(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
真核細胞においてRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、ただし前記真核細胞は植物細胞ではない方法が開示される。当該方法は、目的の標的RNAに対する上記非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤を上記真核細胞に導入する工程を含む。真核細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法も開示される。疾患の予防及び処置の方法、細胞アポトーシスを誘導する方法並びに真核性非ヒト生物を生成する方法も開示される。
真核細胞においてRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、ただし前記真核細胞は植物細胞ではなく、前記方法は、目的の標的RNAに対する前記非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤を前記真核細胞に導入し、それによって前記非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる前記遺伝子を改変する工程を含む方法。
真核細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、ただし前記真核細胞は植物細胞ではなく、前記方法は、前記RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を前記真核細胞に導入し、それによって前記RNAサイレンシング分子をコードする前記遺伝子を改変する工程を含み、前記標的RNA及び前記第2の標的RNAは異なる方法。
前記非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる前記遺伝子を前記改変することが、前記非コードRNA分子に、前記目的の標的RNAに対して少なくとも45%の相補性を付与することを含む請求項1又は請求項3に記載の方法。
前記RNAサイレンシング分子をコードする前記遺伝子を前記改変することが、前記RNAサイレンシング分子に、前記第2の標的RNAに対して少なくとも45%の相補性を付与することを含む請求項2又は請求項4に記載の方法。
前記非コードRNA分子の前記サイレンシング特異性が、前記目的の標的RNAのRNAレベル又はタンパク質レベルを測定することによって決定される請求項1、請求項3又は請求項5に記載の方法。
前記RNAサイレンシング分子の前記サイレンシング特異性が、前記第2の標的RNAのRNAレベル又はタンパク質レベルを測定することによって決定される請求項2、請求項4又は請求項6に記載の方法。
前記表現型的に決定されることは、細胞サイズ、成長速度/阻害、細胞形状、細胞膜完全性、腫瘍サイズ、腫瘍形状、生物の色素沈着、感染パラメータ及び炎症パラメータからなる群から選択される少なくとも1つの表現型の決定によってもたらされる請求項9に記載の方法。
前記非コードRNA分子又は前記RNAサイレンシング分子の前記サイレンシング特異性が遺伝子型的に決定される請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
前記RNAi分子が、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)及びトランス作用性siRNA(tasiRNA)からなる群から選択される請求項15に記載の方法。
前記非コードRNA分子が、核内小分子RNA(snRNA)、核小体小分子RNA(snoRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、リピート由来RNA、及び転移因子RNAからなる群から選択される請求項1、請求項3、請求項5、請求項7及び請求項9から請求項14のいずれか一項に記載の方法。
前記遺伝子の前記改変は、欠失、挿入、点突然変異及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変によって行われる請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
前記DNA編集剤が、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPRからなる群から選択されるDNA編集システムを含む請求項1から請求項29のいずれか一項に記載の方法。
前記真核細胞が、哺乳動物、昆虫、線虫、鳥類、爬虫類、魚類、甲殻類、真菌及び藻類からなる群から選択される真核生物から得られる請求項1から請求項38のいずれか一項に記載の方法。
必要とする対象において感染症を処置する方法であって、請求項1から請求項42のいずれか一項に記載の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記対象において前記感染症を処置する工程を含み、前記目的の標的RNAは、前記感染症の発症又は進行と関連する方法。
必要とする対象において単一遺伝子劣性遺伝疾患を処置する方法であって、請求項1から請求項42のいずれか一項に記載の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記対象において前記単一遺伝子劣性遺伝疾患を処置する工程を含み、前記目的の標的RNAは前記単一遺伝子劣性遺伝疾患と関連する方法。
必要とする対象において自己免疫疾患を処置する方法であって、請求項1から請求項42のいずれか一項に記載の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記対象において前記自己免疫疾患を処置する工程を含み、前記目的の標的RNAは前記自己免疫疾患と関連する方法。
必要とする対象において癌性疾患を処置する方法であって、請求項1から請求項42のいずれか一項に記載の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記対象において前記癌性疾患を処置する工程を含み、前記目的の標的RNAは前記癌性疾患と関連する方法。
必要とする対象において化学療法剤の有効性及び/又は特異性を増強する方法であって、請求項1から請求項42のいずれか一項に記載の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記対象において化学療法剤の有効性及び/又は特異性を増強する工程を含み、前記目的の標的RNAは前記化学療法剤の有効性及び/又は特異性の増強と関連する方法。
必要とする対象において細胞アポトーシスを誘導する方法であって、請求項1から請求項42のいずれか一項に記載の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって前記対象において細胞アポトーシスを誘導する工程を含み、前記目的の標的RNAは前記アポトーシスと関連する方法。
真核性非ヒト生物を生成する方法であって、ただし前記生物は植物ではなく、前記生物の細胞の少なくともいくつかは、目的の標的RNAに対するサイレンシング特異性を含む非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる改変遺伝子を含み、前記方法は、請求項1から請求項42のいずれか一項に記載の方法に従って、遺伝子を改変し、それによって前記真核性非ヒト生物を生成する工程を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、RNAサイレンシング分子を含む非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変することに関し、より詳細には、植物細胞ではない真核細胞における目的の内在又は外来性の標的RNAをサイレンシングするためのその使用に関するが、これに限定されない。
【0074】
本発明の原理及び動作は、図面及び添付の説明を参照することにより、より良く理解することができる。
【0075】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行されることが可能である。また、本明細書で使用される語法及び用語は、説明の目的のためのものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0076】
これまでに開発された最も強力な遺伝的な治療技術のうちの2つは、ウイルス性導入遺伝子の発現により失われた遺伝子機能の修復を可能にする遺伝子治療、及び標的mRNAのノックダウンにより欠損遺伝子の抑制を媒介するRNAiである。ゲノム編集技術における最近の進歩は、例えばゲノム中の所望の場所における部位特異的二本鎖切断(DSB)の誘導に続くゲノム編集(NHEJ及びHR)によりヒト患者の細胞の中の数個のヌクレオチドを編集することによって、ヒト患者の細胞の中の数個のヌクレオチドを編集することにより、生細胞においてDNA配列を変化させることを可能にした。
【0077】
本発明を実施に移す中で、本発明者らは、任意の目的の標的遺伝子(真核細胞に対して内在性又は外来性)を標的とし、それと干渉するように設計された非コードRNA分子を利用する遺伝子編集技術を考案した。本明細書に記載の遺伝子編集技術は、プロモーター、ターミネーター、選択マーカーを有する発現カセットを含む古典的な分子遺伝学的遺伝子導入ツールを必要としない。さらに、本発明のいくつかの実施形態の遺伝子編集技術は、非コードRNA分子(例えば内在性)のゲノム編集を含むが、そのゲノム編集は安定であり遺伝性である。
【0078】
本明細書のこれ以降において、及びそれに続く実施例の節においてに示されるように、本発明者らは、例えばRNAサイレンシング分子(例えばsiRNA、miRNA、piRNA、tasiRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA等)を含む真核細胞の内在性非コードRNA分子を利用し、そしてそれらを改変して、目的の任意のRNA標的を標的化することができるゲノム編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)プラットフォームを設計した(
図2の例示的なフローチャートを参照)。GEiGSを使用して、当該方法は、有望な非コードRNA分子のスクリーニング、これらの内在RNA分子中の数個のヌクレオチドを編集し、それによって、それらの活性及び/又は特異性を、例えば、変異タンパク質をコードする内在性RNA(例えば、癌における癌遺伝子)又は病原体によってコードされる外来性RNAを含む、目的の任意のRNAを有効にかつ特異的に標的とするためにリダイレクトすることを可能にする(
図1の例示的なフローチャートを参照)。総合すると、GEiGSは、内在性遺伝子の発現の調節のための新規な技術として、また、例えば癌、ウイルス、昆虫、真菌、線虫、熱、干ばつ(乾燥)、飢餓等の様々な生物的及び非生物的なストレスに対して生物を免疫するために利用することができる。
【0079】
従って、本発明の一態様によれば、真核細胞においてRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、ただしこの真核細胞は植物細胞ではなく、当該方法は、目的の標的RNAに対する上記非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤を真核細胞に導入し、それによって上記非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する工程を含む方法が提供される。
【0080】
本発明の別の態様によれば、真核細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、ただしこの真核細胞は植物細胞ではなく、当該方法は、上記RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を真核細胞に導入し、それによって上記RNAサイレンシング分子をコードする遺伝子を改変する工程を含み、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAは異なる方法が提供される。
【0081】
本明細書で使用する場合の用語「真核細胞」は、真核生物の任意の細胞を指す。真核生物は、単細胞生物及び多細胞生物を含む。単細胞真核生物としては、酵母、原性動物、粘菌及び藻類が挙げられるが、これらに限定されない。多細胞真核生物としては、動物(例えば、哺乳動物、昆虫、線虫、鳥類、魚類、爬虫類及び甲殻類)、真菌及び藻類(例えば、褐藻、紅藻、緑藻)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
一実施形態によれば、真核細胞は植物の細胞ではない。
【0083】
一実施形態によれば、真核細胞は動物細胞である。
【0084】
一実施形態によれば、真核細胞は、脊椎動物の細胞である。
【0085】
一実施形態によれば、真核細胞は、無脊椎動物の細胞である。
【0086】
特定の実施形態によれば、無脊椎動物細胞は、昆虫、巻貝、ハマグリ、タコ、ヒトデ、ウニ、クラゲ及び寄生虫の細胞である。
【0087】
特定の実施形態によれば、無脊椎動物細胞は、甲殻類の細胞である。例示的な甲殻類としては、エビ、小エビ、カニ、ロブスター及びザリガニが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
特定の実施形態によれば、無脊椎動物細胞は、魚類の細胞である。例示的な魚類としては、サケ、マグロ、スケトウダラ、ナマズ、タラ、コダラ(モンツキダラ)、小エビ、シーバス、ティラピア、ホッキョクイワナ及びコイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
一実施形態によれば、真核細胞は哺乳類細胞である。
【0090】
特定の実施形態によれば、哺乳類細胞は、非ヒト生物、例えば、齧歯動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、反芻動物(例えば、ウシ、ヒツジ、アンテロープ、シカ、及びキリン)、イヌ、ネコ、ウマ、及び非ヒト霊長類(これらに限定されない)の細胞である。
【0091】
特定の実施形態によれば、真核細胞はヒトの細胞である。
【0092】
一実施形態によれば、真核細胞は、初代培養細胞、細胞株、体細胞、胚細胞、幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS)、配偶子細胞、接合体細胞、胚盤胞細胞、胚、胎仔細胞及び/又はドナー細胞である。
【0093】
本明細書で使用する場合、語句「幹細胞」は、特定の、特殊化した機能を有する他の細胞型(例えば、十分に分化した細胞)へと分化するように誘導されるまで、培養下で長期間、未分化状態で留まることができる細胞(例えば、全能性幹細胞、多能性幹細胞又は複能性幹細胞)を指す。受精後の細胞分裂の最初の一対の中の胚細胞等の全能性細胞は、胚細胞及び胚体外細胞へ分化できる唯一の細胞であり、生存可能なヒトへと発達できる。好ましくは、語句「多能性幹細胞」は、すべての3つの胚性胚葉、すなわち、外胚葉、内胚葉及び中胚葉へと分化することができるか、又は未分化状態で留まる細胞を指す。多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ESC)及び人工多能性幹細胞(iPS)が挙げられる。複能性幹細胞としては、成体幹細胞及び造血幹細胞が挙げられる。
【0094】
語句「胚性幹細胞」は、すべての3つの胚性胚葉(すなわち、内胚葉、外胚葉及び中胚葉)の細胞へと分化することができるか、又は未分化状態で留まることができる胚細胞を指す。語句「胚性幹細胞」は、胚の着床前の、妊娠後に形成される胚組織(例えば、胚盤胞)(すなわち、着床前胚盤胞)から得られた細胞、着床後/原腸形成前の段階の胚盤胞から得られた拡張胚盤胞細胞(EBC)(国際公開第2006/040763号パンフレットを参照)、妊娠中のいつでも、好ましくは、妊娠10週の前に胎児の生殖組織から得られた胚性生殖(EG)細胞、及び単為生殖(単為生殖生物)によって刺激される未受精の卵子に由来する細胞を含んでもよい。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態の胚性幹細胞は、周知の細胞培養方法を用いて得ることができる。例えば、ヒト胚性幹細胞はヒト胚盤胞から単離することができる。ヒト胚盤胞は、典型的には、ヒトのインビボ着床前胚から得られるか、又は体外受精(IVF)胚から得られる。あるいは、単細胞ヒト胚を胚盤胞段階まで拡張することができる。
【0096】
市販の幹細胞も、本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができるということは分かるであろう。ヒトES細胞は、NIHヒト胚性幹細胞登録機関[www(dot)grants(dot)nih(dot)gov/stem_cells/registry/current(dot)htm]から購入することができる。
【0097】
加えて、胚性幹細胞は、マウス(Mills and Bradley、2001)、ゴールデンハムスター[Doetschmanら、1988、Dev Biol. 127:224−7]、ラット[Iannacconeら、1994、Dev Biol. 163:288−92]、ウサギ[Gilesら 1993、Mol Reprod Dev. 36:130−8;Graves及びMoreadith、1993、Mol Reprod Dev. 1993、36:424−33]、いくつかの家畜種[Notarianniら、1991、J Reprod Fertil Suppl. 43:255−60;Wheeler 1994、Reprod Fertil Dev. 6:563−8;Mitalipovaら、2001、Cloning. 3:59−67]及び非ヒト霊長類種(アカゲザル及びマーモセット)[Thomsonら、1995、Proc Natl Acad Sci USA. 92:7844−8;Thomsonら、1996、Biol Reprod. 55:254−9]を含む種々の種から得ることができる。
【0098】
「人工多能性幹細胞」(iPS;胚様幹細胞)は、多能性(すなわち、3つの胚性胚葉、すなわち、内胚葉、外胚葉及び中胚葉に分化することができること)が賦与されている成体体細胞の脱分化により得られる細胞を指す。本発明のいくつかの実施形態によれば、このような細胞は、分化した組織(例えば、皮膚等の体細胞組織)から得られ、胚性幹細胞の特徴を獲得するように細胞を初期化する遺伝子操作による脱分化を受ける。本発明のいくつかの実施形態によれば、人工多能性幹細胞は、体性幹細胞においてOct−4、Sox2、Kfl4及びc−Mycの発現を誘導することにより形成される。
【0099】
人工多能性幹細胞(iPS)(胚様幹細胞)は、例えば、線維芽細胞、肝細胞、胃上皮細胞等の体細胞をOct−3/4、Sox2、c−Myc、及びKLF4等の転写因子でレトロウイルス形質導入することにより、体細胞の遺伝子操作により体細胞から生成することができる[例えば、Parkら Reprogramming of human somatic cells to pluripotency with defined factors. Nature(2008) 451:141−146に記載されている]。
【0100】
語句「成体幹細胞」(「組織幹細胞」又は体細胞組織由来の幹細胞とも呼ばれる)は、[出生後又は出生前のいずれかの動物(とりわけ、ヒト)の]体細胞組織由来の任意の幹細胞を指す。成体幹細胞は、一般に、複数の細胞型へと分化することができる複能性幹細胞であると考えられている。成体幹細胞は、脂肪組織、皮膚、腎臓、肝臓、前立腺、膵臓、腸(腸管)、骨髄及び胎盤等の任意の成体組織、新生児(新生仔)組織又は胎児(胎仔)組織に由来することができる。
【0101】
一実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態で利用される幹細胞は、造血幹細胞、間質幹細胞又は間葉系幹細胞を含む骨髄(BM)由来幹細胞である[Dominici,Mら、(2001) J.Biol.Regul.Homeost.Agents. 15:28−37]。BM由来幹細胞は、腸骨稜、大腿骨、脛骨、脊椎、肋骨又は他の髄腔から得てもよい。
【0102】
造血幹細胞(HSC)は、成体組織幹細胞とも呼ばれてよいが、この造血幹細胞(HSC)は、任意の年齢の個体の血液又は骨髄組織から、又は新生児(新生仔)個体の臍帯血から得られる幹細胞を含む。本発明のいくつかの実施形態のこの態様に係る好ましい幹細胞は、好ましくは、ヒト又は霊長類(例えば、サル)由来の胚性幹細胞である。
【0103】
胎盤幹細胞及び臍帯血幹細胞は、「若い幹細胞」と呼ばれてもよい。
【0104】
間葉系幹細胞(MSC)、形成性の多能性芽細胞、は、1以上の間葉系組織(例えば、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織及び線維性結合組織、筋芽細胞)並びにサイトカイン等の生理活性因子からの種々の影響に応じて、胚体中胚葉に由来する組織以外の組織(例えば、神経細胞)を生じる。このような細胞は胚性卵黄嚢、胎盤、臍帯、胎児(胎仔)及び青年期の皮膚、血液及び他の組織から単離することができるが、BM中のそれらの存在量は、他の組織中のそれらの存在量をはるかに超え、従ってBMからの単離が今のところ好ましい。
【0105】
成体組織幹細胞は、Alison,M.R.[J Pathol.(2003)200(5):547−50]によって開示されたもの等の当該技術分野で公知の種々の方法を使用して単離することができる。胎児(胎仔)幹細胞は、Eventov−Friedman S,ら[PLoS Med.(2006) 3:e215]によって開示されたもの等の当該技術分野で公知の種々の方法を使用して単離することができる。
【0106】
造血幹細胞は、Robert Lanze編による「Handbook of Stem Cells」、Elsevier Academic Press、2004、第54巻、609−614頁、Gerald J Spangrude及びWilliam B Staytonによるisolation and characterization of hematopoietic stem cellsにより開示されたもの等の当該技術分野で公知の種々の方法を使用して単離することができる。
【0107】
間葉系幹細胞(MSC)を単離、精製及び拡張する方法は、当該技術分野で公知であり、その例としては、例えば、Caplan及びHaynesworthによる米国特許第5,486,359号及びJones E.A.ら、2002、Isolation and characterization of bone marrow multipotential mesenchymal progenitor cells、Arthritis Rheum. 46(12):3349−60により開示されたものが挙げられる。
【0108】
一実施形態によれば、真核細胞は、その自然環境(例えば、人体)から単離されたものである。
【0109】
一実施形態によれば、真核細胞は健常な細胞である。
【0110】
一実施形態によれば、真核細胞は、病的細胞又は疾患易発性細胞である。
【0111】
一実施形態によれば、真核細胞は癌細胞である。
【0112】
一実施形態によれば、真核細胞は、免疫細胞(例えばT細胞、B細胞、マクロファージ、NK細胞等)である。
【0113】
一実施形態によれば、真核細胞は、病原体に(例えば、細菌性、ウイルス性又は真菌性の病原体に)感染した細胞である。
【0114】
本明細書で使用する場合、用語「非コードRNA分子」は、アミノ酸配列に翻訳されず、そしてタンパク質をコードしないRNA配列をいう。
【0115】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、典型的には、RNAサイレンシングプロセシング機構又は活性を受ける。しかし、本明細書では、RNA干渉又は翻訳阻害をもたらすプロセシング機構を誘発しうるヌクレオチドのわずかな変化(例えば、24ヌクレオチドまで)も意図される。
【0116】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子は、細胞に対して内在性(天然、例えば未変性)である。
【0117】
非コードRNA分子はまた、細胞に対して外来性であり得る(すなわち、外部から付加され、そして細胞中に天然に存在しない)ことが理解される。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、固有の翻訳阻害活性を含む。
【0119】
いくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、固有のRNAi活性を含む。
【0120】
いくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、固有の翻訳阻害活性又は固有のRNAi活性を含まない(すなわち、非コードRNA分子は、RNAサイレンシング活性を有さない)。
【0121】
本発明の一実施形態によれば、非コードRNA分子は、標的RNA(例えば、天然標的RNA)に特異的であり、例えば、RT−PCR、ウェスタンブロット、免疫組織化学及び/若しくはフローサイトメトリー、又は任意の他の検出方法によってRNA又はタンパク質レベルで決定される場合に、標的遺伝子に対して100%未満の全体的相同性、例えば、標的遺伝子に対して99%未満、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%未満の全体的相同性を示して、第2の標的RNA又は目的の標的RNAを交差阻害又はサイレンシングするように設計されない限り(以下に論じる)、第2の標的RNA又は目的の標的RNAを交差阻害又はサイレンシングしない。
【0122】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、RNAサイレンシング分子又はRNA干渉(RNAi)分子である。
【0123】
用語「RNAサイレンシング」又はRNAiは、非コードRNA分子(「RNAサイレンシング分子」又は「RNAi分子」)が、配列特異的に、遺伝子発現又は翻訳の同時転写(転写時)阻害又は転写後阻害を媒介する細胞調節機構をいう。
【0124】
一実施形態によれば、RNAサイレンシング分子は、転写中のRNA抑制(同時転写遺伝子サイレンシング)を媒介することができる。
【0125】
特定の実施形態によれば、同時転写遺伝子サイレンシングは、エピジェネティックサイレンシング(例えば、遺伝子発現を妨げるクロマチン状態(chromatic state))を含む。
【0126】
一実施形態によれば、RNAサイレンシング分子は、転写後のRNA抑制(転写後遺伝子サイレンシング)を媒介することができる。
【0127】
転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)とは、典型的には、翻訳を妨げることによって活性を低下させるメッセンジャーRNA(mRNA)分子の分解又は切断の過程をいう。例えば、そして以下に詳細に議論されるように、RNAサイレンシング分子のガイド鎖は、mRNA分子中の相補的配列と対合し、そして例えば、アルゴノート2(Ago2)による切断を誘導する。
【0128】
同時転写遺伝子サイレンシングとは、典型的には遺伝子活性の不活性化(すなわち、転写抑制)を指し、典型的には細胞核内で起こる。このような遺伝子活性抑制は、標的DNAやヒストンをメチル化するメチルトランスフェラーゼなどのエピジェネティック関連因子によって媒介される。従って、同時転写遺伝子サイレンシングにおいて、小分子RNAと標的RNAとの結合(小分子RNA−転写産物相互作用)は、標的新生転写産物を不安定化し、そして遺伝子活性及び転写を抑制する構造へのクロマチン再構築を誘導するDNA改変酵素及びヒストン改変酵素(すなわち、エピジェネティック因子)を動員する。また、同時転写遺伝子サイレンシングにおいて、クロマチン関連の長鎖非コードRNA骨格は、小分子RNAとは無関係にクロマチン修飾複合体を動員してもよい。これらの同時転写サイレンシング機構は、不適切な転写事象を検出しサイレンシングするRNAサーベイランスシステムを形成し、自己強化エピジェネティックループを介してこれらの事象の記憶を提供する[D.Hoch及びD.Moazed、RNA−mediated epigenetic regulation of gene expression、Nat Rev Genet.(2015) 16(2):71−84に記載されている]。
【0129】
本発明の一実施形態によれば、RNAi生合成/プロセシング機構は、RNAサイレンシング分子を生成する。
【0130】
本発明の一実施形態によれば、RNAi生合成/プロセシング機構はRNAサイレンシング分子を生成するが、特異的標的は特定されていない。
【0131】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、RNA干渉(RNAi)を誘導することができる。
【0132】
以下は、本発明の特定の実施形態に従って使用され得る固有のRNAi活性を含む非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)の詳細な説明である。
【0133】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、前駆体からプロセシングされる。
【0134】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、一本鎖RNA(ssRNA)前駆体からプロセシングされる。
【0135】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、二重鎖構造の一本鎖RNA前駆体からプロセシングされる。
【0136】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、(例えば、完全及び不完全な塩基対合を含む)dsRNA前駆体からプロセシングされる。
【0137】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、非構造化RNA前駆体からプロセシングされる。
【0138】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、タンパク質コードRNA前駆体からプロセシングされる。
【0139】
一実施形態によれば、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子は、非コードRNA前駆体からプロセシングされる。
【0140】
一実施形態によれば、dsRNAは、2つの異なる相補的RNAから、又はそれ自体が折り畳まれてdsRNAを形成する単一のRNAから誘導することができる。
【0141】
完全及び不完全な塩基対合RNA(すなわち、二本鎖RNA;dsRNA)、siRNA及びshRNA − 細胞中の長いdsRNAの存在は、ダイサー(dicer)と呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサー(エンドリボヌクレアーゼダイサー又はRNaseモチーフを有するヘリカーゼとしても知られる)は、ヒトにおいてDICER1遺伝子によってコードされる酵素である。ダイサーは、短い干渉RNA(siRNA)として知られるdsRNAの短い小片へのdsRNAのプロセシングに関与する。ダイサー活性に由来するsiRNAは、典型的には、約21〜約23ヌクレオチド長であり、2つの3’ヌクレオチドオーバーハングを有する約19塩基対二重鎖を含む。
【0142】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、dsRNAをコードする遺伝子を改変して、サイレンシング特異性(サイレンシング活性を含む)を第2の標的RNA(すなわち、目的のRNA)に向け直すことを意図する。
【0143】
一実施形態によれば、21bpより長いdsRNA前駆体が使用される。種々の研究は、長いdsRNAが、ストレス応答を誘導することなく、又は有意なオフターゲット効果を引き起こすことなく、遺伝子発現をサイレンシングするために使用され得ることを実証する。例えば、以下を参照[Stratら、Nucleic Acids Research、2006、第34巻、第13号、3803−3810;Bhargava Aら、Brain Res. Protoc.2004;13:115−125;Diallo M.ら、Oligonucleotides.2003;13:381−392;Paddison P.J.ら、Proc.Natl Acad.Sci.USA.2002;99:1443−1448;Tran N.ら、FEBS Lett.2004;573:127−134]。
【0144】
用語「siRNA」は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する小分子の阻害性RNA二重鎖(一般に18〜30塩基対)を指す。典型的には、siRNAは、中央の19bp二重鎖領域及び末端上の対称的な2塩基3’−オーバーハングを有する21マー(塩基長)として化学的に合成されるが、25〜30塩基長の化学的に合成されたRNA二重鎖は、同じ位置の21マーと比較して、100倍もの効力の増加を有し得ることが最近記載されている。RNAiを誘発する際に、より長いRNAを使用して得られた観察された増大した効力は、生成物(21マー)の代わりに基質(27マー)をダイサーに提供することから生じること、及びこれが、RISCへのsiRNA二重鎖の侵入の速度又は効率を改善することが示唆される。
【0145】
3’−オーバーハングの位置は、siRNAの効力に影響を及ぼすが、組成は影響を及ぼさないこと、及びアンチセンス鎖上に3’−オーバーハングを有する非対称二重鎖は、一般に、センス鎖上に3’−オーバーハングを有するものよりも強力であることが見出されている(Roseら、2005)。
【0146】
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖は、ヘアピン又はステムループ構造(例えば、shRNA)を形成するために連結され得る。従って、言及したように、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング分子は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)であってもよい。
【0147】
短鎖ヘアピンRNA「shRNA」という用語は、本明細書中で使用される場合、相補的配列の第1及び第2の領域を含むステムループ構造を有するRNA分子をいい、これらの領域の相補性及び配向の程度は、領域間で塩基対形成が起こるように十分であり、第1及び第2の領域は、ループ領域によって連結され、ループは、ループ領域内のヌクレオチド(又はヌクレオチドアナログ)間の塩基対形成の欠如から生じる。ループ中のヌクレオチドの数は、3〜23、又は5〜15、又は7〜13、又は4〜9、又は9〜11(両端の数値を含む)である。ループ中のヌクレオチドのいくつかは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。ループを形成するために使用され得るオリゴヌクレオチド配列の例としては、5’−CAAGAGA−3’及び5’−UUACAA−3’(国際公開第2013126963号パンフレット及び国際公開第2014107763号パンフレット)が挙げられる。得られる一本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステムループ又はヘアピン構造を形成することが、当業者によって認識される。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング分子は、RNAのみを含有する分子に限定される必要はなく、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドをさらに包含する。
【0149】
トランス作用性siRNA(Ta−siRNA)、リピート関連siRNA(Ra−siRNA)及び天然アンチセンス転写産物由来siRNA(Nat−siRNA)を含む種々の型のsiRNAが、本発明によって意図される。
【0150】
一実施形態によれば、サイレンシングRNAは、約26及び31ヌクレオチド長のPiwi相互作用RNAのクラスである「piRNA」を含む。piRNAは、典型的には、Piwiタンパク質との相互作用を介してRNA−タンパク質複合体を形成する、すなわち、アンチセンスpiRNAは、典型的には、Piwiタンパク質(例えば、Piwi、Ago3及びAubergine(Aub))にロードされる(取り込まれる)。
