特表2021-500922(P2021-500922A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェミニ・セラピューティクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2021-500922加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法
<>
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000077
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000078
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000079
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000080
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000081
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000082
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000083
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000084
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000085
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000086
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000087
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000088
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000089
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000090
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000091
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000092
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000093
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000094
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000095
  • 特表2021500922-加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法 図000096
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-500922(P2021-500922A)
(43)【公表日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】加齢黄斑変性を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20201211BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20201211BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20201211BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20201211BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20201211BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20201211BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20201211BHJP
【FI】
   C12N15/864 100Z
   C12N7/01
   A61K35/76
   A61K48/00
   A61K38/02
   A61P27/02
   C12N15/12ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】134
(21)【出願番号】特願2020-542710(P2020-542710)
(86)(22)【出願日】2018年10月19日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月16日
(86)【国際出願番号】US2018056709
(87)【国際公開番号】WO2019079718
(87)【国際公開日】20190425
(31)【優先権主張番号】62/574,814
(32)【優先日】2017年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.PLURONIC
4.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520137084
【氏名又は名称】ジェミニ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GEMINI THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・マクローリン
(72)【発明者】
【氏名】アダルシャ・コイララ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA16
4C087CA20
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
本発明は、眼疾患を治療、予防または抑制する組成物および方法を提供する。一側面において、本発明は、補体系遺伝子を含む組換えCFH FHL−1アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜3もしくは5のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも80%であるヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む、補体H因子(CFH)もしくはヒトH因子様1(FHL1)タンパク質またはその生物学的活性フラグメントをコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項2】
ヌクレオチド配列が、配列番号1〜3もしくは5のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも90%であるか、またはそのコドン最適化バリアントおよび/またはフラグメントである、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項3】
ヌクレオチド配列が、配列番号1〜3もしくは5のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも95%であるか、またはそのコドン最適化バリアントおよび/またはフラグメントである、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項4】
ヌクレオチド配列が、配列番号1〜3もしくは5のヌクレオチド配列であるか、またはそのコドン最適化バリアントおよび/またはフラグメントである、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項5】
CFHタンパク質、または少なくとも4つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項6】
CFHタンパク質、または少なくとも5つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項7】
CFHタンパク質、または少なくとも6つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項8】
CFHタンパク質、または少なくとも7つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項9】
CFHタンパク質、または少なくとも3つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項10】
CFHタンパク質、またはH402多型を含むその生物学的活性フラグメントをコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項11】
CFHタンパク質、またはV62多型を含むその生物学的活性フラグメントをコードする、請求項1〜4のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項12】
CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1〜11のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項13】
配列番号4のアミノ酸配列が、CFHタンパク質のC末端配列である、請求項12に記載のAAVベクター。
【請求項14】
CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントが、ブルッフ膜を透過して拡散することができる、請求項1〜13のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項15】
CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントが、C3bを結合することができる、請求項1〜14のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項16】
CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントが、C3bの分解を促進することができる、請求項1〜15のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項17】
1000ヌクレオチド未満の長さのプロモーターを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項18】
500ヌクレオチド未満の長さのプロモーターを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項19】
400ヌクレオチド未満の長さのプロモーターを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項20】
プロモーターが、配列番号6のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項21】
プロモーターが、配列番号8のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項22】
プロモーターが、配列番号12のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項23】
プロモーターが、配列番号14のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項24】
プロモーターが、配列番号16のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項25】
プロモーターが、配列番号18のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項26】
プロモーターが、配列番号20のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項27】
プロモーターが、配列番号31のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項28】
プロモーターが、配列番号32のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項29】
プロモーターが、さらなるウイルスイントロンを含む、請求項1〜28のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項30】
さらなるウイルスイントロンが、配列番号10のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む、請求項29に記載のAAVベクター。
【請求項31】
AAV2ベクターである、請求項1〜30のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項32】
CMVプロモーターを含む、請求項1〜31のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項33】
コザック配列を含む、請求項1〜32のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項34】
CFHをコードするベクター部分に続く1つまたはそれ以上のITR配列を含む、請求項1〜30のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項35】
ポリアデニル化配列を含む、請求項1〜34のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項36】
選択マーカーを含む、請求項1〜34のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項37】
選択マーカーが、抗生物質耐性遺伝子である、請求項36に記載のAAVベクター。
【請求項38】
抗生物質耐性遺伝子が、アンピシリン耐性遺伝子である請求項37に記載のAAVベクター。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれかに記載のAAVベクター、および薬学的に許容しうる担体を含む、組成物。
【請求項40】
第二補体経路の望ましくない作用に関連する障害を有する対象を処置する方法であって、請求項1〜38のいずれかに記載のベクター、または請求項39に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項41】
加齢黄斑変性(AMD)を有する対象を処置する方法であって、請求項1〜38のいずれかに記載のベクター、または請求項39に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項42】
ベクターまたは組成物が硝子体内投与される、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
対象が、プロテアーゼ、またはプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを投与されない、請求項40〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
対象が、フーリンプロテアーゼ、またはフーリンプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを投与されない、請求項40〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
対象がヒトである、請求項40〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
ヒトが40歳以上である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ヒトが50歳以上である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
ヒトが65歳以上である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
ベクターまたは組成物が局所投与される、請求項40〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
ベクターまたは組成物が全身投与される、請求項40〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
ベクターまたは組成物が、肝臓における強い発現に関与するプロモーターを含む、請求項40〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
プロモーターが、配列番号16、18または20のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも90%、95%または100%であるヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ベクターまたは組成物が、眼における強い発現に関与するプロモーターを含む、請求項40〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
プロモーターが、配列番号6または32のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも90%、95%または100%であるヌクレオチド配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
対象が、対象のCFI遺伝子において機能低下変異を有する、請求項40〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
対象が、G119R、L131R、V152M、G162D、R187Y、R187T、T203I、A240G、A258T、G287R、A300T、R317W、R339Q、V412MおよびP553Sからなる群から選択される1つまたはそれ以上のCFI変異を有する、請求項40〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
対象が、対象のCFH遺伝子における機能低下変異を有する、請求項40〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
対象が、R2T、L3V、R53C、R53H、S58A、G69E、D90G、R175Q、S193L、I216T、I221V、R303W、H402Y、Q408X、P503A、G650V、R1078SおよびR1210Cからなる群から選択される1つまたはそれ以上のCFH変異を有する、請求項40〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
対象が、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有する、請求項40〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
対象が、網膜疾患または合併症を患う、請求項40〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)におけるCFHまたはFHLの内因の発現と比較して、該標的細胞におけるCFHまたはFHLの、少なくとも20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%高い発現を誘導することができる、請求項1〜38のいずれかに記載のベクター、または請求項39に記載の組成物。
【請求項62】
該ベクターまたは組成物の標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)における発現が、該標的細胞におけるCFHまたはFHLの内因の活性レベルと比較して、該標的細胞におけるCFHまたはFHLの、少なくとも20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%高いレベルの活性を誘導することができる、請求項1〜38のいずれかに記載のベクター、または請求項39に記載の組成物。
【請求項63】
眼の標的細胞におけるCFH発現を誘導する、請求項1〜38、61もしくは62のいずれかに記載のベクターもしくは組成物、または請求項39に記載の組成物。
【請求項64】
網膜または黄斑の標的細胞におけるCFH発現を誘導する、請求項63に記載のベクターまたは組成物。
【請求項66】
網膜の標的細胞が、内境界膜、神経線維、神経節細胞層(GCL)、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、桿体および錐体、ならびに網膜色素上皮(RPE)からなる層の群から選択される、請求項63または64に記載のベクターまたは組成物。
【請求項67】
標的細胞が脈絡叢に存在する、請求項64に記載のベクターまたは組成物。
【請求項68】
標的細胞が黄斑に存在する、請求項64に記載のベクターまたは組成物。
【請求項69】
GCLおよび/またはRPEの細胞におけるCFH発現を誘導する、請求項1〜38または61〜68のいずれかに記載のベクターまたは組成物。
【請求項70】
ベクターまたは組成物が、網膜に、1×1010vg/眼〜1×1013vg/眼の範囲の用量で投与される、請求項40〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
ベクターまたは組成物が、網膜に、約1.4×1012vg/眼の用量で投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
プロモーターが、配列番号36のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む、請求項1〜16または9〜38のいずれかに記載のAAVベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年10月20日出願の米国仮出願第62/574814号の優先権の利益を主張する。先の出願の開示は、その全体が引用により本書の一部とされる。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性症(AMD)は、医学的状態であり、西洋社会における法定な失明の主因である。AMDは典型的には、高齢成人を冒し、視力に関与する網膜中心部の有色素領域である黄斑の変性および血管新生変化によって中心視力の低下をもたらす。AMDには、初期AMD;中間AMD;進行した非血管新生(「ドライ」型)AMD;および進行した血管新生(「ウェット」型)AMD、の4つの主要なサブタイプがある。典型的には、AMDは、限局性の網膜色素上皮(RPE)の高度色素沈着およびドルーゼン沈着物の蓄積によって判断される。ドルーゼン沈着物の大きさおよび数は、典型的には、AMDの重篤度と相関する。AMDは60歳を超える個体の8%までに起こり、AMD有病率は年齢とともに増加する。米国では2050年までにAMD症例がおよそ2200万に上ると見込まれ、全世界のAMD症例は2040年までにおよそ2億8800万に上ると予測されている。
【0003】
