特表2020-534433(P2020-534433A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-534433金属製の開孔成型体の製造方法、および該方法により製造された成型体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-534433(P2020-534433A)
(43)【公表日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】金属製の開孔成型体の製造方法、および該方法により製造された成型体
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/08 20060101AFI20201030BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20201030BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20201030BHJP
   C23C 18/08 20060101ALI20201030BHJP
   C23C 24/08 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   C22C1/08 F
   C22C1/08 D
   B22F7/00 Z
   B22F3/11 Z
   C23C18/08
   C23C24/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-516562(P2020-516562)
(86)(22)【出願日】2018年9月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2018074882
(87)【国際公開番号】WO2019057624
(87)【国際公開日】20190328
(31)【優先権主張番号】102017216569.3
(32)【優先日】2017年9月19日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519278402
【氏名又は名称】アランタム ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ALANTUM EUROPE GMBH
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ビュットナー ティロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター ガンナー
(72)【発明者】
【氏名】ベーム ハンス−ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスガーバー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】キーベック ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー クリスティアン イマヌエル
(72)【発明者】
【氏名】コルヴェンバッハ ロビン
(72)【発明者】
【氏名】トルクール ラース
【テーマコード(参考)】
4K018
4K022
4K044
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA03
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4K044BA06
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4K044BB01
4K044CA15
4K044CA24
4K044CA53
4K044CA62
(57)【要約】
本発明は、金属製の開孔成型体の製造方法に関する。半製品として使用される金属製の開孔成型体の表面を、半製品を構成するものと同一の金属の粒子または半製品を構成する金属化合物の粒子でコーティングし、ここで、前記化合物は、熱処理により還元または熱分解もしくは化学分解することができ、化学還元または熱分解もしくは化学分解により得られる、それぞれの金属の粒子は、熱処理により製造される。コーティング操作の後、得られた開孔成型体の比表面積が、30m/l以上、および/または原材料と比較して5倍以上に増大するように、粒子を半製品および/または隣り合う粒子の表面に接合させる熱処理を行う。コーティングされた開孔成型体の熱処理の間、適切な雰囲気が維持される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む開孔成型体の製造方法であって、
