと複合体化したAPCの表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)受容体がT細胞の表面のTCRと相互作用したときT細胞を活性化することができる特殊化した細胞である。
【0020】
「主要組織適合遺伝子複合体」(MHC)は、ペプチド抗原を細胞表面に送達する糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜通過α鎖(3つのαドメインを有する)と非共有結合的に会合しているβ2ミクログロブリンとを有するヘテロダイマーである。MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、αおよびβ、で構成されており、これらの両方が膜にまたがっている。各鎖は、2つのドメインを有する。MHCクラスI分子は、サイトゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこでペプチド:MHC複合体は、CD8
+T細胞により認識される。MHCクラスII分子は、小胞系に由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこで、ペプチド:MHC複合体は、CD4
+T細胞によって認識される。ヒトMHCは、ヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる。HLA−II型は、DP、DM、DOA、DOB、DQおよびDRを含む。様々なHLA型のサブユニットをコードする非常に多くのアレルが公知であり、そのようなアレルには、例えば、HLA−DQA1*03、HLA−DQB1*0301、HLA−DQB1*0302、HLA−DQB1*0303が含まれる。ある特定の実施形態では、本開示による結合タンパク質は、HLA−DQと複合体化したBRAF
V600Eペプチドを認識することができる。ある特定の実施形態では、HLA複合体は、HLA−DQB1*0301、*0302または*0303を含む。ある特定の実施形態では、HLA複合体は、HLA−DQB1*0302を含む。さらなる実施形態では、HLA複合体は、HLA−DQA1*03を含む。
【0021】
「T細胞」または「Tリンパ球」は、胸腺において成熟し、T細胞受容体(TCR)を産生する、免疫系細胞である。T細胞は、ナイーブ(抗原に曝露されていない;T
CMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127およびCD45RAの発現増加、ならびにCD45ROの発現減少)、メモリーT細胞(T
M)(抗原を経験した、長寿命)およびエフェクター細胞(抗原を経験した、細胞傷害性)であり得る。T
Mは、さらに、セントラルメモリーT細胞(T
CM;ナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45ROおよびCD95の発現増加、ならびにCD54RAの発現減少)およびエフェクターメモリーT細胞(T
EM;ナイーブT細胞またはT
CMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現減少、およびCD127の発現増加)のサブセットに分けることができる。
【0022】
エフェクターT細胞(T
E)は、抗原を経験したCD8
+細胞傷害性Tリンパ球であって、T
CMと比較して、CD62L、CCR7、CD28の発現減少を有し、グランザイムおよびパーフォリンに対して陽性である、CD8
+細胞傷害性Tリンパ球を指す。ヘルパーT細胞(T
H)は、サイトカインを放出することにより他の免疫細胞の活性に影響を与えるCD4
+細胞である。CD4
+T細胞は、適応免疫応答を活性化することおよび抑制することができ、これら2つの機能のどちらが誘導されるのかは、他の細胞およびシグナルの存在に依存する。公知の技法を使用してT細胞を収集することができ、公知の技法により、例えば、抗体への親和性結合、フローサイトメトリーまたは免疫磁気選択により、様々な部分集団またはそれらの組合せを富化することまたは枯渇させることができる。他の例示的なT細胞としては、調節性T細胞、例えば、CD4
+CD25
+(Foxp3
+)調節性T細胞およびTreg17細胞、ならびにTr1、Th3、CD8
+CD28
−、およびQa−1拘束T細胞が挙げられる。
【0023】
「T細胞受容体」(TCR)とは、MHC受容体に結合した抗原ペプチドと特異的に結合することができる免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー(可変結合ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域および短い細胞質側テールを有する;例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3
rd Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照されたい)を指す。TCRは、細胞の表面にまたは可溶性形態で見られることがあり、一般に、α鎖およびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても公知)、またはγ鎖およびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても公知)を有するヘテロダイマーから構成される。免疫グロブリンと同様に、TCR鎖(例えば、α鎖、β鎖)の細胞外部分は、次の2つの免疫グロブリンドメインを含む:N末端における可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメインまたはV
α、β鎖可変ドメインまたはVβ;通常は、Kabat番号付け(Kabat et al., "Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5
th ed.)に基づいてアミノ酸1〜116)、および細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインまたはC
α、通常はKabatに基づいてアミノ酸117〜259、β鎖定常ドメインまたはC
β、通常はKabatに基づいてアミノ酸117〜295)。また、免疫グロブリンと同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって隔てられた相補性決定領域(CDR)を含む(例えば、Jores et al., Proc. Nat'l Acad. Sci.U.S.A.87:9138, 1990; Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照されたく、Lefranc et al., Dev.Comp.Immunol.27:55, 2003も参照されたい)。TCR可変ドメイン配列を番号付けスキーム(例えば、Kabat, EU, International Immunogenetics Information System (IMGT) and Aho)に合わせてアラインメントすることができ、これにより、Antigen receptor Numbering And Receptor Classification(ANARCI)ソフトウェアツール(2016, Bioinformatics 15:298-300)を使用する等価な残基位置へのアノテーションの付与および異なる分子の比較が可能になり得る。番号付けスキームにより、TCR可変ドメイン内のフレームワーク領域およびCDRの標準化された描写が得られる。
【0024】
ある特定の実施形態では、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見られ、CD3複合体と会合している。本開示で使用される場合のTCRの供給源は、様々な動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物からのものであり得る。
【0025】
「CD3」は、6つの鎖の多タンパク質複合体として当技術分野において公知である(Abbas and Lichtman, 2003; Janeway et al., p. 172 and 178, 1999を参照されたい)。哺乳動物では、この複合体は、1つのCD3γ鎖と、1つのCD3δ鎖と、2つのCD3ε鎖と、CD3ζ鎖の1つのホモダイマーとを含む。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含有する、免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連する細胞表面タンパク質である。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖の膜貫通領域は負に荷電しており、これは、これらの鎖の正荷電T細胞受容体鎖との会合を可能にする特性である。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖の細胞内テールは、各々、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知の単一の保存モチーフを含むが、各CD3ζ鎖は、3つのITAMを有する。理論により拘束されることを望まないが、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能にとって重要であると考えられる。本開示で使用される場合のCD3は、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物を含む様々な動物種からのものであり得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「TCR複合体」は、CD3とTCRとの会合により形成される複合体を指す。例えば、TCR複合体は、1つのCD3γ鎖と、1つのCD3δ鎖と、2つのCD3ε鎖と、CD3ζ鎖の1つのホモダイマーと、1つのTCRα鎖と、1つのTCRβ鎖とで構成され得る。あるいは、TCR複合体は、1つのCD3γ鎖と、1つのCD3δ鎖と、2つのCD3ε鎖と、CD3ζ鎖の1つのホモダイマーと、1つのTCRγ鎖と、1つのTCRδ鎖とで構成され得る。
【0027】
「TCR複合体の成分」は、本明細書で使用される場合、TCR鎖(すなわち、TCRα、TCRβ、TCRγもしくはTCRδ)、CD3鎖(すなわち、CD3γ、CD3δ、CD3εもしくはCD3ζ)、または2つまたはそれより多くのTCR鎖もしくはCD3鎖により形成される複合体(例えば、TCRαとTCRβの複合体、TCRγとTCRδの複合体、CD3εとCD3δの複合体、CD3γとCD3εの複合体、もしくはTCRα、TCRβ、CD3γ、CD3δと2つのCD3ε鎖とのサブ−TCR複合体)を指す。
【0028】
「CD4」は、TCRの抗原提示細胞との通信を補助する免疫グロブリン共受容体糖タンパク質を指す(Campbell & Reece, Biology 909 (Benjamin Cummings, Sixth Ed., 2002);UniProtKB P01730を参照されたい)。CD4は、免疫細胞、例えば、Tヘルパー細胞、単球、マクロファージおよび樹状細胞の表面に見られ、前記細胞表面で発現される4つの免疫グロブリンドメイン(D1〜D4)を含む。抗原提示中に、CD4は、TCR複合体とともに動員されて、MHCII分子の異なる領域と結合する(CD4はMHCII β2に結合し、その一方でTCR複合体はMHCII α1/β1に結合する)。理論により拘束されることを望まないが、TCR複合体への近接は、CD4会合キナーゼ分子によるCD3の細胞質ドメインに存在する免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化を可能にすると考えられる。この活性は、活性化されたTCRにより生成されるシグナルを増幅して様々なタイプのTヘルパー細胞を産生すると考えられる。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「CD8共受容体」または「CD8」は、アルファ・アルファホモダイマーまたはアルファ・ベータヘテロダイマーのどちらかとしての、細胞表面糖タンパク質CD8を意味する。CD8共受容体は、細胞傷害性T細胞(CD8
+)の機能を補助し、その細胞質チロシンリン酸化経路経由でのシグナル伝達によって機能する(Gao and Jakobsen, Immunol.Today 21:630-636, 2000; Cole and Gao, Cell. Mol.Immunol.1:81-88, 2004)。ヒトの場合、五(5)つの異なるCD8ベータ鎖(UniProtKB識別子P10966を参照されたい)および単一のCD8アルファ鎖(UniProtKB識別子P01732を参照されたい)がある。
【0030】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗原へのTCRの結合に関与する、TCRα鎖またはβ鎖(またはγδTCRについてはγ鎖およびδ鎖)のドメインを指す。ネイティブTCRのα鎖およびβ鎖の可変ドメイン(それぞれ、VαおよびVβ)は、類似の構造を一般に有し、一般に、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む。Vαドメインは、2つの別々のDNAセグメント、可変遺伝子セグメントと連結遺伝子セグメント(V−J)、によりコードされ、Vβドメインは、3つ別々のDNAセグメント、可変遺伝子セグメント、多様性遺伝子セグメントと連結遺伝子セグメント(V−D−J)、によりコードされる。抗原結合特異性を付与するには単一のVαまたはVβドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合するTCRは、その抗原に結合するTCRからのVαまたはVβドメインを使用して相補的VαまたはVβドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングすることにより、単離することができる。
【0031】
用語「相補性決定領域」および「CDR」は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、抗原特異性および/または結合親和性を付与するTCR可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことは当技術分野において公知である。一般に、各α鎖可変領域には3つのCDR(αCDR1、αCDR2、αCDR3)があり、各β鎖可変領域には3つのCDR(βCDR1、βCDR2、βCDR3)がある。CDR3は、プロセシングされた抗原の認識を担う主要CDRであると考えられる。CDR1およびCDR2は、主としてMHCと相互作用する。ある特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質は、配列番号1〜4のうちのいずれか1つに示されるようなVαドメインのαCDR1、αCDR2および/またはαCDR3アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質は、配列番号5〜7のうちのいずれか1つに示されるようなVβドメインのβCDR1、βCDR2および/またはβCDR3アミノ酸配列を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合の「抗原」または「Ag」は、免疫応答を誘発する免疫原性分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、特定の免疫適格細胞(例えば、T細胞)の活性化、または両方に関与し得る。抗原(免疫原性分子)は、例えば、ペプチド、糖ペプチド、ポリペプチド、糖ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質などであり得る。抗原を合成、組換えにより産生、または生体試料から得ることができることは、容易に分かる。1つまたは複数の抗原を含有することができる例示的な生体試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞、生体液、またはそれらの組合せが挙げられる。抗原は、抗原を発現するように改変されたまたは遺伝子操作された細胞によって産生され得る。例示的な抗原としては、BRAF
V600Eが挙げられる。
【0033】
用語「エピトープ」または「抗原エピトープ」は、免疫グロブリン、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体または他の結合分子、ドメインもしくはタンパク質などの、同族結合分子により認識され、特異的に結合される、任意の分子、構造、アミノ酸配列またはタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面集団を含有し、特異的三次元構造特性および特異的電荷特性を有することができる。
【0034】
「結合ドメイン」(「結合領域」または「結合部分」とも呼ばれる)は、本明細書で使用される場合、標的(例えば、BRAF
V600E)と特異的かつ非共有結合的に会合、一体化または化合する能力を有する分子またはその一部分(例えば、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質)を指す。結合ドメインは、生体分子、分子複合体(すなわち、2つもしくはそれより多くの生体分子を含む複合体)または目的の他の標的に対する、任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換えにより産生された結合パートナーを含む。例示的な結合ドメインとしては、単鎖免疫グロブリン可変領域(例えば、scTCR、scFv)、受容体細胞外ドメイン、リガンド(例えば、サイトカイン、ケモカイン)、または生体分子、分子複合体もしくは目的の他の標的と結合するそれらの特異的能力のために選択される合成ポリペプチドが挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」または「に特異的な」は、試料中のいずれの他の分子または成分と有意に会合も一体化もしない、10
5M
−1に等しいかまたはそれより高い(これは、この会合反応についてのオンレート[K
on]のオフレート[K
off]に対する比に相当する)親和性またはK
a(すなわち、単位が1/Mである、特定の結合相互作用の平衡会合定数)での結合タンパク質(例えば、TCR受容体)または結合ドメイン(もしくはその融合タンパク質)と標的分子の会合または一体化を指す。結合タンパク質または結合ドメイン(またはそれらの融合タンパク質)は、「高親和性」結合タンパク質もしくは結合ドメイン(もしくはそれらの融合タンパク質)として分類されることもあり、または「低親和性」結合タンパク質もしくは結合ドメイン(もしくはそれらの融合タンパク質)として分類されることもある。「高親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、少なくとも10
7M
−1、少なくとも10
8M
−1、少なくとも10
9M
−1、少なくとも10
10M
−1、少なくとも10
11M
−1、少なくとも10
12M
−1、または少なくとも10
13M
−1のK
aを有する、結合タンパク質または結合ドメインを指す。「低親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、最大で10
7M
−1、最大で10
6M
−1、最大で10
5M
−1のK
aを有する、結合タンパク質または結合ドメインを指す。あるいは、単位がMである、特定の結合相互作用の平衡解離定数(K
d)(例えば、10
−5M〜10
−13M)として、親和性を定義することができる。
【0036】
ある特定の実施形態では、受容体または結合ドメインは、「増強された親和性」を有することができ、この「増強された親和性」は、野生型(または親)結合ドメインよりも標的抗原と強く結合する、選択もしくは操作された受容体または結合ドメインを指す。例えば、増強された親和性は、野生型結合ドメインよりも高い標的抗原に対するK
a(平衡会合定数)に起因することもあり、野生型結合ドメインのものより低い標的抗原に対するK
d(解離定数)に起因することもあり、野生型結合ドメインのものよりも低い標的抗原に対するオフレート(k
off)に起因することもあり、またはそれらの組合せであることもある。ある特定の実施形態では、増強された親和性TCRは、T細胞などの特定の宿主細胞における発現を増強するためにコドン最適化され得る(Scholten et al., Clin.Immunol.119:135, 2006)。
【0037】
特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定するための、および結合ドメインまたは融合タンパク質親和性を決定するための、様々なアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、分析用超遠心分離、分光法および表面プラズモン共鳴(Biacore(登録商標))分析が、公知である(例えば、Scatchard et al., Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660, 1949; Wilson, Science 295:2103, 2002; Wolff et al., Cancer Res.53:2560, 1993;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号または対応特許を参照されたい)。親和性または見かけの親和性または相対親和性を評価するアッセイも公知である。ある特定の例では、TCRの見かけの親和性は、様々な濃度のテトラマーとの結合を評定することにより、例えば、標識されたテトラマーを使用してフローサイトメトリーにより測定される。一部の例では、TCRの見かけのK
Dは、ある濃度範囲の標識されたテトラマーの2倍希釈物を使用して測定され、続いて非線形回帰により結合曲線が決定され、半最大結合を生じさせたリガンドの濃度として見かけのK
Dが決定される。
【0038】
用語「BRAF
V600E特異的結合タンパク質」は、BRAF
V600Eペプチド抗原またはBRAF
V600Eペプチド抗原:HLA複合体、例えば、細胞表面のBRAF
V600Eペプチド抗原またはBRAF
V600Eペプチド抗原:HLA複合体と特異的に結合するが、BRAF
V600E変異を含有しないBRAFペプチドを含む細胞表面のHLA複合体には結合しない、タンパク質またはポリペプチドを指す。
【0039】
ある特定の実施形態では、BRAF
V600E特異的結合タンパク質は、BRAF
V600E含有ペプチド:HLA複合体(またはBRAF
V600E含有ペプチド:MHC複合体)に、約10
−8M未満、約10
−9M未満、約10
−10M未満、約10
−11M未満、約10
−12M未満、もしくは約10
−13M未満のK
dで、または本明細書において提供される例示的なBRAF
V600E特異的結合タンパク質、例えば、本明細書において提供されるBRAF
V600E特異的TCRのいずれかによって示される親和性と、例えば、同じアッセイによって測定して、ほぼ同じである、そのような親和性と少なくともほぼ同じである、もしくはそのような親和性より大きいかほぼそのような親和性である親和性で、結合する。ある特定の実施形態では、BRAF
V600E特異的結合タンパク質は、BRAF
V600E特異的免疫グロブリンスーパーファミリー結合タンパク質またはその結合部分を含む。
【0040】
用語「BRAF
V600E結合ドメイン」または「BRAF
V600E結合断片」は、特異的BRAF
V600E結合を担う、BRAF
V600E特異的結合タンパク質のドメインまたは一部分を指す。単独でのBRAF
V600E特異的結合ドメイン(すなわち、BRAF