AMDの初期から中期へ、および/または中期から後期への進行を防止し、視力低下を防ぐための新たな処置法が必要である。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの態様において、本開示は、補体H因子(CFH)もしくはヒトH因子様1(FHL1)タンパク質またはその生物学的活性フラグメントをコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供し、ここで、該ベクターは、配列番号1〜3または5のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも80%であるヌクレオチド配列、またはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号1〜3または5のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも90%であるか、またはそのコドン最適化バリアントおよび/またはフラグメントである。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号1〜3または5のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも95%であるか、またはそのコドン最適化バリアントおよび/またはフラグメントである。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号1〜3または5の配列であるか、またはそのコドン最適化バリアントおよび/またはフラグメントである。いくつかの態様において、ベクターは、CFHタンパク質、または少なくとも4つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHタンパク質、または少なくとも5つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHタンパク質、または少なくとも6つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHタンパク質、または少なくとも7つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHタンパク質、または少なくとも3つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHタンパク質、またはH402多型を含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHタンパク質、またはV62多型を含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列番号4のアミノ酸配列は、CFHタンパク質のC末端配列である。いくつかの態様において、CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、ブルッフ膜を透過して拡散することができる。いくつかの態様において、CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、C3bを結合することができる。いくつかの態様において、CFHタンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、C3bの分解を促進することができる。いくつかの態様において、ベクターは、1000ヌクレオチド未満の長さのプロモーターを含む。いくつかの態様において、ベクターは、500ヌクレオチド未満の長さのプロモーターを含む。いくつかの態様において、ベクターは、400ヌクレオチド未満の長さのプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号6のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号8のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号12のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号14のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号16のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号18のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号20のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号31のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号32のヌクレオチド配列を有するプロモーターまたはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号6のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号8のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号12のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号14のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号16のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号18のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号20のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号31のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号32のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号32のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、95%、98%または99%であるヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはその生物学的活性フラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、さらなるウイルスイントロンを含む。いくつかの態様において、さらなるウイルスイントロンは、配列番号10のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む。いくつかの態様において、ベクターはAAV2ベクターである。いくつかの態様において、ベクターはCMVプロモーターを含む。いくつかの態様において、ベクターはコザック配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、CFHをコードするベクター部分に続く1つまたはそれ以上のITR配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、ポリアデニル化配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、選択マーカーを含む。いくつかの態様において、選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様において、抗生物質耐性遺伝子はアンピシリン耐性遺伝子である。
【0005】
いくつかの態様において、本開示は、任意の本開示のベクター、および薬学的に許容しうる担体を含む組成物を提供する。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、任意の本開示のベクター、または任意の本開示の組成物を投与するステップを含む、第二補体経路の望ましくない作用に関連する障害を有する対象を処置する方法を提供する。
【0007】
いくつかの態様において、本開示は、任意の本開示のベクター、または任意の本開示の組成物を投与するステップを含む、加齢黄斑変性(AMD)を有する対象を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、ベクターまたは組成物は硝子体内投与される。いくつかの態様において、対象は、プロテアーゼ、またはプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを投与されない。いくつかの態様において、対象は、フーリンプロテアーゼ、またはフーリンプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを投与されない。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、ヒトは、年齢が40歳以上である。いくつかの態様において、ヒトは、年齢が50歳以上である。いくつかの態様において、ヒトは、年齢が65歳以上である。いくつかの態様において、ベクターまたは組成物は、局所的に投与される。いくつかの態様において、ベクターまたは組成物は、全身的に投与される。いくつかの態様において、ベクターまたは組成物は、肝臓における強い発現に関与するプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号16、18または20のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも90%、95%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ベクターまたは組成物は、眼における強い発現に関与するプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号6または32のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも90%、95%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、対象は、対象のCFI遺伝子において機能低下変異を有する。いくつかの態様において、対象は、G119R、L131R、V152M、G162D、R187Y、R187T、T203I、A240G、A258T、G287R、A300T、R317W、R339Q、V412MおよびP553Sからなる群から選択される1つまたはそれ以上のCFI変異を有する。いくつかの態様において、対象は、対象のCFH遺伝子における機能低下変異を有する。いくつかの態様において、対象は、R2T、L3V、R53C、R53H、S58A、G69E、D90G、R175Q、S193L、I216T、I221V、R303W、H402Y、Q408X、P503A、G650V、R1078SおよびR1210Cからなる群から選択される1つまたはそれ以上のCFH変異を有する。いくつかの態様において、対象は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を有する。いくつかの態様において、対象は、網膜疾患または合併症を患う。いくつかの態様において、任意の本開示のベクター、または任意の本開示の組成物は、標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)におけるCFHまたはFHLの内因の発現と比較して、該標的細胞におけるCFHまたはFHLの、少なくとも20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%高い発現を誘導することができる。いくつかの態様において、任意の本開示のベクター、または任意の本開示の組成物の発現は、標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)におけるCFHまたはFHLの内因の活性レベルと比較して、該標的細胞におけるCFHまたはFHLの、少なくとも20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%高いレベルの活性を誘導することができる。いくつかの態様において、任意の本開示のベクター、または任意の本開示の組成物は、眼の標的細胞におけるCFH発現を誘導する。いくつかの態様において、任意の本開示のベクターまたは組成物は、網膜または黄斑の標的細胞におけるCFH発現を誘導する。いくつかの態様において、網膜の標的細胞は、下記からなる層の群から選択される:内境界膜、神経線維、神経節細胞層(GCL)、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、桿体および錐体、ならびに網膜色素上皮(RPE)。いくつかの態様において、標的細胞は脈絡叢に存在する。いくつかの態様において、標的細胞は黄斑に存在する。いくつかの態様において、任意の本開示のベクターまたは組成物は、GCLおよび/またはRPEの細胞においてCFH発現を誘導する。いくつかの態様において、ベクターまたは組成物は、網膜に、1×1010vg/眼〜1×1013vg/眼の範囲の用量で投与される。いくつかの態様において、ベクターまたは組成物は、網膜に、約1.4×1012vg/眼の用量で投与される。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号36のヌクレオチド配列を有するプロモーター、またはそのフラグメントを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「CRALBPプロモーター」は細胞レチンアルデヒド結合タンパク質プロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図1に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号7である。
図2図2は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「EF1aプロモーター」は伸長因子1αプロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図2に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号9である。
図3図3は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「EF1a.SV40i」は、シミアンウイルス40イントロンを含む伸長因子1αプロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「アンピシリンR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図3に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号11である。
図4図4は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「HSP70プロモーター」はヒートショックタンパク質70プロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図4に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号13である。
図5図5は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「sCBAプロモーター」はニワトリβアクチンプロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。このベクターはSV40iイントロンをも含んだ。図5に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号15である。
図6図6は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「AAT1」はα1アンチトリプシン1プロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図6に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号17である。
図7図7は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「ALB」はヒトアルブミンプロモーターに基づく合成プロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図7に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号19である。
図8図8は、CFH発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「PCK1」はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1プロモーターに対応し;「CFH」は補体H因子をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図8に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号21である。
図9図9は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「EF1a」は伸長因子1αプロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図9に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号22である。
図10図10は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「ALB」は、ヒトアルブミンプロモーターに基づく合成プロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図10に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号23である。
図11図11は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「AAT1」はα1アンチトリプシン1プロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図11に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号24である。
図12図12は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「EF1a.SV40i」は、シミアンウイルス40イントロンを含む伸長因子1αプロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図12に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号25である。
図13図13は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「CAG」は、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメント、ニワトリβアクチン遺伝子のプロモーター/第1エクソン/第1イントロン、およびウサギβ−グロブリン遺伝子のスプライスアクセプターを含む合成プロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図13に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号26である。
図14図14は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「CRALBP」は細胞レチンアルデヒド結合タンパク質プロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図14に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号27である。
図15図15は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「hRPE65」は網膜色素上皮65プロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図15に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号28である。
図16図16は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「HSP70」はヒートショックタンパク質70プロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図16に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号29である。
図17図17は、FHL−1発現用の完全なベクターゲノムコンストラクトのベクターマップを示す。「ITR」は末端逆位反復配列に対応し;「PCK1」はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1プロモーターに対応し;「FHL−1」はH因子様タンパク質1をコードする遺伝子に対応し;「ポリA」はポリアデニル化配列に対応し;「AmpR」はアンピシリン耐性カセットに対応する。図17に示されるベクターに対応するヌクレオチド配列は配列番号30である。
図18図18は、さまざまなCFHまたは対照プラスミドでトランスフェクトしたHEK細胞においてCFH(またはローディング対照GAPDH)のレベルを検出した実験のウエスタンブロットを示す。
図19図19は、図18のウエスタン分析によるCFHタンパク質レベルの、GAPDHタンパク質レベルに対するレベルを比較する棒グラフを示す。
図20図20は、さまざまなCFHまたは対照AAVベクターでトランスフェクトしたHEK細胞においてCFHまたはGFP(またはローディング対照GAPDH)のレベルを検出した実験のウエスタンブロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、眼疾患を治療、予防または抑制するための組成物および方法を提供する。一側面において、本開示は、補体系遺伝子(例えば、補体H因子(CFH)またはH因子様タンパク質1(FHL1)をコードする遺伝子であるが、それに限定されない)を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する。他の一側面において、本開示は、補体因子遺伝子を送達しその発現を駆動するために本開示のrAAVベクターを有効量で眼内(例えば硝子体内)に投与することにより、眼疾患を治療、予防または抑制する方法を提供する。
【0010】
本開示により提供されるウイルスベクターおよび方法を用いて、広範な眼疾患を治療または予防しうる。本開示のベクターおよび方法を用いて治療または予防しうる眼疾患は、緑内障、黄斑変性(例えば加齢黄斑変性)、糖尿病性網膜症、遺伝性の網膜変性、例えば網膜色素変性症、網膜剥離または損傷、および網膜症(例えば、遺伝性であるか、手術、外傷、基礎疾患、例えば重度の貧血、SLE、高血圧、血液疾患、全身的感染症もしくは頸動脈基礎疾患、毒性化合物または薬剤、または光によって誘発される網膜症)を包含するが、それに限定されない。
【0011】
一般的技術
本願において用いる科学用語および技術用語は、本書において別に定義しない限り、当業者に通常理解される意味を有する。本書に記載される薬理学、細胞および組織培養、分子生物学、細胞および癌生物学、神経生物学、神経化学、ウイルス学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学に関連して、およびその技術において用いられる命名法は全般に、当分野においてよく知られ一般に用いられるものである。矛盾のある場合、定義を含む本明細書の記載が優先する。
【0012】
本開示の実施には、異なる説明がなされない限り、当分野の技術の範囲内の従来の分子生物学(組換え技術を包含する)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の技術を用いうる。そのような技術は、例えば下記のような文献において詳細に説明されている:Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al., 1989) Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-1998) J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987); Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel et al., eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994); Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd. ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (2002); Harlow and Lane Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1998); Coligan et al., Short Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, NY (2003); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999)。
【0013】
酵素反応および精製技術は、当分野において一般に行われ、または本書に記載されるように、製造者の仕様書に従って行われる。本書に記載される分析化学、生化学、免疫学、分子生物学、合成有機化学、および医化学および薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにその実験手順および技術は、当分野においてよく知られ一般に用いられるものである。化学合成および化学分析のために標準的な技術が用いられる。
【0014】
本書および態様を通して、用語「含む」、または「含んでいる」といった変化形は、記載される整数または整数群を含むこと意味するが、他の整数または整数群の除外を意味するものではないと理解されうる。
【0015】
「含んでいる」という表現を用いて本書に態様が記載される場合、「からなる」および/または「から実質的になる」という表現を用いて表される対応する態様もまた、提供される。
【0016】
用語「〜を含む」は、「〜を含むがそれに限定されない」という意味で用いられる。「〜を含む」と、「〜を含むがそれに限定されない」とは、互換的に用いられる。
【0017】
用語「例えば」に続いて挙げられる例は、網羅的または限定的であることが意図されるものではない。
【0018】
文脈から必要でない限り、単数形の用語は複数のものを包含し、複数形の用語は単数のものを包含する。
【0019】
