特表2020-535231(P2020-535231A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-535231(P2020-535231A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】新規な塩および結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/16 20060101AFI20201106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20201106BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20201106BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
   C07D471/16
   A61P43/00 111
   A61P3/04
   A61P1/14
   A61P25/24
   A61P25/22
   A61P25/18
   A61P25/08
   A61P25/04
   A61P15/00
   A61P25/20
   A61P25/28
   A61K31/4985
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-538775(P2020-538775)
(86)(22)【出願日】2018年9月26日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月14日
(86)【国際出願番号】US2018052922
(87)【国際公開番号】WO2019067591
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】62/563,341
(32)【優先日】2017年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ピー・ウェノグル
(72)【発明者】
【氏名】ペン・リ
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン・アレット
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA07
4C065AA18
4C065BB04
4C065CC06
4C065DD03
4C065EE03
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ09
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB09
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA18
4C086ZA69
4C086ZA70
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オンの新規の、安定な、医薬的に許容される塩酸塩形態を、それらの製造方法および使用方法ならびにそれらを含む医薬組成物と共に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オンの安定な塩酸塩。
【請求項2】
結晶形態である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
図1に実質的に対応するX線回折パターンを有する塩結晶である、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
図2に実質的に対応するX線回折パターンを有する塩結晶である、請求項2に記載の塩。
【請求項5】
図3に実質的に対応するX線回折パターンを有する塩結晶である、請求項2に記載の塩。
【請求項6】
上記の塩1〜1.35のいずれかより選択される、請求項1に記載の塩。
【請求項7】
請求項1に記載の塩の製造方法であって、
(a)1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基を塩酸と、例えば有機溶媒と共に反応させること、および
(b)これにより形成した塩を回収すること
を含む方法。
【請求項8】
塩酸が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロプロピルメチルエーテル(CPME)、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、およびそれらの混合物より選択される溶媒中の塩酸の溶液として提供される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
反応が、トルエン、酢酸エチル、CPME、アセトニトリル、1-ブタノール、およびそれらの混合物より選択される有機溶媒中で実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
遊離または塩形態の1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)を精製する方法であって、粗製ITI-007を塩酸と反応させること、これにより形成した塩酸塩を回収することを含み、塩酸塩をITI-007遊離塩基に変換して戻すかまたは別の塩形態に変換することを含んでもよい、方法。
【請求項11】