V600E特異的結合タンパク質のいずれの他の部分も有さない)は、可溶性であり得、約10
−8M未満、約10
−9M未満、約10
−10M未満、約10
−11M未満、約10
−12M未満、または約10
−13M未満のK
dでBRAF
V600E(例えば、MHC受容体分子またはその機能的断片との複合体内の)と結合することができる。例示的なBRAF
V600E特異的結合ドメインとしては、BRAF
V600E特異的scTCR(例えば、単鎖αβTCRタンパク質、例えば、Vα−L−Vβ、Vβ−L−Vα、Vα−Cα−L−Vα、またはVα−L−Vβ−Cβ(ここで、VαおよびVβは、それぞれ、TCRαおよびβ可変ドメインであり、CαおよびCβは、それぞれ、TCRαおよびβ定常ドメインであり、Lは、リンカーである))、および抗BRAF
V600ETCRまたは抗体に由来し得る本明細書に記載のscFv断片が挙げられる。
【0041】
抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、マクロファージ、リンパ球または他の細胞型)による抗原プロセシングの原理、および免疫適合性(例えば、抗原提示に関連するMHC遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の形態を共有する)APCとT細胞との間の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)拘束性の提示を含む、APCによるT細胞への抗原提示の原理は、十分確立されている(例えば、Murphy, Janeway's Immunobiology (8
th Ed.)2011 Garland Science, NY; chapters 6, 9 and 16を参照されたい)。例えば、サイトゾルに由来するプロセシングされた抗原ペプチド(例えば、腫瘍抗原、細胞内病原体)は、一般に、約7アミノ酸長〜約11アミノ酸長であり、クラスI MHC分子と会合するが、小胞系においてプロセシングされたペプチド(例えば、細菌、ウイルス)は、一般に、長さに約10アミノ酸〜約25アミノ酸の幅があり、クラスII MHC分子と会合する。
【0042】
「BRAF
V600E抗原」または「BRAF
V600Eペプチド抗原」または「BRAF
V600E含有ペプチド抗原」は、長さ約7アミノ酸〜約20アミノ酸の範囲であり、V600E置換変異を含む、BRAFタンパク質の天然にまたは合成により産生される部分(例えば、完全長野生型BRAFの600位に対応する残基におけるバリンの代わりにグルタミン酸を含む、BRAF
597〜603またはBRAF
590〜610からのペプチド;例えば、Uniprot登録番号P15056およびNCBI Reference識別子NP_004324.2を参照されたい)を指し、これは、MHC(例えば、HLA)分子と複合体を形成することができ、そのような複合体は、BRAF
V600Eペプチド:MHC(例えば、HLA)複合体に特異的な結合タンパク質と結合することができる。例示的なBRAF
V600Eペプチド抗原としては、配列番号38または39に示されるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0043】
「リンカー」は、2つのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ドメイン、領域またはモチーフを接続するアミノ酸配列であって、結果として生じるポリペプチドが、標的分子に対する特異的結合親和性を保持する(例えば、scTCR)ように、またはシグナル伝達活性を保持する(例えば、TCR複合体)ように、2つのサブ結合ドメインの相互作用と適合性のスペーサー機能を提供することができる、アミノ酸配列を指す。ある特定の実施形態では、リンカーは、約2〜約35アミノ酸、例えば、または約4〜約20アミノ酸または約8〜約15アミノ酸または約15〜約25アミノ酸から構成される。
【0044】
「接合部アミノ酸」または「接合部アミノ酸残基」は、ポリペプチドの2つの隣接するモチーフ、領域またはドメイン間、例えば、結合ドメインと隣接定常ドメインとの間、またはTCR鎖と隣接自己切断ペプチドとの間の、1または複数(例えば、約2〜10)のアミノ酸残基を指す。接合部アミノ酸は、融合タンパク質の構築物設計の結果として生じ得る(例えば、融合タンパク質をコードする核酸分子の構築中の制限酵素部位の使用の結果として生じるアミノ酸残基)。
【0045】
「変更されたドメイン」または「変更されたタンパク質」は、少なくとも85%(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%)の、野生型のモチーフ、領域、ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、野生型のTCRα鎖、TCRβ鎖、TCRα定常ドメイン、TCRβ定常ドメイン)に対する同一でない配列同一性を有する、モチーフ、領域、ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸分子」は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはin vitro翻訳により生成された断片、およびライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用またはエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより生成された断片のいずれかを指す。ある特定の実施形態では、本開示の核酸は、PCRにより産生される。核酸は、天然に存在するヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド)、天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドのα−エナンチオマー形態)、または両方の組合せである、モノマーで構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分またはピリミジンもしくはプリン塩基部分における修飾あるいはそのような部分の置き換えを有することができる。核酸モノマーを、ホスホジエステル結合により連結させることができ、またはそのような連結の類似体により連結させることができる。ホスホジエステル連結の類似体には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデートなどが挙げられる。核酸分子は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。
【0047】
用語「単離された」は、材料がその元の環境(例えば、その材料が天然に存在する場合には天然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生存動物に天然に存在する核酸またはポリペプチドは、単離されていないが、天然の系内に共存する材料の一部または全てから分離された同じ核酸またはポリペプチドは、単離されている。そのような核酸は、ベクターの一部であることもあり、および/またはそのような核酸もしくはポリペプチドは、組成物(例えば、細胞溶解物)の一部であることもあるが、それでもやはり、そのようなベクターもしくは組成物が核酸もしくはポリペプチドの天然環境の一部でないという点で単離されていることであり得る。用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味し、このセグメントには、コード領域の前および後の領域(「リーダーおよびトレーラー」)ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「組換え」は、人間の介在により遺伝子操作された細胞、微生物、核酸分子もしくはベクター、すなわち、異種核酸分子の導入により、改変された細胞、改変された微生物、修飾された核酸分子、もしくは修飾されたベクターを指すか、または内在性核酸分子もしくは遺伝子の発現が制御されるように、調節解除されるように、欠失されるように、減弱されるように、もしくは構成的になるように変更された、細胞もしくは微生物を指す。人間が生じさせる遺伝子変更は、例えば、1もしくは複数のタンパク質もしくは酵素をコードする核酸分子(これは、発現制御エレメント、例えばプロモーターを含み得る)を導入する修飾、または他の核酸分子付加、欠失、置換、または細胞の遺伝物質に対する他の機能的破壊もしくは付加を含み得る。例示的な修飾としては、参照または親分子からの異種または同種ポリペプチドのコード領域またはその機能的断片における修飾が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「変異」は、参照または野生型核酸分子またはポリペプチド分子とそれぞれ比較したときの核酸分子またはポリペプチド分子の配列の変化を指す。変異は、ヌクレオチド(複数可)またはアミノ酸(複数可)の置換、挿入または欠失を含む、配列のいくつかの異なるタイプの変化をもたらすことができる。ある特定の実施形態では、変異は、1つもしくは3つのコドンもしくはアミノ酸の置換、1つ〜約5つのコドンもしくはアミノ酸の欠失、またはそれらの組合せである。
【0050】
「保存的置換」は、あるアミノ酸の、類似の特性を有する別のアミノ酸に代えての置換として、当技術分野では認識されている。例示的な保存的置換は、当技術分野において周知である(例えば、WO97/09433、第10頁;Lehninger, Biochemistry, 2
nd Edition; Worth Publishers, Inc. NY, NY, pp.71-77, 1975; Lewin, Genes IV, Oxford University Press, NY and Cell Press, Cambridge, MA, p. 8, 1990を参照されたい)。
【0051】
用語「構築物」は、組換え核酸分子を含有する任意のポリヌクレオチドを指す。構築物は、ベクター(例えば、細菌ベクター、ウイルスベクター)中に存在することもあり、またはゲノムに組み込まれていることもある。「ベクター」は、別の核酸分子を輸送することができる核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクターであることもあり、または染色体の、非染色体の、半合成のもしくは合成の核酸分子を含み得る線状もしくは環状DNAもしくはRNA分子であることもある。例示的なベクターは、自律複製することができるもの(エピソームベクター)、または自体が連結されている核酸分子を発現させることができるもの(発現ベクター)である。
【0052】
ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびに二本鎖DNAウイルスが挙げられ、二本鎖DNAウイルスには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリアポックス)が含まれる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血症−肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV−BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0053】
「レンチウイルスベクター」は、本明細書で使用される場合、遺伝子送達のためのHIVベースのレンチウイルスベクターであって、組込み型であることもあり、または非組込み型であることもあり、比較的大きいパッケージング容量を有し、様々な異なる細胞型に形質導入することができる、レンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは、産生細胞内への3つ(パッケージング、エンベロープおよび移入)またはそれより多くのプラスミドの一過性トランスフェクション後に通常は生成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面の受容体との相互作用によって標的細胞に侵入する。侵入すると、ウイルスRNAは、ウイルス逆転写酵素複合体により媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は、二本鎖線状ウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNA中へのウイルス組込みの基質である。
【0054】
用語「作動可能に連結された」は、1つの核酸分子の機能が他の核酸分子による影響を受けるような、単一核酸断片上の2つまたはそれより多くの核酸分子の会合を指す。例えば、プロモーターとコード配列は、プロモーターが、そのコード配列の発現に影響を与えることができる(すなわち、コード配列が、プロモーターの転写制御下にある)場合、作動可能に連結されている。「連結されていない」は、会合している遺伝子エレメントが、互いに密接に会合しておらず、1つの遺伝子エレメントの機能が他の遺伝子エレメントに影響を与えないことを意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、好適な宿主において核酸分子の発現を生じさせることができる好適な制御配列に作動可能に連結されている核酸分子を含有するDNA構築物を指す。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、そのような転写を制御するための必要に応じたオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列が含まれる。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ウイルス、または単に潜在的ゲノム挿入物であり得る。好適な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムから独立して複製および機能することができ、または一部の場合には、自体を宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。本明細書では、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」および「ベクター」は、同義で使用されることが多い。
【0056】
用語「発現」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドが、遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいて産生されるプロセスを指す。このプロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0057】
核酸分子を細胞に挿入する文脈での用語「導入される/された」は、「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」を意味し、核酸分子を細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドまたはミトコンドリアDNA)に組み込むことができる、自律レプリコンに変換することができる、または(例えば、トランスフェクトされたmRNAを)一過性に発現することができる、真核または原核細胞への核酸分子の組込みへの言及を含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、「異種」核酸分子、構築物または配列は、宿主細胞にとってネイティブではないが、宿主細胞からの核酸分子または核酸分子の部分と相同であり得る、核酸分子または核酸分子の部分を指す。異種核酸分子、構築物または配列の供給源は、異なる属または種からであり得る。ある特定の実施形態では、異種核酸分子は、宿主細胞または宿主ゲノムに、例えば、コンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションなどにより付加され(すなわち、内在性でもネイティブでもない)、付加された分子は、宿主ゲノムに組み込まれることもあり、または染色体外遺伝物質として(例えば、プラスミド形態もしくは他の形態の自己複製ベクターとして)存在することもあり、複数のコピーで存在することもある。加えて、「異種」は、宿主細胞が相同のタンパク質または活性をコードする場合であっても、宿主細胞に導入された異種ポリヌクレオチドによりコードされている非ネイティブの酵素、タンパク質または他の活性を指す。
【0059】
本明細書に記載されるように、1つより多くの異種核酸分子を、別々の核酸分子として、複数の個々に制御された遺伝子として、ポリシストロニック核酸分子として、融合タンパク質をコードする単一の核酸分子として、またはそれらの任意の組合せとして、宿主細胞に導入することができる。例えば、本明細書において開示されるように、宿主細胞を、BRAF
V600E抗原ペプチドに特異的な所望の結合タンパク質(例えば、TCRαおよびTCRβ)をコードする2つまたはそれより多くの異種核酸分子を発現するように、改変することができる。2つまたはそれより多くの異種核酸分子が宿主細胞に導入される場合、これら2つまたはそれより多くの異種核酸分子が、単一の核酸分子として(例えば、単一のベクターで)導入されることもあり、別々のベクターで宿主染色体の単一の部位もしくは複数の部位に組み込まれることもあり、またはそれらの任意の組合せであることもあることは理解される。言及された異種核酸分子またはタンパク質活性の数は、コードする核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指し、宿主細胞に導入される別々の核酸分子の数を指さない。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「内在性」または「ネイティブ」は、宿主細胞内に通常は存在する遺伝子、タンパク質または活性を指す。さらに、親遺伝子、タンパク質または活性と比較して変異、過剰発現、シャッフル、重複または別様に変更された遺伝子、タンパク質または活性は、それでもやはり、その特定の宿主細胞にとって内在性またはネイティブであると見なされる。例えば、第1の遺伝子からの内在性対照配列(例えば、プロモーター、翻訳減弱配列)を使用して、第2のネイティブ遺伝子または核酸分子の発現を変更または調節することができ、この第2のネイティブ遺伝子または核酸分子の発現または調節は、親細胞における通常の発現または調節とは異なる。
【0061】
用語「相同(の)」または「相同体」は、宿主細胞、種もしくは株に見られる、または宿主細胞、種もしくは株から得られる、分子または活性を指す。例えば、異種ポリヌクレオチドは、ネイティブ宿主細胞遺伝子と相同であることがあり、変更された発現レベル、異なる配列、変更された活性、またはそれらの任意の組合せを必要に応じて有することがある。
【0062】
「配列同一性」は、本明細書で使用する場合、配列のアラインメントを行い、必要な場合、最大の配列同一性パーセントを達成するようにギャップを導入した後の、別の参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である1配列中のアミノ酸残基の百分率であって、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と見なさない百分率を指す。配列同一性百分率値は、パラメーターをデフォルト値に設定して、Altschul et al. (1997) "Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs", Nucleic Acids Res. 25:3389-3402により定義されたようにNCBI BLAST2.0ソフトウェアを使用して、生成することができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「造血前駆細胞」は、造血幹細胞または胎児組織に由来し得る細胞であって、成熟細胞型(例えば、免疫系細胞)へとさらに分化することができる細胞である。例示的な造血前駆細胞としては、CD24
LoLin
−CD117
+表現型を有するもの、または胸腺に見られるもの(前駆胸腺細胞と呼ばれる)が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「宿主」は、目的のポリペプチド(例えば、抗BRAF
V600ETCR)を産生するために異種核酸分子での遺伝子修飾の標的とされる細胞(例えば、T細胞)または微生物を指す。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、例えば異種タンパク質の生合成に関係するまたは関係しない所望の特性を付与する他の遺伝子修飾(例えば、検出可能なマーカーの組み入れ;内在性TCRの欠失、変更もしくは短縮化;または共刺激因子発現の増加)を、必要に応じて、既に有することもあり、または含むように修飾されることもある。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、BRAF
V600E抗原ペプチドに特異的なTCRα鎖をコードする異種核酸分子を形質導入したヒト造血前駆細胞である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「過剰増殖性障害」は、正常または非罹患細胞と比較して過剰な成長または増殖を指す。例示的な過剰増殖性障害としては、腫瘍、がん、新生物組織、癌、肉腫、悪性細胞、前悪性細胞、および非新生物性または非悪性過剰増殖性障害(例えば、腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、血管腫、線維症、再狭窄、ならびに自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、炎症性腸疾患など)が挙げられる。
BRAF
V600Eペプチド:HLA複合体に特異的な結合タンパク質
【0066】
BRAF(B−RAF1、BRAF1、NS7、RAFB1、B−Raf、B−Raf癌原遺伝子、およびセリン/トレオニンキナーゼとしても公知)は、BRAF遺伝子によりコードされる766アミノ酸タンパク質を指す。ヒト野生型BRAFの転写物配列は、NCBI Reference識別子NM_004333.4(配列番号78)に示されており、タンパク質配列は、NCBI Reference識別子NP_004324.2(配列番号36)に示されている。BRAFは、成長シグナル伝達タンパク質キナーゼのRafキナーゼファミリーのメンバーであり、細胞分裂、分化および分泌に影響を与えるMAPキナーゼ/ERKシグナル伝達経路の調節に関与する。構造に関しては、BRAFは、Rafキナーゼに特有の3つの保存ドメインで構成されている:Ras−GTP結合自己調節ドメイン;セリンリッチヒンジ領域;およびタンパク質基質上のコンセンサス配列をリン酸化する触媒性キナーゼドメイン(それぞれ、CR1、CR2およびCR3)。活性B−Rafは、ダイマーを形成する。
【0067】
V600E変異を含む変異形態のBRAFキナーゼ(BRAF
V600E)は、黒色腫症例の40%、結腸直腸がん症例の10%、および非小細胞肺がん症例の1%を含む、非常に多くの新生物性状態に存在する発癌性駆動因子であり、腫瘍細胞の成長および生存を促進する構成的シグナル伝達をもたらす。小分子BRAF阻害剤は、黒色腫にはある程度の有効性があるが、代替シグナル伝達経路の補充により、BRAF
V600Eタンパク質の発現を損なうことなく耐性が発生する。Shi et al., Cancer Disc.4(1):80 (2014)を参照されたい。
【0068】
