(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-535444(P2020-535444A)
(43)【公表日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】フェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20201106BHJP
G02F 1/365 20060101ALI20201106BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20201106BHJP
G02F 1/37 20060101ALI20201106BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20201106BHJP
【FI】
G01N21/64 E
G02F1/365
G02F1/01 D
G02F1/37
G01N21/65
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-537834(P2020-537834)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】CN2018108303
(87)【国際公開番号】WO2019062844
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】201710916860.3
(32)【優先日】2017年9月30日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520097319
【氏名又は名称】フェムトセカンド リサーチ センター カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FEMTOSECOND RESEARCH CENTER CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】徐 炳蔚
(72)【発明者】
【氏名】朱 欣
【テーマコード(参考)】
2G043
2K102
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043EA01
2G043EA03
2G043FA02
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2G043KA09
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2K102DA09
2K102DD02
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2K102EA02
2K102EA19
2K102EB01
2K102EB10
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
【課題】 フェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムを提供すること。
【解決手段】 フェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムは、近赤外波長帯生成装置を用いて中心波長が1010nm〜1100nm、スペクトル幅が25nm未満の近赤外波長帯パルスを提供し、前記近赤外波長帯パルスは強い非線形性を持つ光学媒体を励起して、超広幅なスペクトルのフェムト秒レーザーパルスを生成でき、パルス測定・圧縮制御モジュールを通じて測定すると共に組織サンプルに到達するフェムト秒レーザーパルスの累積分散を補償し、「タイムストレッチ」効果を最小限に抑えて得られた最短パルスは組織サンプルと相互作用して様々な異なるモーダルのスペクトル信号を生成し、したがって様々な非線形分子イメージングモーダルを提供できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムであって、スーパーコンティニウム生成モジュールと、パルス測定・圧縮制御モジュールと、光学顕微鏡モジュールと、を含み;
前記スーパーコンティニウム生成モジュールは、近赤外波長帯生成装置と、強い非線形性をもつ光学媒体と、を含み、前記近赤外波長帯生成装置が近赤外波長帯パルスを提供するために用いられ、前記強い非線形性をもつ光学媒体が前記近赤外波長帯パルスによって励起してフェムト秒レーザーパルスを生成するために用いられ;前記近赤外波長帯パルスの中心波長は、1010nm〜1100nmで、スペクトル幅が25nm未満であり;
前記パルス測定・圧縮制御モジュールは、第1光学素子と、測定モジュールと、を含み、前記第1光学素子が前記フェムト秒レーザーパルスを受け取るために用いられ、前記測定モジュールがシステム光路中の分散を測定し、測定結果に基づき第1光学素子パラメータを調整して前記フェムト秒レーザーパルスに対して分散補償を実行して、圧縮フェムト秒レーザーパルスを得るために用いられ;
前記光学顕微鏡モジュールは、第2光学素子と、サンプルステージと、第1信号収集装置と、を含み、前記圧縮フェムト秒レーザーパルスが前記第2光学素子を通過して前記サンプルステージに到達し、サンプルステージ上の組織サンプルと相互作用した後でマルチモーダル信号を生成し、前記第1信号収集装置が前記マルチモーダル信号を収集するために用いられる
ことを特徴とするフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項2】
