【実施例】
【0225】
本明細書の実施例では、標的化mRNA分解を促進する、よく認識されたm
6AリーダーであるYthdf2(Wang et al. Blood, 505: 17-120, 2014)を、少なくとも部分的に、HSC維持に関連したその役割を調査する目的で試験する。いかなる特定の理論にも限定されずに、Ythdf2の操作は、m
6Aでマークされた多数のmRNAの寿命に潜在的に影響を及ぼす可能性があり、したがって、成体HSC自己複製対分化に影響を及ぼし、HSC増大を容易にするものと考えられる。下の実施例において示されているように、Ythdf2枯渇により、マウスおよびヒトHSCが、系列運命が歪むことなく特異的に増大する。したがって、Ythdf2はHSC自己複製の制御において不可欠な役割を果たす可能性があり、臨床的適用におけるものを含め、hUCB HSCのex vivoでの増大を増強するための新規の手法をもたらすものであると考えられる。
【0226】
実施例では、薬物抵抗性rHSC集団の機能的な定義、ならびに、rHSCが、恒常性の間および化学療法ストレス下で、大部分はN−cad
+細胞により骨内膜ニッチ内に維持されるという所見も示される。骨内膜帯域内のN−cad
+細胞が、間葉系幹細胞であり、rHSC維持に寄与することがさらに示される。
【0227】
(実施例A)
以下の実施例「A」では以下のプロトコールを使用した。
【0228】
マウス。Ythdf2コンディショナルKOマウスがChuan HeおよびBin Shenのグループにより生成された。マウスをStowers Institute for Medical Research(SIMR)の動物施設内に収容し、研究所およびNIHのガイドラインに従って取り扱った。手順は全てIACUC of SIMRによって認可されたものであった。
【0229】
フローサイトメトリーおよびHSPC選別。マウスHSPC、前駆細胞、および系列細胞をBM(大腿骨および脛骨)ならびに脾臓から採取した。0.16Mの塩化アンモニウム溶液を使用して赤血球を溶解させ、70μmストレーナーを用いて細胞を濾過して、単一細胞懸濁物を生成した。マウスHSC同定のために、細胞を、Sca−1(D7)、c−Kit(2B8)、CD34(RAM34)、Flk2(A2F10)、CD48(HM48−1)、CD150に対する抗体(TC15−12F12.2)を、CD3(145−2C11)、CD4(RM4−5)、CD8(53−6.7)、Mac−1(M1/70)、Gr1(RB6−8C5)、CD45R(B220、RA3−6B2)、IgM(Il−41)およびTer119(TER−119)を含む系列カクテルと共に用いて染色した。前駆細胞および系列細胞に関しては、細胞を以前に記載されている抗体で染色した(Qian, P. et al. Cell Stem Cell, 18: 214-228, 2016, doi:10.1016/j.stem.2015.11.001)。7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD)(A1310、Life technologies)を使用して死細胞を排除した。ヒト臍帯血試料をSt.Louis Cord Blood Bankから取得した。Lymphoprep(商標)(StemCell technologies)を用いて単核細胞を単離し、その後、ヒトCD34
+臍帯血細胞をヒトCD34MicroBead Kit UltraPure(Miltenyi Biotec)によって単離した。ヒトHSPCを定量化するために、細胞を、CD34(581)、CD38(HIT2)、CD45RA(HI100)、CD90(5E10)、CD49f(GoH3)、EPCR/CD201(RCR−401)に対する抗体で染色した。細胞選別および分析をMoFlo(Dako)、InFlux Cell Sorter(BD Biosciences)、および/またはMACSQuant(Miltenyi Biotec)で実施した。FlowJoソフトウェアを使用してデータ分析を実施した。
【0230】
ホーミングアッセイ。in vivoホーミングアッセイを以前に記載されている通り実施した(He et al. Methods in Molecular Biology, 1185: 279-284, 2014)。基本的に、CD45.2マウス由来の全骨髄(WBM)細胞を5μMの5−(および−6)−カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA SE)(Molecular Probes)を用いて37℃で10分間標識し、3回洗浄し、WBM 1×10
6個を、致死的に照射を受けたptprcマウスに移植した。18時間後に、大腿骨および脛骨を洗い出し、CFDA SE+細胞を決定した。
【0231】
競合的再構成アッセイ。wtマウスまたはYthdf2 KOマウス(CD45.2)由来のドナー由来WBM細胞2×10
5個、7.5×10
4個または2.5×10
4個を、レスキュー細胞(CD45.1)2×10
5個と共に、致死的に照射を受けた(10Gy)ptprcレシピエントマウス10匹の群に静脈内移植することにより、競合的再構成アッセイを実施した。二次移植のために、一次移植レシピエントを屠殺した。BM細胞を大腿骨および脛骨から切開し、次いで、照射を受けた二次レシピエントマウスに細胞1×10
6個の投与量でマウス間移植した。バイトリル水をレシピエントマウスに照射の3日前に与え、照射後さらに2週間継続した。一次および二次CRU頻度をELDAソフトウェアを使用して測定し(Hu et al. Journal of Immunological Methods, 347: 70-78, 2009)、上首尾の生着を、それぞれ末梢血中の総造血細胞の≧5%および≧1%の別個のCD45.2
+CD45.1
−集団が存在することと定義した(Purtonet al. Cell Stem Cell, 1: 263-270, 2007)。また、移植の16週間後よりも前に死亡した二次移植レシピエントマウスを生着失敗としてカウントした。
【0232】
細胞周期およびアポトーシスアッセイ。細胞周期分析を、FITCマウス抗ヒトKi67セット(BD Pharmingen)を製造者の指示に従って用いて実施した。簡単に述べると、BM細胞5×10
6個を単離し、上記の通りHSC抗体で染色した。細胞を4%パラホルムアルデヒドにより4℃で終夜または室温(RT)で1時間にわたって固定し、次いで、0.2%triton X−100を用いて氷上で15分にわたって透過処理した。細胞を、2%FBSを含有するPBSで洗浄し、次いで、Ki−67抗体と一緒に暗闇中、RTで1時間インキュベートし、SYTOX Red(Invitrogen)と一緒にRTでさらに5分間インキュベートし、その後、InFlux Cell Sorter(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリー分析を行った。アポトーシス分析のために、BM細胞5×10
6個のアネキシンV(Invitrogen)およびSYTOX Red染色を製造者のプロトコールに従って実施した。
【0233】
m
6A RNA−IP−seq。C57BL/6Jマウス由来のLT−HSC、ST−HSC(LSK CD34
+FLK2
−)およびMPP(LSK CD34
+FLK2
+)10
5個の2つの反復物をTRIzol(Invitrogen)中に選別し、全RNAを製造者の指示に従って単離した。Ambion断片化試薬を用いてRNAを約100ヌクレオチドの断片に断片化した(70℃で2分のインキュベーション)。次いで、試料をTurbo DNase処理(Ambion)に供し、その後、フェノール−クロロホルム抽出を行い、ヌクレアーゼを含まない水85μl中に再浮遊させ、5μlをインプットとして保存した。次いで、残りの80μlのRNA断片をIPP緩衝液(150mMのNaCl、0.1%のNP−40、10mMのTris−HCl、pH7.5)中に希釈した。RNAを、抗m
6Aポリクローナル抗体(Synaptic Systems)3μgを予め結合させたプロテインG磁気ビーズ25μlと一緒にIPP緩衝液中、4℃で3時間インキュベートした。ビーズをIPP緩衝液200μlで2回洗浄し、低塩緩衝液(50mMのNaCl、0.1%のNP−40、10mMのTris−HCl、pH7.5)200μlで2回洗浄し、高塩緩衝液(500mMのNaCl、0.1%のNP−40、10mMのTris−HCl、pH7.5)200μlで2回洗浄した。次いで、ビーズを溶出緩衝液(5mMのTris−HCL、pH7.5、1mMのEDTA、pH8.0、0.05%SDS、プロテイナーゼK(20mg/ml)4.2μl)300μlを用いて50℃で1.5時間にわたって処理し、フェノール:クロロホルム抽出、その後、エタノール沈殿を用いてRNAを回収した。3つのヒトCD34
+臍帯血液細胞を上記の通り単離し、TRIzolを用いて全RNAを単離した。Ambion断片化試薬を用いてRNAを約100ヌクレオチドの断片に断片化した(70℃で2分50秒のインキュベーション)。次いで、試料をTurbo DNase処理(Ambion)に供し、その後、フェノール:クロロホルム抽出を行い、ヌクレアーゼを含まない水18μlに再浮遊させ、1μlをインプットとして保存した。EpiMark(登録商標)N6−Methyladenosine Enrichment Kitを製造者の指示に従って用いてm
6A RNA IPを実施した。
【0234】
RNAのm
6A調製後、品質をAgilent 2100 Bioanalyzerで評価し、SMARTer Stranded Total RNA−Seq Kit − Pico Input Mammalian(Takara Bio Inc)について製造者の指示に従い、16サイクル(マウス)または13サイクル(ヒト)のPCR2増幅を使用してRNAseqライブラリーを生成するためにRNA 1ng(マウス)または10ng(ヒト)を使用した。当該方法では、ランダムプライミングおよびテンプレートスイッチングオリゴ(template switching oligo)を使用して、相補DNAを生成し、その後、バーコードを付したアダプターのライゲーションを行う。次いで、リボソーム由来のcDNAをプローブ特異的酵素切断およびその後の切断されていない断片の富化によって除去した。
【0235】
PCR1精製に1.2×SPRIビーズ濃度を使用することにより、低分子量の試料断片が保持されるようにプロトコールを改変した。二量体を形成したアダプターを除去するために、ライブラリーを、Pippin Prep(Sage Science)2%ゲルを用いた160〜600bpのサイズ選択に供した。得られたライブラリーを、Bioanalyzer and Qubit Fluorometer(Life Technologies)を使用して品質および数量について確認した。次いで、等モル濃度のライブラリーをプールし、再び定量化した。マウスm
6A−seqに関しては、ライブラリーを50bpの単一リードとしてIllumina HiSeq 2500機器でHiSeq Control Software 2.2.58を使用して配列決定した。配列決定後、Illumina Primary Analysis version RTA 1.18.64およびSecondary Analysis version bcl2fastq2 v2.18を実行して全てのライブラリーについてリードを逆多重化し、FASTQファイルを生成した。ヒトm
6A−seqに関しては、ライブラリーを75bpの単一リードとしてIllumina NextSeq機器でNextSeq Control Software 2.1.2を使用して配列決定した。配列決定後、Illumina Primary Analysis version NextSeq RTA2.4.11およびSecondary Analysis version bcl2fastq2 v2.18を実行して全てのライブラリーについてリードを逆多重化し、FASTQファイルを生成した。
【0236】
プラスミド構築および安定細胞株の生成。マウスYthdf2(mYthdf2)を市販のcDNAクローン(ORIGENE#MC200730)からベクターpcDNA5/FRT/Flagプラスミドに、以下に列挙するプライマーを使用してクローニングした:mYthdf2 ORF Clone BamhI F:5’−CGC GGA TCC TCG GCC AGC AGC CTC TTG GA−3’およびmYthdf2 ORF Clone NotI R:5’−ATA AGA ATG CGG CCG CCT ATT TCC CAC GAC CTT GAC GT−3’。次いで、Flag−mYthdf2をEF1aプロモーターの下でpSicoR−EF1a−IRES−EGFPレンチウイルス構築物にサブクローニングした(Gibson Assembly(登録商標)、フォワードプライマー:5’−GTC GAC GGT ACC GCG GGC CCA TGG ATT ACA AGG ATG ACG ACG−3’およびリバースプライマー:5’−GAG GGA GAG GGG CGG ATC CCC TAT TTC CCA CGA CCT TGA CGT−3’)。ヒトYthdf2(hYthdf2)をChuan He labにより供給されたプラスミドから以下に示すプライマーを使用してクローニングした:フォワード 5’−CGT TCG AAA TGT CGG CCA GCA GCC TCT−3’;リバース5’−TCC CCC GGG TTA TTT CCC ACG ACC TT−3’。次いで、hYthdf2をpSicoR−EF1a−IRES−EGFP構築物にEF1aプロモーターの下でBstBIおよびXmaI制限酵素消化およびライゲーションによってクローニングした。Flag−mYthdf2 HPC7安定細胞株を生成するために、pSicoR−EF1a−Flag−mYthdf2−IRES−EGFP構築物をpsPAX2およびpMD2.Gプラスミドと共に10:7.5:2.5の比でリン酸カルシウムトランスフェクションを使用して293T細胞にトランスフェクトすることによってレンチウイルスを生成した。トランスフェクションの48時間後、72時間後、および96時間後にウイルス粒子を採取し、0.45マイクロメーターの濾過ユニット(Millipore)によって濾過し、次いで、4℃、18,000RPMで2時間遠心分離した。HPC7細胞に組換えレンチウイルス形質導入単位を4μg/mLのポリブレン(Sigma)の存在下で感染させた。感染の48時間後、GFP
+細胞を実験のために選別し、培養した。
【0237】
irCLIP−seqおよびデータ分析。irCLIP−seqに関しては、手順を以前に報告された方法(Zarneger et al. Nature Methods, 13: 489-492, 2016); Simsek et al.Cell, 169: 1051-1065 e1018, 2017)から改変した。簡単に述べると、Flag−Ythdf2 HPC7細胞約3×10
8個に対して、細胞を0.4J/cm
2で3回UV架橋結合させることによってirCLIPを実施した。全細胞溶解物を溶解緩衝液(150mMのKCl、10mMのHEPES、pH7.6、2mMのEDTA、0.5%のNP−40、0.5mMのDTT、1:100のプロテアーゼ阻害剤カクテル、400U/mlのRNase阻害剤;細胞ペレット1mlおよび溶解緩衝液2ml)中に生成させた。数回ピペットで吸引排出し、次いで、mRNP溶解物を氷上で5分間インキュベートし、液体窒素を用いて−80℃でショック凍結した。mRNP溶解物を氷上で解凍し、15,000gで15分間遠心分離して溶解物を清澄化した。Flag−Ythdf2を、抗Flagモノクローナル抗体(Sigma)2μgを回転させながら4℃で2時間にわたって予め結合させたプロテインG磁気ビーズを溶解物1ml当たり30μlで用いて単離した。ビーズを採取し、氷冷NT2緩衝液(200mMのNaCl、50mMのHEPES、pH7.6、2mMのEDTA、0.05%のNP−40、0.5mMのDTT、200U/mlのRNase阻害剤)1mlで8回洗浄し、irCLIP NT2緩衝液(50mMのTris、pH7.5;150mMのNaCl;1mMのMgCl
