(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-535032(P2020-535032A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】超臨界流体により金型を要することなく立体構造発泡製品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/42 20060101AFI20201106BHJP
C08J 9/12 20060101ALI20201106BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
B29C44/42
C08J9/12
B29C45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-558561(P2019-558561)
(86)(22)【出願日】2018年10月23日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月13日
(86)【国際出願番号】CN2018111452
(87)【国際公開番号】WO2020047958
(87)【国際公開日】20200312
(31)【優先権主張番号】201811035299.9
(32)【優先日】2018年9月6日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519378366
【氏名又は名称】広東奔迪新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】馮云平
【テーマコード(参考)】
4F074
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
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4F214UG26
4F214UH02
4F214UJ11
4F214UR11
4F214UR21
(57)【要約】
本発明は、超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法を提供する。当該方法は、超臨界流体搬送システム、立体発泡システム、予熱システムを含む。ポリマー原料を加圧成形して発泡プリフォームを取得し、発泡プリフォームを予熱システム内で予熱して予熱温度まで昇温してから、立体発泡システム内に発泡プリフォームを投入する。そして、超臨界流体を導入し、超臨界流体がポリマーを膨潤させながら拡散を完了したあと減圧すればよい。本発明は、合理的な工程技術とパラメータの改良により、立体発泡容器内において一段階法で高温・中圧の超臨界流体によりポリマーを膨潤させる。これにより、自由に、金型を要することなく、且つ立体的に、減圧による発泡成形が行われ、製品形状、サイズ精度、気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品が得られる。また、気泡の核形成速度が高速となるため、形成される微細孔発泡材の気泡がより小さくなり、孔密度もより高密度となる。よって、性能にいっそう優れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法であって、超臨界流体搬送システム、立体発泡システム、予熱システムを含み、超臨界流体搬送システムは、超臨界CO2又は超臨界N2搬送システムか、又は、N2/CO2混合ガス搬送システムであり、立体発泡システムは、立体発泡容器、温度制御装置、圧力制御装置、圧力開放装置を含み、前記超臨界流体搬送システムは立体発泡システムに接続され、前記予熱システムは、予熱容器、加熱循環装置、温度制御装置を含み、
一段階成形法を用い、高温且つ中圧の超臨界流体でポリマーを膨潤及び浸漬することにより、自由に、金型を要することなく、且つ立体的に、減圧によって直に立体発泡容器で発泡成形し、具体的な操作手順として、
ポリマー原料を加圧成形して発泡プリフォームを取得し、発泡プリフォームを予熱システム内で予熱して予熱温度まで昇温してから、立体発泡容器に発泡プリフォームを投入して立体発泡容器の密封カバーを閉止し、吸気弁を開放して超臨界流体を導入してから、目標の温度及び圧力となるよう調節すると、超臨界流体がポリマーを30〜120min膨潤させながら拡散し、続いて、圧力開放装置を開放することで減圧により発泡させれば、製品形状、サイズ精度、気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品が得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリスチロール、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、エチレン/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマーのいずれか1つ又は組成物から選択されるが、これらに限らないことを特徴とする請求項1に記載の超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法。
