特表2020-537733(P2020-537733A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2020-537733車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ
<>
  • 特表2020537733-車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ 図000003
  • 特表2020537733-車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ 図000004
  • 特表2020537733-車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-537733(P2020-537733A)
(43)【公表日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/08 20060101AFI20201127BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20201127BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20201127BHJP
   F16C 33/74 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   F16D25/08 H
   F16C17/02 Z
   F16C33/20 A
   F16C33/74 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-522360(P2020-522360)
(86)(22)【出願日】2018年9月10日
(85)【翻訳文提出日】2020年4月20日
(86)【国際出願番号】EP2018074243
(87)【国際公開番号】WO2019115029
(87)【国際公開日】20190620
(31)【優先権主張番号】102017011528.1
(32)【優先日】2017年12月13日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】596055475
【氏名又は名称】ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】クリュック・フランク−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】プラサト・ミシュラ・ザンカー
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ・トビアス
【テーマコード(参考)】
3J011
3J057
3J216
【Fターム(参考)】
3J011AA06
3J011BA02
3J011DA01
3J011KA07
3J011MA02
3J011QA05
3J011SC01
3J011SC12
3J057AA07
3J057CB15
3J057DA16
3J057DA18
3J057HH02
3J057JJ01
3J216AA05
3J216AA16
3J216AB02
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA05
3J216CB03
3J216CB12
3J216CC01
3J216CC14
(57)【要約】
本発明は、圧力媒体で満たされたシリンダ(3)を有し、このシリンダ内に、リングピストン(4)が軸方向に摺動可能に配置され、リングピストン(4)が、スライドスリーブ(5)と固定式に作用結合されており、このスライドスリーブが、更にまたガイドスリーブ(6)上に軸方向に摺動可能に支承され、リングピストン(4)の半径方向下側の周面(16)が、半径(Ri)を備え、ガイドスリーブ(6)の半径方向直近に配置され、少なくとも1つのスライドリング(18;19)を有し、この少なくとも1つのスライドリングが、スライドスリーブ(5)をガイドスリーブ(6)上に支持し、少なくとも1つのスライドリング(18;19;18a)が、リングピストン(4)の半径方向内側の周面(16)内の溝(27;28)内に挿入されている、車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ(1)に関する。分割されてないスライドリングを組み立て得るために、少なくとも1つのスライドリング(18;19;18a)の溝(27;28)が、半径方向に延在する唯一の溝壁(29;32)を備えること、及び、溝(27;28)が、リングピストン(4)の軸方向外側もしくは内側の端面(30;33)に向かって開放していること、が企図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力媒体で満たされたシリンダ(3)を有し、このシリンダ内に、リングピストン(4)が軸方向に摺動可能に配置され、リングピストン(4)が、スライドスリーブ(5)と固定式に作用結合されており、このスライドスリーブが、更にまたガイドスリーブ(6)上に軸方向に摺動可能に支承され、リングピストン(4)の半径方向下側の周面(16)が、半径(Ri)を備え、ガイドスリーブ(6)の半径方向直近に配置され、
