特表2021-501007(P2021-501007A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-501007刻み目を付けるための拡張可能な部分を備えた外骨格デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-501007(P2021-501007A)
(43)【公表日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】刻み目を付けるための拡張可能な部分を備えた外骨格デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20201211BHJP
【FI】
   A61B17/3207
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-524127(P2020-524127)
(86)(22)【出願日】2018年10月29日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月10日
(86)【国際出願番号】US2018058057
(87)【国際公開番号】WO2019084567
(87)【国際公開日】20190502
(31)【優先権主張番号】62/578,378
(32)【優先日】2017年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/623,117
(32)【優先日】2018年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518271846
【氏名又は名称】トランジット サイエンティフィック,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【弁理士】
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】フォジティク,ショーン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ギャベイ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】バターフィールド,デヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF04
4C160FF21
4C160MM36
(57)【要約】
外骨格デバイスは、バルーンカテーテルのような拡張可能な器具の上方に配置されることができる。外骨格デバイスは、拡張可能な器具の拡張器を受け入れる拡張可能な部分を含む。拡張器が拡張すると、外骨格デバイスの拡張可能な部分が拡張し、外骨格デバイスの拡張可能な部分を治療すべき表面に押し付ける。拡張可能な部分は、押し付けられた表面に刻み目を付けることができてもよい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な器具と組み合わせることが可能な外骨格デバイスであって、
拡張可能な器具の拡張器の上方に配置することが可能で、複数のストラットを含む拡張可能な部分であって、
各ストラットが当該複数のストラットを当該拡張可能な部分の周囲に配置した状態で当該拡張可能な部分の長さに沿って延在し、
当該複数のストラットの各ストラットが複数の部分を含み、
各部分が当該拡張可能な部分を通る一対の平行なスリットによって画定され、
当該一対の平行なスリットの各スリットが当該複数のストラットのストラットの当該部分を当該複数のストラットの隣接するストラットの隣接する部分から画定し、
当該拡張可能な部分のスリットの配置が当該拡張可能な部分を半径方向に拡張可能なものとする、拡張可能な部分
を備える、外骨格デバイス。
【請求項2】
前記拡張可能な部分の外面は、当該拡張可能な部分が非拡張状態にあるとき、実質的に滑らかである、請求項1に記載の外骨格デバイス。
【請求項3】
前記拡張可能な部分は、複数の列のスリットを含み、当該複数の列の各列は、一連のスリットを含む、請求項1又は2に記載の外骨格デバイス。
【請求項4】
前記複数の列のスリットは、当該拡張可能な部分の周囲に前記拡張可能な部分の当該周囲の複数の発生器に沿って配置される、請求項3に記載の外骨格デバイス。
【請求項5】
前記複数の列のスリットの各列の前記一連のスリットの各スリットは、当該複数の列のスリットの各隣接する列の前記一連のスリットの少なくとも1つのスリットに対してオフセットされる、請求項3または4に記載の外骨格デバイス。
【請求項6】
