特表2020-535184(P2020-535184A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-535184翻訳後修飾された完全ヒト抗VEGF Fabによる眼疾患の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-535184(P2020-535184A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】翻訳後修飾された完全ヒト抗VEGF Fabによる眼疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20201106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20201106BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20201106BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20201106BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20201106BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20201106BHJP
【FI】
   A61K35/76
   A61K39/395 N
   A61K9/08
   A61P27/02
   A61P9/00
   A61K47/54
   C07K16/24ZNA
   C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】150
(21)【出願番号】特願2020-517843(P2020-517843)
(86)(22)【出願日】2018年9月26日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月22日
(86)【国際出願番号】US2018052855
(87)【国際公開番号】WO2019067540
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】62/574,657
(32)【優先日】2017年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/564,095
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/579,682
(32)【優先日】2017年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/632,812
(32)【優先日】2018年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518362720
【氏名又は名称】レジェンクスバイオ インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】593072783
【氏名又は名称】ザ ジョーンズ ホプキンズ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】THE JOHNS HOPKINS UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ヨー
(72)【発明者】
【氏名】リッキー ロバート ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】シェルリ ヴァン エベレン
(72)【発明者】
【氏名】カレン フラン コザルスキー
(72)【発明者】
【氏名】クラン マシュー シンプソン
(72)【発明者】
【氏名】ズフチュン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター アンソニー キャンポチアロ
(72)【発明者】
【氏名】ジクイ シェン
(72)【発明者】
【氏名】クン ディング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC10
4C076CC41
4C076DD41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA14
4C087NA15
4C087ZA33
4C087ZA36
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
(57)【要約】
翻訳後修飾された完全ヒト(HuPTM)モノクローナル抗体(「mAb」)又はヒト血管内皮増殖因子(「hVEGF」)に対するmAbの抗原結合断片−例えば、完全ヒトグリコシル化(HuGly)抗hVEGF抗原結合断片など−を、新生血管形成の増加によって引き起こされる眼疾患、例えば、「滲出型」加齢黄斑変性症(「WAMD」)としても知られる新生血管加齢黄斑変性症(「nAMD」)、加齢黄斑変性症(「AMD」)、及び糖尿病網膜症と診断されたヒト対象の眼の網膜/硝子体液に送達するための組成物及び方法が記載されている。
【選択図】図23
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記投与が前記発現ベクターを前記上脈絡膜腔に上脈絡膜薬物送達装置を用いて注射することによるものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記上脈絡膜薬物送達装置がマイクロインジェクターである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
nAMDと診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
前記投与が、後極に向けて前記上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により前記網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用によるものである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記投与が、前記網膜下薬物送達装置のカテーテルを前記上脈絡膜腔から挿入し、貫通させることを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
nAMDと診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の強膜の外表面に、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記投与が、その先端を挿入して、それを前記強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置の使用によるものである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記投与が、前記カニューレの先端を挿入して、それを前記強膜表面に直接並置して保持することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記投与により前記抗hVEGF抗体の治療有効量が該ヒト対象の網膜に送達される、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記抗hVEGF抗体の治療有効量が該ヒト対象の網膜のヒト網膜細胞によって産生される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記抗hVEGF抗体の治療有効量が、前記ヒト対象のヒト視細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞、及び/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記ヒト視細胞が錐体細胞及び/又は桿体細胞である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記網膜神経節細胞が、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/又はミュラーグリアである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400である最高矯正視力(BCVA)を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記ヒト対象が≦20/63かつ≧20/400であるBCVAを有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記BCVAが前記ヒト対象で治療されるべき眼のBCVAである、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
前記抗hVEGF抗体が抗hVEGF抗原結合断片である、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記抗原結合断片がFabである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記抗原結合断片がF(ab')2である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記抗原結合断片が単鎖可変ドメイン(scFv)である、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記抗hVEGF抗体が、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
前記抗hVEGF抗体が、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号17〜19又は配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基がアセチル化されていない、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基が、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、請求項23又は24記載の方法。
【請求項27】
前記抗hVEGF抗体が、配列番号20の重鎖CDR1を含み、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、請求項22〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基がアセチル化されていない、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基が以下の化学修飾:アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、請求項26又は27記載の方法。
【請求項30】
前記発現ベクターがAAVベクターである、請求項1〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記発現ベクターがAAV8ベクターである、請求項30記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる、2017年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/564,095号、2017年10月19日に出願された同第62/574,657号、2017年10月31日に出願された同第62/579,682号、及び2018年2月20日に出願された同第62/632,812号の恩典を出張する。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、2018年9月19日に作成された、97,512バイトのサイズを有する、「Sequence_Listing_12656-110-228.TXT」という表題のテキストファイルとして本出願とともに提出された配列表を引用により組み込む。
【0003】
(1.序論)
翻訳後修飾された完全ヒト(HuPTM)モノクローナル抗体(「mAb」)又は血管内皮増殖因子(「VEGF」)に対するmAbの抗原結合断片−例えば、完全ヒトグリコシル化(HuGly)抗VEGF抗原結合断片など−を、眼疾患、特に、新生血管形成の増加によって引き起こされる眼疾患、例えば、「滲出型」加齢黄斑変性症(「WAMD」又は「滲出型AMD」)としても知られる「新生血管加齢黄斑変性症」(「nAMD」)、加齢黄斑変性症(「AMD」)、及び糖尿病網膜症と診断されたヒト対象の眼の網膜/硝子体液に送達するための組成物及び方法が記載されている。
【背景技術】
【0004】
(2.発明の背景)
加齢黄斑変性症(AMD)は、進行性の不可逆的な中心視野の重度の喪失を引き起こす変性網膜眼疾患である。この疾患は、黄斑−最も視力(VA)の高い領域−を損傷させ、60歳以上の米国人における失明の第一の原因である(NIH 2008)。
【0005】
新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)としても知られる、「滲出型」新生血管形態のAMD(「WAMD」又は「滲出型AMD」)は、AMD症例の15〜20%を占め、様々な刺激に応答する神経網膜内及び神経網膜下の異常な新生血管形成を特徴とする。この異常な血管成長は、漏出性血管の形成及びしばしば出血、並びに正常な網膜構造の歪み及び破壊をもたらす。nAMDでは視覚機能が重度に損なわれ、やがて炎症及び瘢痕により、罹患網膜の視覚機能が永久的に喪失する。最終的に、視細胞の死及び瘢痕形成により、中心視野が重度に喪失し、読み書き及び顔の認識又は運転ができなくなる。多くの患者は、収入の高い職を維持し、日常の活動を遂行することがもはやできなくなり、結果として、生活の質の低下を訴える(Mitchellの文献、2006)。
【0006】
糖尿病網膜症は、糖尿病の眼合併症であり、非増殖型の毛細血管瘤、硬性白斑、出血、及び静脈異常、並びに増殖型の新生血管形成、網膜前又は硝子体出血、及び線維血管増殖を特徴とする。高血糖症により、網膜の微小血管の変化が誘導され、かすみ目、暗いスポット又は光のちらつき、及び突然の視力喪失が生じる(Cai及びMcGinnisの文献、2016)。
【0007】
予防的治療は、ほとんど効果を示さず、治療的戦略は、主に、新生血管病変の治療に焦点を当てている。利用可能なnAMDの治療としては、レーザー光凝固法、ベルテポルフィンによる光線力学療法、及び血管内皮増殖因子(「VEGF」)−血管新生の刺激に関係があるとされ、介入の標的とされるサイトカインに結合し、それを中和することを目的とした薬剤の硝子体内(「IVT」)注射が挙げられる。使用されるそのような抗VEGF剤としては、例えば、ベバシズマブ(CHO細胞で産生されるVEGFに対するヒト化モノクローナル抗体(mAb))、ラニビズマブ(原核生物の大腸菌(E.coli)で作製されるベバシズマブの親和性が向上したバリアントのFab部分)、アフリベルセプト(ヒトIgG1のFc部分に融合したヒトVEGF受容体の細胞外ドメインのVEGF結合領域からなる組換え融合タンパク質)、又はペガプタニブ(VEGFに結合するペグ化アプタマー(一本鎖核酸分子))が挙げられる。これらの治療法の各々は、最高矯正視力に対してある程度の効果がある;しかしながら、その効果は、視力の回復及び持続の点で限界があるように見える。
【0008】
抗VEGFのIVT注射は、漏出を低下させ、時に視力喪失を回復させるのに有効であることが示されている。しかしながら、これらの薬剤は、短期間しか有効ではないので、多くの場合、長期間にわたる反復注射が必要となり、それにより、患者へのかなりの治療負荷が生じる。月に1回のラニビズマブ又は月に1回/8週に1回のアフリベルセプトによる長期治療は、視力喪失の進行を減速させ、視力を改善することができるが、これらの治療はいずれも新生血管形成の再発を予防しない(Brownの文献、2006; Rosenfeldの文献、2006; Schmidt-Erfurthの文献、2014)。疾患の悪化を予防するためには、各々を再投与しなければならない。反復治療の必要性は、患者にさらなるリスクを負わせることになり、患者と治療担当医の両方にとって不都合である。
【発明の概要】
【0009】
(3.発明の概要)
VEGFに対する翻訳後修飾された完全ヒト(HuPTM)抗体を、眼疾患、特に、新生血管形成の増加によって引き起こされる眼疾患、例えば、nAMD(「滲出型」AMDとしても知られる)、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者(ヒト対象)の眼の網膜/硝子体液に送達するための組成物及び方法が記載されている。抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え産生抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、2つの重鎖及び2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-重鎖対、イントラボディ、ヘテロコンジュゲート抗体、一価抗体、全長抗体の抗原結合断片、並びに上記のものの融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。そのような抗原結合断片には、単一ドメイン抗体(重鎖抗体(VHH)の可変ドメイン又はナノボディ)、全長抗VEGF抗体(好ましくは、全長抗VEGFモノクローナル抗体(mAb))のFab、F(ab')2、及びscFv(単鎖可変断片)(本明細書において、「抗原結合断片」と総称される)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、VEGFに対する翻訳後修飾された完全ヒト抗体は、VEGFに対するモノクローナル抗体(mAb)の翻訳後修飾された完全ヒト抗原結合断片(「HuPTMFabVEGFi」)である。さらに好ましい実施態様において、HuPTMFabVEGFiは、抗VEGF mAbの完全ヒトグリコシル化抗原結合断片(「HuGlyFabVEGFi」)である。代替の実施態様において、全長mAbを使用することができる。送達は、遺伝子療法−例えば、抗VEGF抗原結合断片又はmAb(又は高グリコシル化誘導体)をコードするウイルスベクター又は他のDNA発現コンストラクトを、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者(ヒト対象)の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔(経硝子体アプローチによるもしくはカテーテルを上脈絡膜腔に通して用いる)、網膜内腔、及び/又は強膜の外表面に投与すること(すなわち、強膜近傍投与)によって、ヒトPTM、例えば、ヒトグリコシル化導入遺伝子産物を持続的に供給する永久デポーを眼内に作ることにより達成することができる。好ましい実施態様において、本明細書に提供される方法は、滲出型AMDと診断された患者(ヒト対象)で使用することができる。
【0010】
本明細書に記載されるのは、ヒト網膜細胞によって産生される抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体、例えば、抗hVEGF抗原結合断片である。ヒトVEGF(hVEGF)は、VEGF(VEGFA、VEGFB、VEGFC、又はVEGFD)遺伝子によってコードされるヒトタンパク質である。hVEGFの例示的アミノ酸配列は、GenBank受託番号AAA35789.1.に見出すことができる。hVEGFの例示的核酸配列は、GenBank受託番号M32977.1.に見出すことができる。
【0011】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)(滲出型AMDもしくはWAMDとしても知られる)、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、nAMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、nAMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、新生血管加齢黄斑変性症(nAMD)、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400である最高矯正視力(BCVA)を有する、方法である。
【0012】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0013】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0014】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0015】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片は、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0016】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号17〜19又は配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む。
【0017】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化1】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化2】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化4】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化5】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化6】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0018】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化7】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化8】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化9】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化10】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化11】
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中のN)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化12】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化13】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化14】
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中のN)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0019】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化15】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化16】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化17】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化18】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化19】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化20】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化21】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化22】
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中のN)は、アセチル化されておらず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化23】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化24】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化25】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化26】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されておらず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化27】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化28】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0020】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0021】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0022】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0023】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗体の治療有効量を送達することを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0024】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗体は、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0025】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗体は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号17〜19又は配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む。
【0026】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化29】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化30】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化31】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化32】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化33】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化34】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0027】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化35】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化36】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化37】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化38】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化39】
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中のN)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化40】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化41】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化42】
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中のN)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0028】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化43】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化44】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化45】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化46】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化47】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化48】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化49】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化50】
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中のN)は、アセチル化されておらず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化51】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化52】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化53】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化54】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されておらず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化55】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化56】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0029】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、該抗原結合断片がα2,6-シアリル化グリカンを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、該抗原結合断片がα2,6-シアリル化グリカンを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、該抗原結合断片がα2,6-シアリル化グリカンを含む、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、該抗原結合断片がα2,6-シアリル化グリカンを含み、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0030】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法である(すなわち、本明細書で使用される場合、「検出可能」は、下記の標準的なアッセイによって検出可能なレベルを意味する)。具体的な実施態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によるもの)、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置による外科的処置)、又は後強膜近傍デポー処置(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によるもの)によって)、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法である。具体的な実施態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法である。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0031】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化される。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与)、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、かつここで、該ヒト対象は、≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。
【0032】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与又は送達することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化される。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与又は送達することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、かつここで、該ヒト対象は、≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する。
【0033】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、上脈絡膜腔から挿入し、貫通させることができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化される。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、かつここで、該ヒト対象は、≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する。
【0034】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片は、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片は、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該ヒト対象は、≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。
【0035】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、該ヒト対象の網膜に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与又は送達することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、該ヒト対象の網膜に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与又は送達することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片は、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該ヒト対象は、≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する。
【0036】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片は、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない。具体的な態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であり、ここで、該方法は:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現は、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片は、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該ヒト対象は、≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する。
【0037】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成される、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。
【0038】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成される、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0039】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成される、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0040】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。
【0041】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0042】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0043】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片は、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0044】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片は、チロシン硫酸化をさらに含む。
【0045】
本明細書に記載される方法のある態様において、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生は、細胞培養液中で、PER.C6又はRPE細胞株に、該組換えヌクレオチド発現ベクターを形質導入することにより確認される。
【0046】
本明細書に記載される方法のある態様において、チロシン硫酸化を含む該抗原結合断片の産生は、細胞培養液中で、PER.C6又はRPE細胞株に、該組換えヌクレオチド発現ベクターを形質導入することにより確認される。
【0047】
本明細書に記載される方法のある態様において、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターを有する。
【0048】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号17〜19又は配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む。
【0049】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化57】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化58】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化59】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化60】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化61】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化62】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0050】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化63】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化64】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化65】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化66】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化67】
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中のN)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化68】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化69】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化70】
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中のN)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0051】
本明細書に記載される方法の具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化71】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化72】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化73】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化74】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化75】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化76】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化77】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化78】
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中のN)は、アセチル化されておらず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化79】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化80】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化81】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化82】
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中のN)は、アセチル化されておらず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化83】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化84】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0052】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片導入遺伝子は、リーダーペプチドをコードする。リーダーペプチドは、本明細書において、シグナルペプチド又はリーダー配列と呼ばれる場合もある。
【0053】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらす、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。
【0054】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらす、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0055】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらす、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0056】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらす、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。具体的な実施態様において、投与する工程は、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用を含む。
【0057】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらす、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0058】
ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらす、方法である。ある態様において、本明細書に記載されるのは、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の網膜下及び/又は網膜内腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して(例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置によって)、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、方法である。
【0059】
本明細書に記載される方法のある態様において、ヒト対象は、≦20/63かつ≧20/400であるBCVAを有する。
【0060】
本明細書に記載される方法のある態様において、BCVAは、ヒト対象で治療されるべき眼のBCVAである。
【0061】
本明細書に記載される方法のある態様において、眼に送達することは、眼の網膜、脈絡膜、及び/又は硝子体液に送達することを含む。
【0062】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片は、C-末端に1つ、2つ、3つ、又は4つのさらなるアミノ酸を含む重鎖を含む。
【0063】
本明細書に記載される方法のある態様において、抗原結合断片は、C-末端にさらなるアミノ酸を含まない重鎖を含む。
【0064】
ある態様において、本明細書に記載される方法は、抗原結合断片分子の集団を産生し、ここで、該抗原結合断片分子は、重鎖を含み、かつここで、該抗原結合断片分子の集団の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、もしくは20%、又はそれ未満は、重鎖のC-末端に1つ、2つ、3つ、又は4つのさらなるアミノ酸を含む。ある態様において、本明細書に記載される方法は、抗原結合断片分子の集団を産生し、ここで、該抗原結合断片分子は、重鎖を含み、かつここで、該抗原結合断片分子の集団の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、もしくは20%、又はそれ未満、しかし、0%よりも多くは、重鎖のC-末端に1つ、2つ、3つ、又は4つのさらなるアミノ酸を含む。
【0065】
ある態様において、本明細書に記載される方法は、抗原結合断片分子の集団を産生し、ここで、該抗原結合断片分子は、重鎖を含み、かつここで、該抗原結合断片分子の集団の0.5〜1%、0.5%〜2%、0.5%〜3%、0.5%〜4%、0.5%〜5%、0.5%〜10%、0.5%〜20%、1%〜2%、1%〜3%、1%〜4%、1%〜5%、1%〜10%、1%〜20%、2%〜3%、2%〜4%、2%〜5%、2%〜10%、2%〜20%、3%〜4%、3%〜5%、3%〜10%、3%〜20%、4%〜5%、4%〜10%、4%〜20%、5%〜10%、5%〜20%、又は10%〜20%は、重鎖のC-末端に1つ、2つ、3つ、又は4つのさらなるアミノ酸を含む。
【0066】
そのような遺伝子療法が投与される対象は、抗VEGF療法に応答性の対象であるべきである。特定の実施態様において、本方法は、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断され、かつ抗体VEGF抗体による治療に応答性であると特定された患者を治療することを包含する。より具体的な実施態様において、該患者は、抗VEGF抗原結合断片による治療に応答性である。ある実施態様において、該患者は、遺伝子療法による治療の前に硝子体内に注射された抗VEGF抗原結合断片による治療に応答性であることが示されている。具体的な実施態様において、該患者は、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)、及び/又はAVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)による治療を以前に受けたことがあり、かつ該LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)、及び/又はAVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)のうちの1つ又は複数に応答性であることが分かっている。
【0067】
そのようなウイルスベクター又は他のDNA発現コンストラクトが送達される対象は、ウイルスベクター又は発現コンストラクト中の導入遺伝子によってコードされる抗hVEGF抗原結合断片に応答性であるべきである。応答性を決定するために、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子産物(例えば、細胞培養、バイオリアクターなどで産生)を、例えば、硝子体内注射によって、該対象に直接投与することができる。
【0068】
導入遺伝子によってコードされるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiとしては、hVEGFに結合する抗体の抗原結合断片、例えば、ベバシズマブ;抗hVEGF Fab部分、例えば、ラニビズマブ;又はFabドメイン上にさらなるグリコシル化部位を含むように改変されたそのようなベバシズマブもしくはラニビズマブのFab部分を挙げることができるが、これらに限定されない(例えば、全長抗体のFabドメイン上で高グリコシル化されているベバシズマブの誘導体のその説明については、引用により完全に本明細書に組み込まれている、Courtoisらの文献、2016, mAbs 8: 99-112を参照されたい)。
【0069】
導入遺伝子の送達に使用される組換えベクターは、ヒト網膜細胞又は視細胞に対する向性を有するべきである。そのようなベクターとしては、非複製型組換えアデノ随伴ウイルスベクター(「rAAV」)を挙げることができ、特に、AAV8カプシドを有するものが好ましい。しかしながら、限定されないが、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、又は「裸のDNA」コンストラクトと呼ばれる非ウイルス発現ベクターを含む、他のウイルスベクターを使用してもよい。好ましくは、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi導入遺伝子は、適切な発現制御エレメント、例を挙げると、例えば、CB7プロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーター及びCMVエンハンサー)、RPE65プロモーター、又はオプシンプロモーターによって制御されるべきであり、ベクターによって駆動される導入遺伝子の発現を増強する他の発現制御エレメント(例えば、ニワトリβ-アクチンイントロン、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、ヒト第IX因子イントロン(例えば、FIX切断型イントロン1)、β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、アデノウイルススプライスドナー/免疫グロブリンスプライスアクセプターイントロン、SV40後期スプライスドナー/スプライスアクセプター(19S/16S)イントロン、及びハイブリッドアデノウイルススプライスドナー/IgGスプライスアクセプターイントロンなどのイントロン、並びにウサギβ-グロビンポリAシグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリAシグナル、SV40後期ポリAシグナル、合成ポリA(SPA)シグナル、及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリAシグナルなどのポリAシグナル)を含むことができる。例えば、Powell及びRivera-Sotoの文献、2015, Discov. Med., 19(102):49-57を参照されたい。
【0070】
