(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2020-537749(P2020-537749A)
(43)【公表日】2020年12月24日
    (54)【発明の名称】位置符号化のためのエンコーダ及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01D   5/347       20060101AFI20201127BHJP        
   G06K  19/067       20060101ALI20201127BHJP        
   G06K   7/08        20060101ALI20201127BHJP        
【FI】
   G01D5/347 110C
   G01D5/347 110L
   G06K19/067 020
   G06K7/08 060
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
      (21)【出願番号】特願2020-520678(P2020-520678)
(86)(22)【出願日】2018年11月9日
    (85)【翻訳文提出日】2020年4月10日
      (86)【国際出願番号】JP2018042370
    
      (87)【国際公開番号】WO2019135325
(87)【国際公開日】20190711
    
      (31)【優先権主張番号】62/613,478
(32)【優先日】2018年1月4日
(33)【優先権主張国】US
      (31)【優先権主張番号】15/911,861
(32)【優先日】2018年3月5日
(33)【優先権主張国】US
    (81)【指定国】
      AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
    
      
        
          (71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我  道治
          (74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並  順
          (74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅  一宏
          (74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田  俊一
          (74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田  潤一郎
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】ワン、ビンナン
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】辻田  亘
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】貞本  貢汰
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】澤  良次
              
            
        
      
    【テーマコード(参考)】
      2F103
    【Fターム(参考)】
      2F103CA03
      2F103DA05
      2F103EA19
      2F103EB01
      2F103EB11
      2F103EB32
    (57)【要約】
エンコーダが、金属板と、この金属板上に配置された誘電体層と、この誘電体層上に配置されて共振回路のパターンを形成する複数の金属構成要素とを備える層状構造物を備える。このエンコーダは、共振周波数の波形を層状構造物に送信する送信器と、層状構造物から反射された波形の振幅を測定する受信器とを備える。送信器の位置を反射波形の振幅に関係付けるデータを記憶したメモリに作動接続されたプロセッサが、このデータに基づいて振幅の測定値から送信器の位置を求める。このエンコーダは、送信器の位置をレンダリングする出力インターフェースを備える。
    
