特表2020-537120(P2020-537120A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2020-537120衝撃センサ、衝撃モニタリング・システムおよび衝撃モニタリングのための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-537120(P2020-537120A)
(43)【公表日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】衝撃センサ、衝撃モニタリング・システムおよび衝撃モニタリングのための方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/135 20060101AFI20201120BHJP
【FI】
   G01P15/135 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-518630(P2020-518630)
(86)(22)【出願日】2018年10月3日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月31日
(86)【国際出願番号】IB2018057681
(87)【国際公開番号】WO2019073336
(87)【国際公開日】20190418
(31)【優先権主張番号】15/729,403
(32)【優先日】2017年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】グナワン、オキ
(72)【発明者】
【氏名】ソーサ、ノーマ、イーディス
(57)【要約】
【課題】平行双極子ライン(PDL)トラップ・システムを使用するチューニング可能でリセット可能な衝撃センサ、衝撃モニタリング・システムおよび衝撃モニタリングのための方法を提供。
【解決手段】衝撃センサは:ギャップgにより互いに隔てられた直径方向磁石の対および前記直径方向磁石同士の間に浮揚している反磁性ロッドを有するPDLトラップと、前記PDLトラップの下方のコンタクト・パッドであって、前記コンタクト・パッドが前記反磁性ロッドの長さlよりも小さい空間により互いに隔てられている、前記コンタクト・パッドとを含む。前記衝撃センサのネットワークを含む衝撃モニタリング・システム、同様に前記衝撃センサを使用して衝撃をモニタするための方法もまた提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップgにより互いに隔てられた直径方向磁石の対および前記直径方向磁石同士の間に浮揚している反磁性ロッドを有する平行双極子ライン(PDL)トラップと、
前記PDLトラップの下方のコンタクト・パッドであって、前記コンタクト・パッドが前記反磁性ロッドの長さlよりも小さい空間により互いに隔てられている、前記コンタクト・パッドと
を備える、衝撃センサ。
【請求項2】
前記ギャップgが可変である、請求項1に記載の衝撃センサ。
【請求項3】
前記直径方向磁石が、前記磁石同士の間の前記ギャップgを変えるように構成された可変ギャップ固定治具にそれぞれ付けられる、請求項1に記載の衝撃センサ。
【請求項4】
前記コンタクト・パッドのうちの2つが、前記PDLトラップの中央の下方に存在する、請求項1に記載の衝撃センサ。
【請求項5】
前記コンタクト・パッドの対が、前記PDLトラップの各端部の下方に存在する、請求項1に記載の衝撃センサ。
【請求項6】
前記PDLトラップの中央の上方に存在する2つの他のコンタクト・パッド
をさらに備える、請求項1に記載の衝撃センサ。
【請求項7】
衝撃センサのネットワークであって、前記衝撃センサの各々が請求項1ないし6のいずれかに記載の特徴を有する、前記衝撃センサのネットワークと、
前記衝撃センサのネットワークからのいずれかの衝撃−トリガ事象を記録するように構成されたブロックチェーン台帳と
を備える、衝撃モニタリング・システム。
【請求項8】
前記衝撃センサのネットワークが、ローカル・エリア・ネットワークに接続される、請求項7に記載の衝撃モニタリング・システム。
【請求項9】
前記ローカル・エリア・ネットワークが、インターネットを介して前記ブロック−チェーン台帳に接続される、請求項8に記載の衝撃モニタリング・システム。
【請求項10】
衝撃モニタリングのための方法であって、
i)ギャップgにより互いに隔てられた直径方向磁石の対および前記直径方向磁石同士の間に浮揚している反磁性ロッドを有するPDLトラップと、ii)前記PDLトラップの下方のコンタクト・パッドであって、前記コンタクト・パッドが前記反磁性ロッドの長さlよりも小さい空間により互いに隔てられている、前記コンタクト・パッドとを備える、少なくとも1つの衝撃センサを用意するステップと、
前記少なくとも1つの衝撃センサの衝撃しきい値をチューニングするために前記ギャップgを変えるステップと、
製品にチューニングされている前記少なくとも1つの衝撃センサを設置するステップと、
前記少なくとも1つの衝撃センサの状態をモニタするステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記直径方向磁石が可変ギャップ固定治具にそれぞれ付けられ、前記方法が、