遺伝子療法コンストラクトは、重鎖と軽鎖の両方が発現されるように設計される。より具体的には、重鎖及び軽鎖は、ほぼ等しい量で発現されるべきであり、言い換えると、重鎖及び軽鎖は、およそ1:1の重鎖対軽鎖の比で発現される。重鎖及び軽鎖のコード配列は、別々の重鎖及び軽鎖ポリペプチドが発現されるように、重鎖及び軽鎖が切断可能なリンカー又はIRESによって隔てられている単一のコンストラクト中で改変することができる。例えば、本明細書に提供される方法及び組成物とともに使用することができる具体的なリーダー配列については、第5.2.4節、並びに具体的なIRES、2A、及び他のリンカー配列については、第5.2.5節を参照されたい。
【0071】
上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、及び/又は網膜内投与に好適な医薬組成物は、生理的に適合する水性緩衝剤、界面活性剤、及び任意の賦形剤を含む製剤化緩衝剤中の組換え(例えば、rHuGlyFabVEGFi)ベクターの懸濁液を含む。
【0072】
治療有効用量の組換えベクターは、≧0.1mL〜≦0.5mLの範囲の容量で、好ましくは、0.1〜0.30mL(100〜300μl)で、最も好ましくは、0.25mL(250μl)の容量で、網膜下及び/又は網膜内に(例えば、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射又は上脈絡膜腔経由の網膜下投与によって)投与されるべきである。治療有効用量の組換えベクターは、100μl以下の容量で、例えば、50〜100μlの容量で、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注射によって)投与されるべきである。治療有効用量の組換えベクターは、500μl以下の容量で、例えば、10〜20μl、20〜50μl、50〜100μl、100〜200μl、200〜300μl、300〜400μl、又は400〜500μlの容量で、強膜の外表面に(例えば、後強膜近傍デポー処置によって)投与されるべきである。網膜下注射は、局所麻酔下の対象への硝子体切除及び網膜への遺伝子療法の網膜下注射を伴う熟練した網膜外科医によって行われる外科的処置である(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Campochiaroらの文献、2017, Hum Gen Ther 28(1):99-111を参照されたい)。具体的な実施態様において、網膜下投与は、薬物を網膜下腔に注射する上脈絡膜カテーテル、例えば、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置を用いて、上脈絡膜腔を通して行われる(例えば、Baldassarreらの文献、2017, 上脈絡膜腔経由での細胞の網膜下送達(Subretinal Delivery of Cells via the Suprachoroidal Space): Janssen Trial. 所収: Schwartzら(編)、網膜疾患の細胞療法(Cellular Therapies for Retinal Disease)、Springer, Cham;国際特許出願公開WO 2016/040635 A1号を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。上脈絡膜への投与処置は、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を伴い、通常、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置を用いて行われる(例えば、Hariprasadの文献、2016, Retinal Physician 13: 20-23; Goldsteinの文献、2014, Retina Today 9(5): 82-87を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。本明細書に記載される本発明に従って発現ベクターを上脈絡膜腔に沈着させるために使用することができる上脈絡膜薬物送達装置としては、Clearside(登録商標) Biomedical社により製造される上脈絡膜薬物送達装置(例えば、Hariprasadの文献、2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照)及びMedOne上脈絡膜カテーテルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される本発明に従って発現ベクターを上脈絡膜腔経由で網膜下腔に沈着させるために使用することができる網膜下薬物送達装置としては、Janssen Pharmaceuticals社により製造される網膜下薬物送達装置(例えば、国際特許出願公開WO 2016/040635 A1号を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、強膜の外表面への投与は、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によって行われる。様々な投与様式のさらなる詳細については、第5.3.2節を参照されたい。上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、及び/又は網膜内投与により、可溶性導入遺伝子産物が網膜、硝子体液、及び/又は房水に送達されるべきである。網膜細胞、例えば、桿体細胞、錐体細胞、網膜色素上皮細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、神経節細胞、及び/又はミュラー細胞による導入遺伝子産物(例えば、コードされている抗VEGF抗体)の発現により、網膜、硝子体液、及び/又は房水中で導入遺伝子産物が送達され、かつ維持される。導入遺伝子産物濃度を、3カ月間、硝子体液中で少なくとも0.330μg/mL又は房水(前眼房)中で0.110μg/mLのCminに維持する用量が望ましく;その後、1.70〜6.60μg/mLの範囲の導入遺伝子産物の硝子体Cmin濃度及び/又は0.567〜2.20μg/mLの範囲の眼房Cmin濃度が維持されるべきである。しかしながら、導入遺伝子産物は途切れなく産生されるので、より低い濃度を維持することが有効であり得る。導入遺伝子産物の濃度は、治療を受けた眼の硝子体液及び/又は前眼房由来の房水の患者試料中で測定することができる。或いは、硝子体液濃度は、導入遺伝子産物の患者血清濃度を測定することにより推定及び/又はモニタリングすることができ−導入遺伝子産物の全身曝露と硝子体曝露の比は、約1:90,000である(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Xu Lらの文献、2013, Invest. Opthal. Vis. Sci. 54: 1616-1624のp.1621、及びp.1623の表5において報告されているラニビズマブの硝子体液及び血清濃度を参照されたい)。
【0073】
本発明は、時間経過とともに消失してピークレベルとトラフレベルを生じさせるVEGF阻害剤の高用量ボーラスの反復眼内注射を伴う標準的な治療処置に優るいくつかの利点を有する。導入遺伝子産物抗体の持続的発現により、抗体の反復注射とは対照的に、より一貫したレベルの抗体が作用部位に存在することが可能になり、行う必要がある注射がより少なくなり、結果として、通院がより少なくなるので、患者にとってよりリスクが低く、かつより好都合となる。一貫したタンパク質産生により、網膜で反跳する浮腫が生じる可能性が低くなるので、より良好な臨床転帰がもたらされ得る。さらに、翻訳時及び翻訳後に存在する微小環境が異なるので、導入遺伝子から発現される抗体は、直接注射される抗体とは異なる様式で翻訳後修飾される。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、これにより、作用部位に送達される抗体が直接注射される抗体と比較して「バイオベター(biobetter)」となるような、様々な拡散、生物活性、分布、親和性、薬物動態、及び免疫原性特性を有する抗体が結果として生じる。
【0074】
さらに、インビボで導入遺伝子から発現される抗体は、組換え技術によって産生される抗体に付随する分解産物、例えば、タンパク質凝集物及びタンパク質酸化物を含む可能性が低い。凝集は、高タンパク質濃度、製造装置及び容器との表面相互作用、並びに特定の緩衝剤系による精製に起因するタンパク質の産生及び保存に付随する問題である。凝集を促進するこれらの条件は、遺伝子療法における導入遺伝子発現では存在しない。酸化、例えば、メチオニン、トリプトファン、及びヒスチジン酸化も、タンパク質の産生及び保存と付随しており、ストレスのかかった細胞培養条件、金属及び空気との接触、並びに緩衝剤及び賦形剤中の不純物によって引き起こされる。インビボで導入遺伝子から発現されるタンパク質も、ストレスのかかった条件下で酸化し得る。しかしながら、ヒト及び他の多くの生物は、抗酸化防御システムを備えており、このシステムは、酸化ストレスを低下させるだけでなく、酸化を修復し、かつ/又は逆行させることもある。したがって、インビボで産生されるタンパク質は、酸化形態である可能性が低い。凝集と酸化は両方とも、効力、薬物動態(クリアランス)、及び免疫原性に影響を及ぼし得る。
【0075】
理論によって束縛されるものではないが、本明細書に提供される方法及び組成物は、以下の原理に一部基づいている:
(i)ヒト網膜細胞は、網膜細胞の堅牢なプロセスであるグリコシル化及びチロシン-O-硫酸化を含む分泌タンパク質の翻訳後プロセシングのための細胞機構を保有する分泌細胞である(例えば、ヒト網膜細胞によって行われる翻訳後修飾については、網膜細胞による糖タンパク質の産生を報告している、Wangらの文献、2013, Analytical Biochem. 427: 20-28及びAdamisらの文献、1993, BBRC 193: 631-638;並びに網膜細胞によって分泌されるチロシン硫酸化糖タンパク質の産生を報告している、Kananらの文献、2009, Exp. Eye Res. 89: 559-567並びにKanan及びAl-Ubaidiの文献、2015, Exp. Eye Res. 133: 126-131を参照されたく、これらは各々、引用により完全に組み込まれている)。
(ii)先行技術の理解に反して、抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブ(及びベバシズマブなどの全長抗VEGF mAbのFabドメイン)は、N結合型グリコシル化部位を実際に保有する。例えば、ラニビズマブのCHドメイン(TVSWN165SGAL)及びCLドメイン(QSGN158SQE)中の非コンセンサスアスパラギン(「N」)グリコシル化部位、並びにVHドメイン(Q115GT)及びVLドメイン(TFQ100GT)中のグリコシル化部位であるグルタミン(「Q」)残基(並びにベバシズマブのFab中の対応する部分)を特定している図1を参照されたい(例えば、抗体中のN結合型グリコシル化部位の特定については、Valliere-Douglassらの文献、2009, J. Biol. Chem. 284: 32493-32506、及びValliere-Douglassらの文献、2010, J. Biol. Chem. 285: 16012-16022を参照されたく、これらは各々、引用により完全に組み込まれている)。
(iii)そのような非標準部位は、通常、抗体集団の低レベルのグリコシル化(例えば、約1〜5%)をもたらすが、眼などの免疫寛容を受けている(immunoprivileged)器官では、機能的利点が顕著であり得る(例えば、van de Bovenkampらの文献、2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい)。例えば、Fabのグリコシル化は、抗体の安定性、半減期、及び結合特性に影響を及ぼし得る。その標的に対する抗体の親和性に対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又は表面プラズモン共鳴(SPR)を使用することができる。抗体の半減期に対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法を、例えば、放射性標識抗体が投与された対象における血液又は器官(例えば、眼)中の放射能のレベルの測定によって使用することができる。抗体の安定性、例えば、凝集又はタンパク質アンフォールディングのレベルに対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動、質量分析、又は濁度測定を使用することができる。本明細書に提供される、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi導入遺伝子は、非標準部位で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くグリコシル化されているFabの産生をもたらす。ある実施態様において、Fab集団由来の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くのFabが非標準部位でグリコシル化されている。ある実施態様において、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くの非標準部位がグリコシル化されている。ある実施態様において、これらの非標準部位でのFabのグリコシル化は、HEK293細胞で産生されるFab中のこれらの非標準部位のグリコシル化の量よりも25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、又はそれを超えて大きい。
(iv)グリコシル化部位に加え、ラニビズマブなどの抗VEGF Fab(及びベバシズマブのFab)は、CDRの内部又は近傍にチロシン(「Y」)硫酸化部位を含む;ラニビズマブのVH(EDTAVY94Y95)及びVL(EDFATY86)ドメイン中のチロシン-O-硫酸化部位(並びにベバシズマブのFab中の対応する部位)を特定している図1を参照されたい(例えば、タンパク質チロシン硫酸化を受けたチロシン残基の周囲のアミノ酸の解析については、引用により完全に組み込まれる、Yangらの文献、2015, Molecules 20:2138-2164、特にp.2154を参照されたい。「規則」は、次のように要約することができる: Y残基は、Yの位置から+5〜-5以内にE又はDを有し、その場合、Yの-1位は、中性又は酸性の荷電アミノ酸であるが、硫酸化を無効化する塩基性アミノ酸、例えば、R、K、又はHではない)。ヒトIgG抗体は、いくつかの他の翻訳後修飾、例えば、N-末端修飾、C-末端修飾、アミノ酸残基の分解又は酸化、システイン関連バリアント、及び糖化を示し得る(例えば、Liuらの文献、2014, mAbs 6(5):1145-1154を参照されたい)。
(v)ヒト網膜細胞による抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブ又はベバシズマブのFab断片のグリコシル化は、導入遺伝子産物の安定性、半減期を向上させ、かつその望ましくない凝集及び/又は免疫原性を低下させることができるグリカンの付加をもたらす(例えば、Fabグリコシル化の新たな重要性の総説については、Bovenkampらの文献、2016, J. Immunol. 196: 1435-1441を参照されたい)。重要なことに、本明細書に提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに付加されることができるグリカンは、2,6-シアル酸を含む高度にプロセシングされた複合体型バイアンテナリーN-グリカン(例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに組み込まれ得るグリカンを示している図2を参照)及びバイセクティングGlcNAcであり、NGNA(N-グリコリルノイラミン酸、Neu5Gc)ではない。そのようなグリカンは、ラニビズマブ(これは、大腸菌で作製され、全くグリコシル化されない)にも、ベバシズマブ(これは、この翻訳後修飾を行うのに必要とされる2,6-シアリルトランスフェラーゼも、CHO細胞産物のバイセクティングGlcNAcも有さないが、Neu5Ac(NANA)の代わりに、ヒトに特有でない(かつ潜在的に免疫原性のある)シアル酸としてNeu5Gc(NGNA)を付加するCHO細胞で作製される)にも存在しない。例えば、Dumontらの文献、2015, Crit. Rev. Biotechnol.(早期オンライン版、2015年9月18日オンライン公開、pp.1-13、p.5)を参照されたい。さらに、CHO細胞は、ほとんどの個体に存在する抗α-Gal抗体と反応し、高濃度ではアナフィラキシーを誘発し得るα-Gal抗原という免疫原性グリカンを産生することもできる。例えば、Bosquesの文献、2010, Nat Biotech 28: 1153-1156を参照されたい。本明細書に提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiのヒトグリコシル化パターンは、導入遺伝子産物の免疫原性を低下させ、効力を向上させるはずである。
(vi)抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブ又はベバシズマブのFab断片のチロシン硫酸化−ヒト網膜細胞における堅牢な翻訳後プロセス−は、VEGFに対する結合力が増大した導入遺伝子産物を生じさせることができる。実際、他の標的に対する治療抗体のFabのチロシン硫酸化は、抗原に対する結合力と活性とを劇的に増大させることが示されている(例えば、Loosらの文献、2015, PNAS 112: 12675-12680、及びChoeらの文献、2003, Cell 114: 161-170を参照されたい)。そのような翻訳後修飾は、ラニビズマブ(これは、チロシン硫酸化に必要とされる酵素を保有しない宿主である大腸菌で作製される)には存在せず、CHO細胞産物のベバシズマブでも、せいぜい不十分にしか提示されない。ヒト網膜細胞とは異なり、CHO細胞は分泌細胞ではなく、翻訳後チロシン硫酸化の能力は限定されている(例えば、Mikkelsen及びEzbanの文献、1991, Biochemistry 30: 1533-1537、特に、p.1537の考察を参照されたい)。
【0076】
以上の理由により、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの産生は、遺伝子療法−例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiをコードするウイルスベクター又は他のDNA発現コンストラクトを、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者(ヒト対象)の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与して、形質導入された網膜細胞によって産生される翻訳後修飾された完全ヒトの、例えば、グリコシル化され、硫酸化されたヒトの導入遺伝子産物を持続的に供給する永久デポーを眼内に作ることにより達成される、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)の治療のための「バイオベター」分子をもたらすはずである。Fab VEGFiのためのcDNAコンストラクトは形質導入された網膜細胞による適切な共翻訳及び翻訳後プロセシング(グリコシル化及びタンパク質硫酸化)を保証するシグナルペプチドを含むべきである。網膜細胞によって使用されるそのようなシグナル配列としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【化85】
[この文献は図面を表示できません]
・例えば、使用することができるシグナルペプチドについては、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Sternらの文献、2007, Trends Cell. Mol. Biol., 2:1-17並びにDalton及びBartonの文献、2014, Protein Sci, 23: 517-525を参照されたい)。
【0077】
遺伝子療法に代わるもの、又は遺伝子療法の追加治療として、HuPTMFabVEGFi産物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質を組換えDNA技術によってヒト細胞株で産生し、硝子体内注射によって、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者に投与することができる。HuPTMFabVEGFi産物、例えば、糖タンパク質を、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)を有する患者に投与することもできる。そのような組換え糖タンパク質の産生に使用することができるヒト細胞株としては、例を挙げると、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)、線維肉腫HT-1080、HKB-11、CAP、HuH-7、及び網膜細胞株PER.C6又はRPEが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、HuPTMFabVEGFi産物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質の組換え生産のために使用することができるヒト細胞株の総説については、引用により完全に組み込まれている、Dumontらの文献、2015, Crit. Rev. Biotechnol.(早期オンライン版、2015年9月18日にオンライン公開、pp.1-13)、「生物製剤製造用のヒト細胞株:歴史、現状、及び将来の展望(Human cell lines for biopharmaceutical manufacturing: history, status, and future perspectives)」を参照されたい)。完全なグリコシル化、特に、シアリル化及びチロシン硫酸化を保証するために、産生用に使用される細胞株を、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(もしくはα-2,3-シアリルトランスフェラーゼとα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの両方)並びに/又は網膜細胞におけるチロシン-O-硫酸化に関与するTPST-1及びTPST-2酵素を共発現するように宿主細胞を改変することにより増強することができる。
【0078】
他の利用可能な治療の送達を伴う眼/網膜へのHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの送達の組合せは、本明細書に提供される方法に包含される。さらなる治療を遺伝子療法治療の前、それと同時に、又はその後に施すことができる。本明細書に提供される遺伝子療法と組み合わせることができる滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)の利用可能な治療としては、レーザー光凝固法、ベルテポルフィンによる光線力学療法、及び限定されないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブを含む抗VEGF剤の硝子体内(「IVT」)注射が挙げられるが、これらに限定されない。抗VEGF剤による追加治療、例えば、生物製剤は、「レスキュー」療法と呼ばれる場合がある。
【0079】
低分子薬物とは異なり、生物製剤は、通常、異なる効力、薬物動態、及び安全性プロファイルを有する異なる修飾又は形態を有する多くのバリアントの混合物を含む。遺伝子療法又はタンパク質療法アプローチのいずれかにおいて産生される全ての分子が完全にグリコシル化され、かつ硫酸化されていることは必須ではない。むしろ、産生される糖タンパク質の集団は、効力を示すのに十分な2,6-シアリル化を含むグリコシル化(集団の約1%〜約10%)及び硫酸化を有するべきである。本明細書に提供される遺伝子療法治療の目的は、網膜変性症の進行を減速又は停止させること、及び最小限の介入/侵襲的処置で視力喪失を減速させ又は予防することである。効力は、BCVA(最高矯正視力)の測定、眼圧、スリットランプ生体顕微鏡検査、間接的検眼鏡検査、SD-OCT(SD-光干渉断層撮影)、網膜電図(ERG)によってモニタリングすることができる。視力喪失、感染症、炎症、及び網膜剥離を含む他の安全性事象の徴候もモニタリングすることができる。本明細書に提供される治療の効力を決定するために、網膜厚をモニタリングしてもよい。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、網膜の厚さを臨床読取値として使用することができ、その場合、網膜厚の低下が大きいほど又は網膜の肥厚までの期間が長いほど、治療がより有効となる。網膜厚は、例えば、SD-OCTによって決定することができる。SD-OCTは、低コヒーレンス干渉法を用いて、対象となる物体から反射される後方散乱光のエコー時間遅延及び振幅を決定する3次元画像化技術である。OCTを用いて、3〜15μmの軸方向分解能で組織試料(例えば、網膜)の層をスキャンすることができ、SD-OCTは、以前の型の技術よりも軸方向分解能及びスキャン速度を向上させる(Schumanの文献、2008, Trans. Am. Opthamol. Soc. 106:426-458)。網膜機能は、例えば、ERGによって決定することができる。ERGは、ヒトでの使用がFDAによって承認された網膜機能の非侵襲的電気生理的検査であり、これは、眼の光感受性細胞(桿体及び錐体)並びにそれが接続している神経節細胞、特に、その閃光刺激への応答を調べる。
【0080】
好ましい実施態様において、抗原結合断片は、検出可能なNeuGc及び/又はα-Galを含まない。本明細書で使用される「検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal」という語句は、当技術分野で公知の標準的なアッセイ法によって検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal部分を意味する。例えば、NeuGcは、NeuGcの検出方法について、引用により本明細書中に組み込まれる、Haraらの文献、1989, 「蛍光検出を用いた逆相液体クロマトグラフィーによるヒト血清及び尿並びにラット血清中のN-アセチル-及びN-グリコリルノイラミン酸の高感度測定(Highly Sensitive Determination of N-Acetyl-and N-Glycolylneuraminic Acids in Human Serum and Urine and Rat Serum by Reversed-Phase Liquid Chromatography with Fluorescence Detection.)」、J. Chromatogr., B: Biomed. 377: 111-119に従って、HPLCにより検出することができる。或いは、NeuGcは、質量分析によって決定することができる。α-Galは、ELISA(例えば、Galiliらの文献、1998, 「モノクローナル抗Gal抗体によって細胞表面のα-Galエピトープ発現を測定するための高感度アッセイ(A sensitive assay for measuring alpha-Gal epitope expression on cells by a monoclonal anti-Gal antibody.)」、Transplantation. 65(8):1129-32を参照)を用いて、又は質量分析(例えば、Ayoubらの文献、2013, 「インタクト、ミドルアップ、ミドルダウン、及びボトムアップESIとMALDI質量分析法の組合せによるセツキシマブの正確な一次構造評価及び詳細なグライコプロファイリング(Correct primary structure assessment and extensive glyco-profiling of cetuximab by a combination of intact, middle-up, middle-down and bottom-up ESI and MALDI mass spectrometry techniques.)」、Landes Bioscience. 5(5): 699-710を参照)によって検出することができる。Platts-Millsらの文献、2015, 「炭水化物側鎖α-galに対するアナフィラキシー(Anaphylaxis to the Carbohydrate Side-Chain Alpha-gal)」、Immunol Allergy Clin North Am. 35(2): 247-260で引用されている参考文献も参照されたい。
【0081】
ある態様において、また本明細書に提供されるのは、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む抗VEGF抗原結合断片(すなわち、VEGFに免疫特異的に結合する抗原結合断片)であり、ここで、軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化86】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化87】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化88】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化89】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化90】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化91】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。本明細書に提供される抗VEGF抗原結合断片は、本明細書に記載される本発明による任意の方法で使用することができる。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0082】
ある態様において、また本明細書に提供されるのは、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む抗VEGF抗原結合断片であり、ここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化92】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化93】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化94】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化95】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化96】
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中のN)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化97】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化98】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化99】
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中のN)は、アセチル化されていない。本明細書に提供される抗VEGF抗原結合断片は、本明細書に記載される本発明による任意の方法で使用することができる。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0083】
ある態様において、また本明細書に提供されるのは、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む抗VEGF抗原結合断片であり、ここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化100】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化101】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化102】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化103】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化104】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化105】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化106】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化107】
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中のN)は、アセチル化されておらず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化108】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化109】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化110】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化111】
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中のN)は、アセチル化されておらず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化112】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化113】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。本明細書に提供される抗VEGF抗原結合断片は、本明細書に記載される本発明による任意の方法で使用することができる。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0084】
本発明の予想外の利益は、下記の実施例に示されており、これらの実施例は、網膜下腔に注射されたrAAV8.抗hVEGF FabベクターからのHuPTMFabVEGFiの発現によって、(i)ヒト対象におけるnAMDのモデルであるトランスジェニックマウスの網膜下新生血管形成が低下し;かつ(ii)驚くべきことに、VEGFの眼内産生によって引き起こされる重度の増殖性網膜症及び網膜剥離を発症する眼内新生血管疾患のトランスジェニックマウスモデルにおいて網膜剥離が予防されたことを示している。
【0085】
これらの実施例は、rAAV8.抗hVEGF Fabベクターの上脈絡膜投与が該ベクターの網膜下注射と同等にVEGF誘導性損傷の中和に有効であったことも示している。上脈絡膜投与は、合併症のリスクが低い迅速かつ容易な医院内処置を可能にする。
【0086】
別の企図される投与経路は、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを有する網膜下薬物送達装置を使用する、上脈絡膜腔経由の網膜下投与である。この投与経路は、硝子体を無傷の状態に維持することを可能にし、したがって、合併症リスクがより少なく(遺伝子療法撤退、並びに網膜剥離及び黄斑円孔などの合併症のリスクがより少なく)、かつ硝子体切除なしで、結果として生じるブレブがより拡散的に広がって、網膜のより多くの表面領域がより少ない容量で遺伝子導入されることを可能にすることができる。この処置の後の白内障の誘発のリスクは最小限に抑えられ、これは、若い患者にとって望ましい。さらに、この処置は、ブレブを標準的な経硝子体アプローチよりも安全に中心窩下に送達することができ、これは、遺伝性網膜疾患を有する患者にとって望ましく、形質導入の標的細胞が黄斑の中にある場合、中心視をもたらす。この処置は、他の送達経路に影響を及ぼし得る全身循環中に存在するAAVに対する中和抗体(Nab)を有する患者にとっても望ましい。さらに、この方法は、標準的な経硝子体アプローチよりも網膜切開部位からの放出が少ないブレブを作ることが示されている。
【0087】
強膜近傍投与は、眼に治療剤を直接注射することに伴って一般に見られる副作用である眼内感染及び網膜剥離のリスクを回避するさらなる投与経路を提供する。
(3.1 例示的な実施態様)
(3.1.1 セット1)
1.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法。
2.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、経硝子体アプローチによるか又は該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由する網膜下注射によって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法。
3.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、及び糖尿病網膜症(DR)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の網膜に、ヒト網膜細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法。
4.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法。
5.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、経硝子体アプローチによるか又は該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由する網膜下注射によって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法。
6.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の網膜に、ヒト視細胞(例えば、錐体細胞及び/もしくは桿体細胞)、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(例えば、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/もしくはミュラーグリア)、並びに/又は外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される抗hVEGF抗原結合断片の治療有効量を送達することを含む、方法。
7.抗原結合断片がFabである、段落1〜6のいずれか1つに記載の方法。
8.抗原結合断片がF(ab')2である、段落1〜6のいずれか1つに記載の方法。
9.抗原結合断片が単鎖可変ドメイン(scFv)である、段落1〜6のいずれか1つに記載の方法。
10.抗原結合断片が、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、段落1〜6のいずれか1つに記載の方法。
11.抗原結合断片が、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号17〜19又は配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む、段落1〜6のいずれか1つに記載の方法。
12.軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、段落11記載の方法。
13.軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落12記載の方法。
14.軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基が、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落12又は13記載の方法。
15.抗原結合断片が配列番号20の重鎖CDR1を含み、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、段落11〜14のいずれか1つに記載の方法。
16.重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落15記載の方法。
17.重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落15又は16記載の方法。
18.送達する工程が、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを、3×109ゲノムコピー〜2.5×1011ゲノムコピーの範囲の用量で投与することを含む、段落1〜17のいずれか1つに記載の方法。
19.送達する工程が、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを、約3×109ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落1〜17のいずれか1つに記載の方法。
20.送達する工程が、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを、約1×1010ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落1〜17のいずれか1つに記載の方法。
21.送達する工程が、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを、約6×1010ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落1〜17のいずれか1つに記載の方法。
22.送達する工程が、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを、約1.6×1011ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落1〜17のいずれか1つに記載の方法。
23.送達する工程が、抗hVEGF抗原結合断片をコードする発現ベクターを、約2.5×1011ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落1〜17のいずれか1つに記載の方法。
24.新生血管加齢黄斑変性症(滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD))と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片(Fab、F(ab')2、又はscFv、本明細書において、「抗原結合断片」と総称される)の治療有効量を送達することを含み、該抗原結合断片がα2,6-シアリル化グリカンを含む、方法。
25.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、経硝子体アプローチによるか又は該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由する網膜下注射によって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片(Fab、F(ab')2、又はscFv、本明細書において、「抗原結合断片」と総称される)の治療有効量を送達することを含み、該抗原結合断片がα2,6-シアリル化グリカンを含む、方法。
26.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片(Fab、F(ab')2、又はscFv、本明細書において、「抗原結合断片」と総称される)の治療有効量を送達することを含み、該抗原結合断片がα2,6-シアリル化グリカンを含む、方法。
27.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法。
28.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、経硝子体アプローチによるか又は該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由する網膜下注射によって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することにより、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法。
29.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、マイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置の使用により、該ヒト対象の眼に、hVEGFに対するmAbのグリコシル化抗原結合断片の治療有効量を送達することを含み、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法。
30.送達する工程が、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターを、3×109ゲノムコピー〜2.5×1011ゲノムコピーの範囲の用量で投与することを含む、段落24〜29のいずれか1つに記載の方法。
31.送達する工程が、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターを、約3×109ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落24〜29のいずれか1つに記載の方法。
32.送達する工程が、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターを、約1×1010ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落24〜29のいずれか1つに記載の方法。
33.送達する工程が、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターを、約6×1010ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落24〜29のいずれか1つに記載の方法。
34.送達する工程が、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターを、約1.6×1011ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落24〜29のいずれか1つに記載の方法。
35.送達する工程が、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターを、約2.5×1011ゲノムコピーの用量で投与することを含む、段落24〜29のいずれか1つに記載の方法。
36.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化される、方法。
37.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、かつここで、該投与する工程が、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用を含む、方法。
38.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト患者の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与又は送達することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化される、方法。
39.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法。
40.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該投与する工程が、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用を含む、方法。
41.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって:該ヒト患者の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターを投与又は送達することを含み、ここで、該抗原結合断片の発現が、ヒト不死化網膜由来細胞で該発現ベクターから発現されたときに、α2,6-シアリル化され、ここで、該抗原結合断片が検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法。
42. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターが3×109ゲノムコピー〜2.5×1011ゲノムコピーの範囲の用量で投与される、段落36〜41のいずれか1つに記載の方法。
43. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターが約3×109ゲノムコピーの用量で投与される、段落36〜41のいずれか1つに記載の方法。
44. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターが約1×1010ゲノムコピーの用量で投与される、段落36〜41のいずれか1つに記載の方法。
45. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターが6×1010ゲノムコピー約の用量で投与される、段落36〜41のいずれか1つに記載の方法。
46. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターが約1.6×1011ゲノムコピーの用量で投与される、段落36〜41のいずれか1つに記載の方法。
47. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする発現ベクターが約2.5×1011ゲノムコピーの用量で投与される、段落36〜41のいずれか1つに記載の方法。
48.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成される、方法。
49.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該投与する工程が、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用を含む、方法。
50.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト患者の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成される、方法。
51.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法。
52.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず、かつここで、該投与する工程が、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用を含む、方法。
53.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト患者の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない、方法。
54. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが3×109ゲノムコピー〜2.5×1011ゲノムコピーの範囲の用量で投与される、段落48〜53のいずれか1つに記載の方法。
55. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約3×109ゲノムコピーの用量で投与される、段落48〜53のいずれか1つに記載の方法。
56. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約1×1010ゲノムコピーの用量で投与される、段落48〜53のいずれか1つに記載の方法。
57. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約6×1010ゲノムコピーの用量で投与される、段落48〜53のいずれか1つに記載の方法。
58. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約1.6×1011ゲノムコピーの用量で投与される、段落48〜53のいずれか1つに記載の方法。
59. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約2.5×1011ゲノムコピーの用量で投与される、段落48〜53のいずれか1つに記載の方法。
60.抗原結合断片が、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、段落24〜59のいずれか1つに記載の方法。
61.抗原結合断片がチロシン硫酸化をさらに含む、段落24〜60のいずれか1つに記載の方法。
62.α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生が、細胞培養中で、該組換えヌクレオチド発現ベクターを、PER.C6又はRPE細胞株に形質導入することにより確認される、段落24〜61のいずれか1つに記載の方法。
63.チロシン硫酸化を含む該抗原結合断片の産生が、細胞培養中で、該組換えヌクレオチド発現ベクターを、PER.C6又はRPE細胞株に形質導入することにより確認される、段落24〜61のいずれか1つに記載の方法。
64.ベクターが低酸素誘導性プロモーターを有する、段落24〜63のいずれか1つに記載の方法。
65.抗原結合断片が、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号17〜19又は配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む、段落24〜64のいずれか1つに記載の方法。
