(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-535966(P2020-535966A)
(43)【公表日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】合成ガスからパラキシレンを直接製造する触媒及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
B01J 29/48 20060101AFI20201113BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20201113BHJP
B01J 29/46 20060101ALI20201113BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20201113BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20201113BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20201113BHJP
C01B 39/40 20060101ALI20201113BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20201113BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20201113BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20201113BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20201113BHJP
C07C 9/14 20060101ALI20201113BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20201113BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20201113BHJP
【FI】
B01J29/48 Z
B01J35/08 B
B01J29/46 Z
B01J29/40 Z
B01J37/02 301Z
B01J37/03 B
C01B39/40
B01J37/04 101
C07C1/04
C07C9/04
C07C9/02
C07C9/14
C07C15/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2020-539126(P2020-539126)
(86)(22)【出願日】2018年9月27日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月27日
(86)【国際出願番号】CN2018107966
(87)【国際公開番号】WO2019062815
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】201710917428.6
(32)【優先日】2017年9月30日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】598152091
【氏名又は名称】ハイケム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520108855
【氏名又は名称】株式会社模範
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】楊 国輝
(72)【発明者】
【氏名】椿 范立
(72)【発明者】
【氏名】高 潮
(72)【発明者】
【氏名】柴 剣宇
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BA03
4G073BA05
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4H006BA71
4H006BA81
4H006BA85
4H006DA12
4H039CL35
(57)【要約】
コアシェル触媒であって、そのコアがHZSM−5モレキュラーシーブであり、HZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHが明細書によって限定された(非)金属元素で置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの混合物であり、シェルが炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜から選ばれる。
触媒と合成ガス転化用のメタノール触媒とからなる複合触媒は、ワンショット法で合成ガスを転化する場合、パラキシレンの選択率及び合成ガスの転化率が高くなるだけでなく、キシレンに対するパラキシレンの選択率も高くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアは水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHがSn、Ga、Ti、Zn、Mg、Li、Ce、Co、La、Rh、Pd、Pt、Ni、Cu、K、Ca、Ba、Fe、Mn及びBから選ばれた1つ又は複数の元素Mで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物であり、シェルは炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜(例えばMgO、P2O5、CaO)から選ばれた1つ又は複数であるコアシェル触媒。
【請求項2】
コアは水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける一部又は全部のHがZnで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物であり、及び/又は、シェルはシリカ膜、Silicalite−1、金属酸化物膜(例えばMgO、P2O5、CaO)、MCM−41、SBA−15、KIT−6から選ばれた1つ又は複数であり、好ましくはSilicalite−1であり、特に好ましくは元素Mで変性されたM−ZSM−5モレキュラーシーブにおいて、元素MがM−ZSM−5モレキュラーシーブの全重量の0.5〜15wt%であり、好ましくは1〜10wt%であり、特に好ましくは1〜5wt%である、請求項1に記載のコアシェル触媒。
【請求項3】
コアとシェルの重量比は100:1〜1:100であり、好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは5:1〜1:5であり、特に好ましくは5:1〜1:1である、請求項1又は2に記載のコアシェル触媒。
【請求項4】
1)水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHがSn、Ga、Ti、Zn、Mg、Li、Ce、Co、La、Rh、Pd、Pt、Ni、Cu、Na、K、Ca、Ba、Fe、Mn及びBから選ばれた1つ又は複数の元素Mで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物である、粒子状を呈するコア提供する工程、及び
2)粒子状を呈するコアの表面に、炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜(例えばMgO、P2O5、CaOから選ばれた1つ又は複数の材料を被覆する工程を含む、
請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル触媒の製造方法。
【請求項5】
A)合成ガスを触媒反応させてメタノールに転化するための触媒A、及び
B)触媒反応させてキシレンを生成するための触媒Bを含む、合成ガスからパラキシレンを直接製造するための複合触媒であって、
前記触媒Bは請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル触媒であり、
好ましくは複合触媒が、触媒Aと触媒Bの混合物の形態を呈し、触媒Aが触媒Bを物理的若しくは化学的にカプセル化するか、又は触媒Bが触媒Aを物理的若しくは化学的にカプセル化する複合触媒。
【請求項6】
触媒Aが第1金属成分と第2金属成分を含むか、又は第1金属成分と第2金属成分からなり、第1金属成分はCr、Fe、Zr、In、Ga、Co、Cuから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、第2金属成分はZn、Na、Al、Ag、Ce、K、Mn、Pd、Ni、La、Vから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、好ましくは第1金属成分がCr、Co、Cu、Zrから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、及び/又は、第2金属成分がZn、Alから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、特に好ましくは触媒AがZnO−Cr2O3である、請求項5に記載の複合触媒。
【請求項7】
触媒Aにおける第1金属成分と第2金属成分の金属元素のモル比は、1000:1〜1:100であり、好ましくは100:1〜1:50であり、より好ましくは10:1〜1:10であり、特に好ましくは3:1〜1:3である、請求項5又は6に記載の複合触媒。
【請求項8】
触媒Aと触媒Bの重量比が1:99〜99:1であり、好ましくは20:80〜80:20であり、より好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは50:50〜75:25である、請求項5〜7のいずれかに記載の複合触媒。
【請求項9】
1)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末をそれぞれ製造する工程、
2a)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末を任意に選択した接着剤と混合してから、複合触媒に成形する工程、
2b)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末をそれぞれ成形することで、触媒Aの成形体と触媒Bの成形体を得てから、これらを混合する工程、
2c)触媒Aをコアとし、触媒Bをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する工程、
2d)触媒Bをコアとし、触媒Aをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する工程を含む、
請求項5〜8のいずれかに記載の複合触媒の製造方法。
【請求項10】
触媒Aは逐次含浸法、共含浸法、尿素法及び共沈法から選ばれたいずれか1つ又は複数により製造され、好ましくは、逐次含浸法、共含浸法、尿素法及び/又は共沈法による触媒Aの焼成工程において、工程条件は、焼成雰囲気が空気であり、及び/又は、焼成温度が200〜700℃であり、好ましくは400〜600℃であり、及び/又は、焼成時間が3〜8時間であり、好ましくは4〜6時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル触媒、請求項4に記載の方法により製造されたコアシェル触媒、請求項5〜8のいずれかに記載の複合触媒又は請求項9〜10のいずれかに記載の製造方法により製造された複合触媒の、合成ガスからパラキシレンを直接製造するための触媒としての使用。
【請求項12】
合成ガスにおける水素と一酸化炭素のモル比が0.1〜5であり、好ましくは1〜4であり、反応圧力が1〜10MPaであり、好ましくは2〜8MPaであり、反応温度が150〜600℃であり、好ましくは250〜500℃であり、及び/又は、空間速度は200〜8000h−1であり、好ましくは500〜5000h−1である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