【0151】
miRNA − 別の実施形態によれば、RNAサイレンシング分子はmiRNAであってもよい。
【0152】
用語「マイクロRNA」、「miRNA」及び「miR」は同義であり、遺伝子発現を調節する長さ約19〜28ヌクレオチドの非コード一本鎖RNA分子の一群を指す。miRNAは、広範囲の生物(例えば、ウイルス)に見出され、発生、恒常性、及び疾患の病因において役割を果たすことが示されている。
【0153】
最初に、pre−miRNAは、長い非完全二本鎖ステムループRNAとして存在し、これは、成熟ガイド鎖(miRNA)及びパッセンジャー鎖(miRNA
*)として公知の類似のサイズのフラグメントを含むsiRNA様二重鎖へと、ダイサーによってさらにプロセシングされる。miRNAとmiRNA
*は、pri−miRNAとpre−miRNAの対向アームに由来してもよい。miRNA
*配列は、クローニングされたmiRNAのライブラリー中に見出されることがあるが、典型的にはmiRNAよりも低い頻度で見出される。
【0154】
当初はmiRNA
*との二本鎖種として存在しているが、最終的にはmiRNAは一本鎖RNAとしてRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボ核タンパク質複合体に取り込まれるようになる。さまざまなタンパク質がRISCを形成することができ、それによってmiRNA/miRNA
*二重鎖に対する特異性、標的遺伝子の結合部位、miRNAの活性(抑制又は活性化)、及びmiRNA/miRNA
*二重鎖のどの鎖がRISCにロードされるかにばらつきが生じる可能性がある。
【0155】
miRNA:miRNA
*二重鎖のmiRNA鎖がRISCにロードされると、miRNA
*は除去され、分解される。RISCにロードされるmiRNA:miRNA
*二重鎖の鎖は、5’末端があまり緊密に対合していない鎖である。miRNA:miRNA
*の両端がおよそ等価な5’対合をもつ場合には、miRNAとmiRNA
*の両方が遺伝子サイレンシング活性をもつ可能性がある。
【0156】
RISCは、miRNAとmRNAとの間の高いレベルの相補性、特にmiRNAのヌクレオチド2〜8(「シード配列」と呼ばれる)に基づいて標的核酸を特定する。
【0157】
翻訳の効率的な阻害を達成するためのmiRNAとそのmRNA標的との間の塩基対形成必要性については、多くの研究が注目している(Bartel 2004、Cell 116−281による総説)。全ゲノム上のmiRNA結合を解析する計算研究から、標的結合におけるmiRNAの5’側の塩基2〜8(「シード配列」とも呼ばれる)の特異的な役割が示唆されているが、通常「A」であることがわかっている最初のヌクレオチドの役割も認識されていた(Lewisら2005 Cell 120−15)。同様に、ヌクレオチド1〜7又は2〜8を使用して、Krekら(2005、Nat Genet 37−495)によって標的が特定及び確認された。mRNAの標的部位は5’ UTR、3’ UTR、又はコード領域にあってもよい。興味深いことに、複数のmiRNAが同一又は複数の部位を認識することによって同一のmRNA標的を調節している可能性がある。遺伝的に特定されたほとんどの標的に複数のmiRNA結合部位が存在することは、複数のRISCの協同作用が最も効率的な翻訳阻害をもたらすことを示している可能性がある。
【0158】
miRNAは、mRNA切断又は翻訳抑制という2つの機構のいずれかによって、RISCを遺伝子発現の下方制御に誘導する可能性がある。mRNAがmiRNAとある程度相補性をもつ場合には、miRNAがmRNAの切断を指定することもある。miRNAが切断を誘導する場合、切断は、典型的には、miRNAの残基10及び11に対合するヌクレオチド間である。あるいは、miRNAがmiRNAに対して必要な程度の相補性を有さない場合、miRNAは翻訳を抑制し得る。動物ではmiRNAと結合部位との間の相補性の程度が低い可能性があるため、翻訳抑制が動物でより多くみられる可能性がある。
【0159】
miRNA及びmiRNA
*のいずれかの一対の5’末端及び3’末端に可変性(ばらつき)がある可能性があることに注意すべきである。この可変性は、切断部位に関するドローシャ及びダイサーの酵素プロセシング(処理)の可変性に起因し得る。miRNA及びmiRNA
*の5’末端及び3’末端における可変性は、pri−miRNA及びpre−miRNAのステム構造におけるミスマッチに起因する可能性もある。ステム鎖のミスマッチは、異なるヘアピン構造の集団をもたらし得る。ステム構造の可変性はまた、ドローシャ及びダイサーによる切断産物の可変性をもたらし得る。
【0160】
pre−miRNA配列は45〜90、60〜80又は60〜70ヌクレオチドを含み得、一方、pri−miRNA配列は45〜30,000、50〜25,000、100〜20,000、1,000〜1,500又は80〜100ヌクレオチドを含み得ることが理解される。
【0161】
一実施形態によれば、miRNAは、miR−150(例えば、例えば配列番号13に示されるヒトmiR−150)を含む。
【0162】
一実施形態によれば、miRNAは、miR−210(例えば、例えば配列番号14に示されるヒトmiR−210)を含む。
【0163】
一実施形態によれば、miRNAは、Let−7(例えば、例えば配列番号15に示されるヒトLet−7)を含む。
【0164】
一実施形態によれば、miRNAは、miR−184(例えば、例えば配列番号16に示されるヒトmiR−184)を含む。
【0165】
一実施形態によれば、miRNAは、miR−204(例えば、例えば配列番号17に示されるヒトmiR−204)を含む。
【0166】
一実施形態によれば、miRNAは、miR−25(例えば、例えば配列番号18に示されるヒトmiR−25)を含む。
【0167】
一実施形態によれば、miRNAは、miR−34(例えば、例えばそれぞれ配列番号19〜配列番号21に示されるヒトmiR−34a/b/c)を含む。
【0168】
さらなるmiRNAは、本明細書中下記の表1Bに提示されている。
【0169】
アンチセンス − アンチセンスは、遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズすることによって、その遺伝子の発現を阻止又は阻害するように設計された一本鎖RNAである。標的RNAの下方制御は、標的RNAをコードするmRNA転写産物と特異的にハイブリダイズし得るアンチセンスポリヌクレオチドを使用して達成され得る。
【0170】
言及したように、非コードRNA分子は、カノニカルな(内因性)RNAi活性を含まなくてもよい(例えば、カノニカルなRNAサイレンシング分子ではないか、又はその標的は特定されていない)。このような非コードRNA分子には、以下のものが含まれる。
【0171】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、転移RNA(tRNA)である。用語「tRNA」は、核酸のヌクレオチド配列とタンパク質のアミノ酸配列との間の物理的連結として働くRNA分子を指し、以前は可溶性RNA又はsRNAと呼ばれていた。tRNAは、典型的には、約76〜90ヌクレオチド長である。
【0172】
一実施形態によれば、非コードRNA分子はリボソームRNA(rRNA)である。用語「rRNA」は、リボソームのRNA成分、すなわちリボソーム小サブユニット又はリボソーム大サブユニットのいずれかを指す。
【0173】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、核内小分子RNA(snRNA又はU−RNA)である。用語「sRNA」又は「U−RNA」は、真核細胞における細胞核のスプライシング斑点及びカハール体に見出される小分子RNA分子を意味する。snRNAは、典型的には約150ヌクレオチド長である。
【0174】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、核小体小分子RNA(snoRNA)である。用語「snoRNA」は、主として他のRNA、例えばrRNA、tRNA及びsnRNAの化学修飾を導く小分子RNA分子のクラスを指す。snoRNAは、典型的には、2つのクラスのうちの1つに分類される:C/DボックスsnoRNAは、典型的には、約70〜120ヌクレオチド長であり、メチル化に関連し、そしてH/ACAボックスsnoRNAは、典型的には、約100〜200ヌクレオチド長であり、そしてシュードウリジル化に関連する。
【0175】
snoRNAと同様にscaRNA(すなわち、Small Cajal body RNA gene(小分子カハール体RNA遺伝子))もsnoRNAと同様のRNA成熟の役割を果たすが、その標的はスプライセオソームsnRNAであり、scaRNAは(核のカハール体の)スプライセオソームsnRNA前駆体の部位特異的改変を行う。
【0176】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、細胞外RNA(exRNA)である。用語「exRNA」は、転写された場所である細胞の外部に存在するRNA種(例えば、エキソソームRNA)を意味する。
【0177】
一実施形態によれば、非コードRNA分子は、長鎖非コードRNA(lncRNA)である。用語「lncRNA」又は「長鎖ncRNA」は、典型的には200ヌクレオチドより長い非タンパク質コード転写産物を指す。
【0178】
一実施形態によれば、非コードRNA分子の非限定的な例としては、マイクロRNA(miRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、トランス作用性siRNA(tasiRNA)、核内小分子RNA(snRNA又はURNA)、核小体小分子RNA(snoRNA)、小分子カハール体RNA(scaRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、細胞外RNA(exRNA)、リピート由来RNA、転移因子RNA及び長鎖非コードRNA(lncRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
一実施形態によれば、RNAi分子の非限定的な例には、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)及びトランス作用性siRNA(tasiRNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態の方法は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに向けて、非コードRNA分子のサイレンシング活性及び/又は特異性をリダイレクトするために(又は非コードRNA分子がRNA分子をサイレンシングする固有の能力を有さない場合、サイレンシング活性及び/又は特異性を生成するために)利用される。
【0181】
一実施形態によれば、標的RNA及び第2の標的RNAは異なる。
【0182】
一実施形態によれば、真核細胞において標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子を改変する方法であって、ただし上記真核細胞は植物細胞ではない方法は、RNAサイレンシング分子のサイレンシング活性及び/又は特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤を真核細胞に導入し、それによってRNAサイレンシング分子をコードする遺伝子を改変する工程を含み、標的RNA及び第2の標的RNAは異なる。
【0183】
本明細書中で使用される場合、用語「サイレンシング特異性をリダイレクトする」、「サイレンシング特異性を向け直す」は、非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)の非天然標的に向かって非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)の元の特異性を再プログラミングすることをいう。従って、非コードRNAの本来の特異性は破壊され(すなわち、機能の喪失)、新しい特異性は、天然標的とは異なるRNA標的(すなわち、目的のRNA)に対するものである(すなわち、機能の獲得)。非コードRNAがサイレンシング活性を持たない場合には、機能の獲得のみが起こることが理解されるであろう。
【0184】
本明細書で使用する場合、用語「標的RNA」は、非コードRNA分子によって天然に結合されるRNA配列をいう。従って、標的RNAは、非コードRNAの基質として当業者によって考慮される。
【0185】
本明細書で使用する場合、用語「第2の標的RNA」は、非コードRNA分子によって天然には結合されないRNA配列(コード又は非コード)をいう。従って、第2の標的RNAは、非コードRNAの天然の基質ではない。
【0186】
本明細書で使用する場合、用語「目的の標的RNA」は、設計された非コードRNA分子によってサイレンシングされるべきRNA配列(コード又は非コード)をいう。
【0187】
本明細書で使用する場合、用語「標的遺伝子をサイレンシングすること」は、標的遺伝子からのタンパク質及び/又はmRNA産物のレベルにおける(例えば、同時転写及び/又は転写後遺伝子サイレンシングによる)欠如又は観察可能な減少を意味する。従って、標的遺伝子のサイレンシングは、本発明の設計された非コードRNA分子によって標的化されない標的遺伝子と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%であり得る。
【0188】
サイレンシングの結果は、真核細胞又は真核生物の外向きの特性の試験によって、又は生化学的技術(以下に議論されるように)によって確認され得る。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態の設計された非コードRNA分子は、真核細胞若しくは真核生物の成長、分化又は機能に影響を及ぼさないという条件で、いくつかのオフターゲット特異性効果を有することができることが理解されるであろう。
【0190】
一実施形態によれば、第2の標的RNA又は目的の標的RNAは、真核細胞に対して内在性である。例示的な内在性の第2標的RNA又は目的の標的RNAには、癌及び/又はアポトーシスに関連する遺伝子の産物が含まれるが、これらに限定されない。例示的な癌に関連する標的遺伝子としては、本明細書中でこのあと論じられるように、p53、BAX、PUMA、NOXA及びFAS遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
一実施形態によれば、第2の標的RNA又は目的の標的RNAは、真核細胞に対して外来性である(本明細書では異種とも呼ばれる)。このような場合、第2の標的RNA又は目的の標的RNAは、真核細胞ゲノム(すなわち、非コードRNAを発現する)の天然の一部ではない遺伝子の産物である。例示的な外来性標的RNAには、本明細書中以下にさらに議論されるように、病原体(例えば昆虫、ウイルス、細菌、真菌、線虫)の遺伝子等の感染症に関連する遺伝子の産物が挙げられるが、これらに限定されない。外来性標的RNA(コード又は非コード)は、真核生物の内在RNA配列(例えば、内在核酸配列と部分的に相同であり得る)と配列同一性を共有する核酸配列を含み得る。
【0192】
内在非コードRNA分子と標的RNAとの特異的結合は、コンピューターアルゴリズム(例えば、BLAST)によって決定することができ、そして例えば、ノーザンブロット、In Situ(インサイチュ)ハイブリダイゼーション、QuantiGene Plexアッセイなどを含む方法によって検証され得る。
【0193】
用語「相補性」又は「相補的」の使用は、非コードRNA分子(又はプロセシングされる小分子RNA形態で存在する非コードRNA分子の少なくとも一部、又は二本鎖ポリヌクレオチド若しくはその一部の少なくとも1本鎖、又は一本鎖ポリヌクレオチドの一部)が、生理的条件下で標的RNA又はそのフラグメントにハイブリダイズして、標的遺伝子の制御又は機能又は抑制をもたらすことを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、非コードRNA分子は、標的RNA(又は所与の標的遺伝子のファミリーメンバー)中の10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500又はこれより多い連続するヌクレオチドの配列と比べて、100%配列同一性又は少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0194】
本明細書で使用する場合、非コードRNA分子、又はそれらのプロセシングされる小分子RNA形態は、5’から3’に読み取られた配列のうちの1つの配列のすべてのヌクレオチドが、3’から5’に読み取られた場合の他の配列のすべてのヌクレオチドに相補的である場合、「完全な相補性」を示すと言われる。基準ヌクレオチド配列と完全に相補的なヌクレオチド配列は、基準ヌクレオチド配列の逆相補配列と同一の配列を示すであろう。
【0195】
配列相補性を決定するための方法は、当技術分野で周知であり、当技術分野で周知のバイオインフォマティクスツール(例えば、BLAST、多重配列アラインメント)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
一実施形態によれば、非コードRNA分子がsiRNAであるか、又はsiRNAにプロセシングされる場合、相補性は、その標的配列に対して90〜100%の範囲(例えば、100%)である。
【0197】
一実施形態によれば、非コードRNA分子がmiRNA若しくはpiRNAであるか、又はmiRNA若しくはpiRNAにプロセシングされる場合、相補性は、その標的配列に対して33〜100%の範囲である。
【0198】
一実施形態によれば、非コードRNA分子がmiRNAである場合、シード配列相補性(すなわち、5’からのヌクレオチド2〜8)は、その標的配列に対して85〜100%の範囲(例えば、100%)である。
【0199】
一実施形態によれば、非コードRNAは、小分子RNA形態にさらにプロセシングされ得る(例えば、pre−miRNAは、成熟miRNAにプロセシングされる)。このような場合、相同性は、プロセシングされる小分子RNA形態(例えば、成熟miRNA配列)に基づいて測定される。
【0200】
本明細書で使用する場合、用語「小分子RNA形態」は、標的RNA(又はそのフラグメント)とハイブリダイズし得る成熟小分子RNAをいう。一実施形態によれば、小分子RNA形態はサイレンシング活性を有する。
【0201】
一実施形態によれば、標的配列に対する相補性は、プロセシングされる小分子RNA形態の少なくとも約33%(例えば、21〜24ntの33%)である。従って、例えば、非コードRNA分子がmiRNAである場合、成熟miRNA配列(例えば、21nt)の33%は、シード相補性を含む(例えば、21ntのうちの7nt)。
【0202】
一実施形態によれば、標的配列に対する相補性は、プロセシングされる小分子RNA形態の少なくとも約45%(例えば、21〜28ntの45%)である。従って、例えば、非コードRNA分子がmiRNAである場合、成熟miRNA配列(例えば、21nt)の45%は、シード相補性を含む(例えば、21ntのうちの9〜10nt)。
【0203】
一実施形態によれば、非コードRNA(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して約10%、20%、30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%までの相補性を有するものとして選択される。
【0204】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して99%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0205】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して98%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0206】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して97%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0207】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して96%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0208】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して95%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0209】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して90%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0210】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して85%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0211】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して50%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0212】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(すなわち、改変前)は、典型的には、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して33%以下の相補性を有するものとして選択される。
【0213】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して、少なくとも約33%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらには100%の相補性を含むように設計される。
【0214】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小33%の相補性(例えば、85〜100%のシードマッチ(seed match))を含むように設計される。
【0215】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小40%の相補性を含むように設計される。
【0216】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小45%の相補性を含むように設計される。
【0217】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小50%の相補性を含むように設計される。
【0218】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小60%の相補性を含むように設計される。
【0219】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小70%の相補性を含むように設計される。
【0220】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小80%の相補性を含むように設計される。
【0221】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小85%の相補性を含むように設計される。
【0222】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小90%の相補性を含むように設計される。
【0223】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小95%の相補性を含むように設計される。
【0224】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小96%の相補性を含むように設計される。
【0225】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小97%の相補性を含むように設計される。
【0226】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小98%の相補性を含むように設計される。
【0227】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して最小99%の相補性を含むように設計される。
【0228】
特定の実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対して100%の相補性を含むように設計される。
【0229】
非コードRNA分子のサイレンシング活性及び/若しくは特異性を生成するため、又は非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/若しくは特異性を、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに向けてリダイレクトするために、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子を、DNA編集剤を用いて改変する。
【0230】
以下は、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子に核酸改変を導入するために使用される方法及びDNA編集剤、並びに本開示の特定の実施形態に従って使用され得るそれを実施するための薬剤の種々の非限定的な例の説明である。
【0231】
改変エンドヌクレアーゼを用いたゲノム編集 − このアプローチは、典型的にはゲノム中の所望の位置(複数可)で特異的な二本鎖切断(DSB)を切断し作製するために人工的に改変されたヌクレアーゼを用いる逆遺伝学的方法を指し、その二本鎖切断はその後、相同組換え(HR)又は非相同末端結合(NHEJ)などの細胞内在性プロセスによって修復される。NHEJは最小限の末端トリミングの有無にかかわらず二本鎖切断(DSB)でDNA末端を直接結合する一方、HRは欠失したDNA配列を切断部位で再生/コピーするために鋳型(すなわち、S期に形成された姉妹染色分体)として相同ドナー(donor)配列を利用する。ゲノムDNAに特定のヌクレオチド改変を導入するために、所望の配列を含むドナーDNA修復鋳型が、HRの間に存在しなければならない(外因的に提供される一本鎖又は二本鎖のDNA)。
【0232】
ほとんどの制限酵素は、DNA上の数塩基対を標的として認識し、これらの配列は、しばしば、ゲノムにわたる多くの位置に見出され、所望の位置に限定されない複数の切断を生じるので、ゲノム編集は、従来の制限エンドヌクレアーゼを使用して実施され得ない。この課題を克服し、部位特異的な一本鎖切断又は二本鎖切断(DSB)を作り出すために、現在までにいくつかの異なるクラスのヌクレアーゼが発見され、生物工学的に操作されている。これらには、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPR/Cas9(及びすべてのそれらの変法)システムが含まれる。
【0233】
メガヌクレアーゼ − メガヌクレアーゼは、一般に、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−Cysボックスファミリー及びHNHファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性及び認識配列に影響を及ぼす構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADGモチーフの1つ又は2つのコピーのいずれかを有することによって特徴付けられる。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造要素、従ってDNA認識配列特異性及び触媒活性に関して互いに大きく分離されている。メガヌクレアーゼは、微生物種において一般的に見出され、そして非常に長い認識配列(>14bp)を有するという独特の特性を有し、従って、それらを、所望の位置での切断に対して天然に非常に特異的にする。
【0234】
これを利用して、ゲノム編集における部位特異的二本鎖切断(DSB)を作ることができる。当業者は、これらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、このような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。この課題を克服するために、突然変異誘発及びハイスループットスクリーニング法を用いて、ユニークな配列を認識するメガヌクレアーゼ変異体が作製された。例えば、種々のメガヌクレアーゼが融合されて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素が作製されている。
【0235】
あるいは、メガヌクレアーゼのDNA相互作用アミノ酸は、配列特異的メガヌクレアーゼを設計するために変更され得る(例えば、米国特許第8,021,867号明細書を参照のこと)。メガヌクレアーゼは、例えばCerto、MTら、Nature Methods(2012)9:073−975;米国特許第8,304,222号明細書;米国特許第8,021,867号明細書;米国特許第8,119,381号明細書;米国特許第8,124,369号明細書;米国特許第8,129,134号明細書;米国特許第8,133,697号明細書;米国特許第8,143,015号明細書;米国特許第8,143,016号明細書;米国特許第8,148,098号明細書;又は米国特許第8,163,514号明細書に記載されている方法を用いて設計することができる。これらの文献のそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。あるいは、部位特異的切断特性を有するメガヌクレアーゼは、市販の技術(例えば、Precision BiosciencesのDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術)を使用して得られ得る。
【0236】
ZFN及びTALEN − 2つの異なるクラスの操作されたヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の両方が、標的二本鎖切断(DSB)を生成するのに有効であることが証明されている(Christianら、2010;Kimら、1996;Liら、2011;Mahfouzら、2011;Millerら、2010)。
【0237】
基本的に、ZFN及びTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、特異的DNA結合ドメイン(それぞれ、一連のジンクフィンガードメイン又はTALEリピートのいずれか)に連結された非特異的DNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位及び切断部位が互いに分離している制限酵素が選択される。切断部分を分離し、次いでDNA結合ドメインに連結し、それによって所望の配列に対して非常に高い特異性を有するエンドヌクレアーゼを生じる。このような特性を有する例示的な制限酵素は、Fok1である。さらに、Fok1は、ヌクレアーゼ活性を有するために二量体化を必要とするという利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーが固有のDNA配列を認識するので、特異性が劇的に増加することを意味する。この効果を増強するために、ヘテロ二量体としてのみ機能し得、そして増加した触媒活性を有するFok1ヌクレアーゼが操作された。ヘテロ二量体機能性ヌクレアーゼは、不要なホモ二量体活性の可能性を避け、従って二本鎖切断(DSB)の特異性を増加させる。
【0238】
従って、例えば、特定の部位を標的とするために、ZFN及びTALENは、ヌクレアーゼ対として構築され、この対の各メンバーは、標的とされた部位で隣接する配列に結合するように設計される。細胞における一過性発現の際に、ヌクレアーゼはその標的部位に結合し、FokIドメインはヘテロ二量化し、二本鎖切断(DSB)を作り出す。非相同末端結合(NHEJ)経路を介したこれらの二本鎖切断(DSB)の修復は、しばしば小さな欠失又は小さな配列挿入(インデル)を生じる。NHEJによってなされる各修復は独特であるので、単一のヌクレアーゼ対の使用は、標的部位での一連の異なる挿入又は欠失を有する対立遺伝子系列を生成し得る。
【0239】
一般に、NHEJは比較的正確であり(ヒト細胞中のDSBの約85%が、検出から約30分以内にNHEJによって修復される)、遺伝子編集では、修復が正確である場合、ヌクレアーゼは、修復生成物が変異原性であり、認識/切断部位/PAMモチーフが消失/変異するか、又は一過性に導入されたヌクレアーゼがもはや存在しなくなるまで切断を続けるので、誤ったNHEJが依拠される。
【0240】
欠失は、典型的には、長さが数塩基対から数百塩基対の範囲であるが、2対のヌクレアーゼを同時に使用することによって、より大きな欠失が、細胞培養において首尾よく生成されている(Carlsonら、2012;Leeら、2010)。さらに、標的領域に相同性を有するDNAのフラグメントがヌクレアーゼ一対と一緒に導入される場合、二本鎖切断(DSB)は、相同組換え(HR)を介して修復されて、特異的な改変を生成し得る(Liら、2011;Millerら、2010;Urnovら、2005)。
【0241】
ZFN及びTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似の特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼ間の差異は、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNはCys2−His2ジンクフィンガーに依存し、TALENはTALEに依存する。これらのDNA認識ペプチドドメインの両方は、それらがそれらのタンパク質中に組み合わせて天然に見出されるという特徴を有する。Cys2−His2ジンクフィンガーは、典型的には、3bp離れた反復で見出され、そして種々の核酸相互作用タンパク質において多様な組み合わせで見出される。他方、TALEは、アミノ酸と認識されたヌクレオチド対との間に1対1の認識比を有する反復において見出される。ジンクフィンガー及びTALEの両方が反復パターンで起こるので、多種多様な配列特異性を作製するために、異なる組み合わせを試みることができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチとしては、例えば、モジュラーアセンブリ(この場合、トリプレット配列と相関するジンクフィンガーは、必要とされる配列をカバーするために列で結合される)、OPEN(ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、続いて、細菌系におけるペプチド組み合わせ対最終標的の高ストリンジェンシー選択)、及びとりわけ、ジンクフィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニングが挙げられる。ZFNはまた、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(リッチモンド(Richmond)、カリフォルニア州)から設計され、そして商業的に入手され得る。
【0242】
TALENを設計し、取得する方法は、例えば、以下に記載されている。Reyonら、Nature Biotechnology 2012年5月;30(5):460−5;Millerら、Nat Biotechnol.(2011) 29:143−148;Cermakら、Nucleic Acids Research(2011)39(12):e82及びZhangら、Nature Biotechnology(2011) 29(2):149−53。Mojo Handという名前の最近開発されたウェブベースのプログラムが、ゲノム編集アプリケーションのためのTAL及びTALEN構築物を設計するためにMayo Clinicによって導入された(www(dot)talendesign(dot)orgを通してアクセスすることができる)。TALENはまた、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(リッチモンド(Richmond)、カリフォルニア州)から設計され、そして商業的に入手され得る。