66.軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、段落65記載の方法。
67.軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落66記載の方法。
68.軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基が、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落66又は67記載の方法。
69.抗原結合断片が配列番号20の重鎖CDR1を含み、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、段落65〜68のいずれか1つに記載の方法。
70.重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落69記載の方法。
71.重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落69又は70記載の方法。
72.抗原結合断片導入遺伝子がリーダーペプチドをコードする、段落24〜71のいずれか1つに記載の方法。
73.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらす、方法。
74.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該投与する工程が、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用を含む、方法。
75.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト患者の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、α2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片を放出するデポーが形成され;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中でα2,6-シアリル化グリカンを含む該抗原結合断片の産生をもたらす、方法。
76.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらす、方法。
77.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらし、かつここで、該投与する工程が、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用を含む、方法。
78.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト患者の網膜に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、hVEGFに対するmAbの抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターの治療有効量を投与又は送達することを含み、その結果、該抗原結合断片を放出するデポーが形成され、ここで、該抗原結合断片がグリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まず;ここで、該組換えベクターが、培養液中のPER.C6又はRPE細胞に形質導入するために使用されたとき、該細胞培養中で、グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない該抗原結合断片の産生をもたらす、方法。
79. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが3×109ゲノムコピー〜2.5×1011ゲノムコピーの範囲の用量で投与される、段落73〜78のいずれか1つに記載の方法。
80. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約3×109ゲノムコピーの用量で投与される、段落73〜78のいずれか1つに記載の方法。
81. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約1×1010ゲノムコピーの用量で投与される、段落73〜78のいずれか1つに記載の方法。
82. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約6×1010ゲノムコピーの用量で投与される、段落73〜78のいずれか1つに記載の方法。
83. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約1.6×1011ゲノムコピーの用量で投与される、段落73〜78のいずれか1つに記載の方法。
84. hVEGFに対する抗原結合断片をコードする組換えヌクレオチド発現ベクターが約2.5×1011ゲノムコピーの用量で投与される、段落73〜78のいずれか1つに記載の方法。
85.眼に送達することが、該眼の網膜、脈絡膜、及び/又は硝子体液に送達することを含む、段落24〜35のいずれか1つに記載の方法。
86.抗原結合断片が、C-末端に1つ、2つ、3つ、又は4つのさらなるアミノ酸を含む重鎖を含む、段落1〜85のいずれか1つに記載の方法。
87.抗原結合断片が、C-末端にさらなるアミノ酸を含まない重鎖を含む、段落1〜85のいずれか1つに記載の方法。
88.抗原結合断片分子の集団を産生し、ここで、該抗原結合断片分子が重鎖を含み、かつここで、該抗原結合断片分子の集団の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、もしくは20%、又はそれ未満、しかし、0%よりも多くが、該重鎖のC-末端に1つ、2つ、3つ、又は4つのさらなるアミノ酸を含む、段落1〜85のいずれか1つに記載の方法。
89.抗原結合断片分子の集団を産生し、ここで、該抗原結合断片分子が重鎖を含み、かつここで、該抗原結合断片分子の集団の0.5〜1%、0.5%〜2%、0.5%〜3%、0.5%〜4%、0.5%〜5%、0.5%〜10%、0.5%〜20%、1%〜2%、1%〜3%、1%〜4%、1%〜5%、1%〜10%、1%〜20%、2%〜3%、2%〜4%、2%〜5%、2%〜10%、2%〜20%、3%〜4%、3%〜5%、3%〜10%、3%〜20%、4%〜5%、4%〜10%、4%〜20%、5%〜10%、5%〜20%、又は10%〜20%が、該重鎖のC-末端に1つ、2つ、3つ、又は4つのさらなるアミノ酸を含む、段落1〜85のいずれか1つに記載の方法。
90.ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400であるBCVAを有する、段落1〜89のいずれか1つに記載の方法。
91.ヒト対象が≦20/63かつ≧20/400であるBCVAを有する、段落1〜90のいずれか1つに記載の方法。
92. BCVAが該ヒト対象で治療されるべき眼のBCVAである、段落90又は91記載の方法。
93.VEGFに免疫特異的に結合する抗原結合断片であって、該抗原結合断片が配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、抗原結合断片。
94.軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落93記載の抗原結合断片。
95.軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基が、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落93又は94記載の抗原結合断片。
96.重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、段落93〜95のいずれか1つに記載の抗原結合断片。
97.重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落96記載の抗原結合断片。
98.重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落96又は97記載の抗原結合断片。
(3.1.2 セット2)
1.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔に、抗ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)抗体をコードする発現ベクターを投与することを含む、方法。
2.投与することが、上脈絡膜薬物送達装置を用いて、発現ベクターを上脈絡膜腔に注射することによるものである、段落1記載の方法。
3.上脈絡膜薬物送達装置がマイクロインジェクターである、段落1又は2記載の方法。
4.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の網膜下腔に、該ヒト対象の眼の上脈絡膜腔を経由して、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することを含む、方法。
5.投与することが、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置の使用によるものである、段落4記載の方法。
6.投与することが、網膜下薬物送達装置のカテーテルを上脈絡膜腔から挿入し、貫通させることを含む、段落5記載の方法。
7.滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、該ヒト対象の眼の強膜の外表面に、抗hVEGF抗体をコードする発現ベクターを投与することを含む、方法。
8.投与することが、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置の使用によるものである、段落7記載の方法。
9.投与することが、カニューレの先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することを含む、段落8記載の方法。
10.投与することが抗hVEGF抗体の治療有効量を該ヒト対象の網膜に送達する、段落1〜9のいずれか1つに記載の方法。
11.抗hVEGF抗体の治療有効量が該ヒト対象の網膜のヒト網膜細胞によって産生される、段落10記載の方法。
12.抗hVEGF抗体の治療有効量が、ヒト視細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞、及び/又は該ヒト対象の外境界膜の網膜色素上皮細胞によって産生される、段落10記載の方法。
13.ヒト視細胞が錐体細胞及び/又は桿体細胞である、段落12記載の方法。
14.網膜神経節細胞が、ミジェット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、光感受性神経節細胞、及び/又はミュラーグリアである、段落12記載の方法。
15.ヒト対象が≦20/20かつ≧20/400である最高矯正視力(BCVA)を有する、段落1〜14のいずれか1つに記載の方法。
16.ヒト対象が≦20/63かつ≧20/400であるBCVAを有する、段落1〜14のいずれか1つに記載の方法。
17.BCVAがヒト対象で治療されるべき眼のBCVAである、段落15又は16記載の方法。
18.抗hVEGF抗体が抗hVEGF抗原結合断片である、段落1〜17のいずれか1つに記載の方法。
19.抗原結合断片がFabである、段落18記載の方法。
20.抗原結合断片がF(ab')2である、段落18記載の方法。
21.抗原結合断片が単鎖可変ドメイン(scFv)である、段落18記載の方法。
22.抗hVEGF抗体が、配列番号1又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、段落1〜21のいずれか1つの方法。
23.抗hVEGF抗体が、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号17〜19又は配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む、段落1〜21のいずれか1つに記載の方法。
24.軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、段落22記載の方法。
25.軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落23記載の方法。
26.軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基が、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落23又は24記載の方法。
27.抗hVEGF抗体が配列番号20の重鎖CDR1を含み、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない、段落22〜25のいずれか1つに記載の方法。
28.重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基がアセチル化されていない、段落26記載の方法。
29.重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基が、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有する、段落26又は27記載の方法。
30.発現ベクターがAAVベクターである、段落1〜29のいずれか1つに記載の方法。
31.発現ベクターがAAV8ベクターである、段落30記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0088】
(4.図面の簡単な説明)
図1】ベバシズマブFab(下)中の5つの異なる残基を示しているラニビズマブ(上)のアミノ酸配列。可変及び定常重鎖(VH及びCH)並びに軽鎖(VL及びVC)の始点が矢印(→)によって示されており、CDRには下線が引かれている。非コンセンサスグリコシル化部位(「Gsite」)チロシン-O-硫酸化部位(「Ysite」)が示されている。
【0089】
図2】HuGlyFabVEGFiに付加することができるグリカン(Bondtらの文献、2014, Mol & Cell Proteomics 13.1: 3029-3039から抜粋)。
【0090】
図3】ラニビズマブ(上)及びベバシズマブFab(下)の高グリコシル化バリアントのアミノ酸配列。可変及び定常重鎖(VH及びCH)並びに軽鎖(VL及びVC)の始点が矢印(→)によって示されており、CDRには下線が引かれている。非コンセンサスグリコシル化部位(「Gsite」)及びチロシン-O-硫酸化部位(「Ysite」)が示されている。4つの高グリコシル化バリアントがアステリスク(*)を付して示されている。
【0091】
図4】ベクター1の網膜下注射を投与されたRho/VEGFマウスにおける新生血管面積の用量依存的な低下。Rho/VEGFマウスに、表示された用量のベクター1又は対照(PBSもしくは1×1010GC/眼の空ベクター)を網膜下注射し、1週間後に、網膜新生血管形成の面積を定量化した。マウス/群の数が各バーの上に示されている。*は、0.0019〜0.0062のp値を示し; **は、<0.0001のp値を示している。
【0092】
図5】ベクター1の網膜下注射を投与されたTet/オプシン/VEGFマウスにおける網膜剥離の発生率及び重症度の低下。Tet/オプシン/VEGFマウスに、表示された用量のベクター1又は対照(PBSもしくは1×1010GC/眼の空ベクター)を網膜下注射した。10日後、飲用水にドキシサイクリンを添加して、VEGF発現を誘導し、4日後、眼を、完全網膜剥離、部分剥離の存在、又は剥離の不在について評価した。
【0093】
図6】3種の異なるVEGF中和タンパク質の発現カセットの網膜下注射後のタンパク質レベル。抗VEGFfab、抗VEGF全長抗体(Ab)、及び可溶性Flt1のcDNAを、CMVプロモーター及びウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む同じ発現カセットに挿入し、AAV8にパッケージングした。成体C57BL/6マウスの一方の眼に、3×109GCの網膜下注射を投与した。注射から14日後、マウスを安楽死させ、網膜を解剖し、各々の導入遺伝子のレベルをELISAにより測定した。各バーは、最初の2つのバーについては、n=6、3番目のバーについては、n=22で、平均(±SEM)を表している。
【0094】
図7】(図7A) AAV8-抗VEGFfabゲノムの模式図。
【0095】
(図7B)成体C57BL/6マウスに、1010ゲノムコピー(GC)の空のAAV8ベクター又は1×108〜1×1010GCの用量のAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射を投与した。7日後、マウスを安楽死させ、眼を摘出し、アッセイするまで凍結させた。眼を溶解バッファー中でホモジナイズし、AAV8-抗VEGFfabタンパク質をELISAにより測定した。バーは、各バーについてn=又は各バーについてn≧で、平均(±SEM)を表している。
【0096】
図8】(図8A) AAV8-抗VEGFfabの網膜下注射はrho/VEGFマウスにおける3型脈絡膜新生血管形成を抑制する。出生後(P)14日で、ロドプシンプロモーターによって視細胞におけるヒトVEGF165の発現が駆動されるrho/VEGFトランスジェニックマウスに、1×1010GCの空のAAV8、3×106〜1×1010GCの用量のAAV8-抗VEGFfab、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の網膜下注射を投与した。P21で、網膜フラットマウントを、血管細胞を染色するFITC標識グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia Simplicifolia)レクチンで染色した。PBSが注射された眼の網膜フラットマウントは、より高い解像度(上段、中央)で、網膜の深部毛細血管床から発生して、網膜下腔へと伸長することが見られる多くの新生血管形成(NV)の出芽を示した。空ベクターが注射された眼は、PBSが注射された眼で見られたものと同様の多くのNVの出芽を示した(上段、右)。対照的に、1010GC、3×109GC、又は109GCのAAV8-抗VEGFfabが注射された眼のフラットマウントは、より少ないNVの出芽を示し(二段目)、3×108GC〜107GCの用量を受けた眼のフラットマウントは、中間の数のNVの出芽を示し(二段目及び三段目)、3×106GCが注射された眼は、対照眼と同じように見えた。スケールバー=100μm。
【0097】
(図8B)画像解析を用いて、網膜当たりのNVの面積を測定した。バーは、平均(±SEM)を示している。多重比較用のボンフェローニ補正を用いるANOVAによる空ベクターとの違いについて、*p<0.05; **p<0.01。
【0098】
図9】(図9A、9B)成体Tet/オプシン/VEGF二重トランスジェニックマウスは、一方の眼に1×108〜1×1010GCの範囲の用量のAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射を受け、他眼に注射を受けなかったか、又は一方の眼に1×1010GCのヌルベクターの網膜下注射を受け、他眼にPBSの注射を受けた。注射から10日後、2mg/mlのドキシサイクリンを飲用水に添加し、4日後、眼底の写真を、完全網膜剥離、部分網膜剥離の存在、又は網膜剥離の不在について等級分けし、剥離のパーセンテージを各々の眼について測定した。代表的な眼底の写真は、PBS又は空ベクターが注射されたマウス(B)で見られたものと同様の1×108又は3×109GCのAAV8-抗VEGFfabが注射されたマウス(A、左)における完全網膜剥離を示している。1×109GCが注射された眼では部分網膜剥離が見られ、3×109又は1×1010GCのAAV8-抗VEGFfabが注射された眼では網膜剥離が見られなかった(A、右3列)。
【0099】
(図9C) 3×109GCのAAV8-抗VEGFfabが注射された眼由来のHoechstで染色された眼切片は、網膜剥離を示さなかったが、注射を受けていない他眼由来の切片は、完全網膜剥離を示した。
【0100】
(図9D)円グラフは、AAV8-抗VEGFfabが注射された眼における滲出性網膜剥離の用量依存的な低下を示している。
【0101】
(図9E)剥離の不在、部分剥離又は完全剥離の存在に関して空ベクター群との違いが存在するかどうかが様々な用量について示されるフィッシャー検定によって実施されたp-値。多重比較用のボンフェローニ補正を用いる一元配置ANOVAによると、平均(±SEM)網膜剥離率は、他のいずれの群についてよりも3×109又は1×1010GCのAAV8-抗VEGFfabが注射された眼について有意に小さかった(*p=0.002、**p=0.001)。
【0102】
図10】(図10A)成体Tet/オプシン/VEGF二重トランスジェニックマウスは、一方の眼に3×109GCのAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射を受け、他眼に注射を受けなかったか、又は3×109GCのヌルベクターの網膜下注射を受け、他眼に注射を受けなかった。注射から1カ月後、2mg/mlのドキシサイクリンを飲用水に添加し、4日後、眼底の写真を、完全網膜剥離、部分網膜剥離の存在、又は網膜剥離の不在について等級分けし、剥離した網膜のパーセンテージを各々の眼で測定した。3×109GCのAAV8-抗VEGFfabが注射された代表的なマウスの眼底の写真は、注射を受けた眼で剥離の不在を示し、他眼で完全剥離を示したが(A、左の2つのパネル)、3×109GCの空ベクターが注射された代表的なマウスの眼底の写真は、各々の眼で重度の完全網膜剥離を示した(A、右の2つのパネル)。
【0103】
(図10B) 3×109GCのAAV8-抗VEGFfabが注射されたマウス由来のHoechstで染色された眼切片は、注射を受けた眼で付着網膜を示し、他眼で完全剥離を示した(B、左の2つのパネル)。3×109GCの空ベクターが注射されたマウス由来の眼切片は、各々の眼で完全網膜剥離を示した(B、右の2つのパネル)。
【0104】
(図10C) AAV8-抗VEGFfabが注射された10個の眼のうちの9個は、網膜剥離を有さなかったが、10個の他眼のうちの8個は、完全網膜剥離を有していた(フィッシャー検定により、p<0.001)。対照的に、空ベクターが注射された8個の眼のうちの7個及び他眼は、完全網膜剥離を有していた(p=1.0)。空ベクターが注射された眼と比較して、AAV8-抗VEGFfabが注射された眼で有意な網膜剥離の予防が見られた(フィッシャー検定により、p=0.001)。
【0105】
(図10D) AAV8-抗VEGFfabが注射された眼(n=10)において、眼当たりの平均(±SEM)網膜剥離(RD)率は、他眼の平均(±SEM)網膜剥離(RD)率(*p<0.001)又は空ベクターが注射された眼の平均(±SEM)網膜剥離(RD)率よりも有意に小さかった(n=8; †ボンフェローニ補正を用いる一元配置ANOVAにより、p=0.001)。
【0106】
図11】標的配列(配列番号38及び配列番号39)が示されている。
【0107】
図12】4×2.5μgの対照及び網膜細胞株を、SDS-PAGEを用いて分離した。〜25kDのバンドを切り出した。
【0108】
図13】対照試料についてのゲルに基づくペプチドマッピングの結果。データは、両方の配列(配列番号38及び配列番号40)と一致した。囲まれたアミノ酸残基は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つを保有する。
【0109】
図14】対照試料についての溶液に基づくペプチドマッピングの結果。データは、両方の配列(配列番号38及び配列番号40)と一致した。囲まれたアミノ酸残基は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つを保有する。
【0110】
図15】(図15A、15B)対照試料についてのインタクト質量の結果。観測されたクロマトグラム中の主なピークを合計して、デコンボリューション用のスペクトルを得た(A)。スペクトルを24,432.0Da及び24,956.0Daの平均質量で2つの成分にデコンボリューション処理した。デコンボリューション処理したスペクトル及びアノテーションした生データが示されている(B)。
【0111】
図16】網膜細胞株試料についてのゲルに基づくペプチドマッピングの結果。データは、両方の配列(配列番号38及び配列番号39)と一致した。囲まれたアミノ酸残基は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つを保有する。
【0112】
図17】(図17A、17B)網膜細胞株試料についてのインタクト質量の結果。観測されたクロマトグラム中の主なピークを合計して、デコンボリューション用のスペクトルを得た(A)。スペクトルを24,428.0Da及び24,952.0Daの平均質量で2つの成分にデコンボリューション処理した。デコンボリューション処理したスペクトル及びアノテーションした生データが示されている(B)。
【0113】
図18】AAVカプシド1〜9(配列番号41〜51)のClustal多重配列アラインメント。他のアラインされたAAVカプシドの対応する位置からアミノ酸残基を「リクルートすること」により、アミノ酸置換(下段に太字で示されている)をAAV9及びAAV8カプシドに対して行うことができる。「HVR」で示された配列領域=超可変領域。
【0114】
図19】AAV8.GFPの上脈絡膜注射から1〜2週間後のGFP発現の面積及び強度の増加。GFPの平均(±SEM)レベルは、上脈絡膜注射から1及び2週間後の網膜及びRPE/脈絡膜のホモジネートで高かった。
【0115】
図20】(図20A、20B) AAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射が投与された眼と上脈絡膜AAV8.GFPが投与された他眼についてのELISAによる硝子体試料中のアルブミンの測定(A)。同等に高いレベルの抗VEGFfabが上脈絡膜又は網膜下AAV8.抗VEGFfabが注射された眼で検出された(B)。
【0116】
図21】ELISAによって測定されたGFPの平均(±SEM)レベルは、1回の注射が投与された眼と比べて、2回の注射が投与された眼に由来するRPE/脈絡膜のホモジネートで有意に高かった。網膜ホモジネートについては、違いに有意な差がなかった。
【0117】
図22】事前のベクター注射を受けていない又は2もしくは7週間前にAAV8.GFPのSCもしくはSR注射を受けた眼、及び抗VEGFfabのSC又はSR注射を受けた眼の硝子体アルブミンレベル。事前のベクター注射を受けていない又は2もしくは7週間前にAAV8.GFPのSCもしくはSR注射を受けた眼と比較して、抗VEGFfabのSC又はSR注射を受けた眼は、有意により小さいVEGF誘導性の硝子体アルブミン増加を示した。
【0118】
図23】RPE/脈絡膜及び網膜ホモジネートでのELISAによる抗VEGFfabの測定は、どの時点でも、SC AAV8.抗VEGFfabとSR AAV8.抗VEGFfabの間で有意な差を示さなかった。
【0119】
図24】Clearside(登録商標) Biomedical社によって製造された上脈絡膜薬物送達装置。
【0120】
図25】Janssen Pharmaceuticals社によって製造された、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置。
【0121】
図26】(図26A〜26D)後強膜近傍デポー処置の説明。
【発明を実施するための形態】
【0122】
(5.発明の詳細な説明)
眼疾患、特に、新生血管形成の増加によって引き起こされる眼疾患、例えば、nAMD(「滲出型」AMDとしても知られる)、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者(ヒト対象)の眼の網膜/硝子体液へのVEGFに対する翻訳後修飾された完全ヒト(HuPTM)抗体の送達のための組成物及び方法が記載されている。抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え産生抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、2つの重鎖及び2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-重鎖対、イントラボディ、ヘテロコンジュゲート抗体、一価抗体、全長抗体の抗原結合断片、並びに上記のものの融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。そのような抗原結合断片には、単一ドメイン抗体(重鎖抗体(VHH)の可変ドメイン又はナノボディ)、全長抗VEGF抗体(好ましくは、全長抗VEGFモノクローナル抗体(mAb)のFab、F(ab')2、及びscFv(単鎖可変断片)(本明細書において、「抗原結合断片」と総称される)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、VEGFに対する翻訳後修飾された完全ヒト抗体は、VEGFに対するモノクローナル抗体(mAb)の翻訳後修飾された完全ヒト抗原結合断片(「HuPTMFabVEGFi」)である。さらに好ましい実施態様において、HuPTMFabVEGFiは、抗VEGF mAbのグリコシル化された完全ヒト抗原結合断片(「HuGlyFabVEGFi」)である。本明細書に記載される本発明に従って使用することができる組成物及び方法については、その各々が、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際特許出願公開WO/2017/180936号(2017年4月14日に出願された国際特許出願PCT/US2017/027529号)、及び国際特許出願公開WO/2017/181021号(2017年4月14日に出願された国際特許出願PCT/US2017/027650号)も参照されたい。代替の実施態様において、全長mAbを使用することができる。送達は、遺伝子療法によって−例えば、抗VEGF抗原結合断片又はmAb(又は高グリコシル化誘導体)をコードするウイルスベクター又は他のDNA発現コンストラクトを、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者(ヒト対象)の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔(経硝子体アプローチによるもしくはカテーテルを上脈絡膜腔に通して用いる)、網膜内腔、及び/又は強膜の外表面に投与して(すなわち、強膜近傍投与)、ヒトPTM、例えば、ヒトグリコシル化導入遺伝子産物を持続的に供給する永久デポーを眼内に作ることにより達成することができる。例えば、第5.3.2節に記載されている投与様式を参照されたい。好ましい実施態様において、本明細書に提供される方法は、滲出型AMDと診断された患者(ヒト対象)において使用される。
【0123】
そのような遺伝子療法が投与される対象は、抗VEGF療法に応答性の対象であるべきである。特定の実施態様において、本方法は、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断され、かつ抗体VEGF抗体による治療に応答性であると特定された患者を治療することを含む。より具体的な実施態様において、該患者は、抗VEGF抗原結合断片による治療に応答性である。ある実施態様において、該患者は、遺伝子療法による治療の前に硝子体内に注射された抗VEGF抗原結合断片による治療に応答性であることが示されている。具体的な実施態様において、該患者は、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)、及び/又はAVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)による治療を以前に受けたことがあり、かつ該LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)、及び/又はAVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)のうちの1つ又は複数に応答性であることが分かっている。
【0124】
そのようなウイルスベクター又は他のDNA発現コンストラクトが送達される対象は、該ウイルスベクター又は発現コンストラクト中の導入遺伝子によってコードされる抗VEGF抗原結合断片に応答性であるべきである。応答性を決定するために、抗hVEGF抗原結合断片導入遺伝子産物(例えば、細胞培養、バイオリアクターなどで産生)を、例えば、硝子体内注射によって、該対象に直接投与することができる。
【0125】
導入遺伝子によってコードされるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiとしては、hVEGFに結合する抗体の抗原結合断片、例えば、ベバシズマブ;抗hVEGF Fab部分、例えば、ラニビズマブ;又はFabドメイン上にさらなるグリコシル化部位を含むように改変されたそのようなベバシズマブもしくはラニビズマブのFab部分を挙げることができるが、これらに限定されない(例えば、全長抗体のFabドメイン上で高グリコシル化されているベバシズマブの誘導体のその説明については、引用により完全に本明細書に組み込まれているCourtoisらの文献、2016, mAbs 8: 99-112を参照されたい)。
【0126】
導入遺伝子の送達に使用される組換えベクターは、ヒト網膜細胞又は視細胞に対する向性を有するべきである。そのようなベクターとしては、非複製型組換えアデノ随伴ウイルスベクター(「rAAV」)を挙げることができ、特に、AAV8カプシドを有するものが好ましい。しかしながら、限定されないが、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、又は「裸のDNA」コンストラクトと呼ばれる非ウイルス発現ベクターを含む、他のウイルスベクターを使用してもよい。好ましくは、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi導入遺伝子は、適切な発現制御エレメント、例を挙げると、例えば、CB7プロモーター(ニワトリβ-アクチンプロモーター及びCMVエンハンサー)、RPE65プロモーター、又はオプシンプロモーターによって制御されるべきであり、ベクターによって駆動される導入遺伝子の発現を増強する他の発現制御エレメント(例えば、ニワトリβ-アクチンイントロン、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、ヒト第IX因子イントロン(例えば、FIX切断型イントロン1)、β-グロビンスプライスドナー/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプターイントロン、アデノウイルススプライスドナー/免疫グロブリンスプライスアクセプターイントロン、SV40後期スプライスドナー/スプライスアクセプター(19S/16S)イントロン、及びハイブリッドアデノウイルススプライスドナー/IgGスプライスアクセプターイントロンなどのイントロン、並びにウサギβ-グロビンポリAシグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリAシグナル、SV40後期ポリAシグナル、合成ポリA(SPA)シグナル、及びウシ成長ホルモン(bGH)ポリAシグナルなどのポリAシグナル)を含むことができる。例えば、Powell及びRivera-Sotoの文献、2015, Discov. Med., 19(102):49-57を参照されたい。
【0127】
好ましい実施態様において、遺伝子療法コンストラクトは、重鎖と軽鎖の両方が発現されるように設計される。より具体的には、重鎖及び軽鎖は、ほぼ等しい量で発現されるべきであり、言い換えると、重鎖及び軽鎖は、およそ1:1の重鎖対軽鎖の比で発現される。重鎖及び軽鎖のコード配列は、別々の重鎖及び軽鎖ポリペプチドが発現されるように、重鎖及び軽鎖が切断可能なリンカー又はIRESによって隔てられている単一のコンストラクト中で改変することができる。例えば、本明細書に提供される方法及び組成物とともに使用することができる具体的なリーダー配列については、第5.2.4節、並びに具体的なIRES、2A、及び他のリンカー配列については、第5.2.5節を参照されたい。
【0128】
上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、及び/又は網膜内投与に好適な医薬組成物は、生理的に適合する水性緩衝剤、界面活性剤、及び任意の賦形剤を含む製剤化緩衝剤中の組換え(例えば、rHuGlyFabVEGFi)ベクターの懸濁液を含む。
【0129】
治療有効用量の組換えベクターは、≧0.1mL〜≦0.5mLの範囲の容量で、好ましくは、0.1〜0.30mL(100〜300μl)で、最も好ましくは、0.25mL(250μl)の容量で、網膜下及び/又は網膜内に(例えば、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射又は上脈絡膜腔経由の網膜下投与によって)投与されるべきである。治療有効用量の組換えベクターは、100μl以下の容量で、例えば、50〜100μlの容量で、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注射によって)投与されるべきである。治療有効用量の組換えベクターは、500μl以下の容量で、例えば、500μl以下の容量で、例えば、10〜20μl、20〜50μl、50〜100μl、100〜200μl、200〜300μl、300〜400μl、又は400〜500μlの容量で、強膜の外表面に投与されるべきである。網膜下注射は、局所麻酔下の対象への部分的硝子体切除及び網膜への遺伝子療法の注射を伴う熟練した網膜外科医によって行われる外科的処置である(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Campochiaroらの文献、2017, Hum Gen Ther 28(1):99-111を参照されたい)。具体的な実施態様において、網膜下投与は、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置を用いて、上脈絡膜腔を通して行われる(例えば、Baldassarreらの文献、2017, 上脈絡膜腔経由での細胞の網膜下送達(Subretinal Delivery of Cells via the Suprachoroidal Space): Janssen Trial. 所収: Schwartzら(編)、網膜疾患の細胞療法(Cellular Therapies for Retinal Disease)、Springer, Cham;国際特許出願公開WO 2016/040635 A1号を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。上脈絡膜への投与処置は、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を伴い、通常、マイクロニードル付きのマイクロインジェクターなどの上脈絡膜薬物送達装置を用いて行われる(例えば、Hariprasadの文献、2016, Retinal Physician 13: 20-23; Goldsteinの文献、2014, Retina Today 9(5): 82-87を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。本明細書に記載される本発明に従って発現ベクターを上脈絡膜腔に沈着させるために使用することができる上脈絡膜薬物送達装置としては、Clearside(登録商標) Biomedical社により製造される上脈絡膜薬物送達装置(例えば、Hariprasadの文献、2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される本発明に従って発現ベクターを上脈絡膜腔経由で網膜下腔に沈着させるために使用することができる網膜下薬物送達装置としては、Janssen Pharmaceuticals社により製造される網膜下薬物送達装置(例えば、国際特許出願公開WO 2016/040635 A1号を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、強膜の外表面への投与は、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置によって行われる。様々な投与様式のさらなる詳細については、第5.3.2節を参照されたい。上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、及び/又は網膜内投与により、可溶性導入遺伝子産物が網膜、硝子体液、及び/又は房水に送達されるべきである。網膜細胞、例えば、桿体細胞、錐体細胞、網膜色素上皮細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、神経節細胞、及び/又はミュラー細胞による導入遺伝子産物(例えば、コードされている抗VEGF抗体)の発現により、網膜、硝子体液、及び/又は房水中で導入遺伝子産物が送達され、かつ維持される。導入遺伝子産物の濃度を、3カ月間、硝子体液中で少なくとも0.330μg/mL又は房水(前眼房)中で0.110μg/mLのCminに維持する用量が望ましく;その後、1.70〜6.60μg/mLの範囲の導入遺伝子産物の硝子体Cmin濃度及び/又は0.567〜2.20μg/mLの範囲の眼房Cmin濃度が維持されるべきである。しかしながら、導入遺伝子産物は途切れなく産生されるので、より低い濃度を維持することが有効であり得る。導入遺伝子産物の濃度は、治療を受けた眼の硝子体液及び/又は前眼房由来の房水の患者試料中で測定することができる。或いは、硝子体液濃度は、導入遺伝子産物の患者血清濃度を測定することにより推定及び/又はモニタリングすることができ−導入遺伝子産物の全身曝露と硝子体曝露の比は、約1:90,000である(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Xu Lらの文献、2013, Invest. Opthal. Vis. Sci. 54: 1616-1624, p.1621、及びp.1623の表5において報告されているラニビズマブの硝子体液及び血清濃度を参照されたい)。
【0130】
本発明は、時間経過とともに消失してピークレベルとトラフレベルを生じさせるVEGF阻害剤の高用量ボーラスの反復眼内注射を伴う標準的な治療処置に優るいくつかの利点を有する。導入遺伝子産物抗体の持続的発現により、抗体の反復注射とは対照的に、より一貫したレベルの抗体が作用部位に存在することが可能になり、行う必要がある注射がより少なくなり、結果として、通院がより少なくなるので、患者にとってよりリスクが低く、かつより好都合となる。一貫したタンパク質産生により、網膜で反跳する浮腫が生じる可能性が低くなるので、より良好な臨床転帰がもたらされ得る。さらに、翻訳時及び翻訳後に存在する微小環境が異なるので、導入遺伝子から発現される抗体は、直接注射される抗体とは異なる様式で翻訳後修飾される。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、これにより、作用部位に送達される抗体が直接注射される抗体と比較して「バイオベター(biobetter)」となるような、様々な拡散、生物活性、分布、親和性、薬物動態、及び免疫原性特性を有する抗体が結果として生じる。
【0131】
さらに、インビボで導入遺伝子から発現される抗体は、組換え技術によって産生される抗体に付随する分解産物、例えば、タンパク質凝集物及びタンパク質酸化物を含む可能性が低い。凝集は、高タンパク質濃度、製造装置及び容器との表面相互作用、並びに特定の緩衝剤系による精製に起因するタンパク質の産生及び保存に付随する問題である。凝集を促進するこれらの条件は、遺伝子療法における導入遺伝子発現では存在しない。酸化、例えば、メチオニン、トリプトファン、及びヒスチジン酸化も、タンパク質の産生及び保存と付随しており、ストレスのかかった細胞培養条件、金属及び空気との接触、並びに緩衝剤及び賦形剤中の不純物によって引き起こされる。インビボで導入遺伝子から発現されるタンパク質も、ストレスのかかった条件下で酸化し得る。しかしながら、ヒト及び他の多くの生物は、抗酸化防御システムを備えており、このシステムは、酸化ストレスを低下させるだけでなく、酸化を修復し、かつ/又は逆行させることもある。したがって、インビボで産生されるタンパク質は、酸化形態である可能性が低い。凝集と酸化は両方とも、効力、薬物動態(クリアランス)、及び免疫原性に影響を及ぼし得る。
【0132】
理論によって束縛されるものではないが、本明細書に提供される方法及び組成物は、以下の原理に一部基づいている:
(i)ヒト網膜細胞は、網膜細胞の堅牢なプロセスであるグリコシル化及びチロシン-O-硫酸化を含む分泌タンパク質の翻訳後プロセシングのための細胞機構を保有する分泌細胞である(例えば、ヒト網膜細胞によって行われる翻訳後修飾については、網膜細胞による糖タンパク質の産生を報告している、Wangらの文献、2013, Analytical Biochem. 427: 20-28及びAdamisらの文献、1993, BBRC 193: 631-638;並びに網膜細胞によって分泌されるチロシン硫酸化糖タンパク質の産生を報告している、Kananらの文献、2009, Exp. Eye Res. 89: 559-567並びにKanan及びAl-Ubaidiの文献、2015, Exp. Eye Res. 133: 126-131を参照されたく、これらは各々、引用により完全に組み込まれている)。
(ii)先行技術の理解に反して、抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブ(及びベバシズマブなどの全長抗VEGF mAbのFabドメイン)は、N結合型グリコシル化部位を実際に保有する。例えば、ラニビズマブのCHドメイン(TVSWN165SGAL)及びCLドメイン(QSGN158SQE)中の非コンセンサスアスパラギン(「N」)グリコシル化部位、並びにVHドメイン(Q115GT)及びVLドメイン(TFQ100GT)中のグリコシル化部位であるグルタミン(「Q」)残基(並びにベバシズマブのFab中の対応する部分)を特定している図1を参照されたい(例えば、抗体中のN結合型グリコシル化部位の特定については、Valliere-Douglassらの文献、2009, J. Biol. Chem. 284: 32493-32506、及びValliere-Douglassらの文献、2010, J. Biol. Chem. 285: 16012-16022を参照されたく、これらは各々、引用により完全に組み込まれている)。
(iii)そのような非標準部位は、通常、抗体集団の低レベルのグリコシル化(例えば、約1〜5%)をもたらすが、眼などの免疫寛容を受けている器官では、機能的利点が顕著であり得る(例えば、van de Bovenkampらの文献、2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい)。例えば、Fabのグリコシル化は、抗体の安定性、半減期、及び結合特性に影響を及ぼし得る。その標的に対する抗体の親和性に対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又は表面プラズモン共鳴(SPR)を使用することができる。抗体の半減期に対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法を、例えば、放射性標識抗体が投与された対象における血液又は器官(例えば、眼)中の放射能のレベルの測定によって使用することができる。抗体の安定性、例えば、凝集又はタンパク質アンフォールディングのレベルに対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動、質量分析、又は濁度測定を使用することができる。本明細書に提供される、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi導入遺伝子は、非標準部位で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くグリコシル化されているFabの産生をもたらす。ある実施態様において、Fab集団由来の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くのFabが非標準部位でグリコシル化されている。ある実施態様において、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くの非標準部位がグリコシル化されている。ある実施態様において、これらの非標準部位でのFabのグリコシル化は、HEK293細胞で産生されるFab中のこれらの非標準部位のグリコシル化の量よりも25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、又はそれを超えて大きい。
(iv)グリコシル化部位に加え、ラニビズマブなどの抗VEGF Fab(及びベバシズマブのFab)は、CDRの内部又は近傍にチロシン(「Y」)硫酸化部位を含む;ラニビズマブのVH(EDTAVY94Y95)及びVL(EDFATY86)ドメイン中のチロシン-O-硫酸化部位(並びにベバシズマブのFab中の対応する部位)を特定している図1を参照されたい(例えば、タンパク質チロシン硫酸化を受けたチロシン残基の周囲のアミノ酸の解析については、引用により完全に組み込まれる、Yangらの文献、2015, Molecules 20:2138-2164、特にp.2154を参照されたい。「規則」は、次のように要約することができる: Y残基は、Yの位置から+5〜-5以内にE又はDを有し、その場合、Yの-1位は、中性又は酸性の荷電アミノ酸であるが、硫酸化を無効化する塩基性アミノ酸、例えば、R、K、又はHではない)。ヒトIgG抗体は、いくつかの他の翻訳後修飾、例えば、N-末端修飾、C-末端修飾、アミノ酸残基の分解又は酸化、システイン関連バリアント、及び糖化を示し得る(例えば、Liuらの文献、2014, mAbs 6(5):1145-1154を参照されたい)。
(v)ヒト網膜細胞による抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブ又はベバシズマブのFab断片のグリコシル化は、導入遺伝子産物の安定性、半減期を向上させ、かつその望ましくない凝集及び/又は免疫原性を低下させることができるグリカンの付加をもたらす(例えば、Fabグリコシル化の新たな重要性の総説については、Bovenkampらの文献、2016, J. Immunol. 196: 1435-1441を参照されたい)。重要なことに、本明細書に提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに付加されることができるグリカンは、2,6-シアル酸を含む高度にプロセシングされた複合体型バイアンテナリーN-グリカン(例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに組み込まれ得るグリカンを示している図2を参照)及びバイセクティングGlcNAcであり、NGNA(N-グリコリルノイラミン酸、Neu5Gc)ではない。そのようなグリカンは、ラニビズマブ(これは、大腸菌で作製され、全くグリコシル化されない)にも、ベバシズマブ(これは、この翻訳後修飾を行うのに必要とされる2,6-シアリルトランスフェラーゼも、CHO細胞産物のバイセクティングGlcNAcも有さないが、Neu5Ac(NANA)の代わりに、ヒトに特有でない(かつ潜在的に免疫原性のある)シアル酸としてNeu5Gc(NGNA)を付加するCHO細胞で作製される)にも存在しない。例えば、Dumontらの文献、2015, Crit. Rev. Biotechnol.(早期オンライン版、2015年9月18日オンライン公開、pp.1-13、p.5)を参照されたい。さらに、CHO細胞は、ほとんどの個体に存在する抗α-Gal抗体と反応し、高濃度ではアナフィラキシーを誘発し得るα-Gal抗原という免疫原性グリカンを産生することもできる。例えば、Bosquesの文献、2010, Nat Biotech 28: 1153-1156を参照されたい。本明細書に提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiのヒトグリコシル化パターンは、導入遺伝子産物の免疫原性を低下させ、効力を向上させるはずである。
(vi)抗VEGF Fab、例えば、ラニビズマブ又はベバシズマブのFab断片のチロシン硫酸化−ヒト網膜細胞における堅牢な翻訳後プロセス−は、VEGFに対する結合力が増大した導入遺伝子産物を生じさせることができる。実際、他の標的に対する治療抗体のFabのチロシン硫酸化は、抗原に対する結合力と活性とを劇的に増大させることが示されている(例えば、Loosらの文献、2015, PNAS 112: 12675-12680、及びChoeらの文献、2003, Cell 114: 161-170を参照されたい)。そのような翻訳後修飾は、ラニビズマブ(これは、チロシン硫酸化に必要とされる酵素を保有しない宿主である大腸菌で作製される)には存在せず、CHO細胞産物のベバシズマブでも、せいぜい不十分にしか提示されない。ヒト網膜細胞とは異なり、CHO細胞は分泌細胞ではなく、翻訳後チロシン硫酸化の能力は限定されている(例えば、Mikkelsen及びEzbanの文献、1991, Biochemistry 30: 1533-1537、特に、p.1537の考察を参照されたい)。
【0133】
以上の理由により、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの産生は、遺伝子療法−例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiをコードするウイルスベクター又は他のDNA発現コンストラクトを、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者(ヒト対象)の眼の上脈絡膜腔、網膜下腔、又は強膜の外表面に(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与して、形質導入された網膜細胞によって産生される翻訳後修飾された完全ヒトの、例えば、グリコシル化され、硫酸化されたヒトの導入遺伝子産物を持続的に供給する永久デポーを眼内に作ることにより達成される、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)の治療のための「バイオベター」分子をもたらすはずである。Fab VEGFiのためのcDNAコンストラクトは形質導入された網膜細胞による適切な共翻訳及び翻訳後プロセシング(グリコシル化及びタンパク質硫酸化)を保証するシグナルペプチドを含むべきである。網膜細胞によって使用されるそのようなシグナル配列としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【化114】