合成ガスを通気して反応させる前に、複合触媒をまず還元前処理し、
望ましい還元前処理の工程条件としては、還元ガスが純水素であり、前処理温度が300〜700℃であり、好ましくは400〜600℃であり、前処理圧力が0.1〜1MPaであり、好ましくは0.1〜0.5MPaであり、前処理水素ガスの体積空間速度が500〜8000h−1であり、好ましくは1000〜4000h−1であり、及び/又は前処理還元時間が2〜10時間であり、好ましくは4〜6時間である、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル触媒及びその製造方法に関する。本発明は、さらに、当該コアシェル触媒を含む複合触媒及びその製造方法、並びに本発明のコアシェル触媒及び複合触媒の使用、合成ガスからパラキシレンを直接製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
パラキシレンは重要な有機合成原料として、織物及び包装材料の分野で広く使用されている。パラキシレンは、主にテレフタルエステル及びテレフタル酸などの製造に使用され、テレフタル酸はプラスチックとポリエステル繊維の中間体、及び塗料、染料と農薬の原料として使用されている。現在、工業において多用されているパラキシレンの製造方法は、トルエンの不均化と九炭素芳香族炭化水素のトランスアルキル化である。当該方法では、生成物におけるパラキシレンの含有量が熱力学的バランスによって制限されているため、通常、濃度が約24wt%のパラキシレンしか得ることができない。しかしながら、パラキシレン市場ではパラキシレン濃度が60wt%以上のキシレンが要求されるため、ポリエステル材料の製造などの工業的製造のニーズを十分に満たすことができない。また、高濃度のパラキシレンを得ると共にパラキシレンの収率を高めるためには、一連の後処理を経る必要がある。特に、キシレンの3つの異性体間の沸点差が小さく、通常の蒸留技術では高純度のパラキシレンを得ることができず、高価な吸着分離プロセスを採用しなければならず、原料の損失及びコストの上昇を招く。石油エネルギーの不足に伴い、市場ニーズだけでなく、石油代替の点からも、新たな芳香族炭化水素の合成プロセスルートの開発価値は非常に高くなっている。
【0003】
合成ガスは、エネルギー転化の媒体として、石炭、天然ガス、バイオマスをクリーンな油に転化でき、最も潜在力のある石油代替手段の1つとして考えられている。そこで、金属触媒と適切なモレキュラーシーブとを組み合わせた複合触媒がフィッシャー・トロプシュ反応の生成物の分布を効果的に制御でき、この研究は近年大きな進展を見せている。フィッシャー・トロプシュ反応で異なる炭素数範囲の石油製品の合成・製造に成功した後、多くの研究者が、低炭素アルケン、低炭素アルコールなどを含む高付加価値化学物質を合成ガスから直接かつ高選択的に製造することに着目している。合成ガスからベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素をワンショット法で製造する方法についての研究が報告されたが、生成物におけるパラキシレンの選択率が、通常に低く、産業化はまだされていない。生成物の選択率の制御が難しいという大きな問題があるからである。また、触媒が劣化しやすく、触媒性能の安定性の維持が困難である。
【0004】
ワンショット法で合成ガスからパラキシレンの製造の選択率を向上させるには、高性能触媒の製造及び開発がポイントとなる。ここで、メタノール合成触媒とモレキュラーシーブからなる二機能複合触媒を用いると、触媒性能が良くなる。該反応ルートには、合成ガスの水素化によるメタノールの製造、メタノールの水素化による脱水反応、芳香族化反応、キシレンの異性化反応などの一連のカスケード反応が含まれる。該ルートは、合成ガスの転化プロセスの発展に大きな利点をもたらし、国のエネルギー戦略の安全性を促進するだけでなく、世界的な石油エネルギーの枯渇という潜在的な脅威に対する解決策の1つになっている。したがって、パラキシレンの選択率を高め、プロセスの複雑性とコストを低減することは、合成ガスからパラキシレンを直接製造する際に解決が急務な技術的な難点である。
【0005】
通常合成ガスから芳香族炭化水素を直接製造するには、まず合成ガスをメタノール又はジメチルエーテルに転化させ、次にメタノール又はジメチルエーテルから芳香族炭化水素(MTA)を製造するという2つのプロセスを経なければならないことが研究から明らかである。例えば、山西煤炭化学研究所で用いられた2段反応器には、2つのタイプの触媒が備えられ、合成ガスをジメチルエーテルから芳香族炭化水素に転化させた(CN101422743Aを参照のこと)。合成ガスの芳香族化触媒には、HNKF−5、リン酸アルミニウムモレキュラーシーブ、Ga
2O
3:ZnO:BaOがある。当該特許文献は、合成ガスを1段目のメタノール合成及びメタノール脱水の混合触媒を通過させた後、2段目の反応器に芳香族化触媒と1段目の触媒との混合触媒を入れて、芳香族化を行い、最終的に芳香族炭化水素の生成物を得るものである。
【0006】
上記2段階法は、合成ガスからパラキシレンを製造する場合にはステップが多く、2段階反応のフローが長く、エネルギー消費量が大きく、触媒の製造方法が複雑であるだけでなく、パラキシレンの選択率が炭化水素化合物の生成物において30wt%未満であるという問題がある。
【0007】
Lasaらは、Cr−Zn/ZSM−5触媒で合成ガスから製造された芳香族炭化水素の特性(Ind.Eng.Chem.Res.、1991、30、1448−1455を参照のこと)を早期に報告し、ここで芳香族炭化水素の炭化水素化合物における選択率は、70.8%に達するが、芳香族炭化水素の具体的な生成物の分布については言及していない。さらに、Cr−Zn/ZSM−5複合触媒で合成ガスから製造された芳香族炭化水素の特性(Appl.Catal.A、1995、125、81〜98を参照のこと)が報告され、ここで356−410℃、3.6〜4.5MPaの反応条件下で、炭化水素における芳香族炭化水素の選択率は75%に達したが、キシレンの選択率は20%未満であった。また、王徳生ら(触媒化学学報、2002、23(4)、333−335を参照のこと)は、フィッシャー・トロプシュ法で合成するFe系触媒と芳香族化モレキュラーシーブを混合したFe/MnO−Zn/ZSM−5複合触媒を用いて、合成ガスをフィッシャー・トロプシュ反応によって低炭素の炭化水素中間体を生成させ、且つモレキュラーシーブで芳香族炭化水素に転化させ、ここでCO転化率は270℃の時に98.1%に達したが、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素の選択率は低かった。最近、マーティンと樊衛斌の研究チーム(Chem、2017、3、323−333を参照のこと)は、鉄系触媒であるNa−Zn−Fe
5C
2(FeZnNa)を変性処理したメソ細孔HZSM−5モレキュラーシーブと混合して、アルケンを中間体とする合成ガスで芳香族炭化水素を直接製造することを効果的に実現した。340℃、2MPaの条件下で炭化水素類の生成物から、最大51wt%の芳香族炭化水素が得られ、ここで軽質芳香族炭化水素を主とするものであった。しかしながら、芳香族炭化水素におけるパラキシレンの選択率については言及されていない。厦門大学の王野研究チーム(Chem、2017、3,334−347を参照のこと)は、カップリング反応を発展させた学術的思想に基づいて、ZnにZrO
2/H−ZSM−5の二機能性触媒を混ぜ合わせるように巧みに設計し、合成ガスからワンショット法で高選択率且つ高安定性で芳香族炭化水素を製造することを実現した。軽質の芳香族炭化水素BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)の含有量を増やすために、筆者は、H−ZSM−5モレキュラーシーブの外面をシラン化処理することにより、ブレンステッド酸性部位を毒化させるという目的を達成し、最終的に芳香族炭化水素生成物におけるBTXの選択率を高めることに成功した。芳香族炭化水素におけるBTXの比率は60wt%まで上昇したが、キシレン及びパラキシレンの含有量については言及していない。
【0008】
上述の触媒はいずれも合成ガスからワンショット法で芳香族炭化水素を得ることができるが、パラキシレンの選択率が常に低く、キシレンの異性化反応を効果的に抑制できない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、合成ガスからパラキシレンを高い選択率で直接製造するための触媒及びその製造方法と使用を提供することにある。当該触媒の製造方法が簡易で、合成ガスの転化率が高く、パラキシレンの選択率が高く、工業への活用が期待されている。
【0010】
本発明は、コアシェル触媒を提供することを1つの目的とする。当該触媒と、合成ガスを触媒反応させてメタノールに転化させる触媒とを複合使用する場合、パラキシレンの選択率と合成ガスの転化率が高くなるだけでなく、キシレンに対するパラキシレンの選択率も高くなる。
【0011】
本発明は、前記コアシェル触媒の製造方法を提供することをもう1つの目的とする。
【0012】
本発明は、合成ガスからパラキシレンを直接製造するための複合触媒を提供することをさらに1つの目的とし、該触媒は合成ガスを触媒反応させてメタノールに転化するための触媒と本発明のコアシェル触媒とを含む触媒である。当該複合触媒は、合成ガスを触媒反応させて炭化水素に転化させる場合、パラキシレンの選択率と合成ガスの転化率が高くなるだけでなく、キシレンに対するパラキシレンの選択率も高くなる。
【0013】
本発明は、本発明の複合触媒の製造方法を提供することをさらなる1つの目的とする。
【0014】
本発明は、合成ガスからパラキシレンを直接製造するために、本発明のコアシェル触媒又は本発明の複合触媒を提供することを最後の目的とする。本発明のコアシェル触媒又は複合触媒を、合成ガスからパラキシレンを直接製造する触媒として用いることにより、パラキシレンの選択率と合成ガスの転化率が高くなるだけでなく、キシレンに対するパラキシレンの選択率も高くなる。
【0015】
本発明の上記課題を解決するために用いられる技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0016】
1.コアは水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHがSn、Ga、Ti、Zn、Mg、Li、Ce、Co、La、Rh、Pd、Pt、Ni、Cu、K、Ca、Ba、Fe、Mn及びBから選ばれた1つ又は複数の元素Mで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物であり、シェルは炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜(例えばMgO、P
2O
5、CaO)から選ばれた1つ又は複数である、コアシェル触媒。
【0017】
2.コアは水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける一部又は全部のHがZnで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物であり、及び/又は、シェルはシリカ膜、Silicalite−1、金属酸化物膜(例えばMgO、P
2O
5、CaO)、MCM−41、SBA−15、KIT−6から選ばれた1つ又は複数であり、好ましくはSilicalite−1であり、特に好ましくは元素Mで変性されたM−ZSM−5モレキュラーシーブにおいて、元素MがM−ZSM−5モレキュラーシーブの全重量の0.5〜15wt%であり、好ましくは1〜10wt%であり、特に好ましくは1〜5wt%である、第1項に記載のコアシェル触媒。
【0018】
3.コアとシェルの重量比は100:1〜1:100であり、好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは5:1〜1:5であり、特に好ましくは5:1〜1:1である、第1又は2項に記載のコアシェル触媒。
【0019】
4.
