特表2020-536802(P2020-536802A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-536802高度に自動化された運転用のブレーキ冗長コンセプト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-536802(P2020-536802A)
(43)【公表日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】高度に自動化された運転用のブレーキ冗長コンセプト
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20201120BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20201120BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20201120BHJP
   B60T 7/20 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B60T17/18
   B60T13/68
   B60T8/17 Z
   B60T8/17 B
   B60T7/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-542194(P2020-542194)
(86)(22)【出願日】2018年10月16日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月12日
(86)【国際出願番号】EP2018078185
(87)【国際公開番号】WO2019076861
(87)【国際公開日】20190425
(31)【優先権主張番号】102017218488.4
(32)【優先日】2017年10月16日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファルク ヘッカー
(72)【発明者】
【氏名】アドナン ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ユント
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー ヴァイス
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シュタインベルガー
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048AA02
3D048BB03
3D048CC44
3D048CC53
3D048CC55
3D048DD02
3D048HH05
3D048HH24
3D048HH27
3D048HH48
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3D048HH68
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3D048PP03
3D048QQ07
3D048RR01
3D048RR29
3D048RR35
3D049AA02
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3D049CC03
3D049CC06
3D049HH05
3D049HH18
3D049HH21
3D049HH39
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049HH53
3D049KK18
3D049PP02
3D049QQ04
3D049RR01
3D049RR11
3D049RR13
3D246AA12
3D246AA13
3D246BA03
3D246BA08
3D246CA02
3D246DA01
3D246EA20
3D246FA03
3D246GA01
3D246GB01
3D246GB37
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA02A
3D246HA32A
3D246HA64A
3D246JA03
3D246JA12
3D246LA32Z
3D246LA73Z
3D246MA09
3D246MA19
3D246MA20
(57)【要約】
本発明は、車両、特に自律運転の商用車用の電子制御されるブレーキシステム(80)を拡張するための装置(82)およびモジュール(18)に関する。本発明はさらに、電子制御ブレーキシステム(80)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の供給源(52)を備えたブレーキシステム(80)用の非電気的な制御信号を形成する装置(82)であって、前記装置(82)は、
・蓄圧器(10)に接続するように構成されている少なくとも1つのインタフェース(83)と、
・前記制御信号を出力するように構成されている少なくとも1つのインタフェース(84)と、
を有し、
前記装置(82)が、第2の供給源(58)を介してエネルギ供給されるように構成されている、
装置(82)。
【請求項2】
前記装置(82)は、さらに、
・同様に前記第2の供給源(58)を介してエネルギ供給される処理手段を有し、
前記処理手段は、前記装置(82)および/または前記ブレーキシステム(80)の制御を実行するように構成されている、かつ/または、
前記処理手段は、前記装置(82)に組み込まれている、
請求項1記載の装置(82)。
【請求項3】
前記装置(82)は、さらに、
・車両の目標特性、特に目標減速度を得るための少なくとも1つのインタフェースを有する、
請求項1または2記載の装置(82)。
【請求項4】
前記装置(82)は、前記非電気的な制御信号を電子制御で形成するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(82)。
【請求項5】
第1の供給源(52)を有するブレーキシステム(80)用の非電気的な制御信号を電子的に形成するためのモジュール(18)であって、前記モジュール(18)は、
・蓄圧器(11、12)に接続するために構成されている少なくとも1つのインタフェース(15)と、
・ブレーキを操作するための制動圧力を前記非電気的な制御信号から形成するように構成されている少なくとも1つの処理ユニット(22、24、32)に、前記非電気的な制御信号を伝送するように構成されている少なくとも1つのインタフェース(16、17)と、
を有し、
非電気的な制御信号を受信するように構成されている少なくとも1つのインタフェース(19)が設けられており、
前記モジュール(18)は、前記制御信号から、前記ブレーキシステム(80)用の前記非電気的な制御信号を形成するように構成されている、