ある特定の態様では、本開示は、(a)配列番号29〜32のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列、または最大で5つのアミノ酸置換、挿入および/もしくは欠失を有する配列番号29〜32のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列を有する、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメインと、TCRβ鎖可変(Vβ)ドメインとを含む結合タンパク質;(b)Vαドメインと、配列番号33〜35のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列、または最大で5つのアミノ酸置換、挿入および/もしくは欠失を有する配列番号33〜35のいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列を有する、Vβドメインとを含む結合タンパク質;または(c)(a)のVαドメインと(b)のVβドメインとを含む結合タンパク質であって、BRAF
V600E変異を含有するBRAFペプチドを含む細胞表面のHLA複合体と特異的に結合することができ、BRAF
V600E変異を含有しないBRAFペプチドを含む細胞表面のHLA複合体には結合しない、結合タンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、HLA複合体は、HLA−DQを含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、(a)Vαドメインは、配列番号29のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号33のCDR3アミノ酸配列を含むか;(b)Vαドメインは、配列番号30のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号34のCDR3アミノ酸配列を含むか;(c)Vαドメインは、配列番号31のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号34のCDR3アミノ酸配列を含むか;(d)Vαドメインは、配列番号32のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号35のCDR3アミノ酸配列を含むか;(e)Vαドメインは、配列番号29のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号34のCDR3アミノ酸配列を含むか;(f)Vαドメインは、配列番号29のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号35のCDR3アミノ酸配列を含むか;(g)Vαドメインは、配列番号30のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号33のCDR3アミノ酸配列を含むか;(h)Vαドメインは、配列番号30のCDR3アミノ酸を含み、Vβドメインは、配列番号35のCDR3アミノ酸配列を含むか;(i)Vαドメインは、配列番号31のCDR3アミノ酸を含み、Vβドメインは、配列番号33のCDR3アミノ酸配列を含むか;(j)Vαドメインは、配列番号31のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号35のCDR3アミノ酸配列を含むか;(k)Vαドメインは、配列番号32のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号33のCDR3アミノ酸配列を含むか;または(l)Vαドメインは、配列番号32のCDR3アミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号34のCDR3アミノ酸配列を含む。
【0070】
BRAF
V600Eペプチド:HLA複合体などの、ペプチド−MHC複合体は、TCRにより認識され、TCRによりVαおよびVβドメインを介して結合される。リンパ球発生中に、Vαエクソンは、異なる可変および連結遺伝子セグメント(V−J)からアセンブリされ、Vβエクソンは、異なる可変、多様性および連結遺伝子セグメント(V−D−J)からアセンブリされる。TCRα染色体遺伝子座は、70〜80の可変遺伝子セグメントおよび61の連結遺伝子セグメントを有する。TCRβ染色体遺伝子座は、52の可変遺伝子セグメント、および単一の多様性遺伝子セグメントを各々が含有する2つの別々のクラスターを、6または7つの連結遺伝子セグメントとともに有する。機能性VαおよびVβ遺伝子エクソンは、Vαについては可変遺伝子セグメントと連結遺伝子セグメントの組換えにより生成され、Vβについては可変遺伝子セグメントと多様性遺伝子セグメントおよび連結遺伝子セグメントの組換えにより生成される。
【0071】
VαおよびVβドメイン各々は、ペプチド−MHC複合体と接触する相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変ループを含む。CDR1およびCDR2は、可変遺伝子セグメント内にコードされるが、CDR3は、Vαについては可変および連結セグメントにわたる領域、またはVβについては可変、多様性および連結セグメントにわたる領域によりコードされる。CDR1およびCDR2と比較して、CDR3は、組換えプロセス中のヌクレオチドの付加および損失のため、多様性が有意に大きい。
【0072】
TCR可変ドメイン配列を番号付けスキーム(Kabat、Chothia、Enhanced Chothia、およびAho)に合わせてアラインメントすることができ、これにより、ANARCIソフトウェアツール(2016, Bioinformatics 15:298-300)を使用する等価な残基位置へのアノテーションの付与および異なる分子の比較が可能になる。番号付けスキームにより、TCR可変ドメイン内のフレームワーク領域およびCDRの標準化された描写が得られる。
【0073】
したがって、CDR1およびCDR2配列を対応する可変遺伝子セグメント(例えば、TCRBV28−01、TCRAV21−01、TCRAV26−01、TCRAV12−02アレル)から推定することができる。ある特定の実施形態では、(a)Vα CDR3アミノ酸配列は、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、配列番号11に示されるポリヌクレオチド配列によりコードされる、CDR1アミノ酸配列およびCDR2アミノ酸配列をさらに含むか、(b)Vα CDR3アミノ酸配列は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、配列番号12に示されるポリヌクレオチド配列によりコードされる、CDR1アミノ酸配列およびCDR2アミノ酸配列をさらに含むか、(c)Vα CDR3アミノ酸配列は、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、配列番号13に示されるポリヌクレオチド配列によりコードされる、CDR1アミノ酸配列およびCDR2アミノ酸配列をさらに含むか、または(d)Vα CDR3アミノ酸配列は、配列番号32に示されるアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、配列番号13に示されるポリヌクレオチド配列によりコードされる、CDR1アミノ酸配列およびCDR2アミノ酸配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、Vβ CDR3アミノ酸配列は、配列番号33〜35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、Vβドメインは、配列番号8に示されるポリヌクレオチド配列によりコードされる、CDR1アミノ酸配列およびCDR2アミノ酸配列をさらに含む。
【0074】
TCR VαおよびVβドメインの結合対を同定する方法は、例えば、PCT特許公開番号WO2016/161273;Redmond et al., 2016, Genome Med.8: 80; Munson et al., 2016, Proc. Natl.Acad.Sci.113:8272-7; Kim et al., 2012, PLoS ONE 7:e37338に記載されている方法を含む(これらの参考文献からの方法の各々は、その全体が参照により組み込まれる)。したがって、本明細書に記載されるBRAF
V600E特異的Vβドメイン(例えば、配列番号33〜35のいずれか1つに示されるようなCDR3を含むVβドメイン)のためのVαドメイン、または逆にVαドメインのためのVβドメインを、同定することができる。
【0075】
本明細書に記載されるBRAF
V600E特異的結合タンパク質は、天然に存在する結合タンパク質(例えば、TCR)と比べて1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入を有し得る。アミノ酸の保存的置換は公知であり、自然に起こることもあり、または結合タンパク質もしくはTCRが組換えにより産生されるときに導入されることもある。アミノ酸置換、欠失および挿入は、変異誘発法を使用してタンパク質に導入することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, 2001を参照されたい)。オリゴヌクレオチド指向性部位特異的(またはセグメント特異的)変異誘発手順を利用して、所望される置換、欠失または挿入に応じて変化した特定のコドンを有する変更されたポリヌクレオチドを得てもよい。あるいは、ランダムまたは飽和変異誘発技法、例えば、アラニンスキャニング変異誘発、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応変異誘発、およびオリゴヌクレオチド指向性変異誘発を使用して、免疫原ポリペプチドバリアントを調製することができる(例えば、Sambrook et al.、上掲を参照されたい)。
【0076】
当技術分野において公知の様々な基準は、ペプチドまたはポリペプチド中の特定の位置において置換されているアミノ酸が保存的である(または類似している)かどうかを示す。例えば、類似のアミノ酸または保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられることである。類似のアミノ酸は、次のカテゴリーに含まれ得る:塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、ヒスチジン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)。分類することがより困難であると考えられるプロリンは、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、ロイシン、バリン、イソロイシン、およびアラニン)と特性を共有する。ある特定の状況では、グルタミンでのグルタミン酸の置換、またはアスパラギンでのアスパラギン酸の置換は、グルタミンおよびアスパラギンがそれぞれグルタミン酸およびアスパラギン酸のアミド誘導体であるという点で類似の置換と見なしてよい。当技術分野において理解されているように、2つのポリペプチド間の「類似性」は、ポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存アミノ酸代用物を第2のポリペプチドの配列と(例えば、GENEWORKS、Align、BLASTアルゴリズム、または本明細書に記載される、および当技術分野において実施されている、他のアルゴリズムを使用して)比較することにより、決定される。
【0077】
したがって、ある特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質は、配列番号1〜4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または少なくとも約99.9%)同一であるVαドメインを含み、配列番号5〜7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または少なくとも約99.9%)同一であるVβドメインを含み、ただし、(a)CDRの少なくとも3または4つが変異を有さず、(b)変異を有するCDRは、アミノ酸置換、挿入、欠失またはそれらの組合せを最大で3つしか有さない。ある特定の実施形態では、Vαドメインは、配列番号1〜4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号1〜4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる。ある特定の実施形態では、Vβドメインは、配列番号5〜7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号5〜7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる。
【0078】
特定の実施形態では、Vαドメインは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる。
【0079】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる。
【0080】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号7に示されるアミノ酸配列からなる。
【0081】
特定の実施形態では、Vαドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる。
【0082】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる。
【0083】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号7に示されるアミノ酸配列からなる。
【0084】
特定の実施形態では、Vαドメインは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる。
【0085】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる。
【0086】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号7に示されるアミノ酸配列からなる。
【0087】
特定の実施形態では、Vαドメインは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる。
【0088】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる。
【0089】
他の実施形態では、Vαドメインは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、Vβドメインは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号7に示されるアミノ酸配列からなる。
【0090】
さらなる実施形態では、BRAF
V600E特異的結合タンパク質は、TCR、TCRの抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体である。「キメラ抗原受容体」(CARとも呼ばれる)は、膜貫通ドメインに連結されている抗原結合ドメイン(例えば、免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン様分子から得られるもしくは由来する抗原結合ドメイン、例えば、がん抗原に特異的な抗体もしくはTCRに由来するscFv、またはNK細胞からのキラー免疫受容体から得られるまたは由来する抗原結合ドメイン)と1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインとを含む(必要に応じて共刺激ドメイン(複数可)を含有する)融合タンパク質である(例えば、Sadelain et al., Cancer Discov., 3(4): 388-398, 2013を参照されたく、Harris and Kranz, Trends Pharmacol.Sci., 37(3): 220-230, 2016; Stone et al., Cancer Immunol.Immunother., 63(11):1163-1176,2014もまた参照されたい)。ある特定の実施形態では、結合タンパク質は、BRAF
V600E特異的TCR結合ドメインを含むCARを含む(例えば、Walseng et al., Scientific Reports 7:10713, 2017を参照されたい;この参考文献のTCR CAR構築物および方法は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)。CARを作製する方法は、例えば、米国特許第6,410,319号、米国特許第7,446,191号、米国特許出願公開第2010/065818号、米国特許第8,822,647号、PCT公開番号WO2014/031687、米国特許第7,514,537号、およびBrentjens et al., Clin.Cancer Res.13:5426, 2007に記載されている。
【0091】
ある特定の実施形態では、TCRの抗原結合断片は、TCR VαおよびVβドメインのTCR両方を含むが単一のTCR定常ドメイン(CαまたはCβ)しか含まない、単鎖TCR(scTCR)を含む。ある特定の実施形態では、TCRの抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体は、キメラ(例えば、1つより多くのドナーもしくは複数の種からのアミノ酸残基もしくはモチーフを含む)、ヒト化(例えば、ヒトにおける免疫原性のリスクを低下させるように変更もしくは置換されている非ヒト生物からの残基を含む)、またはヒトである。
【0092】
本開示による結合タンパク質、例えばTCRは、例えば、Vαドメイン、Vβドメインまたは両方のC末端に連結されている、TCR定常ドメインをさらに含むこともある。TCRβ鎖定常ドメインは、TRBC1遺伝子またはTRBC2遺伝子によりコードされ得、TCRα鎖は、TRAC遺伝子によりコードされ得る。ある特定の実施形態では、TCRは、配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または少なくとも約99.9%)の配列同一性を有するα鎖定常(Cα)ドメインを含む。特定の実施形態では、Cαドメインは、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、TCRは、配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または少なくとも約99.9%)の配列同一性を有するβ鎖(Cβ)定常ドメインを含む。特定の実施形態では、Cβドメインは、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む。
【0093】
ある特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号55〜58のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むα鎖(VαドメインおよびCαドメインから構成される)を含む。ある特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号59〜61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むβ鎖(VβドメインおよびCβドメインから構成される)を含む。
【0094】
組換えにより産生された可溶性結合タンパク質(例えば、TCR)を単離および精製するのに有用な方法は、例として、組換え可溶性TCRを培養培地に分泌する好適な宿主細胞/ベクター系から上清を得るステップ、および次いで市販のフィルターを使用して培地を濃縮するステップを含み得る。濃縮後、濃縮物を単一の好適な精製マトリックスに、または一連の好適なマトリックス、例えば、アフィニティーマトリックスもしくはイオン交換樹脂に、適用することができる。1つまたは複数の逆相HPLCステップを利用して、組換えポリペプチドをさらに精製することができる。これらの精製方法は、免疫原をその天然環境から単離するときに利用することもできる。本明細書に記載される単離された/組換え可溶性TCRの1つまたは複数についての大規模産生方法は、好適な培養条件を維持するためにモニタリングおよび制御される、バッチ細胞培養を含む。本明細書に記載される、当技術分野で公知である、ならびに自国および外国の規制機関の法律およびガイドラインと適合する方法に従って、可溶性TCRの精製を行うことができる。
【0095】
ある特定の実施形態では、BRAF
V600Eペプチド:HLA複合体に特異的な結合タンパク質(例えば、TCR)をコードする核酸分子は、養子移入治療において使用するための宿主細胞(例えば、T細胞)へのトランスフェクション/形質導入に使用される。TCRシークエンシングの進歩が記載されており(例えば、Robins et al., Blood 114:4099, 2009; Robins et al., Sci.Translat.Med.2:47ra64, 2010; Robins et al., (Sept. 10) J. Imm.Meth.Epub ahead of print, 2011; Warren et al., Genome Res.21:790, 2011)、本開示による実施形態を実施する過程で利用され得る。同様に、T細胞に所望の核酸をトランスフェクト/形質導入する方法は、記載されており(例えば、米国特許出願公開第2004/0087025号)、所望の抗原特異性のT細胞を使用する養子移入手順も記載されており(例えば、Schmitt et al., Hum. Gen. 20:1240, 2009; Dossett et al., Mol. Ther. 17:742, 2009; Till et al., Blood 112:2261, 2008; Wang et al., Hum. Gene Ther. 18:712, 2007; Kuball et al., Blood 109:2331, 2007;米国特許出願公開第2011/0243972号;米国特許出願公開第2011/0189141号;Leen et al., Ann. Rev. Immunol. 25:243, 2007)、したがって、今般開示される実施形態へのこれらの方法論の適用が、HLA受容体と複合体化されたBRAF
V600Eペプチド抗原に特異的なTCRに関するものを含む本明細書における教示に基づいて、企図される。
【0096】
本明細書に記載のBRAF
V600E特異的結合タンパク質またはドメインは、T細胞結合、活性化または誘導の決定を含み、抗原特異的であるT細胞応答の決定も含む、T細胞活性をアッセイするための当技術分野において一般に認められている多数の方法論のいずれかに従って機能的に特徴付けることができる。例は、T細胞増殖、T細胞サイトカイン放出、抗原特異的T細胞刺激、MHC拘束T細胞刺激、CTL活性(例えば、前もって負荷された標的細胞からの
51Cr放出を検出することによる)、T細胞表現型マーカー発現の変化、およびT細胞機能の他の尺度の決定を含む。これらおよび類似のアッセイを行うための手順は、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques, 1998)において見つけることができる。Current Protocols in Immunology; Weir, Handbook of Experimental Immunology, Blackwell Scientific, Boston, MA (1986); Mishell and Shigii (eds.)Selected Methods in Cellular Immunology, Freeman Publishing, San Francisco, CA (1979); Green and Reed, Science 281:1309 (1998)およびこれらに引用されている参考文献も参照されたい。