5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関連するかまたは介在する疾患または異常状態に罹患しているヒトを予防または治療するための方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の塩の有効量をヒトに投与することを含む方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の塩を、医薬的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合されて含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年9月26日出願の米国仮出願第62/563,341号に基づく優先権および利益を主張し、該出願の内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、置換複素環縮合γ-カルボリンの特定の新規な塩および結晶形態、その製造方法、その医薬組成物、および、例えば、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関連するかまたは介在する疾患または異常状態の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8(7H)-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-1-ブタノンと称されることもあり、ルマテペロン(Lumateperone)またはITI-007としても知られる)は、次の構造式を有する。
【化1】
【0004】
ITI-007は、強力な5-HT2A受容体リガンド(Ki=0.5nM)であり、ドーパミン(DA)D2受容体(Ki=32nM)およびセロトニントランスポーター(SERT)(Ki=62nM)に強い親和性を有するが、抗精神病薬の認知および代謝副作用に関連する受容体(例えば、H1ヒスタミン作動性、5-HT2C、およびムスカリン)にほとんど結合しない。ITI-007は、現在臨床試験中、すなわち統合失調症の治療について臨床試験中である。ITI-007は有望な薬物であるが、その製造および製剤には難題がある。遊離塩基形態において、ITI-007は、油性、粘性固体であり、難水溶性である。本化合物の塩の製造は、非常に困難であることが証明されている。ITI-007の塩酸塩形態は、米国特許第7,183,282号に開示されているが、この特定の塩形態は、吸湿性であり、安定性が悪いことが示されている。それは、ジエチルエーテルから沈殿させることにより得られた。ITI-007のトルエンスルホン酸付加塩(トシル酸塩)は、国際公開第2009/114181号およびその対応米国特許出願公開第2011/112105号で漸く特定され、開示されており、該出願各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0005】
ITI-007の別の安定で医薬的に許容される塩および多形が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
ITI-007の新規な塩および多形を発見する努力の過程で、広範な塩スクリーニングを実施した。ITI-007は、様々な有機溶媒中で遊離塩基の溶解度が良好であるにもかかわらず、他の一般的な医薬的に許容される酸と容易に塩を形成しない。最終的に、国際公開第2009/114181号および米国特許出願公開第2011/112105号に記載のように、トルエンスルホン酸付加塩(トシル酸塩)が製造されたが、他の安定な塩は見出されなかった。最後に、主要な塩スクリーニングが実施され、そこで遊離塩基化合物が、種々の溶媒系および種々の条件下で研究され、次いで、100を超える酸のセレクションを用いて種々の条件下、種々の溶媒、共溶媒および貧溶媒系で体系的スクリーニングがなされ、可能な塩形態を特定した。広範なスクリーニングおよび実験後、3つの新しい塩酸塩多形を発見した。これらの塩酸塩形態は、結晶性であり、かつ安定である。
【0007】
したがって、本開示は、ガレヌス製剤の製造における使用に特に有利である、ITI-007の新規な塩酸塩形態をその製造方法および使用方法と共に提供する。
【0008】
本発明の適用性の更なる領域は、以下に提供する詳細な記載から明らかとなる。詳細な記載および具体例は、本発明の好ましい実施態様を示すが、例示のみを目的とすることを意図し、本発明の範囲を限定する意図はないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、詳細な記載および添付する図面からより完全に理解される。
【0010】
図1】ITI-007塩酸塩結晶(多形1)のX線粉末回折パターンを示す。
【0011】
図2】ITI-007塩酸塩結晶(多形2)のX線粉末回折パターンを示す。
【0012】
図3】ITI-007塩酸塩結晶(多形3)のX線粉末回折パターンを示す。
【0013】
図4】1-ブタノール中におけるITI-007塩酸塩の競合スラリー実験から得られたX線粉末回折パターンを示す(上:50℃;下:RT)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい実施態様の以下の記載は、本質的に単なる例示であり、本発明、その適用または使用を限定する意図は決してない。
【0015】
全体にわたって用いられる範囲は、その範囲内にある各値およびすべての値を述べるための省略表現として用いられる。範囲内のあらゆる値が、範囲の終点として選択され得る。また、本明細書で引用されるすべての参考文献は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。本開示における定義と引用する参考文献における定義に矛盾がある場合、本開示が統制する。
【0016】
他に明記されない限り、ここにおよび本明細書の他の箇所に示すすべてのパーセンテージおよび量は、重量によるパーセンテージを指すと理解されるべきである。所与の量は、物質の活性重量に基づく。
【0017】
第1実施態様において、本発明は、安定な塩酸塩形態(塩1)の1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)を提供する。したがって、本発明は、下記を提供する:
1.1. 固体形態の塩1。
1.2. 結晶形態、例えば乾燥結晶形態の、塩1または1.1。