1)水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHがSn、Ga、Ti、Zn、Mg、Li、Ce、Co、La、Rh、Pd、Pt、Ni、Cu、Na、K、Ca、Ba、Fe、Mn及びBから選ばれた1つ又は複数の元素Mで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物である、粒子状を呈するコアを提供する工程、及び
2)粒子状を呈するコアの表面に、炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜(例えばMgO、P
2O
5、CaO)から選ばれた1つ又は複数の材料を被覆する工程を含む、
第1〜3項のいずれかに記載のコアシェル触媒の製造方法。
【0020】
5.
A)合成ガスを触媒反応させてメタノールに転化するための触媒A、及び
B)触媒反応させてキシレンを生成するための触媒Bを含む、合成ガスからパラキシレンを直接製造するための複合触媒であって、
前記触媒Bは第1〜3項のいずれかに記載のコアシェル触媒であり、
好ましくは複合触媒が、触媒Aと触媒Bの混合物の形態を呈し、触媒Aが触媒Bを物理的若しくは化学的にカプセル化するか、又は触媒Bが触媒Aを物理的若しくは化学的にカプセル化する。
【0021】
6.触媒Aが第1金属成分と第2金属成分を含むか、又は第1金属成分と第2金属成分からなり、第1金属成分はCr、Fe、Zr、In、Ga、Co、Cuから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、第2金属成分はZn、Na、Al、Ag、Ce、K、Mn、Pd、Ni、La、Vから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、好ましくは第1金属成分がCr、Co、Cu、Zrから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、及び/又は、第2金属成分がZn、Alから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、特に好ましくは触媒AがZnO−Cr
2O
3である、第5項に記載の複合触媒。
【0022】
7.触媒Aにおける第1金属成分と第2金属成分の金属元素のモル比は、1000:1〜1:100であり、好ましくは100:1〜1:50であり、より好ましくは10:1〜1:10であり、特に好ましくは3:1〜1:3である、第5又は6項に記載の複合触媒。
【0023】
8.触媒Aと触媒Bの重量比が1:99〜99:1であり、好ましくは20:80〜80:20であり、より好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは50:50〜75:25である、第5〜7項のいずれかに記載の複合触媒。
【0024】
9.
1)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末をそれぞれ製造する工程、
2a)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末を任意に選択した接着剤と混合してから、複合触媒に成形する工程、
2b)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末をそれぞれ成形することで、触媒Aの成形体と触媒Bの成形体を得てから、これらを混合する工程、
2c)触媒Aをコアとし、触媒Bをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する工程、
2d)触媒Bをコアとし、触媒Aをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する工程を含む、
第5〜8項のいずれかに記載の複合触媒の製造方法。
【0025】
10.触媒Aは逐次含浸法、共含浸法、尿素法及び共沈法から選ばれたいずれか1つ又は複数により製造され、好ましくは、逐次含浸法、共含浸法、尿素法及び/又は共沈法による触媒Aの焼成工程において、工程条件は、
焼成雰囲気が空気であり、及び/又は、
焼成温度が200〜700℃であり、好ましくは400〜600℃であり、及び/又は、
焼成時間が3〜8時間であり、好ましくは4〜6時間である、
第9項に記載の方法。
【0026】
11.第1〜3項のいずれかに記載のコアシェル触媒、第4項に記載の方法により製造されたコアシェル触媒、第5〜8項のいずれかに記載の複合触媒又は第9〜10項のいずれかに記載の方法により製造された複合触媒の、合成ガスからパラキシレンを直接製造するための触媒としての使用。
【0027】
12.合成ガスにおける水素と一酸化炭素のモル比が0.1〜5であり、好ましくは1〜4であり、反応圧力が1〜10MPaであり、好ましくは2〜8MPaであり、反応温度が150〜600℃であり、好ましくは250〜500℃であり、及び/又は、空間速度は200〜8000h
−1であり、好ましくは500〜5000h
−1である、
第11項に記載の使用。
【0028】
13.合成ガスを通気して反応させる前に、複合触媒をまず還元前処理し、
好ましくは還元前処理の工程条件は、
還元ガスが純水素であり、
前処理温度が300〜700℃であり、好ましくは400〜600℃であり、
前処理圧力が0.1〜1MPaであり、好ましくは0.1〜0.5MPaであり、
前処理水素ガスの体積空間速度が500〜8000h
−1であり、好ましくは1000〜4000h
−1であり、及び/又は
前処理還元時間が2〜10時間であり、好ましくは4〜6時間である、
第12項に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例2に係るZn/ZSM−5及びZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブのSEM写真であり、
図1のaはZn/ZSM−5モレキュラーシーブのSEM写真であり、
図1のbはZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブのSEM写真である。
【
図2】実施例2で製造したZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブのSTEM写真及びその対応する元素EDS面のスキャン画像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の1つ目の実施形態は、コアシェル触媒を提供するものであり、ここでコアは水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHがSn、Ga、Ti、Zn、Mg、Li、Ce、Co、La、Rh、Pd、Pt、Ni、Cu、K、Ca、Ba、Fe、Mn及びBから選ばれた1つ又は複数の元素Mで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物であり、シェルは炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜(例えばMgO、P
2O
5、CaO)から選ばれた1つ又は複数である。
【0031】
本発明のコアシェル触媒は、コア・シェル構造を有する。コアは、水素型ZSM−5モレキュラーシーブ(以下、HZSM−5と表す場合がある)、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHがSn、Ga、Ti、Zn、Mg、Li、Ce、Co、La、Rh、Pd、Pt、Ni、Cu、Na、K、Ca、Ba、Fe、Mn及びBから選ばれた1つ又は複数の元素Mで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ(以下、M/ZSM−5モレキュラーシーブと表す場合がある)又はそれらの任意の混合物である。これらのモレキュラーシーブは本発明において、ZSM−5モレキュラーシーブと総称する。ZSM−5モレキュラーシーブは、合成ガスのワンショット法で製造された炭化水素化合物の反応において、炭化水素への転化を触媒反応で促進できる。本発明者は、これらの触媒活性成分を本発明で被覆すると、表面に被覆していないときよりも、合成ガスから炭化水素を製造する場合に、パラキシレンの選択率を明らかに高めることができ、特にキシレンに対するパラキシレンの選択率を著しく高めることができると共に、高いCO転化率を維持できることを見出した。また、本発明のコアシェル触媒は、コア材とシェル材とを同じ条件で物理的に混合した混合触媒と比較しても、パラキシレンの選択率を明らかに高めることができ、特にキシレンに対するパラキシレンの選択率を著しく高めることができると共に、高いCO転化率を維持できる。
【0032】
コア成分としては、水素型ZSM−5モレキュラーシーブ及びM/ZSM−5モレキュラーシーブは市場で購入できるし、水熱合成法、含浸法、イオン交換法、気相成長法、液相成長法などの本分野の従来の方法によっても製造できる。例えば、水熱合成法によりHZSM−5モレキュラーシーブ及びNa/ZSM−5を、次いでイオン交換法によりHZSM−5モレキュラーシーブ及びNa/ZSM−5からM/ZSM−5モレキュラーシーブを製造できる。