【0097】
「MHC−ペプチドテトラマー染色」は、少なくとも1つの抗原(例えば、BRAF
V600E)と同族である(例えば、同一であるまたは関連する)アミノ酸配列を有する同一のペプチドを各々が含むMHC分子のテトラマーであって、複合体が、同族抗原に特異的なT細胞受容体に結合することができる、テトラマーを特徴とする、抗原特異的T細胞を検出するために使用されるアッセイを指す。MHC分子の各々にビオチン分子のタグを付けることができる。ビオチン化MHC/ペプチドは、蛍光標識することができるストレプトアビジンの付加により、テトラマーにされる。蛍光標識を介してテトラマーをフローサイトメトリーにより検出することができる。ある特定の実施形態では、MHC−ペプチドテトラマーアッセイは、本開示の増強された親和性のTCRを検出または選択するために使用される。
【0098】
サイトカインレベルは、例えば、ELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン染色およびフローサイトメトリー、ならびにそれらの組合せ(例えば、細胞内サイトカイン染色とフローサイトメトリー)を含む、本明細書に記載されるおよび当技術分野において実施されている方法に従って、決定することができる。免疫応答の抗原特異的惹起または刺激の結果として生じる免疫細胞増殖およびクローン拡大は、末梢血液細胞またはリンパ節からの細胞の試料中の循環リンパ球などのリンパ球を単離し、前記細胞を抗原で刺激し、サイトカイン産生、細胞増殖および/または細胞生存率を、例えば、トリチウム化チミジンの取り込みまたは非放射性アッセイ、例えばMTTアッセイなどにより、測定することによって、決定することができる。Th1免疫応答とTh2免疫応答の間のバランスに対する本明細書に記載される免疫原の効果は、例えば、Th1サイトカイン、例えば、IFN−γ、IL−12、IL−2およびTNF−β、ならびに2型サイトカイン、例えば、IL−4、IL−5、IL−9、IL−10およびIL−13、のレベルを決定することによって、検査することができる。
【0099】
さらなる態様では、本開示は、本開示による結合タンパク質と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む、組成物を提供する。薬学的に許容される賦形剤は、ヒトまたは他の非ヒト哺乳動物対象への投与に好適である、本明細書中でより詳細に記載される生体適合性ビヒクル、例えば、生理食塩水である。
【0100】
免疫細胞(例えば、樹状細胞、食細胞およびB細胞)による抗原提示は、一部は、細胞上に存在するHLA複合体により決定される。理論により拘束されることを望まないが、異なるHLAアレルによりコードされるHLAタンパク質は、特定の抗原ペプチドを提示するそれらの能力および免疫細胞タンパク質(例えば、TCR)と相互作用するそれらの能力が異なり得ると考えられる。例えば、所与の抗原ペプチドは、HLA−DQ複合体により提示されることがあるが、HLA−DR複合体により提示されないことがあり、または逆に、HLA−DQ複合体により提示されないことがあるが、HLA−DR複合体により提示されることがある。ある特定の実施形態では、本開示による結合タンパク質は、HLA−DQと複合体化したBRAFV
600Eペプチドを認識することができる。ある特定の実施形態では、HLA複合体は、HLA−DQB1*0301、*0302または*0303を含む。ある特定の実施形態では、HLA複合体は、HLA−DQB1*0302を含む。さらなる実施形態では、HLA複合体は、HLA−DQA1*03を含む。
【0101】
本開示による結合タンパク質が標的とするペプチド抗原は、サイズに関しても、例えば、抗原を提示するHLA分子のタイプによって異なり得る。一般に、HLAクラスI複合体は、約8〜10アミノ酸長であるペプチドを提示し、その一方でHLAクラスII複合体は、約15〜24アミノ酸長であるペプチドを提示するが、これらのペプチドは、これらの一般的な長さより短いこともあり、または長いこともある。したがって、ある特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質が特異的に結合するBRAF
V600Eペプチドは、約7〜約27個のアミノ酸、約10〜約25個のアミノ酸、または約12〜約20個のアミノ酸、または約15〜約19個のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、BRAF
V600Eペプチドは、配列番号38または39に示されるアミノ酸配列を含む。
BRAF
V600E特異的結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよび関連ベクター
【0102】
なおさらなる態様では、本開示による結合タンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチドおよび発現ベクターが、提供される。目的のBRAF
V600Eペプチドに特異的な結合タンパク質またはTCRの遺伝子操作および産生に使用される発現ベクターの構築は、当技術分野において公知の任意の好適な分子生物学操作技法を使用することにより遂行することができる。効率的な転写および翻訳を達成するために、各組換え発現構築物中のポリヌクレオチドは、免疫原をコードするヌクレオチド配列に作動可能に(すなわち、作用的に(operatively))連結された少なくとも1つの適切な発現制御配列(調節配列とも呼ばれる)、例えば、リーダー配列および特にプロモーターを含む。
【0103】
ある特定の実施形態は、本明細書で提供される結合タンパク質、例えば、BRAF
V600Eペプチド:HLA複合体に特異的な結合タンパク質(例えば、TCRまたはCAR)をコードする、ポリヌクレオチドに関する。核酸は、任意の形態の一本鎖または二本鎖DNA、cDNAまたはRNAであり得、アンチセンスDNA、cDNAおよびRNAを含む、互いを補足する核酸のプラス鎖とマイナス鎖を含み得る。siRNA、マイクロRNA、RNA−DNAハイブリッド、リボザイム、および他の様々な天然に存在するまたは合成形態のDNAまたはRNAも含む。本開示のポリヌクレオチドが、本明細書において開示される参照ポリヌクレオチド配列と比較して異なり(すなわち、異なるヌクレオチド配列を含み)、同じアミノ酸またはポリペプチドを、例えば遺伝コードの縮重のため、なおコードすることができることは、理解される。ある特定の実施形態では、例えば、結合タンパク質もしくはその一部分、自己切断ペプチド、リンカーペプチドをコードするポリヌクレオチド;または結合タンパク質をコードする構築物は、配列番号8〜24、27、28、44〜48、62〜68、および73〜77のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドに対して少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または少なくとも約99.9%)の同一性を有することができる。
【0104】
上述の実施形態のいずれにおいても、本開示の結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、標的宿主細胞における効率的発現のためにコドン最適化される。
【0105】
ある特定の実施形態は、ベクター内に含有される本開示のポリヌクレオチドを含む。例示的なベクターは、そのポリヌクレオチドが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチド、または宿主生物において複製することができるポリヌクレオチドを含むことができる。ベクターの一部の例としては、プラスミド、ウイルスベクター、コスミドなどが挙げられる。導入される宿主細胞において自律複製が可能であり得るベクター(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)もあるが、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る、または宿主細胞への導入の際にポリヌクレオチド挿入物の組込みを促進し、それによって宿主ゲノムとともに複製し得るベクター(例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター)もある。加えて、一部のベクターは、それらが作用的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる(これらのベクターは、「発現ベクター」と呼ばれることもある)。関連実施形態に従って、1つまたは複数の薬剤(例えば、本明細書に記載の、BRAF
V600Eに特異的な結合タンパク質もしくは組換えTCRをコードするポリヌクレオチド、またはそのバリアント)が対象に共投与される場合には、各薬剤が、別々のベクターまたは同じベクターの中に存在することができ、複数のベクター(各々が異なる薬剤または同じ薬剤を含有する)を細胞もしくは細胞集団に導入することができ、または対象に投与することができることは、さらに理解される。
【0106】
ある特定の実施形態では、BRAF
V600Eペプチド:HLA複合体に特異的な結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、ベクターのある特定のエレメントに作用的に連結させることができる。例えば、ポリヌクレオチド配列であって、ポリヌクレオチド配列がライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングを生じさせる必要があるポリヌクレオチド配列を、作用的に連結させることができる。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;ならびにことによると、タンパク質分泌を増進する配列を挙げることができる。発現制御配列は、発現制御配列が、目的の遺伝子と、および目的の遺伝子を制御するようにトランスでまたは少し離れて作用する発現制御配列と近接している場合、作用的に連結されていてよい。ある特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクターまたはγ−レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターである発現ベクターに含まれている。
【0107】
ある特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターであって、前記ポリヌクレオチドが発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されている、発現ベクターが提供される。ある特定の実施形態では、ベクターは、ポリヌクレオチドを宿主細胞に送達することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫系細胞である。さらなる実施形態では、免疫系細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4−CD8−二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、CD4+T細胞である。ある特定の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである。
【0108】
本明細書中の実施形態のいずれにおいても、ベクターは、ウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはγ−レトロウイルスベクターである。
宿主細胞
【0109】
なおさらなる態様では、本開示による異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞であって、前記異種ポリヌクレオチドによりコードされた結合タンパク質をその細胞表面に発現する(すなわち、本開示による結合タンパク質を発現する)宿主細胞が、提供される。特定の実施形態では、発現ベクターは、適切な細胞、例えば、T細胞または抗原提示細胞、すなわち、その細胞表面にペプチド/MHC複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)に送達される。ある特定の実施形態では、宿主細胞(例えば、T細胞、NK細胞、またはNK−T細胞)は、CD8共受容体またはCD4共受容体を欠いており、コードされた結合タンパク質は、CD4またはCD8共受容体の非存在下でBRAF
V600E抗原:HLA複合体に結合することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫系細胞である。例えば、免疫系細胞は、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、CD4
−CD8
−二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せであり得る。一部の実施形態では、コードされた結合タンパク質は、MHCII拘束TCR結合ドメインを含み、宿主細胞(例えば、CD8
+T細胞)は、異種CD4
+共受容体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0110】
T細胞が宿主である、ある特定の実施形態では、T細胞は、ナイーブ、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せであり得る。ある特定の実施形態では、T細胞は、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、または両方である。宿主細胞に導入される発現ベクターは、例えば、リンパ系組織特異的転写調節エレメント(TRE)、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球または樹状細胞に特異的なTREも含み得る。リンパ組織に特異的なTREは、当技術分野において公知である(例えば、Thompson et al., Mol.Cell.Biol.12:1043, 1992); Todd et al., J. Exp.Med.177:1663, 1993); Penix et al., J. Exp.Med.178:1483, 1993を参照されたい)。
【0111】
宿主細胞は、ベクターをもしくは核酸の組み入れを受け入れることができる、またはタンパク質を発現することができる、任意の個々の細胞または細胞培養物を含むことができる。この用語は、遺伝的にまたは表現型的に同じであるのか異なるのかを問わず、宿主細胞の子孫も包含する。好適な宿主細胞は、ベクターに依存し得、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞および細菌細胞を含み得る。ウイルスベクターの使用、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションによる形質転換、または他の方法によって、ベクターまたは他の材料を組み入れるように、これらの細胞を誘導することができる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照されたい。
【0112】
したがって、一態様では、本開示による異種ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含む宿主細胞であって、前記異種ポリヌクレオチドによりコードされた結合タンパク質をその細胞表面に発現する宿主細胞が、提供される。ある特定の実施形態では、V
αドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である。ある特定の実施形態では、V
βドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である。
【0113】
ある特定の実施形態では、V
αドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなる。ある特定の実施形態では、V
βドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなる。
【0114】
ある特定の実施形態では、V
αドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号18〜21のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなり、V
βドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号22〜24のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなる。
【0115】
ある特定の実施形態では、V
αドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、TCRα鎖定常ドメインをコードする部分に連結されており、前記α鎖定常ドメインをコードする部分は、配列番号27に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列を含むか、または配列番号27に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列からなる。
【0116】
ある特定の実施形態では、V
βドメインをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、TCRβ鎖定常ドメインをコードする部分に連結されており、前記β鎖定常ドメインをコードする部分は、配列番号28に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列を含むか、または配列番号28に示されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一である配列からなる。
【0117】
特定の実施形態では、V
αドメインをコードするポリヌクレオチドの部分は、配列番号18を含むか、または配列番号18からなり、V
βドメインをコードする部分は、配列番号22を含むか、または配列番号22からなる。
【0118】
他の実施形態では、V
αドメインをコードするポリヌクレオチドの部分は、配列番号19を含むか、または配列番号19からなり、V
βドメインをコードする部分は、配列番号23を含むか、または配列番号23からなる。
【0119】
他の実施形態では、V
αドメインをコードするポリヌクレオチドの部分は、配列番号20を含むか、または配列番号20からなり、V
βドメインをコードする部分は、配列番号23を含むか、または配列番号23からなる。
【0120】
さらに他の実施形態では、V
αドメインをコードするポリヌクレオチドの部分は、配列番号21を含むか、または配列番号21からなり、V
βドメインをコードする部分は、配列番号24を含むか、または配列番号24からなる。
【0121】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいも、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する宿主細胞(例えば、T細胞)は、BRAF
V600E含有抗原を提示または発現する抗原提示細胞と共培養されたとき、インターフェロンを産生することができる。ある特定の実施形態では、産生されるインターフェロンは、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)を含む。一部の実施形態では、標的細胞は、BRAF
V600E含有抗原を含むかまたはBRAF
V600E含有抗原からなるペプチドまたはポリペプチドでパルスされた。一部の実施形態では、標的細胞に、BRAF
V600E含有抗原を含むかまたはBRAF
V600E含有抗原からなるポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA、cDNA、またはmRNA)がトランスフェクトされた。ある特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、抗原約0.005μg/mL〜約10μg/mLの濃度のBRAF
V600E含有抗原でパルスされた抗原提示細胞とともに培養されたとき、IFN−γを産生する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、少なくとも抗原約0.1μg/mLの濃度のBRAF
V600E含有抗原でパルスされた抗原提示細胞とともに培養されたとき、少なくとも約1,000pg/mLのIFN−γを産生する。一部の実施形態では、宿主細胞は、少なくとも抗原約0.1、0.2、0.3、0.4または0.5μg/mLの濃度のBRAF
V600E含有抗原でパルスされた抗原提示細胞とともに培養されたとき、少なくとも約1,000pg/mLのIFN−γを産生する。一部の実施形態では、宿主細胞は、抗原約0.5μg/mL〜抗原約10μg/mLの濃度のBRAF
V600E含有抗原でパルスされた抗原提示細胞とともに培養したとき、約1,000pg/mL〜約10,000pg/mLのIFN−γを産生する。一部の実施形態では、標的細胞は、B細胞を含む。さらなる実施形態では、B細胞は、HLA−DQアレルを発現する。なおさらなる実施形態では、B細胞は、B−LCL株1331のB細胞である。
【0122】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドの一部分は、自己切断ペプチドをコードし、TCRα鎖をコードする部分とTCRβ鎖をコードする部分の間に配置されている。単一ベクターによる分離可能なポリペプチドの発現に有用な自己切断ペプチドは、当技術分野において公知であり、例えば、ブタテッショウイルス−1 2A(P2A)ペプチド、ゾセア・アシグナ(Thoseaasigna)ウイルス2A(T2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチド、および口蹄疫ウイルス2A(F2A)ペプチドを含む。したがって、ある特定の実施形態では、自己切断ペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドの部分は、配列番号44〜48のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、または配列番号44〜48のいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列からなる。さらなる実施形態では、コードされた自己切断ペプチドは、配列番号49〜52のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号49〜52のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる。
【0123】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫系細胞である。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、CD4
−CD8
−二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、T細胞である。特定の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである。さらなる実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞である。
【0124】
ある特定の実施形態では、T細胞により発現される結合タンパク質またはTCRは、内在性TCRと比較して、より効率的にCD3タンパク質、CD4タンパク質または両方と会合することができる。ある特定の実施形態では、内在性TCRと比較してT細胞上での結合タンパク質またはTCRのより高い表面発現。