半製品としての、金属を含む開孔成型体の表面上を同一金属の粒子でコーティングし、該半製品は、前記半製品を構成する金属化合物の粒子でコーティング、または、形成され、化合物は、熱処理により、還元または熱分解もしくは化学分解されることができ、また、化学還元または熱分解もしくは化学分解により得られるそれぞれの金属の粒子により形成されることができ;
ならびに
コーティングの後、粒子が、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して、半製品および/または隣り合う粒子の表面に接合される、少なくとも1つの熱処理を行い、
得られた開孔成型体の比表面積は、30m/l以上、および/または、非コーティング金属半製品の原材料と比較して、5倍以上に増大し、
半製品を構成する、還元可能な、または熱的もしくは化学的に分解可能な金属化合物の粒子でコーティングされた開孔成型体の熱処理において、少なくとも金属を形成する化合物の還元または熱分解もしくは化学分解が完了するまで、金属還元性雰囲気または分解に適した雰囲気を維持することを特徴とする、開孔成型体の製造方法。
【請求項2】
粉末、粉末混合物および/または懸濁液/分散液として、金属の粒子または金属化合物の粒子を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉末、粉末混合物、懸濁液および/または分散液としての、前記金属の粒子または前記金属化合物の粒子の塗布が、圧力補助方式において、静電的および/または磁気的に、浸漬、噴霧によって行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粒子の付着性を向上させるために、溶液、懸濁液/分散液中、または粉末として、有機および/または無機バインダーを用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属の粒子または特定の前記金属化合物の粒子の塗布が、複数回、特に少なくとも3回繰り返されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属の粒子または前記金属化合物の粒子で複数回コーティングする際、バインダーを用いる場合には、前記バインダーの塗布を複数回、特に少なくとも3回繰り返すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
バインダーの塗布および前記金属の粒子または前記金属化合物の粒子の塗布が、異なる気孔率、細孔径および/または比表面積を得るために、異なる量を用いて、半製品の表面の異なる側面、特に、互いに対向する位置の表面上で行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
半製品の金属として、および塗布する粒子として、Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、CeまたはMgを使用するか、あるいは、
Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、CeまたはMgの化合物、特に、その塩、酸化物、窒化物、水素化物、炭化物、硫化物、硫酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、アジド、硝酸塩、アミン、アミド、金属−有機錯体または金属−有機錯体の塩を、半製品の金属として、および、この金属の還元可能な、熱的または化学的に分解可能な化合物の粒子として、使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー材料の開孔体をそれぞれの金属で電気化学的にコーティングすることによって得られる半製品を、半製品として用いることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により製造される開孔成型体であって、
前記半製品の表面および/または隣り合う粒子の表面に、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して、接合された金属の粒子を有する成型体は、30m/l以上の比表面積を有することを特徴とする、開孔成型体。
【請求項11】
コーティングおよび焼結した前記開孔成型体中の細孔径が、使用した粒径の10000倍以下であることを特徴とする、請求項10に記載の成型体。
【請求項12】
前記成型体の材料中に、酸素が3質量%以下、好ましくは1質量%以下、存在することを特徴とする、請求項10または11に記載の成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を含む開孔成型体(open-pored molded body)または成形体(shaped body)を製造する方法、およびその方法により製造された成型体に関する。
【0002】
