(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-536141(P2020-536141A)
(43)【公表日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】バッテリーコンパートメント
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20201113BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20201113BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/02
H01M2/10 E
H01M2/10 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-518438(P2020-518438)
(86)(22)【出願日】2018年10月1日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2018076569
(87)【国際公開番号】WO2019068599
(87)【国際公開日】20190411
(31)【優先権主張番号】1759179
(32)【優先日】2017年10月2日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラシェッド, ウィサム
(72)【発明者】
【氏名】デュフォール, ニコラス
【テーマコード(参考)】
4J002
5H040
【Fターム(参考)】
4J002BB073
4J002BB093
4J002BB213
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4J002FD203
4J002GG00
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5H040AA36
5H040AA37
5H040AS07
5H040AY03
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
本発明は、電気又はハイブリッド車両用のバッテリーコンパートメントであって、−組成物の全重量に対して20〜80重量%の強化繊維;−組成物の全重量に対して0〜20重量%の少なくとも一種の衝撃改質剤;−組成物の全重量に対して0〜20重量%の添加剤を含み;−残りが、−大部分が少なくとも一種のポリアミドと−少なくとも一種の難燃剤を含むマトリックスである、組成物からなることを特徴とするコンパートメントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気又はハイブリッド車両用のバッテリーコンパートメントであって、
− 組成物の全重量に対して20〜80重量%の強化繊維;
− 組成物の全重量に対して0〜20重量%の少なくとも一種の衝撃改質剤;
− 組成物の全重量に対して0〜20重量%の添加剤
を含み、
− 残りが、
− 大部分が少なくとも一種のポリアミドと
− 少なくとも一種の難燃剤
を含むマトリックスである、
組成物から構成されることを特徴とするコンパートメント。
【請求項2】
コンパートメントを構成する組成物のマトリックスが、組成物中に存在するポリアミドの全重量に対して10重量%と30重量%の間に含まれる難燃剤含有量を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンパートメント。
【請求項3】
コンパートメントを構成する組成物のマトリックス中に存在するポリアミドが、アミノ酸、ラクタム及び式(Caジアミン)・(Cb二酸)を満たす単位(式中、aはジアミンの炭素数を表し、bは二酸の炭素数を表し、aとbはそれぞれ4と36の間に含まれる)から選択されるモノマーの重縮合により得られる少なくとも2つの同一又は異なる繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンパートメント。
【請求項4】
組成物のマトリックス中に存在するポリアミドが、PA6、PA66、PA6/66、PA46、PA6T/66、PA6T/6I/66、PA610、PA612、PA69/12、PA614、PA6/12、PA11/12、PA12、PA11、PA1010、PA1012、PA618、PA10T、PA6/12/66、PA12/10T、PA1010/10T、PA6/6T/10T、PA11/6T/10T、PA12/6T/10T、PA6/69/11/12、PA6/66/11/12、PA11/10.T、PA11/BACT、11/BACT/6T、MXDT/10T、MPMDT/10T、BACT/6T及びBACT/10T並びにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項5】
コンパートメントを形成する組成物のマトリックス中に存在するポリアミドが、窒素原子当たり9以上、好ましくは10以上、より好ましくは9と18の間に含まれ、特に10と18の間に含まれる平均炭素原子数を有することを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項6】
コンパートメントを形成する組成物のマトリックス中に存在するポリアミドが、PA612、PA69/12、PA614、PA6/12、PA11/12、PA12、PA11、PA1010、PA1012、PA618、PA10T、PA12/10T、PA1010/10T、PA11/6T/10T、PA12/6T/10T、PA6/69/11/12、PA11/10.T、11/BACT、11/BACT/6T、MXDT/10T、MPMDT/10T、BACT/6T及びBACT/10T並びにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のコンパートメント。
【請求項7】
コンパートメントを構成する組成物のマトリックス中に存在する難燃剤が、ホスフィン酸の金属塩、ジホスフィン酸の金属塩、ホスフィン酸の少なくとも一種の金属塩を含むポリマー、ジホスフィン酸の少なくとも一種の金属塩を含むポリマー;赤リン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の金属ホウ酸塩又はピロリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項8】
コンパートメントを構成する組成物のマトリックスが、組成物中に存在するポリアミドの全重量に対して15重量%と25重量%の間に含まれる難燃剤含有量を含むことを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項9】