また、少なくとも1つのスライドリング(18;19;18a)を有し、この少なくとも1つのスライドリングが、スライドスリーブ(5)をガイドスリーブ(6)上に支持し、少なくとも1つのスライドリング(18;19;18a)が、リングピストン(4)の半径方向内側の周面(16)内の溝(27;28)内に挿入されている、
車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ(1)において、
少なくとも1つのスライドリング(18;19)の溝(27;28)が、半径方向に延在する唯一の溝壁(29;32)を備えること、及び、溝(27;28)が、リングピストン(4)の軸方向外側もしくは内側の端面(30;33)に向かって開放していること、を特徴とするクラッチアクチュエータ。
【請求項2】
リングピストン(4)の軸方向外側及び/又は軸方向内側の端面(30;33)内に、段差(31;34)が形成され、この段差によって、リングピストン(4)の半径方向内側の周面(16)の内半径(Ri)が、少なくとも1つのスライドリング(18;19)の溝壁(29;32)まで一定で、小さい段差半径(Ri−A)に減少しており、段差半径(Ri−A)が、段差(31;34)の量の分だけもしくは溝(27;28)の溝壁(29;32)の半径方向の高さの分だけ小さいこと、を特徴とする請求項1に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項3】
リングピストン(4)の半径方向内側の周面(16)内に、2つのスライドリング(18,19;18a)が挿入され、スライドリング(18,19)をそれぞれ挿入した溝(27,28)が、それぞれ、半径方向に延在する唯一の溝壁(29,32)を備え、溝(27,28)が、リングピストン(4)の軸方向外側もしくは内側の端面(30,33)に向かってそれぞれ開放していること、を特徴とする請求項1に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項4】
リングピストン(4)の軸方向外側及び軸方向内側の端面(30,33)内に、それぞれ1つの段差(31,34)が形成され、この段差によって、リングピストン(4)の半径方向内側の周面(16)の内半径(Ri)が、それぞれのスライドリング(18,19;18a)の溝壁(29,32)まで一定で、小さい段差半径(Ri−A)に減少しており、段差半径(Ri−A)が、段差(31,34)の量の分だけもしくは溝(27,28)の溝壁(29,32)の半径方向の高さの分だけ小さいこと、を特徴とする請求項3に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項5】
両段差(31,34)が、同じ段差半径(Ri−A)を備えること、を特徴とする請求項4に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項6】
少なくとも1つの半径方向下側のスライドリング(18;19)が、閉じたリングとして形成されていること、を特徴とする請求項1に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項7】
少なくとも1つの半径方向下側のスライドリング(18;19)が、プラスチックから成ること、を特徴とする請求項6に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項8】
少なくとも1つの半径方向下側のスライドリング(18a)が、金属材料から成るコア(40)を備え、このコア(40)の周囲に、プラスチックコーティング(41)が形成され、コア(40)の厚さが、1〜2mm、好ましくは1.5mmであり、プラスチックコーティング(41)の層厚さが、0.2〜1mm、好ましくは0.5mmであること、を特徴とする請求項7に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項9】
少なくとも1つの半径方向下側のスライドリング(18a)が、半径方向に分割されて形成され、継ぎ目(45)を備え、スライドスリーブ(5)の付属の溝(27)内にスライドリング(18a)を圧入した状態で、スライドリング(18a)の継ぎ目エッジ(46,47)が互いに当接すること、を特徴とする請求項8に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項10】