前記複数の列のスリットの各列の前記一連のスリットの各スリットは、当該複数の列のスリットの各隣接する列の前記一連のスリットの少なくとも1つのスリットの長さの約半分だけオフセットされる、請求項5に記載の外骨格デバイス。
【請求項7】
前記拡張可能な部分の端部まで延在しない各スリットは、当該拡張可能な部分の端部まで延びない他の各スリットと同じ長さを有する、請求項6に記載の外骨格デバイス。
【請求項8】
前記複数の列のスリットの他の各列の前記一連のスリットのスリットは、等しい長さを有し、互いに完全に整列している、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の外骨格デバイス。
【請求項9】
スリットの配列は、当該ストラットの前記部分の少なくともいくつかを張力下で回転可能にする、請求項5乃至8のいずれか一項に記載の外骨格デバイス。
【請求項10】
拡張可能な器具と組み合わせることが可能な外骨格デバイスであって、
拡張可能な器具の拡張器の上方に配置されることが可能で、当該拡張可能な部分の周囲に配置された複数の列のスリットを含む、拡張可能な部分であって、
当該複数の列の各列が当該拡張可能な部分の前記周囲の発生器に沿って配置された一連のスリットを含み、
当該複数の列の各列の前記一連のスリットの各スリットが前記複数の列のスリットの各隣接する列の前記一連のスリットの少なくとも1つのスリットに対してオフセットされる、拡張可能な部分
を備える、外骨格デバイス。
【請求項11】
前記拡張可能な部分の端部まで延在しない各スリットは、当該拡張可能な部分の端部まで延びない他の各スリットと同じ長さを有する、請求項10に記載の外骨格デバイス。
【請求項12】
前記複数の列のスリットの他の各列の前記一連のスリットのスリットは、等しい長さを有し、互いに完全に整列している、請求項11に記載の外骨格デバイス。
【請求項13】
前記拡張可能な部分は、当該拡張可能な部分の前記周囲に配置された複数のストラットを含み、当該複数のストラットの各ストラットが当該複数の列のスリットの隣接する対の列のスリットの間に画定されて当該拡張可能な部分の長さに沿って延在する、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の外骨格デバイス。
【請求項14】
前記複数のストラットの各ストラットは、前記対の列のスリットによって画定される一連の回転可能な部分を含み、当該対のスリットが当該ストラットの両側にある、請求項13に記載の外骨格デバイス。
【請求項15】
被験者の体内に導入されて体外の皮膚部位と体内の治療部位との間の経路を画定することが可能なガイドワイヤと、
体内に導入されて前記経路に沿って体内を前進することが可能で、前記治療部位に配置可能な拡張可能な部分を含む、外骨格デバイスであって、当該拡張可能な部分が拡張可能な要素の拡張に際して拡張可能な複数のストラットを含む、外骨格デバイスと、
前記外骨格デバイスの前記拡張可能な部分に導入されて当該拡張可能な部分を拡張させることが可能な拡張器を備える拡張可能な器具と、
を備える、医療システム。
【請求項16】
前記複数のストラットは、前記拡張可能な器具の前記拡張可能な要素の拡張に際して、ストラットが押し付けられる表面に刻み目を付けることが可能な、請求項15に記載の医療システム。
【請求項17】
前記複数のストラット上に薬剤を更に備える、請求項16に記載の医療システム。
【請求項18】
前記複数のストラットの各ストラットは、前記拡張可能な器具の前記拡張可能な要素の拡張に際して、回転可能な少なくとも1つの部分を含む、請求項16又は17に記載の医療システム。
【請求項19】
被験者の体内の表面に刻み目を付けるための方法であって、
外骨格デバイスを被験者の身体に導入して、刻み目を付ける表面に隣接する位置に当該外骨格デバイスの拡張可能な部分を導入するステップと、
拡張可能な器具の拡張器を前記外骨格デバイスの前記拡張可能な部分内に提供するステップと、
前記拡張器を拡張するステップであって、前記外骨格デバイスの前記拡張可能な部分を拡張させ、前記刻み目を付ける表面に当該外骨格デバイスの当該拡張可能な部分を押し付け、当該表面に刻み目を付けるステップを含む、拡張するステップと、
を備える、方法。
【請求項20】