モジュール(18)。
【請求項6】
前記モジュール(18)は、さらに、
・運転者の望みを受け取るように構成されている少なくとも1つのインタフェースを有し、
前記モジュール(18)は、前記ブレーキシステム(80)用の前記非電気的な制御信号を形成する際に、前記前記運転者の望みを考慮するように構成されており、かつ/または、前記第1の供給源(52)および/または第2の供給源(58)を介してエネルギ供給されように構成されている、
請求項5のモジュール(18)。
【請求項7】
前記モジュール(18)は、さらに、
・同様に前記第2の供給源(58)を介してエネルギ供給される処理手段を有し、前記処理手段は、前記装置(82)の制御および/または前記モジュール(18)の制御および/または前記ブレーキシステム(80)の制御を実行するように構成されている、かつ/または、前記処理手段は、前記モジュール(18)に組み込まれている、
請求項5または6記載のモジュール(18)。
【請求項8】
前記モジュール(18)は、さらに、
・請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(82)を有し、
前記インタフェース(84)は、信号伝送のための、前記モジュール(18)の前記インタフェース(19)に接続されており、
前記装置(82)は、前記モジュール(18)に組み込まれているか、または別体で構成されている、
請求項5から7までのいずれか1項記載のモジュール(18)。
【請求項9】
組み込まれて構成される場合、前記インタフェース(84)と前記インタフェース(19)とは、同一である、
請求項8記載のモジュール(18)。
【請求項10】
前記モジュール(18)は、通常時に電子的に前記運転者の望みを特定し、制御装置(40)に転送し、付加的に、制動圧力を形成するための少なくとも1つの処理ユニット(22、24、32)に、非電気的な制御信号を伝送するように構成されており、しかしながら前記制動圧力は、エラー時にのみ利用される、
請求項6から9までのいずれか1項記載のモジュール(18)。
【請求項11】
前記エラーは、前記モジュール(18)の、特に前記第1の供給源(52)によるエネルギ供給の停止である、
請求項10記載のモジュール(18)。
【請求項12】
少なくとも2つの車軸を有する車両用、特に商用車用の電子ブレーキシステム(80)であって、前記電子ブレーキシステム(80)は、
・ブレーキを操作するための制動圧力を非電気的な制御信号から形成するように構成されている少なくとも1つの処理ユニット(22、32)と、
・少なくとも1つの前記処理ユニット(22、32)に制御信号を伝送するための少なくとも1つの非電気的な回路、特に空気圧回路(VAK、HAK)と、
・少なくとも1つの蓄圧器(10,11、12)と、
・前記処理ユニット(22、32)による前記制動圧力の前記形成を電子制御するように構成されている処理手段と、
有し、
前記処理手段は、第1の供給源(52)によってエネルギ供給され、
請求項5から11までのいずれか1項記載のモジュール(18)が設けられており、前記モジュール(18)は、少なくとも1つのインタフェース(15)により、少なくとも1つの前記蓄圧器(10、11、12)に流体接続されており、前記モジュール(18)は、少なくとも1つのインタフェース(16、17)を介して、少なくとも1つの前記非電気的な回路(VAK、HAK)に流体接続されている、
電子ブレーキシステム(80)。
【請求項13】
それぞれ1つの処理ユニット(22、32)は、別々の非電気的な回路(VAK、HAK)に流体接続されており、かつ、前記モジュール(18)の少なくとも1つの前記インタフェース(16、17)を介して、別々に駆動制御されるように構成されており、
処理ユニット(22、32)により、前記車両の車軸(VA、HA)用のそれぞれの前記非電気的な回路(VAK、HAK)の非電気的な制御信号から、制動圧力が形成される、
請求項12記載の電子ブレーキシステム(80)。
【請求項14】
前記電子ブレーキシステム(80)は、
・少なくとも1つのトレーラのブレーキを操作するための制動圧力を非電気的な制御信号から形成するように構成されている処理ユニット(24)を有し、
前記処理ユニット(24)は、非電気的な回路(VAK、HAK)、特に空気圧回路に接続されており、前記非電気的な回路(VAK、HAK)は、別体の回路であるか、または少なくとも1つの別の処理ユニット(22、32)に接続されている、
請求項12または13記載の電子ブレーキシステム(80)。
【請求項15】
前記電子ブレーキシステム(80)は、
・特に電気的な第2の供給源(58)、
・少なくとも1つの非電気的な回路に設けられておりかつ対応して非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を、対応する前記処理ユニット(22、24、32)に調節するように構成されている少なくとも1つのモジュレータ(85、86、87)、および/または、
・処理ユニット(22、24、32)の制動圧力をブレーキに調節するように構成されている少なくとも1つのモジュレータ(28)を、
有し、
前記モジュレータは、前記第1の供給源(52)によってエネルギ供給される処理手段によって駆動制御されると共に、前記第2の供給源(58)によってエネルギ供給される処理手段によっても駆動制御される、ように構成されている、
請求項12から14までのいずれか1項記載の電子ブレーキシステム(80)。
【請求項16】
前記電子ブレーキシステム(80)は、
・請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(82)を有し、前記装置(82)は、その少なくとも1つのインタフェース(84)により、前記モジュール(18)の少なくとも1つのインタフェース(19)に接続されており、かつ、少なくとも1つのインタフェース(83)により、蓄圧器(10、11、12)に接続されており、かつ/または、
前記電子ブレーキシステム(80)は、さらに、
・前記装置(82)および/または前記モジュレータ(85、86、87、28)の制御を電子的に実行するように構成されている処理手段を有し、
前記装置(82)および/または前記処理手段は、前記第2の供給源(58)によってエネルギ供給されるように構成されている、
請求項15記載の電子ブレーキシステム(80)。
【請求項17】
前記電子ブレーキシステム(80)は、
・少なくとも1つのホイールのホイール回転数を検出するように構成されている少なくとも1つのインタフェースを有し、
前記ブレーキシステム(80)は、検出した前記ホイール回転数を考慮し、特に前記処理手段によって、前記制動圧力の前記形成を行うように構成されている、
請求項12から16までのいずれか1項記載の電子ブレーキシステム(80)。
【請求項18】
前記電子ブレーキシステム(80)は、