前記ギャップgを変えるために前記直径方向磁石を互いに近づけるまたは遠ざけるように動かすために前記可変ギャップ固定治具を使用するステップ
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
衝撃−トリガ事象が生じたかどうかを判断するステップであり、前記衝撃トリガ事象が前記少なくとも1つの衝撃センサの前記衝撃しきい値を超え、前記反磁性ロッドを前記PDLトラップから前記少なくとも2つのコンタクト・パッドの上へと落下させて前記少なくとも2つのコンタクト・パッドをショートさせる、前記判断するステップ
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つのコンタクト・パッド同士の間の抵抗をモニタするステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
衝撃−トリガ事象が生じており、前記方法が、
前記衝撃−トリガ事象をブロックチェーン台帳に記録するステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの衝撃センサをリセットするステップと、
前記少なくとも1つの衝撃センサの前記状態をモニタし続けるステップと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの衝撃センサが、前記PDLトラップの中央の上方に存在する2つの他のコンタクト・パッドをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの衝撃センサをリセットする前記ステップが、前記少なくとも1つの衝撃センサをひっくり返すステップを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気平行双極子ライン(parallel dipole line (PDL))トラップ・システムに関し、より詳細には、PDLトラップ・システムを使用するチューニング可能でありリセット可能な衝撃センサに関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃センサまたは衝突モニタは、ある種の物理的な衝撃(shock)または衝突(impact)が生じたかどうかを検出するデバイスである。衝撃センサは、壊れやすく、高価な物品の運送の際にしばしば使用され、潜在的に損傷を与える物品の落下または衝突が輸送中に生じることがあるかどうかを示す。
【0003】
衝撃センサの例は、微小電気機械(MEMS)システムを使用する加速度計、ばね−質量システム、保持具から移動させることができる磁気ボール、液体表面張力の破壊をモニタする液体システム、破損が過剰な衝撃を示す知られた脆弱性を有する安価な脆い構成部品から作られたデバイス、等を含む。例えば、運送中に使用される一般的な市販の衝撃センサは単純に、(25gなどのある一定のしきい値よりも大きな)乱暴な取り扱いが生じたときに−ここでgは重力加速度である−視覚的に色を変える液体表示部を有するラベルを含む。
【0004】
従来の衝撃センサに対する1つの欠点は、上記の例の多くが25gなどの衝撃の事前に設定したしきい値を検出することに限定されていることである。別の物品は、しかしながら異なるレベルの衝撃に対して敏感である。従来の衝撃センサの感度がチューニング可能ではないので、感度を変えるために異なるセンサを使用しなければならない。もう1つの欠点は、大部分の従来の衝撃センサが、使い捨てであることである。一旦センサが始動すると、この変化は恒久的であり、センサを交換しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,895,355号
【特許文献2】米国特許第9,093,377号
【特許文献3】米国特許第9,236,293号
【特許文献4】米国特許第9,263,669号
【特許文献5】米国特許第9,978,493号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gunawan et al.,”A parallel dipole line system,” Applied Physics Letters 106, pp.062407-1-5 (February 2015)
【非特許文献2】Gunawan et al., “The one-dimensional camelback potential in the parallel dipole linetrap: Stability conditions and finite size effect,” J.Appl. Phys. 121, 133902 (April 2017)
【非特許文献3】K. T. Mc Donald, “Long Rod with Uniform Magnetization Transverse to its Axis,” Princeton University, November 1999 (6pages)