前記近赤外波長帯生成装置は、イッテルビウム添加光ファイバレーザー又はパルスレーザーであり、前記近赤外波長帯生成装置のパルス幅が1500フェムト秒未満であり;
前記強い非線形性をもつ光学媒体によって生成されるフェムト秒レーザーパルスのスペクトル範囲は、750nm〜1300nmであり;
前記強い非線形性をもつ光学媒体は、複屈折フォトニック結晶ファイバであり、前記複屈折フォトニック結晶ファイバの長さが45mmを超え、少なくとも5×10−6の複屈折率を有し、かつ透過波長帯域で正分散をもつ
請求項1に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項3】
前記第1光学素子は、能動適応光学部品を含むパルス整形器であり、前記パルス整形器が順に設けられた第1格子と、第1凸レンズと、液晶空間光変調器と、第2凸レンズと、第2格子と、を含み、前記第1格子が前記第1凸レンズの焦點位置に位置し、前記第1凸レンズと前記液晶空間光変調器との間の距離が1つの焦点距離であり、前記液晶空間光変調器と前記第2凸レンズとの間の距離が1つの焦点距離であり、前記第2凸レンズと前記第2格子との間の距離が1つの焦点距離である
請求項1に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項4】
前記第1光学素子は、能動適応光学部品を含むパルス整形器であり、前記パルス整形器が順に設けられた第1格子と、第1凸レンズと、液晶空間光変調器と、第2凸レンズと、第2格子と、を含み、前記第1格子が前記第1凸レンズの焦點位置に位置し、前記第1凸レンズと前記液晶空間光変調器との間の距離が1つの焦点距離であり、前記液晶空間光変調器と前記第2凸レンズとの間の距離が1つの焦点距離であり、前記第2凸レンズと前記第2格子との間の距離が1つの焦点距離である
請求項2に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項5】
前記測定モジュールは、制御装置と、第2信号収集装置と、前記サンプルステージに設けられた非線形結晶と、を含み;
前記フェムト秒レーザーパルスは、前記パルス測定・圧縮制御モジュール及び光学顕微鏡モジュールによって前記非線形結晶に集束して非線形スペクトルを生成し、前記第2信号収集装置が非線形スペクトル信号を収集して前記制御装置に送信するために用いられ;
前記制御装置は、前記液晶空間光変調器のパラメータを制御して既知の基準スペクトル位相関数を導入し、前記既知の基準スペクトル位相関数を変更することにより、システムの光路の分散関数を測定し、前記分散関数に基づいて前記液晶空間光変調器のパラメータを調整して前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられる
請求項3に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項6】
前記測定モジュールは、制御装置と、第2信号収集装置と、前記サンプルステージに設けられた非線形結晶と、を含み;
前記フェムト秒レーザーパルスは、前記パルス測定・圧縮制御モジュール及び光学顕微鏡モジュールによって前記非線形結晶に集束して非線形スペクトルを生成し、前記第2信号収集装置が非線形スペクトル信号を収集して前記制御装置に送信するために用いられ;
前記制御装置は、前記液晶空間光変調器のパラメータを制御して既知の基準スペクトル位相関数を導入し、前記既知の基準スペクトル位相関数を変更することにより、システムの光路の分散関数を測定し、前記分散関数に基づいて前記液晶空間光変調器のパラメータを調整して前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられる
請求項4に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項7】
前記非線形結晶は、BBO結晶或いはKDP結晶であり、前記非線形結晶の厚さが10μm〜300μmである
請求項5に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項8】
前記非線形結晶は、BBO結晶或いはKDP結晶であり、前記非線形結晶の厚さが10μm〜300μmである
請求項6に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項9】
前記既知の基準スペクトル位相関数には、放物線関数と正弦関数が含まれ;前記非線形スペクトルは、2次高調波であり;
前記制御装置も、前記既知の基準スペクトル位相関数が変更されるたびに前記2次高調波の最大値解析を行い、被測定分散の2次導関数を得、前記2次導関数に対し2次積分を行い、前記システムの光路の分散関数を得るために用いられる
請求項5に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項10】
前記既知の基準スペクトル位相関数には、放物線関数と正弦関数が含まれ;前記非線形スペクトルは、2次高調波であり;
前記制御装置も、前記既知の基準スペクトル位相関数が変更されるたびに前記2次高調波の最大値解析を行い、被測定分散の2次導関数を得、前記2次導関数に対し2次積分を行い、前記システムの光路の分散関数を得るために用いられる
請求項6に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項11】