本書において、単数形の記載は、当該文法上の対象が1つであることまたは1つよりも多いこと(すなわち少なくとも1つであること)を示す。例えば、「エレメント」は、1つのエレメントまたは1つよりも多いエレメントを意味する。本書において、「約」と記載される値またはパラメータは、当該値またはパラメータそのものを用いる態様を包含する(また、説明する)。例えば、「約X」という記載は、「X」の記載を包含する。数値の範囲は、該範囲を限定する数値を含む。
【0020】
広い範囲の開示を説明する数値範囲およびパラメータは、およそのものであるが、実施例に記載される数値は、可能な限り正確に記載される。しかしながら、いずれの数値も本質的に、それぞれの試験法において見られる標準偏差の結果として必然的に、いくらかの誤差を含む。さらに、本書に開示される範囲はいずれも、それに含まれるいかなる任意のサブ範囲をも包含すると理解される。例えば、「1〜10」なる範囲は、最小値である1(この値を含む)と最大値である10(この値を含む)との間のいかなる任意のサブ範囲をも包含する、すなわち、1またはそれ以上の値を下限値とする(例えば1〜6.1)、および10またはそれ以下の値を上限値とする(例えば5.5〜10)サブ範囲のいずれをも包含すると解釈すべきである。
【0021】
本開示の側面または態様がマーカッシュ群または他の選択肢群を伴って記載される場合、挙げられる群の全体としてのものだけでなく、群の各構成員の個々のもの、および記載される群の可能なあらゆるサブ群、さらには記載される群において1つまたはそれ以上の構成員を欠く群も、本開示に包含される。本開示は、具体的な開示における1つまたはそれ以上の任意の群構成員の明示的除外をも意図する。
【0022】
方法および材料の例が本書に記載されるが、本開示の実施または試験において、本書に記載されるものと同様であるかまたは等価である方法および材料を使用することもできる。そのような材料、方法および例は、単に説明のためのものであって、限定を意図するものではない。
【0023】
定義
下記用語は、異なる説明がなされない限り、下記の意味を有するものと理解される:
【0024】
本書において「残基」とは、タンパク質における位置、およびその関連アミノ酸の同定に関する。
【0025】
当分野において知られるように、本書において互換的に用いられる「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの鎖をさし、DNAおよびRNAを包含する。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドまたは塩基、および/またはそのアナログ、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖に組み込まれうる任意の基質でありうる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびそのアナログを包含しうる。ヌクレオチド構造に修飾がなされる場合、修飾は、鎖の形成の前または後になされうる。ヌクレオチドの配列中に、非ヌクレオチド成分が介在しうる。ポリヌクレオチドは、伸長反応後にさらに、例えば標識成分の結合によって、修飾されうる。他の種類の修飾としては、例えば「キャップ」、1つまたはそれ以上の天然ヌクレオチドのアナログによる置換、ヌクレオチド内修飾、例えば非荷電架橋(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)によるもの、および荷電架橋(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)によるもの、ペンダント部分(例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジン等))を含むもの、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレン等)によるもの、キレーター(例えば金属、放射性金属、硼素、酸化性金属等)を含むもの、アルキレーターを含むもの、修飾された架橋(αアノマー核酸等)によるもの、ならびに修飾されていない形態のポリヌクレオチドが挙げられる。さらに、糖の中に通常存在する任意のヒドロキシル基が、例えばホスホネート基、ホスフェート基で置換され、標準的な保護基で保護され、さらなるヌクレオチドへのさらなる結合に備えるよう活性化され、または固体支持体に結合されうる。5’または3’末端OHが、リン酸化され、またはアミンもしくは炭素原子数1〜20の有機キャッピング基部分で置換されうる。他のヒドロキシルも、標準的な保護基へと誘導体化されうる。ポリヌクレオチドは、当分野において一般に知られる類似する形態のリボースまたはデオキシリボース糖、例えば2’−O−メチル−、2’−O−アリル−、2’−フルオロ−、または2’−アジド−リボース、炭素環式糖アナログ、α−またはβ−アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログおよび非塩基ヌクレオチドアナログ、例えばメチルリボシドを含んでもよい。1つまたはそれ以上のホスホジエステル架橋が、他の架橋基で置換されうる。他の架橋基としては、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH(「ホルムアセタール」)[ここで、RまたはR’は、それぞれ独立に、H、またはエーテル(−O−)架橋を含んでもよい置換または不置換アルキル(1〜20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルである。]で置き換えられたものが挙げられるが、それに限定されない。1つのポリヌクレオチドにおけるすべての架橋が同一である必要はない。上記説明は、RNAおよびDNAを含む本書に記載されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0026】
本書において用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられ、任意の長さのアミノ酸の鎖をさす。鎖は直鎖または分枝鎖であってよく、鎖は、修飾されたアミノ酸を含んでよく、および/またはアミノ酸でないものが介在してよい。該用語は、天然に、または介入により、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化もしくは他の任意の操作もしくは改変(例えば標識成分との結合)により修飾されているアミノ酸鎖をも包含する。該定義には、例えば、アミノ酸の1つまたはそれ以上のアナログ(例えば非天然のアミノ酸等を包含する)を含むポリペプチド、および当分野において知られる他の改変も包含される。ポリペプチドは一本鎖または鎖の組み合わせとして生じうることが理解される。
【0027】
「相同」およびそのすべての文法的および記述上の変化形は、「共通の進化論的起源」を持つ2つのタンパク質、例えば、同じ生物種の複数の上科に由来するタンパク質、また、異なる生物種に由来する相同のタンパク質の間の関係についていう。そのようなタンパク質(およびそれをコードする核酸)は、同一性パーセントにおけるかまたは特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在による配列類似性に反映される、配列相同性を有する。
【0028】
しかしながら、一般的使用において、および本願において、用語「相同」は、例えば「高度に」といった副詞で修飾されるとき、配列類似性をさし得、共通の進化論的起源に関係してもしなくてもよい。
【0029】
用語「配列類似性」およびそのすべての文法的変化形は、共通の進化論的起源を有しても有しなくてもよい核酸またはアミノ酸配列間の同一性または対応の程度をさす。
【0030】
参照ポリペプチド(または核酸)配列に対する「配列同一性パーセント(%)」または「〜との同一性パーセント(%)」は、参照配列を候補配列と、配列同一性パーセントが最大となるようにアラインし、必要に応じてギャップを導入し、保存的置換を配列同一性の一部として考慮しないときの、参照ポリペプチド(核酸)配列におけるアミノ酸残基(または核酸)と同一である候補配列におけるアミノ酸残基(または核酸)のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントの決定を目的とするアラインメントは、当分野における技術の範囲内のさまざまな方法で行うことができ、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアといった公に利用可能なコンピューターソフトウェアを用いて行うことができる。当業者は、比較する配列の全長にわたり最高のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを包含する、配列をアラインするための適当なパラメータを決定することができる。
【0031】
本書において、「宿主細胞」は、ポリヌクレオチドインサートの組み込みのためのベクターのレシピエントでありうる、またはレシピエントであった、個々の細胞または細胞培養物を包含する。用語「宿主細胞」は、rAAVがプラスミドから作成されるパッケージング細胞株をさしうる。あるいは、用語「宿主細胞」は、導入遺伝子の発現を目的とした標的細胞をさしうる。
【0032】
本書において「ベクター」とは、インビトロまたはインビボで宿主細胞に送達されるべき核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスをさす。「組換えウイルスベクター」とは、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス由来ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターをさす。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸には、少なくとも1つの末端逆位反復配列(ITR)が続く。いくつかの態様において、組換え核酸は2つのITRに挟まれる。
【0033】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」とは、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV由来ではない核酸配列)に少なくとも1つのAAV末端逆位反復配列(ITR)が続くものを含む、アデノ随伴ウイルスに基づくポリヌクレオチドベクターをさす。そのようなrAAVベクターは、適当なヘルパーウイルスに感染(または適当なヘルパー機能を発現)しておりAAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在するとき、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージされうる。rAAVベクターがより大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体に、またはクローニングもしくはトランスフェクション用のプラスミドのような別のベクターに)組み込まれるとき、該rAAVベクターを、AAVパッケージング機能および適当なヘルパー機能の存在下に複製およびカプシド封入により「レスキュー」されうる「プロ-ベクター」と称しうる。rAAVベクターは、プラスミド、線状人工染色体、脂質と複合体化されたもの、リポソーム封入されたもの、およびウイルス粒子(例えばAAV粒子)にカプシド封入されたものを包含するがそれに限定されない数多くの形態のうちの任意の形態でありうる。rAAVベクターは、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を形成するよう、AAVウイルスカプシドにパッケージされうる。
【0034】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質と、カプシド封入されたrAAVベクターゲノムとからなるウイルス粒子をさす。
【0035】
用語「導入遺伝子」とは、細胞に導入され、適当な条件下にRNAに転写ならびに場合により翻訳および/または発現されることができるポリヌクレオチドをさす。いくつかの側面において、導入遺伝子は、それが導入された細胞に所望の性質を付与するか、または所望の治療または診断アウトカムを導く。他の一側面において、導入遺伝子は、RNA干渉を仲介する分子、例えばmiRNA、siRNAまたはshRNAに転写されうる。
【0036】
本書において用語「ベクターゲノム(vg)」とは、ベクター、例えばウイルスベクターのポリヌクレオチド配列のセットを構成する1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドをさしうる。ベクターゲノムはウイルス粒子にカプシド封入されうる。特定のウイルスベクターにより、ベクターゲノムは一本鎖DNA、二本鎖DNA、または一本鎖RNAもしくは二本鎖RNAを含みうる。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクターに関連する内因の配列、および/または特定のウイルスベクターに組換え技術により挿入された任意の異種配列を含みうる。例えば、組換えAAVベクターゲノムは、少なくとも1つのITR配列に続いて、プロモーター、スタッファー、関心の配列(例えば、RNAi)およびポリアデニル化配列を含みうる。完全なベクターゲノムは、ベクターのポリヌクレオチド配列の完全なセットを含みうる。いくつかの態様において、ウイルスベクターの核酸力価は、vg/mLで測定されうる。この力価の測定に適する方法は、当分野において知られている(例えば、定量的PCR)。
【0037】
「末端逆位反復」または「ITR」配列とは、当分野で知られる用語で、逆向きのウイルスゲノムの末端に見られる比較的短い配列をさす。
【0038】
「AAV末端逆位反復(ITR)」配列とは、当分野で知られる用語で、天然の一本鎖AAVゲノムの両末端に存在するおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、2つの向きのいずれかで存在して、異なるAAVゲノム間、および1つのAAVゲノムの両末端間の異質性をもたらしうる。最も外側の125ヌクレオチドはまた、いくつかのより短い自己相補的領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と称される)を含み、当該ITR部分内での鎖内塩基対形成を可能にする。
【0039】
AAVのための「ヘルパーウイルス」とは、AAV(これは不完全なパルボウイルスである)が宿主細胞によって複製されパッケージされるのを可能にするウイルスをさす。当分野において、そのようなヘルパーウイルスが数多く知られている。
【0040】
本書において「発現制御配列」とは、核酸の翻訳を制御する核酸配列を意味する。発現制御配列は、プロモーター、例えば構成的プロモーター、またはエンハンサーでありうる。発現制御配列は、転写されるべき核酸配列に作動可能に連結される。
【0041】
本書において「単離された分子」(ここで、分子は、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの断片である)とは、その由来または誘導元によって、(1)天然の状態ではそれに伴う1つまたはそれ以上の天然付随成分が付随しないか、(2)同じ種に由来する1つまたはそれ以上の他の分子を実質的に伴わないか、(3)異なる種に由来する細胞により発現されるか、または(4)天然に生じない、分子である。
【0042】
本書において「精製する」およびその文法的変化形は、ポリペプチドおよび1つまたはそれ以上の不純物を含む混合物からの、少なくとも1つの不純物の完全または部分的な除去をさし、それによって該ポリペプチドの組成物中の純度レベルは改善される(すなわち、組成物中の不純物の量(ppm)が低下されることによる)。
【0043】
本書において「実質的に純粋」とは、材料が、純度(すなわち不純物除去のc程度)が少なくとも50%であること、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%であることをさす。
【0044】
用語「患者」、「対象」または「個体」は、本書において互換的に用いられ、ヒトまたはヒト以外の動物をさす。該用語は、哺乳動物、例えばヒト、非ヒト霊長類、実験用動物、家畜(ウシ、ブタ、ラクダ等を包含する)、コンパニオン動物(例えばイヌ、ネコ、他の飼育動物等)、および齧歯動物(例えばマウスおよびラット)を包含する。いくつかの態様において、対象は、年齢が少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95歳のヒトである。
【0045】
一態様において、対象は、眼疾患を有するか、それを発症するリスクを有する。眼疾患は、網膜色素変性症、錐体桿体ジストロフィー、レーバー先天性黒内障、アッシャー症候群、バルデー・ビードル症候群、ベスト病、網膜分離症、シュタルガルト病(常染色体優性または常染色体劣性)、未処置の網膜剥離、パターン型ジストロフィー、錐体桿体ジストロフィー、色覚異常、眼白皮症、S錐体増強症候群、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、鎌状赤血球網膜症、先天停在性夜盲、緑内障、または網膜静脈閉塞を包含するが、それに限定されない。他の一態様において、対象は、緑内障、レーバー遺伝性視神経症、リソソーム蓄積症、またはペルオキシソーム症を有するか、またはそれを発症するリスクを有する。他の一態様において、対象は光遺伝学的治療を必要としている。他の一態様において、対象は、眼疾患の臨床徴候を示している。
【0046】
いくつかの態様において、対象は、腎疾患または合併症を有するか、またはそれを発症するリスクを有する。いくつかの態様において、腎疾患または合併症は、AMDまたはaHUSに関連する。
【0047】
いくつかの態様において、対象は、AMDまたはaHUSを有するか、またはそれを発症するリスクを有する。
【0048】
眼疾患の臨床徴候は、周辺視力の低下、中心(読書)視力の低下、夜間視力の低下、色知覚の低下、視力の低下、光受容器機能の低下、および色素変化を包含するが、それに限定されない。一態様において、対象は、外顆粒層(ONL)の変性を示す。他の一態様において、対象は、眼疾患を有すると診断されている。他の一態様において、対象は、眼疾患の臨床徴候をまだ示していない。
【0049】
本書において、用語「予防する」および「予防」とは、処置(例えば予防または治療剤)の投与の結果としての、対象における疾患または状態(例えば眼疾患)の、再発もしくは発症の防止または1つもしくはそれ以上の症状の軽減をさす。例えば、感染に対する対象への処置投与に関して、「予防する」および「予防」とは、処置(例えば予防または治療剤)の投与または組み合わせ処置(例えば予防または治療剤の組み合わせ)の投与の結果としての、対象における疾患または状態(例えば眼疾患)の、発症または発生の防止または抑制、あるいは疾患または状態(例えば眼疾患)の1つまたはそれ以上の症状の再発、発症もしくは発生の防止をさす。
【0050】
状態または患者を「処置する」とは、有益なまたは望ましい結果、例えば臨床的結果を得るために、手段を講じることをさす。疾患または状態(例えば眼疾患)に関して、処置とは、1つまたはそれ以上の処置(1つまたはそれ以上の予防または治療剤の投与を包含するが、それに限定されない)の投与の結果としての、感染(例えば眼疾患またはそれに関連する症状)の進行、重篤度および/または期間の低減または改善、あるいは1つまたはそれ以上の症状の改善をさす。
【0051】
物質、化合物または薬剤の対象への「投与」は、当業者に知られるさまざまな方法の1つを用いて行うことができる。例えば、化合物または薬剤を硝子体内または網膜下に投与することができる。いくつかの特定の態様において、化合物または薬剤は硝子体内投与される。いくつかの態様において、投与は局所的でありうる。他のいくつかの態様において、投与は全身的でありうる。投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1つまたはそれ以上の長期間にわたって行われうる。いくつかの側面において、投与は、自己投与を包含する直接の投与と、薬剤処方行為を包含する間接の投与との両方を包含する。例えば、本書において、患者に薬剤の自己投与または他者による投与を指示する、および/または患者に薬剤処方箋を発行する医師は、患者に薬剤を投与するものである。
【0052】
本書において、用語「眼細胞」とは、眼の、または眼の機能に関与する、任意の細胞をさす。この用語は、任意の1つまたはそれ以上の視細胞、例えば桿体、錐体および光感受性神経節細胞、網膜色素上皮(RPE)細胞、グリア細胞、ミュラー細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞をさしうる。一態様において、眼細胞は双極細胞である。他の一態様において、眼細胞は水平細胞である。他の一態様において、眼細胞は神経節細胞である。いくつかの特定の態様において、細胞はRPE細胞である。
【0053】
本書に記載される各態様は、個別に、または本書に記載される任意の他の態様と組み合わせて用いられる。
【0054】
rAAVベクターの構成
本開示は、補体系遺伝子(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)、そのスプライスバリアント(例えばFHL1)またはフラグメントを、補体系遺伝子、そのスプライスバリアントまたはフラグメントの眼における発現を調節する適当なプロモーターの制御下に含む、組換えAAV(rAAV)ベクターを提供する。本開示はさらに、補体系遺伝子、そのスプライスバリアントまたはフラグメント(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)を適当なプロモーターの制御下に含むrAAVベクターを含む処置用組成物を提供する。所望の補体系遺伝子を眼に送達するため、およびその発現を調節するために、さまざまなrAAVベクターが使用されうる。ヒトおよび非ヒト霊長類に由来する、30を超える天然のAAV血清型が知られている。AAVカプシドの天然のバリアントが多く存在し、本開示のrAAVベクターは、眼の細胞に特に適当な性質を有するAAVに基づいてデザインされうる。いくつかの態様において、補体系遺伝子はスプライスバリアント(例えばCFHのトランケートされたスプライスバリアントであるFHL1)である
【0055】
一般に、rAAVベクターは、5’アデノ随伴ウイルス末端逆位反復配列、補体系ポリペプチド(例えばCFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)をコードする導入遺伝子もしくは関心の遺伝子またはその生物学的活性フラグメントがその標的細胞における発現を調節する配列に作動可能に連結されたもの、および3’アデノ随伴ウイルス末端逆位反復配列、の並びからなる。さらに、rAAVベクターは好ましくは、ポリアデニル化配列を有しうる。一般に、rAAVベクターは、複製、パッケージング、および細胞染色体への効率的一体化を可能とするために、導入遺伝子または関心の遺伝子の各末端にAAV ITRの1つのコピーを有するべきである。本開示の好ましい態様において、補体系ポリペプチド(例えばCFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子配列は、約2〜5kbの長さでありうる(あるいは、導入遺伝子は、2つのITRの間の核酸配列の全体のサイズが2〜5kbとなるように、「スタッファー」または「フィラー」配列をさらに含みうる)。あるいは、補体系ポリペプチド(例えばCFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子配列は、同じ異種配列の繰り返し(例えば、リボソームリードスルー終止コドンまたは内部リボソーム進入部位もしくは「IRES」で隔てられた、ある補体系遺伝子の核酸2分子)、または複数の異なる異種配列(例えば、リボソームリードスルー終止コドンまたはIRESで隔てられた、FHL1といった異なる補体系のメンバー)からなりうる。
【0056】
本開示の組換えAAVベクターは、さまざまなアデノ随伴ウイルスに由来しうる。例えば、任意のAAV血清型由来のITRは、構造ならびに複製、インテグレーション、切り出しおよび転写メカニズムに関する機能が同様であると考えられる。AAV血清型の例は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびAAV12を包含する。いくつかの態様において、rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5またはAAV8に由来する。そのような血清型は、視細胞または網膜色素上皮を標的とすることが知られている。いくつかの態様において、rAAVベクターは、AAV2血清型に由来する。いくつかの態様において、AAV血清型は、AAVrh8、AAVrh8RまたはAAVrh10を包含する。rAAVベクターはまた、AAV1〜AAV12血清型から選択される2つまたはそれ以上の血清型のキメラでありうると理解される。ある1つの血清型の組換えゲノムを別のAAV血清型由来のカプシドにパッケージすることによって、ベクターの指向性は変えられうる。いくつかの態様において、rAAVウイルスのITRはAAV1〜12の任意の1つのITRに基づき得、AAV1〜12、AAV−DJ、AAV−DJ8、AAV−DJ9または他の改変血清型の任意の1つから選択されるAAVカプシドと組み合わせられうる。いくつかの態様において、任意のAAVカプシド血清型を、本開示のベクターと共に使用しうる。AAV血清型の例は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV−DJ、AAV−DJ8、AAV−DJ9、AAVrh8、AAVrh8RまたはAAVrh10を包含する。いくつかの態様において、AAVカプシド血清型はAAV2である。
