特表2020-534995(P2020-534995A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-534995排気ガス浄化用途のための低ウォッシュコート充填量単層触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-534995(P2020-534995A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用途のための低ウォッシュコート充填量単層触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20201106BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20201106BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20201106BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-513565(P2020-513565)
(86)(22)【出願日】2018年9月20日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月5日
(86)【国際出願番号】US2018051938
(87)【国際公開番号】WO2019067299
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】62/563,662
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ハイ−イン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・カム
(72)【発明者】
【氏名】シャオ−ラン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ヘイルズ
(72)【発明者】
【氏名】グァンモ・クー
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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3G091AB08
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4G169CA08
4G169CA09
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4G169FC08
(57)【要約】
三元触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が開示される。基材と、基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含む、排気ガスを処理するための触媒物品であって、単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、単一触媒層が、0.15g/cm(2.4g/in)未満の総ウォッシュコート充填量を有する、触媒物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
前記基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含み、
前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、
前記単一触媒層が、2.4g/inの未満の総ウォッシュコート充填量を有する、触媒物品。
【請求項2】
前記単一触媒層の前記総ウォッシュコート充填量が、2.0g/in以下である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記第1のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第1のPGM成分が、ロジウムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記ロジウム充填量が、前記単一触媒層の総重量に基づいて、0.05〜2重量%の範囲である、請求項4に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、1.2g/in未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、1.0g/in以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記OSC材料が、酸化セリウム、セリア−ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ−セリア−ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記OSC材料が、セリア−ジルコニア混合酸化物である、請求項8に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記セリア−ジルコニア混合酸化物が、ジルコニアとセリアとのモル比が少なくとも1:1である、請求項9に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記無機酸化物が、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、アルカリ土類安定化アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、マグネシア/アルミナ複合酸化物、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化ネオジム、酸化イットリウム、ランタニド、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記無機酸化物が、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記OSC材料と前記無機酸化物とが、10:1以下の重量比を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記単一触媒層が、第2のPGM成分を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記第2のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記第1のPGM成分がロジウムであり、前記第2のPGM成分がパラジウムである、請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記ロジウム成分と前記パラジウム成分とが、10:1〜1:10の重量比を有する、請求項16に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記単一触媒層が、前記ロジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まない、請求項1〜13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項19】