コンパートメントを構成する組成物が、鉱物繊維及びポリマー繊維から選択される強化繊維を含むことを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項10】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維及びアラミド繊維又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から9の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項11】
コンパートメントを構成する組成物中に存在する衝撃改質剤が、次の官能化ポリオレフィン(B1):
− エチレン、アクリル酸アルキル及び無水マレイン酸ターポリマー;
− エチレン、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸グリシジルターポリマー;
− 無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン及びポリエチレン;
− 無水マレイン酸グラフト化エチレン・プロピレンコポリマー、及び場合によってはジエンモノマー;
− 無水マレイン酸グラフト化エチレン・オクテンコポリマー;
並びにそれらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項12】
衝撃改質剤含有量が、組成物の全重量に対して1重量%と10重量%の間に含まれることを特徴とする、請求項1から11の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項13】
コンパートメントを形成する組成物中に存在する添加剤が、ハロゲン化銅、酢酸銅、ハロゲン化銀、酢酸銀、銅複合体系安定剤、フェノール系酸化防止剤、リン系安定剤、HALS、アミン型安定剤、多官能安定剤などの熱安定剤;可塑剤、潤滑剤、有機又は無機顔料、抗紫外線剤;帯電防止剤;無機フィラー及び有機フィラーから選択されることを特徴とする、請求項1から12の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項14】
コンパートメントを構成する組成物が、組成物の全重量に対して0.1重量%と15重量%の間に含まれる添加剤含有量を含むことを特徴とする、請求項1から13の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項15】
− 請求項1から14の何れか一項に記載の組成物で構成され、バッテリーに直接適合されるように企図された内側筺体と
− 特に防湿層としての、外側筺体
の少なくとも2つの筺体を含むことを特徴とする、請求項1から14の何れか一項に記載のコンパートメント。
【請求項16】
外部からの攻撃からバッテリーを保護するための、請求項1から15の何れか一項に記載のバッテリーコンパートメントの使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、電池の使用を必要とする電気又はハイブリッドタイプの自動車車両の分野に関する。
特に、本発明は、電気又はハイブリッド自動車車両用のバッテリーコンパートメントに関する。
【0002】
「電気自動車車両」とは、電池タイプの車両の承認に関する国連規則第100号において定義された車両を意味すると理解される。
自動車の分野において求められている目的の一つは、汚染の少ない車両を提案することである。よって、バッテリーを備えた電気又はハイブリッド車両は、ガス又はディーゼル車両などの燃焼機関車両に次第に取って代わることを目標としている。
【0003】
バッテリーは比較的複雑な車両部品になった。その作動温度は55℃を超えないことが必要であり、さもないと、幾つかのバッテリーセルが故障して、その寿命を短くする可能性がある。火炎リスクを回避することもまた重要である。更に、車両内のバッテリーの位置によっては、衝撃や、極端な温度や湿度の変化の可能性がある外部環境からバッテリーを保護する必要がある場合がある。
【0004】
よって、コンパートメント内のバッテリーを保護することが知られている。現在、バッテリーには金属コンパートメントが装備されている。
このコンパートメントは、比較的重く、特に湿度の高い環境に配置されている場合、時間の経過と共に比較的すぐに壊れるという欠点がある。
よって、上述の特定の仕様を満たす材料が、既知の金属構造を置き換えるために模索されている。
【0005】
目標は、電気又はハイブリッド車両用のバッテリーコンパートメントであって、
− 組成物の全重量に対して20〜80重量%の強化繊維;
− 組成物の全重量に対して0〜20重量%の少なくとも一種の衝撃改質剤;
− 組成物の全重量に対して0〜20重量%の添加剤
を含み、
− 残りが、
− 大部分が少なくとも一種のポリアミドと
− 少なくとも一種の難燃剤
を含むマトリックスである、
組成物から構成されることを特徴とするコンパートメントによって達成される。
【0006】
本発明に係るバッテリーコンパートメントは、金属構造よりも軽いという利点を有する。この軽量化は、クリーンと記述される車両の望ましいエネルギー又は燃料効率への影響に寄与する。
【0007】
車両内でのその配置に応じて、このコンパートメントは攻撃的な環境に接していることがある:夏は高温、冬は低温、塩化亜鉛との接触、衝撃、高湿度である。本発明に係るコンパートメントは、これらの外部ストレスに対して満足できる耐性を有していることが観察された。
【0008】
更に、必要とされる引火性基準は、難燃剤の存在によって満たすことができる。
更に、自動車製造メーカーによれば、バッテリーの形状を変えることができることが観察された。実際、製造メーカーはこのバッテリーをこれまで使用されていないか又は比較的使用に適さないスペースに収容しようとしている。成形又は射出によるプラスチックの成形は、金属板の成形よりも簡単である。
【0009】
本発明の他の特性、特徴、主題及び利点は、以下の説明及び実施例を読んだ後に更に明確になるであろう。
前の段落においてだけでなく本明細書の残りの部分においても使用される「間に含まれる」という表現は、示された各末端を含むものとして理解されなければならないことが示される。
本発明の意味において、「バッテリーコンパートメント」は、バッテリーの周りに配置される筺体(エンクロージャー)又はボックスを意味すると理解される。本発明に係るコンパートメントは、バッテリーの構成部品ではない。コンパートメントの機能は、バッテリーを保護することである。
【0010】
[ポリアミド]
本発明に係るコンパートメントは、少なくとも一種のポリアミドを含むマトリックスを含む組成物から構成される。
本発明によれば、「ポリアミド」という用語は、PAとも記載され、以下を包含する:
− ホモポリマー;
− 異なるアミド単位に基づくコポリマー又はコポリアミド、例えば、ラクタム−6及びラクタム−12から誘導されたアミド単位を有する6/12コポリアミド。
【0011】
一般に、ポリアミドは、少なくとも2つの同一又は異なる繰り返し単位を含み、これらの単位は2つの対応するモノマー又はコモノマーから形成される。従って、ポリアミドは、アミノ酸、ラクタム及び/又はカルボン酸二酸及びジアミンから選択される2種以上のモノマー又はコモノマーから形成される。