【0125】
上述の実施形態のいずれにおいても、BRAF
V600E特異的結合タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、PD−1、LAG−3、CTLA4、TIM3、TIGIT、HLA分子、TCR分子またはそれらの任意の成分もしくは組合せから選択されるポリペプチド産物をコードする1つまたは複数の内在性遺伝子の発現を低減または排除するように改変される免疫細胞である。理論により拘束されることを望まないが、ある特定の内因性発現された免疫細胞タンパク質は、改変された免疫宿主細胞(例えば、PD−1、LAG−3、CTLA4、TIGIT)の免疫活性を下方調節することができる;または本開示の異種結合タンパク質と、宿主細胞による発現、TCR複合体成分(例えば、CD3タンパク質)との会合について競合することができる;または本開示の異種発現された結合タンパク質(例えば、非BRAF
V600E抗原もしくは非BRAF
V600E抗原:HLA複合体と結合し、今般開示される結合タンパク質のBRAF
V600E抗原への結合に干渉し、BRAF
V600E抗原を発現する標的細胞に結合する免疫宿主細胞に干渉する、内在性TCR)の結合活性に干渉することができる;またはそれらの任意の組合せ。さらに、細胞移入治療に使用されることになるドナー免疫細胞上に発現される内在性タンパク質(例えば、免疫宿主細胞タンパク質、例えばHLA)は、同種異系レシピエントにより外来性として認識され得、その結果、同種異系レシピエントによりドナー免疫細胞が排除または抑制され得る。
【0126】
したがって、そのような内在性遺伝子またはタンパク質の発現または活性を減少または排除することで、自己または同種異系宿主環境での宿主細胞の活性、寛容および持続性を向上させることができ、細胞の(例えば、HLA型に関係なく任意のレシピエントへの)普遍的投与が可能になる。ある特定の実施形態では、改変宿主免疫細胞は、ドナー細胞(例えば、同種異系)または自己細胞である。ある特定の実施形態では、本開示の改変免疫宿主細胞は、PD−1、LAG−3、CTLA4、TIM3、TIGIT、HLA成分(例えば、α1マクログロブリン、α2マクログロブリン、α3マクログロブリン、β1ミクログロブリンもしくはβ2ミクログロブリンをコードする遺伝子)、またはTCR成分(例えば、TCR可変領域もしくはTCR定常領域をコードする遺伝子)をコードする遺伝子のうちの1つまたは複数についての染色体遺伝子ノックアウトを含む(例えば、Torikai et al., Nature Sci.Rep.6:21757 (2016); Torikai et al., Blood 119(24):5697 (2012);およびTorikai et al., Blood 122(8):1341 (2013)を参照されたく、これらの参考文献の遺伝子編集技法、組成物および養子細胞治療は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる;例えば、配列番号142〜149)。本明細書で使用される場合、用語「染色体遺伝子ノックアウト」は、機能的に活性な内在性ポリペプチド産物の宿主細胞による産生を妨げる、宿主細胞の遺伝子変化を指す。染色体遺伝子ノックアウトの結果として生じる変化は、例えば、導入ナンセンス変異(未成熟終止コドンの形成を含む)、ミスセンス変異、遺伝子欠失および鎖切断、ならびに宿主細胞における内在性遺伝子発現を阻害する阻害性核酸分子の異種発現を含み得る。
【0127】
ある特定の実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトまたは遺伝子ノックインは、宿主細胞の染色体編集によってなされる。染色体編集は、例えばエンドヌクレアーゼを使用して、行うことができる。本明細書で使用される場合、「エンドヌクレアーゼ」は、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合の切断を触媒することができる酵素を指す。ある特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、標的遺伝子を切断することによって標的遺伝子を不活性化または「ノックアウト」することができる。エンドヌクレアーゼは、天然に存在するエンドヌクレアーゼ、組換えエンドヌクレアーゼ、遺伝子修飾エンドヌクレアーゼまたは融合エンドヌクレアーゼであり得る。エンドヌクレアーゼにより引き起こされる核酸鎖切断は、一般に、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)の明確に異なる機序によって修復される。相同組換え中に、ドナー核酸分子は、ドナー遺伝子「ノックイン」に、標的遺伝子「ノックアウト」に、および必要に応じて、ドナー遺伝子ノックインまたは標的遺伝子ノックアウト事象によって標的遺伝子を不活性化するために、使用され得る。NHEJは、DNA配列の切断部位での変化、例えば、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失または付加をもたらすことが多い、エラープローン修復プロセスである。NHEJは、標的遺伝子を「ノックアウトする」ために使用されることもある。エンドヌクレアーゼの例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、CRISPR−Casヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、およびメガTALが挙げられる。
【0128】
本明細書で使用される場合、「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」(ZFN)は、Foklエンドヌクレアーゼなどの、非特異的DNA切断ドメインに融合されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む融合タンパク質を指す。約30アミノ酸の各ジンクフィンガーモチーフがDNAの約3塩基対と結合し、ある特定の残基におけるアミノ酸を変化させてトリプレット配列特異性を変更することができる(例えば、Desjarlais et al., Proc.Natl.Acad.Sci.90:2256-2260, 1993; Wolfe et al., J. Mol.Biol.285:1917-1934, 1999を参照されたい)。複数のジンクフィンガーモチーフをタンデムに連結させて、所望のDNA配列、例えば約9〜約18塩基対の範囲の長さを有する領域、に対する結合特異性を生じさせることができる。背景として、ZFNは、ゲノム内での部位特異的DNA二本鎖切断(DSB)の形成を触媒することによりゲノム編集を媒介し、DSBの部位にゲノムに相同な隣接配列を含む導入遺伝子の標的組込みが相同組換え修復により容易になる。あるいは、ZFNにより生じたDSBは、切断部位のヌクレオチドの挿入または欠失を生じさせる結果となるエラープローン細胞修復経路である非相同末端結合(NHEJ)による修復を介して、標的遺伝子のノックアウトをもたらし得る。ある特定の実施形態では、遺伝子ノックアウトは、ZFN分子を使用してなされる挿入、欠失、変異またはそれらの組合せを含む。
【0129】
本明細書で使用される場合、「転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ」(TALEN)は、FokIエンドヌクレアーゼなどの、TALE DNA結合ドメインとDNA切断ドメインとを含む融合タンパク質を指す。「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、12番目および13番目のアミノ酸が異なる高度に保存された33〜35アミノ酸配列を各々が一般に有する、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/ユニットで構成されている。TALE反復ドメインは、TALEの標的DNA配列への結合に関与する。反復可変二残基(RVD)と呼ばれる、異なるアミノ酸残基は、特異的ヌクレオチド認識と相関する。これらのTALEのDNA認識についての天然(標準)コードは、TALEの12および13位のHD(ヒスチジン−アスパラギン酸)配列が、シトシン(C)へのTALE結合をもたらし、NG(アスパラギン−グリシン)がTヌクレオチドと、NI(アスパラギン−イソロイシン)がAと結合し、NN(アスパラギン−アスパラギン)がGまたはAヌクレオチドと結合し、NG(アスパラギン−グリシン)がTヌクレオチドと結合するように、決定された。非標準(非定型)RVDもまた公知である(例えば、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照されたく、この非定型RVDは、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)。TALENを使用して、T細胞のゲノム内での部位特異的二本鎖切断(DSB)を指示することができる。非相同末端結合(NHEJ)は、アニーリングのための配列重複がほとんどまたは全くない、二本鎖切断の両側からのDNAをライゲーションし、それによって、遺伝子発現をノックアウトする誤りを導入する。あるいは、相同組換え修復は、相同隣接配列が導入遺伝子に存在することを条件に、その導入遺伝子をDSBの部位に導入することができる。ある特定の実施形態では、遺伝子ノックアウトは、TALEN分子を使用してなされる挿入、欠失、変異、またはそれらの組合せを含む。
【0130】
本明細書で使用される場合、「クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/Cas」(CRISPR/Cas)ヌクレアーゼシステムは、塩基対合相補性によってゲノム内の標的部位(プロトスペーサーとして公知)を認識するために、そしてその後、短い保存プロトスペーサー関連モチーフ(PAM)が相補標的配列の3’の直後に続く場合にはDNAを切断するために、CRISPR RNA(crRNA)誘導型Casヌクレアーゼを利用するシステムを指す。CRISPR/Casシステムは、Casヌクレアーゼの配列および構造に基づいて3つの型(すなわち、I型、II型およびIII型)に分類される。I型およびIII型のcrRNA誘導型監視複合体は、複数のCasサブユニットを必要とする。最もよく研究されているII型システムは、少なくとも次の3つの成分を含む:RNA誘導型Cas9ヌクレアーゼ、crRNA、およびトランス作用性crRNA(tracrRNA)。tracrRNAは、二重鎖形成領域を含む。crRNAおよびtracrRNAは、Cas9ヌクレアーゼと相互作用することおよびcrRNA上のスペーサーとPAMから上流の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン・クリック塩基対合によって標的DNA上の特定の部位にCas9/crRNA:tracrRNA複合体を誘導することができる、二重鎖を形成する。Cas9ヌクレアーゼは、crRNAスペーサーにより規定される領域内で二本鎖切断を行う。NHEJによる修復は、標的遺伝子座の発現を破壊する挿入および/または欠失をもたらす。あるいは、相同隣接配列を伴う導入遺伝子を相同組換え修復によってDSBの部位に導入することができる。crRNAおよびtracrRNAを操作して一本鎖ガイドRNA(sgRNAまたはgRNA)にすることができる(例えば、Jinek et al., Science 337:816-21, 2012を参照されたい)。さらに、標的部位に相補的なガイドRNAの領域を、所望の配列を標的とするように変更またはプログラムすることができる(Xie et al., PLOS One 9:e100448, 2014;米国特許出願公開第2014/0068797号、米国特許出願公開第2014/0186843号:米国特許第8,697,359号、およびPCT公開番号WO2015/071474;これらの各々は、参照により組み込まれる)。ある特定の実施形態では、遺伝子ノックアウトは挿入、欠失、変異、またはそれらの組合せを含み、それは、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムを使用してなされる。
【0131】
例示的なgRNA配列、およびそれらを使用して、免疫細胞タンパク質をコードする内在性遺伝子をノックアウトする方法は、Ren et al., Clin.Cancer Res.23(9):2255-2266 (2017)に記載されるものを含み、この文献のgRNA、Cas9 DNA、ベクターおよび遺伝子ノックアウト技法は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
一部の実施形態では、遺伝子ノックアウトは、TCRα鎖定常領域遺伝子座(Cα)、TCRβ鎖定常領域遺伝子座(Cβ)または両方のCRISPR媒介遺伝子ノックアウトを含む。ある特定の実施形態では、TCR Cα遺伝子座を標的とするgRNA配列は、ヌクレオチド配列AGAGTCTCTCAGCTGGTACA(配列番号136)を含む。ある特定の実施形態では、TCR Cα遺伝子座を標的とするgRNA配列は、ヌクレオチド配列TGTGCTAGACATGAGGTCTA(配列番号137)を含む。ある特定の実施形態では、TCR Cβ遺伝子座を標的とするgRNA配列は、ヌクレオチド配列GCAGTATCTGGAGTCATTGA(配列番号138)を含む。ある特定の実施形態では、TCR Cβ遺伝子座を標的とするgRNA配列は、ヌクレオチド配列GGAGAATGACGAGTGGACCC(配列番号139)を含む。一部の実施形態では、遺伝子ノックアウトは、ヒトβ2M遺伝子座のCRISPR媒介遺伝子ノックアウトを含む。ある特定の実施形態では、ヒトβ2Mを標的とするgRNA配列は、ヌクレオチド配列CGCGAGCACAGCTAAGGCCA(配列番号140)を含む。一部の実施形態では、遺伝子ノックアウトは、PD−1遺伝子座のCRISPR媒介遺伝子ノックアウトを含む。ある特定の実施形態では、PD−1を標的とするgRNA配列は、ヌクレオチド配列GGCCAGGATGGTTCTTAGGT(配列番号141)を含む。
【0133】
本明細書で使用される場合、「ホーミングエンドヌクレアーゼ」とも呼ばれる「メガヌクレアーゼ」は、大きい認識部位(約12〜約40塩基対の二本鎖DNA配列)を特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼを指す。メガヌクレアーゼは、配列および構造モチーフに基づいて次の5つのファミリーに分類することができる:LAGLIDADG、GIY−YIG、HNH、His−CysボックスおよびPD−(D/E)XK。例示的なメガヌクレアーゼとしては、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが挙げられ、これらの認識配列は公知である(例えば、米国特許第5,420,032号および同第6,833,252号;Belfort et al., Nucleic Acids Res.25:3379-3388, 1997; Dujon et al., Gene 82:115-118, 1989; Perler et al., Nucleic Acids Res.22:1125-1127, 1994; Jasin, Trends Genet.12:224-228, 1996; Gimble et al., J. Mol.Biol.263:163-180, 1996; Argast et al., J. Mol.Biol.280:345-353, 1998を参照されたい)。
【0134】
ある特定の実施形態では、天然に存在するメガヌクレアーゼを使用して、PD−1、LAG3、TIM3、CTLA4、TIGIT、HLAをコードする遺伝子、またはTCR成分をコードする遺伝子から選択される標的の部位特異的ゲノム修飾を促進することができる。他の実施形態では、標的遺伝子に対する新規結合特異性を有する操作されたメガヌクレアーゼが、部位特異的ゲノム修飾に使用される(例えば、Porteus et al., Nat. Biotechnol.23:967-73, 2005; Sussman et al., J. Mol.Biol.342:31-41, 2004; Epinat et al., Nucleic Acids Res.31:2952-62, 2003; Chevalier et al., Molec.Cell 10:895-905, 2002; Ashworth et al., Nature 441:656-659, 2006; Paques et al., Curr.Gene Ther.7:49-66, 2007;米国特許出願公開第2007/0117128号、同第2006/0206949号、同第2006/0153826号、同第2006/0078552号、および同第2004/0002092号を参照されたい)。さらなる実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトは、メガTALとして公知の融合タンパク質を作製するためにTALENのモジュラーDNA結合ドメインで修飾されたホーミングエンドヌクレアーゼを使用して生成される。メガTALを利用して、1つまたは複数の標的遺伝子をノックアウトすることができるばかりでなく、TCRα鎖、TCRβ鎖または両方などの目的のポリペプチドをコードする外因性ドナーテンプレートと組み合わせて使用すると異種または外因性ポリヌクレオチドを導入(ノックイン)することもでき、細胞により産生されるノックインTCRは、BRAF
V600E抗原またはペプチドに特異的である。
【0135】
ある特定の実施形態では、染色体遺伝子ノックアウトは、腫瘍関連抗原と特異的に結合する抗原特異的受容体をコードする異種ポリヌクレオチドを含む、宿主細胞(例えば、免疫細胞)に導入される阻害性核酸分子を含み、前記阻害性核酸分子は、標的特異的インヒビターをコードし、コードされた標的特異的インヒビターは、宿主免疫細胞における内在性遺伝子発現(すなわち、PD−1、TIM3、LAG3、CTLA4、TIGIT、HLA成分もしくはTCR成分、またはそれらの任意の組合せの発現)を阻害する。
【0136】
染色体遺伝子ノックアウトを、ノックアウト手順またはノックアウト剤の使用後の宿主免疫細胞のDNAシークエンシングによって直接確認することができる。染色体遺伝子ノックアウトを、ノックアウト後の遺伝子発現の非存在(例えば、遺伝子によりコードされたmRNAまたはポリペプチド産物の非存在)から推測することもできる。
処置の方法
【0137】
一部の態様では、本開示の方法は、過剰増殖性障害を処置する方法であり、これらの方法は、本開示によるヒトBRAF
V600Eまたは宿主細胞に特異的な結合タンパク質を含む組成物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む。
【0138】
ある特定の態様では、本開示は、BRAF
V600E発現を特徴とする過剰増殖性障害または状態を処置する方法であって、上述の結合タンパク質のいずれかによるBRAF
V600Eペプチド:HLA複合体に特異的な結合タンパク質を含む組成物または前記結合タンパク質を発現する宿主細胞を含む組成物を、それを必要とするヒト対象に投与することによる方法に関する。
【0139】
対象における過剰増殖性障害または悪性状態の存在は、当技術分野において公知であり、診断および分類の基準が確立されている、例えば、新生物性、腫瘍、非接触阻害されたまたは腫瘍形成的に形質転換された細胞など(例えば、固形がん;リンパ腫および白血病、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病などを含む、血液がん;例えば、腎がん、胃がん、卵巣がんおよび結腸直腸がん)を含む、対象における異形成細胞、がん性細胞および/または形質転換細胞の存在を指す(例えば、Hanahan and Weinberg, Cell 144:646, 2011; Hanahan and Weinberg, Cell 100:57, 2000; Cavallo et al., Canc.Immunol.Immunother. 60:319, 2011; Kyrigideis et al., J. Carcinog. 9:3, 2010)。特に、例えば、ヘアリー細胞白血病、黒色腫、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、乳頭がん、および甲状腺がん、例えば低分化甲状腺がん。したがって、さらなる実施形態では、ヘアリー細胞白血病、黒色腫、甲状腺がん、例えば低分化甲状腺がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、乳頭がん、非ホジキンリンパ腫、肺腺癌、ならびに膠芽腫および毛様細胞性星細胞腫を含む脳腫瘍を含む、BRAF
V600E発現に関連する過剰増殖性障害または他の状態を処置する方法が、提供される。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」および「処置」は、対象(すなわち、ヒトであることもあり、または非ヒト動物であることもある、患者、宿主)の疾患、障害または状態の医学的管理を指す(例えば、Stedman's Medical Dictionary参照)。一般に、適切な用量および処置レジメンは、結合タンパク質、もしくはBRAF
V600Eペプチド:HLA複合体、または結合タンパク質もしくはBRAF
V600Eペプチド:HLA複合体を発現する宿主細胞の1つまたは複数、および必要に応じて補助的治療(例えば、サイトカイン、例えば、IL−2、IL−15、IL−21またはそれらの任意の組合せ)を、治療的または予防的恩恵をもたらすのに十分な量で提供する。目的が、望ましくない生理学的変化もしくは障害を予防もしくは遅延もしくは別様に低減(例えば、未処置対照と比べて、統計的に有意な形で減少)させること、またはそのような疾患もしくは障害の拡大もしくは重症度を予防、遅延もしくは別様に低減させることである、治療的処置または予防的もしくは防止的方法の結果として生じる治療的または予防的恩恵は、例えば、臨床成績の向上を含む。対象に対する処置の結果として生じる有益なまたは望ましい臨床結果は、処置される疾患もしくは障害に起因もしくは関連する症状の緩解、緩和もしくは軽減;症状の発生頻度低下;生活の質向上;より長い無病状態(すなわち、対象が症状(この症状に基づいて疾患が診断される)を提示する尤度または傾向を減少させること);疾患の程度の低下;安定した(すなわち、悪化していない)病状;疾患進行の遅延または緩徐化;病状の改善もしくは緩和;および検出可能か検出不能かを問わず寛解(部分的寛解か完全寛解かを問わず);または全生存期間を含む。
【0141】
「処置」は、対象が処置を受けなかった場合の予想生存期間と比較したときの生存期間の延長も意味し得る。本明細書に記載される方法および組成物を必要とする対象は、疾患または障害に既に罹患している対象はもちろん、疾患もしくは障害に罹患しやすいまたは疾患もしくは障害を発症するリスクがある対象も含む。予防的処置を必要とする対象は、疾患、状態または障害を予防すべきである(すなわち、疾患または障害の発生または再発の尤度を低下させるべき)対象を含む。本明細書に記載される組成物(および組成物を含む調製物)および方法によってもたらされる臨床的恩恵は、実施例で説明されるように、組成物の投与が恩恵をもたらすことが意図される対象においてin vitroアッセイ、前臨床研究および臨床研究を設計および実行することにより評価することができる。
【0142】
本明細書に記載の結合タンパク質を発現する細胞を、薬学的にまたは生理的に許容されるまたは好適な賦形剤または担体中にある状態で、対象に投与することができる。薬学的に許容される賦形剤は、ヒトまたは他の非ヒト哺乳動物対象への投与に好適である、本明細書中でより詳細に説明される生体適合性ビヒクル、例えば、生理食塩水である。
【0143】