  【特許請求の範囲】
【請求項1】
  金属板と、前記金属板上に配置された誘電体層と、前記誘電体層上に配置されて共振回路のパターンを形成する複数の金属構成要素とを備える層状構造物と、
  偏波方向に沿って振動するように偏波された横波である共振周波数の波形を前記層状構造物に送信する送信器と、
  前記層状構造物から反射された前記波形の振幅を測定する受信器と、
  前記層状構造物によって形成される前記共振回路の前記パターンに基づいて前記送信器の位置を前記反射波形の振幅に関係付けるデータを記憶するメモリと、
  前記データに基づいて前記振幅の測定値から前記送信器の位置を求めるプロセッサと、
  前記送信器の位置をレンダリングする出力インターフェースと、
を備える、エンコーダ。
【請求項2】
  前記金属構成要素は、前記送信器の相対位置を符号化するように、前記誘電体層上に配置されて、一定距離を空けて互いに分離された同一の特性を有する共振回路の周期的パターンを形成し、前記データは、前記同一の特性を有する共振回路の前記周期的パターンを形成する前記層状構造物から反射された前記波形の信号モデルを含み、前記プロセッサは、前記信号モデルに基づいて前記振幅の前記測定値から前記位置を求める、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
  前記金属構成要素は、前記送信器の絶対位置を符号化するように、前記誘電体層上に配置されて、同一の特性を有する共振回路の非周期的パターンを形成し、前記データは、振幅値シーケンスと前記送信器の前記位置との間のマッピングを含み、前記マッピングは、前記共振回路の非周期的パターンの関数であり、前記プロセッサは、前記マッピングに従って前記振幅の前記測定値を前記送信器の前記位置にマッピングする、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
  一群の金属構成要素が、前記位置を符号化する単位セルを形成し、前記層状構造物は複数の単位セルを備え、前記メモリに記憶された前記データは、前記単位セルの位置及び方位のうちの一方又は組み合わせによって規定される符号を含む、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項5】
  前記単位セルの前記位置及び前記方位は、1ビットの前記符号を規定する、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項6】
  前記単位セルの前記位置及び前記方位は、2ビットの前記符号を規定する、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項7】
  前記単位セルは、前記波形の前記偏波に対して同じ方位を有し、前記単位セルが占める前記層状構造物の部分は、前記波形の少なくとも一部分を吸収し、前記単位セルが存在しない前記層状構造物の部分は、前記金属板から前記偏波波形を反射する、請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項8】
  少なくとも幾つかの単位セルが、前記波形の前記偏波に対して、反射方位及び吸収方位を含む異なる方位を有し、前記吸収方位を有する単位セルは前記入射偏波波形を吸収し、前記反射方位を有する単位セルは前記入射偏波波形を反射する、請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項9】
  前記吸収方位を有する前記単位セルにおいて、前記単位セルを形成する前記金属構成要素の最も長い寸法は、前記偏波方向と整列され、前記反射方位を有する前記単位セルにおいて、前記単位セルを形成する前記金属構成要素の最も長い寸法は、前記偏波方向に対して垂直である、請求項8に記載のエンコーダ。
【請求項10】
  少なくとも幾つかの単位セルは、前記反射方位と前記吸収方位との間の中間の方位を有する、請求項9に記載のエンコーダ。
【請求項11】
  前記単位セルは、非正方形の金属構成要素によって形成された正方形の輪郭を有する、請求項10に記載のエンコーダ。
【請求項12】
  前記単位セルを形成する前記金属構成要素の幾何学的パラメータ及び配置は、前記共振周波数の関数であり、前記単位セルの金属構成要素が、前記共振周波数によって定まるインダクタンスを有するインダクタを形成するとともに、前記単位セルの少なくとも2つの金属構成要素が、前記共振周波数によって定まるキャパシタンスを有するキャパシタを形成するために、互いに距離をとるようにして位置決めされるようになっている、請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項13】
  前記層状構造物は、複数の複合単位セルを備え、各複合単位セルは、第1の共振周波数用に選択された前記金属構成要素の第1の幾何学的パラメータ及び第1の配置を有する第1の単位セルと、第2の共振周波数用に選択された前記金属構成要素の第2の幾何学的パラメータ及び第2の配置を有する第2の単位セルとを備え、
  前記送信器によって送信された前記波形は、前記第1の共振周波数を有する第1の波形と、前記第2の共振周波数を有する第2の波形とを含み、
  前記受信器は、前記層状構造物から反射された前記第1の波形の振幅を測定して、第1の測定値シーケンスを生成するとともに、前記層状構造物から反射された前記第2の波形の振幅を測定して、第2の測定値シーケンスを生成し、
  前記プロセッサは、同じ複合単位セルから来る前記第1の波形及び前記第2の波形の対応する測定値を組み合わせて複数ビットの前記符号を生成し、前記符号の前記ビットに基づいて前記送信器の前記位置を求める、請求項12に記載のエンコーダ。
【請求項14】
  前記データは、前記共振回路同士の互いに対する位置、前記波形の前記共振周波数に対する前記共振回路の共振周波数、及び前記波形の前記偏波方向に対する共振回路の方位のうちの1つ又は組み合わせを含む、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項15】
  前記共振周波数はTHzスペクトルにある、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項16】
  位置符号化のための方法であって、
  偏波方向に沿って振動するように偏波された横波である共振周波数の波形を層状構造物に送信器によって送信することであって、前記層状構造物は、金属板と、前記金属板上に配置された誘電体層と、前記誘電体層上に配置されて共振回路のパターンを形成する複数の金属構成要素とを備えることと、
  前記層状構造物から反射された前記波形の振幅を受信器によって測定することと、
  前記層状構造物によって形成される前記共振回路の前記パターンに基づいて位置を前記反射波形の振幅に関係付けるデータをメモリから取り出すことと、
  前記データに基づいて前記振幅の前記測定値から前記送信器の位置をプロセッサによって求めることと、
  前記送信器の前記位置を出力インターフェースにレンダリングすることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、包括的には、非接触(contactless)エンコーダに関し、より詳細には、偏波波形の反射に基づいて位置を測定するエンコーダに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  位置測定用のエンコーダは、パスに沿って移動可能な要素の位置、例えば、駆動装置又はピボットアーム等の直線軸上の機械構成要素の位置が求められる多くの応用分野で必要とされている。この場合に検出される位置は、測定目的のための位置の値として用いることもできるし、また、位置制御ループを有する駆動装置を経由して構成要素を位置決めするための位置の値として用いることもできる。したがって、そのような位置エンコーダは、座標測定機械(CMM:coordinate measuring machines)、測地デバイス、ロボットアーム、エレベータ、列車システム、レーダ、ソナー、通信機器、音響機器、光学機器又は油圧アクチュエータ等のデバイスにおいて用いられる。
【0003】
  エンコーダは、このために、スケーラと、このスケーラをスキャンする読み取りヘッドとを有する。これらのスケーラ及び読み取りヘッドは、互いに対して移動可能である。また、エンコーダは、測定動作を調整するとともに、読み取りヘッドによって記録される位置の値をスキャン信号に割り当てるプロセッサも有する。要件及び構造上の選択肢に応じて、読み取りヘッドが固定されて、スケーラが移動可能とされることもあるし、スケーラが固定して位置決めされて、読み取りヘッドがスケーラに対して移動されることもある。
【0004】
  スケーラのスキャンは、一般に光物理原理、誘導性物理原理、磁気的物理原理、又は容量性物理原理に基づいて非接触に実行される。例えば、読み取りヘッドは、光反射マーキング若しくは光散乱マーキング(反射光スキャン)又は光透過マーキング(透過光スキャン)を有するスケーラに光を照射する光源を有することができる。光は、光源から、センサの光検知ピックアップ上、例えば、フォトセル又はCCDアレイ上に入射する。スケーラが光反射マーキングを有する場合には、センサは、照明手段と読み取りヘッドの同じ側に取り付けられる。それ以外の場合には、読み取りヘッドは、スケーラを側方から取り囲み、センサ及び照明手段は、読み取りヘッドにおいて互いにほぼ対向して配置される。マーキングは、スケーラに対する読み取りヘッドの相対位置を符号化する符号要素として用いられる。符号化は、例えば、類似の明/暗遷移、モアレパターンを交番させることによって増分符号として実施することもできるし、光学測定方法以外の測定の場合には電極又は磁極として実施することもできるし、例えば、規定された異なるパターンの数による絶対符号として実施することもできる。これについては、米国特許出願公開第2015/0233742号を参照されたい。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  位置の精度は、スケーラの分解能と、送信信号の周波数と、産業環境において塵埃及び汚れによって引き起こされる散乱事象に対するエンコーダの感度とに依存する。したがって、塵埃及び煙のある環境において産業用途に適したエンコーダの相対位置の推定の精度を改善する必要がある。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  幾つかの実施形態は、偏波依存型エンコーダを高周波数位置検知に適応させることができるという理解に基づいている。そのようなエンコーダでは、送信器は、偏波信号をバーコードに送信し、受信器は、バーコードからの反射信号を検出する。このバーコードは、当該バーコードの異なる部分が、偏波された入射波形に対して異なって応答するように設計されている。例えば、バーコードは、反射信号内に送信器の位置を符号化するように送信信号を反射又は吸収することができる。
【0007】
  幾つかの実施形態は、そのような偏波依存型エンコーダがTHz位置検知又は他の検知用途に適しているという認識に基づいている。例えば、誘導性エンコーダ及び容量性エンコーダの低周波数の対応するものと比較すると、THzベースのエンコーダは、はるかに良好な分解能を達成することができ、光学エンコーダと比較すると、THzベースのエンコーダは、散乱に起因した減衰がより少なく、これによって、THzベースのエンコーダは、塵埃及び煙のある環境における産業用途により適したものとなる。
【0008】
  幾つかの実施形態は、一方の偏波を反射するとともに他方の偏波を透過させる偏光子を介して実施されるバーコードを用いて、偏波依存型エンコーダが偏波の送信器の位置を符号化することを可能にすることができるという理解に基づいている。しかしながら、偏光子を支持する基板を含む偏光子の背後にある物体は、エンコーダの受信器に戻る付加的な反射を引き起こす可能性があり、これは、雑音を検知システムに導入する。
【0009】
  例えば、ワイヤグリッドを有するフィルムを用いて設計された偏光子は、偏波信号に対して異なって応答する。電界がワイヤに平行であるワイヤの1つの方位では、信号は反射されて戻り、電界がワイヤに垂直であるワイヤの別の方位では、信号は透過する。付加的な材料が、例えば、基板として偏光子に加えられた場合、付加的な反射が、透過する偏波信号に起こる可能性がある。ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子の背後にある物体も、反射信号を破損させるこの付加的な反射をもたらす可能性がある。したがって、機械的に安定するとともに、外部の物体からの反射に起因した雑音の影響を受けにくい偏光子を設計する必要がある。
【0010】
  幾つかの実施形態は、偏光子の欠点の原因の1つが、入射波形を透過させるそれらのデフォルト動作の原理にあるという理解に基づいている。具体的には、偏光子は、波形を反射させる何らかのことが行われない限り、全ての入射波形を透過させる。例えば、ワイヤ回折格子偏光子は、この回折格子が、波を反射するように回転されない限り、入射波形を透過させる。そのようにして、位置は、信号の反射を用いて符号化され、これによって、そのような偏光子は、反射信号を破損する望ましくない反射に対して脆弱になる。
【0011】
  幾つかの実施形態は、偏光子の動作原理を変えることが可能であるという理解に基づいている。具体的には、波を吸収する何らかのことが行われない限り、全ての入射波形を反射するような偏光子を設計することが可能である。そのようにして、送信器の位置は、信号の吸収を用いて符号化され、これによって、偶発的な反射に対する依存性が低減される。加えて、デフォルト反射の原理は、偏光子の機械的安定性を達成するのに役立つことができる。
【0012】
  そのために、幾つかの実施形態は、金属板と、この金属板上に配置された誘電体層と、この誘電体層上に配置されて複数の共振回路を形成する複数の金属構成要素とを備える層状構造物が、そのような偏光子を可能にすることができるという理解に基づいている。具体的には、金属板は、偏光子の機械的支持を提供するとともに、信号が偏光子を透過するのを防止する。そのような金属板は、入射波形のデフォルト反射を提供する。加えて、この層状構造物によって形成される共振回路は、層状構造物の金属構成要素の配置、方位及び幾何学的パラメータの関数として反射信号を吸収する。そのような吸収、例えば、部分的な吸収又は完全な吸収は、エンコーダの位置を符号化することができる。
【0013】
  例えば、共振回路の共振周波数が偏波信号の共振周波数と等しく、共振回路の方位が送信信号の偏波の方向と整列されているとき、共振回路は、共振周波数の入射偏波信号を吸収する。金属構成要素の方位及び寸法を変えることによって、吸収の割合を変えることができる。そのために、共振回路を形成する金属構成要素が占める層状構造物の部分は、波形の少なくとも一部分を吸収し、金属構成要素が存在しない層状構造物の部分は、金属板から偏波波形を反射する。
【0014】
  層状構造物に対する送信器の位置は、共振回路同士の互いに対する位置、波形の周波数に対する共振回路の共振周波数、及び波形の偏波方向に対する共振回路の方位のうちの1つ又は組み合わせを示すデータとして符号化することができる。そのようなデータは、エンコーダの位置を反射データの振幅の測定値に関係付けることができる。例えば、1つの実施形態では、データは、エンコーダのプロセッサが、マッピングに従って振幅の測定値を送信器の位置にマッピングすることができるように、振幅値シーケンスと送信器の位置との間のマッピングを含む。
【0015】
  したがって、1つの実施形態は、金属板と、この金属板上に配置された誘電体層と、この誘電体層上に配置されて複数の共振回路を形成する複数の金属構成要素とを備える層状構造物を有するエンコーダを開示する。このエンコーダは、共振周波数の波形を層状構造物に送信する送信器と、層状構造物から反射された波形の振幅を測定する受信器とを備える。波形は、偏波方向に沿って振動するように偏波された横波である。このエンコーダは、共振回路同士の互いに対する位置、波形の周波数に対する共振回路の共振周波数、及び波形の偏波方向に対する共振回路の方位のうちの1つ又は組み合わせを示すデータを記憶するメモリと、このデータに基づいて振幅の測定値から送信器の位置を求めるプロセッサと、送信器の位置をレンダリングする出力インターフェースとを備える。
【0016】
  上記データは、波形の偏波の方向に依存する偏波波形の吸収の関数として送信器の位置を符号化する。例えば、1つの実施形態では、データは、波形の偏波の種々の方向について求められた複数のマッピングを含み、プロセッサは、送信器によって送信された波形の偏波方向に基づいてマッピングを選択し、マッピングに従って振幅の測定値を送信器の位置にマッピングする。
【0017】
  送信された波形は、循環する強い電流を有し、エネルギーを熱に変換する共振回路の特性に起因して吸収される。そのために、幾つかの実施形態では、金属構成要素の幾何学的パラメータは、共振周波数の関数である。幾つかの実施態様では、共振周波数はTHzスペクトルにある。例えば、金属板から或る距離を置いて誘電体層上に配置された金属構成要素は、共振周波数によって定まるインダクタンスを有するインダクタを形成する。同様に、少なくとも2つの金属構成要素は、共振周波数によって定まるキャパシタンスを有するキャパシタを形成するように互いに距離を置いて位置決めされる。金属構成要素の幾何学的パラメータ及び互いの配置を変化させて、共振回路の共振周波数を調節することができる。
【0018】
  幾つかの実施態様では、金属構成要素は、製造プロセスを簡略化するために同じ形状及び寸法を含む同じ幾何学的パラメータを有する。一方、異なる金属構成要素の幾何学的パラメータは異なる可能性がある。加えて又は代替的に、実施及び位置符号化(position encoding:位置エンコーディング)を容易にするために、一群の金属構成要素が、単位セルを形成するパターンに配置され、層状構造物は、位置を符号化する複数の単位セルを備える。例えば、単位セルが占める層状構造物の部分から反射された波形の振幅の値は、送信器の位置を求めるためにプロセッサによって分析される信号の単位又はピクセルを形成することができる。例えば、複数の単位セルは、エンコーダの位置の値を符号化する周期的パターン及び/又はバーコードを形成することができる。
【0019】
  ここに開示されている実施形態は、添付図面を参照して更に説明される。示されている図面は、必ずしも一律の縮尺というわけではなく、その代わり、一般的に、ここに開示されている実施形態の原理を示すことに強調が置かれている。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】幾つかの実施形態によるエンコーダの概略図である。
【
図2】幾つかの実施形態によるコンピュータベース位置情報システムのブロック図である。
【
図3A】幾つかの実施形態による、横波を送信するように構成された送信器の概略図である。
【
図3B】幾つかの実施形態による、層状構造物から反射された波形の振幅を測定する受信器のブロック図である。
【
図4A】位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる偏波信号の特性を示す概略図である。
【
図4B】位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる偏波信号の特性を示す概略図である。
【
図5A】位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる層状構造物の特性を示す概略図である。
【
図5B】位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる層状構造物の特性を示す概略図である。
【
図5C】幾つかの実施形態に従って送信された偏波を有する入射波形の受信に応答して励起される電荷分布を示す図である。
【
図5D】
図5Cの電荷分布の物理的挙動を記述する回路モデルの概略図である。
【
図6A】幾つかの実施形態による、層状構造物の金属構成要素を用いて位置を符号化する例の概略図である。
【
図6B】幾つかの実施形態による、層状構造物の金属構成要素を用いて位置を符号化する例の概略図である。
【
図6C】メモリに記憶されたデータと、層状構造物における金属構成要素の配置と、幾つかの実施形態に従って位置を求めるためにプロセッサによって用いられる反射信号の振幅の測定値との間の関係を示す概略図である。
【
図7】異なる実施形態に従って位置推定を実行するプロセッサによって実行可能なプログラムが具現化された非一時的コンピュータコンピュータ可読媒体の一例示的な概略図である。
【
図8A】幾つかの実施形態による
図7のモジュールの動作の概略図である。
【
図8B】幾つかの実施形態による
図7のモジュールの動作の概略図である。
【
図9A】1つの実施形態による、層状構造物によって形成される共振回路のパターンの一例を示す図である。
【
図9B】1つの実施形態によって用いられる一例示的な信号モデルの概略図である。
【
図10A】1つの実施形態による、層状構造物によって形成される共振回路のパターンの一例を示す図である。
【
図10B】1つの実施形態による、送信器の反射波の振幅値シーケンスと送信器の位置シーケンスとの間のマッピングを提供するルックアップテーブルである。
【
図10C】1つの実施形態による、
図10Bのルックアップテーブルを用いて位置を求める方法のブロック図である。
【
図11】位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる単位セルの概略図である。
【
図12】幾つかの実施形態によって用いられる単位セルの方位に基づく反射信号の振幅の変化を示すグラフである。
【
図13】幾つかの実施形態による、共振回路の類似のパターンを与える単位セルの異なる配置の概略図である。
【
図14】
図13の配置のパターンに類似した共振回路のパターンを与える他の実施形態による単位セルの異なる配置の概略図である。
【
図15】単位セルの位置及び方位が2ビットの符号を規定する幾つかの実施形態による単位セルの配置の概略図である。
【
図16】幾つかの実施形態による、入射波形が共振周波数用に設計された単位セルによって形成される共振回路を励起するときの一例示的な反射スペクトルを示す図である。
【
図17A】1つの実施形態による、入射波形が複数の共振周波数を含むときの一例示的な反射スペクトルを示す図である。
【
図17B】
図17Aの種々の周波数について1つの実施形態によって設計された符号を有するルックアップテーブルである。
【
図18】複数の共振周波数を用いて位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる複合単位セルの上面図である。
【
図19】幾つかの実施形態による複数の複合単位セルの配置の上面図である。
【
図20A】幾つかの実施形態による、横波を送信するように構成された送信器の概略図である。
【
図20B】幾つかの実施形態による、層状構造物から反射された波形の振幅を測定する受信器のブロック図である。
【
図21A】1つの実施形態による、マルチビットバーコード用に設計されたルックアップテーブルである。
【
図21B】1つの実施形態による、複数の周波数及び複数の方位に基づく3ビットバーコードの例を示す図である。
【
図21C】1つの実施形態による、複数の周波数及び複数の方位に基づく3ビットバーコードの例を示す図である。
【
図22】1つの実施形態による層状構造物を設計する方法のブロック図である。
【
図23】幾つかの実施形態による、位置を符号化する異なる形状を有する金属構成要素の少数の例を示す図である。
【
図24A】幾つかの実施形態による位置エンコーダを用いてエレベータかごの位置を求めるエレベータシステムの概略図である。
【
図24B】幾つかの実施形態の原理を用いて鉄道線路上を移動する列車の位置を求める列車システムの概略図である。
 