[この文献は図面を表示できません]
・例えば、使用することができるシグナルペプチドについては、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Sternらの文献、2007, Trends Cell. Mol. Biol., 2:1-17並びにDalton及びBartonの文献、2014, Protein Sci, 23: 517-525を参照されたい)。
【0134】
遺伝子療法に代わるもの、又は遺伝子療法の追加治療として、HuPTMFabVEGFi産物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質を組換えDNA技術によってヒト細胞株で産生し、硝子体内注射によって、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)と診断された患者に投与することができる。HuPTMFabVEGFi産物、例えば、糖タンパク質を、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)を有する患者に投与することもできる。そのような組換え糖タンパク質の産生に使用することができるヒト細胞株としては、例を挙げると、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)、線維肉腫HT-1080、HKB-11、CAP、HuH-7、及び網膜細胞株PER.C6又はRPEが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、HuPTMFabVEGFi産物、例えば、HuGlyFabVEGFi糖タンパク質の組換え生産のために使用することができるヒト細胞株の総説については、引用により完全に組み込まれている、Dumontらの文献、2015, Crit. Rev. Biotechnol.(早期オンライン版、2015年9月18日にオンライン公開、pp.1-13)、「生物製剤製造用のヒト細胞株:歴史、現状、及び将来の展望(Human cell lines for biopharmaceutical manufacturing: history, status, and future perspectives)」を参照されたい)。完全なグリコシル化、特に、シアリル化及びチロシン硫酸化を保証するために、産生用に使用される細胞株を、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(もしくはα-2,3-シアリルトランスフェラーゼとα-2,6-シアリルトランスフェラーゼの両方)並びに/又は網膜細胞におけるチロシン-O-硫酸化に関与するTPST-1及びTPST-2酵素を共発現するように宿主細胞を改変することにより増強することができる。
【0135】
他の利用可能な治療の送達を伴う眼/網膜へのHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの送達の組合せは、本明細書に提供される方法に包含される。さらなる治療を遺伝子療法治療の前、それと同時に、又はその後に施すことができる。本明細書に提供される遺伝子療法と組み合わせることができる滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)の利用可能な治療としては、レーザー光凝固法、ベルテポルフィンによる光線力学療法、及び限定されないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブを含む抗VEGF剤の硝子体内(「IVT」)注射が挙げられるが、これらに限定されない。抗VEGF剤による追加治療、例えば、生物製剤は、「レスキュー」療法と呼ばれる場合がある。
【0136】
低分子薬物とは異なり、生物製剤は、通常、異なる効力、薬物動態、及び安全性プロファイルを有する異なる修飾又は形態を有する多くのバリアントの混合物を含む。遺伝子療法又はタンパク質療法アプローチのいずれかにおいて産生される全ての分子が完全にグリコシル化され、かつ硫酸化されていることは必須ではない。むしろ、産生される糖タンパク質の集団は、効力を示すのに十分な2,6-シアリル化を含むグリコシル化(集団の約1%〜約10%)及び硫酸化を有するべきである。本明細書に提供される遺伝子療法治療の目的は、網膜変性症の進行を減速又は停止させること、及び最小限の介入/侵襲的処置で視力喪失を減速させ又は予防することである。効力は、BCVA(最高矯正視力)の測定、眼圧、スリットランプ生体顕微鏡検査、間接的検眼鏡検査、SD-OCT(SD-光干渉断層撮影)、網膜電図(ERG)によってモニタリングすることができる。視力喪失、感染症、炎症、及び網膜剥離を含む他の安全性事象の徴候もモニタリングすることができる。本明細書に提供される治療の効力を決定するために、網膜厚をモニタリングしてもよい。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、網膜の厚さを臨床読取値として使用することができ、その場合、網膜厚の低下が大きいほど又は網膜の肥厚までの期間が長いほど、治療がより有効となる。網膜厚は、例えば、SD-OCTによって決定することができる。SD-OCTは、低コヒーレンス干渉法を用いて、対象となる物体から反射される後方散乱光のエコー時間遅延及び振幅を決定する3次元画像化技術である。OCTを用いて、3〜15μmの軸方向分解能で組織試料(例えば、網膜)の層をスキャンすることができ、SD-OCTは、以前の型の技術よりも軸方向分解能及びスキャン速度を向上させる(Schumanの文献、2008, Trans. Am. Opthamol. Soc. 106:426-458)。網膜機能は、例えば、ERGによって決定することができる。ERGは、ヒトでの使用がFDAによって承認された網膜機能の非侵襲的電気生理的検査であり、これは、眼の光感受性細胞(桿体及び錐体)並びにそれが接続している神経節細胞、特に、その閃光刺激への応答を調べる。
【0137】
(5.1 N-グリコシル化、チロシン硫酸化、及びO-グリコシル化)
本明細書に記載される方法で使用されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiの抗VEGF抗原結合断片のアミノ酸配列(一次配列)は、N-グリコシル化又はチロシン硫酸化が生じる少なくとも1つの部位を含む。ある実施態様において、該抗VEGF抗原結合断片のアミノ酸配列は、少なくとも1つのN-グリコシル化部位及び少なくとも1つのチロシン硫酸化部位を含む。そのような部位は、以下で詳細に記載されている。ある実施態様において、該抗VEGF抗原結合断片のアミノ酸配列は、少なくとも1つのO-グリコシル化部位を含み、これは、該アミノ酸配列中に存在する1以上のN-グリコシル化部位及び/又はチロシン硫酸化部位に追加されたものであり得る。
【0138】
(5.1.1 N-グリコシル化)
(逆グリコシル化部位)
標準的なN-グリコシル化配列は、Asn-X-Ser(又はThr)(ここで、Xは、Pro以外の任意のアミノ酸であり得る)であることが当技術分野で知られている。しかしながら、最近、ヒト抗体のアスパラギン(Asn)残基が逆コンセンサスモチーフSer(又はThr)-X-Asn(ここで、Xは、Pro以外の任意のアミノ酸であり得る)の状況でグリコシル化され得ることが示された。Valliere-Douglassらの文献、2009, J. Biol. Chem. 284:32493-32506;及びValliere-Douglassらの文献、2010, J. Biol. Chem. 285:16012-16022を参照されたい。本明細書に開示されているように、先行技術の理解に反して、本明細書に記載される方法に従って使用するための抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブは、そのような逆コンセンサス配列のうちのいくつかを含む。したがって、本明細書に記載される方法は、Ser(又はThr)-X-Asn(ここで、Xは、Pro以外の任意のアミノ酸であり得る)という配列を含む少なくとも1つのN-グリコシル化部位(本明細書において、「逆N-グリコシル化部位」とも呼ばれる)を含む抗VEGF抗原結合断片の使用を含む。
【0139】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法は、Ser(又はThr)-X-Asn(ここで、Xは、Pro以外の任意のアミノ酸であり得る)という配列を含む1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は10より多くのN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合断片の使用を含む。ある実施態様において、本明細書に記載される方法は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は10より多くの逆N-グリコシル化部位、及び1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は10より多くの非コンセンサスN-グリコシル化部位(以下、本明細書で定義される)を含む抗VEGF抗原結合断片の使用を含む。
【0140】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法で使用される1以上の逆N-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合断片は、それぞれ、配列番号1及び配列番号2の軽鎖及び重鎖を含む、ラニビズマブである。別の具体的な実施態様において、本方法で使用される1以上の逆N-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合断片は、それぞれ、配列番号3及び配列番号4の軽鎖及び重鎖を含む、ベバシズマブのFabを含む。
【0141】
(非コンセンサスグリコシル化部位)
逆N-グリコシル化部位に加えて、最近、ヒト抗体のグルタミン(Gln)残基が非コンセンサスモチーフGln-Gly-Thrの状況でグリコシル化され得ることが示された。Valliere-Douglassらの文献、2010, J. Biol. Chem. 285:16012-16022を参照されたい。驚くことに、本明細書に記載される方法に従って使用するための抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブは、そのような非コンセンサス配列のうちのいくつかを含む。したがって、本明細書に記載される方法は、Gln-Gly-Thr(本明細書において、「非コンセンサスN-グリコシル化部位」とも呼ばれる)という配列を含む少なくとも1つのN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合断片の使用を含む。
【0142】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法は、Gln-Gly-Thrという配列を含む1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は10より多くのN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合断片の使用を含む。
【0143】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法で使用される1以上の非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合断片は、ラニビズマブ(それぞれ、配列番号1及び配列番号2の軽鎖及び重鎖を含む)である。別の具体的な実施態様において、本方法で使用される1以上の非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む抗VEGF抗原結合断片は、ベバシズマブのFab(それぞれ、配列番号3及び配列番号4の軽鎖及び重鎖を含む)を含む。
【0144】
(改変されたN-グリコシル化部位)
ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片をコードする核酸は、通常HuGlyFabVEGFiと関連しているよりも(例えば、その非修飾状態の抗VEGF抗原結合断片と関連するN-グリコシル化部位の数と比べて)、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又はそれより多くのN-グリコシル化部位(標準的なN-グリコシル化コンセンサス配列、逆N-グリコシル化部位、及び非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む)を含むように修飾される。具体的な実施態様において、グリコシル化部位の導入は、該導入がその抗原VEGFに対する抗原結合断片の結合に影響を及ぼさない限り、抗原結合断片の一次構造中のどこかへのN-グリコシル化部位(標準的なN-グリコシル化コンセンサス配列、逆N-グリコシル化部位、及び非コンセンサスN-グリコシル化部位を含む)の挿入によって達成される。グリコシル化部位の導入は、例えば、新しいアミノ酸を、抗原結合断片もしくは該抗原結合断片が由来する抗体の一次構造に付加すること(すなわち、グリコシル化部位を完全にもしくは部分的に付加する)、又はN-グリコシル化部位を生成させるために、抗原結合断片もしくは該抗原結合断片が由来する抗体中の既存のアミノ酸を突然変異させること(すなわち、アミノ酸を該抗原結合断片/抗体に付加するのではなく、N-グリコシル化部位を形成するように、該抗原結合断片/抗体の選択されたアミノ酸を突然変異させる)により達成することができる。当業者は、タンパク質のアミノ酸配列を、当技術分野で公知のアプローチ、例えば、タンパク質をコードする核酸の修飾を含む組換えアプローチを用いて容易に修飾することができることを認識しているであろう。
【0145】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法で使用される抗VEGF抗原結合断片は、網膜細胞で発現された場合、それが高グリコシル化され得るように修飾される。引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Courtoisらの文献、2016, mAbs 8:99-112を参照されたい。具体的な実施態様において、該抗VEGF抗原結合断片は、ラニビズマブ(それぞれ、配列番号1及び配列番号2の軽鎖及び重鎖を含む)である。別の具体的な実施態様において、該抗VEGF抗原結合断片は、ベバシズマブのFab(それぞれ、配列番号3及び配列番号4の軽鎖及び重鎖を含む)である。
【0146】
(抗VEGF抗原結合断片のN-グリコシル化)
低分子薬物とは異なり、生物製剤は、通常、異なる効力、薬物動態、及び安全性プロファイルを有する異なる修飾又は形態を有する多くのバリアントの混合物を含む。遺伝子療法又はタンパク質療法アプローチのいずれかにおいて産生される全ての分子が完全にグリコシル化され、かつ硫酸化されていることは必須ではない。むしろ、産生される糖タンパク質の集団は、効力を示すのに十分なグリコシル化(2,6-シアリル化を含む)及び硫酸化を有するべきである。本明細書に提供される遺伝子療法治療の目的は、網膜変性症の進行を減速又は停止させること、及び最小限の介入/侵襲的処置で視力喪失を減速させ又は予防することである。
【0147】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブは、網膜細胞で発現された場合、そのN-グリコシル化部位の100%でグリコシル化されることができる。しかしながら、当業者は、グリコシル化の利点が得られるために、抗VEGF抗原結合断片の全てのN-グリコシル化部位がN-グリコシル化される必要があるわけではないことを認識しているであろう。むしろ、グリコシル化の利点は、あるパーセンテージのN-グリコシル化部位だけがグリコシル化された場合に、及び/又はあるパーセンテージの発現された抗原結合断片だけがグリコシル化された場合に実現されることができる。したがって、ある実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片は、網膜細胞で発現された場合、その利用可能なN-グリコシル化部位の10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、又は90%〜100%でグリコシル化される。ある実施態様において、網膜細胞で発現された場合、本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片の10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、又は90%〜100%が、その利用可能なN-グリコシル化部位のうちの少なくとも1つでグリコシル化される。
【0148】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片中に存在するN-グリコシル化部位の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%は、抗VEGF抗原結合断片が網膜細胞で発現されたとき、N-グリコシル化部位中に存在するAsn残基(又は他の関連残基)でグリコシル化される。すなわち、結果として得られるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%がグリコシル化される。
【0149】
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片中に存在するN-グリコシル化部位の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%は、抗VEGF抗原結合断片が網膜細胞で発現されたとき、N-グリコシル化部位中に存在するAsn残基(又は他の関連残基)に連結された同一の結合グリカンでグリコシル化される。すなわち、結果として得られるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%は、同一の結合グリカンである。
【0150】
本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブが網膜細胞で発現される場合、該抗原結合断片のN-グリコシル化部位は、様々な異なるグリカンでグリコシル化されることができる。抗原結合断片のN-グリカンは、当技術分野で特徴付けられている。例えば、Bondtらの文献、2014, Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039(Fabと関連するN-グリカンのその開示について、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)では、Fabと関連するグリカンが特徴付けられており、抗体のFab及びFc部分が異なるグリコシル化パターンを含み、Fabグリカンが、Fcグリカンに対して、ガラクトシル化、シアリル化、及びバイセクション(例えば、バイセクティングGlcNAcの場合)は多いが、フコシル化は少ないことが示されている。Bondtの文献と同様、Huangらの文献、2006, Anal. Biochem. 349:197-207(Fabと関連するN-グリカンのその開示について、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)では、Fabのほとんどのグリカンがシアリル化されていることが見出された。しかしながら、Huangによって調べられた抗体のFab(これは、マウス細胞バックグラウンドで産生された)において、同定されたシアル酸残基は、N-アセチルノイラミン酸(「Neu5Ac」、主要なヒトシアル酸)ではなく、N-グリコリルノイラミン酸(「Neu5Gc」又は「NeuGc」)(これは、ヒトにとって自然のものではない)であった。さらに、Songらの文献、2014, Anal. Chem. 86:5661-5666(Fabと関連するN-グリカンのその開示について、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)では、市販抗体と関連するN-グリカンのライブラリーが記載されている。
【0151】
重要なことに、本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブがヒト網膜細胞で発現される場合、原核生物宿主細胞(例えば、大腸菌)又は真核生物宿主細胞(例えば、CHO細胞)におけるインビトロ産生の必要性は回避される。代わりに、本明細書に記載される方法(例えば、抗hVEGF抗原結合断片を発現させるための網膜細胞の使用)の結果として、該抗VEGF抗原結合断片のN-グリコシル化部位は、ヒトの治療と関係し、かつそれに有益なグリカンで有利に修飾される。そのような利点は、抗体/抗原結合断片産生にCHO細胞又は大腸菌を利用した場合には達成できないが、その理由は、例えば、CHO細胞が、(1)2,6シアリルトランスフェラーゼを発現しないため、N-グリコシル化時に2,6シアル酸を付加することができず、かつ(2)シアル酸としてNeu5AcではなくNeu5Gcを付加し得ること;及び大腸菌がN-グリコシル化に必要とされる構成要素を天然には含まないことである。したがって、一実施態様において、本明細書に記載される治療方法で使用されるHuGlyFabVEGFiを生じる網膜細胞で発現される抗VEGF抗原結合断片は、タンパク質がヒト網膜細胞、例えば、網膜色素細胞でN-グリコシル化される様式でグリコシル化されるが、タンパク質がCHO細胞でN-グリコシル化される様式ではグリコシル化されない。別の実施態様において、本明細書に記載される治療方法で使用されるHuGlyFabVEGFiを生じる網膜細胞で発現される抗VEGF抗原結合断片は、タンパク質がヒト網膜細胞、例えば、網膜色素細胞でN-グリコシル化される様式でグリコシル化され、ここで、そのようなグリコシル化は、原核生物宿主細胞を用いて、例えば、大腸菌を用いて、自然には不可能である。
【0152】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、ヒト抗体のFabと関連する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多くの異なるN-グリカンを含む。具体的な実施態様において、ヒト抗体のFabと関連する該N-グリカンは、Bondtらの文献、2014, Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039、Huangらの文献、2006, Anal. Biochem. 349:197-207、及び/又はSongらの文献、2014, Anal. Chem. 86:5661-5666に記載されているN-グリカンである。ある実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない。
【0153】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、2,6-結合型シアル酸を含むグリカンで主にグリコシル化されている。ある実施態様において、2,6-結合型シアル酸を含むHuGlyFabVEGFiは、ポリシアリル化されている、すなわち、複数のシアル酸を含む。ある実施態様において、該HuGlyFabVEGFiの各々のN-グリコシル化部位は、2,6-結合型シアル酸を含むグリカンを含む、すなわち、該HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の100%が2,6-結合型シアル酸を含むグリカンを含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%が2,6-結合型シアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、又は90%〜99%が2,6-結合型シアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って網膜細胞で発現される抗原結合断片(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じる抗原結合断片)の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%が2,6-結合型シアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って網膜細胞で発現される抗原結合断片(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じるFab)の少なくとも10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、又は90%〜99%が2,6-結合型シアル酸を含むグリカンでグリコシル化されている。別の具体的な実施態様において、該シアル酸は、Neu5Acである。そのような実施態様によれば、HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位のあるパーセンテージだけが2,6シアリル化又はポリシアリル化されている場合、残りのN-グリコシル化は、異なるN-グリカンを含むことができるか、又はN-グリカンを全く含むことができない(すなわち、非グリコシル化されたままである)。
【0154】
HuGlyFabVEGFiが2,6ポリシアリル化されている場合、それは、複数のシアル酸残基、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は10よりも多くのシアル酸残基を含む。ある実施態様において、HuGlyFabVEGFiがポリシアリル化されている場合、それは、2〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、又は40〜50のシアル酸残基を含む。ある実施態様において、HuGlyFabVEGFiがポリシアリル化されている場合、それは、2,6-結合型(シアル酸)n(ここで、nは、1〜100の任意の数であることができる)を含む。
【0155】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、バイセクティングGlcNAcを含むグリカンで主にグリコシル化されている。ある実施態様において、該HuGlyFabVEGFiの各々のN-グリコシル化部位は、バイセクティングGlcNAcを含むグリカンを含む、すなわち、該HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の100%がバイセクティングGlcNAcを含むグリカンを含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%がバイセクティングGlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化部位の少なくとも10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、又は90%〜99%がバイセクティングGlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って網膜細胞で発現される抗原結合断片(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じる抗原結合断片)の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%がバイセクティングGlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って網膜細胞で発現される抗原結合断片(すなわち、HuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブを生じる抗原結合断片)の少なくとも10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、又は90%〜99%がバイセクティングGlcNAcを含むグリカンでグリコシル化されている。
【0156】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、高グリコシル化されている、すなわち、天然のN-グリコシル化部位から得られるN-グリコシル化に加え、該HuGlyFabVEGFiは、HuGlyFabVEGFiを生じる抗原結合断片のアミノ酸配列中に存在するように改変されたN-グリコシル化部位にグリカンを含む。ある実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用されるHuGlyFabVEGFi、例えば、ラニビズマブは、高グリコシル化されているが、検出可能なNeuGc及び/又はα-Gal抗原を含まない。
【0157】
抗原結合断片を含む、抗体のグリコシル化パターンを決定するためのアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、ヒドラジン分解を用いて、グリカンを分析することができる。まず、多糖を、ヒドラジンとのインキュベーションにより、その関連するタンパク質から遊離させる(Ludger Liberateヒドラジン分解グリカン遊離キット、Oxfordshire, UKを使用することができる)。求核剤のヒドラジンは、多糖とキャリアタンパク質との間のグリコシド結合を攻撃し、結合しているグリカンの遊離を可能にする。N-アセチル基は、失われ、この処理の間に、再度N-アセチル化によって再構成されなければならない。グリカンは、酵素、例えば、PNGアーゼF及びエンドHなどのグリコシダーゼ又はエンドグリコシダーゼを用いて遊離させることもでき、これらの酵素は、完全にかつヒドラジンよりも少ない副反応を伴って切断する。遊離グリカンは、炭素カラムで精製し、その後、蛍光物質2-アミノベンズアミドを用いて還元末端で標識することができる。標識された多糖は、Royleらの文献、Anal Biochem 2002, 304(1):70-90のHPLCプロトコルに従って、GlycoSep-Nカラム(GL Sciences)で分離することができる。結果として得られる蛍光クロマトグラムは、多糖の長さ及び反復単位の数を示す。構造情報は、個々のピークを収集し、その後、MS/MS分析を行うことにより集めることができる。それにより、単糖の組成及び反復単位の配列を確認し、さらに多糖の組成の均一性を同定することができる。低分子量又は高分子量の特定のピークをMALDI-MS/MSにより分析し、その結果を用いて、グリカン配列を確認することができる。クロマトグラム中の各々のピークは、特定の数の反復単位からなるポリマー、例えば、グリカン及びその断片、例えば、糖残基に対応する。このように、クロマトグラムにより、ポリマー、例えば、グリカンの長さ分布の測定が可能になる。溶出時間は、ポリマーの長さの指標であり、一方、蛍光強度は、それぞれのポリマー、例えば、グリカンのモル存在量と相関する。抗原結合断片と関連するグリカンを評価する他の方法としては、Bondtらの文献、2014, Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039、Huangらの文献、2006, Anal. Biochem. 349:197-207、及び/又はSongらの文献、2014, Anal. Chem. 86:5661-5666に記載されている方法が挙げられる。
【0158】
抗体(抗原結合断片を含む)と関連するグリカンパターンの均一性又は不均一性は、グリカンの長さ又は大きさとグリコシル化部位にわたって存在するグリカンの数の両方に関するため、当技術分野で公知の方法、例えば、グリカンの長さ又は大きさ及び流体力学的半径を測定する方法を用いて評価することができる。HPLC、例えば、サイズ排除、順相、逆相、及び陰イオン交換HPLC、並びにキャピラリー電気泳動により、流体力学的半径の測定が可能になる。タンパク質中のグリコシル化部位の数が多いと、グリコシル化部位がより少ないキャリアと比較して、流体力学的半径のばらつきが大きくなる。しかしながら、単一のグリカン鎖を分析する場合、これらは長さがより制御されるため、より均一になり得る。グリカンの長さは、ヒドラジン分解、SDS PAGE、及びキャピラリーゲル電気泳動によって測定することができる。さらに、均一性は、特定のグリコシル化部位使用パターンがより広い/より狭い範囲へと変化することも意味し得る。これらの因子は、糖ペプチドLC-MS/MSによって測定することができる。
【0159】
(N-グリコシル化の利点)
N-グリコシル化は、本明細書に記載される方法で使用されるHuGlyFabVEGFiに多くの利点を付与する。そのような利点は、大腸菌における抗原結合断片の産生によっては達成できないが、それは、大腸菌がN-グリコシル化に必要とされる構成要素を天然には保有しないからである。さらに、いくつかの利点は、例えば、CHO細胞における抗体生産を通じては達成できないが、それは、CHO細胞が特定のグリカン(例えば、2,6-シアル酸及びバイセクティングGlcNAc)の付加に必要とされる構成要素を欠いており、かつCHO細胞がヒトにとって典型的でないグリカン、例えば、Neu5Gcを付加し得るからである。例えば、Songらの文献、2014, Anal. Chem. 86:5661-5666を参照されたい。したがって、抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブが非標準的なN-グリコシル化部位(逆グリコシル化部位と非コンセンサスグリコシル化部位の両方を含む)を含むという本明細書に記載されている発見のおかげで、そのような抗VEGF抗原結合断片をそのグリコシル化(及び結果として、抗原結合断片と関連する利点の向上)をもたらす様式で発現させる方法が実現されている。特に、ヒト網膜細胞における抗VEGF抗原結合断片の発現は、そうでなければ抗原結合断片ともその親抗体とも関連しないであろう有益なグリカンを含むHuGlyFabVEGFi(例えば、ラニビズマブ)の産生をもたらす。
【0160】
非標準的なグリコシル化部位は、通常、抗体集団の低レベルのグリコシル化(例えば、約1〜5%)をもたらすが、眼などの免疫寛容を受けている器官では、機能的利点が顕著であり得る(例えば、van de Bovenkampらの文献、2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい)。例えば、Fabのグリコシル化は、抗体の安定性、半減期、及び結合特性に影響を及ぼし得る。その標的に対する抗体の親和性に対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又は表面プラズモン共鳴(SPR)を使用することができる。抗体の半減期に対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法を、例えば、放射性標識抗体が投与された対象における血液又は器官(例えば、眼)中の放射能のレベルの測定によって使用することができる。抗体の安定性、例えば、凝集又はタンパク質アンフォールディングのレベルに対するFabグリコシル化の影響を決定するために、当業者に公知の任意の技法、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動、質量分析、又は濁度測定を使用することができる。本明細書に提供される、HuGlyFabVEGFi導入遺伝子は、非標準部位で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くグリコシル化されている抗原結合断片の産生をもたらす。ある実施態様において、抗原結合断片の集団由来の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くの抗原結合断片が非標準部位でグリコシル化されている。ある実施態様において、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%又はそれより多くの非標準部位がグリコシル化されている。ある実施態様において、これらの非標準部位での抗原結合断片のグリコシル化は、HEK293細胞で産生される抗原結合断片中のこれらの非標準部位のグリコシル化の量よりも25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、又はそれを超えて大きい。
【0161】
本明細書に記載される方法で使用されるHuGlyFabVEGFi上のシアル酸の存在は、HuGlyFabVEGFiのクリアランス速度、例えば、硝子体液からのクリアランス速度に影響を及ぼすことができる。したがって、HuGlyFabVEGFiのシアル酸パターンを用いて、最適化されたクリアランス速度を有する治療薬を作製することができる。抗原結合断片のクリアランス速度を評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Huangらの文献、2006, Anal. Biochem. 349:197-207を参照されたい。
【0162】
別の具体的な実施態様において、N-グリコシル化によって付与される利点は、凝集の低下である。占有されたN-グリコシル化部位は、凝集しやすいアミノ酸残基を遮蔽して、凝集の減少をもたらすことができる。そのようなN-グリコシル化部位は、本明細書で使用される抗原結合断片に固有のものであるか、又は本明細書で使用される抗原結合断片中に人工的に作り出されたものであることができ、発現された場合、例えば、網膜細胞で発現された場合、より凝集しにくいHuGlyFabVEGFiを生じさせる。抗体の凝集を評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Courtoisらの文献、2016, mAbs 8:99-112を参照されたい。
【0163】
別の具体的な実施態様において、N-グリコシル化によって付与される利点は、免疫原性の低下である。そのようなN-グリコシル化部位は、本明細書で使用される抗原結合断片に固有のものであるか、又は本明細書で使用される抗原結合断片中に人工的に作り出されたものであることができ、発現された場合、例えば、網膜細胞で発現された場合、より免疫原性を生じにくいHuGlyFabVEGFiを生じさせる。
【0164】
別の具体的な実施態様において、N-グリコシル化によって付与される利点は、タンパク質安定性である。タンパク質のN-グリコシル化は、該タンパク質に安定性を付与することがよく知られており、N-グリコシル化に起因するタンパク質の安定性を評価する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Sola及びGriebenowの文献、2009, J Pharm Sci., 98(4): 1223-1245を参照されたい。
【0165】
別の具体的な実施態様において、N-グリコシル化によって付与される利点は、結合親和性の変化である。抗体の可変ドメイン中のN-グリコシル化部位の存在は、その抗原に対する抗体の親和性を増大させることができることが当技術分野で公知である。例えば、Bovenkampらの文献、2016, J. Immunol. 196:1435-1441を参照されたい。抗体の結合親和性を測定するためのアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、 Wrightらの文献、1991, EMBO J. 10:2717-2723;及びLeibigerらの文献、1999, Biochem. J. 338:529-538を参照されたい。
【0166】
(5.1.2 チロシン硫酸化)
チロシン硫酸化は、チロシン(Y)の+5〜-5位以内にグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を有し、Yの-1位が中性又は酸性の荷電アミノ酸であるが、硫酸化を無効化する塩基性アミノ酸、例えば、アルギニン(R)、リジン(K)、又はヒスチジン(H)ではないY残基で起こる。驚くことに、本明細書に記載される方法に従って使用するための抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブは、チロシン硫酸化部位を含む(図1を参照)。したがって、本明細書に記載される方法は、少なくとも1つのチロシン硫酸化部位を含む抗VEGF抗原結合断片、例えば、HuPTMFabVEGFiの使用を含み、そのような抗VEGF抗原結合断片は、網膜細胞で発現された場合、チロシン硫酸化されることができる。
【0167】
重要なことに、チロシン硫酸化された抗原結合断片、例えば、ラニビズマブは、チロシン硫酸化に必要とされる酵素を天然に保有しない大腸菌では産生することができない。さらに、CHO細胞は、チロシン硫酸化が不十分であり−該細胞は、分泌細胞ではなく、かつ翻訳後チロシン硫酸化のための能力が限定されている。例えば、Mikkelsen及びEzbanの文献、1991, Biochemistry 30: 1533-1537を参照されたい。有利なことに、本明細書に提供される方法は、分泌性であり、かつチロシン硫酸化の能力を実際に有する網膜細胞における抗VEGF抗原結合断片、例えば、HuPTMFabVEGFi、例えば、ラニビズマブの発現を必要とする。網膜細胞によって分泌されるチロシン硫酸化糖タンパク質の産生を報告している、Kananらの文献、2009, Exp. Eye Res. 89: 559-567並びにKanan及びAl-Ubaidiの文献、2015, Exp. Eye Res. 133: 126-131を参照されたい。
【0168】
チロシン硫酸化は、いくつかの理由から有利である。例えば、標的に対する治療抗体の抗原結合断片のチロシン硫酸化は、抗原に対する結合力及び活性を劇的に増大させることが示されている。例えば、Loosらの文献、2015, PNAS 112: 12675-12680、及びChoeらの文献、2003, Cell 114: 161-170を参照されたい。チロシン硫酸化を検出するためのアッセイは、当技術分野で公知である。例えば、Yangらの文献、2015, Molecules 20:2138-2164を参照されたい。
【0169】
(5.1.3 O-グリコシル化)
O-グリコシル化は、酵素によるセリン又はスレオニン残基へのN-アセチル-ガラクトサミンの付加を含む。抗体のヒンジ領域に存在するアミノ酸残基は、O-グリコシル化され得ることが示されている。ある実施態様において、本明細書に記載される方法に従って使用される抗VEGF抗原結合断片、例えば、ラニビズマブは、そのヒンジ領域の全て又は一部を含み、したがって、ヒト網膜細胞で発現されたときにO-グリコシル化されることができる。O-グリコシル化の可能性は、例えば、大腸菌で産生される抗原結合断片と比較して、本明細書に提供されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiに別の利点を付与するが、その理由もまた、大腸菌がヒトO-グリコシル化で使用されるものに相当する機構を天然に含まないことにある(その代わりに、大腸菌におけるO-グリコシル化は、細菌が特異的なO-グリコシル化機構を含むように修飾された場合にだけ示されている。例えば、Faridmoayerらの文献、2007, J. Bacteriol. 189:8088-8098.を参照されたい)。グリカンを保有しているために、O-グリコシル化されたHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiは、N-グリコシル化されたHuGlyFabVEGFi(上で論じられている)と有利な特性を共有する。
【0170】
(5.2 コンストラクト及び製剤)
本方法における使用のために、本明細書に提供されるのは、抗VEGF抗原結合断片又は抗VEGF抗原結合断片の高グリコシル化誘導体をコードするウイルスベクター又は他のDNA発現コンストラクトである。本明細書に提供されるウイルスベクター及び他のDNA発現コンストラクトには、導入遺伝子を標的細胞(例えば、網膜色素上皮細胞)に送達するための任意の好適な方法が含まれる。導入遺伝子を送達する手段としては、ウイルスベクター、リポソーム、他の脂質含有複合体、他の高分子複合体、合成修飾mRNA、非修飾mRNA、低分子、非生体活性分子(例えば、金粒子)、重合分子(例えば、デンドリマー)、裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、又はエピソームが挙げられる。いくつかの実施態様において、ベクターは、標的化ベクター、例えば、網膜色素上皮細胞に標的化されるベクターである。
【0171】
いくつかの態様において、本開示は、使用するための核酸を提供し、ここで、該核酸は:サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、MMTプロモーター、EF-1αプロモーター、UB6プロモーター、ニワトリβ-アクチンプロモーター、CAGプロモーター、RPE65プロモーター、及びオプシンプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに機能的に連結されたHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiをコードする。
【0172】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1以上の核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を含む組換えベクターである。核酸は、DNA、RNA、又はDNAとRNAの組合せを含み得る。ある実施態様において、DNAは、プロモーター配列、対象遺伝子の配列(導入遺伝子、例えば、抗VEGF抗原結合断片)、非翻訳領域、及び終結配列からなる群から選択される配列のうちの1又は複数を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、対象遺伝子に機能的に連結されたプロモーターを含む。
【0173】
ある実施態様において、本明細書に開示される核酸(例えば、ポリヌクレオチド)及び核酸配列は、例えば、当業者に公知の任意のコドン最適化技法によってコドン最適化することができる(例えば、Quaxらの文献、2015, Mol Cell 59:149-161による総説を参照されたい)。
【0174】
具体的な実施態様において、本明細書に記載されるコンストラクトは、以下の構成要素:(1)発現カセットに隣接するAAV2逆向き末端反復;(2)a)CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターを含む、CB7プロモーター、b)ニワトリβ-アクチンイントロン、及びc)ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む制御エレメント;並びに(3)等量の重鎖及び軽鎖ポリペプチドの発現を保証する、自己切断性フーリン(F)/F2Aリンカーによって隔てられた、抗VEGF抗原結合断片の重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0175】
(5.2.1 mRNA)
ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、対象遺伝子(例えば、導入遺伝子、例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)をコードする修飾mRNAである。導入遺伝子を網膜色素上皮細胞に送達するための修飾及び非修飾mRNAの合成は、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Hanssonらの文献、J. Biol. Chem., 2015, 290(9):5661-5672で教示されている。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、抗VEGF抗原結合断片部分をコードする修飾mRNAである。
【0176】
(5.2.2 ウイルスベクター)
ウイルスベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV、例えば、AAV8)、レンチウイルス、ヘルパー依存性アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、日本型赤血球凝集素ウイルス(hemagglutinin virus of Japan)(HVJ)、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、及びレトロウイルスベクターが挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MLV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベースのベクターが挙げられる。アルファウイルスベクターとしては、セムリキ森林ウイルス(SFV)及びシンドビスウイルス(SIN)が挙げられる。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、組換えウイルスベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、ヒトにおいて複製欠損となるように改変されている。ある実施態様において、ウイルスベクターは、ハイブリッドベクター、例えば、「ヘルプレス」アデノウイルスベクターに入れられたAAVベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、第一のウイルス由来のウイルスカプシド及び第二のウイルス由来のウイルスエンベロープタンパク質を含むウイルスベクターである。具体的な実施態様において、第二のウイルスは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)である。より具体的な実施態様において、エンベロープタンパク質は、VSV-Gタンパク質である。
【0177】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、HIVベースのウイルスベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるHIVベースのベクターは、少なくとも2つのポリヌクレオチドを含み、ここで、gag及びpol遺伝子は、HIVゲノムに由来するものであり、env遺伝子は、別のウイルスに由来するものである。
【0178】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、単純ヘルペスウイルスベースのウイルスベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供される単純ヘルペスウイルスベースのベクターは、1以上の前初期(IE)遺伝子を含まず、それにより、非細胞傷害性となるように修飾されている。
【0179】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、MLVベースのウイルスベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるMLVベースのベクターは、ウイルス遺伝子の代わりに最大8kbの異種DNAを含む。
【0180】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、レンチウイルスベースのウイルスベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるレンチウイルスベクターは、ヒトレンチウイルスに由来する。ある実施態様において、本明細書に提供されるレンチウイルスベクターは、非ヒトレンチウイルスに由来する。ある実施態様において、本明細書に提供されるレンチウイルスベクターは、レンチウイルスカプシド中にパッケージングされている。ある実施態様において、本明細書に提供されるレンチウイルスベクターは、以下のエレメント:長い末端反復、プライマー結合部位、ポリプリントラクト、att部位、及びカプシド形成部位のうちの1つ又は複数を含む。
【0181】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、アルファウイルスベースのウイルスベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるアルファウイルスベクターは、組換え複製欠損アルファウイルスである。ある実施態様において、本明細書に提供されるアルファウイルスベクター中のアルファウイルスレプリコンは、そのビリオン表面に機能的異種リガンドを提示することにより、特定の細胞型に標的化される。
【0182】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、AAVベースのウイルスベクターである。好ましい実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、AAV8ベースのウイルスベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるAAV8ベースのウイルスベクターは、網膜細胞に対する向性を保持する。ある実施態様において、本明細書に提供されるAAVベースのベクターは、AAV rep遺伝子(複製に必要とされる)及び/又はAAV cap遺伝子(カプシドタンパク質の合成に必要とされる)をコードする。複数のAAV血清型が同定されている。ある実施態様において、本明細書に提供されるAAVベースのベクターは、AAVの1以上の血清型に由来する構成要素を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるAAVベースのベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はAAVrh10のうちの1つ又は複数に由来するカプシド構成要素を含む。好ましい実施態様において、本明細書に提供されるAAVベースのベクターは、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はAAVrh10血清型のうちの1つ又は複数に由来する構成要素を含む。
【0183】
