(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本開示は、高レベルのペイロードが担持された、改良された超粒子及びその製造方法に関する。かかる超粒子は、広範な治療用途において、例えば、細胞の増殖または生存を向上させる及び/または疾患を治療するために使用することができる。
少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10の超粒子を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
前記超粒子が、ナノ粒子及びアルギン酸またはその多糖誘導体を含む組成物をジカチオン水溶液中にエレクトロスプレーすることによって製造される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
対象における治療用ペイロードの持続的送達が望ましい疾病の治療方法であって、前記対象に、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
全般的な技法及び選択された用語の定義
特に別段の定義がなされない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、(例えば、生理学、臨床研究、分子生物学、高表面積分子、エレクトロスプレー、生化学)の分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を持つものと解釈される。
【0027】
別段の指示がない限り、本開示において利用される技法は、当業者に周知の標準的な手順である。かかる技法は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (editors), and F.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience (1988, including all updates until present), Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988), and J.E. Coligan et al. (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(今日に至るまでの全ての改訂版を含む)などの出所の文献の全体を通して記載及び説明される。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる、単数形の用語及び単数形の「a」、「an」、「the」は、例えば、内容が明らかに別段を指示する場合を除いて、複数の指示対象を任意選択で包含する。したがって、例えば、「超粒子」への言及は任意選択で複数の超粒子を包含する。
【0029】
本明細書では、用語「約」とは、別段の明記がない限り、指定された値の±10%、より好ましくは±5%、より好ましくは±1%をいう。
【0030】
用語「及び/または」、例えば「X及び/またはY」とは、「X及びY」または「XもしくはY」のいずれかを意味すると解されるべきものであり、両方の意味またはいずれかの意味に対して明示的にサポートするものと解釈されるべきものである。
【0031】
本明細書全体を通して、語「含む(comprise)」、または「含む(comprises」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、記載された要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群を包含することを意味するが、如何なる他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群も排除することは意味しないと解釈されるべきものである。
【0032】
本明細書では、用語「治療」とは、臨床病理の過程の間に、治療を受ける個体または細胞の自然の経過を変化させるように設計された臨床的介入をいう。例示的な治療の所望の効果としては、治療を受ける障害に伴う症状の軽減が挙げられる。難聴の治療の文脈においては、治療の所望の効果としては、難聴の段階の低下及び難聴の改善または緩和が挙げられる。例えば、障害に伴う1または複数の症状が軽減または除去される場合、当該の個体は「治療が成功した」ということになる。
【0033】
「治療有効量」とは、特定の障害の測定可能な改善を実現するのに要する少なくとも最小量をいう。治療有効量としては、対象の障害の測定可能な改善を実現するのに要する少なくとも最小量も挙げることができる。治療有効量は1回または複数回の投与で与えることができる。上記治療有効量は、治療を受けている障害の重篤度に応じて、また治療を受けている対象の体重、年齢、人種的背景、性別、健康、及び/または身体の状態によっても変化し得る。一般的には、上記有効量は、医師による慣用的な試行及び実験を通じて決定することができる比較的広い範囲(例えば「投与量」範囲)内に収まることとなる。上記治療有効量は、単回投与で、または治療期間にわたって1回または数回繰り返される投薬で投与することができる。
【0034】
ペイロード
本開示によれば、超粒子は様々なペイロードを含むことができる。上記「ペイロード」は、障害の治療に有用な任意の薬剤であってよい。薬剤の例としては、ポリヌクレオチド、抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、抗体薬物コンジュゲート、タンパク質、生物学的に活性なタンパク質、融合タンパク質、組換えタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、合成ポリペプチド、ワクチン、治療用血清、ウイルス、ポリヌクレオチド、幹細胞などの細胞、またはそれらの一部などの生物学的産物、ならびに小分子が挙げられる。
【0035】
例示的なウイルスペイロードとしては、適宜に改変されたレトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)などの組換え形態、ならびに自己相補型AAV(scAAV)及び非組み込み(non−integrating)AAVなどのそれらの誘導体を挙げることができる。他の例示的なウイルス治療用ペイロードとしては、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レンチウイルス、ワクチン、及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)を挙げることができる。例えば、上記ウイルス治療用ペイロードとしてはAAVを挙げることができる。様々なAAV血清型が公知であり、好適なウイルスペイロードである可能性がある。一例において、上記AAVは血清型2である。別の例において、上記AAVは血清型1である。他の例において、上記AAVは血清型3、4、7、8、9、10、11、12、または13である。
【0036】
一例において、上記小分子は神経伝達物質である。本開示の文脈において、用語「神経伝達物質」は、1の細胞から別の細胞に化学シナプスを挟んで信号(複数可)を伝達する物質を指すために用いられる。一般に、神経伝達物質は、1のニューロンから別のニューロン、筋細胞、腺細胞などの標的細胞に化学シナプスを挟んで信号(複数可)を伝達する。別の例において、上記小分子は受容体アゴニストである。本開示の文脈において、用語「アゴニスト」は、受容体と結合したときに生理学的応答を開始する物質を指すために用いられる。別の例において、上記小分子は受容体アンタゴニストである。本開示の文脈において、用語「アンタゴニスト」は、受容体の生理学的作用を妨害または抑制する物質を指すために用いられる。
【0037】
例示的なポリヌクレオチドとしては、アンチセンスポリヌクレオチド、二本鎖DNA(dsDNA)、または二本鎖RNA(dsRNA)が挙げられる。一例において、上記dsDNAまたはdsRNAはアプタマーである。別の例において、上記dsRNAはsiRNA、miRNA、またはshRNAである。
【0038】
例示的な抗体及びそれらのフラグメントとしては、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、または単一ドメイン抗体が挙げられる。一例において、上記抗体は、二重特異性であってもよく、抗体−薬物コンジュゲート、またはバイオ後続品抗体であってもよい。他の例示的なポリペプチドとしては、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、及び血液凝固因子が挙げられる。一例において、上記ポリペプチドは酵素である。例示的な酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、アスパラギナーゼ、リポタマーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、コラゲナーゼ、グルタミナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ストレプトキナーゼ、ウリカーゼ、ウロキナーゼ、またはプログラマブル(programmable)ヌクレアーゼなどのヌクレアーゼが挙げられる。一例において、上記酵素はDNAメチルトランスフェラーゼであってもよい。一例において、上記酵素は、遺伝子修飾を遺伝子またはその調節領域に導入することを目的とするプログラマブルヌクレアーゼであってもよい。例えば、上記プログラマブルヌクレアーゼは、RNA誘導型遺伝子操作ヌクレアーゼ(RGEN)であってもよい。一例において、上記RGENは古細菌ゲノム由来であり、またはその組換えバージョンであってもよい。別の例において、上記RGENは細菌ゲノム由来であってもよく、またはその組換えバージョンである。別の例において、上記RGENはType I(CRISPR)−cas(CRISPR−associated)システム由来である。別の例において、上記RGENはType II(CRISPR)−cas(CRISPR−associated)システム由来である。別の例において、上記RGENはType III(CRISPR)−cas(CRISPR−associated)システム由来である。一例において、上記ヌクレアーゼはclass I RGENまたはclass II RGENに由来する。
【0039】
別の例において、上記治療用ペイロードは、DNAメチル化阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、またはヒストンデアセチラーゼ阻害剤である。
【0040】
別の例において、上記治療用ペイロードは、対象において免疫応答を刺激する抗原であってもよい。例示的な抗原としては、タンパク質、ペプチド、多糖もしくはオリゴ糖(遊離またはタンパク質担体に結合)、またはそれらの混合物が挙げられる。他の例示的な抗原としては、細胞もしくはそれらの一部、またはウイルス粒子もしくはその一部が挙げられる。
【0041】
一例において、上記治療用ペイロードは抗腫瘍薬である。
【0042】
他の例示的な治療用ペイロードとしては、内耳における膜受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストが挙げられる。かかる治療用ペイロードは神経伝達を調節する可能性がある。別の例において、上記治療用ペイロードは、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、もしくは多発性硬化症などの1種または複数種の神経障害の治療に有用な神経学的薬剤である。
【0043】
一例において、上記ペイロードは「神経栄養因子」である。本開示の文脈において、用語「神経栄養因子」は、聴覚系由来の細胞を含む任意の細胞の増殖または生存能力を亢進する分子を指すために用いられる。例えば、本開示に含まれる神経栄養因子は、内耳、中耳、もしくは前庭系に位置する聴覚系由来の細胞または該細胞のシナプス結合の増殖または生存を亢進することができる。例示的な細胞としては、らせん神経節ニューロン(SGN)、内耳及び外耳有毛細胞を含む有毛細胞、蝸牛グリア細胞、及びシュワン細胞が挙げられる。例示的なシナプス結合としては、有毛細胞間、有毛細胞と上記で議論したSGNまたは他のニューロンとの間の接続が挙げられる。他の例としては、ローゼンタール管中の神経細胞体もしくはそれらのシナプス結合、上中部蝸牛領域中のニューロンもしくはシナプス結合、及び/または骨らせん板中の神経線維が挙げられる。
【0044】
例示的な神経栄養因子としては、聴覚系由来の細胞及び/またはそれらのシナプス結合の生存を直接的または間接的に亢進するための公知の治療上の効能を有する上述の薬剤を挙げることができる。
【0045】
