特表2020-536724(P2020-536724A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-536724気泡迂回領域を備えるマイクロ流体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-536724(P2020-536724A)
(43)【公表日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】気泡迂回領域を備えるマイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20201120BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20201120BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20201120BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   G01N37/00 101
   C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-518628(P2020-518628)
(86)(22)【出願日】2018年10月15日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月31日
(86)【国際出願番号】GB2018052958
(87)【国際公開番号】WO2019077323
(87)【国際公開日】20190425
(31)【優先権主張番号】1716961.6
(32)【優先日】2017年10月16日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517079180
【氏名又は名称】クァンタムディーエックス グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUMDX GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ホジャット マダディ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マイケル ウィルシェア
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン オハロラン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ トーマス スカリー
(72)【発明者】
【氏名】ポール マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド ボアダ
【テーマコード(参考)】
4B029
4G075
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA12
4B029GB10
4G075AA02
4G075AA39
4G075BB05
4G075BD13
4G075DA02
4G075EB50
4G075FA12
4G075FB12
(57)【要約】
本発明は、1つまたは複数の気泡迂回領域を備えるマイクロ流体デバイスに関する。本発明は、特に、マイクロ流体デバイス内での気泡の発生に関連する問題を回避することに関する。マイクロ流体デバイスは、ポイント・オブ・ケア(POC)診断装置と共に使用するためのカートリッジなどであり、このカートリッジは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または核酸捕捉などの下流処理を実行するように構成されている。気泡迂回領域は、関心領域の流動抵抗よりも低い流動抵抗を提供するように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路を提供するように構成されるマイクロチャネルであり、
マイクロチャネルは、前記マイクロチャネル内に少なくとも1つの関心領域を備え、
前記関心領域に隣接して気泡迂回領域が設けられ、前記気泡迂回領域の流動抵抗が前記関心領域の流動抵抗よりも低いことを特徴とする、マイクロチャネル。
【請求項2】
前記関心領域は、少なくとも一方側で、前記気泡迂回領域によって囲われ、前記気泡迂回領域の流動抵抗が前記関心領域の流動抵抗よりも低い、請求項1に記載のマイクロチャネル。
【請求項3】
前記気泡迂回領域が前記関心領域と流体連通している、請求項1または2に記載のマイクロチャネル。
【請求項4】
前記気泡迂回領域および前記関心領域が単一のチャンバから形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項5】
少なくとも1つのチャンバを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項6】
前記関心領域が前記チャンバ内にある、請求項5に記載のマイクロチャネル。