2;0.0005%のNP−40)200μlで1回洗浄した。mRNP複合体をRNase1(Thermo Fisher#AM2294)をirCLIP NT2緩衝液(水性体積30μlおよびPEG400 6μlを補充したもの(最終16.7%))中0.4U/μlで用いて消化した。ヌクレアーゼ反応物を30℃で15分間、Eppendorf Thermomixer、1,400r.p.m.で15秒、90秒静止でインキュベートした。氷冷高ストリンジェンシー緩衝液(20mMのTris、pH7.5;120mMのNaCl;25mMのKCl;5mMのEDTA;1%のTrition−X100;1%のデオキシコール酸Na)0.5mLを添加することによってヌクレアーゼ消化を停止させた。次いで、免疫沈降物を氷冷irCLIP NT2緩衝液0.25mL、次いで0.05mLですぐにすすいだ。irCLIPアダプターライゲーションおよびライブラリー構築は以前に報告されたプロトコールに従った(Zarnegeret al. Nature Methods, 13: 489-492, 2016)。
【0238】
データをFAST−iCLIPバージョン0.9.3を使用して逆多重化し、UCSCからのマウスゲノムmm10に対して、パラメーター「−−outFilterScoreMinOverLread 0 −−outFilterMatchNminOverLread 0 −−outFilterMatchNmin 0」を用いて、STAR(2.4.2a)を使用してアラインメントした。RPM正規化ゲノムブラウザトラックをR(3.4.1)で創出し、Gvizパッケージ(1.20.0)を使用してプロットした。3つの反復物全てで見いだされた各結合性部位の中間点を取り、上流および下流に20塩基を付加し、MEME(4.11.1)をパラメーター「−dna −mod zoops −revcomp −minw 5 −maxw 10 −nmotifs 10 −maxsize 1000000」を用いて実行することにより、富化されたモチーフを同定した。モチーフの同定後、transfac(1−2017)に対してtomtom(4.11.1)を実行して既知の結合性部位を同定した。Rで超幾何分布検定(hypergeometric test)を使用してGO富化分析を実施した。GO用語のBH調整されたp値が0.05未満であれば、GO用語が富化されたとみなした。選択された目的の用語を棒プロットで示す。棒プロットの棒は、当該用語を有する試験された一覧中の遺伝子のパーセンテージを、当該用語を有するゲノム内の遺伝子のパーセンテージで割ったものを示す。3つの反復物全てにおいてFAST−iCLIPによって見いだされたピークをゲノム内の様々な特徴に割り当てた。プロモーターをTSSの上流150塩基と定義した。「trans_stop」を転写開始部位の上流および下流200塩基と定義した。
【0239】
臍帯血形質導入。臍帯血形質導入を以前に記載されている通り行った(Rentas, S.et al. Nature, 532: 508-511, 2016, doi: 10.1038/nature17665)。簡単に述べると、新鮮なCD34
+臍帯血細胞またはフロー選別したCD34
+CD38
−細胞を、増殖因子インターロイキン6(IL−6;20ng/ml、Peprotech)、幹細胞因子(SCF;100ng/ml、Peprotech)、Flt3リガンド(FLT3−L;100ng/ml、Peprotech)およびトロンボポエチン(TPO;20ng/ml、Peprotech)を補充したStemSpan培地(StemCell Technologies)中で12〜18時間にわたって前刺激した。次いで、同じ培地にレンチウイルスを感染効率(MOI)50〜200で添加して24時間置いた。次いで、細胞を形質導入後2日間置いた後、in vitroまたはin vivoアッセイを行った。ヒトYTHDF2を、以前の報告(Wang,X. et al. Nature 505: 117-120, 2014, doi: 10.1038/nature12730)に使用されている通り、CDSのN末端付近の5’−AAGGACGTTCCCAATAGCCAA−3’を標的とするshRNAによるノックダウンのために標的化された。スクランブルshRNA(シード配列5’−GCGCGATAGCGCTAATAAT−3’)を対照として使用した。
【0240】
クローン原性前駆細胞アッセイ。10日目の培養した形質導入された細胞からフロー選別したGFP
+臍帯血細胞(1ml当たり12,000個)を半固体メチルセルロース培地(Methocult H4034;StemCell Technologies)に再浮遊させた。14日間インキュベートした後にコロニーカウントを行った。
【0241】
ヒト臍帯血液HSPC培養物。形質導入の2日後、ヒト臍帯血CD34
+またはCD34
+CD38
−細胞を採取し、フローサイトメトリーによってGFP
+パーセンテージを決定した。増大前に等しい数のGFP
+細胞が培養されることを確実にするために、対照およびhYthdf2 KD間の%GFP
+が一致するように、等しく培養したGFP
−細胞をGFP
+パーセンテージがより高いものに添加した。次いで、細胞を増殖因子IL−6(20ng/ml)、SCF(100ng/ml)、FLT3−L(100ng/ml)、TPO(20ng/ml)およびCHIR99021(250nM)(Stemgent)を補充したStemSpan培地(StemCell Technologies)に1ml当たり10
5個の密度で播種した(Perry et al. Genes and Development, 25: 1928-1942, 2011)。
【0242】
ヒトHSC異種移植。ヒト臍帯血HSCのex vivoでの増大を分析するために、選別されたCD34
+CD38
−細胞10
5個にヒトYTHDF2 shRNAまたは対照shRNAを3日間にわたって形質導入し、次いで、形質導入効率(%GFP
−/+)および幹細胞マーカーについて分析した。10日目に、培養細胞を幹細胞マーカー分析のために採取した。hUBC HSC一次LDAアッセイのために、CD34
+細胞を上記の通り富化させ、ヒトYTHDF2 shRNAまたは対照shRNAを50 MOIで形質導入した。感染の24時間後に培地を交換した。感染の3日後に対照またはYTHDF2 KD細胞から等しい数のGFP
+細胞を選別し、終夜培養した。3つの用量、50K個、20K個および10K個の選別されたGFP
+細胞をそれぞれ、亜致死的に照射を受けた(3.25Gy)NSGマウスに移植した。HSC生着のカットオフは、一次移植レシピエントのBMにおける総CD45
+細胞のうちヒトCD45
+GFP
+細胞が1%よりも多く示されることであった。hUCB HSC二次LDAアッセイのために、移植の10週間後に、最も高い2つの用量の一次レシピエントからBM細胞を採取し、混合した。3つの用量、1.2×10
7個、8×10
6個、4×10
6個のBM細胞をそれぞれ、亜致死的に照射を受けた(3.25Gy)NSGマウスに移植した。HSC生着のカットオフは、二次移植レシピエントのBMにおける総CD45
+細胞のうちヒトCD45
+GFP
+細胞が0.2%よりも多く示されることであった。ELDAソフトウェア(Hu et al. Journal of Immunological methods, 347: 70-78, 2009)を使用してHSC頻度を評価した。全てのヒト臍帯血異種移植実験について、6〜8週齢の雌NSGマウスを使用した。
【0243】
m
6A−seqデータ分析。ヒトおよびマウスm
6A−seqデータをhg19およびmm10のトランスクリプトームに対してアラインメントした。m
6Aピークを同定するために、hg19およびmm10トランスクリプトームを25ヌクレオチド幅のタイルに分けた。各タイルにおいてm
6A IPおよび非IP(対照)試料におけるリードの数をカウントし、フィッシャーの直接検定を用いてp値を算出し、複数の試験について調整した。有意なm
6Aシグナル富化(調整P値≦0.05)を有するタイルをより大きな領域に合体させた。100bpよりも小さな領域は破棄し、200bpを超える領域を100〜200bpの小領域に分けた。各領域において対照を超えるm
6Aシグナルを算出した。全ての反復物において少なくとも2倍の富化を有する領域をm
6Aピークとして同定した。全てのm
6Aピークをhg19およびmm10 RefGeneアノテーションとオーバーラップすることにより、m
6Aピーク分布およびm
6Aでマークされた遺伝子を決定した。m
6Aピークをhg19 RefGeneとオーバーラップすることにより、m
6Aでマークされた遺伝子を同定した。転写因子をフィルタリングするために、3つの試料全てにおけるm
6Aによりマークされた遺伝子をヒト転写因子データベースhttp://fantom.gsc.riken.jp/5/sstar/Browse_Transcription_Factors_hg19と比較した。次いで、Rパッケージ富化GOを使用してGO用語分析を実施した。m
6Aでマークされたヒト転写因子を検索一覧として使用し、全ての発現した遺伝子をバックグラウンドとして使用した。有意な富化を有する造血関連BP用語を使用して
図3Cを作成した。
【0244】
RNA−seq。ヒト臍帯血CD34
+細胞に対照またはヒトYTHDF2 KDレンチウイルスを形質導入し、10日後にGFP
+CD34
+について選別した。各群についてGFP
+CD34
+細胞12,000個の3つの反復物を選別し、全RNAを抽出するために使用した。高品質の全RNA 4ナノグラムをcDNA合成およびライブラリー調製のために製造者の指示に従ってSMART−Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(Takara、634891)およびNextera XT(Illumina、FC−131−1096)と共に使用した。得られた短い断片ライブラリーを品質および数量についてAgilent 2100 BioanalyzerおよびInvitrogen Qubit Fluorometerを使用して確認した。等モル濃度ライブラリーをプールし、再び定量化し、Illumina NextSeq 500機器の高倍率フローセルで75塩基対の単一リードとして配列決定した。配列決定後、Illumina Primary Analysis version NextSeq RTA2.4.11およびSecondary Analysis version bcl2fastq2 2.18を実行して全てのライブラリーについてリードを逆多重化し、FASTQファイルを生成した。
【0245】
RNA−seq分析のために、リードをUCSCゲノムhg38に対して、Ensembl 87遺伝子モデルを使用し、Tophatバージョン2.0.13をデフォルトパラメーターで用いてアラインメントした。−m intersection−nonemptyを用いたHTSeq−カウントを使用してリードカウントを生成した。リードをERCC対照配列に対してもアラインメントし、カウントを表にした。スケーリング因子を各試料についてのERCCカウントの中央値に基づいて算出し、正規化のために使用した。R(3.4.1)のedgeRパッケージ(3.18.1)を使用して、異なって発現した遺伝子を見いだした。異なって発現した遺伝子はBH調整されたp値<.05および発現の2倍の変化を有する必要があった。
【0246】
RNAの安定性アッセイ。選別されたLT−HSC、ST−HSCおよびMPP 15,000個を、10μg/mLのヘパリン(Sigma)、0.5×ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)、10ng/mLの組換えマウス(rm)SCF(Biovision,Inc.)、および20ng/mLのTpo(Cell Sciences,Inc.)(Perry et al. Genes and Development, 25: 1928-1942 (2011))を補充したStemSpan SFEM培地(Stem Cell Technologies)中、37℃、5%CO
2、5%O
2で培養した。選別された細胞を、mRNA転写の阻害のために5μMのアクチノマイシンD(Sigma)で処理した。処理の0時間後または4時間後に細胞を採取し、全RNAを抽出し、RNA−seqのために使用した。
【0247】
m
6A RNAメチル化の定量化。
【0248】
wtマウスおよびYthdf2 KOマウス由来のマウスBM系列陰性細胞を、マウスLineage Cell Depletion Kit(Miltenyi Biotec)で富化し、その後、TRIzol(Invitrogen)を用いて全RNA抽出を行った。Lin
−細胞におけるm
6A RNAメチル化の定量化をm
6A RNA Methylation Quantification Kit(Abcam ab185912)を製造者のプロトコールに従って使用して実施した。いずれの群についても反復物当たり200ngの全RNAを使用した。
【0249】
qPCR分析。
【0250】
LSK細胞10
5個をwtマウスおよびYthdf2 KOマウスから選別した。TRIzol(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出した。High−Capacity RNA−to−cDNA(商標)Kit(Thermo)を製造者のプロトコールに従って用いてcDNA合成を行った。使用したqPCRプライマーが表S5に列挙されており、qPCRプライマーを使用してwtおよびYthdf2 KO HSPCにおける転写因子の発現レベルを検証した。
【0251】
ウエスタンブロットおよび細胞内染色。Ythdf2 KOマウスモデルまたはhUCBにおけるKOまたはKD効率を検証するために、cKit
+細胞33,000個またはGFP
+細胞120,000個をそれぞれBMまたはトランスフェクトしたhUCB試料から選別した。
図14Bに示されている通りヒトYTHDF2を過剰発現するように形質導入されたHela細胞を使用して過剰発現効率を検証した。抗YTHDF2ウサギポリクローナル抗体(MBL、RN123PW)およびβ−アクチンマウスモノクローナル抗体(NOVUS、NB600−501)を用いて免疫ブロッティングを実施した。使用した二次抗体は、IRDye 800CWヤギ抗マウスIgGおよびIRDye 800CWヤギ抗ウサギIgG抗体(LI−COR)であった。細胞内染色のために、wtマウスおよびYthdf2 KOマウス由来のBM細胞を上記の通りHSCマーカーで染色し、次いで、Cytofix/Cytopermキット(BD Biosciences)を製造者の指示に従って用いて固定した。固定し、透過処理した細胞を抗YTHDF2抗体(MBL RN123PW)、抗TAL1抗体(Santacruz sc−393287)、抗GATA2抗体(Santacruz sc−267)、抗RUNX1抗体(Santacruz sc−365644)、抗STAT5抗体(Santacruz sc−74442)で免疫染色し、Alexa−488ロバ抗ウサギIgG抗体(Invitrogen)によって検出した。
【0252】