・前記第1の供給源(52)によってエネルギ供給される処理手段と、
・前記第2の供給源(58)によってエネルギ供給される処理手段と、
を有し、
2つの処理手段により、少なくとも1つのインタフェースを介して、少なくとも1つのホイールのホイール回転数が検出される、
請求項17記載の電子ブレーキシステム(80)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自律運転の商用車用の電子制御ブレーキシステムを拡張するための装置およびモジュールに関する。本発明はさらに、電子制御ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(少なくとも限定された時間の間)運転作業および運転についての責任を運転者から引き受ける、高度に自動化された走行機能を備える車両、特に商用車は、任意のエラーが発生した際、運転者が責任を再び引き受けるまで、車両の運転を継続しなければならない。このことから導出される「フェイルオペレーショナル」というシステム特性によって要求されるのは、特に実装レベルにおいて、基本的な機能が、場合によっては機能的な制限を伴い、引き続いて保証されることである。ブレーキ制御についてこのことが意味するのは、任意のエラーの場合であっても、引き続いて電子制御によって車両をブレーキングすることができ、したがってブレーキ制御が冗長に構成されていることである。
【0003】
従来技術からは、電子制御の、特に空気圧式ブレーキシステムの複数の実施形態が公知である。
【0004】
欧州特許第2の398684号明細書には、例えば、分離した圧力制御チャネルを備えた車両用の電気・空気圧式ブレーキ装置が開示されている。
【0005】
既存のブレーキシステムの複数の要素を二重にすることにはコストがかかり過ぎでありかつ煩雑であるため、エラー時に、エラーのない動作と比較して、状況によっては制限された類似の機能が保証されるという点において、冗長コンセプトにより、既存のブレーキシステムを拡張ないしは補足すべきである。自律走行動作についてこのことが意味するのは、車両の自動化されたブレーキングも可能になるように、既存のブレーキシステムを拡張しなければならないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、自律走行動作用に既存の電子制御ブレーキシステムを冗長化できるようにする可能性を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0008】
基本的に複数の電子制御ブレーキシステムが公知である。これらの電子制御ブレーキシステムは、一般に、フットブレーキモジュールと、空気圧式の制動圧力を形成する処理ユニット(圧力制御モジュール)と、を有する。フットブレーキモジュールは、例えばブレーキペダルを介して、運転者の望みを電子的に受け取り、これを電子的に制御装置に転送し、この制御装置は、さらにこれに基づいて処理ユニットを電子的に駆動制御する。ここから処理ユニットは、電子的に空気圧式の制動圧力を生成する。制動圧力の電子的な生成は、このために第1の、特に電気的な供給源によってエネルギ供給される。フットブレーキモジュールは、エラーでない場合であっても、ブレーキペダルの動きから空気圧式の制御圧力を形成する。この場合、制御圧力は、後続処理されない。電気的な供給源が停止した場合、ブレーキシステムは、空気圧式のフォールバックレベルになる。フットブレーキモジュールの空気圧式の制御圧力は、空気圧式のフォールバックレベルにおいて、処理ユニットを駆動制御するために利用され、ここから制動圧力が生成される。
【0009】
本発明では、第1の供給源、特に電気的な供給源を備えたブレーキシステム用の、特に電子制御ブレーキシステム用の、非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を形成する装置が設けられている。この装置は、蓄圧器に接続するように構成されている少なくとも1つのインタフェースと、制御信号を出力するように構成されている少なくとも1つのインタフェースと、を有し、この装置は、別の供給源を介して、特に残りのブレーキシステムから独立したバッテリ回路を介してエネルギ供給されるように構成されている。
【0010】
したがって、有利には、ブレーキシステムの供給源の供給が停止した場合であっても、ブレーキシステムを駆動制御する制御信号が引き続いて生成可能であり、これにより、自律走行動作を引き続いて実行できることが保証される。
【0011】
好適には上記の装置は、処理手段、特に電子的な処理手段または制御手段を有し、処理手段または制御手段も、同様に別の供給源を介してエネルギ供給され、かつ装置および/またはブレーキシステムの制御を実行するように構成されており、かつ/または装置と一体化されて構成されている。
【0012】
したがって、有利には、装置は、処理手段を用いてブレーキシステム用の制御信号を自立的に生成可能である。
【0013】
好適には、装置にさらに、車両の目標特性、特に目標減速度を好適には電子的な形態で得るための少なくとも1つのインタフェースが設けられている。
【0014】
したがって、有利には、自律走行動作の際にも所望の減速度を設定できるようにするために、目標値をあらかじめ設定することが可能である。したがってこの装置により、電子的な駆動制御がない場合であっても、ブレーキシステムに制御信号を供給する可能性が得られる。
【0015】
好適には、装置は、非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を電子制御で形成するように構成されている。
【0016】
したがって、有利には、目標特性の電子的な設定値は、従来と同じく冗長時にもブレーキ信号に変換可能である。
【0017】
本発明では、第1の供給源を備えたブレーキシステム用の非電気的な制御信号を電子的に形成するためのモジュールが設けられている。このモジュールは、蓄圧器に接続するために構成されている少なくとも1つのインタフェースを有する。このモジュールは、ブレーキを操作するための制動圧力を上記の非電気的な制御信号から形成するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットに、この非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を伝送するように構成されている少なくとも1つのインタフェースを有する。さらに、非電気的な制御信号を受信するように構成されている少なくとも1つのインタフェースが設けられており、モジュールは、この制御信号から、ブレーキシステム用の非電気的な制御信号を形成するように構成されている。
【0018】