リングピストン(4)の少なくとも1つの端面(30;33)内に、少なくとも1つの段差(31;34)が形成され、この段差(31;34)内に、閉じたスライドリング(18;19)が締まりばめで軸方向に圧入される、少なくとも請求項1の特徴を有する車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータ(1)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる中央クラッチレリーズ機構の圧縮空気を作用可能なリングピストンが、スライドスリーブによりガイドスリーブに沿って軸方向に摺動可能に支承されている、車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータが知られている。英語圏の“concentric pneumatic clutch actuators”としても知られているこのような中央クラッチレリーズ機構の場合、通常は、リングピストンをガイドスリーブに沿って摺動させるために使用される少なくとも1つのスライドリングが設けられている。
【0003】
これまで、このスライドリングもしくはこれらスライドリングは、それぞれ半径方向内側の周面内の1つの溝内に支承された。この溝は、半径方向に延在するそれぞれ2つの溝壁を備え、これら溝壁は、スライドリングを軸方向に制限する、もしくはスライドリングをその位置に保持する。構造的な状況に基づいて、これまでは、それぞれスリットの入ったスライドリングを使用することしか可能でなかった。このような装置は、特に独国特許出願公開第102 53 021号明細書から知られている。この場合、スリットの入ったスライドリングの対応付けられた溝への挿入は、製造に起因して問題を提供せず、このような装置は、良いことが証明された。同様の装置は、独国特許出願公開第10 2013 219 842号明細書、欧州特許第2 539 597号明細書及び欧州特許第2 539 598号明細書から知られている。
【0004】
このようなクラッチアクチュエータの運転時、リングピストンの位置検出は、著しく重要である。この場合、外側からクラッチアクチュエータに配置されたセンサ要素によってガイドスリーブに対してどのような軸方向位置にリングピストンが存在するかが測定される。リングピストンの最小の許容差もしくは傾動だけでも、測定エラーに通じるので、当業者は、長い間、測定エラーのエラー源をできるだけ完全に排除するように努めてきた。スライドリング自身も、即ちそれぞれ保持溝の周囲の回転運動により、測定エラーに寄与することがあることがわかった。このような運動の原因は、スリットの入ったインパクトで溝に挿入されたスライドリングである。インパクトで配置された分割されたスライドリングが、クラッチアクチュエータの運転中に常に運動する傾向があるので、理論的には、分割されてないスライドリングを使用することができ、それにより、それぞれのスライドリングのどのような回転又は軸方向の運動も不可能にされる場合が有利である。但し、これには、分割されてないスライドリングを使用することをほとんど不可能にする溝のこれまでの状況が対立する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102 53 021号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2013 219 842号明細書
【特許文献3】欧州特許第2 539 597号明細書
【特許文献4】欧州特許第2 539 598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、分割されたスライドリングがクラッチアクチュエータのために使用され得るように、冒頭で述べた形式のクラッチアクチュエータを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を備えるクラッチアクチュエータによって解決される。
【0008】
即ち課題は、驚くほど簡単に、溝が、もはや、従来技術からこれまで知られていたような、スライドリングを制限する2つの溝壁を備えるのではなく、スライドリング用の溝が、リングピストンの軸方向の端面に向かって開放していることによって解決される。これは、ここではスライドリングが軸方向に当接する溝壁がそれぞれ1つしか設けられていないことを意味する。このような構成は、本発明の発展形により企図されているように、閉じたスライドリングの使用を可能にし、それぞれ閉じたスライドリングが、リングピストンの半径方向内側の周面内に締まりばめで軸方向に圧入される方法を可能にする。
【0009】
本発明の実際的な発展形では、リングピストンの軸方向外側及び/又は軸方向内側の端面内に、段差が形成され、この段差によって、リングピストンの半径方向内側の周面の内半径が、少なくとも1つのスライドリングの溝壁まで一定で、小さい段差半径に減少しており、段差半径が、段差の量の分だけもしくは溝の溝壁の半径方向の高さの分だけ小さいこと、が企図され得る。
【0010】
リングピストンの半径方向内側の周面内に、2つのスライドリングが挿入され、スライドリングをそれぞれ挿入した溝が、それぞれ、半径方向に延在する唯一の溝壁を備え、溝が、リングピストンの軸方向外側もしくは内側の端面に向かってそれぞれ開放していること、が企図されている本発明の発展形は、同様に有利である。
【0011】