【0033】
HZSM−5ゼオライトモレキュラーシーブの水熱合成法を例に挙げる。ケイ素源(TEOS、オルトケイ酸エチル)、アルミニウム源(Al(NO
3)
39H
2O)、有機テンプレート剤(TPAOH、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド)、エタノール及び脱イオン水をモル比(2TEOS:xAl
2O
3:0.68TPAOH:8EtOH:120H
2O、x=0.002〜0.2)で混合し、室温で4〜6時間撹拌するとゾルが得られ、次いでよく撹拌したゾルを四フッ化ポリエチレン結晶釜に移してから、密封して、160〜200℃の温度で2〜5rpmの回転速度で24〜72時間晶出させる。晶出が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpHが7〜8になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で1〜3℃/分の昇温速度で550〜650℃まで昇温させ、4〜8時間焼成すると、ZSM−5モレキュラーシーブが得られ、これがHZSM−5である。前記ZSM−5モレキュラーシーブにおけるSiO
2/Al
2O
3は10〜1000である。
【0034】
M/ZSM−5モレキュラーシーブを製造するには、元素Mが金属元素である場合、HZSM−5を原料として、イオン交換法、含浸法、気相成長法、液相成長法などにより製造できる。Mが非金属元素Bである場合、HZSM−5を原料として、含浸法、気相成長法、液相成長法などにより、M/ZSM−5モレキュラーシーブを製造できる。
【0035】
イオン交換法でZn/ZSM−5モレキュラーシーブを製造することを例に挙げる。例えば、1mol/Lの硝酸亜鉛水溶液に1.5gのHZSM−5モレキュラーシーブを加え、80〜100℃で10〜15時間絶えず撹拌することで、イオン交換を行う。イオン交換が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpHが7〜8になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で500℃で4〜6時間焼成すると、Zn/ZSM−5モレキュラーシーブが得られる。
【0036】
本発明の最適な実施形態において、元素Mで変性されたM/ZSM−5モレキュラーシーブにおいて、元素Mは、M/ZSM−5モレキュラーシーブの全重量の0.5〜15wt%であり、好ましくは1〜10wt%であり、特に好ましくは1〜5wt%である。
【0037】
本発明のHZSM−5モレキュラーシーブ又はMで変性されたM/ZSM−5モレキュラーシーブにおいて、SiとAlのモル比は、通常10〜1000であり、好ましくは20〜800である。これらのモレキュラーシーブの粒径は、通常0.01〜20μmであり、好ましくは0.1〜15μmである。
【0038】
本発明のコアシェル触媒のシェルは、炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ(純粋シリカモレキュラーシーブ)、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)(例えばZIF−8、ZIF−11)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜(例えばMgO、P
2O
5、CaO)から選ばれた1つ又は複数である。これらの材料がコアの外面を被覆することで、シェルを形成する。これらのシェル材そのものは炭化水素を芳香族化反応させてジメチルベンゼンの製造に対して、活性を有しないが、ZSM−5モレキュラーシーブのコアを被覆することにより、ZSM−5の外面を露出した酸性部位に影響を及ぼし、これらの露出した酸性部位を被覆又は処理することで、副反応を減少させ、最終的に目標生成物であるパラキシレンの選択率を高めることができる。シェル材としては、好ましくはシリカ膜、Silicalite−1、金属酸化物膜(例えばMgO、P
2O
5、CaO)、MCM−41、SBA−15、KIT−6から選ばれた1つ又は複数であり、特に好ましくはSilicalite−1である。
【0039】
シェルの使用量は特に制限されず、コアを被覆できる量さえあればよい。本発明のコアシェル触媒の1つの目の実施形態において、コアとシェルの重量比は100:1〜1:100であり、好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは5:1〜1:5であり、特に好ましくは5:1〜1:1である。
【0040】
本発明の2つ目の実施形態によれば、本発明のコアシェル触媒の製造方法が提供され、当該方法は以下を含む。
【0041】
1)水素型ZSM−5モレキュラーシーブ、水素型ZSM−5モレキュラーシーブにおける全部又は一部のHがSn、Ga、Ti、Zn、Mg、Li、Ce、Co、La、Rh、Pd、Pt、Ni、Cu、Na、K、Ca、Ba、Fe、Mn及びBから選ばれた1つ又は複数の元素Mで置換された変性ZSM−5モレキュラーシーブ又はそれらの任意の混合物である、粒子状を呈するコアを提供する工程、及び
2)粒子状を呈するコアの表面に、炭素膜、Silicalite−1、MCM−41、SBA−15、KIT−6、MSUシリーズ、シリカ、グラフェン、カーボンナノチューブ、有機金属構造体(MOF)、グラファイト、活性炭、金属酸化物膜(例えばMgO、P
2O
5、CaO)から選ばれた1つ又は複数の材料を被覆する工程、を含む。
【0042】
本発明のコアシェル触媒のコア材及びシェル材は、いずれも従来のものである。ステップ1)におけるコアを提供するために、コア材そのものが適切なサイズの粒子であれば、そのまま使うが、該コア材のサイズが大きければ、粉砕してからステップ2)に用いられる。ステップ2)でコア粒子への被覆を実現する。異なるシェル材を用いてコア粒子を被覆することは、当分野の常識である。被覆方法として、水熱合成法、気相成長法、含浸法、スパッタリング法、ストーバー法などを挙げることができ、被覆材料の性質に応じて、従来の方法を選択できる。例えば、モレキュラーシーブ系のシェル材を被覆するために、水熱合成法を採用でき、炭素膜、グラフェン及びカーボンナノチューブを被覆するために、気相成長法を採用でき、金属酸化物を被覆するために、含浸法とスパッタリング法を採用でき、シリカを被覆するために、ストーバー法を採用できる。
【0043】
Silicalite−1で水熱合成法によりZn/ZSM−5を被覆することで、Zn/ZSM−5@Silicalite−1コアシェル触媒を得ることを例に挙げる。ケイ素源(TEOS)、有機テンプレート剤(TPAOH)、エタノール及び脱イオン水をモル比(1.00SiO
2:0.06TPAOH:16.0EtOH:240H
2O)で配合して、混合物を調製し、室温で4〜6時間撹拌すると、Silicalite−1モレキュラーシーブ前駆体溶液が得られる。上記のように製造したZn/ZSM−5ゼオライトモレキュラーシーブを粉砕したら、得られたSilicalite−1モレキュラーシーブ前駆体溶液と共に、四フッ化ポリエチレン結晶釜に移してから、密封して、180℃の温度で2〜5rmpの回転速度で24〜72時間晶出させる。晶出が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を脱イオン水で濾液のpHが7〜8になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で1℃〜3℃/分の昇温速度で550〜650℃まで昇温させ、4〜8時間焼成すると、Zn/ZSM−5@Silicalite−1のコアシェル触媒が得られ、ここでZn/ZSM−5をコアとして、Silicalite−1をシェルとする。
【0044】
合成ガスからワンショット法で芳香族炭化水素を製造するには2つのステップがあり、1つは合成ガスをメタノールに転化させるステップであり、もう1つはメタノールをさらに反応させることで、最終的にパラキシレンのような芳香族炭化水素を得るステップである。本発明のコアシェル触媒は、2つ目のステップでパラキシレンの選択率を高めるのに極めて有効であり、パラキシレンの選択率だけでなく、特にキシレンに対するパラキシレンの選択率を飛躍的に高めるだけでなく、高いCO転化率を維持できる。
【0045】
したがって、本発明の3つ目の実施形態によれば、合成ガスからパラキシレンを直接製造するための複合触媒を提供し、当該複合触媒は、
A)合成ガスを触媒反応させてメタノールに転化するための触媒A、及び
B)触媒としてキシレンを生成するための触媒Bを含み、当該触媒Bは本発明のコアシェル触媒である。
【0046】
触媒Aとして、合成ガスからメタノールへの転化を促進できる触媒であればよい。本発明の最適な実施形態において、触媒Aが第1金属成分と第2金属成分を含むか、又は第1金属成分と第2金属成分からなり、第1金属成分はCr、Fe、Zr、In、Ga、Co、Cuから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、第2金属成分はZn、Na、Al、Ag、Ce、K、Mn、Pd、Ni、La、Vから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物である。好ましくは第1金属成分がCr、Fe、Co、Zr、Cuから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、及び/又は、第2金属成分がZn、Alから選ばれた元素、その酸化物、その複合酸化物又はそれらの任意の混合物であり、特に好ましくは触媒AがZnO−Cr