一例において、上記神経栄養因子は神経栄養ペプチドである。例示的な神経栄養ペプチドとしては、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、毛様体神経栄養因子(CNTF)などのCNTFファミリーのメンバー、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン−6(TL−6)、グリア成熟因子(GMF)、インスリン成長因子−1(IGF−1)、ニューレグリン1、ニューレグリン2、ニューレグリン3、及びニューレグリン4、血管内皮成長因子(VEGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)、及びペルセフィン(PSPN)などのGDNFファミリーのメンバー、Al、A2、A3、A4、A5、B1、B2、及びB3などのエフリン、インスリン成長因子−1(IGF−1)、ならびにIL−11などのインターロイキンが挙げられる。
【0046】
一例において、上記神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、及びIL−11からなる群より選択される。
【0047】
らせん神経節ニューロンの変性の原因の1つは、ニューロトロフィンの内因性供給の減損である。したがって、一例において、上記神経栄養因子はニューロトロフィンである。本開示の文脈において、用語「ニューロトロフィン」とは、ニューロン及び/もしくはそれらのシナプス結合の生存、発生、ならびに/または機能を誘導するタンパク質を指すために用いられる。例示的なニューロトロフィンは上述しており、BDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、及びニューロトロフィン−4が挙げられる。したがって、一例において、上記超粒子はBDNFを含む。別の例において、上記超粒子は神経成長因子を含む。別の例において、上記超粒子はニューロトロフィン−3を含む。別の例において、上記超粒子はニューロトロフィン−4を含む。一例において、超粒子は、少なくとも2種の異なるニューロトロフィンを含んでいてもよい。他の例において、超粒子は少なくとも3種または4種の異なるニューロトロフィンを含んでいてもよい。
【0048】
複数の異なる治療用ペイロードを含む超粒子を投与することによって、治療上の効能が改善される場合がある。したがって、一例において、超粒子は、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種の異なる治療用ペイロードを含んでいてもよい。
【0049】
例えば、超粒子は、少なくとも2種の異なる神経栄養因子を含んでいてもよい。他の例において、超粒子は、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の異なる神経栄養因子を含んでいてもよい。これらの例において、ニューロトロフィンなどの神経栄養因子の様々な組み合わせが企図される。神経栄養因子の例示的な組み合わせとしては、BDNF及び神経成長因子、BDNF及びニューロロフィン−3、BDNF及びニューロトロフィン−4、BDNF及びCNTF、BDNF及びGDNF、BDNF及びIL−11、ニューロトロフィン−3及びニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−3及びCNTF、ニューロトロフィン−3及びCNTF、ニューロトロフィン−3及びGDNF、ニューロトロフィン−3及びIL−11、ニューロトロフィン−4及びCNTF、ニューロトロフィン−4及びGDNF、ニューロトロフィン−4及びIL−11、CNTF及びGDNF、CNTF及びIL−11、GDNF及びIL−11、BDNF、ニューロトロフィン−3、及びニューロトロフィン−4、BDNF、ニューロトロフィン−3、及びCNTF、BDNF、ニューロトロフィン−3、及びGDNF、BDNF、CNTF、及びGDNF、BDNF、CNTF、及びIL−11、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びCNTF、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びGDNF、ニューロトロフィン−3、CDNF、及びGDNF、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びIL−11、ニューロトロフィン−4、CNTF、及びGDNF、ニューロトロフィン−4、CNTF、及びIL−11、BDNF、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びCNTF、BDNF、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びGDNF、BDNF、ニューロトロフィン−3、CNTF、及びGDNF、BDNF、ニューロトロフィン−4、CNTF、及びGDNF、BDNF、BDNF、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びIL−11、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、CNTF、及びGDNF、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、CNTF、及びIL−11が挙げられる。
【0050】
外科手術及び聴覚機器の移植などの様々な耳への介入は、中耳及び内耳における組織損傷、炎症、及び/または感染などの副作用を引き起こす可能性がある。かかる副作用に対して開始される生物学的反応(複数可)は、聴覚系由来の細胞及び/または該細胞のシナプス結合の増殖または生存能力に対して間接的に影響を与える可能性がある。したがって、一例において、神経栄養因子は組織の修復を支援し、炎症を軽減し、及び/または感染を軽減する。したがって、更なる例示的な神経栄養因子としては、ステロイドまたは抗酸化剤が挙げられる。他の例示的な神経栄養因子としては、抗体または抗トロポミオシン受容体キナーゼ(TrK)B、抗TrKC、もしくはp75ニューロトロフィン受容体と相互作用する結合タンパク質などの他の結合タンパク質が挙げられる。例えば、p75ニューロトロフィン受容体アンタゴニスト。別の例において、神経栄養因子としては核酸が挙げられる。例えば、上記神経栄養因子は、遺伝子治療薬、siRNAまたはmiRNAなどのサイレンシングRNA、目的の核酸を含むDNAプラスミドなどの発現構築物を挙げることができる。一例において、上記神経栄養因子は、オプシン(複数可)をコードする核酸を含む発現構築物である。
【0051】
更なる例示的な神経栄養因子の組み合わせとしては、ステロイド、抗酸化剤、抗体、または核酸と、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の異なる神経栄養因子とが挙げられる。例えば、超粒子は、デキサメタゾンまたはプレドニゾロンなどのステロイドと、BDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びGDNFのいずれか1種または複数種とを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は、オプシンと、BDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、及びGDNFのいずれか1種または複数種とを含む発現ベクターを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は、抗トロポミオシン受容体キナーゼ(TrK)Bまたは抗TrK Cなどの抗体と、BDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、GDNF、及びIL−11のいずれか1種または複数種とを含んでいてもよい。
【0052】
一例において、超粒子は、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の異なる治療用ペイロードであって、少なくとも1種が神経栄養因子である上記治療用ペイロードを含んでいてもよい。例えば、超粒子は、少なくとも3種の異なる治療用ペイロードであって、2種が神経栄養因子である上記治療用ペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は、少なくとも4種の異なる治療用ペイロードであって、3種が神経栄養因子である上記治療用ペイロードを含んでいてもよい。これらの例において、上記治療用ペイロードは聴覚系由来の細胞の増殖または生存能力を亢進する必要はなく、別の治療効果を与えるものであってもよい。例えば、上記治療用ペイロードは、超粒子の投与後に対象の免疫系を抑制してもよい。別の例において、超粒子は、聴覚系由来の細胞またはそれらのシナプス結合の生存を低下させるペイロードと、神経栄養因子(複数可)とを含んでいてもよい。この例において、上記神経栄養因子は、上記治療用ペイロードによって生じる聴覚系由来の細胞またはそれらのシナプス結合の生存の低下を緩和する可能性がある。一例において、超粒子は、シスプラチンまたは関連化合物を含む抗腫瘍薬、トブラマイシンまたは関連化合物などのアミノグリコシドを含む抗生物質、フロセミドなどのループ利尿薬、メトトレキサートなどの代謝拮抗薬、アスピリンなどのサリシラート、または放射性部分と、神経栄養因子(複数可)とを含む。超粒子は、抗生物質と、BDNF、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、GDNF、及びIL−11のいずれか1種または複数種とを含んでいてもよい。
【0053】
投与部位によっては、ペイロードを中耳から内耳または前庭系に拡散させる必要がある場合がある。この拡散は、正円窓または卵円窓を通るペイロードの拡散によって生じさせることができる。したがって、一例において、超粒子は、正円窓または卵円窓を通って内耳及び/または前庭系へのペイロードの拡散を助長する分子(複数可)を含んでいてもよい。
【0054】
一例において、上記ペイロードの等電点は7を超える。別の例において、上記ペイロードの等電点は8を超える。別の例において、上記ペイロードの等電点は9を超える。別の例において、上記ペイロードの等電点は10を超える。別の例において、上記ペイロードの等電点は7〜10である。別の例において、上記ペイロードの等電点は7〜9である。別の例において、上記ペイロードの等電点は8〜10である。別の例において、上記ペイロードの等電点は9〜10である。
【0055】
本開示の文脈において、ペイロードを含む超粒子を、担持超粒子と呼んでもよい。担持超粒子の製造方法は、得られる超粒子に少なくとも1.5μgのペイロードが担持されていることが可能である限り特に限定されない。得られる超粒子が対象の耳に上記ペイロードを送達できることが好ましい。例示的な担持方法がWang et al. (2009) J. Mater. Chem. 19, 6451に総説されており、該方法としてはペイロードの封入及び包括が挙げられる。非限定的な一例において、超粒子を当該ペイロードの水溶液と接触させ、その後一定期間インキュベートすることによって、超粒子に担持することができる。上記ペイロード溶液は、当該超粒子に担持すべき量よりも過剰な量のペイロードを含有していてもよく、インキュベーションは室温で行ってもよい。当該超粒子及びペイロードを含有する溶液を撹拌して、ペイロードの担持量を向上させてもよい。
【0056】
当業者であれば、ペイロードの必要なレベルは、当該ペイロード自体及び本開示に従って治療を受ける適応症によって影響を受ける可能性が高いことを理解しよう。
【0057】
超粒子
本開示の文脈において、用語「超粒子」(「SP」)は、細孔のネットワークを備える凝集粒子を指すために用いられる。上記細孔のネットワークにより、ペイロードを担持するための大きな細孔容積及び表面積を有する超粒子が提供される。大きな細孔容積及び表面積は、それらによって超粒子に担持することができるペイロードの量を高めることが可能になることから有利である。一例において、本開示に係る超粒子は凝集ナノ粒子である。
【0058】
一例において、本開示に係る超粒子は、少なくとも1.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.0μgのペイロードを含む。
【0059】