【0243】
T−GEEシステム(TargetGene’s Genome Editing Engine) − ポリペプチド部分及び特異性付与核酸(SCNA)を含有するプログラマブル核タンパク質分子複合体であって、標的細胞においてインビボで集合し、所定の標的核酸配列と相互作用することができるものが提供される。プログラマブル核タンパク質分子複合体は、標的核酸配列内の標的部位を特異的に改変及び/若しくは編集し、並びに/又は標的核酸配列の機能を改変することができる。核タンパク質組成物は、(a)キメラポリペプチドをコードし、(i)標的部位を改変することができる機能ドメイン、及び(ii)特異性付与核酸と相互作用することができる連結ドメインを含むポリヌクレオチド分子、並びに(b)(i)標的部位に隣接する標的核酸の領域に相補的なヌクレオチド配列、及び(ii)ポリペプチドの連結ドメインに特異的に結合することができる認識領域を含む特異性付与核酸(SCNA)を含む。この組成物は、特異性付与核酸及び標的核酸の塩基対形成を介して、標的核酸に対する分子複合体の高い特異性及び結合能力で、所定の核酸配列標的を正確に、信頼性をもって、かつ費用効果的に改変することを可能にする。この組成物は、遺伝毒性が低く、それらの組立てにおいてモジュール式であり、カスタマイズすることなく単一のプラットフォームを利用し、特殊化された中核施設の外部での独立した使用のために実用的であり、開発時間枠がより短く、コストが低減されている。
【0244】
CRISPR−Casシステム及びそのすべての変法(本明細書では「CRISPR」とも呼ばれる) − 多くの細菌及び古細菌は、侵入するファージ及びプラスミドの核酸分子を分解することができる内在RNAベースの適応免疫系を含む。これらのシステムは、RNA成分を産生するclustered regularly interspaced short palindromic repeat(CRISPR:クラスター化され、規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し)ヌクレオチド配列とタンパク質成分をコードするCRISPR関連(Cas)遺伝子とからなる。CRISPR RNA(crRNA)は、特定のウイルス及びプラスミドのDNAに対して相同性を有する短鎖を含み、対応する病原体の相補的核酸を分解するようにCasヌクレアーゼに指示するためのガイドとして作用する。化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)のII型CRISPR/Casシステムの研究では、3つの成分がRNA/タンパク質複合体を形成し、一緒になって配列特異的ヌクレアーゼ活性に十分であることが示されている:Cas9ヌクレアーゼ、標的配列と相同性を有する20塩基対を含むcrRNA、及びトランス活性化crRNA(traccrRNA)(Jinekら、Science(2012)337:816−821)。
【0245】
さらに、crRNAとtracrRNAとの融合で構成される合成キメラガイドRNA(gRNA)が、インビトロでcrRNAに相補的なDNA標的を切断するようにCas9を誘導できることが実証された。合成gRNAと組み合わせたCas9の一過性発現を使用して、様々な異なる種において標的二本鎖切断(DSB)を生成することができることも実証された(Choら、2013;Congら、2013;DiCarloら、2013;Hwangら、2013a、b;Jinekら、2013;Maliら、2013)。
【0246】
ゲノム編集のためのCRISPR/Casシステムは、gRNAとエンドヌクレアーゼ、例えばCas9の2つの異なる成分を含んでいる。
【0247】
gRNA(本明細書では短鎖ガイドRNA(sgRNA)とも呼ばれる)は、典型的には、標的相同配列(crRNA)と、単一のキメラ転写産物においてcrRNAをCas9ヌクレアーゼに連結する内在細菌RNA(tracrRNA)との組み合わせをコードする20ヌクレオチド配列である。gRNA/Cas9複合体は、gRNA配列と相補的ゲノムDNAとの間の塩基対形成によって標的配列に動員される。Cas9の首尾よい結合のために、ゲノム標的配列はまた、標的配列の直後に正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer Adjacent Motif:PAM)配列を含まなければならない。gRNA/Cas9複合体の結合は、Cas9が二本鎖切断(DSB)を引き起こすDNAの両方の鎖を切断できるように、ゲノム標的配列にCas9を局在化する。ZFNやTALENと同様に、CRISPR/Casによって生成される二本鎖切断(DSB)は相同組換えやNHEJを受けることができ、DNA修復の際に特異的な配列改変を受けやすい。
【0248】
Cas9ヌクレアーゼは、RuvCとHNHという2つの機能ドメインを持ち、それぞれ異なるDNA鎖を切断する。これらのドメインの両方が活性化されると、Cas9はゲノムDNAに二本鎖切断(DSB)を引き起こす。
【0249】
CRISPR/Casの重要な利点は、このシステムの高い効率が、合成gRNAを容易に作製する能力と結びついていることである。これは、異なるゲノム部位での改変を標的化するために、及び/又は同じ部位での異なる改変を標的化するために、容易に改変され得るシステムを作製する。さらに、複数の遺伝子の同時標的化を可能にするプロトコルが確立されている。突然変異をもつ細胞の大部分は、標的遺伝子に二対立遺伝子突然変異を提示する。
【0250】
しかしながら、gRNA配列とゲノムDNA標的配列との間の塩基対形成相互作用における見かけ上の柔軟性は、標的配列との不完全な一致(マッチ)をCas9によって切断することを可能にする。
【0251】
単一の不活性触媒ドメイン(RuvCドメイン又はHNHドメインのいずれか)を含むCas9酵素の改変型は、「ニッカーゼ」と呼ばれる。活性のあるヌクレアーゼドメインが1つだけあれば、Cas9ニッカーゼは標的DNAの一方の鎖だけを切断し、一本鎖切断、すなわち「ニック」を作る。一本鎖切断、すなわちニックは、ほとんどがPARP(センサー)やXRCC1/LIG III複合体(連結)のような(これらだけではない)タンパク質が関与する一本鎖切断修復機構によって修復される。もし一本鎖切断(SSB)がトポイソメラーゼIの毒物によって、あるいは天然に存在するSSB上にPARP1を捕捉する薬物によって生じると、これらは持続し、細胞がS期に入って複製フォークがこのようなSSBに出会うと、それらはHRによってのみ修復可能な一端DSBとなる。しかし、Cas9ニッカーゼによって導入される2つの近位の反対鎖ニックは、しばしば「二重ニック」CRISPRシステムと呼ばれる二本鎖切断として扱われる。基本的に非平行DSBである二重ニックは、遺伝子標的に対する所望の効果及びドナー配列の存在及び細胞周期段階(HRははるかに存在量が少なく、細胞周期のS期及びG2期にのみ起こりうる)に応じて、他のDSBと同様にHR又はNHEJによって修復することができる。従って、もし特異性とオフターゲット効果の減少がきわめて重要であれば、Cas9ニッカーゼを用いて、ゲノムDNAのごく近傍及び反対の鎖に標的配列をもつ2つのgRNAを設計することによって二重ニックを作り出すと、どちらかのgRNAだけではゲノムDNAを変化させないようなニックが生じるので、オフターゲット事象は不可能ではないにしてもオフターゲット効果は減少するであろう。
【0252】
2つの不活性触媒ドメイン(活性を持たないCas9又はdCas9)を含むCas9酵素の改変型はヌクレアーゼ活性を有さないが、gRNA特異性に基づいてDNAに結合することができる。dCas9は、不活性酵素を既知の調節ドメインに融合させることにより、DNA転写調節因子が遺伝子発現を活性化又は抑制するためのプラットフォームとして利用することができる。例えば、ゲノムDNA中の標的配列へのdCas9単独の結合は、遺伝子転写を妨害し得る。
【0253】
標的配列の選択及び/又は設計を助けるために利用可能な多数の公的に利用可能なツール、並びに、異なる種における異なる遺伝子についてのバイオインフォマティックに決定された固有のgRNAのリストがいくつかあり、例えばFeng Zhang研究室のTarget Finder、Michael Boutros研究室のTarget Finder(E−CRISP)、RGEN Tools:Cas−OFFinder、CasFinder:ゲノム中の特定のCas9標的を特定するためのFlexibleアルゴリズム、及びCRISPR Optimal Target Finderがあるが、しかしこれらに限定されない。
【0254】
CRISPRシステムを使用するために、gRNA及びCasエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)の両方は、(例えば、リボ核タンパク質複合体として)標的細胞において発現されるか、又は存在するべきである。挿入ベクターは、単一のプラスミド上に両方のカセットを含み得るか、又はカセットは、2つの別個のプラスミドから発現される。CRISPRプラスミドは、Addgene(75 Sidney St、Suite 550A・Cambridge、MA 02139)からのpx330プラスミドのように市販されている。哺乳動物ゲノムを改変するためのclustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)関連(Cas)−ガイドRNA技術及びCasエンドヌクレアーゼの使用はまた、少なくとも、Bauerら[J Vis Exp.(2015) (95):e52118.doi:10.3791/52118](これは、その全体が参照により本明細書中に具体的に援用される)によって開示される。gRNAでDNA編集を行うために使用され得るCasエンドヌクレアーゼには、Cas9、Cpf1(Zetscheら、2015、Cell.163(3):759−71)、C2c1、C2c2、及びC2c3(Shmakovら、Mol Cell.2015年11月5日;60(3):385−97)が含まれるが、これらに限定されない。
【0255】
特定の実施形態によれば、CRISPRは、配列番号5〜6又は配列番号165〜236に示される核酸配列を含む短鎖ガイドRNA(sgRNA)を含む。
【0256】
「ヒットエンドラン(hit and run)」又は「インアウト(in−out)」 − は、2ステップの再結合手順を含む。第1のステップにおいて、二重正/負選択マーカーカセットを含む挿入型ベクターを使用して、所望の配列変更を導入する。挿入ベクターは、標的遺伝子座に対して相同性を持つ単一の連続領域を含み、目的の突然変異を運ぶように改変される。この標的化構築物を、相同性領域内の1箇所で制限酵素を用いて線状化し、細胞内に導入し、正の選択を行い、相同組換え媒介事象を単離する。相同配列を有するDNAは、プラスミド、一本鎖又は二本鎖オリゴとして提供することができる。これらの相同組換え体は、選択カセットを含む介在ベクター配列によって分離される局所重複を含む。第2のステップでは、標的クローンを負の選択に供し、重複配列間の染色体内組換えを介して選択カセットを失った細胞を特定する。局所的組換え事象は重複を除去し、組換え部位に応じて、対立遺伝子は導入された変異を保持するか、野生型に復帰するかのいずれかである。最終的な結果は、外来配列を保持することなく、所望の改変を導入することである。
【0257】
「二重置換」又は「タグ及び交換」ストラテジー − は、ヒットエンドランアプローチと同様の2ステップ選択手順を含むが、2つの異なる標的化構築物の使用を必要とする。第1のステップにおいて、3’及び5’相同性アームを有する標準的な標的化ベクターを使用して、変異が導入されるべき場所の近くに二重の正/負選択可能なカセットを挿入する。系成分を細胞に導入し、正の選択を適用した後、HR媒介事象を特定することができよう。次に、所望の突然変異と相同性の領域を含む第2の標的化ベクターを標的化クローンに導入し、負の選択を適用して選択カセットを除去し、突然変異を導入する。最終対立遺伝子は、望ましくない外来配列を排除しながら、所望の変異を含む。
【0258】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤は、DNA標的化モジュール(例えば、gRNA)を含む。
【0259】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はエンドヌクレアーゼを含まない。
【0260】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤は、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)及びDNA標的化モジュール(例えば、gRNA)を含む。
【0261】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤は、CRISPR/Cas、例えばgRNA及びCas9である。
【0262】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はTALENである。
【0263】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はZFNである。
【0264】
特定の実施形態によれば、DNA編集剤はメガヌクレアーゼである。
【0265】
一実施形態によれば、DNA編集剤は、真核細胞における発現を監視するためのレポーターに連結される。
【0266】
一実施形態によれば、レポーターは蛍光レポータータンパク質である。
【0267】
用語「蛍光タンパク質」は、蛍光を発し、典型的にはフローサイトメトリー、顕微鏡法又は任意の蛍光イメージングシステムによって検出可能であり、従って、このようなタンパク質を発現する細胞の選択の基礎として使用することができるポリペプチドを指す。
【0268】
レポーターとして使用することができる蛍光タンパク質の例は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及び赤色蛍光タンパク質(例えば、dsRed、mCherry、RFP)であるが、これらに限定されない。蛍光又は他のレポーターの非限定的なリストは、ルミネセンス(例えば、ルシフェラーゼ)又は比色アッセイ(例えば、GUS)によって検出可能なタンパク質を含む。特定の実施形態によれば、蛍光レポーターは、赤色蛍光タンパク質(例えば、dsRed、mCherry、RFP)又はGFPである。
【0269】
新しいクラスの蛍光タンパク質及び応用の総説は、Trends in Biochemical Sciences[Rodriguez,Erik A.;Campbell,Robert E.;Lin,John Y.;Lin,Michael Z.;Miyawaki,Atsushi;Palmer,Amy E.;Shu,Xiaokun;Zhang,Jin;Tsien,Roger Y.「The Growing and Glowing Toolbox of Fluorescent and Photoactive Proteins」、Trends in Biochemical Sciences.doi:10.1016/j.tibs.2016.09.010]に見出すことができる。
【0270】
別の実施形態によれば、レポーターは抗生物質選択マーカーである。レポーターとして使用され得る抗生物質選択マーカーの例は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)及びハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)であるが、これらに限定されない。本教示に従って使用され付加さらなるマーカー遺伝子は、ゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ(accC3)耐性遺伝子並びにブレオマイシン及びフレオマイシン耐性遺伝子を含むが、これらに限定されない。
【0271】
酵素NPTIIは、カナマイシン、ネオマイシン、ジェネティシン(又はG418)及びパロモマイシンのような多くのアミノグリコシド系抗生物質をリン酸化することによって不活性化することが認識されるであろう。これらのうち、G418は、形質転換された哺乳類細胞の選択のために常法として使用される。
【0272】
使用されるDNA編集剤にかかわらず、本発明の方法は、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子が、欠失、挿入又は点突然変異の少なくとも1つによって改変されるように使用される。
【0273】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子の構造化領域にある。
【0274】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域にある。
【0275】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のループ領域にある。
【0276】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域にある。
【0277】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子の非構造化領域にある。
【0278】
一実施形態によれば、改変は、非コードRNA分子又はRNAサイレンシング分子のステム領域及びループ領域、並びに非構造化領域にある。
【0279】
特定の実施形態によれば、改変は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチド又は約100〜200ヌクレオチドの改変を含む。
【0280】
一実施形態によれば、改変は、(天然非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの改変を含む。
【0281】
一実施形態によれば、改変は、連続した核酸配列(例えば、少なくとも5、10、20、30、40、50、100、150、200塩基)にあり得る。
【0282】
一実施形態によれば、改変は、非連続的な様式、例えば、20、50、100、150、200、500、1000核酸配列全体にわたる様式であり得る。
【0283】
特定の実施形態によれば、改変は、最大200ヌクレオチドの改変を含む。
【0284】
特定の実施形態によれば、改変は、最大150ヌクレオチドの改変を含む。
【0285】
特定の実施形態によれば、改変は、最大100ヌクレオチドの改変を含む。
【0286】
特定の実施形態によれば、改変は、最大50ヌクレオチドの改変を含む。
【0287】
特定の実施形態によれば、改変は、最大25ヌクレオチドの改変を含む。
【0288】
特定の実施形態によれば、改変は、最大20ヌクレオチドの改変を含む。
【0289】
特定の実施形態によれば、改変は、最大15ヌクレオチドの改変を含む。
【0290】
特定の実施形態によれば、改変は、最大10ヌクレオチドの改変を含む。
【0291】
特定の実施形態によれば、改変は、最大5ヌクレオチドの改変を含む。
【0292】
一実施形態によれば、改変は、RNAサイレンシング分子の構造に依存する。
【0293】
従って、RNAサイレンシング分子が非必須構造(すなわち、その適切な生合成及び/又は機能において役割を果たさないRNAサイレンシング分子の二次構造)を含むか、又は純粋にdsRNA(すなわち、完全又はほぼ完全なdsRNAを有するRNAサイレンシング分子)である場合、RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性をリダイレクトするために、いくつかの改変(例えば、20〜30ヌクレオチド、例えば、1〜10ヌクレオチド、例えば、5ヌクレオチド)が導入される。
【0294】
別の実施形態によれば、RNAサイレンシング分子が必須構造を有する(すなわち、RNAサイレンシング分子の適切な生合成及び/又は活性がその二次構造に依存する)場合、RNAサイレンシング分子のサイレンシング特異性をリダイレクトするために、より大きな改変(例えば、10〜200ヌクレオチド、例えば、50〜150ヌクレオチド、例えば、30超のヌクレオチドかつ200以下のヌクレオチド、30〜200ヌクレオチド、35〜200ヌクレオチド、35〜150ヌクレオチド、35〜100ヌクレオチド)が導入される。
【0295】
一実施形態によれば、改変は、RNAサイレンシング分子の認識/切断部位/PAMモチーフが改変されて、元のPAM認識部位を無効にするようにされる。
【0296】
特定の実施形態によれば、改変は、PAMモチーフ中の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の核酸にある。
【0297】
一実施形態によれば、改変は挿入を含む。
【0298】
特定の実施形態によれば、挿入は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチド又は約100〜200ヌクレオチドの挿入を含む。
【0299】
特定の実施形態によれば、挿入は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチド又は約100〜200ヌクレオチドの挿入を含む。
【0300】
一実施形態によれば、挿入は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの挿入を含む。
【0301】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大200ヌクレオチドの挿入を含む。
【0302】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大150ヌクレオチドの挿入を含む。
【0303】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大100ヌクレオチドの挿入を含む。
【0304】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大50ヌクレオチドの挿入を含む。
【0305】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大25ヌクレオチドの挿入を含む。
【0306】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大20ヌクレオチドの挿入を含む。
【0307】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大15ヌクレオチドの挿入を含む。
【0308】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大10ヌクレオチドの挿入を含む。
【0309】
特定の実施形態によれば、挿入は、最大5ヌクレオチドの挿入を含む。
【0310】
一実施形態によれば、改変は欠失を含む。
【0311】
特定の実施形態によれば、欠失は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチド又は約100〜200ヌクレオチドの欠失を含む。
【0312】
一実施形態によれば、欠失は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの欠失を含む。
【0313】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大200ヌクレオチドの欠失を含む。
【0314】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大150ヌクレオチドの欠失を含む。
【0315】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大100ヌクレオチドの欠失を含む。
【0316】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大50ヌクレオチドの欠失を含む。
【0317】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大25ヌクレオチドの欠失を含む。
【0318】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大20ヌクレオチドの欠失を含む。
【0319】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大15ヌクレオチドの欠失を含む。
【0320】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大10ヌクレオチドの欠失を含む。
【0321】
特定の実施形態によれば、欠失は、最大5ヌクレオチドの欠失を含む。
【0322】
一実施形態によれば、改変は点突然変異を含む。
【0323】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチド又は約100〜200ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0324】
一実施形態によれば、点突然変異は、(天然非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0325】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大200ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0326】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大150ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0327】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大100ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0328】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大50ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0329】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大25ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0330】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大20ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0331】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大15ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0332】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大10ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0333】
特定の実施形態によれば、点突然変異は、最大5ヌクレオチドの点突然変異を含む。
【0334】
一実施形態によれば、改変は、欠失、挿入及び/又は点突然変異のいずれかの組み合わせを含む。
【0335】
一実施形態によれば、改変は、ヌクレオチド置換(例えば、ヌクレオチド交換(スワッピング))を含む。
【0336】
特定の実施形態によれば、交換(スワッピング)は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチド又は約100〜200ヌクレオチドの交換を含む。
【0337】
一実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、(天然の非コードRNA分子、例えばRNAサイレンシング分子と比較して)最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200又は最大250ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0338】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大200ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0339】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大150ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0340】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大100ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0341】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大50ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0342】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大25ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0343】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大20ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0344】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大15ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0345】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大10ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0346】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、最大5ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む。
【0347】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子は、内在RNAサイレンシング分子(例えば、miRNA)の配列を選択されたRNAサイレンシング配列(例えば、siRNA)と交換することによって改変される。
【0348】
特定の実施形態によれば、内在RNAサイレンシング分子(例えば、miRNA)の遺伝子交換のために使用されるsiRNAの配列は、配列番号1〜配列番号4、配列番号93〜配列番号164、又は配列番号243〜配列番号252からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0349】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のガイド鎖は、構造のオリジナリティを保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持するように改変される。
【0350】
一実施形態によれば、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のパッセンジャー鎖は、構造のオリジナリティを保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持するように改変される。
【0351】
本明細書で使用する場合、用語「構造のオリジナリティ」は、二次RNA構造(すなわち、塩基対形成プロファイル)をいう。構造のオリジナリティを維持することは、構造依存性であり、純粋に配列依存性ではない非コードRNA(例えば、siRNA又はmiRNAのようなRNAサイレンシング分子)の正確かつ効率的な生合成/プロセシングのために重要である。
【0352】
一実施形態によれば、非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)は、標的RNAに対して約50〜100%の相補性を含むようにガイド鎖(サイレンシング鎖)において改変され(上記のように)、一方、パッセンジャー鎖は、元の(未改変の)非コードRNA構造を保存するように改変される。
【0353】
一実施形態によれば、非コードRNA(例えば、RNAサイレンシング分子)は、シード配列(例えば、5’末端からのmiRNAヌクレオチド2〜8について)が標的配列に対して相補的であるように改変される。
【0354】
特定の実施形態によれば、RNAサイレンシング分子(すなわち、RNAi分子)は、RNAi分子の配列が、構造のオリジナリティを保存し、細胞RNAiプロセシング及び実行因子によって認識されるように改変されるように設計される。
【0355】
本発明のDNA編集剤は、DNA送達方法(例えば、発現ベクターによる)を使用して、又はDNAを含まない方法を使用して、真核細胞に導入され得る。
【0356】
一実施形態によれば、gRNA(又は使用されるDNA編集システムに依存して、使用される任意の他のDNA認識モジュール)は、RNAとして細胞に提供され得る。
【0357】
従って、本技術は、RNAトランスフェクション(例えば、mRNA+gRNAトランスフェクション)、又はリボ核タンパク質(RNP)トランスフェクション(例えば、タンパク質−RNA複合体トランスフェクション、例えば、Cas9/gRNA RNP複合体トランスフェクション、又はDNA/RNA/タンパク質の任意の組み合わせ)のようなDNAを含まない方法を用いてDNA編集剤を導入することに関することが理解される。
【0358】
例えば、Cas9は、DNA発現プラスミドとして、インビトロ転写産物(すなわち、RNA)として、又はリボ核タンパク質粒子(RNP)中のRNA部分に結合した組換えタンパク質として導入され得る。gRNAは、例えば、DNAプラスミドとして、又はインビトロ転写産物(すなわち、RNA)として送達され得る。
【0359】
RNA又はRNPトランスフェクションのための当該分野で公知の任意の方法が、本教示に従って使用され得る。例としては、例えば、マイクロインジェクション[Choら、「Heritable gene nockout in Caenorhabditis elegans by direct injection of Cas9−sgRNA ribonucleoproteins」、Genetics(2013)195:1177−1180(参照により本明細書に援用される)に記載されている]、エレクトロポレーション[Kimら、「Highly efficient RNA−guided genome editing in human cells via delivery of purified Cas9 ribonucleoproteins」、Genome Res.(2014)24:1012−1019(参照により本明細書に援用される)に記載されている]、又は例えばリポソームを用いる脂質媒介性トランスフェクション[Zurisら、「Cationic lipid−mediated delivery of proteins enables efficient protein−based genome editing in vitro and in vivo」、Nat Biotechnol.(2014) doi:10.1038/nbt.3081(参照により本明細書に援用される)に記載されている]が挙げられるがこれらに限定されない。RNAトランスフェクションのさらなる方法は、米国特許出願公開第20160289675号に記載されており、この文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0360】
