(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-535181(P2020-535181A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】低用量抗体組成物を安定化する新規製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20201106BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20201106BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20201106BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20201106BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20201106BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20201106BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
A61K39/395
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/12
A61P37/04
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-517815(P2020-517815)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月18日
(86)【国際出願番号】IB2018057565
(87)【国際公開番号】WO2019064263
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】62/565,178
(32)【優先日】2017年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マッケイ,ジョアンナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC07
4C076DD26Z
4C076DD38Z
4C076DD41Z
4C076DD46
4C076DD49Z
4C076DD51Z
4C076DD67Z
4C076FF18
4C085AA13
4C085AA16
4C085BB11
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、抗体組成物の安定性を改善するという当該技術分野における現行の必要性に対処する。本発明は、広く、低用量抗体組成物を安定化し、コーティングを有する容器手段へのタンパク質吸着を阻害する新規製剤に関する。より具体的には、以下に記載する発明は、発酵槽、バイオリアクター、バイアル瓶、フラスコ、バッグ、注射器、ゴム栓、チューブなどの容器手段内で加工、開発、製剤化、製造及び/又は保管される低投与量抗体組成物を安定化し、タンパク質吸着を阻害する製剤に対する当該技術分野における必要性に対処する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝剤液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の1種以上の抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に収容された製剤。
【請求項2】
前記緩衝剤が、ヒスチジン、リン酸塩、又は酢酸塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20又はポリソルベート80であり、前記製剤中の前記ポリソルベートの最終濃度が、前記製剤の体積あたり少なくとも0.001%〜0.2%のポリソルベート重量である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記容器手段が、バイアル瓶、バイアル瓶栓、バイアル瓶クロージャ、ガラスクロージャ、ゴムクロージャ、プラスチッククロージャ、注射器、注射器栓、注射器プランジャ、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、アンプル、カートリッジ、及び使い捨て注射器ペンからなる群のうちの1種以上から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記容器手段が、二酸化ケイ素コーティング又は疎水性コーティングを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記pH緩衝液が、糖又は糖アルコールを更に含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記pH緩衝液が、L−メチオニン又はエチレンジアミン四酢酸を更に含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
抗CD3二重特異性抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝剤液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の抗CD3二重特異性抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に収容された製剤。
【請求項9】
前記緩衝剤が、ヒスチジン、リン酸塩、又は酢酸塩である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20又はポリソルベート80であり、前記製剤中の前記ポリソルベートの最終濃度が、前記製剤の体積あたり少なくとも0.001%〜0.2%のポリソルベート重量である、請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
前記容器手段が、バイアル瓶、バイアル瓶栓、バイアル瓶クロージャ、ガラスクロージャ、ゴムクロージャ、プラスチッククロージャ、注射器、注射器栓、注射器プランジャ、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、アンプル、カートリッジ、及び使い捨て注射器ペンからなる群のうちの1種以上から選択される、請求項8に記載の製剤。
【請求項12】
前記容器手段が、二酸化ケイ素コーティング又は疎水性コーティングを有する、請求項8に記載の製剤。
【請求項13】
前記pH緩衝液が、糖又は糖アルコールを更に含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項14】