1.3. 他の形態がないまたは実質的にない、例えば、非晶質形態がないまたは実質的にない、例えば、10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約2重量%未満、さらに好ましくは約1重量%未満、さらに好ましくは約0.1%未満、最も好ましくは約0.01重量%未満である、均一結晶形態の塩1.2。
1.4. 塩酸およびITI-007が、例えば約1:1または約1:2のモル比である、例えばトルエン、酢酸エチル、シクロプロピルメチルエーテル(CPME)、アセトニトリル、1-ブタノールまたはそれらの混合物を含む、例えば有機溶媒中で、塩酸およびITI-007の混合物から結晶化させたときの、結晶形態の塩1の前記いずれかの形態。
1.5. 溶媒和物、例えば、酢酸エチル溶媒和物、またはトルエン溶媒和物、またはCPME溶媒和物、または1-ブタノール溶媒和物である、塩1の前記いずれかの形態。
1.6. 溶媒和物ではない、塩1の前記いずれかの形態。
1.7. 水和物である、塩1の前記いずれかの形態。
1.8. 水和物ではない、塩1の前記いずれかの形態。
1.9. 遊離ITI-007遊離塩基と塩酸を、1:1〜1:2のモル比、例えば、1:1のモル比または1:2のモル比で組み合わせることにより形成される、塩1の前記いずれかの形態。
1.10. 例えばCPME中ITI-007遊離塩基と塩酸を1:1モル比で用いて、塩を酢酸エチルにおけるスラリー実験から形成させ、多形1を得る、塩1の前記いずれかの形態。
1.11. DSC分析が、2つの吸熱イベントを117℃および228℃にて示し、例えば、DSC/TGA分析が、第1吸熱イベントをT開始= 110℃、Tピーク= 117℃およびΔE= -15J/gで、第2イベントをT開始= 218℃、Tピーク= 228℃およびΔE= -39J/gで示す、塩1.10。
1.12. 例えば、試料純度および装置変動による変動、例えばX線波長の変動による2θシフトの可能性を考慮して、下記表のd-間隔および/または角度(2θ)値に対応するX線粉末回折パターンを有し、例えば該値の少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つを有し、例えば、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成され、例えば、少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、例えば少なくとも0.6の相対強度を有するこれらのピークを少なくとも含み、例えば、ピーク1、2、6、7、8および9を含む、結晶形態の塩1.10または1.11:
【表1】

1.13. 例えば、試料純度および装置変動による変動、例えばX線波長の変動による2θシフトの可能性を考慮して、図1に対応するX線粉末回折パターンを有し、例えば、図1に対応するX線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.10〜1.12のいずれかの形態。
1.14. 試料純度および装置変動による変動の可能性を考慮して、約7.29、10.28、10.44、12.21、13.42、15.24、16.29、16.81、18.82、19.57、21.14、22.06、22.07、22.63、23.78、24.31、25.03、26.40、26.44、26.50、27.24、29.36および33.53からなる群より選択される角度(2θ)値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.10〜1.13のいずれかの形態。
1.15. 試料純度および装置変動による変動の可能性を考慮して、約12.12、8.60、8.47、7.24、6.59、5.81、5.44、5.27、4.71、4.53、4.20、4.03、4.02、3.93、3.74、3.66、3.56、3.37、3.37、3.36、3.27、3.04および2.67からなる群より選択されるd-間隔値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.10〜1.14のいずれかの形態。
1.16. 1.14および1.15に示す角度(2θ)値および/またはd-間隔値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有する、結晶形態の塩1.10〜1.15のいずれかの形態。
1.17. 実施態様1.12の表に示す相対角度(2θ)値を有するX線粉末回折パターンを有し、値が、最大±0.2°シフトしており、例えば値が、実質的に均一に最大±0.2°シフトしている、結晶形態の塩1.10〜1.16のいずれかの形態。
1.18. 例えばCPME中ITI-007遊離塩基と塩酸を1:1モル比で用いて、塩をトルエンにおけるスラリー実験から形成させ、多形2を得る、塩1または1.1〜1.9のいずれかの形態。
1.19. DSC分析が、2つの吸熱イベントを121℃および228℃にて示し、例えば、DSC/TGA分析が、第1吸熱イベントをT開始= 108℃、Tピーク= 121℃およびΔE= -23J/gで、第2イベントをT開始= 215℃、Tピーク= 228℃およびΔE= -57J/gで示す、塩1.18。
1.20. 例えば、試料純度および装置変動による変動、例えばX線波長の変動による2θシフトの可能性を考慮して、下記表のd-間隔および/または角度(2θ)値に対応するX線粉末回折パターンを有し、例えば該値の少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つを有し、例えば、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成され、例えば、少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、例えば少なくとも0.6の相対強度を有するこれらのピークを少なくとも含み、例えば、ピーク1、2、6、7、8および9を含む、結晶形態の塩1.18または1.19:
【表2】

1.21. 例えば、試料純度および装置変動による変動、例えばX線波長の変動による2θシフトの可能性を考慮して、図2に対応するX線粉末回折パターンを有し、例えば、図2に対応するX線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.18〜1.20のいずれかの形態。
1.22. 試料純度および装置変動による変動の可能性を考慮して、約10.52、11.72、12.10、13.12、14.25、16.03、16.57、16.69、18.94、19.84、21.09、20.84、21.78、22.29、22.47、23.20、24.62、26.82および28.28からなる群より選択される角度(2θ)値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.18〜1.21のいずれかの形態。
1.23. 試料純度および装置変動による変動の可能性を考慮して、約8.41、7.54、7.31、6.74、6.21、5.52、5.35、5.31、4.68、4.47、4.21、4.26、4.08、3.98、3.95、3.67、3.61、3.32および3.15からなる群より選択されるd-間隔値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.18〜1.22のいずれかの形態。
1.24. 1.22および1.23に示す角度(2θ)値および/またはd-間隔値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有する、結晶形態の塩1.18〜1.23のいずれかの形態。
1.25. 実施態様1.20の表に示す相対角度(2θ)値を有するX線粉末回折パターンを有し、値が、最大±0.2°シフトしており、例えば値が、実質的に均一に最大±0.2°シフトしている、結晶形態の塩1.18〜1.24のいずれかの形態。
1.26. 例えばCPME中ITI-007遊離塩基と塩酸を1:1モル比で用いて、塩をCPMEにおけるスラリー実験から形成させ、多形3を得る、塩1または1.1〜1.9のいずれかの形態。
1.27. DSC分析が、2つの吸熱イベントを122℃および209℃にて示し、例えば、DSC/TGA分析が、第1吸熱イベントをT開始= 97℃、Tピーク= 122℃およびΔE= -38J/gで、第2イベントをT開始= 192℃、Tピーク= 209℃およびΔE= -13J/gで示す、塩1.26。
1.28. 例えば、試料純度および装置変動による変動、例えばX線波長の変動による2θシフトの可能性を考慮して、下記表のd-間隔および/または角度(2θ)値に対応するX線粉末回折パターンを有し、例えば該値の少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つを有し、例えば、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成され、例えば、少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、例えば少なくとも0.6の相対強度を有するこれらのピークを少なくとも含み、例えば、ピーク1、2、6、7、8および9を含む、結晶形態の塩1.26または1.27:
【表3】

1.29. 例えば、試料純度および装置変動による変動、例えばX線波長の変動による2θシフトの可能性を考慮して、図3に対応するX線粉末回折パターンを有し、例えば、図3に対応するX線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.26〜1.28のいずれかの形態。
1.30. 試料純度および装置変動による変動の可能性を考慮して、約6.11、10.09、10.35、11.54、12.08、12.93、13.23、15.77、18.20、19.52、20.92、23.87、24.97および26.40からなる群より選択される角度(2θ)値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.26〜1.29のいずれかの形態。
1.31. 試料純度および装置変動による変動の可能性を考慮して、約14.45、8.76、8.54、7.66、7.32、6.84、6.69、5.61、4.87、4.54、4.24、3.73、3.56および3.37からなる群より選択されるd-間隔値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有し、X線粉末回折パターンが、銅陽極およびニッケルフィルターを備えるX線回折計を用いて作成される、結晶形態の塩1.26〜1.30のいずれかの形態。
1.32. 1.30および1.31に示す角度(2θ)値および/またはd-間隔値を有するピークを、少なくとも5つまたは少なくとも6つまたは少なくとも7つまたは少なくとも8つ有するX線粉末回折パターンを有する、結晶形態の塩1.26〜1.31のいずれかの形態。
1.33. 実施態様1.28の表に示す相対角度(2θ)値を有するX線粉末回折パターンを有し、値が、最大±0.2°シフトしており、例えば値が、実質的に均一に最大±0.2°シフトしている、結晶形態の塩1.26〜1.32のいずれかの形態。
1.34. ITI-007が、重水素化されており、例えば、分子内の1つ以上の特定の位置におけるジュウテリウム:プロチウム比が、天然同位体比または分子内の他の位置における同位体比より著しく高く、例えば少なくとも2倍、例えば少なくとも10倍高い、塩1の前記いずれかの形態;例えば国際公開第2015/154025号(内容は出典明示により本明細書の一部とする)に記載のように、例えば、ITI-007のメチル化窒素部分に隣接するおよび/またはカルボニル部分に隣接する-CH2-が、重水素化されており、例えば、天然ジュウテリウム:プロチウム同位体比または分子内の他の位置におけるジュウテリウム:プロチウム同位体比より著しく高いレベルで-CHD-または-CD2-形態である、および/または、メチル基が、重水素化されており、例えば、天然ジュウテリウム:プロチウム同位体比または分子内の他の位置におけるジュウテリウム:プロチウム同位体比より著しく高いレベルでCD3-である、塩1の前記いずれかの形態。