したがって、有利には、既存のブレーキシステムのモジュール、特にフットブレーキモジュールを拡張することができ、これにより、このモジュールは、好適には本発明による装置の非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を受け取り、これによってブレーキシステムにおいてその制御信号が変換可能になる。
【0019】
モジュールは好適には、特にブレーキペダルを介して、運転者の望みを受け取るように構成されている少なくとも1つのインタフェースを有し、このモジュールは、ブレーキシステム用の非電気的な制御信号を形成する際に、この運転者の望みを考慮するように構成されている。
【0020】
これにより、有利には、冗長時に運転者も運転者の望みをブレーキシステムに、特にフットブレーキモジュールに伝達可能であり、これにより、冗長時の運転者のブレーキ入力も引き続いて車両の減速度に変換されることが保証される。
【0021】
好適には、モジュールは、第2の供給源を介してエネルギ供給されるように構成されている。
【0022】
好適には、モジュールは、同様に別の供給源を介してエネルギ供給される処理手段、特に好ましくは電子処理手段を有し、この処理手段は、装置の、および/またはモジュールの、および/またはブレーキシステムの制御を実行するように構成されている。
【0023】
したがって、冗長時に保証されるのは、モジュールの、および/または装置の、および/またはブレーキシステムの制御も行われ、これによって冗長時にも別の機能を実行できることである。
【0024】
好適には、処理手段は、モジュールと一体化されて構成されている。
【0025】
好適には、モジュールは、本発明による装置を有し、制御信号を出力するためのインタフェースは、制御信号を受信するための、モジュールのインタフェースに信号技術的に接続されている。
【0026】
したがって、有利には、モジュールは、装置を介し、非電気的な信号、特に空気圧信号によって制御可能である。
【0027】
モジュールと装置とは、一体化されて構成されているかまたは別体で構成されている。
【0028】
好適には、一体化されて構成される場合、制御信号を出力するための装置のインタフェースと、制御信号を受信するためのモジュールのインタフェースと、は同一である。
【0029】
好適には、モジュールは、通常時に電子的に運転者の望みを特定し、制動圧力を形成するために、少なくとも1つの処理ユニットに、特に圧力制御モジュールに、非電気的な制御信号を伝送するように構成されており、しかしながら制動圧力は、電気的なエラー時にのみ利用される。
【0030】
処理ユニット、特に圧力制御モジュールは、好適には、給電が停止した際に、制動圧力を空気圧式に形成するように構成されている。
【0031】
好適には、エラーは、モジュールの好適には電気的な第1の供給源の停止である。
【0032】
本発明では、少なくとも2つの車軸を有する車両用、特に商用車用の電子ブレーキシステムが設けられており、この電子ブレーキシステムは、ブレーキを操作するための制動圧力を非電気的な制御信号から形成するように構成されている少なくとも1つの処理ユニットと、少なくとも1つの処理ユニットに制御信号を伝送するための少なくとも1つの非電気的な回路、特に空気圧回路と、少なくとも1つの蓄圧器と、を有する。さらに、処理ユニットによる制動圧力の形成を電子制御するように構成されている処理手段が設けられており、処理手段は、第1の供給源によってエネルギ供給される。
【0033】
さらに、モジュールが設けられており、このモジュールは、蓄圧器との接続のための少なくとも1つのインタフェースにより、少なくとも1つの蓄圧器に流体接続されており、このモジュールは、非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を出力するための少なくとも1つのインタフェースにより、少なくとも1つの非電気的な回路に接続されている。
【0034】
好適には、それぞれ1つの処理ユニット、特に圧力制御モジュールは、別々の非電気的な回路、好適には空気圧回路に接続されており、かつ非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を出力するための、モジュールの少なくとも1つのインタフェースを介して、別々に駆動制御されるように構成されており、処理ユニットにより、車両の車軸用の、特に車軸のブレーキング用の制動圧力が形成される。
【0035】
したがって、有利には、空気圧式制御信号は、処理ユニットに、特に好ましくは車軸毎に別々に伝送可能であり、これにより、少なくとも車軸毎に空気圧式制御信号を伝送可能である。
【0036】
好適にはさらに、少なくとも1つのトレーラのブレーキを操作するための制動圧力を非電気的な制御信号から形成するように構成されている処理ユニットが設けられている。
【0037】
好適には、処理ユニットは、非電気的な回路に接続されており、この非電気的な回路は、別体の回路であるか、または少なくとも1つの別の処理ユニットに接続されている。
【0038】
好適には、ブレーキシステムにはさらに、第2の供給源、特に電気的な供給源、例えばバッテリ回路が設けられている。
【0039】
したがって、第2の、冗長なエネルギ供給が可能である。
【0040】
好適には、少なくとも1つの非電気的な回路に設けられておりかつ対応して非電気的な制御信号、特に空気圧式制御信号を、対応する処理ユニットに好適には電子的に調節するように構成されている少なくとも1つのモジュレータ、特に圧力制御弁が設けられている。
【0041】
このモジュレータは、好適には、第1の供給源によってエネルギ供給される処理手段によって電子的に駆動制御されるように構成されており、このモジュレータは同時に、第2の供給源によってエネルギ供給される処理手段によって電子的に駆動制御されるように構成されている。これにより、このモジュレータは、有利には、エラー時にも引き続いて電子制御可能であり、これにより、フロントアスクルおよび/またはリアアスクルおよび/またはトレーラモジュールにおけるブレーキング用の制御圧力の電子的な調節が可能になる。
【0042】
好適には、少なくとも1つのモジュレータは、処理ユニットによって形成されかつブレーキに伝送される制動圧力を電子的に調節するように構成されている。このモジュレータは、好適には、処理ユニットと、少なくとも1つのホイールブレーキと、に流体接続されている。
【0043】
このモジュレータは、好適には、第1の供給源によってエネルギ供給される処理手段によって電子的に駆動制御されるように構成されており、このモジュレータは同時に、第2の供給源によってエネルギ供給される処理手段によって電子的に駆動制御されるように構成されている。
【0044】
したがって有利に達成されるのは、好適には車軸毎に、特に好ましくは個々のブレーキに伝送される制動圧力が、またはそれらの組み合わせにおいて、エラー時にも引き続いて電子制御によって調節できることである。
【0045】