2O
3である。
【0047】
触媒Aは市場で購入するか、又は例えば、逐次含浸法、共含浸法、尿素法及び共沈法などの任意の従来の方法によって製造され、好ましくは共沈法である。第1金属成分と第2金属成分とを含む触媒Aについて、上記方法で当該触媒を製造する場合、最終的には第1金属成分と第2金属成分とを含む前駆体混合物を焼成する。焼成雰囲気は空気であり、及び/又は、焼成温度は200〜700℃であり、好ましくは400〜600℃であり、及び/又は、焼成時間は3〜8時間であり、好ましくは4〜6時間であることが有益である。
【0048】
触媒AとしてZnO−Cr
2O
3を共沈法で製造することを例に挙げる。当該触媒を製造するために、通常、脱イオン水を用いて、クロム、亜鉛のそれぞれの硝酸塩前駆体を触媒Aに必要なクロムと亜鉛の比率で1mol/Lの混合硝酸塩水溶液に調製し、この溶液を1mol/Lの炭酸アンモニウム水溶液(例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化アンモニウムなどの他の沈殿剤も使用できる)と共にビーカーに滴下して共沈させ、共沈中に、撹拌し続け、2種類の溶液の相対添加速度を制御することにより、沈殿温度を50〜90℃に、pHを6〜8に制御する。添加が終了した後、撹拌し続けることで得られた沈殿物を、50〜90℃で60〜240分間エージングさせる。エージングさせた沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、洗浄した生成物をオーブンに入れ、80〜120℃で8〜12時間乾燥させ、さらにマッフル炉で350〜550℃で3〜6時間焼成すると、ZnO−Cr
2O
3触媒が得られる。
【0049】
本発明の複合触媒の最適な実施形態においては、触媒Aにおける第1金属成分と第2金属成分の金属元素のモル比が1000:1〜1:100であり、好ましくは100:1〜1:50であり、より好ましくは10:1〜1:10であり、特に好ましくは3:1〜1:3である。
【0050】
他の実施形態では、触媒Aと触媒Bの重量比が1:99〜99:1であり、好ましくは20:80〜80:20であり、より好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは50:50〜75:25である。
【0051】
本発明によれば、複合触媒は、触媒Aと触媒Bの混合物の形態を呈し、触媒Aが触媒Bを物理的若しくは化学的にカプセル化するか、又は触媒Bが触媒Aを物理的若しくは化学的にカプセル化してもよい。
【0052】
本発明の4つ目の実施形態によれば、本発明の複合触媒の製造方法が提供され、当該方法は
1)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末をそれぞれ製造する工程、
2a)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末を任意に選択した接着剤と共に混合してから、複合触媒に成形する工程、
2b)触媒Aの粉末と触媒Bの粉末をそれぞれ成形することで、触媒Aの成形体と触媒Bの成形体を得てから、これらを混合する工程、
2c)触媒Aをコアとし、触媒Bをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する工程、
2d)触媒Bをコアとし、触媒Aをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する工程、を含む。
【0053】
本発明では、触媒Aと触媒Bとを組み合わせる技術は従来のものである。触媒Aと触媒Bは通常、粉末として製造される。工程2a)では、触媒Aの粉末と触媒Bの粉末とを任意に選択した接着剤とを混合し、複合触媒に成形する。接着剤として、水、アルミナ、シリカなどが挙げられる。触媒Aの粉末と触媒Bの粉末とを任意に選択した接着剤と混合することで、得られた粉末混合物を錠剤、ペレット、顆粒状などの形態に成形できる。工程2c)では、触媒Aをコアとし、触媒Bをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する。工程2d)では、触媒Bをコアとし、触媒Aをシェルとして物理的又は化学的にカプセル化する。カプセルに成形するのが従来の方法である。
【0054】
例えば、1.触媒Bが触媒Aをカプセル化するA@B触媒の物理的な被覆法による製造:まず、一定のサイズを有する粒子状の触媒Aの表面に接着剤液を含浸させ、すぐに余分な接着剤を除去してから、表面が濡れた状態の触媒Aを、粉末状の触媒Bを入れた丸底フラスコに入れ、触媒Aの表面全体が触媒Bで被覆されるように、丸底フラスコを速く回転させる。この工程は2〜3回繰り返すべきである。最後に、触媒を一晩乾燥させてから、マッフル炉で350〜550℃で3〜6時間焼成すると、A@B触媒が得られ、ここで触媒Aをコアとし、触媒Bをシェルとする。触媒Aが触媒Bを物理的にカプセル化するB@A触媒を製造する場合には、上記方法における触媒Aと触媒Bを入れ替えればよい。
【0055】
例えば、2.触媒Bが触媒Aをカプセル化するA@B触媒の化学的な方法による製造:まず、一定のサイズを有する粒子状の触媒AをZSM−5合成液と共に水熱合成し、具体的な操作ステップは、前記ZSM−5モレキュラーシーブの製造方法を参照できる。水熱合成終了後に得られたA@ZSM−5触媒を回収する。次いでA@ZSM−5触媒とSilicalite−1モレキュラーシーブとを共に水熱合成する。最後に水熱合成が終了したら、脱イオン水で触媒のpHが7になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で500〜600℃で4〜6時間焼成すると、A@B触媒が得られ、ここで触媒Aをコアとし、触媒Bをシェルとする。触媒Aが触媒Bを化学的にカプセル化するB@A触媒を製造する場合には、まず、水熱合成法で触媒Bを製造し、具体的な操作ステップは、上記Zn/HZSM5@S1モレキュラーシーブの製造方法を参照でき、次いで粒子状の触媒Bと触媒Aの前駆体溶液とを共に水熱合成し、220℃の温度で、2〜5rmpの回転速度で24〜72時間晶出させる。晶出が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を脱イオン水で濾液のpHが7〜8になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で1°〜3°/分の昇温温度で550〜650℃まで昇温させ、4〜8時間焼成すると、B@A触媒が得られ、ここで触媒Bをコアとし、触媒Aをシェルとする。
【0056】
本発明の最後の実施形態によれば、本発明のコアシェル触媒、本発明の方法によって製造されるコアシェル触媒、本発明の複合触媒又は本発明の方法により製造される複合触媒の、合成ガスからパラキシレンを直接製造するための触媒としての使用が提供される。本発明のこれらの触媒を使用することにより、パラキシレンの選択率と合成ガスの転化率が高くなるだけでなく、キシレンに対するパラキシレンの選択率も高くなると共に、合成ガスの高い転化率を維持できる。
【0057】
本発明の複合触媒を用いて合成ガスを触媒反応させてパラキシレンを製造する前に、複合触媒を還元前処理するのが望ましい。望ましい還元前処理の条件としては、還元ガスが純粋水素であり、前処理温度が300〜700℃であり、好ましくは400〜600℃であり、前処理圧力が0.1〜1MPaであり、好ましくは0.1〜0.5MPaであり、前処理水素ガスの体積空間速度が500〜8000h
−1であり、好ましくは1000〜4000h
−1であり、及び/又は、前処理還元時間が2〜10時間であり、好ましくは4〜6時間である。還元前処理したら、合成ガスを通気して反応させることで、パラキシレンを製造する。使用する合成ガスにおける水素と一酸化炭素のモル比は0.1〜5であり、好ましくは1〜4である。反応圧力は1〜10MPaであり、好ましくは2〜8MPaである。反応温度は150〜600℃であり、好ましくは250〜500℃である。空間速度は200〜8000h
−1であり、好ましくは500〜5000h
−1である。
【0058】
本発明の複合触媒を採用して合成ガスを転化させる場合には、合成ガスの転化率が55%以上になり、キシレン異性体に対するパラキシレンの選択率が70%以上になり、パラキシレンの選択率が同じ条件で著しく高くなる。本発明の複合触媒を用いることにより、複数種の異なる触媒を混合して用いる多段反応器を経ることなく、ワンショット法で合成ガスをパラキシレンに転化でき、反応手順が簡易で、操作しやすい。本発明の触媒で行われる合成ガスの転化プロセスには、より高いパラキシレン選択率を達成できると共に、高いCO転化率を維持できる。
【実施例】
【0059】
〔比較例1〕
a.Cr/Zn触媒の製造
23.6gのCr(NO
3)
3・9H
2O及び9.0gのZn(NO
3)
2・6H
2O を100mlの脱イオン水に溶解させた。得られた混合硝酸塩水溶液を、1mol/Lの(NH