前記pH緩衝液が、L−メチオニン又はエチレンジアミン四酢酸を更に含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項15】
抗体組成物を収容する方法であって、注射のために準備され、約70μg未満の用量の活性成分としての少なくとも1種の抗体を含む抗体組成物を、コーティングを有する容器手段に提供することを含み、前記医薬組成物が、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液及び(ii)ポリソルベートを含む製剤中に存在する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2017年9月29日に出願された米国仮出願第62/565178号の利益を主張するものである。前述の出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、免疫学、腫瘍学、抗体製剤、タンパク質の安定性及びプロセス開発の分野に関する。より具体的には、本発明は、低用量抗体組成物の、コーティングを有する容器へのタンパク質吸着を阻害する新規製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
安全かつ有効であると承認されたバイオ医薬品及び臨床開発中のものは、様々な投与スケジュールを有する。したがって、投与しなければならないタンパク質の量に応じて、様々な濃度及び体積を有するこれらのバイオ医薬品が、薬物製品製剤中に提供される。原薬タンパク質のかなりの部分がバイアル瓶又は注射器などの容器の表面上に吸着する場合、低濃度タンパク質製剤が不安定になる場合がある。更に、活性タンパク質濃度が変化すると、患者に対して予想よりも低い用量しか投与されなくなる場合がある。加えて、多くのバイオ医薬品が製剤化され、更なる操作なしに臨床投与する準備が整った状態で提供されている。しかしながら、多くの製品は、看護師、薬剤師、及び/又は医師による様々な程度のハンドリングを必要とする。ハンドリング及び投与中、薬物製品製剤中のタンパク質の物理的及び化学的安定性を維持しなければならない。タンパク質製剤を静脈注射(i.v.)溶液で低濃度に希釈した場合、それによって、賦形剤濃度が低下し、元々の薬物製品製剤の組成及び特性が変化して、安定性が失われる場合がある。i.v.ルートを介してバイオ医薬製品を送達する場合には、タンパク質の生物物理化学的特性、製剤の組成、送達される活性タンパク質の濃度、希釈剤の選択、接触面、並びに注入の時間及び速度を含むいくつかの要因を考慮しなければならない。ここで、接触面は、タンパク質がその両親媒性の性質に起因して界面エネルギーを最小化するので特に興味深い。注射器並びにi.v.注入用の容器及びラインにおいて様々なプラスチックポリマーを広く使用すると、吸着によりンパク質が失われるリスクが、特に低用量で顕著である。したがって、特に低用量製品の場合、薬物製品の開発中に、フィルター、容器、注射器、及びチューブへの吸着によるタンパク質の損失について調査し、対処しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、低用量タンパク質に好適な製剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この「発明の概要」は、「発明を実施するための形態」において以下に更に説明される簡潔な形態で概念の選定を紹介するために提供される。この「発明の概要」は、請求される発明主題の主要な特徴又は必須の特徴を特定することを意図するものではなく、また請求される主題の範囲を決定する際の補助として使用されることも意図していない。
【0006】
本発明は、広く、低用量抗体組成物を安定化し、容器手段へのタンパク質吸着を阻害する新規製剤に関する。具体的な一実施形態では、本発明は、容器−コーティング相互作用、剪断力、出荷時の撹拌に対して低用量抗体組成物を安定化する新規製剤を目的とし、そして、
特定の実施形態では、本発明は、組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の1つ以上の抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤に関する。特定の実施形態では、製剤のpH緩衝液は、約5〜約7.4のpHを有する。他の実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジン、リン酸塩、又は酢酸塩である。別の実施形態では、製剤のポリソルベートは、ポリソルベート20(Tween(商標)20)及びポリソルベート80(Tween(商標)80)からなる群から選択される。具体的な一実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80である。特定の実施形態では、製剤中のポリソルベート80の最終濃度は、製剤の体積あたり、少なくとも0.001%〜0.1%のポリソルベート80重量である。特定の実施形態では、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、製剤の体積あたり、少なくとも0.001%〜0.1%のポリソルベート20重量である。
【0007】
特定の一実施形態では、抗体製剤は、容器手段に収容される。特定の実施形態では、容器手段は、バイアル瓶、バイアル瓶栓、バイアル瓶クロージャ、ガラスクロージャ、ゴムクロージャ、プラスチッククロージャ、注射器、注射器栓、注射器プランジャ、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、アンプル、カートリッジ、及び使い捨て注射器ペンからなる群のうちの1つ以上から選択される。特定の実施形態では、容器手段は、コーティングされている。具体的な実施形態では、容器手段は、二酸化ケイ素コーティングを有する。他の実施形態では、容器手段は、疎水性コーティングを有する。特定の実施形態では、抗体製剤は、糖を更に含む。他の実施形態では、製剤は、糖アルコールを更に含む。別の実施形態では、抗体製剤は、L−メチオニン又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を更に含む。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、抗CD3二重特異性抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の抗CD3二重特異性抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に収容された製剤に関する。特定の実施形態では、製剤のpH緩衝液は、約5〜7.4のpHを有する。他の実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジン、リン酸塩、又は酢酸塩である。別の実施形態では、製剤のポリソルベートは、ポリソルベート20(Tween(商標)20)及びポリソルベート80(Tween(商標)80)からなる群から選択される。具体的な一実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80である。特定の実施形態では、製剤中のポリソルベート80の最終濃度は、製剤の体積あたり、少なくとも0.001%〜0.1%のポリソルベート80重量である。特定の実施形態では、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、製剤の体積あたり、少なくとも0.001%〜0.1%のポリソルベート20重量である。