【請求項7】
前記気泡迂回領域の高さが前記関心領域の高さよりも相対的に高い、請求項1〜6のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項8】
前記気泡迂回領域の断面積が前記関心領域の断面積よりも大きい、請求項1〜7のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項9】
前記マイクロチャネルが第1の基板の溝として形成され、第2の基板が重ねられ、それによって前記マイクロチャネルが取り囲まれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項10】
第1の基板および第2の基板がともに接合されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項11】
前記気泡迂回領域が、マイクロ流体チャネルの上部にある1つまたは複数の溝の形態である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項12】
前記気泡迂回領域が、前記マイクロチャネルの少なくとも一部を形成するように適合される、第1または第2の基板に挿入可能なプラグ内に、または前記プラグによって、少なくとも部分的に形成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項13】
前記気泡迂回領域の形状が、前記マイクロチャネルの一部を形成する前記プラグの表面上に設けられる、請求項12に記載のマイクロチャネル。
【請求項14】
マイクロ流体チャネルは、第1の基板の第1の表面から、第1の開口を通って、前記第1の基板の第2の表面まで移動し、それから第2の開口を介して前記第1の表面に戻るように適合されている、請求項9〜13のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項15】
第1の基板の第2の表面がプラグ受容部を備える、請求項9〜14のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項16】
前記プラグ受容部は、押し嵌めまたは摩擦嵌めの方法でプラグを受容するように適合され、前記気泡迂回領域の形状が、前記第1の基板の前記第2の表面上に設けられる、請求項15に記載のマイクロチャネル。
【請求項17】
プラグは、前記プラグ受容部に挿入されてマイクロ流体チャネルの一部の壁を形成する、請求項16に記載のマイクロチャネル。
【請求項18】
前記気泡迂回領域が前記関心領域の上流で始まる、請求項1〜17のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項19】
前記気泡迂回領域が前記関心領域の境界の少なくとも一部の上に存在する、請求項1〜18のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項20】
前記気泡迂回領域が前記関心領域の両側を取り囲んでいる、請求項1〜19のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項21】
前記気泡迂回領域が複数の溝を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項22】
前記気泡迂回領域の壁が湾曲している、請求項1〜21のいずれか一項に記載のマイクロチャネル。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載のマイクロチャネルを備える、マイクロ流体デバイスであって、前記マイクロチャネルが基板内に少なくとも部分的に形成され、流体流路を提供するように構成されている、マイクロ流体デバイス。
【請求項24】
連続フローマイクロチャネルデバイスである、請求項23に記載のマイクロ流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の気泡迂回領域を備えるマイクロ流体デバイスに関する。本発明は、特に、マイクロ流体デバイス内での気泡の発生に関連する問題を回避することに関する。マイクロ流体デバイスは、ポイント・オブ・ケア(POC)診断装置と共に使用するための、例えば連続フローマイクロチャネル内のカートリッジなどであり、このカートリッジは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または核酸捕捉などの下流処理を実行するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体カセットなどのマイクロ流体ラボオンチップ(lab-on-a-chip)技術は、基板上の、DNA(デオキシリボ核酸)、酵素、たんぱく質、ウイルス、細胞、および多くの場合数センチメートルしか測定しないその他の生物学的物質の分離、反応、混合、測定、検出などに使用することができる。このような技術は、近年、医療、食品、医薬品などの分野で目立ってきている。比較的少量のサンプル(例えば、血液、血清または唾液サンプル)をこのタイプのマイクロ流体デバイスに流し入れることにより、様々な種類の測定、検出などを簡単に短時間で実行することができる。