前記外骨格デバイスを被験者の体内に導入するステップは、被験者の体内に導入されたガイドワイヤに沿って当該外骨格デバイスを導入するステップを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記拡張可能な器具の前記拡張器を前記外骨格デバイスの前記拡張可能な部分内に提供するステップは、当該外骨格デバイスを当該拡張可能な器具の上方に導入するステップを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記拡張可能な器具の前記拡張器を前記外骨格デバイスの前記拡張可能な部分内に提供するステップは、当該外骨格デバイスを通して当該拡張可能な器具を導入するステップを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
薬剤を前記表面の刻み目に導入するステップを更に備える、請求項19乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
出願日が2017年10月27日で発明の名称が「細長い医療機器で使用するための細長い外骨格部品」(ELONGATED EXOSKELETON ELEMENT FOR USE OVER ELONGATED MEDICAL INSTRUMENTS)の米国仮特許出願第62/578,378号(「’378仮出願」)の出願日、及び、出願日が2018年1月29日で発明の名称が「細長い医療機器で使用するための細長い外骨格部品」(ELONGATED EXOSKELETON ELEMENT FOR USE OVER ELONGATED MEDICAL INSTRUMENTS)の米国仮特許出願第62/623,117号(「’117仮出願」)の出願日に対する優先権主張は、ここに米国特許法第119条(e)に従って行われる。’378仮出願及び’117仮出願の開示全体が、本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、カテーテルやバルーン(例えば、血管形成バルーン等)のような細長い医療器具の外面で使用するための外骨格デバイスに関する。より具体的には、本開示は、拡張可能な部分を備えた外骨格デバイスに関し、拡張可能な部分は、拡張された外骨格デバイスが押し付けられる組織、プラーク、または他の標的に外骨格デバイスが刻み目を付けることを可能にし、組織、プラーク、または他の標的の更なる治療(例えば、医薬品等を使用した治療)を可能にし得る方法で拡張されることがある。
【背景技術】
【0003】
経皮経管血管形成術(Percutaneous transluminal angioplasty)(PTA)は、一般にバルーン血管形成術(balloon angioplasty)と呼ばれ、或いは、更に単純には、血管形成術(angioplasty)と呼ばれるが、それは、経路が狭窄又は閉塞(即ち、血管の狭窄)している血管(例えば、動脈、静脈等)を治療するために一般に使用される低侵襲血管内処置(minimally invasive endovascular procedure)である。非限定的な例として、血管形成術は、狭窄の一般的な原因である動脈アテローム性動脈硬化症(arterial atherosclerosis)(即ち、動脈壁の内側上のプラークの形成)を外科的に治療するためにしばしば使用される。血管形成術は、典型的には、血管の狭窄部分または閉塞部分に収縮したバルーンカテーテルを導入することを含み、これは蛍光透視によって視覚的に確認され、次いで、バルーンを膨らませて、アテローム性動脈硬化症を含む血管の閉塞部分または狭窄部分を外方に押し出すことを含む。ステントがその部位に留置され、血管の新たに血行再建された部分を開いた状態に維持してもよい。アテローム性動脈硬化症、即ち、より具体的には、アテローム性動脈硬化プラーク(atherosclerotic plaque)は、典型的には、血管形成術後もその位置に留まる。
【0004】
血管形成術は、薬剤による治療を伴ってもよいが、その治療は、典型的には、血管形成術が実施された後の一定期間、被験者に投与される薬に限定される。例えば、血栓を予防または治療する薬剤(例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン)、抗血小板薬(クリピドグレル)等)は、血管形成術とステント留置の後の一定期間(例えば、3ヶ月、6ヶ月、1年等)にわたって特許に対して時効を主張してもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示による外骨格デバイスは、拡張可能な器具(例えば、バルーンカテーテル等)と共に使用することができる。より具体的には、外骨格デバイスの拡張可能な部分は、拡張可能な器具(例えば、バルーンカテーテルのバルーン等)の拡張器を含む、拡張可能な器具を受け入れることができる管腔を含んでもよい。