【0057】
ベクターを構成するために好ましいAAVフラグメントは、vp1、vp2、vp3および超可変領域を包含するcapタンパク質、rep78、rep68、rep52およびrep40を包含するrepタンパク質、ならびにこれらタンパク質をコードする配列を包含しうる。これらフラグメントは、さまざまなベクター系および宿主細胞において容易に利用されうる。そのようなフラグメントは、単独で、他のAAV血清型配列もしくはフラグメントと組み合わせて、または他のAAVもしくは非AAVウイルス配列由来の配列と組み合わせて用いられうる。本書において、人工AAV血清型は、天然に生じないカプシドタンパク質を有するAAVを包含するが、それに限定されない。そのような人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質のフラグメント)を、異なる選択されたAAV血清型から、同じAAV血清型の連続していない部分から、AAV以外のウイルスから、またはウイルス以外から得られうる異種配列と組み合わせて使用して、任意の適当な方法で作成されうる。人工AAV血清型は、シュードタイピングされたAAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドでありうるが、それに限定されない。あるAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質で置換された、シュードタイピングされたベクターは、本開示において有用である。いくつかの態様において、AAVはAAV2/5である。他の一態様において、AAVはAAV2/8である。AAVベクターのシュードタイピングの際、必須のrepタンパク質のそれぞれをコードする配列は、異なるAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8)に由来しる。例えば、rep78/68配列はAAV2に、rep52/40配列はAAV8に由来しうる。
【0058】
一態様において、本開示のベクターは少なくとも、選択されたAAV血清型カプシド、例えばAAV2カプシド、またはそのフラグメントをコードする配列を含む。他の一態様において、本開示のベクターは少なくとも、選択されたAAV血清型repタンパク質、例えばAAV2repタンパク質、またはそのフラグメントをコードする配列を含む。そのようなベクターは任意に、AAVのcapおよびrepタンパク質の両方を含みうる。AAVのcapおよびrepの両方が提供されたベクターにおいて、該AAV repおよびAAV cap配列の両方が、ある1つの血清型に由来し得、例えばいずれもAAV2由来でありうる。いくつかの態様において、ベクターは、cap配列が由来するのとは異なるAAV血清型に由来するrep配列を含みうる。いくつかの態様において、repおよびcap配列は、別個のソース(例えば別個のベクター、または宿主細胞とベクターと)から発現される。いくつかの態様において、rep配列は異なるAAV血清型のcap配列にインフレームで融合されて、キメラAAVベクター、例えば、引用により本書に組み込まれる米国特許第7282199号に記載されるAAV2/8が形成される。AAV血清型の例は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV−DJ、AAV−DJ8、AAV−DJ9、AAVrh8、AAVrh8RまたはAAVrh10を包含する。いくつかの態様において、capはAAV2に由来する。
【0059】
いくつかの態様において、本開示の任意のベクターは、スペーサー、すなわちプロモーターとrep遺伝子ATG開始部位の間に挿入されたDNA配列を含む。いくつかの態様において、スペーサーはランダムなヌクレオチド配列でありうるか、あるいはスペーサーは遺伝子産物、例えばマーカー遺伝子をコードしうる。いくつかの態様において、スペーサーは、開始/終止およびポリA部位を典型的には含む、遺伝子を含みうる。いくつかの態様において、スペーサーは、原核生物もしくは真核生物由来のノンコーディングDNA配列、反復ノンコーディング配列、転写制御を伴わないコーディング配列、または転写制御を伴うコーディング配列でありうる。いくつかの態様において、スペーサーは、ファージラダー配列または酵母ラダー配列である。いくつかの態様において、スペーサーは、rep52、rep40およびcap遺伝子産物は正常レベルで発現させるがrep78およびrep68遺伝子産物の発現は低下させるのに十分な大きさのものである。したがって、いくつかの態様において、スペーサーの長さは、約10bp〜約10.0kbpの範囲、好ましくは約100bp〜約8.0kbpの範囲でありうる。いくつかの態様において、スペーサーは、長さが2kbp未満である。
【0060】
いくつかの態様において、カプシドは、療法の改善のために改変される。カプシドは、従来の分子生物学の技術を用いて改変されうる。いくつかの態様において、カプシドは、免疫原性を最小限にするため、安定性および粒子寿命を改善するため、効果的な分解のため、および/または補体系ポリペプチド(例えばCFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)もしくはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子の核への正確な送達のために改変されうる。いくつかの態様において、改変または変異は、カプシドタンパク質におけるアミノ酸の欠失、挿入、置換またはそれらの任意の組み合わせである。改変されたポリペプチドは、1、2、3、4、5、10まで、またはそれ以上のアミノ酸置換および/または欠失および/または挿入を含みうる。「欠失」は、個々のアミノ酸の欠失、小さいアミノ酸群、例えば2、3、4もしくは5アミノ酸の欠失、またはより大きなアミノ酸領域の欠失、例えば特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特徴の欠失を包含しうる。「挿入」は、個々のアミノ酸の挿入、小さいアミノ酸群、例えば2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、またはより大きなアミノ酸領域の挿入、例えば特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特徴の挿入を包含しうる。「置換」は、野生型アミノ酸の、他のアミノ酸(例えば非野生型アミノ酸)による置換を包含する。いくつかの態様において、他の(例えば非野生型の)、または挿入されるアミノ酸は、Ala(A)、His(H)、Lys(K)、Phe(F)、Met(M)、Thr(T)、Gln(Q)、Asp(D)またはGlu(E)である。いくつかの態様において、他の(例えば非野生型の)、または挿入されるアミノ酸は、Aである。いくつかの態様において、他の(例えば非野生型の)アミノ酸は、Arg(R)、Asn(N)、Cys(C)、Gly(G)、Ile(I)、Leu(L)、Pro(P)、Ser(S)、Trp(W)、Tyr(Y)またはVal(V)である。通常の、または天然のアミノ酸は、共通する側鎖の性質に基づいて下記の基本群に分類される:(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、He;(2)極性非荷電:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性(負に荷電):Asp、Glu;(4)塩基性(正に荷電):Lys、Arg;(5)鎖の配向性に影響を与える残基:Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。通常のアミノ酸はLまたはD立体化学を含む。いくつかの態様において、前記他の(例えば非野生型の)アミノ酸は、異なる群のアミノ酸である(例えば非極性アミノ酸が芳香族アミノ酸で置き換えられる。)。ポリペプチドの生物学的性質の実質的改変は、(a)置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えばβシートもしくは螺旋構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩、の維持に対する効果において顕著に異なる置換を選択することによって達成される。天然の残基は、共通する側鎖の性質に基づいて分類される:(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、He;(2)極性非荷電:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性(負に荷電):Asp、Glu;(4)塩基性(正に荷電):Lys、Arg;(5)鎖の配向性に影響を与える残基:Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。いくつかの態様において、前記他の(例えば非野生型の)アミノ酸は、異なる群のアミノ酸である(例えば、親水性アミノ酸が疎水性アミノ酸で置き換えられ、中性アミノ酸が荷電アミノ酸で置き換えられ、塩基性アミノ酸が酸性アミノ酸で置き換えられる、等)。いくつかの態様において、前記他の(例えば非野生型の)アミノ酸は、同じ群のアミノ酸(例えば、他の塩基性アミノ酸、他の酸性アミノ酸、他の中性アミノ酸、他の荷電アミノ酸、他の親水性アミノ酸、他の疎水性アミノ酸、他の極性アミノ酸、他の芳香族アミノ酸または他の脂肪族アミノ酸)である。いくつかの態様において、前記他の(例えば非野生型の)アミノ酸は、通常のものではないアミノ酸である。通常のものではないアミノ酸は、非天然アミノ酸である。通常のものではないアミノ酸の例は、アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、アミノ酪酸、ピぺリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノイソ酪酸、アミノピメル酸、シトルリン、ジアミノ酪酸、デスモシン、ジアミノピメル酸、ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、および他の同様のアミノ酸およびアミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン)を包含するが、それに限定されない。いくつかの態様において、VP1、VP2およびVP3の1つまたはそれ以上に、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を導入する。一側面において、改変されたカプシドタンパク質は、野生型のポリペプチドと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の保存的または非保存的置換を含む。他の一側面において、本開示の改変カプシドポリペプチドは、そのような改変が保存的および非保存的の両方の置換、欠失および/または付加を含みうる改変配列を含み、典型的には、対応する野生型のカプシドタンパク質との配列同一性が少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%であるペプチドを含む。
【0061】
いくつかの態様において、組換えAAVベクターのrep配列、cap配列、および本開示のrAAVの生産のために必要なヘルパー機能は、パッケージ宿主細胞に、任意の適当な遺伝子エレメント(ベクター)を用いて送達されうる。いくつかの態様において、3つのカプシドタンパク質(例えばVP1、VP2およびVP3)すべてをコードする単一の核酸が、パッケージング宿主細胞に単一のベクターにおいて送達される。いくつかの態様において、カプシドタンパク質をコードする複数の核酸が、パッケージング宿主細胞に2つのベクターによって送達され、ここで、第1のベクターは2つのカプシドタンパク質(例えばVP1およびVP2)をコードする第1の核酸を含み、第2のベクターは1つのカプシドタンパク質(例えばVP3)をコードする第2の核酸を含む。いくつかの態様において、それぞれ異なるカプシドタンパク質をコードする核酸を含む3つのベクターが、パッケージング宿主細胞に送達される。選択された遺伝子エレメントは、本書に記載されるものを包含する任意の適当な方法で送達されうる。本開示の任意の態様を構成するために用いられる方法は、核酸操作における技術を有する者に知られており、遺伝子工学、組換えおよび合成技術を包含する。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Yを参照されたい。同様に、rAAVビリオンを作製する方法が知られており、適当な方法の選択は本開示を限定するものではない。例えば、K. Fisher et al, J. Virol., 70:520-532 (1993) および米国特許第5478745号を参照されたい。
【0062】
いくつかの態様において、組換えAAVは、トリプルトランスフェクション法(米国特許第6001650号に詳細に記載される)を用いて作製されうる。典型的には、組換えAAVは、宿主細胞に、AAV粒子にパッケージすべき組換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクター、アクセサリー機能ベクターを導入することによって作製される。AAVヘルパー機能ベクターは、プロダクティブAAV複製およびカプシド封入のためにトランスに機能する「AAVヘルパー機能」配列(例えば、repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、検出可能な野生型AAVビリオン(例えば、機能的repおよびcap遺伝子を含むAAVビリオン)の生成を伴わない効率的なAAVベクター生産を支援する。いくつかの態様において、本開示において使用に適するベクターは、引用により本書の一部とされる米国特許第6001650号に記載されるpHLP19、および引用により本書の一部とされる米国特許第6156303号に記載されるpRep6cap6ベクターでありうる。アクセサリー機能ベクターは、AAVが複製のために依存する非AAV由来ウイルスおよび/または細胞機能(例えば「アクセサリー機能」)のヌクレオチド配列をコードする。アクセサリー機能は、AAV複製に必要な機能を包含し、これは、AAV遺伝子転写、ステージ特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物合成、およびAAVカプシド形成の活性化に関与するものを包含するが、それに限定されない。ウイルスに基づくアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)、およびワクシニアウイルスといった任意の既知のヘルパーウイルスに由来しうる。
【0063】
細胞には、AAVにヘルパー機能を提供するベクター(例えばヘルパーベクター)も導入しうる。ヘルパー機能を提供するベクターは、例えばE1a、E1b、E2a、E4ORF6を包含する、アデノウイルス機能を提供しうる。これら機能を提供するアデノウイルス遺伝子の配列は、任意の既知のアデノウイルス血清型、例えば血清型2、3、4、7、12および40、さらに当分野において知られる現在特定されているヒトの型に由来しうる。したがって、いくつかの態様において、本方法は、細胞に、AAV複製、AAV遺伝子転写および/またはAAVパッケージングに必要な1つまたはそれ以上の遺伝子を発現するベクターを導入することを含む。
【0064】
本開示のrAAVベクターは、AAVカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸配列;機能的rep遺伝子またはそのフラグメント;AAV末端逆位反復配列(ITR)および補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子から少なくともなるミニ遺伝子;およびAAVカプシド中へのミニ遺伝子のパッケージングを可能にする十分なヘルパー機能、を宿主細胞に導入することによって作製される。AAVカプシド中へのAAVミニ遺伝子のパッケージングに必要な成分は、宿主細胞にトランスに提供されうる。あるいは、必要な成分(例えば、ミニ遺伝子、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)の任意の1つまたはそれ以上は、必要な成分の1つまたはそれ以上を含むように当業者に知られる方法によって改変されている安定な宿主細胞によって提供されうる。
【0065】
いくつかの態様において、そのような安定な宿主細胞は、誘導型プロモーターの制御下に必要な成分を含みうる。あるいは、必要な成分は、構成型プロモーターの制御下にありうる。適当な誘導型および構成型プロモーターの例は、本書において、導入遺伝子、すなわち、補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする核酸と共に使用するのに適当な調節エレメントの下記説明中に記載される。さらに別の態様においては、選択された安定な宿主細胞は、いくつかの選択された成分を構成型プロモーターの制御下に、他のいくつかの選択された成分を1つまたはそれ以上の誘導型プロモーターの制御下に含みうる。例えば、293細胞(E1ヘルパー機能を構成型プロモーターの制御下に含む)に由来するが、repおよび/またはcapタンパク質を誘導型プロモーターの制御下に含む、安定な宿主細胞が作製されうる。当業者によってさらに別の安定な宿主細胞が作製されうる。
【0066】
本開示のrAAVを生産するために必要な、ミニ遺伝子、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、パッケージング宿主細胞に、該配列を導入する任意の遺伝子エレメントの形態で送達されうる。選択された遺伝子エレメントは、当分野で知られる任意の適当な方法で送達されうる。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい。同様に、rAAVビリオンを作製する方法が知られており、適当な方法の選択は本開示を限定するものではない。例えば、K. Fisher et al, 1993 J. Virol, 70:520-532 および米国特許第5478745号を特に参照されたい。これら文献は、引用により本書に組み込まれる。
【0067】
異なる説明がなされない限り、本書に記載されるAAV ITRおよび他の選択されたAAV成分は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV10、AAV11、AAV12、AAV−DJ、AAV−DJ8、AAV−DJ9、AAVrh8、AAVrh8RもしくはAAVrh10または他の知られているかもしくは知られていないAAV血清型を包含するがそれに限定されない、任意のAAV血清型から容易に選択されうる。該ITRまたは他のAAV成分は、AAV血清型から、当業者に利用可能な技術を利用して容易に単離されうる。そのようなAAVは、学究的、商業的または公的な供給源(例えば、American Type Culture Collection, Manassas, VA)から単離または入手されうる。あるいは、AAV配列は、例えば文献またはデータベース(例えばGenBank, PubMed等)において利用可能であるような、公開されている配列を参照して、合成的手段または他の適当な手段によって得られうる。
【0068】
ミニ遺伝子は、前記のような補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子、およびその調節配列、および5’および3’AAV末端逆位反復配列(ITR)を少なくとも含む。好ましい一態様において、AAV血清型2のITRが用いられる。しかしながら、他の適当な血清型に由来するITRを選択してもよい。ミニ遺伝子はカプシドタンパク質中にパッケージされ、選択された宿主細胞に送達される。
【0069】
いくつかの態様において、調節配列は、補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子に作動可能に連結される。調節配列は、補体系遺伝子、そのスプライスバリアントまたはフラグメントに、その転写、翻訳および/または発現を、本開示により生産されるベクターが導入されたかまたはウイルスで感染された細胞において可能にする様式で作動可能に連結される、通常の調節配列を包含しうる。本書において、「作動可能に連結される」配列は、関心の遺伝子に連続する発現調節配列と、関心の遺伝子を調節するようトランスに、または距離を置いて働く発現調節配列との両方を包含する。発現調節配列は、適当な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;効果的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;ならびに要すれば、コードされた産物の分泌を高める配列を包含する。プロモーターを包含する多くの発現調節配列が当分野で知られており、利用しうる。
【0070】
本開示のコンストラクトにおいて有用な調節配列はまた、イントロンを、好ましくはプロモーター/エンハンサー配列と遺伝子との間に含みうる。いくつかの態様において、イントロン配列はSV−40に由来し、100bpのミニイントロン・スプライスドナー/スプライスアクセプター(SD−SA)である。他の適当な配列は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後エレメントを包含する。(例えば、L. Wang and I. Verma, 1999 Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 96:3906-3910を参照されたい。)ポリAシグナルは、SV−40、ヒトおよびウシを包含するがそれに限定されない多くの適当な種に由来しうる。
【0071】
本開示の方法において有用なrAAVの他の調節成分は、内部リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列または他の適当な系が、1つの遺伝子転写物から1つより多いポリペプチドを生産するため(例えば、1つより多い補体系ポリペプチドを生産するため)に使用されうる。IRES(または他の適当な配列)は、1つより多いポリペプチド鎖を含むタンパク質を生産するため、または同じ細胞から、もしくは同じ細胞内で、2つの異なるタンパク質を発現させるために用いられる。IRESの例はポリオウイルス内部リボソーム進入配列であり、これは視細胞、RPE細胞および神経節細胞における導入遺伝子発現を支援する。好ましくは、IRESは、rAAVベクターにおいて導入遺伝子の3’側に位置する。
【0072】
いくつかの態様において、補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子の発現は、別のプロモーター(例えば、ウイルスのプロモーター)によって駆動される。いくつかの態様において、AAVベクターにおいて使用するのに適当な任意のプロモーターを、本開示のベクターに使用しうる。rAAVに使用する導入遺伝子プロモーターの選択は、所望の眼細胞において選択された導入遺伝子の発現を可能にする多数の構成型または誘導型プロモーターの中からなされうる。適当なプロモーターの例は下記に記載される。
【0073】
本開示に有用な他の調節配列は、エンハンサー配列を包含する。本開示に有用なエンハンサー配列は、1RBPエンハンサー(上掲のNicoud 2007)、最初期サイトメガロウイルスエンハンサー、免疫グロブリン遺伝子由来のもの、またはマウス近位プロモーターにおいて同定されたシス作用型エレメントであるSV40エンハンサー等を包含する。
【0074】
これらの、および他の一般的なベクターおよび調節配列の選択は、よく知られており、多くのそのような配列が利用可能である。例えば、Sambrook et al, および例えばそのページ3.18-3.26および16, 17-16.27に引用される文献、ならびにAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1989を参照されたい。
【0075】
rAAVベクターはまた、ベクターのための所望の機能の提供に役立つ、例えばアデノウイルスに由来する、さらなる配列を含みうる。そのような配列は、例えば、アデノ随伴ウイルス粒子へのrAAVベクターのパッケージングを支援するものを包含する。
【0076】
rAAVベクターはまた、同時発現のためのレポーター配列を含み得、その例はlacZ、GFP、CFP、YFP、RFP、mCherry、tdTomato等であるが、それに限定されない。いくつかの態様において、rAAVベクターは、選択可能なマーカーを含みうる。いくつかの態様において、選択可能なマーカーは、抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様において、抗生物質耐性遺伝子は、アンピシリン耐性遺伝子である。いくつかの態様において、アンピシリン耐性遺伝子は、β−ラクタマーゼである。
【0077】
いくつかの態様において、rAAV粒子はssAAVである。いくつかの態様において、rAAV粒子は自己相補的AAV(sc−AAV)である(引用により本書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0141422号参照)。自己相補的ベクターは、DNA合成または複数のベクターゲノム間の塩基対形成の必要なくdsDNAに折り畳みうる逆位反復ゲノムをパッケージする。scAAVは、発現に先立ち一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを二本鎖DNA(dsDNA)に変換する必要がないため、より効率的なベクターである。しかしながら、この効果の一方で、ベクターのコーディング能力は半分しかなく、scAAVは、小タンパク質をコードする遺伝子(約55kdまで)、および任意の従来利用可能なRNAベースの治療法に有用である。