【0012】
本発明に係るポリアミドは、ホモポリアミドであり得、アミノ酸、ラクタム及び式(Caジアミン)・(Cb二酸)を満たす単位から選択されるモノマーの重縮合によって得られる少なくとも2つの同一の繰り返し単位を含み得、aはジアミンの炭素数を表し、bは二酸の炭素数を表し、aとbはそれぞれ4と36の間に含まれ、例えば以下に記載される。
【0013】
本発明に係るポリアミドは、コポリアミドであり得、少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含み得、これらの単位は、アミノ酸、ラクタム及び式(Caジアミン)・(Cb二酸)を満たす単位から選択されるモノマーの重縮合によって得ることができ、aはジアミンの炭素数を表し、bは二酸の炭素数を表し、aとbはそれぞれ4と36の間に含まれ、例えば以下に記載される。
【0014】
本発明に係るポリアミドは、脂肪族、脂環式、半芳香族又は芳香族でさえありうる。
本発明に係るポリアミドは、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、12−アミノドデカン酸及び11−アミノウンデカン酸及びそれらの誘導体、特にN−ヘプチル−11−アミノウンデカン酸から選択される少なくとも一種のアミノ酸を含みうる。
本発明に係るポリアミドは、ピロリジノン、ピペリジノン、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタムから選択される少なくとも一種のラクタムを含みうる。
本発明に係るポリアミドは、式(Caジアミン)・(Cb二酸)を満たす少なくとも一つの単位を含みうる。
(Ca中のジアミン)単位が式H
2N−(CH
2)
a−NH
2の脂肪族及び直鎖ジアミンである場合、Caジアミンは、ブタンジアミン(a=4)、ペンタンジアミン(a=5)、ヘキサンジアミン(a=6)、ヘプタンジアミン(a=7)、オクタンジアミン(a=8)、ノナンジアミン(a=9)、デカンジアミン(a=10)、ウンデカンジアミン(a=11)、ドデカンジアミン(a=12)、トリデカンジアミン(a=13)、テトラデカンジアミン(a=14)、ヘキサデカンジアミン(a=16)、オクタデカンジアミン(a=18)、オクタデカンジアミン(a=18)、エイコサンジアミン(a=20)、ドコサンジアミン(a=22)、及び二量体化脂肪酸から得られるジアミンから選択される。
Caジアミンは、メチル−ペンタン−メチレン−ジアミン(MPMD)から選択される分岐脂肪族ジアミンでありうる。
【0015】
ジアミンが脂環式である場合、それは、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロ−ヘキシル)プロパン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロ−ヘキシル)ブタン、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)−メタン(BMACM又はMACM)、p−ビス(アミノシクロヘキシル)−メタン(PACM)及びイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、シス及びトランス1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC、CAS番号2579−20−6)、及びシス及びトランス1,4ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC、CAS番号2549−07−9)から選択される。
【0016】
それはまた、次の炭素骨格を含みうる:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン。これらの脂環式ジアミンの非網羅的なリストは、刊行物“Cycloaliphatic Amines”(Encyclopaedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, 4版(1992), pp. 386-405)に記載されている。
ジアミンがアルキル芳香族である場合、それは、1,3−キシリレンジアミン及び1,4−キシリレンジアミン及びそれらの混合物から選択される。
モノマー(Cbの二酸)が脂肪族で直鎖の場合、それは、コハク酸(y=4)、ペンタン二酸(y=5)、アジピン酸(y=6)、ヘプタン二酸(y=7)、オクタン二酸(y=8)、アゼライン酸(y=9)、セバシン酸(y=10)、ウンデカン二酸(y=11)、ドデカン二酸(y=12)、ブラシル酸(y=13)、テトラデカン二酸(y=14)、ヘキサデカン二酸(y=16)、オクタデカン酸(y=18)、オクタデセン二酸(y=18)、エイコサン二酸(y=20)、ドコサン二酸(y=22)及び36の炭素を含む脂肪酸二量体から選択される。
【0017】
上述の脂肪酸二量体は、特に文献EP0471566に記載されているように、一塩基性不飽和長鎖炭化水素脂肪酸(リノール酸及びオレイン酸など)のオリゴマー化又は重合によって得られる二量体化脂肪酸である。
【0018】
二酸が脂環式である場合、それは、次の炭素骨格を含みうる:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン。
二酸が芳香族である場合、それは、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレン二酸から選択される。
【0019】
以下をコポリアミドの例として挙げることができる:カプロラクタムとラウロラクタムのコポリマー(PA6/12)、カプロラクタム、アジピン酸及びヘキサメチルジアミンのコポリマー(PA6/66)、カプロラクタム、ラウロラクタムとアジピン酸及びヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/12/66)、カプロラクタム、アザライン酸及びヘキサメチレンジアミン、11−アミノウンデカン酸及びラウロラクタムのコポリマー(PA6/69/11/12)、カプロラクタム、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミン、11−アミノウンデカン酸及びラウロラクタム(PA6/66/11/12)、アゼライン酸及びヘキサメチレンジアミン及びラウロラクタムのコポリマー(PA69/12)。
【0020】
好ましくは、本発明に係る組成物において使用されるポリアミドは、カプロラクタム又はアミノカプロン酸の重縮合から生じるPA6ホモポリアミド、11−アミノウンデカン酸の重縮合から生じるPA11ホモポリアミド、ラウロラクタム又は12−アミノドデカン酸の重縮合から生じるPA12ホモポリアミド、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合から生じるPA6.6コポリアミドから選択される。
