【実施例】
【0050】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【0051】
1)試薬
実施例では、以下の試薬を使用した、すなわち、
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Aldrich社、PEG-OH、M
n≒2000、及び750g mol
-1)、トリエチルアミン(Aldrich社、99.5%)、2-ブロモプロピオニルブロミド(Aldrich社、97%)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)(Aldrich社、99.7%)、塩化アンモニウム(NH
4Cl)(Aldrich社、99.5%)、ジクロロメタン(Aldrich社、99.8%)、硫酸マグネシウム(Aldrich社、>99.9%)、O-エチルキサントゲン酸(Aldrich社、96%)、α,ω-ジヒドロキシポリ(エチレングリコール)(Aldrich社、HO-PEG-OH、M
n≒2050g mol
-1)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(Aldrich社、PEG-A、M
n≒480g mol
-1)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、Aldrich社、98%)、1,4-ジオキサン(Alfa Aesar社、99.8%)、過硫酸カリウム(KPS)(Aldrich社、99%)、酢酸ナトリウム(Aldrich社、99%)、カリウム3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクタンスルホネート(Capstone(登録商標)、FS-17)(FS)、及びフッ化ビニリデン(VDF)を、受け入れたままの状態で使用した。PureLabシステムにより、水を脱イオン化した。
【0052】
O-エチル-S-(1-エトキシカルボニル)エチルジチオカーボネート(X1)は、Taton, D.ら、M. Direct Synthesis of Double Hydrophilic Statistical Di-and Triblock Copolymers Comprised of Acrylamide and Acrylic Acid Units via the MADIX Process. Macromolecular Rapid Communications、2001年、22、1497〜1503頁に記載されているプロトコルに従って合成した。
【0053】
2)特性評価手法
核磁気共鳴(NMR)を使用して、モノマー変換及びマクロRAFT純度を測定した。化合物を、適切な重水素化溶媒中に、約30mg g
-1の濃度で溶解させた。スペクトルは、高分解能分光計(Bruker AC 300)を用いて、室温にて記録した。化学シフトを、使用済み溶媒のピークに関して較正した。
【0054】
VDF乳化重合に関して、固形分(SC)は、重量測定法により測定した。粒径(D
z)及び分散度(σ)は、動的光散乱法(DLS)によって測定した。分析は、Malvern Instruments社製のNanoZSにおいて、173°の散乱角で25℃にて実施した。
【0055】
Mettler Toledo社製DSC-1において、示差走査熱量計(DSC)測定を実施した。乾燥させた試料は、空の参照サンプルパンとともに、標準の40μLアルミニウム製サンプルパンにおいて、2回の連続加熱(10℃ min
-1で-20〜210℃)及び冷却(-10℃ min
-1で210〜-20℃)サイクルにかけた。試料の熱履歴を、210℃での最初の加熱によって消去した。分析データ(結晶化温度T
c、融解温度T
m及び結晶化度Xc(%))は、2回目の加熱から抽出した。
【0056】
結晶化度は、ΔH
f, ∞が105J g
-1である、以下の式により計算した。
Xc(%)=(ΔH
f, measured/ΔH
f, ∞)×100
【0057】
3)実験手順
3.1.PEG系の親水性マクロRAFT(PEG-X)の合成
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(M
n=2000g mol
-1)(20g;0.01mol)を、ジクロロメタン(80mL)中に溶解させた後、トリエチルアミン(2.73g;0.027mol)を加えた。氷浴に入れた混合物に、2-ブロモプロピオニルブロミド(4.97g;0.023mol)を滴加した。次にそれを除去し、反応混合物を16時間撹拌した。次に、残留塩をろ過した。有機相を、NH