特定の実施態様において提供されるのは、調節エレメントの制御下にあり、かつITRに隣接している導入遺伝子及びAAV8カプシドタンパク質のアミノ酸配列を有するか、又はAAV8カプシドタンパク質(配列番号48)のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99.9%同一であると同時に、AAV8カプシドの生物学的機能を保持するウイルスカプシドの発現のための発現カセットを含むウイルスゲノムを含むAAV8ベクターである。ある実施態様において、コードされたAAV8カプシドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸置換を有し、かつAAV8カプシドの生物学的機能を保持する配列番号48の配列を有する。図18は、SUBSと表示された列の比較に基づいて、アラインされた配列中の特定の位置で置換され得る潜在的アミノ酸を有する異なるAAV血清型のカプシドタンパク質のアミノ酸配列の比較アラインメントを提供している。したがって、具体的な実施態様において、AAV8ベクターは、天然のAAV8配列中のその位置に存在しない、図18のSUBS列で特定されている1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸置換を有するAAV8カプシドバリアントを含む。
【0184】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用されるAAVは、引用により完全に組み込まれるZinnらの文献、2015, Cell Rep. 12(6): 1056-1068に記載されているようなAnc80又はAnc80L65である。ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用されるAAVは、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第9,193,956号;第9458517号;及び第9,587,282号並びに米国特許出願公開第2016/0376323号に記載されているような以下のアミノ酸の挿入: LGETTRP又はLALGETTRPのうちの1つを含む。ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用されるAAVは、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第9,193,956号;第9,458,517号;及び第9,587,282号並びに米国特許出願公開第2016/0376323号に記載されているようなAAV.7m8である。ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用されるAAVは、米国特許第9,585,971号に開示されている任意のAAV、例えば、AAV-PHP.Bである。ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用されるAAVは、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、以下の特許及び特許出願:米国特許第7,906,111号;第8,524,446号;第8,999,678号;第8,628,966号;第8,927,514号;第8,734,809号; US第9,284,357号;第9,409,953号;第9,169,299号;第9,193,956号;第9458517号;及び第9,587,282号、米国特許出願公開第2015/0374803号;第2015/0126588号;第2017/0067908号;第2013/0224836号;第2016/0215024号;第2017/0051257号;及び国際特許出願PCT/US2015/034799号; PCT/EP2015/053335号のいずれかに開示されているAAVである。
【0185】
AAV8ベースのウイルスベクターは、本明細書に記載される方法のいくつかで使用される。AAVベースのウイルスベクターの核酸配列並びに組換えAAV及びAAVカプシドを作製する方法は、例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第7,282,199 B2号、米国特許第7,790,449 B2号、米国特許第8,318,480 B2号、米国特許第8,962,332 B2号、及び国際特許出願PCT/EP2014/076466号で教示されている。一態様において、本明細書に提供されるのは、導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合断片)をコードするAAV(例えば、AAV8)ベースのウイルスベクターである。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、抗VEGF抗原結合断片をコードするAAV8ベースのウイルスベクターである。より具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、ラニビズマブをコードするAAV8ベースのウイルスベクターである。
【0186】
ある実施態様において、一本鎖AAV(ssAAV)を上記のように使用することができる。ある実施態様において、自己相補的ベクター、例えば、scAAVを使用することができる(例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Wuの文献、2007, Human Gene Therapy, 18(2):171-82、McCartyらの文献、2001, Gene Therapy, Vol 8, Number 16, Pages 1248-1254;並びに米国特許第6,596,535号;第7,125,717号;及び第7,456,683号を参照されたい)。
【0187】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用されるウイルスベクターは、アデノウイルスベースのウイルスベクターである。組換えアデノウイルスベクターを用いて、抗VEGF抗原結合断片中に移入することができる。組換えアデノウイルスは、E1欠失があり、E3欠失があってもなくてもよく、かついずれかの欠失領域に発現カセットが挿入されている第1世代ベクターであることができる。組換えアデノウイルスは、E2及びE4領域の完全又は部分欠失を含む、第2世代ベクターであることができる。ヘルパー依存性アデノウイルスは、アデノウイルス逆向き末端反復及びパッケージングシグナル(φ)のみを保持する。導入遺伝子は、パッケージングシグナルと3'ITRの間に挿入され、ゲノムをおよそ36kbという野生型サイズ付近に維持するためのスタッファー配列を有していても有していなくてもよい。アデノウイルスベクターを産生するための例示的なプロトコルは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Albaらの文献、2005, 「中身のないアデノウイルス:遺伝子療法のための最新世代アデノウイルス(Gutless adenovirus: last generation adenovirus for gene therapy)」、 Gene Therapy 12:S18-S27に見出すことができる。
【0188】
ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用されるウイルスベクターは、レンチウイルスベースのベクターである。組換えレンチウイルスベクターを用いて、抗VEGF抗原結合断片中に移入することができる。4つのプラスミド: Gag/pol配列を含むプラスミド、Rev配列を含むプラスミド、エンベロープタンパク質を含むプラスミド(すなわち、VSV-G)、並びにパッケージングエレメント及び抗VEGF抗原結合断片遺伝子を含むCisプラスミドを用いて、コンストラクトを作製することができる。
【0189】
レンチウイルスベクターの産生のために、4つのプラスミドを細胞(すなわち、HEK293系細胞)に共トランスフェクトし、ここで、特に、ポリエチレンイミン又はリン酸カルシウムをトランスフェクション剤として使用することができる。その後、レンチウイルスを上清中で採取する(レンチウイルスは、活性状態になるために細胞から出芽する必要があるため、細胞採取を必要とせず/それをすべきでもない)。上清を濾過(0.45μm)し、その後、塩化マグネシウム及びベンゾナーゼを添加する。さらに下流のプロセスは、様々に異なるものであることができ、TFF及びカラムクロマトグラフィーの使用は、最もGMPに適合するプロセスである。他のプロセスでは、カラムクロマトグラフィーを伴って/伴わないで、超遠心分離が使用される。レンチウイルスベクターの産生のための例示的なプロトコルは、どちらも引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Leschらの文献、2011, 「バキュロウイルスベクターを用いて293T懸濁細胞で作製されるレンチウイルスベクターの産生及び精製(Production and purification of lentiviral vector generated in 293T suspension cells with baculoviral vectors)」、Gene Therapy 18:531-538、並びにAusubelらの文献、2012, 「CGMP等級のレンチウイルスベクターの産生(Production of CGMP-Grade Lentiviral Vectors)」、Bioprocess Int. 10(2):32-43に見出すことができる。
【0190】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法で使用するためのベクターは、関連する細胞(例えば、インビボ又はインビトロの網膜細胞)にベクターを導入するときに、グリコシル化され、かつ/又はチロシン硫酸化された抗VEGF抗原結合断片のバリアントが該細胞によって発現されるように、抗VEGF抗原結合断片(例えば、ラニビズマブ)をコードするベクターである。具体的な実施態様において、発現された抗VEGF抗原結合断片は、上の第5.1節に記載されているようなグリコシル化及び/又はチロシン硫酸化パターンを含む。
【0191】
(5.2.3 遺伝子発現のプロモーター及び修飾因子)
ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、遺伝子送達又は遺伝子発現を調節する構成要素(例えば、「発現制御エレメント」)を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、遺伝子発現を調節する構成要素を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、細胞への結合又は標的化に影響を及ぼす構成要素を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、取込み後に細胞内でのポリヌクレオチド(例えば、導入遺伝子)の局在に影響を及ぼす構成要素を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、例えば、ポリヌクレオチドを取り込んだ細胞を検出又は選択するための検出可能又は選択可能なマーカーとして使用することができる構成要素を含む。
【0192】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、1以上のプロモーターを含む。ある実施態様において、プロモーターは、構成的プロモーターである。ある実施態様において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。導入遺伝子発現のオンとオフを治療効力にとって望ましいように切り替えることができるような誘導性プロモーターが好ましい場合がある。そのようなプロモーターとしては、例えば、低酸素誘導性プロモーター並びに薬物誘導性プロモーター、例えば、ラパマイシン及び関連薬剤によって誘導されるプロモーターが挙げられる。低酸素誘導性プロモーターとしては、HIF結合部位を有するプロモーターが挙げられ、例えば、低酸素誘導性プロモーターの教示については、その各々が引用により組み込まれる、Schodelらの文献、2011, Blood 117(23):e207-e217並びにKenneth及びRochaの文献、2008, Biochem J. 414:19-29を参照されたい。さらに、コンストラクト中で使用し得る低酸素誘導性プロモーターとしては、エリスロポエチンプロモーター及びN-WASPプロモーターが挙げられる(低酸素誘導性プロモーターの教示については、エリスロポエチンプロモーターの開示に関する、Tsuchiyaの文献、1993, J. Biochem. 113:395、及びN-WASPプロモーターの開示に関する、Salviの文献、2017, Biochemistry and Biophysics Reports 9:13-21を参照されたく、これらはどちらも、引用により組み込まれる)。或いは、コンストラクトは、薬物誘導性プロモーター、例えば、ラパマイシン及び関連類似体の投与によって誘導可能なプロモーターを含み得る(例えば、薬物誘導性プロモーターのその開示については、引用により本明細書中に組み込まれる、国際特許出願公開WO94/18317号、WO 96/20951号、WO 96/41865号、WO 99/10508号、WO 99/10510号、WO 99/36553号、及びWO 99/41258号、並びに国際特許US 7,067,526号(ラパマイシン類似体を開示)を参照されたい)。ある実施態様において、プロモーターは、低酸素誘導性プロモーターである。ある実施態様において、プロモーターは、低酸素誘導性因子(HIF)結合部位を含む。ある実施態様において、プロモーターは、HIF-1α結合部位を含む。ある実施態様において、プロモーターは、HIF-2α結合部位を含む。ある実施態様において、HIF結合部位は、RCGTGモチーフを含む。HIF結合部位の位置及び配列に関する詳細については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれるSchodelらの文献、Blood, 2011, 117(23):e207-e217を参照されたい。ある実施態様において、プロモーターは、HIF転写因子以外の低酸素誘導性転写因子の結合部位を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、低酸素状態で優先的に翻訳される1以上のIRES部位を含む。低酸素誘導性遺伝子発現及びそれに関与する因子に関する教示については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれるKenneth及びRochaの文献、Biochem J., 2008, 414:19-29を参照されたい。
【0193】
ある実施態様において、プロモーターは、CB7プロモーターである(引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Dinculescuらの文献、2005, Hum Gene Ther 16: 649-663を参照されたい)。いくつかの実施態様において、CB7プロモーターは、ベクターによって駆動される導入遺伝子の発現を増強する他の発現制御エレメントを含む。ある実施態様において、他の発現制御エレメントとしては、ニワトリβ-アクチンイントロン及び/又はウサギβ-グロビンポリAシグナルが挙げられる。ある実施態様において、プロモーターは、TATAボックスを含む。ある実施態様において、プロモーターは、1以上のエレメントを含む。ある実施態様において、1以上のプロモーターエレメントは、互いに対して反転又は移動させることができる。ある実施態様において、プロモーターのエレメントは、協調的に機能するように配置される。ある実施態様において、プロモーターのエレメントは、独立に機能するように配置される。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、CMV前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RS)の長い末端反復、及びラットインスリンプロモーターからなる群から選択される1以上のプロモーターを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、AAV、MLV、MMTV、SV40、RSV、HIV-1、及びHIV-2 LTRからなる群から選択される1以上の長い末端反復(LTR)プロモーターを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、1以上の組織特異的プロモーター(例えば、網膜色素上皮細胞特異的プロモーター)を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、RPE65プロモーターを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、VMD2プロモーターを含む。
【0194】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、プロモーター以外の1以上の調節エレメントを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、エンハンサーを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、リプレッサーを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、イントロン又はキメライントロンを含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、ポリアデニル化配列を含む。
【0195】
(5.2.4 シグナルペプチド)
ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、タンパク質の送達を調節する構成要素を含む。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、1以上のシグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、本明細書において「リーダー配列」又は「リーダーペプチド」と呼ばれる場合もある。ある実施態様において、シグナルペプチドは、導入遺伝子産物(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)が細胞内で適切なパッケージング(例えば、グリコシル化)を達成することを可能にする。ある実施態様において、シグナルペプチドは、導入遺伝子産物(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)が細胞内で適切な局在化を達成することを可能にする。ある実施態様において、シグナルペプチドは、導入遺伝子産物(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)が細胞からの分泌を達成することを可能にする。本明細書に提供されるベクター及び導入遺伝子と関連して使用されるシグナルペプチドの例は、表1に見出すことができる。
表1.本明細書に提供されるベクターとともに使用するためのシグナルペプチド
【表1】
[この文献は図面を表示できません]
【0196】
(5.2.5 ポリシストロン性メッセージ−IRES及びF2Aリンカー)
内部リボソーム進入部位。単一のコンストラクトを、別々の重鎖及び軽鎖ポリペプチドが形質導入細胞によって発現されるように、切断可能なリンカー又はIRESによって隔てられた重鎖と軽鎖の両方をコードするように改変することができる。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、ポリシストロン性(例えば、バイシストロン性)メッセージを提供する。例えば、ウイルスコンストラクトは、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントによって隔てられた重鎖及び軽鎖をコードすることができる(バイシストロン性ベクターを作るためのIRESエレメントの使用の例については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Gurtuらの文献、1996, Biochem. Biophys. Res. Comm. 229(1):295-8を参照されたい)。IRESエレメントは、リボソーム走査モデルを無視し、内部部位で翻訳を開始する。AAVにおけるIRESの使用は、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Furlingらの文献、2001, Gene Ther 8(11): 854-73に記載されている。ある実施態様において、バイシストロン性のメッセージは、その中のポリヌクレオチドのサイズに関する制限付きで、ウイルスベクター内に含められる。ある実施態様において、バイシストロン性のメッセージは、AAVウイルスベースのベクター(例えば、AAV8ベースのベクター)内に含められる。
【0197】
フーリン-F2Aリンカー。他の実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、切断可能リンカー、例えば、自己切断性フーリン/F2A(F/F2A)リンカー(その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Fangらの文献、2005, Nature Biotechnology 23: 584-590、及びFangの文献、2007, Mol Ther 15: 1153-9)によって隔てられた重鎖及び軽鎖をコードする。
【0198】
例えば、フーリン-F2Aリンカーを発現カセット中に組み入れて、重鎖コード配列と軽鎖コード配列を隔て、構造:
リーダー-重鎖-フーリン部位-F2A部位-リーダー-軽鎖-ポリA
を有するコンストラクトを生じさせることができる。
【0199】
アミノ酸配列
【化115】
[この文献は図面を表示できません]
を有するF2A部位は、自己プロセシングして、最後のGアミノ酸残基とPアミノ酸残基の間での「切断」をもたらす。使用し得るさらなるリンカーとしては:
【化116】
[この文献は図面を表示できません]
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
リボソームがオープンリーディングフレーム中のF2A配列に遭遇すると、ペプチド結合がスキップされ、翻訳の終結、又は下流の配列(軽鎖)の翻訳の継続がもたらされる。この自己プロセシング配列は、重鎖のC-末端の末尾に一連の追加のアミノ酸を生じさせる。しかしながら、そのような追加のアミノ酸は、その後、宿主細胞のフーリンによって、F2A部位の直前かつ重鎖配列の後ろに位置するフーリン部位で切断され、カルボキシペプチダーゼによってさらに切断される。結果として得られる重鎖は、使用されるフーリンリンカーの配列及びインビボでリンカーを切断するカルボキシペプチダーゼに応じて、C-末端に含まれる1、2、3個、もしくはそれより多くの追加のアミノ酸を有してもよいし、又はそのような追加のアミノ酸を有さなくてもよい(例えば、Fangらの文献、17 April 2005, Nature Biotechnol.先行オンライン公開; Fangらの文献、2007, Molecular Therapy 15(6):1153-1159; Lukeの文献、2012, バイオテクノロジーのイノベーション(Innovations in Biotechnology)、第8章、161-186を参照されたい)。使用され得るフーリンリンカーは、ひと続きの4つの塩基性アミノ酸、例えば、RKRR、RRRR、RRKR、又はRKKRを含む。ひとたびこのリンカーがカルボキシペプチダーゼによって切断されると、追加の0、1、2、3、又は4個のアミノ酸、例えば、R、RR、RK、RKR、RRR、RRK、RKK、RKRR、RRRR、RRKR、又はRKKRが重鎖のC-末端上に残存し得るように、追加のアミノ酸が残存し得る。ある実施態様において、ひとたびリンカーがカルボキシペプチダーゼによって切断されると、追加のアミノ酸は残存しない。ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用するためのコンストラクトによって産生される抗体、例えば、抗原結合断片の集団の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、もしくは20%、又はそれ未満、しかし、0%よりも多くは、切断後に重鎖のC-末端上に残存する1、2、3、又は4個のアミノ酸を有する。ある実施態様において、本明細書に記載される方法で使用するためのコンストラクトによって産生される抗体、例えば、抗原結合断片の集団の0.5〜1%、0.5%〜2%、0.5%〜3%、0.5%〜4%、0.5%〜5%、0.5%〜10%、0.5%〜20%、1%〜2%、1%〜3%、1%〜4%、1%〜5%、1%〜10%、1%〜20%、2%〜3%、2%〜4%、2%〜5%、2%〜10%、2%〜20%、3%〜4%、3%〜5%、3%〜10%、3%〜20%、4%〜5%、4%〜10%、4%〜20%、5%〜10%、5%〜20%、又は10%〜20%は、切断後に重鎖のC-末端上に残存する1、2、3、又は4個のアミノ酸を有する。ある実施態様において、フーリンリンカーは、重鎖のC-末端上の追加のアミノ酸がR、RX、RXK、RXR、RXKR、又はRXRRとなるように、配列R-X-K/R-Rを有し、ここで、Xは、任意のアミノ酸、例えば、アラニン(A)である。ある実施態様において、追加のアミノ酸は、重鎖のC-末端上に残存しなくてもよい。
【0201】
ある実施態様において、本明細書に記載される発現カセットは、その中のポリヌクレオチドのサイズに関する制限付きで、ウイルスベクター内に含められる。ある実施態様において、発現カセットは、AAVウイルスベースのベクター(例えば、AAV8ベースのベクター)内に含められる。
【0202】
(5.2.6 非翻訳領域)
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、1以上の非翻訳領域(UTR)、例えば、3'及び/又は5'UTRを含む。ある実施態様において、UTRは、タンパク質発現の所望のレベルについて最適化される。ある実施態様において、UTRは、導入遺伝子のmRNAの半減期について最適化される。ある実施態様において、UTRは、導入遺伝子のmRNAの安定性について最適化される。ある実施態様において、UTRは、導入遺伝子のmRNAの二次構造について最適化される。
【0203】
(5.2.7 逆向き末端反復)
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクター、1以上の逆向き末端反復(ITR)配列を含む。ITR配列は、組換え遺伝子発現カセットをウイルスベクターのビリオンにパッケージングするために使用することができる。ある実施態様において、ITRは、AAV、例えば、AAV8又はAAV2由来のものである(例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Yanらの文献、2005, J. Virol., 79(1):364-379;米国特許第7,282,199 B2号、米国特許第7,790,449 B2号、米国特許第8,318,480 B2号、米国特許第8,962,332 B2号、及び国際特許出願PCT/EP2014/076466号を参照されたい)。
【0204】
(5.2.8 導入遺伝子)
導入遺伝子によってコードされるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFiとしては、VEGFに結合する抗体の抗原結合断片、例えば、ベバシズマブ;抗VEGF Fab部分、例えば、ラニビズマブ;又はFabドメイン上に追加のグリコシル化部位を含むように改変されたそのようなベバシズマブもしくはラニビズマブのFab部分を挙げることができるが、これらに限定されない(例えば、全長抗体のFabドメイン上で高グリコシル化されているベバシズマブの誘導体のその説明については、引用により完全に本明細書中に組み込まれるCourtoisらの文献、2016, mAbs 8: 99-112を参照されたい)。
【0205】
ある実施態様において、本明細書に提供されるベクターは、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子をコードする。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、網膜細胞における発現のための適切な発現制御エレメントによって制御され:ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、軽鎖及び重鎖cDNA配列(それぞれ、配列番号10及び11)のベバシズマブFab部分を含む。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、ラニビズマブ軽鎖及び重鎖cDNA配列(それぞれ、配列番号12及び13)を含む。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、それぞれ、配列番号3及び4の軽鎖及び重鎖を含む、ベバシズマブFabをコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号3に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号4に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号3に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号4に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、それぞれ、配列番号1及び2の軽鎖及び重鎖を含む、高グリコシル化ラニビズマブをコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号1に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号2に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号1に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号2に記載された配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合断片をコードする。
【0206】
ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、以下の突然変異: L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)、又はQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうちの1つ又は複数を有する、配列番号3及び4の軽鎖及び重鎖を含む、高グリコシル化ベバシズマブFabをコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、以下の突然変異: L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)、又はQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうちの1つ又は複数を有する、配列番号1及び2の軽鎖及び重鎖を含む、高グリコシル化ラニビズマブをコードする。抗原結合断片導入遺伝子cDNAの配列は、例えば、表2に見出すことができる。ある実施態様において、抗原結合断片導入遺伝子cDNAの配列は、配列番号10及び11又は配列番号12及び13のシグナル配列を表1に掲載されている1以上のシグナル配列と交換することにより得られる。
【0207】
ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、抗原結合断片をコードし、6つのベバシズマブCDRのヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、抗原結合断片をコードし、6つのラニビズマブCDRのヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、ラニビズマブの重鎖CDR1〜3(配列番号20、18、及び21)を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、ラニビズマブの軽鎖CDR1〜3(配列番号14〜16)を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、ベバシズマブの重鎖CDR1〜3(配列番号17〜19)を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、ベバシズマブの軽鎖CDR1〜3(配列番号14〜16)を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、ラニビズマブの重鎖CDR1〜3(配列番号20、18、及び21)を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片並びにラニビズマブの軽鎖CDR1〜3(配列番号14〜16)を含む軽鎖可変領域をコードする。ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、ベバシズマブの重鎖CDR1〜3(配列番号17〜19)を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片及びベバシズマブの軽鎖CDR1〜3(配列番号14〜16)を含む軽鎖可変領域をコードする。
【0208】
ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化117】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化118】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化119】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化120】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化121】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化122】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0209】
ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化123】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化124】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化125】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化126】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化127】
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中のN)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化128】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化129】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化130】
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中のN)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0210】
ある実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化131】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず、かつここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化132】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化133】
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中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化134】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化135】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化136】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化137】
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中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗VEGF抗原結合断片導入遺伝子は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3を含む軽鎖可変領域、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む重鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードし、ここで、軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化138】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されておらず、かつここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化139】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号20の重鎖CDR1を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化140】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化141】
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中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化142】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されておらず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化143】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化144】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0211】
ある態様において、また本明細書に提供されるのは、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む抗VEGF抗原結合断片、並びにそのような抗原-VEGF抗原結合断片をコードする導入遺伝子であり、ここで、軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化145】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化146】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化147】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化148】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化149】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化150】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。本明細書に提供される抗VEGF抗原結合断片及び導入遺伝子は、本明細書に記載される方法による任意の方法で使用することができる。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0212】
ある態様において、また本明細書に提供されるのは、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む抗VEGF抗原結合断片、並びにそのような抗原-VEGF抗原結合断片をコードする導入遺伝子であり、ここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化151】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化152】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化153】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化154】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化155】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化156】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化157】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化158】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されていない。本明細書に提供される抗VEGF抗原結合断片及び導入遺伝子は、本明細書に記載される方法による任意の方法で使用することができる。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
【0213】
ある態様において、また本明細書に提供されるのは、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含む抗VEGF抗原結合断片、並びにそのような抗原-VEGF抗原結合断片をコードする導入遺伝子であり、ここで、重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化159】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化160】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化161】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化162】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化163】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有せず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化164】
[この文献は図面を表示できません]
中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化165】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有しない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで、該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化166】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されておらず、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化167】
[この文献は図面を表示できません]
中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。具体的な実施態様において、抗原結合断片は、配列番号14〜16の軽鎖CDR1〜3、並びに配列番号20、18、及び21の重鎖CDR1〜3を含み、ここで:(1)該重鎖CDR1の9番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化168】
[この文献は図面を表示できません]
中のM)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、該重鎖CDR2の3番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化169】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該重鎖CDR1の最後のアミノ酸残基(すなわち、
【化170】
[この文献は図面を表示できません]
中のN)は、アセチル化されておらず;かつ(2)該軽鎖CDR1の8番目及び11番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化171】
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中の2つのN)は、各々、以下の化学修飾:酸化、アセチル化、脱アミド化、及びピログルタミル化(ピロGlu)のうちの1つ又は複数を保有し、かつ該軽鎖CDR3の2番目のアミノ酸残基(すなわち、
【化172】
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中の2番目のQ)は、アセチル化されていない。本明細書に提供される抗VEGF抗原結合断片及び導入遺伝子は、本明細書に記載される方法による任意の方法で使用することができる。好ましい実施態様において、本明細書に記載される化学修飾又は化学修飾の欠如(場合に応じて)は、質量分析によって決定される。
表2.例示的な導入遺伝子配列
【表2】
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【0214】
(5.2.9 コンストラクト)
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、以下の順序で、以下のエレメント: a)構成的又は低酸素誘導性プロモーター配列、及びb)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)をコードする配列を含む。ある実施態様において、導入遺伝子をコードする配列は、IRESエレメントで隔てられた複数のORFを含む。ある実施態様において、ORFは、抗VEGF抗原結合断片の重鎖及び軽鎖ドメインをコードする。ある実施態様において、導入遺伝子をコードする配列は、F/F2A配列によって隔てられた1つのORF中に複数のサブユニットを含む。ある実施態様において、導入遺伝子を含む配列は、F/F2A配列によって隔てられた抗VEGF抗原結合断片の重鎖及び軽鎖ドメインをコードする。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、以下の順序で、以下のエレメント: a)構成的又は低酸素誘導性プロモーター配列、及びb)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)をコードする配列を含み、ここで、該導入遺伝子は、VEGFのシグナルペプチド(配列番号5)を含み、かつここで、該導入遺伝子は、IRESエレメントによって隔てられた軽鎖及び重鎖配列をコードする。ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、以下の順序で、以下のエレメント: a)構成的又は低酸素誘導性プロモーター配列、及びb)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)をコードする配列を含み、ここで、該導入遺伝子は、VEGFのシグナルペプチド(配列番号5)を含み、かつここで、該導入遺伝子は、切断可能なF/F2A配列によって隔てられた軽鎖及び重鎖配列をコードする。
【0215】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、以下の順序で、以下のエレメント: a)第一のITR配列、b)第一のリンカー配列、c)構成的又は低酸素誘導性プロモーター配列、d)第二のリンカー配列、e)イントロン配列、f)第三のリンカー配列、g)第一のUTR配列、h)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)をコードする配列、i)第二のUTR配列、j)第四のリンカー配列、k)ポリA配列、l)第五のリンカー配列、及びm)第二のITR配列を含む。
【0216】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、以下の順序で、以下のエレメント: a)第一のITR配列、b)第一のリンカー配列、c)構成的又は低酸素誘導性プロモーター配列、d)第二のリンカー配列、e)イントロン配列、f)第三のリンカー配列、g)第一のUTR配列、h)導入遺伝子(例えば、抗VEGF抗原結合断片部分)をコードする配列、i)第二のUTR配列、j)第四のリンカー配列、k)ポリA配列、l)第五のリンカー配列、及びm)第二のITR配列を含み、ここで、該導入遺伝子は、VEGFのシグナルペプチド(配列番号5)を含み、かつここで、該導入遺伝子は、切断可能なF/F2A配列によって隔てられた軽鎖及び重鎖配列をコードする。
【0217】
(5.2.10 ベクターの作製及び試験)
本明細書に提供されるウイルスベクターは、宿主細胞を用いて作製することができる。本明細書に提供されるウイルスベクターは、哺乳動物宿主細胞、例えば、A549、WEHI、10T1/2、BHK、MDCK、COS1、COS7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、W138、HeLa、293、Saos、C2C12、L、HT1080、HepG2、初代線維芽細胞、肝細胞、及び筋芽細胞を用いて作製することができる。本明細書に提供されるウイルスベクターは、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、又はハムスター由来の宿主細胞を用いて作製することができる。
【0218】
宿主細胞は、導入遺伝子及び関連エレメント(すなわち、ベクターゲノム)、並びに宿主細胞でウイルスを産生する手段、例えば、複製遺伝子及びカプシド遺伝子(例えば、AAVのrep遺伝子及びcap遺伝子)をコードする配列で安定に形質転換される。AAV8カプシドを有する組換えAAVベクターを産生する方法については、引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許第7,282,199 B2号の詳細な説明の第IV節を参照されたい。該ベクターのゲノムコピー力価は、例えば、TAQMAN(登録商標)解析によって決定することができる。ビリオンは、例えば、CsCl2沈降によって回収することができる。
【0219】
インビトロアッセイ、例えば、細胞培養アッセイを用いて、本明細書に記載されるベクターからの導入遺伝子発現を測定し、したがって、例えば、ベクターの効力を示すことができる。例えば、ヒト胎児網膜細胞に由来する細胞株であるPER.C6(登録商標)細胞株(Lonza)、又は網膜色素上皮細胞、例えば、網膜色素上皮細胞株hTERT RPE-1(ATCC(登録商標)から入手可能)を用いて、導入遺伝子発現を評価することができる。ひとたび発現させたら、発現産物(すなわち、HuGlyFabVEGFi)の特性を決定することができ、これには、HuGlyFabVEGFiと関連するグリコシル化及びチロシン硫酸化のパターンの決定が含まれる。グリコシル化のパターン及びその決定方法は、第5.1.1節で論じられており、一方、チロシン硫酸化のパターン及びその決定方法は、第5.1.2節で論じられている。さらに、細胞で発現されたHuGlyFabVEGFiのグリコシル化/硫酸化から得られる利益は、当技術分野で公知のアッセイ、例えば、第5.1.1節及び第5.1.2節に記載されている方法を用いて決定することができる。
【0220】
(5.2.11 組成物)
本明細書に記載される導入遺伝子をコードするベクター及び好適な担体を含む組成物が記載される。好適な担体(例えば、上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、及び/又は網膜内投与用)は、当業者によって容易に選択されるであろう。
【0221】
(5.3 遺伝子療法)
眼疾患、特に、新生血管形成の増大によって引き起こされる眼疾患を有するヒト対象に、導入遺伝子コンストラクトの治療有効量を投与するための方法が記載される。より具体的には、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)を有する患者への導入遺伝子コンストラクトの治療有効量の投与のための、特に、上脈絡膜、網膜下、強膜近傍及び/又は網膜内投与(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置による)のための方法が記載される。特定の実施態様において、導入遺伝子コンストラクトの治療有効量の上脈絡膜、網膜下、強膜近傍及び/又は網膜内投与のためのそのような方法を用いて、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD)を有する患者を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)治療することができる。
【0222】
眼疾患、特に、新生血管形成の増大によって引き起こされる眼疾患を有すると診断されたヒト対象への導入遺伝子コンストラクトの治療有効量の(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置による)上脈絡膜、網膜下、強膜近傍及び/又は網膜内投与のための方法が記載される。特定の実施態様において、導入遺伝子コンストラクトの治療有効量の上脈絡膜、網膜下、強膜近傍及び/又は網膜内投与のためのそのような方法を用いて、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD);及び特に、滲出型AMD(新生血管AMD)又は糖尿病網膜症と診断された患者を(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)治療することができる。