【0003】
気泡形成は、マイクロ流体用途において重要な問題である。例えば、マイクロ流体チャネル内における、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の熱サイクリング中の気泡形成は、PCRの失敗の主な原因の1つとして報告されている。気泡が形成されると、サンプルの温度差が大きくなるだけでなく、PCRチャンバからサンプルが絞り出されてしまう。
【0004】
同様に、気泡が形成されると、PCR反応とは無関係に、あるいはPCR反応のさらに下流でさらなる問題が生じる可能性がある。例えば、気泡は、関心領域で分子の結合を防ぐ可能性があり、かつ/あるいは関心領域の観察または画像化を妨げたり制限したりする可能性がある。
【0005】
以下のオプションを含む、マイクロ流体システムのPCR処理における気泡の発生を回避および抑制するためのいくつかの方法が提案されている。
(i)PCRチャンバの構造設計は、気泡の形成を防ぐ点で、円形チャンバよりもダイヤモンド形または菱形チャンバが優れていると考えられている。最近、Gongらは、PCRチャンバが深いほど、PCR溶液が気泡をトラップすることなく該溶液をチャンバに流し込むのが難しくなると報告した。しかしながら、チャンバのサイズ、または入口および出口の形状およびサイズは、気泡の形成にはほとんど、あるいはまったく影響しない。
(ii)PCRチャンバの表面処理。一般に、PCRチャンバおよびその入口/出口の濡れ特性は、気泡の形成に影響する。チャンバ表面の親水性が高い場合、PCRサンプルは気泡を形成することなくスムーズかつ迅速にチャンバに流入できるが、完全に親水性の高い表面が適切でない場合が多くある。
(iii)PCRチャンバのシーリング加圧。加圧および高温下では、ガスの溶解度が増し、PCRサンプル内の溶存ガスおよび微細気泡の体積が増加しないため、気泡の形成が妨げられる。
(iv)PCRサンプルの脱気。この処理により、ロード前にPCRサンプル内の非凝縮性ガスを除去することができ、その結果、気泡が形成されるリスクを低減できる。
【0006】
同様に、微多孔膜を備えた気泡トラップは、例えば特許文献1に記載されており、気泡を保持する上流の気泡トラップは、特許文献2に記載されている。しかしながら、これらの気泡トラップは、気泡を永続的に保持するか、気泡を除去する必要があり、処理できるのは特定量の気泡だけである。
【0007】
これらのオプションはすべて、気泡の形成を防止または制限するように見えることは注目に値する。これは便利であるが、この解決策が適切でない状況や、実際には気泡が形成されて問題を引き起こす状況がまだ多くある。マイクロ流体デバイスにおける気泡の形成に関連する問題の1つまたは複数を克服または緩和するための、別のオプションを提供することは有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0209783号
【特許文献2】欧州特許第17926551号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書を通して、「マイクロチャネル」という用語は、少なくとも1つの寸法が1mm未満の水力直径を有するチャネルをいう。
【0010】
本明細書における「チャンバ」という用語は、サンプルチャンバや検出チャンバなど、マイクロ流体デバイスの任意のチャンバをいう。チャンバという用語は、特定の活動が生じるか、あるいは特定の特性を有する、マイクロ流体チャネルの一部をいう場合もある。
【0011】
「流体連通」という用語は、流体が2つ以上の領域またはチャンバを通過することを可能にする、当該2つ以上の領域間またはチャンバ間の機能的接続をいう。
【0012】
本発明によれば、流体流路を提供するように構成されたマイクロチャネルが提供される。当該マイクロチャネルは;
マイクロチャネル内に少なくとも1つの関心領域を備えるマイクロチャネルであって、
関心領域に隣接して気泡迂回領域が設けられ、気泡迂回領域の流動抵抗が関心領域の流動抵抗よりも低いことを特徴とする。
【0013】
有利には、気泡迂回領域は、マイクロチャネルを流れる流体に存在する気泡が関心領域の周りに迂回するように配置される。例えば、気泡がマイクロアレイへの核酸の結合および/またはマイクロアレイの観察を妨げないようにするために、迂回領域は、核酸が捕捉および観察されるマイクロアレイに隣接して設けることができる。気泡迂回領域は、気泡をトラップして保持するのではなく、気泡を迂回させるように作用するため、気泡の量は、気泡が保持またはトラップされないため制限要因ではない。
【0014】
本発明の一態様によれば、マイクロ流体デバイスが提供される。当該マイクロ流体デバイスは;
基板内に少なくとも部分的に形成され、流体流路を提供するように構成されたマイクロチャネルと;
マイクロチャネル内の少なくとも1つの関心領域と、を備えるマイクロ流体デバイスであって、