前記基材が、フロースルーモノリスである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項20】
いずれの追加の層も更に含まない、請求項1〜19のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システム。
【請求項22】
第2触媒物品を更に含む、請求項21に記載の排出処理システム。
【請求項23】
前記第2触媒物品が、TWC触媒を含む、請求項22に記載の排出処理システム。
【請求項24】
前記第2触媒物品が、前記触媒物品の上流にある、請求項21〜23のいずれか一項に記載の排出処理システム。
【請求項25】
前記第2触媒物品と前記触媒物品とが、強連結されている、請求項22〜24のいずれか一項に記載の排出処理システム。
【請求項26】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを請求項1〜20のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させること、を含む、方法。
【請求項27】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを請求項21〜25のいずれか一項に記載の排出処理システムと接触させること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NO」)などの様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジン用途に一般的に使用される触媒は、三元触媒(TWC)である。TWCにより、3つの主要機能:(1)一酸化炭素(CO)の酸化、(2)未燃炭化水素の酸化、及び(3)NOのNへの還元を行う。
【0003】
ほとんどの触媒コンバータでは、TWCは、フロースルーハニカムモノリスなどの高温に耐えることができる高表面積基材上にコーティングされる。これらの基材の大きな表面積は、所望の不均一反応を促進するが、排気背圧、すなわち、エンジンから尾筒への排気ガスの流れの制限の一因となることもある。排気システム内の高い背圧により、エンジンの燃費及び出力が低下することがある。TWC技術、例えば米国特許第6,022,825号、同第9,352,279号、同第9,040,003号、及び米国特許出願公開第2016/0228818号に記載の技術の進展にもかかわらず、高変換率及び低背圧を同時にもたらす、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータがなお必要とされている。本発明は、とりわけこれらの必要性を解決するものである。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、基材と、基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含む、排気ガスを処理するための触媒物品であって、単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、単一触媒層が、2.4g/in未満の総ウォッシュコート充填量(washcoat loading)を有する、触媒物品に関する。
【0005】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関の排気システムも包含する。
【0006】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理についても包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えばガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成された燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒物品及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、低ウォッシュコート充填量の単層触媒に関する。触媒により、車両排気システムにおいてNO、CO、及びHCを同時に処理することができる。驚くべきことに、本発明者らは、低ウォッシュコート充填量にもかかわらず、本発明の単層触媒が、高レベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことを、見出した。加えて、本発明の触媒によりまた、背圧の低下が示され、これによって、燃費及び出力が改善される。既存のより高いウォッシュコート充填量及び/又は多層触媒配合物と比較して、本発明のプロセスによるとまた、複雑性も低減される。
【0008】
本開示の一態様は、基材と、基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含む、排気ガスを処理するための触媒物品であって、単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、単一触媒層が、2.4g/in未満の総ウォッシュコート充填量を有する、触媒物品に関する。
【0009】
第1のPGMは、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1のPGMは、ロジウムである。
【0010】
単一触媒層は、好ましくは、単一触媒層の総重量に基づいて、0.05〜2重量%の第1のPGM、より好ましくは0.06〜0.6重量%の第1のPGM、最も好ましくは0.1〜0.4重量%の第1のPGMを含む。
【0011】
第1のPGMがロジウムである実施形態では、単一触媒層は、好ましくは、単一触媒層の総重量に基づいて、0.05〜2重量%のロジウム、より好ましくは0.06〜0.6重量%のロジウム、最も好ましくは0.1〜0.4重量%のロジウムを含む。
【0012】
第1のPGMは、概してOSC材料と接触している。好ましくは、第1のPGMは、OSC材料上に担持される。OSC材料と接触していることに加えて、又はそれに代えて、第1のPGMは、無機酸化物と接触していてもよい。
【0013】
OSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、セリア−ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ−セリア−ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。好ましくは、OSC材料は、セリア−ジルコニア混合酸化物である。セリア−ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。