【請求項3】
無定形ポリマーをポリマーとして選択し、前記目標温度はポリマーの融解温度よりも1.0〜50℃低く、圧力は5〜15MPaであることを特徴とする請求項2に記載の超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法。
【請求項4】
結晶性ポリマーをポリマーとして選択し、前記目標温度はポリマーの融点温度よりも1.0〜50℃低く、圧力は5〜15MPaであることを特徴とする請求項2に記載の超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法。
【請求項5】
前記立体発泡容器と圧力開放装置の減圧速度は、1〜1000MPa/sであることを特徴とする請求項3又は4に記載の超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法。
【請求項6】
前記超臨界CO2搬送システムは、液体CO2タンク、CO2増圧ステーションを含み、前記超臨界N2搬送システムは、液体N2タンク、N2増圧ステーションを含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法。
【請求項7】
前記超臨界CO2搬送システムは、N2/CO2混合ガス搬送システムであり、N2の体積パーセンテージは50〜99%であることを特徴とする請求項1に記載の超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法。
【請求項8】
ポリマーの微細孔発泡製品の体積膨張倍率は2〜60倍、平均孔径は0.1〜100μm、孔密度は1.0×106〜1.0×1015個/cm3であることを特徴とする請求項3又は4に記載の超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の発泡・加工分野に関し、特に、熱可塑性プラスチック、熱可塑性エラストマー又はゴム材料等の超臨界流体による立体構造発泡製品に適用可能な、超臨界流体を物理的発泡剤として金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界流体を物理的発泡剤としてポリマーの発泡成形に利用する方法には、主として、連続押出発泡、射出発泡、間欠的オートクレーブ発泡法がある。連続押出成形は、一定の断面形状を有する発泡材を連続的に押し出す場合に適しており、製品の発泡倍率は高いものの、形状が単一的である。一方、射出発泡成形は形状の複雑な発泡製品を射出可能であるが、製品の発泡倍率が小さい。なお、これらの方法は、いずれも生産効率には優れている。また、間歇式オートクレーブ発泡法は、ポリマーのビーズ発泡に多用される。しかし、発泡ビーズは、更に発泡ビーズ成形デバイスを用いて各種形状の発泡製品に成形せねばならないため、生産効率に劣り、生産サイクルが長くなるほか、設備投資も嵩む。
【0003】
特許文献1は、超臨界モールド発泡によりポリマーの微細孔発泡材を製造する方法を開示している。当該方法では、成形機の発泡金型を昇温させ、発泡温度に達してからポリマーを金型に投入する。次に、成形機を型閉じし、金型を密封してから金型内に超臨界流体を導入すると、超臨界流体がポリマーを膨潤させながら拡散する。その後、成形機を型開することで減圧により発泡し、ポリマー微細孔発泡材が得られる。
【0004】
特許文献2は、超臨界流体によりポリマーのモールド発泡を補助する装置を開示している。当該装置は、超臨界流体搬送システム、金型システム、温度測定装置、圧力測定装置、圧力開放装置、表示・制御システム等を含む。超臨界流体搬送システムは金型システムに接続されており、温度測定装置、圧力測定装置、圧力開放装置はそれぞれ金型システムに接続されている。金型システムは、成形機における上下の加熱プレートで加熱を行う。そして、一定の温度及び超臨界流体の圧力の作用下で一定時間が経過すると、超臨界流体の非常に強力な浸透力と拡散力によって、超臨界流体は徐々にポリマー基体へと拡散する。その後、急速に金型内の圧力を開放することで、一定形状の発泡材が得られる。当該装置は、自由発泡にも制御可能発泡にも適用可能である。
【0005】
上述した超臨界流体を物理的発泡剤としてポリマーのモールド発泡製品を成形する方法では、一定規格の発泡ボードやシート材、及び単純形状の製品しか生産できず、形状の複雑な発泡製品について大規模な工業生産を実現することは難しい。
【0006】