ホイール個別にモジュレータが設けられる場合には、エラー時にも引き続いて制動圧力のホイール個別の制御が可能であり、これにより、一般に、エラー時においてブレーキシステムの機能的な制限が生じない。
【0046】
好適には、ブレーキシステムはさらに、本発明による装置を有し、この装置は、ブレーキシステム用の制御信号を出力するためのその少なくとも1つのインタフェースにより、本発明によるモジュールの、特にフットブレーキモジュールの少なくとも1つのインタフェースに、好適には制御入力部に接続されている。
【0047】
さらにこの装置は、少なくとも1つのインタフェースにより、蓄圧器に流体接続されている。
【0048】
好適には、制動圧力の形成を電子制御するように構成されている処理手段、特に電子的な処理手段が設けられている。好適には、処理手段は、装置および/またはモジュレータの制御を電子的に実行するように構成されており、この装置および/または処理手段は、別の供給源によってエネルギ供給されかつ/またはエラー時に目標特性、好適には目標減速度を受け取り、これに基づいてシステムを制御するように構成されている。
【0049】
好適には、電子ブレーキシステムは、少なくとも1つのホイールのホイール回転数を検出するように構成されている少なくとも1つのインタフェースを有し、このブレーキシステムは、検出したホイール回転数を考慮し、特に処理手段によって、制動圧力の形成を行うように構成されている。
【0050】
これらのホイール回転数は、有利には一部分、特に好ましくは半分が、第1の供給源によってエネルギ供給されるホイール回転数センサによって検出され、別の一部分、好ましくは別の半分が、第2の供給源によってエネルギ供給されるホイール回転数センサによって検出される。したがって、供給源が停止した場合であっても、引き続いて回転数信号が得られ、これにより、この値に基づいてブレーキ制御を行うことができる。
【0051】
好適には、車両の車軸毎の少なくとも1つのホイール回転数、もしくはトレーラの少なくとも1つのホイール回転数が、第1の供給源によってエネルギ供給されるセンサによって検出され、車両の車軸毎の少なくとも1つのホイール回転数もしくはトレーラの少なくとも1つのホイール回転数が、第2の供給源によってエネルギ供給されるセンサによって検出される。
【0052】
好適には、電子ブレーキシステムは、第1の供給源によってエネルギ供給される処理手段と、第2の供給源によってエネルギ供給される処理手段と、を有し、2つの処理手段により、少なくとも1つのインタフェースを介して、少なくとも1つのホイールのホイール回転数が検出される。
【0053】
したがって、有利に保証されるのは、供給源、特に第1の供給源が停止しているエラー時であっても、引き続いてすべてのホイール回転数信号が得られることである。
【0054】
上で説明した装置と、モジュールと、電子ブレーキシステムと、によって可能になるのは、冗長な電子制御ブレーキシステムを構成することである。しかしながら、上で説明した少なくとも2つの特徴的構成を互いに組み合わせることにより、別の複数の実施形態を得ることが可能である。
【0055】
本願によって開示されるのは、非電気的な制御信号が、コンポーネントの制御に部分的に使用される冗長な電子制御ブレーキシステムである。本願は、一般に空気圧式のフォールバックレベルを有する商用車用の電子ブレーキシステムの発展形態を取り扱っているため、非電気的な制御信号は、特に空気圧式に構成されている。したがって蓄圧器も、空気圧式の蓄圧器、圧縮空気蓄積器とみなすことができる。
【0056】
しかしながら付加的には、空気とは別のガス状の媒体を信号伝送に使用するか、またはその代わりに信号を液圧路上で伝送する実施形態も考えられる。
【0057】
上記のブレーキシステムの冗長性は、ブレーキシステムの第1の供給源が停止した場合であっても、引き続いてエネルギ供給される別の複数の要素がさらに設けられており、これらの要素により、制限されているとしても、前と同じ制御が可能になることによって達成される。2つの圧力制御弁を使用することにより、制動圧力の、車軸毎の電子制御の閉ループ制御を実現可能であり、別の複数の圧力制御弁が加えられる場合、ホイール個別の閉ループ制御、または間欠ブレーキングの形態の、トレーラ用の閉ループ制御も実行可能である。
【0058】
閉ループ制御方式は、例えば、走行状況に応じて選択的に切り換え可能な種々異なるアプローチにしたがって動作させることで可能である。「セレクト・スマート」閉ループ制御方式では、冗長システムのブレーキングによって最短制動距離を実現可能である。ここでは、制動圧力は、受信したホイール回転数信号に基づき、車両の可能な限りに大きな減速度が発生するように、好適には車軸毎に電子的に閉ループ制御される。この際にホイールは、ホイールがさらに転がることなく車道を滑り得るブロッキング限界の近くに維持されるように減速される。これとは異なり、「セレクト・ロー」閉ループ制御方式により、ブレーキング中の最適な安定性を達成可能である。ここでは、制動圧力は、受信したホイール回転数信号に基づき、車両の可能な限りに安定したブレーキングが行われるように、好適には車軸毎に電子的に閉ループ制御される。ホイールはこのために、好適には、ホイールが、可能な限りにブロッキング限界に到達しないように減速される。さらに、例えばフロントアスクルが、つねにリアアスクルの前に大きくブレーキングされる、すなわちフロントアスクルがまずブロッキングし始めるように留意することが可能である。車軸毎の閉ループ制御方式の選択は、好適には走行状況に依存する。すなわち、「セレクト・スマート」は、好適には安定走行時に最短制動距離を得るために適用され、「セレクト・ロー」は、好適には、例えば車両の横滑りを阻止しようとする不安定走行時に適用される。
【0059】
以下では、添付の図面を参照し、好ましい実施例に基づいて、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明による電子ブレーキシステム(EBS:elektronischen Bremssystem)の図である。
図2図1の電子ブレーキシステムの一発展形態を示す図である。
図3】本発明による電子ブレーキシステム(EBS)の別の図である。
図4図3の電子ブレーキシステムの一発展形態を示す図である。
図5】本発明による電子ブレーキシステム(EBS)のさらに別の一実施形態を示す図である。
図6】本発明による電子ブレーキシステム(EBS)のさらに別の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1には、本発明による電子ブレーキシステム80(EBS)の図が示されている。ここではフロントアスクル(前車軸)VAおよびリアアスクル(後車軸)HAが示されており、これらは、車軸2に回転可能に固定されているホイール1をそれぞれ有する。ホイール1には、それぞれ1つのブレーキ装置が対応付けられており、このブレーキ装置は、図示した実施例において摩擦ブレーキとして実施されている。このためにそれぞれのホイール1にはブレーキディスク3が設けられており、このブレーキディスク3は、この場合にはブレーキライニング4である摩擦対と摩擦を生じさせて接触するように構成されている。ブレーキディスク3は、それぞれのホイール1に回転不能に接続されており、したがって走行中はホイール1と共に回転する。