本発明のRNAトランスフェクション方法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが本質的に一過性であり、ベクターを含まないことである。RNA導入遺伝子は、任意のさらなる配列(例えば、ウイルス配列)を必要としない、最小発現カセットとして、細胞に送達され得、そしてそこで発現され得る。
【0361】
一実施形態によれば、哺乳類細胞における本発明の外来性DNA編集剤の発現のために、DNA編集剤をコードするポリヌクレオチド配列が、哺乳類細胞発現に好適な核酸構築物にライゲーションされる。このような核酸構築物は、細胞中でのポリヌクレオチド配列の転写を構成的又は誘導的に導くためのプロモーター配列を含む。
【0362】
本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物(本明細書中で「発現ベクター」とも呼ばれる)は、このベクターを真核生物における複製及び組み込みに好適なもの(例えば、シャトルベクター)にするさらなる配列を含む。加えて、典型的なクローニングベクターは、転写及び翻訳開始配列、転写及び翻訳ターミネーター並びにポリアデニル化シグナルも含有してよい。例として、このような構築物は、通常、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、及び3’LTR又はその一部分を含むことになる。
【0363】
真核生物のプロモーターは、通常、2種類の認識配列、TATAボックス及び上流のプロモーター配列を含有する。TATAボックスは、転写開始部位の25〜30塩基対上流に位置し、RNAポリメラーゼを、RNA合成を開始するように導くことに関与すると考えられている。他の上流のプロモーター配列は、転写が開始される速度を決定する。
【0364】
好ましくは、本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物によって利用されるプロモーターは、形質転換される特定の細胞集団で活性である。細胞型特異的及び/又は組織特異的プロモーターの例としては、肝臓特異的であるアルブミン[Pinkertら、(1987) Genes Dev. 1:268−277]、リンパ様特異的プロモーター[Calameら、(1988) Adv. Immunol. 43:235−275];特に、T細胞受容体のプロモーター[Winotoら、(1989) EMBO J. 8:729−733]及び免疫グロブリン[Banerjiら(1983) Cell 33729−740]、神経フィラメントプロモーター[Byrneら(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477]等の神経細胞特異的プロモーター、膵臓特異的プロモーター[Edlunchら(1985) Science 230:912−916]又は乳清プロモーター(米国特許第4,873,316号明細書及び欧州特許出願公開第264,166号明細書)等の乳腺特異的プロモーター等のプロモーターが挙げられる。
【0365】
エンハンサー配列は、リンクされた相同的又は異種性のプロモーターから最大1,000倍転写を刺激することができる。エンハンサーは、転写開始部位から下流又は上流に置かれたときに活性である。ウイルス由来の多くのエンハンサー配列は幅広い宿主範囲を有し、様々な組織において活性である。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの細胞型に好適である。本発明のいくつかの実施形態に好適な他のエンハンサー/プロモーターの組み合わせとしては、ポリオーマウイルス、ヒト又はマウスのサイトメガロウイルス(CMV)由来のもの、マウス白血病ウイルス、マウス又はラウス肉腫ウイルス及びHIV等の種々のレトロウイルス由来の末端反復配列が挙げられる。Enhancers and Eukaryotic Expression、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y. 1983を参照のこと。この文献は、参照により本明細書に援用したものとする。
【0366】
発現ベクターの構築において、プロモーターは、好ましくは、天然の状況においてプロモーターが転写開始点から位置する距離とおよそ同じ距離だけ異種性の転写開始点から離れて位置する。しかしながら、当該技術分野で公知のように、この距離のいくらかのばらつきは、プロモーター機能の喪失なく許容されうる。
【0367】
mRNA翻訳の効率を高めるために、ポリアデニル化配列も、発現ベクターに加えられてよい。2つの別個の配列エレメントが正確で効率的なポリアデニル化のために必要とされる。それらは、ポリアデニル化部位から下流に位置するGU又はUリッチ配列、及び11〜30ヌクレオチド上流に位置する6ヌクレオチドの高度保存配列、AAUAAA。本発明のいくつかの実施形態に好適な終結シグナル及びポリアデニル化シグナルとしては、SV40に由来するものが挙げられる。
【0368】
すでに説明した配列、エレメントに加えて、本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターは、通常、クローニングされた核酸の発現のレベルを高めること、又は組換えDNAを保有する細胞の特定を容易にすることを意図した他の特殊化したエレメントを含有してもよい。例えば、いくつかの動物ウイルスは、許容的な細胞型でのウイルスゲノムの染色体外の複製を促進するDNA配列を含有する。これらのウイルスレプリコンを保有するプラスミドは、プラスミドで運ばれているか又は宿主細胞のゲノムにある遺伝子によって適切な因子が提供されるかぎり、エピソームにより複製される。
【0369】
ベクターは、真核生物のレプリコンを含有してもよいししなくてもよい。真核生物のレプリコンが存在する場合、ベクターは、適切な選択マーカーを使用して真核細胞において増幅可能である。ベクターが真核生物のレプリコンを含まない場合、エピソーム増幅は不可能である。その代わり、組換えDNAが操作された細胞のゲノムに組み込まれ、そこでプロモーターが所望の核酸の発現を導く。
【0370】
本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターは、例えば、内部リボソーム進入部位(internal ribosome entry site:IRES)等の単一のmRNAからのいくつかのタンパク質の翻訳を可能にするさらなるポリヌクレオチド配列及びプロモーター−キメラポリペプチドのゲノム組み込みのための配列をさらに含むことができる。
【0371】
発現ベクターに含まれる個々の配列、エレメントが様々な構成で並んでいてもよいということは理解されよう。例えば、エンハンサー配列、プロモーター等、さらにはDNA編集剤をコードするポリヌクレオチド配列(複数可)は、「頭−尾」構造で並んでもよいし、反転した相補体(inverted complement)として、又は相補的な構成で、逆平行鎖として存在してもよい。構成のそのような多様性は発現ベクターの非コードエレメントに関してより起こりやすいが、発現ベクター内のコード配列の代替構成も想定される。
【0372】
哺乳類発現ベクターの例としては、インビトロジェン(Invitrogen)から入手できるpcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、pGL3、pZeoSV2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、プロメガ(Promega)から入手できるpCI、ストラタジーン(Stratagene)から入手できるpMbac、pPbac、pBK−RSV及びpBK−CMV、クローンテック(Clontech)から入手できるpTRES、並びにこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0373】
レトロウイルス等の真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含有する発現ベクターも使用することができる。SV40ベクターとしては、pSVT7及びpMT2が挙げられる。ウシパピローマウイルス由来のベクターとしてはpBV−1MTHAが挙げられ、エプスタインバーウイルス由来のベクターとしてはpHEBO、及びp2O5が挙げられる。他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A
+、pMTO10/A
+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、及びSV−40初期プロモーター、SV−40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、又は真核細胞における発現に有効であると示されている他のプロモーターの誘導のもとでタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0374】
ウイルスは、多くの場合、宿主生体防御機構を回避するように進化した非常に特殊化された感染病原体である。通常、ウイルスは、特定の細胞型に感染し増殖する。ウイルスベクターの標的特異性は、所定の細胞型を特異的に標的とし、それによって組換え遺伝子を感染細胞に導入するために、その天然の特異性を利用する。従って、本発明のいくつかの実施形態によって使用されるベクターの種類は、形質転換される細胞型に依存することになる。形質転換される細胞型に従って好適なベクターを選択する能力は、十分に当業者の能力の範囲内にあり、従って、選択の考慮事項の一般的な説明は、本明細書に提示されない。例えば、骨髄細胞は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)を使用して標的とすることができ、腎臓細胞は、Liang CYら、2004(Arch Virol. 149:51−60)に記載されているとおり、バキュロウイルスである核多角体病ウイルス(Autographa californica nucleopolyhedrovirus:AcMNPV)に存在する異種性のプロモーターを使用して標的とされてもよい。
【0375】
組換えウイルスベクターは、DNA編集剤のインビボ発現に対して有用である。というのも、組換えウイルスベクターは、水平感染及び標的特異性等の利点をもたらすからである。水平感染は、例えばレトロウイルスの生活環に固有であり、単独の感染細胞が、出芽して隣接する細胞を感染させる多くの子孫ウイルス粒子(ビリオン)を生成するプロセスである。その結果として、大きな領域が迅速に感染した状態になるが、そのほとんどがもとのウイルス粒子によって最初に感染されなかったものである。これは、感染病原体が娘子孫を通してのみ広がる垂直型の感染とは対照的である。水平に広がることができないウイルスベクターも、生成することができる。この特徴は、所望の目的が、特定の遺伝子を限局的な数の標的細胞へと導入することである場合に、有用でありうる。
【0376】
一実施形態によれば、機能的DNA編集剤を発現させるために、切断モジュール(ヌクレアーゼ)がDNA認識ユニットの不可欠な部分でない場合、発現ベクターは、切断モジュール並びにDNA認識ユニット(例えば、CRISPR/Casの場合、gRNA)をコードし得る。
【0377】
あるいは、切断モジュール(ヌクレアーゼ)及びDNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、別々の発現ベクターにクローニングされ得る。このような場合、少なくとも2つの異なる発現ベクターを同じ真核細胞に形質転換しなければならない。
【0378】
あるいは、ヌクレアーゼが利用されない場合(すなわち、外来性供給源から細胞に投与されない場合)、DNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、単一の発現ベクターを使用してクローニング及び発現され得る。
【0379】
一実施形態によれば、DNA編集剤は、真核細胞において活性なシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結された少なくとも1つのDNA認識ユニット(例えば、gRNA)をコードする核酸剤を含む。
【0380】
一実施形態によれば、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)及びDNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、同じ発現ベクターからコードされる。このようなベクターは、ヌクレアーゼ及びDNA認識ユニットの両方の発現のために、植物細胞において活性な単一のシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。あるいは、ヌクレアーゼ及びDNA認識ユニットはそれぞれ、真核細胞において活性なシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。
【0381】
一実施形態によれば、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)及びDNA認識ユニット(例えば、gRNA)は、異なる発現ベクターからコードされ、それによって各々は、真核細胞において活性なシス作用性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0382】
一実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法は、真核細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0383】
一実施形態によれば、改変が挿入である場合、当該方法は、真核細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0384】
一実施形態によれば、改変が欠失である場合、当該方法は、真核細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0385】
一実施形態によれば、改変が欠失及び挿入(例えば、交換)である場合、当該方法は、真核細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0386】
一実施形態によれば、改変が点突然変異である場合、当該方法は、真核細胞にドナーオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む。
【0387】
本明細書で使用する場合、用語「ドナーオリゴヌクレオチド」又は「ドナーオリゴ」は、外来性ヌクレオチド(すなわち、ゲノムにおける正確な変化を生成するために真核細胞に外部から導入されるもの)をいう。一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは合成されたものである。
【0388】
一実施形態によれば、ドナーオリゴはRNAオリゴである。
【0389】
一実施形態によれば、ドナーオリゴはDNAオリゴである。
【0390】
一実施形態によれば、ドナーオリゴは合成オリゴである。
【0391】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(ssODN)を含む。
【0392】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(dsODN)を含む。
【0393】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)を含む。
【0394】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖DNA−RNA二重鎖(DNA−RNA二重鎖)を含む。
【0395】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖DNA−RNAハイブリッドを含む。
【0396】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA−RNAハイブリッドを含む。
【0397】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA(ssDNA)を含む。
【0398】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、二本鎖RNA(dsRNA)を含む。
【0399】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、一本鎖RNA(ssRNA)を含む。
【0400】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、(上述のように)交換のためのDNA又はRNA配列を含む。
【0401】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、非発現ベクターフォーマット又はオリゴで提供される。
【0402】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、DNAドナープラスミドを含む。
【0403】
一実施形態によれば、ドナーオリゴヌクレオチドは、約50〜5000、約100〜5000、約250〜5000、約500〜5000、約750〜5000、約1000〜5000、約1500〜5000、約2000〜5000、約2500〜5000、約3000〜5000、約4000〜5000、約50〜4000、約100〜4000、約250〜4000、約500〜4000、約750〜4000、約1000〜4000、約1500〜4000、約2000〜4000、約2500〜4000、約3000〜4000、約50〜3000、約100〜3000、約250〜3000、約500〜3000、約750〜3000、約1000〜3000、約1500〜3000、約2000〜3000、約50〜2000、約100〜2000、約250〜2000、約500〜2000、約750〜2000、約1000〜2000、約1500〜2000、約50〜1000、約100〜1000、約250〜1000、約500〜1000、約750〜1000、約50〜750、約150〜750、約250〜750、約500〜750、約50〜500、約150〜500、約200〜500、約250〜500、約350〜500、約50〜250、約150〜250又は約200〜250ヌクレオチドを含む。
【0404】
特定の実施形態によれば、ssODN(例えばssDNA又はssRNA)を含むドナーオリゴヌクレオチドは、約200〜500ヌクレオチドを含む。
【0405】
特定の実施形態によれば、dsODN(例えば、dsDNA又はdsRNA)を含むドナーオリゴヌクレオチドは、約250〜5000ヌクレオチドを含む。
【0406】
一実施形態によれば、内在RNAサイレンシング分子(例えば、miRNA)の、選択されたRNAサイレンシング配列(例えば、siRNA)との遺伝子交換のために、発現ベクター、ssODN(例えば、ssDNA又はssRNA)又はdsODN(例えば、dsDNA又はdsRNA)は、真核細胞中で発現される必要はなく、非発現鋳型として働くだけである。特定の実施形態によれば、このような場合、DNA編集剤(例えば、Cas9/sgRNAモジュール)のみが、DNA形態で提供される場合、発現される必要がある。
【0407】
いくつかの実施形態によれば、ヌクレアーゼを使用せずに内在非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)を遺伝子編集するために、DNA編集剤(例えば、gRNA)を、(本明細書中で議論されるように)ドナーオリゴヌクレオチドを用いて、又は用いずに、真核細胞に導入してもよい。
【0408】
一実施形態によれば、真核細胞へのドナーオリゴヌクレオチドの導入は、上記の方法のいずれかを使用して(例えば、発現ベクター又はRNPトランスフェクションを使用して)行われる。
【0409】
一実施形態によれば、gRNA及びDNAドナーオリゴヌクレオチドは、真核細胞に同時導入される。任意のさらなる因子(例えば、ヌクレアーゼ)が、それと一緒に導入され得ることが理解される。
【0410】
一実施形態によれば、gRNAは、DNAドナーオリゴヌクレオチドの前に(例えば、数分又は数時間以内に)真核細胞に導入される。任意のさらなる因子(例えば、ヌクレアーゼ)が、gRNA又はDNAドナーオリゴヌクレオチドの前に、それと同時に、又はそれに続いて導入され得ることが理解される。
【0411】
一実施形態によれば、gRNAは、DNAドナーオリゴヌクレオチドに続いて(例えば、数分又は数時間以内に)真核細胞に導入される。任意のさらなる因子(例えば、ヌクレアーゼ)が、gRNA又はDNAドナーオリゴヌクレオチドの前に、それと同時に、又はそれに続いて導入され得ることが理解される。
【0412】
一実施形態によれば、ゲノム編集のための少なくとも1つのgRNA及びDNAドナーオリゴヌクレオチドを含む組成物が提供される。
【0413】
一実施形態によれば、ゲノム編集のための少なくとも1つのgRNA、ヌクレアーゼ(例えばエンドヌクレアーゼ)及びDNAドナーオリゴヌクレオチドを含む組成物が提供される。
【0414】
本発明のいくつかの実施形態の発現ベクター又はドナーオリゴを真核細胞(例えば、幹細胞)へと導入するために種々の方法を使用することができる。このような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Laboratory、New York(1989、1992)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、ボルチモア(Baltimore)、メリーランド州(1989)、Changら、Somatic Gene Therapy、CRC Press、アナーバー(Ann Arbor)、ミシガン州(1995)、Vegaら、Gene Targeting、CRC Press、アナーバー、ミシガン州(1995)、Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses、Butterworths、ボストン(Boston)、マサチューセッツ州(1988)及びGilboaら、[Biotechniques 4(6):504−512、1986]に一般に記載されており、例えば、安定なトランスフェクション又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション(電気穿孔)、及び組換えウイルスベクターを用いた感染が挙げられる。加えて、正−負の選択方法については米国特許第5,464,764号明細書及び同第5,487,992号明細書を参照。
【0415】
ウイルス感染による核酸の導入は、リポフェクション及びエレクトロポレーション等の他の方法に勝るいくつかの利点をもたらす。というのも、より高いトランスフェクション効率が、ウイルスの感染性に起因して得られうるからである。
【0416】
現在好ましいインビボ核酸移入技術としては、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)及び脂質ベースの系等のウイルス性構築物又は非ウイルス性構築物を用いるトランスフェクションが挙げられる。遺伝子の脂質媒介移入用の有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE、及びDC−Chol[Tonkinsonら、Cancer Investigation、14(1):54−65(1996)]である。遺伝子治療については、好ましい構築物は、ウイルス、最も好ましくはアデノウイルス、AAV、レンチウイルス、又はレトロウイルスである。レトロウイルス構築物等のウイルス性構築物は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー又は遺伝子座規定エレメント(locus−defining element)(複数可)、又は選択的スプライシング、RNA核外輸送、若しくはメッセンジャーの翻訳後修飾等の他の手段による遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。このようなベクター構築物は、そのウイルス性構築物にパッケージングシグナル、末端反復配列(LTR)又はその一部分、並びに使用されるウイルスに適切なプラス鎖及びマイナス鎖プライマー結合部位がすでに存在している場合を除き、これらも含む。加えて、このような構築物は、通常、宿主細胞からのペプチドの分泌のためのシグナル配列を含み、その宿主細胞にこのシグナル配列が置かれている。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は、哺乳類シグナル配列又は本発明のいくつかの実施形態のポリペプチド変異体のシグナル配列である。任意に、構築物は、ポリアデニル化を導くシグナル、並びに1以上の制限酵素部位及び翻訳終結配列も含んでよい。例として、そのような構築物は、通常、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、及び3’LTR又はその一部分を含むことになる。カチオン性脂質、ポリリジン、及びデンドリマー等の非ウイルス性である他のベクターを使用することができる。
【0417】
挿入されたコード配列の転写及び翻訳のための必要なエレメントを含有することのほかに、本発明のいくつかの実施形態の発現構築物は、発現されたペプチドの安定性、産生、精製、収率又は毒性を増強するように操作された配列も含むことができる。
【0418】
特定の実施形態によれば、外来遺伝子を真核細胞に導入するために衝撃方法が使用される。一実施形態によれば、この方法は一過性である。本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができる例示的な衝撃方法は、後述の実施例の節で論じられる。真核細胞(例えば、哺乳類細胞)の衝撃は、Uchida Mら、Biochim Biophys Acta.(2009) 1790(8):754−64にも教示されており、この文献を参照により本明細書に援用したものとする。
【0419】
使用される形質転換/感染方法にかかわらず、本教示はさらに、ゲノム編集事象を含む形質転換細胞を選択する。
【0420】
特定の実施形態によれば、選択は、特定の遺伝子座において首尾よく正確な改変(例えば、交換、挿入、欠失、点突然変異)を含む細胞のみが選択されるように実施される。従って、意図しない遺伝子座における改変(例えば、挿入、欠失、点突然変異)を含む任意の事象を含む細胞は、選択されない。
【0421】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、表現型レベルで、分子事象の検出によって、蛍光レポーターの検出によって、又は選択(例えば、抗生物質、又は薬物への耐性等の他の選択マーカー、すなわちTP53サイレンシングの場合のNutlin3)の存在下での成長によって行うことができる。
【0422】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、新たに編集された非コードRNA分子の生合成及び発生(例えば、新規miRNAバージョンの存在、新規編集siRNA、piRNA、tasiRNAなどの存在)を分析することによって行われる。
【0423】
一実施形態によれば、改変された細胞の選択は、標的RNAをコードする生物の少なくとも1つの真核細胞又は真核生物の表現型、例えば細胞サイズ、成長速度/阻害、細胞形状、細胞膜完全性、腫瘍サイズ、腫瘍形状、生物の色素沈着、生物における感染パラメータ(ウイルス負荷若しくは細菌負荷等)又は生物における炎症パラメータ(発熱若しくは発赤等)を確認することによって、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対する非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/又は特異性を分析することによって行われる。
【0424】
一実施形態によれば、非コードRNA分子のサイレンシング特異性は、例えば、遺伝子の発現又は発現の欠如によって遺伝子型的に決定される。
【0425】
一実施形態によれば、非コードRNA分子のサイレンシング特異性は、表現型的に決定される。
【0426】
一実施形態によれば、真核細胞又は真核生物の表現型は、遺伝子型の前に決定される。
【0427】
一実施形態によれば、真核細胞又は真核生物の遺伝子型は、表現型の前に決定される。
【0428】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAのRNAレベルを測定することによって、第2の標的RNA又は目的の標的RNAに対する非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/又は特異性を分析することによって行われる。これは、例えば、ノーザンブロッティング、ヌクレアーゼ保護アッセイ、In Situハイブリダイゼーション、定量的RT−PCR又は免疫ブロット法によって、当該分野で公知の任意の方法を使用して実施され得る。
【0429】
一実施形態によれば、改変細胞の選択は、例えば、挿入、欠失、挿入−欠失(インデル(Indel))、反転、置換、及びそれらの組み合わせなど、求められる編集のタイプに応じて、本明細書で「突然変異」又は「編集」とも呼ばれるDNA編集事象を含む真核細胞又はクローンを分析することによって行われる。
【0430】
配列変更を検出するための方法は、当該分野で周知であり、そしてDNA及びRNA配列決定(例えば、次世代シークエンシング)、電気泳動、酵素に基づくミスマッチ検出アッセイ及びハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、PCR、RT−PCR、RNase保護、In Situハイブリダイゼーション、プライマー伸長、サザンブロット、ノーザンブロット及びドットブロット分析)を含むが、これらに限定されない。一塩基多型(SNP)の検出のために使用される種々の方法(例えば、ユニークな制限部位(複数可)の出現又は消失を検出するためのPCRに基づくT7エンドヌクレアーゼ、Hetroduplex及びSanger配列決定、又はPCR、続いて制限消化もまた、使用され得る。
【0431】
DNA編集事象(例えば、インデル)の存在を確認する別の方法は、ミスマッチDNAを認識し切断する構造選択的酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ)を利用するミスマッチ切断アッセイを含む。
【0432】
一実施形態によれば、形質転換細胞の選択は、蛍光レポーターによって発せられる蛍光を示す形質転換細胞を選択するフローサイトメトリー(FACS)によって行われる。FACSソーティングに続いて、蛍光マーカーを提示する、形質転換真核細胞の正に選択されたプールを収集し、そしてアリコートを、上記のようにDNA編集事象を試験するために使用し得る。
【0433】
抗生物質選択マーカーを使用した場合、形質転換後、真核細胞クローンを、例えば、細胞培養液において選択(例えば、抗生物質)の存在下で培養する。次いで、細胞培養液の細胞の一部を、上記のように、DNA編集事象について分析(検証)する。
【0434】
本発明の一実施形態によれば、当該方法は、形質転換された細胞において、第2の標的RNAに対する内在非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)の相補性を検証することをさらに含む。
【0435】
上記のように、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)をコードする遺伝子の改変後、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、第2の標的RNA又は目的の標的RNAの配列に対して、少なくとも約30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらには100%の相補性を含む。
【0436】
設計された非コードRNA分子と目的の標的RNAとの特異的結合は、計算アルゴリズム(例えば、BLAST)などの当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができ、例えば、ノーザンブロット、In Situハイブリダイゼーション、QuantiGene Plexアッセイ等を含む方法によって検証することができる。
【0437】
陽性真核細胞は、DNA編集事象に関してホモ接合又はヘテロ接合であり得ることが理解されるであろう。ヘテロ接合体細胞の場合、細胞は、改変された遺伝子のコピー及び非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)の非改変遺伝子のコピーを含み得る。当業者は、意図される用途に従って、さらなる培養/再生のために細胞を選択する。
【0438】
一実施形態によれば、一過的な方法が所望される場合、所望されるようなDNA編集事象の存在を示す真核細胞が、DNA編集剤の存在、すなわち、DNA編集剤をコードするDNA配列の喪失についてさらに分析され、選択される。これは、例えば、DNA編集剤の発現喪失(例えば、mRNA、タンパク質で)を、例えばGFPの蛍光検出又はq−PCR、HPLCによって分析することによって行うことができる。
【0439】
一実施形態によれば、一過性方法が所望される場合、真核細胞は、本明細書中に記載される核酸構築物又はその部分(例えば、DNA編集剤をコードする核酸配列)の存在について分析され得る。これは、蛍光顕微鏡法、q−PCR、FACS、及び/又はサザンブロット、PCR、配列決定、HPLCなどの任意の他の方法によって確認することができる。
【0440】
陽性真核細胞クローンを保存(例えば、凍結保存)してもよい。
【0441】
あるいは、真核細胞は、長期間、さらに培養して、例えば、未分化状態で維持されてもよいし、必要に応じて、他の細胞型、組織、器官又は生物へと分化するように誘導されてもよい。
【0442】
本発明のいくつかの実施形態のDNA編集剤及び任意にドナーオリゴは、単一の細胞に、細胞の群(例えば、上で論じたように初代培養細胞又は細胞株)に、又は生物(例えば、上で論じたように哺乳動物、鳥類、魚類、及び昆虫)に投与することができる。
【0443】
従って、本発明のいくつかの実施形態のDNA編集剤及び任意にドナーオリゴ(又はそれらを含む発現ベクター又はRNP複合体)は、生物にそれ自体で投与することができるし、又はそれらが好適な担体又は賦形剤と混合されている医薬組成物として投与することもできる。
【0444】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、1以上の本明細書に記載される活性成分と、生理的に好適な担体及び賦形剤等の他の化学成分との調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0445】
本明細書中で、用語「活性成分」は、生物学的効果に関与するDNA編集剤及び任意にドナーオリゴを指す。
【0446】
これ以降、語句「生理的に許容できる担体」及び「薬学的に許容できる担体」は、互換的に使用されてもよく、これらは、生物に対して重大な刺激作用を引き起こさず、投与された化合物の生物活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。アジュバント(佐剤)は、これらの語句の範疇に含まれる。
【0447】
本明細書中で、用語「賦形剤」は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類及びデンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0448】
薬物の配合及び投与のための技法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、イーストン(Easton)、ペンシルベニア州、最新版に見出すことができ、この文献を参照により本明細書に援用したものとする。
【0449】
好適な投与経路としては、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、とりわけ経鼻送達、腸内送達又は非経口送達、例えば筋肉内注射、皮下注射及び髄内注射、並びに髄腔内注射、直接室内注射、心臓内注射、例えば、右心室内腔又は左心室内腔への注射、一般冠状動脈への注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、又は眼内注射を挙げてもよい。