4Cl(1×15mL)の飽和水溶液、NaHCO
3(1×15mL)の飽和水溶液、及び水(1×15mL)で洗浄した。次に、洗浄した有機相を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧下にて蒸発させた。
【0058】
得られた生成物(15.41g;0.0066mol)を、ジクロロメタン(55mL)中に溶解させた。次に、O-エチルキサントゲン酸(3.17g;0.0198mol)を、撹拌しながら少量ずつ加えた。反応混合物を、一晩撹拌した。KBr塩は、ろ過により除去した。混合物を、NH
4Cl(2×15mL)の飽和水溶液及びNaHCO
3(2×15mL)の飽和水溶液で、次に水(1×15mL)で洗浄した。次に、洗浄した有機相を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧下にて蒸発させた。次に、ポリマーを、冷石油エーテル中に沈殿させた。最後に、生成物を減圧下にて乾燥させた。別の市販のPEG-OH(M
n=750g mol
-1)を使用して、同一手順に従った。
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz, δ ppm) : 4.6 (q, 2H, O-CH
2-CH
3); 4.4 (q, 1H, CH-S); 4.3 (t, 2H, CH
2-CH
2-O); 3.75-3.5 (s, 180H, (CH
2-CH
2-O)
n); 3.35 (s, 3H, CH
3-O); 1.6 (d, 3H, CH-CH
3); 1.4 (t, 3H, CH
2-CH
3).
【0059】
3.2.VDFの乳化重合(実施例1〜20)
VDF乳化重合は全て、窒素導入口及び機械的撹拌器を備え、VDFボトルに接続された50mLのステンレス製反応器内で実施した。KPS、FS(又はPEG-OH又はPEG-X)及び酢酸ナトリウムを、反応器に導入した。次に、25mLの脱イオン水を加えた。媒体を、窒素下で30分間脱酸素化させた。次に、30バールのVDFを使用して反応器を満たし、媒体を80℃の設定値温度で加熱した。反応が停止すると、得られたラテックスを収集し、粒径を測定した。少量を乾燥させて、固形分及び結晶化度を測定した。
【0060】
全てのVDF乳化重合(実施例1〜20)の操作条件及び特性を、表1〜4に要約している。
【0061】
3.3.二官能性X-PEG-XマクロRAFT剤の合成
ポリ(エチレングリコール)(M
n=2050g mol
-1)(20g;0.01mol)を、ジクロロメタン(80mL)中に溶解させた後、トリエチルアミン(5.46g;0.054mol)を加えた。混合物を、2-ブロモプロピオニルブロミド(9.94g;0.046mol)を含むフラスコに滴加し、氷浴に入れた。次にフラスコを除去し、反応混合物を16時間撹拌した。次に、残留塩をろ過した。有機相を、NH
4Cl(1×15mL)の飽和水溶液、NaHCO
3(1×15mL)の飽和水溶液、及び水(1×15mL)で洗浄した。次に、洗浄した有機相を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧下にて蒸発させた。
【0062】
得られた生成物(16.20g;0.0079mol)を、ジクロロメタン(55mL)中に溶解させた。次に、O-エチルキサントゲン酸(7.60g;0.0474mol)を、撹拌しながら少量ずつ加えた。反応混合物を、一晩撹拌した。KBr塩は、ろ過により除去した。混合物を、NH
4Cl(2×15mL)の飽和水溶液及びNaHCO
3(2×15mL)の飽和水溶液で、次に水(1×15mL)で洗浄した。次に、洗浄した有機相を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、溶媒を減圧下にて蒸発させた。次に、ポリマーを、冷石油エーテル中に沈殿させた。最後に、生成物を減圧下にて乾燥させた。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz, δ ppm): 4.6 (q, 2H, O-CH
2-CH
3); 4.4 (q, 1H, CH-S); 4.3 (t, 2H, CH
2-CH
2-O); 3.75-3.5 (s, 220H, (CH
2-CH
2-O)
n); 1.6 (d, 3H, CHCH
3); 1.4 (t, 3H, CH
2-CH
3).