【0062】
ブレーキングを行うために、加えられた制動圧力により、それぞれのブレーキライニング4と、対応するブレーキディスク3と、が接触させられ、これにより、ブレーキディスク3に摩擦力が発生し、この摩擦力により、結果的に制動トルクが生じ、この制動トルクが、ブレーキディスク3の、特にホイール1の回転運動に対抗する。
【0063】
ここでの説明では、見通し易くするために、車両の別のコンポーネントの説明および特に車軸構造もしくはブレーキの構造の説明は省略する。
【0064】
さらに、本発明の対象について、このようなブレーキ構造および車両構造は、制限的なものであるとみなしてはならない。この構造は、本発明による対象の動作の仕方を明確にするための単なる例として使用されている。むしろ、図示したディスクブレーキの代わりに例えばドラムブレーキのような、ブレーキの択一的な構造選択肢も考えられる。車両をこれとは別に実施することも考えられる。例えば、2つ以上のフロントアスクルVAまたはリアアスクルHAを設けることが可能である。
【0065】
さらにここでは、車両、特に商用車において車両を減速するために使用される電子ブレーキシステムの複数のコンポーネントが示されている。
【0066】
ここでは、圧縮空気を蓄積するために設けられている第1の蓄圧器10、第2の蓄圧器11および第3の蓄圧器12が示されている。これらは、供給管路(図示せず)を介して圧力制御モジュール22、24、32に接続されており、これらに圧縮空気を供給する。圧力制御モジュール22、24、32は、例えば、1チャネルの電空圧力制御モジュール22、2チャネルの電空圧力制御モジュール32、および考えられ得るトレーラ動作用のトレーラモジュール24である。さらにフロントアスクルVAには、管路26を介して圧力制御モジュール22に接続されている圧力制御弁(モジュレータ)28が設けられている。制動圧力は、圧力制御モジュール22により、管路26を介してフロントアスクルVA用に生成され、引き続いて圧力制御弁28により、管路29を介してホイール個別に生成され、また圧力制御モジュール32により、管路34を介してリアアスクルHA用にホイール個別に生成される。トレーラモジュール24は、場合によって設けられているトレーラ用に制動圧力を生成し、管路50を介してこの制動圧力を伝送する。
【0067】
さらに装置82が示されており、装置82は、インタフェース83により、供給管路14を介して蓄圧器10に流体接続されている。図示した装置82は、特に車両の自律走行動作において、ブレーキシステム80用の複数の空気圧式制御信号を蓄圧器10の圧縮空気から形成するように構成されている。これらの空気圧式制御信号は、装置82の別のインタフェース84を介してブレーキシステム80に供給可能である。
【0068】
このためにインタフェース84は、制御管路13を介して、フットブレーキモジュール18の制御入力部に接続されている。フットブレーキモジュール18はさらに、例えば、運転者の入力、特にブレーキ入力を受信するために、運転者へのインタフェース(図示せず)を有する。
【0069】
フットブレーキモジュール18はさらに、制御管路14を介して第2の蓄圧器11および第3の蓄圧器12から圧縮空気を受け取るように構成されている入力部を有する。フットブレーキモジュール18は、運転者の制御入力から、かつ/または制御入力部19を介して受信した制御信号から、ブレーキシステム80用の空気圧式制御信号を形成するように構成されている。この制御信号は、図示した実施形態において、デュアル回路ブレーキシステム80用に構成されている。
【0070】
第1の回路、すなわちフロントアスクル回路VAKには、フットブレーキモジュール18の出力部16を介して空気圧式制御信号が供給される。第1の回路は、フロントアスクルVAおよびトレーラモジュール24に分岐している制御管路20と、圧力制御モジュール22と、フロントアスクルVAの2つのホイール1に分岐している管路26と、圧力制御弁28と、管路29と、トレーラモジュール24と、管路50と、によって形成されている。第1の回路では、制御管路20がフロントアスクルVAの方向に分岐した後、圧力制御モジュール22の手前に圧力制御弁85が設けられており、この圧力制御弁85は、圧力制御モジュール22への空気圧式制御圧力を調節するように構成されている。
【0071】
第2の回路、すなわちリアアスクル回路HAKには、フットブレーキモジュール18の出力部17を介して空気圧式制御信号が供給される。第2の回路は、制御管路30と、圧力制御モジュール32と、管路34と、によって形成されている。さらに制御管路30には、出力部17と圧力制御モジュール32との間に、圧力制御弁86が設けられており、この圧力制御弁86は、圧力制御モジュール32への空気圧式制御圧力を調節するように構成されている。
【0072】
さらに、例えばEBS80の要素と電子的に接続されておりかつEBS80の電子制御のために構成されている制御装置40、例えば電子制御器が設けられている。電子制御のベースとして、制御装置40は、例えば、車両の目標値、例えば目標減速度を受け取る。見通し易くするためにすべての図面において、電子的な接続の図示を省略した。EBS80のこの電子制御される部分は、例えばバッテリ回路としてエネルギ供給を受け持つ第1の供給源52を介してエネルギ供給される。
【0073】
詳しくいうと、制御装置40は、フットブレーキモジュール18と、圧力制御モジュール22、24、32と、圧力制御弁28と、に接続されており、ブレーキシステム80の状態もしくは動作についての情報をこれらから受け取るか、もしくはこれらを制御可能である。制御装置40は、図示したEBS80のこれらのコンポーネントと共に、第1の供給源52によってエネルギ供給される電子制御レベルを形成する。圧力制御弁28は、第1の供給源52によってエネルギ供給されるのではなく、制御信号だけによって起動され、そうでなければ受動的に構成されている。
【0074】
さらに、装置82にエネルギ供給する第2の供給源58が設けられている。このことが意味するのは、装置82が、第1の供給源52には依存せずにエネルギ供給されることである。装置82、圧力制御弁85、86および第2の供給源58は、EBS80の冗長レベルの電子制御部分を形成する。
【0075】
EBS80はさらに、ホイール1の回転数信号を特定可能である。これは、例えば、ホイール個別にホイール回転数を特定する回転数センサ(図示せず)を介して行うことが可能である。
