特表2020-534905(P2020-534905A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-534905(P2020-534905A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】血液濾過デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20201106BHJP
【FI】
   A61M1/36 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-516739(P2020-516739)
(86)(22)【出願日】2018年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年4月24日
(86)【国際出願番号】IB2018057402
(87)【国際公開番号】WO2019058355
(87)【国際公開日】20190328
(31)【優先権主張番号】102017000107088
(32)【優先日】2017年9月25日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】506337138
【氏名又は名称】エウロセッツ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】EUROSETS S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ゲッリ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】コスタ マイアンティ,エドガルド
(72)【発明者】
【氏名】バランツォーニ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ペトラリーア,アントニオ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077CC04
4C077CC07
4C077EE01
4C077KK11
(57)【要約】
血液濾過デバイス(1)は、格納空間(3)を画定しかつ静脈血のための少なくとも1つの第1の入口(4)、体腔内血液のための少なくとも1つの第2の入口(5)、体腔外血液のための少なくとも1つの第3の入口(6)、及び血液のための少なくとも1つの出口(7)が設けられたケーシング(2);格納空間(3)の内側に収容され、かつ、血液入口(4、5、6)と連通している少なくとも1つの濾過空間(8a、9a、10a)及び出口(7)と連通している少なくとも1つの収集空間(11)を区切る、血液濾過手段(8、9、10);を備え、ここで、濾過手段(8、9、10)は:閉じた輪郭を画定し、かつ、第1の入口(4)と連通している第1の濾過空間(8a)を区切る、少なくとも1つの第1の濾過要素(8);閉じた輪郭を画定し、かつ、第2の入口(5)と連通している第2の濾過空間(9a)を区切る、少なくとも1つの第2の濾過要素(9);閉じた輪郭を画定し、かつ、第3の入口(6)と連通している第3の濾過空間(10a)を区切る、少なくとも1つの第3の濾過要素(10);を含み、濾過要素(8、9、10)は、互いに分離されかつ互いに異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液濾過デバイス(1)であって、
格納空間(3)を画定し、かつ、静脈血のための少なくとも1つの第1の入口(4)、体腔内血液のための少なくとも1つの第2の入口(5)、体腔外血液のための少なくとも1つの第3の入口(6)、及び前記血液のための少なくとも1つの出口(7)が設けられた、ケーシング(2);
前記格納空間(3)の内側に収容され、かつ、前記入口(4、5、6)と連通している少なくとも1つの濾過空間(8a、9a、10a)及び前記出口(7)と連通している少なくとも1つの収集空間(11)を区切る、血液濾過手段(8、9、10);
を備え、
前記濾過手段(8、9、10)が、
閉じた輪郭を画定し、かつ、前記第1の入口(4)と連通する第1の濾過空間(8a)を区切る、少なくとも1つの第1の濾過要素(8);
閉じた輪郭を画定し、かつ、前記第2の入口(5)と連通する第2の濾過空間(9a)を区切る、少なくとも1つの第2の濾過要素(9);
閉じた輪郭を画定し、かつ、前記第3の入口(6)と連通する第3の濾過空間(10a)を区切る、少なくとも1つの第3の濾過要素(10);