【0009】
一実施形態では、抗CD3二重特異性抗体製剤は、容器手段内に収容される。いくつかの実施形態では、容器手段は、バイアル瓶、バイアル瓶栓、バイアル瓶クロージャ、ガラスクロージャ、ゴムクロージャ、プラスチッククロージャ、注射器、注射器栓、注射器プランジャ、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、アンプル、カートリッジ、及び使い捨てペンからなる群のうちの1つ以上から選択される。特定の実施形態では、容器手段は、コーティングされている。具体的な実施形態では、容器手段は、疎水性コーティングを有する。他の実施形態では、抗体製剤は、糖を更に含む。別の実施形態では、製剤は、糖アルコールを更に含む。別の実施形態では、抗体製剤は、L−メチオニン又はEDTAを更に含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、抗体組成物を収容する方法であって、注射のために準備され、約70μg未満の用量の活性成分としての少なくとも1つの抗体を含む抗体組成物を、コーティングを有する容器手段に提供することを含み、医薬組成物が、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液及び(ii)ポリソルベートを含む製剤中に存在する方法を提供する。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、その実施形態、及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書で使用するとき、用語「約」は、例えば、本発明の説明において用いられる組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、及びこれらの範囲を修飾するために使用される。用語「約」は、例えば、化合物、組成物、濃縮物の作製、又は製剤の使用のために使用される典型的な測定及びハンドリング手順を通じて、これらの手順における不注意による誤りを通じて、方法を実行するために使用される出発物質又は成分の製造、供給源、又は純度の差を通じて、並びに他の同様の考慮事項を通じて生じ得る数量のばらつきを指す。用語「約」はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する製剤の熟成に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する製剤の混合又は加工に起因して異なる量も包含する。用語「約」によって修飾される場合、本明細書に添付される「特許請求の範囲」は、このような等価物を含む。
【0013】
本明細書で使用するとき、「抗体」は、特に断らない限り、様々な単量体、二重特異的、多量体、及びキメラの形態を含む免疫グロブリンの全てのアイソタイプ(IgG、IgA、IgE、IgM、IgD、及びIgY)を指す。具体的には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、及び抗体様ポリペプチド、例えば、二重親和性再標的化(DART)分子、単鎖抗体、ヒト抗体、抗体断片、キメラ抗体、及びヒト化抗体が、用語「抗体」に包含される。
【0014】
用語「医薬品又は薬物」は、本明細書で使用するとき、患者に適正に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる化学物質又は組成物を指す。
【0015】
用語「医薬的に許容される」とは、動物における使用について、特にヒトにおける使用について、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方、若しくは他の一般に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0016】
対象となる抗原に特異的に結合する抗体(その抗体断片を含む)を含む液体製剤に関連して本明細書で使用するとき、用語「安定性」、「安定な」、及び「安定化する」とは、本発明の製造、調製、輸送、及び保管の条件下で調製されたときにその生物活性又は物理的一体性を失う(例えば、凝集、沈殿、吸着)ことに対する、液体抗体製剤中の抗体(その抗体断片を含む)の耐性を指す。本発明の「安定な」製剤は、参照製剤と比較して、所与の製造、調製、輸送、及び保管の条件下で、改善された生物物理的及び化学的一体性プロファイルを示す。
【0017】
別途定義されない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって別途必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0018】
製剤
本発明は、溶液中に存在している間の抗体組成物の安定性を改善するという当該技術分野における現行の必要性に対処する。したがって、本発明は、広く、タンパク質及び抗体組成物を安定化する新規製剤に関する。より具体的には、以下に記載する発明は、発酵槽、バイオリアクター、バイアル瓶、フラスコ、バッグ、注射器、ゴム栓、チューブなどの容器手段内で加工、開発、製剤化、製造及び/又は保管される抗体組成物を安定化し、タンパク質吸着を阻害する製剤に対する当該技術分野における必要性に対処する。「背景技術」において上述したように、抗体組成物の化学的安定性、抗体組成物の物理的/熱安定性、抗体組成物と容器/クロージャシステムとの適合性、抗体組成物と不活性成分(例えば、緩衝剤、塩、賦形剤、凍結保護剤)との間の相互作用、製造プロセス、剤形、投与量、出荷、保管及びハンドリング中に遭遇する環境条件(例えば、温度、湿度、剪断力)、並びに製造と使用との間の時間の長さを含むがこれらに限定されない様々な要因が、抗体組成物の安定性に影響を与える。
【0019】
本発明の抗体組成物の安定性は、当業者に周知かつ常用されている標準的な技術を使用して容易に決定される。例えば、光散乱、光学密度、沈降速度遠心分離、沈降平衡遠心分離、円偏光二色性(CD)、ローリーアッセイ、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ、抗体結合などを含むがこれらに限定されない方法によって、安定性、凝集、活性、微粒子形成、タンパク質(濃度)損失などについて抗体組成物をアッセイする。
【0020】