特に、多孔質金属成型体のその表面をコーティングして、その特性を向上させることが知られている。この目的のために、成型体の表面にバインダーまたは懸濁液を用いて塗布される粉末状材料を使用するのが通例であり、有機成分を熱処理により除去し、次いで、成形体の材料とは異なる化学組成のコーティングまたは表面領域を、成形体の表面上に高温で形成することができる。
【0003】
成形体の比表面積(specific surface area)はまた、これらの既知の可能性によって増大させることができるが、これは、既知の可能性によって限られた範囲でのみ可能であった。
【0004】
しかしながら、非常に大きな比表面積は、多くの産業用途に有利であり、例えば、触媒支援プロセス、濾過、または電気化学用途の電極において非常に望ましい。
【0005】
したがって、本発明の目的は、金属材料で構成され、増大した比表面積を有する開孔成型体を提供することである。
【0006】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。請求項10は、その方法によって製造された成型体に関する。有利な実施形態およびさらなる発展は、従属請求項に示される特徴によって実現することができる。
【0007】
本発明では、金属材料で構成される開孔体を半製品(semifinished part)として用いる。これらは、金属グリッド、金属メッシュ、金属織物、金属発泡体(foam)、金属ウール、または金属繊維を含む半製品であり得る。
【0008】
しかしながら、半製品は、ポリマー材料が金属で電気化学的に被覆された開孔成形体であることもできる。このようにして製造された半製品は、このポリマーの有機成分および揮発成分を熱分解により除去する熱処理を施すことができる。しかしながら、このポリマーの有機成分の除去は、後に、他の有機成分または揮発性成分を同時に除去する際にも行うことができ、これについては、以下でより詳細に論じる。
【0009】
本発明の一実施形態では、この熱処理の前後に以下の処理が行われる。
【0010】
開孔半製品を構成するのと同じ金属材料で構成される金属粒子による開孔体のコーティング工程。ここで、粒子はまた、成形体の内部、すなわち、半製品の細孔または空隙(void)に導入されることが望ましい。
【0011】
本発明のさらなる実施形態では、この熱処理の前後に、半製品としての開孔成形体に存在する化学元素の化合物(chemical compound)の粒子を、コーティングにより塗布する。前記粒子は、化学還元または熱分解もしくは化学分解による熱処理で、半製品を構成する、それぞれの化学元素に変換できる化合物から構成される。
【0012】
開孔半製品を製造したものと同じ金属材料の金属粒子、または半製品としての開孔成型体を構成する化学元素に変換可能な化学元素の化合物の粒子は、コーティング操作のための、粉末として、粉末混合物として、懸濁液として、または分散液として用いることができる。粉末、粉末混合物、および/または懸濁液/分散液による半製品の表面のコーティングは、静電的および/または磁気的に、圧力補助方式で、浸漬、噴霧(スプレー)によって行うことができる。
【0013】
本発明のさらなる代替において、開孔半製品をコーティングするために使用される粉末、粉末混合物、懸濁液または分散液は、金属化合物の粒子または金属粒子だけでなく、細かく分割した形態で、固体粉末として、粉末、粉末混合物、懸濁液または分散液中に混合された無機および/または有機バインダー、あるいは、金属化合物の粒子または金属粒子の懸濁液/分散液、溶液の液相に溶解して存在する無機および/または有機バインダーをも含むことができる。
【0014】
半製品の表面を、溶液または懸濁液/分散液の形態のバインダーでコーティングすることは、浸漬または噴霧によって行うことができる。次に、バインダーで濡らした開孔半製品を、粉末または金属粒子の粉末混合物でコーティングする。
【0015】
液体バインダーで濡れた表面上の粉末粒子の分布、および、また、表面への粒子の付着は、機械的エネルギー、特に振動の作用によって改善できる。
【0016】
粉末、粉末混合物、および/または懸濁液/分散液としての粒子の塗布は、何回も(複数回)、好ましくは少なくとも3回(3回以上)、特に好ましくは少なくとも5回(5回以上)繰り返すことができる。これは、それぞれの場合において行われる振動にも適用され、必要に応じてバインダーの塗布にも適用される。
【0017】
半製品の表面のコーティングはまた、半製品を製造する際に用いるポリマー材料の有機成分を除去する熱処理の前に行うことができる。粒子含有材料を塗布した後、ポリマー材料の有機成分および揮発成分、ならびに、同時に、使用されたバインダーを除去する熱処理を行う。
【0018】
熱処理および粒子塗布の後、開孔金属成型体の金属表面に、熱分解もしくは化学分解、例えば化学還元により得られた金属粒子から、または、金属粒子間に、焼結ネックまたは焼結ブリッジを形成する焼結を行う。
【0019】