を含み、
前記濾過要素(8、9、10)が、互いに分離されかつ互いに異なることを特徴とする、血液濾過デバイス(1)。
【請求項2】
前記入口(4、5、6)が、前記ケーシング(2)の上方部分(2a)において画定されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記出口(7)が、前記ケーシング(2)の底壁(2b)において画定されることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記濾過空間(8a、9a、10a)が、各濾過要素(8、9、10)によって画定される内側空間に相当すること、及び、前記収集空間(11)が、前記濾過要素(8、9、10)の外部に配置されることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記第2の濾過要素(9)及び前記第3の濾過要素(10)が並んで配置されることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記第1の濾過要素(8)が、前記出口(7)と前記第2の濾過要素(9)及び前記第3の濾過要素(10)との間に介在されることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記第2の入口(5)及び/または前記第3の入口(6)を複数備えること、及び、前記第2の入口(5)及び前記第3の入口(6)のうちの少なくとも一方に配置されて対応する前記濾過空間(9a、10a)と連通する血液分離手段(23)を備え、前記分離手段(23)が、前記血流がそれぞれの前記入口(5、6)に入るときにそれらを互いに分離し続けるように適合されることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記分離手段(23)が、曲線から成る延長部を有する複数のチャネル(25)が画定された少なくとも1つのボディ(24)を備え、前記チャネル(25)のそれぞれが、それぞれの入口(5、6)から流れる前記血液を受け入れてそれを周辺領域から中央へ運ぶように適合されることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記チャネル(25)が、前記ボディ(24)の縁部から中央に向かって収束する区間を有することを特徴とする、請求項8に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記第2の濾過要素(9)及び前記第3の濾過要素(10)のうちの少なくとも一方の内側に、予め定められた経路に沿って前記血液を案内するように適合された少なくとも1つの搬送要素(26)が収容されることを特徴とする、請求項1〜9のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記搬送要素(26)が、実質的にスクリュー形状であることを特徴とする、請求項10に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記搬送要素(26)が、実質的に螺旋状の経路を画定する血液流れ面(27)を有し、前記血液流れ面(27)の側縁が、対応する前記濾過要素(8、9、10)の内壁に配置されることを特徴とする、請求項10または11に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
前記搬送要素(26)が、前記分離手段(23)より下に配置されることを特徴とする、請求項7〜9のうちいずれか一項、又は請求項10〜12のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項14】
前記搬送要素(26)が、前記分離手段(23)と前記ケーシング(2)の前記底壁(2b)との間に介在されることを特徴とする、請求項13に記載のデバイス(1)。
【請求項15】
前記収集空間(11)が、中断を伴わずに前記濾過要素(8、9、10)のそれぞれを外部から包囲することを特徴とする、請求項1〜14のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項16】