4)
2CO
3水溶液(100mlの脱イオン水に9.6gの(NH
4)
2CO
3 を溶解させたもの)と共に、少量の脱イオン水の入ったビーカーに滴下して共沈させた。共沈中に、撹拌し続け、2種類の溶液の相対流速を制御することにより、70℃で恒温に、pHを7程度に維持した。共沈終了後は70℃で3時間静置してエージングさせた。沈殿物を濾過してから、脱イオン水で洗浄した。洗浄した沈殿物をオーブンで120℃で12時間焼成し、さらにマッフル炉で400℃で5時間焼成した。Cr/Zn触媒としてメタノール合成触媒が得られ、ここでクロムと亜鉛の元素のモル比は2:1であった。
【0060】
b.HZSM−5モレキュラーシーブの製造
ケイ素源(TEOS)、アルミニウム源(Al(NO
3)
3・9H
2O)、有機テンプレート剤(TPAOH)、エタノール及び脱イオン水を、モル比(2TEOS:0.02Al
2O
3:0.68TPAOH:8EtOH:120H
2O)で配合して、混合物を調製し、室温で6時間撹拌すると、ゾルが得られた。次いでよく撹拌したゾルを四フッ化ポリエチレン結晶釜に移してから、密封して、180℃の温度で2rmpの回転速度で24時間晶出させた。晶出が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpHが7になるまで脱イオン水で洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で1℃/分の昇温速度で550℃まで昇温させ、6時間焼成すると、HZSM−5としてZSM−5モレキュラーシーブが得られた。前記HZSM−5モレキュラーシーブのSiとAlのモル比は46であった。
【0061】
c.二機能性触媒の製造
得られたCr/Zn触媒とHZSM−5モレキュラーシーブの粉末を物理的に混合し、10分間粉砕し、さらに圧縮成形すると、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−HZSM−5という)が得られ、ここでCr/Zn触媒とHZSM−5モレキュラーシーブの重量比は2:1であった。
【0062】
d.触媒試験
0.5gのCr/Zn−HZSM−5触媒を高圧固定床反応器で固定床の形態で充填し、H
2とCOの体積比が2.1である合成ガスを連続的に通気し、反応圧力を5MPaに、合成ガスの空間速度を1200h
−1に、反応温度を400℃に制御した。4時間反応させたら、反応生成物と原料ガスをガスクロマトグラフィーによりオンラインで分析し、反応特性は表1に示すとおりである。
【0063】
〔比較例2〕
a.Cr/Zn触媒の製造
比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」を繰り返すと、Cr/Zn触媒が得られた。
【0064】
b.Zn/ZSM−5モレキュラーシーブの製造
比較例1の「HZSM−5モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、HZSM−5モレキュラーシーブが得られた。次いで1mol/Lの硝酸亜鉛水溶液に1.5gのHZSM−5モレキュラーシーブを加え、80℃で15時間撹拌し続け、イオン交換を行った。イオン交換が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpHが7〜8になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で500℃で4時間焼成すると、Zn/ZSM−5モレキュラーシーブが得られた。Zn/ZSM−5モレキュラーシーブの全重量に基づくと、Znの含有量は1wt%であった。
【0065】
c.二機能性触媒の製造
HZSM−5モレキュラーシーブの代わりにZn/ZSM−5モレキュラーシーブを用いた以外は、比較例1の「二機能性触媒の製造」を繰り返すと、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−Zn/ZSM−5触媒という)が得られ、ここでCr/Zn触媒とZn/ZSM−5モレキュラーシーブの重量比は2:1であった。
【0066】
d.触媒試験
Cr/Zn−HZSM−5触媒の代わりにCr/Zn−Zn/ZSM−5触媒を用いた以外は、比較例1の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0067】
〔実施例1〕
a.Cr/Zn触媒の製造
比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」を繰り返すと、Cr/Zn触媒が得られた。
【0068】
b.HZSM−5@S1触媒の製造
比較例1の「HZSM−5モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、HZSM−5モレキュラーシーブが得られた。
【0069】
ケイ素源(TEOS)、有機テンプレート剤(TPAOH)、エタノール及び脱イオン水をモル比(1.0SiO
2:0.06TPAOH:16.0EtOH:240H
2O)で配合して、混合物を調製し、室温で4時間撹拌すると、Silicalite−1モレキュラーシーブ前駆体溶液が得られた。上記のように製造したHZSM−5モレキュラーシーブを粉砕したら、得られたSilicalite−1モレキュラーシーブ前駆体溶液と共に、四フッ化ポリエチレン結晶釜に移してから、密封して、180℃の温度で2rmpの回転速度で24時間晶出させた。晶出が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を脱イオン水で濾液のpHが7になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で1℃/分の昇温速度で550℃まで上昇させ、4時間焼成すると、HZSM−5@Silicalite−1モレキュラーシーブ(HZSM−5@S1触媒という)が得られ、ここでHZSM−5モレキュラーシーブをコアとし、Silicalite−1モレキュラーシーブをシェルとして、HZSM−5モレキュラーシーブとSilicalite−1モレキュラーシーブとの重量比は3:1であった。
【0070】
c.二機能性触媒の製造
HZSM−5モレキュラーシーブの代わりにHZSM−5@S1触媒を用いた以外は、比較例1の「二機能性触媒の製造」を繰り返すと、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−HZSM−5@S1触媒という)が得られ、ここでCr/Zn触媒とHZSM−5@S1触媒の重量比は2:1であった。
【0071】
d.触媒試験
Cr/Zn−HZSM−5触媒の代わりにCr/Zn−HZSM−5@S1触媒を用いた以外は、比較例1の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0072】
〔実施例2〕
a.Cr/Zn触媒の製造
比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」を繰り返すと、Cr/Zn触媒が得られた。
【0073】
b.Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造
比較例2の「Zn/ZSM−5モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、Zn/ZSM−5モレキュラーシーブが得られた。次いでケイ素源(TEOS)、有機テンプレート剤(TPAOH)、エタノール及び脱イオン水をモル比(1.0SiO
2:0.06TPAOH:16.0EtOH:240H
2O)で配合して、混合物を調製し、室温で4時間撹拌すると、Silicalite−1モレキュラーシーブ前駆体溶液が得られた。上記のように製造したZn/ZSM−5モレキュラーシーブを粉砕したら、得られたSilicalite−1モレキュラーシーブ前駆体溶液と共に、四フッ化ポリエチレン結晶釜に移してから、密封して、180℃の温度で2rmpの回転速度で24時間晶出させた。晶出が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を脱イオン水で濾液のpHが7になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で1℃/分の昇温速度で550℃まで上昇させ、4時間焼成すると、Zn/ZSM−5@Silicalite−1モレキュラーシーブ(Zn/ZSM−5@S1触媒)が得られ、ここでZn/ZSM−5モレキュラーシーブをコアとし、Silicalite−1モレキュラーシーブをシェルとして、Zn/ZSM−5モレキュラーシーブとSilicalite−1モレキュラーシーブの重量比は3:1であった。
【0074】
図1は、本実施例に係るZn/ZSM−5及びZn/ZSM−5@S1のSEM写真であり、
図1のaはZn/ZSM−5のSEM写真であり、
図1のbはZn/ZSM−5@S1のSEM写真である。