【0014】
OSC材料(例えば、セリア−ジルコニア混合酸化物)は、単一触媒層中の全触媒の10〜90%、好ましくは25〜75%、より好ましくは35〜65%であってもよい。
【0015】
無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、アルカリ土類安定化アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、マグネシア/アルミナ複合酸化物、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化ネオジム、酸化イットリウム、ランタニド、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、無機酸化物は、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい無機酸化物は、アルミナ又はランタニド安定化アルミナである。
【0016】
無機酸化物は、好ましくは、10〜1500m/gの範囲の表面積、0.1〜4mL/gの範囲の細孔容積、及び約10〜1000Åの細孔直径を有する。80m/g超の表面積を有する高表面積無機酸化物、例えば高表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい無機酸化物としては、マグネシア/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、所望によりセリウム含有成分、例えば、セリアを更に含む。このような場合、セリアは、例えばコーティングとして、マグネシア/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
【0017】
OSC材料と無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
【0018】
あるいは、OSC材料と無機酸化物とは、10:1〜1:10、好ましくは8:1〜1:8又は5:1〜1:5、より好ましくは4:1〜1:4又は3:1〜1:3、最も好ましくは2:1〜1:2の重量比を有してもよい。
【0019】
単一触媒層の総ウォッシュコート充填量は、2.0g/in以下、好ましくは1.8g/in又は1.6g/in以下、より好ましくは1.4g/in又は1.2g/in以下、最も好ましくは1.0g/in以下であってもよい。
【0020】
単一触媒層中のOSC材料充填量は、1.2g/in未満であってもよい。いくつかの実施形態では、単一触媒層中のOSC材料充填量は、1.0g/in以下、0.9g/in以下、0.8g/in以下、0.7g/in以下、又は0.6g/in以下である。
【0021】
単一触媒層は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料及び無機酸化物の両方の上に堆積されてもよく、すなわち、それらの上に存在してもよい。
【0022】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、概して、無機酸化物と接触している。好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物上に担持されている。無機酸化物と接触していることに加えて、又はそれに代えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料と接触していてもよい。
【0023】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウムは、存在する場合、単一触媒層中で1重量%未満である。より好ましくは、単一触媒層は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばバリウムを実質的に含まない。
【0024】
単一触媒層は、第2のPGM成分を更に含んでもよい。
【0025】
第2のPGMは、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1のPGM成分がロジウムである場合、第2のPGM成分はパラジウムである。
【0026】
いくつかの実施形態では、ロジウム成分とパラジウム成分とは、50:1〜1:50の重量比を有する。より好ましくは、ロジウム成分とパラジウム成分とは、10:1〜1:10の重量比を有する。最も好ましくは、ロジウム成分とパラジウム成分とは、5:1〜1:5の重量比を有する。
【0027】
特定の実施形態では、単一触媒層は、ロジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まない。
【0028】
本発明の単一触媒層は、当業者に公知の更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つの結合剤及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。結合剤が存在する場合、分散性アルミナ結合剤が好ましい。
【0029】
基材は、軸長Lを有する金属又はセラミック基材であってもよい。好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はフィルタモノリスであるが、好ましくはフロースルーモノリス基材である。
【0030】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有し、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に伸びる、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に伸びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0031】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0032】
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0033】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり100〜900のチャネル、好ましくは300〜900のチャネルを有する。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
【0034】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として働く。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コージライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。このような材料、及び多孔質モノリス基材の製造におけるそれらの使用は、当該技術分野において公知である。