この構成は、リングピストンの軸方向外側及び軸方向内側の端面内に、それぞれ1つの段差が形成され、この段差によって、リングピストンの半径方向内側の周面の内半径が、それぞれのスライドリングの溝壁まで一定で、小さい段差半径に減少しており、段差半径が、段差の量の分だけもしくは溝の溝壁の半径方向の高さの分だけ減少していること、が企図されていることによって補足され得る。
【0012】
両段差が、同じ段差半径を備えること、が企図されている本発明の実際的な発展形は、同様に有利である。この場合、同じスライドリングが使用され得る。
【0013】
少なくとも1つの半径方向下側のスライドリングが、閉じたリングとして形成されていること、が企図されている本発明の構成は、特に好ましい。
【0014】
少なくとも1つの半径方向下側のスライドリングが、プラスチックから成ること、が企図されている本発明の補足事項は、同様に実際的である。
【0015】
選択的に、少なくとも1つの半径方向下側のスライドリングが、金属材料から成るコアを備え、このコアの周囲に、プラスチックコーティングが形成され、コアの厚さが、1〜2mm、好ましくは1.5mmであり、プラスチックコーティングの層厚さが、0.2〜1mm、好ましくは0.5mmであること、が企図され得る。
【0016】
この構成は、更に、少なくとも1つの半径方向下側のスライドリングが、半径方向に分割されて形成され、継ぎ目を備え、スライドスリーブの付属の溝内にスライドリングを圧入した状態で、スライドリングの継ぎ目エッジが互いに当接すること、が企図されていることによって補足され得る。冒頭で述べたように、確かに分割されてないスライドリングは好ましいが、半径方向に延在する溝壁を1つしか有しない軸方向端に向かって開放した溝を有するリングピストンのスライドスリーブの構成は、半径方向に分割されたスライドリングの組立てについても、即ち、スライドリングが、スチール又は金属材料から成るコアを備え、このコアが、特に硬く、その厚さに基づいて、それぞれ2つのリング溝壁を有する従来のリング溝内では全く又は少なくとも不十分にしか使用され得ない場合に有利である。
【0017】
本発明は、同様に、リングピストンの少なくとも1つの端面内に、少なくとも1つの段差が形成され、この段差内に、閉じたスライドリングが締まりばめで軸方向に圧入される、少なくとも請求項1の特徴を有する車両クラッチを操作するためのクラッチアクチュエータを製造するための方法に関する。段差を形成するため、リングピストンは、射出成形法によって既に段差を備えられ得るか、段差は、リングピストンのブランクの製造後に切削加工によりリングピストンの半径方向内側の周面に形成され得る。1つもしくは複数の段差が完成した後、それぞれのスライドリングは、締まりばめで対応する段差内に軸方向に圧入される。この場合、スライドリングは、ある程度の締め代を備えることができ、これが、締まりばめを改善する。
【0018】
以下の図の説明により、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】クラッチアクチュエータの実施例の半縦断面図
図2図1によるクラッチアクチュエータのリングピストンの詳細図
図3図2によるリングピストンのスライドスリーブの更に拡大した部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、切替え可能な車両クラッチを操作するための本発明によるクラッチアクチュエータ1の実施例の半縦断面図を示すが、そのうち、ダイヤフラムバネの舌部の形態のリリースレバー2は、象徴的に図示されている。クラッチアクチュエータ1は、油圧又はガス状の圧力媒体で満たされたシリンダ3を有し、このシリンダ内に、軸方向に摺動可能なリングピストン4が配置されている。リングピストン4と、スライドスリーブ5が位置不動に作用結合されており、このスライドスリーブは、更にまたガイドスリーブ6上に支承されている。位置不動に作用結合されているとは、リングピストン4とスライドスリーブ5が、一部材で形成されていること、例えば図1に図示されているように鋳造部品として形成されていることを意味し得る。しかしながらまた、スライドスリーブ5が適当な方法でリングピストン4と結合された別個の部品である場合も、本発明の範囲内にある。
【0021】
シリンダ3、リングピストン4及びスライドスリーブ5は、ガイドスリーブ6と共に作動室7を構成し、この作動室は、任意に圧力媒体で満たされ、これにより、スライドスリーブ5を有するリングピストン4の摺動運動を生じさせる。軸方向の中心軸Aに沿ったリングピストン4の軸方向の摺動運動は、図1に図示してない予荷重バネによって支援することができ、軸受8に伝達され、この軸受が、更にまたリングピストン4の摺動運動を車両クラッチ2に伝達する。リングピストン4の軸方向の摺動運動もしくはガイドスリーブ上のそのそれぞれの軸方向の位置は、図1には暗示的にしか示されてないセンサSによって検出される。
【0022】
作動室7は、リングピストン4の2つのリングシール9,10とスライドスリーブ5とガイドスリーブ6の間の2つのシール11,12によってシールされる。スライドリング13は、半径方向上側のリング溝14内に挿入されている。半径方向上側のリング溝14は、リングピストン4の半径方向上側又は外側の周面15に形成されている。