図1から、Silicalite−1モレキュラーシーブで被覆する前に、Zn/ZSM−5モレキュラーシーブのサイズは0.5〜1μmであり、Silicalite−1モレキュラーシーブで被覆した後、得られたZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブのサイズは1.5〜2μmになることが分かった。これにより、Silicalite−1モレキュラーシーブがZn/ZSM−5モレキュラーシーブのコア上でin situ成長し、シェルを形成することが分かった。
【0075】
Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブがコアシェル構造であることをより視覚的に示すために、STEM及びEDS面のスキャン画像を用いて証明した。
【0076】
図2は、実施例2で製造したZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブのSTEM図及びその対応する元素EDS面のスキャン画像であり、このうち、
図2のaはZn/ZSM−5@S1のSTEM図であり、
図2のbはSi元素の図であり、
図2のcはAl元素の図であり、
図2のdはO元素の図であり、
図2のeはZn元素の図であり、
図2のfは各元素の混合図である。
図2から、Znの大部分はZSM−5モレキュラーシーブの上面に担持されていることで、Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブは、Zn/ZSM−5をコアとし、Silicalite−1をシェルとするコアシェル構造のモレキュラーシーブであることが分かった。
【0077】
つまり、Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブにおいて、Zn/ZSM−5はコアであり、Silicalite−1モレキュラーシーブはコアを被覆するシェルである。
【0078】
c.二機能性触媒の製造
HZSM−5モレキュラーシーブの代わりにZn/ZSM−5@S1触媒を用いた以外は、比較例1の「二機能性触媒の製造」を繰り返すと、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−Zn/ZSM−5@S1という)が得られ、ここでCr/Zn触媒とZn/ZSM−5@S1触媒の重量比は2:1であった。
【0079】
d.触媒試験
Cr/Zn−HZSM−5触媒の代わりにCr/Zn−Zn/ZSM−5@S1を用いた以外は、比較例1の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0080】
〔比較例3〕
触媒はCr/Zn触媒だけを使用してモレキュラーシーブを使用せず、比較例1の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0081】
〔比較例4〕
a.Cr/Zn触媒の製造
比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」を繰り返すと、Cr/Zn触媒が得られた。
【0082】
b.βモレキュラーシーブの製造
ケイ素源(SiO
2)、アルミニウム源(アルミニウムイソプロポキシド)、有機テンプレート剤(TEAOH)、NaOH及び脱イオン水をモル比(1SiO
2:0.023Al
2O
3:0.0425TEAOH:0.049NaOH:6.8H
2O)で配合して、混合物を調製し、室温で6時間撹拌すると、ゾルが得られた。次いで撹拌したゾルを四フッ化ポリエチレン結晶釜に移してから、密封し、150℃の温度で2rmpの回転速度で72時間晶出させた。晶出が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpHが7になるまで脱イオン水で洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で1℃/分の昇温速度で550℃まで昇温させ、6時間焼成すると、βモレキュラーシーブが得られた。上記βモレキュラーシーブのSiとAlのモル比は20であった。
【0083】
c.二機能性触媒の製造
HZSM−5モレキュラーシーブの代わりにβモレキュラーシーブを用いた以外は、比較例1の「二機能性触媒の製造」を繰り返すと、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−β触媒という)が得られ、Cr/Zn触媒とβモレキュラーシーブの重量比は2:1であった。
【0084】
d.触媒試験
Cr/Zn−HZSM−5触媒の代わりにCr/Zn−β触媒を用いた以外は、比較例1の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0085】
〔比較例5〕
b.HZSM−5&S1物理混合触媒の製造
実施例1の「HZSM−5@S1触媒の製造」を繰り返したが、HZSM−5モレキュラーシーブとSilicalite−1モレキュラーシーブとを物理的に混合すると、二機能性触媒(HZSM−5&S1触媒という)が得られ、ここでHZSM−5モレキュラーシーブとSilicalite−1モレキュラーシーブの重量比は3:1であった。
【0086】
c.二機能性触媒の製造
HZSM−5モレキュラーシーブの代わりにHZSM−5&S1触媒を用いた以外は、比較例1の「二機能性触媒の調製」を繰り返すと、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−HZSM−5&S1物理混合触媒という)が得られ、ここでCr/Zn触媒とHZSM−5&S1触媒の重量比は2:1であった。
【0087】
d.触媒試験
Cr/Zn−HZSM−5触媒の代わりにCr/Zn−HZSM−5&S1触媒を用いた以外は、実施例1の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0088】
〔比較例6〕
実施例2の「Cr/Zn触媒の製造」及び「Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、それぞれCr/Zn触媒及びZn/ZSM−5@S1触媒が得られた。
【0089】
実施例2の「触媒試験」を繰り返したが、Cr/Zn触媒とZn/ZSM−5@S1触媒を混合せず、これらの2つの触媒をそれぞれ固定床の形態で高圧固定床反応器の2段に、石英綿によって中間が分けられた状態で固定し、ここでガス流れ方向に沿って、Cr/Zn触媒の部分が前方にあり、Zn/ZSM−5@S1触媒の部分が後方にあった。反応結果は表1に示すとおりである。
【0090】
〔実施例3〕
a.Fe/Zn/Cu触媒の製造
9.0gのFe(NO
3)
3・9H
2O、3.8gのZn(NO
3)
2・6H
2O及び1.3gのCu(NO
3)
2・3H
2Oを200mLの脱イオン水に溶解させると、鉄、亜鉛、銅を含む混合水溶液が得られた。10.0gのNa
2CO
3を100mLの脱イオン水に溶解させると、炭酸ナトリウム水溶液が得られた。これらの2種類の溶液を少量の脱イオン水の入ったビーカーに同時に滴下して共沈させた。共沈中に、撹拌し続け、この2種類の溶液の相対流速を制御することにより、温度を85℃に、pHを8〜8.5に維持した。沈殿終了後は85℃で2時間静置してエージングさせた。沈殿物を濾過してから、脱イオン水で洗浄した。洗浄した沈殿物をオーブンで120℃で12時間焼成し、さらにマッフル炉で320℃で5時間焼成すると、メタノール合成触媒(Fe/Zn/Cu触媒という)が得られた。該触媒における金属元素のモル比はFe/Zn/Cu=55:32:13であった。
【0091】
b.Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造
実施例2の「Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブが得られた。
【0092】
c.二機能性触媒の製造
得られたFe/Zn/Cu触媒とZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの粉末を物理的に混合し、10分間粉砕し、さらに圧縮成形すると、機械撹拌法による二機能性触媒(Fe/Zn/Cu−Zn/ZSM−5@S1という)が得られ、ここでFe/Zn/Cu触媒とZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの重量比は2:1であった。
【0093】
d.触媒試験
Cr/Zn−Zn/ZSM−5@S1触媒の代わりにFe/Zn/Cu−Zn/ZSM−5@S1触媒を用いた以外は、実施例2の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0094】
〔実施例4〕
a.Zr/Zn触媒の製造
2.0gのZrO
2を1mol/Lの硝酸亜鉛水溶液に含浸させ、120℃の温度で一晩乾燥させてから、マッフル炉で400℃で3時間焼成すると、ZrO
2−ZnO触媒(Zr/Zn触媒という)が得られ、ここでZrとZnの元素のモル比は13.5:1であった。
【0095】
b.Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造
実施例2の「Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブが得られた。
【0096】
c.二機能性触媒の製造