養子細胞治療の文脈での治療有効用量は、処置されるヒトまたは非ヒト哺乳動物において臨床的に望ましい結果を生じさせることができる養子移入に使用される宿主細胞(本開示による結合タンパク質を発現する)の量(すなわち、BRAF
V600Eを発現する細胞に対する特異的T細胞免疫応答(例えば、細胞傷害性T細胞応答)を統計的に有意な形で誘導または増強するのに十分な量)である。医学技術分野で周知のように、いずれの1患者についての投薬量も、患者のサイズ、体重、体表面積、年齢、投与される特定の治療、性別、投与の回数および経路、総体的な健康、および併せて投与されている他の薬物を含む、多くの因子に依存する。用量は、変動するが、本明細書に記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞の投与に好ましい用量は、約10
7細胞/m
2、約5×10
7細胞/m
2、約10
8細胞/m
2、約5×10
8細胞/m
2、約10
9細胞/m
2、約5×10
9細胞/m
2、約10
10細胞/m
2、約5×10
10細胞/m
2、または約10
11細胞/m
2である。
【0144】
今般開示される実施形態のいずれにおいても、単位用量は、T細胞、例えば、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、または両方を含むことができ、前記T細胞は、バルクT細胞、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、またはエフェクターメモリーT細胞を含むことができる。ある特定の実施形態では、単位用量は、BRAF
V600E特異的CD4
+T細胞を含み、CD8
+T細胞を含まない。他の実施形態では、単位用量は、異種CD4
+共受容体を発現するように操作されていてよい、BRAF
V600E特異的CD8
+T細胞を含み、必要に応じて、CD4
+T細胞を含まない。ある特定の実施形態では、単位用量は、本開示のBRAF
V600E特異的CD4
+T宿主細胞を含み、1つまたは複数の他の抗原または抗原−HLA複合体、例えば、BRAF
V600E抗原、V600E変異を含まないBRAF抗原;単位用量中の今般開示される宿主細胞の結合タンパク質に関連する抗原とは異なるHLAに関連するBRAF
V600E含有抗原;または過剰増殖性疾患もしくは障害に関連する異なる抗原;例えば、NY−ESO−1、SSX−2、チロシナーゼ、TMG1−4、GP100、MAGE−A3、MART1、ROR1、EGFR、EGFRvIII、EGP−2、EGP−40、GD2、GD3、HPV E6、HPV E7、Her2、L1−CAM、Lewis A、Lewis Y、MUC1、MUC16、PSCA、PSMA、CD19、CD20、CD22、CD56、CD23、CD24、CD30、CD33、CD37、CD44v7/8、CD38、CD56、CD123、CA125、c−MET、FcRH5、WT−1、葉酸受容体α、VEGF−α、VEGFR1、VEGFR2、IL−13Rα2、IL−11Rα、MAGE−A1、PSA、エフリンA2、エフリンB2、NKG2D、NY−ESO−1、TAG−72、メソテリン、NY−ESO、5T4、BCMA、FAP、炭酸脱水酵素9、ERBB2、もしくはCEA、またはそれらの任意の組合せなど、に対する結合特異性を有する、CD4
+T細胞またはCD8
+T細胞(例えば、同種異系または自己、修飾された(例えば、異種タンパク質、例えば、TCR、CAR、CD4共受容体、CD8共受容体、もしくはそれらの任意の組合せを発現するように)または未修飾)をさらに含む。
【0145】
ある特定の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の操作されたCD4
+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の操作されたCD8
+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない(すなわち、単位用量に存在するナイーブT細胞の集団を、匹敵する数のPBMCを有する患者試料と比較して約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満または約1%未満有する)。
【0146】
一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約50%の操作されたCD4
+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約50%の操作されたCD8
+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。さらなる実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約60%の操作されたCD4
+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約60%の操作されたCD8
+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。なおさらなる実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約70%の操作されたCD4
+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約70%の操作されたCD8
+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約80%の操作されたCD4
+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約80%の操作されたCD8
+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約85%の操作されたCD4
+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約85%の操作されたCD8
+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態では、単位用量は、(i)少なくとも約90%の操作されたCD4
+T細胞を含む組成物と、(ii)少なくとも約90%の操作されたCD8
+T細胞を含む組成物とを約1:1の比で組み合わせて含み、前記単位用量は、低減された量のナイーブT細胞を含有するかまたはナイーブT細胞を実質的に含有しない。
【0147】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、単位用量は、操作されたCD45RA
−CD3
+CD8
+および操作されたCD45RA
−CD3
+CD4
+T
M細胞の等しいまたはほぼ等しい数を含む。
【0148】
医薬組成物は、医学技術分野の当業者により決定されるような、処置(または予防)される疾患または状態に適切な方法で、投与することができる。組成物の適切な用量ならびに好適な投与期間および頻度は、患者の健康状態、患者のサイズ(すなわち、体重、量(mass)または体面積)、患者の疾患のタイプおよび重症度、活性成分の特定の形態、ならびに投与方法などの因子によって決定される。一般に、適切な用量および処置レジメンは、治療的および/または予防的恩恵(例えば、臨床成績向上、例えば、より高頻度の完全もしくは部分的寛解、またはより長い無病および/もしくは全生存期間、または症状重症度の低下を含む、本明細書に記載されるもの)をもたらすのに十分な量で、組成物(複数可)を提供する。予防的使用のための用量は、疾患もしくは障害を予防する、疾患もしくは障害の発症を遅延させる、または疾患もしくは障害に関連する疾患重症度を低下させるのに、十分なものであるべきである。本明細書に記載される方法に従って投与される免疫原性組成物の予防的恩恵は、前臨床研究(in vitroおよびin vivoでの動物研究を含む)および臨床研究の実施、ならびにそこから得られるデータの適切な統計的、生物学的および臨床的方法および技法による分析によって決定することができ、前記方法および技法の全てが当業者によって容易に実施され得る。
【0149】
BRAF
V600E発現に関連する状態は、BRAF
V600Eにより駆動される細胞事象または分子事象が存在し、正常細胞と比べて罹患細胞の過剰成長として通常は現れる、任意の障害または状態を含む。BRAF
V600E発現に関連する一部の状態は、急性および慢性の障害および疾患、例えば、対象を特定の障害に罹りやすくする病的状態を含み得る。
【0150】
BRAF
V600E発現に関連する状態の一部の例としては、腫瘍、新生物、がん、悪性疾患などを含む、対象における活性化および/または増殖性細胞(細胞が転写活性過剰である場合もある)の状態を指す、過剰増殖性障害が挙げられる。活性化または増殖性細胞に加えて、過剰増殖性障害は、壊死によるかアポトーシスによるかを問わず細胞死プロセスの異常または調節異常も含み得る。細胞死プロセスのそのような異常は、がん(原発性、二次性悪性疾患、および転移を含む)または他の状態を含む、様々な状態に関連し得る。
【0151】
ある特定の実施形態によれば、BRAF
V600E発現を特徴とするがんを、本明細書において開示される組成物および方法の使用によって処置することができる。さらに、「がん」は、固形腫瘍、腹水腫瘍、血液もしくはリンパもしくは他の悪性疾患;結合組織悪性疾患;転移性疾患;器官または幹細胞の移植後の微小残存疾患;多剤耐性がん、原発性または二次性悪性疾患、悪性疾患に関係する血管新生、または他の形態のがんを含む、任意の加速された細胞増殖を指すことができる。上記タイプの疾患の1つだけが含まれる特定の実施形態、または特定の状態が、BRAF
V600E発現を特徴とするか否かを問わず、排除されることもある、特定の実施形態も、今般開示される実施形態内で企図される。
【0152】
本明細書において企図される処置または予防のある特定の方法は、本明細書に記載の所望のポリヌクレオチドを含む宿主細胞(これは、自己、同種異系または同系であり得る)であって、前記ポリヌクレオチドが細胞の染色体に安定的に組み込まれている宿主細胞を投与するステップを含む。例えば、そのような細胞組成物を、自己、同種異系または同系免疫系細胞(例えば、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー細胞)を使用してex vivoで生成して、BRAF
V600Eを標的とする所望のT細胞組成物を養子免疫治療として対象に投与することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫細胞である。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、CD4
−CD8
−二重陰性T細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである。特定の実施形態では、細胞は、CD4
+T細胞である。
【0153】
本明細書で使用される場合、組成物または治療の投与は、送達経路または方法に関係なく、対象への組成物または治療の送達を指す。投与を持続的にまたは間欠的に、および非経口的に果たすことができる。投与は、認識された状態、疾患または病状を有すると既に確認された対象を処置するためであることもあり、あるいはそのような状態、疾患もしくは病状に罹りやすいまたはそのような状態、疾患もしくは病状を発症するリスクがある対象を処置するためであることもある。補助的治療との共投与は、任意の順序および任意の投薬スケジュールでの、複数の薬剤(例えば、BRAF
V600E特異的組換え(すなわち、操作された)宿主細胞と、1または複数のサイトカイン;免疫抑制治療、例えば、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ、またはそれらの任意の組合せ)の同時のおよび/または逐次的な送達を含み得る。
【0154】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組換え宿主細胞の多数の用量が対象に投与され、前記用量は、約2週間〜約4週間の投与間隔で投与され得る。さらなる実施形態では、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−15、IL−21)は、組換え宿主細胞がサイトカイン投与の前に少なくとも3または4回、対象に投与されたことを条件に、逐次的に投与される。ある特定の実施形態では、サイトカインは、宿主細胞と併せて投与される。ある特定の実施形態では、サイトカインは、皮下投与される。
【0155】
なおさらなる実施形態では、処置されている対象は、免疫抑制治療、例えば、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ、またはそれらの任意の組合せをさらに受けている。なおさらなる実施形態では、処置されている対象は、骨髄非破壊的または骨髄破壊的造血細胞移植を受けたことがあり、この処置は、骨髄非破壊的造血細胞移植の少なくとも2ヶ月〜少なくとも3ヶ月後に投与され得る。
【0156】
治療用組成物または医薬組成物の有効量は、本明細書に記載されるような所望の臨床結果または有益な処置を達成するために、必要な投薬量でかつ必要な期間にわたって、十分な量を指す。有効量を1または複数回の投与で送達することができる。投与が、疾患または病状を有することが既に分かっているまたは確認された対象への投与である場合、用語「治療量」を、処置に関して使用することができ、これに対して「予防有効量」を、疾患もしくは病状(例えば、再発)に罹りやすいまたは疾患もしくは病状を発症するリスクがある対象に有効量を予防的コースとして投与することを記述するために、使用することができる。
【0157】
CTL免疫応答のレベルは、本明細書に記載されるおよび当技術分野において日常的に実施されている非常に多くの免疫学的方法のいずれか1つによって決定することができる。CTL免疫応答のレベルは、例えばT細胞により発現される本明細書に記載されるBRAF
V600E特異的結合タンパク質のいずれか1つの投与の前および後に、決定することができる。CTL活性を決定するための細胞傷害性アッセイは、当技術分野において日常的に実施されているいくつかの技法および方法のいずれか1つを使用して行うことができる(例えば、Henkart et al., "Cytotoxic T-Lymphocytes" in Fundamental Immunology, Paul (ed.) (2003 Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA), pages 1127-50およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0158】
抗原特異的T細胞応答は、観察されるT細胞応答を本明細書に記載されるT細胞の機能的パラメーター(例えば、増殖、サイトカイン放出、CTL活性、変更された細胞表面マーカー表現型など)のいずれかに従って比較することによって、通常は決定され、この比較は、適切な状況で同族抗原(例えば、免疫適合性抗原提示細胞により提示されたときにT細胞をプライミングまたは活性化するために使用される抗原)に曝露されるT細胞と、構造的に異なるまたは無関係の対照抗原の代わりに曝露される同じ供給源の集団からのT細胞との間で行われ得る。統計的有意性をもって、対照抗原に対する応答より大きい、同族抗原に対する応答は、抗原特異性を示す。
【0159】
本明細書に記載のBRAF
V600E含有抗原ペプチドに対する免疫応答の存在およびレベルを決定するために、生体試料を対象から得ることができる。「生体試料」は、本明細書で使用される場合、血液試料(ここから、血清または血漿を調製することができる)、生検材料、体液(例えば、肺洗浄液、腹水、粘膜洗液、滑液)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養物、または対象もしくは生物学的供給源からの任意の他の組織もしくは細胞調製物であり得る。生体試料をいずれの免疫原性組成物を受ける前の対象から得ることもでき、この生体試料は、ベースライン(すなわち、免疫処置前)データを確立するための対照として有用である。
【0160】
本明細書に記載される医薬組成物は、単位用量または複数用量用容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに入っている状態で提供することができる。そのような容器を凍結して、製剤の安定性を保つことができる。ある特定の実施形態では、単位用量は、本明細書に記載される組換え宿主細胞を約10
7細胞/m
2〜約10
11細胞/m
2の用量で含む。例えば、非経口もしくは静脈内の投与または製剤を含む、様々の処置レジメンにおける、本明細書に記載される特定の組成物の使用に好適な投薬レジメンおよび処置レジメンの開発。
【0161】
対象組成物が非経口投与される場合、その組成物は、滅菌水性または油性溶液または懸濁液も含み得る。好適な非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒としては、水、リンゲル液、等張塩類溶液、水との混合物での1,3−ブタンジオール、エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール(polythethylene glycol)が挙げられる。水溶液または水性懸濁液は、1つまたは複数の緩衝剤、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたは酒石酸ナトリウムをさらに含むことができる。もちろん、いずれの投薬単位製剤の調製に使用されるいずれの材料も、薬学的に純粋でなければならず、利用される量で実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性化合物を、徐放性調製物および製剤中に組み込むことができる。投薬単位形態は、本明細書で使用される場合、処置される対象にとって単位投薬量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な医薬担体と共同で所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の組換え細胞または活性化合物を含有し得る。
【0162】
一般に、適切な投薬量および処置レジメンは、治療的または予防的恩恵をもたらすのに十分な量で、活性分子または細胞を提供する。そのような応答は、処置されていない対象と比較して処置された対象において臨床成績向上(例えば、より高頻度の寛解、完全もしくは部分的、またはより長い無病生存期間)を確立することによって、モニタリングすることができる。腫瘍タンパク質に対する既存の免疫応答の増加は、一般に、臨床成績向上と相関する。そのような免疫応答は、標準的な増殖、細胞傷害性またはサイトカインアッセイを使用して、一般に評価することができ、前記アッセイは、当技術分野において日常的であり、処置前および後に対象から得た試料を使用して行うことができる。
【0163】
なおさらなる態様では、本開示による宿主細胞を含む単位用量形態が提供される。
【0164】
本開示による方法は、併用療法で疾患または障害を処置するために1つまたは複数の追加の薬剤を投与することをさらに含むことができる。例えば、ある特定の実施形態では、併用療法は、BRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を免疫チェックポイント阻害剤とともに(併せて、同時に、または逐次的に)投与することを含む。一部の実施形態では、併用療法は、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を刺激性免疫チェックポイント剤のアゴニストとともに投与することを含む。さらなる実施形態では、併用療法は、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を第2の治療、例えば、化学療法剤、放射線治療、外科手術、抗体またはそれらの任意の組合せとともに投与することを含む。
【0165】
本明細書で使用される場合、用語「免疫抑制(immune suppression)剤」または「免疫抑制(immunosuppression)剤」は、免疫応答の制御または抑制を補助するための阻害性シグナルをもたらす1つまたは複数の細胞、タンパク質、分子、化合物または複合体を指す。例えば、免疫抑制剤は、免疫刺激を部分的にもしくは完全に遮断する、免疫活性化を減少、予防もしくは遅延させる、または免疫抑制を増加、活性化もしくは上方調節する分子を含む。標的化する(例えば、免疫チェックポイント阻害剤で)ための例示的な免疫抑制剤としては、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG3、CTLA4、B7−H3、B7−H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制性サイトカイン(例えば、IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35)、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM−1、CEACAM−3、CEACAM−5、Treg細胞、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0166】
免疫抑制剤阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤とも呼ばれる)は、化合物、抗体、抗体断片もしくは融合ポリペプチド(例えば、Fc融合体、例えば、CTLA4−FcもしくはLAG3−Fc)、アンチセンス分子、リボザイムもしくはRNAi分子、または低分子量有機分子であり得る。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、方法は、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を、単独でのまたは任意の組合せでの下記の免疫抑制成分のいずれか1つに対する1つまたは複数の阻害剤とともに、投与することを含み得る。
【0167】
ある特定の実施形態では、BRAF
V600E特異的結合タンパク質は、PD−1阻害剤、例えば、PD−1特異的抗体またはその結合断片、例えば、ピディリズマブ、ニボルマブ(キートルダ、旧名MDX−1106)、ペムブロリズマブ(オプジーボ、旧名MK−3475)、MEDI0680(旧名AMP−514)、AMP−224、BMS−936558、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、PD−L1特異的抗体またはその結合断片、例えば、BMS−936559、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ(RG7446)、アベルマブ(MSB0010718C)、MPDL3280A、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0168】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、LAG3阻害剤、例えば、LAG525、IMP321、IMP701、9H12、BMS−986016、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0169】
ある特定の実施形態では、BRAF