本明細書に詳細に記載するとおり、本発明は、Tween(商標)20又はTween(商標)80などの界面活性剤を用いて低用量(<70μg)抗体組成物を製剤化すると、安定性が著しく高まり、コーティングを有する容器手段へのタンパク質吸着を阻害するという予想外かつ驚くべき結果に関する。例えば、本発明では(例えば、実施例2を参照)、9%スクロース、0.4mg/mL L−メチオニン、及び50μM EDTAを含むpH5.2酢酸塩緩衝剤中で製剤化され、非コーティングバイアル瓶に充填された、約30μgの用量のドゥボルツキシズマブとして知られる二重親和性再標的化分子が、水平軌道振盪器を介して3日感穏やかに撹拌した後、36%の最大タンパク質回収率しか有しないことが観察された。(水平軌道振盪器を使用して、抗体組成物の典型的な加工、出荷、及び保管の条件をシミュレートした)。様々な種類のコーティングバイアル瓶に充填された同じ製剤は、76%の最大タンパク質回収率を有していた。しかしながら、驚くべきことに、9%スクロース、0.4mg/mL L−メチオニン、50μM EDTA、及び0.01% Tween(商標)80を含むpH5.2酢酸塩緩衝剤中で製剤化され、様々な種類のコーティングバイアル瓶に充填された、約30μgの用量のドゥボルツキシズマブは、少なくとも97%のタンパク質回収を有していることが観察された。したがって、これらのデータは、低用量抗体組成物製剤の場合、界面活性剤(例えば、Tween(商標)80)とコーティングされた容器手段との組み合わせが、抗体組成物の安定性を高めることを示している。
【0021】
これらの実験では、抗体組成物を、様々なコーティングされた及びコーティングされていない容器手段(例えば、表3〜6を参照されたい)に充填し、撹拌を介して模擬出荷及びハンドリング条件に供した。これらの実験では、コーティングを有する容器手段は、コーティングされていない容器と比較して高いタンパク質回収率を示すことが観察された。更に、70μg以下のタンパク質を含有する製剤については、特に製剤pHがタンパク質の等電点未満である場合、90%よりも高いタンパク質回収率を達成するには、コーティングを有する容器手段の使用及び界面活性剤の添加の両方が必要であることが観察された。
【0022】
したがって、本明細書に記載の発明は、低用量抗体組成物を安定化する新規製剤を目的とする。これらの低用量抗体組成物は、ドゥボルツキシズマブ、抗IL1RAP×CD3(国際公開第2017079121号)、抗BCMA×CD3(国際公開第2017031104号)、抗CD123×CD3(国際公開第2016036937号)、抗PSMA×CD3(国際公開第2016179518号)、及び抗ROR1×CD3(国際公開第2017127499号)などの二重特異性CD3リダイレクションコンストラクトを含み得る。組成物はまた、任意の他の抗体の低用量製剤も含み得る。本明細書に開示される新規製剤は、抗体組成物の安定性に影響を及ぼす様々な要因(例えば、剪断力、出荷時の撹拌、容器相互作用、吸着、吸収、製造プロセス、温度、湿度、製造と使用との間の時間の長さなど)に対して、コーティングを有する容器手段内の低用量抗体組成物を安定化する。
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、低用量抗体組成物を安定化する製剤であって、pHが約5〜約7.4であるpH緩衝液と、ポリソルベートと、1つ以上の抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、抗CD3二重特異性抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の抗CD3二重特異性抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、ドゥボルツキシズマブ組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量のドゥボルツキシズマブとを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。ドゥボルツキシズマブは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第201/6048938号に記載されている。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、イコルキュマブ組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量のイコルキュマブとを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。イコルキュマブは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,518,129号に記載されている抗トロンビン抗体である。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、ダラツムマブ組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量のダラツムマブとを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。ダラツムマブは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,829,673号に記載されている。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、ウステキヌマブ組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量のウステキヌマブとを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。ウステキヌマブは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,902,734号に記載されている。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、シルクマブ組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量とを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。シルクマブは、参照により本明細書に組み込まれる米国再発行特許第43,672号に記載されている。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、抗NKG2D抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の抗NKG2D抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。一実施形態では、当該抗NKG2D抗体は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,879,985号に記載されている。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、抗IL1RAP×CD3二重特異性抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の抗IL1RAP×CD3二重特異性製抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に含まれた製剤を目的とする。一実施形態では、当該IL1RAP×CD3二重特異性抗体は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017079121号に記載されている。