【非特許文献4】Crosby et al., “BlockChain Technology: Beyond Bitcoin,”Applied Innovation Review, Issue No.2, June 2016 (16pages)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、チューニング可能であり、高感度であり、リセット可能な衝撃センサ設計の改善が望まれるはずである。本発明は、衝撃センサ、衝撃モニタリング・システムおよび衝撃モニタリングのための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様は衝撃センサである。本発明の衝撃センサは、ギャップgにより互いに隔てられた直径方向磁石の対および前記直径方向磁石同士の間に浮揚している反磁性ロッドを有する平行双極子ライン(PDL)トラップと、前記PDLトラップの下方のコンタクト・パッドであって、前記コンタクト・パッドが前記反磁性ロッドの長さlよりも小さい空間により互いに隔てられている、前記コンタクト・パッドとを備える。
【0009】
また、別の実施態様は衝撃モニタリング・システムである。本発明の衝撃モニタリング・システムは、センサのネットワークであって、前記衝撃センサの各々が請求項1ないし6のいずれかに記載の特徴を有する、前記衝撃センサのネットワークと、前記衝撃センサのネットワークからのいずれかの衝撃−トリガ事象を記録するように構成されたブロックチェーン台帳とを備える。
【0010】
また、他の実施態様は衝撃モニタリングする方法である。本発明の衝撃モニタリングする方法は、衝撃モニタリングのための方法であって、i)ギャップgにより互いに隔てられた直径方向磁石の対および前記直径方向磁石同士の間に浮揚している反磁性ロッドを有するPDLトラップと、ii)前記PDLトラップの下方のコンタクト・パッドであって、前記コンタクト・パッドが前記反磁性ロッドの長さlよりも小さい空間により互いに隔てられている、前記コンタクト・パッドとを備える、少なくとも1つの衝撃センサを用意するステップと、前記少なくとも1つの衝撃センサの衝撃しきい値をチューニングするために前記ギャップgを変えるステップと、製品にチューニングされている前記少なくとも1つの衝撃センサを設置するステップと、前記少なくとも1つの衝撃センサの状態をモニタするステップとを含む。
【0011】
本発明のより完全な理解、ならびに本発明のさらなる特徴および利点が、下記の詳細な説明および図面を参照することによって得られるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のある実施形態による2次元(2D)での直径方向または横方向双極子ライン磁石の磁場をモデル化するためのパラメータを図示している図である。
図2】本発明のある実施形態による3次元(3D)での直径方向磁石または横方向双極子ライン磁石の磁場をモデル化するためのパラメータを図示している図である。
図3】本発明のある実施形態による直径方向磁石、反磁性ロッドおよびキャメルバック・ポテンシャルを図示する平行双極子ライン(PDL)トラップ・システムの模式的3D図である。
図4】本発明のある実施形態によるPDL磁石同士の間に空けられているギャップgを図示する図である。
図5】本発明のある実施形態による図4のPDLトラップ・システム内の反磁性ロッドについての垂直エネルギー・ポテンシャルを図示する図である。
図6】本発明のある実施形態による図4のPDLトラップ・システム内のロッドについてのキャメルバック・ポテンシャルである水平/長手方向エネルギー・ポテンシャルを図示する図である。
図7】磁石同士の間のギャップgが本発明のある実施形態にしたがって大きくなるにつれて垂直障壁の低下を図示する図である。
図8】磁石同士の間のギャップgが本発明のある実施形態にしたがって大きくなるにつれて水平/長手方向(キャメル−バック)障壁の低下を図示する図である。
図9】本発明のある実施形態による本PDLトラップに基づく衝撃センサの例示的な構成の前断面図である。
図10】本発明のある実施形態による本PDLトラップに基づく衝撃センサの例示的な構成の側面図である。
図11】本発明のある実施形態による、本PDLトラップ垂直衝撃センサおよび例示的なモニタリング・システムの前断面図である。
図12】本発明のある実施形態による、本PDLトラップ垂直衝撃センサおよび例示的なモニタリング・システムの上面図である。
図13】本発明のある実施形態による、本PDLトラップ水平衝撃センサおよび例示的なモニタリング・システムの前断面図である。
図14】本発明のある実施形態による、本PDLトラップ水平衝撃センサおよび例示的なモニタリング・システムの上面図である。
図15】本発明のある実施形態による、本水平衝撃センサをリセットするための例示的な方法を図示する図である。
図16】本発明のある実施形態による本PDLトラップに基づく衝撃センサを使用するタンパー防止衝撃モニタリング・システムを図示する図である。
図17】本発明のある実施形態による衝撃トリガ事象を検出するための例示的な方法を図示する図である。
図18】本発明のある実施形態によるネットワーク・ブロック−チェーン技術を実施するための例示的な装置を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において提供するものは、チューニング可能であり(すなわち、しきい値を変えることができる)高感度である磁気平行双極子ライン(PDL)トラップ・システムに基づく衝撃センサである。さらに、一旦センサを始動させてしまうと、センサをリセットすることができる。このように、本衝撃センサは、単に使い捨てに限定されない。