ここで、このようにしてコーティングおよび焼結された開孔成型体の比表面積は、少なくとも30m/l(30m/l以上)に増大することが望ましいが、半製品としての非コーティング金属成形体の原材料と比較して、少なくとも5倍(5倍以上)に増大させることが望ましい。
【0020】
ここで、細孔径が450μm〜6000μmの範囲の、比表面積が1m/l〜30m/lの多孔質基材(basic framework)は、片側(気孔率(porosity)勾配)からの、または、完全な(completely)塗布に応じて、粒子(0.1μm〜250μmの範囲の粒径d50)で充填されることが望ましいか、あるいは、多孔質金属成形体のストラット(strut)を表面にコーティングすることが望ましい。
【0021】
粒子によるコーティングは、それぞれの場合において、異なる(different)気孔率、細孔径および/または比表面積を得るために、表面の異なる側、特に、互いに対向して配置された半製品の表面上に、異なる量を用いて行うことができる。これは、例えば、異なる側に配置された表面上に、バインダーの使用の有無にかかわらず、粉末、粉末混合物として、または懸濁液/分散液中の、異なる数の粒子の塗布によって達成することができる。このようにして、本発明に従って製造される成型体の段階的な形成を達成することもできる。
【0022】
コーティングおよび焼結した開孔成型体の塗布粒子層内の細孔径は、使用する粒子径の10000倍以下に相当することが望ましい。細孔容積の減少に関連する拡散、ひいては焼結による物質移動(mass transfer)が、温度及び保持時間の増加と共に促進されるので、これは、さらに、最大焼結温度およびこの温度での保持時間により影響され得る。
【0023】
本発明に従って製造された成型体を構成する材料は、Oを3質量%以下、好ましくは1質量%以下含むことが望ましい。この目的のために、有機成分を除去する熱処理、必要に応じて行う化学還元、および/または焼結を行う間、不活性または還元性雰囲気を与えることが好ましい。
【0024】
熱分解または化学分解の場合、この目的のために利用される熱処理において、適切な雰囲気が選択されることが望ましい。これは、熱分解の場合には、不活性雰囲気、例えばアルゴン雰囲気とすることができる。還元の場合には、例えば水素雰囲気を用いることができる。
【0025】
酸化による化学分解の場合、酸素、フッ素、塩素、これらのガスの任意の混合物、およびまた、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴンまたはクリプトンを含む任意の混合物を含む雰囲気が、特に有用である。
【0026】
化学分解の場合、金属カチオンは還元されて元素金属を形成することができる。しかしながら、アニオン成分を酸化することは可能である。比較的貴金属の化合物を、空気中、すなわち、比較的酸化性の雰囲気中で化学分解して、元素金属(Au、Pt、Pd)を得ることも考えられる。例示的方程式:2GeI<−>Ge(s)+GeI(g)による不均化は、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびクロムについても可能である。金属中心が既に酸化状態0である、結晶性の、金属−有機錯体(complex)またはその塩を用いることもできる。
【0027】
本発明に従って製造されたそのような開孔成型体は、また、(i)濾過の分野で、(ii)(例えば、Ag粒子でコーティングされたAg発泡体触媒を用いたエチレンオキシドの合成における)触媒として、(iii)電極材料として、または(iv)触媒活性物質の支持体(support)として用いることができる。
【0028】
用途(i)の場合、比表面積の増大は、吸着傾向および取込み容量が著しく増加するので、より良好な濾過性能につながる。
【0029】
用途(ii)では、比表面積の増大は、活性中心の数が増加するだけでなく、表面が明確にファセット(faceted)構造を有するので、触媒活性のより大きな比例的増加をもたらす。さらに、その結果生じる増加した表面エネルギーは、開孔した出発(starting)成形体のファセットされていない(unfaceted)表面と比較して、触媒活性の著しい増加をもたらす。
【0030】
用途例(iii)では、比表面積の増大は、同様に、活性中心の増加をもたらし、これは、表面のファセット構造と組み合わせて、商用電極(例えば、ニッケルまたはカーボン)と比較して、電気的過電圧の著しい減少をもたらす。具体的な用途として、例えば、Ni粒子またはMo粒子でコーティングされたNiまたはMo発泡体を使用する、電気分解についても言及することができる。特に、この用途の場合、細孔径の段階的な変化(グラデーション(gradation))により、気泡が良好に輸送されることを保証するので、片面(片側)を金属粒子でコーティングされた焼結金属開孔成型体を用いることも有利である。
【0031】