【発明を実施するための形態】
【0021】
  図1は、幾つかの実施形態によるエンコーダ100の概略図を示している。エンコーダ100は、少なくとも部分的に偏波波形の吸収を用いて位置を符号化する偏波依存型位置エンコーダである。そのために、エンコーダ100は、送信器121によって送信された入射偏波波形の反射及び/又は吸収に基づいて位置を符号化するための層状構造物130を備える。層状構造物130は、金属板132と、この金属板の上部に配置された誘電体層133と、この誘電体層の上部に配置された複数の金属構成要素134とを備える。この配置によって、金属構成要素134を備える層状構造物の少なくとも一部分150は、誘電体層上に配置された複数の金属構成要素134が共振回路のパターンを形成するように、共振回路155を形成する。そのような共振回路のパターンは、幾つかの実施形態によって位置の符号化及び復号化に用いられる。層状構造物130は、この層状構造物の層を機械的に支持する基板135も備えることができる。
 
【0022】
  幾つかの実施形態は、波が吸収されない限り、層状構造物130が全ての入射波形を反射する偏光子を可能にするという理解に基づいている。そのようにして、位置は、信号のデフォルト反射及び吸収を用いて符号化することができ、これによって、偶発的な反射に対する依存性が低減される。加えて、デフォルト反射の原理は、偏光子の機械的安定性を達成するのに役立つことができる。具体的には、金属板132は、偏光子を機械的に支持するとともに、信号が偏光子を透過することを防止する。そのような金属板は、入射波形のデフォルト反射をもたらす。加えて、層状構造物によって形成される共振回路は、層状構造物の金属構成要素の配置、方位及び幾何学的パラメータの関数として反射信号を吸収する。そのような吸収、例えば、部分的な吸収又は完全な吸収は、位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる。
 
【0023】
  例えば、幾つかの実施態様では、金属構成要素が占める層状構造物の部分150は、金属構成要素の幾何学的パラメータに応じて波形の少なくとも一部分を吸収する共振回路155を形成する。例えば、金属構成要素の幾何学的パラメータは、入射偏波波形の共振周波数を有する共振回路155を形成するように選択される。そのようにして、入射偏波波形の少なくとも一部分を共振回路によって吸収し、熱として消散させることができる。これとは対照的に、金属構成要素が存在しない層状構造物の部分151は、金属板132から偏波波形を反射する。
 
【0024】
  エンコーダ100は、層状構造物130と相対運動することが可能な位置検出器101の少なくとも一部を形成する位置情報システム110及び偏波波形システム120も備える。例えば、幾つかの実施態様では、層状構造物130は、鉄道線路又はエレベータ壁等の固定本体に固定される一方、位置検出器101は、列車及びエレベータかご等の可動物体に固定される。そのようにして、エンコーダ100を、移動経路上の可動物体の位置を検出するのに用いることができる。
 
【0025】
  偏波波形システム120は、共振周波数の偏波波形を層状構造物に送信する送信器121を備える。この波形は、偏波方向に沿って振動するように偏波された横波である。送信器121は、発振器125を用いてそのような波形を生成し、この波形をアンテナ122から自由空間を介して層状構造物130に送信することができる。
 
【0026】
  偏波波形システム120は、層状構造物から反射されて受信器124のアンテナ123によって収集される波形の振幅を測定する受信器124を備える。反射波形の測定値は、位置検出器101及び/又は送信器121の位置を求めるとともにその位置を出力インターフェース140にレンダリングする位置情報システム110にサブミットされる。
 
【0027】
  位置情報システム110は、送信器の位置を示すデータを記憶するメモリ108と、共振回路155によって形成されたパターンを示すデータに基づいて振幅の測定値から送信器の位置を求めるプロセッサ102とを備える。幾つかの実施形態では、データは、共振回路同士の互いに対する位置、波形の共振周波数に対する共振回路の共振周波数、及び波形の偏波方向に対する共振回路の方位のうちの1つ又は組み合わせを含む。
 