【0021】
より具体的には、ポリアミド単位は、PA6、PA66、PA6/66、PA46、PA6T/66、PA6T/6I/66、PA610、PA612、PA69/12、PA614、PA6/12、PA11/12、PA12、PA11、PA1010、PA1012、PA618、PA10T、PA6/12/66、PA12/10T、PA1010/10T、PA6/6T/10T、PA11/6T/10T、PA12/6T/10T、PA6/69/11/12、PA6/66/11/12、PA11/10T、PA11/BACT、11/BACT/6T、MXDT/10T、MPMDT/10T、BACT/6T及びBACT/10T並びにそれらの混合物から選択される。
【0022】
ポリアミド混合物を使用することができる。有利には、20℃において硫酸中の1%溶液で測定されるポリアミドの相対粘度は、1.5と5の間に含まれる。
ポリアミド又はポリアミド混合物は、好ましくは、十分に半結晶性である、すなわち、融解エンタルピーが25J/g(DSCにより測定)以上であるように選択される。
【0023】
一般に、ポリアミドは、その窒素原子当たりの炭素原子数によって区別され、アミド基(−CO−NH−)と同じ数の窒素原子があることが分かる。
PA−X・Yホモポリアミドの場合、窒素原子当たりの炭素原子数は単位Xと単位Yの平均である。
コポリアミドの場合、窒素原子当たりの炭素原子数は同じ原理に従って計算される。計算には、様々なアミド単位のモル比が使用される。
【0024】
低炭素ポリアミドは、窒素原子(−NH−)と比較して炭素原子(C)のレベルが低いポリアミドである。これらは、窒素原子当たり9個未満の炭素原子を持つポリアミド、例えば、ポリアミド−6、ポリアミド−6.6、ポリアミド−4.6、コポリアミド−6.T/6.6、コポリアミド6.I/6.6、コポリアミド−6.T/6.I/6.6及びポリアミド9.T.である。Iはイソフタル二酸を表す。
【0025】
高炭素ポリアミドは、窒素原子(−NH−)と比較して炭素原子(C)のレベルが高いポリアミドである。これらは、窒素原子当たり少なくとも9個の炭素原子を持つポリアミド、例えば、ポリアミド−9、ポリアミド−12、ポリアミド−11、ポリアミド−10.10(PA10.10)、コポリアミド12/10.T、コポリアミド11/10T、ポリアミド−12.T及びポリアミド−6.12(PA6.12)である。Tはテレフタル酸/イソフタル酸を表す。
【0026】
PA−X・Yホモポリアミドの場合、窒素原子当たりの炭素原子数は、単位Xと単位Yの平均である。よって、PA6.12は、窒素原子当たり9個の炭素原子を持つPAである;換言すれば、それはC9PAである。PA6.13はC9.5である。PA−12はC10であり、テレフタル酸を意味するTはC8である。
【0027】
コポリアミドの場合、窒素当たりの炭素原子数は同じ原理に従って計算される。計算には、様々なアミド単位のモル比が使用される。よって、coPA−6.T/6.6 60/40モルパーセントはC6.6:60%×(6+8)/2+40%×(6+6)/2=6.6である。非アミド型単位を有するコポリアミドの場合、計算はアミド単位の部分のみでなされる。好ましくは、コンパートメントを形成する組成物のマトリックス中に存在するポリアミド又はポリアミド混合物は、窒素原子当たりの平均炭素原子数が9以上、好ましくは10以上、より好ましくは9と18の間に含まれ、特に10と18の間に含まれる。
【0028】
コンパートメントを形成する組成物のマトリックス中に存在する好ましいポリアミドは、PA612、PA69/12、PA614、PA6/12、PA11/12、PA12、PA11、PA1010、PA1012、PA618、PA10T、PA12/10T、PA1010/10T、PA11/6T/10T、PA12/6T/10T、PA6/69/11/12、PA11/10.T、11/BACT、11/BACT/6T、MXDT/10T、MPMDT/10T、BACT/6T及びBACT/10T並びにそれらの混合物から選択される。
好ましくは、ポリアミド又はポリアミドの混合物は、高い使用温度で使用可能でなければならない。一つの可能な選択基準は、好ましくは、それらが170℃以上の融点を有するものを選択することである。
【0029】
本発明の意味において、大部分とは、マトリックス内の50%を超える部分を意味すると理解される。
一又は複数種のポリアミドが、組成物の全重量に対して20〜80重量%を占める。
【0030】
[難燃剤]
本発明に係るコンパートメントは、少なくとも一種の難燃剤を含むマトリックスを含む組成物から構成される。
好ましくは、難燃剤は、US2008/0274355に記載されているような、ハロゲンフリー難燃剤、特に、ホスフィン酸金属塩、ジホスフィン酸金属塩、少なくとも一種のホスフィン酸金属塩を含むポリマー、少なくとも一種のジホスフィン酸金属塩を含むポリマーから選択される。難燃剤は、赤リン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩、ピロリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、及びシリコン化又はフッ素化タイプの非ドリップ剤からまた選択されうる。
難燃剤はまた前述の難燃剤の混合物でありうる。
【0031】
それらはまた、臭素化又はポリ臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート又は臭素化フェノールなどのハロゲン化難燃剤でありうる。
好ましくは、本発明に係るホスフィン酸金属塩は以下の式(I)であり、ジホスフィン酸金属塩は以下の式(II)である:
上式中、
R
1とR
2は、互いに独立して、直鎖又は分岐C
1−C
6アルキル基又はアリール基を示し;
R
3は、直鎖又は分岐C
1−C
10アルキレン、C
6−C
10アリーレン、C
6−C
10アルキルアリーレン、又はC
6−C
10アリールアルキレン基を表し;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K及び/又はプロトン化アミン塩基であり;
mは1〜4の範囲の整数であり;
nは1〜4の範囲の整数であり;
xは1〜4の範囲の整数であり;
ここで、nとmは、塩が中性になるように、すなわち塩が正味の電荷を持たないように選択される。
【0032】
好ましくは、Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム又は亜鉛イオンを表す。
好ましくは、R
1とR
2は、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、及びn−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル及び/又はフェニル基を表す。
好ましくは、R