単一細胞免疫染色。wtマウスおよびYthdf2 KOマウス由来のLSK 10,000個を選別してポリ−L−リシンコーティングスライド上に置き、それをモイスチャーチャンバーに入れ、4℃で30分間インキュベートして細胞をスライド上に静置した。冷却したメタノールを用いてRTで10分にわたって細胞を固定し、ユニバーサルブロッキング試薬(BioGenex)を用いてRTで30分にわたってブロッキングし、マウスTAL1抗体(Santa Cruz、SC393287)またはマウスIgG対照(Abcam)を用いて4℃で終夜染色した。次いで、細胞をAlexa Fluor 488ロバ抗マウスIgG(Thermo Fisher Scientific)を用いて4℃で30分にわたって染色した。PerkinElmer UltraviewスピニングディスクシステムでYokagawa CS−X1ディスクを用いて画像を取得した。全ての放出をC9100−23 Hamamatsu EM−CCDにVelocityソフトウェア(PerkinElmer)を使用して収集した。Z−スタックについて、ステップサイズを400nmに設定した。画像当たりの染色強度をImageJプログラムよって定量化した。
【0253】
蛍光免疫染色と併せたFISH。選別されたLSKを顕微鏡ガラススライド(Fisher Scientific Cat.No.12−544−4)上でCytospin(商標)4 Cytocentrifuge(Thermo Scientific、cat.no. A78300003)を800rpmで1分間、中程度の加速と共に使用してスピンさせ、その後、4%PFA(16%(wt/vol)水溶液から希釈したもの、Electron Microscopy Sciences、cat.no.15710)に即時に浸漬した。細胞をRT(25±2℃)で30分にわたって固定した。RNAscopeマルチプレックス蛍光検出キットを製造者の指示に従い使用して(Advanced Cell Diagnostics)、以下の2〜3の改変を伴ってRNA in situハイブリダイゼーションを実施した:抗原回復は不必要であった。また、消化を1:15に希釈したプロテイナーゼIII溶液を用いてRTで10分にわたって実施した。マウスTal1およびGata2を標的とするRNAscopeプローブはACDbioによって設計および作製された。in situハイブリダイゼーションの完了後、スライドをPBSTで2回すすぎ、バックグラウンドブロッキング(バックグラウンドバスター溶液、Innovex、cat.no.NB306)および一次抗体インキュベーションを用いて直接処理した。抗YTHDF2(MBL、1:500)および抗Dcp1α(Santa Cruz、SC100706、1:200)抗体を抗体希釈試薬緩衝液(Life technologies、cat.no.003118)で希釈し、4℃で終夜インキュベートした。ロバ抗ウサギAlexa Fluor 488(Invitrogen、1:500)およびロバ抗マウスAlexa Fluor 633(Invitrogen、1:500)をタンパク質標的多重化のために使用した。
【0254】
(実施例A−1)
一次マウスにおいてYthdf2 KOにより表現型HSCの増加が導かれる。
【0255】
Ythdf2の表現型HSCに対する影響を調査するために、Crispr−Cas9技術を利用してYthdf2
f/fコンディショナルノックアウトマウスを生成し、次いで、Mx1−Creマウスと交雑させて、造血細胞におけるYthdf2発現を特異的に低減させた(以降Ythdf2 KOマウス)(
図1AおよびB)。BM HSPCは、pI:pCの不在時に識別可能な差異を示さなかった(
図7A)。pI:pC注射の4週間後、同腹仔野生型(wt)マウスと比較して、長期HSC(Lin
−Sca1
+cKit
+(LSK)CD34
−Flk2
−;LT−HSC)および短期HSC(LSK CD34
+Flk2
−;ST−HSC)の頻度および絶対数の両方に有意な増加が観察されたが、Ythdf2 KOマウスにおける多分化能前駆細胞(LSK CD34
+Flk2
+;MPP)では観察されなかった(
図1C〜1E)。長期HSC(LT−HSC)およびST−HSCの頻度および絶対細胞数は2倍を超えて増加したが、MPPは穏やかな応答を示したことが見いだされた(
図1Cおよび1E)。Ythdf2 KOによりBM細胞充実性の増大が導かれたが、共通の骨髄系前駆細胞(CMP)、顆粒球−マクロファージ前駆細胞(GMP)、巨核球−赤血球前駆細胞(MEP)および共通のリンパ系前駆細胞(CLP)を含めた拘束前駆細胞、ならびに成熟系列細胞、赤血球、骨髄性細胞、B細胞およびT細胞の絶対数には、Ythdf2 KOとwtマウスの間で有意差は示されなかった(
図1F〜H)。細胞周期分析から、Ythdf2 KO後のHSCまたはMPPの静止状態の識別可能な変化は明らかにならなかった(
図7B)。とりわけ、Ythdf2 KO LT−、ST−HSCおよびMPPにおけるアポトーシス細胞のパーセンテージがwt対照と比較して有意に低下した(
図7C)。Ythdf2 KOマウスにおけるあらゆる潜在的なHSC欠陥をさらに同定するために、脾臓におけるHSC、拘束前駆細胞、および成熟系列の数を調査し、wtマウスとYthdf2 KOマウスの間で有意差は見いだされなかった(
図7D〜7H)。要約すると、Ythdf2 KOにより、一次マウスにおいてHSC数が前駆細胞または系列細胞のいずれの偏りも欠陥も伴わずに特異的に増加する。
【0256】
(実施例A−2)
マウスにおいてYthdf2 KOにより機能的HSCが増大する。
【0257】
Ythdf2 KOにより機能的HSCが増大するかどうかを決定するために、KOマウスまたはそれらの対照同腹仔由来のカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA SE)標識BM細胞1×10
6個を、致死的に照射を受けたレシピエントマウスに移植することにより、短期ホーミングアッセイを最初に実施し、変異体とwt対照の間でホーミング能力に有意差は見いだされなかった(
図7I)。次いで、ptprc変異体系統(CD45.1)に由来するレシピエントBM細胞2×10
5個と共に、ドナーBM細胞(CD45.2)2×10
5個、7.5×10
4個または2.5×10
4個を致死的に照射を受けたレシピエントマウスに移植することにより、限界希釈、競合再配置単位アッセイ(LDA)を実行した(
図2A)。Ythdf2 KOマウスにおける表現型HSCの数の増加と一致して、Ythdf2 KO HSCでは対照と比較して競合再配置単位(CRU)が2.2倍に増加したことが見いだされた(
図2B)。2×10
5個群では、移植の16週間後に、Ythdf2 KOドナー細胞からの全体的な再配置率に関して、対照と比較して、有意な増加が観察された(
図2C)。さらに、Ythdf2 KO BM細胞のレシピエントでは、対照のレシピエントと比較して、ドナー由来のLT−HSCおよびST−HSCの著しく高い頻度および絶対数が示されたが、BMにおけるMPPに関してはそれが示されなかった(
図2Dおよび2E)。さらに、変異体およびwt細胞の移植レシピエント由来のBMにおけるドナー由来の拘束前駆細胞および成熟系列が有意な変化を示さなかったことが見いだされた(
図2Fおよび2G)。Ythdf2 KOマウス由来のHSCの長期再配置能力を決定するために、一次レシピエントに由来するBM細胞を用いた二次移植を行った。とりわけ、対照と比較して、Ythdf2 KO細胞由来のCRUでは3.5倍の増加が明らかになり(
図2H)、二次移植の16週間後にBMおよび脾臓のどちらにおいても白血病の徴候は示されなかった(
図9A〜9F)ことが見いだされた。さらに、
図2Iおよび2Jでは、WTマウスまたはYthdf2 KOマウス由来の総骨髄(BM)を3つの異なる投与量で移植することにより、限界希釈アッセイを行った。移植の4週間後、Ythdf2 KO BM細胞200,000個を移植したマウスにおいて、WT BM細胞を移植したマウスと比較してドナー細胞の生着の増加が観察された。さらに、この増加により、移植レシピエントにおける系列の偏りは生じなかった。
【0258】
pI:pC注射後5カ月を超える時点でBMおよび脾臓の両方における幹細胞、前駆細胞、および系列を試験することにより、恒常性条件下での造血に対するYthdf2 KOの長期にわたる影響も調査した(
図9A)。Ythdf2 KOマウス由来のBMにおいて対照由来のBMと比較してLT−HSCの穏当な増加が観察されたが(
図9C)、Ythdf2 KOマウスと対照マウスの間でBMまたは脾臓のいずれか由来の前駆細胞および系列細胞に識別可能な差異はなかった(
図9D〜9J)。これらの知見から、in vivoにおけるYthdf2 KOの長期にわたる影響により、系列分化が歪むこともなく、異常な増殖が促進されることもないことが示され、これは、Ythdf2が白血病誘発には必要ないという以前の報告と一致する。pI:pC誘導の5カ月後のBMにおける機能的HSCの頻度を検証するために、wtマウスおよびYthdf2 KOマウス由来のBM細胞7.5×10
4個を、コンピテント細胞と共に、致死的に照射を受けたレシピエントに移植した。本発明者らは、Ythdf2 KOにより、レシピエントにおいてwt対照と比較して有意に高い生着が導かれることを見いだし、これにより、Ythdf2 KOがin vivoにおけるマウスHSC増大に対して長期にわたる能力を有することが示唆される(
図9K)。総合すると、これらのデータから、Ythdf2 KOにより、系列拘束に影響を及ぼすことなくin vivoにおける特異的かつ有意なマウスHSC増大がもたらされることが明らかになる。
【0259】
(実施例A−3)
Ythdf2はm
6A媒介性mRNA分解によってHSC自己複製遺伝子発現を制御する。
【0260】
Ythdf2 KOによりどのようにHSCが増大するかの基礎をなす機構を探究するために、成体C57BL/6Jマウスから選別されたLT−HSC、ST−HSC、およびMPPにおけるメチル化RNA免疫沈降とハイスループット配列決定(MeRIP−seqまたはm
6A−seq)を組み合わせてm
6Aメチロームのマッピングを実施した(Meyer et al. Cell, 149: 1635-1646, 2012; Schwartz et al. Cell, 155:1409-1421, 2013; Dominissini et al. Nature, 485: 201-206, 2012)。2つの独立した反復物から有意に富化された重複するピークを同定することによってm
6Aピークを選択した。以前の研究(Meyeret al. Cell, 149: 1635-1646, 2012); Dominissini et al. Nature, 485: 201-206,2012)と一致して、3種のHSPC集団全てにおいて、m
6AピークがmRNAオープンリーディングフレーム(ORF)内、3’非翻訳領域(UTR)内、および終止コドン周辺で豊富であることが見いだされた。中等度に発現した遺伝子の転写物がメチル化されている可能性がより高かった(
図10A〜10C)。興味深いことに、m
6A修飾がGata2、Etv6、Stat5およびTal1などの転写因子のmRNAにおいて富化されていることが見いだされ、これは、HSC自己複製および幹細胞の状態維持に極めて重要であることが実証されており(Wanget al. Blood, 113: 4856-5865, 2009; Ebina et al. The EMBO Journal, 34: 694-709,2015; Orkin et al. Cell, 132: 631-644, 2008: de Pater et al. The Journal ofExperimental Medicine, 210: 2843-2850, 2013; Hock et al. Genes and Development,18: 2336-2341, 2004; Lim et al. The Journal of Clinical Investigation 122:3705-3717, 2012; Reynaud et al. Blood, 106: 2318-2328, 2005;およびKato et al. TheJournal of Experimental Medicine, 202: 169-179, 2005)、m
6A修飾がHSCの制御において重大な役割を果たす可能性があることが示唆される(表S1、HSC自己複製および維持に重大な重要な転写因子はHSPCにおいてm
6Aにより標識されている)。m
6A mRNAメチル化により、自己複製および分化に関与する重要なシグナル伝達経路内の転写因子および遺伝子をコードするmRNAの分解が容易になることによって幹細胞の運命決定が制御されるというエビデンスが蓄積されていることを考慮して(Batistaet al. Cell Stem Cell, 15: 707-719, 2014;(Geula et al. Science 347: 1001-1006,2015; Yoon et al. Cell, 2017; Zhang et al. Nature, 549: 273-276, 2017; Zhao etal. Nature, 542: 475-478, 2017; Li et al. Cancer Cell, 31: 127-141, 2017; Li etal. Nature, 548: 338-342, 2017)、次に、アクチノマイシンDでの転写阻害後のmRNAレベルをモニタリングすることにより、LT−HSC、ST−HSC、およびMPPにおけるmRNA分解速度を測定した。ST−HSC、およびMPPではメチル化mRNAの分解速度が非メチル化mRNAよりも有意に速いことが見いだされた(
図10D)。Ythdf2は、mRNA分解を媒介する、よく認識されたm
6A「リーダー」であるので(Wanget al. Nature, 505: 117-120, 2014)、マウス多分化能造血の前駆体細胞株であるHPC−7において赤外UV架橋結合免疫沈降配列決定(irCLIP−seq)を実施することによってYthdf2の標的をさらに決定した(Pintodo et al. The EMBO Journal, 17: 5744-5756, 1998; Zarnegar et al. NatureMethods, 13: 489-492, 2016)(
図3A;
図11A〜11C)。結果から、Ythdf2標的mRNAの57.8%がm
6Aピークを含有したことが示された(
図11D)。Ythdf2結合性部位では保存されたm
6Aモチーフが富化されており、m
6A分布特徴の特性が示された(
図3Bおよび3C)。Ythdf2標的転写物の遺伝子オントロジー(GO)分析により、造血またはリンパ器官発生に関連する遺伝子の富化が明らかになり、これにより、造血の制御へのYthdf2の関与が示唆される(
図3D)。とりわけ、Ythdf2が、Tal1およびGata2のmRNAなどの転写因子mRNAに、大部分がm
6Aピークと重複する部位で結合することが見いだされた(
図3E;
図5Eおよび表S2、Ythdf2は3つのirCLIP−seq反復物からのmRNAを標的とした)。wtマウスおよびYthdf2 KOマウス由来のLSK Flk2
−細胞における全RNA質量に有意な変化は観察されなかった。哺乳動物細胞においてm
6A修飾はアデノシンヌクレオチドの0.1〜0.4%しか構成しないが、Ythdf2 KOにより、BM Lin
−細胞由来の全RNAにおけるm
6A含有量のレベルの上昇が導かれることが見いだされ、これにより、Ythdf2がm
6AでマークされたmRNAの安定性を特異的に制御することが示唆される(
図12Aおよび12B)。一貫して、総mRNAのqPCR分析により、Ythdf2 KO LSK細胞において、wt対照と比較して、mRNAがm
6Aによって修飾されていることが示されているTal1、Gata2、Runx1およびStat5aのレベルの上昇が明らかになった(
図3F)。単一細胞免疫蛍光染色および細胞内フローサイトメトリーにより、Ythdf2 KO HSPCでは、TAL1、GATA2、RUNX1およびSTAT5などの、幹細胞の自己複製に関与する、m
6Aで標識された転写因子の強度の有意な増加が示されたことがさらに明らかになり、これにより、HSC自己複製におけるYthdf2の抑制性の役割が示される(
図3G;