外骨格デバイスの拡張可能な部分、又は拡張可能な部分の少なくとも一部は、例えば、拡張可能な部分のその一部がその上に配置される拡張可能な器具の拡張器の拡張(例えば、膨張等)に際して拡張することができてもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、外骨格デバイスの拡張可能な部分が拡張するとき、隣接する表面(例えば、血管の内表面、血管の内表面上のプラークの表面等)に押し付けられ、刻み目を付けることができてもよい。特定の実施形態では、拡張可能な部分は、拡張可能な部分の周囲に配置された複数のストラット又はスパインを含んでもよい。ストラットは拡張可能な部分の周囲に配置されるので、各ストラットは幾分弓形であるが、実質的に平らであってもよい。各ストラットは、拡張可能な部分の長さに沿って延在してもよい。拡張可能な部分又はその一部が拡張するにつれて(例えば、拡張器によって印加される内力のような半径方向の張力下で、等)、隣接するストラットの一部が互いに強制的に離間され得、各ストラットが(例えば、約90°まで)回転し、エッジやそのコーナーが幾分半径方向に配置され得る。半径方向に配置された配向では、各ストラット又はスパインのエッジやコーナーが係合するか接触し、更にストラットが押し付けられる表面に刻み目を付けることさえある。
【0007】
特定の実施形態では、拡張可能な部分は、外骨格デバイスの本体の少なくとも部分を備えても画定されてもよい。当該部分は、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼、ニチノール(ニッケル・チタン)等)やポリマ(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等)のような、実質的に剛性の材料で形成されるチューブ(例えば、ハイポチューブ等)が挙げられる。ストラットは、スリットの隣接する列によって画定されてもよく、各列のスリットが隣接する列のスリットからオフセットされているか、或いは、隣接する列のスリットに対して千鳥状に配置されている。スリットの各列は、拡張可能な部分の発生器(即ち、拡張可能な部分の一端から拡張可能な部分の他端まで延びるラインであって、拡張可能な部分の軸に平行なライン)に沿って配置されてもよい。各スリットは、隣接する列の1つのスリットの約半分(スリットが拡張可能な部分の端部またはその近傍に位置する場合)または2つのスリット(スリットが拡張可能な部分の長さに沿って中間的に位置する場合)と重なり合うか、または千鳥状に配置されていてもよく、別の言い方をすると、拡張可能な部分のスリットは、いわゆる「レンガ積み」の配置を有してもよく、或いは、いわゆる「ランニングボンドパターン」でレンガのように配置されてもよい。そのような構成によって、ストラットが配置される拡張可能な部分の部分の拡張に際してまたは半径方向の張力下でのそのストラットの配置に際して、ストラットの部分は回転することを可能にしてもよい(例えば、約45°、約90°等)(或いは、ストラットのその部分を回転させることを可能にしてもよい)。そのような構成によって、拡張可能な部分が形成される材料と共に、拡張可能な部分の拡張した部分は、拡張可能な部分のその部分に対する半径方向の張力(例えば、内力による等)が解放されると(例えば、拡張可能な部分内の拡張可能な器具の拡張器からの圧力が解放される場合等)、その緩和状態に弾性的に戻ることを可能にしてもよい。従って、拡張可能な部分上又は内部に別個の弾性要素を設ける必要はない。そのような構成では、拡張可能な部分が非拡張状態であるか、又は緩和状態である場合、その外面は、滑らかであるか、または、実質的に滑らかであってもよい(材料がチューブから除去されてスリットを形成するときに生じる不連続性の主要因となる)。
【0008】
外骨格デバイスの拡張可能な部分はまた薬剤を担持してもよく、薬剤は係合されるか刻み目が付けられている表面に送り届けられ、表面に係合されるか刻み目を付けることがある。薬剤は、外骨格デバイスのストラットのエッジまたはスパインによって担持されてもよい(例えば、ストラットのエッジ上にコーティングされてもよい等)。そのような形状は、拡張可能な部分またはその部分が拡張する際に、外骨格デバイスが薬剤を表面に送り届けることを可能にし、外骨格デバイスの1つ以上のストラットまたはスパインがその表面に刻み目を付けることを可能にしてもよい。代替的には、拡張可能な部分が完全に拡張した状態(例えば、拡張可能な部分が配置された血管または他の構造によって、拡張可能な部分内のバルーンまたは他の拡張可能な器具によって、及び/又は、拡張可能な部分それ自体によって画定される限界まで拡張した状態)や、部分的に拡張した状態、非拡張状態、緩和状態にある間に、薬剤は、薬剤がストラットの外面上へまたは外面を通って流れることを可能にする方法で、外骨格デバイスの管腔に導入されてもよい。