特許文献3は、3次元発泡製品を製造するための方法として、不均一形状の3次元発泡製品を製造する方法を開示している。当該方法では、二段階の窒素ガスによるオートクレーブ方法と、少なくとも1つのサイズについて不均一な横断面を有するプリフォームを用いる。当該特許では二段階法を用いており、第1のステップでプリフォームを高圧容器内で高圧浸漬してから、第2のステップで冷却し、低圧容器内で膨張させる。工程の流れとしては、射出成形したプリフォームをガンマ線により架橋する。そして、架橋した射出成形部材を高圧オートクレーブ内のトレーに載置し、400バール及び165℃下で、ポリマーが完全にガスで飽和されるまで窒素ガスにより高圧浸漬する。次に、圧力を170バールまで低下させ、気泡構造が核を形成してから、オートクレーブを環境温度まで冷却する。環境温度に達すると残存圧力を開放し、高圧オートクレーブからガスを含有する射出成形部材を取り出す。また、第2のステップでは、膨張した射出成形部材を−40℃のフリーザー内に一晩置くことで、膨張前のあらゆるガス損失を最小化する。そして、翌日、射出成形部材を室温に戻してから、低圧オートクレーブ内のトレーに載置する。その後、窒素ガスの圧力を14バールとし、発泡前の射出成形部材を167℃の均一温度まで加熱したあと、圧力を大気圧まで開放することで成形部材を膨張させ、3次元発泡製品を形成する。しかし、この成形方法には次のような欠点がある。まず、工程が複雑である。また、発泡材を放射線により架橋するため、材料を回収してリサイクルすることができず、環境に配慮していない。また、使用する成形圧力が高圧のため、圧力装置に対する要求も高くなる。且つ、浸漬温度が軟化点に近く、低温のため、プリフォームをガスに浸漬して溶解、拡散、平衡するために長い時間を要する。更に、二段階法で生産するため生産サイクルが冗長となり、生産効率に劣るほか、発泡製品の加工コストが嵩む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第102167840号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第104097288号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第107073767号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した既存の課題に対し、本発明は、従来技術に存在する形状が複雑で多様な発泡製品の生産には対応できないとの点を解消すべく、超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体発泡製品を製造する方法を提供する。当該方法は、一段階成形法を用いることを特徴とする。ポリマーの発泡プリフォームは事前に架橋することなく、発泡容器内で直に浸漬して発泡させるため、成形金型が不要である。立体発泡容器の動作中は、常にポリマーの融解温度又は融点温度よりも1.0〜50℃低い目標温度に維持するとともに、圧力を15MPa未満とする。これによれば、浸漬・発泡時間がわずか30〜120分でよいため、生産サイクルが極めて短くなる。また、生産される製品は立体発泡構造で、形状を制御可能であるとともに、サイズが的確である。当該方法は、熱可塑性プラスチック、熱可塑性エラストマー又はゴム材料等の超臨界流体による立体発泡製品に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を実現するために、本発明は以下の技術方案を採用する。
【0010】
超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法であって、超臨界流体搬送システム、立体発泡システム、予熱システムを含み、超臨界流体搬送システムは、超臨界CO
2又は超臨界N
2搬送システムか、又は、N
2/CO
2混合ガス搬送システムである。立体発泡システムは、立体発泡容器、温度制御装置、圧力制御装置、圧力開放装置を含み、前記超臨界流体搬送システムは立体発泡システムに接続される。前記予熱システムは、予熱容器、加熱循環装置、温度制御装置を含む。また、一段階成形法を用い、高温且つ中圧の超臨界流体でポリマーを膨潤及び浸漬することにより、自由に、金型を要することなく、且つ立体的に、減圧によって直に立体発泡容器で発泡成形する。具体的な操作手順としては、ポリマー原料を加圧成形して発泡プリフォームを取得する。次に、発泡プリフォームを予熱システム内で予熱し、予熱温度まで昇温してから、立体発泡容器に発泡プリフォームを投入する。そして、立体発泡容器の密封カバーを閉止し、吸気弁を開放して超臨界流体を導入してから、目標の温度及び圧力となるよう調節する。超臨界流体は、ポリマーを30〜120min膨潤させながら拡散する。そして、圧力開放装置を開放することで減圧により発泡させれば、製品形状、サイズ精度、気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品が得られる。
【0011】