【0063】
数平均分子量(M
n)及び分散度(D=M
w/M
n)は、THF(標準ポリスチレン(PS))におけるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。
【0064】
3.4.従来のラジカル重合によるP(PEG-A)の合成
典型的な実験では、76.0mgのAIBN(1.80×10
-2mol L
-1)及び6.67gのPEG-A(5.45×10
-1mol L
-1)を、丸底フラスコ中の1,4-ジオキサンに加えた。媒体を、アルゴン下で30分間脱酸素し、その後70℃で加熱した。モノマー変換の後に、溶媒としてCDCl
3を使用して
1H NMR測定を行い、メトキシ基のプロトンとPEG-Aのビニルプロトンの相対積分値を求めた。M
n及びDは、DMSO(標準ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA))におけるSECによって測定した。
【0065】
3.5.キサンテート媒介RAFT重合によるP(PEG-A)-XマクロRAFT剤の合成
典型的な実験では、308.6mgのキサンテート(5.51×10
-2mol L
-1)、76.0mgのAIBN(1.80×10
-2mol L
-1)及び6.67gのPEG-A(5.45×10
-1mol L
-1)を、丸底フラスコ中の1,4-ジオキサンに加えた。媒体を、アルゴン下で30分間脱酸素し、その後70℃で加熱した。モノマー変換の後に、溶媒としてCDCl
3を使用して
1H NMR測定を行い、メトキシ基のプロトンとPEG-Aのビニルプロトンの相対積分値を求めた。M
n及びDは、DMSO(標準PMMA)におけるSECによって測定した。
【0066】
3.6.VDFの乳化重合(実施例21〜26)
VDF乳化重合は全て、窒素導入口及び機械的撹拌器を備え、VDFボトルに接続された50mLのステンレス製反応器内で実施した。KPS、FS(又はHO-PEG-OH又はPEG-X又はX-PEG-X又はPEG-A又はP(PEG-A)又はP(PEG-A)-X)及び酢酸ナトリウムを、反応器に導入した。次に、25mLの脱イオン水を加えた。媒体を、窒素下で30分間脱酸素化させた。次に、30バールのVDFを使用して反応器を満たし、媒体を80℃の設定値温度で加熱した。反応が停止すると、得られたラテックスを収集し、粒径を測定した。少量を乾燥させて、固形分及び結晶化度を測定した。
【0067】
全てのVDF乳化重合(実施例21〜25)の操作条件及び特性を、表5〜6に要約している。
【0068】
4)結果
4.1.実施例1〜2:フッ素化界面活性剤の存在下におけるVDF乳化重合(ブランク実験)
最初に、2.2mgのKPS、36.3mgのフッ素化界面活性剤(FS)、及び1.4mgの酢酸ナトリウムを使用して、従来のFSにより、参照実験を実施した(実施例1)。次に、10倍量の試薬を使用して、同様の実験を実施した(実施例2、22.0mgのKPS、363.0mgのFS、及び14mgの酢酸ナトリウム)。両方の場合において、安定なラテックスが得られた。同じ重合時間(1時間30分)で、より多くのFSを使用すると、粒子がより小さくなり、固形分がより多くなる(表1)。
【0069】
【表1】
【0070】
4.2.実施例3〜20:官能性ポリマーの存在下におけるVDF乳化重合
次に、市販の界面活性剤FSを、PEG-OH(M
n=2000g mol
-1)鎖又はPEG-X(M
n=2300g mol
-1)鎖のいずれかに置き換えて、異なる開始剤/ポリマー比を使用した。
【0071】
実施例3は、30.0mgのKPS、19.0mgの酢酸ナトリウムを使用し、FSをPEG-OHで置き換え、20.0mgのこのポリマーを使用すること以外は、実施例1に記載したものと同じ手順に従う。
【0072】
実施例4は、KPS量を50.0mgに、及び酢酸ナトリウム量を31.0mgに変えて、実施例3に記載の手順に従って実施した。