前記収集空間(11)の内側に位置決めされかつ前記ケーシング(2)とともに機能して、前記収集空間自体を、前記第1の濾過要素(8)及び前記第2の濾過要素(9)を包囲しかつ前記出口(7)と連通する第1の収集空間(11a)、及び、前記第3の濾過要素(10)を包囲しかつ血液引抜き結合管(15)及び/または前記第1の収集空間(11a)と連通され得る第2の収集空間(11b)に分割する少なくとも1つの分離壁(14)を備えることを特徴とする、請求項1〜14のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項17】
前記第2の収集空間(11b)の内側に収容された少なくとも2つの遮断壁(20a、20b)を備え、前記少なくとも2つの遮断壁(20a、20b)が、前記第3の濾過要素(10)と前記引抜き結合管(15)との間に介在され、かつ、前記ケーシング(2)の前記底壁(2b)に対して異なる高さに位置決めされた前記濾過された血液のそれぞれの通路間隙(21a、21b)を画定することを特徴とする、請求項16に記載のデバイス(1)。
【請求項18】
前記遮断壁(20a、20b)が、前記第3の濾過要素(10)から前記引抜き結合管(15)に向かって互いに連続して配置された第1の遮断壁(20a)及び第2の遮断壁(20b)を含むこと、及び、前記第2の遮断壁(20b)によって画定される前記通路間隙(21b)が、前記第1の遮断壁(20a)によって画定される前記通路間隙(21a)よりも高い位置に配置されることを特徴とする、請求項17に記載のデバイス(1)。
【請求項19】
前記引抜き結合管(15)が、前記第2の収集空間(11b)と連通するように位置決め可能な少なくとも1つまたは複数の第1の開口部(17a)、及び、血液の通過のための少なくとも1つの第2の開口部(17b)が設けられた、外側からアクセス可能な少なくとも1つのスリーブ(16)を備えること、及び、前記分離壁(14)が、前記第1の収集空間(11a)と連通する少なくとも1つの通路(22)を備え、前記スリーブ(16)が、前記第1の開口部(17a)のうちの少なくとも1つが前記第2の収集空間(11b)と連通され、前記第2の開口部(17b)が、前記第1の収集空間(11a)を前記第2の収集空間(11b)と連通させるように、前記通路(22)に配置される、開口配置と、前記第1の開口部(17a)のうちの少なくとも1つが前記第2の収集空間(11b)と連通され、前記第2の開口部(17b)が前記通路(22)から隔離される、閉鎖配置との間で、回転して動作可能であることを特徴とする、請求項16〜18のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項20】
前記第2の収集区間(11b)の内側に収容されかつ少なくとも1つの凹部(19)が設けられた、前記底壁(2b)から延在する少なくとも1つの付属物(18)を備えること、及び、前記スリーブ(16)が、少なくとも2つの前記第1の開口部(17a)及び少なくとも1つの第2の開口部(17b)を有し、前記スリーブ(16)の開口位置では、前記第1の開口部(17a)のうちの1つが前記凹部(19)に位置決めされ、前記第2の開口部(17b)が前記通路(22)に位置決めされ、閉口位置では、前記第1の開口部(17a)のうちの他方が前記凹部(19)に配置され、前記第2の開口部(17b)が閉じられることを特徴とする、請求項17〜19のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項21】
前記濾過要素(8、9、10)が、管状の形状を有すること、及び、前記第1の濾過要素(8)が、前記第2の濾過要素(9)及び前記第3の濾過要素(10)よりも大きい長手方向延長部を有することを特徴とする、請求項1〜20のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液回路における血液濾過デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、特定の外科手術中、患者の心臓の機能が一時的に中断される場合、いわゆる「心肺」装置(以下、人工心肺)を使用する、体外血液回路が作られる。
【0003】
人工心肺は、患者から来る血液を濾過するように適合された濾過デバイス(「静脈リザーバ」とも呼ばれる)、濾過デバイスから出る血液の温度を調節するように適合された熱交換器、及び、患者に再導入されるように意図された血液に正確な供給量の酸素を提供するように適合された酸素付加器(oxygenator)の、一連のデバイスを備える。
【0004】