【0032】
別の態様では、本発明は、抗体組成物を収容する方法であって、注射のために準備され、約70μg未満の用量の活性成分としての少なくとも1つの抗体を含む抗体組成物を、コーティングを有する容器手段に提供することを含み、医薬組成物が、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液及び(ii)ポリソルベートを含む製剤中に存在する方法を提供する。
【0033】
界面活性剤
上記のように、本発明は、抗体組成物の安定性に影響を及ぼす様々な要因(例えば、剪断力、出荷時の撹拌、シリコーン油相互作用、吸着、製造プロセス、温度、湿度、製造と使用との間の時間の長さなど)に対して抗体組成物を安定化する製剤を目的とする。特定の実施形態では、本発明は、界面活性剤を含む製剤を目的とする。
【0034】
界面活性剤(又は表面活性剤)は、一般に、(a)親水性の基若しくは部分と親油性(疎水性)の基若しくは部分とを含む両親媒性の分子又は化合物、及び/又は(b)溶液の表面張力を低下若しくは低減する分子、物質、若しくは化合物として定義される。本明細書で定義するとき、本発明の「界面活性剤」は、抗体組成物製剤の表面張力を低下させる任意の分子又は化合物である。
【0035】
本発明の製剤に使用される界面活性剤は、本明細書に記載の抗体組成物を安定化し、容器へのタンパク質吸着を阻害する任意の界面活性剤又は任意の界面活性剤の組み合わせを含む。したがって、本発明の界面活性剤としては、ポリソルベート20(Tween(商標)20)、ポリソルベート40(Tween(商標)40)、ポリソルベート60(Tween(商標)60)、ポリソルベート65(Tween(商標)65)、ポリソルベート80(Tween(商標)80)、ポリソルベート85(Tween(商標)85)、Triton(商標)N−101、Triton(商標)X−100、オキシトキシノール40、ノノキシノール−9、トリエタノールアミン、トリエタノールアミンポリペプチドオレエート、ポリオキシエチレン−660ヒドロキシステアレート(PEG−15、Solutol H 15)、ポリオキシエチレン−35−リシノレアート(Cremophor EL(商標))、大豆レシチン、ポロキサマー、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、ジメチル−ジオクタデシルアンモニウムブロミド、メトキシヘキサデシルグルセロール、プルロニックポリオール、ポリアミン(例えば、ピラン、デキストラン硫酸、ポリIC、カーボポール)、ペプチド(例えば、ムルアミルペプチド及びジペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン)、油エマルション、ミネラルゲル(例えば、リン酸アルミニウム)、及び免疫刺激複合体(ISCOMS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
当業者は、界面活性剤の存在下及び非存在下で特定の抗体組成物製剤の表面張力を測定することによって、好適な界面活性剤又は界面活性剤の組み合わせを容易に決定することができる。あるいは、界面活性剤は、抗体組成物の吸着を低減、阻害、又は防止するその能力について定性的に(例えば、微粒子形成の目視検査)又は定量的に(例えば、光散乱、沈降速度遠心分離、光学密度、抗原性)評価される。
【0037】
容器手段
特定の実施形態では、本発明は、容器手段に収容された抗体組成物の製剤を目的とする。本明細書で定義するとき、本発明の「容器手段」は、研究、加工、開発、製剤化、製造、保管及び/又は投与中に抗体組成物を「収容する」、「保持する」、「混合する」、「ブレンドする」、「分注する」、「注射する」、「移動させる」、「噴霧する」ためなどに使用される、任意の合成物を含む。例えば、本発明の容器手段としては、一般的な実験室用ガラス器具、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、バイアル瓶、バイアル瓶クロージャ(例えば、ゴム栓、ねじ蓋)、アンプル、注射器、注射器栓、注射器プランジャ、ゴムクロージャ、プラスチッククロージャ、ガラスクロージャなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の容器手段は、製造材料によって限定されず、コーティングされた又はコーティングされていないガラスなどの材料を含む。
【0038】
当業者であれば、上記の容器手段が、決して網羅的なリストではなく、加工、開発、製剤化、製造、保管、及び/又は投与中に抗体又は抗体組成物を収容する、保持する、混合する、ブレンドする、分注する、注射する、移動させる、噴霧するためなどに使用される様々な容器手段に関する当業者に対する指針としての役割を果たすだけであることを理解するであろう。本発明における使用が企図される追加の容器手段は、United States Plastic Corp.(Lima,OH)、VWR(商標)(West Chester,PA)、BD Biosciences(Franklin Lakes,NJ)、Fisher Scientific International Inc.(Hampton,NH)、Schott(商標)(Mainz,Germany)、Omni Glass(Billerica,MA)、West Pharma(Exton,PA)、Gerresheimer(Dusseldorf,Germany)、及びSigma−Aldrich(St.Louis,MO)などの実験機器の販売業者及び製造業者から公開されたカタログに見出すことができる。
【0039】