【0035】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出処理システムを形成する場合、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さいモノリスを一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出処理システムの好適なケーシング及び構成と共に、当該技術分野において公知である。
【0036】
触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コージライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コージライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0037】
触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の痕跡量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0038】
モノリスがフィルタリングモノリスである場合、フィルタリングモノリスはウォールフローフィルタであることが好ましい。ウォールフローフィルタでは、各入口チャネルは、多孔質構造のウォールによって出口チャネルから交互に分離され、逆もまた同様である。入口チャネル及び出口チャネルは、ハニカム配置で配置されていることが好ましい。ハニカム配置が存在する場合、入口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは上流端部で塞がれ、逆もまた同様である(すなわち、出口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは、下流端部で塞がれている)。いずれかの端部から見たとき、チャネルの、交互に塞がれ及び開いている端部は、チェス盤の外観をとる。例えば、第1の面上では、開いている第1のチャネル及び閉じた第2のチャネルの密度は、1平方インチ当たり100〜900チャネルである。
【0039】
原則として、基材は、任意の形状又は大きさであってもよい。しかし、基材の形状及び大きさは、通常、触媒中の触媒活性材料の排気ガスへの暴露を最適化するように選択される。基材は、例えば、管状、繊維状、又は微粒子形態を有してもよい。好適な担持基材の例としては、モノリシックハニカムコージライト型の基材、モノリシックハニカムSiC型の基材、層状繊維又は編地型の基材、発泡体型の基材、クロスフロー型の基材、金属ワイヤメッシュ型の基材、金属多孔質体型の基材、及びセラミック粒子型の基材が挙げられる。
【0040】
基材は、電気的に加熱可能な基材であってもよい(すなわち、電気的に加熱可能な基材は、使用中に電気的に加熱する基材である)。基材が電気的に加熱可能な基材である場合、本発明の触媒は、電力接続部、好ましくは少なくとも2つの電力接続部、より好ましくは2つの電力接続部のみを構成する。各電力接続部は、電気的に加熱可能な基材及び電源に電気的に接続されていてもよい。本発明の触媒は、ジュール加熱によって加熱されてもよく、抵抗器を通る電流により、電気エネルギーが熱エネルギーに変換される。
【0041】
概して、電気的に加熱可能な基材は、金属を含む。金属は、単数又は複数の電力接続部に電気的に接続されていてもよい。
【0042】
典型的には、電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能なハニカム基材である。電気的に加熱可能な基材は、使用中に、電気的に加熱するハニカム基材であってもよい。
【0043】
電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能な基材モノリス(例えば、金属モノリス)を含んでもよい。モノリスは、コルゲートにした金属シート又は箔を含んでもよい。コルゲートにした金属シート又は箔は、ロール処理、巻き取り、又は積層されてもよい。コルゲートにした金属シートがロール処理又は巻き取りされると、それは、コイル、螺旋形状、又は同心パターンに巻き取りされてもよい。
【0044】
電気的に加熱可能な基材の金属、金属モノリス及び/又はコルゲートにした金属シート若しくは箔は、アルミニウムフェライト鋼、例えばFecralloy(商標)を含んでもよい。
【0045】
本発明の触媒は、任意の好適な手段によって調製されてもよい。例えば、触媒は、第1のPGM、任意選択的な第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又は第2のPGM、無機酸化物、及びOSC材料を、任意の順序で混合することによって調製されてもよい。添加の手段及び順序は、特に重要であるとは見なされない。例えば、触媒の成分の各々は、任意の他の単数若しくは複数の成分に同時に添加されてもよく、又は任意の順序で逐次的に添加されてもよい。触媒の成分の各々は、触媒の任意の他の成分に、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、若しくは沈殿などによって添加されてもよく、又は当該技術分野において一般的に公知の任意の他の手段によって添加されてもよい。
【0046】
好ましくは、上述の触媒は、ウォッシュコート手順を用いて、触媒を基材上に堆積させることによって調製される。ウォッシュコート手順を用いる、触媒を調製するための代表的なプロセスが、以下に記載される。以下のプロセスは、本発明の様々な実施形態によって変更してもよいことが理解される。
【0047】
ウォッシュコーティングは、好ましくは、上述の触媒の成分の微細化粒子を、適切な溶媒中、好ましくは水中でまずスラリー化して、スラリーを形成することによって行われる。スラリーは、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%の固形分を含有する。好ましくは、粒子は、スラリーを形成する前に、実質的に全ての固体粒子が平均直径で20マイクロメートル未満の粒径を有することを確保するために、粉状にされ、又は別の粉砕プロセスに供される。追加の成分、例えば安定剤、結合剤、界面活性剤、又はプロモーターはまた、水溶性若しくは又は水分散性の化合物又は複合体の混合物としてスラリーに組み込まれてもよい。
【0048】
次いで、基材をスラリーで1回以上コーティングすることができ、それにより、所望の充填量の触媒が基材上に堆積される。
【0049】
本発明の触媒物品は、単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まないことが好ましい。