3は、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレン、ナフタレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、tert−ブチルナフタレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、又はフェニルブチレン基を表す。
【0033】
より具体的には、本発明に係る組成物のマトリックス中に存在する難燃剤含有量は、組成物中に存在するポリアミドの全重量に対して、10重量%と30重量%の間、好ましくは15重量%と25重量%の間、より具体的には17重量%と22重量%の間に含まれる。
【0034】
[強化繊維]
バッテリーコンパートメントを形成する本発明に係る組成物は、組成物の全重量に対して20〜80重量%の強化繊維を含む。
本発明に係る組成物中に存在する繊維は、異なる寸法を有しうる。
強化繊維は、短繊維、長繊維、又は連続繊維でありうる。様々な寸法及び/又は様々なタイプのこれらの繊維の混合物もまた使用されうる。
好ましくは、「短」繊維は、長さが200μmと400μmの間である。
長繊維の長さは1000μmを超える。
【0035】
これら強化繊維は、以下から選択されうる:
− 無機繊維で、本発明に係るコンパートメント組成物のマトリックス中に存在する前記ポリアミドの融解温度Tmより高く、重合及び/又は実施温度より高い高融解温度Tm’を有するもの;
− 融解温度Tm’、又はTm’でなければ、重合温度より高く、又は本発明に係るコンパートメント組成物のマトリックス中に存在する前記ポリアミドの融解温度Tmより高く、実施温度より高いガラス転移温度Tg’を有するポリマー繊維;
− 天然繊維;
− 又は上で引用された繊維の混合物。
【0036】
本発明に適した無機繊維の例は、炭素繊維(これは、ナノチューブ又はカーボンナノチューブ(CNT)の繊維、カーボンナノファイバー又はグラフェンを含む);シリカ繊維、例えばガラス繊維、特にタイプE、R又はS2;ホウ素繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、玄武岩繊維;金属及び/又はそれらの合金を含む繊維又はフィラメント;金属酸化物繊維、特にアルミナ(Al
2O
3)繊維;金属化繊維、例えば金属化ガラス繊維及び金属化炭素繊維、又は先に引用した繊維の混合物である。
ガラス繊維の長さは、ISO22314:2006(E)規格に従って測定される。
【0037】
以下を、本発明に適したポリマー繊維として挙げることができる:
− 非晶質熱可塑性ポリマーベースの繊維で、ガラス転移温度Tgが、マトリックスが非晶質の場合、マトリックス中に存在するポリアミド又はポリアミド混合物のTgより高いか;あるいはマトリックスが半結晶性の場合、マトリックス中に存在するポリアミド又はポリアミド混合物のTmより高いもの。
有利には、それらは半結晶性熱可塑性ポリマーベースであり、融点Tmが、マトリックスが非晶質である場合、マトリックス中に存在するポリアミド又はポリアミド混合物のTgより高いか;あるいはマトリックスが半結晶性である場合、マトリックス中に存在するポリアミド又はポリアミドの混合物のTmより高い。よって、最終複合材料の熱可塑性マトリックスによる含浸中に、強化材料を構成する有機繊維が溶融するリスクはない。
− 熱硬化性ポリマー繊維で、より詳細には以下から選択されるもの:不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレート及びポリイミド、例えばビスマレイミド樹脂、メラミンなどのアミンとグリオキサールやホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの反応から生じるアミノプラスト
− 熱可塑性ポリマーの繊維で、より詳細には以下から選択されるもの:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、
− ポリアミド繊維、
− アラミド繊維(Kevlar(登録商標)など)及び式PPP.T、MPD.I、PAA及びPPAの一つを有するものなどの芳香族ポリアミドで、PPD及びMPDはそれぞれp−及びm−フェニレンジアミン、PAAはポリアリールアミド、PPAはポリフタルアミドである、
− ポリアミド/ポリエーテルなどのポリアミドブロックコポリマーの繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維。
【0038】
天然由来の繊維、特に植物由来の繊維には次のものを挙げることができる:亜麻、リシン、木材、ケナフ麻、ココナッツ、大麻、ジュート、リグニン、竹、絹、特にクモの糸、サイザル麻に基づく繊維、その他のセルロース繊維、特にビスコース。これらの植物繊維は、純粋なまま使用されるか、ポリマーマトリックスの接合性と含浸性を改善するために、処理され又はコーティング層でコーティングされうる。
強化繊維は、またファブリック、編物、又は繊維で織られたものでありうる繊維状材料で構成されうる。
強化繊維はまた維持糸を有する繊維にも対応できる。
【0039】
これらの構成繊維は、単独で又は混合物で使用することができる。而して、有機繊維を鉱物繊維と混合して、ポリマーマトリックスに含浸させ、予備含浸された繊維状材料を形成することができる。
【0040】
有機繊維粗紡体(ロービング)は、幾つかの坪量を有しうる。更に、それらは幾つかの幾何形状を有しうる。繊維は短繊維形態をとり得、これはついでストリップ、層、又は断片の形態をとりうるフェルト又は不織布を構成し、又は、連続繊維形態をとり得、これは2Dファブリック、編物、又は一方向(UD)又は不織繊維の粗紡体を構成する。繊維状材料の構成繊維は、異なる幾何形状を持つこれら強化繊維の混合物の形態を更にとりうる。
好ましくは、繊維状材料は、連続炭素、ガラス又は炭化ケイ素繊維又はそれらの混合物、特に炭素繊維から構成される。それは一又は幾つかの粗紡体の形態で使用される。
【0041】
好ましい短強化繊維は、金属化繊維を含む炭素繊維、E、R、S2のような金属化ガラス繊維を含むガラス繊維、(ケブラー(登録商標)のような)アラミド繊維又は芳香族ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)繊維、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)繊維、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)繊維又はそれらの混合物から選択される短繊維である。
好ましくは、強化繊維は、ガラス、炭素、セラミック及びアラミド繊維又はそれらの混合物から選択される。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、本発明に係るコンパートメントは、熱伝導特性を有する。この好ましい実施態様によれば、強化繊維は、好ましくは、炭素繊維及び窒化ホウ素繊維から選択される。