【0450】
中枢神経系(CNS)への薬物送達のための従来のアプローチとしては、神経外科的戦略(例えば、脳内注射又は脳室内注入);BBBの内在性の輸送経路のうちの1つを利用しようとした、薬剤の分子操作(例えば、自身ではBBB(血液脳関門)を通過することができない薬剤と組み合わせて、内皮細胞表面分子に対する親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の製造);薬剤の脂質溶解性を向上するように設計(例えば、水溶性薬剤を脂質又はコレステロール担体に結合すること)された薬理学的な戦略;並びに(頚動脈へのマンニトール溶液の注入又はアンギオテンシンペプチド等の生物活性剤の使用から生じる)高浸透圧性の分断(hyperosmotic disruption)によるBBBの完全性の一時的な分断、が挙げられる。しかしながら、これらの戦略の各々は、制約を抱える。例えば、侵襲的な外科手術に随伴する固有のリスク、内在性の輸送系に固有の制約によって課されるサイズの制約、CNSの外部で活性であることができる担体モチーフから構成されるキメラ分子の全身投与に随伴する潜在的に望ましくない生物的副作用、及びBBBが分断される脳の領域内での脳損傷のリスクの可能性(これは、この経路を次善の送達方法にしてしまう)などである。
【0451】
あるいは、例えば、医薬組成物を患者の組織領域に直接注射することにより、医薬組成物を全身的ではなく局所的に投与してもよい。
【0452】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当該技術分野で周知のプロセスにより、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠形成(dragee−making)、微粒子化、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥のプロセスによって製造されてもよい。
【0453】
本発明のいくつかの実施形態に係る使用のための医薬組成物は、このように、医薬品として使用することができる調剤への活性成分の加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む1以上の生理的に許容できる担体を使用して従来の方法で処方されてよい。適正な処方は、選ばれた投与経路に依存する。
【0454】
注射用に、上記医薬組成物の活性成分は、水溶液中で、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理的塩緩衝液等の生理的に適合性の緩衝液中で処方されてもよい。経粘膜投与用に、浸透するべき障壁に適切な浸透剤が処方物で使用される。このような浸透剤は、一般に当該技術分野で公知である。
【0455】
経口投与用に、医薬組成物は、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容できる担体と組み合わせることにより容易に処方できる。このような担体によって、医薬組成物は、患者による経口摂取のための錠剤、丸剤、薬糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤等として処方されることが可能である。経口使用のための薬理学的な調剤は、固体賦形剤を使用し、任意に、得られた混合物を粉砕し、所望に応じて好適な補助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工することで作製することができ、これにより錠剤又は薬糖衣錠コアが得られる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース(乳糖)、スクロース(ショ糖)、マンニトール、若しくはソルビトールを含めた糖類;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ガムトラガント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボメチルセルロースナトリウム等のセルロース調製物;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)等の生理的に許容できるポリマーなどの充填剤である。所望に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウム等のその塩などの崩壊剤が加えられてもよい。
【0456】
薬糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、濃縮砂糖溶液が使用されてもよく、この濃縮糖溶液は、任意にアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポール(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有してもよい。特定のため、又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけるために、染料又は色素が錠剤又は薬糖衣錠コーティングに加えられてもよい。
【0457】
経口で使用することができる医薬組成物は、ゼラチンから作製される押し込み型(push−fit)カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトール等の可塑剤から作製される軟密封カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、及び任意に安定剤との混合物で活性成分を含有してもよい。軟カプセル剤では、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン、又は液状ポリエチレングリコール等の好適な液体に溶解又は懸濁されてもよい。加えて、安定剤が加えられてもよい。経口投与用のすべての処方物は、選ばれた投与経路に好適な投薬量である必要がある。
【0458】
口腔内投与用に、組成物は、従来の様式で処方された錠剤又はトローチ剤の形態をとってもよい。
【0459】
鼻内吸入による投与のために、本発明のいくつかの実施形態に係る使用のための活性成分は、好適な噴霧剤、例えばジクロロジフロロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用して、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合には、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを備えることにより決定されてもよい。ディスペンサーにおいて使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物及びラクトース又はデンプン等の好適な粉末基材の粉末混合物を含有して処方されてもよい。
【0460】
本明細書に記載される医薬組成物は、非経口投与、例えば、ボーラス注入又は持続点滴用に処方されてもよい。注射用の処方物は、単位剤形で、例えば、任意に防腐剤を添加したアンプル剤で、又は複数回用量容器で提示されてもよい。この組成物は、油性又は水性のビヒクル(媒質)中の懸濁剤、液剤又は乳剤であってよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散化剤等の製剤化剤を含有してもよい。
【0461】
非経口投与用の医薬組成物としては、水溶性形態の活性調製物の水溶液が挙げられる。さらに、活性成分の懸濁液が、適切な油性又は水系の注射用懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性の溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソーム等の合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランを含有してもよい。任意に、この懸濁液は、好適な安定剤又は非常に濃厚な溶液の調製を可能にするための活性成分の溶解性を高める薬剤も含有してよい。
【0462】
あるいは、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、無菌の、発熱性物質除去水ベースの溶液を用いて構成するための粉末形態にあってもよい。
【0463】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、例えば、カカオバター又は他のグリセリド等の従来の座薬基材を使用して、座薬又は停留浣腸等の直腸組成物として処方されてもよい。
【0464】
本発明のいくつかの実施形態に関する使用に好適な医薬組成物としては、活性成分が意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、治療上有効量は、障害(例えば、癌若しくは感染症)の症候を予防、緩和若しくは寛解させるか、又は処置されている対象の生存を延長するために有効な活性成分(DNA編集剤)の量を意味する。
【0465】
治療上有効量の決定は、とりわけ本明細書に提示される詳細な開示を踏まえると、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0466】
本発明の方法で使用される任意の調製物について、治療上有効量又は治療上有効用量は、インビトロ及び細胞培養液アッセイから最初に推定することができる。例えば、用量は、所望の濃度又は力価を達成するために、動物モデルにおいて処方することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0467】
癌性疾患についての動物モデルは、例えばYeeら、Cancer Growth Metastasis. (2015) 8(Suppl 1):115−118に記載されている。感染症についての動物モデルは、例えばShevach、Current Protocols in Immunology、オンライン公開:2011年4月1日、DOI:10.1002/0471142735.im1900s93に記載されている。
【0468】
本明細書に記載される活性成分の毒性及び治療効果(治療有効性)は、標準的な医薬手順によって、インビトロにおいて、細胞培養液において、又は実験動物において決定することができる。これらのインビトロ及び細胞培養液アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトにおいて使用するための投薬量の範囲を処方する際に使用することができる。投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変わりうる。正確な処方、投与経路及び投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ばれうる。(例えば、Fingl,ら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」中、第1章、1頁を参照)。
【0469】
投薬量及び投薬間隔は、生物学的効果を誘導又は抑制するために十分な量(最小有効濃度、minimal effective concentration、MEC)の活性成分を提供するように個々に調整されてよい。MECは、調製物ごとに変わることになろうが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は、個体の特徴及び投与経路に依存することになる。血漿中濃度を決定するために検出アッセイを使用することができる。
【0470】
処置されるべき状態の重症度及び応答性に応じて、投薬は、単回又は複数回の投与であることができ、処置過程は、数日から数週間、又は治癒がもたらされるか若しくは病状の軽減が成し遂げられるまで続く。
【0471】
投与されるべき組成物の量は、当然、処置される対象、苦痛の重症度、投与様式、担当医の判断等に依存することになる。
【0472】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、所望に応じて、パック又はディスペンサー装置、例えばFDA認可のキット等で提示されてもよく、これらは、活性成分を含有する1以上の単位剤形を含有してよい。パックは、例えば、金属箔又はプラスチック箔を含んでもよく、例えばブリスターパックであってもよい。このパック又はディスペンサー装置は、投与についての説明書を伴ってもよい。パック又はディスペンサーは、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により指定された形式の容器に随伴する通知に入れられていてもよく、この通知は、当局による組成物の形態又はヒト投与若しくは獣医学投与の認可を反映したものである。このような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局に認可されたラベル又は認可された製品挿入物であってもよい。適合性の医薬担体中で処方された本発明の調製物を含む組成物は、さらに後述するように、調製され、適切な容器に入れられ、適応する状態の処置のためにラベル付けされてもよい。
【0473】
目的の標的RNAに対する非コードRNA分子のサイレンシング特異性を含むように設計されたDNA編集剤は、後述する種々の疾患及び状態を処置するために使用することができる。
【0474】
用語「処置(する)」は、病態(疾患、障害又は状態)の発生を阻害、予防若しくは停止すること、及び/又は病態の低減、寛解、又は退縮を引き起こすことを指す。当業者は、種々の方法論及びアッセイが、病態の発症を評価するために使用することができ、同様に、種々の方法論及びアッセイが病態の低減、寛解又は退縮を評価するために使用されてもよいことを理解しているであろう。
【0475】
本明細書で使用する場合、用語「予防(する)」は、疾患、障害又は状態が、その疾患のリスクがある可能性があるがその疾患を有するとはまだ診断されていない対象において発生することを防ぐことを指す。
【0476】
本明細書で使用する場合、用語「対象」又は「必要とする対象」は、病態を患っている、哺乳動物、好ましくはヒトを含めた任意の年齢又は性別の動物を含む。好ましくは、この用語は、病態を発生するリスクがある個体を包含する。
【0477】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において感染症を処置する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって上記対象において上記感染症を処置する工程を含み、目的の標的RNAは上記感染症の発症又は進行と関連する方法が提供される。
【0478】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において感染症を処置することにおいて使用するための、目的の標的RNAに対するRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤であって、上記目的の標的RNAは、感染症の発症又は進行と関連するDNA編集剤が提供される。
【0479】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において感染症を処置することにおいて使用するための、標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤であって、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAは異なり、上記第2の標的RNAは感染症の発症又は進行と関連するDNA編集剤が提供される。
【0480】
用語「感染症」は、本明細書で使用する場合、慢性感染症、亜急性感染症、急性感染症、ウイルス性疾患、細菌性疾患、原虫性疾患、寄生虫疾患、真菌性疾患、マイコプラズマ疾患及びプリオン病のいずれかを指す。
【0481】
一実施形態によれば、対象において感染症を処置するために、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、感染症の発症又は進行と関連する目的のRNAを標的とするように設計される。
【0482】
一実施形態によれば、上記目的の標的RNAは、病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌等)に対する耐性を付与する真核細胞の遺伝子の産物を含む。例示的な遺伝子としては、CyPA−(サイクロフィリン(CyP))、サイクロフィリンA(例えば、C型肝炎ウイルス感染についての)、CD81、スカベンジャー受容体クラスB I型(SR−BI)、ユビキチン特異的ペプチダーゼ18(USP18)、ホスファチジルイノシトール4−キナーゼIIIアルファ(PI4K−IIIα)(例えば、HSV感染について)及びCCR5−(例えば、HIV感染について)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、目的の標的RNAは、上記病原体の遺伝子の産物を含む。
【0483】
一実施形態によれば、ウイルスは、アルボウイルス(例えば、水疱性口内炎ウイルスインディアナ株−VSV)である。一実施形態によれば、目的の標的RNAは、VSV遺伝子の産物、例えばGタンパク質(G)、Lタンパク質(巨大タンパク質)(L)、リン酸化タンパク質、マトリクスタンパク質(M)又は核タンパク質を含む。
【0484】
一実施形態によれば、目的の標的RNAとしては、gag及び/又はvif遺伝子(すなわち、HIV−1における保存配列);Pタンパク質(すなわち、RSVにおけるウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの必須のサブユニット);P mRNA(すなわちPIVにおける);コア(core)、NS3、NS4B及びNS5B(すなわちHCVにおける);VAMP関連タンパク質(hVAP−A)、La抗原及びポリピリミジントラクト結合タンパク質(PTB)(すなわちHCVについて)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0485】
特定の実施形態によれば、上記生物がヒトである場合、目的の標的RNAとしては、マラリアを引き起こす病原体の遺伝子;HIVウイルスの遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_001802.1に記載);HCVウイルスの遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_004102.1に記載);及び寄生虫の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:XM_003371604.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0486】
特定の実施形態によれば、上記生物がヒトである場合、目的の標的RNAとしては、癌性疾患に関連する遺伝子(例えば、bcr/abl e8a2融合タンパク質についてのホモサピエンスmRNA、GenBank受入番号:AB069693.1に記載)又は骨髄異形成症候群(MDS)及び血管疾患に関連する遺伝子(例えば、ヒトヘパリン結合性血管内皮増殖因子(VEGF)mRNA、GenBank受入番号:M32977.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0487】
特定の実施形態によれば、上記生物がウシである場合、目的の標的RNAとしては、ウシ感染性鼻気管炎ウイルスの遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AJ004801.1に記載)、例えばBRD(Bovine Respiratory Disease complex、ウシ呼吸器病症候群)を引き起こすウシヘルペスウイルス1型(BHV1);ブルータング病(BTVウイルス)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:KP821170.1に記載);ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVD)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_001461.1に記載);例えば口蹄疫を引き起こすピコルナウイルスの遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_004004.1に記載);例えばBRDを引き起こすパラインフルエンザ3型ウイルス(PI3)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_028362.1に記載);例えばウシ型結核(bTB)を引き起こすマイコバクテリウム・ボビス(M.bovis)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_037343.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0488】
特定の実施形態によれば、上記生物がヒツジである場合、目的の標的RNAとしては、条虫症を引き起こす病原体(単包条虫ライフサイクル、単包条虫(Echinococcus granulosus)、テニア・オウィス(Taenia ovis)、テニア・ヒダチゲナ(Taenia hydatigena)、モニエジア属(Moniezia)の種)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AJ012663.1に記載);扁形動物病を引き起こす病原体(肝蛭(Fasciola hepatica)、巨大肝蛭(Fasciola gigantica)、ファスキオロイデス・マグナ(Fascioloides magna)、槍形吸虫(Dicrocoelium dendriticum)、ボビス住血吸虫(Schistosoma bovis))の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:AY644459.1に記載);ブルータング病を引き起こす病原体の遺伝子(BTVウイルス、例えば、GenBank受入番号:KP821170.1に記載);及び回虫症を引き起こす病原体(「hoose」としても知られる寄生性気管支炎、エレオフォラ・シュネイデリ(Elaeophora schneideri)、捻転胃虫(Haemonchus contortus)、毛様線虫(トリコストロンギルス属、Trichostrongylus)の種、テラドルサギア・サーカムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)、クーペリア属(Cooperia)の種、ネマトジルス属(Nematodirus)の種、ジクチオカウルス・フィラリア(Dictyocaulus filaria)、プロトストロンギルス・ルフェセンス(Protostrongylus refescens)、ムエルレリウス・カピラリス(Muellerius capillaris)、腸結節虫(エソファゴストム属、Oesophagostomum)の種、ネオストロンギルス・リネアリス(Neostrongylus linearis)、大口腸線虫(Chabertia ovina)、ヒツジ鞭虫(Trichuris ovis))の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_003283.11に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0489】
特定の実施形態によれば、上記生物がブタである場合、目的の標的RNAとしては、アフリカブタ熱ウイルス(ASFV)の遺伝子(例えば、アフリカブタ熱を引き起こす)(例えば、GenBank受入番号:NC_001659.2に記載);ブタコレレラウイルス(例えば、ブタコレラを引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_002657.1に記載);及びピコルナウイルス(例えば、口蹄疫を引き起こす)の遺伝子(例えば、GenBank受入番号:NC_004004.1に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0490】
特定の実施形態によれば、上記生物がニワトリである場合、目的の標的RNAとしては、トリインフル(若しくはトリインフルエンザ)の遺伝子、トリパラミクソウイルス1型(APMV−1)(例えば、ニューカッスル病を引き起こす)のバリアントの遺伝子、又はマレック病を引き起こす病原体の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0491】
特定の実施形態によれば、上記生物がカブトエビである場合、目的の標的RNAとしては、ホワイトスポット病ウイルス(WSSV)の遺伝子、イエローヘッドウイルス(YHV)の遺伝子、又はタウラ症候群ウイルス(TSV)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0492】
特定の実施形態によれば、上記生物がサケである場合、目的の標的RNAとしては、伝染性サケ貧血(ISA)の遺伝子、伝染性造血器壊死症(IHN)の遺伝子、ウミジラミ(Sea lice)(例えば、レペオフテイルス(Lepeophtheirus)属及びカリグス(Caligus)属の外寄生の橈脚類)の遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0493】
目的のRNA(例えば、病原体の遺伝子)を標的とするように改変され得る例示的な内在非コードRNA分子、内在非コードRNA分子を改変するために使用され得る例示的なgRNA(すなわち、DNA編集剤)配列、及び目的の標的RNAに対する内在非コードRNA分子のサイレンシング特異性をリダイレクトするための例示的なヌクレオチド配列は、以下の表1Bに提供される。
【0504】
処置の有効性を評価することは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えば対象の身体的健康状態を評価することにより、血液検査により、ウイルス負荷/細菌負荷を評価することにより、等で実施されてもよい。
【0505】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において単一遺伝子劣性遺伝疾患を処置する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって上記対象において上記単一遺伝子劣性遺伝疾患を処置する工程を含み、目的の標的RNAは上記単一遺伝子劣性遺伝疾患と関連する方法が提供される。
【0506】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において単一遺伝子劣性遺伝疾患を処置することにおいて使用するための、目的の標的RNAに対するRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤であって、上記目的の標的RNAは単一遺伝子劣性遺伝疾患に関連するDNA編集剤が提供される。
【0507】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において単一遺伝子劣性遺伝疾患を処置することにおいて使用するための、標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤であって、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAは異なり、上記第2の標的RNAは単一遺伝子劣性遺伝疾患に関連するDNA編集剤が提供される。
【0508】
本明細書で使用する場合、用語「単一遺伝子劣性遺伝疾患」は、常染色体上の単独の欠損遺伝子の結果として引き起こされる疾患又は状態を指す。
【0509】
一実施形態によれば、単一遺伝子劣性遺伝疾患は、自然突然変異又は遺伝性の突然変異の結果である。
【0510】
一実施形態によれば、単一遺伝子劣性遺伝疾患は、常染色体優性遺伝性、常染色体劣性遺伝性又は伴性劣性遺伝性である。
【0511】
例示的な単一遺伝子劣性遺伝疾患としては、重症複合免疫不全症(SCID)、血友病、酵素欠損症、パーキンソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、フリードライヒ運動失調症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ハンター病、アイカルディ症候群、クラインフェルター症候群、レーベル遺伝性視神経症(LHON)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0512】
一実施形態によれば、対象において単一遺伝子劣性遺伝疾患を処置するために、非コードRNA分子(例えばRNAサイレンシング分子)は、単一遺伝子劣性遺伝疾患と関連する目的のRNAを標的とするように設計される。
【0513】
一実施形態によれば、障害がパーキンソン病である場合、目的の標的RNAは、SNCA(PARK1=4)、LRRK2(PARK8)、Parkin(PARK2)、PINK1(PARK6)、DJ−1(PARK7)、又はATP13A2(PARK9)遺伝子の産物を含む。
【0514】
一実施形態によれば、障害が血友病又はフォン・ヴィレブランド病である場合、目的の標的RNAは、例えば、アンチトロンビン遺伝子、凝固因子VIII遺伝子又は第IX因子遺伝子の産物を含む。
【0515】
処置の有効性を評価することは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えば血液検査によって、骨髄液によって対象の身体的健康状態を評価することによる等で実施されてもよい。
【0516】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において自己免疫疾患を処置する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって上記対象において上記自己免疫疾患を処置する工程を含み、目的の標的RNAは上記自己免疫疾患と関連する方法が提供される。
【0517】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において自己免疫疾患を処置することにおいて使用するための、目的の標的RNAに対するRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤であって、上記目的の標的RNAは自己免疫疾患と関連するDNA編集剤が提供される。
【0518】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において自己免疫疾患を処置することにおいて使用するための、標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤であって、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAは異なり、上記第2の標的RNAは自己免疫疾患と関連するDNA編集剤が提供される。
【0519】
自己免疫疾患の非限定的な例としては、心血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経疾患、筋疾患、腎疾患、生殖に関連する疾患、結合織疾患(膠原病)及び全身性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0520】
自己免疫性心血管疾患の例としては、アテローム性動脈硬化症(Matsuura E.ら、Lupus. 1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O. Lupus. 1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107−9)、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎病(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000年8月25日;112(15−16):660)、抗第VIII因子自己免疫疾患(Lacroix−Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000;26(2):157)、壊死性小血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、微量免疫型巣状壊死性半月体形成性糸球体腎炎(pauci−immune focal necrotizing and crescentic glomerulonephritis)(Noel LH. Ann Med Interne(Paris). 2000年5月;151(3):178)、抗リン脂質抗体症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis 1999;14(4):171)、抗体誘導性心不全(Wallukat G.ら、Am J Cardiol. 1999年6月17日;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F. Ann Ital Med Int. 1999年4〜6月;14(2):114;Semple JW.ら、Blood 1996年5月15日;87(10):4245)、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998年1月;28(3−4):285;Sallah S.ら、Ann Hematol 1997年3月;74(3):139)、シャーガス病における心臓自己免疫(Cunha−Neto E.ら、J Clin Invest 1996年10月15日;98(8):1709)及び抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(Caporossi AP.ら、Viral Immunol 1998;11(1):9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0521】
自己免疫性リウマチ様疾患の例としては、関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol 2000年7月;15(3):791;Tisch R、McDevitt HO. Proc Natl Acad Sci units SA 1994年1月18日;91(2):437)及び強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001;3(3):189)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0522】
自己免疫性腺疾患の例としては、膵疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーブス病、甲状腺炎、自然発症自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎及び多腺性自己免疫症候群I型が挙げられるが、これらに限定されない。疾患としては、膵臓の自己免疫疾患、1型糖尿病(Castano L.及びEisenbarth GS. Ann. Rev. Immunol. 8:647;Zimmet P. Diabetes Res Clin Pract 1996年10月;34 Suppl:S125)、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病(Orgiazzi J. Endocrinol Metab Clin North Am 2000年6月;29(2):339;Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993年3月;92(1):77)、自然発症自己免疫性甲状腺炎(Braley−Mullen H.及びYu S、J Immunol 2000年12月15日;165(12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999年8月;57(8):1810)、特発性粘液水腫(Mitsuma T. Nippon Rinsho. 1999年8月;57(8):1759)、卵巣自己免疫(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998年2月;37(2):87)、自己免疫性抗精子不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol. 2000年3月;43(3):134)、自己免疫性前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology 1997年12月;50(6):893)及び多腺性自己免疫症候群I型(Hara T.ら、Blood. 1991年3月1日;77(5):1127)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0523】