別の例において、本開示に係る超粒子は、少なくとも2.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.6μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.7μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.7μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.8μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.9μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.0μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.1μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.2μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.3μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.4μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.6μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.7μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.8μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.9μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも4.0μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも4.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも5.0μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも5.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも6.0μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも6.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも7.0μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも7.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも8.0μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも8.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも9.0μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも9.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも10μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも10.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも11μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも11.5μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも12μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも15μgのペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも20μgのペイロードを含む。
【0060】
例えば、超粒子は少なくとも6μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約2.5〜10μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約3〜10μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約4〜10μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜10μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約6〜10μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜15μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜20μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約8〜20μgのペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は、約8〜15μgのペイロードを含んでいてもよい。
【0061】
例えば、超粒子は約6〜8μgのペイロードを含んでいてもよい。
【0062】
一例において、本開示に係る超粒子は、少なくとも1.5μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.0μgの神経栄養因子を含む。
【0063】
別の例において、超粒子は少なくとも2.5μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.0μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.5μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも4.0μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも5.0μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも6.0μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも7.0μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも8.0μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも9.0μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも10μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも10.5μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも11μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも11.5μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも12μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも15μgの神経栄養因子を含む。別の例において、超粒子は少なくとも20μgの神経栄養因子を含む。
【0064】
例えば、超粒子は少なくとも6μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約2.5〜10μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜10μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約6〜10μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。例えば、超粒子は、約6〜8μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜15μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜20μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約8〜20μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約8〜15μgの神経栄養因子を含んでいてもよい。
【0065】
一例において、本開示に係る超粒子は、少なくとも1.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.0μgのニューロトロフィンを含む。
【0066】
別の例において、超粒子は少なくとも2.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも4.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも5.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも6.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも7.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも8.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも9.0μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも10μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも10.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも11μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも11.5μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも12μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも15μgのニューロトロフィンを含む。別の例において、超粒子は少なくとも20μgのニューロトロフィンを含む。
【0067】
例えば、超粒子は少なくとも6μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約2.5〜10μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜10μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約6〜10μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。例えば、超粒子は、約6〜8μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜15μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は、約5〜20μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約8〜20μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約8〜15μgのニューロトロフィンを含んでいてもよい。
【0068】
一例において、本開示に係る超粒子は、少なくとも1.5μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも2.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。
【0069】
別の例において、超粒子は少なくとも2.5μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも3.5μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも4.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも5.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも6.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも7.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも8.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも9.0μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも10μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも10.5μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも11μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも11.5μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも12μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも15μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。別の例において、超粒子は少なくとも20μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含む。