【0014】
PDLトラップは、本来一緒に結合する横方向に磁化された円柱状(すなわち、直径方向)磁石の対から作られた磁気平行双極子ライン・システムから構成される。直径方向磁石は、横方向双極子ライン磁石が持っているように、磁石の直径に沿っている磁化を持っている。したがって、直径方向磁石と横方向双極子ライン磁石とは等価物である。
【0015】
システムは、中央に(グラファイト・ロッドなどの)直径方向円柱状物体をトラップできる。例えば、Gunawan et al.,”A parallel dipole linesystem,” Applied Physics Letters 106,pp.062407-1-5(February 2015)(以降「Gunawan 2015」)、Gunawan et al., “The one-dimensional camelback potential in the parallel dipole line trap: Stability conditions andfinite size effect,” J. Appl. Phys. 121, 133902(April2017)、ならびにすべてがCao他に交付された「Magnetic Trap for Cylindrical Diamagnetic Materials」という名称の米国特許第8,895,355号、米国特許第9,093,377号、米国特許第9,236,293号および米国特許第9,263,669号を参照のこと。
【0016】
PDLトラップの中央の特徴は、長手方向(z−軸)に沿った「キャメルバック磁気ポテンシャル」の存在である、すなわち、磁場は、長さLを有する直径方向磁石に対してほぼL>2.5aで生じる双極子ラインの端部近くで高められる、ここでは、aは磁石の半径である。例えば、図3(下記に説明する)を参照のこと。
【0017】
本衝撃センサを理解するために、円柱状直径方向磁石または横方向双極子ライン磁石システムの磁場分布を解析しなければならない。2次元(2D)の非常に長い(L>>a)円柱状直径方向磁石の磁場(B)(BDM)は、
【数1】

としてK. T. Mc Donald, “Long Rod with Uniform Magnetization Transverse to its Axis,” Princeton University, November 1999 (6pages)により与えられており、ここでは、Mは磁石の磁化であり、Rは磁石半径であり、μは真空中の透磁率である。例えば、2Dでの双極子ラインまたは直径方向磁石の磁場をモデル化するためのパラメータを図示している図1を参照のこと。
【0018】
3次元(3D)で有限な長さLを有する直径方向磁石の磁場は、
【数2】

としてGunawan2015に与えられており、ここでは、s=(x−Rcosφ)+(y−Rsinφ)であり、u1,2=z±L/2であり、そしてLは磁石の長さである。例えば、3Dでの直径方向磁石の磁場をモデル化するためのパラメータを図示している図2を参照のこと。
【0019】
PDLトラップは、磁石同士の間に分離ギャップgをともなって、図3に示したように2つの直径方向磁石を一緒に近くに設置することにより得られる。図3は、直径方向磁石、反磁性ロッドおよびキャメルバック磁気ポテンシャル・エネルギーを描いているPDLトラップ・システムの模式的3D図である。磁石の中心軸は、x=±aのところに位置し、ここでa=R+g/2である。上記の2Dおよび3D磁場モデルを使用して、2つの双極子ライン(または平行双極子ライン)システムの全磁場を、B(x、y、z)=BDM(x−a,y,z)+BDM(x+a,y,z)として計算できる。その後で、トラップされたロッドの全ポテンシャル・エネルギーU’(単位体積当たり)を計算できる。全ポテンシャルは、重力および磁気寄与部分を含む。小さくて短いロッド(b<<R、l<<L)近似が使用され(bはロッドの半径であり、lはロッドの長さである)、
【数3】

ここでは、χはロッドの磁化率であり、ρはロッドの質量密度であり、gは重力であり、x、y、zはロッドの位置である。y(垂直)方向およびz(水平/長手)方向に沿ったPDLトラップ内の閉じ込めポテンシャルのプロットが、それぞれ図5および図6に与えられている。長手方向ポテンシャルは、このPDLトラップ・デバイスでは鍵となる特徴になるキャメルバック・ポテンシャル・プロファイルを示している。
【0020】
停止して、ロッドは、PDLトラップの中央のところで磁石の上方に浮揚する。この浮揚効果が、図4に図示されており、図4はPDLトラップ内にトラップされたロッドの模式的な表現を提供し、浮揚高さと全エネルギー・ポテンシャルとの間の関係を図示している。図5に示したように、平衡浮揚高さyは、垂直ポテンシャル・エネルギー・プロットの極小点のところで実現される。2D磁場モデルは、全ポテンシャル・エネルギー(重力および磁気的な相互作用)を計算することによってPDLトラップの中央のところでのロッドの浮揚効果を説明するためには十分である。これが、
【数4】

を満足する平衡高さy(Gunawan2015を参照)を計算することを可能にする。
【0021】