【0009】
拡張可能な部分に加えて、外骨格デバイスは、被験者の体内(例えば、被験者の体内の血管内等)に導入可能な遠位部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カラーは、外骨格デバイスの遠位端の周囲に、又は拡張可能な部分の遠位端の周囲に設けられてもよい。カラーは、滑らかで柔軟性のある部材を備えてもよい。他の機能の中で、カラーは、被験者の体内への外骨格デバイスの導入を容易にし、及び/又は、拡張可能な部分の遠位端の拡張を防止してもよい。
【0010】
加えて、外骨格デバイスの本体は、拡張可能な部分の近位端と同等に伸長する管状要素(例えば、拡張可能な部分の延長部、カテーテル等)を含んでもよい。管状要素は、外骨格デバイスの中間部分及び近位部分を備えてもよい。管状要素は、拡張可能な器具(例えば、バルーンカテーテル等)のような細長い医療器具を受け入れることができる管腔を含んでもよく、従って、外骨格デバイスを細長い医療器具上に配置することができる。管状要素の形状は、管状要素、従って、外骨格デバイスが細長い医療器具と係合することを可能にし、任意で、管状要素を細長い医療器具に固定してもよい。管状要素は、拡張可能な部分が形成され画定される外骨格デバイスの本体の部分の延長部を備えてもよい。代替的には、管状要素は、拡張可能な部分を形成又は画定する本体の部分と整合し固定された別個に製造された構造を備えてもよい。
【0011】
別の態様では、医療システムが開示される。本開示による医療システムは、外骨格デバイス及び拡張可能な器具を含み、ガイドワイヤを含んでもよい。外骨格デバイスは、拡張可能な器具の上方に配置することが可能であり、或いは、拡張可能な器具の拡張器を含む、拡張可能な器具の少なくとも部分を受け入れることが可能であってもよい。本開示による外骨格デバイスの任意の実施形態は、拡張可能な器具を備えた医療システムに含まれてもよい。拡張可能な器具は、医療システムを使用して実施される処置に好適な任意の形状を有してもよい。限定されるものではないが、拡張可能な器具は、実施される処置において使用するのに好適な形状を有するバルーンカテーテルを備えてもよい。ガイドワイヤが医療システムに含まれる場合、ガイドワイヤは、選択された拡張可能な器具及び外骨格デバイスと共に使用するのに好適なサイズ(例えば、外径)を有してもよい。
【0012】
外骨格デバイス、拡張可能な器具、及び、任意のガイドワイヤに加えて、医療システムは、ガイドワイヤ、拡張可能な器具、及び/又は、外骨格デバイスを被験者の体内へ導入することを容易にする器具(例えば、カニューレ、導入器具等)、拡張可能な器具(例えば、シリンジや、拡張可能な器具の拡張器を拡張する(例えば、バルーンカテーテルのバルーンを膨張させる等)ための他の器具等)、画像機器、薬剤等と関連して機能する器具を含んでもよい。
【0013】
別の態様によれば、外骨格デバイスを使用する方法が開示される。そのような方法の様々な実施形態は、被験者の体内に拡張可能な器具(例えば、バルーンカテーテル等)を導入することを含む。拡張可能な器具は、被験者の体内の所望の経路に沿って予め配置されたガイドワイヤに沿って被験者の体内に導入され、又は、前進させてもよい。拡張可能な器具を被験者の体内に前進させながら、拡張可能な器具の拡張器(例えば、バルーン等)は、被験者の体内の治療すべき位置(例えば、血管の狭窄または閉塞した部分、血管内のプラーク、血栓、血管の罹患または損傷した位置等)に前進されてもよい。拡張可能な器具及びその拡張器の前進は、当該技術分野で公知の方法(例えば、蛍光透視下、等)で視覚化され、又は、他の方法で監視されてもよい。
【0014】
外骨格デバイスを拡張可能な器具の上方に配置してもよい。いくつかの実施形態では、拡張可能な器具が被験者の体内に導入され前進されるのに先立ち、外骨格デバイスが拡張可能な器具の上方に配置されてよく、従って、拡張可能な器具の被験者の体内への導入及び前進と同時に、外骨格デバイスが被験者の体内に導入及び前進されてもよい。他の実施形態では、(例えば、外骨格デバイスの管腔内に拡張可能な器具を導入し、外骨格デバイスを拡張可能な器具の上方に導入及び前進させることなどによって、)外骨格デバイスは、被験者の体内の所望の経路に沿って予め配置された拡張可能な器具に沿って被験者の体内に導入又は前進されてもよい。外骨格デバイスを拡張可能な器具の上方に配置することは、外骨格デバイスの拡張可能な部分を、拡張可能な器具の拡張器の上方に配置することを含んでもよい。必要に応じて、外骨格デバイスの拡張可能な部分と拡張可能な器具の拡張器の一方または両方の位置は、被験者の体内で治療すべき位置に対して修正又は調整されてもよい。一例として、外骨格デバイスの拡張可能な部分および拡張可能な器具の拡張器は、治療すべき部位に対して共に移動されてもよい。別の例として、拡張可能な器具の拡張器は、外骨格デバイスの拡張可能な部分に対して、及び、任意で、被験者の体内の治療部位に対して移動されてもよい。