【0070】
例えば、超粒子は少なくとも6μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。
【0071】
別の例において、超粒子は約2.5〜10μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜10μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約6〜10μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。例えば、超粒子は約6〜8μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜20μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約5〜15μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約8〜20μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。別の例において、超粒子は約8〜15μgの、等電点が9〜10であるペイロードを含んでいてもよい。例えば、上記ペイロードは等電点が9〜10であるニューロトロフィンであってもよい。
【0072】
一例において、上述のペイロードを有する超粒子は、アルギン酸ヒドロゲル中で提供されてもよい。
【0073】
本開示の超粒子には上記に例示したペイロードが担持されていてもよく、該超粒子の細孔径は以下に記述する例から選択されてもよい。一例において、超粒子はミクロポーラスである。本開示の文脈において、用語「ミクロポーラス」は、細孔径が約2nm未満である粒子を指すために用いられる。例えば、ミクロポーラス超粒子の細孔径は約0.5nm〜約2nmであってよい。他の例において、ミクロポーラス超粒子の細孔径は、約1nm〜約2nm、約1.5nm〜約2nmであってよい。別の例において、超粒子はメソポーラスである。本開示の文脈において、用語「メソポーラス」は、径が約2nm〜約50nmである細孔を有する粒子を指すために用いられる。例えば、メソポーラス超粒子の細孔径は約2nm〜約50nmであってよい。他の例において、メソポーラス超粒子の細孔径は、約2nm〜約40nm、約2nm〜約30nmである。別の例において、超粒子はマクロポーラスである。本開示の文脈において、用語「マクロポーラス」は、細孔径が約50nmを超える粒子を指すために用いられる。例えば、マクロポーラス超粒子の細孔径は約50nm〜約500nmであってよい。他の例において、マクロポーラス超粒子の細孔径は、約50nm〜約250nm、約50nm〜約150nm、約50nm〜約100nmであってよい。
【0074】
一例において、超粒子はミクロポーラスナノ粒子から構成される。一例において、超粒子は細孔径が約0.5nm〜約2nmであるナノ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、細孔径が約1nm〜約2nm、約1.5nm〜約2nmであるナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子はメソポーラスナノ粒子から構成される。一例において、超粒子は細孔径が約2nm〜約50nmであるナノ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、細孔径が約2nm〜約40nm、約2nm〜約30nmであるナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子はマクロポーラスナノ粒子から構成される。一例において、超粒子は細孔径が約50nm〜約95nmであるナノ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、細孔径が約50nm〜約85nm、約50nm〜約75nm、約50nm〜約65nmであるナノ粒子から構成される。
【0075】
別の例において、超粒子は二峰性細孔構造を有するナノ粒子から構成される。本開示の文脈において、用語「二峰性」は、複数の細孔径、一般により小さな細孔径とより大きな細孔径とを備える粒子を指すために用いられる。例えば、超粒子はメソ孔及びマクロ孔を有するナノ粒子を含んでいてもよい。一例において、かかる超粒子は、2nm〜95nmの範囲の細孔を有するナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、10nm〜95nmの範囲の細孔を有する二峰性ナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、15nm〜95nmの範囲の細孔を有する二峰性ナノ粒子から構成される。
【0076】
他の例において、超粒子は1nm〜200nmの範囲の細孔径を備えていてもよい。他の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約1nm〜約5nmであり、より大きな細孔径が約10nm〜約50nmである二峰性ナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約4nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約40nmである二峰性ナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約3nmであり、より大きな細孔径が約4nm〜約40nmである二峰性ナノ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約10nm〜約50nmであり、より大きな細孔径が約70nm〜約95nmである二峰性ナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約15nm〜約40nmであり、より大きな細孔径が約80nm〜約95nmである二峰性ナノ粒子から構成される。
【0077】
一例において、超粒子はミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子はミクロポーラスミクロ粒子から構成される。一例において、超粒子は細孔径が約0.5nm〜約2nmであるミクロ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、細孔径が約1nm〜約2nm、約1.5nm〜約2nmであるミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子はメソポーラスミクロ粒子から構成される。一例において、超粒子は細孔径が約2nm〜約50nmであるミクロ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、細孔径が約2nm〜約40nm、約2nm〜約30nmであるミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子はマクロポーラスミクロ粒子から構成される。一例において、超粒子は細孔径が約50nm〜約500nmであるミクロ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、細孔径が約50nm〜約250nm、約50nm〜約150nm、約50nm〜約100nmであるミクロ粒子から構成される。
【0078】
別の例において、超粒子は二峰性細孔構造を有するミクロ粒子から構成される。例えば、超粒子はメソ孔及びマクロ孔を有するミクロ粒子を含んでいてもよい。一例において、かかる超粒子は2nm〜500nmの範囲の細孔を有するミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子は10nm〜250nmの範囲の細孔を有する二峰性ミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子は15nm〜150nmの範囲の細孔を有する二峰性ミクロ粒子から構成される。
【0079】
他の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約1nm〜約5nmであり、より大きな細孔径が約10nm〜約50nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約4nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約70nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約3nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約65nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。他の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約10nm〜約30nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約200nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約15nm〜約40nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約150nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、より小さな細孔径が約20nm〜約30nmであり、より大きな細孔径が約100nm〜約120nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。
【0080】
別の例において、超粒子には少なくとも3μgの上述のペイロードが担持され、該超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約4nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約40nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子には少なくとも5μgの上述のペイロードが担持され、該超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約4nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約40nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。
【0081】
別の例において、超粒子には少なくとも8μgの上述のペイロードが担持され、該超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約4nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約40nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。
【0082】
別の例において、超粒子には少なくとも10μgの上述のペイロードが担持され、該超粒子は、より小さな細孔径が約2nm〜約4nmであり、より大きな細孔径が約15nm〜約40nmである二峰性ミクロ粒子から構成される。これらの例において、上記超粒子はアルギン酸ヒドロゲル中で提供されてもよい。
【0083】
別の例において、超粒子はミクロ粒子とナノ粒子とから構成される。この例において、ミクロ粒子及びナノ粒子の細孔径(複数可)は上述の通りであってよい。例えば、超粒子は、二峰性細孔構造を有するミクロ粒子とナノ粒子とから構成されていてもよい。
【0084】