関心領域に隣接して気泡迂回領域が設けられ、気泡迂回領域の流動抵抗が関心領域の流動抵抗よりも低いことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、関心領域は、少なくとも一方側で、気泡迂回領域によって囲われ、気泡迂回領域の流動抵抗が関心領域の流動抵抗よりも低い。
【0016】
使用中、流体は、関心領域および気泡迂回領域を横切って流れるが、気泡迂回領域の流動抵抗が関心領域の流動抵抗よりも低いので、気体の流れに存在する気泡は自然と気泡迂回領域に流れ込む。
【0017】
気泡迂回領域は、関心領域と流体連通している。
【0018】
より好ましくは、気泡迂回領域および関心領域は、単一のチャンバから形成される。
【0019】
好ましくは、マイクロチャネルは、少なくとも1つのチャンバを備える。より好ましくは、関心領域が当該チャンバ内にある。
【0020】
好ましくは、気泡迂回領域の高さが関心領域の高さよりも相対的に高い。
【0021】
チップ/カセットが使用中の方向に向けられている場合、気泡迂回領域の高さは、関心領域の高さのよりも高い。
【0022】
一般に、これは、所定の長さに沿って、気泡迂回領域の断面積が関心領域の断面積よりも大きいことを意味する。
【0023】
任意に、マイクロチャネルは、第1の基板の溝として形成され、第2の基板が重ねられ、それによってマイクロチャネルが取り囲われる。
【0024】
任意に、第1の基板は実質的に剛性である。好ましくは、第1の基板は実質的に平面である。任意に、第2の基板はフィルムである。
【0025】
好ましくは、第1の基板および第2の基板はともに接合されている。
【0026】
好ましくは、第1の基板および第2の基板はともにレーザ溶接されている。
【0027】
任意に、第1の基板および第2の基板は接着剤で接合されている。
【0028】
好ましくは、気泡迂回領域は、マイクロ流体チャネルの上部にある1つまたは複数の溝の形態である。
【0029】
任意に、気泡迂回領域は、マイクロチャネルの少なくとも一部を形成するように構成された、第1または第2の基板に挿入可能なプラグ内に、または当該プラグによって、少なくとも部分的に形成されている。
【0030】
任意に、気泡迂回領域の形状は、マイクロチャネルの一部を形成するプラグの表面上に設けられる。
【0031】
任意に、マイクロ流体チャネルは、第1の基板の第1の表面から、第1の開口を通って、第1の基板の第2の表面まで移動し、それから第2の開口を介して第1の表面に戻るように構成されている。
【0032】
任意に、第1の基板の第2の表面がプラグ受容部を備える。
【0033】
プラグ受容部は、押し嵌めまたは摩擦嵌めの方法でプラグを受容するように構成され、気泡迂回領域の形状が、第1の基板の第2の表面上に設けられる。
【0034】
好ましくは、プラグは、プラグ受容部に挿入されてマイクロ流体チャネルの一部の壁を形成する。
【0035】
好ましくは、気泡迂回領域は関心領域の上流で始まる。
【0036】
任意に、気泡迂回領域が関心領域の境界の少なくとも一部上にある。
【0037】
好ましくは、気泡迂回領域は関心領域の両側を取り囲んでいる。
【0038】
最も好ましくは、気泡迂回領域は複数の溝を含む形態である。
【0039】
好ましくは、気泡迂回領域の壁は湾曲している。
【0040】
傾斜した壁や角付きの壁ではなく、湾曲した壁を有することが好ましい。湾曲した壁を使用すると、流体の流れがスムーズになり、流体力学における「よどみゾーン」と呼ばれるコーナーへの流れ込みを防ぐことができるからである。
【0041】
好ましくは、気泡迂回領域は、関心領域の下流で終わる。
【0042】
好ましくは、関心領域の下流において、気泡迂回領域は、流体の流れを下流のマイクロ流体チャネル内の主流に再合流させる、あるいは再合流できるように構成されている。
【0043】
好ましくは、気泡迂回領域は、関心領域の下流の地点で、流動抵抗がマイクロ流体チャネルの流動抵抗と一致するように構成される。通常、気泡迂回領域の形状は、関心領域の下流の地点で、その形状がマイクロチャネルの残りの形状と一致するように形作られる。これは、関心領域の下流で、気泡迂回領域の高さが、好ましくは滑らかな傾斜として減少するが、任意には、階段状であり、チップ/カセットが使用中の向きになったときにマイクロチャネルのそれと一致する。これにより、気泡が関心領域の周りに迂回され、その後、下流のマイクロ流体チャネル内の主流または片流れに合流することができる。これにより、設定された場所に気泡を保持またはトラップしておく必要がなくなり、これらがもたらす問題に対処することができる。
【0044】
任意に、マイクロ流体デバイスは、連続フローマイクロチャネルデバイスである。
【0045】
本発明のより良い理解を提供するために、以下の図面を参照して、いくつかの実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1a】本発明によるマイクロ流体カセットを示す図である。
図1b】気泡迂回領域および関心領域の断面図である。