【0028】
  図2は、幾つかの実施形態によるコンピュータベース位置情報システム110のブロック図を示している。位置情報システム110は、記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサ102と、このプロセッサによって実行可能な命令を記憶するメモリ104とを備える。プロセッサ102は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、コンピューティングクラスター、又は任意の数の他の構成体とすることができる。メモリ104は、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、リードオンリーメモリ(ROM:read only memory)、フラッシュメモリ、又は他の任意の適したメモリシステムを含むことができる。プロセッサ102は、バス106を通じて1つ以上の入力デバイス及び出力デバイスに接続される。
 
【0029】
  これらの命令は、送信器によって送信された偏波波の反射及び吸収に基づいて送信器の位置推定を実施する。特に、送信器は、位置検出器101内に堅固に配置され、送信器の位置は、位置検出器101の位置を直接示すものである。本開示では、送信器の位置及び検出器の位置は区別なく用いられる。
 
【0030】
  位置情報システム110は、送信器の位置を示すデータ131を記憶するように適合された記憶デバイス又はメモリ108も備えることができる。具体的には、データ131は、層状構造物によって形成された共振回路のパターンに基づいて送信器の位置を反射波信号に関係付けたものである。データ131の例としては、共振回路同士の互いに対する位置、波形の共振周波数に対する共振回路の共振周波数、及び波形の偏波方向に対する共振回路の方位のうちの1つ又は組み合わせが含まれる。データ131の例として、共振回路のパターンに基づいて設計された反射信号の信号モデル、及び、共振回路のパターンを表すビットシーケンスを含む符号も含まれる。
 
【0031】
  記憶デバイス108は、ハードドライブ、光学ドライブ、サムドライブ、ドライブのアレイ、又はそれらの任意の組み合わせを用いて実施することができる。加えて又は代替的に、記憶デバイスは、メモリ104として実施することができる。幾つかの実施態様では、メモリ104及び108は合体され、1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体にされる。
 
【0032】
  位置情報システム110は、推定された位置をレンダリングする出力インターフェース140を備える。幾つかの実施形態では、出力インターフェース140は、プロセッサをディスプレイデバイス142に接続するように適合されたディスプレイインターフェース141を含む。このディスプレイデバイスは、カメラ、コンピュータ、スキャナ、モバイルデバイス、ウェブカム、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。幾つかの実施形態では、出力インターフェース140は、エンコーダを印刷デバイスに接続するように適合されたプリンターインターフェースを含む。幾つかの実施形態では、出力インターフェース140は、プロセッサをネットワーク上の1個又は数個のデバイス144に接続するように適合されたネットワークインターフェース143を含む。幾つかの実施形態では、出力インターフェース140は、エレベータかご又は列車等の可動物体の動きを制御するコントローラー等の位置ベースアプリケーションデバイス146に推定された位置をサブミットするアプリケーションインターフェース145である。
 
【0033】
  位置情報システム110は、反射信号の振幅の測定値195を受信する入力インターフェース165も備える。例えば、ネットワークインターフェースコントローラー160は、バス106を通じて位置情報システム110をネットワーク190に接続するように適合することができる。ネットワーク190は、有線ネットワーク又は無線ネットワークとして実施することができる。ネットワーク190及び/又は入力インターフェース165の他の実施態様を通じて、反射信号の振幅の測定値195をダウンロードし、記憶及び/又は更なる処理のためにコンピュータの記憶システム108内に記憶することができる。
 
【0034】
  図3Aは、幾つかの実施形態による、層状構造物130に向けて偏波方向に沿って振動するように偏波された横波301を送信するように構成された送信器121の概略図を示している。横波301は、波のエネルギー伝達及び/又は伝播の方向に垂直に発生する振動を含む移動波である。光は横波の一例である。
 
【0035】
  偏波は、振動の幾何学的方位を指定する横波の特性である。横波では、振動方向は、波の移動方向を横断し、そのため、振動は、波方向に垂直な種々の方向を有することができる。例えば、送信器121は、その電界ベクトルEが
図3Aにおける垂直方向に振動する波長λ  350の「水平偏波」電磁波330を送信することができる。或いは、送信器121は、その電界ベクトルEが
図3Aにおける水平方向に振動する波長λ  350の「垂直偏波」電磁波340を送信することもできる。本開示では、偏波方向及び支配的な電磁成分の方向、例えば、電界の方向は、区別なく用いられる。
 
【0036】
  送信器121は、様々な種類の発振器125を用いて、偏波330又は340を生成することができる。例えば、送信器は、周期的な振動電子信号を生成する電子回路を有する電子発振器を用いることができる。例えば、この電子発振器は、RC発振器回路、LC発振器回路、及び/又は水晶発振器回路を用いて、特定の偏波の振動波を生成することができる。送信器121は、偏波フィルター320を任意選択で用いて、横波の偏波を実施することができる。
 
【0037】
  層状構造物130による波301の吸収又は反射は、とりわけ、波長λ  350によって定まる入射波形330又は340の共振周波数に依存する。幾つかの実施態様では、この共振周波数は、波長λ  350をミリメートル範囲にまでするテラヘルツ(THz)スペクトルにある。そのために、それらの実施形態では、発振器125は高周波数発振器である。そのような高周波数発振器の例は、1つの実施形態によって用いられる高電子移動度トランジスタ(HEMT:high-electron-mobility transistor)310を用いたものである。ただし、他の実施形態は、異なる種類の高周波数発振器を用いる。
 
【0038】
  図3Bは、幾つかの実施形態による、層状構造物から反射された波形の振幅を測定する受信器のブロック図を示している。アンテナ123によって受信された反射信号は、送信器121によって送信された偏波信号の周波数を通過させるフィルター360を用いてフィルタリングされる。フィルターアナログ信号365は、位置情報システム110に直接サブミットされるか、又は、任意選択でアナログ/デジタル変換器(ADC:analog-to-digital converter)370によってデジタル表現375に変換される。
 
【0039】
  図4A及び
図4Bは、位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる偏波信号の特性を示す概略図を示している。例えば、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子401は、偏波信号の異なる偏波に異なって応答する。ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子401は、基板402上に平行に配置された金属ワイヤ403の層として実施することができる。この例では、入射波形410は、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子に向けて伝播する。
図4Aは、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子401の上面図を示し、波410は、
図4Aの用紙に対して垂直な方向に伝播する。
図4Bは、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子401の側面図を示し、波410は、
図4Bの用紙に対して平行な方向に伝播する。
 
【0040】
  幾つかの実施形態は、ワイヤと平行に振動する(420)入射波形410が、振動場に応答してワイヤに沿った電子移動を生成するという認識に基づいている。この電子移動は、ワイヤに平行に振動する入来波をキャンセルする進行波を生み出し、この進行波を薄い金属シートと同じ方法で反射する。したがって、ワイヤに平行な偏波を有する入来波の成分は、ワイヤ内での電子移動によって引き起こされるジュール発熱に起因した損失を幾分伴って反射される。ワイヤに垂直な電界430を有する波の場合、電子は、各ワイヤの幅にわたってあまり遠くに移動することができない。したがって、僅かなエネルギーしか反射されず、入射波形はグリッドを透過することができる。この場合に、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子は誘電体材料のように振る舞う。
 
【0041】
  そのために、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子401は、波の振動とワイヤとの間の互いの方位に基づいて入射波形を反射するか又は透過させる偏光子として動作することができる。しかしながら、偏光子を支持する基板を含む、偏光子の背後にある物体は、エンコーダの受信器に戻る付加的な反射を引き起こす可能性があり、この反射は、検知システムに雑音を導入する。したがって、機械的に安定しているとともに外部の物体からの反射に起因した雑音の影響を受けにくい偏光子を設計する必要がある。
 
【0042】
  幾つかの実施形態は、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子の欠点の原因の1つが、入射波形を透過させるそれらのデフォルト動作の原理にあるという理解に基づいている。具体的には、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子は、波を反射させる何らかのことが行われない限り、全ての入射波形を透過させる。例えば、ワイヤグリッドを用いたフィルム型偏光子は、この回折格子が、波形を反射するように回転されない限り、入射波形を透過させる。そのようにして、位置は、信号の反射を用いて符号化され、これによって、そのような偏光子は、反射信号を破損する望ましくない制御されていない反射に対して脆弱になる。
 
【0043】
  幾つかの実施形態は、偏光子の動作原理を逆転させることが可能であるという理解に基づいている。具体的には、波を吸収する何らかのことが行われない限り、全ての入射波形を反射するような偏光子を設計することが可能である。そのようにして、送信器の位置は、信号の制御された反射及び吸収を用いて符号化され、これによって、偶発的な反射に対する依存性が低減される。加えて、デフォルト反射の原理は、偏光子の機械的安定性を達成するのに役立つことができる。
 
【0044】
  そのために、幾つかの実施形態は、金属板と、この金属板上に配置された誘電体層と、この誘電体層上に配置されて複数の共振回路を形成する複数の金属構成要素とを備える層状構造物を用いて、そのような偏光子を可能にする。
 