一例において、超粒子の細孔径は実質的に均一であってもよい。別の例において、超粒子は一定ではない細孔径を備える。この例において、細孔径は一定ではなくてよいが、特定の径の範囲内に収まる。例えば、超粒子は主としてメソポーラスであってもよい。別の例において、超粒子は主としてマクロポーラスであってもよい。別の例において、超粒子は、細孔径が実質的に均一なナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、実質的に均一な小さな細孔径と大きな細孔径とを有する二峰性ナノ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、細孔径が実質的に均一なミクロ粒子から構成される。別の例において、超粒子は、実質的に均一な小さな細孔径と大きな細孔径とを有する二峰性ミクロ粒子から構成される。
【0085】
一例において、上述の超粒子は規則的な細孔構造を有していてもよい。これらの超粒子は規則的な3次元の間隔を伴う細孔を有する。別の例において、上述の超粒子は、不規則な細孔構造を有していてもよい。これらの超粒子は不規則な3次元の間隔を伴う細孔を有する。別の例において、超粒子は規則的な細孔構造と不規則な細孔構造の両方の組み合わせを有する。
【0086】
当業者であれば、超粒子の細孔径が、例えば、透過型電子顕微鏡法(TEM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)、及びX線コンピュータ断層撮影法によって測定可能であることを理解しよう。当業者であれば、上記に例示した細孔径を有する超粒子を、それらの三次元構造の最も広い点における幅を測定することにより特定することができる。一例において、最も広い点または細孔は当該超粒子の表面上であってもよい。
【0087】
本開示の超粒子は、それらの粒子間の距離によってキャラクタライズすることができる。一例において、粒子間の平均距離は約80nm〜約400nmの範囲であってもよい。別の例において、コロイド粒子間の平均距離は、約90nm〜約300nm、約100nm〜 の範囲である。
【0088】
一例において、超粒子の細孔は連結している。例えば、超粒子は一連の相互連結した細孔を備えていてもよい。別の例において、超粒子の細孔は連結していない。別の例において、超粒子は、連結した細孔と連結していない細孔の両方の組み合わせを有する。
【0089】
本開示の超粒子は、それらの細孔の容積によってキャラクタライズすることができる。一例において、超粒子の細孔容積は、約0.5mL・g
−1〜約10mL・g
−1の範囲である。別の例において、超粒子の細孔容積は、約0.8mL・g
−1〜約5mL・g
−1、約1mL・g
−1〜約2.5mL・g
−1、約1.5mL・g
−1〜約2mL・g
−1である。
【0090】
本開示の超粒子は、中空コアまたはドーナツ状のコアを有していてもよい。一例において、上記超粒子のコアの内容積は、当該超粒子の全容積の少なくとも約45%、少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%である。例示的な中空コアの超粒子の製造方法としては、US4,468,498に記載のプロセスなどの酸性コアプロセス、及びUS5,157,084及びUS5,521,253に記載のプロセスのようなエステルコアプロセスが挙げられる。
【0091】
本開示の超粒子は、それらの構造の表面積によってキャラクタライズすることができる。一例において、超粒子の表面積は、約500m
2・g
−1〜約1500m
2・g
−1の範囲である。別の例において、超粒子の表面積は、約5500m
2・g
−1〜約1250m
2・g
−1、約600m
2・g
−1〜1000m
2・g
−1、約600m
2・g
−1〜700m
2・g
−1である。一例において、超粒子の表面積は約600m
2・g
−1である。一例において、超粒子の表面積は約620m
2・g
−1である。
【0092】
本開示に係る超粒子は特定のイン・ビトロ放出プロファイルによってキャラクタライズすることができる。一例において、超粒子は少なくとも50日間ペイロードを放出する。一例において、超粒子は少なくとも100日間ペイロードを放出する。一例において、超粒子は少なくとも150日間ペイロードを放出する。
【0093】
別の例において、超粒子はペイロードの初期バーストを放出し、それに続いてペイロードを持続的に放出する。例えば、超粒子は約3〜10日間高レベルのペイロードを放出し、その後30日以上の間持続性放出プロファイルが続く。別の例において、超粒子は約8〜10日間高レベルのペイロードを放出し、その後50日以上の間持続性放出プロファイルが続く。
【0094】
一例において、上記ペイロードの初期バーストは、少なくとも2日の間1.2μg/日である。別の例において、上記ペイロードの初期バーストは、少なくとも3日の間1.3μg/日である。別の例において、上記ペイロードの初期バーストは、2〜4日の間1.4μg/日である。持続性放出プロファイルの例は少なくとも0.04μg/日である。持続性放出プロファイルの別の例は少なくとも0.06μg/日である。持続性放出プロファイルの他の例は少なくとも0.07μg/日及び少なくとも0.1μg/日である。
【0095】
別の例において、超粒子は、少なくとも20日間、少なくとも2μgのペイロードを放出する。別の例において、超粒子は少なくとも30日間、少なくとも2μgのペイロードを放出する。別の例において、超粒子は少なくとも40日間、少なくとも2μgのペイロードを放出する。別の例において、超粒子は少なくとも20日間、少なくとも4μgのペイロードを放出する。別の例において、超粒子は、少なくとも30日間、少なくとも4μgのペイロードを放出する。別の例において、超粒子は、少なくとも40日間、少なくとも4μgのペイロードを放出する。
【0096】
別の例において、超粒子は、少なくとも20日間、少なくとも2μgの神経栄養因子を放出する。別の例において、超粒子は、少なくとも30日間、少なくとも2μgの神経栄養因子を放出する。別の例において、超粒子は、少なくとも40日間、少なくとも2μgの神経栄養因子を放出する。別の例において、超粒子は、少なくとも20日間、少なくとも4μgの神経栄養因子を放出する。別の例において、超粒子は、少なくとも30日間、少なくとも4μgの神経栄養因子を放出する。別の例において、超粒子は、少なくとも40日間、少なくとも4μgの神経栄養因子を放出する。例えば、超粒子は、少なくとも20日間、少なくとも2μgのBDNFを放出する。他の例において、超粒子は、少なくとも40日間、少なくとも2μgのBDNFを放出してもよい。別の例において、超粒子は、少なくとも20日間、少なくとも4μgのBDNFを放出してもよい。別の例において、超粒子は、少なくとも40日間、少なくとも4μgのBDNFを放出してもよい。
【0097】
当業者であれば、様々な方法を用いて、超粒子のイン・ビトロ放出プロファイルを測定することができる。かかる方法の例は実施例7に後述する。例えば、本明細書に開示の超粒子には、PBSなどの溶液中でインキュベートする前に、FITCリゾチームなどの標識ペイロードを担持してもよい。蛍光の間欠的な測定を用いて、経時的に放出されるペイロードのレベル(例えばμg)を測定してもよい。
【0098】
一例において、本開示の超粒子は、径が約1nm〜100nmであるナノ粒子から製造される。別の例において、超粒子は、径が約0.1μm〜100μmであるミクロ粒子から製造される。別の例において、超粒子はナノ粒子とミクロ粒子とから製造される。
【0099】
本開示の超粒子を形成する例示的な粒子としては、有機粒子、無機粒子、金属粒子、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例示的な有機粒子としては、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(エタクリル酸)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリアミド、ポリ−2−ヒドロキシブチラート(PHB)、ゼラチン、ポリカプロラクトン(PCL)、及びポリ(乳酸−共−グリコール酸)(PLGA)などの高分子粒子が挙げられる。例示的な無機粒子としては、重質充填剤すなわち高密度充填剤、顔料、クレー、及びその他の合成粒子などの無機充填剤が挙げられる。他の例示的な無機粒子としては、重晶石;赤鉄鉱;酸化マグネシウム;二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化セリウム、二酸化ジルコニウム、及び二酸化ケイ素を含む無機酸化物などの高密度鉱物が挙げられる。一例において、上記材料は二酸化ケイ素(すなわちシリカ)である。したがって、一例において、超粒子はシリカ超粒子と呼ばれる場合がある。例示的な金属粒子としては、金、銀、及び銅が挙げられる。一例において、超粒子は同一の粒子を含んでいてもよい。例えば、超粒子は実質的にシリカ粒子から構成されてもよい。別の例において、超粒子は異なる粒子、例えばシリカ粒子及びクレー粒子を含んでいてもよい。他の例において、超粒子は、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種の異なる粒子を含んでいてもよい。
【0100】
一例において、超粒子は高分子電解質または高分子電解質材料を含む。かかる超粒子の例はWO2006/037160に開示される。この例において、上記高分子電解質は、正に荷電した高分子電解質である(もしくは正に荷電する能力を有する)か、または負に荷電した高分子電解質である(もしくは負に荷電する能力を有する)か、または正味電荷がゼロである。
【0101】
本開示の超粒子の形状は様々であってもよい。例えば、超粒子は球形であってもよい。例示的な球形としては、球体及び卵形が挙げられる。別の例において、超粒子は非球形の形状である。例示的な非球形としては、ダンベル形、半球、円板、四面体、繊維、球端円柱、及び異形が挙げられる。一例において、超粒子は規則的な構造を有していてもよい。例えば、超粒子は規則的な配列を備えていてもよい。
【0102】
本開示の球形超粒子は、それらの径によってキャラクタライズすることができる。例えば、本開示の超粒子の径は100μmを超える。例えば、本開示の超粒子の径は、少なくとも約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、約550μm、約600μm、約650μm、約700μm、約750μm、約800μm、約850μm、約900μm、約950μm、約1000μmであってもよい。例えば、超粒子の径は約550μmであってもよい。超粒子のこの径は、それによりカニューレを介した内耳への送達が容易になる一方で、高い薬物担持量が可能になることから有利である。他の例において、超粒子の径は、約150μm〜約1000μm、約200μm〜約900μm、約300μm〜約800μmであってもよい。別の例において、超粒子の径は約400μm〜約600μmであってもよい。別の例において、超粒子の径は約450μm〜約550μmであってもよい。別の例において、超粒子の径は約520μm〜約580μmであってもよい。別の例において、超粒子の径は約460μm〜約540μmであってもよい。別の例において、超粒子の径は約470μm〜約530μmであってもよい。別の例において、超粒子の径は約480μm〜約520μmであってもよい。別の例において、超粒子の径は約490μm〜約510μmであってもよい。他の例において、超粒子は、該粒子の三次元構造の最も広い点における幅によってキャラクタライズすることができる。例えば、超粒子の幅は上記に例示した径と一致するものであってよい。
【0103】
別の例において、超粒子表面を、ペイロードの担持量を高めるための官能性部分の付加によって修飾してもよい。任意の数の官能性部分を超粒子の表面に付加してもよく、上記官能性部分は担持されるペイロードを褒めるように選択される。一例において、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)などの部分がシリカ超粒子の表面上にグラフトされる。これにより、ペイロード上に存在するカルボキシル基と相互作用することができるアミン官能基が導入される。別の例において、上記超粒子は、ペイロードの担持量を高める、全体としての正味電荷をもつように修飾される(Tan et al. Adv. Mater. (2012) 24, 3362−3366)。例えば、全体としての正味の負電荷をもつペイロードの担持量が高められるように、超粒子の表面を、全体としての正味の正電荷をもつように修飾してもよい。別の例において、全体としての正味の正電荷をもつペイロードの担持量が高められるように、超粒子の表面が、全体としての正味の負電荷をもつように修飾される。
【0104】