自己免疫性胃腸疾患の例としては、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol. 2000年1月;23(1):16)、セリアック病(Landau YE.及びShoenfeld Y. Harefuah 2000年1月16日;138(2):122)、大腸炎(結腸炎)、回腸炎及びクローン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0524】
自己免疫性皮膚疾患の例としては、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡及び落葉状天疱瘡等(これらに限定されない)の自己免疫性水疱性皮膚症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0525】
自己免疫性肝疾患の例としては、肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990年3月;54(3):382)、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE. Clin Sci(Colch) 1996年11月;91(5):551;Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol. 1999年6月;11(6):595)及び自己免疫性肝炎(Manns MP. J Hepatol 2000年8月;33(2):326)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0526】
自己免疫性神経疾患の例としては、多発性硬化症(Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001年1月1日;112(1−2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl. 1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.及びKraig E、Int Rev Immunol 1999;18(1−2):83;Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990年12月;20(12):2563)、ニューロパチー、運動性ニューロパチー(Kornberg AJ. J Clin Neurosci. 2000年5月;7(3):191);ギラン−バレー症候群及び自己免疫性ニューロパチー(Kusunoki S. Am J Med Sci. 2000年4月;319(4):234)、筋無力症、ランバート−イートン筋無力症症候群(Takamori M. Am J Med Sci. 2000年4月;319(4):204);傍腫瘍性神経症候群、小脳萎縮症、傍腫瘍性小脳萎縮症及び全身硬直症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci units SA 2001年3月27日;98(7):3988);非傍腫瘍性全身硬直症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側策硬化症、シデナム舞踏病(Sydeham chorea)、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群及び自己免疫性多腺性内分泌不全症(Antoine JC.及びHonnorat J. Rev Neurol(Paris) 2000年1月;156(1):23);免疫不全ニューロパシー(Nobile−Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419);後天性神経性筋強直症、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci. 1998年5月13日;841:482)、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994年5月;57(5):544)及び神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0527】
自己免疫性筋疾患の例としては、筋炎、自己免疫性筋炎及び原発性シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000年9月;123(1):92)及び平滑筋自己免疫疾患(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999年6月;53(5−6):234)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0528】
自己免疫性腎疾患の例としては、腎炎及び自己免疫性間質性腎炎(Kelly CJ. J Am Soc Nephrol 1990年8月;1(2):140)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0529】
生殖に関連する自己免疫疾患の例としては、習慣性流産(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107−9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0530】
自己免疫性結合織疾患の例としては、耳疾患、自己免疫性耳疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994年8月;157(1):249)及び内耳の自己免疫疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997年12月29日;830:266)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0531】
自己免疫性全身性疾患の例としては、全身性エリテマトーデス(Erikson J.ら、Immunol Res 1998;17(1−2):49)及び全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol. 1999年3月;6(2):156);Chan OT.ら、Immunol Rev 1999年6月;169:107)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0532】
一実施形態によれば、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)を含む。
【0533】
一実施形態によれば、対象において自己免疫疾患を処置するために、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、自己免疫疾患と関連する目的のRNAを標的とするように設計される。
【0534】
一実施形態によれば、上記疾患が狼瘡である場合、目的の標的RNAは、B細胞によって病理学的に産生される抗核抗体(ANA)等の抗核抗体(ANA)を含む。
【0535】
処置の有効性を評価することは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えば血液検査によって、骨髄液によって対象の身体的健康状態を評価することによる等で実施されてもよい。
【0536】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において癌性疾患を処置する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって上記対象において上記癌性疾患を処置する工程を含み、目的の標的RNAは上記癌性疾患と関連する方法が提供される。
【0537】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において癌性疾患を処置することにおいて使用するための、目的の標的RNAに対するRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤であって、上記目的の標的RNAは癌性疾患に関連するDNA編集剤が提供される。
【0538】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において癌性疾患を処置することにおいて使用するための、標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤であって、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAは異なり、上記第2の標的RNAは癌性疾患に関連するDNA編集剤が提供される。
本発明のいくつかの実施形態の方法に従って処置することができる癌の非限定的な例は、任意の固形癌若しくは非固形癌及び/若しくは癌転移又は前癌であってよく、その例としては、消化管の腫瘍(結腸細胞腫、直腸細胞腫、結腸直腸細胞腫、結腸直腸癌、結腸直腸腺腫、遺伝性非ポリポーシス1型、遺伝性非ポリポーシス2型、遺伝性非ポリポーシス3型、遺伝性非ポリポーシス6型;結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス7型、小腸及び/又は大腸の細胞腫、食道細胞腫、食道癌を伴う胼胝、胃細胞腫、膵細胞腫、膵内分泌腫瘍)、子宮内膜細胞腫、隆起性皮膚線維肉腫、胆嚢細胞種、胆道腫瘍、前立腺癌、前立腺腺癌、腎癌(例えば、ウィルムス腫瘍2型又は1型)、肝癌(例えば、肝芽腫、肝細胞腫、肝細胞癌)、膀胱癌、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞性腫瘍、栄養膜腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣の未熟奇形腫、子宮腫瘍、卵巣上皮腫瘍、仙尾骨腫瘍、絨毛癌、胎盤部トロホブラスト腫瘍、成人上皮性腫瘍(epithelial adult tumor)、卵巣細胞癌、漿液性卵巣癌、卵巣性索腫瘍、子宮頸癌、子宮頸部細胞腫、小細胞及び非小細胞肺癌、上咽頭細胞種、乳細胞癌(例えば、乳管癌、浸潤性乳管内癌、散発性;乳癌、乳癌への易罹患性、4型乳癌、乳癌−1、乳癌−3;乳癌卵巣癌)、扁平上皮癌(例えば、頭頸部における)、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、胸腺リンパ腫)、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、遺伝性副腎皮質癌、脳腫瘍、種々の他の細胞腫(例えば、気管支原性大細胞癌、腺管癌、エーリッヒ・レトレ(Ehrlich−Lettre)腹水癌、類表皮癌、大細胞癌、ルイス肺癌、髄様癌、粘表皮癌、燕麦細胞癌、小細胞癌、紡錘細胞癌、有棘細胞癌、移行上皮癌、未分化癌、癌肉腫、絨毛癌、嚢胞腺癌)、上衣芽腫、上皮腫、赤白血病(例えば、フレンド白血病、リンパ芽球性白血病)、線維肉腫、巨細胞腫、グリア細胞腫瘍、神経膠芽腫(例えば、多形神経膠芽腫、星状細胞腫)、神経膠腫肝細胞腫、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロミエローマ、組織球腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞)、副腎腫(グラヴィッツ腫瘍)、インスリノーマ、膵島腫瘍、角化腫、平滑筋芽腫、平滑筋肉腫、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性pre−B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球、単球性、急性骨髄性、急性骨髄性、好酸球増加症を伴う急性骨髄性、B細胞、好塩基球性、慢性骨髄性、慢性、B細胞、好酸球性、フレンド、顆粒球性又は骨髄球性、ヘアリー細胞、リンパ球性、巨核芽球性、単球性、単球性マクロファージ、骨髄芽球性、骨髄性、骨髄単球性、形質細胞性、pre−B細胞、前骨髄球性、亜急性、T細胞、リンパ系腫瘍、骨髄性悪性腫瘍素因、急性非リンパ球性白血病)、リンパ肉腫、黒色腫、乳房腫瘍、マスト細胞腫、髄芽腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、腎芽腫、神経組織グリア細胞腫瘍、神経組織神経細胞腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、骨軟骨腫、オステオミエローマ(osteomyeloma)、骨肉腫(例えば、ユーイング骨肉腫)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体腫瘍(浸潤性)、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、組織球性細胞、イエンセン肉腫、骨原性肉腫、細網肉腫)、シュワン腫、皮下腫瘍、奇形癌腫(例えば、多能性)、奇形腫、精巣腫瘍、胸腺腫及び毛包上皮腫、胃癌、線維肉腫、多形神経膠芽腫;多発性グロムス腫瘍、リー・フラウメニ症候群、脂肪肉腫、リンチ癌(lynch cancer)ファミリー症候群II型、雄性生殖細胞腫瘍、マスト細胞白血病、延髄甲状腺、多発性髄膜腫、内分泌腫瘍粘液肉腫、傍神経節腫、家族性非クロム親和性、毛母腫、乳頭腫瘍、家族性及び散発性、ラブドイド腫瘍素因症候群、家族性、ラブドイド腫瘍、軟部肉腫、及び神経膠芽腫を伴うターコット症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0539】
一実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法によって処置することができる癌は、血液悪性腫瘍を含む。例示的な血液悪性腫瘍は、異なる他の染色体へのABLチロシンキナーゼの悪性の融合を伴うものを含み、この悪性の融合によってBCR−ABLと呼ばれるものが生成され、これが次に悪性の融合タンパク質を生じる。従って、mRNA中の融合点を標的とすることは、融合mRNAのみを下方制御のためにサイレンシングする可能性があり、一方で、細胞にとって必須の正常なタンパク質はそのままにされることになる。
【0540】
一実施形態によれば、対象において癌性疾患を処置するために、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、癌性疾患と関連する目的のRNAを標的とするように設計される。
【0541】
一実施形態によれば、目的の標的RNAは、癌遺伝子(例えば、変異癌遺伝子)の産物を含む。
【0542】
一実施形態によれば、目的の標的RNAは、腫瘍抑制因子の機能を修復する。
【0543】
一実施形態によれば、目的の標的RNAは、RAS、MCL−1又はMYC遺伝子の産物を含む。
【0544】
一実施形態によれば、目的の標的RNAは、アポトーシス関連遺伝子のBCL−2ファミリーの産物を含む。
【0545】
例示的な標的遺伝子としては、ドミナントネガティブな変異体TP53、Bcl−x、IAPs、Flip、Faim3及びSMS1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0546】
一実施形態によれば、癌が黒色腫である場合、目的の標的RNAはBRAFを含む。例えばV600E、V600K、V600D、V600G、及びV600Rを含むBRAF変異のいくつかの形態が本明細書で企図される。
【0547】
一実施形態によれば、当該方法は、白血球等の健常な免疫細胞、例えばT細胞、B細胞又はNK細胞(例えば、患者由来又は細胞ドナー由来の)が、悪性細胞(例えば、血液悪性腫瘍の細胞)を(直接的又は間接的に)死滅させることができるように、それらの免疫細胞の中の非コードRNA分子を、目的の標的RNAへ標的とすることにより行われる。
【0548】
一実施形態によれば、当該方法は、癌が未変性の免疫系によって認識され根絶されることができるように、癌因子によって操作されるタンパク質(すなわち目的の標的RNA)をサイレンシングするように(すなわち、免疫応答が悪性腫瘍を認識するのを抑制するために)非コードRNA分子を標的化することにより行われる。
【0549】
処置の有効性を評価することは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えばMRI、CT、PET−CT、血液検査、超音波、x線によって腫瘍成長又は新生物若しくは転移の数を評価することによる等で実施されてもよい。
【0550】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において化学療法剤の有効性及び/又は特異性を増強する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって上記対象において化学療法剤の有効性及び/又は特異性を増強する工程を含み、目的の標的RNAは上記化学療法剤の有効性及び/又は特異性の増強と関連する方法が提供される。
【0551】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において化学療法剤の有効性及び/又は特異性を増大することにおいて使用するための、目的の標的RNAに対するRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤であって、上記目的の標的RNAは、上記化学療法剤の有効性及び/又は特異性の増大と関連するDNA編集剤が提供される。
【0552】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において化学療法剤の有効性及び/又は特異性を増大することにおいて使用するための、標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤であって、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAは異なり、上記第2の標的RNAは、上記化学療法剤の有効性及び/又は特異性の増大と関連するDNA編集剤が提供される。
【0553】
本明細書で使用する場合、用語「化学療法剤」は、新生物若しくは転移の成長を低下、予防、軽減、限定及び/若しくは遅延するか、若しくは新生物の壊死若しくはアポトーシス、若しくは任意の他の機構により新生物細胞を直接死滅させる薬剤、又は新生物疾患(例えば、癌)を有する対象において新生物又は転移の成長を低下、予防、軽減、限定及び/若しくは遅延するために、別の方法で医薬的有効量で使用することができる薬剤を指す。
【0554】
化学療法剤としては、フルオロピリミジン;ピリミジンヌクレオシド;プリンヌクレオシド;葉酸代謝拮抗薬、白金製剤;アントラサイクリン/アントラセンジオン;エピポドフィロトキシン;カンプトテシン(例えば、カレニテシン);ホルモン;ホルモン複合体;抗ホルモン薬;酵素,タンパク質、ペプチド並びにポリクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体;免疫薬;ビンカアルカロイド;タキサン類;エポチロン;抗微小管薬(チューブリン重合阻害剤);アルキル化剤;代謝拮抗物質;トポイソメラーゼ阻害剤;抗ウイルス薬;並びに種々の他の細胞毒性薬及び細胞分裂抑制剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0555】
特定の実施形態によれば、化学療法剤としては、アバレリックス、アルデスロイキン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ(bevacuzimab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン(calusterone)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD、ダルベポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシンリポソーム、ダウノルビシン、デシタビン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロンプロピオン酸エステル、エリオットのB溶液(Elliott’s B Solution)、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド、エクセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル5−FU、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン酢酸塩、ヒストレリン酢酸塩、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ−2b、イリノテカン、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド酢酸塩、レバミソール、ロムスチン、CCNU、メクロレタミン、ナイトロジェンマスタード、メゲストロール酢酸塩、メルファラン、L−PAM、メルカプトプリン6−MP、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロンフェンプロピオン酸エステル、ネララビン、ノフェツモマブ(Nofetumomab)、オプレルベキン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パミドロン酸、ペガデマーゼ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセドジナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシンミスラマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブマレイン酸塩、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシドVM−26、テストラクトン、チオグアニン6−TG、チオテパ、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノインATRA、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ゾレドロン酸塩及びゾレドロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0556】
一実施形態によれば、上記化学療法剤の効果は、目的の標的RNAに対する非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/又は特異性を付与するように設計されているDNA編集剤によって処置されていない対象における化学療法剤の効果と比べて、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%増強される。
【0557】
化学療法剤の有効性及び/又は特異性を評価することは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、例えばMRI、CT、PET−CT、血液検査、超音波、x線等によって腫瘍成長又は新生物若しくは転移の数を評価することによる等で実施されてもよい。
【0558】
一実施形態によれば、当該方法は、白血球等の健常な免疫細胞、例えばT細胞、B細胞又はNK細胞(例えば、患者由来又は細胞ドナー由来の)が、化学療法に対する癌の耐性を低下させることができるように、それらの免疫細胞の中の非コードRNA分子を、目的の標的RNAへ標的とすることにより行われる。
【0559】
一実施形態によれば、当該方法は、白血球等の健常な免疫細胞、例えばT細胞、B細胞又はNK細胞(例えば、患者由来又は細胞ドナー由来の)が化学療法に耐性であるように、それらの免疫細胞の中の非コードRNA分子を、目的の標的RNAへ標的とすることより行われる。
【0560】
一実施形態によれば、対象において化学療法剤の有効性及び/又は特異性を増強するために、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、化学療法剤の有効性及び/又は特異性の抑制と関連する目的のRNAを標的とするように設計される。
【0561】
一実施形態によれば、目的の標的RNAは、薬物代謝酵素遺伝子(例えば、チトクロムP450[CYP]2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4、CYP3A5、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ、ウリジン二リン酸グルクロノシルトランスフェラーゼ[UGT]1A1、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ[SULT]1A1、N−アセチルトランスフェラーゼ[NAT]、チオプリンメチルトランスフェラーゼ[TPMT])及び薬物輸送体(P−糖タンパク質[多剤耐性1]、多剤耐性タンパク質2[MRP2]、乳癌耐性タンパク質[BCRP])の産物を含む。
【0562】
一実施形態によれば、目的の標的RNAは、抗アポトーシス遺伝子を含む。例示的な標的遺伝子としては、Bcl−2ファミリーのメンバー、例えばBcl−x、IAPs、Flip、Faim3及びSMS1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0563】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において細胞アポトーシスを誘導する方法であって、本発明のいくつかの実施形態の方法に従って、非コードRNA分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされるか又はRNAサイレンシング分子をコードするか若しくはそれにプロセシングされる遺伝子を改変し、それによって上記対象において細胞アポトーシスを誘導する工程を含み、目的の標的RNAはアポトーシスと関連する方法が提供される。
【0564】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において細胞アポトーシスを誘導することにおいて使用するための、目的の標的RNAに対するRNAサイレンシング活性を有さない非コードRNA分子のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤であって、上記目的の標的RNAはアポトーシスと関連するDNA編集剤が提供される。
【0565】
本発明の一態様によれば、必要とする対象において細胞アポトーシスを誘導することにおいて使用するための、標的RNAに対するRNAサイレンシング分子をコードするか又はそれにプロセシングされる遺伝子のサイレンシング特異性を第2の標的RNAに向けてリダイレクトするDNA編集剤であって、上記標的RNA及び上記第2の標的RNAは異なり、上記第2の標的RNAはアポトーシスと関連するDNA編集剤が提供される。
【0566】
用語「細胞アポトーシス」は、本明細書で使用する場合、プログラム細胞死の細胞プロセスを指す。アポトーシスは、細胞質及び核の明確な構造的変化、規則的な間隔の部位でのクロマチン開裂、及びヌクレオソーム間の部位でのゲノムDNAのヌクレオチド鎖切断を特徴とする。これらの変化は、小疱形成、細胞収縮、核の断片化、クロマチン凝縮、及び染色体DNA断片化を含む。
【0567】
一実施形態によれば、細胞アポトーシスは、目的の標的RNAに対する非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング活性及び/又は特異性を付与するDNA編集剤によって処置されていない対象における細胞アポトーシスと比べて、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%増強される。
【0568】
細胞アポトーシスを評価することは、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば細胞増殖アッセイ、FACS分析等を使用して実施されてもよい。
【0569】
一実施形態によれば、対象において細胞アポトーシスを誘導するために、非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)は、アポトーシスと関連する目的のRNAを標的とするように設計される。
【0570】
一実施形態によれば、上記目的の標的RNAは、アポトーシス関連遺伝子のBCL−2ファミリーの産物を含む。
【0571】
一実施形態によれば、目的の標的RNAは、抗アポトーシス遺伝子を含む。例示的な遺伝子としては、ドミナントネガティブな変異体TP53、Bcl−x、IAPs、Flip、Faim3及びSMS1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0572】
本発明の一態様によれば、真核性非ヒト生物を生成する方法であって、ただし上記生物は植物ではなく、上記真核性非ヒト生物の細胞の少なくともいくつかは、目的の標的RNAに対するサイレンシング特異性を含む非コードRNA分子をコードするか又はそれにプロセシングされる改変遺伝子を含み、当該方法は、真核性非ヒト生物の少なくとも1つの細胞に、目的の標的RNAに対する上記非コードRNA分子(例えば、RNAサイレンシング分子)のサイレンシング特異性を付与するDNA編集剤を導入する工程を含む方法が提供される。
【0573】
以下の情報が利用可能であるべきである:a)遺伝子編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)によってサイレンシングされる標的配列(「標的」);b)GEiGS(すなわち、改変非コードRNA)が遍在的に(例えば、構成的に)又は特異的に発現される(例えば、特定の組織、発生段階、ストレス、加熱/冷ショックなどに特異的な発現)かどうかを選択すること。
【0574】
入力基準に適合する関連miRNAのみをフィルタリング(すなわち、選択)するために、この情報を公的に利用可能なmiRNAデータセット(例えば、小分子RNA配列決定、ゲノム配列、マイクロアレイなど)に提出すること:上記の要件に従って発現されるmiRNA。
【0575】
公的に入手可能なツールを用いて、効力ある標的特異的siRNA配列の一覧を作製することができる。miRNAは効力あるsiRNA配列に対してアラインメントされ、最も相同なmiRNAが選択され得る。フィルタリングを受けたmiRNAは、効力あるsiRNAと同様に、同じ方向に類似の配列を有し得る。
【0576】
標的特異的な効力あるsiRNAと高い相同性を有するとスコア付けされた自然成熟miRNA配列を、標的の配列と完全に一致させるように改変する。この改変は、標的相同性が最も高い1つの成熟miRNA鎖で起こる可能性がある(例えば、元のmiRNAガイド又はパッセンジャー鎖のいずれかであり得る)。標的に対するこのような100%相補性は、潜在的に、miRNA配列をsiRNAに変えることができる。
【0577】
最小のGEは、標的に対する天然の高い相同性(逆相補性)を有するmiRNA配列をフィルタリングすることによって達成され得る。
【0578】
一次改変miRNA遺伝子を用いて、改変miRNA前駆体配列(pre−miRNA)に隣接するゲノムDNA配列に基づいて、ssDNAオリゴ(例えば、200〜500ntのssDNA長さ)及びdsDNAフラグメント(例えば、250〜5000ntのdsDNAフラグメントのみ又はプラスミド内でクローニングされたdsDNAフラグメント)を生成すること。改変されたmiRNAのガイド鎖(サイレンシング鎖)配列は、標的に対して100%相補的であるように設計され得る。
【0579】
同じ塩基対形成プロファイルを保つことにより、元の(改変されていない)miRNA前駆体及び成熟構造を保存するために、他のmiRNA遺伝子領域の配列を改変する。
【0580】
元の未改変miRNA遺伝子(ゲノムmiRNA遺伝子座に特異的)を特異的に標的とし、改変版(すなわちオリゴ/フラグメント配列)を標的としないようにsgRNAを設計する。
【0581】
改変されたmiRNA遺伝子と元のmiRNA遺伝子との比較制限酵素部位を解析し、異なる制限部位をまとめる。このような検出システムは、制限酵素消化及びゲル電気泳動に先行するPCRに基づく。
【0583】
内在非コードRNA(例えば、miRNA)が、標的との天然の高い相同性(例えば、60〜90%)を含む場合に、インシリコ方法を用いて、他の標的に向けた非コードRNAの標的化(例えば、「オフターゲット効果」)を調べることで、目的の標的の特異的なサイレンシングを得るようにする。
【0584】
内在非コードRNA(例えば、miRNA)を最小限に改変して、目的の標的をサイレンシングするその効力を高める。
【0585】
最小限に編集された一次miRNA遺伝子のGEiGS結果を検証し、候補の改良された最小限に編集されたmiRNAを生成する。実験的に有効な一次GEiGS結果(一次の最小編集miRNA遺伝子)は、標的に100%適合するように改変されたガイド鎖又はパッセンジャー鎖を有するmiRNAと考えられる。
【0586】
(
図9に示すように)元の配列に徐々に戻るいくつかのガイド鎖配列又はパッセンジャー鎖配列を生成する。
【0587】
7つのシードヌクレオチド(5’末端からヌクレオチド2〜8)のうち少なくとも5つの一致があるようにシード配列を保持する。
【0588】
標的サイレンシング効率のための種々の候補「改良された最小限に編集されたmiRNA遺伝子」を試験する。最小限のmiRNA配列改変で最も高いサイレンシングをもたらす遺伝子GE媒介ノックインを選択する。
【0589】
改良された最小限に編集されたmiRNA候補の潜在的「オフターゲット効果」を試験する。「オフターゲット効果」の有意な予測は、改良された最小限に編集されたmiRNA遺伝子の最終評価に影響を及ぼす。
【0590】
実験的検証に基づいて、あまり改良されていない最小限に編集されたmiRNA遺伝子候補を試験する。
【0591】
本明細書で使用される「約」という用語は、±10%を指す。
【0592】
用語「comprises(含む)」、「comprising(含む)」、「includes(含む)」、「including(含む)」、「having(有する)」、及びそれらの複合語は、「including but not limited to(含むが、これに限定されない)」を意味する。
【0593】
「consisting of(からなる)」という用語は、「including and limited to(を含み、かつ、限定される)」を意味する。
【0594】
「consisting essentially of(から本質的になる)」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、工程及び/又は部品を含んでもよいが、その追加の成分、工程及び/又は部品が、請求項に係る組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0595】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の参照対照を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物及びそれらの混合物を含むことができる。
【0596】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示されてもよい。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能な部分範囲並びに個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6などを具体的に開示したと考えるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0597】