好ましくは、前記ポリマーは、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリスチロール、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、エチレン/酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマーのいずれか1つ又は組成物から選択されるが、これらに限らない。
【0012】
好ましくは、無定形ポリマーをポリマーとして選択する。前記目標温度はポリマーの融解温度よりも1.0〜50℃低く、圧力は5〜15MPaである。
【0013】
好ましくは、結晶性ポリマーをポリマーとして選択する。前記目標温度はポリマーの融点温度よりも1.0〜50℃低く、圧力は5〜15MPaである。
【0014】
好ましくは、前記立体発泡容器と圧力開放装置の減圧速度は1〜1000MPa/sである。
【0015】
好ましくは、前記超臨界CO
2搬送システムは、液体CO
2タンク、CO
2増圧ステーションを含み、前記超臨界N
2搬送システムは、液体N
2タンク、N
2増圧ステーションを含む。
【0016】
好ましくは、前記超臨界CO
2搬送システムは、N
2/CO
2混合ガス搬送システムであり、N
2の体積パーセンテージは50〜99%である。
【0017】
好ましくは、ポリマーの微細孔発泡製品の体積膨張倍率は2〜60倍、平均孔径は0.1〜100μm、孔密度は1.0×10
6〜1.0×10
15個/cm
3である。
【0018】
まず、一般的なプラスチックの加工・成形手段によって、ポリマーの発泡成形に用いられるプリフォームを形成する。発泡プリフォームは、発泡後に各方向のサイズ精度を満たし得る。加工対象の発泡プリフォームは予熱容器内で予熱する。予熱温度はポリマーの軟化温度又は融点温度以下の領域とする。予熱温度に達すると、プリフォームをキャリッジとともに立体発泡容器に送り、立体発泡容器の密封カバーを閉じる。立体発泡容器の動作中は、常にポリマーの融解温度又は融点温度よりも1.0〜50℃低い目標温度に維持する。次に、吸気弁を開放し、超臨界流体を導入すると、目標温度及び動作圧力5〜15MPa下において超臨界流体がポリマーを30〜120分間膨潤させながら拡散する。そして、圧力開放装置を開放し、排気することで減圧により発泡させれば、製品形状、サイズ精度、気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品が得られる。立体発泡容器内のガスを排出し終えたあと、立体発泡容器の密封カバーを素早く開放し、製品を立体発泡容器から取り出して次の生産サイクルに進む。
【0019】
本発明は、立体発泡容器に超臨界流体を導入することで微細孔発泡を実現する。立体発泡容器の温度制御システムは、容器内の温度制御を実現可能である。そのため、立体発泡容器内で超臨界流体状態を実現し、ポリマーを高温・高圧の超臨界流体環境に置くことで、ポリマー基体に対する超臨界流体の溶解、拡散、平衡を達成可能となる。そして、急速に圧力を低下させることで、ポリマー基体内の気泡が核形成、成長及び発泡して定型化する。また、圧力、温度及び減圧速度を正確に制御することで、立体発泡構造であるとともに形状を制御可能であり、且つサイズが正確な微細孔発泡製品が得られる。
【発明の効果】
【0020】
上記の技術方案を用いることから、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0021】
1.立体発泡容器内で一段階法を用い、高温・中圧の超臨界流体によりポリマーを膨潤させることで、自由に、金型を要することなく、立体的に減圧による発泡成形がなされ、立体発泡製品が得られる。
【0022】
2.放射線による発泡材の架橋が不要なため、材料を回収してリサイクルすることが可能である。
【0023】
3.使用する成形圧力が低く、且つ、ガスによるプリフォームの浸漬温度が融解又は融点温度近くと高温となる。よって、プリフォームをガスに浸漬して溶解、拡散、平衡する際に要する時間が短くなり、成形サイクルが大幅に短縮される。
【0024】
4.従来技術では単一形状の微細孔発泡製品しか製造できないとの限界を解消し、立体発泡構造であるとともに形状を制御可能であり、且つサイズが正確な微細孔発泡製品を製造可能となる。
【0025】
5.立体発泡容器を開放する際の減圧速度が速く、気泡の核形成速度も高速となるため、形成される微細孔発泡材の気泡がより小さくなり、孔密度もより高密度となる。よって、性能にいっそう優れる。
【0026】
6.立体発泡容器には発泡対象製品を複数層配置可能なため、大規模な工業生産に適している。
【0027】
本発明の実施例の技術方案につき明確に説明すべく、以下に、実施例の記載に要する図面について簡単に説明する。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は本発明の実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要することなく、これらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明における超臨界流体搬送システム、立体発泡システムの構造の流れを示す図である。