【0073】
実施例5は、KPS量を70.0mgに、及び酢酸ナトリウム量を44.0mgに変えたこと以外は、実施例4で使用した手順に従って実施した。
【0074】
実施例6は、PEG-OHを同じモル数のFSで置き換えたこと以外は、実施例4で使用した手順に従って実施した。
【0075】
実施例7は、FS量を変えて、実施例1と同じKPS/FS質量比を維持したこと以外は、実施例6で使用した手順に従って実施した。
【0076】
実施例8は、PEG-OHを同量のPEG-Xで置き換えたこと以外は、実施例3に記載の手順に従って実施した。
【0077】
実施例9は、PEG-OHを同量のPEG-Xで置き換えたこと以外は、実施例4に記載の手順に従って実施した。
【0078】
実施例10は、PEG-OHを同量のPEG-Xで置き換えたこと以外は、実施例5に記載の手順に従って実施した。
【0079】
これらの実験の操作条件及び特性を、表1に要約している。
【0080】
最初に、FSの代わりにPEG-OHを使用した。固形分を増やすために、異なるKPS/ポリマー質量比(1.5〜3.5)を調査した。比率が増加すると、実施例5を除き、SC及び粒径も増加する(実施例3〜4)。実際、3.5の比率では、ラテックスは安定ではない。一方、PEG-Xを用いて得られたラテックスは、全ての比率において安定である(実施例8〜10)。実施例6及び7では、PVDF粒子の安定化にポリマーを使用する利点を確認した。実際、同じモル数の安定化化学種(FS対PEG-OH)、及び同様のSC(実施例4及び6)について、PEG-OHを使用して得られたPVDFラテックスは、FSを用いて安定化されたものよりも小さい粒径を示す(234nm対396nm)。次に、別の実験(実施例7)でFS量を調整して、実施例1と同じKPS/FS質量比にした。FS量が多く、SCが高い(25.1%)ため、粒子がより小さい(34nm)ということにもかかわらず、ラテックスは24時間後に不安定になる。
【0081】
所与のKPS/ポリマー比では、粒径は、PEG-Xを用いると、体系的により小さくなる(例えば、比率2.5では、同様のSCでPEG-OHを用いると234nmであるのと比較してPEG-Xでは72nm)。PEG-OHを使用すると、VDF重合に伴う不可逆的なプロトン移動反応がPVDFラテックスの安定化に関与する。これらの不可逆的な反応は、PEG鎖に沿って発生している。PEG-Xポリマーを用いると、これらの移動反応はまだ作用しているが、PEG-Xの連鎖末端で作用する可逆的連鎖移動反応と競合する。これらの分解移動反応と、PEG-X上のジチオカーボネート(キサンテート)末端基の存在によって誘発される可逆的連鎖転移反応との競合が起こる。実際、PEG-Xを用いて得られたより小さな粒子は、重合プロセス中におけるキサンテートの強い影響を示す。
【0082】
次に、より短いPEG-OH及びPEG-X鎖を使用して2つの実験を実施した。
【0083】
実施例11は、M
n=750g mol
-1のPEG-OHを使用したこと以外は、実施例4に記載の手順に従って実施した。
【0084】
実施例12は、M
n=1050g mol
-1のPEG-Xを使用したこと以外は、実施例9に記載の手順に従って実施した。
【0085】
これらの実験の操作条件及び特性を、表2に要約している。
【0086】
【表2】
【0087】
粒径215nmの安定したラテックスを、PEG-OHを用いた4時間の重合後に、固形分9.9%で得た(実施例11)。市販のPEG-OHを用いた実験では、PEG-X(実施例12、62nm)よりも大きな粒径が得られる。両方の場合において、径は、約2000g mol
-1のモル質量のPEG-OH及びPEG-Xを用いて実施した実験において得られた径に近い(それぞれ、234nm-実施例4及び72nm-実施例9)。
【0088】