本開示の超粒子は架橋された官能性部分を含んでいてもよい。例えば、機能的部分は化学反応によって架橋されていてもよい。一例において、ポリグリコール酸(PGA)分子は、PGA分子のシスタミンとの化学反応によって架橋される(Tan et al. Adv. Mater. (2012) 24, 3362−3366)。
【0105】
製剤
超粒子は、対象への投与に適した医薬組成物として製剤化されてもよい。例示的な医薬組成物は超粒子を単独で、または薬学的に許容される担体、希釈剤、もしくは賦形剤との組み合わせで提供してもよい。これらの組成物において、超粒子は、治療有効量のペイロードを対象に送達するのに十分な量で提供される。特定の投与経路に応じて、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. N.J. USA, 1991)に記載されるように、当技術分野で公知の様々な許容される担体を使用することができる。
【0106】
例示的な医薬組成物はまた、薬学的に許容される滅菌した水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液、または乳化液、ならびに使用直前に滅菌注射溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末から構成されてもよい。好適な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適宜の混合物、植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用の有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、及び界面活性剤の使用により維持することができる。かかる組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤、または抗菌剤及び抗真菌剤などのアジュバントも含んでいてよい。
【0107】
別の例において、超粒子は徐放システムまたは標的化送達システム中に組み込まれていてもよい。例えば、本発明者らは、本明細書に開示の超粒子にアルギン酸塩ヒドロゲルを加えることにより、当該超粒子からのペイロードの放出が遅延することを確認している。かかる徐放システムとしては、局所投与用のフォーム剤、ゲル剤、滴剤、及び噴霧剤、または注射もしくは注入カニューレ用のデポ剤を挙げることができる。例示的な徐放システムとしては、ポリマーマトリクス、リポソーム、及びミクロスフェアが挙げられる。ポリマーマトリクスとしては、超粒子が多孔性ポリマーコーティングに囲まれているリザーバ型システム(Yang and Pierstorff (2012) JALA. 17, 50−58)及び超粒子がポリマーマトリクス中に包埋されているモノリシックマトリクスシステム(Langer R (1990) Science. 249, 1527−1533)が挙げられる。リポソームは生分解性であり、両親媒性の薬物送達システムであってもよく、リン脂質及びコレステロール用いて製剤化されたものであってよい。ミクロスフェアは、生分解性且つ生体適合性ポリマーを用いて製剤化されたものであってよい。別の例において、上記徐放システムは多糖ベースであってもよい。例えば、超粒子製剤はアニオン性多糖を含んでいてもよい。一例において、上記多糖はアルギン酸またはその誘導体であってもよい。例えば、上記超粒子はアルギン酸塩ヒドロゲルを含んでいてもよい。様々なアルギン酸誘導体が当技術分野において公知である。例としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、及びアルギン酸カルシウムが挙げられる。他の例としては、アルギン酸バリウム及びアルギン酸ストロンチウムが挙げられる。一例において、上記アルギン酸はアルギン酸ナトリウムである。したがって、一例において、本開示は、上述の超粒子とアルギン酸ナトリウムとを含む製剤を包含する。上記アルギン酸は様々な供給源から得ることができる(例えばSigma, FMC Health and Nutrition)。別の例において、上記多糖はグリコサミノグリカンなどの非分岐多糖である。例えば、上記多糖はヒアルロン酸であってもよい。
【0108】
別の例において、超粒子はペイロードの放出を促進する製剤中で提供される。例えば、超粒子は、Pluronic F127(PF127)ベースのヒドロゲルまたはその類似体と共に提供されてもよい。一例において、超粒子はPF127ベースのヒドロゲルと共に提供されてもよい。
【0109】
別の例において、超粒子は、鼓膜、卵円窓または正円窓などの対象の耳内の膜を通る拡散を高める製剤中で提供される。例えば、超粒子製剤は人工外リンパを含んでいてもよい。
【0110】
別の例において、超粒子は、対象に対して適合性であり、対象に対して有害ではない生成物に分解するスキャフォールド内に組み込まれるかまたは包埋される。これらのスキャフォールドは対象に移植される超粒子を収納している。
【0111】
本開示の実施において、様々な異なるスキャフォールドを問題なく用いることができる。例示的なスキャフォールドとしては、生物学的な、分解性のスキャフォールドが挙げられるが、これらに限定はされない。天然の生分解スキャフォールドとしては、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンスキャフォールドが挙げられる。好適なスキャフォールドとしては、ポリグリコール酸スキャフォールド、またはポリ無水物、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの合成ポリマーが挙げられる。
【0112】
治療及び投与
本開示は、本明細書において規定される超粒子を投与することを含む、疾患または障害の治療方法を包含する。したがって、一例において、本開示に係る超粒子を含む組成物は、対象の疾患または障害を治療するのに有効な量で上記対象に投与される。一例において、上記疾患または障害は難聴である。本開示の文脈において、用語「難聴」は、音を検出または処理する対象の能力の低下を指すために用いられる。したがって、難聴への言及は、部分的な聴覚低下または完全な聴覚喪失を含む。
【0113】
一例において、難聴は感音性難聴(SNHL)としてキャラクタライズされる。本開示の文脈において、SNHLは、蝸牛内の繊細な感覚有毛細胞の損傷、または上記細胞のらせん神経節ニューロン(SGN)とのシナプス結合の喪失、または蝸牛のシュワン細胞の機能不全に起因する難聴を指すために用いられる。一例において、上記難聴は老人性難聴としてキャラクタライズされる。別の例において、上記難聴は騒音誘発性である。別の例において、上記難聴は疾患誘発性または遺伝性である。別の例において、上記難聴は、聴覚毒、例えばアミノグリコシドへの曝露により誘発される。
【0114】
一例において、上記対象は哺乳動物である。一例において、上記対象はヒトである。例えば、上記ヒトの対象は成人であってもよい。一例において、上記ヒトの対象は子供である。他の例示的な哺乳動物の対象としては、犬または猫などの愛玩動物、または馬または牛などの家畜動物が挙げられる。「対象」、「患者」、及び「個体」などの用語は、本開示において、文脈によって同義で用いてもよい用語である。
【0115】
一例において、本開示にかかる超粒子は腹腔内投与される。本開示はまた、耳を介した対象の細胞、組織、または器官へのペイロードの送達方法であって、本開示に係る超粒子を上記対象の耳に投与することを含む上記方法も包含する。この例において、上記方法は、対象の内耳、中耳、及び/または前庭系から細胞へとペイロードを送達してもよい。別の例において、上記方法は、治療用ペイロードを対象の神経細胞、神経組織、または脳に送達する。
【0116】
一例において、組成物は鼓膜上に投与される。この例において、組成物は局所投与用に製剤化されてもよい(例えば、滴剤、ゲル剤、フォーム剤、噴霧剤)。
【0117】
別の例において、組成物は「中耳」腔に投与される。本開示の文脈において、用語「中耳」は、鼓膜と内耳との間の空間を指すために用いられる。したがって、中耳は全ての内耳組織の外にある。例えば、組成物は、鼓膜を通した注射によって中耳に投与することができる。この例において、超粒子はデポ注射として投与されてもよい。別の例において、治療を行う臨床医が鼓膜に開口部を設け、中耳への組成物のアクセスを容易にしてもよい。組成物を中耳に投与する場合、組成物を正円窓及び/または卵円窓上に投与してもよい。
【0118】
別の例において、超粒子は内耳に投与される。例えば、超粒子を蝸牛に投与してもよい。一例において、超粒子を蝸牛の基底回転に投与してもよい。蝸牛または内耳の他の構造にアクセスするための外科的技法は当技術分野で公知である。ヒトの蝸牛に外科的にアクセスするための例示的な技法は、例えば、Clark GM, et al., “Surgery for an improved multiple−channel cochlear implant、Ann Otol Rhinol Laryngol 93:204−7, 1984及びClark GM, et al., “Surgical and safety considerations of multichannel cochlear implants in children”, Ear and Hearing Suppl. 12:15S−24S, 1991に記載される。
【0119】
超粒子と耳の介入の組み合わせは上記に議論されている。これらの例において、耳への介入は超粒子の投与と同時に行ってもよい。例えば、人工内耳を超粒子と同時に移植してもよい。ただし、らせん神経節ニューロンの生存率を高めることによって人工内耳の効用が向上する場合がある。したがって、超粒子が投与された後に人工内耳を移植することが望ましい場合がある。例えば、人工内耳は、超粒子が投与されてから約1ヶ月後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約6ヶ月後に移植してもよい。これらの例において、追加の超粒子を人工内耳と共に投与してもよい。
【0120】
一例において、1回目の超粒子が対象の蝸牛に投与され、少なくとも2回目の超粒子が対象の正円窓及び/または卵円窓に投与される。
【0121】
一例において、治療有効量が上記対象の耳に投与される。一例において、複数の超粒子が上記対象の耳に投与される。例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20の超粒子が上記対象の耳に投与されてもよい。別の例において、約1〜10の超粒子が投与される。他の例において、約2〜9、約3〜8、約4〜7、約5〜6の超粒子が上記対象の耳に投与される。これらの例において、超粒子は同一のペイロードを含んでいてもよい。あるいは、別の例において、超粒子に異なるペイロードが担持される。例えば、神経栄養因子が担持された超粒子とステロイドが担持された超粒子とが投与されてもよい。別の例において、神経栄養因子が担持された超粒子と抗生物質が担持された超粒子とが投与されてもよい。別の例において、神経栄養因子が担持された超粒子が抗生物質と共に投与されてもよい。
【0122】
組成物/キット
本開示に係る超粒子は、キットまたはパック中で提供されてもよい。例えば、本明細書に開示の組成物は、内耳障害を治療するための書面による指示と共に、適宜の容器中に包装されていてもよい。一例において、組成物は、点耳器または充填済み注射器などの単回投与容器中で提供されてもよい。
【0123】
一例において、上記キットは内耳障害の治療方法における使用のための、本開示に係る超粒子を備える。別の例において、上記キットは難聴の治療方法における使用のための、本開示に係る超粒子を備える。一例において、上記難聴はSNHLである。別の例において、上記難聴は騒音性難聴である。一例において、本開示に係るキットは補聴器またはインプラントを更に備える。したがって、一例において、上記キットは超粒子と蝸牛インプラントを備えていてもよい。
【0124】
製造
本開示は、高レベルのペイロードを担持可能な超粒子の製造方法を包含する。一例において、上記超粒子は、ナノ粒子とアルギン酸またはその多糖誘導体とを含む組成物から製造することができる。ナノ粒子の様々な例を上記に示している。一例において、上記ナノ粒子は二峰性細孔構造を有する。ナノ粒子は様々な方法を用いて製造することができる。かかる方法の1つがCui et al. 2015, ACS Nano, 9, 1571−1580に記載される。
【0125】
別の例において、本開示にかかる超粒子は、エレクトロスプレーによって製造される。エレクトロスプレーの例は、Jaworek A., 2007 Powder Technology 1, 18−35に総説される。エレクトロスプレーの例も後述される。一例において、本開示は、ナノ粒子とアルギン酸またはその多糖誘導体とを含む組成物をジカチオン水溶液中にエレクトロスプレーすることを含む、超粒子の製造方法を包含する。
【0126】