得られたZr/Zn触媒とZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの粉末を物理的に混合し、10分間粉砕し、さらに圧縮成形すると、機械撹拌法による二機能性触媒(Zr/Zn−Zn/ZSM−5@S1という)が得られ、ここでZr/Zn触媒とZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの重量比は2:1であった。
【0097】
d.触媒試験
Cr/Zn−Zn/ZSM−5@S1触媒の代わりにZr/Zn−Zn/ZSM−5@S1触媒を用いた以外は、実施例2の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0098】
〔実施例5〕
a.Cr/Zn/Al触媒の製造
23.6gのCr(NO
3)
3・9H
2O、9.0gのZn(NO
3)
2・6H
2O 9.0g及び5.4gのAl(NO
3)
3・9H
2O を、100mlの脱イオン水に溶解させた。次いで比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」と同様に共沈法を行うと、Cr/Zn/Al触媒が得られ、ここでCrとZnとAlの元素のモル比は4:2:1であった。
【0099】
b.Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造
実施例2の「Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、Zn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブが得られた。
【0100】
c.二機能性触媒の製造
得られたCr/Zn/Al触媒とZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの粉末を物理的に混合し、10分間粉砕し、さらに圧縮成形すると、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn/Al−Zn/ZSM−5@S1という)が得られ、ここでCr/Zn/Al触媒とZn/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの重量比は3:1であった。
【0101】
d.触媒試験
Cr/Zn−Zn/ZSM−5@S1触媒の代わりにCr/Zn/Al−Zn/ZSM−5@S1触媒を用いた以外は、実施例2の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0102】
〔実施例6〕
a.Cr/Zn触媒の製造
比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」を繰り返すと、Cr/Zn触媒が得られた。
【0103】
b.Ag/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの製造
比較例1の「HZSM−5モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、HZSM−5モレキュラーシーブが得られた。次いで1mol/Lの硝酸銀水溶液に1.5gのHZSM−5モレキュラーシーブを加え、80℃で15時間撹拌し続け、イオン交換を行った。イオン交換が終了したら室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpHが7〜8になるまで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で500℃で4時間焼成すると、Ag/ZSM−5モレキュラーシーブが得られた。Ag/ZSM−5モレキュラーシーブの全重量に基づくと、Agの含有量は1wt%であった。
【0104】
HZSM−5モレキュラーシーブの代わりにAg/ZSM−5を用いた以外は、実施例1の「HZSM−5@S1触媒の製造」を繰り返した。Ag/ZSM−5@Silicalite−1モレキュラーシーブ(Ag/ZSM−5@S1触媒という)が得られ、ここでAg/ZSM−5モレキュラーシーブをコアとし、Silicalite−1モレキュラーシーブをシェルとして、Ag/ZSM−5モレキュラーシーブとSilicalite−1モレキュラーシーブの重量比は3:1であった。
【0105】
c.二機能性触媒の製造
得られたCr/Zn触媒とAg/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの粉末を物理的に混合し、10分間粉砕し、さらに圧縮成形すると、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−Ag/ZSM−5@S1という)が得られ、ここでCr/Zn触媒とAg/ZSM−5@S1モレキュラーシーブの重量比は1:1であった。
【0106】
d.触媒試験
Cr/Zn−Zn/ZSM−5@S1触媒の代わりにCr/Zn−Ag/ZSM−5@S1触媒を用いた以外は、実施例2の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0107】
〔実施例7〕
a.Cr/Zn触媒の製造
比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」を繰り返すと、Cr/Zn触媒が得られた。
【0108】
b.HZSM−5@MgO触媒の製造
比較例1の「HZSM−5モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、HZSM−5モレキュラーシーブが得られた。1mol/Lの硝酸マグネシウム水溶液に2.0gのHZSM−5モレキュラーシーブを含浸させ、次いで120℃の温度で一晩乾燥させてから、マッフル炉で500℃で4時間焼成すると、HZSM−5@MgOモレキュラーシーブ(HZSM−5@MgOという)が得られ、ここでHZSM−5モレキュラーシーブをコアとし、MgOをシェルとする。HZSM−5@MgOモレキュラーシーブの全重量に基づくと、MgOの含有量は1wt%であった。
【0109】
c.二機能性触媒の製造
得られたCr/Zn触媒とHZSM−5@MgO触媒の粉末を物理的に混合し、10分間粉砕し、圧縮成形すると、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−HZSM−5@MgOという)が得られ、ここでCr/Zn触媒とHZSM−5@MgO触媒の重量比は2:1であった。
【0110】
d.触媒試験
0.5gのCr/Zn−HZSM−5@MgO触媒を高圧固定床反応器で固定床の形態で充填し、H
2とCOの体積比が2.1の合成ガスを連続的に通気し、反応圧力を3MPaに、合成ガスの空間速度を1200h
−1に、反応温度を400℃に制御した。4時間反応させたら、反応生成物と原料ガスをガスクロマトグラフィーによりオンラインで分析し、反応特性は表1に示すとおりである。
【0111】
〔実施例8〕
a.Cr/Zn触媒の製造
比較例1の「Cr/Zn触媒の製造」を繰り返すと、Cr/Zn触媒が得られた。
【0112】
b.HZSM−5@SiO
2モレキュラーシーブの製造
比較例1の「HZSM−5モレキュラーシーブの製造」を繰り返すと、HZSM−5モレキュラーシーブが得られた。SiO
2膜をストーバー法で調製し、1.0gのHZSM−5モレキュラーシーブ、5〜10μLのTEOS、15mlのエタノールを20mlのビーカーに入れ、2.3mlの25wt%アンモニア溶液を滴下してから、2時間撹拌した。反応終了後に得られた生成物を濾液のpHが7になるまでエタノールで洗浄し、一晩乾燥させてから、マッフル炉で500℃で4時間焼成すると、HZSM−5@SiO
2触媒(HZSM−5@SiO
2)が得られた。SiO
2膜を均一に被覆するために、この工程を2〜3回繰り返した。最後に、HZSM−5@SiO
2モレキュラーシーブの全重量に基づくと、SiO
2の含有量は1wt%であった。
【0113】
c.二機能性触媒の製造
得られたCr/Zn触媒とHZSM−5@SiO
2触媒の粉末を物理的に混合し、10分間粉砕し、さらに圧縮成形すると、機械撹拌法による二機能性触媒(Cr/Zn−HZSM−5@SiO
2という)が得られ、ここでCr/Zn触媒とHZSM−5@SiO
2触媒の重量比は2:1であった。
【0114】
d.触媒試験
Cr/Zn−Zn/ZSM−5@S1触媒の代わりにCr/Zn−HZSM−5@SiO
2触媒を用いた以外は、実施例2の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0115】
〔比較例7〕
触媒はFe/Zn/Cu触媒だけを使用し、モレキュラーシーブを使用せず、実施例3の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0116】
〔比較例8〕
触媒はZr/Zn触媒だけを使用し、モレキュラーシーブを使用せず、実施例4の「触媒試験」を繰り返した。反応結果は表1に示すとおりである。
【0117】
【表1】
【0118】
注記
MeOH:メタノール
DME:ジメチルエーテル
C
2〜C
5:C
2〜C
5炭化水素
余分:全ての他の生成物
MX:メタキシレン
OX:オルトキシレン
PX:パラキシレン
PX/X:キシレンに対するパラキシレンの選択率
【国際調査報告】