PDLトラップの上方のロッドの浮揚高さを、磁石同士の間のギャップのサイズに基づいて変えることができる。例えば、Oki Gunawanによる「Parallel Dipole Line Trap with Variable Gap and Tunable TrapPotential」という名称の米国特許第9,978,493号を参照のこと。磁石同士の間のギャップが大きくなるにつれて、浮揚した反磁性ロッドが低くなるだろう、そして
【数5】

として与えられる臨界ギャップ(g)のところでついには落下する。
【0022】
ギャップgが大きくなるにつれて、PDLトラップ内の(x、yおよびz方向における)閉じ込めポテンシャルが弱くなる。この特徴は、本衝撃センサのポテンシャル障壁または「衝撃しきい値」をチューニングすることに本明細書では影響を及ぼす。すなわち、PDLトラップ内の磁石同士の間のギャップgをチューニングすることによって、閉じ込めポテンシャルが制御され、それによりそれを上回るしきい値力がロッドをトラップから落下させるために必要である(thereby the threshold force above which is needed to cause the rodto fall from the trap)(下記参照)。
【0023】
例えば、ロッドの全エネルギー・ポテンシャルを、上記の式3を使用して計算することができる。例えば、図4図6を参照のこと。図4では、ギャップgがPDL磁石同士の間で開かれ、そしてロッドが磁石の上方の平衡高さyのところで浮揚していることが示されている。図5および図6は、式3を使用して計算したロッドの、それぞれ、垂直エネルギー・ポテンシャルU’(y)および水平/横方向エネルギー・ポテンシャルU’(z)を図示している。図7および図8を参照して、磁石同士の間のギャップgが大きくなるにつれて、垂直障壁(ΔUVB)はロッドが落下するまで低下し(図7参照)、そして水平長手方向(キャメル−バック)障壁(ΔUCB)は低下する(図8参照)ことが分かる。さらに、すべての方向でのポテンシャル「スティフネス」またはバネ定数k、k、kはギャップgが大きくなるにつれて低下する。平衡点におけるポテンシャル・スティフネスk、k、kは、k=∂/∂iとして定義され、ここでiは空間変数x、y、zである。
【0024】
本PDLトラップに基づく衝撃センサの例示的な構成が、図9(前断面図)および図10(側面図)に描かれている。図9および図10に示した例では、直径方向PDL磁石は、PDL磁石をいずれか互いに近づけるまたは遠ざけるように動かし、これにより磁石同士の間ギャップgを変えるように機能する可変ギャップ固定治具にそれぞれ付けられる。すなわち、図9に示したように、直径方向PDL磁石の各々は、別々のマウントに付けられる。(PDL磁石が取り付けられる)複数のマウントの相互の位置決めを、1つのマウントを他のものに接続するギャップ制御ネジなどの調節機構を使用して変更することができる。例えば、ギャップ制御ネジをチューニングすることは、マウントをいずれか互いに近づけるまたは遠ざけるように動かす。本技術にしたがって使用するために適した可変ギャップ固定治具は、例えば、米国特許第9,978,493号に記載されている。米国特許第9,978,493号に提示されているように、一旦固定治具を使用して磁石同士の間のギャップgを調節してしまうと、設定ギャップに固定するために固定治具を(例えば、固定ネジを介して)固定することができる。
【0025】
図9および図10に図示したように、衝撃がロッドにある値を超えるエネルギーを与える場合には、ロッドは落下するだろう。このエネルギーは、E=m∫a(t)drのように加速度に関係する、ここで、mはロッドの質量であり、aは与えられた加速度であり、rは全変位であり、そしてtは時間である。それゆえ、衝撃エネルギーが障壁エネルギーを超える、すなわち、E>ΔU、場合には、ロッドは、トラップの外へ落下するだろう。より具体的に、直径方向PDL磁石同士の間のギャップgを制御することにより、水平長手方向(キャメル−バック)障壁(ΔUCB)および垂直障壁(ΔUVB)をチューニングすることができ(上記参照)これにより衝撃センサの感度を、すなわち、ロッドをトラップから落下させるために超える必要がある衝撃エネルギーしきい値をチューニングすることを介して、チューニングする。
【0026】
より具体的に、図9および図10が図示しているように、どちらの方向に、すなわち、垂直または水平に、ロッドがPDLトラップから落下するかに応じて、システム内に生じる衝撃の大きさを有利なことに特定することができる。例えば、図9を参照して、ロッドが、直径方向PDL磁石同士の間に真直ぐ下に、すなわち、垂直に落下する場合、このことは、ロッドの衝撃エネルギーが垂直障壁(ΔUVB)よりも大きいことを意味する。一方で、ロッドがPDLトラップの一方の側に、すなわち、水平に落下する場合には、このことは、ロッドの衝撃エネルギーが水平長手方向(キャメル−バック)障壁(ΔUCB)よりも大きいことを意味する。矢印502および矢印504は、ΔUVBまたはΔUCBあるいはその両方よりも大きいときに、それぞれ、真直ぐ下にまたはPDLトラップの一方の側にロッドを落下させるだろう衝撃センサの動き(垂直および水平)を示すために図10の横部および底部に与えられている。
【0027】