より詳細には、体外循環(ECC)中、血液は、重力により、または、人工心肺の静脈リザーバの内側での陰圧の印加に起因して、中空静脈内に位置決めされたカニューレまたは右心房内に位置決めされたカニューレを通過して排出される。血液は、静脈リザーバから、血液が酸素化されかつ脱二酸化炭素化される場所である膜型酸素付加器を通過しながら、通常は上行大動脈内に位置決めされたカニューレを通じて、動脈系内へ圧送される。
【0005】
このシステムは、全面的または部分的な循環上及び呼吸上の支援を提供するために使用され得る。
【0006】
体外血液回路は、術野吸引ライン(field aspiration line)(大動脈根吸引器、ベント吸引器、術野吸引器)、心筋保護液注入ライン(cardioplegia infusion line)、塞栓ならびに気泡のためのフィルタ、及び熱交換器によって完成される。
【0007】
静脈リザーバ内に存在する濾過デバイスは、気体または固体の形態であり得る体外回路内の塞栓を排除するために使用される。
【0008】
固体塞栓の主な発生源は、本質的に、アテローム、カルシウム、脂質、骨片、変性タンパク質、縫合材料、血小板、及び白血球凝集体を含む、外科手術野のフラスチュール(frustule)である。
【0009】
体外回路に侵入する気体塞栓の主な発生源は、手術野である。空気は、静脈挿管の部位から、大動脈挿管中、大動脈根からの吸引中、ベントから、術野吸引器から、吸引され得る。
【0010】
今日知られている濾過デバイスは、上部カバーが設けられた剛体のケーシングを備え、この上部カバーには、患者の心臓から直接来るいわゆる「体腔内」血液を受け入れるように適合された結合管(union)、及び「体腔外」血液を受け入れるように適合された結合管から成る、血液入口結合管が画定される。このデバイスは、一般にケーシングの底部に配置される、患者の静脈から来る血液を受け入れるように適合されたさらなる結合管、及び、濾過された血液の出口を有する。
【0011】
より詳細には、ケーシングの内側には、閉じた輪郭を画定する濾過要素が存在し、その内部空間(internal volume)は、上述の血液入口結合管と連通され、その外部空間(external volume)は、濾過された血液の出口と連通される。すると、ケーシングに侵入する血液は、濾過要素を通過して出口から出る。
【0012】
これらの知られたタイプの濾過デバイスは、いくつかの欠点を有する。
【0013】
それらの濾過デバイスは、実際には、処理血液の効果的な濾過を可能にしない。
【0014】
実際に、知られているように、心臓外科手術中に吸引される体腔内血液及び体腔外血液は互いに著しく異なる特性を有し、実際に、体腔内血液は、一般に、あまり活性化されず(すなわち、固体塞栓を含まない)、かつ、気泡の数が抑えられているが、体腔外血液は、非常に活性化され、かつ、気泡に富む。
【0015】
知られたタイプのデバイスでは、体腔内血液(気体塞栓がほとんどない)及び体腔外血液(気体塞栓を多く含む)は、濾過される前に混合されるので、結果として、体腔外血液によって「汚染」される体内腔血液の活性化を伴うことになる。したがって、知られたタイプのデバイスによって行われる濾過は、気体の形態の塞栓及び固体の形態の塞栓の両方を排除しなければならない濾過要素が、気体の微小塞栓の排除能力を低下させ、また、血液濾過能力をも低下させるので、あまり効率的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の主な目的は、知られたタイプのデバイスに対して濾過の効率を改善することを可能にする血液濾過デバイスを考案することである。
【0017】
特に、本発明は、出力血液(output blood)の質を高めるために、処理血液の各流れに対して濾過を最適化することを意図する。
【0018】
本発明のさらなる目的は、単純で、合理的で、扱いやすく、使用するのに効率的で、かつ費用効率が高い解決策の範囲内で、従来技術の前述の欠点を克服することを可能にする、血液濾過デバイスを考案することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述の目的は、請求項1に記載の本血液濾過デバイスによって達成される。
【0020】
本発明の他の特性及び利点は、非限定的な例示として添付の図面に示された血液濾過デバイスの好ましいが排他的ではない実施形態に関する記述から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態における本発明によるデバイスの不等角投影図である。