本明細書中で数値範囲が示されている場合にはいつでも、その数値範囲は、示された範囲内のあらゆる引用された数値(分数又は整数)を含むことが意図されている。句、第1の示された数と第2の示された数との間「にわたる/の範囲」、及び第1の示された数から第2の示された数まで(第1の示された数〜第2の示された数)「にわたる/の範囲」は、本明細書中で互換的に使用され、その第1及び第2の示された数並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことが意図されている。
【0598】
本明細書で使用する場合、用語「方法」は、与えられた課題を成し遂げるためのやり方、手段、技法及び手順を指し、それらには、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に公知であるか、又は化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者によって公知のやり方、手段、技法及び手順から容易に開発されるやり方、手段、技法及び手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0599】
明確性のために、別個の実施形態に関して記載される本発明の特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態に関して記載される本発明の種々の特徴が、別個に若しくはいずれかの好適なサブコンビネーションにおいて、又は適宜本発明のいずれかの他の記載された実施形態において提供されてもよい。種々の実施形態に関して記載される特定の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が動作不能である場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴と考えられるべきではない。
【0600】
本明細書中でこれまで記載された及び添付の特許請求の範囲でクレームされる本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例で実験的にサポートされる。
【0601】
本願に開示されるあらゆる配列番号は、その配列番号がDNA配列フォーマット又はRNA配列フォーマットでのみ表されている場合であっても、その配列番号が言及される文脈に応じて、DNA配列又はRNA配列のいずれかを指すことができるということは理解される。例えば、配列番号1〜配列番号4はDNA配列フォーマットで表される(例えば、チミンについてTと書かれている)が、それは、gRNA核酸配列に対応するDNA配列又はRNA分子核酸配列のRNA配列のいずれかを指すことができる。同様に、いくつかの配列は、記載される分子の現実の種類に応じて、RNA配列フォーマットで表されている(例えば、ウラシルについてUと書かれている)が、それは、dsRNAを含むRNA分子の配列、又は示されたRNA配列に対応するDNA分子の配列のいずれかを指すことができる。いずれにせよ、いずれかの置換を有して開示された配列を有するDNA分子及びRNA分子の両方が想定される。
【実施例】
【0602】
ここで、以下の実施例を参照するが、これらは、上記の説明と共に、本発明を非限定的な様式で例示する。
【0603】
一般に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用する実験室手順は、分子技法、生化学的技法、微生物学的技法及び組換えDNA技法を含む。このような技法は、文献に十分に説明されている。例えば下記を参照。「Molecular Cloning: A laboratory Manual」、Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」、I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、ボルチモア(Baltimore)、メリーランド州(Maryland)(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、ニューヨーク(New York)(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク(New York);Birrenら(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(New York)(1998);米国特許第4,666,828号明細書;米国特許第4,683,202号明細書;米国特許第4,801,531号明細書;米国特許第5,192,659号明細書及び米国特許第5,272,057号明細書に示される方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」、I〜III巻、Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク(Norwalk)、コネチカット州(1994);Mishell及びShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(New York)(1980);利用可能なイムノアッセイは、特許文献及び科学文献に詳細に記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号明細書;米国特許第3,839,153号明細書;米国特許第3,850,752号明細書;米国特許第3,850,578号明細書;米国特許第3,853,987号明細書;米国特許第3,867,517号明細書;米国特許第3,879,262号明細書;米国特許第3,901,654号明細書;米国特許第3,935,074号明細書;米国特許第3,984,533号明細書;米国特許第3,996,345号明細書;米国特許第4,034,074号明細書;米国特許第4,098,876号明細書;米国特許第4,879,219号明細書;米国特許第5,011,771号明細書及び米国特許第5,281,521号明細書を参照;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames,B.D.、及びHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」、Hames,B.D.、及びHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.、(1984)及び「Methods in Enzymology」、1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization − A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996);これらのすべては、参照により、本明細書中にすべて示されているが如く援用される。他の一般的な参考文献は、本明細書全体にわたって提供されている。これらの文献の中にある手順は当該技術分野で周知であると考えられるが、読者の便宜のために提供されている。上記文献に含まれるすべての情報は、参照により本明細書に援用される。
【0604】
一般的な材料と実験手順
細胞培養
組織培養を、ヒト細胞株で、又はマウス胚性幹細胞において実施する。ヒト骨肉腫上皮細胞(U2OS)、ヒト網膜色素上皮細胞(RPE1)、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)、子宮頸癌細胞(HeLa)又はヒト結腸直腸癌細胞(HCT116)を、必要に応じて必須栄養素(アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル)、成長因子、ホルモンを添加した組織培養培地中で培養する。この細胞を、適切な生理化学的な条件(pH緩衝液、浸透圧)下で制御された温度(37℃)のCO
2加湿培養器中で培養する。
【0605】
生存率アッセイ
化学感受性は、これまでに記載された[Taniguchiら、Cell(2002) 109:459−72]クリスタルバイオレットアッセイによって決定する。細胞を、2×10
4/ウェルで12穴プレートに播種し、シスプラチン、カンプトテシン(シグマ(Sigma))、パクリタキセル(シグマ(Sigma))、AZD2281(アクソンメディケム(Axon Medchem))又はNutlin3(セレックケム(Selleckchem))を用いて示された用量で処理する。3日間のインキュベーション後、単層を、10%酢酸を含有する10%メタノールで固定する。接着細胞を、メタノール中の0.5%クリスタルバイオレットで染色する。吸収された染料を、0.1%SDSを含有するメタノールで再溶解し、これを96穴プレートに移し、マイクロプレートリーダーにおいて測光法で(595nm)測定する。細胞生存率は、吸光度を未処理の対照の吸光度に対して規格化することにより算出される。
【0606】
上記と同じ方法を6穴プレート以上の形式までスケールアップし、次いで形成コロニーを、クリスタルバイオレットを再溶解することなく計測し、この形式をクローン原性アッセイと呼ぶ。この形式は、処理された細胞がコロニーへと成長する能力に基づく。使用する別のアッセイは、代謝活性に基づく細胞生存率アッセイXTT又は任意の他の代謝生存率アッセイである。XTTは、代謝活性に基づいて細胞数の関数として細胞生存率を評価するために使用される比色分析である。この迅速な、高感度の、非放射性のアッセイは、標準的なマイクロプレート吸光度読み取り装置を使用して検出される。細胞を、96穴プレートにおいて、試験される化合物を含む培地100μL中で、10
4〜10
5細胞/ウェルの密度で成長させ、CO
2培養器の中で24〜48時間培養する。アッセイの前に毎回新しい緩衝液を調製する:リン酸緩衝生理食塩水中の10mM PMS溶液及び4mgのXTTを4mLの37℃細胞培養培地に溶解させる。上記PMS溶液10μLを、細胞を標識する直前に4mLのXTT溶液に加える。25μLのXTT/PMS溶液を、100μL細胞培養液を含む各ウェルに直接加え、CO
2培養器中で、37℃で2時間インキュベーションし、450nmで吸光度測定を行う。
【0607】
小分子RNA及びmiRNAの単離
miRNAを含む小分子RNAを、miRvana RNA単離キット(アンビオン(Ambion)、オースティン(Austin)、テキサス州、米国)を製造業者のプロトコルに従って使用して単離する。RNAを、Qubit又はNanodrop分光光度計(サーモフィッシャー(Thermo Fisher)、ウィルミントン(Wilmington)、デラウェア州、米国)を使用して定量し、品質をAgilent 6000ナノチップ(アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)、パロアルト(Palo Alto)、カリフォルニア州、米国)によって決定する。
【0608】
miRNA測定
定量的リアルタイムPCR分析を以下のとおりに実施する:RNAを逆転写し、製造業者のプロトコルに従ってmiScript逆転写キット及びmiScript SYBR PCRキット(キアゲン(Qiagen)、バレンシア(Valencia)、カリフォルニア州,米国)を用い、ABI 7500リアルタイムPCRシステムを使用してPCR増幅する。二重の反応物からの値を平均し、U6 SnoRNAのレベルに規格化する。相対的発現レベルを、これまでに記載された[Schmittgen及びLivak. Nat Protoc(2008) 3:1101−1108]比較Ct定量法(comparative Ct method)に従って算出する。あるいは、miRNAを検出し、小分子RNA配列解析[www(dot)illumina(dot)com/techniques/sequencing/rna−sequencing/small−rna−seq(dot)html又はWakeら、BMC Genomics(2016) 17(1):1に記載されている]を使用して相対的に定量する。
【0609】
GEiGS鋳型を生成するための計算パイプライン
計算ゲノム編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)パイプラインは、生物学的メタデータを適用し、非コードRNA遺伝子(例えば、miRNA遺伝子)を最小限に編集するために使用されるGEiGS DNA鋳型の自動生成を可能にし、新しい機能獲得、すなわち目的の標的配列へのサイレンシング能力のリダイレクションをもたらす。
【0610】
図1に示されるように、パイプラインは、a)GEiGSによってサイレンシングされるべき標的配列;b)遺伝子編集されるべき及びGEiGSを発現するための宿主生物;c)GEiGSが遍在的に発現されるか否かを選択し得ることを記入し、そして入力を提出することから開始する。特定のGEiGS発現が必要とされる場合、いくつかの選択肢(特定の組織、発生段階、ストレス、熱/低温ショックなどに特異的な発現)から選択することができる。
【0611】
すべての必要な入力が提出されると、計算プロセスは、miRNAデータセット(例えば、小分子RNA配列決定、マイクロアレイなど)の間での検索、及び入力基準に適合する関係miRNAのみのフィルタリング(すなわち、保持すること)から始まる。次に、選択された成熟miRNA配列を標的配列に対して整列させ、最も高い相補的レベルを有するmiRNAをフィルタリングする。次いで、これらの天然の標的相補的な成熟miRNA配列は、標的の配列に完全に一致するように改変される。次いで、改変された成熟miRNA配列を、siRNA効力を予測するアルゴリズムに通し、そして最高のサイレンシングスコアを有するトップ20をフィルタリングする。次いで、これらの最終改変されたmiRNA遺伝子を用いて、200〜500ntのssDNA又は250〜5000ntのdsDNA配列を以下のように生成する。
【0612】
200〜500nt ssDNAオリゴ及び250〜5000ntのdsDNAフラグメントは、改変されたmiRNAに隣接するゲノムDNA配列に基づいて設計される。pre−miRNA配列は、オリゴの中心に位置する。改変されたmiRNAのガイド鎖(サイレンシング)配列は標的に対して100%相補的である。しかし、改変されたパッセンジャーmiRNA鎖の配列は、元の(改変されていない)miRNA構造を保存するためにさらに改変され、同じ塩基対形成プロファイルを維持する。
【0613】
次に、改変交換バージョンではなく、元の未改変miRNA遺伝子を特異的に標的化するように、異なるsgRNAを設計する。最後に、改変されたmiRNA遺伝子と元のmiRNA遺伝子との間で比較制限酵素部位解析を行い、制限部位の差異についてまとめる。
【0614】
従って、パイプライン出力は以下を含む。
a)最小限に改変されたmiRNAを有する200〜500nt ssDNAオリゴ又は250〜5000ntのdsDNAフラグメント配列
b)改変されたものではなく元のmiRNA遺伝子を特異的に標的とする2〜3個の異なるsgRNA
c)改変されたmiRNA遺伝子と元のmiRNA遺伝子の間の異なる制限酵素部位の一覧
【0615】
GEiGS前駆体の選択
ダイサー基質であり、小分子サイレンシングRNAにプロセシングされる非コードRNAタイプの一覧を、Rybak−Wolf A.ら[Rybak−Wolf A.ら、Cell(2014) 159、1153、Ai1167]でこれまでに公開された結果から手作業で整理した。この際、PAR−CLIP技術を使用して、ダイサー並びにアルゴノート2及び3によって結合されたRNA分子を特定した。ダイサー基質をさらにフィルタリング処理して、コード遺伝子と重なる領域を排除し、曖昧なアノーテーション(annotation)を除外するためにさらに整理した。配列決定アダプタマーを除外するために、AGO2及びAGO3小分子RNA配列をcutadapt v1.7[Martin M.、EMBnet.journal(2011) 17(1):10−12]で加工した。加工したリードを、次に、パラメータ「−−alignIntronMax 1 −−alignEndsType EndToEnd −−scoreDelOpen −10000 −−scoreInsOpen −10000」を用いてSTAR v2.6.1a[Dobin A.ら、Bioinformatics(2013) 29、15、Ai21]を使用して、ヒトゲノムのGRCh37アセンブリに対してアラインメントした。グラフを、Integrated Genomics Viewerソフトウェア[Thorvaldsdottir H.ら、Brief Bioinform(2013) 14(2):178−92]を使用して得た。
【0616】
標的遺伝子
遍在する発現プロファイルを有するmiRNAが選択される(用途によっては、特定の組織、発生段階、温度、ストレスなどに特異的である発現プロファイルを有するmiRNAを選択してもよい)。
【0617】
例えば、miRNAは、GFP、p53、BAX、PUMA、NOXA遺伝子を標的とするsiRNAに改変される(下記表1Aを参照)。
【0618】
【表2】
【0619】
siRNA設計
標的特異的siRNAは、サーモフィッシャー・サイエンティフィック(ThermoFisher Scientific)の「BLOCK−iT(商標)RNAi Designer」及びインビボジェン(Invivogen)の「Find siRNA sequences」などの公的に入手可能なsiRNA設計ツールによって設計される。
【0620】
sgRNAs設計
sgRNAは、Parkら、Bioinformatics(2015) 31(24):4014−4016に以前に記載されているように、公的に入手可能なsgRNA設計ツールを用いて内在miRNA遺伝子を標的とするように設計される。2つのsgRNAはそれぞれのカセットに対して設計されているが、1細胞あたり1つのsgRNAが発現し、遺伝子交換が開始される。sgRNAは、交換後に改変されるpre−miRNA配列に対応する。
【0621】
効率的なsgRNA選択の機会を最大にするために、2つの異なる公的に利用可能なアルゴリズム(CRISPER Design:www(dot)crispr(dot)mit(dot)edu:8079/及びCHOPCHOP:www(dot)chopchop(dot)cbu(dot)uib(dot)no/)を使用し、各アルゴリズムからのトップスコアを示すsgRNAを選択する。
【0622】
交換ssDNAオリゴ設計
400bのssDNAオリゴはmiRNA遺伝子のゲノムDNA配列に基づいて設計されている。このpre−miRNA配列は、オリゴの中心に位置する。次に、ガイド(サイレンシング)siRNA鎖が標的に対して100%相補的に保たれるように、二本鎖siRNA配列を成熟miRNA配列と交換する。パッセンジャーsiRNA鎖の配列を改変して、元のmiRNA構造を保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持する。
【0623】
交換プラスミドDNA設計
4000bpのdsDNAフラグメントはmiRNA遺伝子のゲノムDNA配列に基づいて設計される。pre−miRNA配列はdsDNAフラグメントの中心に位置している。このフラグメントを標準的なベクター(例えば、Bluescript)にクローニングし、Cas9システム成分を有する細胞にトランスフェクトする。次に、ガイド(サイレンシング)siRNA鎖が標的に対して100%相補的に保たれるように、二本鎖siRNA配列を成熟miRNA配列と交換する。パッセンジャーsiRNA鎖の配列を改変して、元のmiRNA構造を保存し、同じ塩基対形成プロファイルを維持する。
【0624】
sgRNA配列
ヒトmiR−150
1. CCAGCACTGGTACAAGGGTTGGG(配列番号5)
2. CCAACCCTTGTACCAGTGCTGGG(配列番号6)
【0625】
交換される内在miRNAの一覧
1. ヒトmiR−150(配列番号13)
2. ヒトmiR−210(配列番号14)
3. ヒトmiR−34(配列番号19−21)
5. ヒトLet7b(配列番号15)
6. ヒトmiR−184(配列番号16)
7. ヒトmiR−204(配列番号17)
8. ヒトmiR−25(配列番号18)
【0626】
遺伝子交換に用いられるssDNAオリゴ
オリゴ−1:GFP−siRNA1__hsa−mir150(5’→3’)(配列番号1)
オリゴ−2:GFP−siRNA6__hsa−mir150(5’→3’)(配列番号2)
オリゴ−3:TP53−siRNA1__hsa−mir150(5’→3’)(配列番号3)
オリゴ−4:TP53−siRNA2__hsa−mir150(5’→3’)(配列番号4)
オリゴ−5:TP53−siRNA1−mMIR17(5’→3’)(配列番号243)
オリゴ−6:TP53−siRNA2−mMIR17(5’→3’)(配列番号244)
オリゴ−7:HPRT−siRNA1−mMIR17(5’→3’)(配列番号245)
オリゴ−8:HPRT−siRNA2−mMIR17(5’→3’)(配列番号246)
オリゴ−9:TP53−siRNA1−mMIR21a(5’→3’)(配列番号247)
オリゴ−10:TP53−siRNA2−mMIR21a(5’→3’)(配列番号248)
オリゴ11:HPRT−siRNA1−mMIR21a(5’→3’)(配列番号249)
オリゴ12:HPRT−siRNA2−mMIR21a(5’→3’)(配列番号250)
オリゴ13:GFP−siRNA1−mMIR17(5’→3’)(配列番号251)
オリゴ14:GFP−siRNA1−mMIR21a(5’→3’)(配列番号252)
【0627】
sgRNAクローニング
利用したトランスフェクションプラスミドは、以下のものを含む4つのモジュールから構成される。
1)BGHポリ(A)シグナル終結配列によって終結したCMVプロモーターによって駆動されるmCherry;
2)BGHポリ(A)シグナル終結配列によって終結されたEF1aコアプロモーターによって駆動されるCas9(ヒトコドン最適化);
3)ガイド1に対するpol III(U6)プロモーターsgRNA;
【0628】
プラスミド設計
一過性発現には、3つの転写単位を含むプラスミドを用いる。最初の転写単位は、Cas9の発現を駆動するEF1aコアプロモーター及びBGHポリ(A)シグナル35Sターミネーターを含む。次の転写単位は、mCherryの発現を駆動するCMVプロモーター及びBGHポリ(A)シグナルターミネーターからなる。3番目は、miRNA遺伝子を標的とするためのsgRNAを発現するpol III(U6)プロモーターを含む(各ベクターは単一のsgRNAを含む)。
【0629】
miR−173及びmiR−390を標的とし、GFP、AtPDS3及びAtADH1を標的とするSWAPを導入するためのCRISPR/CAS9の設計及びクローニング
概念実証のために、本発明者らは、標的遺伝子に逆に相補する小分子RNAを生成することによって、ゲノム的状況において、成熟したmiR−173及びmiR−390の配列を、(植物細胞における)GFP、AtPDS3又はAtADH1を標的とするように、変更するように設計した。さらに、miRNA前駆体転写産物の二次構造を維持するために、pri−miRNAのさらなる変更を行った(下記表2)。これらのフラグメントをPUCプラスミドにクローン化し、ドナー(DONOR)と命名し、DNAフラグメントをSWAPと称した。miR−173を改変するための配列について、 − SWAP1及びSWAP2はGFPを標的とし、SWAP3及びSWAP4はAtPDS3を標的とし、SWAP9及びSWAP10はAtADH1を標的とする(下記表2参照)。miR−390を改変するための配列について、 − SWAP5及びSWAP6はGFPを標的し、SWAP7及びSWAP8はAtPDS3を標的とし、SWAP11及びSWAP12はAtADH1を標的とする(下記表2参照)。
【0630】
miR−173及びmiR−390を標的とするガイドRNAをCRISPR/CAS9ベクター系に導入して、所望のmiRNA遺伝子座におけるDNA切断を生じさせた。これらを遺伝子衝撃プロトコルによりドナーベクターと共に植物に同時導入し、相同DNA修復(HDR)により所望の改変を導入した。これらのガイドRNAは、以下の表2に特定される。
【0631】
【表3(1)】
【0632】
【表3(2)】
【0633】
【表3(3)】
【0634】
【表3(4)】
【0635】
プラスミドトランスフェクション
トランスフェクションのために、リポフェクタミン(登録商標) 2000トランスフェクション試薬(又は任意の他のもの)を、製造業者のプロトコルに従って使用する。要約すれば以下のとおりである。
接着細胞について:トランスフェクション時に細胞が90〜95%コンフルエントになるように、トランスフェクションの1日前に、0.5〜2×10
5細胞を500μlの、抗生物質を含まない増殖培地にプレーティングする。
【0636】
浮遊細胞について:複合体を調製する直前に、500μlの増殖培地中の4〜8×10
5細胞を抗生物質を用いずにプレーティングする。
【0637】
各トランスフェクション試料に対して、複合体を以下のとおりに調製する:a)血清を含まないOpti−MEM(登録商標) I Reduced Serum Medium(又は血清を含まない他の培地)50μlの中でDNAを希釈し、ゆっくり混合する。b)リポフェクタミン(商標)2000を、使用前にゆっくりと混合し、次いで適切な量を50μlのOpti−MEM(登録商標) I Mediumに希釈し、室温で5分間インキュベーションする。工程cに進むことは25分間以内に行われる必要があることに留意されたい。c)5分間のインキュベーション後、希釈したDNAを希釈したリポフェクタミン(商標) 2000と合わせ(全量=100μl)、これをゆっくり混合し、室温で20分間インキュベーションする(溶液は、濁って見える可能性がある)。この複合体は室温で6時間安定であることに留意されたい。d)この複合体100μlを、細胞及び培地を含有する各ウェルに加え、プレートを前後に揺り動かすことによりゆっくり混合する。e)導入遺伝子発現について試験する前に、細胞をCO
2培養器の中で、37℃で18〜48時間インキュベーションする。培地は、4〜6時間後に変えてもよい。
【0638】
蛍光タンパク質発現細胞のFACSソーティング
プラスミド/RNA送達の48時間後、細胞を収集し、フローサイトメーターを用いて蛍光タンパク質発現(例えば、mCherry)について選別し、以前に記載されたように[Chiangら、Sci Rep(2016)6:24356]、蛍光タンパク質/編集剤発現細胞を濃縮した。この濃縮工程は、抗生物質選択をバイパスし、蛍光タンパク質、Cas9及びsgRNAを一過性に発現する細胞のみを収集することを可能にする。これらの細胞は、HR事象による標的遺伝子の編集、及びそれに続く標的遺伝子、すなわちGFPの効率的なサイレンシングについてさらに試験することができる。
【0639】
衝撃及び植物再生
シロイヌナズナ根調製物
塩素ガス滅菌シロイヌナズナ(cv.Col−0)種子をMSマイナススクロースプレート上に播種し、暗所で4℃で3日間春化処理し、続いて25℃で恒光下で垂直に発芽させた。2週間後、根を1cm根切片に切り出し、Callus Induction Media(CIM:B5ビタミン、2%グルコース、pH5.7、0.8%寒天、2mg/l IAA、0.5mg/l 2,4−D、0.05mg/lキネチンを含む1/2MS)プレート上に置いた。暗所、25℃で6日間インキュベートした後、根切片を濾紙ディスク上に移し、衝撃に備えて、4〜6時間、CIMMプレート(ビタミン、2%グルコース、0.4Mマンニトール、pH5.7及び0.8%寒天を含まない1/2MS)上に置いた。
【0640】
衝撃
プラスミド構築物を、PDS−1000/He粒子送達(バイオ・ラッド(Bio−Rad);PDS−1000/Heシステム#1652257)を介して根組織に導入し、以下に概説するいくつかの調製工程が、この手順を実施するために必要であった。
【0641】
金ストック材料の調製
40mgの0.6μm金(バイオ・ラッド(Bio−Rad);カタログ:1652262)を1mlの100%エタノールと混合し、パルス遠心分離してペレットにし、エタノールを除去した。この洗浄手順をさらに2回繰り返した。
【0642】
洗浄後、ペレットを1mlの滅菌蒸留水に再懸濁し、1.5mlチューブに50μlアリコート作業容量として分配した。
【0643】
ビーズ調製
要するに、以下のことを行った。
単一のチューブは、シロイヌナズナ根の2つのプレートに衝撃を与えるのに十分な金であり(プレート当たり2ショット)、従って、各チューブを4つの(1,100psi(約7.6MPa))のBiolistic破裂板(バイオ・ラッド(Bio−Rad);カタログ:1652329)の間に分配した。
【0644】
衝撃は同じ試料の複数のプレートを必要とするので、チューブを合わせ、それに応じてDNA及びCaCl2/スペルミジン混合物の体積を調整して、試料の一貫性を維持し、調製物全体を最小限にした。
【0645】
以下のプロトコルは、金の1つのチューブを調製するプロセスを要約し、これらは、使用される金のチューブの数に従って調整されるべきである。
【0646】
この後の全てのプロセスは、エッペンドルフサーモミキサー中で4℃で行った。
【0647】
プラスミドDNA試料を調製し、各チューブは、1000ng/μlの濃度で添加された11μgのDNAを含む。
1)493μlのddH2Oを1アリコート(7μl)のスペルミジン(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich);S0266)に添加し、0.1Mスペルミジンの最終濃度を得た。1250μlの2.5M CaCl2をスペルミジン混合物に添加し、ボルテックスし、氷上に置いた。
2)予め調製した金のチューブをサーモミキサーに入れ、1400rpmの速度で回転させた。
3)チューブに11μlのDNAを加え、ボルテックスし、回転するサーモミキサーに戻した。
4)DNA/金粒子を結合させるために、70μlのスペルミジンCaCl
2混合物を各チューブ(サーモミキサー中)に添加した。
5)チューブを15〜30秒間激しくボルテックスし、氷上に約70〜80秒間置いた。
6)混合物を7000rpmで1分間遠心分離し、上清を除去し、氷上に置いた。
7)500μlの100%エタノールを各チューブに添加し、ペレットをピペッティングにより再懸濁し、ボルテックスした。
8)チューブを7000rpmで1分間遠心分離した。
9)上清を除去し、ペレットを50μlの100%エタノールに再懸濁し、氷上で保存した。
【0648】
マクロ担体調製
層流キャビネット内で以下のことを行った。
1)マクロ担体(バイオ・ラッド(Bio−Rad);1652335)、停止スクリーン(バイオ・ラッド(Bio−Rad);1652336)、及びマクロ担体ディスクホルダーを滅菌乾燥した。
2)マクロ担体のディスクホルダーにマクロ担体を平らに配置した。
3)DNA被覆金混合物をボルテックスし、各Biolistic破裂板の中心に広げた(5μl)。
エタノールを蒸発させた。
【0649】
PDS−1000(ヘリウム粒子送達系)
要するに、以下のことを行った。
ヘリウムボトルの調整弁を少なくとも1300psi(約9.0MPa)の流入圧力に調整した。真空は、真空/ベント/ホールド・スイッチを押し、稼動スイッチを3秒間押し続けることによって作り出した。これは、ヘリウムが配管に流れ込むことを確実にした。
【0650】
1100psi(約7.6MPa)の破裂ディスクをイソプロパノールに入れ、混合して静電気を除去した。
1)1つの破裂ディスクをディスク保持キャップ内に配置した。
2)マイクロ担体発射アセンブリを構築した(停止スクリーンと金含有マイクロ担体を備えた)。
3)シャーレ上でシロイヌナズナ根カルスを発射アセンブリの6cm下に置いた。
4)真空圧を27インチHg(水銀)(約91kPa)に設定し、ヘリウム弁を開いた(約1100psi(約7.6MPa)で)。
5)真空を解放した。マイクロ担体発射アセンブリ及び破裂板保持キャップを取り外した。
6)同じ組織への衝撃(すなわち、各プレートを2回衝撃した)。
7)次に、衝撃を与えた根を、暗所で、25℃で、さらに24時間、CIMプレート上に置いた。
【0651】
同時衝撃
GEiGSプラスミドの組み合わせに衝撃を与える場合、5μg(1000ng/μl)のsgRNAプラスミドを8.5μg(1000ng/μl)のswap(スワップ)プラスミドと混合し、この混合物11μlを試料に添加した。同時により多くのGEiGSプラスミドを衝撃する場合、使用したsgRNAプラスミド対swapプラスミドの濃度比は1:1.7であり、この混合物11μg(1000ng/μl)を試料に添加した。GEiGS交換に関連しないプラスミドを同時衝撃する場合、等しい比率を混合し、11μg(1000ng/μl)の混合物を各試料に添加した。
【0652】
植物再生
シュート再生のために、Valvekensら[Valvekens,D.ら、Proc Natl Acad Sci USA(1988) 85(15):5536−5540]からの改変プロトコルを実施した。B5ビタミン、2%グルコース、pH5.7、0.8%寒天、5mg/l 2 iP、0.15mg/l IAAを有する1/2MSを含むシュート誘導培地(SIM)プレート上に、衝撃を与えた根を置いた。プレートを、25℃で16時間明、23℃で8時間暗のサイクルに放置した。10日後、プレートを、3%スクロース、0.8%寒天を含むMSプレートに1週間移し、次いで、新鮮な同様のプレートに移した。植物が再生したら、それらを根から切り出し、分析するまで、3%スクロース、0.8%寒天を含むMSプレート上に置いた。
【0653】
表現型解析
上記のとおり、蛍光、及び細胞形態、又は標的遺伝子に依存する成長速度/阻害及び/若しくはアポトーシス等の他の表現型、TP53サイレンシングの場合にはNutlin3耐性を見ることによる。
【0654】
抗ウイルスアッセイ
アッセイは、精製されたインターフェロン原液の効力を決定するために一般に使用される細胞変性効果(CPE)に基づく。CPEアッセイでは、クリスタルバイオレット生細胞染色[Rubinsteinら、J Virol. (1981) 10:755−758によりこれまでに記載されている]により測定される、ウイルス誘導細胞病理を阻害する能力に基づいて抗ウイルス活性を測定する。
【0655】
VSVは、WISH羊膜細胞株の静置培養において分散した、微視的な溶菌斑を形成する。微小溶菌斑の形成は迅速であり、再現性があり、容易に定量され、33〜40℃の範囲の温度で起こり、半固体のオーバーレイを必要としない。
【0656】
アリルアルコール選択
アリルアルコールで植物を選択するために、衝撃後10日目に、根をSIM培地上に置いた。根を30mMアリルアルコール(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、米国)に2時間浸漬した。次に、根をMS培地で3回洗浄し、3%スクロース、0.8%寒天を含むMSプレート上に置いた。再生プロセスは、先に記載したように実施した。
【0657】
遺伝子型決定
植物組織試料を処理し、アンプリコンを製造業者の推奨に従って増幅した。MyTaq Plant−PCR Kit(BioLine BIO 25056)を短い内部増幅に用い、Phire Plant Direct PCR Kit(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific);F−130WH)を長い外部増幅に用いる。これらの増幅のために使用されるオリゴは、上記の表2に特定される。miRNA遺伝子座における異なる改変は、以下のようにアンプリコンの異なる消化パターンを介して特定された。
【0658】
miR−390の改変については、 − 内部アンプリコンは978塩基対の長さであり、外部増幅については2629塩基対であった。swap7の特定については、NlaIIIによる消化は、636塩基対のフラグメントサイズをもたらしたが、wtバージョンでは、それは、420及び216の長さのフラグメントに切断された。swap8の特定については、Hpy188Iによる消化は、293及び339塩基対のフラグメントサイズをもたらしたが、wtバージョンでは、この部位は存在せず、632長のフラグメントをもたらした。swap11及び12の特定については、BccIによる消化は、662塩基対のフラグメントサイズをもたらしたが、wtバージョンでは、それは、147及び417長のフラグメントに切断された。
【0659】