【0050】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NO、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスを処理するための方法に関する。この方法によって作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWCと比較して改善された又は匹敵する触媒性能を示すのみならず、背圧の20%超の低下も示す。
【0051】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を含む、車両排気ガスを処理するためのシステムであって、排気ガスをシステム経由で移すための導管と共にある、システムに関する。
【0052】
システムは、第2触媒物品を含んでもよい。好ましくは、第2触媒物品は、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)又はTWCを含んでもよい。より好ましくは、第2触媒物品は、TWC触媒を含む。
【0053】
TWC触媒は、任意の従来のTWC触媒であってもよい。例えば、通常はより高い触媒ウォッシュコート充填量及びより高いPGM含有量を含有する、従来の強連結(close−coupled)TWC触媒である。
【0054】
好ましくは、第2触媒物品は、触媒物品の上流にある。あるいは、又は加えて、第2触媒物品と触媒物品とは、強連結されている。
【0055】
定義
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常は触媒の製造中基材に適用される、接着性コーティングを指す。
【0056】
本明細書で使用するとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、全般的に、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群から選択される金属を指す。全般的に、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「混合酸化物」は、全般的に、当該技術分野において従来から公知であるように、単一相中の酸化物の混合物を指す。本明細書で使用するとき、用語「複合酸化物」は、全般的に、当該技術分野において従来から公知であるように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0058】
本明細書で使用するとき、「本質的になる」という表現により、特定された材料、及び任意の他の材料又は工程を含む特徴点の範囲を、その特徴点の基本的特性に大きく影響しないものに、例えば微量不純物などに限定する。表現「から本質的になる」は、表現「からなる」を包含する。
【0059】
材料に言及して本明細書で使用するとき、表現「実質的に含まない」は、典型的には、領域、層、又は区域の内容の文脈において、材料が、微量、例えば≦5重量%、好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1重量%であることを意味する。表現「実質的に含まない」は、表現「含まない」を包含する。
【0060】
材料に言及して本明細書で使用するとき、表現「本質的に含まない」は、典型的には、領域、層、又は区域の内容の文脈において、材料が、痕跡量、例えば≦1重量%、好ましくは≦0.5重量%、より好ましくは≦0.1重量%であることを意味する。表現「本質的に含まない」は、表現「含まない」を包含する。
【0061】
本明細書で使用するとき、重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、その担体材料又は耐火金属酸化物の重量に対してである。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「充填量」は、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0063】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者であれば、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【実施例】
【0064】
触媒1(比較)
触媒1は、二重層構造を有する市販の三元(Pd−Rh)触媒である。下層は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、Baプロモーター、及びベーマイト結合剤のウォッシュコート上に担持された、Pdからなる。下層のウォッシュコート充填量は、約1.6g/inであり、Pd充填量は1g/ftであった。上層は、第2のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナのウォッシュコート上に担持された、Rhからなる。上層のウォッシュコート充填量(washcoat lading)は、約1.4g/inであり、Rh充填量は2g/ftであった。触媒1の総触媒充填量は、約3.0g/inであった。
【0065】
触媒2
触媒2は、本発明による単層配合物である。RhをCeZr混合酸化物と混合した(Zr/Ceのモル比は4.4:1である)。その後、La安定化アルミナを上記混合物に添加した。十分に混合してから、ベーマイト結合剤を添加して、最終ウォッシュコートを形成した。スラリーをモノリシック基材上にコーティングして、100℃で乾燥させ、500℃で30分間焼成した。ウォッシュコート充填量は、約1.0g/in(0.6g/inのCeZr混合酸化物及び0.4g/inのアルミナ)であり、Rh充填量はで3g/ftであった。
【0066】
実験結果
同じ基材の種類の上にコーティングされた触媒1及び触媒2を、コールドフロー背圧について300m/時の流速で評価した。加えて、比較触媒1及び触媒2について、ガソリンエンジンを使用して、標準的なリーン、リッチ、化学量論的サイクリングのTWC劣化条件下で劣化させた。これらを、ガソリンエンジンでのライトオフ温度及び空気/燃料比性能応答(450℃)について性能試験した。
【実施例1】
【0067】
触媒1及び触媒2について、剥き出し基材上の背圧の上昇百分率を表1に示す。このデータによると、触媒2の低ウォッシュコート充填量単層技術は、標準的な2層の、触媒1の高ウォッシュコート充填量の例よりも、背圧への寄与が著しく低いことを、示している。
【0068】
【表1】
【実施例2】
【0069】
触媒1及び触媒2の、HC、CO、及びNOのT50ライトオフ温度を表2に示す。このデータによると、驚くべきことに、触媒2の低ウォッシュコート充填量単層技術は、標準的な2層の、触媒1の高ウォッシュコート充填量の例と同等の性能をもたらすことを、示している。
【0070】
【表2】
【実施例3】
【0071】
AFR試験のクロスオーバー点におけるHC、CO、及びNOの変換性能を表3に示す。データによると、驚くべきことに、触媒2の低ウォッシュコート充填量単層技術は、標準的な2層の、触媒1の高ウォッシュコート充填量の例と同等の性能をもたらすことを、示している。
【0072】
【表3】
【国際調査報告】