【0076】
これらの回転数信号は、例えば、発生するホイールスリップに対応して制動圧力を設定できるようにするために、制御装置40またはEBS80の別の適切な要素に電子的に伝送される。
【0077】
EBS80は、第1の供給源52によってエネルギ供給されるセンサもしくは処理手段のような要素によって、ホイール回転数の一部分、例えば車軸毎の少なくとも1つの信号が特定され、また第2の供給源58によってエネルギ供給されるセンサもしくは処理手段のような要素によってホイール回転数の別の一部分、例えば、車軸毎の少なくとも1つの信号が特定される、ように構成されている。したがって、EBS80の冗長的な特徴が保証され、一方の供給源52、58が欠落した場合であっても、車両のすべての車軸のホイール回転数を引き続いて特定可能である。
【0078】
EBS80は、第1の供給源52からのエネルギ供給がもはや保証されない場合に対し、空気圧式のフォールバックレベルを有する。このために圧力制御モジュール22、24、32と、フットブレーキモジュール18と、圧力制御弁28と、は、第1の供給源52が欠落した場合、それらの空気圧式のフォールバックレベルをイネーブルする。すなわち、これらは、EBS80の動作を引き続いて保証するために、空気圧式制御信号を受信するもしくは生成するように構成されている。
【0079】
フットブレーキモジュール18は、運転者の入力から、または制御入力部19を介して受信される制御信号から、蓄圧器11、12からの圧縮空気を用いて、上で説明した2つの回路VAK、HAK用に空気圧式制御信号を供給するように構成されている。空気圧式制御信号は、通常時にもフットブレーキモジュール18によって出力されるが、圧力制御モジュール22、24、32では後続処理されない。
【0080】
圧力制御モジュール22、24、32は、第1の供給源52の停止時に、受け取った空気圧式制御圧力から、蓄圧器11、12からの圧縮空気を用いて制動圧力を生成するように構成されている。
【0081】
圧力制御弁28も同様に、空気圧式のフォールバックレベルを有し、例えば、管路26における制動圧力に制限的に作用するか、またはこれを変更せずに管路29に通過させる。
【0082】
EBS80の基本構造の説明が終わったため、以下ではEBS80の動作の仕方を説明する。
【0083】
通常時、すなわちエラーのない動作において、運転者の入力、または自律運転動作における制御装置40の入力は、フットブレーキモジュール18によって受け取られ、制御装置40によって電子的に処理される。制御装置40は、ここから、個々の車軸VA、HA用の、ならびに連結されたトレーラ用の制動圧力を特定する。制動圧力は、電子的に圧力制御モジュール22、24、32に伝送され、ここから制動圧力が、上で説明したように、蓄圧器11、12からの圧縮空気によって生成される。
【0084】
図示したブレーキシステム80は、通常時、圧力制御モジュール22、24、32を介し、またホイール回転数を考慮して、加えられた制動圧力を電子的に制御して調節し、これにより、車両が、ブレーキングの際に一方では走行動特性的に安定して停止され、他方では、可能な限りに大きな減速度が車両に加えられて、可能な限りに短い制動距離が発生する、ように構成されている。
【0085】
以下では、エラーが生じた場合、詳しくいうと、第1の供給源52が停止した際のEBS80の機能の仕方を説明する。
【0086】
例えば、供給源52からの給電が停止されると、上で説明したようなEBS80の電子制御はもはやできなくなる。この場合に圧力制御モジュール22、24、32およびフットブレーキモジュール18は、その空気圧式のフォールバックレベルをイネーブルする。
【0087】
しかしながら装置82は引き続き、2つの圧力制御弁85、86を電子的に駆動制御する第2の供給源58によってエネルギ供給され、これにより、機能が制限されたとしても、EBS80の電子制御の動作が引き続いて可能である。
【0088】
装置82は、自律運転動作の場合、電子制御されて、目標設定値から、例えば目標減速度から、第1の蓄圧器10からの圧縮空気を使用して、車両を減速するための空気圧式制御信号を作成する。この電子制御は、装置82を有するかまたは装置82に信号技術的に接続されている制御手段によって行うことが可能である。
【0089】
生成された空気圧式制御信号は、制御管路13を介してフットブレーキモジュール18の制御入力部19に伝送される。フットブレーキモジュール18は、この制御信号から空気圧式制御信号もしくは制御圧力を生成し、これらを2つの制御管路20、30に伝送する。さらにフットブレーキモジュール18は、例えばブレーキペダルを介する運転者入力からも空気圧式制御信号を生成する。
【0090】
2つの回路VAK、HAKにおいて空気圧式制御信号は、圧力制御弁85、86によって受信される。圧力制御弁85、86は、装置82に電子制御されて、受信した制御信号を調節する。
【0091】
空気圧式制御信号の調節は、エラー時においても少なくとも部分的に引き続いて利用可能な、受信したホイール回転数に基づいて行われる。圧力制御弁85、86の配置に起因して、この調節は、図示した実施形態において、フロントアスクルVAおよびリアアスクルHAについて車軸毎に行うことが可能である。このフォールバックレベルでは、ホイール個別の調節はできない。このようにして、車両は、エラー時においても引き続き、電子制御でブレーキングもしくは安定化可能である。
【0092】
図示した実施形態において、管路50を介して制動圧力が供給されるトレーラ用の制動圧力には、前置接続された圧力制御弁85、86によって影響が及ぼされることはない。すなわちこの実施形態では、第1の供給源52が停止した際には、トレーラの制動圧力に影響を及ぼすことはできず、これにより、走行安定性および制動距離について不都合が生じ得る。
【0093】
図2には、図1の電子ブレーキシステム80の一発展形態が示されている。
【0094】
図1の実施形態とは異なり、ここでは制御管路20に、トレーラモジュール24に分岐する、トレーラモジュール24の前の部分にも圧力制御弁87が設けられており、圧力制御弁87も同様に処理手段によって、例えば装置82によって電子制御され、この際にこの装置82は、第2の供給源58によってエネルギ供給される。残りのブレーキシステム80の構造および機能の仕方は、図1の実施形態と実質的に同じである。
【0095】
トレーラモジュール24の前の圧力制御弁87により、トレーラモジュール24に伝送される制御圧力も電子的に調節可能である。例えば、トレーラモジュール24の前の圧力制御弁によって制御圧力が、対応して減少されることにより、管路50を介して制御圧力を受け取る、トレーラのホイールのロックが阻止可能である。しかしながら制御管路20を介してフロントアスクルVAに導かれる制御圧力は、これによって同時に影響を受けることはない。というのは、ここでは制御圧力は、圧力制御モジュール85により、これには依存せずに調節されるからである。