【0023】
“半径方向上側”、“半径方向外側”、“半径方向下側”もしくは“半径方向内側”により、以下では、リングピストン4の判型Rに対するリングピストン4の細部の配置が意味されており、従って、リングピストン4の判型方向下側又は内側の周面16は、ガイドスリーブ6の表面の直近に配置されているが、リングピストン4の判型方向上側又は外側の周面15は、シリンダ3の半径方向外側に配置された内側の周面17の直近に配置されている。
【0024】
半径方向内側に、2つのスライドリング18,19が、リングピストン4の半径方向内側の周面16内に挿入されている。この場合、軸方向外側及び半径方向内側のスライドリング18は、作動チャンバ7から軸方向に離間して軸受8の下に配置されているが、軸方向及び半径方向内側のスライドリング19は、作動チャンバ7の半径方向下でシリンダ3の後壁20の軸方向近傍に配置されている。
【0025】
半径方向下側のスライドリング18,19は、それぞれ綴じたリングとして形成され、良好な滑り特性を有するプラスチックから成る。連続負荷を高めるために、リングは、金属インサートを備えている。
【0026】
図2には、図1によるリングピストン4の一部が、拡大図で図示されている。図2は、半径方向下側のリング18,19を挿入するためのリングピストン4の半径方向内側の周面16の特別な形成を示す。
【0027】
図2には図示してないシール11,12を挿入するために従来の溝21,22は溝を軸方向に画成する半径方向に延在する溝壁23,24及び25,26を備えているが、半径方向下側のスライドリング18,19の保持及び支承をするための溝27,28は、それぞれ軸方向外側もしくは内側に向かって開放して形成されている。これは、軸方向外側及び半径方向内側のスライドリング18の保持及び支承をするための溝27が、軸方向内側に配置された1つの溝壁29しか備えないが、溝27は、さもなければ軸方向外側に向かって開放している。加えて、リングピストン4の軸方向外側の端面30内に、段差31が形成され、この段差によって、リングピストン4の半径方向内側の周面16のうち半径Riは、軸方向外側のスライドリング18の溝壁29まで一定で、相応に小さい段差半径Ri−Aに減少しており、この半径Ri−Aは、段差31の量の分だけもしくは溝27の溝壁29の半径方向の高さの分だけ小さい。
【0028】
同じことが、軸方向内側のスライドリング19の溝28に当て嵌まる。半径方向及び軸方向内側のスライドリング19の溝28も、軸方向外側の、即ちシリンダ4の後壁20に向かって整向されて配置された1つの溝壁32しか備えないが、溝28は、さもなければ軸方向内側に向かって開放している。加えて、リングピストン4の軸方向内側の端面33内に、段差34が形成され、この段差によって、リングピストン4の半径方向内側の周面16の内半径Riが、軸方向外側のスライドリング18の軸方向外側の溝壁32まで一定で、相応に小さい半径Ri−Aに減少しており、この半径Ri−Aは、段差34の高さの量だけもしくは溝28の溝壁32の半径方向の高さの分だけ小さい。
【0029】
即ち、両段差31,34は、同じ半径を備え、これは、有利であり得る。何故なら、これにより、それぞれ同じ寸法を有するスライドリング18,19が使用され得るからである。
【0030】
分割されてないスライドリング18,19の組立てのため、これらスライドリングは、締まりばめで軸方向に段差31,32内に圧入されるが、これは、矢印P1,P2で暗示的に示されている。軸方向外側もしくは内側に向かって開放した段差31,34により、分割されてないスライドリングの圧入が初めて可能になる。段差が、リングピストン4のそれぞれ対応付けられた端面30,33まで達する一定の半径Ri−Aを備えることにより、この半径の分だけ、さもなければ周面16もしくはうち半径Riまで延在することになる溝21の溝壁24,24の半径方向の長さもしくは高さも減少するが、しかしながら、これは、受け入れ可能である。何故なら、図2に図示してないシール11は、依然として十分に案内されており、そのシール機能を満足し得るからである。
【0031】
それにもかかわらずシール21をより長いもしくは半径方向により深い溝壁によって案内することが必要である場合には、スライドリング18,19の組立て後にアダプタリング35,36を段差31内に挿入することができ、これにより、リングピストン4が、同時に防塵をされて閉鎖される。この場合、アダプタリング35,36は、点線で図示されている。相応に、軸方向内側の段差34も、閉鎖リング37によって閉鎖することができるが、この閉鎖リング37も、点線によって暗示的に示されている。スライドリング18,19の軸方向の圧入を容易化するために、ピストン4もしくはスライドスリーブ5の軸方向外側の端面30は、テーパ38を経て段差31に移行する。相応に、ピストン4もしくはスライドスリーブ5の軸方向内側の端面33も、テーパ39を経て段差34に移行する。
【0032】