【0045】
  図5A及び
図5Bは、偏波を反射及び/又は吸収することによって位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる層状構造物の特性を示す概略図を示している。
図5Aは、上部誘電体層133を部分的に遮っている一組の可視の金属構成要素134を有する層状構造物の上面図を示している。この例では、この一組の金属構成要素は、辺長w
1及びw
2と、隣接したパッチとの間の離隔距離g
1及びg
2とを有する方形形状の金属パッチの周期的パターンで配置されている。金属パッチの厚さはtであり、誘電体層の厚さはdである。
 
【0046】
  この例では、金属パッチの長辺側w
1>w
2に平行な電界を伴う偏波方向を有する入射波形510について、入射電界は、電界の方向に沿って振動する電子移動を生成する。パッチ間にはギャップがあるので、電子の振動、すなわち電荷の振動は、パッチの物理長w
1による制約を受ける。上部金属層と下部金属平面との間の小さな離隔距離dにわたって、逆符号のイメージ電荷が下部接地平面上に現れる。この電子電荷蓄積は、入射波形に対して容量性応答を有する。
 
【0047】
  金属構成要素の幾何学的パラメータが適切に選択された場合には、共振回路155は、方向530において共振周波数で振動する入射波形510を吸収する層状構造物において励起される。金属構成要素の方位及び/又は寸法に起因して、振動方向520に沿った共振回路が励起されない場合には、電界520を有する入射波形510は、金属板132から反射される。
 
【0048】
  そのために、幾つかの実施形態は、金属構成要素の幾何学的パラメータを共振周波数の関数として設計する。そのようにして、金属構成要素は、共振回路155を励起する共振周波数によって定まるインダクタンスを有するインダクタを形成することができる。同様に、互いに或る距離を隔てて位置決めされた少なくとも2つの金属構成要素は、共振回路155を励起する共振周波数によって定まるキャパシタンスを有するキャパシタを形成することができる。
 
【0049】
  図5Cは、幾つかの実施形態に従って送信された偏波530を有する入射波形510の受信に応答して励起される電荷分布540を示している。実際上、振動する電子電荷に起因して電流が流れる。その結果、システムは、入射波形に対する誘導応答も有する。
 
【0050】
  図5Dは、
図5Cの電荷分布540の物理的挙動を記述した回路モデル550の概略図を示している。このモデルにおいて、インダクタンスL  560は、金属対応物(metallic match)134及び下部金属平面132において振動している電流によって生成される。キャパシタンスC  555は、入射電界によって誘導された電子電荷蓄積によるものであり、抵抗R  565は、金属材料の有限のコンダクタンスによって決まり、抵抗損に起因した吸収に寄与する。
 
【0051】
  全ての有効な回路構成要素は、上部金属平面及び下部金属平面の金属材料の幾何学的設計及び材料特性と、これらの2つの金属層の間の誘電体層の誘電体材料特性とによって求められる。回路の共振周波数は、
【数1】
によって求められる。共振時において、電荷蓄積及び電流振動ははるかに強くなり、その結果、発熱に起因したエネルギー吸収もより効率的である。2つの構成要素が全体的な吸収に寄与することができる。すなわち、1つは金属材料における抵抗損であり、1つは、2つの金属層の間にある損失を有する誘電体材料における誘電損である。全体的な吸収は、共振周波数におけるほとんど全ての入射エネルギーをシステムによって吸収することができるという非常に高い割合に達することができる。
 
【0052】
  そのような吸収体を設計する方法には、多くの異なる方法がある。例えば、幾つかの実施形態は、所望のバーコードを反射する金属パターンを作成し、実効インダクタンスL及び実効キャパシタンスCを調節することができるようにするとともに、入射波形の吸収をもたらす動作共振周波数において共振モードを励起することができるように、誘電体層材料及び厚さを調整する。
 
【0053】
  図6A及び
図6Bは、幾つかの実施形態による、層状構造物の金属構成要素を用いて位置を符号化する例の概略図を示している。
図6Aは、
図6Bの層状構造物の上面図の断面
図A−A’である。
 
【0054】
  金属構成要素が占める層状構造物の部分は、共振回路の共振周波数と入射波形の共振周波数との間の差及び波形の偏波方向に対する金属構成要素の方位に応じて、波形の少なくとも一部分を吸収する共振回路を形成する。これとは対照的に、金属構成要素が存在しない層状構造物の部分は、金属板132から偏波波形を反射する(640)。
 
【0055】
  例えば、金属構成要素610の幾何学的パラメータが、波形の共振周波数を有する共振回路を形成するように選択されるとともに、金属構成要素610の方位が波形の偏波方向と整列されているとき、そのような金属構成要素によって形成された共振回路は、入射波形を最も強力に吸収する(615)。
 
【0056】
  金属構成要素620の方位が、波形の偏波方向と整列されていないとき、金属構成要素620によって形成された共振回路による入射波形の吸収625は、吸収615よりも弱い。例えば、入射波形が、方形パッチの形状を有する金属構成要素の長辺側に垂直又は方形パッチの短辺側に平行な電界を有するとき、幾何学的相違に起因して、同じ周波数において同じ共振モードを励起することができない。外部の電界に起因した電子の振動に対する制約は異なり、実効キャパシタンスCを異なるものにするとともに実効インダクタンスLも異なるものにする。
 
【0057】
  動作周波数と異なる周波数において共振モードが励起される場合がある。その結果、低吸収が予想され、エネルギーのほとんどは反射される。例えば、金属構成要素630の幾何学的特性が、波形の共振周波数と異なる共振周波数を有する共振回路を形成するように選択されたとき、金属構成要素630によって形成された共振回路による入射波形の吸収635は、吸収615よりも弱い。
 
【0058】
  そのようにして、一組の金属構成要素は、共振回路のパターンの形で送信器の位置を符号化する符号を提供することができる。この符号化は、共振回路同士の互いに対する位置、波形の共振周波数に対する共振回路の共振周波数、及び波形の偏波方向に対する共振回路の方位のうちの1つ又は組み合わせを示すデータに反映される。このデータは、メモリに記憶されて、位置を求めるためにプロセッサによって用いられる符号化パターンを形成する。
 
【0059】
  図6Cは、メモリに記憶されたデータと、層状構造物における金属構成要素の配置と、幾つかの実施形態に従って位置を求めるためにプロセッサによって用いられる反射信号の振幅の測定値との間の関係を示す概略図を示している。メモリ108に記憶されたデータ131は、送信器の位置を、層状構造物によって形成される共振回路のパターン650に基づいて反射波形の振幅と関係付ける。幾つかの実施形態において、データは、共振回路同士の互いに対する位置、波形の周波数に対する共振回路の共振周波数、及び波形の偏波方向に対する共振回路の方位のうちの1つ又は組み合わせを示す。データ131の例として、共振回路のパターンに基づいて設計された反射信号の信号モデル、及び、共振回路のパターンを表すビットシーケンスを含む符号も含まれる。
 
【0060】
  そのようにして、データは、反射波形の振幅をもたらす共振回路のパターン650を規定する。パターン650は、位置を符号化する符号を提供する。したがって、測定値195及びデータ131が分かると、パターン650の部分を復元することができる。
 
【0061】
  図7は、異なる実施形態による、位置推定を実行するプロセッサによって実行可能なプログラムが具現化された非一時的コンピュータ可読媒体700の一例示的な概略図を示している。この例では、プログラムは、位置情報システム110の種々の機能を実行する複数のソフトウェアモジュールに編成されている。
 
【0062】
  例えば、信号処理ソフトウェア710は、層状構造物から反射された波形の振幅の測定値を示す受信信号の準備を担当する。例えば、信号処理ソフトウェア710は、信号から雑音を除去することができるとともに、信号の正規化、サンプリング、閾値処理、及び/又は変調を行うことができる。マッピングモジュール720は、処理された信号を受信し、この処理された信号をエンコーダの位置にマッピングする。
 
【0063】
  図8A及び
図8Bは、幾つかの実施形態による
図7のモジュールの動作の概略図を示している。例えば、
図8Aは、波形の振幅の測定値を示す信号810と、対応する復号化されたシーケンス820との説明図を示している。この例では、復号化されたシーケンス820は、位置を符号化するデ・ブラーン(de Bruijn)シーケンスの一部である。長さ2nのルックアップテーブルを用いて、全デ・ブラーンシーケンス内において位置の復号化されたシーケンスを求めることができる。例えば、
図8Bは、位置を符号化するデ・ブラーンシーケンスである符号830と、復号化されたシーケンス820を、位置850を生成するデ・ブラーンシーケンス830の部分と照合した結果840とを示している。
 
【0064】
  図9Aは、1つの実施形態による、層状構造物によって形成された共振回路のパターンの一例を示している。この実施形態では、金属構成要素は、共振回路155の周期的パターン910を形成するように誘電体層上に配置されている。これらの共振回路は、同一の特性を有し、一定距離915を空けて互いに分離されている。パターン910は、0及び1の値を交互に生じさせるバイナリー符号920に対応する。そのようなパターンは、実施するのがより簡単であり、送信器の相対位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる。
 