ロッドが落下したか否かを見る目視検査によって、センサの状態のモニタリングを行うことができる一方で、センサの状態を検出するための自動化した方法を有することが好ましい。下記の例示的な実施形態では、水平または垂直衝撃検出を別々に(すなわち、異なるセンサを介して)実行する。例えば、下記に説明するように、垂直衝撃のためにロッドが落下することを防止するために、ストッパを水平衝撃検知のために使用することができ、そして逆に、水平衝撃のためにロッドが落下することを防止するために、ストッパを垂直衝撃検知のために使用することができる。このように、垂直衝撃センサは、水平衝撃を検知しないはずであり、逆も同様である。それはそうとして、例示的な実施形態によれば、水平衝撃および垂直衝撃の両方をモニタするために、1つまたは複数の水平衝撃センサを、1つまたは複数の垂直衝撃センサと組み合わせて利用する。垂直衝撃検出のための例示的なモニタリング・システムを、図11(前断面図)および図12(上面図)の参照により説明する。この例では、本衝撃センサは、PDLトラップの対向する端部の下に(導電性)コンタクト・パッドを使用し、その結果、ロッドが直径方向PDL磁石同士の間から落ちる場合/ときに、ロッドは、コンタクト・パッドの上へと落下し、そしてコンタクト・パッド同士を互いに電気的に接続するだろう。ロッドが、グラファイトなどの導電性材料から形成されるので、ロッドは、2つのコンタクト・パッド同士の間の短絡部として機能するだろう。好ましくは、ロッドは、磁石マウントの2つの壁の間に閉じ込められて、何らかの水平衝撃がロッドをトラップから完全にたたき出すことを防止する。例えば、ストッパがPDLトラップのそれぞれの端部のところに使用されて、ロッドがトラップから水平に排出されることを防止する図12を参照のこと。図12に示したように、ストッパを単純に、磁石の対向する端部に付けられたブロックとすることができる。好ましくは、ストッパを、アルミニウム、ゴム、プラスチック、等などの非強磁性材料から形成する。
【0028】
具体的に、先ず図12を参照して、2つのコンタクト・パッドを、PDLトラップの中央の下の垂直衝撃検知のために使用する。コンタクト・パッドは、(PDLトラップの中央の下方で)ロッドの長さlよりも小さい間隔sにより互いに隔てられる。ロッドがPDL磁石同士の間のPDLトラップ内を浮揚しているときは(例えば、図11参照)、2つのコンタクト・パッドは、電気的に接続されていない。しかしながら、ロッドが(垂直または水平あるいはその両方のΔUVBまたはΔUCBあるいはその両方のしきい値を超える衝撃に応じて)コンタクト・パッド上へとPDLトラップから落下する場合/ときには、ロッドは、コンタクト・パッド同士の間の間隔sに橋を架け、これによりコンタクト・パッドを互いに(電気的に)ショートさせるだろう。
【0029】
例えば、抵抗モニタを介してコンタクト・パッド同士の間の抵抗を単純にモニタすることにより、センサの状態をモニタすることができる。例えば、図12を参照のこと。さらに、下記に詳細に説明されるだろうように、デバイスをタンパリングすることを防止する際に補助するネットワークに、衝撃センサを接続することができる。したがって、ネットワークへセンサ状態を伝達するために、マイクロコントローラおよびネットワーク・インターフェースを利用することができる。
【0030】
上に提示したように、感度をチューニングすることができることに加えて、本衝撃センサ・デバイスのもう1つの独特な利点は、本衝撃センサ・デバイスがリセット可能なことである。すなわち、一旦始動させると、衝撃を再びモニタするために、デバイスを容易にリセットできる。デバイスをリセットするための1つの技術は、(落下してしまった)ロッドをPDLトラップへと単純に戻すことである。あるいは、センサをリセットするために単にセンサをひっくり返すように、センサを対称に構成してもよい。例えば、図11を参照のこと。図11に示したように、センサを、(上に説明したように)PDLトラップの中央の上方および下方の両方のコンタクト・パッドにより構成することができる。1つの姿勢または方向(orientation)では、コンタクト・パッドのうちの1つのセットは、PDLトラップの中央の真上であり、コンタクト・パッドのうちのもう1つのセットは、PDLトラップの中央の真下である。
【0031】
センサを始動すると、ロッドは、上に説明したような方式でPDLトラップの下方のコンタクト・パッドの上へと落下するだろう。センサをリセットするために、PDLトラップの上方/下方のコンタクト・パッドが場所を交換するように、単にひっくり返すことが必要であるにすぎない。この動きによって、重力は、ロッドをPDLトラップの上方に落下せて戻し、センサを本質的にリセットする。
【0032】
類似の技術が、図13(前断面図)および図14(上面図)に図示したように水平衝撃を検出するために実施される。上に強調したように、水平衝撃成分を拾い出すために、垂直衝撃が反磁性ロッドを平衡からたたき出すことを防止することが望ましいことがある。このように、この例では、ストッパを、反磁性ロッドの下方の磁石同士の間のギャップ内に設置する。図13を参照のこと。すなわち、図13に示したように、(例えば、アルミニウム、ゴム、プラスチック、等などの非強磁性材料から形成された)このストッパは、垂直衝撃がロッドを(垂直に)磁石同士の間にたたき落とすことを防止する。言い換えると、図11および図12に示した例で検出した垂直衝撃が、この例ではロッドをトラップからたたき出すことを防止する。逆に、例えば、図12に示した上に説明したストッパは、図13および図14で検出した水平衝撃がロッドをPDLトラップからたたき出すことを防止する。それはそうとして、例示的な実施形態によれば、垂直衝撃および水平衝撃を検出するために、別々の衝撃センサを使用する。しかしながら、図14に示したように、両方の構成に関するコンタクト・パッドおよびモニタリング回路を含め構成要素のすべてを、各センサに含めることができ、ただストッパおよびコンタクト・パッドの配置が変わることをともなう。