1.35. 1.1〜1.34に記載の特徴の任意の組合せを示す、塩1の前記いずれかの形態。
【0018】
別の実施態様において、本発明は、
(a)1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)遊離塩基を、塩酸と、例えば有機溶媒(例えばトルエン、酢酸エチル、CPME、アセトニトリル、1-ブタノールまたはそれらの混合物を含む)と一緒に反応させ、例えばここで、塩酸およびITI-007は、1:1から1:2、または約1:1、または約1:2のモル比であり;そして
(b)これにより形成した塩酸塩を回収し、例えば上記塩1以降のいずれかの塩を回収する
ことを含む、塩1を製造する方法(製造方法1)を提供する。
【0019】
製造方法1の一実施態様において、塩酸は、気体(塩化水素)として、または水溶液として、または、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロプロピルメチルエーテル(CPME)、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサンまたはそれらいずれかの混合物より選択される、有機溶媒中の溶液として提供される。
【0020】
製造方法1の別の実施態様において、反応工程(a)は、例えばトルエン、酢酸エチル、CPME、アセトニトリル、1-ブタノールまたはそれらの混合物より選択される、有機溶媒中にITI-007遊離塩基を溶解または懸濁させ、そこに塩酸を加えることを含む。製造方法1の別の実施態様において、反応工程(a)は、ITI-007遊離塩基を塩酸と組み合わせて、例えばトルエン、酢酸エチル、CPME、アセトニトリル、1-ブタノールまたはそれらの混合物より選択される、有機溶媒をそこに加えることを含む。
【0021】
製造方法1のいくつかの実施態様において、製造工程(a)はバッチ法として実施され、他の実施態様において、製造工程(a)は連続(フロー)法として実施される。
【0022】
別の実施態様において、本発明は、遊離または塩形態の1-(4-フルオロ-フェニル)-4-((6bR,10aS)-3-メチル-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-ブタン-1-オン(ITI-007)を精製する方法であって、例えば製造方法1に従って、ITI-007の粗製溶液を塩酸と反応させ、これにより形成した塩酸塩を回収し、所望により塩酸塩をITI-007遊離塩基に変換して戻すかまたは別の塩形態に変換することを含む、方法を提供する。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、ITI-007を単離および/または精製する方法における塩酸の使用を提供する。
【0024】
本明細書で用いられる「塩酸」は、純粋な(気体の)塩化水素、水中の塩酸(水性塩酸)、または有機溶媒中の塩酸(すなわち、有機溶媒中の塩化水素)を指し、ここで、有機溶媒は、塩化水素を溶解させることができる任意の適切な有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロプロピルメチルエーテル(CPME)、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサンまたはそれらいずれかの混合物より選択され得る。
【0025】
別の実施態様において、本発明は、塩1、例えば塩1.1〜1.35のいずれかを、活性成分として、医薬的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合されて含む医薬組成物を提供する。
【0026】
別の実施態様において、本発明は、塩1、例えば塩1.1〜1.35のいずれかを、活性成分として、医薬的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合されて含む医薬組成物であって、塩1が、主にまたは完全にもしくは実質的に完全に乾燥結晶形態である、医薬組成物を提供する。
【0027】
特定の実施態様において、本発明は、塩1、例えば塩1.1〜1.35のいずれかを、活性成分として、医薬的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは混合されて含む、ITI-007の持続放出を提供するための注射可能なデポー形態の医薬組成物を提供する。
【0028】
別の実施態様において、本発明は、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関連するかまたは介在する疾患または異常状態、例えば、肥満、摂食障害、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、睡眠障害、頭痛を伴う状態、社会恐怖症または認知症より選択される障害の治療において用いるための、塩1、例えば塩1.1〜1.35のいずれか、または塩1、例えば塩1.1〜1.35のいずれかを含む医薬組成物を提供する。
【0029】
別の実施態様において、本発明は、5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)および/またはドーパミンD1/D2受容体シグナル伝達経路が関連するかまたは介在する疾患または異常状態に罹患しているヒトを予防または治療するための方法であって、例えば、障害が、肥満、摂食障害、過食症、うつ病、不安、精神病、統合失調症、片頭痛、強迫性障害、性障害、うつ病、統合失調症、片頭痛、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、睡眠障害、頭痛を伴う状態、社会恐怖症または認知症より選択され、それを必要とする患者に治療有効量の塩1以降のいずれかを投与することを含む、方法を提供する。