当業者であれば、エレクトロスプレーに使用される溶液の種類に基づいて、エレクトロスプレーパラメータを最適化できることを理解しよう。例えば、電圧と流速とを最適化して、所望の径の超粒子を与えることができる。一例において、上記流速は約6〜10mL・h
−1である。別の例において、上記流速は約7〜9mL・h
−1である。別の例において、上記流速は約8mL・h
−1である。一例において、上記電圧は約10〜25KVである。別の例において、上記電圧は約11〜20KVである。別の例において、上記電圧は約12〜14KVである。別の例において、上記電圧は約13KVである。
【0127】
一例において、超粒子は、ナノ粒子溶液をエレクトロスプレーすることによって製造される。一例において、溶液中のナノ粒子の濃度は約20mg/mlである。一例において、溶液中のナノ粒子の濃度は約30mg/mlである。一例において、溶液中のナノ粒子の濃度は約40mg/mlである。一例において、溶液中のナノ粒子の濃度は約50mg/mlである。一例において、溶液中のナノ粒子の濃度は約60mg/mlである。
【0128】
別の例において、超粒子は、アルギン酸またはその誘導体を含むナノ粒子溶液をエレクトロスプレーすることによって製造される。一例において、上記ナノ粒子溶液は5mg・mL
−1のアルギン酸溶液から調製される。一例において、上記ナノ粒子溶液は10mg・mL
−1のアルギン酸溶液から調製される。一例において、上記ナノ粒子溶液は20mg・mL
−1のアルギン酸溶液から調製される。一例において、上記ナノ粒子溶液は30mg・mL
−1のアルギン酸溶液から調製される。別の例において、上記ナノ粒子溶液は5mg・mL
−1〜30mg・mL
−1のアルギン酸溶液から調製される。別の例において、上記ナノ粒子溶液は10mg・mL
−1〜30mg・mL
−1のアルギン酸溶液から調製される。別の例において、上記ナノ粒子溶液は20mg・mL
−1〜30mg・mL
−1のアルギン酸溶液から調製される。
【0129】
一例において、上記ナノ粒子溶液は5mg・mL
−1のアルギン酸水溶液から調製される。一例において、上記ナノ粒子溶液は10mg・mL
−1のアルギン酸水溶液から調製される。一例において、上記ナノ粒子溶液は20mg・mL
−1のアルギン酸水溶液から調製される。一例において、上記ナノ粒子溶液は30mg・mL
−1のアルギン酸水溶液から調製される。別の例において、上記ナノ粒子溶液は5mg・mL
−1〜30mg・mL
−1のアルギン酸水溶液から調製される。別の例において、上記ナノ粒子溶液は10mg・mL
−1〜30mg・mL
−1のアルギン酸水溶液から調製される。別の例において、上記ナノ粒子溶液は20mg・mL
−1〜30mg・mL
−1のアルギン酸水溶液から調製される。
【0130】
別の例において、アルギン酸を含むナノ粒子溶液をエレクトロスプレーすることによって超粒子が製造される。
【0131】
アルギン酸誘導体は、規定された温度でゲルを形成する限り特に限定されない。一例において、上記アルギン酸誘導体は多糖誘導体である。アルギン酸誘導体としては、様々なアルギン酸塩形態が挙げられる。例としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、及びアルギン酸カルシウムが挙げられる。他の例としては、アルギン酸バリウム及びアルギン酸ストロンチウムが挙げられる。一例において、上記アルギン酸はアルギン酸ナトリウムである。別の例において、アルギン酸を含むナノ粒子溶液をエレクトロスプレーすることによって超粒子が製造される。
【0132】
超粒子の所望の径及び形状に応じて様々な粘度のアルギン酸塩を用いて、本開示に係る超粒子を製造することができる。例えば、粘度が約20〜300mPa・sであるアルギン酸塩を用いることができる。別の例において、アルギン酸塩の粘度は約20〜200mPa・sである。一例において、アルギン酸塩の粘度は20mPa・sである。別の例において、アルギン酸塩の粘度は100mPa・sである。別の例において、アルギン酸塩の粘度は200mPa・sである。
【0133】
一例において、ナノ粒子を含む組成物を水溶液中にエレクトロスプレーすることによって超粒子が製造される。一例において、これはジカチオン水溶液である。例示的なジカチオン成分としては、Ca
2+及びBa
2+が挙げられる。例えば、上記水溶液は塩化カルシウムを含んでいてもよい。別の例において、上記水溶液は塩化バリウムを含む。
【0134】
一例において、超粒子は組成物をエレクトロスプレーすることによって製造され、該組成物中のアルギン酸塩の濃度は5mg・mL
−1〜30mg・mL
−1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は20mg・mL
−1〜50mg・mL
−1であり、電圧は10kV〜25kVである。別の例において、超粒子は組成物をエレクトロスプレーすることによって製造され、該組成物中のアルギン酸塩の濃度は10mg・mL
−1〜30mg・mL
−1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は30mg・mL
−1〜50mg・mL
−1であり、電圧は11kV〜21kVである。別の例において、超粒子は組成物をエレクトロスプレーすることによって製造され、該組成物中のアルギン酸塩の濃度は20mg・mL
−1〜30mg・mL
−1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は35mg・mL
−1〜45mg・mL
−1であり、電圧は12kV〜14kVである。これらの例において、上記流速は8mL・h
−1である。
【0135】
別の例において、超粒子は組成物をエレクトロスプレーすることによって製造され、該組成物中のアルギン酸塩の濃度は30mg・mL
−1であり、該組成物中のナノ粒子の濃度は40mg・mL
−1であり、電圧は13kVである。上記流速は8mL・h
−1である。
【0136】
一例において、本明細書において規定される方法を用いて製造された超粒子は焼成に供され、アルギン酸またはその誘導体が除去される。一例において、焼成は約500℃で行われる。別の例において、焼成は約550℃で行われる。別の例において、焼成は約600℃で行われる。別の例において、焼成は約650℃で行われる。別の例において、焼成は約700℃で行われる。一例において、焼成は約6〜約30時間行われる。別の例において、焼成は約10時間行われます。別の例において、焼成は約20時間行われる。別の例において、焼成は約30時間行われる。
【実施例】
【0137】
実施例1 − ナノ粒子の製造
メソポーラスシリカナノ粒子(MS−NP)を、Cui et al. 2015, ACS Nano, 9, 1571−1580に記載の方法に基づく方法を用いて製造した。l.lgの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を撹拌しながら50mlのMilli−Q水に完全に溶解した。続いて4.3gのポリアクリル酸溶液(PAA、M
w=250kDa、35wt%水溶液)を、25℃で20分間激しく撹拌しながら添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌を続けた。次いでこの溶液に、激しく撹拌しながら3.5mlの水酸化アンモニウム溶液(28〜30%)を添加したところ、乳白色の懸濁液が得られた。20分間撹拌した後、4.46mlのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を添加した。この溶液を更に15分間撹拌した後、この混合物をテフロン(登録商標)で密封したオートクレーブに移し、90℃で48時間静置した。
【0138】
合成されたままのMS−NPをエタノールで1回、水で2回、エタノールで2回洗浄し、最後に90℃で乾燥した。550℃で30時間焼成することにより上記有機テンプレートを除去した。
【0139】
実施例2 − 出発材料である超粒子の製造プロセス − プロセスA
メソポーラスシリカ(MS)ナノ粒子をWang et al. (2010) Chem Mater. 22, 3829−3831に従って調製した。MSナノ粒子をMilli−Q水中に粒子濃度5wt%で分散させ、短時間超音波処理して安定なコロイド懸濁液を形成した。次いで、上記MSナノ粒子分散液の0.5〜2.0μLのアリコートを、パラフィンフィルムで事前に被覆した平坦な表面に塗布した。これらの液滴を空気流下で乾燥し、毛管力作用によってMSナノ粒子をメソポーラスシリカ超粒子(毛管力MS−SP)へと組織化することを推進した。上記毛管力MS−SPの径は、液滴で塗布したナノ粒子分散液の容積によって制御した。
【0140】
毛管力の下で、上記MSコロイドは密な構造へと自己組織化して、MS−SPを形成した。次いで、この毛管力MS−SPをパラフィンフィルムから取り出し、セラミック容器に移し、923Kでアニールして、上記毛管力MS−SPの機械的安定性を高めた。次いで毛管力MS−SPにペイロードを担持した。粒子当り約1.33μgのタンパク質が担持された。上記毛管力MS−SPは二峰性細孔構造(2〜3nm及び15〜30nm)を有することが明らかになり、上記毛管力MS−SP内のマクロ孔、密に充填されたナノ粒子間の空間、は100〜200nmであった。
【0141】
実施例3 − 改変製造プロセス − プロセスB
80mgのMS−NP粉末を2mlのアルギン酸ナトリウム塩溶液(30mg・mL
−1の水溶液)に添加した。このMS−NPがアルギン酸ナトリウム塩溶液中に均一に分布するまで、得られた溶液を1時間超音波処理した。
【0142】
大きな細孔のMS−SP(
LMS−SP)を形成するために、上記超音波処理した溶液を3mLのプラスチックシリンジに入れ、シリンジポンプに載置し、液体を塩化カルシウム溶液(1wt%、水溶液として調製)浴中に、約8mL・h
−1の流速を用いてエレクトロスプレーした(エレクトロスプレー装置を
図1に示す)。配管の端部と塩化カルシウム溶液の間に電界を印加することによって液滴径を制御した。アルギン酸ビーズMS−SP(
LMS−SP
alg)を塩化カルシウム浴から収取し、ペイロードを担持した。これらの粒子(
LMS−SP)に関しては、プロセスAによって製造した粒子と比較して、機械的安定性の向上と共に、薬物担持性能の顕著な向上、すなわち、粒子当り約7.8μgのタンパク質、が観測された。
【0143】
実施例4 − 改変製造プロセス − プロセスC
MS−SP(
LMS−SP
alg)を実施例3に記載の方法を用いて製造した。650℃で30時間焼成することによってアルギン酸ナトリウム塩を除去した。このステップにより、全ての有機成分が除去され、メソポーラスシリカ(MS−SP)ならびに微量の塩化カルシウム及び塩化ナトリウムのみが残留した。次いでMS−SPにペイロードを担持した。これらの粒子に関しては、プロセスAによって製造した粒子と比較して、薬物担持性能の顕著な向上、すなわち、粒子当り約7.8μgのタンパク質、が観測された。
【0144】
超粒子を、細孔をもたないナノ粒子から(非多孔性
NMS−SP
alg;
NMS−SP
alg)及び細孔径<2nmのナノ粒子から(小さな細孔のMS−
sSP
alg;
sMS−SP
alg)も製造した。これらの超粒子からアルギン酸塩を除去すると、薬物担持性能が顕著に低下した(表1)。
【0145】
プロセスB及びプロセスCによって製造したMS−SPの最大薬物担持量を表1にまとめる。
【表1】
【0146】
実施例5 − 超粒子の放出特性
リゾチーム
滅菌したSPを100μLのFITCリゾチーム溶液(0.2mg・mL
-1 Milli−Q水溶液)と共にインキュベートすることにより、イン・ビトロ放出検討用にFITCリゾチーム担持SPを調製した。リゾチームはニューロトロフィンBDNFを模倣するのに適したモデルタンパク質であり、これは、リゾチームが類似の物理化学的特性を共有すること(リゾチーム:M
w=14.3±0.5KDa、R
H=18.9±0.25Å、及びpI=11;BDNF:M
w=13KDa、R
H=24.0±3.2Å、及びpI=10)、ならびにBDNFは高価である一方でリゾチームは安価で容易に入手できることによる。
【0147】
リゾチーム担持MS−SPのイン・ビトロ放出プロファイルを
図4の分図a)及びb)ならびに
図7の分図a)に示す。プロセスA及びCによって製造したMS−SPの放出プロファイルは類似する。但し、プロセスCによって製造したMS−SPには、大幅により高いレベルの標識リゾチームが担持されている。プロセスBによって製造したMS−SPでは、プロセスA及びCによって製造したMS−SPと比較してペイロードの放出が大幅に低下している。
【0148】
ゼータ電位
次いで、MS−SPにフルオレセイン標識リゾチーム(FITCリゾチーム)を担持した。
図2に示すように、pH値が4から10に上昇すると、MS−SPは約−7.6mV〜−33.9mVの範囲の負のゼータ電位を示した。したがって、正に荷電したリゾチーム及びBDNFは静電的な駆動力を利用してMS−SPに担持することができる。共焦点顕微鏡画像(