図12C)。以前の試験により、Ythdf2が、結合したmRNAをmRNA分解部位に局在させることによってRNA代謝を制御することが示されている(Wanget al. Nature, 505: 117-120, 2014)。HSC自己複製の制御におけるYthdf2の機構をさらに探究するために、Tal1 mRNAの蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)ならびにYthdf2およびmRNA分解部位のマーカーであるDcp1aの蛍光免疫染色を実施し(Shethet al. Science, 30: 805-808, 2003; Kedersha et al. Methods in Enzymology, 431:61-81, 2007)、選別されたwt HSPCおよびYthdf2 KO HSPCにおけるそれらの相対的な空間分布を分析した。wt細胞ではTal1 mRNA、Dcp1aおよびYthdf2の共局在が観察されたが、Ythdf2 KO対照では実質的に低減した(
図3Hおよび3I)。さらに、wt HSPCまたはYthdf2 KO HSPCにおけるGata2 mRNA FISHとYthdf2およびDcp1aの共染色により、同様の観察が確認された(
図12Dおよび12E)。Ythdf2 KOマウスにおけるTal1などの転写因子の発現の増大が、HSC増大の原因となるかどうかを決定するために、wt LSK細胞およびYthdf2 KO LSK細胞において低分子ヘアピン型(sh)RNA媒介性Tal1ノックダウン(KD)を使用したレスキュー実験を実施し、その後、致死的に照射を受けたレシピエントに移植した。HSPCにおけるTal1の枯渇により、以前に報告された通りwt細胞の再構成能力が有意に損なわれ、また、Ythdf2 KO細胞の生着の増大のレスキューもなされた(
図12F)。全体として、これらのデータから、Ythdf2が、幹細胞複製のために必須である転写因子をコードするmRNAの分解を可能することによってHSC自己複製を制御することが示される。
【0261】
(実施例A−4)
ヒトUCB HSPCにおけるYthdf2の役割のm
6A−seqおよびRNA−seqによる詳細な分析。
【0262】
単一のヒト臍帯血液単位におけるHSCの数が限られていることが、HSC移植などの臨床的適用の障害となっている(Walasek et al. Annals of the New York Academy of Sciences, 1266:138-150, 2012)。Ythdf2 KOにより表現型および機能的マウスHSCの増加がもたらされるという観察により、YTHDF2ノックダウン(KD)によりヒトUCB HSC増大を容易にすることができるかどうかの試験が促された。最初に、3つの個々のhUCB試料から単離されたCD34
+細胞を用いたm
6A−seqを実施した(
図13A)。m
6A修飾は、主にmRNAに存在し(約95%)、予測通りmRNA ORF領域、3’UTR、および終止コドン付近に優先的に存在した(約90%)(
図4Aおよび4B;
図13B)。マウスおよびhUCB HSPCにおけるm
6Aランドスケープを比較し、2,239種の遺伝子が一般に、m
6Aタグを有することが見いだされた(
図4C)。これらの一般にm
6Aタグを有する転写物は、造血および幹細胞維持に関連する遺伝子に富化されていた(
図4D)。マウスHSC自己複製に関与する転写因子のmRNAにm
6A標識が富化されるので、次に、GO用語分析を実施することによってhUCB CD34
+細胞におけるm
6Aでマークされた転写因子転写物を特徴づけた。722種の同定されたm
6A標識された転写因子mRNAの中で、主要なGO用語は、細胞の運命拘束および幹細胞維持に関連した(
図13C)。例えば、その過剰発現によりヒトおよびマウスHSCがex vivoで増大することが報告されているHOXB4(Amsellemet al. Nature Medicine, 9: 1423-1427, 2003; Antonchuck et al. Cell, 109: 39-45,2002)は、hUCB CD34
+細胞においてm
6Aによりマークされた(
図4E)。HSC自己複製のために必要であり、HSCを他の細胞型から誘導するために重大である他の転写因子(Ebinaet al. The EMBO Journal, 34: 694-709, 2015; Galan-Caridad et al. Cell, 129:345-357, 2007)、例えば、Zfx、RUNX1およびFOSBなども、hUCB CD34
+細胞においてm
6Aタグを有した(
図13Fおよび13G、ならびに、論文(その補足の表も含む)がその全体がこれによって参照により本明細書に組み込まれる、論文「Supressionof m6A reader Ythdf2 Prmotd Hematopoeitic Stem Cell Expansion」、Li et al, CellResearch 28, 904-917(2018)の補足の表S3、Genes marked by m
6A in human UCBCD34
+ HSPCs from individual samplesも参照されたい)。hUCB HSPCにおけるYTHDF2の役割をさらに詳細に分析するために、対照またはYTHDF2 KD hUCB CD34
+細胞を用いてRNA−seqを実施した(
図4F;
図13Dおよび13E)。驚くべきことに、HOXB4および他のHSC自己複製に関連する転写因子を含めた、m
6Aによりマークされた転写物では、YTHDF2 KD細胞において、対照と比較して、m
6A標識されていない遺伝子に関しては注目すべき変化を伴わずに、インプットmRNAリードの有意な増加が示された(
図4G〜4I;
図13Fおよび13G)。これらの結果により、RNA分解によるhUCB HSC自己複製の制御におけるYTHDF2の役割が裏付けられる。
【0263】
(実施例A−5)
YTHDF2 KDによるhUCB HSCの増大。
【0264】
YTHDF2の抑制によりヒトHSCを増大させることができるかどうかをさらに探究するために、hUCB HSPCにおける低分子ヘアピン型(sh)RNAにより誘導されるYTHDF2 KDを上記の通り実施した(
図4F)。7日間のex vivoにおける培養後、YTHDF2のレンチウイルスによるノックダウンにより、対照細胞、特に、最も原始的なCFU−顆粒球赤血球単球巨核球(GEMM)コロニー型および前期赤芽球系前駆細胞(BFU−E)と比べて、CD34
+CD38
−CD45RA
−EPCR
+表現型HSCの頻度および絶対数のそれぞれ平均14.3倍および13.6倍の増加ならびにCFUの5.1倍の増加がもたらされ、これは、YTHDF2 KD hUCB細胞においてTAL1などの造血のために重要な転写因子の発現レベルがより高いことを反映する(
図5A〜5D;
図14A)。興味深いことに、YTHDF2 KD hUCB HSPCでは対照細胞と比較してアポトーシス率が有意に低下し、これは、Ythdf2 KOマウスにおけるHSCの傾向と同様であった(
図5E)。また、
図5Fは、形質導入の10日後にYthdf2ノックダウン(KD)HSCが対照HSCと比較して10倍に至るまでの増加を示したことを示す。次に、過剰発現(OE)YTHDF2のHSPC機能に対する影響を探求した。YTHDF2の過剰発現により、hUCB HSPCのクローン原性潜在性が2.2分の1に低下し、これにより、YTHDF2により、ex vivoにおけるHSC維持が負に制御されることが示唆される(
図14Bおよび14C)。
【0265】
in vivoにおいてYTHDF2 KDによりヒトHSCを増大させることができるかどうかを決定するために、対照およびYTHDF2 shRNAを感染させたhUCB CD34
+細胞から選別されたGFP
+細胞を感染の4日後に移植することによってLDAを実施した(
図6A)。移植の10週間後、レシピエントNOD/SCID Il2rg
null(NSG)マウス由来のBM細胞をin vivo増大後に分析し、機能的HSC頻度を測定した。とりわけ、対照群と比較して、YTHDF2 KD細胞のレシピエントでは、各系列の割合の変化は伴わずに、BMにおけるヒト造血細胞(hCD45
+GFP
+)生着の9倍の増加が示された(
図6Bおよび6CH;
図15Aおよび15B)。YTHDF2 KDにより、一次レシピエントのBMにおける骨髄系、巨核球および赤血球のパーセンテージが有意に増加した(
図15C)。したがって、YTHDF2 KD細胞におけるHSC頻度が対照細胞におけるHSC頻度と比べて4.4倍増加したことが見いだされた(
図6D)。YTHDF2 KD hUCB細胞の再構成され、自己複製を受ける長期にわたる能力が確認された。一次レシピエントから亜致死的に照射を受けた二次NSGレシピエントマウスへのBMの移植の12週間後、BMにおけるヒト造血細胞キメラ化は、YTHDF2 KD群において、対照群におけるものと比較して高かった(
図6E、6F;
図15D)。YTHDF2 KD細胞のCRUでは、対照細胞におけるものと比べて8倍の増加が明らかになった(
図6G)。これらのデータから、YTHDF2 KDにより、ex vivoにおける表現型および機能的hUCB HSCの両方の増大が著しく容易になることが実証される。
【0266】
(実施例A−6)
本明細書の実施例では、m6AリーダーであるYthdf2のコンディショナル欠失により、系列の偏りを伴わずに表現型HSCおよび機能的HSCの増大が導かれることを実証する。in vivoにおいて間葉系幹細胞が同時に増加するかどうかを調査するために、Ytdhf2
f/fマウスをMx1−Creマウスと交雑させて、間葉細胞からのYthdf2発現をコンディショナル欠失させた。pI:pc注射の9カ月後にYthdf2
KOおよびそれらの野生型同腹仔から骨髄細胞を単離した。総骨髄細胞の単一細胞懸濁物をフロー抗体で免疫染色した。造血細胞(CD45、Ter119)および内皮細胞(CD31)を特異的なマーカーを使用して除外した。総骨髄間質細胞内に存在する間葉系幹細胞を、N−カドヘリンおよびCD105抗体を含めることによってさらに精製した。N−カドヘリン
+およびCD105
+の両方の特色を有する間葉系幹細胞を定量化した。Ythdf2のコンディショナル欠失により、間葉系幹細胞の頻度の3.6倍の増大が導かれた(
図16)。本発明者らの試験は、Ythdf2の喪失により、in vivoにおける骨髄間葉系幹細胞を増大させることができることを明白に実証するものである。
【0267】
考察
【0268】
最近の研究では、mRNA m
6A修飾の生物学的機能が探究されているが(Zheng et al. Molecular Cell, 49: 18-29, 2013; Zhou et al. Nature,526: 591-594, 2015; Alarcon et al. Cell, 162: 1299-1308, 2015; Zhang et al.Cancer Cell, 31: 591-606 e596, 2017; Lence et al. Nature, 540: 242-247, 2016;Haussmann et al. Nature, 540: 301-302, 2016; Chen et al. Cell Stem Cell, 16:289-301, 2015; Alarcon et al. Nature, 519: 482-485, 2015; Xiao et al. MolecularCell, 61: 507-519, 2016; Wojtas et al. Molecular Cell, 68: 374-387 e312, 2017;Ivanovna et al. Molecular Cell, 67: 1059-1067 e1054, 2017; Fustin et al. Cell,155: 793-806, 2013; Slobodin et al. Cell, 169: 326-337 e312, 2017; Schwartz etal. Cell, 159: 148-162, 2014; Pendleton et al. Cell, 169: 824-835 e814, 2017;Shi et al. Cell Research, 27: 315-328, 2017; Huang et al. Nature Cell Biology,20: 285-295, 2018; Bertero et al. Nature, 2018; Liu et al. Nature, 518:560-564, 2015)、本明細書の実施形態では、Ythdf2を、転写後m
6A修飾と自己複製のために重要な転写因子をコードするmRNAの分解をカップリングすることによるヒトおよびマウスHSC自己複製の重要な制御因子として同定する。マウスHSPCおよびhUCB HSCにおけるYthdf2の抑制により、自己複製のために重大な多数の重要なTFの発現の増大を導き、それにより、注目すべき系列の偏りおよび白血病の潜在性を伴わずに、表現型HSCおよび機能的HSCの両方のex vivoにおける増大を容易にすることができる。さらに、間葉系間質細胞においてMx1−creが活性化され得るので、幹細胞ニッチがYthdf2抑制媒介性マウスHSC増大にいくらかの程度まで寄与し得る。Ythdf2の間葉系幹細胞(MSC)に対する機能、ならびに、in vivoにおいてHSCおよびMSCの両方におけるYthdf2の抑制によりどのようにHSCを相乗的に増大させることができるかを試験することが興味深いものになる。
【0269】
m
6Aライター複合体Mettl3およびMettl14のmRNAスプライシング、翻訳、およびpri−miRNAプロセシングに対する広範かつ複雑な影響を考慮すると(Barbieri et al. Nature,, 2017; Alarcon et al. Nature, 519: 482-485,2015; Liu et al. Nature, 518: 560-564, 2015)、Mettl3またはMettl14枯渇の結果、正常な幹細胞および白血病において別個の転帰がもたらされる。最近の研究により、Mettl3およびMettl14が白血病発症および白血病幹細胞維持において重要な役割を果たすことが実証された(Vuet al. Nature Medicine, 2017; Barbieri et al. Nature, 2017; Weng et al. CellStem Cell, 22: 191-205 e199, 2018)。対照的に、Ythdf2はm
6A媒介性mRNA分解に主に関与すると考えられている(Batistaet al. Cell Stem Cell, 15: 707-719, 2014; Yoon et al. Cell, 2017; Zhang et al.Nature, 549: 273-276, 2017; Wang et al. Nature, 505: 117-120, 2014)。本明細書のある特定の実施形態によると、Ythdf2を操作することにより、mRNAプロセシングの他の側面に影響を及ぼすことなく、幹細胞の自己複製のために重大なTFをコードする特定のm
6AでマークされたmRNAの半減期を延長することができると考えられる。本明細書の実施例は、HSCのYthdf2枯渇は系列拘束を歪めることも血液悪性疾患を誘導することもなく、それにより、HSCの増大に伴う白血病誘発のリスクが低減することを示すものである。さらに、幹細胞の自己複製は、細胞分裂、生存、分化の防止および幹細胞性の保持で構成される複雑なプロセスである。Ythdf2欠損HSCが低いアポトーシス率を示したという知見から、本明細書の方法の実施形態は、幹細胞の自己複製の別の特徴の利益にもなることが示される。
【0270】