【実施例】
【0030】
下記装置および方法を、例示的塩形態を単離および同定するために用いる:
【0031】
X線粉末回折(XRPD):X線粉末回折試験を、ブラッグ・ブレンターノ型のBruker AXS D2 PHASER、装置番号1549/番号2353を用いて実施する。装置は、30kV、10mAのCu陽極;試料ステージ標準回転;Kβ-フィルターによるモノクロ化(0.5%Ni)を用いる。スリット:固定発散スリット1.0mm(=0.61°)、1次軸ソーラースリット2.5°、2次軸ソーラースリット2.5°。検出器:受光スリット5°検出開口部を備えるリニア検出器LYNXEYE。標準試料ホルダー((510)シリコンウェーハの0.1mmのくぼみ)は、バックグラウンドの寄与を最小限にする。測定条件:スキャン範囲5〜45°2θ、試料回転5rpm、0.5秒/ステップ、0.010°/ステップ、3.0mm検出スリット;およびすべての検出条件を装置制御ファイルに記録する。システム適合性として、コランダム試料A26-B26-S(NIST標準)を1日1回測定する。データ収集に用いるソフトウェアは、Diffrac.Commander v2.0.26である。データ分析は、Diffrac.Eva v1.4を用いてなされる。バックグラウンド補正または平滑化は、パターンに適用しない。
【0032】
同時の熱重量測定(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)またはTGA/DSC分析:TGA/DSC試験を、オートサンプラーを備えるMettler Toledo TGA/DSC1 Stare System、装置番号1547を用い、40μlのピンホールを開けたAlるつぼを用いて実施する。測定条件:5分30.0℃、10℃/分で30.0〜350.0℃、40ml/分のN2流。装置制御およびデータ分析に用いるソフトウェアは、STARe v12.10である。
【0033】
示差走査熱量測定(DSC):DSC試験を、Mettler Toledo DSC1 STARe System、装置番号1564を用いて実施する。Alるつぼ(40μl;穿刺)を用いて試料を調製する。典型的には1〜8mgの試料を、予め計量したAlるつぼに載せ、30℃に5分間保ち、その後10℃/分にて30℃から350℃へ加熱し、350℃に1分間保つ。40ml/分の窒素パージを試料上に維持する。システム適合性チェックとして、インジウムおよび亜鉛を対照に用いる。データ収集および評価に用いるソフトウェアは、STARe Software v12.10 build 5937である。補正は、サーモグラムに適用しない。
【0034】
偏光顕微鏡観察(PLM):顕微鏡観察試験を、AxioCamERc 5sを備えるAxioVert 35M、装置番号1612を用いて実施する。顕微鏡は、Zeiss A-Plan 5x/0.12、Zeiss A-Plan 10x/0.25、LD A-Plan 20x/0.30およびAchros TIGMAT 32x/0.40の4つのレンズを備える。データ回収および評価を、Carl Zeiss Zen AxioVision Blue Edition Lite 2011 v1.0.0.0ソフトウェアを用いて実施する。少量の試料を、対物ガラスに載せ、薄層が得られるまで注意深く広げる。
【0035】
動的水蒸気吸着測定(DVS):動的水蒸気吸着測定試験を、Surface Measurement Systems Ltd. DVS-1 No Video、装置番号2126を用いて実施する。試料を天秤皿に、典型的には20〜30mg載せ、0%RHにて釣り合わせる。物質を乾燥後、RHを、1ステップ当たり10%、増分当たり1時間で増加させ、95%RHにて終了する。吸着サイクル完了後、試料を、同じ方法を用いて乾燥した。データ収集に用いるソフトウェアは、DVSWin v3.01 No Videoである。データ分析を、DVS Standard Analysis Suite v6.3.0(Standard)を用いて実施する。
【0036】
粒子径分布(PSD):粒子径分布試験を、Malvern Instruments Mastersizer、装置番号1712を用いて実施する。Mastersizerは、0.05μm〜900mmの範囲の300RFレンズを用いる。多分散を分析モデルとして用いる。測定条件:各試料の測定前に、バックグラウンド測定を実施し、バックグラウンドスキャン時間は12秒(12000スナップ)である。各試料を、Multipar Gに分散させ、屈折率は1.42である。試料分散の遮蔽範囲は、10%〜30%である。各試料をt=0およびt=30分にて6回測定し、測定スキャン時間は10秒(10000スナップ)である。試料分散単位の目標撹拌時間は、2000±10rpmである。データ収集および評価を、Mastersizer S Version 2.19ソフトウェアを用いて実施する。
【0037】
キャピラリー融点:キャピラリー融点を、USPガイドラインに準拠するBuechi Melting Point B-545、装置番号000011を用いて測定する。
【0038】
X線蛍光(XRF):X線蛍光試験を、Bruker AXS S2 RANGER、装置番号2006を用いて実施する。優れた軽元素分析のためにパラジウム陽極および極薄ベリリウム窓(75μm)を備える端窓X線測定管を用いる。検出器として、Cr、Ti、Al、Taコリメーター(100 000 cps Mnkαにてエネルギー分解能<129 eV FWHM)を備えるXflash V5を用いる。S2 Rangerは、交換可能トレイを有する28ポジションのX-Y自動サンプルチェンジャーと接続したオートサンプラーを備え、これにより20mmの最大試料直径を20mmにできる。自動操作のために直径51.5mmの鋼製リングに試料を載せる。測定条件:ポリプロピレンホイル5μmを有する使い捨て液体カップ(内径35mm、外径40mm)。システム適合性チェックとして、銅ディスクを1日1回測定し、いくつかの要素を含むガラスディスクを1週間に1回測定する。データ収集に用いるソフトウェアは、S2 Ranger Control Software V4.1.0である。データ分析を、SPECTRA EDX V2.4.3評価ソフトウェアを用いて実施する。バックグラウンド補正または平滑化は、パターンに適用しない。