半径方向内側のスライドリング18,19の溝27,28に応じて、半径方向上側のスライドリング13の溝14を形成することも、即ち、同様に軸方向外側に向かって開放して形成することも、できる。この場合、半径方向上側のリング溝14も、半径方向に延在する1つの溝壁しか備えず、これにより、半径方向上側のスライドリング13は、一部材で形成すること及び軸方向に圧入することができる。
【0033】
図3には、リングピストン4のスライドスリーブ5が、更に拡大した部分断面図で示されている。この場合、スライドスリーブ5は、図2によるスライドスリーブ4に正確に一致するので、図2に関して述べたことは、図3によるスライドスリーブ5に対しても当て嵌まる。軸方向外側及び半径方向内側のスライドリング18aだけが、図1及び2のスライドリング18と異なる。図1及び2のスライドリング18,19は、それぞれ閉じたスライドリングとして良好な滑り軸受特性を有するプラスチックから成るが、図3によるスライドリング18aは、スリットの入ったもしくは半径方向に分割されたリングとして形成されている。スライドリング18aのコア40は、金属材料から、即ちスチールから成る。コア40は、1〜2mm、好ましくは1.5mmの厚さを有する。コア40の周囲に、プラスチックコーティング41が形成されている。プラスチックコーティング41は、示した実施例ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成り、0.2〜1mm、好ましくは0.5mmの層厚さを備える。スライドリング18aの寿命を高めるため、プラスチックコーティング41は、少なくともその半径方向内側の周面42に、グリースパーティクル44で満たされた孔を備えている。
【0034】
分割されたスライドリング18aは、継ぎ目45を備え、圧入した状態で、継ぎ目エッジ46,47が互いに当接する。
【0035】
スライドリング18aの組立ては、スライドリング18,19の前記組立てに応じて行なわれる。スライドリング18aの圧入時も、回転不能の締まりばめが行なわれ、これは、スライドリング18aの初期直径が、少なくとも継ぎ目45の幅の分だけ圧縮された状態よりも大きいことによって提供される。いずれにしても、スライドリング18aの外径ADGは、少なくともある程度の量の分だけスライドスリーブ5の内半径Riの仮想線よりも大きい。図3に図示してない軸方向及び半径方向内側のスライドリングは、まさにスライドリング18aのように形成することができるが、選択的に、軸方向及び半径方向内側のスライドリングを図2によるスライドリング19に応じて、即ちプラスチック、例えばPTFEから成る閉じたスライドリングとして、形成することも可能である。
【0036】
それぞれ1つの溝壁29,32しか有しない前記の溝27,28を有するリングピストン4のスライドスリーブ5の構成は、スライドリング18aの組立てのために大いに有利である。何故なら、スチールから成る比較的厚く硬いコア40を備える場合には、分割されたリングもこれまでは組み立てられなかったからである。それは、このようなコアは、それぞれ2つの溝壁を有する標準的なリング溝内に挿入し得えないように硬いからでる。
【0037】
図1に図示したクラッチアクチュエータ1は、好ましくはいわゆる“Central Pneumatic Clutch Actuator”(CPCA)とし、即ち大型の商用車の自動化された変速機の空気圧操作式の中央クラッチレリーズ機構として使用される。この場合、クラッチアクチュエータ1は、これまで未公開の独国特許出願DE 10 2016 012 856.8及びDE 10 2017 001 410.8に記載されているように、自動調整式に形成することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 クラッチアクチュエータ
2 リリースレバー
3 シリンダ
4 リングピストン
5 スライドスリーブ
6 ガイドスリーブ
7 作動室
8 軸受
9 リングシール
10 リングシール
11 シール
12 シール
13 スライドリング
14 半径方向上側のリング溝
15 ピストン4の半径方向外側の周面
16 ピストン4の半径方向内側の周面
17 シリンダ3の周面
18 軸方向外側及び半径方向内側のスライドリング
18a 軸方向外側及び半径方向鵜日側のスライドリング(バリエーション)
19 軸方向及び半径方向内側のスライドリング
20 シリンダ4の後壁
21 シール11の溝
22 シール12の溝
23 溝21の溝壁
24 溝21の溝壁
25 溝22の溝壁
26 溝22の溝壁
27 溝
28 溝
29 溝27の溝壁
30 ピストン4の軸方向外側の端面
31 段差
32 溝28の溝壁
33 ピストン4の軸方向内側の端面
34 段差
35 アダプタリング
36 アダプタリング
37 閉鎖リング
38 テーパ
39 テーパ
40 コア
41 プラスチックコーティング
42 プラスチックコーティングの半径方向内側の周面
43 孔
44 グリースパーティクル
45 継ぎ目
46 継ぎ目エッジ
47 継ぎ目エッジ
A 軸
ADG スライドリング18aの外径
P1 矢印
P2 矢印
R 半径
Ri 内半径
Ri−A 段差31,34の半径
S センサ
図1
図2
図3
【国際調査報告】