図2】先行技術型のカセット内のマイクロアレイ領域における画像を歪ませる気泡を示す図である。
図3】気泡が関心領域の周りに迂回された、本発明によるカセットを示すイメージ図である
図4】本発明によるカセット内の好ましい流体の流れの電気回路アナロジーを示す図である。
図5】5aは、マイクロチャネルの少なくとも一部を形成するように構成されたプラグが組み込まれた、本発明の代替実施形態によるマイクロ流体カセットの一部を示す図であり、5bは、当該プラグを示す図である。
図6】6aおよび6bは、同様にマイクロチャネルの少なくとも一部を形成するように構成されたプラグが組み込まれた、本発明のさらなる代替実施形態によるマイクロ流体カセットの一部を示す図であり、6cは、当該プラグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明を含むマイクロ流体カセット1を図1に示す。この実施形態では、連続フロースルーマイクロチャネル2を備えたマイクロ流体カセット1が提供される。マイクロチャネル2は、流体流路に沿ってサンプル、好ましくは液体形式の生体サンプルの通過を可能にするように、マイクロ流体カセット1の内側に所望の長さおよび形状で形成される。チャネルは、第1の基板の上面に形成され、この実施形態において、第1の基板はポリカーボネートである。第1の基板には、第1の基板のチャネルと位置合わせ可能な溝が下面に形成された第2の基板が重ねられている。これらの基板を接合することにより、実質的に閉じたチャネルが提供される(必要に応じて、入口および出口を含めることができる)。任意の適切な接合手段を用いることができるが、レーザ溶接が特に好ましい。必要に応じて、第1および第2の基板を接合前に位置合わせすることができる。チャネルの長さおよび断面形状は、サンプルの所望の搬送および処理を可能にする任意の適切な形状とすることができる。例えば、マイクロチャネルは、約0.01μm〜100mmの断面積を有することができる。マイクロチャネル2の領域もしくは部分3、またはマクロチャネル2内のチャンバは、目的の核酸を増幅するようにPCRの実行専用である。この部分3は、アニーリング領域3a、伸長領域3bおよび変性領域3cを有することができる。次に、カセット1のPCR部分3の下流に、増幅された物質を捕捉するマイクロアレイチャンバ4を形成するチャネルの一部がある。マイクロアレイチャンバ4はまた、観察面5を通して、捕捉した物質の観察または画像化を可能にする。例えば、カメラ6をマイクロアレイチャンバ4と位置合わせすることができる。
【0048】
気泡に関する問題は、流体が(本発明を利用しない)マイクロ流体アプリケーションで使用されるカセットを通して流れるときに発生する可能性がある。例えば、先行技術のタイプにおけるカセット内のマイクロアレイ領域の画像を歪ませる気泡の図を図2に示す。
【0049】
本発明において、マイクロアレイチャンバ4は、サンプル内に存在し得る、あるいはサンプル中で形成され得る気泡9をマイクロアレイチャンバ4の関心領域8から迂回させるように作用する、2つの溝またはチャネル延長部の形態の気泡迂回領域7a,7bを備える。この場合、関心領域8は、増幅された物質を捕捉して観察または画像化する、マイクロアレイチャンバ4の一部である。
【0050】
図1bに見られるように、この実施形態において、気泡迂回領域7は、関心領域8よりも大きな高さ(または深さ)を有する2つのチャネルまたは溝7aおよび7bの形態である。この高さは、マイクロチャネル2を形成する材料に対するものであり、気泡迂回領域7がより高いことにより、使用中、気泡迂回領域7の少なくとも一部が関心領域8の上にあることが保証される。この実施形態において、関心領域を横切るマイクロチャネルの深さは0.17mmであり、気泡迂回領域の深さはより深く、0.9mmである(気泡迂回領域は、例えば、約0.6mmの深さを有し得る)。気泡迂回領域のより大きな深さは、関心領域と比較した該迂回領域の追加の相対的な高さとして構成される。液体中の気泡は自然に上昇するため、チップの使用中(かつ気泡迂回領域がチャンバのチャネルの上部にあるようにチップを向けた場合)、流体中に存在するいずれの気泡もより高い領域に、すなわち気泡迂回領域に上昇する。
【0051】
この実施形態において、気泡迂回領域7a,bは、この実施形態では第1の基板の内面に形成された、マイクロアレイチャンバ4の上部に延びる2つの細長い溝として形成される。関心領域もまた第1の基板の下面に形成されるが、気泡迂回領域よりも浅い。マイクロチャネルの製造中に、第1の基板は、第2の基板が重ねられた底部または下部基板として見ることができるが、使用中、第1の基板は、通常、第2の基板の上に配置される。第1の基板はまた、透明であってもよく、内部マイクロチャネルの少なくとも一部を見ることができるように透明な部分を有していてもよい。溝は、溝の上壁と第1および第2の溝側壁とにより形成された略矩形断面を有する、オープンチャネルの形態とすることができる。しかしながら、溝は、他の手段によって、他の構成で形成することができ、例えば、溝は単一の半円形の溝として提供できることが理解されよう。