容器手段の表面及び/又はコーティングに関しては一般的な知識が豊富に存在する。非網羅的リストには、プラズマ支援化学蒸着によって沈着したポリエチレンオキシド/グリコール様及び他のコーティングが含まれる、例えば、Erika E.Johnston E.E.,Bryers J.D.,Ratner B.D.Langmuir 2005,21,870−881;Sardella E.,Gristina R.,Senesi G.S.,d’Agostino R.,Favia P.Plasma Process.Polym.2004,1,63−72;Shen M.,Martinson L.,Wagner M.S.,Castner D.G.,Ratner B.D.,Horbett T.A.J.Biomater.Sci.Polymer Edn.2002,13,367−390;Shen M.,Pan Y.V.,Wagner M.S.,Hauch K.D.,Castner D.G.,Ratner B.D.,Horbett T.A.J.Biomater.Sci.Polymer Edn.2001,12,961−978;米国特許第5,153,072号;Lopez G.P.,Ratner B.D.J.Polym.Sci.A−Polym.Chem.1992,30,2415−2425;及び米国特許第5,002,794号を参照されたい。沈着する(誘導体化された)アルカンチオールコーティングについては、例えば、Li L.Y.,Chen S.F.,Ratner B.D.,Jiang S.Y.J.Phys.Chem.B 2005,104,2934−2941;Chirakul P.,Perez−Luna V.H.,Owen H.,Lopez G.P.Langmuir 2002,18,4324−4330;Prime K.L.,Whitesides G.M.J.Am.Chem.Soc.1993,115,10714−10721;Pale−Grosdemange C.,Simon F.S.,Prime K.L.,Whitesides G.M.J.Am.Chem.Soc.1991,113,12−20を参照されたい。オルガノシランコーティングについては、例えば、Seigers C.,Biesalski M.,Haag R.Chem.Eur.J.2004,10,2831−2838;米国特許出願公開第2003/0092879号Yang Z.,Galloway J.A.,Yu H.Langmuir 1999,15,8405−8411;Lee S.W.,Laibinis P.E.Biomaterials 1998,19,1660−1675;及び米国特許第6,235,340号を参照されたい。ヒドロゲルコーティングについては、例えば、米国特許第6,844,028号を参照されたい。ポリ−L−リジン/ポリエチレングリコールコーティングについては、例えば、米国特許出願公開第2002/0128234号、Huang N.P.,Michel R.,Voros J.,Textor M.,Hofer R.,Rossi A.,Elbert D.L.,Hubbell J.A.,Spencer N.D.Langmuir 2001,17,489−498;Kenausis G.L.Voros J.,Elbert D.L.,Huang N.,Hofer R.,Ruiz−Taylor L.,Textor M.,Hubbell J.A.,Spencer N.D.J.Phys.Chem.B 2000,104,3298−3309を参照されたい。ポリエチレンオキシドグラフトコーティングについては、例えば、Sofia S.J.,Premnath.V.,Merrill E.W.Macromolecules 1998,31,5059−5070を参照されたい。これらの例は、多数の利用可能な表面処理及び/又はコーティングの可能性を表すが、網羅的に収集したものではない。
【0040】
現在、上記の好ましいタンパク質吸着阻止特性の全てを含む市販の医薬品パッケージ(コーティングされた又はコーティングされていない)存在しないが、いくつかの望ましい特性を有する一方で、タンパク質吸着を阻止するのではなく、むしろ促進するいくつかの特性を依然として有する傾向がある。ガラス(ホウケイ酸塩、ソーダ石灰など)は親水性及び水素結合受容性であるが、高度にイオン性であり、タンパク質結合を阻止する立体障害を有さない。表面上の液体製剤条件(pH5〜9)下における高密度の負電荷は、タンパク質(すなわち、リジン、ヒスチジン、及びアミノ末端)における正に帯電した残基のイオン性結合を促進する。表面を不動態化し、注射器内の潤滑性を提供するためのガラスのシリコーン処理は、立体的にブロックされた比較的非イオン性の表面をもたらすが、シリコーンオイルが、その水素結合受容能を低下させると同時に表面を非常に疎水性にする。シリコーンオイル処理はまた、表面を離れ、溶液に入るシリコーン液滴として、注射器内に望ましくない粒子状物質を生成させる場合がある。疎水性表面は、水を排除し、タンパク質の吸着を容易化する傾向がある。タンパク質が遭遇する環境の疎水性はまた、タンパク質の疎水性コアが表面と相互作用し、その天然構造を展開して最小自由エネルギー構造を得ようとするので、タンパク質の変性を引き起こし得る。医学的に関連する粒子/凝集体を含有する溶液/懸濁液のための非粘着性を有する疎水性コーティングは、プラズマ化学気相成長法によって既に調製されている。例えば、米国特許第6,599,594号を参照されたい。
【0041】
したがって、本発明の新規製剤は、組成物の研究、加工、開発、製剤化、製造、保管、及び/又は投与の様々な段階全体をとおして、容器手段に含まれた低用量抗体製剤を安定化し、吸着を阻害する点で特に有利である。本発明の新規製剤は、物理的/熱ストレス(例えば、温度、湿度、剪断力など)に対して抗体組成物を安定化するだけでなく、抗体組成物と容器/クロージャシステム(例えば、シリコーン処理された容器手段)との適合性などの負の要因又は影響に対する、抗体組成物の安定性を高め、吸着を阻害する。
【0042】
したがって、本発明の新規製剤は、抗体組成物の安定化に特に有用である。
【0043】
賦形剤及びpH
本発明における抗体組成物の製剤は、1つ以上の賦形剤を含む。本明細書で使用するとき、用語「賦形剤」は、所望の稠度、粘度、又は安定化効果を提供するために製剤に添加される任意の非治療薬を意味する。
【0044】
特定の実施形態では、本発明の医薬製剤は、約5〜約7.4の範囲のpHを維持するのに好適な緩衝剤を含む。本発明の製剤に使用するのに好適な例示的な緩衝剤としては、例えば、ヒスチジン又は酢酸塩緩衝剤が挙げられる。一実施形態では、ヒスチジン緩衝剤は、10mMの濃度で調製される。
【0045】
本発明の製剤内に含有されるヒスチジンの量は、約1mM〜約50mM、約2mM〜約20mM、約3mM〜約12mM、又は約10mMで変動し得る。
【0046】
本発明の医薬製剤はまた、1種以上の炭水化物、例えば1種以上の糖を含んでいてもよい。糖は、還元糖又は非還元糖であってよい。「還元糖」は、例えば、ケトン又はアルデヒド基を有する糖を含み、反応性ヘミアセタール基を含有し、これによって、当該糖が還元剤として作用することが可能になる。
【0047】
還元糖の具体例としては、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びマルトースが挙げられる。非還元糖は、アセタールであり、メイラード反応を開始するためにアミノ酸又はポリペプチドとは実質的に反応しない、アノマー炭素を含み得る。非還元糖の具体例としては、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース、ソルビトール、マンニトール、メレジトース、及びラフィノースが挙げられる。糖酸としては、例えば、サッカリン酸、グルコン酸、及び他のポリヒドロキシ糖、並びにこれらの塩が挙げられる。