【0078】
AAVゲノムの一本鎖の性質は、他の生物学的特徴よりも、rAAVベクターの発現に大きく影響しうる。rAAVベクターに相補鎖を提供する、変わる可能性のある細胞メカニズムに頼るよりもむしろ、両方の鎖を単一のDNA分子としてパッケージすることによって問題が回避されうることがわかった。本書に記載される研究において、HeLa細胞において、従来のrAAVよりも二重(duplexed)ベクターによる形質導入効率が高い(5〜140倍)ことが観察された。より重要なことに、従来の一本鎖AAVベクターとは異なり、本発明の二重ベクターによる形質導入には、DNA複製阻害剤が影響を及ぼさなかった。さらに、インビボのマウス肝細胞において、本発明の二重パルボウイルスベクターは、rAAVベクターよりも、導入遺伝子発現のより速やかな開始およびより高いレベルを示した。これら生物学的特性はすべて、進められているパルボウイルスベースの遺伝子送達システムの開発に大きく寄与する新しい種類のパルボウイルスベクター(二重鎖DNAを送達する)の作製および特徴付けを支援する。
【0079】
本書に記載される研究によって、1つの分子中において繋ぎ合わされた正と負の極性の鎖の同時パッケージングをもたらす二重ゲノムを有する新しい種類のパルボウイルスベクターが作製され、特徴付けられた。したがって、本発明は、パルボウイルスカプシド(例えばAAVカプシド)、および異種ヌクレオチド配列をコードするベクターゲノムを含むパルボウイルス粒子を提供し、ここで、ベクターゲノムは自己相補的であり、すなわち、ベクターゲノムは二量体逆位反復である。ベクターゲノムは好ましくは、それがパッケージされうるパルボウイルスカプシドに対応する野生型パルボウイルスゲノム(例えばAAVゲノム)にほぼ相当するサイズを有し、適当なパッケージングシグナルを有する。本発明はさらに、前記ベクターゲノム、およびそれをコードする鋳型を提供する。
【0080】
本開示の方法に有用なrAAVベクターは、引用によりその内容が本書の一部とされるPCT公開番号WO2015168666およびPCT公開番号WO2014011210にさらに記載される。
【0081】
いくつかの態様において、任意の本書に開示されるベクターは、標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)におけるCFHまたはFHLの内因の発現と比較して、少なくとも20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%より高い、標的細胞におけるCFHまたはFHLの発現を誘導することができる。いくつかの態様において、標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)における任意の本書に開示されるベクターの発現は、標的細胞におけるCFHまたはFHL活性の内因性レベルと比較して、標的細胞における少なくとも20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%より高いレベルのCFHまたはFHL活性をもたらす。
【0082】
補体系遺伝子
加齢黄斑変性に関与する原因の因子の探索において、疫学および遺伝子研究により、複数の補体遺伝子(CFH、C2/CFB、C3、CFIおよびC9)またはその近傍において、一般的な、および稀なAMDのアレルが数多く同定されている。ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、CFHをコードする遺伝子上に一塩基多型(SNP)Y402Hが同定されている。このY402H SNPは、2〜7倍高いAMD発症リスクを与える(Klein RJ et al. Science. 2005; 308:385-9; Edwards AO et al. Science. 2005; 308:421-4; Hageman GS et al. PNAS. 2005; 102:7227-32; Haines JL et al. Science. 2005; 308:419-21)。さらなるGWASによって、進行したAMDに関連するCFH遺伝子座上の他のバリアントが同定されている(Raychaudhuri S et al. Nat Genet. 2011; 43: 1232-6)。これらの研究は全体として、6つの補体遺伝子(CFH、C2/CFB、C3、CFIおよびC9)の近傍のバリアントが全体で約60%の遺伝子的AMDリスクをもたらすことを示している(Fritsche LG et al. Annu Rev Genomics Hum Genet. 2014; 15:151-71)。
【0083】
補体系遺伝子(例えば、CFH、FHL−1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)、そのスプライスバリアント(例えば、FHL1)、またはフラグメントが、本開示の組換えAAV(rAAV)ベクターに導入遺伝子として提供される。導入遺伝子とは、関心のポリペプチド、タンパク質または他の産物をコードする、導入遺伝子に続くベクター配列に対して異種である核酸配列である。核酸コーディング配列は、標的細胞(例えば、眼細胞)における導入遺伝子の転写、翻訳および/または発現を可能にする様式で、調節成分に作動可能に連結される。異種核酸配列(導入遺伝子)は、任意の生物に由来しうる。いくつかの態様において、導入遺伝子はヒト由来である。いくつかの態様において、導入遺伝子は、成熟形態の補体タンパク質をコードする。いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号33のアミノ酸配列との同一性が少なくとも80%、85%、90%、92%、95%または97%であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号34のアミノ酸配列との同一性が少なくとも80%、85%、90%、92%、95%または97%であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、rAAVベクターは、1つまたはそれ以上の導入遺伝子を含みうる。
【0084】
いくつかの態様において、導入遺伝子は、1つよりも多い補体系遺伝子、スプライスバリアント、または1つよりも多い補体系遺伝子由来のフラグメントを含む。これは、2つまたはそれ以上の異種配列を含む単一のベクターを用いるか、またはそれぞれが1つまたはそれ以上の異種配列を含む2つまたはそれ以上のrAAVベクターを用いることによって達成されうる。いくつかの態様において、補体系遺伝子、スプライスバリアント、またはそれらのフラグメントに加えて、rAAVベクターはさらなるタンパク質、ペプチド、RNA、酵素または触媒RNAをもコードしうる。好ましいRNA分子は、shRNA、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、およびアンチセンスRNAを包含する。有用なRNA配列の一例は、処置対象において標的核酸配列の発現を失わせる配列である。さらなるタンパク質、ペプチド、RNA、酵素、または触媒RNAと、補体因子とは、2つまたはそれ以上の異種配列を含む単一のベクターによってコードされうるか、またはそれぞれ1つまたはそれ以上の異種配列を含む2つまたはそれ以上のrAAVベクターの使用によってコードされうる。
【0085】
いくつかの側面において、本開示は、ヒト補体H因子またはH因子様1(FHL1)タンパク質またはその生物学的活性フラグメントをコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはCFHLタンパク質またはその生物学的活性フラグメントをコードする任意の本書に開示される配列との同一性が、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、95%、97%、99%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、配列番号1〜3もしくは5またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、95%、97%、99%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、配列番号1またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、97%、99%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、配列番号2またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、97%、99%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、配列番号3またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、97%、99%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、配列番号5またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、97%、99%または100%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ベクターは、配列番号1〜3もしくは5またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも80%であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、前記ヌクレオチド配列は、配列番号1〜3もしくは5またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも90%である。いくつかの態様において、前記ヌクレオチド配列は、配列番号1〜3もしくは5またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも95%である。いくつかの態様において、前記ヌクレオチド配列は、配列番号1〜3もしくは5またはその生物学的活性フラグメントの配列である。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHL1タンパク質、または少なくとも4つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHL1タンパク質、または少なくとも5つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHL1タンパク質、または少なくとも6つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHL1タンパク質、または少なくとも7つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、FHL1タンパク質、または少なくとも3つのCCPドメインを含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHL1タンパク質、またはCFHのCCP1〜2を少なくとも含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHのCCP1〜4を少なくとも含むCFHの生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHL1タンパク質、またはCFHのCCP19〜20を少なくとも含むその生物学的活性フラグメントをコードする。Schmidt C O, Herbert A P, Kavanagh D, Gandy C, Fenton C J, Blaum B S, Lyon M, Uhrin D, Barlow P N. J Immunol, 2008, 181:2610-9。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHR1タンパク質、またはH402多型を含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、ベクターは、CFHもしくはFHR1タンパク質、またはV62多型を含むその生物学的活性フラグメントをコードする。いくつかの態様において、CFHもしくはFHR1タンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、配列番号4のアミノ酸配列は、CFHまたはFHL1タンパク質のC末端配列である。いくつかの態様において、CFHもしくはFHL1タンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、ブルッフ膜を透過して拡散することができる。いくつかの態様において、CFHもしくはFHL1タンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、C3bを結合することができる。いくつかの態様において、CFHもしくはFHL1タンパク質またはその生物学的活性フラグメントは、C3bの分解を促進することができる。
【0086】
いくつかの態様において、ベクターは、配列番号7、9、11、13、15、17、19もしくは21〜23またはその生物学的活性フラグメントとの同一性が、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、95%、97%、99%または100%であるヌクレオチド配列を含む。
【0087】
導入遺伝子配列の例は、配列番号1〜3または5である。いくつかの態様において、本開示の導入遺伝子は、配列番号1の核酸配列を含む。いくつかの態様において、本開示の導入遺伝子は、配列番号2の核酸配列を含む。いくつかの態様において、本開示の導入遺伝子は、配列番号3の核酸配列を含む。いくつかの態様において、本開示の導入遺伝子は、配列番号5の核酸配列を含む。いくつかの態様において、本開示の導入遺伝子は、これら配列のバリアントを含み、ここで、該バリアントは、ミスセンス変異、ナンセンス変異、重複、欠失および/または付加を含み得、典型的には、配列番号1〜3または5の特定の核酸配列との配列同一性が少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるポリヌクレオチドを包含する。当業者は、前記核酸に相補的な核酸配列、および前記核酸のバリアントも、本発明の範囲に含まれることを理解しうる。他のいくつかの態様において、本開示の核酸配列は、単離されたもの、組換えられたもの、および/または異種ヌクレオチド配列と融合されたものでありうる。いくつかの態様において、本書に開示される任意のヌクレオチド(例えば、配列番号1〜3または5)は、コドン最適化される(例えば、ヒト発現のためにコドン最適化される)。
【0088】
一側面において、導入遺伝子は、野生型ポリペプチドと比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有する補体系ポリペプチドをコードする。いくつかの態様において、導入遺伝子は、野生型ポリペプチドと比較して1、2、3、4または5のアミノ酸の欠失を有する補体系ポリペプチドをコードする。いくつかの態様において、導入遺伝子は、野生型ポリペプチドと比較して1、2、3、4または5のアミノ酸の置換を有するポリペプチドをコードする。いくつかの態様において、導入遺伝子は、野生型ポリペプチドと比較して1、2、3、4または5のアミノ酸の挿入を有するポリペプチドをコードする。本書に開示される任意のポリペプチド配列に相補的なポリヌクレオチドも、本開示の範囲に含まれる。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディングまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノムまたは合成)、cDNAまたはRNA分子でありうる。RNA分子は、mRNA分子を包含する。さらなるコーティングまたはノンコーティング配列が、本開示のポリヌクレオチド中に存在しうるが、必ずしも存在する必要はなく、ポリヌクレオチドは他の分子および/または支持体材料に結合されうるが、必ずしも結合される必要はない。
【0089】
2つの配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、後述のように最大に対応するようアラインされたときに同じである場合、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は「同一」であるという。2つの配列間の比較は、典型的には、配列を比較ウインドウにわたって比較して、配列同一性の部分領域を決定し比較することによって行われる。本書において「比較ウインドウ」とは、少なくとも約20、通常30〜約75、または40〜約50の連続する位置のセグメントをさし、このセグメントにおいて、配列が、連続する位置の数が同じである参照配列と、該2つの配列が最適にアラインされて比較される。
【0090】
比較のための配列の最適なアラインメントは、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergene(登録商標)スイートのMegAlign(登録商標)プログラム(DNASTAR(登録商標), Inc., Madison, WI)を用い、デフォルトパラメーターを用いて行われうる。このプログラムは、以下の文献に記載されるいくつかのアラインメントスキームを具体化する:Dayhoff, M.O., 1978, A model of evolutionary change in proteins - Matrices for detecting distant relationships. In Dayhoff, M.O. (ed.) Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, Washington DC Vol. 5, Suppl. 3, pp. 345-358; Hein J., 1990, Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp. 626-645 Methods in Enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., San Diego, CA; Higgins, D.G. and Sharp, P.M., 1989, CABIOS 5:151-153; Myers, E.W. and Muller W., 1988, CABIOS 4:11-17; Robinson, E.D., 1971, Comb. Theor. 11:105; Santou, N., Nes, M., 1987, Mol. Biol. Evol. 4:406-425; Sneath, P.H.A. and Sokal, R.R., 1973, Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, San Francisco, CA; Wilbur, W.J. and Lipman, D.J., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726-730。
【0091】
好ましくは、「配列同一性パーセンテージ」は、少なくとも20位置の比較ウインドウにわたって最適にアラインされた2つの配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウインドウにおけるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して20%またはそれ以下、通常5〜15%、または10〜12%の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。パーセンテージは、両方の配列において核酸塩基またはアミノ酸残基が同一である位置の数を決定してマッチ位置数を得、マッチ位置数を参照配列の総位置数(すなわち、ウインドウのサイズ)で除し、その結果に100を掛けて配列同一性パーセンテージを得ることによって計算される。導入遺伝子またはバリアントは、天然の遺伝子またはその一部もしくは相補体と実質的に相同であってもよい。そのようなポリヌクレオチドバリアントは、補体因子をコードする天然のDNA配列(または相補配列)と、中程度にストリンジェントな条件下にハイブリダイズすることができる。適当な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液で予め洗浄すること;50℃〜65℃、5×SSCで一晩ハイブリダイズすること;その後、0.1%SDSを含有する2×、0.5×および0.2×SSCのそれぞれで、65℃で20分間、2回洗うこと、を含む。本書において「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために、低イオン強度および高温、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃を用いること;(2)ハイブリダイゼーション中に、変性剤、例えばホルムアミドを用いること、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)中の50%(v/v)ホルムアミドを、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムと共に42℃で用いること;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で用い、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42℃で、および50%ホルムアミドで55℃で洗い、次いでEDTA含有0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄液で55℃で洗うこと、である。当業者は、プローブの長さ等の因子に対応して必要に応じ温度、イオン強度等を調節する方法を理解しうる。
【0092】
遺伝子コードの縮重の結果として、本書に記載されるあるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することを、当業者は理解しうる。そのようなポリヌクレオチドのいくつかは、任意の天然の遺伝子のヌクレオチド配列と最小限の相同性を有する。それでも、コドン使用における相異のために異なるポリヌクレオチドは、本開示に特に企図される。さらに、本書に記載されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルは、本開示の範囲に含まれる。アレルは、1つまたはそれ以上の変異、例えばヌクレオチドの欠失、付加および/または置換の結果として変化された内因の遺伝子である。その結果としてのmRNAおよびタンパク質は、変化された構造または機能を有しうるが、必ずしもそうであるわけではない。アレルは、標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較)を用いて同定されうる。
【0093】
本開示の核酸/ポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法、またはPCRを用いて得ることができる。ポリヌクレオチドの化学合成法は、当分野で知られているので、本書において詳細に説明する必要はない。当業者は、本書に記載される配列および市販のDNAシンセサイザーを使用して、所望のDNA配列を作製することができる。他のいくつかの様において、本開示の核酸はまた、高度にストリンジェントな条件下に配列番号1、2、3および5のヌクレオチド配列またはそれに相補的な配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を包含する。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適当なストリンジェンシー条件はさまざまでありうることを容易に理解しうる。例えば、ハイブリダイゼーションが6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で約45℃で、その後、洗浄が2.0×SSCで50℃で行われうる。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、約2.0×SSC、50℃の低ストリンジェンシー、ないし約0.2×SSC、50℃の高ストリンジェンシーから選択されうる。さらに、洗浄ステップにおける温度は、約22℃の室温の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件へと高められうる。温度および塩の両方とも変化されうるか、または温度か塩の条件が一定に保たれ、他方の変数が変化される。一態様において、本開示は、6×SSC、室温の低ストリンジェンシー条件下にハイブリダイズし、その後、2×SSCで室温で洗浄される核酸を提供する。
【0094】