図2図1のデバイスの一部分の上面不等角投影図である。
図3】第2の実施形態における本発明によるデバイスの不等角投影図である。
図4図3のデバイスの一部分の上面不等角投影図である。
図5】トラック面(track plane)V−Vに沿った図3のデバイスの一部分の断面図である。
図6図5の断面の一部分の不等角投影図である。
図7図5の断面の、部分的に分解組立図である、さらなる不等角投影図である。
図8】関連するスリーブが開口配置にある、図3のデバイスの断面図である。
図9】関連するスリーブが閉口配置にある、図3のデバイスの断面図である。
図10】代替実施形態における本発明によるデバイスの濾過要素の分解組立図である。
図11図10の濾過要素の上方からの平面図である。
図12】トラック面XII−XIIによる図11の濾過要素の断面図である。
図13】トラック面XIII−XIIIによる図11の濾過要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これらの図を特に参照すると、図1が、血液濾過デバイスを全体的に示している。
【0023】
デバイス1は、格納空間(containment volume)3を画定するケーシング2を備え、また(ケーシングは)患者から来る静脈血のための少なくとも1つの第1の入口4、体腔内血液(気体塞栓がほとんどない)のための少なくとも1つの第2の入口5、体腔外血液(気体塞栓に富む)のための少なくとも1つの第3の入口6、及び、血液のための少なくとも1つの出口7を備える。
【0024】
格納空間3の内側には、血液濾過手段8、9、10が収容され、これらは、血液入口4、5、6と連通する少なくとも1つの濾過空間(filtering volume)8a、9a、10a、及び、出口7と連通する少なくとも1つの収集空間(collecting volume)11を区切る。
【0025】
本発明によれば、濾過手段8、9、10は、閉じた輪郭を画定しかつ第1の入口4と連通する第1の濾過空間8aを区切る、少なくとも1つの第1の濾過要素、閉じた輪郭を画定しかつ第2の入口5と連通する第2の濾過空間9aを区切る、第2の濾過要素9、及び、閉じた輪郭を画定しかつ第3の入口6と連通する第3の濾過空間10aを区切る、第3の濾過要素10を含み、第1、第2、及び第3の濾過要素8、9、10は、互いに分離されかつ互いに異なる。
【0026】
容易に理解され得るように、事例の特有の要求に応じて、濾過要素8、9、10は、濾過すべき血液のタイプに従ってそれらの濾過特性が選択されるように、異なるタイプのものとされ得る。
【0027】
ケーシング2は、上方部分2a、底壁2b、及び側壁2cを有する。
【0028】
入口4、5、6は、上方部分2aにおいて画定されることが好ましい。
【0029】
出口7は、底壁2bにおいて画定されることが好都合である。
【0030】
図1及び3で分かるように、ケーシング2は、側壁2c及び底壁2bを画定する、頂部が開けた本体12、及び、入口4、5ならびに6が画定される上方部分2aを画定する、本体12を閉じるためのカバー13を備える。
【0031】
より詳細には、第2及び第3の入口5、6は、上方部分2aに関連付けられた対応する支持要素29に係合する被覆要素28によって画定され、ここで、少なくとも1つの密閉要素30が、被覆要素28と支持要素29との間に介在される。
【0032】
有利には、濾過要素8、9、及び10は、管状の形状を有し、その下方基部は、底壁2bに配置され、その上方基部は、対応する入口4、5、及び6と連通される。格納要素31が、濾過要素8、9、及び10の周りに配置される。
【0033】
図に示された実施形態では、第2の及び第3の濾過要素9、10は、並んで配置される。
【0034】
より詳細には、第1の濾過要素8は、第2の濾過要素9及び第3の濾過要素10よりも長い長手方向延長部を有する。
【0035】
図から分かるように、実際には、底壁2bは、第1の濾過要素8の底部先端及び出口7が配置される第1の範囲、及び、第2の濾過要素9及び第3の濾過要素10の底部先端が配置される第2の範囲を有し、第1の範囲は、使用時には第2の範囲よりも低い高さに配置される。
【0036】
第1の濾過要素8は、出口7と第2の濾過要素9及び第3の濾過要素10との間に介在されることが好ましい。
【0037】
図10から13に示される実施形態では、デバイス1は、複数の第2の入口5及び/または第3の入口6を備え、かつ、第2及び第3の入口5、6のうちの少なくとも一方に配置されて対応する濾過空間9a、10aと連通する血液分離手段23を備え、ここで、これらの分離手段23は、互いに分離されたそれぞれの入口5、6から来る血流を保つように適合される。