前記制御装置も、前記パルス整形器のパラメータを変更して前記分散関数の負の関数を導入し、前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられ;
前記制御装置も、前記フェムト秒レーザーパルスがフーリエ変換限界に近づいたかどうかを判断し、近くなければ分散関数を再度測定するために用いられる
請求項9に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項12】
前記制御装置も、前記パルス整形器のパラメータを変更して前記分散関数の負の関数を導入し、前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられ;
前記制御装置も、前記フェムト秒レーザーパルスがフーリエ変換限界に近づいたかどうかを判断し、近くなければ分散関数を再度測定するために用いられる
請求項10に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項13】
前記第1光学素子は、光受動部品であり、各前記光受動部品の間の相対距離と相対角度を調整し、前記既知の基準スペクトル位相関数を導入し、前記システムの光路の分散関数を測定し、前記分散関数に基づき各前記光受動部品の間の相対距離と相対角度を調整することによって、前記フェムト秒レーザーパルスに対して分散補償を行う
請求項1に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項14】
前記第2光学素子は、第1反射鏡と、走査検流計モジュールと、第2反射鏡と、ダイクロイックミラーと、光学顕微鏡対物レンズと、複数のレンズフィルターとを含み;
前記第1信号収集装置は、前記複数のレンズフィルターに対応する複数の光検出器を含み、前記複数の光検出器が前記制御装置に接続され;
前記圧縮フェムト秒レーザーパルスは、前記第1反射鏡を経由して前記走査検流計モジュールに入り、前記第2反射鏡、前記ダイクロイックミラー及び前記光学顕微鏡対物レンズを順に通過して、前記サンプルステージに集束し;
前記圧縮フェムト秒レーザーパルスは、前記サンプルステージ上の前記組織サンプルと相互作用してマルチモーダル信号を生成し、前記マルチモーダル信号が前記ダイクロイックミラーによって前記複数のレンズフィルターに反射して分離し、前記複数の光検出器に収集された後、前記制御装置に送信される
請求項5に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【請求項15】
前記マルチモーダル信号は、スペクトル範囲が570nm〜630nmの2次高調波信号と、スペクトル範囲が343nm〜405nmの3次高調波信号と、スペクトル範囲が510nm〜565nmの二光子蛍光スペクトル信号と、スペクトル範囲が410nm〜490nmの三光子蛍光スペクトル信号と、スペクトル範囲が640nm〜723nmの非線形ラマン信号と、を含み;
前記2次高調波信号は、前記組織サンプル中のコレステロールを識別するために用いられ;前記3次高調波信号は、前記組織サンプル中の細胞質、メラニン及び腫瘍によって生じる細胞間小胞を識別するために用いられ;前記二光子蛍光スペクトル信号は、エラスチン、フラビンアデニンジヌクレオチド及び基底膜を識別するために用いられ;前記三光子蛍光スペクトル信号は、前記組織サンプル中の還元補酵素の分布を識別するために用いられ;前記非線形ラマン信号は、脂質化合物及び血球を識別するために用いられ;
前記2次高調波信号、前記3次高調波信号及び前記非線形ラマン信号の重ね合わせは、コラーゲン線維ネットワークとミオシンを識別するために用いられ;前記非線形ラマン信号と前記2次高調波信号の重ね合わせは、DNA、血管及びリンパ管を識別するために用いられる
請求項14に記載のフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェムト秒レーザー設備技術分野に関し、特に、フェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスーパーコンティニウム生成方法では、50フェムト秒の低出力パルス(パルスエネルギーは3nJ未満)を使用して長さが10mm未満のフォトニック結晶ファイバを励起し、同時に使用するフォトニック結晶ファイバのゼロ分散波長が生成されたスーパーコンティニウム範囲内にあることを確保し、例えば600〜900nmのスーパーコンティニウムを生成するには、フォトニック結晶ファイバのゼロ分散波長が600〜900nmの範囲内にある必要があるが、この方法で生成されたスーパーコンティニウムの光パルスが低く、出力も低く、光路の安定性が悪くなり、全ての非線形分子イメージングモーダルを励起できない。また、フェムト秒レーザーパルスが光路を通過する時、「タイムストレッチ」効果が生じ、すなわち光路中の分散、特に2次以上の高次分散の存在により、時間軸でのフェムト秒パルス幅は光路の伝搬とともに増加すると、フェムト秒パルスのピーク出力が大幅に低下するため、パルスとサンプルとの間の非線形効果が弱まるか、さらには消失していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記従来技術のスーパーコンティニウム生成方法で生成されたフェムト秒レーザーパルスの平均出力が低く、分散によって引き起こされるフェムト秒パルスピーク出力低下等の問題について、出力が大きいフェムト秒パルスを提供し、分散の影響を効果的に除去できるフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
フェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムであって、スーパーコンティニウム生成モジュールと、パルス測定・圧縮制御モジュールと、光学顕微鏡モジュールと、を含み;
前記スーパーコンティニウム生成モジュールは、近赤外波長帯生成装置と、強い非線形性を持つ光学媒体と、を含み、前記近赤外波長帯生成装置が近赤外波長帯パルスを提供するために用いられ、前記強い非線形性を持つ光学媒体が前記近赤外波長帯パルスによって励起してフェムト秒レーザーパルスを生成するために用いられ;前記近赤外波長帯パルスの中心波長は、1010nm〜1100nmで、スペクトル幅が25nm未満であり;
前記パルス測定・圧縮制御モジュールは、第1光学素子と、測定モジュールと、を含み、前記第1光学素子が前記フェムト秒レーザーパルスを受け取るために用いられ、前記測定モジュールがシステム光路中の分散を測定し、測定結果に基づき第1光学素子パラメータを調整して前記フェムト秒レーザーパルスに対して分散補償を実行して、圧縮フェムト秒レーザーパルスを得るために用いられ;
前記光学顕微鏡モジュールは、第2光学素子と、サンプルステージと、第1信号収集装置と、を含み、前記圧縮フェムト秒レーザーパルスが前記第2光学素子を通過して前記サンプルステージに到達し、サンプルステージ上の組織サンプルと相互作用した後でマルチモーダル信号を生成し、前記第1信号収集装置が前記マルチモーダル信号を収集するために用いられる。
【0005】
さらに、前記近赤外波長帯生成装置は、イッテルビウム添加光ファイバレーザー又はパルスレーザーであり、前記近赤外波長帯生成装置のパルス幅が1500フェムト秒未満であり;
前記強い非線形性を持つ光学媒体によって生成されるフェムト秒レーザーパルスのスペクトル範囲は、750nm〜1300nmであり;
前記強い非線形性を持つ光学媒体は、複屈折フォトニック結晶ファイバであり、前記複屈折フォトニック結晶ファイバの長さが45mmを超え、少なくとも5×10
−6の複屈折率を有し、かつ透過波長帯域で正分散を持つ。
【0006】
さらに、前記第1光学素子は、能動適応光学部品を含むパルス整形器であり、前記パルス整形器が順に設けられた第1格子と、第1凸レンズと、液晶空間光変調器と、第2凸レンズと、第2格子と、を含み、前記第1格子が前記第1凸レンズの焦點位置に位置し、前記第1凸レンズと前記液晶空間光変調器との間の距離が1つの焦点距離であり、前記液晶空間光変調器と前記第2凸レンズとの間の距離が1つの焦点距離であり、前記第2凸レンズと前記第2格子との間の距離が1つの焦点距離である。
【0007】
さらに、前記測定モジュールは、制御装置と、第2信号収集装置と、前記サンプルステージに設けられた非線形結晶と、を含み;
前記フェムト秒レーザーパルスは、前記パルス測定・圧縮制御モジュール及び光学顕微鏡モジュールによって前記非線形結晶に集束して非線形スペクトルを生成し、前記第2信号収集装置が非線形スペクトル信号を収集して前記制御装置に送信するために用いられ;
前記制御装置は、前記液晶空間光変調器のパラメータを制御して既知の基準スペクトル位相関数を導入し、前記既知の基準スペクトル位相関数を変更することにより、システムの光路の分散関数を測定し、前記分散関数に基づいて前記液晶空間光変調器のパラメータを調整して前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられる。
【0008】
さらに、前記非線形結晶は、BBO結晶或いはKDP結晶であり、前記非線形結晶の厚さが10μm〜300μmである。
【0009】
さらに、前記既知の基準スペクトル位相関数には、放物線関数と正弦関数が含まれ;前記非線形スペクトルは、2次高調波であり;
前記制御装置も、前記既知の基準スペクトル位相関数が変更されるたびに前記2次高調波の最大値解析を行い、被測定分散の2次導関数を得、前記2次導関数に対し2次積分を行い、システムの光路の分散関数を得るために用いられる。
【0010】
さらに、前記制御装置も、前記パルス整形器のパラメータを変更して前記分散関数の負の関数を導入し、前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられ;
前記制御装置も、前記フェムト秒レーザーパルスがフーリエ変換限界に近づいたかどうかを判断し、近くなければ分散関数を再度測定するために用いられる。
【0011】
さらに、前記第1光学素子は、光受動部品であり、各光受動部品の間の相対距離と相対角度を調整し、既知の基準スペクトル位相関数を導入し、システムの光路の分散関数を測定し、前記分散関数に基づき各光受動部品の間の相対距離と相対角度を調整することによって、前記フェムト秒レーザーパルスに対して分散補償を行う。
【0012】
さらに、前記第2光学素子は、第1反射鏡と、走査検流計モジュールと、第2反射鏡と、ダイクロイックミラーと、光学顕微鏡対物レンズと、複数のレンズフィルターとを含み;
前記第1信号収集装置は、前記複数のレンズフィルターに対応する複数の光検出器を含み、前記複数の光検出器が前記制御装置に接続され;
前記圧縮フェムト秒レーザーパルスは、前記第1反射鏡を経由して前記走査検流計モジュールに入り、前記第2反射鏡、ダイクロイックミラー及び光学顕微鏡対物レンズを順に通過して、前記サンプルステージに集束し;
前記圧縮フェムト秒レーザーパルスは、前記サンプルステージ上の組織サンプルと相互作用してマルチモーダル信号を生成し、前記マルチモーダル信号が前記ダイクロイックミラーによって前記複数のレンズフィルターに反射して分離し、前記複数の光検出器に収集された後、前記制御装置に送信される。