遺伝子コードの縮重のゆえに異なる単離された核酸も、本開示の範囲に含まれる。例えば、多くのアミノ酸が1つより多いトリプレットによってコードされる。同じアミノ酸を特定するコドン、またはシノニム(例えば、ヒスチジンについてCAUおよびCACがシノニムである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」な変異をもたらしうる。当業者は、天然のアレルのバリエーションのゆえに、ある特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたはそれ以上のヌクレオチド(約3〜5%までのヌクレオチド)のバリエーションが、ある特定の種のメンバーの間に存在しうることを理解しうる。そのようなヌクレオチドのバリエーションおよび結果としてのアミノ酸多型は、本開示の範囲に含まれる。
【0095】
本開示はさらに、配列番号1、2、3および5のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または前記配列の相補体であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを提供する。そのようなオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも約10ヌクレオチドであり、好ましくは長さが約15〜約30ヌクレオチドであり、上記ポリヌクレオチド分子に、高度にストリンジェントな条件で、すなわち、約14塩基オリゴの場合は約37℃で、約17塩基オリゴの場合は約48℃で、約20塩基オリゴの場合は約55℃で、および約23塩基オリゴの場合は約60℃で、6×SSC/0.5%ピロリン酸ナトリウムで洗浄することによって、ハイブリダイズする。好ましい一態様において、オリゴヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチド分子の一部分に相補的である。そのようなオリゴヌクレオチドは、遺伝子調節に有用なアンチセンス分子をコードすること、もしくは遺伝子調節に有用なアンチセンス分子として作用すること、または、補体系コーティングポリヌクレオチド分子の増幅においてプライマーとして作用すること、を包含するさまざまな目的のために有用である。
【0096】
他の一態様において、本開示において有用な導入遺伝子は、発現時に検出可能なシグナルを発生するレポーター配列を含む。そのようなレポーター配列は、以下のものをコードするDNA配列を包含するが、それに限定されない:β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合タンパク質、例えばCD2、CD4、CD8、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、および当分野で知られる他のもので、それに対する高親和性抗体が存在するかまたは従来の方法で作成可能であるもの、ならびに、とりわけヘマグルチニンに由来する抗原タグドメインもしくはMycに適当に融合された膜結合タンパク質を含む融合タンパク質。このようなコーティング配列は、その発現を駆動する調節配列と関連付けられるとき、従来の方法、例えば、酵素、放射線、比色、蛍光または他の分光学的なアッセイ、蛍光活性化セルソーティングアッセイ、ならびに免疫学的アッセイ、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)および免疫組織化学により検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、該シグナルを有するベクターの存在は、β−ガラクトシダーゼ活性のアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、該シグナルを有するベクターは、ルミノメーターにおいて発色または発光によって視覚的に測定されうる。
【0097】
補体系遺伝子またはそのフラグメント(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5をコードする遺伝子)は、正常補体系遺伝子が正常よりも低いレベルで発現される障害、または機能的補体系遺伝子産物が発現されない障害を包含する遺伝子障害を治療または改善するために用いられうる。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、単一の補体系タンパク質またはその生物学的活性フラグメントをコードする。本開示はさらに、多重の導入遺伝子、例えば2つまたはそれ以上の補体系ポリペプチドまたはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子を使用することを包含する。いくつかの態様において、異なる補体タンパク質またはその生物学的活性フラグメント(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)をコードするために異なる導入遺伝子が用いられうる。あるいは、異なる複数の補体タンパク質(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントが、同じ導入遺伝子によってコードされうる。この場合、単一の導入遺伝子が、補体タンパク質(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントのそれぞれをコードするDNAを含み、各タンパク質またはその機能的フラグメントのDNAは、内部リボソーム進入部位(IRES)によって隔てられる。これは、各サブユニットをコードするDNAのサイズが小さい場合、例えばサブユニットをコードするDNAおよびIRESの全体としてのサイズが5キロベース未満である場合に望ましい。IRESの代替として、DNAは、翻訳後イベントにおいて自己開裂する2Aペプチドをコードする配列によって隔てられてもよい。例えば、MX. Donnelly, et al, J. Gen. Virol, 78(Pt 1): 13-21 (Jan 1997); Furler, S., et al, Gene Ther., 8(11):864-873 (June 2001); Klump H., et al, Gene Ther., 8(10):811-817 (May 2001)を参照されたい。2Aペプチドは、IRESよりも明らかに小さいので、スペースが制限要因である場合の使用に好適である。
【0098】
調節配列は、補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子に、その転写、翻訳および/または発現を、本書に記載されるように作製されるベクターが導入されるかまたはウイルスで感染される細胞において可能にする様式で作動可能に連結される通常の調節エレメントを包含する。本書において、「作動可能に連結される」配列は、関心の遺伝子に連続する発現調節配列、および関心の遺伝子を調節するのにトランスに、または距離を置いて作用する発現調節配列の両方を包含する。
【0099】
発現調節配列は、適当な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;効果的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;ならびに要すれば、コードされた産物の分泌を高める配列を包含する。プロモーターを包含する多くの発現調節配列が当分野で知られており、利用しうる。
【0100】
本開示のコンストラクトにおいて有用な調節配列はまた、イントロンを、好ましくはプロモーター/エンハンサー配列と遺伝子との間に含みうる。好ましいイントロン配列の一例は、SV−40に由来し、100bpのミニイントロン・スプライスドナー/スプライスアクセプター(SD−SA)である。いくつかの態様において、イントロンは、配列番号10のヌクレオチド配列、またはそのコドン最適化配列もしくはフラグメントを含む。他の適当な配列は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後エレメントを包含する。(例えば、L. Wang and I. Verma, 1999 Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 96:3906-3910を参照されたい。)ポリAシグナルは、SV−40、ヒトおよびウシを包含するがそれに限定されない多くの適当な種に由来しうる。
【0101】
本開示の方法において有用なrAAVの他の調節成分は、内部リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列または他の適当な系が、1つの遺伝子転写物から1つより多いポリペプチドを生産するために使用されうる。IRES(または他の適当な配列)は、1つより多いポリペプチド鎖を含むタンパク質を生産するため、または同じ細胞から、もしくは同じ細胞内で、2つの異なるタンパク質を発現させるために用いられる。IRESの例はポリオウイルス内部リボソーム進入配列であり、これは視細胞、RPE細胞および神経節細胞における導入遺伝子発現を支援する。好ましくは、IRESは、rAAVベクターにおいて導入遺伝子の3’側に位置する。
【0102】
一態様において、AAVはプロモーター(またはプロモーターの機能的フラグメント)を含む。rAAVに使用するプロモーターの選択は、所望の標的細胞において選択された導入遺伝子の発現を可能にする多数のプロモーターの中からなされうる。一態様において、標的細胞は眼細胞である。いくつかの態様において、標的細胞は神経細胞である(すなわち、ベクターは神経細胞を標的とする)。しかしながら、いくつかの特定の態様において、標的細胞は神経細胞ではない細胞である(すなわち、ベクターは神経細胞を標的としない)。いくつかの態様において、標的細胞はグリア細胞、ミュラー細胞、および/または網膜色素上皮細胞(RPE)細胞である。プロモーターは、ヒトを包含する任意の種に由来しうる。一態様において、プロモーターは「細胞特異的」である。用語「細胞特異的」とは、組換えベクターのために選択された特定のプロモーターが、選択された導入遺伝子の、特定の細胞または眼細胞種における発現を制御しうることを意味する。一態様において、プロモーターは、視細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、桿体および/または錐体における発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、RPE細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、神経節細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、ミュラー細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、双極細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、ON型双極細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、代謝型グルタミン酸受容体6(mGluR6)プロモーターである(引用により本書の一部とされるVardi et al, mGluR6 Transcripts in Non-neuronal Tissues, J Histochem Cytochem. 2011 December; 59(12): 1076-1086参照)。他の一態様において、プロモーターは、エンハンサー結合mGluR6プロモーターである。他の一態様において、プロモーターは、OFF型双極細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、水平細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、アマクリン細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、導入遺伝子は、任意の前記眼細胞において発現される。他の一態様において、プロモーターは、ヒトGタンパク質共役受容体タンパク質キナーゼ1(GRK1)プロモーター(Genbank Accession number AY327580)である。他の一態様において、プロモーターは、ヒト視細胞間レチノイド結合タンパク質近位(IRBP)プロモーターである。
【0103】
いくつかの態様において、プロモーターは、AAVベクターのサイズ制限のため、サイズの小さいもの、例えば1000bp未満のものである。いくつかの態様において、プロモーターは、サイズが1000、900、800、700、600、500、400または300bpよりも小さいものである。いくつかの特定の態様において、プロモーターは、400bp未満のサイズである。いくつかの態様において、プロモーターは、CRALBP(RLBP)、EF1a、HSP70、AAT1、ALB、PCK1、CAG、RPE65、MECPまたはsCBAプロモーターから選択されるプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号6、8、12、14、16、18、20、31、32または36との同一性が少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%であるヌクレオチド配列、またはそのコドン最適化配列および/またはフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、配列番号6、8、12、14、16、18、20、31、32または36のヌクレオチド配列、またはそのコドン最適化配列および/またはフラグメントを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、眼における強い発現に関与する。いくつかの態様において、プロモーターは、CRALBPまたはRPE65プロモーター(例えば配列番号6または32のヌクレオチド配列を有するプロモーター)である。いくつかの態様において、プロモーターは、肝臓における強い発現に関与する。いくつかの態様において、プロモーターはAAT1、ALBまたはPCK1プロモーター(例えば、配列番号16、18または20のヌクレオチド配列を有するプロモーター)である。いくつかの態様において、AAVベクターにおいて発現される遺伝子がCFHまたはCFHL(例えば、配列番号1〜3もしくは5のいずれかのヌクレオチド配列、またはそのコドン最適化配列および/またはフラグメントを含む遺伝子)であるならば、プロモーターはサイズが1000、900、800、700、600、500、400または300bpよりも小さい。いくつかの態様において、AAVベクターにおいて発現される遺伝子がCFHまたはCFHL(例えば、配列番号1〜3もしくは5のいずれかのヌクレオチド配列、またはそのコドン最適化配列および/またはフラグメントを含む遺伝子)であるならば、プロモーターは、CRALBP、EF1a、HSP70またはsCBAプロモーターから選択される。いくつかの態様において、AAVベクターにおいて発現される遺伝子がCFHまたはCFHL(例えば、配列番号1〜3もしくは5のいずれかのヌクレオチド配列、またはそのコドン最適化配列および/またはフラグメントを含む遺伝子)であるならば、プロモーターは、配列番号6、8、12、14、18、20、31、32または36のヌクレオチド配列、またはそのコドン最適化配列および/またはフラグメントを含む。いくつかの態様において、本書に開示される任意のプロモーターは、ウイルスイントロン(例えば、SV40iイントロン)と連結される。
【0104】
他の一態様において、プロモーターは、発現される遺伝子のための天然のプロモーターである。有用なプロモーターは、桿体オプシンプロモーター、赤-緑オプシンプロモーター、青オプシンプロモーター、cGMP−β−ホスホジエステラーゼプロモーター、マウスオプシンプロモーター(Beltran et al 2010 cited above)、ロドプシンプロモーター(Mussolino et al, Gene Ther, July 2011, 18(7):637-45);桿体トランスデューシンのαサブユニット(Morrissey et al, BMC Dev, Biol, Jan 2011, 11 :3);β−ホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター; 網膜色素変性(RP1)プロモーター(Nicoud et al, J. Gene Med, Dec 2007, 9(12): 1015-23);NXNL2/NXNL1プロモーター(Lambard et al, PLoS One, Oct. 2010, 5(10):el3025)、RPE65プロモーター;retinal degeneration slow/ペリフェリン2(Rds/perph2)プロモーター(Cai et al, Exp Eye Res. 2010 Aug;91(2): 186-94); およびVMD2プロモーター(Kachi et al, Human Gene Therapy, 2009 (20:31-9))を包含するが、それに限定されない。これら各文献は、引用により本書の一部とされる。一態様において、プロモーターは、AAVベクターのサイズ制限のために、1000bp未満の小さいサイズである。他の一態様において、プロモーターは400bp未満である。
【0105】
いくつかの態様において、AAVベクターにおける使用に適当な任意のプロモーターを、本開示のベクターに使用しうる。適当なプロモーターの例は、構成型プロモーター、例えばCMVプロモーター(場合によりCMVエンハンサーと組み合わされる)、RSVプロモーター(場合によりRSVエンハンサーと組み合わされる)、SV40プロモーター、MoMLVプロモーター、CBプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、ニワトリβ−アクチン(CBA)プロモーター、CBA/CAGプロモーター、およびCBAプロモーターと連結された最初期CMVエンハンサー、またはEF1aプロモーター等を包含する。いくつかの態様において、細胞特異的または組織特異的プロモーターが用いられる(例えば、桿体、錐体または神経節由来プロモーター)。いくつかの態様において、プロモーターは、本開示のコンストラクトに適合する十分小さいサイズを有し、例えばCBプロモーターである。好ましくは、プロモーターは、構成的プロモーターである。他の一態様において、プロモーターは細胞特異的である。用語「細胞特異的」とは、組換えベクターのために選択された特定のプロモーターが、選択された導入遺伝子の、特定の眼細胞種における発現を制御することを意味する。一態様において、プロモーターは、導入遺伝子発現の、視細胞における発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、桿体および錐体における発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、桿体における発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、錐体における発現に特異的である。他の一態様において、プロモーターは、RPE細胞における導入遺伝子発現に特異的である。他の一態様において、導入遺伝子は、任意の上記眼細胞において発現される。
【0106】
他の有用なプロモーターは、神経網膜ロイシンジッパー(Nrl)、光受容体特異的核内受容体Nr2e3、およびベーシックロイシンジッパー(bZIP)のプロモーターを包含するがそれに限定されない、転写因子プロモーターを包含する。一態様において、プロモーターは、AAVベクターのサイズ制限のために、1000bp未満の小さいサイズのものである。他の一態様において、プロモーターは、400bp未満である。
【0107】
本開示において有用な他の調節配列は、エンハンサー配列を包含する。本開示において有用なエンハンサー配列は、IRBPエンハンサー(前掲のNicoud 2007)、最初期サイトメガロウイルスエンハンサー、免疫グロブリン遺伝子由来のもの、またはマウス近位プロモーターにおいて同定されたシス作用型エレメントであるSV40エンハンサー等を包含する。
【0108】
これらの、および他の一般的なベクターおよび調節配列の選択は、従来のように行われ、数多くのそのような配列が利用可能である。例えば、Sambrook et al、およびその中の、例えばページ3.18-3.26および16.17-16.27に引用される文献、ならびにAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1989を参照されたい。本書に記載されるすべての導入遺伝子を発現するために、すべてのベクターおよび発現調節配列が必ずしも等しく良好に機能するわけではないことが理解される。しかしながら、当業者は、本開示のrAAVベクターを作製するために、記載される、および他の発現調節配列の中からの選択を行いうる。
【0109】
rAAVベクターの生産
当分野において、rAAVベクターを生産するための方法が多数知られており、それには、トランスフェクション、安定な細胞株の生産、ならびに、アデノウイルス−AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス−AAVハイブリッド(Conway, JE et al., (1997). Virology 71(11):8780-8789)、およびバキュロウイルス−AAVハイブリッドを包含する感染性ハイブリッドウイルス生産の系が包含される。rAAVウイルス粒子生産のためのrAAV生産培養はいずれも、下記のものを必要とする:1)安定な宿主細胞。これは、例えば、HeLa、A549または293細胞といったヒト由来細胞株、またはSF−9といった昆虫由来細胞株(バキュロウイルス生産系の場合)。2)適当なヘルパーウイルス機能。これは、野生型または変異アデノウイルス(例えば温度感受性アデノウイルス)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミドコンストラクトによって提供される。3)AAV repおよびcap遺伝子および遺伝子産物。4)導入遺伝子(例えば、補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子)に少なくとも1つのAAV ITR配列が続くもの。そして、5)rAAV生産を支援する適当な培地および培地成分。当分野で知られる適当な培地を、rAAVベクターの生産に使用しうる。そのような培地は、Hyclone LaboratoriesおよびJRHにより製造される培地、例えば、改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(EMEM)、米国特許第6566118号に記載されるような慣用の処方、および米国特許第6723551号に記載されるようなSf-900 II SFM培地を包含するが、それに限定されない。特に組換えAAVベクターの生産における使用のための慣用の培地処方に関して、上記各文献は、引用によりその全体が本書の一部とされる。
【0110】
rAAV粒子は、当分野で知られる方法を用いて生産されうる。例えば、米国特許第6566118号、同第6989264号、および同第6995006号を参照されたい。本開示の実施において、rAAV粒子生産のための宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、微生物および酵母を包含する。宿主細胞はまた、AAV repおよびcap遺伝子が宿主細胞中に安定に維持されたパッケージング細胞、またはAAVベクターゲノムが安定に維持されたプロデューサー細胞でありうる。パッケージングおよびプロデューサー細胞の例は、293、A549またはHeLa細胞に由来するものである。AAVベクターは、当分野で知られる標準的な方法で精製および調製される。
【0111】
組換えAAV粒子は、導入遺伝子に145ヌクレオチド長のAAV ITRが続くものを含むrAAVゲノムを含むプラスミド(シス−プラスミド)、ならびにAAV repおよびcap遺伝子をトランスに発現する別のコンストラクトでプロデューサー細胞をトランスフェクトすることによって作製される。さらに、E1A、E1B、E2A、E4ORF6およびVA RNA等といったアデノウイルスヘルパー因子が、プロデューサー細胞のアデノウイルス感染によるか、またはアデノウイルスヘルパー遺伝子を提供する第3のプラスミドによるトランスフェクションによって提供されうる。プロデューサー細胞は、HEK293細胞でありうる。アデノ随伴ウイルスベクターの生産に適当なパッケージング細胞株は、容易に利用可能な技術によって容易に得られうる(例えば、米国特許第5872005号参照)。提供されるヘルパー因子は、使用するプロデューサー細胞、およびプロデューサー細胞がそのようなヘルパー因子のいくつかをすでに有するかによって異なりうる。
【0112】
いくつかの態様において、rAAV粒子は、トリプルトランスフェクション法、例えば前掲書に記載されるトリプルトランスフェクション法によって生産されうる。簡潔に述べると、rep遺伝子とcap遺伝子を含むプラスミドを、ヘルパーアデノウイルスプラスミドと共に、細胞株(例えばHEK−293細胞)に導入(例えばリン酸カルシウム法による)され得、ウイルスが収集および場合により精製されうる。
【0113】
いくつかの態様において、rAAV粒子は、プロデューサー細胞株法、例えば前掲書に記載されるプロデューサー細胞株法によって生産されうる(Martin et al., (2013) Human Gene Therapy Methods 24:253-269に引用されるものも参照されたい)。簡潔に述べると、細胞株(例えばHeLa細胞株)が、rep遺伝子、カプシド遺伝子、およびプロモーター−導入遺伝子配列を含むプラスミドで安定にトランスフェクトされうる。細胞株のスクリーニングによってrAAV生産に適するクローンが選択され得、これが生産バイオリアクターへと増殖され、rAAV生産を開始させるヘルパーとしてのアデノウイルス(例えば野生型アデノウイルス)で感染されうる。その後、ウイルスが採取され得、アデノウイルスが不活化(例えば熱による)および/または除去され得、rAAV粒子が精製されうる。