【0039】
フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR):FT-IR試験を、Thermo Scientific Nicolet iS50、装置番号2357を用いて実施する。減衰全反射(ATR)技術を、KBrのビームスプリッターで用いた。取得した試料の実験設定は、400cm-1〜4000cm-1の解像度4で、スキャン数16を用いる。ソフトウェアOMNICバージョン9.2をデータ収集および評価に用いる。
【0040】
熱重量分析(TGA)と赤外分光分析(TGA-IR):TGA-IRにおいて、オフガス処理した材料を、トランスファーラインを介してガスセルに送り、そこで赤外光がガスと相互作用する。TGAからの温度勾配および第1誘導体重量損失情報は、Gram-Schmidt(GS)プロファイルとして示され;GSプロファイルは、開始状態と比較したIRシグナルの総変化を本質的に示す。ほとんどの場合、GSおよび誘導体重量損失は、形状が類似するが、2つの強度は異なり得る。このため、試験は、互いに接続した2つのデバイスである。TGA試験を、34ポジションのオートサンプラーを備えるMettler Toledo TGA/DSC1 STARe System、装置番号1547を用いて実施する。Alるつぼ(100μl;穿刺)を用いて試料を調製する。典型的には20〜50mgを、予め計量したAlるつぼに載せ、30℃に5分間保ち、その後10℃/分にて30℃から350℃へ加熱する。40ml/分の窒素パージを試料上に維持する。Nicolet iS50のTGA-IRモデルをTGA/DSC1に接続する。IR試験を、Thermo Scientific Nicolet iS50、装置番号 2357を用いて実施した。取得したシリーズ、プロファイルGram-Schmidtの実験設定は、スキャン数10、解像度4で用いる。ソフトウェアOMNICバージョン9.2をデータ収集および評価に用いる。
【0041】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):高速液体クロマトグラフィー分析を、Agilent 1100シリーズG1322A脱気装置、装置番号1894、Agilent 1100シリーズG1311Aクォータナリポンプ、装置番号1895、Agilent 1100シリーズG1313A ALS、装置番号1896、Agilent 1100シリーズG1318Aカラム、装置番号1897およびAgilent 1100シリーズG1314A VWD、装置番号1898を備えるLC-31/Agilent 1200シリーズG1379B脱気装置、装置番号2254、Agilent 1100シリーズG1311Aクォータナリポンプ、装置番号2255、Agilent 1100シリーズG1367A WPALS、装置番号1656、Agilent 1100シリーズG1316Aカラム、装置番号2257およびAgilent 1100シリーズG1315B DAD、装置番号2258を備えるLC-34で実施する。Agilent ChemStation for LC systems Rev. B.04.02[96]を用いてデータを収集および評価する。溶液を次のように調製する:移動相A:MilliQ水800mlを1Lのメスフラスコに加える。TFA 1mlを加え、均質化する。MilliQで標線までメスアップする;移動相B:アセトニトリル800mlを1Lのメスフラスコに加える。TFA 1mlを加え、均質化する。アセトニトリルで標線までメスアップする;希釈液:50/50のMeOH/ACN。
【0042】
実施例1:塩結晶スクリーニング
様々な溶媒におけるITI-007遊離塩基の溶解度を評価し、溶解度範囲の結果に基づいて、適切な溶媒を塩スクリーニングのために選択する。塩スクリーニングを、90種類の異なるカウンターイオン、6つの異なる溶媒を用い、そして4つの異なる結晶化方法(スラリー結晶化、冷却結晶化、蒸発および沈殿)を含む、7つの別々のスクリーニングに分ける。カウンターイオンは、医薬的に許容される酸付加塩を形成するための利用可能性および潜在的適合性に基づいて選択される。それらは、P. H., Wermuch C.G. (editors), Handbook of Pharmaceutical Salts, IUPAC (2008)で特定されるクラスI、IIおよびIIIの酸を含む。合計624のカウンターイオン/溶媒/比バリエーションを試験し、4つの結晶化方法の各々を用いてこれら各々を試験する。試験した624の組合せのうち、9つの組合せのみが、候補結晶塩を生成する:6つの塩酸条件、ならびにシュウ酸、シクラミン酸および4-アミノサリチル酸について各々1つの条件。
【0043】
塩酸スクリーニングのために、CPME中の塩酸およびイソプロパノール中の塩酸の両方が用いられる。遊離塩基対酸のモル比は、1:1または1:2である。スクリーニングされる反応溶媒は、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエンおよびCPMEを含む。
【0044】