用途(iv)の場合、比表面積の増大は、活性成分、例えば、触媒ウォッシュコートの支持体表面への良好な接着をもたらし、これは、触媒材料の機械的、熱的および化学的安定性を著しく高める。
【0032】
本発明に従って製造される成型体に好適な金属は、以下の通りである:Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、CeまたはMg。したがって、半製品をコーティングするための本発明の方法では、半製品を構成するそれぞれの化学元素に対応する、これらの元素の粒子を使用することができる。
【0033】
熱処理において熱分解または化学分解によって、それぞれの金属の粒子に変換することができる、金属Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、Ce、Mg、Vの化合物としては、特に、それらの酸化物、窒化物、水素化物、炭化物、硫化物、硫酸塩、リン酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アジド、硝酸塩、アミン、アミド、金属−有機錯体、金属−有機錯体の塩、または粒子で形成された材料の分解性塩を用いることができ、本発明の第2の代替物において、半製品として存在する開孔成形体の表面は、これらの化合物でコーティングされる。特に好適な化合物は、以下の化合物である:Ni、Fe、Ti、Mo、Co、Mn、W、Cu、Ag、Au、PdまたはPt。
【0034】
化合物を熱分解または化学分解してそれぞれの金属を得る場合には、不活性、酸化性または還元性であり得る分解に適した雰囲気が、化合物の金属への熱分解または化学分解が起こるまで維持される。化合物のそれぞれの金属への化学還元のためには、化学還元が行われるまでの少なくともしばらくの間、還元性雰囲気、特に水素雰囲気中で、化学還元をもたらす熱処理を行うことが好ましい。
【0035】
気孔率、細孔径および比表面積は、コーティングに使用される粒子の形態によって実質的に影響され得る。大きい比表面積および微細な多孔質構造を実現するためには、小さいサイズおよび樹枝状形状を有する粒子、例えば電解質粉末が有利である。ギャップフリー配置を許容しない不規則な幾何形状の結果として、隣り合う(adjacent)粒子は空隙を形成し、これは部分的に接続されて、接触点と粒子本体との間にチャネルを与える。さらに、化合物の粒子を用いる場合には、熱分解または化学分解の際に、揮発性成分によって残された付加的な微小孔空間(micropore space)が形成される。化合物の揮発性成分の割合が大きいほど、全細孔容積中の微小孔空間の割合が大きくなる。したがって、酸化状態が高く、その結果、酸素の割合が高い酸化物を使用することは、金属酸化物粒子によるコーティングに有利である。構造の焼結活性は、比表面積の増大と共に高くなるので、材料依存の焼結温度は、微細孔(fine pore)が著しく緻密化することなく、機械的に安定な方法で、粒子が互いに焼結し、半製品に焼結するのに、十分に高くなるように選択される。
【0036】
以下、例を用いて本発明を説明する。
【0037】
実施例1
半製品として、銀から構成される、平均細孔径450μm、気孔率約95%、寸法70mm×63mm、厚さ1.6mmの開孔成形体(ポリウレタン発泡体上のAgの電解析出によって製造されるもの)を、少なくとも400℃の温度で熱処理して、有機成分、特にポリウレタンの成分を除去する。
【0038】
比表面積を増大させるために、金属粉末、すなわち、粒径d50が3μm〜9μmの範囲にあるAg金属粉末を合計2g使用する。
【0039】
半製品としての金属製開孔成形体の表面のコーティングは、粒径<80μmのステアラミドワックス0.6g、および、体積6mlのポリビニルピロリドンの1%濃度水溶液をバインダーとして用いて行う。細孔内を含む、半製品の表面に、バインダー溶液を噴霧した後、バインダーでコーティングした表面に銀粉末を塗布する。
【0040】
銀粉末およびステアラミドワックスを、Turbulaミキサーを用いて10分間混合した。
【0041】
このバインダーによるコーティング後、開孔被覆成形体を振動装置に固定し、銀粉末を両面に散布した。粉末は振動により開孔ネットワーク内に均一に分布した。粒子はストラット表面にのみ付着し、ストラットは完全に粉末粒子で覆われ、発泡体の開放気孔率は保持される。この手順を4回繰り返す。
【0042】
その後、さらに水素雰囲気中で熱処理を行い、バインダー除去と焼結を行う。この目的のために、炉を5K/分の加熱速度で加熱する。バインダーの除去を約300℃で開始し、600℃で終了し、保持時間は約30分である。焼結プロセスは、550℃〜850℃の温度範囲で、1分〜60分の保持時間で行われる。
【0043】
さらなる熱処理の間に、Agは粉末粒子からストラット材料中に拡散することによって、はじめて、粉末粒子は、それによって形成された焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して、半製品の表面のストラットに強固に接合される。