hUCB HSC移植の使用に関する主要な限定は、1つのhUCB単位中のHSCの数が不十分なことである。とはいえ、以前の研究により、Dlk1、SR1、Musashi2およびUM171により、ノッチ、AHRシグナル伝達または他の未知の経路を標的とすることによってhUCB HSCを増大させることができることが明らかになっている(Boitano et al. Science, 329: 1345-1348, 2010; Fares et al. Science,345: 1509-1512, 2014; Rentas et al. Nature, 532: 508-511, 2016; Chou et al.Experimental HematologyI, 41: 479-490 e474, 2013)。したがって、本明細書の実施形態は、HSC自己複製のために重大な多数の重要なTFを標的とするため、およびHSCの増大を増強するための新規かつ強力なやり方を提供する。例えば、in vitroでの培養中に低分子化学物質またはAAV媒介性KDによってYthdf2のレベルおよび機能を低下させることにより、in vivoでの移植後にYthdf2のレベルおよび機能を回復させることを可能にし、したがって、ヒト患者における正常なHSC維持および機能に影響を及ぼさないようにすることができる。さらに、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法を他の方法と組み合わせて、ヒトHSCだけでなく他の幹細胞の増大も容易にし、それにより、幹細胞に基づく治療のためのアプローチをもたらすことができる。
【0271】
(実施例B)
以下の実施例「B」では以下のプロトコールを使用した。
【0272】
動物。C57BL/6−Gt(ROSA)26Sortm1(HBEGF)Awai/J(iDTR)、B6.Cg−Gt(ROSA)26Sortm14(CAG−tdTomato)Hze/J(R26RtdT)、Tg(Cspg4−DsRed.T1)1Akik/J、Cxcl12tm2.1Sjm/J、Kitltm2.1Sjm/J(SCF
f/f)、Cxcl12tm1.1Sjm/J(CXCL12
f/f)マウスをJackson Laboratoryから入手した。N−cad−CreER
Tマウス、およびN−cad−TdTマウスはApplied StemCell,Incにより生成された。N−cad−CreER
T;R26−tdTマウスを誘導するために、タモキシフェン(Sigma)を注射1回当たり2mgで3日間、腹腔内に注射した。胚期のN−cad−CreER
T;R26−tdTを誘導するために、1.5mgの単回用量のTMXをE12.5の妊娠中の雌に腹腔内に注射した(IP)。E19.5時点で帝王切開を実施し、新生仔マウスを里親マウスに渡した。N−cad−CreER
T;iDTRマウスにおいてN−Cad
+細胞除去を誘導するために、DT(Sigma)を2日に1回、示されている通り体重1g当たり50ngの用量で腹腔内に注射した。5FU(Sigma−Aldrich)を体重1g当たり150μgで尾静脈に1回注射した。5FU注射後、マウスをテキストに記載されている通り分析した。本試験に使用したマウス系統は全てC57BL/6J遺伝的背景を有するものであった。動物を遺伝子型決定の結果に従って実験にランダムに含めた。動物実験は研究者に対して盲検式で行った。実験ごとに使用した動物の数は図の説明文に示されている。本試験に使用したマウスは全て、Stowers Institute for Medical Research(SIMR)の動物施設内に収容し、SIMRおよびNational Institutes of Health(NIH)ガイドラインに従って取り扱った。手順は全てSIMRのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって認可されたものであった。
【0273】
フローサイトメトリー。表現型分析のために、造血細胞を骨髄(大腿骨および脛骨)から採取した。0.16Mの塩化アンモニウム溶液を使用して赤血球を溶解させた。細胞表面表現型決定のために、抗CD3(145−2C11)、抗CD4(RM4−5)、抗CD8(53−6.7)、抗Mac−1(M1/70)、抗Gr1(RB6−8C5)、抗B220(RA3−6B2)、抗IgM(II/41)および抗TER119(TER−119)を含む系列カクテル(Lin、フィコエリトリン(PE)−Cy5)を使用した(骨髄細胞100万個当たり抗体カクテル100ng、eBioscience)。示されている場合には、SCA1に対するモノクローナル抗体(D7、eBioscience)、c−KITに対するモノクローナル抗体(2B8、eBioscience)、FLK2に対するモノクローナル抗体(A2F10、eBioscience)、CD34に対するモノクローナル抗体(RAM34、eBioscience)、CD48に対するモノクローナル抗体(HM48−1、eBioscience)、CD150に対するモノクローナル抗体(TC15−12F12.2、BioLegend)およびCD49bに対するモノクローナル抗体(HMα2、Biolegend)(全て骨髄細胞100万個当たり50ngで使用する)も使用した。末梢血の系列分析のために、CD45.1に対するモノクローナル抗体(A20、eBioscience)、CD45.2に対するモノクローナル抗体(104、eBioscience)、CD3に対するモノクローナル抗体、B220に対するモノクローナル抗体、Mac−1に対するモノクローナル抗体およびGr1に対するモノクローナル抗体を使用した。7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD)(A1310、Life technologies)を使用して死細胞を排除した。間質ニッチ細胞分析のために、CD45(30−F11、eBioscience)、CD31(390、eBioscience)、PDGFRα−ビオチン(APB5、eBioscience)、LepR−Bio(R&D)、CD51(クローンRM7−V、Biolegend)。ビオチンとコンジュゲートした抗体で染色した試料を染色用培地で洗浄し、次いで、ストレプトアビジンbrilliant violet 421(商標)(Biolegend、1:500)と一緒にインキュベートした。MoFlo(Dako)、InFlux Cell Sorter(BD Biosciences)、MACSQuant(Miltenyi Biotec)またはCyAn ADP(Dako)機器を使用して細胞選別および分析を実施した。FlowJoソフトウェアを使用してデータ分析を実施した。
【0274】
ホールマウント胸骨HSC免疫染色。胸骨を採取し、メスを用いて3〜4つの断片に切断した。断片を矢状に二分して骨髄腔を露出させ、4%PFA中に固定した。20%正常ヤギ血清および0.5%Triton X100を含有するPBS中でブロッキング/透過処理し、一次抗体を用いて3日にわたって染色した。組織を、二次抗体と一緒に2時間インキュベートした(Bruns et al., 2014; Kunisaki et al., 2013)。スピニング−ディスク共焦点システム(CSU−X1;Yokogawa Corporation of America)およびVolocity撮像ソフトウェア(PerkinElmer)を伴うOrca−R2カメラ(Hamamatsu)および20×/0.8 Plan−Apochromat対物レンズ(Carl Zeiss)が取り付けられた倒立顕微鏡(Axiovert 200M;Carl Zeiss Microimaging、Jena、Germany)を含むスピニング−ディスク共焦点顕微鏡(UltraVIEW;PerkinElmer)で蛍光イメージングを実施した。画像をステップサイズが4μmの一連の光学切片として収集した。画像を、試料全体を網羅するために十分なタイルパターン(重複10%)で収集した。チャネルを逐次的に収集した。405nmの光(50mWのダイオードレーザー、OEM)を使用して(青色色素)を励起させ、561nmの光(50mWの固体レーザー、OEM)を使用して(赤色色素)を励起させ、それぞれを、415nm〜775nm、580nm〜650nmのバンドを有するマルチバンドパスエミッションフィルターを使用して収集した。488nmの光(50mWの固体レーザー、OEM)を使用して(緑色色素)を励起させ、500nm〜550nmのマルチバンドパスエミッションフィルターを使用して収集し、640nmの光(50mWの固体レーザー、OEM)を使用して(遠赤色色素)を励起させ、455nm〜515nmおよび660nm〜750nmを有するマルチバンドパスエミッションフィルターを使用して収集した。曝露時間およびレーザーパワーを調整して、染色の変動を補正した。
【0275】
第二次高調波発生(SHG)イメージングを蛍光イメージングの直後に実施した。QUASAR検出ユニット、10×0.45 Plan−Apochromat対物レンズ(Carl Zeiss)、およびZen 2012撮像ソフトウェア(v8.1.3、Carl Zeiss)を備えたLSM−780レーザー走査共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)でSHG画像を収集した。画像を、ステップサイズが8μmであり、画素サイズが蛍光画素サイズの4倍である整数の倍数(1.32μm/画素)である一連の光学切片として収集した。SHG画像をレーザー光波長900nmで取得し、371〜420nmで収集した。画像アラインメントのための参照として、Cd150−PEの画像を、561nmラインのDPSSレーザー(Melles Griot)を使用して取得し、566〜735nmでSHG画像と同時に収集した。画像を、試料全体を網羅するために十分なタイルパターン(重複なし)で収集した。Zenソフトウェアを使用してタイルを完全な3D画像にまとめた。
【0276】
画像を、Fijiソフトウェア(1.51g National Institutes of Health)を使用して分析した。SHGと蛍光画像をアラインメントするために、まず、蛍光画像のバックグラウンドを差し引き、Grid/Collection stitching plugin(参照http://bioinformatics.oxfordjournals.org/content/25/11/1463.abstract)を使用して画像タイルを完全な3D画像にまとめた。蛍光顕微鏡からSHG顕微鏡への試料の移行には少量の試料の回転が伴うことを考慮して、SHGと蛍光画像を3次元で再アラインメントする必要があった。SHGと蛍光画像セットのアラインメントは、http://research.stowers.org/imagejpluginsにおいて入手可能な特注プラグインを使用して行った。まず、SHGおよび蛍光データセットの両方を目視検査することによって最低8つの共通のランドマークを同定した。次に、Kabschアルゴリズムを使用して、蛍光座標をSHG画像座標に変換するために最もよくスケーリングされた回転を見いだした。最後に、蛍光画像の各3Dボクセルを対応するSHG位置に変換し、3つの線の内挿を使用してその位置のSHG強度を見いだして、再アラインメントされた複合画像を創出した。
【0277】
試験の仮説をよく知らない研究者によって画像分析を行った。HSCを眼で同定した。細胞の形状が眼で見分けられない場合、または細胞の形状が陽性シグナルの視野内で暗い領域を形成した場合、細胞を染色に関して陰性とみなした。ニッチ構成成分までの距離測定をFijiソフトウェアおよびMicrosoft Excel(登録商標)ソフトウェアを使用して行った。HSCの場所および3つのニッチ構成成分のそれぞれの最も近い点にFijiで点ROIを使用して印をつけ、場所をエクセルに移し、次いで、3D Pythagorean Theoremを使用して3Dでの距離を算出した。ランダムに分布したHSCの距離を算出するために、観察されたHSCについて分析したものと同じ画像に関してFIJIで特注プラグインを使用してランダムな点ROIを生成した。ランダムに生成した点が妥当なHSCの場所に出現した場合(周囲領域内のLin+細胞の存在によって評価して)、それらをシミュレートされたHSCとみなした。次いで、シミュレートされたHSCについてのニッチ距離測定を観察されたHSCについてと同じ様式で行った。
【0278】
距離の分布の差異の統計的有意性を、Originソフトウェアを使用してKolmogorov−Smirnov分析によって評価した。5μmでのHSCのパーセンテージの変化の統計的有意性を、Microsoft Excel(登録商標)でスチューデントのT検定を使用して評価した。P<0.05の場合に変化を有意とみなした。
【0279】
図に示されている最終的な画像は、明確にするためにバックグラウンドを差し引き、コントラスト調整した最大の投影である。
【0280】
移植および再配置アッセイ。選別されたpHSCまたはrHSC細胞100個をCD45.1レスキュー骨髄細胞1.0×10
5個と共に、致死的に照射を受けた(10Gy)CD45.1レシピエントに移植した。N−cad−CreER
T;iDTRおよび対照マウス由来のCD45.2 BM細胞2.0×10
5個をCD45.1レスキュー骨髄細胞2.0×10
5個と共に、致死的に照射を受けた(10Gy)CD45.1レシピエントに移植した。移植後4週間ごとに、末梢血を顎下静脈から採取した。ドナー由来の血液細胞(CD45.2)からの造血再配置を測定した。
【0281】
RNA配列決定および分析。cDNAを、SMARTer Ultra Low Input RNA kit(Clonetech)を使用して精製された細胞1000個から生成し、ライブラリーをNextera XT DNA Library Preparation Kit(Illumina)によって生成し、その後、Illumina HiSeq2500で50bpの単一のリードについて配列決定を行った。未加工のリードを、Illumina bcl2fastq2 v2.18を使用し、最大で1つのミスマッチを許容してFastqフォーマットに逆多重化した。リードを、TopHat v2.0.13でデフォルトパラメーターを用いてUCSCゲノムmm10に対してアラインメントした。Cufflinks v2.2.1を「−u −max−bundle−frags 100000000」で使用してFPKM値を生成した。HTSeq−カウントを「−m intersection−nonempty」で使用してリードカウントを生成した。各集団について3つまたは4つの反復物で配列決定した。データはNCBI GEO:GSE104887で入手可能である。
【0282】
CFU−Fアッセイおよびin vitroにおける分化。細胞を96ウェルプレートの培養物中に直接選別した。培養物を37℃、加湿雰囲気中、5%O
2および10%CO
2で7〜10日間インキュベートした。コロニーをCellTracker(商標) Green CMFDA(Life technologies)によって染色し、Celigo Imaging Cytometer(Nexcelom)によって画像を取得した。in vitroにおける分化のために、クローン的に増大したNcad−CreER
T駆動Tomato
+BM/骨間質細胞をCFU−F培養物から0.25%トリプシン/EDTAを用いた消化によって単離し、3つのアリコートに分割し、分化が許容される別々の培養物に播種した:StemPro Osteogenesis kit Gibco A10072−01、Adipogenesis kit A10070−01およびChondrogenesis differentiation kit A10071−01。骨芽細胞分化をVECTOR Red Alkaline Phosphataseによって評価し、脂肪生成分化をOil Red O(Sigma)によって検出し、軟骨形成分化をToluidine blue(Sigma、蒸留水100mL当たり0.1gのT Blue)によって検出した。
【0283】
骨切片作製、免疫染色およびイメージング。
【0284】