V600E特異的結合タンパク質は、CTLA4の阻害剤と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、CTLA4特異的抗体またはその結合断片、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、GTLA4−Ig融合タンパク質(例えば、アバタセプト、ベラタセプト)、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0170】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、B7−H3特異的抗体またはその結合断片、例えば、エノブリツズマブ(MGA271)、376.96、または両方と組み合わせて使用される。B7−H4抗体結合断片は、例えば、Dangaj et al., Cancer Res.73:4820, 2013に記載されているscFvまたはその融合タンパク質、ならびに米国特許第9,574,000号、PCT特許公開番号WO/201640724A1およびWO2013/025779A1に記載されているものであり得る。
【0171】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、CD244の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0172】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、BLTA、HVEM、CD160の阻害剤、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。抗CD160抗体は、例えばPCT公開番号WO2010/084158に記載されている。
【0173】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、TIM3の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0174】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、Gal9の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0175】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、アデノシンシグナル伝達の阻害剤、例えば、デコイアデノシン受容体と組み合わせて使用される。
【0176】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、A2aRの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0177】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、KIRの阻害剤、例えばリリルマブ(BMS−986015)と組み合わせて使用される。
【0178】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、阻害性サイトカイン(通常は、TGFβ以外のサイトカイン)またはTreg発生もしくは活性の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0179】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、IDO阻害剤、例えば、レボ-1-メチルトリプトファン、エパカドスタット(INCB024360;Liu et al., Blood 115:3520-30, 2010)、エブセレン(Terentis et al., Biochem.49:591-600, 2010)、インドキシモド、NLG919(Mautino et al., American Association for Cancer Research 104th Annual Meeting 2013; Apr 6-10, 2013)、1−メチル−トリプトファン(1−MT)−チラ−パザミン、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0180】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、アルギナーゼ阻害剤、例えば、N(オメガ)−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)、N−オメガ−ヒドロキシ−ノル−l−アルギニン(ノル−NOHA)、L−NOHA、2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸(ABH)、S−(2−ボロノエチル)−L−システイン(BEC)、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0181】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、VISTAの阻害剤、例えばCA−170(Curis、Lexington、Mass.)と組み合わせて使用される。
【0182】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、TIGITの阻害剤、例えばCOM902(Compugen、Toronto、Ontario、Canada)など、CD155の阻害剤、例えばCOM701(Compugen)など、または両方と組み合わせて使用される。
【0183】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、PVRIGの阻害剤、PVRL2の阻害剤、または両方と組み合わせて使用される。抗PVRIG抗体は、例えばPCT公開番号WO2016/134333に記載されている。抗PVRL2抗体は、例えばPCT公開番号WO2017/021526に記載されている。
【0184】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)はLAIR1阻害剤と組み合わせて使用される。
【0185】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、CEACAM−1の阻害剤、CEACAM−3の阻害剤、CEACAM−5の阻害剤、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0186】
ある特定の実施形態では、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)は、刺激性免疫チェックポイント分子の活性を増加させる(すなわち、アゴニストである)薬剤と組み合わせて使用される。例えば、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を、CD137(4−1BB)アゴニスト(例えば、ウレルマブなど)、CD134(OX−40)アゴニスト(例えば、MEDI6469、MEDI6383、またはMEDI0562など)、レナリドミド、ポマリドミド、CD27アゴニスト(例えば、CDX−1127など)、CD28アゴニスト(例えば、TGN1412、CD80、またはCD86など)、CD40アゴニスト(例えば、CP−870,893、rhuCD40L、またはSGN−40など)、CD122アゴニスト(例えば、IL−2など)、GITRのアゴニスト(例えば、PCT特許公開番号WO2016/054638に記載されているヒト化モノクローナル抗体など)、ICOS(CD278)のアゴニスト(例えば、GSK3359609、mAb 88.2、JTX−2011、Icos 145−1、Icos 314−8など、またはそれらの任意の組合せ)と組み合わせて使用することができる。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、方法は、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を、単独でのまたは任意の組合せでの上述のいずれかを含む、刺激性免疫チェックポイント分子についての1つまたは複数のアゴニストとともに投与することを含み得る。
【0187】
ある特定の実施形態では、併用療法は、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)と、非炎症型固形腫瘍により発現されるがん抗原に特異的である抗体もしくはその抗原結合断片、放射線処置、外科手術、化学療法剤、サイトカイン、RNAiのうちの1つもしくは複数、またはそれらの任意の組合せを含む、第2の治療とを含む。
【0188】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、BRAF
V600E特異的結合タンパク質を投与すること、および放射線処置または外科手術をさらに施すことを含む。放射線治療は、当技術分野において周知であり、X線治療、例えばガンマ線照射、および放射性医薬品治療を含む。対象における所与のがんまたは非炎症型固形腫瘍の処置に適切な外科手術および外科的技法は、当業者には周知である。
【0189】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、本開示のBRAF
V600E特異的結合タンパク質(または前記BRAF
V600E特異的結合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を投与すること、および化学療法剤をさらに投与することを含む。化学療法剤は、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA傷害剤、代謝拮抗薬(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、および糖修飾類似体)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例えば、挿入剤)、およびDNA修復阻害剤を含むが、これらに限定されない。実例となる化学療法剤は、これらに限定されないが、以下の群を含む:代謝拮抗薬/抗がん剤、例えば、ピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストおよび関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));抗増殖性/抗有糸分裂剤、これには、天然産物、例えば、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、微小管破壊剤、例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミン、オキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テモゾロミド(temozolamide)、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびエトポシド(VP16))が含まれる;抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン;酵素(L−アスパラギンを全身代謝させ、独自のアスパラギンを合成する能力がない細胞を欠乏させる、L−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トリアゼン(trazene)−ダカルバジン(dacarbazinine)(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗薬、例えば、葉酸類似体(メトトレキサート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;分泌抑制剤(ブレフェルジン(breveldin));免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP470、ゲニステイン)および成長因子阻害剤(血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、テニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾン、およびプレニゾロン(prenisolone));成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤、毒素、例えば、コレラ毒素、リシン、Pseudomonas外毒素、Bordetella pertussisアデニル酸シクラーゼ毒素、またはジフテリア毒素、およびカスパーゼ活性化因子;ならびにクロマチン破壊剤。
【0190】
サイトカインは、抗がん活性に対する宿主免疫応答を操作するために使用されることが増えている。例えば、Floros & Tarhini, Semin.Oncol.42(4):539-548, 2015を参照されたい。免疫抗がんまたは抗腫瘍応答の促進に有用なサイトカインとしては、例えば、単独での、または本開示の結合タンパク質もしくは結合タンパク質を発現する細胞との任意の組合せでの、IFN−α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−24、およびGM−CSFが挙げられる。
【0191】
別のがん治療アプローチは、癌遺伝子の、ならびにがん細胞による成長、維持、増殖および免疫回避に必要な他の遺伝子の、発現を低減させることを含む。RNA干渉、特に、マイクロRNA(miRNA)および低分子阻害性RNA(siRNA)の使用は、がん遺伝子の発現をノックダウンするアプローチを提供し(例えば、Larsson et al., Cancer Treat.Rev. 16(55):128-135, 2017を参照されたい)、そのアプローチを、本開示の結合タンパク質または結合タンパク質を発現する細胞と組み合わせて使用することができる。
【0192】
本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、治療剤(例えば、BRAF
V600E特異的結合タンパク質または操作された宿主細胞、免疫抑制成分の阻害剤、刺激性免疫チェックポイント分子のアゴニスト、抗腫瘍リンパ球、化学療法剤、放射線治療、外科手術、サイトカインまたは阻害性RNA)のいずれかを、処置過程にわたって対象に1回または1回より多く投与することができ、組合せの場合は、任意の順序または任意の組合せで対象に投与することができる。治療剤の適切な用量、好適な投与期間および頻度は、患者の状態;腫瘍またはがんのサイズ、タイプ、拡散、成長および重症度;活性成分の特定の形態;ならびに投与方法などの因子によって、決定される。
【実施例】
【0193】
(実施例1)
黒色腫患者におけるCD4
+BRAF
V600E特異的T細胞の同定
52歳男性は、左脚に発生したステージIIIC、BRAF
V600E変異黒色腫を呈し、彼に広範囲切除術、リンパ節郭清術およびアジュバントイピリムマブでの処置を施した。1年のイピリムマブ完了の少し前に、彼は、彼の左脚部における3つのin−transit転移の切除を必要とし、そして3ヶ月後にさらなるin−transit転移の切除を必要とした。その後、彼は、進行して3cmの左腸骨リンパ節転移および左大腿部の軟部組織に結節性FDG avid病変を有した(
図1A)。全エクソームシークエンシングおよびTILの拡大のために腸骨リンパ節を切除し、その後、この患者に、リンパ球枯渇化学療法に従ってTIL注入を施した。左大腿部病変が解消され、患者は、治療の27ヶ月後に無病のままである。
【0194】
精製腫瘍細胞および正常組織の全エクソームおよびRNAシークエンシングで、表1に示す、20のみの非同義ミスセンス変異を同定した:(左から2および3列目);左から4〜6列目:コードされた非同義変異を包含する27merペプチドおよびDNAまたはRNA−Seq中の変異の存在(左から4〜6列目);(左から7および8列目)変異を含む操作された20merペプチド;ならびに100万あたりの転写物数(TPM)の単位でのRNA−seq発現。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0195】
表1には示さなかったが、各変異についての染色体位置(GRCh37/hg19参照アセンブリを使用して)およびバリアントアレル頻度(VAF)も決定した。BRAF
V600E変異についてのVAFは、35.4%であった。
【0196】
可能性のあるこれらのネオ抗原に対するT細胞応答を、TIL療法後の患者から得た末梢血単核細胞(PBMC)を20の変異の各々に隣接しているペプチドのプールで刺激することにより評価した。候補ネオ抗原に対するCD8
+T細胞応答は検出されなかったが、BRAF
V600Eを包含する20merペプチドに特異的なCD4
+T細胞応答が同定された。BRAF
V600E反応性T細胞をIFN−γ捕捉により精製し、これらのT細胞は、変異型BRAFペプチドでパルスした自己B細胞を認識するが、野生型BRAFペプチドでパルスした自己B細胞を認識しないことを示した。これにより、変異型ペプチドに対する特異性が確証される(
図1B)。BRAF
V600EがクラスII MHC
+APCによりプロセシングされ、提示されるかどうかを決定するために、自己B細胞に、エンドソームに標的化された野生型または変異型BRAF配列をコードするmRNAを、トランスフェクトした。T細胞は、変異型BRAFを発現するB細胞を認識したが、野生型BRAFを発現するB細胞を認識しなかった(
図1C)。
【0197】
認識は、抗HLA−DQによって遮断されたが、抗クラスI抗体によっても、抗HLA−DR抗体によっても遮断されず、このことからHLA−DQを、可能性のある拘束アレルとして同定した(
図1D)。遺伝子型が分かっている複数のB細胞株の分析は、DQB1*0301の弱い認識ならびにDQB1*0302およびDQB1*0303のより強い認識に伴う、HLA−DQB1*03と対合したHLA−DQA1*03による拘束性を示唆した(
図1Fおよび表2)。
【0198】
【表2-1】
【表2-2】
【0199】
完全患者HLA型判定は、次のとおりであった:A*11:01:01/A*24:02:01;B*15:01:01/B*40:01:02;C*03:03:01/C*03:04:01;DPA1*01:03:01/DPA1*01:03:01;DPB1*04:01:01/DPB1*04:01:01;DQA1*03:01:01/DQA1*03:02;DQB1*03:02:01/DQB1*03:03:02;DRB1*04:03:01/DRB1*09:01:02;DRB4*01:03:01/DRB4*01:03:02。
【0200】
HLA−DQA1*03またはDQB1*0302をトランスフェクトしたB−LCLは、変異型ペプチドでパルスしたときBRAF
V600E特異的CD4
+T細胞により認識されたが、密接に連鎖したHLA−DRB1*04をトランスフェクトしたB−LCLは認識されなかった。これにより、HLA拘束性が確証される(
図1E)。
【0201】
HLA−DQB1*0302およびBRAF
V600E遺伝子型を有する3つの黒色腫細胞株の認識を試験した。最大量のHLA−DQを発現した1つの腫瘍細胞株は、BRAF
V600E特異的CD4
+T細胞により認識された。これにより、エピトープが、腫瘍細胞によって直接提示され得ることが実証される(
図1G〜1I)。腫瘍特異的CD4
+T細胞は、直接細胞を殺滅することおよびサイトカインを放出することによって抗腫瘍活性を有することができる(例えば、Quezada et al., J. Exp.Med.207(3):637-650 (2010); Manici et al., J. Exp.Med.189(5):871-876 (1999)を参照されたい)が、主要な役割は、APCのライセンス化およびサイトカインの産生によりCD8
+T細胞の発生および機能を支援することである(例えば、Sun and Bevan, Science 300(5617):339-342 (2003); Williams et al., Nature 441(7095):890-893 (2006)を参照されたい)。養子移入TILは、BRAF
V600E特異的CD4
+T細胞を含有したが、CD8
+T細胞は、TIL中に広く認められる集団であった(表3)。手短に述べると、患者に注入した最終TIL産物をフローサイトメトリーにより表現型について分析し、PMA/イオノマイシンでの刺激後、サイトカインについて細胞内染色した。表3に示す百分率は、CD45+細胞(上部)またはCD4もしくはCD8細胞(下部)の百分率である。
【表3】
【0202】
さらに、自己腫瘍での複数の独立したTIL培養物の刺激により産生されたIFN−γの大部分が、HLAクラスI遮断抗体により遮断された(表4)。
【表4】
【0203】
腫瘍エクソームシークエンシングにより同定した20の非同義変異の全てを含むペプチドのプールでパルスした自己B細胞とともにTILを培養したとき、IFN−γ産生は観察されなかった(
図2A)が、IFN−γは、黒色腫におけるT細胞の公知標的である系列限定自己抗原(チロシナーゼ、Mart−1、TRP2)およびがん精巣抗原(Mage A3)(例えば、Gros et al.Nat. Med.2016を参照されたい)からのペプチドでパルスした(
図2F)または29の非同義変異を包含するタンデムミニ遺伝子をもしくはチロシナーゼ、Mage−A3、Mart1、SSX2およびGP100のコード配列をトランスフェクトした(
図2B〜2E)B細胞との共培養後に産生された。このように、患者TILは、BRAF
V600E特異的CD4
+T細胞、および自己抗原に対する異なるCD8
+T細胞応答を含有した。
臨床プロトコール
【0204】
FDA承認IND、およびフレッド・ハッチンソンがん研究センターの治験審査委員会(the Institutional Review Board of Fred Hutchinson Cancer Research Center)により承認された臨床プロトコール(FHCRC 2643;NCT01807182)に従って、患者をTIL生成に登録した。ステージIV黒色腫、または外科手術により治癒する見込みのないステージIIIであり、>18歳であり、ECOG</=1であり、転移性疾患部位を安全に切除または生検することができる患者が、適格であった。米国国立がん研究所の外科部門(the Surgery Branch of the National Cancer Institute)において開発された方法論(例えば、Dudley et al., J. Immunother. 24(4):363-373 (2002))を使用して、6,000IU/mlの組換えIL−2(プロロイキン;Novartis)中で腫瘍断片からTILを拡大した。自己腫瘍細胞との共培養後にIFN−γ分泌により決定した細胞成長および自己腫瘍反応性に基づいて、TIL培養を選択した。使用が必要となるまでTILを凍結保存し、次に解凍し、以前に記載されたような迅速拡大プロトコール(Riddell and Greenberg, J. Immunological Methods 128(2):189-201 (1990))を使用してさらに拡大した。拡大されたTILを、シクロホスファミド 60mg/kg/日×2日、次いでフルダラビン 25mg/m
2/日×5日のリンパ球枯渇化学療法レジメン後に、患者に投与した。TIL注入から24時間以内に、600,000IU/kg IVでの高用量のIL−2の合計9用量を8時間ごとに患者に施した。RECISTバージョン1.1を使用して、CTおよびMRIで、6、12および24週目に、その後、3〜6ヶ月ごとに、主要提供者の自由裁量で腫瘍応答を評定した。
エクソーム捕捉およびRNAシークエンシングのための核酸調製
【0205】
処置後の血液を使用して、非腫瘍DNAを単離した。腸骨リンパ節腫瘍再発から得た単個細胞懸濁液をフローソート(ヨウ化プロピジウム陰性およびCD45陰性)して、存在量が多い浸潤リンパ球を枯渇させて新生物細胞を富化した。正常組織およびソートされた腫瘍細胞をQiagen DNA/RNA AllPrep Microキットで処理して、エクソーム捕捉のためのDNAを単離し、その後のRNA−seqプロファイリングのためにRNAを確保した。ゲノムDNA濃度を、Invitrogen Qubit(登録商標)2.0 Fluorometer(Life Technologies−Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)およびTrinean DropSense96分光光度計(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)で定量した。