【0013】
さらに、前記マルチモーダル信号は、スペクトル範囲が570nm〜630nmの2次高調波信号と、スペクトル範囲が343nm〜405nmの3次高調波信号と、スペクトル範囲が510nm〜565nmの二光子蛍光スペクトル信号と、スペクトル範囲が410nm〜490nmの三光子蛍光スペクトル信号と、スペクトル範囲が640nm〜723nmの非線形ラマン信号と、を含み;
前記2次高調波信号は、組織サンプル中のコレステロールを識別するために用いられ;前記3次高調波信号は、組織サンプル中の細胞質、メラニン及び腫瘍によって生じる細胞間小胞を識別するために用いられ;前記二光子蛍光スペクトル信号は、エラスチン、フラビンアデニンジヌクレオチド及び基底膜を識別するために用いられ;前記三光子蛍光スペクトル信号は、組織サンプル中の還元補酵素の分布を識別するために用いられ;前記非線形ラマン信号は、脂質化合物及び血球を識別するために用いられ;
前記2次高調波信号、3次高調波信号及び非線形ラマン信号の重ね合わせは、コラーゲン線維ネットワークとミオシンを識別するために用いられ;前記非線形ラマン信号と前記2次高調波信号の重ね合わせは、DNA、血管及びリンパ管を識別するために用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により提案されるフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムは、少なくとも次の有利な効果を含む。
(1)近赤外波長帯生成装置を用いて中心波長が1010nm〜1100nm、スペクトル幅が25nm未満の近赤外波長帯パルスを提供し、前記近赤外波長帯パルスは強い非線形性を持つ光学媒体を励起して、超広幅なスペクトルのフェムト秒レーザーパルスを生成でき、パルス測定・圧縮制御モジュールを通じて測定すると共に組織サンプルに到達するフェムト秒レーザーパルスの累積分散を補償し、「タイムストレッチ」効果を最小限に抑えて得られた最短パルスは組織サンプルと相互作用して様々な異なるモーダルのスペクトル信号を生成し、したがって様々な非線形分子イメージングモーダルを提供でき;
(2)用いられる複屈折フォトニック結晶ファイバは、生成されたフェムト秒レーザーパルスのスペクトル範囲にゼロ分散波長が存在せず、高い光透過効率を持ち、500ミリワットを超えるフェムト秒レーザーパルスを生成でき、同時に良好な分極率を持ち、入射光の分極率、出力、入射角を最適化することにより、生成されたフェムト秒レーザーパルススペクトルを調整することもでき;
(3)能動適応光学部品を用いて、分散関数を測定した後、その分散関数の負の関数をシステムの光路に導入することで、システムの分散を打ち消すことができ、生成された圧縮フェムト秒レーザーパルスがサンプルの位置に到達した時の分散が0又は0に近づき、フーリエ変換限界パルスを得、サンプルの位置でのパルスピーク出力が最大化され、したがって組織サンプルの異なる分子の非線形信号の生成効率を最大限に高め、SN比を向上し;
(4)能動適応光学部品を用いて、フーリエ変換限界パルスを得るベース上で、さらに特定の非線形信号のスペクトル強度及びスペクトル位相の最適化を行うことで、選択的な励起を実現し、マルチモーダル信号の特異度を高めることができ;
(5)広範囲のマルチモーダル信号を生成でき、マルチモーダル信号は、組織サンプル中の複数の成分を識別でき、フェムト秒レーザーイメージングシステムの識別の多様性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例に係るフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムの構造を示す模式図
【
図2】本発明の一実施例に係るフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム内のパルス測定・圧縮制御モジュールの構造を示す模式図
【
図3】本発明の一実施例に係るフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム内の分散測定及び補償方法のフローチャート
【
図4】本発明の一実施例に係るフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステム内の光学顕微鏡モジュールの構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的、技術的手段及び効果をより明確かつ具体的にするために、添付図面を基に実施例を参照しつつ、本発明を以下でさらに詳細に説明する。本明細書に描写される具体的実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定することを意図するものではない。
【0017】
図1を参照すると、本実施例によって提案されるフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムは、スーパーコンティニウム生成モジュール101と、パルス測定・圧縮制御モジュール102と、光学顕微鏡モジュール103と、を含み;
前記スーパーコンティニウム生成モジュール101は、近赤外波長帯生成装置1011と、強い非線形性を持つ光学媒体1012と、を含み、近赤外波長帯生成装置1011が近赤外波長帯パルスを提供するために用いられ、強い非線形性を持つ光学媒体1012が前記近赤外波長帯パルスによって励起してフェムト秒レーザーパルスを生成するために用いられ;前記近赤外波長帯パルスの中心波長は、1010nm〜1100nmで、スペクトル幅が25nm未満であり;