図3のa、b)はMS−SPの表面上に担持されたFITCリゾチームを示した。但し、MS−SPの径は非常に大きい(数百マイクロメートルの径)ために、標準的なレーザー走査型共焦点顕微鏡はSPの内部構造の撮像には適さない。しかし、手術用メスでこのMS−SPを破断したところ内部を撮像することができ、MS−SPの多孔性内部構造中にもFITCリゾチームが観察されることが判った(
図3のc)。
【0149】
担持容量の更なる評価
次いで、FITCリゾチームを用い、3日間のインキュベーション時間で、異なる担持時の濃度における、種々の種類のSPの担持容量を検討した(
図4)。概括的には、FITCリゾチームの濃度が増加すると、薬物担持量が増加した。結果は、アルギン酸塩を含有する
NMS−SP
alg、
SMS−SP
alg、及び
LMS−SP
algは、アルギン酸塩を除去した
NMS−SP、
SMS−SP、及び
LMS−SP(同等の担持時の濃度)よりも担持容量が高いことを示す。このことは、中性のpH値付近における、正に荷電したFITCリゾチームと負に荷電したアルギン酸塩との間の高い静電的相互作用に起因する可能性がある。更に、低いFITCリゾチームの担持時の濃度(<0.4mg・mL
−1)においては、
LMS−SP
algの薬物担持容量は非多孔性MS−SP
alg及び
SMS−SP
algと同様であったが、担持時の濃度がより高かった場合(>0.4mg・mL
−1)には、
NMS−SP
alg及び
SMS−SP
algと比較して、より多くのFITCリゾチームを
LMS−SP
algに担持することができた。アルギン酸塩を除去したMS−SPに関しても同様の傾向が観測された。すなわち、
LMS−SPには、
NMS−SP及び
SMS−SPよりも多くのFITCリゾチームを担持することができた。これらの結果は、大きな多孔性構造(
LMS−SP及び
LMS−SP
algにおける)が薬物担持量を向上させるための重要な因子であり、それはおそらく、更なる表面を与え、延いては、粒子の外表面と粒子内部の領域(SP構造内の)とが薬物によって完全に飽和された場合に、更なる担持容量を与えることによる可能性が高いことを示している。更に、上記担持容量はMS−SPの径にも依存し、より大きなMS−SP(1000μm)の担持容量はより小さなMS−SP(200μm)よりも大きかった(
図5)。
【0150】
実験的に測定したFITCリゾチームの
NMS−SP及び
sMS−SP
algへの最大担持量は、それぞれSP当り約3μg及びSP当り2μgであり、これらはSP当り約15μgの
LMS−SPよりも顕著に低い(FITCリゾチームの担持時の濃度は1.5mg・mL
−1であり、担持時間は3日間であった)。更に、実験的に測定したFITCリゾチームの
NMS−SP及び
sMS−SPへの最大担持量は、それぞれSP当り約2μg及びSP当り1μgであり、これらもSP当り約10μgの
LMS−SPよりも大幅に少ない(FITCリゾチームの担持時の濃度は5.0mg・mL
−1であり、担持時間は3日間であった)。
【0151】
6種の異なるSPの薬物担持効率を
図4のc及び
図4のdに示す。FITCリゾチームの担持時の濃度が増加するにつれて、より多くのFITCリゾチームをSPに担持することができた。
【0152】
BDNF
MS−SPを100μlのエタノール(80 vol/vol%)4時間に浸漬して滅菌し、その後100μlのMilli−Q水で6回すすいだ。次いで、MS−SPを0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で1回洗浄した。MS−SPを15μlのBDNF(Geneway, BDNF Human Protein,カタログ番号 10−663−45078)溶液(BDNFの1mg/ml)が入ったエッペンドルフ・チューブに入れ、時々手で振とうしながら室温で3日間インキュベートすることによって、該MS−SPに担持した。驚くべきことに、約10μgのBDNFの担持を達成した。
【0153】
実施例6 − 超粒子の細胞毒性
MS−SPを生体適合性の薬物担体として適用することができるかを検討するために、MS−SPのイン・ビトロ細胞毒性の検討を実施した。ヒト脳神経膠芽腫細胞(U87MG細胞株)をMS−SPと共にインキュベートし、細胞生存率をAlamar Blueアッセイによって評価した。
図6に示すように、MS−SPの数をウェル当り10まで増加した場合においても(ウェル当り1×10
4細胞)、MS−SPは非毒性であった。同様の粒子システムの典型的なイン・ビボ治療計画において、内耳当り1〜8のSPの投与が提案されている。
【0154】
実施例7 − 薬物放出
担持容量の結果に基づいて、10の
LMS−SP及び10のMS−SP
algをPBS(pH7.4)中、37℃でインキュベートすることにより、FITCリゾチームの放出の検討(担持時間3日間、担持時の濃度0.2mg・mL
−1)を実施した。
【0155】
イン・ビトロ放出検討用のFITCリゾチーム担持SPの調製を、当該SPを滅菌し、続いて10のMS−SPまたは10のMS−SP
algのいずれかを100μLの「低濃度」FITCリゾチーム溶液(0.2mg・mL
−1 Milli−Q水溶液)と共にインキュベートすることによって行った。3日後に、上清を除去し、100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)を各チューブに添加し、37℃でインキュベートした。規定した時間間隔で(150日間にわたって)、90μLの溶液を採取し、これを新たなPBSで置換した。採取した試料の蛍光をInfinite M200マイクロプレートリーダーで測定し、その結果、検量線を用いて上清中のFITCリゾチームの濃度を測定することができた。
【0156】
上記低濃度溶液中での担持後のFITCリゾチームの担持量は、
LMS−SP及び
LMS−SP
algに関して、それぞれSP当り1.89±0.02μg及び1.93±0.01μgであった。
図7のaに示すように、150日間以上にわたってMS−SP当り>1μgのFITCリゾチームが放出される一方、この期間にわたってMS−SP
algから放出されるFITCリゾチームの量はより少ない(SP当り約0.4μg)。後者から放出されるFITCリゾチームの量がより少ないことの可能性のある理由はアルギン酸塩の存在であり、アルギン酸塩が、シリカ一次粒子の大きな孔を潜在的に塞ぐ、またはリゾチームと強く相互作用し、リゾチームの放出を妨げるもしく抑制する可能性がある。各時点における測定されたFITCリゾチーム放出の個々の値(
図7に示す累積の結果を用意するために用いた)を
図8に示す。
【0157】
SPに担持するのに用いられる、薬物の担持時の濃度が増加するにつれて、より多くの薬物を
LMS−SPに担持することができた。したがって、より高いインキュベーション濃度(1.0mg・mL
−1)におけるFITCリゾチーム及びBDNFの両方の薬物放出プロファイルを検討した。この濃度(1.0mg・mL
−1)におけるFITCリゾチーム担持量は、SP当り6.49±0.48μgであった。FITCリゾチームの放出プロファイルは2段階の放出、すなわち、最初の3日間のバースト放出と110日間以上にわたる持続性放出で観測された(
図7のb)。バースト段階ではSP当り約4.2μgのFITCリゾチームが放出された。3日後に、約2.3μgのFITCリゾチーム(担持量−バースト放出の間に放出された量)がSPに担持された状態で残留し、その後、より持続性の放出挙動が観測された。各時点で放出されたFITCリゾチームの個々の値は、SP当り数十〜数百ナノグラムであった(
図9)。
図7のcに示すように、イン・ビトロBDNF放出プロファイルはFITCリゾチームの放出プロファイルと類似し、最初の3日間でバースト放出が観測され、それに続いて40日間にわたる持続性放出が観測された。このSPの40日後の累積放出値は約4.68μgの薬物であり、各SPの重量は約0.05mgであった。したがって、上記観測された累積放出量は約93.6μg・mg
−1であった。この値は、ナノポーラスシリカナノ粒子に関して最近観測された値と比較して、4000倍の向上である。各時点で放出されたBDNFの個々の値は、SP当り数十〜数百ナノグラムの範囲であった(
図10)。放出されたBDNFの量をMicroBCAアッセイによっても測定し(
図11)、結果は同様であった。
【0158】
薬物放出挙動を更に調整し、内耳中へ外科的送達を助長する潜在的な方法を検討するために、PF127ヒドロゲル内に組み込んだMS−SP及びMS−SP
algのイン・ビトロ薬物放出の検討を試験した。PF127ヒドロゲルは、低温(例えば4℃)では粘性液体、体温(37℃)ではゲルとしての形態をなす。これらの検討において、MS−SP及びMS−SP
alg(両方共PF127ヒドロゲル中に存在)から、ほぼ14日目までにほとんどのFITCリゾチームが放出されたことが観測され(
図12)、このことは放出動態が加速されたことを示している。したがって、上記超粒子−PF127系は短期(約1週間)の薬物放出が所望の場合に適する一方、PF127ハイドロゲルを伴わないSPは長期(数ヶ月)の薬物放出により適する。
【0159】
上記SPが約50%担持された場合の経時的なBDNF放出動態を確立するためのイン・ビトロ実験も実施した。リゾチームのデータと一致して、BDNF放出は最初の4週間にわたってより直線的であった(例えばバースト放出は見られなかった;
図13)。
【0160】
実施例8 − 超粒子の分解
生物学的環境において分解することが可能である多孔性シリカ粒子(例えばケイ酸へと分解され、ケイ酸は尿を介して排泄することができる)は、多様な生物医学的用途にとって関心の対象である。分解率を調べるために、MS−SPを150日間インキュベートした(PBS、pH7.4、37℃)(
図14)。上記MS−SPの径が約55%減少することが観測され、上記MS−SPの形状/モルホロジーも大幅に変化した。上記MS−SPの表面上のシリカ一次粒子は、モルホロジー及び径の両方が変化した。
【0161】
実施例9 − 薬物動態
イン・ビボ検討を実施して、耳に移植した超粒子中で送達したニューロトロフィンの薬物ペイロード及びクリアランスを、移植の4時間後、3日後、及び7日後に測定した。この目的は、経時的に蝸牛中に残存するニューロトロフィンの量を測定することであった。
【0162】
放射標識ニューロトロフィン−3を含有する1のSPを各蝸牛中に移植した。4時間後(n=5)、3日後(n=7)、または7日後(n=4)に蝸牛を採取した。全蝸牛のガンマ線カウントを測定して、ニューロトロフィン−3のクリアランスを経時的に測定した。ニューロトロフィン−3の残留量(担持量に対する%)及びμgで表した合計を
図15に示す。移植の1週間後に、各SPは初期担持量の約2ugのニューロトロフィン−3(約40%)を含有していた。
【0163】
正円窓への送達後のニューロトロフィン−3のクリアランスを調べるために、更なる実験(n=2)を実施した。移植の3日後 − ここでも全蝸牛の測定を用いて、正円窓膜からのニューロトロフィン−3のクリアランスを測定した。蝸牛内送達部位と比較して正円窓を使用すると、同様のレベルのクリアランスが観測された(蝸牛内送達の56%と比較して、正円窓送達後には47.4%のニューロトロフィン−3が残存)。
【0164】
これらのデータは、ニューロトロフィン−3の長期にわたる放出が、治療の1週間後においても依然利用可能な高レベルのニューロトロフィン−3により達成できることを示している。
【0165】
当業者であれば、概括的に記載された本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態において示された本開示に対して、多数の変更及び/または改変を行うことができることが理解されよう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり且つ限定的ではないと見なされるべきである。
【0166】
本出願は、2017年9月20日出願のAU2017903828、2017年9月20日出願のAU2017903829、及び2018年7月11日出願のAU2018902513の優先権を主張し、上記出願の開示は参照により本明細書に援用される。
【0167】
上述の全て刊行物は、その全体が本明細書に援用される。本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、物品などのいずれの記述も、単に本開示の文脈を示すことを目的とするものである。これらの事項のいずれかもしくは全てが、先行技術基準の一部を形成すること、または本出願の各請求項の優先日以前に存在した、本開示に関連する分野の共通の一般的知識であったことを認めると解釈されるべきものではない。
【0168】
引用文献
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