新鮮に単離した大腿骨を4%パラホルムアルデヒド中に終夜固定し、その後、10%EDTA中で1〜3日間脱灰処理した。パラフィン切片のために、骨試料をSakura Tissue Tek VIP 5 Tissue Processor(Sakura America、Torrance、CA)で処理し、パラフィン切片を5μmの厚さにカットした。切片をキシレンで脱パラフィンし、その後、アルシアンブルー/ヘマトキシリン/オレンジG染色を行った。凍結切片に対して、骨試料をCryoJane tape−transfer systemを用いて処理した。切片をPower Block(商標)Universal Blocking Reagentを用いて30分〜1時間ブロッキングし、次いで、ウサギ−抗アグリカン(Millipore、1:300)、ウサギ−抗ペリリピン(Cell Signaling、1:300)およびヤギ−抗オステオポンチン(R&D、1:300)を用いて終夜染色した。ロバ抗ヤギAlexa Fluor 488およびロバ抗ヤギAlexa Fluor 647を二次抗体として使用した(全てInvitrogenから、1:300)。抗体をAntibody Diluent Solution(Invitrogen 00−3218)で希釈した。スライドにFLUORO−GEL(Electron Microscopy Science 1798510)を用いて載置し、Olympusスライドスキャナーで画像を取得した。
【0285】
大腿溝外科手術。マウスを2.5%イソフルランで麻酔し、痛覚脱失のためにブプレノルフィンを投与した。右足の皮膚を剃毛し、アルコールおよびヨウ素でこすり洗いした。膝関節の側方に、皮膚に小さな切開を入れた。可視化のために皮膚を内側にスライドさせた後、膝蓋骨の内側に内部切開を入れ、四頭筋まで伸ばし、膝蓋腱に沿って、組織をはずした。膝蓋骨を外側に亜脱臼させ、遠位大腿骨を露出させた。マイクロソーを使用して肋軟骨下骨に穴をあけて膝関節で関節軟骨を貫通させた。伸筋機構(四頭筋、膝蓋腱および膝蓋骨)を元の解剖学的位置に戻した。内部切開を吸収性縫合糸で縫合し、皮膚を非吸収性縫合糸で縫合した。
【0286】
統計値。
【0287】
値は平均±s.e.m.として示されている。統計分析は全て、GraphPad Prism 5(GraphPad Software)を使用して行った。2群間の比較のためにスチューデントのt検定を使用した。統計的有意性をp<0.05と定義した。
【0288】
(実施例B−1)
マウス骨髄における機能的に区別される予備HSCおよび刺激されたHSC。予備HSC(以降rHSC)亜集団を探究するために、恒久的に長期HSC(LT−HSC)と中期を区別することができる細胞表面マーカーであるCD49b(インテグリンα2)を適合させた(Benveniste et al., 2010; Qian et al., 2015; Wagers and Weissman,2005; Yang et al., 2005)。興味深いことに、従来のLT−HSC(CD34
−Flk2
−系列
−Sca−1
+c−Kit
+(LSK)細胞)にのみ存在し、短期HSC(ST−HSC;CD34
+FLK2
−LSK)または多分化能前駆細胞(MPP;CD34
+FLK2
+LSK)には存在しないCD48
−CD49b
−亜集団が見いだされた。CD48
−CD49b
−LT−HSC亜集団ではrHSCが富化されること、およびCD48
−CD49b
+LT−HSC亜集団では刺激されたHSC(以降pHSC)が富化されること(
図17A)が提唱され、再配置アッセイを用いて試験した。rHSCおよびpHSCのどちらも致死的に照射を受けたマウスにおいて最大で移植後40週間にわたって造血を支持し、有意差はないことが見いだされ(
図17B)、これは以前の報告(Benvenisteet al., 2010)と一致した。しかし、移植されたpHSCは、レシピエントにおけるrHSC(95.4%の低下)ならびにST−HSCおよびMPP(どちらの集団についても約78%の低下)の生成に関して、移植されたrHSCと比較して非常に低い効率を有し、これにより、rHSCがpHSCよりも階層的に前であることが示唆される(
図17C)。Scl−tTAにより誘導されるH2B−GFP標識を保持するモデルを使用し、rHSCでは、pHSCと比較して有意により多くのH2B−GFP
high細胞が富化された(P=0.0039)ことが見いだされ、これにより、rHSCがpHSCと比較して遅い細胞周期を有することが示される(
図17D)。分子的に、rHSCでは、全てHSCのG
0期の維持に関与するGadd45g、Cdkn1c(p57をコードする)、およびFoxo1の発現が高く、Myc、Pcna、Ccng2、およびCdk4などの細胞周期活性化因子の発現が低いことが見いだされた。Ki67発現にはrHSCとpHSCの間で差異はなく、これにより、2つのHSC亜集団を区別するためにはKi67発現単独では不十分であることが示される(
図17E)。
【0289】
rHSCの機能的な定義は薬物抵抗性であるので、rHSCまたはpHSCをレシピエントマウスに移植し、移植の4週間後にマウスを5FUで攻撃した。
図17Fに示されている通り、rHSCは5FU処置に対して非感受性であったが、pHSCはそれらの再構成能力が劇的に低下した(移植の20週間後に44%の低下)。総合すると、データから、CD48
−CD49b
−LT−HSCでは化学療法処置に対して抵抗性のrHSCが実際に富化されるが、CD48
−CD49b
+LT−HSCでは化学療法に対して感受性のpHSCが富化され、さらに、移植アッセイにおいて前者からは後者が生じるが、後者から前者は生じないことが示された。
【0290】
rHSCおよびpHSCに対する急性5FU攻撃の直接の結果をさらに分析した。
図17Gに示されている通り、5FUの3日後に、pHSCのおよそ92%が排除され、rHSCのみが残存し、これにより、rHSCのDNA修復系が化学療法ストレスを克服するために特異的に作動したに違いないことが示唆される。この仮説を検定するために、rHSC、pHSCおよび5FU処置後のrHSCにおけるDNA損傷応答遺伝子のトランスクリプトームプロファイリングを分析した。恒常性の間、rHSCではpHSCと比較してDNA損傷修復系に関与する遺伝子の発現が低く維持されるが(
図17H)、5FU攻撃下では、rHSCにおいてDNAミスマッチ修復(MMR)、ヌクレオチド除去修復(NER)、塩基除去修復(BER)、および相同組換え(HR)などの大半のDNA修復経路が有意に活性化される(
図17I)ことが観察された。さらに、並行して、主にHsp90ファミリーおよびHsp70ファミリーに属する多数のストレス応答遺伝子(Rodina et al., 2016)も上方制御され(それぞれ1.8±0.17倍および1.4±0.1倍)(
図17J)、これにより、化学療法ストレス下でrHSCがどのように残存し、造血系を再構成させるかが部分的に説明される。
【0291】
総合すると、pHSCとrHSCの共存がBMにおいて機能的に実証された。それらの静止した状態および活性なDNA修復経路を用いた場合であっても、pHSCはなお化学療法に対して感受性であったが、rHSCではDNA損傷修復およびストレス応答遺伝子が活性化されて、化学療法ストレスを生き抜き、pHSCを生じさせた。したがって、rHSCは、重度のストレス下での造血再生の支持において重大な役割を果たす。
【0292】
(実施例B−2)
薬物抵抗性rHSCは主に骨髄の骨内膜領域に局在する
【0293】
BMニッチ由来の外因性機構が止血中および化学療法ストレス下のrHSC維持に寄与するかどうかをさらに試験した。この目的のために、ホールマウントHSC染色を実施し、これにより、rHSCおよびpHSCの骨(第二次高調波発生、SHGによって達成した)、巨核球(MK)または約75μm以内の厚さの骨腔内の血管への相対的な分布も同時に検出した(
図18A〜B)。本発明者らの定量化データから、43.4%のrHSCおよび31.0%のpHSCが血管から10μm以内の距離に位置すること、ならびに22.6%のrHSCおよび24.6%のpHSCがMKから10μm以内に位置することが示され(
図18C〜D)、これは、バルクのHSC集団が血管周囲および類洞帯域に存在するという以前の報告と一致する(Acar et al., 2015; Bruns et al., 2014; Chen et al., 2016; Zhao et al.,2014)。興味深いことに、16.4%のrHSCが骨表面から10μm以内に位置し、これと比較してpHSCは3.69%しか骨表面から10μm以内に位置しないことが認められた(
図2E)。これらのデータから、rHSCおよびpHSCは血管およびMKにはどちらも偏りなく分布するが、rHSCはpHSCと比較して骨内膜骨表面に有意に近く位置することが示された(P=0.00182)。
【0294】
化学療法ストレスの間にrHSCが骨内膜領域に保存されるかどうかを試験するために、pHSCが排除された5FU処置後3日目にrHSCの分布を試験した(
図18B)。興味深いことに、本発明者らは、急性5FUストレスの際に、生存しているrHSCの約55%が骨内膜ニッチに保存されることを見いだし、これは、恒常性と比較して約3.5倍の富化である(
図18E)。しかし、血管またはMKの付近で観察された生存しているrHSCの頻度に有意差はなかった(
図18C〜D)。一貫して、
図17Gに示されている通り、pHSCは4.24%しか急性5FUストレスを生き残れなかったことが観察された。次に、5FUストレス後のBM損傷およびその後の回復の動的プロセスを、BrdU標識された生存している増殖細胞を調査することによって試験した。5FU処置後2日目に、BrdU標識された細胞の大きな減少が認められ、これにより、活性なアポトーシスが5FUによって誘導されたことが示される。5FU処置後3日目に、生存しているBrdU
+細胞(大部分が単一細胞)が主に骨内膜領域内の骨内層細胞に近接して検出されることが観察された(
図24A〜D)。3.5日目に、BrdU
+細胞の対が骨内膜表面に出現したことが観察され、これにより、生存している細胞の活性化および分裂が示される。4日目および5日目に始まり、継続して、増殖している細胞の数が徐々に増加し、これらの細胞は、非常に多くの場合、血管または潜在的な脂肪細胞構造の付近のクラスターとして検出された(4日目に約55%および6日目に約65%)(
図24E〜I)。この観察により、骨表面が、細胞が5FU後に最初に残存するニッチであることが示唆された。次いで、これらの細胞が活性化され、娘細胞を生じ、後者が主に血管内または巨核球に近接して増大を受けた(Zhao et al., 2014)。生存している5FU−rHSCが多くの場合に骨表面に近接する単一細胞として実際に検出され、増殖しているHSCが多くの場合にMKまたは血管の近くに関連付けられることがさらに確認された。5FU処置後3日目に生存しているrHSC(緑色、CD150+Lin−CD49b−)は、多くの場合、骨表面に近接する単一細胞として検出され(白色、SHG)、増殖しているHSCは、多くの場合、MK(CD150+Lin+)または血管の近く(赤色、CD31+)に関連付けられた(
図29)。
【0295】
5FU処置に対して骨表面のN−cad
+前骨芽細胞は抵抗性であることが見いだされているが、Osx
+骨芽細胞は、感受性であることが見いだされており、また、N−cad
+間質細胞は、5FU処置後の回復中にOsx
+骨芽細胞を生じさせることが見いだされている(Sugimura et al., 2012)。最近の研究により、照射1日後の細胞死に起因する、中心骨髄におけるLepR
+間質細胞の劇的な枯渇が示された(Zhouet al., 2017)。血管および骨内膜ニッチにおける初期の変化を追跡するために、5FU処置後1日目にアポトーシスアッセイを実施した。アポトーシス性CD31
+VE−カドヘリン
+細胞が5FUの1日後に著しく増加することが見いだされ(
図18F)、これは5FU後に血管構造が妨害されるという以前の報告と一致する(Dominiciet al., 2009; Sugimura et al., 2012)。骨内膜ニッチを試験するために、Tomato
+細胞で中心骨髄および骨表面の両方におけるN−cad発現が報告されるN−cad−tdTomato(N−cad−TdT)マウス系を樹立した(
図24J)。中心骨髄ではアポトーシス性N−Cad駆動性Tomato
+細胞の顕著な増加が認められたが、骨内膜帯域内のTomato
+細胞は5FUの1日後に安定なままであった(
図18G)。造血再生が始まった5FU処置後3日目に、中心骨髄ならびに骨表面におけるN−Cad駆動性Tomato
+細胞がそれぞれ2.2倍および1.7倍増加した(
図18H、
図24K)。CD31
+血管細胞の数も増加したが、膨張し、損傷を受けたアーキテクチャを示した(
図18I)。総合すると、以前の報告およびこのデータから、血管およびLepR
+およびN−cad
+細胞を含めた血管周囲ニッチ内の関連する間質細胞は即時の損傷を受け、5FUストレスに対して感受性であるが、N−cad
+骨内膜間質細胞は安定なままであることが示された。
【0296】
このデータにより、大多数のHSCが主に血管周囲および類洞帯域に分布しているという以前の所見が部分的に説明される(Acar et al., 2015; Chen et al., 2016; Kunisaki et al., 2013)。静止状態のHSC集団の51.3%を占めるpHSCが恒常性の中では血管周囲および類洞帯域の近くにある。しかし、ストレス下では、rHSCは骨表面のより近くに存在し化学療法ストレスから残存する。集合的に、データから、骨内膜ニッチが化学療法からのrHSCの保護において重大な役割を果たすことが示される。
【0297】
(実施例B−3)
N−Cad
+ニッチ細胞により骨髄におけるrHSCを含めた機能的HSCが維持される
【0298】
N−cad
+間質細胞は最初に同定されたHSCニッチ細胞であり、また、化学療法に対して骨内膜ニッチにおけるN−cad
+間質細胞は抵抗性であった一方Osx
+骨芽細胞は感受性であったが、HSCを機能的に支持するN−cad
+に関する直接のエビデンスは妥当な遺伝学的マウス系の欠如に起因して依然として見つかっていない。本明細書の態様に従って、N−cad−CreER
T系を生成し(
図25A)、N−cad
+間質細胞からCol2.3−GFP
+骨芽細胞および血管周囲細胞の両方が生じることが示された(
図25B)。以前の試験から、成熟Col2.3−GFP
+骨芽細胞の枯渇がBM細胞の全体的な生着には影響を及ぼさないが(Ding et al., 2012; Greenbaum et al., 2013)、LT−HSCのサブセットの再生能の障害のみを引き起こす(Bowerset al., 2015)ことが示された。N−cad
+間質細胞はOsx
+骨前駆細胞に発生的に進行し、これはさらに成熟Col2.3
+骨芽細胞を生じさせるが、N−cad
+間質細胞によるHSC維持に対する機能的寄与は分かっていない。N−cad
+細胞のHSCニッチ役割を調査するために、N−cad
+ニッチ細胞がジフテリア毒素(DT)に対して感受性になっているN−cad−CreER
T誘導性DTR(ジフテリア毒素受容体をコードする)系(N−cad−CreER
T;iDTR)を生成した。N−cad−CreER
T;iDTRマウスに3回のタモキシフェン(TMX)注射を投与し、その後、DTを腹腔内注射し(1日おきに1回の注射)、最後の注射後1日目に分析した(
図19A)。N−cad−CreER
T;iDTR;R26−tdTでは、同時にDTで処置されたN−cad−CreER
T;R26−tdTマウスと比較してN−cad
+間質細胞の効率的な除去が観察された(
図19B)。in vivoにおいてN−cad
+細胞除去がHSCに影響を及ぼすかどうかをさらに調査した。N−cad
+細胞の除去後、対照と比較してBMにおける細胞充実性の有意な変化は観察されなかった(