【0114】
いくつかの側面において、本書に開示される任意のrAAV粒子を生産するための下記ステップを含む方法が提供される:(a)rAAV粒子が生産される条件下に宿主細胞を培養するステップ;ここで、宿主細胞は(i)1つまたはそれ以上のAAVパッケージ遺伝子;ここで、該AAVパッケージング遺伝子のそれぞれは、AAV複製および/またはカプシド封入タンパク質をコードする;(ii)本書に記載される処置用ポリペプチドおよび/または核酸をコードする核酸に少なくとも1つのAAV ITRが続くものを含むrAAVプロベクター;および(iii)AAVヘルパー機能、を含む;および(b)宿主細胞により生産されたrAAV粒子を回収するステップ。いくつかの態様において、前記少なくとも1つのAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV等のAAV ITRからなる群から選択される。いくつかの態様において、カプシド封入タンパク質はAAV2カプシド封入タンパク質である。
【0115】
本開示の適当なrAAV生産培養培地に、血清または血清由来組換えタンパク質を0.5〜20(v/vまたはw/v)のレベルで補充しうる。あるいは、当分野で知られるように、rAAVベクターを、動物由来産物不含有の培地とも称されうる無血清条件で生産することもできる。当業者は、rAAベクター生産を支援するようデザインされた市販またはカスタム培地にも、生産培養におけるrAAVの力価を高めるために、グルコース、ビタミン、アミノ酸および/または成長因子を包含するがそれに限定されない、当分野で知られる1つまたはそれ以上の細胞培養成分を補充しうることを認識しうる。
【0116】
rAAV生産培養物は、用いる特定の宿主細胞に適するさまざまな条件(広範な温度範囲や時間等にわたる)の下に増殖されうる。当分野で知られるように、rAAV生産培養は、適当な接着依存容器、例えばローラーボトル、中空繊維フィルター、マイクロキャリア、および充填床または流動床バイオリアクターにおいて培養可能な、接着依存培養を包含する。rAAVベクター生産培養はまた、懸濁に適応する宿主細胞、例えばHeLa、293およびSF−9細胞を含み得、これは、例えばスピナーフラスコ、攪拌タンクバイオリアクター、およびWaveバッグシステムのような使い捨てシステムを包含するさまざまな方法で培養されうる。
【0117】
本開示のrAAベクター粒子は、rAAV生産培養物から、生産培養の宿主細胞の溶解によって、または、インタクトな細胞から培地へのrAAV粒子放出が起こることが当分野で知られる条件で細胞が培養される場合に、生産培養からの使用済み培地の取得によって取得され得、これについてのさらなる詳細は米国特許第6566118号に記載されている。適当な細胞溶解方法も当分野で知られており、例えば、凍結/解凍サイクルの反復、超音波処理、高圧乳化、および化学物質、例えば界面活性剤および/またはプロテアーゼによる処理を包含する。
【0118】
さらなる態様において、rAA粒子は精製される。本書において用語「精製」とは、rAAV粒子が天然に生じるかまたは最初に調製されたときに存在しうる他の成分の少なくともいくつかを伴わない、rAAV粒子を調製することを包含する。したがって、例えば、単離されたrAAV粒子は、それを、元の混合物、例えば培養溶解物または生産培養上清から濃縮するための精製技術を用いて調製されうる。濃縮は、さまざまな方法で、例えば、DNアーゼ耐性粒子(DRP)またはゲノムコピー(gc)の溶液中の存在割合によって、または感染能によって測定され得、あるいは、元の混合物中に存在する別の潜在的に妨害性の物質、例えば汚染物質、例えば生産培養汚染物質またはプロセスに関連する汚染物質、例えばヘルペスウイルス、培地成分等との関連で測定されうる。
【0119】
いくつかの態様において、rAAV生産培養の収穫物は、宿主細胞デブリを除去するために精製される。いくつかの態様において、生産培養の収穫物は、一連のデプスフィルター、例えばDOHC Millipore Millistak+ HC Pod Filterの等級、A1HC Millipore Millistak+ HC Pod Filterの等級、および0.1μm Filter Opticap XL 10 Millipore Express SHC親水性メンブランフィルターによる濾過によって精製される。精製は、当分野で知られるさまざまな他の標準的な方法、例えば遠心分離、または当分野で知られる孔サイズ0.2μmまたはそれ以上の任意のセルロースアセテートフィルターでの濾過によって行うこともできる。
【0120】
いくつかの態様において、rAAV生産培養の収穫物は、生産培養物中に存在しうる高分子量DNAを消化するために、Benzonase(登録商標)でさらに処理される。いくつかの態様において、Benzonase(登録商標)消化は、当分野で知られる標準的な条件で、例えば、Benzonase(登録商標)の終濃度1〜2.5単位/ml、周囲温度ないし37℃の範囲の温度で、30分間ないし数時間行われる。
【0121】
rAAV粒子は、下記精製ステップの1つまたはそれ以上を用いて単離または精製されうる:平衡遠心分離;フロースルー陰イオン交換濾過;rAAV粒子を濃縮するためのタンジェンシャルフロー濾過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAV捕捉;ヘルペスウイルスの熱不活化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるバッファー交換;ナノフィルトレーション;ならびに陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーによるrAAV捕捉。これらステップは、単独で、さまざまに組み合わせて、または異なる順序で用いられうる。いくつかの態様において、方法は、後述の順序ですべてのステップを含む。rAAV粒子の精製方法は、例えば、Xiao et al., (1998) Journal of Virology 72:2224-2232、米国特許第6989264号および同第8137948号、ならびにWO 2010/148143に記載されている。
【0122】
医薬組成物
本開示により、補体系ポリペプチド(例えばCFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子を含むrAAV粒子、および/または処置用核酸、および薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物も提供される。医薬組成物は、本書に記載される任意の投与様式、例えば硝子体内投与に適当でありうる。
【0123】
いくつかの態様において、組成物は、rAAV中の導入遺伝子によりコードされる補体系ポリペプチドを加工(例えば切断)するポリペプチド(またはポリペプチドをコードする核酸)を含む。しかしながら、いくつかの特定の態様において、組成物は、rAAV中の導入遺伝子によりコードされる補体系ポリペプチドを加工(例えば切断)するポリペプチド(またはポリペプチドをコードする核酸)を含まない。
【0124】
網膜疾患、例えばLCA、網膜色素変性症および加齢黄斑変性症のための遺伝子治療プロトコルは、ベクターの、網膜の細胞への局在化された送達を必要とする。該疾患において処置標的となりうる細胞は、網膜における視細胞、または神経感覚網膜の下のRPEの細胞である。該細胞に遺伝子治療ベクターを送達するには、網膜とRPEの間の網膜下腔への注入が必要である。いくつかの態様において、本開示は、補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードするrAAV遺伝子治療ベクターを、網膜の細胞に送達する方法を提供する。
【0125】
いくつかの態様において、本書に記載されるrAAVおよび薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物は、ヒト対象への投与に適当である。そのような担体は、当分野でよく知られている(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Edition, pp. 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。いくつかの態様において、本書に記載されるrAAVおよび薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物は、眼注射に適当である。いくつかの態様において、医薬組成物は、硝子体内注射に適当である。いくつかの態様において、医薬組成物は、網膜下送達に適当である。そのような薬学的に許容しうる担体は、無菌の液体、例えば水および油、例えば石油、動物、植物または合成物由来のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油等でありうる。塩類液ならびにデキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロールの水溶液も、特に注射用液剤用に、液体担体として使用することができる。医薬組成物は、さらなる成分、例えば保存剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、抗酸化剤および安定剤、非イオン性湿潤または清澄化剤、増粘剤等をも含みうる。本書に記載される医薬組成物は、単回単位用量形態または多回用量形態に包装されうる。組成物は一般に、無菌で実質的に等張である溶液として製剤化される。
【0126】
一態様において、上記のような標的眼細胞における使用のための、補体系ポリペプチド(例えば、CFH、FHL1、FHL2、FHL3、FHL4またはFHL5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする所望の導入遺伝子、および構成的または組織もしくは細胞特異的プロモーターを含む組換えAAVは、網膜下または硝子体内注射を意図した医薬組成物に製剤化される。いくつかの態様において、本書に開示される組成物は、黄斑の任意の1つまたはそれ以上の領域、例えば中心窩小窩、中心小窩、中心窩無血管帯、中心窩、傍中心窩または周中心窩の細胞を標的とする。そのような処方は、薬学的および/または生理学的に許容しうる賦形剤または担体、特に、眼への投与、例えば網膜下注射による眼への投与に適当なもの、例えばpHを適当な生理学的レベルに保つための緩衝食塩液または他の緩衝液(例えばHEPES)、ならびに場合により他の処置剤、薬剤、安定剤、緩衝剤、担体、佐剤、希釈剤等の使用を伴う。注射用には、担体は典型的には液体でありうる。生理学的に許容しうる担体は、発熱物質不含有の無菌水、および発熱物質不含有の無菌リン酸緩衝食塩液を包含する。知られているそのようなさまざまな担体が、米国特許公報第7629322号に記載されており、該文献を引用により本書の一部とする。一態様において、担体は、等張塩化ナトリウム溶液である。他の一態様において、担体は、平衡塩溶液である。一態様において、担体は、ツイーン(tween)を含む。ウイルスを長期間貯蔵するのであれば、グリセロールまたはTween20の存在下に凍結しうる。他の一態様において、薬学的に許容しうる担体は、界面活性剤、例えばパーフルオロオクタン(Perfluoron液)を含む。
【0127】
本書に記載される方法のいくつかの態様において、前記医薬組成物は、網膜下注射によって対象に投与される。他のいくつかの態様において、医薬組成物は、硝子体内注射によって投与される。本書に記載される方法に有用でありうる他の投与形態は、所望の器官(例えば眼)への直接送達、経口、吸入、鼻内、気管内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、および他の非経口投与経路を包含するがそれに限定されない。所望により、複数の投与経路を組み合わせうる。いくつかの態様において、本開示の医薬組成物は、補体系タンパク質が初めに投与された後に投与される。
【0128】
いくつかの態様において、本書に開示される任意のベクター/医薬組成物は、グリア細胞、ミュラー細胞および/または網膜色素上皮細胞を標的とするように患者に投与される。いくつかの態様において、投与経路は、ニューロンを特異的な標的としない。いくつかの態様において、投与経路は、患者において網膜剥離のリスクを低減するように選択される(例えば網膜下よりもむしろ硝子体内投与)。いくつかの態様において、ベクター/組成物を高齢成人(例えば60歳以上)に投与するならば、硝子体内投与が選択される。いくつかの特定の態様において、本書に開示される任意のベクター/医薬組成物は、対象に硝子体内投与される。硝子体内注射の手順は、当分野において知られている(例えばPeyman, G.A., et al. (2009) Retina 29(7):875-912 および Fagan, X.J. and Al-Qureshi, S. (2013) Clin. Experiment. Ophthalmol. 41(5):500-7を参照されたい)。簡潔に述べると、硝子体内注射を受ける対象において、処置の準備として、散瞳、眼消毒および麻酔剤投与を行いうる。散瞳のために、当分野で知られる任意の適当な散瞳剤を使用しうる。処置前に、十分な散瞳が確認されうる。消毒は、眼消毒処置、例えばヨーダイド含有溶液、例えばポビドン−沃素(BETADINE(登録商標))の適用によってなされうる。同様の溶液を、眼瞼、睫毛および他の周辺組織(例えば皮膚)の清浄化にも使用しうる。任意の適当な麻酔剤、例えばリドカインまたはプロパラカインを、任意の適当な濃度で使用しうる。麻酔剤は、液滴、ゲルもしくはゼリーの局所適用、ならびに結膜下麻酔剤適用を包含するがそれに限定されない、当分野で知られる任意の方法で投与されうる。注射に先立ち、滅菌した開瞼鏡を使用して、当該領域から睫毛を避けうる。注射部位がシリンジでマークされうる。注射部位は、患者の水晶体に基づいて選択されうる。例えば、注射部位は、偽水晶体または無水晶体患者においては輪部(limus)から3〜3.5mm、有水晶体患者においては輪部(limbus)から3.5〜4mmでありうる。患者は、注射部位とは反対の方向を見ることができる。注射の間、針は、眼の中心に向けて強膜に対して垂直に挿入されうる。針は、先端が、網膜下腔ではなく硝子体内に達するように挿入されうる。当分野で知られる任意の適用な注射体積が用いられうる。注射の後、眼は、消毒剤、例えば抗生物質で処置されうる。眼はまた、過剰の消毒剤を除去するために洗浄されうる。
【0129】
さらに、いくつかの態様において、処置の標的とする特定の眼細胞の領域を特定するために、非侵襲的な網膜画像化および機能検査を行うことが望ましい。そのような態様において、臨床診断試験を用いて、1またはそれ以上の網膜下注射のための正確な位置が決定される。そのような試験は、検眼鏡検査、網膜電図(ERG)(特にb波測定)、視野検査、共焦点走査レーザー検眼鏡(cSLO)および光干渉断層撮影(OCT)による網膜層のトポグラフィックマッピングおよび層の厚さ測定、補償光学(AO)による錐体密度のトポグラフィックマッピング、眼機能検査等を包含しうる。
【0130】
そのような、および他の望ましい試験は、国際特許出願番号PCT/US2013/022628に記載されている。いくつかの態様において、画像および機能試験に基づいて、異なる領域に存在する双極細胞を標的とするために、同じ1つの眼に1またはそれ以上の注射が行われる。各注射の体積およびウイルス力価は、後述するように個々に決定され、同じ眼または他方の眼になされる他の注射と同じであるかまたは異なりうる。他の一態様において、眼全体を処置するために、より大きい体積の単回注射がなされる。一態様において、rAAV組成物の体積および濃度は、特定領域の眼細胞のみに影響が及ぶように選択される。他の一態様において、rAAV組成物の体積および/または濃度は、未損傷の眼細胞を含む、より広い眼部分に到達するよう、より大きい。
【0131】
組成物は、処置する領域の大きさ、用いるウイルスの力価、投与経路、および方法による所望の効果に応じて、約0.1μL〜約1mL(この範囲内のすべての値を包含する)の体積で送達されうる。一態様において、体積は約50μLである。一態様において、体積は約70μLである。好ましい一態様において、体積は約100μlである。他の一態様において、体積は約125μLである。他の一態様において、体積は約150μLである。他の一態様において、体積は約175μLである。他の一態様において、体積は約200μLである。他の一態様において、体積は約250μLである。他の一態様において、体積は約300μLである。他の一態様において、体積は約450μLである。他の一態様において、体積は約500μLである。他の一態様において、体積は約600μLである。他の一態様において、体積は約750μLである。他の一態様において、体積は約850μLである。他の一態様において、体積は約1000μLである。細胞特異的プロモーター配列の制御下に所望の導入遺伝子をコードする核酸配列を有する組換えアデノ随伴ウイルスの有効な濃度は、好ましくは、1ml当たりのベクターゲノム(vg/mL)(ゲノムコピー/mL(GC/mL)とも称される)として約10〜1013の範囲である。rAAV感染単位は、引用により本書の一部とされるS.K. McLaughlin et al, 1988 J. Virol., 62: 1963に記載されるように測定される。網膜における濃度は、好ましくは約1.5×10vg/mL〜約1.5×1012vg/mL、より好ましくは約1.5×10vg/mL〜約1.5×1011vg/mLである。いくつかの好ましい態様において、有効な濃度は、約2.5×1010vg/mL〜約1.4×1011vg/mLである。一態様において、有効な濃度は約1.4×10vg/mLである。一態様において、有効な濃度は、約3.5×1010vg/mLである。他の一態様において、有効な濃度は、約5.6×1011vg/mLである。他の一態様において、有効な濃度は、約5.3×1012vg/mLである。他の一態様において、有効な濃度は、約1.5×1012vg/mLである。他の一態様において、有効な濃度は、約1.5×1013vg/mLである。一態様において、有効な濃度(送達される総ゲノムコピー)は、約10〜1013ベクターゲノムである。傷害性、網膜異形成および剥離といった望ましくない作用のリスクを低減するために、最低有効濃度のウイルスを用いることが望ましい。処置の対象、好ましくはヒトの健康状態、対象の年齢、眼疾患の種類、および疾患が進行性であるならば進行程度を考慮して、前記の範囲のさらに別の用量および投与体積が医師によって選択されうる。眼外送達のためには、用量は、網膜からのスケールアップにしたがって増加されうる。例えば静脈内送達には、1.5×1013vg/kgのオーダーの用量が必要でありうる。
【0132】
本開示の方法に有用な医薬組成物はさらに、PCT公開番号WO2015168666およびPCT公開番号WO2014011210に記載されており、その内容を引用により本書の一部とする。
【0133】
治療/予防の方法
本書において、眼疾患およびそれに関連する網膜の変化を、予防、治療、進行抑制または改善するさまざまな方法を記載する。全般に、方法は、それを必要とする哺乳動物対象に、対象の眼細胞において遺伝子産物を発現させる調節配列の制御下に補体系ポリペプチド(CFH、FHL1、FHR1、FHR2、FHR3、FHR4またはFHR5)またはその生物学的活性フラグメントをコードする導入遺伝子を含む前記組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)および薬学的に許容しうる担体を含む組成物を有効量で投与することを含む。任意の本書に記載されるAAVが、下記に説明する方法において有用である。
【0134】
網膜疾患、例えばLCA、網膜色素変性症および加齢黄斑変性症の遺伝子治療プロトコルは、ベクターの、網膜の細胞への局在化された送達を必要とする。該疾患において処置標的となりうる細胞は、網膜の視細胞、または神経感覚網膜の下のRPEの細胞である。該細胞に遺伝子治療ベクターを送達するには、網膜とRPEの間の網膜下腔への注入が必要である。いくつかの態様において、本開示は、補体系遺伝子またはそのフラグメントを含むrAAV遺伝子治療ベクターを、網膜の細胞に送達する方法を提供する。
【0135】
一側面において、本開示は、本開示の任意のベクターを加齢黄斑変性症(AMD)を有する対象に投与することを含む、該対象を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、ベクターは、2.5×1010vg〜1.4×1011vg/眼で約50μl〜約100μlの用量で投与される。いくつかの態様において、ベクターは、1.0×1011vg〜1.5×1013vg/眼で約50μl〜約100μlの用量で投与される。いくつかの態様において、ベクターは、1.0×1011vg〜1.5×1012vg/眼で約50μl〜約100μlの用量で投与される。いくつかの態様において、ベクターは、約1.4×1012vg/眼で約50μl〜約100μlの用量で投与される。いくつかの態様において、ベクターは、1.4×1012vg/眼で約50μl〜約100μlの用量で投与される。いくつかの態様において、本開示の医薬組成物は、薬学的に許容しうる担体を含む。いくつかの態様において、本開示の医薬組成物は、PBSを含む。いくつかの態様において、本開示の医薬組成物は、プルロニック(pluronic)を含む。いくつかの態様において、本開示の医薬組成物は、PBS、NaClおよびプルロニックを含む。いくつかの態様において、ベクターは、NaClおよびプルロニックが添加されたPBS溶液において硝子体内注射によって投与される。
【0136】
いくつかの態様において、本開示の方法にしたがって用いられる本開示の任意のベクターは、本書に開示される標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)におけるCFHおよび/またはFHL1の発現を、該標的細胞におけるCFHおよび/またはFHL1の内因の発現と比較して、少なくとも5%、10%、20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%より高く誘導することができる。いくつかの態様において、本書に開示される標的細胞(例えばRPEまたは肝細胞)における本書に開示される任意のベクターの発現がもたらすCFHおよび/またはFHL1活性レベルは、該標的細胞における内因のCFHおよび/またはFHL1活性レベルと比較して、少なくとも5%、10%、20%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、700%、900%、1000%、1100%、1500%または2000%より高い。
【0137】
いくつかの態様において、本書に開示される任意のベクターは、被験対象の細胞または組織に投与される。いくつかの態様において、被験対象の細胞または組織は、参照対照対象または参照対照対象集団の同じ種類の細胞または組織と比較して、CFHおよび/またはFHL1をより少なく発現するか、または機能の劣るCFHおよび/またはFHL1を発現する。いくつかの態様において、参照対照対象は、被験対象と年齢および/または性別が同じである。いくつかの態様において、参照対照対象は健常対象であり、例えば、該対象は眼の疾患または障害を持たない。いくつかの態様において、参照対照対象は、補体カスケードの活性化が関与する眼の疾患または障害を持たない。いくつかの態様において、参照対照対象は、黄斑変性を持たない。いくつかの態様において、被験対象の眼および/または眼の特定の種類の細胞(例えば中心窩領域の細胞)は、参照対照対象または参照対照対象集団と比較して、CFHおよび/またはFHL1、または機能的CFHおよび/またはFHL1を、少なくとも95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%少なく発現する。いくつかの態様において、被験対象の眼および/または眼の特定の種類の細胞(例えば中心窩領域の細胞)は、本書に開示される任意のCFHおよび/またはFHL1変異を有するCFHおよび/またはFHL1タンパク質を発現する。いくつかの態様において、参照対照対象の眼および/または眼の特定の種類の細胞(例えば中心窩領域の細胞)は、本書に開示される任意のCFHおよび/またはFHL1変異を有するCFHおよび/またはFHL1タンパク質を発現しない。いくつかの態様において、被験対象の細胞または組織における本書に開示される任意のベクターの発現は、CFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルの上昇をもたらす。いくつかの態様において、被験対象の細胞または組織における本書に開示される任意のベクターの発現は、CFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルの上昇をもたらし、該上昇レベルは、参照対照対象または参照対照対象集団における同じ種類の細胞または組織により発現されるCFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%もしくは1%以内であるか、またはそのレベルと同じである。いくつかの態様において、被験対象の細胞または組織における本書に開示される任意のベクターの発現は、CFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルの上昇をもたらすが、該上昇したCFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルは、参照対照対象または参照対照対象集団における同じ種類の細胞または組織により発現されるCFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルを超えない。いくつかの態様において、被験対象の細胞または組織における本書に開示される任意のベクターの発現は、CFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルの上昇をもたらすが、該上昇したCFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルは、参照対照対象または参照対照対象集団における同じ種類の細胞または組織により発現されるCFHおよび/またはFHL1タンパク質、または機能的CFHおよび/またはFHL1タンパク質のレベルを、1%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%より多くは超えない。いくつかの態様において、本書に開示される任意の治療または予防方法が対象に適用される。いくつかの態様において、対象は哺乳動物ある。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、ヒトは成人である。いくつかの態様において、ヒトは高齢の成人である。いくつかの態様において、ヒトは、年齢が40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳または95歳以上である。いくつかの態様において、ヒトは、年齢が60歳または65歳以上である。