【0038】
より詳細には、分離手段23は、曲線から成る延長部を有する複数のチャネル25を画定するタイプのボディ24であり、複数のチャネル25のそれぞれは、関連する入口5、6に侵入する血液の流れを受け入れてそれを周辺領域から中央へ運ぶように適合されている。
【0039】
分離手段23は、各入口5、6に侵入する種々の血流が互いに混合するのを防ぎ、したがって血液からの空気の初期分離を得ることを可能にする。
【0040】
チャネル25は、中央に向かって収束する区間を有することが好ましい。
【0041】
有利には、第2及び第3の濾過要素9、10のうちの少なくとも一方の内側には、少なくとも1つの搬送要素26が収容され、この搬送要素26は、対応する濾過要素9、10に向けて血液を搬送するために、予め定められた経路に沿って血液を案内するように適合される。
【0042】
図に示された実施形態では、搬送要素26は、実質的にスクリュー形状である。
【0043】
より詳細には、搬送要素26は、実質的に螺旋状の経路を画定する血液流れ面27を有し、血液流れ面27の側縁は、実質的に、対応する濾過要素9、10の内部外側面の接線である。
【0044】
搬送要素26は、分離手段23より下に配置され、したがって、分離手段から来る血液を受け取るように適合される。
【0045】
より詳細には、搬送要素26は、分離手段23と底壁2bとの間に介在される。
【0046】
図1及び2に示された第1の実施形態では、各濾過要素8、9、10の外部空間は、互いに連通している。言い換えれば、収集空間11は、中断を伴わずに各濾過要素8、9、10を外部から包囲する。これは、入口4、5、及び6を通じてケーシング2に侵入する血液部分が、いったん濾過されて互いに混合され、収集空間11内に蓄積し、次いで出口7を通じて出て行くことを伴う。
【0047】
その一方で、図3から6に示された第2の実施形態では、デバイス1は、収集空間11の内側に位置決めされた少なくとも1つの分離壁14を備え、この分離壁14は、ケーシング2とともに機能して、収集区間自体を、第1及び第2の濾過要素8、9を包囲しかつ出口7と連通する第1の収集空間11a、及び、第3の濾過要素10を包囲しかつ出口7とは別体の血液引抜き結合管15と連通する第2の収集空間11bに分割する。したがって、分離壁14は、第3の濾過要素10を第1の濾過要素8及び第2の濾過要素9から隔離し、したがって、関連する濾過された血液部分の混合を回避する。
【0048】
好都合には、引抜き結合管15は、スリーブ16を備え、スリーブ16の上部先端は、カバー13から突出しかつ外側からアクセス可能であり、スリーブ16の底部先端は、第2の収集空間自体の内側に配置される。
【0049】
スリーブ16は、第2の収集空間11bと連通している少なくとも1つの第1の開口部17a、及び、分離壁14上に画定されかつスリーブ16に位置決めされた通路22を通じてスリーブ自体を第1の収集空間11aと連通させるように適合された少なくとも1つの第2の開口部17bを備える。好都合には、スリーブ16は、第2の開口部17bが通路22と連通される開口配置と、第2の開口部17bが通路22から隔離される閉鎖配置との間で、関連する軸の周りで回転するように動作可能であり、通路22は、第2の収集空間11bから隔離された第1の収集空間11aを維持するように、スリーブ自体の壁によって妨げられる。開口配置及び閉鎖配置の両方において、第1の開口部17aは、第2の収集空間11bと連通される。
【0050】
図に示された実施形態では、スリーブ16は、2つの第1の開口部17a及び1つ第2の開口部17bを備え、第2の開口部17bは、第1の開口部17aのうちの一方と実質的に位置合わせされており、他方の第1の開口部17aは、それらの間に介在されている。
【0051】
スリーブ16の開口配置では、第1の収集空間11a及び第2の収集空間11bは、手術者が第1の収集空間11aから血液を吸引することができるように、互いに連通し、一方で、閉鎖配置では、第1の収集空間11a及び第2の収集空間11bは、互いに隔離され、手術者は、第3の濾過要素10によって濾過された血液を、スリーブ自体を通じて吸引することができる。
【0052】