【0048】
本発明の製剤内に含有される糖の量は、製剤が使用される特定の状況及び意図する目的に応じて変化するであろう。特定の実施形態では、製剤は、約0.1%〜約20%の糖、約0.5%〜約20%の糖、約1%〜約20%の糖、約2%〜約15%の糖、約3%〜約10%の糖、約4%〜約10%の糖、又は約5%〜約10%の糖を含有し得る。例えば、本発明の医薬製剤は、約0.5%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、約6.0%、6.5%、約7.0%、約7.5%、約8.0%、約8.5%、約9.0%、約9.5%、約10.0%、約10.5%、約11.0%、約11.5%、約12.0%、約12.5%、約13.0%、約13.5%、約14.0%、約14.5%、約15.0%、約15.5%、約16.0%、16.5%、約17.0%、約17.5%、約18.0%、約18.5%、約19.0%、約19.5%、又は約20.0%の糖{例えば、スクロース)を含み得る。
【0049】
本発明は以下の非限定的な実施形態も提供する。
【0050】
実施形態
1.抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の1つ以上の抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に収容された製剤。
2.緩衝剤が、ヒスチジン、リン酸塩、又は酢酸塩である、実施形態1に記載の製剤。
3.当該ポリソルベートが、ポリソルベート20又はポリソルベート80であり、当該製剤中の当該ポリソルベートの最終濃度が、当該製剤の体積あたり少なくとも0.001%〜0.2%のポリソルベート重量である、実施形態1に記載の製剤。
4.当該容器手段が、バイアル瓶、バイアル瓶栓、バイアル瓶クロージャ、ガラスクロージャ、ゴムクロージャ、プラスチッククロージャ、注射器、注射器栓、注射器プランジャ、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、アンプル、カートリッジ、及び使い捨て注射器ペンからなる群のうちの1種以上から選択される、実施形態1に記載の製剤。
5.当該容器手段が、二酸化ケイ素コーティング又は疎水性コーティングを有する、実施形態1に記載の製剤。
6.当該pH緩衝液が、糖又は糖アルコールを更に含む、実施形態1に記載の製剤。
7.当該pH緩衝液が、L−メチオニン又はエチレンジアミン四酢酸を更に含む、実施形態1に記載の製剤。
8.抗CD3二重特異性抗体組成物を安定化する製剤であって、(i)約5〜約7.4のpHを有するpH緩衝液と、(ii)ポリソルベートと、(iii)約70μg未満の用量の抗CD3二重特異性抗体とを含み、コーティングを有する容器手段に収容された製剤。
9.緩衝剤が、ヒスチジン、リン酸塩、又は酢酸塩である、実施形態8に記載の製剤。
10.緩衝剤が、ヒスチジン、リン酸塩、又は酢酸塩である、実施形態8に記載の製剤。
11.当該ポリソルベートが、ポリソルベート20又はポリソルベート80であり、当該製剤中の当該ポリソルベートの最終濃度が、当該製剤の体積あたり少なくとも0.001%〜0.2%のポリソルベート重量である、実施形態8に記載の製剤。
12.当該容器手段が、バイアル瓶、バイアル瓶栓、バイアル瓶クロージャ、ガラスクロージャ、ゴムクロージャ、プラスチッククロージャ、注射器、注射器栓、注射器プランジャ、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、アンプル、カートリッジ、及び使い捨て注射器ペンからなる群のうちの1種以上から選択される、実施形態8に記載の製剤。
13.当該容器手段が、二酸化ケイ素コーティング又は疎水性コーティングを有する、実施形態8に記載の製剤。
14.当該pH緩衝液が、糖又は糖アルコールを更に含む、実施形態8に記載の製剤。
15.当該pH緩衝液が、L−メチオニン又はエチレンジアミン四酢酸を更に含む、実施形態8に記載の製剤。
【実施例】
【0051】
下記実施例は、先の開示を補い、本明細書に記載された主題のより良好な理解を提供するために提供される。これらの実施例は、記載された主題を限定すると解釈されるべきでない。本明細書に記載された実施例及び実施形態は例示のみを目的とするものであり、それらを考慮した種々の改変又は変更は、当業者に明らかであり、また、本発明の真の範囲内に含まれ、かつ本発明の真の範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【0052】
実施例1:非コーティングガラスバイアル瓶における様々な濃度の抗体の吸着損失
CD19及びCD3を標的とするDARTであるドゥボルツキシズマブを、様々なタンパク質濃度で、非コーティングType 1ガラス2Rバイアル瓶に充填し、いくつかの用量レベル:3μg、7μg、30μg、70μg、及び700μgでの吸着損失の程度を評価した。製剤は、pH5.2で、10mM酢酸塩、0.01%(w/v)ポリソルベート80、90mg/mLスクロース、0.4mg/mL L−メチオニン、及び50μM EDTA二ナトリウムを含有していた。バイアル瓶を250rpmに設定した軌道振盪器内に3〜4日間入れておいた。溶液をバイアル瓶から取り出し、プロテインA HPLC測定又は内部蛍光のいずれかに基づいて、タンパク質濃度を対照サンプルと比較した。表1は、より高いタンパク質濃度と比較して、低タンパク質濃度ではドゥボルツキシズマブの回収率がはるかに低いことを示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例2:吸着に対する非イオン性界面活性剤、抗体、及び容器の種類の影響
抗トロンビンIgG4抗体であるイコルキュマブを、3つの異なるpH値で、0.02%(w/v)ポリソルベート20を含む又は含まない製剤緩衝剤で、0.01mg/mLのタンパク質濃度に希釈した。製剤は、pH5.0、6.0、及び7.0で、10mMヒスチジン及び8.5%(w/v)スクロースを含有していた。希釈したタンパク質溶液を、2Rの非コーティングType 1ガラスバイアル瓶(Schott Fiolax)、2RのSchott Type 1 Plusコーティングバイアル瓶、2RのSchott TopLyoコーティングバイアル瓶、又は0.5mLのDaikyo Crystal Zenithバイアル瓶に、0.3mLの充填体積(30μgイコルキュマブ)になるまで充填した。表1は、各バイアル瓶の材料を記載する。各バイアル瓶を、250rpmに設定した軌道振盪器に3日間入れておいた。溶液をバイアル瓶から取り出し、内部蛍光に基づいて、タンパク質濃度を対照サンプルと比較した。
【0055】