【0223】
また本明細書に提供されるのは、導入遺伝子コンストラクトの治療有効量の(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置による)上脈絡膜、網膜下、強膜近傍及び/又は網膜内投与のための方法、並びに網膜色素上皮への導入遺伝子コンストラクトの治療有効量の投与のための方法である。
【0224】
(5.3.1 標的患者集団)
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、眼疾患(例えば、滲出型AMD、乾燥型AMD、網膜静脈閉塞(RVO)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、又は糖尿病網膜症(DR)(特に、滲出型AMD))、特に、新生血管形成の増大によって引き起こされる眼疾患と診断された患者に投与するためのものである。
【0225】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、重度のAMDと診断された患者に投与するためのものである。ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、減弱したAMDと診断された患者に投与するためのものである。
【0226】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、重度の滲出型AMDと診断された患者に投与するためのものである。ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、減弱した滲出型AMDと診断された患者に投与するためのものである。
【0227】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、重度の糖尿病網膜症と診断された患者に投与するためのものである。ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、減弱した糖尿病網膜症と診断された患者に投与するためのものである。
【0228】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、抗VEGF抗体による治療に応答すると特定されたAMDと診断された患者に投与するためのものである。
【0229】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、抗VEGF抗原結合断片による治療に応答すると特定されたAMDと診断された患者に投与するためのものである。
【0230】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、遺伝子療法による治療の前に硝子体内に注射された抗VEGF抗原結合断片による治療に応答すると特定されたAMDと診断された患者に投与するためのものである。
【0231】
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)、及び/又はAVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)による治療に応答すると特定されたAMDと診断された患者に投与するためのものである。
【0232】
(5.3.2 投薬量及び投与様式)
組換えベクターの治療有効用量は、網膜下及び/又は網膜内に(例えば、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射によるか、又は上脈絡膜腔を経由して)、≧0.1mL〜≦0.5mLの範囲の容量で、好ましくは、0.1〜0.30mL(100〜300μl)で、最も好ましくは、0.25mL(250μl)の容量で投与されるべきである。組換えベクターの治療有効用量は、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注射によって)、100μl以下の容量で、例えば、50〜100μlの容量で投与されるべきである。組換えベクターの治療有効用量は、強膜の外表面に、500μl以下の容量で、例えば、500μl以下の容量で、例えば、10〜20μl、20〜50μl、50〜100μl、100〜200μl、200〜300μl、300〜400μl、又は400〜500μlの容量で投与されるべきである。
【0233】
ある実施態様において、組換えベクターは、上脈絡膜に(例えば、上脈絡膜注射によって)投与される。具体的な実施態様において、上脈絡膜投与(例えば、上脈絡膜腔への注射)は、上脈絡膜薬物送達装置を用いて行われる。上脈絡膜薬物送達装置は、多くの場合、眼の上脈絡膜腔への薬物の投与を伴う上脈絡膜投与処置で使用される(例えば、Hariprasadの文献、2016, Retinal Physician 13: 20-23; Goldsteinの文献、2014, Retina Today 9(5): 82-87; Baldassarreらの文献、2017を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。本明細書に記載される本発明に従って網膜下腔に発現ベクターを沈着させるために使用することができる上脈絡膜薬物送達装置としては、Clearside(登録商標) Biomedical社によって製造されている上脈絡膜薬物送達装置(例えば、Hariprasadの文献、2016, Retinal Physician 13: 20-23を参照)及びMedOne上脈絡膜カテーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0234】
具体的な実施態様において、上脈絡膜薬物送達装置は、1ミリリットルの30ゲージ針付きシリンジである(図24を参照)。この装置を用いて注射している間に、針が強膜の基部に達して、薬物を含む流体が上脈絡膜腔に入り、上脈絡膜腔の拡張がもたらされる。結果として、注射している間に、触覚と視覚のフィードバックがある。注射後、流体は、後方に流れ、主に、脈絡膜及び網膜で吸収される。これにより、全ての網膜細胞層及び脈絡膜細胞からの導入遺伝子タンパク質の産生がもたらされる。このタイプの装置及び処置を使用すると、合併症のリスクが低い迅速かつ容易な院内(in-office)処置が可能になる。100μlの最大容量を上脈絡膜腔に注射することができる。
【0235】
ある実施態様において、組換えベクターは、網膜下薬物送達装置の使用により、上脈絡膜腔を経由して網膜下に投与される。ある実施態様において、網膜下薬物送達装置は、薬物を網膜下腔に送達するために、外科的処置の間、上脈絡膜腔を通して眼の後ろ側辺りに挿入し、貫通させるカテーテルである(図25を参照)。この処置は、硝子体を無傷の状態に維持することを可能にし、したがって、合併症リスクがより少なく(遺伝子療法撤退、並びに網膜剥離及び黄斑円孔などの合併症のリスクがより少なく)、かつ硝子体切除なしで、結果として生じるブレブがより拡散的に広がって、網膜のより多くの表面領域がより少ない容量で遺伝子導入されることを可能にすることができる。この処置の後の白内障の誘発のリスクは最小限に抑えられ、これは、若い患者にとって望ましい。さらに、この処置は、ブレブを標準的な経硝子体アプローチよりも安全に中心窩下に送達することができ、これは、遺伝性網膜疾患を有する患者にとって望ましく、形質導入の標的細胞が黄斑の中にある場合、中心視をもたらす。この処置は、他の送達経路に影響を及ぼし得る全身循環中に存在するAAVに対する中和抗体(Nab)を有する患者にとっても望ましい。さらに、この方法は、標準的な経硝子体アプローチよりも網膜切開部位からの放出が少ないブレブを作ることが示されている。最初は、Janssen Pharmaceuticals社によって、現在は、Orbit Biomedical社によって製造されている網膜下薬物送達装置(例えば、上脈絡膜腔経由の細胞の網膜下送達(Subretinal Delivery of Cells via the Suprachoroidal Space): Janssen Trial. 所収: Schwartzら(編)、網膜疾患の細胞療法(Cellular Therapies for Retinal Disease)、Springer, Cham;国際特許出願公開WO 2016/040635 A1号を参照)を、そのような目的のために使用することができる。
【0236】
ある実施態様において、組換えベクターは、強膜の外表面に(例えば、その先端を挿入して、それを強膜表面に直接並置して保持することができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達装置の使用により)投与される。具体的な実施態様において、強膜の外表面への投与は、薬物を先端が平坦な湾曲したカニューレの中に引き込み、その後、眼球に穴を開けずに、強膜の外表面と直接接触させて送達することを含む、後強膜近傍デポー処置を用いて行われる。特に、露出した強膜に小さい切開を作り出した後、カニューレの先端を挿入する(図26Aを参照)。カニューレシャフトの湾曲部を挿入し、カニューレの先端を強膜表面に直接並置して保持する(図26B〜26Dを参照)。カニューレを完全に挿入した後(図26D)、滅菌した綿棒でカニューレシャフトの先端及び側部に沿って軽い圧力を維持しながら、薬物をゆっくりと注射する。この送達方法は、眼に治療剤を直接注射することに伴って一般に見られる副作用である眼内感染及び網膜剥離のリスクを回避する。
【0237】
導入遺伝子産物の濃度を、3カ月間、硝子体液中で少なくとも0.330μg/mL又は房水(前眼房)中で0.110μg/mLのCminに維持する用量が望ましく;その後、1.70〜6.60μg/mLの範囲の導入遺伝子産物の硝子体Cmin濃度及び/又は0.567〜2.20μg/mLの範囲の眼房Cmin濃度が維持されるべきである。しかしながら、導入遺伝子産物は(構成的プロモーターの制御下で、又は低酸素誘導性プロモーターを使用する場合は、低酸素条件より誘導されて)途切れなく産生されるので、より低い濃度を維持することが有効であり得る。硝子体液濃度は、硝子体液もしくは前眼房から回収された流体の患者試料中で直接測定することができるか、又は導入遺伝子産物の患者血清濃度を測定することにより推定及び/もしくはモニタリングすることができ−導入遺伝子産物の全身曝露と硝子体曝露の比は、約1:90,000である(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Xu Lらの文献、2013, Invest. Opthal. Vis. Sci. 54: 1616-1624のp.1621、及びp.1623の表5において報告されているラニビズマブの硝子体液及び血清濃度を参照されたい)。
【0238】
ある実施態様において、投薬量は、患者の眼に投与された(例えば、上脈絡膜、網膜下、強膜近傍、及び/又は網膜内に(例えば、上脈絡膜注射、経硝子体アプローチ(外科的処置)による網膜下注射、上脈絡膜腔経由の網膜下投与、又は後強膜近傍デポー処置によって)投与された)ゲノムコピー/ml又はゲノムコピー数によって測定される。ある実施態様において、2.4×1011ゲノムコピー/ml〜1×1013ゲノムコピー/mlが投与される。具体的な実施態様において、2.4×1011ゲノムコピー/ml〜5×1011ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、5×1011ゲノムコピー/ml〜1×1012ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、1×1012ゲノムコピー/ml〜5×1012ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、5×1012ゲノムコピー/ml〜1×1013ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、約2.4×1011ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、約5×1011ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、約1×1012ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、約5×1012ゲノムコピー/mlが投与される。別の具体的な実施態様において、約1×1013ゲノムコピー/mlが投与される。ある実施態様において、1×109〜1×1012ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、3×109〜2.5×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、1×109〜2.5×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、1×109〜1×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、1×109〜5×109ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、6×109〜3×1010ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、4×1010〜1×1011ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、2×1011〜1×1012ゲノムコピーが投与される。具体的な実施態様において、約3×109ゲノムコピー(これは、250μlの容量中、約1.2×1010ゲノムコピー/mlに相当する)が投与される。別の具体的な実施態様において、約1×1010ゲノムコピー(これは、250μlの容量中、約4×1010ゲノムコピー/mlに相当する)が投与される。別の具体的な実施態様において、約6×1010ゲノムコピー(これは、250μlの容量中、約2.4×1011ゲノムコピー/mlに相当する)が投与される。別の具体的な実施態様において、約1.6×1011ゲノムコピー(これは、250μlの容量中、約6.2×1011ゲノムコピー/mlに相当する)が投与される。別の具体的な実施態様において、約1.6×1011ゲノムコピー(これは、250μlの容量中、約6.4×1011ゲノムコピー/mlに相当する)が投与される。別の具体的な実施態様において、約2.5×1011ゲノムコピー(これは、250μlの容量中、約2.5×1010に相当する)が投与される。
【0239】
本明細書で使用される場合、別途規定されない限り、「約」という用語は、所与の値又は範囲の±10%以内を意味する。
【0240】
(5.3.3 試料採取及び効力のモニタリング)
本明細書に提供される治療方法の視覚障害に対する効果は、BCVA(最高矯正視力)、眼圧、スリットランプ生体顕微鏡検査、及び/又は間接的検眼鏡検査によって測定することができる。
【0241】
本明細書に提供される治療方法の眼/網膜への物理的変化に対する効果は、SD-OCT(SD-光干渉断層撮影)によって測定することができる。
【0242】
効力は、網膜電図(ERG)によって測定しながらモニタリングすることができる。
【0243】
本明細書に提供される治療方法の効果は、視力喪失、感染症、炎症、及び網膜剥離を含む他の安全性事象の徴候を測定することによりモニタリングすることができる。
【0244】
網膜厚をモニタリングして、本明細書に提供される治療の効力を決定することができる。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、網膜の厚さを臨床読取値として使用することができ、その場合、網膜厚の低下が大きいほど又は網膜の肥厚までの期間が長いほど、治療がより有効となる。網膜機能は、例えば、ERGによって決定することができる。ERGは、ヒトでの使用がFDAによって承認された網膜機能の非侵襲的電気生理的検査であり、これは、眼の光感受性細胞(桿体及び錐体)並びにそれが接続している神経節細胞、特に、その閃光刺激への応答を調べる。網膜厚は、例えば、SD-OCTによって決定することができる。SD-OCTは、低コヒーレンス干渉法を用いて、対象となる物体から反射される後方散乱光のエコー時間遅延及び振幅を決定する3次元画像化技術である。OCTを用いて、3〜15μmの軸方向分解能で組織試料(例えば、網膜)の層をスキャンすることができ、SD-OCTは、以前の型の技術よりも軸方向分解能及びスキャン速度を向上させる(Schumanの文献、2008, Trans. Am. Opthamol. Soc. 106:426-458)。
【0245】
(5.4 組合せ療法)
本明細書に提供される治療方法は、1以上の追加の療法と組み合わせることができる。一態様において、本明細書に提供される治療方法は、レーザー光凝固法とともに施される。一態様において、本明細書に提供される治療方法は、ベルテポルフィンによる光線力学療法とともに施される。
【0246】
一態様において、本明細書に提供される治療方法は、限定されないが、ヒト細胞株において産生されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi(Dumontらの文献、2015, 前掲)、又は他の抗VEGF剤、例えば、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、もしくはベバシズマブを含む、抗VEGF剤の硝子体内(IVT)注射とともに施される。
【0247】
追加の療法は、遺伝子療法治療の前に、それと同時に、その後に投与することができる。
【0248】
遺伝子療法治療の効力は、標準治療、例えば、限定されないが、ヒト細胞株において産生されるHuPTMFabVEGFi、例えば、HuGlyFabVEGFi、又は他の抗VEGF剤、例えば、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、もしくはベバシズマブを含む、抗VEGF剤の硝子体内(IVT)注射を用いるレスキュー治療の中止又はその回数の低下によって示すことができる。
表3.配列表
【表3】
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【実施例】
【0249】
(6.実施例)
(6.1 コンストラクト)
(6.1.1 実施例1:ベバシズマブFab cDNAベースのベクター)
ベバシズマブの軽鎖及び重鎖Fab部分のcDNA配列(それぞれ、配列番号10及び11)を含む導入遺伝子を含む、ベバシズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子は、表1に掲載されている群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖及び重鎖をコードするヌクレオチド配列は、バイシストロン性ベクターを作るためのIRESエレメント又は2A切断部位によって隔てられている。任意に、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0250】
(6.1.2 実施例2:ラニビズマブcDNAベースのベクター)
ラニビズマブFab軽鎖及び重鎖cDNA(それぞれ、配列番号12及び13の一部、シグナルペプチドはコードしていない)を含む導入遺伝子を含む、ラニビズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子は、表1に掲載されている群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖及び重鎖をコードするヌクレオチド配列は、バイシストロン性ベクターを作るためのIRESエレメント又は2A切断部位によって隔てられている。任意に、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0251】
(6.1.3 実施例3:高グリコシル化ベバシズマブFab cDNAベースのベクター)
以下の突然変異: L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)、又はQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうちの1つ又は複数をコードする配列への突然変異を有するベバシズマブ軽鎖及び重鎖のFab部分のcDNA配列(それぞれ、配列番号10及び11)を含む導入遺伝子を含む高グリコシル化ベバシズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子は、表1に掲載されている群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖及び重鎖をコードするヌクレオチド配列は、バイシストロン性ベクターを作るためのIRESエレメント又は2A切断部位によって隔てられている。任意に、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0252】
(6.1.4 実施例4:高グリコシル化ラニビズマブcDNAベースのベクター)
以下の突然変異: L118N(重鎖)、E195N(軽鎖)、又はQ160NもしくはQ160S(軽鎖)のうちの1つ又は複数をコードする配列への突然変異を有するラニビズマブFab軽鎖及び重鎖cDNA(それぞれ、シグナルペプチドはコードしていない、配列番号12及び13の一部)を含む導入遺伝子を含む高グリコシル化ラニビズマブFab cDNAベースのベクターを構築する。導入遺伝子は、表1に掲載されている群から選択されるシグナルペプチドを含む核酸も含む。軽鎖及び重鎖をコードするヌクレオチド配列は、バイシストロン性ベクターを作るためのIRESエレメント又は2A切断部位によって隔てられている。任意に、ベクターは、低酸素誘導性プロモーターをさらに含む。
【0253】
(6.1.5 実施例5:ラニビズマブベースのHuGlyFabVEGFi)
ラニビズマブFab cDNAベースのベクター(実施例2を参照)をAAV8バックグラウンドのPER.C6(登録商標)細胞株(Lonza)で発現させる。結果として得られる産物であるラニビズマブベースのHuGlyFabVEGFiが安定に産生されていることを決定する。HuGlyFabVEGFiのN-グリコシル化を、ヒドラジン分解及びMS/MS解析によって確認する。例えば、Bondtらの文献、Mol. & Cell. Proteomics 13.11:3029-3039を参照されたい。グリカン解析に基づき、HuGlyFabVEGFiがN-グリコシル化されており、2,6シアル酸が主要な修飾であることを確認する。N-グリコシル化されたHuGlyFabVEGFiの有利な特性を、当技術分野で公知の方法を用いて決定する。HuGlyFabVEGFiが高い安定性及びその抗原(VEGF)に対する高い親和性を有することを見出すことができる。安定性を評価する方法については、Sola及びGriebenowの文献、2009, J Pharm Sci., 98(4): 1223-1245を、親和性を評価する方法については、Wrightらの文献、1991, EMBO J. 10:2717-2723及びLeibigerらの文献、1999, Biochem. J. 338:529-538を参照されたい。
【0254】
(6.2 コンストラクトによる治療)
(6.2.1 実施例6:ラニビズマブベースのHuGlyFabVEGFiによる滲出型AMDの治療)
ラニビズマブベースのHuGlyFabVEGFiの有利な特性の決定(実施例5を参照)に基づいて、ラニビズマブFab cDNAベースのベクターは、導入遺伝子として発現された場合、滲出型AMDの治療に有用であると考えられる。滲出型AMDを呈する対象に、3カ月間、硝子体液中で少なくとも0.330μg/mLのCminの導入遺伝子産物の濃度に十分な用量で、ラニビズマブFabをコードするAAV8を投与する。治療後、対象を滲出型AMDの症状の改善について評価する。
【0255】
(6.3 マウス試験)
(6.3.1 実施例7:単一用量の網膜下投与はトランスジェニックRho/VEGFマウスにおける網膜新生血管形成を低下させる)
本試験は、nAMDを有するヒトの網膜における新生血管変化のモデルである幼若トランスジェニックRho/VEGFマウス(Tobeの文献、1998, IOVS 39(1):180-188)における、第5.2節に記載されている、単一用量のHuPTMFabVEGFiベクターのインビボ効力を示している。Rho/VEGFマウスは、ロドプシンプロモーターが生後10日から視細胞におけるヒトVEGF165の発現を構成的に駆動し、それにより、新しい血管が網膜の深部毛細血管床から出芽し、網膜下腔へと成長するトランスジェニックマウスである。VEGFの産生は持続され、したがって、新しい血管は成長及び拡大し続け、新生血管加齢黄斑変性症を有するヒトにおいて見られるものと同様の巨大な網を網膜下腔に形成する(Tobeの文献、1998, 前掲)。
【0256】
本試験で使用されるベクター(本明細書において「ベクター1」と呼ばれる)は、AAV2逆向き末端反復(ITR)に隣接した、ヒトVEGFに結合し、これを阻害するヒト化mAb抗原結合断片をコードする遺伝子カセットを含む非複製型AAV8ベクターである。ベクター1中の重鎖及び軽鎖の発現は、ニワトリβ-アクチンプロモーター及びCMVエンハンサーからなるCB7プロモーターによって制御され、このベクターは、ニワトリβ-アクチンイントロン及びウサギβ-グロビンポリAシグナルも含む。ベクター1において、抗VEGF Fabの重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列は、自己切断性フーリン(F)/F2Aリンカーによって隔てられている。Rho/VEGFマウスに、ベクター1又は対照のいずれか(群当たりn=10〜17)を網膜下注射し、1週間後、網膜新生血管形成の量を定量した。
【0257】
網膜新生血管形成の総面積は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はヌルAAV8ベクターのいずれかが投与されたマウスと比較して、ベクター1が投与されたRho/VEGFマウスにおいて、用量依存的な様式で有意に低下した(p<0.05)。有効性の基準は、網膜新生血管形成の面積の統計的に有意な低下として設定した。この基準により、ベクター1の1×107GC/眼の最低用量がヒト対象におけるnAMDのマウストランスジェニックRho/VEGFモデルにおける網膜新生血管形成の低下に有効であると決定された(図4)。
【0258】
(6.3.2 実施例8:単一用量の網膜下投与は二重トランスジェニックTet/オプシン/VEGFマウスにおける網膜剥離を低下させる)
本試験は、VEGFの誘導性発現が重度の網膜症及び網膜剥離を引き起こす、ヒト対象における眼内新生血管疾患のトランスジェニックマウスモデル−Tet/オプシン/VEGFマウス−(Ohno-Matsuiの文献、2002 Am. J. Pathol. 160(2):711-719)において網膜剥離を予防する単一用量のベクター1のインビボ効力を示している。Tet/オプシン/VEGFマウスは、視細胞におけるヒトVEGF165のドキシサイクリン誘導性発現を有するトランスジェニックマウスである。これらのトランスジェニックマウスは、ドキシサイクリンが飲用水中に投与されるまで、表現型が正常である。ドキシサイクリンは、VEGFの非常に高い視細胞発現を誘導し、多量の血管漏出をもたらし、その結果、誘導から4日以内に、80〜90%のマウスで完全な滲出性網膜剥離となる。
【0259】
Tet/オプシン/VEGFマウス(群当たり10匹)に、ベクター1又は対照を網膜下注射した。注射から10日後、ドキシサイクリンを飲用水に添加して、VEGF発現を誘導した。4日後、各々の眼底をイメージングし、各々の網膜を、治療群について知らされていない人の手で、無傷、部分剥離、又は完全剥離のいずれかとしてスコア化した。
【0260】
これらのデータ(図5に示す)は、ベクター1による治療がTet/オプシン/VEGFマウス−ヒト対象における眼内新生血管疾患の動物モデルにおける網膜剥離の発生率及び程度を低下させたことを示している。
【0261】
(6.3.3 実施例9:抗VEGFタンパク質を発現するAAV8遺伝子療法はマウスモデルにおける網膜下新生血管形成及び血管漏出を強く抑制する)
本実施例では、実施例7及び8に記載されている実験の方法、結果、及び結論を要約する。
【0262】
方法。ロドプシンプロモーターによって視細胞におけるVEGF165の発現が駆動されるトランスジェニックマウス(rho/VEGFマウス)の一方の眼に、生後14日(P14)で、3×106〜1×1010ゲノムコピー(GC)の範囲の用量のベクター1、1×1010GCのヌルベクター、又はPBSの網膜下注射を行った(群当たりn=10)。P21で、眼当たりの網膜下新生血管形成(SNV)の面積を測定した。視細胞におけるVEGF165のドキシサイクリン(DOX)誘導性発現を有する二重トランスジェニックマウス(Tet/オプシン/VEGFマウス)の一方の眼に、1×108〜1×1010GCのベクター1の網膜下注射を行い、他眼には注射をしないか、又は一方の眼に1×1010GCのヌルベクターの網膜下注射を行い、他眼にはPBSの網膜下注射を行った。注射から10日後、2mg/mlのDOXを飲用水に添加し、4日後、眼底の写真を、完全網膜剥離(RD)、部分網膜剥離の存在、又は網膜剥離の不在について等級付けた。ベクター1導入遺伝子産物のレベルを、成熟マウスにおける1×108〜1×1010GCのベクター1の網膜下注射から1週間後に、眼ホモジネートのELISA解析により測定した。
【0263】
結果。ヌルベクターが注射されたrho/VEGFマウスの眼と比較して、≧1×107GCのベクター1が注射されたマウスは、SNVの平均面積の有意な低下を経験し、≦3×107が注射された眼では、中程度の低下を経験し、≧1×108GCが注射された眼では、>50%の低下を経験した。3×109又は1×1010GCが注射された眼は、ほぼ完全なSNVの消失を経験した。Tet/オプシン/VEGFマウスでは、100%の眼が完全RDを有していたヌルベクター群と比較して、≧3×108GCのベクター1が注射された眼では、滲出性RDが有意に低下し、3×109又は1×1010GCが注射された眼では、完全剥離が70〜80%低下した。≦1×109GCのベクター1が注射された大多数の眼は、検出限界未満のタンパク質レベルを有していたが、3×109又は1×1010GCが注射された眼は全て、検出可能なレベルを有し、眼当たりの平均レベルは、342.7ng及び286.2ngであった。
【0264】
結論。ベクター1の網膜下注射による遺伝子療法により、rho/VEGFマウスにおけるSNVが用量依存的に抑制され、3×109又は1×1010GCの用量で、ほぼ完全に抑制された。これらの同じ用量は、強力なタンパク質産物の発現を示し、Tet/オプシン/VEGFマウスにおける完全滲出性RDを顕著に低下させた。
【0265】
(6.4 ヒト試験)
(6.4.1 実施例10:新生血管AMDのための遺伝子療法:新生血管AMD(nAMD)を有する対象におけるベクター1による遺伝子療法の安全性及び忍容性を評価するための用量漸増試験)
試験の簡単な要約。過剰な血管内皮増殖因子(VEGF)は、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性症(nAMD)における新生血管形成及び浮腫の促進において重要な役割を果たしている。ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標)、Genentech)及びアフリベルセプト(EYLEA(登録商標)、Regeneron)を含む、VEGF阻害剤(抗VEGF)は、nAMDの治療に安全かつ有効であることが示されており、視力を改善することが示されている。しかしながら、抗VEGF療法は、硝子体内注射によって頻回投与され、患者にとって重大な負担となり得る。ベクター1は、可溶性抗VEGFタンパク質のコード配列を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子療法ベクターである。nAMDの1回限りの遺伝子療法治療後のこの治療タンパク質の長期安定送達は、有利なベネフィット:リスクプロファイルで視力を維持しながら、現在利用可能な療法の治療的負担を軽減することができる。
【0266】
試験の詳細な説明。この用量漸増試験は、過去にnAMDの治療を受けた対象におけるベクター1遺伝子療法の安全性及び忍容性を評価するために設計される。3つの用量を約18名の対象で試験する。選択/除外基準を満たし、かつ初回の抗VEGF注射に対する解剖学的応答を有する対象に、網膜下送達によって投与される単一用量のベクター1を投与する。ベクター1は、VEGFに結合し、その活性を中和するモノクローナル抗体断片をコードする遺伝子を含むAAV8ベクターを使用する。安全性は、ベクター1の投与後の最初の24週間(主要試験期間)の主要な焦点である。主要試験期間の終了後、対象は、ベクター1による治療後104週まで評価され続ける。
【0267】
投薬。3つの用量:3×109GCのベクター1、1×1010GCのベクター1、及び6×1010GCのベクター1を使用する。
【0268】
転帰尺度。主要転帰尺度は、26週の時間枠にわたる安全性−眼及び眼以外の有害事象(AE)及び重大な有害事象(SAE)の発生率−である。
【0269】
二次転帰尺度には、以下のものが含まれる:
【0270】
106週の時間枠にわたる安全性−眼及び眼以外のAE及びSAEの発生率。
【0271】
106週の時間枠にわたる−最高矯正視力(BCVA)の変化。
【0272】
106週の時間枠にわたる−SD-OCTによって測定される中心網膜厚(CRT)の変化。
【0273】
106週の時間枠にわたるレスキュー注射−レスキュー注射の平均の回数。
【0274】
106週の時間枠にわたる−フルオレセイン血管造影法(FA)によって測定される脈絡膜新生血管形成(CNV)の変化並びに病変サイズ及び漏出面積CNV変化。
【0275】
適格性基準。以下の適格性基準が本試験に適用される:
【0276】
最低年齢:50歳
【0277】
最高年齢:(なし)
【0278】
性別:全て
【0279】
ジェンダーに基づくこと:なし
【0280】
健常ボランティアの受け入れ:なし
【0281】
選択基準:
・試験眼にAMDに続発する中心窩下CNVがあると診断を受けた50歳以上の患者であり、過去に硝子体内への抗VEGF療法を受けている。
・各々のコホートの最初の患者について、≦20/63〜≧20/400のBCVA(≦63かつ≧19の糖尿病網膜症早期治療研究[ETDRS]文字数)であり、次に、残りのコホートについて、≦20/20〜≧20/400のBCVA(≦73かつ≧19のETDRS文字数)である。
・抗VEGF療法を必要とし、かつそれに応答した既往がある。
・治験参加時に(1週目にSD-OCTにより評価して)、抗VEGFに応答した。
・試験眼が偽水晶体眼(白内障手術後の状態)でなければならない。
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)<2.5×正常値上限(ULN);総ビリルビン(TB)<1.5×ULN;プロトロンビン時間(PT)<1.5×ULN;ヘモグロビン(Hb)>10g/dL(男性)及び>9g/dL(女性);血小板>100×103/μL;推定糸球体濾過量(eGFR)>30mL/分/1.73m2である。
・書面による署名付きインフォームドコンセントを提供する意思があり、かつそれが可能でなければならない。
【0282】
除外基準:
・試験眼にAMD以外の任意の原因に続発するCNV又は黄斑浮腫がある。
・試験眼における視力改善を妨げる任意の状態、例えば、線維症、萎縮、又は中心窩の中央の網膜上皮裂孔がある。
・試験眼に進行中の網膜剥離、又はその既往がある。
・試験眼に進行した緑内障がある。
・スクリーニングの6カ月前に、試験眼に、抗VEGF療法以外の硝子体内療法、例えば、硝子体内ステロイド注射又は治験薬を受けた履歴がある。
・スクリーニング時に試験眼にインプラント(眼内レンズを除く)が存在する。
・過去6カ月以内に心筋梗塞、脳血管発作、又は一過性虚血発作を起こしている。
・最大限の医学的処置にもかかわらず制御の効かない高血圧(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)を有する。
【0283】
(6.4.2 実施例11:ヒト対象を治療するためのプロトコル)
本実施例は、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性症(nAMD)を有する患者の遺伝子療法治療に関する。本実施例は、実施例10の更新版である。本実施例では、可溶性抗VEGF Fabタンパク質(実施例7に記載)のコード配列を保有する複製欠損アデノ随伴ウイルスベクター8(AAV8)であるベクター1を、nAMDを有する患者に投与する。遺伝子療法治療の目的は、網膜変性症の進行を減速又は停止させ、かつ最小限の介入/侵襲的処置により視力喪失を減速させ又は予防することである。
【0284】
投薬及び投与経路。250μLの容量のベクター1を、治療を必要とする対象の眼に網膜下送達によって単一用量として投与する。対象に、3×109GC/眼、1×1010GC/眼、又は6×1010GC/眼の用量を投与する。
【0285】
網膜下送達は、網膜外科医により、局所麻酔下の対象を用いて行われる。この処置は、中心部硝子体切除を伴う標準的な3ポート経扁平部硝子体切除と、それに続く、網膜下カニューレ(38ゲージ)による網膜下腔へのベクター1の網膜下送達を伴う。送達は、網膜下腔に250μLを送達するように、硝子体切除機械によって自動化される。注射及び結果として生じるブレブは、ビデオ録画によって及び外科医による描画表示によって記録される。
【0286】
遺伝子療法は、滲出型AMDの治療のための1以上の療法と組み合わせて投与することができる。例えば、遺伝子療法は、レーザー光凝固法、ベルテポルフィンによる光線力学療法、及び限定されないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブを含む抗VEGF剤の硝子体内と組み合わせて投与される。
【0287】
ベクター1の投与の約4週間後から、患者は、治療医師の判断で、罹患した眼への硝子体内ラニビズマブレスキュー療法を受けることができる。
【0288】
患者亜集団。好適な患者としては:
・nAMDの診断を受けている;
・抗VEGF療法に応答する;
・抗VEGF療法の頻回注射を必要とする;
・50歳以上の年齢の男性もしくは女性である;
・罹患した眼において、≦20/63かつ≧20/400のBCVA(≦63及び≧19のETDRS文字数)を有する;
・≦20/20〜≧20/400のBCVA(≦73〜≧19のETDRS文字数)を有する;
・罹患した眼にAMDに続発する中心窩下CNVの文書化された診断を受けている;
・次のようなCNV病変特徴: 10ディスク面積(disc areas)未満の病変サイズ(典型的なディスク面積は2.54mm2である)、該病変サイズの<50%の血液を有する;
・治療の約8カ月前(もしくはそれ以内)に、罹患した眼におけるnAMDの治療用の抗VEGF剤の少なくとも4回の硝子体内注射を受けており、解剖学的応答がSD-OCTで記録されている;並びに/又は
・罹患した眼に網膜下もしくは網膜内液が存在することがSD-OCTで証明されている
患者を挙げることができる。
【0289】
治療前に、患者をスクリーニングし、以下の基準のうちの1つ又は複数によって、この療法が患者に適さないことが示され得る:
・罹患した眼にAMD以外の任意の原因に続発するCNV又は黄斑浮腫がある;
・罹患した眼において血液がAMD病変の≧50%を占めるか又は>1.0mm2の血液が中心窩下部に存在する;
・罹患した眼におけるVA改善を妨げる任意の状態、例えば、線維症、萎縮、又は中心窩の中央の網膜上皮裂孔がある;
・罹患した眼に進行中の網膜剥離、又はその既往がある;
・罹患した眼に進行した緑内障がある;
・対象へのリスクを増大させ得る罹患した眼における任意の状態が視力喪失を予防もしくは治療する又は試験手順もしくは評価を妨害する医学的介入又は外科的介入のいずれかを必要とする;
・スクリーニング前の12週間以内に罹患した眼に眼内外科手術を受けた履歴がある(イットリウム・アルミニウム・ガーネット嚢切開はスクリーニング通院の10週間よりも前に実施されたのであれば許容され得る);
・スクリーニングの6カ月前に、罹患した眼に、抗VEGF療法以外の硝子体内療法、例えば、硝子体内ステロイド注射又は治験薬を受けた履歴がある;
・スクリーニング時に罹患した眼にインプラント(眼内レンズを除く)が存在する;
・スクリーニング前の5年間に化学療法及び/又は放射線を必要とする悪性腫瘍の既往がある(局所基底細胞癌は許容され得る);
・網膜毒性を引き起こしたことが知られている療法、又は視力に影響を及ぼし得るもしくは既知の網膜毒性を有する任意の薬物、例えば、クロロキンもしくはヒドロキシクロロキンによる同時療法の履歴がある;
・外科的処置を妨げる可能性がある罹患した眼における眼内又は眼周囲感染症を有する;
・治療から過去6月以内に心筋梗塞、脳血管発作、又は一過性虚血発作を起こしている;
・最大限の医学的処置にもかかわらず制御の効かない高血圧(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)を有する
・眼の外科的処置又は治癒過程を妨げる可能性がある任意の同時治療を受けている;
・ラニビズマブもしくはその成分のいずれかに対する既知の過敏症又はベクター1のような薬剤に対する過去の過敏症を有する;
・治験責任医師の意見において、対象の安全又は試験への参加の成功を損ねることになる任意の深刻な又は不安定な医学的又は心理学状態
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×正常値上限(ULN)である
・総ビリルビン>1.5×ULNである。ただし、対象がジルベール症候群及び総ビリルビンの<35%の抱合型ビリルビンを示す分画ビリルビンの既知の既往を過去に有しない場合に限る
・プロトロンビン時間(PT)>1.5×ULNである
・ヘモグロビンが男性対象について<10g/dL及び女性対象について<9g/dLである
・血小板<100×103/μLである
・推定糸球体濾過量(GFR)<30mL/分/1.73m2である。
【0290】
以下のレスキュー基準:
・スペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)での網膜液の蓄積と関連付けられる≧5文字の視力喪失(最高矯正視力[BCVA]による)
・SD-OCTでの脈絡膜新生血管形成(CNV)に関連する、増加した、新たな、又は持続性の網膜下又は網膜内液
・新たな眼出血
のうちの1つ又は複数に該当する場合、遺伝子療法を投与した約4週間後から、患者は、治療医師の判断で、疾患活動性に対する罹患した眼への硝子体内ラニビズマブレスキュー療法を受けることができる。以下の調査結果のセット:
・視力が20/20もしくはそれより良好であり、かつSD-OCTにより評価したとき、中心網膜厚が「正常」であること、又は
・視力及びSD-OCTが2回の連続した注射の後に安定していること
のうちの1つが生じる場合、治療医師の判断によって、さらなるレスキュー注射を延期することができる。
【0291】
注射を延期する場合、視力又はSD-OCTが上記の基準に従って悪化するならば、注射を再開する。
【0292】
臨床目標の測定。主要な臨床目標には、網膜変性の進行を減速又は停止させること、及び視力喪失を減速させ又は予防することが含まれる。臨床目標は、標準治療、例えば、限定されないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブを含む、抗VEGF剤の硝子体内注射を用いるレスキュー治療の中止又はその回数の低下によって示される。臨床目標は、視力喪失の減少もしくは予防、及び/又は網膜剥離の減少もしくは予防によっても示される。
【0293】
臨床目標は、BCVA(最高矯正視力)の測定、眼圧、スリットランプ生体顕微鏡検査、間接的検眼鏡検査、及び/又はSD-OCT(SD-光干渉断層撮影)によって決定される。特に、臨床目標は、経時的なBCVAのベースラインからの平均変化の測定、BCVAによるベースラインと比較した≧15文字の増加又は減少の測定、経時的なSD-OCTによって測定されるCRTのベースラインからの平均変化の測定、経時的なラニビズマブのレスキュー注射の平均回数の測定、初回のレスキューラニビズマブ注射までの時間の測定、経時的なFAに基づくCNV並びに病変サイズ及び漏出面積のベースラインからの平均変化の測定、経時的な眼房aVEGFタンパク質のベースラインからの平均変化の測定、血清及び尿中のベクター排出解析の実施、並びに/又はベクター1に対する免疫原性の測定、すなわち、AAVに対するNabの測定、AAVに対する結合抗体の測定、aVEGFに対する抗体の測定、並びに/又はELISpotの実施によって決定される。
【0294】
臨床目標は、眼底の自己蛍光(FAF)による地図状萎縮の面積の経時的なベースラインからの平均変化の測定、FAFによる地図状萎縮の新たな領域の発生の測定(ベースライン時に地図状萎縮を有さない対象において)、BCVAによるベースラインと比較して、それぞれ≧5及び≧10文字増加又は減少する対象の比率の測定、前年と比較してレスキュー注射が50%低下している対象の比率の測定、SD-OCTで流体を有さない対象の比率の測定によっても決定される。
【0295】
ベクター1の投与によって得られる改善/効力は、約4週、12週、6カ月、12カ月、24カ月、36カ月での又は他の望ましい時点での視力のベースラインにおける規定の平均変化として評価することができる。ベクター1による治療により、視力をベースラインから5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、又はそれよりも大きく増加させることができる。改善/効力は、4週、12週、6カ月、12カ月、24カ月、及び36カ月でのスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定される中心網膜厚(CRT)のベースラインからの平均変化として評価することができる。ベクター1による治療により、中心網膜厚をベースラインから5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、又はそれよりも大きく増加させることができる。
【0296】
(6.4.3 実施例12:新生血管AMDの遺伝子療法:新生血管AMD(nAMD)を有する対象におけるベクター1による遺伝子療法の安全性及び忍容性を評価するための用量漸増試験)
試験の簡単な要約。過剰な血管内皮増殖因子(VEGF)は、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性症(nAMD)における新生血管形成及び浮腫の促進において重要な役割を果たしている。ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標)、Genentech)及びアフリベルセプト(EYLEA(登録商標)、Regeneron)を含む、VEGF阻害剤(抗VEGF)は、nAMDの治療に安全かつ有効であることが示されており、視力を改善することが示されている。しかしながら、抗VEGF療法は、硝子体内注射によって頻回投与され、患者にとって重大な負担となり得る。ベクター1は、可溶性抗VEGFタンパク質のコード配列を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子療法ベクターである。nAMDの1回限りの遺伝子療法治療後のこの治療タンパク質の長期安定送達は、有利なベネフィット:リスクプロファイルで視力を維持しながら、現在利用可能な療法の治療的負担を軽減することができる。
【0297】
試験の詳細な説明。この用量漸増試験は、過去にnAMDの治療を受けた対象におけるベクター1遺伝子療法の安全性及び忍容性を評価するために設計される。5つの用量を約30名の対象で試験する。対象が網膜下腔に250μLの完全用量を受け入れない場合、追加の対象を登録することができる。選択/除外基準を満たし、かつ初回の抗VEGF注射に対する解剖学的応答を有する対象に、網膜下送達によって投与される単一用量のベクター1を投与する。本試験における網膜下送達は、血管アーケード内の中心窩よりも上位にある領域に標的化され、これにより、黄斑が回避される。ベクター1は、VEGFに結合し、その活性を中和するモノクローナル抗体断片をコードする遺伝子を含むAAV8ベクターを使用する。安全性は、ベクター1の投与後の最初の24週間(主要試験期間)の主要な焦点である。主要試験期間の終了後、対象は、ベクター1による治療後104週まで評価され続ける。
【0298】
投薬。5つの用量: 3×109GCのベクター1(1.2×1010GC/mL)、1×1010GCのベクター1(4×1010GC/mL)、6×1010GCのベクター1(2.4×1011GC/mL)、1.6×1011GCのベクター1(6.2×1011GC/mL)、及び2.5×1011GCのベクター1(1×1012GC/mL)を250μLのベクター1の容量で使用する。
【0299】
転帰尺度。主要転帰尺度は、26週の時間枠にわたる安全性−眼及び眼以外の有害事象(AE)及び重大な有害事象(SAE)の発生率−である。
【0300】
二次転帰尺度には、以下のものが含まれる:
【0301】
106週の時間枠にわたる安全性−眼及び眼以外のAE及びSAEの発生率。
【0302】
106週の時間枠にわたる−最高矯正視力(BCVA)の変化。
【0303】
106週の時間枠にわたる−SD-OCTによって測定される中心網膜厚(CRT)の変化。
【0304】
106週の時間枠にわたるレスキュー注射−レスキュー注射の平均の回数。
【0305】
106週の時間枠にわたる−フルオレセイン血管造影法(FA)によって測定される脈絡膜新生血管形成(CNV)の変化並びに病変サイズ及び漏出面積CNV変化。
【0306】
適格性基準。以下の適格性基準が本試験に適用される:
【0307】
最低年齢:50歳
【0308】
最高年齢:89歳
【0309】
性別:全て
【0310】
ジェンダーに基づくこと:なし
【0311】
健常ボランティアの受け入れ:なし
【0312】
選択基準:
・試験眼にAMDに続発する中心窩下CNVがあると診断を受けた50歳以上かつ89歳以下の患者であり、過去に硝子体内への抗VEGF療法を受けている。
・各々のコホートの最初の患者について、≦20/63〜≧20/400のBCVA(≦63かつ≧19の糖尿病網膜症早期治療研究[ETDRS]文字数)であり、次に、残りのコホートについて、≦20/20〜≧20/400のBCVA(≦73かつ≧19のETDRS文字数)である。
・抗VEGF療法を必要とし、かつそれに応答した既往がある。
・治験参加時に(1週目にSD-OCTにより評価して)、抗VEGFに応答した。
・試験眼が偽水晶体眼(白内障手術後の状態)でなければならない。
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)<2.5×正常値上限(ULN);総ビリルビン(TB)<1.5×ULN;プロトロンビン時間(PT)<1.5×ULN;ヘモグロビン(Hb)>10g/dL(男性)及び>9g/dL(女性);血小板>100×103/μL;推定糸球体濾過量(eGFR)>30mL/分/1.73m2である。
・書面による署名付きインフォームドコンセントを提供する意思があり、かつそれが可能でなければならない。
【0313】
除外基準:
・試験眼にAMD以外の任意の原因に続発するCNV又は黄斑浮腫がある。
・試験眼における視力改善を妨げる任意の状態、例えば、線維症、萎縮、又は中心窩の中央の網膜上皮裂孔がある。
・試験眼に進行中の網膜剥離、又はその既往がある。
・試験眼に進行した緑内障がある。
・スクリーニングの6カ月前に、試験眼に、抗VEGF療法以外の硝子体内療法、例えば、硝子体内ステロイド注射又は治験薬を受けた履歴がある。
・スクリーニング時に試験眼にインプラント(眼内レンズを除く)が存在する。
・過去6カ月以内に心筋梗塞、脳血管発作、又は一過性虚血発作を起こしている。
・最大限の医学的処置にもかかわらず制御の効かない高血圧(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)を有する。
【0314】
(6.4.4 実施例13:ヒト対象を治療するためのプロトコル)
本実施例は、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性症(nAMD)を有する患者の遺伝子療法治療に関する。本実施例は、実施例12の更新版である。本実施例では、可溶性抗VEGF Fabタンパク質(実施例7に記載)のコード配列を保有する複製欠損アデノ随伴ウイルスベクター8(AAV8)であるベクター1を、nAMDを有する患者に投与する。遺伝子療法治療の目的は、網膜変性症の進行を減速又は停止させ、かつ最小限の介入/侵襲的処置により視力喪失を減速させ又は予防することである。
【0315】
投薬及び投与経路。250μLの容量のベクター1を、治療を必要とする対象の眼に網膜下送達によって単一用量として投与する。対象に、3×109GC(1.2×1010GC/mL)、1×1010GC(4×1010GC/mL)、6×1010GC(2.4×1011GC/mL)、1.6×1011GC(6.2×1011GC/mL)、又は2.5×1011GC(1×1012GC/mL)の用量を投与する。
【0316】
網膜下送達は、網膜外科医により、局所麻酔下の対象を用いて行われる。この処置は、中心部硝子体切除を伴う標準的な3ポート経扁平部硝子体切除と、それに続く、網膜下カニューレ(38ゲージ)による網膜下腔へのベクター1の網膜下送達を伴う。送達は、網膜下腔に250μLを送達するように、硝子体切除機械によって自動化される。注射及び結果として生じるブレブは、ビデオ録画によって及び外科医による描画表示によって記録される。網膜下送達は、血管アーケード内の中心窩よりも上位にある領域に標的化され、これにより、黄斑が回避される。
【0317】
遺伝子療法は、滲出型AMDの治療のための1以上の療法と組み合わせて投与することができる。例えば、遺伝子療法は、レーザー光凝固法、ベルテポルフィンによる光線力学療法、及び限定されないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブを含む抗VEGF剤の硝子体内と組み合わせて投与される。
【0318】
ベクター1の投与の約4週間後から、患者は、治療医師の判断で、罹患した眼への硝子体内ラニビズマブレスキュー療法を受けることができる。このレスキュー療法は、治療医師の判断で、ラニビズマブからアフリベルセプトに変更することができる。
【0319】
患者亜集団。好適な患者としては:
・nAMDの診断を受けている;
・抗VEGF療法に応答する;
・抗VEGF療法の頻回注射を必要とする;
・50歳以上かつ89歳以下の年齢の男性又は女性である;
・罹患した眼において、≦20/63かつ≧20/400のBCVA(≦63及び≧19のETDRS文字数)を有する;
・≦20/20〜≧20/400のBCVA(≦73〜≧19のETDRS文字数)を有する;
・罹患した眼にAMDに続発する中心窩下CNVの文書化された診断を受けている;
・次のようなCNV病変特徴: 10ディスク面積未満の病変サイズ(典型的なディスク面積は2.54mm2である)、該病変サイズの<50%の血液を有する;
・治療の約8カ月前(もしくはそれ以内)に、罹患した眼におけるnAMDの治療用の抗VEGF剤の少なくとも4回の硝子体内注射を受けており、解剖学的応答がSD-OCTで記録されている;並びに/又は
・罹患した眼に網膜下もしくは網膜内液が存在することがSD-OCTで証明されている
患者を挙げることができる。
【0320】
治療前に、患者をスクリーニングし、以下の基準のうちの1つ又は複数によって、この療法が患者に適さないことが示され得る:
・罹患した眼にAMD以外の任意の原因に続発するCNV又は黄斑浮腫がある;
・罹患した眼において血液がAMD病変の≧50%を占めるか又は>1.0mm2の血液が中心窩下部に存在する;
・罹患した眼におけるVA改善を妨げる任意の状態、例えば、線維症、萎縮、又は中心窩の中央の網膜上皮裂孔がある;
・罹患した眼に進行中の網膜剥離、又はその既往がある;
・罹患した眼に進行した緑内障がある;
・対象へのリスクを増大させ得る罹患した眼における任意の状態が視力喪失を予防もしくは治療する又は試験手順もしくは評価を妨害する医学的介入又は外科的介入のいずれかを必要とする;
・スクリーニング前の12週間以内に罹患した眼に眼内外科手術を受けた履歴がある(イットリウム・アルミニウム・ガーネット嚢切開はスクリーニング通院の10週間よりも前に実施されたのであれば許容され得る);
・スクリーニングの6カ月前に、罹患した眼に、抗VEGF療法以外の硝子体内療法、例えば、硝子体内ステロイド注射又は治験薬を受けた履歴がある;
・スクリーニング時に罹患した眼にインプラント(眼内レンズを除く)が存在する;
・スクリーニング前の5年間に化学療法及び/又は放射線を必要とする悪性腫瘍の既往がある(局所基底細胞癌は許容され得る);
・網膜毒性を引き起こしたことが知られている療法、又は視力に影響を及ぼし得るもしくは既知の網膜毒性を有する任意の薬物、例えば、クロロキンもしくはヒドロキシクロロキンによる同時療法の履歴がある;
・外科的処置を妨げる可能性がある罹患した眼における眼内又は眼周囲感染症を有する;
・治療から過去6月以内に心筋梗塞、脳血管発作、又は一過性虚血発作を起こしている;
・最大限の医学的処置にもかかわらず制御の効かない高血圧(収縮期血圧[BP]>180mmHg、拡張期BP>100mmHg)を有する
・眼の外科的処置又は治癒過程を妨げる可能性がある任意の同時治療を受けている;
・ラニビズマブもしくはその成分のいずれかに対する既知の過敏症又はベクター1のような薬剤に対する過去の過敏症を有する;
・治験責任医師の意見において、試験における対象の安全又は全ての評価及び追跡調査の遂行能力を損ねる可能性がある任意の深刻な、慢性の、又は不安定な医学的又は心理学状態
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×正常値上限(ULN)である
・総ビリルビン>1.5×ULNである。ただし、対象がジルベール症候群及び総ビリルビンの<35%の抱合型ビリルビンを示す分画ビリルビンの既知の既往を過去に有しない場合に限る
・プロトロンビン時間(PT)>1.5×ULNである
・ヘモグロビンが男性対象について<10g/dL及び女性対象について<9g/dLである
・血小板<100×103/μLである
・推定糸球体濾過量(GFR)<30mL/分/1.73m2である。
【0321】
以下のレスキュー基準:
・スペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)での網膜液の蓄積と関連付けられる≧5文字の視力喪失(最高矯正視力[BCVA]による)
・SD-OCTでの脈絡膜新生血管形成(CNV)に関連する増加した、新たな、又は持続性の網膜下又は網膜内液
・新たな眼出血
のうちの1つ又は複数に該当する場合、遺伝子療法を投与した約4週間後から、患者は、治療医師の判断で、疾患活動性に対する罹患した眼への硝子体内ラニビズマブレスキュー療法を受けることができる。以下の調査結果のセット:
・視力が20/20もしくはそれより良好であり、かつSD-OCTにより評価したとき、中心網膜厚が「正常」であること、又は
・視力及びSD-OCTが2回の連続した注射の後に安定していること
のうちの1つが生じる場合、治療医師の判断によって、さらなるレスキュー注射を延期することができる。
【0322】
注射を延期する場合、視力又はSD-OCTが上記の基準に従って悪化するならば、注射を再開する。このレスキュー療法は、治療医師の判断で、ラニビズマブからアフリベルセプトに変更することができる。
【0323】
臨床目標の測定。主要な臨床目標には、網膜変性の進行を減速又は停止させること、及び視力喪失を減速させ又は予防することが含まれる。臨床目標は、標準治療、例えば、限定されないが、ペガプタニブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブを含む、抗VEGF剤の硝子体内注射を用いるレスキュー治療の中止又はその回数の低下によって示される。臨床目標は、視力喪失の減少もしくは予防、及び/又は網膜剥離の減少もしくは予防によっても示される。
【0324】
臨床目標は、BCVA(最高矯正視力)の測定、眼圧、スリットランプ生体顕微鏡検査、間接的検眼鏡検査、及び/又はSD-OCT(SD-光干渉断層撮影)によって決定される。特に、臨床目標は、経時的なBCVAのベースラインからの平均変化の測定、BCVAによるベースラインと比較した≧15文字の増加又は減少の測定、経時的なSD-OCTによって測定されるCRTのベースラインからの平均変化の測定、経時的なラニビズマブのレスキュー注射の平均回数の測定、初回のレスキューラニビズマブ注射までの時間の測定、経時的なFAに基づくCNV並びに病変サイズ及び漏出面積のベースラインからの平均変化の測定、経時的な眼房aVEGFタンパク質のベースラインからの平均変化の測定、血清及び尿中のベクター排出解析の実施、並びに/又はベクター1に対する免疫原性の測定、すなわち、AAVに対するNabの測定、AAVに対する結合抗体の測定、aVEGFに対する抗体の測定、並びに/又はELISpotの実施によって決定される。
【0325】
臨床目標は、眼底の自己蛍光(FAF)による地図状萎縮の面積の経時的なベースラインからの平均変化の測定、FAFによる地図状萎縮の新たな領域の発生の測定(ベースライン時に地図状萎縮を有さない対象において)、BCVAによるベースラインと比較して、それぞれ≧5及び≧10文字増加又は減少する対象の比率の測定、前年と比較してレスキュー注射が50%低下している対象の比率の測定、SD-OCTで流体を有さない対象の比率の測定によっても決定される。
【0326】
ベクター1の投与によって得られる改善/効力は、約4週、12週、6カ月、12カ月、24カ月、36カ月での又は他の望ましい時点での視力のベースラインにおける規定の平均変化として評価することができる。ベクター1による治療により、視力をベースラインから5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、又はそれよりも大きく増加させることができる。改善/効力は、4週、12週、6カ月、12カ月、24カ月、及び36カ月でのスペクトルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)によって測定される中心網膜厚(CRT)のベースラインからの平均変化として評価することができる。ベクター1による治療により、中心網膜厚をベースラインから5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、又はそれよりも大きく増加させることができる。
【0327】
(6.5 実施例14:新生血管AMDのためのAAV8-抗VEGFfab)
(6.5.1 試験の簡単な概要)
本試験では、AAV8-抗VEGFfabの網膜下注射後の抗ヒトVEGF抗体断片(抗VEGFfab)の発現が示されている。ヒトにおける3型脈絡膜新生血管形成(NV)のモデルである、網膜でヒトVEGFを発現するトランスジェニックマウス(rho/VEGFマウス)において、ヌルベクターが注射された眼と比較して、≧1×107遺伝子コピー(GC)のAAV8-抗VEGFfabが注射された眼は、NVの平均面積が有意に低下していた。用量依存的応答が観察され、≦3×107でNVの中等度の低下、≧1×108GCで>50%の低下、及び3×109又は1×1010GCでNVのほぼ完全な消失が見られた。ドキシサイクリン誘導性のVEGF高発現によって、重度の血管漏出及び滲出性網膜剥離(RD)が生じるTet/オプシン/VEGFマウスでは、全RDの70〜80%の低下が3×109又は1×1010GCのAAV8-抗VEGFfabで生じた。これらのデータは、NVAMDを有する患者においてAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射を検討する臨床試験を開始することを強く支持している。
【0328】
(6.5.2 序論)
加齢黄斑変性症(AMD)は、視細胞及び網膜色素上皮(RPE)細胞の死によって中心視の漸進的な喪失がもたらされる、高度に蔓延している神経変性疾患である。AMDを有する患者の10〜15%の亜群は、網膜下新生血管形成(NV)を発症し、機能不全新生血管からの血漿の漏出並びに網膜機能を損なう網膜内及び網膜下での流体貯留が原因で比較的速やかに視力の低下が生じる。この亜群は、新生血管AMD(NVAMD)を有すると言われる。
【0329】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、網膜下NVの発症及びNVによる過剰漏出において中心的な役割を果たし、視力を低下させる網膜下及び/又は網膜内液を黄斑に生じさせる。VEGF中和タンパク質の眼内注射は、漏出を可能にして、流体の再吸収及び視力の改善を可能にする(例えば、Rosenfeldらの文献、2006, 新生血管加齢黄斑変性症のためのラニビズマブ(Ranibizumab for Neovascular Age-Related Macular Degeneration)、N Eng J Med 355: 1419-31; Brownらの文献、2006, 新生血管加齢黄斑変性症のためのラニビズマブとベルテポルフィンの比較(Ranibizumab Versus Verteporfin for Neovascular Age-Related Macular Degeneration)、N Eng J Med 355: 1432-44を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる);しかしながら、VEGFの産生は慢性的であるため、VEGF中和タンパク質の硝子体レベルが治療レベルを下回ったときに、漏出及びNV成長が再発する。初期の臨床試験では、最近NVAMDを発症した治療を受けたことがない対象に、VEGF中和タンパク質の硝子体内注射を月1回投与し、34〜40%の対象が、大きくかつ臨床的に意義のある利益である、少なくとも15文字の最高矯正視力(BCVA)の改善を経験し、これは、2年間維持された。対象を3カ月に1回ほどの頻度で診察及び治療する延長試験では、視覚的利益のほとんど全てが失われた(例えば、Singerらの文献、2012, 展望:加齢黄斑変性症に続発する脈絡膜新生血管形成のためのラニビズマブの非盲検延長試験(Horizon: An Open-Label Extension Trial of Ranibizumab for Choroidal Neovascularization Secondary to Age-Related Macular Degeneration)、Ophthalmology 119: 1175-83を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。NVAMDを有する対象における後続試験では、月一回通院して、網膜内又は網膜下液が黄斑内に存在する場合にのみ注射を受けた対象と比較して、月1回のVEGF中和タンパク質の注射を投与された対象において、ベースラインBCVAからの平均の改善が有意により大きかった(例えば、Martinらの文献、2011, 新生血管加齢黄斑変性症のためのラニビズマブ及びベバシズマブ(Ranibizumab and Bevacizumab for Neovascular Age-Related Macular Degeneration)、N Eng J Med 364: 1897-908を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。視覚的利益は、これらの治療レジメンで2年間維持され、その後、対象は、その医師の判断で治療を受け、3年後、視覚的利益は失われ、全ての群の平均BCVAはベースラインよりも悪かった(例えば、Maguireらの文献、2016, 新生血管加齢黄斑変性症の抗血管内皮増殖因子治療による5年転帰:加齢黄斑変性症治療試験の比較(The Comparison of Age-Related Macular Degeneration Treatment Trials)、Ophthalmology 123: 1751-61を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。したがって、VEGFの持続的抑制を伴う頻回注射が、視覚的利益を最大化し、それを維持するために、NVAMDを有する患者で必要とされる。
【0330】
NVAMDを有する患者において長期的利益を提供するための1つの戦略は、網膜内で抗血管新生タンパク質を連続的に発現するための眼内遺伝子移入である。このアプローチは、動物モデルにおける網膜又は網膜下NVを強く抑制する(例えば、Hondaらの文献、2000, 実験的網膜下新生血管形成はアデノウイルス媒介性可溶性VEGF.flt-1受容体遺伝子トランスフェクションによって阻害される、VEGFの役割及び加齢黄斑変性症におけるSRNの可能な治療(Experimental Subretinal Neovascularization is Inhibited by Adenovirus-Mediated Soluble VEGF.flt-1 Receptor Gene Rransfection, a Role of VEGF and Possible Treatment for SRN in Age-Related Macular Degeneration)、Gene Ther 7: 978-85; Moriらの文献、2001, 色素上皮由来因子は網膜及び脈絡膜新生血管形成を阻害する(Pigment Epithelium-Derived Factor Inhibits Retinal and Choroidal Neovascularization)、J Cell Physiol 188: 253-63; Laiらの文献、2001, アンジオスタチンを発現するアデノ随伴ウイルスベクターによる脈絡膜新生血管形成の抑制(Suppression of Choroidal Neovascularization by Adeno-Associated Virus Vector Expressing Angiostatin)、Invest Ophthalmol Vis Sci 42: 2401-7; Moriらの文献、2002, 色素上皮由来因子のAAV媒介性遺伝子移入は脈絡膜新生血管形成を阻害する(AAV-Mediated Gene Transfer of Pigment Epithelium-Derived Factor Inhibits Choroidal Neovascularization)、Invest Ophthalmol Vis Sci 43: 1994-2000; Bainbridgeらの文献、2002, 可溶性VEGF受容体sFlt-1の遺伝子移入による網膜新生血管形成の阻害(Inhibition of Retinal Neovascularization by Gene Transfer of Soluble VEGF Receptor sFlt-1)、Gene Ther 9: 320-6; Takahashiらの文献、2003, エンドスタチンの眼内発現はVEGF誘導性網膜血管透過性、新生血管形成、及び網膜剥離を低下させる(Intraocular Expression of Endostatin Reduces VEGF-Induced Retinal Vascular Permeability, Neovascularization, and Retinal Detachment)、FASEB J 17: 896-8; Gehlbachらの文献、2003, 色素上皮由来因子をコードするアデノウイルスベクターの眼球周辺注射は脈絡膜新生血管形成を阻害する(Periocular Injection of an Adenoviral Vector Encoding Pigment Epithelium-Derived Factor Inhibits Choroidal Neovascularization)、Gene Ther 10: 637-46; Rotaらの文献、2004, 可溶性flt-1遺伝子移入後のラットにおける網膜新生血管形成の顕著な阻害(Marked Inhibition of Retinal Neovascularization in Rats Following Soluble-flt-1 Gene Transfer)、J Gene Med 6: 992-1002; Laiらの文献、2005, マウス及びサルにおける眼内新生血管形成のためのAAV媒介性sFlt-1遺伝子療法の長期評価(Long-Term Evaluation of AAV-Mediated sFlt-1 Gene Therapy for Ocular Neovascularization in Mice and Monkeys)、Mol Ther 12: 659-68を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。進行性のNVAMDを有する対象では、色素上皮由来因子を発現するアデノウイルスベクターの硝子体内注射により、進行性NVAMDを有する数人の患者における網膜下出血及び流体の再吸収が引き起こされ、このアプローチの概念の証明が提供された(例えば、Campochiaroらの文献、2006, 新生血管加齢黄斑変性症のためのアデノウイルスベクターにより送達される色素上皮由来因子、第I相臨床試験の結果(Adenoviral Vector-Delivered Pigment Epithelium-Derived Factor For Neovascular Age-Related Macular Degeneration, Results of a Phase I Clinical Trial)、Hum Gene Ther 17: 167-76を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。AAVベクターは、長期間の導入遺伝子発現をもたらすので、魅力的なプラットフォームである。進行性NVAMDを有する対象における最近の第1相試験では、9-merのポリグリシンによってヒトIgG1-Fcに連結されたFlt-1(VEGFR1)のドメイン2からなるVEGF中和タンパク質(sFLT01)の発現を駆動するニワトリβアクチン(CBA)プロモーターを含むAAV2ベクターの硝子体内注射が試験された(例えば、Heierらの文献、2017, 進行性新生血管加齢黄斑変性症を有する患者におけるAAV2-sFLT01の硝子体内注射、第1相非盲検試験(Intravitreous Injection of AAV2-sFLT01 in Patients with Advanced Neovascular Age-Related Macular Degeneration, a Phase 1, Open-Label Trial)、The Lancet 389: May 17を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。導入遺伝子発現は、最大用量の2×1010ゲノムコピー(GC)が注射された10個の眼のうち5個で検出され、<2×1010GCが注射された眼では検出されなかった。回復可能であると判定されたベースライン時に網膜内又は網膜下液を有する19人の患者のうちの11人において、6人が大幅な流体の低下及び視力の改善を示したのに対し、5人は流体の低下を示さなかった。したがって、生物学的活性のいくつかの証拠はあったが、応答に関して患者間でかなりの不均一性があった。一般に、AAV2ベクターの硝子体内注射と比較して、網膜下注射は、実質的により高い導入遺伝子発現をもたらし、NVAMDを有する対象におけるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって天然の可溶性VEGFR1の発現が駆動されるAAV2ベクター(AAV2-sFlt-1)の網膜下注射を試験する第1相試験は、良好な安全性を示し、1×1010又は1×1011GCのAAV2.sFlt-1の網膜下注射を投与された6人の対象のうちの3人は、網膜内液のある程度の低下を示した(例えば、Rakoczyらの文献、2015, 新生血管加齢黄斑変性症のための組換えアデノ随伴ベクターによる遺伝子療法、第1相無作為化臨床試験の1年間の追跡調査(Gene Therapy with Recombinant Adeno-Associated Vectors for Neovascular Age-Related Macular Degeneration, 1 year Follow-Up of a Phase 1 Randomized Clinical Trial)、Lancet 386: 2395-403を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。NVAMDを有する32人の対象の第2相試験では、21人が1×1011GCのAAV2.sFlt-1を含む100μlの網膜下注射に無作為に割り付けられ、11人が再発性の網膜内又は網膜下液に必要とされる分だけのラニビズマブ注射に無作為に割り付けられた(例えば、Constableらの文献、2016, 第2a相無作為化臨床試験:滲出性加齢黄斑変性症のための網膜下rAAV.sFLT-1の安全性及び事後分析(Phase 2a Randomized Clinical Trial: Safety and Post Hoc Analysis of Subretinal rAAV.sFLT-1 for Wet Age-Related Macular Degeneration)、EBioMedicine 14: 168-75を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。全ての対象に、ベースライン時と4週目、それ以後は、事前に指定された基準に従って、ラニビズマブ注射が投与された。この試験は、AAV2.sFlt-1の開発を継続するのに十分な有効性を示さなかった。sFlt-1のレベルは報告されておらず、それゆえ、十分なsFlt-1発現の不足をこの試験で見られた応答の欠如の潜在的要因として排除することができない。
【0331】
既知のAAV血清型との配列相同性についてのPCRによるアカゲザル由来組織のスクリーニングにより、AAV7及びAAV8が同定された(例えば、Gaoらの文献、2002, ヒト遺伝子療法のためのベクターとしてのアカゲザル由来の新規アデノ随伴ウイルス(Novel Adeno-Associated Viruses From Rhesus Monkeys as Vectors for Human Gene Therapy)、Proc Natl Acad Sci USA 99: 11854-9を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。AAV8カプシドを有するベクターが作製され、肝臓では、導入遺伝子発現が、AAV2などの別の血清型のカプシドを有するAAVベクターよりも10〜100倍高かった。AAV8に対する中和抗体は、ヒト血清中に稀であり、他のAAV血清型に対する抗体は、AAV8ベクター媒介性発現を低下させなかった(例えば、Gaoらの文献、2002, ヒト遺伝子療法のためのベクターとしてのアカゲザル由来の新規アデノ随伴ウイルス(Novel Adeno-Associated Viruses From Rhesus Monkeys as Vectors for Human Gene Therapy)、Proc Natl Acad Sci USA 99: 11854-9を参照されたい)。AAV2とAAV8はどちらも、中用量又は低用量の網膜下注射後にRPE細胞に形質導入するが、AAV8は、視細胞に形質導入するのにより効率的であり、それゆえ、全体的により高い発現レベルをもたらす(Vandenbergheらの文献、2011, サルにおけるAAV2及びAAV8視細胞遺伝子療法のための投薬量閾値(Dosage Thresholds for AAV2 and AAV8 Photorecepotr Gene Therapy in Monkey)、Sci Trans Med 3: 1-9を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。本研究では、ヒトVEGFに結合するヒト化抗体断片用の発現カセットを含む広範な用量のAAV8ベクターの網膜下注射の効力を試験するためにヒトVEGF165を視細胞で発現させるトランスジェニックマウスモデルを使用した。
【0332】
(6.5.3 材料及び方法)
AAV8-抗VEGFfabの構築
【0333】
AAV8-抗VEGFfabは、AAV2逆向き末端反復(ITR)に隣接した、ヒトVEGFに結合し、これを阻害するヒト化モノクローナル抗原結合断片をコードする遺伝子カセットを含む非複製型AAV8ベクターである。重鎖及び軽鎖の発現は、ニワトリβ-アクチンプロモーター及びCMVエンハンサーからなるCB7プロモーター、ニワトリβ-アクチンイントロン、並びにウサギβ-グロビンポリAシグナルによって制御される。抗VEGFfabの重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列は、自己切断性フーリン(F)/F2Aリンカーによって隔てられている。発現されるタンパク質産物は、ラニビズマブと同様であるが、同一ではない。フーリン媒介性切断という機構のために、ベクターから発現された抗VEGFfabは、通常ラニビズマブに見られる全てのアミノ酸に加えて、重鎖の最後の位置に0個、1個、又はそれより多くの追加のアミノ酸残基を含み得る。
【0334】
マウス
【0335】
マウスは全て、視覚眼科研究学会の眼科及び視覚研究における動物使用に関する声明(Association for Research in Vision and Ophthalmology Statement for Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research)に準拠して処置され、プロトコルは、ジョンズ・ホプキンス大学の動物管理使用委員会(Johns Hopkins University Animal Care and Use Committee)により精査され、承認された。ロドプシンプロモーターによって視細胞におけるVEGF165の発現が駆動されるトランスジェニックマウス(rho/VEGFマウス)及び視細胞においてVEGFが誘導性発現される二重トランスジェニックマウス(Tet/オプシン/VEGFマウス)が過去に記載されている。トランスジェニックマウスは全て、C57BL/6バックグラウンドであり、実験で使用する前に、ジェノタイピングして、導入遺伝子の存在を確認した。野生型C57BL/6マウスは、Charles River(Frederick, MD, USA)から購入した。
【0336】
ベクターの網膜下注射
【0337】
マウスに麻酔をかけ、眼をZeissの実体解剖顕微鏡で可視化した。インスリンシリンジの30ゲージの針を用いて、部分的に厚みのある小さな開口部を強膜に作り出し、ハミルトンシリンジの33ゲージの針を強膜の穴に挿入し、残りの強膜線維から網膜下腔へとゆっくりと前進させ、AAV8-抗VEGFfab又は空のAAV8ベクターを含む1μLのビヒクルを注射した。針を抜くときに、綿棒を注射部位に当てて、逆流を防いだ。
【0338】
網膜における抗VEGFfabタンパク質の発現
【0339】
野生型C57BL/6マウスの各々の眼に、1×108、3×108、1×109、3×109、1×1010GCのAAV8-抗VEGFfab又は1×1010GCの空ベクターの単一の網膜下注射を投与した。注射から14日後、マウスを安楽死させ、眼を摘出し、凍結させた。Qiagen Tissue Lyserを用いて、200ulのRIPAバッファー中で、眼をホモジナイズした。標準曲線を作成するための既知濃度のラニビズマブを用いて、抗VEGFfabタンパク質の濃度をELISAにより測定した。簡潔に述べると、ELISAプレートを1μg/mLのヒトVEGF165で4℃で一晩コーティングした。ウェルを、室温で1時間、200μLの1%BSAでブロッキングした。試料を1:80希釈し、100μLを2連のウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートし、その後、2回目のブロッキングバッファーインキュベーションを行った。洗浄後、ウェルを、どちらもビオチンで標識され、予め吸収された、1mg/mLのヤギ抗ヒトIgG重鎖及び0.5mg/mLのヤギ抗ヒトIgG軽鎖の100μLのカクテル中、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ウェルを、ストレプトアビジン-HRPの100μLの1:30,000希釈液中、室温で1時間インキュベートし、洗浄し、0.1M NaOAcクエン酸バッファー(pH 6.0)、30%過酸化水素、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン≧99%からなる150μLのTMB検出溶液中、暗所室温で30分間インキュベートし、その後、50μLの停止溶液(2N H2SO4)を各々のウェルに添加し、プレートを450nm〜540nmで読み取った。
【0340】
Rho/VEGFマウスにおける3型脈絡膜NVに対する効果の評価
【0341】
出生後(P)14日で、rho/VEGFマウスの一方の眼に、3×106、1×107、3×107、1×108、3×108、1×109、3×109、1×1010GCのAAV8-抗VEGFfab又は1×1010GCの空ベクター又はPBSの単一の網膜下注射を投与した。P21で、マウスを安楽死させ、眼を摘出し、網膜を無傷で解剖し、FITCコンジュゲートGSAレクチン(Vector Laboratories, Burlingame, CA)で染色し、視細胞側を上に向けてフラットマウントを作製した。蛍光画像をZeiss Axioskop蛍光顕微鏡で取得し、治療責任医師を治療群に関して遮蔽化して、網膜当たりの3型脈絡膜NVの面積をImagePro Plusソフトウェアを用いる画像解析により測定した。
【0342】
重度のVEGF誘導性血管漏出に対する効果の評価
【0343】
10週齢のTet/オプシン/VEGFマウスの一方の眼に、1×108、3×108、1×109、3×109、1×1010GCのAAV8-抗VEGFfab又は1×1010GCの空ベクター又はPBSの単一の網膜下注射を投与した。注射から10日後、2mg/mLのドキシサイクリンを飲用水に添加し、4日後、マウスに麻酔をかけ、散瞳させ、眼底の写真をMicron III網膜イメージング顕微鏡で取得した。画像は、遮蔽化された治験責任医師により調べられ、網膜剥離の不在、部分網膜剥離、又は完全滲出性網膜剥離を示すことが決定された。治療責任医師を治療群に関して遮蔽化して、網膜全体の面積及び剥離網膜の面積をImagePro Plusソフトウェアを用いる画像解析により測定した。網膜剥離率を剥離網膜/網膜全体の面積として計算した。少数の眼では、角膜又はレンズの透明性が欠けていたため、鮮明な底画像を取得することができず、これらの場合、マウスを安楽死させ、眼を摘出し、凍結させ、10μmの連続切片を切削した。切片を4%パラホルムアルデヒドで後固定し、Hoechstで染色し、光学顕微鏡検査で調べて、滲出性網膜剥離の存在及び程度を決定した。
【0344】
長期効果を調べるために、Tet/オプシン/VEGFマウスの一方の眼に、3×109GCのAAV8-抗VEGFfab又は3×109GCの空ベクターの単一の網膜下注射を投与した。他眼は、未処置対照としての役割を果たした。注射から1カ月後、2mg/mLのドキシサイクリンを飲用水に添加し、4日後、眼底の写真を取得し、上記のように等級付けた。
【0345】
統計比較
【0346】
スチューデントのt-検定を実施して、2つの実験群間の転帰尺度を比較した。3以上の実験群間の比較のために、ボンフェローニ多重比較補正を用いて多重比較を調整する一元配置分散分析(ANOVA)を実施した。様々な用量の群と空ベクター群の間の剥離のタイプを比較するために、フィッシャーの正確検定を用いて、p値を計算した。統計検定は全て、5%統計的有意性で実施した。統計解析は、Stataバージョン14.2(College Station, Texas 77845)を用いて行った。
【0347】
(6.5.4 結果)
VEGF中和タンパク質の選択
【0348】
最初の実験において、全長抗VEGF抗体、抗VEGF抗体断片(抗VEGFfab)、及び可溶性VEGF受容体-1(sFlt-1)のcDNAを作製し、それらを、CMVプロモーターを含む発現カセットに挿入し、AAV8にパッケージングした。3×109GCの各々のベクターの網膜下注射から14日後、眼当たりの各々の導入遺伝子の総量をELISAにより測定した。AAV8-CMV.抗VEGFfabが注射された眼が高レベルの抗VEGFfabタンパク質を有する一方、AAV8-CMV.抗VEGF全長Abが注射された眼は、比較的低レベルの全長抗VEGF Abを有しており、AAV8-CMV.sFlt1が注射された眼は、非常に低レベル又は検出不可能なレベルのsFlt1を有していた(図6)。それゆえ、抗VEGFfabを、後続の実験のための抗VEGF中和タンパク質として選択した。
【0349】
AAV8-抗VEGFfabの構築及びインビトロ試験
【0350】
抗VEGFfabのcDNAを、CB7プロモーターを含む発現カセットに挿入した。AAV8-抗VEGFfab(RGX-314)のゲノムの模式図は、図7Aに示されている。CB7プロモーターは、抗VEGFfabの重鎖及び軽鎖並びにフーリン-F2Aリンカーの発現を駆動し、結果として、抗VEGFfabの翻訳後会合をもたらす。
【0351】
マウスにおけるAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射後の導入遺伝子発現
【0352】
1μlの用量の1×108〜1×1010GCの範囲のAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射から1週間後、抗VEGFfabタンパク質のレベルを眼ホモジネートで測定した。ベクター用量が増加するにつれて、抗VEGFfabの増加が見られ、ピークレベルは、3×109及び1×1010GCの用量で観察された(図7B)。
【0353】
AAV8-抗VEGFfabの網膜下注射はrho/VEGFマウスにおける網膜下NVを抑制する
【0354】
ロドプシンプロモーターによってヒトVEGF165の発現が駆動されるトランスジェニックマウスは、出生後(P)14日頃から、深部毛細血管床から新しい血管を出芽させ、P21までに広範な網膜下NVを有する(例えば、Okamotoらの文献、1998, 視細胞で血管内皮増殖因子を過剰発現するマウスにおける新生血管形成の評価(Evolution of Neovascularization in Mice with Overexpression of Vascular Endothelial Growth Factor in Photoreceptors)、Invest Ophthalmol Vis Sci 39: 180-8; Tobeらの文献、1998, 視細胞で血管内皮増殖因子を過剰発現するマウスにおける新生血管形成の評価(Evolution of Neovascularization in Mice with Overexpression of Vascular Endothelial Growth Factor in Photoreceptors)、Invest Ophthalmol Vis Sci 39: 180-8を参照されたく;これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。これらのマウスは、ヒトの3型脈絡膜NVとしても知られる網膜血管腫状増殖のモデルを提供する(例えば、Yannuzziらの文献、2001, 加齢黄斑変性症における網膜血管腫状増殖(Retinal Angiomatous Proliferation in Age-Related Macular Degeneration)、Retina 21: 416-34を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。P14でのPBSの網膜下注射後、血管細胞を選択的に染色するFITC標識GSAレクチンで染色し、視細胞側を上に向けてフラットマウントを作製したrho/VEGFマウスの網膜は、数多くの過剰蛍光スポットを示した(図8A、上段、左の列)。より高い倍率では、濃黒色の網膜色素上皮細胞によって部分的に囲まれた網膜下NVの出芽の後ろの方の深部毛細血管床から伸びているフィーダー血管が見られた(図8B、上段、真ん中の列)。P14で1×1010GCの空のAAV8ベクターが注射されたマウスは、P21で、PBSを注射した眼で見られたのと同程度の量の網膜下NVを示した(図8A、上段、右の列)。1×1010、3×109、又は1×109GCのAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射を投与されたRho/VEGFマウスはP21で極めて少ない網膜下NVを示し(図8A、真ん中の列)、一方、3×108又は1×108GCが注射されたマウス(図8A、中段及び下段)は、やや多いが、空ベクターが注射されたマウスよりもやはりかなり少ない網膜下NVを示した。中間の量のNVは、3×107及び1×107GCが注射されたマウスで見られ、3×106GCが注射されたマウスは、空ベクターが注射されたマウスと同様であるように見えた(図8A、下段)。
【0355】
ここで、図8Bに関して、画像解析による網膜当たりのNVの平均面積の測定は、網膜フラットマウントの目視検査が示唆するものに匹敵する用量応答を示し、網膜当たりのNVの平均面積は、空ベクターが注射された眼よりも1×1010〜1×107GCの用量のAAV8-抗VEGFfabが注射された眼で有意に小さかった。
【0356】
AAV8-抗VEGFfabの網膜下注射はVEGF誘導性血管漏出を阻止する
【0357】
tet-onシステム及びロドプシンプロモーターにより、rho/VEGFマウスの網膜に存在するものよりも10倍高いレベルでVEGF165のドキシサイクリン誘導性発現がもたらされるTet/オプシン/VEGF二重トランスジェニックマウスは、飲用水中の2mg/mlのドキシサイクリンから始めて4日以内に滲出性網膜剥離を生じた(例えば、Ohno-Matsuiらの文献、2002, 成体マウスの視細胞における血管内皮増殖因子の誘導性発現は重度増殖性網膜症及び網膜剥離を引き起こす(Inducible Expression of Vascular Endothelial Growth Factor in Photoreceptors of Adult Mice Causes Severe Proliferative Retinopathy and Retinal Detachment)、Am J Pathol 160: 711-9を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。1×108又は3×108GCのAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射から10日後、75%及び50%は、飲用水中の2mg/mlのドキシサイクリンから始めて4日後に、完全な滲出性網膜剥離を発症し(図9A、左の2つのパネル)、これは、PBS又は1×1010GCの空ベクターの網膜下注射を投与されていたドキシサイクリン処置されたTet/オプシン/VEGFマウスで見られるもの(図9B)と同様であった。図9Cは、滲出性網膜剥離がないことを示す3×109GCのAAV8-抗VEGFfabが注射された眼及び完全網膜剥離を有する注射を受けていない他眼由来の眼切片を示している。空ベクターの網膜下注射を投与された10個の眼のうちの10個が、ドキシサイクリンを始めて4日後に、完全網膜剥離を有し、1×1010GCの空ベクターの網膜下注射を投与された10個の眼のうちの10個が完全網膜剥離(7個の眼)又は部分網膜剥離(3個の眼)を有していた(図9D)。空ベクターが注射されたマウスと比較して、完全網膜剥離を有する眼のパーセンテージは、3×108(50%低い)、1×109(67%低い)、3×109(80%低い)、又は1×1010(78%低い)GCのAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射を投与されていたドキシサイクリン処置されたTet/オプシン/VEGFマウスで有意に低かった。剥離した網膜のパーセンテージを画像解析により測定し、空ベクターが注射された眼と比較し、平均剥離率は、3×109GC又は1×1010GCのAAV8-抗VEGFfabが注射された眼よりも有意に低かった(図9E)。
【0358】
長期効果を評価するために、一方の眼への3×109GCのAAV8-抗VEGFfab又は空ベクターの網膜下注射から1カ月後に、Tet/オプシン/VEGFマウスを2mg/mlドキシサイクリンで処置した。代表的なマウスは、AAV8-抗VEGFfabが注射された眼における剥離の不在と他眼における完全剥離(図10A、右側)、及び空ベクターが注射された眼と他眼の両方における完全剥離を示した(図10A、右側)。これら2つの群由来の他のマウスにおいて、Hoecht染色した眼切片は、AAV8-抗VEGFfabが注射された眼における剥離の不在と他眼における完全剥離、及び空ベクターが注射された眼と他眼における完全剥離を示した(図10B)。AAV8-抗VEGFfabが注射された10個の眼のうちの9個は、網膜剥離を有さず、これは、8個の眼が完全剥離を有し、2個の眼が部分剥離を有する同じマウスの注射を受けていない他眼と有意に異なっていた(図10C)。完全剥離が7個、部分剥離が1個存在する空ベクターが注射された8個の眼と比較して、AAV8-抗VEGFfabが注射された眼は、有意により少ない剥離を示した。また、AAV8-抗VEGFfabが注射された眼における平均網膜剥離率は、同じマウスの注射を受けていない他眼又は空ベクターが注射された眼における平均網膜剥離率よりも有意に低かった(図10D)。
【0359】
(6.5.5 考察)
VEGFの持続的抑制は、視力を最大限に改善し、かつ経時的な疾患進行及び視力喪失を予防するために、NVAMDを有するほとんど患者で必要とされる。この目標を達成するために設計されたいくつかの戦略が試験されている。VEGF中和タンパク質を眼にゆっくりと放出する再充填可能なリザーバの外科移植は、NVAMDを有する患者における第2相臨床試験(中心窩下新生血管加齢黄斑変性症を有する参加者におけるラニビズマブの持続性送達のためのラニビズマブポート送達システムの効力及び安全性の試験(Study of the Efficacy and Safety of the Ranibizumab Port Delivery System for Sustained Delivery of Ranibizumab in Participants With Subfoveal Neovascular Age-Related Macular Degeneration)、ClinicalTrials.gov identifier: NCT02510794)で評価されている。別のアプローチは、VEGFの発現を抑制するHIF-1の低分子阻害剤を生分解性ポリマーに組み入れ、この阻害剤の持続放出を可能にする微粒子を製剤化し、それを眼に注射することである(例えば、Iwaseらの文献、2013, 眼内新生血管形成に対するHIF-1アンタゴニストの持続性送達(Sustained Delivery of a HIF-1 Antagonist for Ocular Neovascularization)、J Control Release 172: 625-33を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。3つ目のアプローチは、VEGF中和タンパク質又は他の抗血管新生タンパク質を眼で発現させるための眼内遺伝子移入であり、臨床試験は、いくつかの有望なシグナルを示しているが(例えば、Campochiaroらの文献、2006, 新生血管加齢黄斑変性症のためのアデノウイルスベクターにより送達される色素上皮由来因子、第I相臨床試験の結果(Adenoviral Vector-Delivered Pigment Epithelium-Derived Factor For Neovascular Age-Related Macular Degeneration, Results of a Phase I Clinical Trial)、Hum Gene Ther 17: 167-76; Heierらの文献、2017, 進行性新生血管加齢黄斑変性症を有する患者におけるAAV2-sFLT01の硝子体内注射、第1相非盲検試験(Intravitreous Injection of AAV2-sFLT01 in Patients with Advanced Neovascular Age-Related Macular Degeneration, a Phase 1, Open-Label Trial)、The Lancet 389: May 17; Rakoczyらの文献、2015, 新生血管加齢黄斑変性症のための組換えアデノ随伴ベクターによる遺伝子療法、第1相無作為化臨床試験の1年間の追跡調査(Gene Therapy with Recombinant Adeno-Associated Vectors for Neovascular Age-Related Macular Degeneration, 1 year Follow-Up of a Phase 1 Randomized Clinical Trial)、Lancet 386: 2395-403; Constableらの文献、2016, 第2a相無作為化臨床試験:滲出性加齢黄斑変性症のための網膜下rAAV.sFLT-1の安全性及び事後分析(Phase 2a Randomized Clinical Trial: Safety and Post Hoc Analysis of Subretinal rAAV.sFLT-1 for Wet Age-Related Macular Degeneration)、EBioMedicine 14: 168-75を参照)、強い抗透過性及び抗血管新生活性を伴う一貫性のある持続的な導入遺伝子発現の証拠が欠けている。
【0360】
本試験において、1×109〜1×1010GCのAAV8-抗VEGFfabの網膜下注射は、rho/VEGFマウスにおける3型脈絡膜NVを強く抑制することが分かった。空ベクターの網膜下注射と比較して網膜当たりの網膜下NVの平均面積を有意に低下させるAAV8-抗VEGFfabの最小限に有効な網膜下用量は、1×107GCであった。rho/VEGFマウスにおける発現と比較して少なくとも10倍高い用量のVEGF発現がドキシサイクリンにより誘導されるTet/オプシン/VEGF二重トランスジェニックマウスにおいて、わずか3×108GC程度のAAV8-抗VEGFfab用量の網膜下注射から10日後、滲出性網膜剥離の発生率及び重症度の有意な低下が見られた。漏出抑制は、平均網膜剥離率の有意な低下と検討された最長の時点の少なくとも1カ月間持続する効果とを示す3×109又は1×1010GCの注射から10日後に、特に良好であった。1×108GC以上が注射された大半の眼は、検出可能なレベルの抗VEGFfabを有し、ピークレベルは、3×109又は1×1010GCの注射後、眼当たり60〜80ngであった。
【0361】
これらのデータは、AAV8-抗VEGFfabの網膜下注射がNVAMDのための過去の遺伝子移入臨床試験で生じた問題のいくつかを克服するのに役立つ可能性があることを示している。AAV2-sFLT01試験において、房水試料をsFLT01についてアッセイし、2×108、2×109、又は6×109GCが注射された対象由来の試料は全て、全ての時点で検出下限未満であったが、2×1010GCが注射された10人の対象のうちの5人は、26週目までに32.7〜112.0ng/ml(平均73.7ng/ml)のピークに達し、52週目までに53.2ng/mlの平均にまでわずかに減少する検出可能なレベルを有していた(例えば、Heierらの文献、2017, 進行性新生血管加齢黄斑変性症を有する患者におけるAAV2-sFLT01の硝子体内注射、第1相非盲検試験(Intravitreous Injection of AAV2-sFLT01 in Patients with Advanced Neovascular Age-Related Macular Degeneration, a Phase 1, Open-Label Trial)、The Lancet 389: May 17を参照)。既存の中和抗体は、非ヒト霊長類における硝子体内遺伝子療法を中和することが分かっており(例えば、Kottermanらの文献、2014, 抗体の中和は非ヒト霊長類への硝子体内アデノ随伴ウイルスベクター遺伝子送達の障壁をもたらす(Antibody Neutralization Poses a Barrier to Intravitreal Adeno-Associated Viral Vector Gene Delivery to Non-Human Primates)、Gene Ther 22: 116-26を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)、抗AAV2血清抗体によって、本試験におけるこの発現のばらつきを説明することができる。検出可能なsFLT01レベルを有する5人の対象のうちの4人は、ベースライン時に抗AAV2抗体が陰性であり、5人目は1:100の力価を有していたが、検出不可能なsFLT01レベルを有する5人の高用量対象のうちの4人は、≧1:400の力価を有していた。一般集団における抗AAV8血清抗体の発生率は、抗AAV2抗体の発生率よりもはるかに小さい(例えば、Calcedoらの文献、2009, アデノ随伴ウイルスに対する中和抗体の世界的疫学(Worldwide Epidemiology of Neutralizing Antibodies to Adeno-Associated Viruses)、J Infectious Dis 199: 381-90を参照されたく;これは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。さらに、AAV8の網膜下注射は、ベクター不活化からの防御層を軽減し得るさらなる因子を提供する可能性が高い。なぜなら、抗AAV2血清抗体は、硝子体内送達の場合に妨害するように、AAV2ベクターの網膜下注射後の導入遺伝子発現を妨害するようには見えないからである(例えば、Kottermanらの文献、2014, 抗体の中和は非ヒト霊長類への硝子体内アデノ随伴ウイルスベクター遺伝子送達の障壁をもたらす(Antibody Neutralization Poses a Barrier to Intravitreal Adeno-Associated Viral Vector Gene Delivery to Non-Human Primates)、Gene Ther 22: 116-26を参照)。また、導入遺伝子発現は、AAVベクターの硝子体内注射と比べて網膜下注射後に実質的により高く、同等の用量で、導入遺伝子発現は、AAV2ベクターと比べてAAV8ベクターの網膜下注射の場合により大きい(例えば、Okamotoらの文献、1998, 視細胞で血管内皮増殖因子を過剰発現するマウスにおける新生血管形成の評価(Evolution of Neovascularization in Mice with Overexpression of Vascular Endothelial Growth Factor in Photoreceptors)、Invest Ophthalmol Vis Sci 39: 180-8を参照)。
(6.6 実施例15:対照試料及び網膜細胞株試料に対するインタクト質量分析、ゲルベースのペプチドマッピング及び溶液ベースのペプチドマッピング)
(6.6.1 試料)
【表4】
[この文献は図面を表示できません]
【0362】
(6.6.2 目的)
インタクト質量分析及びゲルベースのペプチドマッピングを両方の試料に対して実施した。溶液ベースのペプチドマッピングを対照に対して実施した。標的配列(配列番号38及び配列番号39)は、図11に示されている。
【0363】
(6.6.3 実験方法)
(a)試料調製
【0364】
ペプチドマッピング−ゲル
【0365】
4×2.5μgの対照試料及び網膜細胞株試料をSDS-PAGEを用いて分離した。〜25kDのバンドを図12に示されているように切り出した。
【0366】
以下のプロトコルで、ロボット(ProGest, DigiLab)を用いて、トリプシン消化を行った:
・25mM重炭酸アンモニウム、その後、アセトニトリルで洗浄する。
・10mMジチオスレイトールで60℃で還元させ、その後、50mMヨードアセトアミドでRTでアルキル化する。
・トリプシン(Promega)で37℃で4時間消化する。
・ギ酸でクエンチし、上清を、それ以上処理することなく、そのまま分析する。
【0367】
キモトリプシン及びエラスターゼ消化は、以下のプロトコルを用いて、手作業で実施した:
・25mM重炭酸アンモニウム、その後、アセトニトリルで洗浄する。
・10mMジチオスレイトールで60℃で還元させ、その後、50mMヨードアセトアミドでRTでアルキル化する。
・キモトリプシン/エラスターゼ(Promega)で37℃で12時間消化する。
・ギ酸でクエンチし、上清を、それ以上処理することなく、そのまま分析する。
【0368】
ペプチドマッピング−溶液
【0369】
対照の残りをTCA沈殿に供し、洗浄し、55μLの8M尿素、50mM Tris HCl、pH 8.0に再懸濁させた。TCA沈殿した試料をQubitフルオロメトリーにより定量し、それにより、以下の値が報告された:
0.78μg/μL×50μL=39μgの回収
【0370】
10μgの試料をトリプリケートで分注した。各々のトリプリケートを、11mM DTT中で、RTで1時間還元させ、12mMヨードアセトアミド中で1時間アルキル化し、トリプシン、キモトリプシン、及びエラスターゼで、37Cで一晩消化した。試料をEmpore C18 SDプレート上でのSPEに供した。
【0371】
(b)マススペクトロメトリー
【0372】
ペプチドマッピング
【0373】
ゲル消化物を、ThermoFisher Q Exactiveにインターフェース接続したWaters NanoAcquity HPLCシステムを用いるナノLC/MS/MSにより分析した。ペプチドを捕捉カラムに充填し、75μmの分析カラムにかけて350nL/分で溶出させた;両方のカラムには、Luna C18樹脂(Phenomenex)を充填した。質量分析計をデータ依存モードで操作し、MS及びMS/MSを、それぞれ、70,000 FWHM及び17,500 FWHMの分解能のOrbitrapで実施した。最も存在量の多い15個のイオンをMS/MS用に選択した。
【0374】
インタクト質量
【0375】
10pmolを、Q Exactive質量分析計にインターフェース接続したC4カラム(Waters Symmetry C4 3.5μm、2.1mm×50mm)を用いるLC/MSにより分析した。データを、スペクトル当たり3回のマイクロスキャンで、17,500 FWHM(m/z 400)の分解能で、m/z 600〜2500から獲得した。
【0376】
(c)データ処理
【0377】
ペプチドマッピング
【0378】
データを、Mascotのローカルコピーを用いて、以下のパラメーターで検索した:
酵素:半トリプシン又はなし(エラスターゼ及びキモトリプシンの場合)
データベース: Swissprot Human(共通の夾雑物及び標的配列が追加されたフォワード及びリバース)
固定の修飾:カルバミドメチル(C)
可変の修飾:酸化(M)、アセチル(タンパク質N-末端)、脱アミド化(NQ)、Pyro Glu(N-末端E)
質量値:モノアイソトピック
ペプチド質量許容差: 10ppm
フラグメント質量許容差: 0.02Da
最大の切断見逃し: 2
【0379】
バリデーション、フィルタリング、及び試料毎の非冗長リストの生成のために、Mascot DATファイルをScaffoldソフトウェアに入れてパースした。99%の最小タンパク質値、50%の最小ペプチド値(Prophetスコア)を用いて、及びタンパク質当たり少なくとも2つのユニークペプチドを要求して、データをフィルタリングした。
【0380】
インタクト質量
【0381】
MagTran v1.03ソフトウェアを用いて、インタクト質量データを処理した。
【0382】
(6.6.4 結果)
(a)対照試料
【0383】
ペプチドマッピング−ゲル
【0384】
データは、図13に示されている両方の配列(配列番号38及び配列番号40)とマッチした。
【0385】
軽鎖(「LC」)−1430個の全スペクトル、552個のユニークペプチド、及び100%の配列カバレッジ。N-末端Metの証拠がなかったことに留意されたい。N-末端は、遊離アミンとN-アセチル化されたものの両方として存在する。7個のN-アセチル化スペクトル及び40個の非アセチル化スペクトルが存在した。
【0386】
重鎖(「HC」)−1069個の全スペクトル、470個のユニークペプチド、及び100%の配列カバレッジ。N-末端Metの証拠がなかったことに留意されたい。N-末端は、遊離アミンとN-アセチル化されたものの両方として存在する。7個のN-アセチル化スペクトル及び56個の非アセチル化スペクトルが存在した。
【0387】
HC C-末端Leu切断−H231 C-末端及びL232 C-末端に対応するペプチドを検出した。2つの代表的ペプチドの抽出されたイオンクロマトグラムピーク面積は、相対的パーセンテージとともに、以下に示されている。2つのペプチドについての応答因子の違いに基づくこの測定の誤りの可能性があることに留意されたい:
【表5】
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【0388】
ペプチドマッピング−溶液
【0389】
データは、図14に示されている両方の配列(配列番号38及び配列番号40)とマッチした。
【0390】
LC−1453個の全スペクトル、489個のユニークペプチド、及び100%の配列カバレッジ。N-末端Metの証拠がなかったことに留意されたい。N-末端は、遊離アミンとN-アセチル化されたものの両方として存在する。3個のN-アセチル化スペクトル及び48個の非アセチル化スペクトルが存在した。
【0391】
HC−985個の全スペクトル、423個のユニークペプチド、及び100%の配列カバレッジ。N-末端Metの証拠がなかったことに留意されたい。N-末端は、遊離アミンとN-アセチル化されたものの両方として存在する。7個のN-アセチル化スペクトル及び76個の非アセチル化スペクトルが存在した。
【0392】
HC C-末端Leu切断−C-末端Leu切断に対応するペプチドは検出されなかった。
【0393】
インタクト質量
【0394】
図15に関して、観測されたクロマトグラム中の主要なピークをまとめて、デコンボリューション処理用のスペクトルを取得した(図15A)。このスペクトルを、24,432.0Da及び24,956.0Daの平均質量の2つの成分にデコンボリューション処理した。デコンボリューション処理されたスペクトル及びアノテーションされた生データは、図15Bに示されている。
【0395】
(b)網膜細胞株試料
【0396】
ペプチドマッピング−ゲル
【0397】
データは、図16に示されている両方の配列(配列番号38及び配列番号39)とマッチした。
【0398】
LC−1107の全スペクトル、442個のユニークペプチド、及び100%の配列カバレッジ。N-末端Metの証拠がなかったことに留意されたい。N-末端は、遊離アミンとN-アセチル化されたものの両方として存在する。6個のN-アセチル化スペクトル及び27個の非アセチル化スペクトルが存在した。
【0399】
HC−843の全スペクトル、409個のユニークペプチド、及び98%の配列カバレッジ。N-末端Metの証拠がなかったことに留意されたい。N-末端は、遊離アミンとN-アセチル化されたものの両方として存在する。1個のN-アセチル化スペクトル及び35個の非アセチル化スペクトルが存在した。
【0400】
HC C-末端切断−L232、R233、及びR235 C-末端に対応するペプチドを検出した。R236の証拠はなかった。3つの代表的ペプチドの抽出されたイオンクロマトグラムピーク面積は、相対的パーセンテージとともに、以下に示されている。3つのペプチドについての応答因子の違いに基づくこの測定の誤りの可能性があることに留意されたい。
【表6】
[この文献は図面を表示できません]
*キモトリプシン消化物中にのみ存在するペプチド、他のペプチドはトリプシンから採取された
^他のペプチドと異なる電荷状態
【0401】
インタクト質量
【0402】
図17に関して、観測されたクロマトグラム中の主要なピークをまとめて、デコンボリューション処理用のスペクトルを取得した(図17A)。このスペクトルを、24,428.0Da及び24,952.0Daの平均質量の2つの成分にデコンボリューション処理した。デコンボリューション処理されたスペクトル及びアノテーションされた生データは、図17Bに示されている。
【0403】
(6.7 実施例16:ラットモデルにおけるAAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射)
(6.7.1 試験の簡単な概要)
以下の試験は、AAV8の上脈絡膜注射後の発現のレベル及び眼に形質導入された細胞型を決定するために実施された。結果は、AAV8.CB7.GFPの上脈絡膜注射の1週間後から2週間後の眼の周囲全体にわたる広範な導入遺伝子発現を示した。緑色蛍光タンパク質(GFP)発現は、網膜色素上皮(RPE)/脈絡膜細胞と神経節細胞を含む全ての網膜の層とで検出された。
【0404】
(6.7.2 方法)
ノルウェー・ブラウンラット(N=40)の各々の眼に、7.2×108又は2.85×1010のいずれかのゲノムコピー(GC)のAAV8.CB7.GFPを含む3μlの上脈絡膜又は網膜下注射を投与した。注射は2工程で行った:まず、鋭い針を用いて、強膜の3/4に至るまで穴を開け(鋭端部分層強膜切開)、次に、同じ強膜切開部位に尖っていない針で注射して、上脈絡膜腔にだけ注射した。
【0405】
5匹の動物を注射後1、2、4、及び8週の各々で安楽死させた。一方の眼を、ホモジネート中のGFP発現について、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により解析し、もう一方の眼を、免疫蛍光により解析される眼凍結切片に使用した。
【0406】
(6.7.3 結果)
凍結切片の免疫蛍光解析は、上脈絡膜注射から1週間後の広範なGFP発現を示した。赤道での10μmの水平凍結切片は、眼の周囲の半分以上に広がる網膜及びRPE/脈絡膜におけるGFP発現を示した。より高い倍率では、GFPは、脈絡膜及び眼のいくつかの領域の外顆粒層、並びに大部分は、神経節細胞層の内顆粒層で検出された。RPE/脈絡膜フラットマウントは、毛様体から後方にほぼ視神経まで広がる眼杯の約1/4に至るまでのGFP発現を示した。網膜フラットマウントは、赤道後部の網膜の前縁から網膜領域の約1/5に至るまでのGFPを示した。
【0407】
GFPの発現領域及び蛍光強度は、上脈絡膜発現後1週間から2週間の間に増加した。眼切片の免疫蛍光解析により、2週目までに、GFP発現がRPE/脈絡膜細胞と神経節細胞を含む網膜の全ての細胞とで検出されることが明らかになった。2週間で、赤道での10μmの水平凍結切片は、眼の周囲全体に広がる網膜及びRPE/脈絡膜におけるGFPを示した。より高い倍率では、脈絡膜、外節、外顆粒層、内顆粒層、及び神経節細胞層におけるGFPが示された。RPE/脈絡膜フラットマウントは、毛様体から後方にほぼ視神経まで広がる眼杯の約1/3に至るまでのGFPを示した。より高い倍率のこの領域は、GFP低発現RPE細胞よりもはるかに多くのGFP高発現RPE細胞を示した。網膜フラットマウントは、前縁から後方に視神経付近まで網膜の約1/4でGFPを示した。
【0408】
4及び8週間で、蛍光強度は減少し、この減少は、産生される高レベルのタンパク質に応答した炎症反応によるものであると考えられる。
【0409】
GFPの平均発現レベルは、上脈絡膜注射から1及び2週間後の網膜及びRPE/脈絡膜のホモジネートで高かった(図19)。
【0410】
(6.8 実施例17:ラットモデルにおけるAAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射と網膜下注射の比較)
(6.8.1 試験の簡単な概要)
以下の試験は、AAV8.抗VEGFの上脈絡膜注射と網膜下注射によって達成される発現を比較するために、並びにAAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射が眼のVEGF誘導性漏出及び新生血管形成を低下させ、かつ同様のレベルの抗VEGFを産生するかどうかを決定するために実施された。結果は、同等に高いレベルの抗VEGFfabが上脈絡膜又は網膜下AAV8.抗VEGFfabが注射された眼で検出され、抗VEGFタンパク質の分布が網膜と脈絡膜で同様であること、並びに上脈絡膜注射が網膜下送達と同等に中和VEGF誘導性漏出及び新生血管形成に有効であることを示した。
【0411】
(6.8.2 方法)
ノルウェー・ブラウンラットの一方の眼に、眼当たり2.85×1010GC(4×1010GC/mlの濃度)のAAV8.CB7.抗VEGFfabを含む3μlの上脈絡膜又は網膜下注射、及び他方の眼に7.2×108GCのAAV8.CB7.GFPを含む3μlの上脈絡膜又は網膜下注射を投与した。2週間後、200ngのVEGFを硝子体に注射した。2週間で評価されるラットのサブセットにおいて、100ngのVEGFを注射した。
【0412】
(6.8.3 結果)
2週間で、VEGF注射から24時間後に撮影された眼底写真は、AAV8.抗VEGFfabが注射された眼で正常な網膜及び網膜血管径を示したのに対し、AAV8.GFPが注射された眼は、拡張血管、浮腫の兆候、不鮮明な視神経乳頭縁、及び乳白色の網膜を示した。
【0413】
血管漏出をELISAによる硝子体試料中のアルブミンの測定によって評価し、上脈絡膜AAV8.GFPが投与された他眼と比べてAAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射が投与された眼における有意な低下を示した。しかしながら、網膜下AAV8.抗VEGFfabが投与された眼と網膜下AAV8.GFPが投与された他眼の間に硝子体アルブミンの有意な差はなかった(図20A)。
同等に高いレベルの抗VEGFfabが上脈絡膜又は網膜下AAV8.抗VEGFfabが注射された眼で検出され(図20B)、網膜と脈絡膜における分布は同様であった。
【0414】
(6.8.4 実施例18:上脈絡膜AAV8ベクターによる遺伝子移入はRPE及び網膜における広範な導入遺伝子発現をもたらす)
【0415】
(6.8.5 試験の簡単な概要)
遺伝性網膜変性症のための遺伝子置換及び新生血管加齢黄斑変性症(NVAMD)のためのVEGF-中和タンパク質の遺伝子送達が非常に進展している;しかしながら、網膜色素上皮(RPE)及び網膜へのウイルスベクターの送達には、依然として問題があり得る。AAVベクターの硝子体内注射が視細胞及びRPEでの発現がないことに限定されているので、導入遺伝子発現は限定されており、そのため、網膜下注射が大部分の適用のための好ましい送達経路である。しかしながら、網膜下注射は、視細胞をRPEから分離し、中心窩が含まれる場合、錐体視細胞の損傷が生じ、視覚的能力を制限し得る。また、網膜下注射は、手術室での硝子体切除の後に行われ、高リスクの処置関連事象、白内障形成、及び1〜2%の網膜剥離のリスクを保有する。本試験は、眼内遺伝子移入についての重大な利点を有する新規のアプローチである、AAV8ベクターの上脈絡膜注射を報告している。ラットへの2.85×1010遺伝子コピー(GC)のAAV8.GFPを含む3μlの上脈絡膜注射から2週間後、鋸状縁から後方に視神経に隣接する領域まで伸びるRPE/脈絡膜フラットマウントの23%に及ぶ強いGFP蛍光が見られた。眼切片は、脈絡膜、RPE、及び網膜の全ての層に至るまでの眼の赤道の周囲全体にわたるGFP蛍光を示した。2.85×1010遺伝子コピー(GC)のAAV8.GFPを含む3μlの2回の上脈絡膜注射により、RPE/脈絡膜フラットマウントの面積の42%に及ぶGFP蛍光が生じた。2.85×1010遺伝子コピー(GC)のAAV8.抗VEGFfabを含む3μlの上脈絡膜注射から2週間後の網膜及びRPE/脈絡膜における抗VEGFfabの平均レベルは、それぞれ、8.68及び3.72ng/mgタンパク質であり、これは、同じ量のベクターの網膜下注射後に見られるレベルと有意差がなかった。AAV8.抗VEGFの上脈絡膜注射と網膜下注射は同等に有効であり、ベクター注射から2及び7週間後にVEGF誘導性の網膜出血、網膜血管の拡張、及び血管漏出を予防した。これらのデータは、上脈絡膜注射が効力及び安全性を最大化し得る眼内遺伝子移入の好ましい経路を提供し得ることを示している。
【0416】
(6.8.6 試験の背景)
AAV2.CMV-RPE65の網膜下注射は、RPE65遺伝子の突然変異に起因するレーバー先天黒内障(LCA)を有する患者の運動性の改善をもたらしている(Maguireらの文献、2008, N. Eng. J. Med. 358 :2240-2248; Bainbridgeらの文献、2008, N. Eng. J. Med. 358: 2231-2239; Hauswirthらの文献、2008, Hum. Gen. Ther. 19:979-990)。米食品医薬品局によるこの治療の承認は、眼内遺伝子置換の現在及び将来の可能性の重要な妥当性確認を表す。しかしながら、LCA試験集団にとっての全体的な利益にもかかわらず、眼内炎、黄斑円孔、及び視力低下を含む、中心窩下への注射による重篤な合併症が一部の試験患者において見られた(Jacobsonらの文献、2015, N. Eng. J. Med. 372 :1920-1926; Bennettらの文献、2016, Lancet 388:661-672)。眼内注射又は処置はいずれも、眼内炎を生じ得るが、処置がより長くかつより多くに及ぶほど、眼内炎のリスクがより大きくなる。網膜下注射は、視細胞を網膜色素上皮(RPE)から分離し、これは、正常な眼の視細胞を傷付けることがあるが、遺伝性網膜変性症のために損傷を受けた視細胞を有する眼で特に危険であり得る(Hauswirthらの文献、2008, Hum. Gen. Ther. 19:979-990)。そのような眼は、網膜下ブレブを生成するより大きな圧力を必然的に伴う網膜-RPE密着を増大させる網膜下線維症を有し、中心窩は、黄斑の最も薄い部分であるので、圧力を受けた網膜下液は、中心窩から漏れて、黄斑円孔を生成し、網膜下腔内のベクターを減少させる。網膜下ベクター注射の後、感染は、ブレブ内の細胞(視細胞とRPEがベクターを含む流体によって隔てられる領域)に限定され、したがって、ブレブのサイズ及び位置が非常に重要であるが、ブレブが広がる方向を決定する最も容易な方法を外科手術の時点での網膜の検査から予測することができないので、制御は必ずしも容易ではない。ブレブが網膜下注射部位から対称的に外に広がった結果として、円ができることもあるし、それが網膜周辺に一方向に非対称的に広がって、標的とされた後部網膜の領域に及ばないこともある。ブレブがx軸又はy軸よりもz軸に沿って大きく広がった結果として、網膜及びRPEの比較的小さい領域を含む大きいブレブができることもある。こうした予測不可能性は、導入遺伝子発現の位置及び量のばらつきの源であり、転帰のばらつき及び一部の患者における潜在的により悪い予後をもたらし得る。複数回の網膜下注射は、標的とされる網膜及びRPEの領域をベクターに曝露させるのを助ける可能性があるが、合併症のリスクが増大することになる。
【0417】
上脈絡膜注射は、眼内薬物送達のための新しい経路を提供することが最近示されている。上脈絡膜腔は、強膜の内側のみへの流体の注射によって拡大することができる強膜の内表面沿いの潜在空隙である。強膜の厚さに近い長さを有する微小針の開発により、上脈絡膜注射が容易になったが(Patelらの文献、2011, Pharm. Res. 28:166-176)、これは、標準的な針を用いて行うこともできる。角膜縁の近くに注射された蛍光標識粒子は、眼の周囲に円周方向に流出し、広範囲の曝露をもたらす(Patelらの文献、2012, Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 53: 4433-4441)。ほとんどの低分子は、上脈絡膜腔内で数時間の半減期を有するが、トリアムシノロンアセトニドなどの親油性分子は、ゆっくりと溶解して、網膜への持続性送達をもたらす沈殿を形成する(Patelらの文献、2012, Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 53: 4433-4441; Chenらの文献、2015, J. Control. Release 203:109-117)。臨床試験により、トリアムシノロンアセトニドの上脈絡膜注射後の複数の疾患過程において黄斑浮腫の長期にわたる改善が示されている(Yehらの文献、2018 August 15, Retina epub: doi:10.1097/IAE.0000000000002279)。本試験では、AAV8ベクターの上脈絡膜注射の潜在的価値を眼内遺伝子移入について調べた。
【0418】
(6.8.7 材料及び方法)
(a)AAV8ベクター
【0419】
AAV8ベクターは、REGENXBIO社(Rockville, MD)により提供された。AAV8.GFPは、GFPをコードする遺伝子カセットを含み、CB7プロモーターを利用する、非複製型AAV8ベクターである。AAV8.抗VEGFfabは、ヒトVEGFを中和するヒト化モノクローナル抗原結合断片をコードする遺伝子カセットを含み、ニワトリβ-アクチンプロモーター及びCMVエンハンサーからなるCB7プロモーター、ニワトリβ-アクチンイントロン、並びにウサギβ-グロビンポリAシグナルを利用する、非複製型AAV8ベクターである。
【0420】
(b)動物
【0421】
動物は全て、視覚眼科研究学会の眼科及び視覚研究における動物使用に関する声明(Association for Research in Vision and Ophthalmology Statement for Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research)に準拠して処置され、プロトコルは、ジョンズ・ホプキンス大学の動物管理使用委員会(Johns Hopkins University Animal Care and Use Committee)により精査され、承認された。8週齢のノルウェー・ブラウンラットは、Charles River(Frederick, MD, USA)から購入した。成体ダッチ・ベルテッドウサギは、Robinson Services社(Mocksville, NC, USA)から購入した。通常視力の成体アカゲザル(Rhesus macaques)は、ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の動物施設で飼育及び管理した。
【0422】
(c)ラット、ウサギ、及びサルにおけるベクターの上脈絡膜注射
【0423】
ラットにケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、眼を倍率10倍のZeissの実体解剖顕微鏡(Zeiss, Oberkochen, Germany)で可視化した。1mlシリンジの30ゲージの針を用いて、角膜縁と平行になった強膜に部分層開口部を作り出し、ハミルトンシリンジ(Hamilton Company, Reno, NV)の33ゲージの45度の針を強膜の穴に挿入し、残りの強膜線維から上脈絡膜腔へとゆっくりと前進させ、2.85×1010GCのベクターを含む3μLを注射した。30秒後、綿棒を注射部位に当てながら、針を引き抜き、抗生物質の軟膏(Moore Medical LLC, Farmington, CT)を眼の表面に投与した。
【0424】
ウサギへの注射のために、ダッチ・ベルテッドウサギにケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、眼をZeissの手術用顕微鏡下で露出させた。27ゲージの針が付いたインスリンシリンジを角膜縁の6mm後ろに強膜から接線方向に挿入した。指先に手応えがなくなったとき、針を強膜の内側に約4〜5mm押し込み、50μlのベクターを上脈絡膜腔にゆっくりと注射した。30秒後、綿棒を注射部位に当てながら、針を引き抜き、抗生物質の軟膏を眼の表面に投与した。
【0425】
サルへの注射のために、AAV8中和抗体(-)の3頭の成体マカクをケタミン塩酸塩(15〜20mg/kg)で鎮静させ、その後、0.5%プロパラカイン(Akorn, IL, USA)を用いて、両眼に局所麻酔をかけた。5%ヨウ化ポビドンを投与して、処置前に眼の表面を滅菌した。処置は、ウサギの場合と同じであった。
【0426】
(d)ラットにおけるベクターの網膜下注射
【0427】
ラットに麻酔をかけ、眼をZeissの手術用顕微鏡(Zeiss, Oberkochen, Germany)及び20D眼底レーザーレンズ(Ocular Instruments Inc, WA, USA)で可視化した。まず、インスリンシリンジの30ゲージの針を接線方向に挿入して、強膜に穴を開けた。その後、5μlシリンジの33ゲージのハミルトン針(Hamilton Company, Reno, NV)を強膜の穴に挿入し、眼球層、硝子体眼房を通して、反対側の網膜下腔にゆっくりと押し込み、2.85×1010GCのベクターを含む3μlを注射した。処置後、抗生物質の軟膏を眼の表面に投与した。
【0428】
(e)組織採取及び組織学的検査
血液試料を、鎮静させた後のサルにおいて、ベクター注射前及び安楽死の3週間前という2つの異なる時点で回収した。視神経及び肝臓試料を取得した。ラット血液試料も安楽死の前に回収した。肝臓試料を死後に取得した。
【0429】
安楽死させた後、眼を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。一方の眼から前眼部及び硝子体を摘出し、その後、網膜及びRPE/脈絡膜を単離し、別々にフラットマウントを作製した。もう一方の眼を最適切削温度媒体(Fisher Scientific Co.)中で凍結させ、凍結切片を作製した(10μm)。Hoechst染色(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を行って、網膜層及びRPEを可視化した。フラットマウントと眼切片の両方を蛍光顕微鏡検査によって調べた。
【0430】
眼を摘出した後、腹壁を切開して、腹腔内の臓器を露出させた。肝臓を回収し、凍結させた。
【0431】
(f)RPE/脈絡膜及び網膜ホモジネートの調製
【0432】
ラットの網膜及び眼杯試料を解剖顕微鏡下で単離し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche, 68298 Mannheim, Germany)が添加されたRIPAバッファー(Sigma Aldrich, Arlington, MA)中に入れた。試料を4〜5秒間超音波処理し(Sonic Dismembrator Model 300, Fisher Scientific, Walkersville, MD)、氷浴上に約5分間置き、その後、14,000rpmで10分間遠心分離した(Eppendorf, Germany)。上清を単離し、-80℃で保存した。
【0433】
(g)網膜及びRPE/脈絡膜におけるGFPの測定
【0434】
ラットの網膜及び脈絡膜試料のGFP濃度を、GFP SimpleStep ELISAキット(ab171581, Abcam, Cambridge, MA)を用いて測定した。簡潔に述べると、GFP標準及び試料を、GFP捕捉抗体とともに、各々のウェルに充填した。プレートを室温で1時間インキュベートした。5回の洗浄の後、100ulのTMB基質溶液を各々のウェルに添加し、プレートを暗所で10分間インキュベートし、その後、100ulの停止溶液を各々のウェルに添加した。450nmの吸光度をSpectra Max Plus 384マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, San Jose, California)によって測定した。GFP濃度を各々の試料の総タンパク質濃度によって正規化した。
【0435】
(h)網膜及びRPE/脈絡膜における抗VEGFfabの測定
【0436】
眼を摘出した後、網膜及びRPE/脈絡膜を分離し、上記のようにホモジナイズした。製造元の指示を用いて、ルセンティス(ラニビズマブ)抗VEGF ELISAキット(#200-880-LUG; Alpha Diagnostic Intl, San Antonio, TX)を網膜及びRPE/脈絡膜試料中の活性のあるルセンティスの定量に用いた。プレートを、Spectra Max Plus 384マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, San Jose, California)により、450nmの波長で読み取った。
【0437】
(i)硝子体試料におけるアルブミンの測定
【0438】
硝子体液をインスリンシリンジを用いて回収した。製造元の指示を用いて、ラットアルブミンELISAキット(ab108790; Abcam, Cambridge, MA)を用いて、1μLの希釈硝子体液及び標準曲線作成用のアルブミン試料中のアルブミンレベルを測定した。プレートを、Spectra Max Plus 384マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, San Jose, California)により、450nm及び570nmで読み取った。
【0439】
(6.8.8 結果)
(a)AAV8.GFPの上脈絡膜注射は網膜、RPE、及び脈絡膜の全体にわたるGFP発現をもたらす
【0440】
ブラウン・ノルウェーラットの角膜縁の1mm後方への2.85×1010遺伝子コピー(GC)のAAV8.GFPを含む3μlの上脈絡膜注射から1週間後、眼球の赤道を通る10μmの水平凍結切片は、眼の周囲のほぼ半分に広がる脈絡膜、RPE、網膜外層での緑色蛍光を示した。より高倍率の図は、注射の四分区間内の脈絡膜、RPE、及び網膜の外顆粒層(ONL)における強い蛍光を示し、注射部位からより遠く離れると、網膜における蛍光は、主として、視細胞内節にあった。網膜の摘出後、強膜、脈絡膜、及びRPEを含む眼杯のフラットマウントは、毛様体との境界から後方に視神経に隣接する領域まで広がるRPEの約25%での緑色蛍光シグナルを示した。高倍率の図は、二核性RPE細胞でばらつきのあるGFP発現を示し、Hoechst染色された核を見えなくする強い蛍光を示すものもあれば、検出可能な蛍光を示さないものもあった。網膜フラットマウントは、赤道の後方の網膜の前縁から網膜の約1/5の領域全体に至るまでの蛍光を示し、RPEで見られた蛍光よりもやや小さかった。高倍率の図は、網膜内に複数の細胞層があるため、蛍光細胞の低い解像度を示した。
【0441】
ブラウン・ノルウェーラットの角膜縁の1mm後方への2.85×1010GCのAAV8.GFPを含む3μlの上脈絡膜注射から2週間後、眼球の赤道を通る10μmの水平凍結切片は、眼の周囲全体に広がる脈絡膜、RPE、及び網膜外層での緑色蛍光を示した。高倍率の図は、脈絡膜、RPE、外顆粒層(ONL)、内顆粒層(INL)、及び神経節細胞層(GCL)における緑色蛍光を示した。眼杯のフラットマウントは、毛様体に隣接する前縁から後方に視神経付近にまで広がるRPEの領域の約1/3に及ぶ緑色蛍光を示した。より高倍率の図は、GFP発現におけるかなりの不均一性を示したが、低発現のRPE細胞よりも高発現のRPE細胞のパーセンテージが多かった。網膜フラットマウントは、網膜の約1/4に至るまでの強い緑色蛍光を示した。図19に示されているように、2.85×1010GCのAAV8.GFPを含む3μlの上脈絡膜注射から1及び2週間後、RPE/脈絡膜又は網膜のホモジネート中のGFPタンパク質の発現レベルは、非常に高く、20〜40ng/mgタンパク質の範囲であった。
【0442】
(b)AAV8.GFPの2回の上脈絡膜注射によるGFP発現の増強
RPE/脈絡膜及び網膜のより大きい領域を複数回の上脈絡膜注射によって感染させることができるかどうかを明らかにするために、ラットに、2.85×1010GCのAAV8.GFPを含む3μlの単一の上脈絡膜注射又は3日間間隔を空けた2.85×1010GCのAAV8.GFPを含む3μlの2回の注射を投与した。1回目の注射から2週間後、単一の注射から2週間後の眼由来のRPE/脈絡膜フラットマウントの22.9%と比較して、2回の注射を受けた眼由来のRPE/脈絡膜フラットマウントの42.2%が緑色蛍光を示した。GFPタンパク質レベルは、1回の上脈絡膜注射を受けた眼由来のRPE/脈絡膜ホモジネートと比較して、2回の上脈絡膜注射を受けた眼由来のRPE/脈絡膜ホモジネートで有意に大きかった(図21)。
【0443】
(c)AAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射はVEGF誘導性の血管拡張及び血管漏出を抑制する
【0444】
AAV8.GFPを用いる上記の実験により、AAV8ベクターの上脈絡膜注射は、RPE/脈絡膜及び網膜における広範な導入遺伝子発現をもたらすが、潜在的な生物学的効果に関する情報をもたらさないことが示されている。それゆえ、VEGFの過剰発現が過剰な血管漏出及び新生血管形成の主な駆動因子である網膜/脈絡膜血管疾患において治療効果の可能性を有するVEGF中和タンパク質を発現するAAV8.抗VEGFfabを用いて、実験を行った(Liuらの文献、2018, Mol. Ther. 26:542-549)。ラットの一方の眼に、2.85×1010GCのAAV8.抗VEGFfabを含む3μlの上脈絡膜又は網膜下注射を投与し、他眼に、2.85×1010GCのAAV8.GFPを含む3μlを投与した。2週間後、これらの各々の眼に、200ngの組換えVEGF165(VEGF)の硝子体内注射を投与し、比較のために、処置を受けていないラットに、同様に、200ngの組換えVEGF165の注射を投与した。24時間後、いかなる前治療も受けていないVEGFが注射された眼は、拡張血管及び出血を示した。対照的に、AAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射を以前に投与された眼は、正常な網膜血管及び網膜を有していたが、AAV8.GFPの上脈絡膜注射を受けた他眼は、拡張血管及び出血を示した。これは、VEGFによって誘導される典型的な表現型である。同様に、AAV8.抗VEGFfabの網膜下注射を以前に投与された眼は、正常に見える眼底を有するが、AAV8.GFPの網膜下注射を投与された眼は、拡張し、蛇行した血管を有していた。より長期の効果を評価するために、上脈絡膜又は網膜下ベクター注射の7週間後に、100ngのVEGFの硝子体内注射を行った。過去に処置を受けたことがないラットにおけるVEGF注射から24時間後、眼に拡張血管及び出血が見られた。より早い時点と同様、AAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜又は網膜下注射を投与された眼は、正常な眼底を有し、AAV8.GFPの上脈絡膜又は網膜下注射を投与された眼は、拡張血管及び出血を有していた。硝子体内に漏れる血清アルブミンの測定は、網膜血管漏出を定量するための貴重な技法を提供する(Fortmannらの文献、2018, Sci. Rep. 8:6371)。未処置ラットの硝子体における平均アルブミンレベルは0.6(±0.49)であった。これは、以前の報告と一致している。200ngのVEGFの硝子体内注射から24時間後の硝子体アルブミンの平均増加は1.04(±0.12)であり、硝子体アルブミンは、AAV8.GFPの上脈絡膜又は網膜下注射から2又は7週間後にVEGF注射を受けた眼でも同様に増加したが、2又は7週間前にAAV8.抗VEGFの上脈絡膜又は網膜下注射を受けた眼では、アルブミンの増加が有意にかつ同程度に低下した(図22)。網膜及びRPE/脈絡膜における抗VEGFfabタンパク質の平均レベルは、AAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜又は網膜下注射後、両方の時点で同様であった(図23)。
【0445】
(d)ウサギにおける上脈絡膜注射
【0446】
ウサギに、4.75×1011GCのAAV8.GFPを含む50μlを注射した。1又は2週間後、RPE/脈絡膜及び網膜フラットマウントを実施した。高いGFP発現を一部のRPE細胞で観察し、低いGFP発現を他の細胞で観察した。不均一な発現レベルのパターンは、ラットで観察されたものと同様であったが、より顕著であった。高発現の領域は、側方周辺から中間周辺にかけて広がり、ラットで見られるほど後方ではなかった。網膜フラットマウントは、グリア細胞からなる視神経を取り囲む有髄線条で最も強いGFP発現を示し、グリア細胞の形質導入が特に効率的であり得ることを示唆した。最も高い発現は有髄線条で観察されたが、切片は、中間周辺の網膜の全層にまたがる神経網膜細胞で発現があることを示した。
【0447】
(e)サルにおける上脈絡膜注射
【0448】
アカゲザルの各々の眼に、4.75×1011GCのAAV8.GFPを含む50μlの上脈絡膜注射を投与し、3週間後、一方の眼由来のフラットマウント及び他眼由来の凍結眼切片を蛍光顕微鏡観察によって調べた。上脈絡膜注射から3週間後のRPE/脈絡膜フラットマウントの蛍光顕微鏡観察により、中間周辺のおよそ1/3に至るまでのGFPの強い発現が示された。
【0449】
フラットマウントに使用した3つの眼は、非常によく似た結果を示した。上脈絡膜注射から3週間後、GFP発現は、注射の四分区間内のRPE/脈絡膜フラットマウントの高倍率の図で、視神経のはるか後方まで見られた。発現のレベルは不均一であり(一部のRPE細胞では非常に高く、他の細胞では低い)、ラットで見られるものと同様であった。注射の四分区間内の中間周辺由来のRPE/脈絡膜フラットマウントは、不均一なGFP発現を示し、一部の細胞では強い蛍光が見られ、他の細胞ではほとんど見られなかった(これは、六角形のRPE細胞も示すより高い倍率でよく見られた)。注射の四分区間内の後部網膜由来のRPE/脈絡膜フラットマウントは、蛍光によって輪郭が描かれている視神経(ON)のほぼ境界にまで広がる、強度は低いが、より均一なGFP蛍光を示した。網膜フラットマウントは、網膜が視神経から視神経のずっと後方まで切り離されている網膜の切断端まで後方に広がるGFP発現も示し、より高い倍率では、蛍光が多層網膜の様々な細胞内に見られた。強膜フラットマウントの中間周辺は、強膜線維芽細胞内で強い蛍光を示し、毛様体のフラットマウントは、紡錘状細胞内で強い蛍光を示した。毛様体を貫く切片は、毛様体突起を含む全体にわたって強い蛍光を示した。網膜切片は、脈絡膜から神経節細胞及び神経線維層までの網膜の全層にまたがる全ての細胞で強いGFP発現を示した。中間周辺及び後部網膜由来の眼切片は、網膜の外境界から内境界までの全ての細胞で強い蛍光を示し、内部網膜の網膜血管壁に強い蛍光を伴っていた。視神経の切片は、神経の境界付近の鞘及び神経束を分離する中隔におけるGFP発現を示している。
【0450】
(6.8.9 考察)
眼は、わずかな量のベクターしか必要とされず、体の残りの部分への曝露が限定されるので、遺伝子移入に有利である比較的狭い空間である。眼内遺伝子移入の2つの主要な用途は、網膜変性症を引き起こす突然変異体遺伝子の置換と治療タンパク質の持続性発現であり、これらの分野の各々においてかなり進展している(Maguireらの文献、2008, N. Eng. J. Med. 358 :2240-2248; Bainbridgeらの文献、2008, N. Eng. J. Med. 358: 2231-2239; Hauswirthらの文献、2008, Hum. Gen. Ther. 19:979-990; MacLarenらの文献、2014, Lancet 383:1129-1137; Campochiaroらの文献、2006, Hum. Gen. Ther. 17:167-176; Campochiaroらの文献、2016, Hum. Gen. Ther. 28:99-111; Heierらの文献、2017, The Lancet 389: 50-61)。AAVベクターは、眼内遺伝子移入のための最も広く使用されるベクターとして浮上し、硝子体内注射及び網膜下注射という2つの送達経路が検討されている。硝子体内注射は、外来診療所で行うことができ、硝子体腔の内側を覆う全ての細胞をベクターに曝露させるが、網膜での発現は、中心窩を取り囲む神経節細胞及び毛様体扁平部の移行上皮という小集団に限定される。これにより、視細胞における遺伝子置換のための硝子体内送達が不可能になり、治療タンパク質の長期発現のためのその使用が著しく損なわれる。AAVベクターの網膜下注射は、注射によって引き起こされる網膜剥離の内側のRPE及び視細胞における強い導入遺伝子発現をもたらす。これにより、剥離の領域における視細胞もしくはRPEの突然変異体遺伝子を置換するか、又は網膜全体にアクセスすることができる可溶性治療タンパク質を強く発現する能力が提供される。ベクターの網膜下注射の欠点は: 1)それが、手術室に行って、大多数の患者で白内障を誘導し、かつわずかな比率で網膜剥離を合併する硝子体切除の実施を必要とすること、2)遺伝子送達が網膜剥離と隣接する網膜及びRPEの比較的小さい領域に限定され、遺伝子置換のために標的とされるべき最も重要な領域の優先順位付けを必要とし、かつ網膜及びRPEの残りの部分を犠牲にすること、3)中心窩は視覚的能力が最も高いので、遺伝子置換にとって最優先のものであるが、ベクターの網膜下注射による網膜剥離による既に損なわれている視細胞及びRPEの分離が視力を低下させる永久的な損傷を引き起こし、ジレンマをもたらし得ることである(Hauswirthらの文献、2008, Hum. Gen. Ther. 19:979-990)。
【0451】
本試験では、他の送達経路に優る重要な利点を有するAAV8ベクター-上脈絡膜注射のための新たな送達経路が示された。これは、硝子体内注射のように外来の状況で行われ、それにより、手術室に行く不便さを回避することができるが、より重要なことは、硝子体切除に伴う白内障及び網膜剥離のリスクを回避することができることである。これは、中心網膜を標的とする遺伝子置換のための網膜下注射の重大な懸念である、中心窩で視細胞をRPEから分離するリスクも排除する。網膜下腔におけるベクターの拡散と比較して、上脈絡膜腔でははるかに多く拡散し、RPE/脈絡膜及び網膜の非常に大きい領域全体にわたる発現を可能にする。GFPを可視化する最も感度の高い方法である網膜切片の蛍光顕微鏡観察により、2.85×1010GCのAAV8.GFPを含む3μlの単一の上脈絡膜注射から2週間後に、赤道で眼の周囲全体に広がる発現が示された。高レベルのGFPだけをRPE/脈絡膜又は網膜フラットマウントの蛍光顕微鏡観察によって可視化することができ、各々の約25〜30%が高い発現を示した。高GFP発現の領域は、1回目から3日後の2回目の注射によって増加した。これは、AAV8ベクターの複数回の上脈絡膜注射を使用すれば、RPE/脈絡膜及び網膜の大部分又は全てにわたる高レベルの発現を達成することが可能であることを示唆している。これは、眼の四分区間の各々で上脈絡膜注射を行い、各々の注射の後に眼圧が正常化するのを待つか、又はその正常化を前房穿刺によって速めることにより、単一の外来受診の間に達成することができる。
【0452】
遺伝子置換は、比較的稀な遺伝性網膜変性の潜在的な治癒的治療であり、それゆえ、その珍しい疾病を有する患者にとって途方もない可能性を有する。治療タンパク質の遺伝子送達は、一般的な網膜及び脈絡膜血管疾患を有する何百万人もの患者の管理に大改革をもたらす可能性を有する。血管内皮増殖因子は、新生血管加齢黄斑変性症(NVAMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、及び網膜静脈閉塞(RVO)に続発する黄斑浮腫の極めて重要な刺激である(Campochiaroらの文献、2016, Ophthalmology 123:S78-S88)。これらの疾病の各々における現在のアプローチは、血管漏出を低下させ、かつ視力を改善するVEGF中和タンパク質の硝子体内注射を行うことであるが、これらの疾患は慢性的であり、VEGFの持続的な過剰発現はほとんどの患者で頻回の反復注射を必要とする。患者及び医師が長年にわたって最適な注射頻度を維持するのは難しく、そのため、臨床試験以外で治療を受けたNVAMDを有する患者では、長期的な視覚転帰が臨床試験で報告されているものよりも大幅に悪い(HORIZON, SEVEN-UP, CATT 5 Year、Holzらの文献、2015, Br. J. Ophthalmol. 99:220-226; Cohenらの文献、2013, Retina 33:474-481; Fingerらの文献、2013, Acta Ophthalmol)。VEGF中和タンパク質をコードする発現コンストラクトの遺伝子移入は、慢性的に過剰発現されるVEGFの信頼できる長期抑制をもたらす優れた戦略を提供する。AAV2.sFLT01の硝子体内注射の効果を検討する臨床試験は、最大用量が投与されたAAV抗体を有さないNVAMD患者における検出可能な発現及び一部の患者における抗VEGF注射の必要性を低下させる漏出の抑制を示したが、大多数の患者における安定性を提供するには不十分であった(Heierらの文献、2017, The Lancet 389: 50-61)。前臨床試験は、NVAMDに関連するモデルにおいて印象的な効力をもたらすAAV8.抗VEGFfabの網膜下注射の後に、VEGFに結合する抗体断片(抗VEGFfab)の信頼できる高レベル発現を示しており(Liuらの文献、2018, Mol. Ther. 26:542-549)、これは、現在、臨床試験で検討中である(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03066258)。本試験において、2.85×1010GCのAAV8.抗VEGFfabを含む3μlの網膜下注射と比較して、同じ量のAAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射は、同様の抗VEGFfabの発現及び同様のVEGF誘導性血管漏出の抑制をもたらすことがラットで示された。既に存在する抗AAV抗体は、硝子体内送達でそうするようには、AAVベクターの網膜下注射の効力を損なわない。これらの抗体の効果は、上脈絡膜では不明である。AAV8.抗VEGFfabの上脈絡膜注射は、抗AAV8抗体を欠く患者の中の網膜又は脈絡膜血管疾患を有する患者におけるより侵襲性の低いアプローチとみなすことができる。
【0453】
硝子体内注射は、上脈絡膜注射と同様、比較的侵襲性が低く、外来の状況で行うことができる。感染及び発現は、それについて試験されているAAV2、AAV8、又は他の野生型AAVベクターの硝子体内注射後に限定されるが、それは、内境界膜(ILM)が物理的障壁を提供し、また、AAVベクターに結合するためである。無傷のILMの場合、中心窩内の細胞しかこの経路で形質導入されることができないが、新規のベクターは、ILM障害を回避することができる可能性がある。ILMは、齧歯類では網膜全体にわたって薄く、AAV2の硝子体内注射後、網膜深くに広がる網膜細胞の広範な領域の感染が可能になる。しかしながら、ILMは、霊長類でははるかにより頑丈であり、AAV2.GFPの硝子体内注射後、GFP発現は、中心窩を取り囲む、時に血管に沿った、神経節細胞に限定される(Pechanらの文献、2009, Gen. Ther. 16:10-16)。ユビキチン化に関与する表面チロシン残基がフェニルアラニンと置換されている突然変異体AAVベクターでは、ベクター分解が低下し、より低いベクター用量での導入遺伝子発現が増大し、ILMを透過する少量のベクターの有効性が増大する(Zhongらの文献、2008, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:7827-7832; Mowatらの文献、2014, Gen. Ther. 21:96-105)。多様な突然変異体AAVベクターライブラリー及びインビボ選択プロトコルの作製により、将来有用となり得る霊長類での硝子体内注射の後に網膜細胞のより広範な感染をもたらし得るベクターが同定されている(Santiago-ORtizらの文献、2011, Gene Ther. 22:934-946)。ベクターの硝子体内注射の適用を拡大するためにベクターを改善し続ける一方で、同時に、様々な眼疾患における遺伝子移入の新たな利益を利用するためにベクターの上脈絡膜注射を研究することが重要である。
【0454】
(6.9 実施例18:上脈絡膜注射)
患者は、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性症(nAMD)を呈している。可溶性抗VEGF Fabタンパク質のコード配列を保有する複製欠損アデノ随伴ウイルスベクター8(AAV8)(実施例7に記載)を上脈絡膜薬物送達装置(図24に図示)を介して患者の眼の上脈絡膜腔に投与する。患者を、OCT上での網膜の厚さ、視力、及びさらなる注射の必要性などの臨床評価により、応答について、投与前、投与時、及び投与後にモニタリングする。
【0455】
(6.10 実施例19:上脈絡膜腔経由の網膜下投与)
患者は、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性症(nAMD)を呈している。可溶性抗VEGF Fabタンパク質のコード配列を保有する複製欠損アデノ随伴ウイルスベクター8(AAV8)(実施例7に記載)を、後極に向けて上脈絡膜腔に挿入し、これを貫通させ、後極で細い針により網膜下腔に注射することができるカテーテルを含む網膜下薬物送達装置(図25に図示)の使用により、患者の眼の上脈絡膜腔を経由して、患者の眼の網膜下腔に投与する。患者を、OCT上での網膜の厚さ、視力、及びさらなる注射の必要性などの臨床評価により、応答について、投与前、投与時、及び投与後にモニタリングする。
【0456】
(6.11 実施例20:後強膜近傍デポー処置による注射)
患者は、新生血管(滲出型)加齢黄斑変性症(nAMD)を呈している。可溶性抗VEGF Fabタンパク質のコード配列を保有する複製欠損アデノ随伴ウイルスベクター8(AAV8)(実施例7に記載)を、後強膜近傍デポー処置(図26に図示)により、患者の眼の強膜の外表面に投与する。患者を、OCT上での網膜の厚さ、視力、及びさらなる注射の必要性などの臨床評価により、応答について、投与前、投与時、及び投与後にモニタリングする。
【0457】
(等価物)
本発明は、その具体的な実施態様に関して詳細に記載されているが、機能的に等価であるバリエーションが本発明の範囲内にあることが理解されるであろう。実際、本明細書に示され、かつ記載されたものに加え、本発明の様々な改変が、前述の説明及び付随する図面から当業者には明らかとなろう。そのような改変は、添付される特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な実施態様の多くの等価物を認識し、又は通常の実験のみを用いて確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0458】
本明細書で言及された全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、又は特許出願が引用により完全に本明細書中に組み込まれることが具体的かつ個別的に示されるのと同程度に、引用により本明細書中に本明細書に組み込まれている。
図1
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図2
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図3
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図4
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図5
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図6
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図7
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図8
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図9
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図10
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図11
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図12
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図13
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図14
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図15A
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図15B
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図16
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図17A
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図17B
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図18-1】
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図18-2】
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図18-3】
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図18-4】
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図18-5】
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図19
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図20
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図21
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図22
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図23
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図24
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図25
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図26A
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図26B
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図26C
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図26D
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【手続補正書】
【提出日】2020年7月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】
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