実施例13は、20.0mgのPEG-Xの代わりに7.5mgのPEG-Xを使用したこと以外は、実施例11に記載の手順に従って実施した。このように、同じモル数のPEG-Xを実施例9及び13で使用するため、同じ数のキサンテート連鎖末端が含まれる。しかし、より短い1050g mol
-1のPEG-Xに沿って不可逆的移動反応を受ける可能性のあるプロトンは、少なくなる。このことは、1050g mol
-1のPEG-Xを使用する場合に、より高い固形分が得られることによって実際に確認される。
【0089】
【表3】
【0090】
速度論的試験を、PEG-OH(実施例14、15、16及び4)とPEG-X(実施例17〜20)の両方を用いて実施した。
【0091】
実施例14〜16は、実施例4で使用した手順に従って実施した。
【0092】
実施例17〜20は、実施例9で使用したものと同じ手順に従って実施したが、23.0mgのPEG-Xを使用した。
【0093】
各実験について、PEG-XマクロRAFTを使用したVDFの重合の禁止期間を観察する(実施例17〜20)。VDFの消費量がより多く、したがってSCがより高いことによって示されるように、市販のPEG-OH(実施例14、15、16、及び4)を用いると、重合がより速くなる。更に、同じSCの場合PEG-Xを使用すると粒子が小さくなり、市販のPEGと比較して安定化に対するRAFT連鎖末端の明白な効果が確認される。例えば、SCが2.7%の場合、PEG-OHでは143.3nmの粒径が得られるが(実施例14)、SCが2.4%の場合、PEG-Xでは粒径は49.8nmである(実施例18)。
【0094】
【表4】
【0095】
実施例9(PEG-Xを使用して得られたPVDFラテックス)及び実施例4(PEG-OHを使用して得られたPVDFラテックス)について表面張力分析を実施した。(粒子の安定化に関与しないため、)両方の場合の遊離/非結合PEG鎖の量を定量化するために、さまざまな濃度のPEG(-X又は-OH)溶液の表面張力を測定することにより、検量線を確立した。実施例9の表面張力値は、62.5mN m
-1である。検量線によると、PEG-Xの初期量の0.4質量%のみが最終ラテックス中で遊離ポリマー鎖として存在する。実施例4のラテックスを使用して、同一手順に従った。得られた60.2mN m
-1の表面張力値は、PEG-OHの初期量の81.5質量%が、ラテックス中で遊離鎖として存在することを示している。このことは、PEG-OH鎖よりも多くのPEG-X鎖が粒子の安定化に関与していることを示している。
【0096】
3.1.実施例21〜26:官能性ポリマーの存在下におけるVDF乳化重合
市販のポリマーHO-PEG-OH(M
n=2050g mol
-1)又は二官能性X-PEG-XマクロRAFT剤(M
n=3400g mol
-1及びD=1.1)を、異なる実験条件を使用して安定剤として使用した。
【0097】
実施例21は、50.0mgのKPS、31.0mgの酢酸ナトリウム、20.0mgのHO-PEG-OHを使用する(最初の適用における実施例4に記載したものと同じ手順)。
【0098】
実施例22は、HO-PEG-OHをX-PEG-Xに置き換えたこと以外は、実施例21に記載の手順に従って実施した。
【0099】
実施例23は、X-PEG-X量を20mgの代わりに10.0mgに変えたこと以外は、実施例22に記載の手順に従って実施した。
【0100】
これらの実験の操作条件及び特性を、表5に要約している。
【0101】
最初に、PEG-OHの代わりにHO-PEG-OHを使用した(実施例21及び実施例4それぞれ)。HO-PEG-OH又はPEG-OHのいずれかの使用は、同様に粒子の安定化に影響を与える。実際、同じSC(実施例21では12%、実施例4では11.2%)の場合、同様の粒径が得られる(実施例21及び実施例4ではそれぞれ240nm対234nm)。PEGのタイプが何であっても、PVDF粒径は影響を受けない。