製剤中にポリソルベート20を含まない場合、タンパク質は、pHにかかわらず、4種類のバイアル瓶の全てに吸着された(表3)。0.02%(w/v)ポリソルベート20を添加した場合、タンパク質はpH依存的にType 1ガラスに吸着され、pH5.0及び6.0でより多くの吸着が生じ、pH7.0ではより吸着が少なかった。このタンパク質の等電点は、約6.2である。0.02%(w/v)ポリソルベート20の存在下では、Type 1 Plus、TopLyo、又はCrystal Zenithのバイアル瓶におけるタンパク質の吸着損失は最小限であった。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
別の実験では、様々なレベルのポリソルベート80を含有する製剤緩衝剤中0.1mg/mLの濃度で、ドゥボルツキシズマブを評価した。製剤は、pH5.2で、10mM酢酸塩、9%スクロース、0.4mg/mL L−メチオニン、50μM EDTA二ナトリウム、及び0,0.01%(w/v)及び0.1%(w/v)ポリソルベート80を含有していた。希釈したタンパク質溶液を、2Rの非コーティングType 1ガラスバイアル瓶(Schott Fiolax)、2RのSchott Type 1 Plusコーティングバイアル瓶、又は2RのSchott TopLyoコーティングバイアル瓶に、0.3mLの充填体積(30μgドゥボルツキシズマブ)になるまで充填した。バイアル瓶を250rpmに設定した軌道振盪器内に3日間入れておいた。溶液をバイアル瓶から取り出し、プロテインA HPLC測定に基づいて、タンパク質濃度を対照サンプルと比較した。
【0059】
製剤中にポリソルベート80を含まない場合、3種類のバイアル瓶の全てに吸着された(表4)。0.01%(w/v)ポリソルベート80を添加した場合、タンパク質はType 1ガラスには吸着されたが、Type 1 Plus及びTopLyoのバイアル瓶では最小限の吸着損失しか生じなかった。このタンパク質の等電点は、約8.7である。
【0060】
【表4】
【0061】
別の実験では、異なる製剤において、いくつかの異なる抗体を0.01mg/mLのタンパク質濃度に希釈した。約8.4の等電点を有する抗CD38 IgG1抗体である ダラツムマブは、pH5.6で、10mMヒスチジン、300mMソルビトール、0.04%(w/v)ポリソルベート20、1mg/mL L−メチオニンを用いて製剤化した。約9の等電点を有する抗IL12/IL23 IgG1抗体であるウステキヌマブは、pH6で、5.5mMヒスチジン、0.004%(w/v)ポリソルベート80、7.6%(w/v)スクロースを用いて製剤化した。約8の等電点を有する抗IL6 IgG1抗体であるシルクマブは、pH5で、10mM酢酸塩、5%(w/v)ソルビトール、0.04%(w/v)ポリソルベート20を用いて製剤化した。約7.8の等電点を有する二重特異性抗IL1Rap×CD3 IgG4抗体は、pH5.2で、10mM酢酸塩、8%(w/v)スクロース、0.04%(w/v)ポリソルベート20、50μM EDTA二ナトリウムを用いて製剤化した。希釈したタンパク質溶液を、2Rの非コーティングType 1ガラスバイアル瓶(Schott Fiolax)、2RのSchott Type 1 Plusコーティングバイアル瓶、又は2RのSchott TopLyoコーティングバイアル瓶に1.5mLの充填体積(15μg全タンパク質)になるまで、そして、0.5mLのDaikyo Crystal Zenithバイアル瓶に0.3mLの充填体積(3μg全タンパク質)になるまで充填した。バイアル瓶を250rpmに設定した軌道振盪器内に4時間入れておいた。溶液をバイアル瓶から取り出し、内部蛍光に基づいて、タンパク質濃度を対照サンプルと比較した。
【0062】
4つの製剤全てにおいて、pHは、タンパク質の等電点未満であった。4つのタンパク質はそれぞれType 1ガラスには吸着されたが、Type 1 Plus、TopLyo、又はCrystal Zenithバイアル瓶では最小限の吸着損失しか示さなかった(表5)。
【0063】
【表5】
【0064】
実施例3:pHの関数としての吸着抗体
抗NKG2D IgG4抗体を、3つの異なる製剤緩衝剤で0.01mg/mLのタンパク質濃度に希釈した(表6)。製剤緩衝液Aは、pH5.0で、10mM酢酸塩、0.04%(w/v)ポリソルベート20、5%(w/v)ソルビトールを含有していた。製剤緩衝液Bは、pH6.0で、10mMヒスチジン、0.04%(w/v)ポリソルベート20、8.5%(w/v)スクロースを含有していた。製剤緩衝液Cは、pH7.4で、10mMリン酸塩、0.04%(w/v)ポリソルベート20、5%(w/v)ソルビトールを含有していた。希釈したタンパク質溶液を、2Rの非コーティングType 1ガラスバイアル瓶(Schott Fiolax)、2RのSchott Type 1 Plusコーティングバイアル瓶、又は2RのSchott TopLyoコーティングバイアル瓶に1.5mLの充填体積(15μg全抗NKG2D)になるまで、そして、0.5mLのDaikyo Crystal Zenithバイアル瓶に0.3mLの充填体積(3μg全NKG2D)になるまで充填した。バイアル瓶を250rpmに設定した軌道振盪器内に4時間入れておいた。溶液をバイアル瓶から取り出し、内部蛍光に基づいて、タンパク質濃度を対照サンプルと比較した。
【0065】
このタンパク質の等電点は約6.8であるので、緩衝剤A及びBは、タンパク質の等電点を下回るが、緩衝液Cは上回る。タンパク質はpH依存的にType 1ガラスに吸着され、低pHでより多くの吸着が生じ、pH7.4では最小限の吸着しか生じなかった。3つの製剤全てにおいて、Type 1 Plus、TopLyo、又はCrystal Zenithのバイアル瓶におけるタンパク質の吸着損失は最小限であった。
【0066】
【表6】
【0067】
実施例4:5ヶ月間後のType 1 Plusバイアル瓶に保管した抗体製剤の安定性の検査
ドゥボルツキシズマブを、pH5.2で、10mM酢酸塩、0.01%ポリソルベート80、9%スクロース、0.4mg/mL L−メチオニン、及び50μM EDTA二ナトリウムを含有する製剤緩衝剤で、0.1mg/mLのタンパク質濃度に希釈した。希釈したタンパク質溶液を、2RのSchott Type 1 Plusバイアル瓶に0.3mLの充填体積(30μgドゥボルツキシズマブ)になるまで充填した。タンパク質を5℃で5ヶ月間保管した。以下の属性を試験した:プロテインA HPLCによるタンパク質濃度、抗原結合アッセイによる相対力価、SE−HPLCによるモノマー%、CE−SDSによる純度、及びIE−HPLCによる電荷変異型(charge variants)(表7)。
【0068】
【表7】
【0069】
参照文献
国際公開第2016048938号
米国特許第9,518,129号
米国特許第7,829,673号
米国特許第6,902,734号
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