【0065】
  異なる実施形態では、メモリに記憶されたデータは、パターン910の周期性の異なる表示を記憶する。例えば、1つの実施形態では、データ131は、同一の特性を有する共振回路の周期的パターンを形成する層状構造物から反射された波形の信号モデルを含む。この実施形態では、プロセッサは、この信号モデルに基づいて振幅の測定値から位置を求める。
 
【0066】
  図9Bは、1つの実施形態によって用いられる一例示的な信号モデルの概略図を示している。この実施形態では、信号モデル940は、反射信号930と位置935との間の関係を記述する2つの構成要素を含む。具体的には、この実施形態は、多項式位相信号(PPS:polynomial phase signal)構成要素943及び周波数変調(FM:frequency modulated)構成要素945のうちの一方又は組み合わせを有する信号モデル940に従って反射信号930の位相の変化から送信器の相対位置935を推論することができるという認識に基づいている。モデルのPPS構成要素は、送信器と層状構造物との間の相対運動に起因した多項式構造を有する。FM構成要素は、送信器が動いている間の送信器の振動に起因して周期的に反射信号の位相に影響を及ぼす。
 
【0067】
  一般に、空間的に周期的な構造物からの反射信号は、以下のように記述することができる。
【数2】
この式において、Aは未知の振幅であり、dは移動する読み取りヘッドの軸位置インデックスであり、b
m>0及びφ
mはそれぞれ、第mの正弦波FM構成要素の変調インデックス及び初期位相であり、Mは、位相における正弦波FM構成要素の数であり、ψ
0は初期位相である。最初の位相項は、hの反射器間間隔に比例する位相変化に起因したものである。したがって、移動するエンコーダの移動距離及び速度は、最初の位相項の変化から推論することができる。一方、空間的に周期的な吸収体及び/又は反射器によって誘導される第2項は、動きに関連した正弦波FM構成要素である。(1)から、x(d)=x(d+lh)が得られる。この式において、lは整数である。すなわち、移動する受信器には、互いにhの距離離れた2つの軸位置において正確に同じ反射波形が見える。
 
【0068】
  ΔTのサンプリング間隔を用いるとともに、エンコーダがv
0の初期速度及びaの加速度で移動すると仮定すると、1つの実施形態は、d=v
0t+at
2/2│
t=nΔT=v
0nΔT+a(nΔT)
2/2,n=n
0,...,n
0+N−1を介して位置インデックスを離散時間インデックスに変換する。ただし、n
0及びNはそれぞれ、初期サンプリングインデックス及び総サンプル数を表す。その結果、離散時間反射信号は、以下の式として与えられる。
【数3】
 
【0069】
  エンコーダの動きがより動的なものである場合、より高次の位相項が反射信号に現れ得る。例えば、加速度が時変である場合、3次の位相項(t
3に関するもの)が、反射信号のモデル化に必要とされる場合がある。すなわち、d=v
0t+at
2/2+gt
3/6となる。この式において、gは加速率を表す。結合された信号モデルを一般化するために、幾つかの実施形態は、PPS信号及び正弦波FM信号の以下の結合混合式を用いる。
【数4】
この式において、基本正弦波FM周波数f
0は、ここでは、PPS位相パラメータa
1、...、a
Pと結合されている。用途に応じて、結合関数f
0(a
1,...,a
P)は、
【数5】
に関して非線形であることもあるし、線形であることもある。線形エンコーダの場合には、結合関数は、c
0が既知の倍率を表す
【数6】
としての線形関数である。
 
【0070】
  図10Aは、1つの実施形態による、層状構造物によって形成される共振回路のパターンの一例を示している。この実施形態では、金属構成要素は、送信器の絶対位置を符号化するために同一の特性を有する共振回路の非周期的パターン1010を形成するように誘電体層上に配置されている。データに格納された符号1020は、振幅値シーケンスと送信器の位置との間のマッピングを含む。符号及びマッピングは、プロセッサが、このマッピングに従って振幅の測定値を送信器の位置にマッピングすることを可能にする共振回路の非周期的パターンの関数である。
 
【0071】
  図10Bは、1つの実施形態による、反射波の振幅値シーケンスと送信器の位置との間のマッピングを提供するルックアップテーブルを示している。この実施形態では、プロセッサは、反射波の振幅の測定値から符号1031を復号化し、この符号1031を送信器の位置1032にマッピングする。
 
【0072】
  図10Cは、1つの実施形態による、
図10Bのルックアップテーブルを用いて位置を求める方法のブロック図を示している。プロセッサは、振幅測定値195を1つ又は複数の閾値1035と比較して(1040)、符号のビット1045を求める。例えば、1つの実施形態は、振幅が閾値よりも小さいときはビット1045を0にし、振幅が閾値よりも大きいときはビット1045を1にする単一の閾値と測定値を比較する。この実施形態は、反射波形の雑音による影響を受けにくい。加えて又は代替的に、1つの実施形態は、測定値を複数の閾値と比較し、それによって、1つの測定値は、複数ビットの符号を生成し、位置符号化の分解能が高められる。
 
【0073】
  次に、本方法は、複数の測定値のビットを組み合わせて、復号化された符号1055を生成し、この符号1055を用いて位置1065を取り出す(1060)。例えば、1つの実施形態は、位置推定を反復的に実行する。この実施形態は、新たに受信されたビットを、以前の反復中に求められた符号の最後に追加するとともに、符号の先頭から最も古いビットを除去して、その長さを維持しながら符号を更新する。
 
【0074】
  幾つかの実施形態は、位置を符号化する金属構成要素を有することが、高周波数エンコーダにとって不便である可能性があるという認識に基づいている。それらの実施形態では、位置は、単一の金属構成要素ではなく、一群の金属構成要素によって符号化される。例えば、幾つかの実施形態では、一群の金属構成要素が、位置を符号化する単位セルを形成する。層状構造物は複数の単位セルを備え、メモリに記憶されたデータは、単位セルの位置及び方位のうちの一方又は組み合わせによって、すなわち、単位セルによって形成される共振回路のパターンによって規定された符号を含む。そのようにして、単位セルは、プロセッサによって分析される反射信号ごとに1つのユニットを形成する。
 
【0075】
  図11は、位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる単位セルの概略図を示している。幾つかの実施態様では、同じ単位セルの金属構成要素の構造は同一であり、入射波形に対して同じ応答を与える。例えば、単位セル1110は、一群の6つの方形パッチ1115を用いて形成される。単位セル1110を形成する金属構成要素1115の幾何学的パラメータ及び配置は、共振周波数の関数であり、単位セルの金属構成要素が、共振周波数によって定まるインダクタンスを有するインダクタを形成するとともに、単位セルの少なくとも2つの金属構成要素が、共振周波数によって定まるキャパシタンスを有するキャパシタを形成する距離に互いに位置決めされるようになっている。したがって、反射信号の振幅は、単位セル全体にわたって同じである。
 
【0076】
  単位セル1120は、単位セル1110と同じ構造を有するが、入射波形の偏波に対して異なる方位を有する。単位セル1110の方位は、本明細書において吸収方位と呼ばれる。吸収方位を有する単位セルは、入射偏波波形を吸収し、その結果、反射信号1130の振幅の値は小さくなる。単位セル1120の方位は、本明細書において反射方位と呼ばれる。反射方位を有する単位セルは、入射偏波波形を反射し、その結果、反射信号1131の振幅の値はより大きくなる。異なる偏波に応答する構造/方位を有する2つの単位セルが共存している場合を検討する。同じ入射波形に対して、各単位セルは、異なる反射振幅を与え、その結果、単位セルの境界にわたって1つの振幅から別の振幅への遷移1140は急峻になる。
 
【0077】
  単位セルの方位は、入射波形の偏波に対する金属構成要素の形状の方位によって示すことができる。この例では、入射波形の電界は、水平軸に沿って偏波されている。例えば、吸収方位を有する単位セル1110では、この単位セルを形成する金属構成要素1115の最も長い寸法が、偏波の方向と整列されている。これとは対照的に、反射方位を有する単位セル1120では、この単位セルを形成する金属構成要素の最も長い寸法が、偏波の方向に対して垂直である。
 
【0078】
  層状構造物の吸収の偏波依存性は、回転を用いて調べることもできる。角度0度における反射振幅は0(吸収方位)であり、角度90度における反射振幅は1(反射方位)であるが、それらの間の角度は、2つのモードの混合状態である。これは、直線偏波を、異なる重みを有する0度及び90度の2つの方向に分解することができるからである。
 
【0079】
  図12は、幾つかの実施形態によって用いられる単位セル1210の方位1240に基づく反射信号の振幅1230の変化1220を示すグラフを示している。見て取ることができるように、角度0度から90度に向けて、反射振幅は、0に近い小さな値から1に近い非常に大きな値に徐々に増加している。この曲線の形状は、角度と正弦曲線関係にある。
 
【0080】
  そのために、幾つかの実施形態では、少なくとも幾つかの単位セルは、反射方位と吸収方位との間の中間の方位を有する。それらの実施形態は、符号化パターンの分解能を高めることを可能にする。特に、幾つかの実施形態では、単位セル110、1120、及び1210等の単位セルは、非正方形の金属構成要素によって形成される正方形の輪郭を有する。正方形の輪郭に起因して、それらの実施形態は、単位セルの回転によりよく適応することができる。
 