パルス測定・圧縮制御モジュール102は、第1光学素子1021と、測定モジュール1022と、を含み、第1光学素子1021がフェムト秒レーザーパルスを受け取るために用いられ、測定モジュール1022がシステム光路中の分散を測定し、測定結果に基づき第1光学素子パラメータ1021を調整してフェムト秒レーザーパルスに対して分散補償を実行して、圧縮フェムト秒レーザーパルスを得るために用いられ;
光学顕微鏡モジュール103は、第2光学素子1031と、サンプルステージ1032と、第1信号収集装置1033と、を含み、圧縮フェムト秒レーザーパルスが第2光学素子1031を通過してサンプルステージ1032に到達し、サンプルステージ1032上の組織サンプルと相互作用した後でマルチモーダル信号を生成し、第1信号収集装置1033が前記マルチモーダル信号を収集するために用いられる。
【0018】
本実施例により提案されるフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムは、近赤外波長帯生成装置を用いて中心波長が1010nm〜1100nm、スペクトル幅が25nm未満の近赤外波長帯パルスを提供し、前記近赤外波長帯パルスは強い非線形性を持つ光学媒体を励起して、超広幅なスペクトルのフェムト秒レーザーパルスを生成でき、パルス測定・圧縮制御モジュールを通じて測定すると共に組織サンプルに到達するフェムト秒レーザーパルスの蓄積分散を補償し、「タイムストレッチ」効果を最小限に抑えて得られた最短パルスは組織サンプルと相互作用して様々な異なるモーダルのスペクトル信号を生成し、したがって様々な非線形分子イメージングモーダルを提供できる。
【0019】
好ましい実施形態として、近赤外波長帯生成装置は、イッテルビウム添加光ファイバレーザー又は所望の波長、スペクトル幅及びパルス幅を生成できる他のパルスレーザーであり、商用レーザーや全正常分散イッテルビウム添加光ファイバレーザーアーキテクチャを用いたパルスレーザーであり得る。全正常分散イッテルビウム添加光ファイバレーザーアーキテクチャを用いた場合、全光ファイバアーキテクチャ又は光ファイバとオープン式光部品のハイブリッドアーキテクチャであってもよい。
【0020】
近赤外波長帯生成装置のパルス幅が1500フェムト秒未満であり;強い非線形性を持つ光学媒体によって生成されるフェムト秒レーザーパルスのスペクトル範囲は、750nm〜1300nmであり;好ましい実施形態として、強い非線形性を持つ光学媒体は、複屈折フォトニック結晶ファイバであり、前記複屈折フォトニック結晶ファイバの長さが45mmを超え、少なくとも5×10
−6の複屈折率を有し、かつ透過波長帯域で正分散を持ち、分極率が15:1を上回る。
【0021】
本実施例で用いられる複屈折フォトニック結晶ファイバは、生成されたフェムト秒レーザーパルスのスペクトル範囲にゼロ分散波長が存在せず、高い光透過効率を持ち、500ミリワットを超えるフェムト秒レーザーパルスを生成でき、同時に良好な分極率を持ち、入射光の分極率、出力、入射角を最適化することにより、生成されたフェムト秒レーザーパルススペクトルを調整することもできる。
【0022】
さらに、
図2を参照すると、好ましい実施形態として、第1光学素子1021は、能動適応光学部品を含むパルス整形器であり、パルス整形器が順に設けられた第1格子G1と、第1凸レンズL1と、液晶空間光変調器SLMと、第2凸レンズL2と、第2格子G2と、を含み、第1格子G1が第1凸レンズL1の焦點位置に位置し、第1凸レンズL1と液晶空間光変調器SLMとの間の距離が1つの焦点距離であり、液晶空間光変調器SLMと前記第2凸レンズL2との間の距離が1つの焦点距離であり、第2凸レンズL2と第2格子G2との間の距離が1つの焦点距離である。
【0023】
具体的には、スーパーコンティニウム生成モジュール101によって生成されたフェムト秒レーザーパルスは、複数のスペクトル波長を含み、第1格子G1を通過した後、スペクトルが空間で散乱し、第1凸レンズによって集束された後、全てのスペクトル波長が凸レンズの他側の1つの焦点距離位置で均一な分布が形成され、フェムト秒レーザーパルスの時間領域から周波数領域へのフーリエ変換を完了し、この平面がフーリエ面とも呼ばれ、液晶空間光変調器SLMが前記フーリエ面に位置する。フーリエ面の後の光路と光学部品は、前の光路の鏡像であり、全てのスペクトル波長がさらに第2凸レンズ及び第2格子を通過した後に再結合され、パルスの周波数領域から時間領域への変換を完了する。液晶空間光変調器SLMの液晶は、スペクトル波長と一対一に対応し、液晶空間光変調器SLMが対応する異なるスペクトル波長の異なるピクセルの屈折率を制御することにより、異なる波長間の相対的なスペクトル位相を制御する目的を達成できる。
【0024】
能動適応光学部品には、液晶空間光変調器、音響光学結晶、可変形反射鏡などが含まれるものとするが、これらに限定されない。
【0025】
さらに、測定モジュール1022は、制御装置1023と、第2信号収集装置1024と、サンプルステージに設けられた非線形結晶1025と、を含み;
フェムト秒レーザーパルスは、パルス測定・圧縮制御モジュール102及び光学顕微鏡モジュール103によって非線形結晶1025に集束して非線形スペクトルを生成し、第2信号収集装置1024が非線形スペクトル信号を収集して制御装置1023に送信するために用いられ;