miR−173の改変については、 − 内部アンプリコンは574塩基対の長さであり、ネステッド外部増幅については466塩基対であった。swap3の特定については、BslIによる消化は、外部アンプリコンにおいて217及び249塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて317及び149塩基対のフラグメントサイズをもたらした。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では574長のフラグメントをもたらした。swap4の特定については、BtsαIによる消化は、外部アンプリコンにおいて212及び254塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて212及び362のフラグメントサイズをもたらした。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では574長のフラグメントをもたらした。swap9の特定については、NlaIIIによる消化は、外部アンプリコンにおいて317及び149塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて317及び244のフラグメントサイズを生じた。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では561長のフラグメントをもたらした。swap10の特定については、NlaIIIによる消化は、外部アンプリコンにおいて375及び91塩基対のフラグメントサイズ、並びに内部アンプリコンにおいて375及び186のフラグメントサイズを生じた。wtバージョンでは、この部位は存在せず、外部アンプリコンでは466長のフラグメントを、内部反応では561長のフラグメントをもたらした。
【0660】
DNA及びRNAの単離
植物試料を液体窒素中に回収し、処理するまで−80℃で保存した。組織の粉砕は、ドライアイス中に置かれたチューブ中で、プラスチック組織粉砕ペスル(Axygen、米国)を用いて行った。RNA/DNA精製キット(カタログ番号48700;Norgen Biotek Corp.、カナダ)を用いて、製造業者の説明書に従って、粉砕組織からのDNA及び全RNAの単離を行った。RNA画分の低い260/230比(<1.6)の場合、単離RNAは、1μlグリコーゲン(カタログ10814010;インビトロジェン(Invitrogen)、米国)10%V/V酢酸ナトリウム、3M pH5.5(カタログAM9740、インビトロジェン(Invitrogen)、米国)及び3倍の体積のエタノールを用いて−20℃で一晩沈殿した。溶液を4℃で最高速度で30分間遠心分離した。これに続いて、70%エタノールで2回洗浄し、15分間風乾し、ヌクレアーゼを含まない水(カタログ番号10977035;インビトロジェン(Invitrogen)、米国)に再懸濁した。
【0661】
逆転写(RT)及び定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)
1μgの単離された全RNAを、製造業者のマニュアルに従ってDNase Iで処理した(AMPD1;シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、米国)。この試料を、High−Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(カタログ4368814;アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)、米国)の使用マニュアルに従って逆転写した。
【0662】
遺伝子発現のために、定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)解析を、CFX96 Touch(商標)Real−Time PCR Detection System(バイオ・ラッド(BioRad)、米国)及びSYBR(登録商標)Green JumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(S4438、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、米国)で、製造業者のプロトコルに従って実施し、Bio−RadCFXマネージャープログラム(バージョン3.1)で解析した。AtADH1(AT1G77120)の分析のために、以下のプライマーセットを使用した:順方向GTTGAGAGTGTTGGAGAAGGAG 配列番号237及び逆方向CTCGGTGTTGATCCTGAGAAG 配列番号238。AtPDS3(AT4G14210)の分析のために、以下のプライマーセットを使用した:順方向GTACTGCTGGTCCTTTGCAG 配列番号239及び逆方向AGGAGCACTACGGAAGGATG 配列番号240。内在較正遺伝子のために、18SリボソームRNA遺伝子(NC_037304)を使用した − 順方向ACACCCTGGGAATTGGTTT 配列番号241及び逆方向GTATGCGCCAATAAGACCAC 配列番号242。
【0663】
実施例1A
ゲノム編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)プラットフォーム
マイクロRNA(miRNA) マイクロRNA(miRNA)は、長い自己相補的な前駆体に由来する20〜24ヌクレオチド長の小分子の内在性非コードRNA(ncRNA)である。成熟miRNAは、2つのやり方、(i)翻訳阻害することにより、又は(ii)標的mRNAとの完全又はほぼ完全な相補体によってコードmRNAを劣化させることにより、遺伝子発現を制御する。動物では、miRNAに関する重要な研究が、シード領域(5’末端の2〜8位にまたがる配列)だけが標的認識にとって非常に重要であることを示している。このシード配列は、標的mRNAの主に30−非翻訳領域(UTR)でその応答配列に十分に対合する。miRNAs生合成機構、miRNA発現レベル及びmiRNA制御ネットワークの変化は、細胞分化及びアポトーシス等の重要な生物学的経路に影響を及ぼし、この変化は、種々のヒト疾患及び症候群、とりわけ癌において検出される。
【0664】
すべての腫瘍は、miRNA発現の変化の特異的な痕跡を提示する。この理由のために、腫瘍のmiRNA発現プロファイルは、診断、予後診断、患者の層別化、リスク群の定義及び療法への応答の監視のための妥当で有用なバイオマーカーを表す可能性がある。等しく関係があるのは、ウイルス感染におけるmiRNAの新興的な役割である。文献からのデータは、ウイルスと宿主細胞のmiRNA機構との相互干渉を示す。例えば、ウイルスは、特定のタンパク質と相互作用することにより宿主細胞のmiRNA経路を障害し、自身のmiRNAを合成して細胞環境を改変するか若しくは自身のmRNAを制御し、又は細胞miRNAを自身に有利なように利用する可能性がある。しかしながら、宿主細胞のmiRNAがウイルスmRNAを標的とする可能性があることも言える。多くの場合、この双方向性の干渉がウイルスに有利に解消され、その結果、ウイルスは、免疫応答を逃れ、複製サイクルを完了する可能性がある。
【0665】
従って、本発明者らは、任意の目的のRNAを特異的にサイレンシングするために、サイレンシング機能性を獲得するためのGEiGSを使用して、相同組換え(HR)により再設計される内在性のncRNA配列(例えば、miRNAの)を使用している。選んだ配列を置換するために、HRは、DNA損傷を修復するために、DSB部位に隣接しているより長い広がりの配列相同性を利用し、それゆえ、HRは、DNAの損傷した鎖と無傷のドナー鎖(すなわち挿入されるsiRNA配列)との間のより高い配列相同性が必要であるため、DSB修復のための正確な機構であると考えられる。このプロセスは、修復のために使用されるDNA鋳型がDSBのところのもとのDNA配列と同一である場合には、エラーがないと考えられ、又はこのプロセスは、非常に特異的な変異を損傷したDNAに導入することができる、例えば交換(スワッピング)遺伝子。
【0666】
実施例1B
ゲノム編集誘導遺伝子サイレンシング(GEiGS)
GEiGSオリゴを設計するためには、プロセシングされ、誘導体である小分子サイレンシングRNA分子(成熟)を生じる鋳型非コードRNA分子(前駆体)が必要とされる。本発明者らは、Rybak−Wolf[Rybak−Wolf、A.ら、Cell(2014) 159:1153、Ai1167]においてこれまでに論じられたように、ヒト及びエレガンス線虫においてサイレンシングに関与する小分子RNA(すなわち、アルゴノート2及びアルゴノート3によって結合される小分子RNA)を生成するダイサー基質RNA(すなわち、ダイサーによって結合される細胞RNA)を特徴づけている。両方のデータセット(ダイサー結合RNA並びにAgo2及びAgo3結合小分子RNA)を横断することで、小分子サイレンシングRNAの前駆体である非コードRNAの一覧を生成することが可能になった(
図10及び
図11A〜E)。前駆体の2つの供給源及びその対応する成熟配列を、GEiGSオリゴを生成するために使用した。miRNAについては、配列は、miRBaseデータベース[Kozomara、A.及びGriffiths−Jones,S.、Nucleic Acids Res(2014) 42:D68、AiD73]から得た。他の種類の前駆体(tRNA、snRNAs、及び種々の種類のリピートを含む)は、ダイサー結合及びAGO結合RNAを記載する最近の刊行物[Rybak−Wolf,A.ら、Cell(2014) 159:1153、Ai1167]から得た。
【0667】
サイレンシング標的を、種々の宿主生物において選択した。siRNAは、siRNArulesソフトウェア[Holen,T.、RNA(2006) 12:1620、Ai1625]を用いてこれらの標的に対して設計した。これらのsiRNA分子の各々を使用して、各前駆体中に存在する成熟配列を置換し、「ナイーブ」GEiGSオリゴを生成した。これらのナイーブ配列の構造は、ViennaRNA Package v2.6[Lorenz,R.ら、ViennaRNA Package 2.0.Algorithms for Molecular Biology(2011) 6:26]を使用して、野生型前駆体の構造に可能な限り近づくように調整した。成功裏の構造維持対不成功の構造維持の例は、
図12A〜Dで見ることができる。構造調整後、配列数及び野生型と改変オリゴとの間の二次構造変化を計算した。これらの計算は、野生型に対して最小の配列変更しか必要としない潜在的に機能的なGEiGSオリゴを特定するために必須である(
図12A〜E)。
【0668】
野生型前駆体に対するCRISPR/cas9小分子ガイドRNA(sgRNA)を、CasOTソフトウェア[Xiao,A.ら、Bioinformatics(2014) 30:1180、Ai1182]を用いて作製した。GEiGSオリゴを生成するために適用される改変がsgRNAのPAM領域に影響を及ぼし、それを改変オリゴに対して無効にするsgRNAを選択した。
【0669】
実施例2
「内在」導入遺伝子のGEiGS
GEiGSの効率を確認するための迅速で堅牢なアプローチは、内在性遺伝子として働くことになり、加えてGFP(緑色蛍光タンパク質)のようなマーカー遺伝子でもある導入遺伝子をサイレンシングすることである。細胞におけるGFPサイレンシングの有効性を評価するための選択肢はいくつかあり、本発明者らは、細胞におけるGFPサイレンシングの有効性を評価するために、FACS分析、RT−qPCR及び顕微鏡法を使用している。
【0670】
GFPのサイレンシングは、十分に特徴づけられており、GFPサイレンシングを誘発することに効率的な利用可能な低分子干渉RNA配列(siRNA)は多く存在する。それゆえ、遺伝子交換(スワッピング)のために、本発明者らは、GFPをサイレンシングするように設計した21マーsiRNA分子を使用している。加えて、又はあるいは、本発明者らは、与えられた遺伝子(例えば、GFP)に対して遺伝子サイレンシングを開始するのにどのsiRNAが有効であるかを予測する公開されているアルゴリズムを使用する。これらのアルゴリズムの予測は100%ではないので、本発明者らは、少なくとも2つの異なるアルゴリズムの結果である配列のみを使用している。
【0671】
GFP遺伝子をサイレンシングするsiRNA配列を使用するために、本発明者らは、CRISPR/Cas9システムを使用して、それらを公知の内在miRNA遺伝子配列と交換する。特徴付けられたmiRNAの多くのデータベースがある。本発明者らは、異なる発現プロフィール(例えば、低い構成的発現、高度に発現、ストレスで誘導されるなど)を有するいくつかの公知のヒトmiRNAを選択している。内在miRNA配列をsiRNAと交換するために、本発明者らは、HRアプローチを使用している。
【0672】
図2に示すように、HRを用いて、本発明者らは、次の2つの選択肢を企図している:1)中央に交換siRNA配列を含む約200〜500ntのドナーssDNAオリゴ配列を使用すること、又は、2)2×21bpのmiRNA及びGFPのsiRNAに変更する
*miRNA(siRNAの500〜2000bp上流及び下流側)を除き、ゲノム中の取り囲むmiRNAとほぼ100%同一の1Kb〜4Kb挿入物を発現するプラスミドを使用すること。トランスフェクションは、いくつかの構築物を含む:CRISPR:Cas9/GFPセンサー(これは、陽性の形質転換細胞を追跡し、そして濃縮する)、gRNA(これは、Cas9を、挿入ベクター/オリゴに依存して、HRによって修復されるDSBを生成するように誘導する)。
【0673】
挿入ベクターは、置換され(例えば、miRNA)、目的の突然変異(すなわち、siRNA)を運ぶように改変された標的遺伝子座を囲む相同性の2つの連続した領域を含む。プラスミドを使用する場合、標的化構築物は、選択されたsiRNAでのmiRNAの交換で終わる相同組換えのための鋳型として使用される。組織培養細胞へのトランスフェクション後、FACSを用いて、陽性Cas9/sgRNAトランスフェクト事象を濃縮し、細胞を、(
図2に示すように)顕微鏡下でGFPサイレンシングについてスコア化する。陽性編集細胞は、GFP遺伝子を標的とするsiRNA配列を産生すると予想され、従って、導入遺伝子のGFP発現は、対照細胞と比較してサイレンシングされると予想される。
【0674】
GEiGSを使用するGFPサイレンシングの概念実証(POC)を示すために、GFPを発現する遺伝子導入ヒト細胞株(U2OS、RPE1、A549又はHela細胞を含む)を利用している。細胞を、GEiGS方法論を用い、内在性非コードRNA(例えば、miRNA)を交換してそれをGFPに対してRNAサイレンシング機構を開始するための、GFPを標的とするsiRNAへとプロセシングされる非コードRNAに変えるためのカセットを用いてトランスフェクトする。
図3A〜Bに示すように、ヒト細胞におけるGFP遺伝子発現レベルのノックダウンは、対照細胞(
図3A)と比べて、siGFPを発現する細胞(すなわち、GFPがサイレンシングされている)において低下したGFPの発現を生じる。
【0675】
実施例3
組織培養細胞における外来性導入遺伝子(GFP)のGEiGS
GFPサイレンシングの前述の例(上記の実施例2)に加えて、GEiGSの効率を実証するための別の方法は、一過性GFPトランスフェクションアッセイにおいてGFPのようなマーカー遺伝子をサイレンシングすることである。
図4に示すように、(上記の実施例2で論じたように)GFP遺伝子を標的とする小分子siRNAの分子の発現を介して内在性miRNAのサイレンシング特異性をリダイレクトするために、ヒト細胞を、GEiGSを使用して処理する。次に、対照の未処置の細胞及びGEiGS−GFP細胞(すなわち、siGFPを発現する)を、別々に2つのマーカー(センサー)GFP+RFP(赤色蛍光タンパク質)を発現するプラスミドでトランスフェクトする。GEiGS処理においてRFPのみを発現するがGFPを発現しない細胞は、siGFP発現に起因するGFP遺伝子サイレンシングの結果である。これらの細胞(赤色だが、GFP発現を欠く)由来のDNAを抽出し、正確なゲノム編集事象について調べる。さらには、この細胞を、例えば、GFPの蛍光検出、又はq−PCR、HPLCによりGFPの発現の喪失について分析することができる。
【0676】
実施例4
TP53又はHPRTの発現のGEiGSは、U2OS及びRPE1又はマウス胚性幹(mES)細胞においてNutlin3誘導又は6TG(チオグアニン、6−TG、6−チオグアニン)細胞死/増殖阻害を阻害する
ヒト細胞におけるGEiGSのPOCを示すために、本発明者らは、U2OS、RPE1又はマウス胚性幹細胞を用いて検討している。U2OSは、早く成長して高効率でトランスフェクトし易い細胞である。これらの細胞は、骨癌 − 骨肉腫に由来する。RPE1は、正常な網膜に由来する(すなわち、疾患又は病気の培養物由来ではない)上皮細胞であり、mESと同様に正常で活性なTP53を有する。
【0677】
TP53は、癌化ストレスに応答して直接的又は間接的にアポトーシス細胞死を誘導する腫瘍サプレッサータンパク質である。DNA損傷の結果は、細胞型及び損傷の重症度に依存する。軽度のDNA損傷は、細胞周期停止を伴い又は伴わずに修復されうる。より重度で回復不能なDNA損傷は、変異を保有する細胞の外観につながるか、又は老化若しくは細胞死プログラムの誘導に向かうシフトを引き起こす。長年、DNA損傷がアポトーシス又は壊死を介して細胞を死滅させると主張されたが、過去数年の間の技術的及び方法論的な進歩は、この損傷が、アポトーシス又は壊死につながりうるオートファジー又は分裂死によっても死を活性化しうるということを明らかにすることに役立った。この意思決定プロセスの根底にある分子的基礎は、現在、集中的な検討の主題である。
【0678】
今日、癌研究に関心がある者は誰でも、TP53の存在及び腫瘍生物学の事実上あらゆる局面へのその関連性をすでに十分に認識している。TP53は、疑いなく、最も広範囲に研究されている遺伝子及びタンパク質のうちの1つである。初期の研究は、p53のトランス活性化欠損変異体がアポトーシスを誘導することができることを示し、これは、アポトーシスにおけるp53の非転写依存的な役割を含意する。DNA損傷は、TP53のミトコンドリア転位につながる。TP53は、Bcl−2ファミリーのタンパク質Bcl−xLに結合し、チトクロムc放出に影響を及ぼす。TP53は、他のタンパク質の不存在下で、アポトーシス促進性のBcl−2タンパク質Baxを直接活性化して、ミトコンドリアを透過させアポトーシスプログラムに関与させる。TP53は、アポトーシス促進性の多ドメインタンパク質及びBcl−Xlによって隔離されているBH3−onlyタンパク質の両方を放出することができる。加えて、TP53は、Baxオリゴマー化を容易にし、BaxではなくBcl−xLに結合することにより、アポトーシスのミトコンドリア機構を媒介することができる。TP53−Bcl−xL相互作用はBaxを放出し、放出されたBaxはミトコンドリア膜でオリゴマーを形成し、チトクロムc放出及びアポトーシスにつながる(この効果のために、TP53のプロリンリッチドメイン、マウスにおけるaa62−91、が必要とされる)[Jerryら Science(2004) 303(5660):1010−4]。TP53も、BAX、PUMA及びNOXA等のアポトーシス促進性遺伝子の発現を促進する転写因子として作用する。
【0679】
図5に示すように、本発明者らは、RPE1細胞を、TP53に向けたsiRNAを発現するように改変しており、これらの細胞は、Nutlin3又は化学療法(例えば、カンプトテシン(CPT)、エトポシド、オラパリブ等)に曝露したときに、細胞死の阻害を示す。本発明者らが利用しているアッセイのうちの1つは、細胞の染色により健常な細胞と瀕死の細胞とで異なる細胞数(密度)及び形態を比較することが可能になるクリスタルバイオレットアッセイである。細胞死に抵抗性がある細胞クローンは、正しいゲノム編集事象及び関連するTP53 siRNAの発現について検証される。さらには、この細胞を、例えばGFPの蛍光検出又はq−PCR、HPLCによって、TP53の発現の喪失について分析することができる。
【0680】
チオグアニン(thioguanine)又は6−チオグアニン(thioguanine)(6−TG)としても知られるチオグアニン(tioguanine)は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)を処置するために一般に使用される薬物(薬物療法)である。代謝拮抗物質であるチオグアニンは、グアニンのプリン類似体であり、DNA及びRNAを壊すことにより働く。6−チオグアニンは、天然に存在するプリン塩基グアニンのチオ類似体である。6−チオグアニンは、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTase/HPRT)を利用して、6−チオグアノシン一リン酸(TGMP)へと変換される。高濃度のTGMPが、細胞内部で蓄積して、酵素イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPデヒドロゲナーゼ)を介してグアニンヌクレオチドの合成を妨害する可能性がある。TGMPは、リン酸化によってチオグアノシン二リン酸(TGDP)及びチオグアノシン三リン酸(TGTP)に変換される。同時に、酵素リボヌクレオチドレダクターゼを介してデオキシリボシル類似体が形成される。TGMP、TGDP及びTGTPは、まとめて6−チオグアニンヌクレオチド(6−TGN)と名付けられている。6−TGNは、(1)細胞の合成期(S期)の間のDNAへの組み込みにより、及び(2)Rac/Vav経路を制御するGTP結合タンパク質(Gタンパク質)Rac1の阻害を通して、細胞にとって細胞毒性である。RNAへの6−チオグアニンの組み込みから追加的な効果が誘導されうる。これは、リボソームによっては読み取ることができない改変RNA鎖をもたらす。
【0681】
手短に言えば、HPRT遺伝子発現の喪失又は低下は、細胞を6TG耐性にする。従って、本発明者らは、HPRTに向けたsiRNAを発現することにより、HPRT遺伝子発現を改変し、6TGへの耐性によりHPRTの下方制御を分析している。
【0682】
実施例5
アポトーシス促進性遺伝子(BAX、PUMA、NOXA)のGEiGSは、ヒト癌細胞において化学療法誘導細胞死を阻害する
この実験では、本発明者らはU2OS細胞を使用している。CPT、エトポシド、オラパリブ等のような化学療法剤に耐性がある細胞を作り出すために、本発明者らは、最初に、アポトーシス促進性遺伝子として公知のBAX、PUMA及びNOXAのようなアポトーシス遺伝子を標的とすることができるsiRNAを使用している。
【0683】
図6に示すように、本発明者らは、アポトーシス遺伝子を標的とするsiRNAを発現するためのGEiGSを使用してU2OS細胞を処置している。siRNAを発現する改変細胞は、化学療法(例えば、CPT、エトポシド、オラパリブ等)誘導細胞死に抵抗性であると期待される。GEiGSカセット+RFPセンサーを用いたトランスフェクション後、トランスフェクションした細胞を、FACSを用いて濃縮し、細胞を化学療法剤に曝露する。対照では、すべての細胞は、感受性であり、死滅するか又は老化に入る(Dapi染色を使用して顕微鏡下で容易に検出でき、大きい核を有する細胞はほとんどない)。細胞死及び/又は老化に抵抗性であるクローンは、編集したsiRNAを積極的に発現すると期待され、正確なゲノム編集改変及び関連するsiRNAの発現を有することが検証される。さらには、この細胞を、例えばGFPの蛍光検出又はq−PCR、HPLCによって、BAX、PUMA及びNOXAのようなアポトーシス遺伝子の発現の喪失について分析することができる。
【0684】
実施例6
GEiGSを使用して、ウイルス感染に対してヒト細胞を免疫する
GEiGSが、外来の病原性遺伝子をノックダウンする能力を有してヒト免疫化について堅牢な方法であることを証明するために、本発明者らは、ウイルス遺伝子のサイレンシングの例を提供する。レンチウイルス系は、モデル生物全体及びほとんどすべての哺乳類細胞(非分裂の非増殖細胞を含む)、並びに難トランスフェクト細胞(神経細胞、初代培養細胞及び幹細胞を含む)に遺伝子材料を送達する上で非常に効果的である。レンチウイルストランスフェクションの効率は、感染多重度(MOI)によっては100%に近く、これは、レンチウイルスを発現ベクター系として理想的なものにする。
【0685】
GFPを発現するレンチウイルスに感染した対照細胞は、(
図7に示すように)顕微鏡下でGFPの発現を示す。GFP遺伝子を標的とするsiRNAを発現するように操作したGEiGS−GFP細胞(上記の実施例2に示すとおり)は、GFPのレベルの低下を示すと期待される(
図7に示すとおり)。ウイルス−GFP(例えば、Lenti−GFP)に感染した後にGFP遺伝子発現がないか又は低いGFP遺伝子発現を有するGEiGS細胞を生成することは、外来遺伝子のサイレンシングが成し遂げられたこと、及びGEiGSが、ウイルスのような侵襲的な感染性RNAに対してヒト細胞を免疫するための有効な方法であることを証明することになる。
【0686】
細胞においてGFP遺伝子サイレンシングの有効性を評価するための簡単な選択肢はいくつかあり、本発明者らは、FACS分析、RT−qPCR、顕微鏡法及び/又は免疫ブロット法を使用している。それゆえ、遺伝子交換のために、本発明者らは、21マーsiRNA分子を設計した(上記の実施例2に記載したとおり)。本発明者らは、与えられた遺伝子に対して遺伝子サイレンシングを開始するのにどのsiRNAが有効であるかを予測する公開のアルゴリズムを使用している(上記の実施例2に記載したとおり)。
【0687】
実施例7
外来ウイルス遺伝子のサイレンシングによりウイルス感染に対してヒト細胞を免疫すること(細胞生存率アッセイ)
GEiGSが、外来遺伝子をノックダウンする能力を有してヒト免疫化について堅牢な方法であることを証明するために、GFPを発現するレンチウイルスを使用する例(上記の実施例6)に加えて、本発明者らは、野生型RNAウイルス感染を使用しており、細胞生存についてスコア付けしている。本発明者らは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)遺伝子のサイレンシングの例を提供する。
【0688】
ラブドウイルス科RNAウイルスであるVSVは、多くの細胞型に感染することができ、それゆえラブドウイルス科のウイルスの特性を研究するため、及びウイルスの進化を研究するに使用される一般的な実験用ウイルスである。VSVはアルボウイルスであり、その複製は細胞質で起こる。VSVのゲノムは、5つの主要タンパク質であるGタンパク質(G)、Lタンパク質(L)、リン酸化タンパク質、マトリクスタンパク質(M)及び核タンパク質をコードする11,161ヌクレオチドの長さのマイナス鎖RNAの単一分子である。健常なヒト細胞では、このウイルスは繁殖することはできない(おそらく、インターフェロン応答のため)が、(インターフェロン応答が低下している)多くの癌細胞では、VSVは成長することができ、従って癌化細胞を溶解することができる。上記の「一般的な材料と実験手順」の節で詳細に記載したように、細胞生存率を決定するために、細胞変性効果(CPE)に基づく機能的な抗ウイルスアッセイを利用する。この方法により、細胞生存及び生存率を評価し比較することが可能になる。細胞を染色することにより、健常な細胞と瀕死の細胞とで異なる細胞数、密度及び形態を比較することが可能である。
【0689】
VSV遺伝子を標的とする効率的なsiRNAを見出すために、ウイルス遺伝子を標的とするsiRNAの異なるトランスフェクションを用いた予備的な実験を実施する。VSV誘導細胞死を阻害するsiRNAをGEiGSと共に使用して、ヒトWISH細胞をこれらのsiRNAを発現するように編集する。VSVに感染した対照細胞は、ウイルス感染に抵抗性であると期待されるGEiGS細胞と比べて、クリスタルバイオレットにより測定される細胞病理効果を示すことになる。
【0690】
実施例8
アポトーシス促進性のFAS遺伝子発現のGEiGSは、HCT116細胞において5−フルオロウラシル誘導アポトーシスを低下させる
Pedroら[Pedroら Biochimica et Biophysica Acta(2007) 1772:40−47]によって、野生型p53を発現するHCT116ヒト結腸直腸癌細胞において、RNA干渉によるFAS発現のサイレンシングが5−FU誘導アポトーシスを緩和することが以前に示された。
【0691】
HCT116細胞を、FAS遺伝子を標的とするsiRNAを発現するためのGEiGSを使用して処理する。HCT116対照及びGEiGS陽性細胞(FAS siRNAを発現する)を、5−FU(例えば1〜8μM)で例えば8〜48時間処理する。細胞生存率を、XTT及びトリパンブルー染料排除により評価する。アポトーシスを、核の形態及びカスパーゼ3活性の変化によって評価する。5−FUは、HCT116細胞において細胞毒性であるが、siRNAを使用してFasを阻害するとき、5−FU媒介性の核断片化及びカスパーゼ3活性は著しく低下すると期待される。
【0692】
実施例9
異なる遺伝子を標的とする内在性miRNAを改変した植物の生成
miRNAのゲノム遺伝子座におけるその認識配列(miRNAに成熟するであろう)のごくわずかな改変は、非トランスジェニック様式で、新しい遺伝子を調節する新しいシステムに導くことができる。従って、シロイヌナズナ根の衝撃によるこれらの改変を導入するために、及びさらなる解析のためのそれらの再生のために、アグロバクテリウムフリー一過性発現方法を使用した。本発明者らは、シロイヌナズナ植物において2つの遺伝子、PDS3及びADH1を標的とすることを選択した。
【0693】
カロチノイドは植物の多くの生理学的過程において重要な役割を果たし、フィトエンデサチュラーゼ遺伝子(PDS3)はカロチノイド生合成経路における重要な酵素の1つをコードし、そのサイレンシングはアルビノ/退色表現型を生じる。従って、PDS3の発現が減少した植物は、完全なアルビノ及び矮化症まで、減少したクロロフィルレベルを示す。
【0694】
アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)は、アルコールとアルデヒド又はケトンとの間の相互変換を触媒し、同時にNAD+又はNADP+を還元するデヒドロゲナーゼ酵素の群を含む。この酵素の主な代謝目的は、組織内のアルコール性毒性物質の分解である。ADH1発現の減少を有する植物は、アリルアルコールに対する耐容性の増加を示す。従って、減少したADH1を有する植物はアリルアルコールの毒性効果に対して抵抗性であり、従って、それらの再生をアリルアルコール選択を用いて行った。
【0695】
2つの十分に確立されたmiRNA、miR−173及びmiR−390が改変されるように選択され、これらは、以前に、植物の発育全体を通して発現されることが示された[Zielezinski Aら、BMC Plant Biology(2015)15:144]。改変を導入するために、2成分系を使用した。まず、CRISPR/CAS9システムを用いて、miR−173及びmiR−390遺伝子座において、設計された特定のガイドRNA(上述の表2)を介して切断を生成し、その部位における相同的DNA修復(HDR)を促進した。第二に、新たに割り当てられた遺伝子を標的とするためのmiRNA配列の所望の改変を伴うAドナー(DONOR)配列を、HDRの鋳型として導入した(上記表2)。さらに、miRNA(pri−miRNA)の一次転写産物の二次構造は、成熟miRNAの正確な生合成及び活性に重要であるので、さらなる改変をpri−miRNAの相補鎖に導入し、構造保存のためにmFOLD(www(dot)unafold(dot)rna(dot)Albany(dot)edu)において分析した(データは示さず)。全体として、miRNA遺伝子座ごとに2つのガイドを設計し、各遺伝子ごとに2つの異なるドナー配列(改変miRNA配列)を設計した(上述の表2)。
【0696】
実施例10
衝撃及び植物再生
GEiGS構築物を、(上記の材料と実験手順の節で詳細に議論したように)予め調製された根に衝撃し、そして再生した。PDS3形質転換体については退色表現型を介して、ADH1形質転換体についてはアリルアルコール処理での生存を介して植物を選択した。SwapをSwapなし、すなわち保持された野生型と比較して検証するために、これらの植物を、改変領域にわたる特異的プライマーを介した挿入について続いてスクリーニングし、続いて制限消化した(
図13)。
【0697】
実施例11
表現型選択の遺伝子型検証
前述したように、よく知られた表現型形質であるフィトエンデサチュラーゼ(PDS3)とアルコールデサチュラーゼ(ADH1)を標的として、遺伝子編集システムの概念実証(POC)が確立された。
【0698】
上記のように、減少したADH1発現を有する植物は、アリルアルコールに対する耐容性の増加を示す。従って、ADH1を標的とする改変miRNAのための衝撃植物を、30mMアリルアルコールを含有する培地中で再生し、対照植物の再生速度と比較した。118のGEiGS#3+SWAP11アリルアルコール選択植物は、アリルアルコール培地上で51の対照植物と比較して生存した(データは示さず)。選択されたGEiGS#3+SWAP11のうち、5つがドナーを保有することが示された(データは示さず)。ドナー処理植物において再生する大量の植物は、衝撃プロセスの間の一過性発現にも起因し得る。
【0699】
従って、退色表現型(
図16)及びアリルアルコール選択(
図17)によるPDS3及びADH1の選択は、それぞれ、遺伝子型決定のための形質転換小植物選択のための理想的な手段を与える。
【0700】
4kbのスワップ領域を、主に、内部プライマー及び制限酵素消化のバリエーションを介する挿入に対する元の野生型の特異的アンプリコン分化を通して評価した。
【0701】
ADH1(
図14)は、ドナープラスミド 制限及びドナープラスミド 非制限と比較した場合、予想されるドナー存在制限パターンを有するアリルアルコール選択植物の比較遺伝子型を示した。PDS3(
図13)は、ドナープラスミド 制限及びドナープラスミド 非制限のものと比較した、ドナーを伴う及び伴わない衝撃試料表現型と、それらのそれぞれの異なる制限酵素消化パターンとの比較を示した。これらの結果は、PDS3アルビノ/退色表現型と予想される制限パターンとの明確な関連を提供した。そのあとで、特定の内部、すなわちSwap(スワップ)領域内のプライマーと、交換(スワッピング)で導入するべきゲノム領域の外部にあってそれに特異的な外部プライマーとを組み合わせて、外部PCRを実施した(データは示さず)。ヘテロ接合性、ホモ接合性、又はドナーSwapの存在を評価するために、PCRアンプリコンのSanger配列決定によって、Swapのさらなる検証を得た(データは示さず)。
【0702】
実施例12
改変されたmiRNAはその新しい標的遺伝子の発現を低下させる
GEiGS系における改変miRNAが新たに指定された標的の発現を下方制御する可能性を検証するために、qRT−PCR(定量的リアルタイムPCR)を用いて遺伝子発現解析を行った。陽性に特定された再生植物からRNAを抽出し、逆転写し、再生植物と比較し、並行して処理したが、関連する改変構築物は導入されなかった。miR−173をPDS3を標的とするように改変した場合(GEiGS#4+SWAP4)では、遺伝子発現量の平均83%の低下が認められた(
図15)。ADH1を標的とするように改変されたmiR−390(GEiGS#3+SWAP11)を有する植物では、同様の遺伝子発現の変化が観察され、対照植物のレベルの82%であった(
図16)。まとめると、これらの結果は、内在遺伝子座におけるmiRNA転写産物中の標的認識配列を置換することにより、内在miRNAを改変して新たな遺伝子をうまく標的とし、その発現を低下させる遺伝子編集法を実証する。
【0703】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替、修正、及び変形が当業者には明らかであろうことは明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある、そのような代替、修正、及びバリエーションのすべてを包含することが意図される。
【0704】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が、参照により本明細書に援用されるように具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が本明細書に援用される。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを容認するものとして解釈されるべきではない。節の見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。