【0052】
この実施形態において、気泡迂回領域7a,bは、関心領域8の僅かに上流から始まり、関心領域8の周囲に沿って延びている。気泡迂回領域7a,bの開始点は、必要な空間および用途に基づいて変えることができる。一般的な目的は、気泡を関心領域からそらし、それらを関心領域の後の流れに戻すことである。したがって、この設計は、気泡を永続的にトラップしておくのではなく、単に、気泡が関心領域を横切ったり該関心領域内に流入したりするのを実質的に防止する。
【0053】
本発明では、気泡がシステム内で依然として発生し得ることが理解されよう。例えば、上述の実施形態では、発生した気泡とともに対象の増幅物質を含むPCR混合物のすべてが、マイクロアレイチャンバ4に到達する。マイクロアレイの両側の気泡迂回領域7a,bの流動抵抗は、関心領域8の流動抵抗よりも低いため、気泡を含む流体は関心領域8の周りを流れる。さらに、気泡迂回チャネルは、少なくともマイクロアレイチャンバ4よりも高い部分を有するため、気泡は流体の流れの上層に向かって物理的に移動する。図3に見られるように、気泡は、気泡迂回領域に優先的に流れ込み、関心領域8を実質的に回避する。
【0054】
対称的な気泡迂回領域は、関心領域を包囲し、あるいは境界づける、2つの実質的に平行かつ同じサイズの溝または延長チャネルを有する。滑らかな流体の流れを可能にするために、対称的に設計された気泡迂回領域が好まれることが多いが、スペースに制限がある場合は、例えばマイクロアレイの片側に、非対称に設計された溝またはチャネルを使用することができる。気泡迂回領域の容積は、気泡の流れと知覚され得る量に応じて選択できる。より大きな面積または容積を有する気泡迂回領域では、発生した気泡のより多くの量を取り込んで保持することが可能であり、その結果、比較的大きな気泡迂回領域を用いると、マイクロアレイ表面上に気泡がトラップされる可能性が低くなる。
【0055】
特に、気泡迂回領域の寸法のために、気泡迂回領域における流動抵抗は、関心領域、例えばマイクロアレイチャンバの流動抵抗よりも低い。一般に、マイクロ流体工学では、チャネル内の流量Qは、適用される圧力降下ΔPに比例する。これは、下記式に要約できる。
ΔP=RQ
Rは、流体力学的抵抗である。この式は、形式的には、電圧差と電流との間の電気運動学的法則、V=RIのアナロジーである。
【0056】
耐水圧の式は:
・円形断面のチャネル(全長L,半径R):
【数1】
【数2】
【0057】
電気回路のアナロジーは、より複雑なマイクロ流体ネットワークの設計に役立つツールを提供する。電気回路のキルヒホフの法則を適用し、回路のノードの流量の合計がゼロ、かつループの圧力差の合計がゼロになるように修正している。
【0058】
これに基づいて、好ましい流体の流れの電気回路アナロジーを図4に示す。見てとれるように、マイクロアレイの周囲の両方のマイクロチャネル(W,W,H,H)の断面積は、マイクロアレイチャネル(W,H)の断面積よりもはるかに大きく、これによってマイクロアレイチャネルと比較してこれらのマイクロチャネルの流動抵抗が低くなる(R,R<R)。したがって、並列のマイクロチャネル内における流体の流量は、マイクロアレイチャネルよりも大きくなる(Q,Q<Q)。
【0059】
流体の流れの説明した挙動、流れに沿った気泡の引きずり、および気泡が垂直に上方に上昇する自然な傾向を利用することにより、気泡は上昇して関心領域から逸れる。
【0060】
本発明の別の実施形態も想定されるが、その一例を図5aおよび5bに示す。この場合もやはり、連続フロースルーマイクロチャネル2’を備えたマイクロ流体カセット1’が提供され、マイクロチャネル2’は、マイクロ流体カセットVの内側に形成される。この実施形態において、カセットは、チャネルが形成されたポリプロピレンなどの第1の基板を備える。第1の基板には第2の基板が重ねられ、これら2つはともに接合される。このようにして、実質的に閉じたチャネルが提供される(この場合も同様に、必要に応じて入口および出口を含めることができる)。図5aに見られるように、第1の基板の一部は、図5bに示されるタイプのプラグ10’を挿入できる開口を有する。プラグ10’の表面は、マイクロチャネルの(使用中における)上壁の一部を形成し、気泡迂回領域7’を形成するように成形される。プラグ10’またはその一部は、それを通して関心領域を観察または画像化することが望ましい場合、透明にすることができる。
【0061】