【0096】
したがって、図示したブレーキシステム80の空気圧式のフォールバックレベルでは、車両に対してABS機能を車軸毎に実現し、かつトレーラに対して間欠ブレーキングを実現することができる。
【0097】
図3には、装置82がモジュール18に組み込まれた電子ブレーキシステム80が示されている。
【0098】
これにより、装置82とモジュール18との間の制御管路13を短縮するかまたはこれを省略することさえも可能であり、これにより、モジュール18によって装置82の制御信号を変換する際の応答時間がより短くなる。さらに、これにより、ブレーキシステム80の複雑さも減少させることができる。
【0099】
ブレーキシステム80の他の構造および機能の仕方は、図1の実施形態に実質的に対応するため、ここではこの実施形態についてさらに立ち入らない。
【0100】
図4には、図3のブレーキシステム80の一発展形態が示されている。
【0101】
図3の実施形態とは異なり、ここでは、図2と同じく、トレーラモジュール24に分岐する、制御管路20の部分に付加的なモジュレータ87が挿入されており、これにより、ここでも、トレーラモジュール24への制御圧力を変更することができ、これにより、トレーラに対して間欠ブレーキングを実現可能である。
【0102】
ブレーキシステム80の他の構造および機能の仕方は、図3の実施形態に実質的に対応するため、ここではこの実施形態についてさらに立ち入らない。
【0103】
図5には、本発明による電子ブレーキシステム80の別の一実施形態が示されている。
【0104】
制動圧力を2つの管路34に供給する圧力制御モジュール32の代わりに、ここでは、リアアスクルHAにフロントアスクルVAと同じ構造が設けられている。別の圧力制御モジュール22は、制御管路30を介して、モジュール18の出力部17から空気圧式制御信号を受け取る。圧力制御モジュール22は、分岐している管路27を介して圧力制御弁28に伝送される制動圧力を、出力部17からの制御信号に基づいて形成するように構成されている。圧力制御弁28は、制動圧力を調節して管路34に転送し、これにより、対応してホイール1のブレーキが操作される、ように構成されている。
【0105】
その他の点では、空気圧式制御信号を調節するために管路20、30に設けられていた圧力制御弁85、86が省略されている。
【0106】
その代わりにここでは圧力制御弁28がそのために使用される。このためにこの圧力制御弁28は、第1の処理手段、例えば第1の供給源52によってエネルギ供給される制御装置40に加えて、例えば装置82に設けられておりかつ第2の供給源58によってエネルギ供給される処理手段によって電子的に駆動制御される。
【0107】
ブレーキシステム80は、エラー時に装置82の、またはモジュール18の処理手段によって電子制御されるように構成されている。この処理手段は、第2の供給源58によって給電される。
【0108】
したがって、エラー時に引き続いてエネルギ供給される処理手段は、管路29、34における制動圧力を調節するために圧力制御弁28を駆動制御し、ひいてはホイール個別に制動圧力を制御可能である。
【0109】
したがってこの実施形態では、圧力制御弁85、86を省略可能である。トレーラにおける間欠ブレーキングを実現するために、この実施形態では、図2および図4の実施形態と同様にトレーラモジュール24用の制御圧力を調節する圧力制御弁87が設けられる。
【0110】
図6には、本発明による電子ブレーキシステム80の別の一実施形態が示されている。
【0111】
図示したブレーキシステム80の構造は、実質的に図5のブレーキシステム80の構造と同等である。しかしながらここでは、圧力制御弁28は、第2の供給源58によってエネルギ供給される処理手段によって駆動制御されるのではなく、第1の供給源52によってエネルギ供給される処理手段によって駆動制御される。すなわち、圧力制御弁28によるホイール個別の制動圧力の調節は、第1の供給源52の停止時にはもはやできない。
【0112】
したがってこの実施形態では、第2の供給源58によってエネルギ供給される複数の処理手段が設けられており、これらの処理手段により、モジュール18の出力部16、17からの空気圧式制御圧力を電子制御で調節するために、管路20、30における圧力制御弁85、86を駆動制御する。これにより、この実施形態では、制御圧力を調節することにより、車軸毎に制動圧力を調節可能である。
【0113】
説明した複数の実施形態に示されているのは、フォールバックレベルにおいて空気圧式制御圧力および制動圧力を供給する電子制御ブレーキシステムもしくはモジュールおよび装置である。これらの実施形態は、本発明の対象を限定するものではない。むしろ、制御信号および/または制動圧力が液圧式に加えられる別の複数の実施形態も考えられる。別の一実施形態では、機械的な特徴を有するブレーキ操作および/または制御信号も設けられる。別の複数の実施形態は、上で説明した複数の実施形態を組み合わせることによって形成可能である。さらに、例えば、蓄圧器10、11、12をまとめ、これにより、例えば装置82およびモジュール18が、1つの蓄圧器だけからの圧縮空気を受け取るようにすることにより、複数の実施形態を形成することが可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 ホイール
2 車軸
3 ブレーキディスク
4 ブレーキライニング
10 第1の蓄圧器(圧縮空気供給源)
11 第2の蓄圧器(圧縮空気供給源)
12 第3の蓄圧器(圧縮空気供給源)
13 制御管路
14 供給管路
15 フットブレーキモジュールの入力部(インタフェース)
16 フットブレーキモジュールの出力部(インタフェースVA)
17 フットブレーキモジュールの出力部(インタフェースHA)
18 フットブレーキモジュール(モジュール)
19 フットブレーキモジュールの制御入力部(インタフェース)
20 制御管路
22 圧力制御モジュール(処理ユニット、1チャネル)
24 トレーラモジュール(処理ユニット)
26 管路
27 管路
28 圧力制御弁(モジュレータ)
29 管路
30 制御管路
32 圧力制御モジュール(処理ユニット、2チャネル)
34 管路
40 EBS制御器(制御装置)
50 管路
52 第1の供給源
58 第2の供給源
80 ブレーキシステム
82 装置
83 装置入力部(インタフェース)
84 装置出力部(インタフェース)
85 圧力制御弁(モジュレータ)
86 圧力制御弁(モジュレータ)
87 圧力制御弁(モジュレータ)
HAK リアアスクル回路
VAK フロントアスクル回路
HA リアアスクル
VA フロントアスクル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】