【
図2】
図2は、本発明における予熱システムを示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1におけるPLA発泡製品の電子顕微鏡画像である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2におけるPOP COHERE 8102発泡製品の電子顕微鏡画像である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例3におけるTPU 58315発泡製品の電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施例の目的、技術方案及び利点をより明確とすべく、以下に、本発明の実施例を組み合わせて本発明の実施例における技術方案について明瞭簡潔に述べる。なお、本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労働を要することなく取得するその他全ての実施例は、いずれも本発明による保護の範囲に属する。
【0030】
超臨界流体により金型を要することなくポリマーの立体構造発泡製品を製造する方法は、超臨界流体搬送システム、立体発泡システム、予熱システムを含む。超臨界流体搬送システムは、超臨界CO
2又は超臨界N
2搬送システムか、又は、N
2/CO
2混合ガス搬送システムである。立体発泡システムは、立体発泡容器、温度制御装置、圧力制御装置、圧力開放装置を含む。温度制御装置、圧力制御装置、圧力開放装置は、立体発泡容器にそれぞれ接続される。また、前記超臨界流体搬送システムは立体発泡システムに接続される。前記予熱システムは、予熱容器、加熱循環装置、温度制御装置を含む。
【0031】
具体的な操作手順としては、ポリマー原料を加圧成形して発泡プリフォームを取得する。次に、発泡プリフォームを予熱システム内で予熱し、ポリマーの軟化温度又は融点温度以下30〜50℃の領域まで昇温してから、立体発泡容器に発泡プリフォームを投入する。そして、立体発泡容器の密封カバーを閉止し、吸気弁を開放して超臨界流体を導入してから、目標の温度及び圧力となるよう調節する。超臨界流体は、ポリマーを30〜120min膨潤させながら拡散する。そして、圧力開放装置を開放することで減圧により発泡させれば、製品形状、サイズ精度、気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品が得られる。
【実施例1】
【0032】
数平均分子量が10万、融点が120℃のポリ乳酸粒子を射出成形機の金型で射出成形し、発泡対象のポリ乳酸異形プリフォームを形成した。次に、加工・発泡対象のポリ乳酸異形プリフォームを予熱容器内で予熱した。予熱温度は、ポリ乳酸の融点温度以下105℃の領域とした。予熱温度に達すると、プリフォームをキャリッジとともに立体発泡容器に送り、立体発泡容器の密封カバーを閉じた。立体発泡容器の動作中は、常に目標温度の125℃に維持した。続いて、吸気弁を開放して超臨界流体を導入した。超臨界二酸化炭素と超臨界窒素ガスの混合比率は30:70とした。また、目標温度下において、立体発泡容器の動作圧力を10MPaとし、超臨界流体でポリマーを80min膨潤させながら超臨界流体を拡散させた。そして、圧力開放装置を開放して排気し、減圧により発泡させた。立体発泡容器と圧力開放装置の減圧速度は5MPa/sとした。これにより、製品形状と気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品を取得した。体積の膨張倍率は14倍であった。ポリマーの重量を100部として計算すると、拡散・平衡後にポリマー内に溶解した超臨界流体の含有量は15.0部であった。また、走査電子顕微鏡で内部の気泡形態を分析したところ、平均孔径は6.3μmと測定され、気泡密度は3.8×10
9個/cm
3と算出された。ポリ乳酸異形プリフォームの膨張は全ての方向においてほぼ均一であり、線形膨張率は2.33±0.15であった。最終的に、発泡密度90kg/m
3の製品が得られた。
【実施例2】
【0033】
密度902kg/m