本発明の別の実施態様によれば、本発明に係るコンパートメントは断熱特性を有する。この好ましい実施態様によれば、強化繊維は、好ましくは、ガラス繊維、玄武岩繊維及びアラミド繊維から選択される。
より具体的には、本発明に係る組成物中の強化繊維含有量は、組成物の全重量に対して20重量%と80重量%の間に含まれる。
【0043】
使用される繊維のサイズに応じて、本発明の組成物において、短、長又は連続強化繊維含有量は異なりうる。
よって、短強化繊維の場合、繊維含有量は、好ましくは強化繊維の20重量%と60重量%の間に含まれる。
長又は連続強化繊維の場合、繊維含有量は、好ましくは強化繊維の60重量%と80重量%の間に含まれる。
【0044】
[衝撃改質剤]
バッテリーコンパートメントを形成する本発明に係る組成物は、組成物の全重量に対して0〜20重量%の少なくとも一種の衝撃改質剤を含む。
衝撃改質剤は、有利には、50%RHで標準ISO178に従って測定された100MPa未満の曲げ弾性率と2013年の標準11357−2に従って測定された0℃未満のTgを有するポリマーによって構成される。
ポリアミドのガラス転移温度Tgは、標準ISO1 1357−2:2013に従って、2回目の加熱パスの後、示差走査熱量計(DSC)を使用して測定される。加熱及び冷却速度は20℃/分である。
【0045】
好ましくは、衝撃改質剤は、一又は複数種のポリオレフィンであって、その一部又は全てがカルボン酸、無水カルボン酸及びエポキシド官能基から選択される官能基を有するものから形成される。非常に特定的には、ポリオレフィンは、エラストマー性のエチレンとプロピレンのコポリマー(EPR)、エラストマー性のエチレン−プロピレン−ジエンコポリマー(EPDM)及びエチレン/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーから選択することができる。
【0046】
組成物は、前記組成物の全重量に対して最大50重量%までの、50%RHでISO 178標準に従って測定された、300MPaを超え、有利には800MPaを超える曲げ弾性率を有する半結晶性ポリオレフィン又はポリオレフィンの混合物を含みうる。
この衝撃改質剤は、官能化ポリオレフィン(B1)である。
【0047】
本発明によれば、官能化ポリオレフィン(B1)は、次のポリマーを意味すると理解される。
官能化ポリオレフィン(B1)は、反応性単位:官能基を有するアルファ−オレフィンポリマーでありうる。そのような反応性単位は、カルボン酸、無水物又はエポキシ官能基である。
例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、ブタジエンのような、アルファ−オレフィン又はジオレフィンのホモポリマー又はコポリマーを例として挙げることができ、より具体的には、
− エチレンのホモポリマー及びコポリマー、特にLDPE、HDPE、LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)及びメタロセンポリエチレン;
− プロピレンのホモポリマー又はコポリマー;
− エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、例えばエチレン/プロピレン、EPR(エチレン−プロピレン−ゴムの略)及びエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM);
− スチレン/エチレン−ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー;
− エチレンと、(メタ)アクリル酸アルキル(例えばアクリル酸メチル)などの不飽和カルボン酸の塩又はエステル、あるいは酢酸ビニル(EVA)などの飽和カルボン酸のビニルエステルから選択された少なくとも一種の生成物とのコポリマーで、コモノマーの割合が40重量%に達しうるもの
である。
上述したこれらのポリオレフィンは、カルボン酸、無水物又はエポキシ官能基などの反応性単位(官能基)によってグラフト化、共重合又は三元重合されうる。
【0048】
より具体的には、これらのポリオレフィンは、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和エポキシドによって、又は(メタ)アクリル酸などのカルボン酸又は対応する塩もしくはエステル(これはZn等の金属によって完全に又は部分的に中和できる)によって又は無水マレイン酸などの無水カルボン酸によって、グラフトされ又は共重合又は三元重合される。
官能化ポリオレフィン(B1)は、次の無水マレイン酸又はメタクリル酸グリシジルでグラフトされた(コ)ポリマーから選択することができ、グラフト率は、例えば0.01〜5重量%である:
− PE、PP、例えば35〜80重量%のエチレンを含むエチレンとプロピレン、ブテン、ヘキセン、又はオクテンとのコポリマー;
− エチレン/プロピレン、EPR(エチレン−プロピレン−ゴムの略)及びエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)などのエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー;
− スチレン/エチレン−ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー;
− 最大40重量%までの酢酸ビニルを含む、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー(EVA);
− 最大40重量%までの(メタ)アクリル酸アルキルを含む、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマー;
− 最大40重量%までのコモノマーを含む、エチレンと酢酸ビニル(EVA)と(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマー。
【0049】
官能化ポリオレフィンは、例えば、重量比が例えば40/60と90/10の間で広く変化しうるPE/EPR混合物であり、前記混合物は、例えば0.01〜5重量%のグラフト率に従って無水物、特に無水マレイン酸と共グラフトされる。
官能化ポリオレフィン(B1)は、モノアミンポリアミド(又はポリアミドオリゴマー)と縮合した大部分の無水マレイン酸グラフト化プロピレンを含むエチレン/プロピレンコポリマー(EP−A−0342066に記載されている生成物)からまた選択されうる。
【0050】
官能化ポリオレフィン(B1)はまた少なくとも次の単位のコポリマー又はターポリマーでありうる:
(1)エチレン;
(2)(メタ)アクリル酸アルキル又は飽和カルボン酸ビニルエステル;及び
(3)無水物、例えば無水マレイン酸又は無水(メタ)アクリル酸あるいはエポキシ、例えばメタクリル酸グリシジル。
【0051】
後者のタイプの官能化ポリオレフィンの例としては、エチレンが好ましくは少なくとも60重量%を占め、ターモノマー(官能性)が、例えばコポリマーの0.1〜12重量%を占める、次のコポリマーが挙げられる:
− エチレン/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸又は無水マレイン酸又はメタクリル酸グリシジルのコポリマー;
− エチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸又はメタクリル酸グリシジルのコポリマー;
− エチレン/酢酸ビニル又は(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸又は無水マレイン酸又はメタクリル酸グリシジルのコポリマー。
前述のコポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸はZn又はLiで塩化されうる。
【0052】
(B1)の「(メタ)アクリル酸アルキル」という用語は、メタクリル酸C
1−C
8アルキル及びアクリル酸C
1−C
8アルキルを示し、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチル−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルから選択されうる。
【0053】
更に、先に引用したポリオレフィン(B1)はまた任意の適切な方法又は薬剤(ジエポキシ、二酸、過酸化物など)によって架橋されうる;また、官能化ポリオレフィンという用語は、先に引用されたポリオレフィンと、これらと、又は一緒に反応できる少なくとも二種の官能化ポリオレフィンの混合物と反応できる二酸、二無水物、ジエポキシなどの二官能性試薬との混合物を含む。
上記のコポリマー(B1)は、統計的又は逐次的な形で共重合され得、直鎖又は分岐構造を有しうる。
【0054】
これらのポリオレフィンの分子量、MFI、及び密度はまた当業者に知られているように広く変動しうる。MFI(メルトフローインデックスの略)は、溶融時の流動性の指標である。規格ASTM1238に従って測定される。
【0055】
有利には、官能化ポリオレフィン(B1)は、アルファ−オレフィン単位とエポキシ、カルボン酸又は無水カルボン酸官能基のような極性反応性官能基を有する単位を含む任意のポリマーから選択される。そのようなポリマーの例として、本出願人のLotader(登録商標)のようなエチレン、アクリル酸アルキル及び無水マレイン酸もしくはメタクリル酸グリシジルのターポリマー、又は本出願人のOrevac(登録商標)のような無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン並びにエチレン、アクリル酸アルキル及び(メタ)アクリル酸のターポリマーを挙げることができる。出願EP0342066に記載されているように、無水カルボン酸グラフト化ポリプロピレンによるホモポリマー又はコポリマーをついでポリアミド又はポリアミドモノアミンオリゴマーと縮合させたものも挙げることができる。
【0056】
より具体的には、官能化ポリオレフィン(B1)は、
− エチレン、アクリル酸アルキル及び無水マレイン酸のターポリマー;
− エチレン、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸グリシジルのターポリマー;
− 無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン及びポリエチレン;
− 無水マレイン酸グラフト化エチレン及びプロピレンのコポリマー及び場合によりジエンモノマー;
− 無水マレイン酸グラフト化エチレン及びオクテンのコポリマー;
並びにそれらの混合物
である。
官能化ポリオレフィン(B1)は、組成物の全重量に対して0重量%と20重量%の間、好ましくは1重量%と10重量%の間に含まれる濃度で存在する。
【0057】
有利には、本発明に係る組成物は、少なくとも一種の非官能化ポリオレフィン(B2)を含みうる。
非官能化ポリオレフィン(B2)は、一般的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、ブタジエンなどのアルファ−オレフィン又はジオレフィンのホモポリマー又はコポリマーである。例として、次のものを挙げることができる:
− ポリエチレンのホモポリマー及びコポリマー、特にLDPE、HDPE、LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)及びメタロセンポリエチレン;
− プロピレンのホモポリマー又はコポリマー;
− エチレン/プロピレン、EPR(エチレン−プロピレン−ゴムの略)及びエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)などのエチレン/アルファ−オレフィンコポリマー;
− スチレン/エチレン−ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー;
− (メタ)アクリル酸アルキル(例えばアクリル酸メチル)などの不飽和カルボン酸の塩又はエステル、あるいは酢酸ビニル(EVA)などの飽和カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも一種の生成物とエチレンとのコポリマーで、コモノマーの割合が40重量%に達しうるもの;
及びそれらの混合物。
【0058】
上述のコポリマー(B2)は、統計的又は逐次的に共重合され得、直鎖又は分岐構造を有しうる。
有利には、非官能化ポリオレフィン(B2)は、ポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマー及び任意のエチレンホモポリマー又はエチレンコポリマー及びブテン、ヘキセン、オクテン又は4−メチル−1−ペンテンなどの高級アルファ−オレフィンコモノマーから選択される。PP(ポリプロピレン)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンを例として挙げることができる。これらのポリエチレンは、フリーラジカル法、チーグラー触媒法、又はより最近ではメタロセン触媒反応からの生成物として当業者に知られている。エチレンと酢酸ビニル(EVA)のコポリマー、例えば、本出願人によりEVATANEの商品名で販売されているものがまた好ましい。
【0059】
本発明に係る組成物が一又は複数の非官能化ポリオレフィンを含む場合、(A)のMFI並びに(B1)及び(B2)のMFIは広い範囲にわたって選択されうるが、(B1)と(B2)の粘度が(B1)と(B2)の分散性を改善するように接近していることが推奨される。
非官能化ポリオレフィンは、組成物の全重量に対して0重量%と20重量%の間、好ましくは1重量%と10重量%の間に含まれる濃度で存在する。
【0060】
[添加剤]
バッテリーコンパートメントを形成する本発明に係る組成物は、0〜20%の添加剤をまた含みうる。
好ましくは、コンパートメントを形成する組成物中に存在する添加剤は、熱安定剤、可塑剤、潤滑剤、有機又は無機顔料、抗UV剤、帯電防止剤、無機フィラー及び有機フィラーから選択される。