全エクソームシークエンシング
【0206】
Agilent SureSelectXT Reagent Kitを使用してエクソームシークエンシングライブラリーを調製し、Agilent All Human Exon v6(Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)を使用してエクソン標的を単離した。Covaris LE220一点集中型超音波照射装置(Covaris,Inc.、Woburn、MA、USA)を使用して200ngのゲノムDNAを断片化し、Sciclone NGSx Workstation(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)でライブラリーを調製し、捕捉した。Agilent 2200 TapeStationを使用して、ライブラリーサイズ分布を検証した。Life TechnologiesのInvitrogen Qubit(登録商標)2.0 Fluorometerを使用して、追加のライブラリーQC、プールされたインデックス付きライブラリーのブレンディング、およびクラスター最適化を行った。
【0207】
結果として得たライブラリーを、ペアードエンド100bp(PE100)戦略を使用してIllumina HiSeq 2500でシークエンシングした。IlluminaのReal Time Analysis v1.18ソフトウェアを使用して画像解析および塩基コーリングを行い、その後、Illuminaのbcl2fastq Conversion Software v1.8.4(http://support.illumina.com/downloads/bcl2fastq_conversion_software_184.html)を使用して、インデックス付きリードの「逆多重化」およびFASTQファイルの生成を行った。標準Illuminaクオリティフィルターを通過したリードペアをさらなる分析のために保持し、腫瘍用の77Mのリードペアおよび正常用の89Mのリードペアを得た。BWA−MEMショートリードアライナーでペアリードをヒトゲノムリファレンス(GRCh37/hg19)にアラインメントした(例えば、Li, H., arXiv preprint arXiv:1303.3997 (2013); Li and Rudbin, Bioinfomatics 25(14):1754-1760を参照されたい)。標準BAM形式の得られたアラインメントファイルを、推奨された最良の実施(Auwera et al., Current Protocols in Bioinformatics pp. 11.10.1-11.10.33 (2013)を参照されたい)に従って、クオリティスコア再較正、インデル再アラインメントおよび重複除去のためにPicard 2.0.1およびGATK 3.5[37]によって処理した。
【0208】
次の3つの独立したソフトウェアパッケージを使用して、分析の準備が整った腫瘍および正常BAMファイルから体細胞変異をコールした:MuTect 1.1.7[39]、Strelka 1.0.14[40]、およびVarScan.v2.4.1(Koboldt et al., Genome Res.22(3):568-576 (2012))。VCF形式での全てのツールからのバリアントコールにOncotatorでアノテーションを付与した(Ramos et al., Human Mutation 36(4):E2423-E2429 (2015))。ミスセンス体細胞バリアントを組み合わせ、野生型およびバリアントペプチド配列を含むアノテーションをさらに付与して、統合された要約を作り上げ、そこから候補ペプチドを合成のために選択した。
RNA−Seqデータ処理
【0209】
観察発現レベルにより候補ペプチドをランク付けするために、同じ単個細胞懸濁液からのフローソートされた腫瘍細胞を用いてRNA−seqを行った。TruSeq RNA Sample Prep v2 Kit(Illumina,Inc.、San Diego、CA、USA)およびSciclone NGSx Workstation(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を使用して、全RNAからRNA−seqライブラリーを調製した。Agilent 2200 TapeStation(Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)を使用して、ライブラリーサイズ分布を検証した。Life TechnologiesのInvitrogen Qubit(登録商標)2.0 Fluorometer(Life Technologies−Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を使用して、追加のライブラリーQC、プールされたインデックス付きライブラリーのブレンディング、およびクラスター最適化を行った。ライブラリーをIllumina HiSeq 2500でシークエンシングして、133Mの50ntペアリード(PE50)を生成した。RSEM 1.2.19(Li and Dewer, BMC Bioinformatics 12(1):323 (2011)を参照されたい)を用いて、リードをRefSeq由来参照トランスクリプトームにアラインメントした。TPM単位でのRSEMからの遺伝子レベル発現値を、ミスセンス体細胞バリアントのサマリに加えた。
T細胞培養
【0210】
各変異にまたがる2つのペプチドがあり、20アミノ酸配列の+7または+13位に変異残基がある、Elim Biopharmaから入手した重複20mer粗ペプチドを用いて、初回刺激を行った。後続の実験は、+11位にV600(野生型)またはE600(変異型)がある、純度>80%の21merペプチドを用いて行った。凍結保存PBMCを解凍し、一晩、CTL(10%ヒト血清(施設内で産生された)、50μMのベータ−メルカプトエタノール、ペニシリンおよびストレプトマイシン、4mMのL−グルタミンおよび2ng/mlの組換えヒトIL−7(Peprotech)を補充した、L−グルタミンおよびHEPES(Gibco)を含有するRPMI培地)中で静置した。翌朝、PBMCを洗浄し、6ウェルプレートの1ウェルあたり5ml CTL中1×10
6細胞でのPBMCを、サイトカインを含まない各ペプチドの1μg/mlのプールで刺激した。組換えIL−2(Peprotech)を+3日目に10U/mlの最終濃度まで添加し、IL−2補充による半培地交換を+3、+6および+9日目に行った。+13日目に、細胞をELISAおよびサイトカイン染色アッセイに使用した。
【0211】
IFN−γ分泌アッセイAPC(Milltenyi)を製造業者の指示に従って使用し、10μg/mlの21mer BRAF変異型ペプチドでパルスした抗原提示細胞としての自己B細胞を使用して、生細胞を分泌IFN−γについて染色することにより、抗原特異的T細胞富化を行った。CD4
+IFN−γ分泌細胞をFACS Aria2でソートした。ソートされた細胞を、10ng/mlのヒトIL−15を補充したCTL中で5日間静置し、その後、以前に記載された迅速拡大プロトコール(Riddell and Greenberg、上掲)を使用して拡大した。抗Vβ 3.1(Thermo Scientific、カタログ番号TCR2740)での染色によりVβ3.1陽性のCD4
+細胞についてソートすることによって抗原特異的T細胞をさらに富化し、拡大し、拡大後13または14日目に凍結保存した。アッセイの前に、凍結保存細胞を解凍し、10U/mlのIL−2を補充したCTL中で一晩静置した。
抗原提示細胞
【0212】
CD19を認識する抗体で被覆された磁気ビーズ(Miltenyi、カタログ番号130−050−301)および磁気ポジティブセレクションを製造業者の指示(Miltenyi、カタログ番号130−042−401)に従って使用して、新鮮または解凍PBMCから自己B細胞を単離した。初代B細胞を、記載されたように(Tran et al., Science 344(3184):641-645 (2014)を参照されたい)、200U/mlのヒトIL−4(Peprotech)を補充したB細胞培地中で、7日間、ヒトCD40Lを発現するNIH 3T3細胞とともに1:1の比でインキュベートした。その後、B細胞を回収し、3T3 CD40Lおよび新鮮培地で3日ごとに再刺激した。2回目または3回目の刺激から+3日目にB細胞をアッセイに使用した。
サイトカイン放出アッセイ
【0213】
ELISAアッセイでは、50,000個のエフェクターT細胞を、96ウェル丸底プレートにおいて、5%熱不活性化ウシ胎児血清を補充したRPMI(Gibco)中の100,000個のB細胞またはB−LCL株および10μg/mlまたは特定の濃度のペプチドとともにインキュベートした。ready set goヒトIFN−γ ELISAキット(ebiosciences)を技術的三重反復(technical triplicate)において使用して、上清中のIFN−γを定量した。ペプチドを添加する1時間前に、20μg/mlの抗体 抗クラスI(Biolegend、カタログ番号311411)抗HLA DR(クローンL243、カタログ番号307611)およびHLA−DQ(Abcam、クローンspv−l3、カタログ番号ab23632)を添加して、HLA遮断実験を行った。エリスポットアッセイのために、ヒトIFN−γ ELISpot−Proキット(Mabtech)を使用し、製造業者の指示を使用して生じさせた、CTL培地中10μg/mlの最終濃度の各ペプチドのペプチドプールでパルスした200,000個の自己B細胞とともに、50,000個の腫瘍浸潤リンパ球をインキュベートした。
HLA同定
【0214】
LCL細胞株1331、DUCAF、VAVY、BM14、DEMおよびDEUを利用した。共培養アッセイについては、LCL細胞株を10μg/mlのBRAF変異型ペプチドまたはDMSO対照で4時間にわたってパルスし、次いで、PBSで3回洗浄した後、ELISAアッセイを行った。特異的クラスIIアレルの同定のために、HLA−DQA1 0301タンパク質にT2Aスキップ配列によって連結させたHLA−DRB1 0404タンパク質またはHLA−DQB1 0302タンパク質をコードするコドン最適化線状DNA断片を、Genestrings(商標)(Life Sciences)を使用して合成し、NEBuilderクローニングキット(New England Biolabs)を使用してNotIおよびEcoRI(Thermo Fisher)で線状化したベクターMP71(Engels et al., Hum. Gene Ther. 14(12):1155-1168 (2003))にクローニングし、配列を検証した。Sommermeyerら(Leukemia, 2015))により記載されたように、HLA DRB1 0301、DQA1 0501およびDQB1 0201についてホモ接合性のVAVY細胞株(研究用セルバンク)へのレトロウイルス形質導入を行った。抗体DRB1−PE(Biolegend、カタログ番号362303)を使用してDRB1 0404に対して陽性の細胞をFACSAria2ソーターでソートし、抗DQ抗体クローンHLADQ1−FITC(Biolegend、カタログ番号318104)を使用してDQB1 03 DQA1 03に対して陽性の細胞をソートした。BRAF
V600Eペプチドでパルスして、またはせずに、アッセイを行った。ELISA実験は、示したように技術的二重反復または三重反復で行ったものであり、2回の独立した実験の代表である。
(実施例2)
TILによるTCR遺伝子使用の同定
【0215】
ディープシークエンシングを行って、TIL中のBRAF
V600E特異的T細胞および他のT細胞におけるTCR遺伝子使用を同定した。3つのTCR Vβクローン型は、処置後PBMCのBRAF
V600Eペプチドでの刺激後に顕著な拡大を示し、これらの配列は、IFN−γ捕捉後にさらに富化された。これは、変異型ペプチドに対するそれらの特異性を示す(
図2G)。腫瘍、TIL、およびTIL注入前に得たPBMCについての、TCR Vβシークエンシングにより、TCR Vβクローンが腫瘍では3つ全ておよびTILでは3つのうち2つ同定された。3つ全てのTCR Vb配列が、処置前PBMCでは検出レベル未満であった。これは、腫瘍部位での富化を示す(
図2H)。合計34の共通Vβ配列が、合わせてTIL産物の>50%を構成した(
図2I)。これら34クローンのうちの5つのみが処置前の血液で検出され、4つは非常に低頻度であった(
図2J)。その4つの系列特異的またはC/T抗原の各々を認識するCD8+T細胞のTCR遺伝子使用を評定するために、IFN−γ捕捉を使用して、TILからこれらの細胞をソートし、TCR Vβ使用を評定した。ソートされた細胞において7つの異なるVβ配列が同定され、TIL産物中のT細胞の4.7%に相当した(
図2L〜2O)。これら7つのクローン型およびBRAF特異的クローンの1つが、処置の10および24ヶ月後に得た血液中で検出された(
図2Jおよび2K)。抗原のクラスI MHCソーティングシグナルへの融合により抗原がエンドソームに標的化される、Kreiterら(J. Immunol. 180(1):309-318 (2008))により記載された方法を使用して、エンドソームに標的化したRNA発現を行った。ヒトHLA−B遺伝子のN末端25アミノ酸に融合したT7プロモーター、続いて、BamHI制限部位、増強GFPのコード配列、AgeI制限部位、ヒトHLA−B遺伝子のC末端55アミノ酸、続いてヒトベータグロビン非翻訳領域、続いて30ヌクレオチドポリAテール、続いて、そのポリAテール内での切断を方向付けるSapI制限部位を含有する、mRNA発現構築物pJV57を、遺伝子合成により構築した(Geneart、Life Sciences)。E600置換を含有する5’AgeIおよび3’BamHI部位が隣接しているBRAFアミノ酸575〜624をコードする、アニールされたオリゴヌクレオチド(Ultramers、Integrated DNA Technologies)をAgeI/BamHI消化pJV57にライゲーションすることにより、構築物pJV84をクローニングした。野生型V600アミノ酸を含有する5’AgeIおよび3’BamHI部位が隣接しているBRAFアミノ酸575〜624をコードする、アニールされたオリゴヌクレオチド(Ultramers、Integrated DNA Technologies)をライゲーションすることにより、構築物pJV85を作製した。次いで、pJV84およびpJV85をSapI(Thermo Fisher)で線状化し、Highscribe T7 ARCA mRNAキット(New England Biolabs)を使用してmRNAをin vitroで転写し、製造業者の指示に従ってリチウム沈殿法により精製した。mRNAをCD40L刺激B細胞にエレクトロポレーションした16時間後に、Tranら(上掲)により記載されたような共培養実験を行った。
(実施例3)
TIL産物の表現型特徴付け
【0216】
BRAF特異的クローンの表現型分析をTIL処置後に行った(
図3A〜3C)。BRAF
V600E特異的CD4
+T細胞は、エフェクターメモリー表現型(CD45RA
−CCR7
−CD27
−KLRG1
+)を示し、低レベルのPD−1を発現した(
図3A、3B)。BRAF
V600E特異的細胞の大部分が、CXCR3およびCCR4を発現した。細胞の小部分は、皮膚ホーミングマーカーである皮膚リンパ球関連抗原(CLA)も発現した。BRAF
V600Eペプチド活性化細胞は、IFN−γ、TNF−α、IL−4およびIL−21を産生し(
図3C)、これらを組み合わせて産生することもあった(データを示さない)。まとめると、これらのデータは、TIL注入後の循環BRAF特異的CD4+T細胞が、黒色腫における変異BRAFに対する確立されたメモリー細胞免疫応答と一致した、混合Th1/Th2表現型を有することを示唆する。
(実施例4)
BRAF
V600ETCRの構築および試験
【0217】
単独での自己抗原反応性CD8
+T細胞の養子移入後の黒色腫の永続的寛解は、極めて稀である(例えば、Johnson et al., Blood 114(3):535-546 (2009); Yee et al., PNAS 99(25):16168-16173 (2002); Dudley et al., J. Immunother. 24(4):363-373 (2001)を参照されたい)。理論により拘束されることを望まないが、BRAF
V600E特異的CD4
+T細胞は、抗腫瘍効果を方向付け、ネオ抗原をほとんど含有しない腫瘍に対する自己抗原反応性CD8
+T細胞の存続性および機能を補助すると考えられる。BRAF
V600E特異的CD4
+T細胞のHLA−DQA1*03/DQB1*03拘束アレルは、International Histocompatibility Workgroupデータベース(Petersdorf, E., personal communication, International Histocompatibility Working Group in Hematopoietic Cell Transplantation. 2017)における個体の29%に存在し、この患者からのBRAF
V600E特異的TCR遺伝子の単離は、TCRを操作したT細胞でのBRAF変異型腫瘍を有する患者に対する養子療法を容易にすることができる。様々なレベルのBRAF反応性クローンを含有する試料に関するTCR Vαシークエンシングにより、三(3)つのTCR Vβ配列と頻度が相関する四(4)つのTCR Vα配列を同定した(
図2G)。
【0218】
同定された三(3)つのTCRBアレルおよび四(4)つのTRCAアレルから四(4)つのTCRを構築し、抗原特異的応答について試験した(
図4A、4Bおよび5)。患者からの優勢TCR(pJV88)が、2名の健常ドナーからのCD4
+T細胞において発現され、野生型BRAF配列ではなくBRAF
V600Eを発現する細胞に対する特異性を付与した(
図2H)。患者からの2番目に優勢なVβクローンと可能性があるアルファ鎖のうちの1つとから作成したTCR pJV90は、ある程度の活性を示したが、非特異的ベースライン活性化を示す可能性もあった。
TCR VbおよびVaシークエンシング
【0219】
Qiagen DNeasyまたはQiamp micro DNAキットを製造業者の指示に従って使用して、臨床試料からDNAを単離した。TCRBシークエンシングは、ヒトTCRBシークエンシングキット(Adaptive Biotechnology)を製造業者の指示に従って使用して行い、MiSeq(フレッド・ハッチンソンがん研究センターのGenomics core)を使用してシークエンシングし、Adaptive biotechnologyソフトウェアによりデータ解析を行った。TCRAシークエンシングは、ヒトTCRAシークエンシングサービス(Adaptive Biotechnology)を使用して行った。
T細胞受容体構築
【0220】
TCR構築は、ベクターPRRL(Jones et al., Hum. Gene Ther. 20(6):630-640 (2009))内であり、これを、Lim and Brown, RNA Biology 13(9):743-747 (2016))におけるようなウッドチャック肝炎ウイルスXタンパク質の開始コドンおよび推定プロモーター領域と、ベータ鎖、続いてP2A翻訳スキップ配列、続いて対合を容易にするためにシステインが導入されたアルファ鎖に、6つの点変異を導入することによって、さらに修飾した(Kuball et al., Blood 109(6):2331-2338 (2007)を参照されたい)。TRBV28およびCDR3およびTRBJ1−3配列、続いて、残基57がシステイン置換されているTCRB1配列、続いて、P2Aスキップ配列ならびにTRAV21およびCDR3配列、続いて、TRAJ43およびTRAC配列を含有する、コドン最適化DNA断片を、genestring(Life Sciences)として合成し、PstIおよびAscI(Thermo Fisher)で線状化したベクターPRRL−SINへ、NEBuilderクローニングキット(New England Biolabs)を使用してクローニングし、配列を検証した。形質導入の1週間後、抗体クローン8F10(Thermo Scientific、カタログ番号TCR2740)を使用してVbeta3.1発現に基づいて細胞をソートし、上で説明したように迅速拡大によって拡大した。迅速拡大から14日目に、T細胞をアッセイに使用するかまたは凍結保存した。
(実施例5)
内在性TCRのCRISPR媒介欠失は導入遺伝子BRAF特異的TCRの発現増加をもたらす
【0221】
T細胞への合成T細胞受容体配列の遺伝子移入後、移入されたTCRアルファおよびベータ鎖は、内在性TCRサブユニットと発現およびシグナル伝達機構について競合し得る。内在性TCRの欠失が、移入されたTCRの発現を増加させるかどうかを調査するために、刺激されたT細胞に、内在性TCRアルファ(ガイドrna AGAGTCTCTCAGCTGGTACA;配列番号136)およびTCRベータ(ガイドrna:GGAGAATGACGAGTGGACCC;配列番号139)定常領域遺伝子(Ren et al., Clin. Cancer Res. 23(9):2255-2266 (2017)から)の切断を方向付けるガイドRNA配列を有するCRISPR−Cas9リボヌクレオタンパク質を、先ず、トランスフェクトした。12μM Cas9タンパク質(IDT)20μM ガイドRNA(IDT)とエレクトロポレーションエンハンサー(IDT)をアセンブリし、3μlを、ヌクレオフェクション緩衝液P3(Lonza)中の抗CD3/抗CD28 Dynabeads(Thermo−Fisher)での刺激の2日後に2×10
6個の初代ヒトT細胞に添加し、AMAXA 4Dヌクレオフェクションエレクトロポレーター(Lonza)を使用しプログラムEH−115を使用してヌクレオフェクトした。この組合せは、TCR受容体複合体のCD3成分の染色により測定して、TCR発現を有する細胞の>99%低減をもたらした(
図6A)。内在性TCRの遺伝子欠失をBRAF
V600E特異的TCRの遺伝子移入と組み合わせたとき、テトラマー染色により測定して、移入されたT細胞受容体の細胞表面における発現増加が観察された(
図6B)。
【0222】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を得ることができる。本明細書において言及するおよび/または出願データシートに収載する、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公表文献の全ては、2017年8月11日に出願した米国特許仮出願第62/544,695号を含めて、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。様々な特許、出願および公表文献の概念を利用するために必要な場合、実施形態の態様を修飾して、なおさらなる実施形態を得ることができる。
【0223】
上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、下記の特許請求の範囲において使用する用語は、本明細書および本特許請求の範囲において開示する特定の実施形態に、本特許請求の範囲を限定すると解釈すべきでなく、そのような特許請求の範囲に権利がある均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、本特許請求の範囲は、本開示により限定されない。