【0044】
さらなる熱処理の後、開孔成型体は銀100%で構成された。気孔率は約94%であった。
【0045】
ストラットの表面は粗さが高くなる。この理由は、塗布された粉末粒子が、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介してのみ、半製品の金属支持発泡体に接合され、元の粒子形態が保持されるからである。完成した開孔成型体の比内部表面積(BET法で測定される)は、初期(非コーティング状態)の10.8m/lから、その後(コーティング状態)の99.3m/lに増大することができた。
【0046】
実施例2
半製品として、ポリウレタンから構成される多孔質発泡体を電気化学的にコーティングすることによって得られた、平均細孔径450μm、気孔率95%、寸法70mm×63mm、厚さ1.6mmの、銀から構成される開孔成形体に、実施例1と同様にして、熱処理を施して有機成分を除去した。
【0047】
次に、有機成分を除去した半製品の表面に、下記組成の懸濁液を噴霧によりコーティングした:
− 48%のAgO金属酸化物粉末<5μm
− 1.5%のポリビニルピロリドン(PVP)バインダー
− 溶剤として、49.5%の水
− 1%の分散剤。
【0048】
この目的のために、最初に、粉末状バインダーを水に溶解し、次いで、他の全ての成分を添加し、スピードミキサー中で2×30秒間、2000rpmで混合し、懸濁液を得た。
【0049】
湿式粉末噴霧プロセスにより、半製品の両側に調製した粉末懸濁液を何回か噴霧した。ここで、懸濁液は噴霧装置内で霧化され、半製品の両側の表面に塗布される。懸濁液は、噴霧ノズルからの出口圧力によって半製品の多孔質ネットワーク内に均一に分散される。懸濁液はストラット表面にのみ付着するので、ストラットは懸濁液で完全に覆われ、半製品の開放気孔率はほとんど保持される。このようにしてコーティングされた半製品は、その後、室温で、空気中で乾燥された。
【0050】
続いて、バインダーの除去、還元および焼結のために、水素雰囲気下、炉中で熱処理を行った。この目的のために、炉を5K/分の加熱速度で加熱した。酸化銀の還元を、水素下で、100℃より低い温度で開始し、200℃で終了し、保持時間は約30分とした。次いで、残りのバインダーの除去および焼結プロセスは、1分〜180分の保持時間で、200℃〜800℃の温度範囲で、酸素含有雰囲気、例えば空気中で行うことができる。
【0051】
さらなる熱処理の間、第一に、酸化銀をナノ結晶形で存在する金属銀に還元した。残りのバインダーの除去と、続く、銀発泡ストラット上への金属銀粒子の部分焼結の結果として、粒子はより大きく、より粗い、結晶性の集合体(conglomerate)を形成するように成長し、第二に、Agはまた、粉末粒子が開孔成型体の表面のストラットに形成される焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して強固に接合するまで、粉末粒子からストラット材料中に拡散する。
【0052】
さらに熱処理すると、銀100%の均質な開孔成型体が得られる。
気孔率は約93%である。
【0053】
ストラットの表面は粗さが高くなる。この理由は、塗布した粉末粒子が、焼結ネック/焼結ブリッジを介してのみ半製品の表面に接合し、元の粒子形態を保持するためである。完成した開孔成型体の比内部表面積(BET法で測定される)は、実施したプロセスによって、初期(非コーティング状態)の10.8m/lから、その後(コーティング状態)の82.5m/lに増大することができた。
【0054】
実施例3
銅から構成され、平均細孔径が800μm、気孔率が約95%、寸法が200mm×80mm、厚さが1.6mmの開孔成形体(PU発泡体上のCuの電解析出によって製造されるもの)を半製品として用いた。
【0055】
半製品の表面をコーティングする粉末として、樹枝状で、平均粒径<63μm、質量20gのFFL型電解銅粉を用いた。
【0056】
バインダーとして、体積20mlのポリビニルピロリドン1%濃度水溶液を用いた。
【0057】
銅から構成される半製品の両面に、バインダー溶液を噴霧した。その後、バインダー被覆半製品を振動装置に固定し、両面に銅粉を散布した。粉末は振動により半製品の多孔質ネットワーク中に分布する。バインダーと粉末のコーティングを3回繰り返し、細孔空間を完全に充填した。
【0058】
水素雰囲気下の熱処理で、バインダーの除去と焼結を行った。この目的のために、炉を5K/minの加熱速度で加熱した。バインダーの除去を約300℃で開始し、600℃で終了し、保持時間を約30分とした。次いで、950℃の焼結温度まで加熱を続け、この温度を30分間維持した。
【0059】