この熱安定剤は、銅ベースの安定剤、有機安定剤及びそれらの混合物から選択されうる。
銅ベースの安定剤は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、酢酸第一銅及び酢酸第二銅などの銅ベースの化合物から選択される一又は複数の構成要素で構成されうる。
【0061】
ハロゲン化物、及び銀などの他の金属の酢酸塩を挙げることができる。これらの銅ベースの化合物は、典型的には、アルカリ金属のハロゲン化物を伴っている。よく知られている例は、CuIとKIの混合物で、CuI:KI比が典型的には包括的に1:5と1:15の間である。このような安定剤の例は、CibaのPolyadd P201である。
銅を含む安定剤の詳細は、米国特許第2705227号に見出される。より最近では、例えばBruggemannのBruggolen H3336、H3337、H3373などの銅複合体のような銅ベースの安定剤が出現している。
【0062】
有利には、銅ベースの安定剤は、ハロゲン化銅、酢酸銅、少なくとも一種のアルカリ金属ハロゲン化物と混合したハロゲン化銅又は酢酸銅、及びそれらの混合物、好ましくはヨウ化銅とヨウ化カリウムの混合物(CuI/KI)から選択される。
【0063】
有機安定剤は、以下から選択されうる(この列挙は限定的ではない):
− フェノール抗酸化剤、例えばCibaのIrganox 245、Irganox 1010、Irganox 1098、CibaのIrganox MD1024、Great LakesのLowinox 44B25;
− 亜リン酸塩などのリンベースの安定剤、例えばCibaのIrgafos(登録商標)168;
− 紫外線吸収剤、例えばCibaのTinuvin 312、
− 前述の、HALS、
− アミン型安定剤、例えばCromptonのNaugard 445、又はCibaのTinuvin 770などのヒンダードアミン型、
− 多官能安定剤、例えばClariantのNylostab S−EED。
これらの有機安定剤の2種以上の混合物も明らかに想定することができる。
【0064】
組成物内の熱安定剤の量は、好ましくは、組成物の全重量に対して0.05重量%と5重量%の間に含まれる。
【0065】
添加剤は、特に、可塑剤、例えばBBSA(N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミド)、潤滑剤、例えばステアリン酸;有機又は無機顔料;抗紫外線剤;帯電防止剤;無機フィラー、例えば、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛及び有機フィラーから選択されうる。
フィラーとしては、シリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン又は更にはガラスビーズを挙げることができる。
好ましくは、組成物中に存在する添加剤は、一般に、組成物の全重量に対して0.1〜15重量%、好ましくは1〜15重量%の濃度を有する。
【0066】
好ましい実施態様によれば、本発明に係るバッテリーコンパートメントは、
− 組成物の全重量に対して20〜80重量%の強化繊維;
− 組成物の全重量に対して1〜10重量%の少なくとも一種の衝撃改質剤;
− 組成物の全重量に対して0.1〜15重量%の添加剤
を含み、
− 残りが、
− 大部分が少なくとも一種のポリアミドと
− 組成物中に存在するポリアミドの全重量に対して10〜30重量%の少なくとも一種の難燃剤
を含むマトリックスである、組成物から作製される。
【0067】
より好ましい実施態様によれば、本発明に係るバッテリーコンパートメントは、
− ガラス、炭素、セラミック及びアラミド繊維又はそれらの混合物から選択される、組成物の全重量に対して20〜80重量%の強化繊維;
− 組成物の全重量に対して1〜10重量%の少なくとも一種の衝撃改質剤;
− 組成物の全重量に対して0.1〜15重量%の添加剤
を含み、
− 残りが、
− 大部分が少なくとも一種のポリアミドと
− 組成物の全重量に対して10〜30重量%の少なくとも一種の難燃剤
を含むマトリックスである、組成物から作製される。
【0068】
バッテリーコンパートメントはまた少なくとも2つの筺体:
− バッテリーに直接適合化させることが企図された内側筐体;
− 外側筺体
を含みうる。
本発明の意味において、内側とはバッテリー側に配置されたことを意味する。
本発明の意味において、外側とは、例えば道路側への配置のような、外気と接触することが企図されたことを意味する。
一又は複数の更なる筺体の存在は、コンパートメントに改善された保護を付与するのに役立つ。予想される特性によれば、この更なる筺体は防湿効果を有し得、バッテリーのシール、耐衝撃性の向上、又は断熱特性を提供することを意味する。
好ましい実施態様によれば、この外側筺体は、防湿筺体であり得、特に、EVOH製、ポリオレフィン製、例えばポリプロピレン又はポリエチレン:HDPE、LDPE製でありうる。
【0069】
[組成物の調製方法]
本発明はまた上に記載の組成物の調製方法を包含する。この方法によれば、組成物は、強化繊維のサイズを考慮しながら、本発明に係る組成物と場合によっては他の添加剤を含む均一混合物を得ることを可能にする任意の方法、例えば溶融状態押出、圧縮、又はローラーミキサーによってでも調製することができる。
有利には、混合又は混練のための熱可塑性プラスチック工業からの一般的装置、例えば二軸スクリュー型押出機などの押出機、例えばBUSSコニーダーなどの混練機が使用される。
【0070】
[コンパートメントの製造方法]
繊維のサイズに応じて、本発明に係るバッテリーコンパートメントは、様々な技術によって作製することができる。
繊維が短い場合、本発明に係るバッテリーコンパートメントは、上に記載されたような少なくとも一種の組成物の射出、押出、共押出、熱圧縮、及びマルチインジェクションによって得ることができる。
繊維が長いか又は連続している場合、本発明に係るバッテリーコンパートメントは、引抜成形、フィラメントワインディング、熱圧縮、注入成形、レジントランスファー成形(RTM)、構造射出及び反応成形(S−RIM)又は射出圧縮成形から選択される様々な技術によって作製されうる。特定の密閉金型技法は、RTM又はS−RIM又は射出圧縮である。ここで、RTMにおける「レジン」という用語は、強化繊維を含まない本発明に係る組成物を特定する。
【0071】
特定の実施態様によれば、製造方法は、
− 型に強化繊維を適用する工程と、次に
− 本発明に係る組成物の前駆体組成物による前記繊維の含浸の少なくとも一工程
を含みうる。
本発明に係る組成物の前駆体組成物とは、上に記載された本発明に係る組成物であるが、強化繊維を含まない組成物を意味すると理解される。
【0072】
[使用]
最後に、本発明は、外部からの攻撃からバッテリーを保護するための、上に記載されたバッテリーコンパートメントの使用を包含する。
【国際調査報告】