制御装置1023は、液晶空間光変調器のパラメータを制御して既知の基準スペクトル位相関数を導入し、前記既知の基準スペクトル位相関数を変更することにより、システムの光路の分散関数を測定し、前記分散関数に基づいて前記液晶空間光変調器のパラメータを調整して前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられる。
【0026】
具体的には、液晶空間光変調器の各ピクセルの屈折率を調整して、フェムト秒レーザーパルスの各波長の位相を制御せきる。
【0027】
好ましい実施形態として、非線形結晶は、BBO結晶或いはKDP結晶であり、非線形結晶の厚さが10μm〜300μmである。この厚さ範囲内で、レーザースペクトル範囲全体において位相マッチ条件を満たすことを効果的に保証できる。
【0028】
具体的には、システムの分散を測定する時、液晶空間光変調器パラメータを変更することにより、システムに1個或いは一連の既知の基準スペクトル位相関数(例えば放物線関数、正弦関数など)を導入し、各異なる既知の基準スペクトル位相関数はシステムの全スペクトル位相の変化を引き起こすことで、フェムト秒レーザーパルスの非線形表現の変化を引き起こす。この時、パルス測定・圧縮制御モジュールの後の任意位置に非線形結晶を配置して、生成された非線形スペクトル信号を収集すると、その位置に蓄積された総分散量を測定できる。
【0029】
好ましい実施形態として、前記既知の基準スペクトル位相関数には、放物線関数と正弦関数が含まれるが、これらに限定されず;前記非線形スペクトルには2次高調波が含まれるが、これに限定されず;
制御装置も、前記既知の基準スペクトル位相関数が変更されるたびに前記2次高調波の最大値解析を行い、被測定分散の2次導関数を得、前記2次導関数に対し2次積分を行い、システムの光路の分散関数を得るために用いられる。
【0030】
具体的には、
図3を参照すると、フェムト秒レーザーパルスが非線形結晶に到達すると、2次高調波信号が生成され、第2信号収集装置によって収集された後制御装置に送信される。既知の基準スペクトル位相関数が変更されるたびに、1つの2次高調波の非線形スペクトルを測定でき、既知の基準スペクトル位相関数を複数回変更した後、制御装置はX軸として波長又は周波数、Y軸として基準位相関数、Z軸として信号強度を持つ3次元グラフを収集し、次元グラフの最大値解析を通じてシステムの被測定分散の2次導関数を直接測定でき、得られた2次導関数を2回積分した後、サンプルの位置でフェムト秒レーザーパルスによって蓄積された総分散量、すなわち、システムの光路の分散関数を算出できる。
【0031】
さらに、分散関数を測定した後、前記制御装置も、前記パルス整形器のパラメータを変更して前記分散関数の負の関数を導入し、前記フェムト秒レーザーパルスの各波長のスペクトル位相を制御することで、分散を打ち消すために用いられ;
具体的には、制御装置は分散関数の負の関数を取り、空間光調製器に導入して各ピクセルの屈折率を調整してフェムト秒レーザーパルスの各波長の位相を制御する。
【0032】
前記制御装置も、前記フェムト秒レーザーパルスがフーリエ変換限界に近づいたかどうかを判断し、近くなければ分散関数を再度測定するために用いられる。
【0033】
分散を打ち消した後のフェムト秒レーザーパルスの総分散量は、0又は0に近づく場合、フェムト秒レーザーパルスを圧縮する。
【0034】
具体的に、スーパーコンティニウム生成モジュール101によって生成されるフェムト秒レーザーパルスは、次式(1)のように表現される。
【0036】
式中、E(t)は、時間領域でのフェムト秒パルスの表現、E(ω)はスペクトル強度項、e
−iωtは位相項、tは時間、wは周波数、q(ω)は生成されたフェムト秒パルスの初期分散である。
【0040】
フェムト秒レーザーパルスは、第1光学素子及び光学顕微鏡モジュールを通過した後、サンプル位置上の非線形結晶に到達して2次高調波を生成し、被測定分散関数が
(フェムト秒レーザーパルスの初期分散、パルス測定・圧縮制御モジュール及び光学顕微鏡モジュールによって導入された分散、及び制御装置によって導入された位相を含む)であり、導入された既知の基準スペクトル位相関数が
であり、非線形結晶でのフェムト秒レーザーパルスのスペクトル位相
が二者の和である。
【0041】
2次高調波の数式は、次式で表わされる。
【数4】
【0042】
2次高調波の数式は、次式で表わされる。
【0047】
能動適応光学部品を用いて、分散関数を測定した後、その分散関数の負の関数をシステムの光路に導入することで、システムの分散を打ち消すことができ、生成された圧縮フェムト秒レーザーパルスがサンプルの位置に到達した時の分散が0又は0に近づき、フーリエ変換限界パルスを得、サンプルの位置でのパルスピーク出力が最大化され、したがって組織サンプルの異なる分子の非線形信号の生成効率を最大限に高め、SN比を向上する。
【0048】
また、能動適応光学部品を用いて、フーリエ変換限界パルスを得るベース上で、さらに特定の非線形信号のスペクトル強度及びスペクトル位相の最適化を行うことで、選択的な励起を実現し、マルチモーダル信号の特異度を高めることができる。
【0049】
代替的実施形態として、第1光学素子は、光受動部品であり、格子ペア、プリズムペア、プリズム格子などの一連の2次分散スペクトル位相関数の光受動部品を含むがこれらに限定されず、各光受動部品の間の相対距離と相対角度を調整し、既知の基準スペクトル位相関数を導入し、システムの光路の分散関数を測定し、サンプル位置でのパルスの総分散量の測定を完了し、各光受動部品の間の相対距離と相対角度を調整することによって、前記フェムト秒レーザーパルスに対して分散補償を行う。
【0050】