【0081】
  図13は、幾つかの実施形態による、共振回路の類似のパターンを与える単位セルの異なる配置の概略図を示している。配置1320では、単位セルは、波形の偏波に対して同じ方位を有する。単位セルが占める層状構造物の部分1322は、波形の少なくとも一部分を吸収する一方、単位セルが存在しない層状構造物の部分1324は、金属板から偏波波形を反射する。そのような配置は、符号1330によって表される共振回路のパターンを与える。この配置は、配置1310よりも実装コストが安価であるが、入射波形は異なる深さで層状構造物に進入するので、反射の遅延が異なることによって引き起こされる雑音が導入される。
 
【0082】
  配置1310では、少なくとも幾つかの単位セルは、波形の偏波に対して異なる方位を有する。この例では、異なる方位は反射方位及び吸収方位を含む。吸収方位を有する単位セル1312は入射偏波波形を吸収する一方、反射方位を有する単位セル1314は入射偏波波形を反射する。そのような配置も、符号1330によって表される共振回路のパターンを与える。この配置は、配置1320よりも実装コストが高価であるが、入射波形は同じ深さで層状構造物に進入するので、反射の遅延が異なることによって引き起こされる雑音が削減される。
 
【0083】
  図14は、
図13の配置のパターンと類似の共振回路のパターンを与える他の実施形態による単位セルの異なる配置の概略図を示している。これらの配置1410及び1420では、偏波信号の電界の偏波1435は、バーコードの配置の軸1430と整列されていない。
 
【0084】
  図13及び
図14の実施形態では、単位セルの位置及び方位は、1ビットの符号を規定する。具体的には、吸収方位を有する単位セルは、値0を有する符号のビットを規定し、反射方位を有する単位セルは、値1を有する符号のビットを規定する。
 
【0085】
  図15は、単位セルの位置及び方位が2ビットの符号を規定する幾つかの実施形態による単位セルの配置の概略図を示している。これらの実施形態では、少なくとも幾つかの単位セルは、反射方位と吸収方位との間の中間の方位を有する。そのようにして、反射のマルチビット量子化を適用し、0度と90度との間の偏波回転角度に対応する反射振幅に整数値を割り当てることができる。
 
【0086】
  例えば、偏波回転角度0度1510、30度1520、60度1530、及び90度1540における反射振幅に対応する整数値を割り当てることによって2ビットバーコードを設計することができる。例えば、ルックアップテーブル1550が、それらの整数値を異なる偏波回転角度に関連付けることができる。
 
【0087】
  様々な実施形態において、単位セルを形成する金属構成要素の幾何学的パラメータ及び配置は、共振周波数の関数である。そのようにして、単位セルの金属構成要素が、共振周波数によって定まるインダクタンスを有するインダクタを形成するとともに、単位セルの少なくとも2つの金属構成要素が、共振周波数によって定まるキャパシタンスを有するキャパシタを形成する距離に互いに位置決めされるようになっている。
 
【0088】
  図16は、幾つかの実施形態による、入射波形が共振周波数1620用に設計された単位セルによって形成される共振回路を励起するときの一例示的な反射スペクトルを示している。一方、代替の実施形態は、入射偏波波の複数の周波数を用いてマルチビットバーコードを設計することができるという認識に基づいている。
 
【0089】
  図17Aは、1つの実施形態による、入射波形が複数の共振周波数を含むときの一例示的な反射スペクトル1710を示している。この実施形態では、送信器によって送信された波形は、第1の共振周波数f
11720を有する第1の波形と、第2の共振周波数f
21730を有する第2の波形とを含む。2つの異なる共振周波数f
1及びf
2に対するそれぞれの応答を組み合わせることによって、異なるバーコードを設計することができる。
 
【0090】
  図17Bは、
図17Aの異なる周波数について1つの実施形態によって設計された符号を有するルックアップテーブル1740を示している。この例では、双方の波形が吸収されるとき、符号は00である。第1の波形が吸収されるが、第2の波形が反射されるとき、符号は01である。第1の波形が反射されるが、第2の波形が吸収されるとき、符号は10である。第1の波形が反射されるとともに第2の波形が反射されるとき、符号は11である。
 
【0091】
  図18は、複数の共振周波数を用いて位置を符号化するために幾つかの実施形態によって用いられる複合単位セルの上面図を示している。この例では、複合単位セル1800は、第1の共振周波数1720用に選択された金属構成要素の第1の幾何学的パラメータ及び第1の配置を有する第1の単位セル1810と、第2の共振周波数1730用に選択された金属構成要素の第2の幾何学的パラメータ及び第2の配置を有する第2の単位セル1820とを備える。特に、これらの単位セルを異なる共振周波数に適応させるために、第1の単位セル1810の第1の幾何学的パラメータのうちの少なくとも幾つかは、第2の単位セル1820の対応する第2の幾何学的パラメータと異なる。この例では、幾何学的パラメータw
2及びg
2が、対応する幾何学的パラメータw
3及びg
3と異なる。異なる単位セルを組み合わせて並列に配置することによって(
図18の上面図では、上半分及び下半分として示されている)、新たな複合単位セルが2ビットバーコード用に構成される。
 
【0092】
  図19は、幾つかの実施形態による複数の複合単位セルの配置の上面図を示している。各複合単位セルは、異なる周波数用に設計された単位セルを備える。例えば、複合単位セル1910、1920、1930、及び1940のそれぞれは、第1の共振周波数用に選択された金属構成要素の第1の幾何学的パラメータ及び第1の配置を有する第1の単位セルと、第2の共振周波数用に選択された金属構成要素の第2の幾何学的パラメータ及び第2の配置を有する第2の単位セルとを備え、これらの単位セルは異なって方位付けされている。これらの複合単位セルにおける第1の単位セル及び第2の単位セルの方位は、第1の共振周波数を有する第1の波形と、第2の共振周波数を有する第2の波形とを含む波形を送信するように構成された2周波数送信器1950の位置を符号化する2ビットの符号を規定する。
 
【0093】
  図19の例では、複合単位セル1910、1920、1930、及び1940の上半分は、共振周波数f
1に対応し、下半分は、共振周波数f
2に対応する。送信器1950は、層状構造物に沿って方向1955に相対運動しながら信号を層状構造物に送信する。周波数成分f
1及びf
2を有する信号は、層状構造物の上半分及び下半分の双方をカバーし、反射されて受信器に戻る。この図に示す複合単位セルは、
図17Bに示すようなルックアップテーブル1740に従って、左から右にそれぞれ符号00、01、10、及び11に対応する。
 
【0094】
  そのために、幾つかの実施形態では、受信器は、層状構造物から反射された第1の波形の振幅を測定して第1の測定値シーケンスを生成するとともに、層状構造物から反射された第2の波形の振幅を測定して第2の測定値シーケンスを生成し、プロセッサは、同じ複合単位セルから来る第1の波形及び第2の波形の対応する測定値を組み合わせて複数ビットの符号1960を生成する。この例では、この符号は、処理後に00011011であり、プロセッサは、この符号のビットに基づいて送信器の位置を求める。
 
【0095】
  図20Aは、2つの周波数成分を有する出力信号を有する送信器の図を示している。送信器121は、様々な種類の発振器125を用いて周波数f
1又はf
2を有する偏波波330又は340を生成することができる。例えば、送信器は、周期的な振動電子信号を生成する電子回路を有する電子発振器を用いることができる。例えば、電子発振器は、RC発振器回路、LC発振器回路、及び/又は水晶発振器回路を用いて、特定の偏波の振動波を生成することができる。そのような高周波数発振器の例は、1つの実施形態によって用いられる高電子移動度トランジスタ(HEMT)2010を用いたものである。ただし、他の実施形態は、異なる種類の高周波数発振器を用いる。
 
【0096】
  幾つかの実施態様では、発振器の周波数帯域幅に応じて、1つ以上の発振器125が用いられる。発振器の帯域幅が、周波数f
1及びf
2の双方をカバーするとき、1つの発振器を用いることができる。発振器の帯域幅が、f
1及びf
2の双方をカバーするのに十分でないとき、1つの実施形態は2つの発振器を用い、例えば、一方の発振器は、f
1を中心とする出力周波数を有し、他方の発振器は、f
2を中心とする出力周波数を有する。発振器2010からの信号は、2つの成分2011及び2012に分割することができる。
 
【0097】
  幾つかの実施形態は、帯域通過フィルター2020及び2030を用いて、発振器2010からの他の周波数成分をフィルタリング除去する。これらのフィルターの後、周波数成分f
12021及びf
22031を有する信号が生成される。送信器121は、任意選択で偏波フィルター2040を用いて、横波の偏波を実施することができる。
 
【0098】
  幾つかの実施態様では、共振周波数f
12021及びf
22031はテラヘルツ(THz)スペクトルにある。そのために、それらの実施形態では、発振器125は高周波数発振器である。
 