第2の収集空間11bの内側には、底壁2bから延在する付属物18が設けられることが好ましく、この付属物18は、スリーブ16とともに機能するように適合され、かつ、少なくとも1つの凹部19を備える。より詳細には、スリーブ16の開口配置では、互いに位置合わせされた第1の開口部17a及び第2の開口部17bは、スリーブ自体の内側の第2の収集空間11bからの、及び、第1の収集空間11aの内側のこれからの、濾過された血液の流れを可能にするように、凹部19及び通路22にそれぞれ位置決めされるが、閉鎖配置では、第2の開口部17bは、通路22によって隔離され、したがって、第2の開口部17bは、スリーブ16の側壁によって閉じられ、それにより、手術者がスリーブ自体を通じて第2の収集空間11bに収容された濾過された血液を吸引することが可能になる。
【0053】
有利には、この第2の実施形態では、第2の収集空間11bの内側には、第3の濾過要素10と引抜き結合管15との間に介在された少なくとも2つの遮断壁20a、20bが設けられる。より詳細には、遮断壁20a、20bは、底壁2bに対して異なる高さに位置決めされた、第3の濾過要素10によって濾過された血液のそれぞれの通路間隙21a、21bを画定する。
【0054】
デバイス1は、図では参照番号20a及び20bでそれぞれ識別されている第1及び第2の遮断壁を備えることが好ましく、これらの遮断壁は、第3の濾過要素10を起点にして引抜き結合管15に向かって互いに連続して配置され、ここで、第2の遮断壁20bによって画定された通路間隙21bは、第1の遮断壁20aによって画定された通路間隙21aよりも高い位置に配置される。
【0055】
遮断壁20a及び20bは、血液中に存在する脂質及ならびに白血球、及び血液自体の上層に集まる脂質ならびに白血球を第2の収集空間11b内に保持することを可能にする。
【0056】
したがって、付属物18及び凹部19は、第2の遮断壁20bとスリーブ16との間に介在されて、第2の収集空間11b内に収容された血液の最大限の引抜きの場合でも、スリーブ自体が取る位置に応じて、分離された脂質及び白血球がスリーブ16を通じて吸引されるかまたは第1の収集空間11aの内側で限界に達するのを防ぐことを可能にする。
【0057】
本発明の動作は、以下の通りである。
【0058】
上記の説明に基づいて容易に理解され得るように、本発明によるデバイスを使用する前に、手術者は、入口4、5、及び6をそれぞれの血液搬送ラインに接続する。
【0059】
したがって、体腔内静脈血及び体腔外静脈血は、第1の濾過空間8a、第2の濾過空間9a、及び第3の濾過空間10aそれぞれに侵入して、対応する濾過要素8、9、及び10を通って流れる。次いで各タイプの血液は、個別に濾過される。
【0060】
図10から13に示された実施形態では、第2の入口5及び第3の入口6に侵入する血液は、分離手段23に接触し、対応するチャネル25に侵入して、搬送要素26に向かって搬送される。したがって、血液は、血液を対応する濾過要素9、10に向かって押す流れ面27を移動して、対応する濾過空間9a、10aの内側に漸進的に落下する。
【0061】
第1の実施形態によるデバイス1では、そのようにして濾過された血液は、収集空間11の内側で流れて、出口7から流出する。
【0062】
一方で、第2の実施形態では、第1の濾過要素8及び第2の濾過要素9を通って流れる血液は、第1の収集空間11a内に集まって出口7から流出するが、第3の濾過要素10を通って流れる血液は、第2の収集空間11b内に集まり、遮断壁20a及び20bを通過した後、スリーブ16の位置に応じて、引抜き結合管15または出口7を通じて引き抜かれる。上述のように、第2の収集空間11b内に収容された血液の沈降により、遮断壁20a及び20bは、血液中に存在する脂質及び白血球を保持することを可能にする。
【0063】
説明された本発明は意図する目的を達成し、また、特に、本発明のデバイスにより濾過すべき血液の各タイプに対して特定の濾過要素を使用することが可能になるという事実が強調されることが、実際に分かっている。これは、濾過すべき血液の特性に従って濾過ステップが最適化されることを可能にし、したがって、知られたデバイスに対して、濾過された血液の質を高めることを可能にする。
【0064】
第2の実施形態における分離壁は、血液中に存在する脂質及び白血球を保持することにより血液成分をさらに分離することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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【国際調査報告】