本発明のさらに別の実施形態を、図6a,6bおよび6cに示す。この場合も、連続フロースルーマイクロチャネル2’’を備えたマイクロ流体カセット1’’が提供され、マイクロチャネル2’’は、マイクロ流体カセット1’’の内側に形成される。しかしながら、この実施形態では、カセット1’’が、チャネルが形成されたポリプロピレンなどの第1の基板と、ポリプロピレンフィルムの形態の第2の基板と、を備える。例えば、レーザ溶接を使用して第1の基板材料をフィルムに接合することにより、実質的に閉じたチャネルが提供される(この場合も同様に、必要に応じて入口および出口を含めることができる)。第1の基板は、上面および下面を備えた平面要素であり、マイクロチャネルの大部分が上面に形成されている。ただし、この場合、第2の基板、すなわちフィルムが、使用中にマイクロチャネルの上壁を形成することが望ましいことが多い。しかしながら、フィルムは薄い層であるため、気泡迂回領域に必要な形状を形成するのには適していない。したがって、この実施形態では、図6bに見られるように、マイクロ流体チャネルは、平面要素の第1の表面から、平面要素/基板の本体にある開口11’’を通って、第2の表面に移動し、それから第2の開口を介して第1の表面に戻るように構成される。押し嵌めまたは摩擦嵌めの方法でプラグ10’’を受容するように構成されたプラグ受容部12’’をカセットの第2の表面に関連付けるとともに、気泡迂回領域7’’の形状をカセットの第2の表面に設ける。プラグ10’’をプラグ受容部11’’に挿入すると、該プラグ10’’によりマイクロ流体チャネルの一部の下部壁が形成される。使用中、流体は、プラグ10’’とカセットとの間に形成されたチャンバに入る。気泡迂回領域7’’を形成する気泡キャッチャの形状は、マイクロ流体基板に成形されており、図6cに最もよく示されるように、プラグの表面は、単なる平坦面である。気泡キャッチャの深さ、およびプラグ表面とマイクロ流体基板との間の距離は、他の実施形態と同様である。プラグの実施形態は、製造に特に適したオプションを提供する。しかしながら、バブルキャッチャの形状は同じ方法でマイクロ流体基板に成形することができ、プラグ部分はプラグというより、恒久的な構造とすることができることが理解されよう。ある実施形態からの特徴は、技術的に実現不可能な場合を除き、別の実施形態に適宜組み込むことができることが認識されるであろう。
【0062】
本明細書における実質的に複数および/または単数のいかなる用語の使用に関しても、当業者は、文脈および/または用途に応じて、複数から単数におよび/または単数から複数に変換することができる。本明細書では、明確さのために、様々な単数/複数の置換を明示的に記載する場合がある。
【0063】
一般に、本明細書で使用され、特には添付の特許請求の範囲で使用される用語は、一般に「オープンな」用語として意図されていることを当業者は理解するであろう(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むが、これらに制限されない」として解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「含むが、これらに制限されない」と解釈されるべきである、等)。さらに、導入された請求項の記載の具体的な数が意図される場合、そのような意図は請求項で明示的に記載され、そのような記載がなければ、そのような意図は存在しないことは当業者であれば理解するであろう。例えば、理解の一助として、以下に添付される特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するために導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つ以上の(one or more)」の使用を含む場合がある。しかしながら、このような語句を使用するからといって、不定冠詞「a」または「an」により請求項の記載を導入した場合に、このような導入された請求項の記載を含む特定の請求項が、このような記載を1つのみ含む実施形態に限定される、ということが示唆されると解釈されるべきではない。これは、たとえ同様の請求項が「1つ以上の(one or more)」または「少なくとも1つの(at least one)」の導入句および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても然りであり(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味するものと解釈されるべきである)。請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても同様のことが通用する。加えて、たとえ導入された請求項の記載の具体的な数字が明示的に記載されている場合であっても、当業者であれば、そのような記載は、少なくとも記載された数を意味するように解釈されるべきであると認めるであろう(例えば、他の修飾語句がなく「2つの記載事項」とだけある記載は、少なくとも2つの記載または2つ以上の記載を意味する)。
【0064】
本開示の様々な実施形態は例証のために本明細書で説明されたこと、そして本開示の範囲および精神から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが認識されるであろう。したがって、本明細書で開示された様々な実施形態は限定することを意図するものではなく、真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲により示される。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
【国際調査報告】