【0102】
次に、HO-PEG-OHをX-PEG-Xに置き換えて実験を実施した。異なる量のX-PEG-Xを調査した。1番目の実験(実施例22)は、HO-PEG-OH(実施例21)と比較して、VDF重合プロセスにおけるキサンテート連鎖末端の影響を調査するために実施する。X-PEG-Xの場合に、SCがより低い場合でも(8.5%対12.0%)、PEG-OH媒介エマルジョンとPEG-X媒介エマルジョンとを比較したときに(第1の適用における実施例4及び実施例9それぞれ)、得られた粒径についてのすでに観察された傾向は、ここでも有効である、すなわち、キサンテート官能基の存在下では粒径が大幅に小さく(72nm対240nm)、高分子界面活性剤としての二官能性マクロRAFTの効率を示している。
【0103】
2番目の実験(実施例23)は、PEG-X(実施例9)と同じ数のキサンテートを使用して実施するため、X-PEG-Xの量は2で除算する。より高いSC(14.1%対10.4%)が得られるが、粒径は非常に類似している(124nm対72nm)。
【0104】
【表5】
【0105】
実施例1〜7、11、14〜16、21、24及び25は、比較例である。
【0106】
次に、PVDFラテックスについて他の安定剤を調査した、すなわち、PEG-A(M
n=480g mol
-1)、P(PEG-A)(M
n=26000g mol
-1、D=4.6)、及びP(PEG-A)-X(M
n=5300g mol
-1、D=2.0)。1番目の化合物はモノマーであり、2番目はモノマーで合成されたポリマーであり、最後の化合物は活性連鎖末端としてキサンテートを有するマクロRAFTである。
【0107】
実施例24は、HO-PEG-OHをPEG-Aに置き換えたこと以外は、実施例21に記載の手順に従って実施した。
【0108】
実施例25は、PEG-AをP(PEG-A)に置き換えたこと以外は、実施例24に記載の手順に従って実施した。
【0109】
実施例26は、P(PEG-A)をP(PEG-A)-Xに置き換えたこと以外は、実施例25に記載の手順に従って実施した。
【0110】
これらの実験は、乳化重合におけるキサンテートの関与を調査するために段階的に実施した。全実験において、2.5のKPS/ポリマー質量比及び4時間の反応時間を選択した。基準としてモノマーPEG-Aを用いて、最初の実験を実施した。4.6%のSC及び39nmの粒径及び大きな粒径の多分散度を有するラテックスが得られた(実施例24、表6)。次に、PEG-Aの従来のラジカル重合を実施してP(PEG-A)を得て、次にそれをVDF乳化重合において使用した(実施例25)。PEG-Aと比較して同じ質量のP(PEG-A)の場合、VDFのより高い消費が観察され、このことによってより高いSC、すなわち96nmの粒径で13.5%のSCがもたらされる。
【0111】
最後に、キサンテートの存在下で実施したPEG-Aの制御ラジカル重合によりポリマーを合成し、P(PEG-A)-XマクロRAFTを製造した。次に、このマクロRAFTを、VDF乳化重合において使用した(実施例26)。反応は実施例25と比較して遅く、このことにより、SCがわずかに低くなった(10.7%)。しかし、SCが10.7%の場合(実施例26)、得られた粒径は、SCが13.5%の場合の96nm(実施例25)に対して、42nmであった。SCに関しては3.5%の違いしかないが、マクロRAFTを用いて得られる粒径は、P(PEG-A)を用いて安定化させたPVDFラテックスの粒径の2分の1である。ここでも、P(PEG-A)の高分子鎖の末端にX1が存在すると、粒子の安定性が向上する。P(PEG-A)-XマクロRAFTは、VDF重合プロセスに強い影響を与える。P(PEG-A)-Xは、PEG-A及びP(PEG-A)よりも優れた高分子界面活性剤である。
【0112】
【表6】