【0138】
いくつかの態様において、本書に開示される任意の治療および/または予防方法は、黄斑変性症(AMD)を引き起こすかまたは患者がAMDを発症する可能性を高める1つまたはそれ以上の変異を有する患者の処置に使用するためのものである。いくつかの態様において、本書に開示される任意の治療および/または予防方法は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を引き起こすかまたは患者がaHUSを発症する可能性を高める1つまたはそれ以上の変異を有する患者の処置に使用するためのものである。いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の変異は、患者のCFI遺伝子中に存在する。いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の変異は、患者のCFH遺伝子中に存在する。いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の変異は、患者のCFH遺伝子およびCFI遺伝子の両方に存在する。いくつかの態様において、対象は、CFH遺伝中に機能低下変異を有する。いくつかの態様において、対象は、CFI遺伝子中に機能低下変異を有する。
【0139】
いくつかの態様において、本書に開示される任意の治療および/または予防方法は、CFI遺伝子中に1つまたはそれ以上の変異を有する患者の処置に使用するためのものである。いくつかの態様において、患者は、FIMAC、CD5、L1、L1−Ca結合、L1−ジスルフィド結合、L2、L2−Ca結合、セリンプロテアーゼ、またはセリンプロテアーゼ活性部位のドメインの1つまたはそれ以上において変異を有する。いくつかの態様において、患者は、CFIタンパク質のジスルフィド結合部位に1つまたはそれ以上の変異を有する。いくつかの態様において、変異は、

からなる群から選択される1つまたはそれ以上の変異である。いくつかの特定の態様において、変異は、G119R, L131R, V152M, G162D, R187Y, R187T, T203I, A240G, A258T, G287R, A300T, R317W, R339Q, V412MおよびP553Sからなる群から選択される任意の変異である。いくつかの態様において、本書に記載される任意のCFI変異体アミノ酸位置は、配列番号35の野生型アミノ酸CFI配列に対応する。
【0140】
いくつかの態様において、本書に開示される任意の治療および/または予防方法は、CFH遺伝子中に1つまたはそれ以上の変異を有する患者の処置に使用するためのものである。いくつかの態様において、患者は、プレSCR1またはSCR1〜SCR20ドメインの1つまたはそれ以上の変異を有する。いくつかの態様において、患者は、SCR間の移行領域の1つまたはそれ以上に変異を有する。いくつかの態様において、変異は、


からなる群から選択される1つまたはそれ以上の変異である。いくつかの特定の態様において、変異は、R2T, L3V, R53C, R53H, S58A, G69E, D90G, R175Q, S193L, I216T, I221V, R303W, H402Y, Q408X, P503A, G650V, R1078S, およびR1210Cからなる群から選択される1つまたはそれ以上の変異である。いくつかの態様において、本書に記載される任意のCFH変異体アミノ酸位置は、配列番号33の野生型アミノ酸CFH配列に対応する。
【0141】
いくつかの態様において、本書に開示される任意のベクターは、網膜の疾患または合併症の処置に使用するためのものである。いくつかの態様において、網膜疾患または合併症は、患者のAMDに関連する。いくつかの態様において、網膜疾患または合併症は、患者のaHUSに関連する。いくつかの態様において、網膜疾患または合併症の処置のために投与されるベクターは、肝臓における強い発現に関与するプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、AAT1、PCK1またはALB1プロモーター(例えば、配列番号16、18または20のヌクレオチド配列を含むプロモーター)である。
【0142】
上記網膜疾患は、さまざまな網膜の変化を伴う。それには、光受容器構造または機能の悪化;外顆粒層(ONL)の菲薄化または肥厚;外網状層(OPL)の菲薄化または肥厚;桿体および錐体外節の位置変化とその後の喪失;桿体および錐体内節の短縮;双極細胞樹状突起の退縮;内顆粒層、内網状層、神経節細胞層および神経線維層を含む網膜内側の層の菲薄化または肥厚;オプシン存在位置の変化;神経線維の過剰発現;網膜の特定の部分(例えば、中心窩または黄斑)の菲薄化;ERG機能低下;視力およびコントラスト感度の低下;視運動性反射の低下;瞳孔対光反射の低下;ならびに視覚情報に基づく行動の低下が包含されうる。一態様において、前記網膜疾患に関連する任意の網膜変化を、予防、進行抑制または改善する方法が提供される。その結果として、対象の視力が改善されるか、または視力低下が抑制および/または改善される。
【0143】
一態様において、対象において眼障害に関連する視力低下を予防、進行抑制または改善する方法が提供される。眼障害に関連する視力低下とは、周辺視力、中心(読書)視力、夜間視力、昼間視力の低下、色知覚低下、コントラスト感度低下、または視力低下、の任意の低下をいう。
【0144】
他の一態様において、それを必要とする対象における遺伝子を増強する療法のために1つまたはそれ以上の種類の眼細胞を標的化する方法が提供される。他の一態様において、それを必要とする対象における遺伝子を抑制する療法のために1つまたはそれ以上の種類の眼細胞を標的化する方法が提供される。さらに別の一態様において、それを必要とする対象における遺伝子ノックダウン/増強療法のために1つまたはそれ以上の種類の眼細胞を標的化する方法が提供される。他の一態様において、それを必要とする対象における遺伝子訂正療法のために1つまたはそれ以上の種類の眼細胞を標的化する方法が提供される。さらに別の一態様において、それを必要とする対象における神経栄養因子遺伝子療法のために1つまたはそれ以上の種類の眼細胞を標的化する方法が提供される。
【0145】
本書に記載される任意の方法において、標的細胞は眼細胞でありうる。一態様において、標的細胞はグリア細胞である。一態様において、標的細胞はRPE細胞である。一態様において、標的細胞は視細胞である。他の一態様において、視細胞は錐体細胞である。他の一態様において、標的細胞はミュラー細胞である。他の一態様において、標的細胞は双極細胞である。他の一態様において、標的細胞は水平細胞である。他の一態様において、標的細胞はアマクリン細胞である。他の一態様において、標的細胞は神経節細胞である。他の一態様において、遺伝子は、発現され、細胞内オルガネラ、例えばミトコンドリアまたはリソソームに送達される。
【0146】
本書において、「光受容器機能低下」とは、疾患のない正常な眼、または過去の時点の同じ眼と比較したときの、光受容器機能の低下を意味する。本書において、「光受容器機能を高める」とは、罹患眼(同じ眼疾患を有する)、過去の時点での同じ眼、同じ眼の未処置部分、または同じ患者の他方の眼との比較において、光受容器機能を改善すること、または機能的光受容器のパーセンテージ数を増加することを意味する。光受容器機能は、前記の、および後述の実施例に記載される、当分野で知られる機能試験、例えばERGまたは視野検査を用いて評価されうる。
【0147】
前記方法のそれぞれについて、処置は、網膜損傷の発症を予防するか、または軽度の、もしくは進行した疾患を有する眼を救済するように用いられうる。本書において、用語「救済」とは、疾患が完全な視力喪失に進行するのを防止すること、損傷が未損傷眼細胞に広がるのを防止すること、損傷眼細胞における損傷を改善すること、または視力の向上を提供すること、を意味する。一態様において、組成物は、疾患の症候性となる前に、または光受容器が喪失される前に投与される。症候性とは、前記のさまざまな網膜変化、または視力低下のいずれかの発症を意味する。他の一態様において、組成物は、疾患が症候性となった後に投与される。他の一態様において、組成物は、光受容器喪失が始まった後に投与される。他の一態様において、組成物は、外顆粒層(ONL)の変性が始まった後に投与される。いくつかの態様において、双極細胞から神経節細胞および視神経への回路が損なわれていない間に組成物が投与されることが望ましい。
【0148】
他の一態様において、組成物は、光受容器の喪失が始まった後に投与される。他の一態様において、組成物は、疾患のない眼と比較して、90%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、80%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、70%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、60%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、50%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、40%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、30%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、20%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。他の一態様において、組成物は、10%未満の光受容器が機能するかまたは残存するときに投与される。一態様において、組成物は、眼の1つまたはそれ以上領域にのみ投与される。他の一態様において、組成物は、眼全体に投与される。
【0149】
他の一態様において、方法は、処置の効果を調べるために機能および画像化試験を行うことを含む。そのような試験は、後述の実施例において記載されるような、ERGおよびインビボ網膜画像化を包含する。さらに、視野検査、ペリメトリーおよびマイクロペリメトリー、瞳孔測定、眼球運動試験、視力、コントラスト感度、色覚検査を行いうる。
【0150】
さらに別の一態様において、任意の上記方法は、他のまたは補助的な処置法と組み合わせて実施される。そのような処置法は、任意の記載される網膜変化および/または視力低下の予防、抑制または改善を補助する、現在知られているか、または未だ知られていない任意の処置法でありうる。一態様において、補助的な処置法は、カプセル封入細胞療法(例えば毛様体神経栄養因子(CNTF)を送達するもの)である。引用により本書の一部されるSieving, P.A. et al, 2006. Proc Natl Acad Sci USA, 103(10):3896-3901を参照されたい。他の一態様において、補助的な処置法は、神経栄養因子療法である(例えば色素上皮由来因子PEDF;毛様体神経栄養因子3;桿体由来錐体生存因子(RdCVF)、またはグリア由来神経栄養因子)。他の一態様において、補助的な処置法は、抗アポトーシス療法である(例えば、X連鎖アポトーシス抑制タンパク質XIAPを送達するもの)。他の一態様において、補助的な処置法は、桿体由来錐体生存因子2である。補助的な処置法の投与は、前記rAAVの投与の前、それと同時、またはその後でありうる。
【0151】
いくつかの態様において、本書に開示される任意のベクターまたは組成物は、本書に開示される他の任意のベクターまたは組成物と組み合わせて対象に投与される。いくつかの態様において、本書に開示される任意のベクターまたは組成物は、他の処置剤または処置法と組み合わせて対象に投与される。いくつかの態様において、さらなる処置剤は、抗VEGF処置剤(例えば、抗VEGF抗体またはそのフラグメント、例えばラニビズマブ、ベバシズマブまたはアフリベルセプト)、ビタミンまたはミネラル(例えば、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチン、亜鉛または銅)、オメガ3脂肪酸、および/またはVisudyne(商標)である。いくつかの態様において、他の処置法は、低オメガ6脂肪酸食、レーザー手術、レーザー光凝固、黄斑下手術、網膜移動、および/または光線力学療法である。
【0152】
いくつかの態様において、本書に開示される任意のベクターは、ベクター/組成物でコードされるタンパク質の機能に作用するおよび/または該機能を改善するために必要なさらなる薬剤と組み合わせて対象に投与される。例えば、ベクターがCFH遺伝子を含む場合、ベクターは、発現されるCFHタンパク質の活性を増強する抗体(または抗体をコードするベクター)と組み合わせて患者に投与されうる。そのような抗体の例は、その全体が本書の一部とされるWO2016/028150に記載されている。いくつかの態様において、ベクターは、さらなるポリペプチド(またはさらなるポリペプチドをコードするベクター)と組み合わせて投与され、ここで、さらなるポリペプチドは、ベクターによりコードされるタンパク質に作用することができ、例えば、コードされる前駆体タンパク質をその成熟形態へと変化させることができる。いくつかの態様において、作用するタンパク質はプロテアーゼ(例えば、フーリンプロテアーゼ)である。
【0153】
キット
いくつかの態様において、本書に開示される任意のベクターは、治療、診断または研究適用におけるその使用を促進するために、医薬または診断用または研究用キットに組み込まれる。キットは、本書に開示される任意のベクターを収容する1つまたはそれ以上の容器、および使用のための指示書を含みうる。
【0154】
キットは、本書に記載される方法の研究者による使用を促進するようにデザインされ得、多くの形態をとりうる。キットの各成分は、該当する場合、液体形態で(例えば溶液として)、または固体形態で(例えば乾燥粉末として)提供されうる。いくつかの態様において、組成物のいくつかは、構成可能または加工可能(例えば活性形態へと)であり得、これは例えば、キットと共に提供されるかまたはされない適当な溶媒または他の物質(例えば、水または細胞培養培地)の添加によってなされる。本書において、「指示書」は、指示および/またはプロモーションの構成成分を規定し得、典型的には、本開示のパッケージングに対するまたはそれに関連する指示書面を伴う。指示書は、指示書がキットに関するものであることを使用者が明確に理解しうる任意の様式で提供される、任意の口頭または電子情報の指示書をも包含し得、その例には、オーディオビジュアル(例えばビデオテープ、DVD等)、インターネットおよび/またはウェブに基づくコミュニケーション等がある。指示書は、医薬または生物学的産物の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定される形態であり得、該指示書はまた、該機関による、動物投与のための製造、使用または販売の承認を反映しうる。
【実施例】
【0155】
本開示の全般的な説明を行ってきたが、本開示は、下記実施例を参照して、より容易に理解されうる。実施例は、本開示の特定の態様を説明する目的で含まれるに過ぎず、本開示の限定を意図するものではない。
【実施例1】
【0156】
AAVベクターの作製
コドン最適化されたかまたはされていないCFHおよび/またはCFHL配列を、さまざまに異なるプロモーター、および場合によりSV40イントロンとの組み合わせとして含むAAV2ベクターがデザインされた。作製された異なるベクターのマップを図1〜6に示す。下記表に、カセットに含まれる遺伝子、含まれるプロモーター、コンストラクトマップの図番、およびベクターに係る配列を記載する。
【0157】
【表1】
【0158】
細胞に形質導入し補体活性を調節するAAV.CFHおよびAAV.FHL1ベクターの能力
まず、上記の各CFHベクターを、インビトロでHEKおよびARPE19細胞においてトランスフェクションにより試験し、細胞ペレットおよび上清の両方におけるヒトCFHおよびFHL1タンパク質の発現を評価しうる。タンパク質の検出および定量に、ウエスタンブロットのような技術を用いうる。mRNA発現レベルを、定量的リアルタイムPCRを用いて測定しうる。補体活性の調節を、van der Burght et al, Acta Ophthalmol, 2013に記載されるようなA2Eを取り込ませた網膜色素上皮細胞の青色光照射の細胞培養モデルにおいて試験しうる。簡潔に述べると、ARPE−19細胞をコンフルエントに増殖させ、10μM A2Eを加えたかまたは取り除いた標準的な培地中で4週間培養する。RPEに青色光を照射する。培地を、カルシウム、マグネシウムおよび5.5mMグルコースを含むPBSと交換し、細胞に青色光(430±30nm)を0、5または10分間照射する。RPE細胞を、適当に補体を除去したヒト血清±と共にインキュベートし、AAV.CFHおよびAAV.FHL1ベクターでトランスフェクトする。RPEの、細胞表面マーカーCD46、CD55およびCD59との免疫反応性、ならびにC3およびMAC沈着を、蛍光顕微鏡検査またはウエスタンブロットによって評価しうる。iC3bのレベルをウエスタンブロットによって測定しうる。
【0159】
ARPE19細胞における評価の後、AAV.CFHおよびAAV.FHL1ベクターを、光誘発網膜変性およびレーザー誘発脈絡膜血管新生のマウスモデルにおいて、腹腔内注射して試験しうる。産生されたタンパク質の量およびその網膜における分布を、ウエスタンブロットおよび免疫組織化学によって試験しうる。光受容器菲薄化およびRPE細胞死の救済を、光干渉断層撮影、眼底撮影および組織学的解析によって評価しうる。RPEの、細胞表面マーカーCD46、CD55およびCD59との免疫反応性、ならびにC3およびMAC沈着を、蛍光顕微鏡検査またはウエスタンブロットによって評価しうる。iC3b(C3の分解産物)のレベルをウエスタンブロットによって測定しうる。
【0160】
マウス試験に基づいて、非ヒト霊長類に適当な用量を決定しうる。非ヒト霊長類試験は、カニクイザルにおいて硝子体内注射によって行いうる。処置有益性は、RPEによって産生され分泌されるCFHおよびFHL1タンパク質のレベルに基づいて評価しうる。分泌されたCFHおよびFHL1タンパク質の量は、網膜および脈絡膜において、注射されていないかまたはシャム注射されたコホートと比較して測定しうる。網膜および脈絡膜におけるCFHおよびFHL1レベルの上昇は、該タンパク質の喪失または減少をもたらす稀な変異を有するAMD集団において処置利益を提供すると考えられる。
【実施例2】
【0161】
CFHプラスミドによるHEK−293T細胞のトランスフェクション
いくつかの特定のプロモーター(EF1a.SV40i;EF1a;CRALBP;またはAAT1)の1つの制御下にCFHまたはGFPを発現することのできるプラスミドを、HEK293T細胞に導入した。1mg/LのプラスミドDNAを用いて細胞をトランスフェクトした。1:1のDNA:PEI比で、PEIを細胞に導入した。細胞を120時間培養し、分析用にサンプルを採取した。細胞を溶解し、上清を採り、還元PAGEゲルに流し、ウエスタンブロットのために膜に転写した。CFH検出のための一次抗体は、ヒトCFHに対するQuidelヤギ抗血清で、1:1000、4℃で一晩撹拌して用いる。二次抗体は、ウサギ抗ヤギ抗体で、1:5000で、室温で1時間の条件で用いた。ローディングコントロールとしてウサギ抗GAPDHポリクローナル抗体を含め(1:1000希釈)、二次抗体はウサギ抗ヤギ抗体(1:5000)で、室温で1時間の条件で用いた。ウエスタンブロット分析の結果を図18に示す。EF1a.SV40i;EF1a;またはCRALBPプロモーターの制御下のCFHプラスミドでトランスフェクトされた細胞サンプルにおいて、強いCFH発現が観察されたが、AAT1プロモーターの制御下のCFHプラスミドでトランスフェクトされたサンプルにおいては、より弱い発現が観察された。陰性対照サンプルにおいてはCFHは検出されなかった。ウエスタンブロットのデータは、デンシトメトリーによって定量し、各サンプルのCFH発現レベルとGAPDH発現レベルとの比を計算した(図19)。
【実施例3】
【0162】
CFH−AAVベクターによるHEK細胞のトランスフェクション
HEK293細胞にさまざまなCFH−AAV2コンストラクトで3日間形質導入し、上清サンプルを採り、組換えCFH、組換えGFP、トランスフェクトされていない細胞の溶解物、またはCFHではなく組換えGFPでトランスフェクトした細胞、といったさまざまな対照と共に、還元PAGEゲルに流した。CFHの検出のために、Quidelヤギ抗ヒトCFH抗体(A312)を使用し、ブロットを1:1000希釈で一晩インキュベートし、洗浄後、ウサギ抗ヤギHRP二次抗体(Jackson Immunoresearch)と1:5000希釈で、室温で1時間、撹拌しながらインキュベートした。別に、ブロットを、マウス抗eGFP抗体(Thermo Fisher, MA 1-952)と、1:1000希釈で一晩インキュベートし、洗浄後、ウサギ抗ヤギHRP二次抗体(Jackson Immunoresearch)と1:5000希釈で、室温で1時間、撹拌しながらインキュベートした。ウエスタンブロットの結果を図20に示す。トランスフェクトされていないかまたはモックでトランスフェクトされた細胞よりも、AAV−CFHコンストラクトでトランスフェクトされた細胞からの上清において、強いCFH発現が検出された。
【実施例4】
【0163】
AAV2−CFHベクターによるマウスの硝子体内処置
EF1a.SV40iまたはEF1aプロモーターの制御下のAAV2−CFHベクターを、マウスに硝子体内注射した。注射の21日後に眼を採り、CFHタンパク質の検出のために免疫組織化学を行った。標準的な方法で眼を包埋し、切片化し、スライドに載せた。スライドを1×PBS中で3×5分間洗った。高湿の暗室において、切片をブロッキングバッファー(5%BSA、10%ロバ血清、0.5% Triton X-100)により室温で1時間ブロックした。高湿の暗室において、サンプルを、1:20の濃度のCFH抗体(Novus cat. AF4779-SP)によって4℃で一晩染色した。ブロッキングバッファー中に抗体液を調製した。次いで、スライドを1×PBS中で3×5分間洗った。高湿の暗室において、サンプルを、1:1000の濃度のロバ抗ヤギ二次抗体(Thermofisher cat. A11056)によって室温で1時間染色した。ブロッキングバッファー中に抗体液を調製した。次いで、スライドを1×PBS中で3×5分間洗った。サンプルにヘキスト液を載せ、シールし、画像化した。555(テキサスレッド)チャンネルを用いてCFHを検出した。中程度のCFHタンパク質発現が神経節細胞層において見られ、弱いCFHタンパク質発現が内顆粒層において見られた。
【実施例5】
【0164】
AAVベクターによるAMD患者の処置
本試験は、AMD患者の処置のための実施例1のベクターの効果を評価しうる。AMD患者を、任意のCFH AAVベクターまたは対照で処置しうる。ベクターは、2.5×10vg〜1.4×1011vg/眼で約100μlのさまざまな用量で投与されうる。ベクターは、NaClおよびプルロニックを添加したPBSの溶液として硝子体内注射により投与されうる。患者を、AMD症状の改善に関してモニターしうる。
【0165】
CFHおよび/またはFHL1 AAV2ベクターによる処置は、AMDの症状を改善しうると考えられる。
【0166】
引用による組み込み
本書に記載される刊行物および特許はすべて、あたかも個々の刊行物または特許が、引用により本書の一部とされることが明確に、かつ、個別に記載されるかのように、引用によりその全体が本書の一部とされる。
【0167】
本発明の特定の態様を説明したが、明細書の記載は説明のためのものであって、限定のためのものではない。明細書および特許請求の範囲を参照すれば、当業者には、多くの改変が明らかになりうる。本開示の全範囲は、特許請求の範囲とその等価物全て、および明細書とそのような変化形、を参照して決定されるべきである。
【0168】
配列表




































































図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
2021500922000001.app
【国際調査報告】