3、融点98℃のポリオレフィンプラスチックPOP COHERE 8102を射出成形機の金型で射出成形し、発泡対象のポリオレフィンプラスチック異形プリフォームを形成した。次に、加工・発泡対象のポリオレフィンプラスチック異形プリフォームを予熱容器内で予熱した。予熱温度は、融点温度以下80℃の領域とした。予熱温度に達すると、プリフォームをキャリッジとともに立体発泡容器に送り、立体発泡容器の密封カバーを閉じた。立体発泡容器の動作中は、常に目標温度の100℃に維持した。続いて、吸気弁を開放して超臨界流体を導入した。超臨界二酸化炭素と超臨界窒素ガスの混合比率は20:80とした。また、目標温度下において、立体発泡容器の動作圧力を12MPaとし、超臨界流体でポリマーを100min膨潤させながら超臨界流体を拡散させた。そして、圧力開放装置を開放して排気し、減圧により発泡させた。立体発泡容器と圧力開放装置の減圧速度は200MPa/sとした。これにより、製品形状と気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品を取得した。体積の膨張倍率は20倍であった。ポリマーの重量を100部として計算すると、拡散・平衡後にポリマー内に溶解した超臨界流体の含有量は18.0部であった。また、走査電子顕微鏡で内部の気泡形態を分析したところ、平均孔径は32.5μmと測定され、気泡密度は5.2×10
8個/cm
3と算出された。ポリオレフィンプラスチック異形プリフォームの膨張は、全ての方向においてほぼ均一であり、線形膨張率は2.62±0.15であった。最終的に、発泡密度45kg/m
3の製品が得られた。
【実施例3】
【0034】
密度1120kg/m
3、融解温度135℃のTPU 58315を射出成形機の金型で射出成形し、発泡対象のTPU異形プリフォームを形成した。次に、加工・発泡対象のTPU異形プリフォームを予熱容器内で予熱した。予熱温度は融点温度以下120℃の領域とした。予熱温度に達すると、プリフォームをキャリッジとともに立体発泡容器に送り、立体発泡容器の密封カバーを閉じた。立体発泡容器の動作中は、常に目標温度の140℃に維持した。続いて、吸気弁を開放して超臨界流体を導入した。超臨界二酸化炭素と超臨界窒素ガスの混合比率は50:50とした。また、目標温度下において、立体発泡容器の動作圧力を13MPaとし、超臨界流体でポリマーを90min膨潤させながら超臨界流体を拡散させた。そして、圧力開放装置を開放して排気し、減圧により発泡させた。立体発泡容器と圧力開放装置の減圧速度は60MPa/sとした。立体発泡容器は、圧力開放装置により容器内の超臨界流体の圧力を2MPaまで減圧したあと、大気圧まで減圧してから密封カバーを開放した。これにより、製品形状と気泡が緻密であり、且つ製品密度を制御可能なポリマーの微細孔発泡製品を取得した。体積の膨張倍率は11倍であった。ポリマーの重量を100部として計算すると、拡散・平衡後にポリマー内に溶解した超臨界流体の含有量は12.0部であった。また、走査電子顕微鏡で内部の気泡形態を分析したところ、平均孔径は72μmと測定され、気泡密度は4.6×10
7個/cm
3と算出された。TPU異形プリフォームの膨張は、全ての方向においてほぼ均一であり、線形膨張率は2.22±0.15であった。最終的に、発泡密度101kg/m
3の製品が得られた。
【0035】
以上の実施例は本発明の技術方案を説明するためのものにすぎず、制限するものではない。なお、上記の実施例を参照して本発明につき詳細に説明したが、当業者であれば理解するように、上記の各実施例で記載した技術方案は変形してもよいし、一部の技術的特徴につき等価の置き換えを行ってもよい。且つ、これらの変形又は置き換えによって、対応する技術方案の本質が本発明の各実施例における技術方案の精神及び範囲を逸脱することはない。
【0036】
本明細書の記載において、「一の実施例」、「例」、「具体例」等の用語を参照する記載は、当該実施例又は例で記載する具体的特徴、構造、材料又は特性が本発明における少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを示す。本明細書において、上記用語に関する概略的記載は、必ずしも同一の実施例又は例を示すとは限らない。且つ、記載した具体的特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施例或いは例において適切に組み合わせ可能である。
【0037】
以上で開示した本発明の好ましい実施例は、本発明を詳述するためのものにすぎない。好ましい実施例については、あらゆる詳細事項を完全に記載したわけではなく、本発明を具体的実施形態に限るとの意図でもない。また、言うまでもなく、本明細書の内容に基づいて、多くの変形及び変更が可能である。本明細書では上記の実施例を選択して具体的に記載したが、これらは本発明の原理をよりしっかりと理解し、実際に応用するためのものである。これにより、当業者は本発明をしっかりと理解し、利用可能となる。本発明は、特許請求の範囲とその全ての範囲、及び等価物によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0038】
1 超臨界流体搬送システム
2 液体N
2タンク
3 N
2増圧ステーション
4 液体CO
2タンク
5 CO
2増圧ステーション
6 吸気弁
7 立体発泡システム
8 圧力制御装置
9 温度制御装置
10 圧力開放装置
11 消音器
12 排気弁
13 予熱システム
14 温度制御装置
15 加熱循環装置
【国際調査報告】