【0033】
水平衝撃検知に関して、PDLトラップの対向する端部の各々の下に1対の、2対のコンタクト・パッドを利用する。PDLトラップの一方の端部の下にコンタクト・パッド対A/CがありそしてPDLトラップの反対の端部の下にコンタクト・パッド対B/Dがある図14を参照のこと。
【0034】
コンタクト・パッドの対A/Cおよびコンタクト・パッドの対B/Dは、ロッドの長さlよりも小さい間隔s’により互いに隔てられる。ロッドが直径方向PDL磁石同士の間のPDLトラップ内に浮揚しているときには(例えば、図13参照)、それぞれの対の2つのコンタクト・パッドは互いに接続されていない(すなわち、コンタクト・パッドAは、コンタクト・パッドCに電気的に接続されず、そしてコンタクト・パッドBは、コンタクト・パッドDに電気的に接続されない)。しかしながら、ロッドが(水平ΔUCBしきい値を超える衝撃に応じて)PDLトラップからコンタクト・パッドの上へと落下する場合/ときには、ロッドは、コンタクト・パッド同士の間の間隔s’に橋を架け、これにより一方の対のコンタクト・パッド(いずれかAからCまたはBからD)を互いに(電気的に)ショートさせるだろう。
【0035】
例えば、抵抗モニタを介して、コンタクト・パッド同士の間の抵抗をモニタすることにより、センサの状態を簡単にモニタすることができる。例えば、図14を参照のこと。さらに、下記に詳細に説明されるだろうように、デバイスをタンパリングすることを防止する際に補助するネットワークに、衝撃センサを接続することができる。したがって、ネットワークへセンサ状態を伝達するために、マイクロコントローラおよびネットワーク・インターフェースを利用することができる。
【0036】
図15の方法800に示したように、水平衝撃センサ・デバイスをひっくり返すことによって、水平衝撃センサ・デバイスをやはりリセットすることができる。すなわち、ステップ802に示したように、ロッドをトラップからたたき出しそしてPDLトラップの一方の端部の下のコンタクト・パッドの対(この例では、PDLトラップの左側の下のコンタクト・パッドの対A/C)の上へとたたき出す水平衝撃が生じる。この段階で、センサがトリガされる。センサをリセットするために、ステップ804では、センサを上下逆にひっくり返して、ロッドをコンタクト・パッドから筐体の上へと落下させる。PDLトラップに対してロッドを中央に置くために、ステップ806では、PDLトラップの中心に向かって筐体に沿ってロッドを滑らせるために、PDLトラップを傾斜させる。一旦ロッドがトラップの中央に置かれると、ステップ808では、PDLトラップを、再び上下正しい向きに回転させることができ、ロッドは、PDLトラップの中央に据えられるだろう。本センサをリセットすることができるので、デバイス・タンパリングの懸念があり、これにより、センサが衝撃事象により既に始動しているという事実を包み隠すために、誰かがセンサを許されずにリセットするかも知れない。例示的な実施形態によれば、ネットワーク・ブロック・チェーン技術がこのタンパリング問題に対処するために使用される(例えば、Crosby, et al., “BlockChain Technology:Beyond Bitcoin,” Applied Innovation Review, Issue No.2,June 2016 (16pages)を参照)。例えば、図16を参照のこと。一般に、ブロックチェーンは、一連のレコードまたはブロックを含んでいる分散型データベースを利用する。各ブロックは、任意の所与のブロック内のデータが修正されることを防止するもう1つのブロックと連結される。例えば、IBM社からのブロックチェーン技術は、取引の履歴を記録するための不変の台帳を提供する。
【0037】
本衝撃センサ技術を参照して、本PDLトラップ衝撃センサのネットワークを、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)に接続することができる。例えば、PDLトラップ・センサが運送中に様々な異なる製品とともに設置される図16を参照のこと。ある種のしきい値を超える衝撃がある場合には、製品は、壊れやすく損傷を受けやすいことがある。センサ感度を製品衝撃許容範囲に一致させるために、本衝撃センサのしきい値をチューニングするための上に説明したプロセスを利用することができる。
【0038】
LANを、ブロックチェーン台帳を含んでいるサーバに、例えば、インターネットを介して接続する。任意の衝撃トリガ事象を、ネットワークに登録し、そしてブロック−チェーン台帳に記録するだろう。このように、管理者またはクライアントあるいはその両方は、それらの所有物(goods)の状態および衝撃センサを介した衝撃応諾の状態のタンパー防止記録を有するだろう。
【0039】