熱処理中、銅から構成される粉末粒子は、半製品の表面に形成される焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して、粉末粒子が強固に接合されるまで、互いにおよびストラット材料に対して焼結され、高い気孔率が保持され、比表面積の増大が達成される。このようにして処理された開孔成型体の気孔率は54%、比表面積は67m/lである。
【0060】
実施例4
コバルト製の平均細孔径580μm、気孔率約95%、寸法70mm×65mm、厚さ1.9mmの開孔成形体(PU発泡体上のCoの電解析出により製造されるもの)を半製品として使用し、平均粒径<45μm、質量10gのCo金属粉末と、また、粒径<80μm、質量0.1gのステアラミドワックスを粉末として使用し、体積6mlのポリビニルピロリドンの1%濃度水溶液をバインダーとして使用した。
【0061】
コバルト粉末およびステアラミドワックスを、Turbulaミキサーを用いて10分間混合した。
【0062】
コバルトから構成される半製品の片面に、バインダー溶液を噴霧した。その後、それを振動装置に固定し、コバルト粉末を両面に散布した。振動の結果、粉末は半製品の多孔質ネットワーク内に均一に分布した。粒子はストラット表面にのみ付着し、ストラットは粉末粒子で完全に覆われ、発泡体の開放気孔率は初期のまま維持される。第2の工程では、予め開いていた細孔がバインダーによって一方の側で塞がれる程度に、半製品の表面の第1の側に、バインダー溶液を噴霧し、その後の更なる粉末の塗布によって、表面に近い細孔空間を完全に充填する。半製品の反対側では、ストラットのみが表面にコーティングされる。したがって、その結果、粉末の充填および発泡体中の気孔率は、半製品の第1の側面から反対の側面へと段階的に変化する。
【0063】
バインダーの除去および焼結のために、水素雰囲気中で熱処理を行った。この目的のために、炉を5K/分の加熱速度で加熱した。バインダーの除去を約300℃で開始し、600℃で終了し、保持時間を約30分とした。その後、1300℃の焼結温度まで加熱し、この温度を30分間維持した。
【0064】
熱処理の間、Coは、粉末粒子が、ストラットおよび(完全に充填された領域で)お互いの両方に形成される、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して、強固に接合されるまで、粉末粒子から半製品のストラット材料に拡散する。
完成した開孔成型体のCo含有量は100%であった。気孔率は、第1の側面から第1の側面と反対に位置する側面まで、成型体の全厚にわたって段階的に変化し、一方の側で約54%、他方の発泡体側で約93%である。完成した開孔成型体の比表面積は69m/lである。
【0065】
実施例5(Ni発泡(expanded)金属メッシュ+Ni粉末 → 均一コーティング+焼結)
【0066】
1.材料
セルサイズ約0.7mm×2mm、寸法75mm×75mm、厚さ約1mmの開孔ニッケル発泡金属メッシュ(元来0.25mmの厚さの溝付きNiシートを伸ばすことによって製造したもの)を半製品として使用し、平均粒径<10μm、質量8gのNi金属粉末、平均粒径<80μm、質量0.2gのステアラミドワックスを金属粉末として使用し、体積4mlのポリビニルピロリドンの1%濃度水溶液をバインダーとして使用した。
【0067】
粉末およびステアラミドワックスを、Turbulaミキサーを用いて10分間混合した。
【0068】
ニッケル発泡金属メッシュに、2つの対向する側面からバインダー溶液を噴霧した。その後、メッシュを振動装置に固定し、ニッケル粉末を両側に散布した。振動の結果、ニッケル粉末は、メッシュ上に均一に分布した。粒子は、メッシュストラットの表面にのみ付着するため、メッシュストラットは粉末粒子で完全に覆われ、発泡金属メッシュの開放気孔率は保持される。この手順を5回繰り返した。
【0069】
水素雰囲気下での熱処理により、バインダーの除去と焼結とを行った。この目的のために、炉を5K/分の加熱速度で加熱した。バインダーの除去を約300℃で開始し、600℃で終了し、保持時間を約30分とした。次いで、1280℃の焼結温度まで加熱を続け、この温度を30分間維持した。
【0070】
熱処理の間、Niは、粉末粒子が、メッシュストラットに形成される焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して強固に接合されるまで、粉末粒子からメッシュストラット材料へと拡散する。
【0071】
このようにして得られた開孔成型体は、ニッケル100%で構成された。
【0072】
ストラットの表面は、塗布された粉末粒子が、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介してのみ、半製品の支持メッシュ、および相互に接合されるので、高い粗さを有するため、元の粒子形態がほとんど保持される。ストラット上に塗布された高気孔率ニッケル層の厚さは、1μm〜300μmである。塗布層内の気孔率は40%である。
【国際調査報告】