図19C)。しかし、HSCの数が劇的に減少した:rHSC(65.0%の低下)、pHSC(60.0%の低下)、ST−HSC(59.6%の低下)、およびMPP(29.3%の低下)(
図19D)。これにより、N−cad
+ニッチ細胞が、予備HSCを含めた最も原始的なHSC維持に寄与することが示された。
【0299】
N−cad
+間質細胞が除去されたマウスにおける機能的HSC数を試験するために移植アッセイも実施した。N−cad
+間質細胞が除去されたマウス由来の骨髄細胞では有意に低いレベルのドナー細胞再構成がもたらされ(20週間の時点で28.3%の低下)(
図19E)、骨髄性細胞産生が低減する(24.5%から17.1%へ)(
図19F)ことが見いだされた。N−cad
+ニッチ細胞がHSCの長期自己複製の維持に寄与するかどうかをさらに調査するために、一次移植の20週間後に二次移植を行った。N−cad
+間質細胞が除去されたマウス由来のBM細胞は二次移植でドナー細胞再構成能力がより大きく低下したが(16週間の時点で40.5%の低下)(
図19G)、多系列再構成は可能である(
図19H)ことが観察された。
【0300】
さらに、本発明者らは、N−cad
+間質細胞からのCxcl12のコンディショナルノックアウトにより、pHSC(48%の減少)およびST−HSC(28.8%の減少)が有意に減少したが、rHSCの有意な減少は観察されなかったことを見いだした。些細ではあるがわずかにMPPが増加した(
図19I)。N−cad
+間質細胞からのSCFのコンディショナル欠失により、rHSC(60%の減少)、pHSC(38.6%の減少)、およびST−HSC(53.7%の減少)が有意に減少したが、MPPはわずかに増加した(
図19J)。全体として、本発明者らは、N−cad
+ニッチ細胞が、rHSCを含めたHSC維持に維持因子の産生によって寄与したという最初の機能的エビデンスを提供した。
【0301】
(実施例B−4)
造血細胞およびそれらのBMニッチ細胞についてのトランスクリプトーム分析
【0302】
異なるニッチ細胞がどのようにHSC亜集団制御に寄与するかを支配する分子機構を理解するために、恒常性の間の4種の型の造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)に対して、および5FU後3日目のrHSCに対して、ならびに10種の型のBMニッチ細胞に対して、トランスクリプトームプロファイリング分析を実施した。BMニッチ細胞を骨内膜(B)および中心骨髄(M)の異なるニッチ帯域から採取した(
図26A〜B)。ピアソン距離木および主成分分析(PCA)データから、rHSCおよびpHSCが、ST−HSCおよびMPPと比較して独特のトランスクリプトームプロファイリングを共有することが示された(
図20A)。興味深いことに、5FU処置後のrHSCはpHSCに近いと思われ(
図20B)、これにより、生存しているrHSCが化学療法後のその後の造血再生を支持するための活性化のために刺激されたことが示唆される。
【0303】
rHSCでは、Slamf1(CD150)、H19、Ctnnal1(α−Catulin)、Fgd5、vWF、Tek(Tie2)、Procr(Epcr)、Hoxb5およびMeg3(またはGtl2)などの公開されたHSC特異的マーカーの大部分が富化されることが見いだされた(Acar et al., 2015; Chen et al., 2016; Qian et al., 2015; Sanjuan-Plaet al., 2013; Venkatraman et al., 2013)。特に、rHSCにおけるvWFは、pHSCにおけるvWFの6.1倍であり、これにより、rHSCではHSC階層の頂端に存在するvWF
+HSCの大部分が富化されることが示唆される(Sanjuan-Plaet al., 2013)。一貫して、CD34、CD48、およびFlt3(Flk2)およびItga2(CD49b)などの前駆細胞シグネチャー遺伝子はrHSCにおいて低発現である(Acaret al., 2015; Chen et al., 2016; Gazit et al., 2014)。興味深いことに、5FU後のrHSCでは、CXCR4、Ctnnal1(α−Catulin)(Parket al., 2002)、Esam(内皮細胞選択的接着分子)およびCD150(Slamf1、シグナル伝達リンパ球性活性化分子をコードする)の発現レベルが高く、これは、変換された刺激された状態に関連するそれらの機能と一致する(
図20E)。
【0304】
ニッチ細胞分析では、ピアソン距離木(
図20C)およびPCA分析(
図20D)のどちらにおいても、N−cad駆動性tdTomato(N−cad−TdT)(M)が、LepR、Cxcl12−RFP、およびネスチン−GFP細胞などの間葉系幹細胞(MSC)潜在性を有する他のニッチ細胞と比較して非常に類似したトランスクリプトームプロファイルを有することが見いだされ、これにより、N−cad
+細胞がMSC潜在性およびHSCの制御において同様の機能を有し得ることが示唆される。興味深いことに、NG2−RFP細胞は、Col2.3−GFP
+骨芽細胞と非常に類似したトランスクリプトームプロファイルを有した(
図20C〜D)。NG2−RFP細胞が骨端または骨幹において骨内膜に主に制限されるが、動脈周囲領域でも検出されることも見いだされた(
図26C)。
【0305】
Pecam−GFP
+内皮細胞においてPecam(CD31)、CDH5(VE−カドヘリン)が富化されることが見いだされた。MKおよびマクロファージ(Macs)ではPF4およびAdgre1が富化された。NG2−RFP細胞ではCspg4(NG2)が富化された。ネスチン−GFP細胞は内在性ネスチン(Nes)発現を有さず、これは、以前の報告と一致する(Ding et al., 2012; Greenbaum et al., 2013)。興味深いことに、Kitl(SCF)、LepR、Cdh2(N−カドヘリン、N−CAD)、Cxcl12、Pdgfrαなどのいくつかのマーカー遺伝子が血管周囲ニッチ細胞において広範に発現されることが見いだされた(
図20F)。骨内膜帯域から単離されたN−cad−TdT(B)細胞も、Col2.3−GFP細胞およびNG2−RFP細胞などの骨内膜帯域由来の他の細胞と比較して高レベルのSCF、Cxcl12、LepRおよびPdgfrα発現を有した(
図20F)。本発明者らのGO用語分析から、Col2.3−GFP細胞、Pecam−GFP細胞、MK細胞およびMac細胞では、RNA代謝、タンパク質代謝、他の代謝経路および翻訳活性が高度に富化されたことが示され、これにより、これらの細胞が、比較的低い代謝状態であったN−cad−TdT細胞および他の血管周囲帯域細胞と比較して、比較的活性な機能的状態にあったことが示される。内皮細胞および血管周囲細胞は免疫系プロセスおよびストレス応答活性を有した(
図20G)。N−cad
+細胞はLepR
+細胞、Cxcl12−RFP細胞、およびネスチン−GFP細胞などの他のMSCと同様のトランスクリプトームプロファイルを有したので、次に、異なるニッチ細胞に由来する間質発生関連遺伝子を分析し、比較した(
図20H)。Col2.3−GFP細胞では、骨芽細胞遺伝子Col1aおよび前駆細胞遺伝子Ly6a(SCA1)が富化された(Yanget al., 2014)。骨内膜領域由来のN−Cad−TdT(B)細胞では、軟骨細胞遺伝子Spock1、Col2a1およびCol1a2ならびにTncなどの骨発生遺伝子が富化されたことが見いだされた。興味深いことに、N−Cad−TdT(B)およびN−Cad−TdT(M)の両方でPrrx1、Pdgfrβ、Pdgfrα、Sp7、Sox9およびGrem1などの間葉系幹細胞および前駆細胞(MSPC)遺伝子の大部分が富化された。骨髄から採取されたNG2−RFP細胞もまた、Alcam、Sp7、Mcam、Sox9およびGli1などのMSPC遺伝子発現が高レベルであったが、Col1a1、Col2a1、およびCol1a2などの骨芽細胞および軟骨細胞関連遺伝子も高レベルであった。全ての血管周囲ニッチ細胞の中で、LepR
+細胞ではGlaならびにいくつかの骨芽細胞および軟骨細胞マーカー、例えば、Atf4およびTncなどが排他的に富化されたことも見いだされた。Cxcl12−RFP細胞ではMSPC遺伝子Itgavが有意に富化された。さらに、Grem1がN−Cad−TdT(B)および全ての血管周囲ニッチ細胞において富化されたが、NG2−RFP細胞では富化されなかった。
【0306】
以前のデータと一致して、Col2.3−GFP細胞では、より成熟した骨系列遺伝子(Dmp1、Col1a1、Spp1、Bglap)が富化された。ネスチン−GFP、Cxcl12−RFPおよびLepRは、MSC遺伝子(Prrx1、Pdgfrα、Itgb1、Grem1)の富化におけるそれらの公知の役割と一致した(
図20H)。興味深いことに、MSC遺伝子を発現することは別として、N−Cad−TdT(M)およびN−Cad−TdT(B)では、軟骨形成遺伝子(Sox9、Col2a1およびTnc)、脂肪生成遺伝子(Cebpα、Pparγ、Adipoq)ならびに骨形成性遺伝子(Col1a1、Runx2)が富化され、これにより、N−Cad
+間質細胞の三分化能性が示唆される。驚いたことに、NG2−RFPでは骨発生遺伝子(Dmp1、Bglap、Sp7、Runx2、Col1a1)ならびに軟骨形成遺伝子(Sox9、Col2a1およびTnc)の両方が富化され、これにより、骨軟骨形成の役割が示唆される(
図26D〜E)。これらのデータから、BMにおけるMSPCの不均一性が強力に示される。
【0307】
(実施例B−5)
N−cad−CreER
T誘導性レポーター細胞はLepR
+およびCxcl12
+幹/間質細胞と大きく重複する
【0308】
転写分析を確認するために、TdTまたはZsGレポーターを使用してN−cad in vivo系列追跡を実施し、誘導後3日目に、N−cad−CreER
T系列がCxcl12−RFP細胞およびネスチン−GFP細胞と部分的に重複する細胞を追跡したことが見いだされた(
図20I)。さらに、N−cad−CreER
T由来細胞の98.3%および97.9%がそれぞれLepR発現およびPdgfrα発現について陽性であった(
図20J)。この結果により、トランスクリプトーム分析によって示唆される通りN−cad
+間質細胞がMSC潜在性を有することがさらに裏付けられる。N−cad
+間質細胞の系列潜在性を分析するために、コロニー形成単位−線維芽細胞(CFU−F)アッセイを実施して、それらの増殖能を試験した。大多数の報告されたニッチ細胞が、骨内膜帯域由来であるか血管周囲帯域由来であるかにかかわらず、CFU−F活性を有する細胞を17.6個に1つしか有さないネスチン−GFP
+細胞は別として、CFU−F活性を有する細胞を10個未満に1つ有することが見いだされた。骨由来のN−cad
+細胞は、CFU−F活性を有する細胞を細胞8.79個に1つ有した。N−cad−CreER
T由来骨細胞は、CFU−F活性を有する細胞を10.7個に1つ有し、N−cad−CreER
T由来骨髄細胞は7.37個に1つの細胞を有した(
図20K)。大多数のCFU−Fコロニーで、tdTomatoシグナルが維持され(
図21A〜B)、これにより、N−cad
+細胞がCFU−F活性を有するMSPCの主要な供給源であったことが示唆される。
【0309】
(実施例B−6)
in vitroおよびin vivoにおいてN−cad
+間質細胞から骨芽細胞、軟骨細胞、および脂肪細胞が生じる
【0310】
N−cad
+細胞のMSC潜在性を試験するために、N−cad
+細胞によって形成された個々のCFU−Fコロニーから得た細胞を3つのアリコートに分割し、それらを骨細胞分化、脂肪細胞分化、または軟骨細胞分化が許容される培養物にサブクローニングすることにより、in vitroにおける分化アッセイを実施した。Tomato
+細胞は多系列分化を受け、アルカリホスフェート陽性骨芽細胞、Oil Red O陽性脂肪細胞、およびアグリカン染色およびトルイジンブルー陽性軟骨細胞が生じることが見いだされた(
図21C〜E)。
【0311】
N−cad
+間質細胞のin vivoにおける機能を特徴付けるために、1回用量のTMXによる処置後にN−cad由来細胞の動的な解剖学的分布を分析した(
図21F、G)。興味深いことに、検出されたN−cad由来細胞は、早くもTMXの6時間後に海綿骨幹端において検出されたが、中心骨髄では非常にわずかな細胞しかみられず、これにより、N−cad
+細胞の大部分が骨内膜領域に由来することが示唆される(
図21H)。TMXによる処置後1週間から2週間まで海綿骨領域においてN−cad由来細胞の数が2.2±0.2倍増加し、その後は安定なままであったことも観察された。皮質骨領域では、TMX後2週間の時点で細胞数が2.95±0.2倍増加したが、その後、TMX後6週間の時点では減退し、これにより、海綿骨領域内のN−cad
+細胞が皮質骨領域と比較してより静止していたことが示唆される。さらに、N−cad由来細胞は6週間に至るまで中心骨髄において増加し続け、これにより、N−cad由来細胞がこの領域内で増殖および分化することができたことが示唆される(
図21I)。
【0312】
次に、in vivo系列追跡アッセイを実施し、N−cad
+細胞が時間依存的にCol2.3−GFP
+骨芽細胞を生じさせる(Dacic et al., 2001)ことが観察された(
図22A、
図27A〜B)。N−cad由来骨芽細胞が早くもTMXによる誘導の6時間後に海綿周囲領域において検出され(
図22B)、TMXによる誘導の14時間後に緻密骨領域において検出された(
図22C)。さらなる分析により、TMX後6時間の時点で、未成熟N−cad
+Col2.3
−細胞(1.1%±0.2%)が海綿骨領域において皮質骨領域(0.11%±0.04%)と比較して10倍多く富化されたことが示された(
図22D、E)。一貫して、TMXによる誘導後24時間および2週間の時点で、海綿骨領域において緻密骨領域と比較してより多くの未成熟N−cad
+Col2.3
−細胞が富化された(
図22F)。TMXによる誘導後4週間の時点で、Col2.3−GFP細胞の大部分(72%±6%)はN−cad
+細胞に由来するものであった(
図22G)。
【0313】
TMX注射の4週間後に、海綿骨領域、特に、骨内膜の細胞においてN−cad
+間質細胞から脂肪細胞が生じることがさらに観察され(
図22H)、これは、BODIPY脂質プローブ染色によってさらに確認された(
図22I)。興味深いことに、N−cad
+由来脂肪細胞の頻度は、TMXによる誘導後6時間、14時間および24時間の時点でそれぞれN−cad
+由来細胞の39.3%±4.5%、77.1%±6.7%および17.2%±3%が観察された定量化によって証明される通り、最初に急速に増大し、後で減退し、これにより、脂肪細胞が頻繁なターンオーバー速度を有し得ることが示唆される(
図22J〜K、
図27C〜E)。集合的に、データから、成体マウスにおいて恒常性の間にin vivoでN−cad
+間質細胞から骨芽細胞および脂肪細胞系列の両方が生じることが実証された。
【0314】
さらに、Ncad+MSCが他のマーカーと比較して>10倍富化されたことが見いだされた。例えば、
図30に示されている通り、in vivoにおいて、ほんの10K個のNcad+hMSCから総hMSCよりもはるかに多くのヒトトロンボポエチン(THPOまたはTPO)が生じた。同様に、Ncad−hMSCは総hMSCと同様の機能を示した。したがって、MSCをN−カドヘリン抗体で単離することにより、MSC集団の富化をもたらすことができる。
【0315】
(実施例B−7)
発生の間および傷害後にN−cad
+間質細胞から軟骨細胞が生じる
【0316】
軟骨形成は、胎仔発生において活性であり、成体期ではまれに活性である(Raghunathet al., 2005; Sophia Fox et al., 2009)。出生後2日目(P2)にTMXによる誘導を受けたマウスにおいて、Tomato