図17は、衝撃トリガ事象を検出するための例示的な方法1000を図示している図である。ステップ1002では、本PDLトラップに基づく衝撃センサのうちの少なくとも1つが用意され、そしてステップ1004では、センサの衝撃しきい値が、センサがモニタするために使用されるだろう製品の衝撃許容範囲に一致するように調節される。上に提示されたように、本PDLトラップに基づく衝撃センサは、双極子ライン磁石の対、および双極子ライン磁石同士の間に浮揚する反磁性ロッドを含む。磁石は、ギャップgにより互いに隔てられる。センサの感度を、磁石同士の間のギャップgを変えることにより調節することができる。
【0040】
ロッドをトラップから落下させるために、衝撃しきい値を超える必要がある。このように、しきい値を、製品の衝撃許容範囲よりも低くなるようにステップ1004で調節するはずである。製品の衝撃許容範囲は、製品が(例えば、運送中に)損傷を受けずに堪えることができる単純に衝撃の大きさである。当然のことながら、この衝撃許容範囲は、異なる製品に対して変わり、そしてこのようなデータを、製造業者から得ることができる。センサに関する衝撃しきい値を、単純に、PDL磁石同士の間のギャップgを変えそしてgの各値についてロッドをトラップから落下させるために必要である(垂直および水平)衝撃の大きさを書き留めることによりギャップg値と事前に関係付けることができる。
【0041】
ステップ1006では、チューニングしたPDLトラップに基づく衝撃センサを、次いで製品とともに設置する。例えば、PDLトラップに基づく衝撃センサを、製品パッケージング内に個別にまたは多数の製品を包含している容器内にあるいはその両方に設置することができる。
【0042】
ステップ1008では、PDLトラップに基づく衝撃センサの状態をモニタする。例えば、上に提示したように、センサは、ロッドがPDLトラップから落下したときに一緒にショートするPDLトラップの下方にコンタクト・パッドを装備することができる。このように、そのケースにおけるPDLトラップに基づく衝撃センサの状態をモニタすることは、コンタクト・パッドの抵抗のモニタリングを包含することができる。
【0043】
ステップ1010では、衝撃−トリガ事象が生じたかどうかについての判断が行われる。ステップ1010において(No)と判断される場合には、衝撃−トリガ事象は生じていない、そのときには、プロセスはPDLトラップに基づく衝撃センサの状態をモニタし続ける。一方で、ステップ1010において(Yes)と判断される場合には、衝撃−トリガ事象は生じており、そのときには、ステップ1012において衝撃−トリガ事象をブロックチェーン台帳に記録する。センサを、そのときにはステップ1014においてリセットすることができ、モニタリングをステップ1008により続ける。衝撃−トリガ事象は、センサ(および関連する製品)が衝撃しきい値を超え、そしてロッドをPDLトラップから落下させている(垂直または水平あるいはその両方の)衝撃力を受けてきていることを示唆している。
【0044】
ここで図18に転じて、例えば、ブロックチェーン台帳サーバ(上に説明した図16参照)として構成することができる装置1100のブロック図が示されている。装置1100は、コンピュータ・システム1110および脱着可能メディア1150を含む。コンピュータ・システム1110は、プロセッサ・デバイス1120、ネットワーク・インターフェース1125、メモリ1130、メディア・インターフェース1135および任意選択のディスプレイ1140を含む。ネットワーク・インターフェース1125は、コンピュータ・システム1110がネットワークに接続することを可能にし、一方でメディア・インターフェース1135は、コンピュータ・システム1110がハード・ドライブまたは脱着可能メディア1150などのメディアと情報を交換することを可能にする。
【0045】
プロセッサ・デバイス1120を、本明細書において開示した方法、ステップ、および機能を実施するように構成することができる。メモリ1130は、分散型であってもローカルであってもよく、そしてプロセッサ・デバイス1120は、分散型であっても単数であってもよい。メモリ1130を、電気的メモリ、磁気的メモリもしくは光学的メモリ、またはこれらもしくは他のタイプのストレージ・デバイスの任意の組み合わせとして実装してもよい。その上、「メモリ」という用語を、プロセッサ・デバイス1120によりアクセスされるアドレス指定可能な領域のアドレスから読み出す、または書き込むことができる任意の情報を包含するように十分広く解釈すべきである。この定義を用いて、ネットワーク・インターフェース1125を介してアクセス可能なネットワーク上の情報は、依然としてメモリ1130内であり、その理由は、プロセッサ・デバイス1120がネットワークから情報を検索できるためである。プロセッサ・デバイス1120を作る各々の分散型プロセッサは、一般にそれ自身のアドレス指定可能なメモリ領域を含むことに留意すべきである。コンピュータ・システム1110のうちのいくつかまたはすべてを、特定用途集積回路または汎用集積回路へと組み込むことができることにやはり留意すべきである。
【0046】
任意選択のディスプレイ1140は、装置1100の人間ユーザと対話するために適した任意のタイプのディスプレイである。一般に、ディスプレイ1140は、コンピュータ・モニタまたは他の類似のディスプレイである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】