候補結晶塩は次のHCl条件で観察される:(1)CPME溶媒中1:1モル比のHCl/CPME(スラリー結晶化);(2)CPME溶媒中1:2モル比のHCl/CPME(スラリー結晶化);(3)トルエン溶媒中1:2モル比のHCl/CPME(スラリー結晶化);(4)酢酸エチル溶媒中1:2モル比のHCl/CPME(スラリー結晶化);(5)トルエン溶媒中1:1モル比の(HCl/CPME冷却結晶化);および(6)酢酸エチル溶媒中1:2モル比のHCl/イソプロパノール(沈殿結晶化)。候補結晶塩は各々、色が黄色から灰色まで様々な粉末として得られる。FT-IR分析はこれらの候補が塩であることを確認し、遊離塩基と約70%類似性を各々示し、HClの存在を示す。XRPD分析は、これらの候補の各々が結晶であることを確認する。LC-MS分析は、遊離塩基構造の分解がないことを確認する。
【0045】
新規な塩酸塩結晶の形成を確認するために、スケールアップ実験を以下のように実施する。
【0046】
実施例2:塩酸塩結晶多形1
約1gのITI-007遊離塩基を、100mg/mLの濃度で酢酸エチル溶媒に加える。CPME溶液中の塩酸を加え、ITI-007遊離塩基対HClの1:1モル比を提供する。混合物を50℃にて一晩スラリー化させる。混合物を室温まで冷却させ、ろ過し、乾燥させて、黄色/褐色固体を得る。XRPD分析は、塩酸塩が結晶固体であることを示す。XRPDパターンを図1に示し;ピークを表1に表形式で特定する:
【表4】
【0047】
塩酸塩をまた、DSC/TGA、DVS、HPLC、1H-NMRおよびFT-IRにより分析する。DSC/TGA分析は、2つの吸熱イベントを示し、第1吸熱イベントは、T開始= 110℃、Tピーク= 117℃およびΔE= -15J/gであり、第2イベントは、T開始= 218℃、Tピーク= 228℃およびΔE= -39J/gである。両方の吸熱イベントは、それぞれ4%および13%の質量損失に関連している。TGR-IR分析は、これらの質量損失が主に酢酸エチルおよび水であることを示し、酢酸エチル溶媒和物が形成されたことを示している。HPLCデータの分析は、この溶媒和物の純度が94%であることを示す。FT-IR分析は、化学構造を確認する。動的水蒸気吸着(DVS)分析は、いくつかの段階的な吸着を示し;95RH%での総質量取込みは、5%である。したがって、この塩は中等度に吸湿性である。
【表5】
【0048】
実施例3:塩酸塩結晶多形2
約1gのITI-007遊離塩基を、100mg/mLの濃度でトルエン溶媒に加える。CPME溶液中の塩酸を加え、ITI-007遊離塩基対HClの1:1モル比を提供する。混合物を50℃にて一晩スラリー化させる。混合物を室温まで冷却させ、ろ過し、乾燥して、黄色/褐色固体を得る。XRPD分析は、塩酸塩が結晶固体であることを示す。XRPDパターンを図2に示し;ピークを表3に表形式で特定する:
【表6】
【0049】
塩酸塩を、DVS、DSC/TGAおよびHPLCにより分析し、結果を表4に要約する。DSC/TGA分析は、2つの吸熱イベントを示し、第1イベントは、T開始= 108℃、Tピーク= 121℃およびΔE= -23J/gであり、第2イベントは、T開始= 215℃、Tピーク= 228℃およびΔE= -57J/gである。両方の吸熱イベントは、それぞれ4%および13%の質量損失に関連している。TGR-IR分析は、これらの質量損失が主にトルエンおよび水であることを示し、トルエン溶媒和物が形成されたことを示している。HPLCデータの分析は、この溶媒和物の純度が90%であることを示す。FT-IR分析は、化学構造を確認する。動的水蒸気吸着(DVS)分析は、いくつかの段階的な吸着を示し;95RH%での総質量取込みは、12%である。したがって、この塩は中等度に吸湿性である。
【表7】
【0050】
実施例4:塩酸塩結晶多形3
約1gのITI-007遊離塩基を、100mg/mLの濃度でCPME溶媒に加える。CPME溶液中の塩酸を加え、ITI-007遊離塩基対HClの1:1モル比を提供する。混合物を50℃にて一晩スラリー化させる。混合物を室温まで冷却させ、ろ過し、乾燥して、オフホワイトの粉末状固体を得る。XRPD分析は、塩酸塩が結晶固体であることを示す。XRPDパターンを図3に示し;ピークを表5に表形式で特定する:
【表8】
【0051】
塩酸塩を、DVS、DSC/TGAおよびHPLCにより分析する。結果を表6に要約する。DSC/TGA分析は、2つの吸熱イベントを示し、第1イベントは、T開始= 97℃、Tピーク= 122℃およびΔE= -38J/gであり、第2イベントは、T開始= 192℃、Tピーク= 209℃およびΔE= -13J/gである。両方の吸熱イベントは、それぞれ7%および13%の質量損失に関連している。TGR-IR分析は、これらの質量損失が主にCPMEおよび水であることを示し、CPME溶媒和物が形成されたことを示している。HPLCデータの分析は、この溶媒和物の純度が80%であることを示す。FT-IR分析は、化学構造を確認する。動的水蒸気吸着(DVS)分析は、いくつかの段階的な吸着を示し;95RH%での総質量取込みは、10%である。したがって、この塩は中等度に吸湿性である。
【表9】
【0052】
実施例5:塩酸塩結晶多形の競合安定性試験
3つの塩酸塩結晶多形のうち最も安定なものを決定するために、1-ブタノール中における競合スラリー法を実施する。実施例2〜4に従って得られた3つの多形の等量を混合し、室温および50℃にて24時間スラリー化させる。その後、XRPD分析を実施する。両スラリー条件は、新規の結晶パターンをもたらし、新規な溶媒和物形態の形成を示唆している。XRPDスペクトルを図4に示す(上:50℃;下:RT)。DSC/TGA分析は、2つの吸熱イベントを示し、第1イベントは、T開始= 142℃、Tピーク= 150℃およびΔE= -14J/gであり、第2イベントは、T開始= 203℃、Tピーク= 216℃およびΔE= -17J/gである。TGAプロファイルは、3つの質量損失を示す。最初の2つの6%および8%は、それぞれ2つの吸熱イベントに対応する。TGR-IR分析は、これらの質量損失の最初の2つが主に1-ブタノールおよび水であることを示し、1-ブタノール溶媒和物が形成されたことを示している。3番目の質量損失は、240℃以上で生じ、分解物に対応する可能性がある。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】