光受動部品を用いると、線形フィッティングを通じて測定されたシステム分散関数から2次及び3次の分散データを抽出し、次に機器を手動或いは自動で制御して各部品間の距離と相対角度を調整し、したがって2次及び3次の分散を最大限の打ち消し、パルスをサンプル位置で可能な限りフーリエ変換限界に近づけ、SN比を最適化できる。
【0051】
図4を参照すると、第2光学素子は、第1反射鏡M1と、走査検流計モジュールGと、第2反射鏡M2と、ダイクロイックミラーDMと、光学顕微鏡対物レンズOと、複数のレンズフィルターF1−F(n−1)とを含み;
第1信号収集装置は、複数のレンズフィルターに対応する複数の光検出器PMT1−PMT(n−1)を含み、複数の光検出器が前記制御装置に接続され;
圧縮フェムト秒レーザーパルスは、第1反射鏡M1を経由して走査検流計モジュールGに入り、第2反射鏡M2、ダイクロイックミラーDM及び光学顕微鏡対物レンズOを順に通過して、サンプルステージ1032に集束する。
【0052】
走査検流計モジュールGは、X軸検流計GMxと、Y軸検流計GMyと、を含み、走査検流計モジュールを制御してXY軸の走査を行い、光学ステージ圧電スキャナー或いは光学顕微鏡を制御してZ軸走査掃し、組織サンプルが準備作業を必要とせずに、サンプルステージに直接置く。
【0053】
圧縮フェムト秒レーザーパルスは、前記サンプルステージ上の組織サンプルと相互作用してマルチモーダル信号を生成し、前記マルチモーダル信号が前記ダイクロイックミラーによって前記複数のレンズフィルターに反射して分離し、前記複数の光検出器に収集された後、制御装置に送信される。
【0054】
制御装置は、マルチモーダル信号を分析する。
【0055】
さらに、マルチモーダル信号は、スペクトル範囲が570nm〜630nmの2次高調波信号と、スペクトル範囲が343nm〜405nmの3次高調波信号と、スペクトル範囲が510nm〜565nmの二光子蛍光スペクトル信号と、スペクトル範囲が410nm〜490nmの三光子蛍光スペクトル信号と、スペクトル範囲が640nm〜723nmの非線形ラマン信号と、を含み;
前記2次高調波信号は、組織サンプル中のコレステロールを識別するために用いられ;前記3次高調波信号は、組織サンプル中の細胞質、メラニン及び腫瘍によって生じる細胞間小胞を識別するために用いられ;前記二光子蛍光スペクトル信号は、エラスチン、フラビンアデニンジヌクレオチド及び基底膜を識別するために用いられ;前記三光子蛍光スペクトル信号は、組織サンプル中の還元補酵素の分布を識別するために用いられ;前記非線形ラマン信号は、脂質化合物及び血球を識別するために用いられ;
2次高調波信号、3次高調波信号及び非線形ラマン信号の重ね合わせは、コラーゲン線維ネットワークとミオシンを識別するために用いられ;前記非線形ラマン信号と前記2次高調波信号の重ね合わせは、DNA、血管及びリンパ管を識別するために用いられる。
【0056】
本実施例により提案されるフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムは、広範囲のマルチモーダル信号を生成でき、マルチモーダル信号は、組織サンプル中の複数の成分を識別でき、フェムト秒レーザーイメージングシステムの識別の多様性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上記をまとめると、本実施例により提案されるフェムト秒レーザーマルチモーダル分子イメージングシステムは、少なくとも次の有利な効果を含みむ。
(1)近赤外波長帯生成装置を用いて中心波長が1010nm〜1100nm、スペクトル幅が25nm未満の近赤外波長帯パルスを提供し、前記近赤外波長帯パルスは強い非線形性を持つ光学媒体を励起して、超広幅なスペクトルのフェムト秒レーザーパルスを生成でき、パルス測定・圧縮制御モジュールを通じて測定すると共に組織サンプルに到達するフェムト秒レーザーパルスの累積分散を補償し、「タイムストレッチ」効果を最小限に抑えて得られた最短パルスは組織サンプルと相互作用して様々な異なるモーダルのスペクトル信号を生成し、したがって様々な非線形分子イメージングモーダルを提供でき;
(2)用いられる複屈折フォトニック結晶ファイバは、生成されたフェムト秒レーザーパルスのスペクトル範囲にゼロ分散波長が存在せず、高い光透過効率を持ち、500ミリワットを超えるフェムト秒レーザーパルスを生成でき、同時に良好な分極率を持ち、入射光の分極率、出力、入射角を最適化することにより、生成されたフェムト秒レーザーパルススペクトルを調整することもでき;
(3)能動適応光学部品を用いて、分散関数を測定した後、その分散関数の負の関数をシステムの光路に導入することで、システムの分散を打ち消すことができ、生成された圧縮フェムト秒レーザーパルスがサンプルの位置に到達した時の分散が0又は0に近づき、フーリエ変換限界パルスを得、サンプルの位置でのパルスピーク出力が最大化され、したがって組織サンプルの異なる分子の非線形信号の生成効率を最大限に高め、SN比を向上し;
(4)能動適応光学部品を用いて、フーリエ変換限界パルスを得るベース上で、さらに特定の非線形信号のスペクトル強度及びスペクトル位相の最適化を行うことで、選択的な励起を実現し、マルチモーダル信号の特異度を高めることができ;
(5)広範囲のマルチモーダル信号を生成でき、マルチモーダル信号は、組織サンプル中の複数の成分を識別でき、フェムト秒レーザーイメージングシステムの識別の多様性を高めることができる。
【0058】
当業者は上記の説明に従って改善又は変更することができ、これらの改善及び変更はすべて、本発明の添付の特許請求の範囲の保護範囲に網羅される。
【国際調査報告】