【0099】
  図20Bは、2つの周波数成分を用いる幾つかの実施形態による、層状構造物から反射された波形の振幅を測定する受信器のブロック図を示している。アンテナ123によって受信された反射信号は、2つの成分に分割され、送信器121によって送信された偏波信号の周波数を通過させる帯域通過フィルター1260及び1261を用いてフィルタリングされる。フィルターアナログ信号2065及び2066は、位置情報システム110に直接サブミットされるか、又は、任意選択でアナログ/デジタル変換器(ADC)2070及び2071によってデジタル表現2075及び2076に変換される。
 
【0100】
  幾つかの実施形態は、同様の概念を用いて、位置を符号化するマルチビットバーコードを設計することができるという認識に基づいている。例えば、2つの動作周波数f
1及びf
2と、4つの偏波回転角度とを利用することによって、3ビットバーコードを構成することが可能である。
 
【0101】
  図21Aは、1つの実施形態による、マルチビットバーコード用に設計されたルックアップテーブル2105を示している。この実施形態では、ルックアップテーブル2105は、複数の周波数f
1及びf
2と、複合セルを形成するセルの複数の方位とに基づいて、3ビットバーコード用に設計されている。より多くの周波数と、0度、30度、60度、及び90度の偏波回転角度等のより多くの方位とを用いて、より多くの情報をバーコード内に符号化することができる。
 
【0102】
  図21B及び
図21Cは、1つの実施形態による複数の周波数及び複数の方位に基づく3ビットバーコードの例を示している。この実施形態では、バーコードは、3つの異なる周波数f
12110、f
22120、及びf
32130において共振する3つの異なるバーコードに基づいている。送受信器は、周波数成分f
1、f
2、及びf
3を有する偏波信号を送信する。
図21Cは、偏波回転角度及び周波数の異なる組み合わせについて求められた例示的な3ビット符号を有するルックアップテーブル2140を示している。
 
【0103】
  図22は、1つの実施形態による層状構造物を設計する方法のブロック図を示している。本方法は、位置を符号化する所望の符号を受信し(2210)、この所望の符号を表す共振回路のパターンを設計する(2220)。例えば、所望の符号は、相対位置を符号化す周期的符号とすることもできるし、絶対位置を符号化するデ・ブラーンシーケンス等の絶対符号とすることもできる。本方法によって設計されたパターンは、所望の符号を表し、例えば、所望の符号を模倣する。
 
【0104】
  所望のパターン又は共振回路が判明すると、本方法は、単位セルの様々な実施態様を設計し(2230)、及び/又は、所望のパターンを可能にする金属構成要素の実施態様を設計する(2240)。これらの実施態様は、共振周波数、所望の分解能及び層状構造物の寸法等を考慮したものである。
 
【0105】
  図23は、幾つかの実施形態による、位置を符号化する異なる形状を有する金属構成要素の少数の例を示している。例えば、金属構成要素2310は、実施するのが簡単な方形パッチである。金属構成要素2320は、構成要素2310の方形形状を備え、方形パッチの2つの端部には、主として、隣接した金属構成要素との容量性結合を高めるために、2つのキャップが付加されている。金属構成要素2330及び2340はともに、コンパクトな構造サイズを用いて共振モードを生み出すように設計されている。
 
【0106】
  実効インダクタンスL及び実効キャパシタンスCを増加させるには、より複雑な構造が用いられる。そのような幾何学的設計柔軟性は、動作周波数、構造サイズ及び寸法に対して特定の要件があるときに役立つ。
 
【0107】
  図24Aは、幾つかの実施形態による位置エンコーダを用いてエレベータかご2410の位置を求めるエレベータシステムの概略図を示している。吸収体2430を形成する層状構造物は、ガイドレール2450に設置されている。送信器及び受信器2420を備える位置検出器は、移動するエレベータかご2410に設置されている。
 
【0108】
  図24Bは、幾つかの実施形態による位置復号化器101を用いて、鉄道線路2470上を方向2465に沿って移動する列車2460の位置を求める列車システムの概略図を示している。この実施形態では、位置検出器101は、列車2460上に設置されている一方、層状構造物130は、鉄道線路2470上に配置されている。
 
【0109】
  本説明は、例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲も、適用範囲も、構成も限定することを意図していない。そうではなく、例示的な実施形態の以下の説明は1つ以上の例示的な実施形態を実施することを可能にする説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に明記されているような開示された主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく要素の機能及び配置に行うことができる様々な変更が意図されている。
 
【0110】
  本説明では、実施形態の十分な理解を提供するために、具体的な詳細が与えられる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な詳細がなくても実施形態を実施することができることを理解することができる。例えば、開示された主題におけるシステム、プロセス、及び他の要素は、実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないように、ブロック図形式の構成要素として示される場合がある。それ以外の場合において、よく知られたプロセス、構造、及び技法は、実施形態を不明瞭にしないように不必要な詳細なしで示される場合がある。さらに、様々な図面における同様の参照符号及び名称は、同様の要素を示す。
 
【0111】
  また、個々の実施形態は、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、又はブロック図として描かれるプロセスとして説明される場合がある。フローチャートは、動作を逐次的なプロセスとして説明することができるが、これらの動作の多くは、並列又は同時に実行することができる。加えて、これらの動作の順序は、再配列することができる。プロセスは、その動作が完了したときに終了することができるが、論述されない又は図に含まれない追加のステップを有する場合がある。さらに、特に説明される任意のプロセスにおける全ての動作が全ての実施形態において行われ得るとは限らない。プロセスは、方法、関数、手順、サブルーチン、サブプログラム等に対応することができる。プロセスが関数に対応するとき、その関数の終了は、呼び出し側関数又はメイン関数へのその機能の復帰に対応することができる。
 
【0112】
  さらに、開示された主題の実施形態は、少なくとも一部は手動又は自動のいずれかで実施することができる。手動実施又は自動実施は、マシン、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又はそれらの任意の組み合わせを用いて実行することもできるし、少なくとも援助することができる。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア又はマイクロコードで実施されるとき、必要なタスクを実行するプログラムコード又はプログラムコードセグメントは、マシン可読媒体に記憶することができる。プロセッサ(複数の場合もある)が、それらの必要なタスクを実行することができる。
 
 
【手続補正書】
【提出日】2020年4月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  金属板と、前記金属板上に配置された誘電体層と、前記誘電体層上に配置されて共振回路のパターンを形成する複数の金属構成要素とを備える層状構造物と、
  偏波方向に沿って振動するように偏波された横波である共振周波数の波形を前記層状構造物に送信する送信器と、
  前記層状構造物から反射された前記波形の振幅を測定する受信器と、
  前記層状構造物によって形成される前記共振回路の前記パターンに基づいて前記送信器の位置を前記反射波形の振幅に関係付けるデータを記憶するメモリと、
  前記データに基づいて前記振幅の測定値から前記送信器の位置を求めるプロセッサと、
  前記送信器の位置をレンダリングする出力インターフェースと、
を備える、エンコーダ。
【請求項2】
  一群の金属構成要素が、前記位置を符号化する単位セルを形成し、前記層状構造物は複数の単位セルを備え、前記メモリに記憶された前記データは、前記単位セルの位置及び方位のうちの一方又は組み合わせによって規定される符号を含む、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
  前記単位セルの前記位置及び前記方位は、1ビットの前記符号を規定する、請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
  前記単位セルの前記位置及び前記方位は、2ビットの前記符号を規定する、請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項5】
  少なくとも幾つかの単位セルは、前記偏波に対する反射方位及び吸収方位を有し、さらに、前記反射方位と前記吸収方位との間の中間の方位を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項6】
  前記単位セルのそれぞれの方位に応じて、異なる符号を割り与える、請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
  前記単位セルを形成する前記金属構成要素の幾何学的パラメータ及び配置は、前記共振周波数の関数であり、前記単位セルの金属構成要素が、前記共振周波数によって定まるインダクタンスを有するインダクタを形成するとともに、前記単位セルの少なくとも2つの金属構成要素が、前記共振周波数によって定まるキャパシタンスを有するキャパシタを形成するために、互いに距離をとるようにして位置決めされるようになっている、請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項8】
  前記層状構造物は、複数の複合単位セルを備え、各複合単位セルは、第1の共振周波数用に選択された前記金属構成要素の第1の幾何学的パラメータ及び第1の配置を有する第1の単位セルと、第2の共振周波数用に選択された前記金属構成要素の第2の幾何学的パラメータ及び第2の配置を有する第2の単位セルとを備え、
  前記送信器によって送信された前記波形は、前記第1の共振周波数を有する第1の波形と、前記第2の共振周波数を有する第2の波形とを含み、
  前記受信器は、前記層状構造物から反射された前記第1の波形の振幅を測定して、第1の測定値シーケンスを生成するとともに、前記層状構造物から反射された前記第2の波形の振幅を測定して、第2の測定値シーケンスを生成し、
  前記プロセッサは、同じ複合単位セルから来る前記第1の波形及び前記第2の波形の対応する測定値を組み合わせて複数ビットの前記符号を生成し、前記符号の前記ビットに基づいて前記送信器の前記位置を求める、請求項7に記載のエンコーダ。
【国際調査報告】