+骨芽細胞および軟骨細胞周囲が成長板に近接しているにもかかわらず、N−cad−CreER
T;R26−tdTマウスの大腿骨においてアグリカン
+軟骨細胞の間でTomato発現は検出されなかった(
図28A)。N−cad−CreER
T;R26−tdTマウスに成長板が発生した1週間または2週間の時点でTMXを用いて誘導した後、大腿骨または脛骨の軟骨においてTomato
+軟骨細胞は検出不可能なままであった(データは示していない)。胚期E12.5のN−cad−CreER
T;R26−tdTマウスに対して、胎仔骨においてMSCが圧縮(condensation)および軟骨細胞分化を受けた時にTMXによる誘導を開始した(
図23A)。大多数の未分化N−cad由来tdT
+細胞は末梢に位置し、分化したN−cad由来Tomato
+軟骨細胞はE14.5胚の肋骨の中心領域に位置したことが見いだされた(
図23B)。重要なことに、P2時点での大腿骨の海綿領域において、二次骨化中心が形成される円柱帯域、および、より深層を保護するために垂直の力(sheer force)に抵抗するために必須の表層の両方でN−cad由来軟骨細胞が検出された(
図23C、D)。一貫して、N−cad由来脂肪細胞は生後2カ月の時点で検出され、生後10カ月の時点まで検出され(
図23E、
図28B)、これにより、N−cad+細胞が発生の間の初期および長期にわたる脂肪生成に寄与したことが示唆される。しかし、N−cad
+細胞由来オステオポンチン
+骨芽細胞および骨細胞は生後2カ月の時点では検出されたが、初期のP2では検出されなかった(
図23F、
図28C)。これらのデータから、胚N−cad由来の細胞から3種の骨−脂肪生成−軟骨形成系列全てが生じ、胚期のN−cad
+のみが軟骨細胞を効率的に形成することができることが実証された。
【0317】
傷害後の成体マウスにおいてN−cad
+細胞が軟骨細胞を生じさせることができるかどうかを次に調査した。E12.5時点でTMXによる誘導を受けたN−cad−CreER
T;R26−tdTマウスにおいて軟骨穿孔を実施した(
図23G)。軟骨損傷後2〜3週間の時点で、本発明者らは、N−cad由来軟骨細胞が、損傷を受けていない対照マウスと比較して2倍に増加し、損傷部位の仮骨においてクラスター形成したことを見いだした(
図23H〜I)。外科手術後のマウスにおいて関節軟骨損傷に起因して大腿脛骨関節が腫脹した(
図28D)。傷害後領域では典型的な軟骨細胞の特徴を有するアルシアンブルー陽性細胞が劇的に増加し(
図23J)、これにより、傷害に応答してN−cad
+MSCにより軟骨細胞が急速に再生したことが示される。
【0318】
総合すると、データから、胎仔期(E12.5)に誘導されたN−cad由来の細胞が、成体における軟骨細胞前駆細胞を生じさせ、傷害に応答して軟骨細胞再生を支持することができることが証明された。
【0319】
考察
【0320】
rHSC対pHSC
【0321】
HSCの不均一性を広範に試験した。HSCは、活性な状態、静止した状態または深く静止した状態のいずれでも維持することができる。HSCの静止状態の特徴付けがそれらの長期自己複製潜在性に機能的に関連することが周知である(Foudi et al., 2008; Wilson et al., 2008)。しかし、静止状態のHSC集団がin vivoにおける骨髄破壊という結果をどのように克服するかは未解決の疑問である。静止状態にもかかわらず、大多数のHSCは5FUなどの化学療法ストレスを生き抜くことができない(Longleyet al., 2003)。本明細書の態様に従って、HSC亜集団のごく一部が一次マウスにおける5FU処置を生き抜くことができ、移植モデルにおいて5FU処置に対して抵抗性であることが見いだされた。したがって、このHSC亜集団はrHSCと定義され、一方、静止しているが化学療法剤感受性である他のHSC亜集団はpHSCと定義される(Liand Clevers, 2010)。どちらのHSC亜集団も移植実験において長期造血を支持したが、pHSCからrHSCが生じることはめったにないが、rHSCはpHSCを生じさせることができた。機構的に、恒常性の間にrHSCではpHSCと比較してDNA修復系が減弱しているが、rHSCは、それらのDNA修復経路およびストレス応答プログラムを急速に活性化して、化学療法ストレスを生き抜くことができ、その後の造血を支持して骨髄破壊という結果を克服することができることが見いだされた。
【0322】
化学療法に対する抵抗性の付与に関するニッチ物質
【0323】
rHSCの化学療法抵抗性の基礎をなす外因性機構を探究するために、rHSCがBMにおける特異的な微小環境に保存されるという考えを検定した。ホールマウントHSC染色(Kunisaki et al., 2013)を使用し、以前に報告された通り、バルクのHSCが血管およびMKに関連することが最初に観察された。しかし、驚いたことに、恒常性の間および5FU処置後にrHSCがpHSCと比較して骨内膜ニッチに主に関連することが見いだされた。これにより、骨内膜ニッチが別個のBM微小環境を形成してrHSCを化学療法ストレスから保護することができることが示された。一貫して、化学療法ストレスを受けると、大多数のrHSCが、化学療法抵抗性N−cad
+間質細胞が富化される骨内膜ニッチ内に保護されたが、血管および血管周囲細胞は5FU処置に対して感受性であり、これが化学療法によって誘導されるpHSCの大幅な喪失の原因である。豊富な骨分枝を有し、骨髄の内側に伸長する胸骨においてホールマウントHSC染色を行った。この特徴により、胸骨は大腿骨における海綿骨領域と非常に類似したものになる。N−cad
+ニッチ細胞の枯渇がrHSCを含めたHSC維持に影響を及ぼしたことを示す移植アッセイによりこの概念が裏付けられる。HSC静止状態はまた、それらの低代謝状態とも相関し、これは、「睡眠」と類似するとみなすことができ、HSC休眠または冬眠と称された(Takuboet al., 2013; Wilson et al., 2008; Yamazaki et al., 2011)。しかし、本明細書の態様に従って、静止状態が薬物抵抗性の基礎をなす唯一の機構ではなく、その代わりに、内因性ストレス応答プログラムおよび外因性ニッチ保護の両方が薬物抵抗性に寄与することがさらに示された。
【0324】
BMニッチにおけるHSC維持に関するN−cad間質細胞の正体および機能
【0325】
N−cad
+間質細胞は、最初に同定されたHSCニッチ細胞であり(Zhang et al., 2003)、その後の試験によって確認された(Arai et al., 2004; Sugiyama etal., 2006)。N−cad
+細胞は、それらが骨内膜に位置することに基づいて骨芽細胞の前駆細胞として最初に提唱された。本明細書の態様に従って、2つのレポーター株を使用することにより、N−cad
+間質細胞が骨内膜領域および血管周囲部位のどちらにも分布していることが見いだされた。さらに興味深いことに、大多数のN−cad
+細胞がLepR
+細胞およびPdgfrα
+細胞と重複することが見いだされた。転写分析から、N−cad
+細胞、LepR
+細胞、Cxcl12−RFP(CAR)細胞およびネスチン−GFP細胞が非常に類似した遺伝子発現パターンを有することが示された。データから、HSCニッチ概念に関する長期にわたる議論が、それらの細胞の正体ではなく、使用される異なる細胞マーカーに起因する可能性が非常に高い可能性があることが強力に示される。
【0326】
N−Cad
+間質細胞の正体を決定するために、それらの局部的分布を、異なるニッチレポーターマウスを使用して、骨髄における他の公知のニッチ細胞と比べて可視化した。N−Cad
+間質細胞からは72%±6%のCol2.3−GFP
+細胞が生じたが、9.3%±4.7%のN−cad
+Col2.3GFP
−細胞も骨内膜領域内で検出された。これらの未成熟の細胞は原始的なMSCの原因となり、これにより、HSCニッチ機能試験におけるCol2.3−Cre遺伝学的モデルの不十分な効率を説明することができる(Ding and Morrison, 2013; Ding et al., 2012; Greenbaum et al., 2013)。N−Cad−TdT
+およびネスチン−GFP
+はどちらも海綿領域において富化されたが、N−Cad−TdT
+は、以前に報告された通り、移植されたHSCの生着が検出された海綿領域に濃縮され(Nilssonet al., 2001; Xie et al., 2009)、本発明で観察された通りストレス後に残存した。これらのデータ全てから、N−cad
+細胞は他のMSCと同様のトランスクリプトームプロファイルを共有するが、それらの解剖学的分布によりそれらの独特なHSCニッチ機能が示される可能性があることが示される。実際に、rHSCの保存においてN−cad
+骨内膜ニッチ細胞が重大な役割を果たすことが示された。
【0327】
誘導性DTR系を使用することによって、N−cad
+細胞の除去により、BMにおけるpHSCおよびrHSCがどちらも排除されることが見いだされた。これは、骨内膜および血管周囲の帯域の両方におけるN−cad
+ニッチ細胞の解剖学的分布によって説明することができる。さらに、HSCのサブセットにおいてN−cad発現を検出することができることが示された。しかし、N−cad−TdTレポーターマウス系ではこの観察は裏付けられなかった(データは示していない)。これは、別のマウス系であるN−cad−mCherry(タンパク質レベルでの融合)は実際に低レベルのN−cad発現を示すHSCの小さなサブセット(CD49b
−CD34
−Flt2
−LSK)を有したので(一次観察)、それらのタンパク質レベルと転写レベルの不一致によって部分的に説明することができる。機能的移植データから、N−cad
+ニッチ細胞の除去の結果、rHSCを含めたHSCの減少がもたらされることが示された。Cxcl12およびSCFをN−cad
+細胞から欠失させることにより、N−cad
+間質細胞がこれらの2つの因子を産生することによってHSCの維持および制御に寄与することが見いだされた。全体として、本明細書の態様により、N−cad
+間質細胞がMSCとして機能し、特に、ストレス下での原始的なHSC維持を支持することが実証される。
【0328】
ヒト臍帯血液(hUCB)由来の造血幹細胞(HSC)を移植することには、がんを含めた様々な血液学的障害の処置に関して大きな見込みがあるが、単一のhUCB単位中のHSCの数が限られることにより、その広範にわたる使用が制限される恐れがある。広範囲にわたる試みにより、単一分子または経路を標的とすることによってヒトHSCをex vivoで増大させるための多数の方法が開発されたが、幹細胞の自己複製のために必須である多数の標的を同時に操作することが達成可能であり得るかどうかは分かっていない。最近の研究により、N
6−メチルアデノシン(m
6A)により、幹細胞の運命決定のために重大であるmRNAの群の発現が、それらの安定性が影響を受けることによってモジュレートされることが明らかになった。いくつかのm
6Aリーダーの中で、Ythdf2は、標的化mRNA分解を促進することがよく認識されている。しかし、成体幹細胞に対するYthdf2の生理機能は依然としてわかりにくい。本明細書の実施形態では、コンディショナルノックアウト(KO)マウスYthdf2により表現型HSCおよび機能的HSC数が増加するが、系列分化が歪むことも造血悪性疾患が導かれることもないことが実証される。さらに、ヒトYTHDF2のノックダウン(KD)により、2ラウンドの限界希釈移植アッセイにおいて、ex vivoでのhUCB HSCの増大の10倍を超える増加、コロニー形成単位(CFU)の5倍の増加、および機能的hUCB HSCの8倍を超える増加が導かれた。機構的に、マウス造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)由来のRNAならびにhUCB HSC由来のRNAのm
6Aマッピングにより、幹細胞の自己複製のために重大である転写因子をコードするmRNAへのm
6A富化が明らかになった。これらのm
6AでマークされたmRNAは、Ythdf2によって認識され、mRNA分解を受けた。Ythdf2 KO HSPCおよびYTHDF2 KD hUCB HSCでは、これらのmRNAが安定化され、それにより、タンパク質レベルの上昇が導かれ、Tal1 mRNAなどのmRNAのノックダウンによってレスキューすることができるHSCの増大が容易になる。したがって、実施形態は、成体幹細胞維持におけるYthdf2の機能を示し、また、HSCのex vivoでの増大を、HSC自己複製のために重大である多数のmRNAの安定性を調節する機構によって制御することにおけるYthdf2の重要な役割を同定するものであり、したがって、今後の臨床的適用の強力な潜在性がある。
【0329】
さらに、骨髄(BM)ニッチによる造血幹細胞(HSC)の制御が実質的に試験されている。しかし、HSC亜集団が異なるBMニッチによって異なって制御されるかどうか、およびどのように制御されるかは、依然としてほとんど分かっていない。本発明では、予備HSC(rHSC)を刺激されたHSC(pHSC)と機能的に区別し、それらのそれぞれのBMニッチをさらに調査した。pHSCおよびrHSCはどちらも恒常性の下で長期造血を支持することができることが見いだされている。しかし、pHSCは化学療法に対して感受性であったが、rHSCは化学療法を生き抜き、骨髄破壊後のその後の再生を支持した。ホールマウントHSC分布試験により、rHSCが、恒常性の間および化学療法後に、N−カドヘリン
+骨内層細胞が富化される骨内膜領域内に優先的に維持されることが明らかになった。pHSCは、骨と比較して化学療法に対して脆弱な血管に主に関連付けられた。トランスクリプトームプロファイリングおよびin vivo系列追跡結果から、N−カドヘリン
+間質細胞が、発生および再生の間に骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨細胞を生じさせる機能的な間葉系幹細胞であることが示された。最後に、N−カドヘリン
+ニッチ細胞の除去またはN−カドヘリン
+ニッチ細胞からのScfもしくはCxcl12のいずれかの欠失がHSCの数および維持に影響を及ぼすことが実証された。
【0330】
(実施例C)
shRNAを使用したCAR−T細胞の増大
【0331】
Ythdf2を操作することのCAR−T細胞の増大に対する効果を、レンチウイルス駆動性ヒトYthdf2 shRNAを使用して評価する。CAR−TレンチベクターへのYTHDF2 shRNAの上首尾のクローニングがなされた。レンチウイルスを使用してヒトCAR−T細胞に感染させ、ヒトCAR−T細胞の増大を進行させる。増大は、結果に関して数日間〜数週間かかることが予想される。レンチウイルスに感染したCAR−T細胞集団ではCAR−T対照集団と比較して有意に増強された増大が実証されると考えられる。
【0332】
m
6A−seq、irCLIP−seqおよびRNA−seqデータセットを含めた全ての配列決定データがGene Expression Ombibus(GEO)を通じて受託GSE107957の下で入手可能である。
【0333】
元のデータリポジトリ、http://www.stowers.org/research/publications/LIBPB-1248。
【0334】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載のものを補足する例示的な手続き上のまたは他の詳細を提供する範囲内で、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
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【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表4-1】
【表4-2】
【表5】