【0015】
被験者の体内の所望の位置にある外骨格デバイスの拡張可能な部分と拡張可能な器具の拡張器とを用いて、拡張可能な器具の拡張器は拡張されてもよい。拡張可能な器具の拡張器の拡張は、外骨格デバイスの拡張可能な部分を拡張されてもよい。外骨格デバイスの拡張可能な部分の拡張は、ストラットのエッジ又はコーナーを含む拡張可能な部分の部材を治療すべき位置に対して押し付けてもよい。拡張可能な部分のストラットのエッジ又はコーナーが治療すべき位置に押し付けられるとき、拡張可能な部分のストラットのエッジまたはコーナーは、その位置に係合し更にはその位置に刻み目を付けてもよい。
【0016】
本開示による外骨格デバイスの使用の他の実施形態は、被験者の体内の所望の経路に沿って予め配置されたガイドワイヤに沿って被験者の体内に、外骨格デバイスを導入して前進させることを含んでもよい。外骨格デバイスの前進は、被験者の体内の治療部位(例えば、血管の狭窄または閉塞した部分、血管内のプラーク、血栓、血管の罹患または損傷した位置等)への外骨格デバイスの拡張可能な部分の前進を含んでもよい。外骨格デバイス及びその拡張可能な部分の前進は、当該技術分野で公知の方法(例えば、蛍光透視(fluoroscopy)下など)で視覚化され、又は、他の方法で監視されてもよい。
【0017】
外骨格デバイスを所定の位置に配置すると、拡張可能な器具は、外骨格デバイスの管腔に導入され、外骨格デバイスを通して被験者の体内へ前進されてもよい。拡張可能な器具の前進は、拡張可能な器具の拡張器が外骨格デバイスの拡張可能な部分内の所望の位置に到達するまで継続し、これは、視覚的に、又は当技術分野で公知の任意の他の好適な方法(例えば、蛍光透視下など)で確認されてもよい。必要に応じて、外骨格デバイスの拡張可能な部分と拡張可能な器具の拡張器の一方または両方の位置は、被験者の体内で治療すべき位置に対して修正又は調整されてもよい。
【0018】
拡張可能な器具の比較的短い拡張器が外骨格デバイスの比較的長い拡張可能な部分内の複数の異なる位置で移動され使用される実施形態では、比較的長い拡張可能な部分は、比較的長い治療部位に沿って配置されてもよい。比較的短い拡張器は、比較的長い拡張可能な部分の長さに沿った第1の位置に配置されてもよい。比較的短い拡張器を第1の位置に配置すると、比較的短い拡張器は拡張されて比較的長い拡張可能な部分のその部分を拡張させ、それにより、比較的長い拡張可能な部分のストラットのエッジ又はコーナーが、比較的長い治療部位の第1の部分に係合または刻み目を付けることがある。比較的短い拡張器は、次いで、比較的長い拡張可能な部分の長さに沿って1つ以上の更なる位置に移動され拡張されて、比較的長い拡張可能な部分が更なる位置の各々で拡張し、それにより、拡張可能な部分の長さに沿った更なる位置におけるストラットのコーナーのエッジが、比較的長い治療部位の対応する更なる部分に係合または刻み目を付けることがある。
【0019】
拡張可能な部分の部材が薬剤を担持する実施形態では、薬剤は、拡張可能な部分のストラットのエッジまたはコーナーに係合した位置に移され、それらの位置に形成された任意の刻み目に導入されてもよい。従って、外骨格デバイスの使用は、治療部位(例えば、アテローム硬化性プラーク(an atherosclerotic plaque)の狭窄の原因部位等)への1つ以上の薬剤の直接的な適用を可能にし、治療部位による1つ以上の薬剤の取り込みを容易にする。
【0020】
所望の治療がいったん完了すると、拡張可能な器具の拡張器が収縮し(例えば、バルーンカテーテルのバルーンが収縮する等)、外骨格デバイスの拡張可能な部分が拡張した状態から非拡張状態に遷移することを可能にする。外骨格デバイスの拡張可能な部分及び拡張可能な器具の拡張器は、次いで、別の治療部位に移動(例えば、前進、引き戻し等)してもよい。代替的には、外骨格デバイス及び拡張可能な器具は、被験者の身体から取り除かれてもよい。
【0021】
本開示の他の態様、並びに、開示された主題の様々な態様の特徴および利点は、前述の開示、添付の図面、および添付の特許請求の範囲を考慮することによって、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示による外骨格デバイスの実施形態を示し、非拡張状態又は緩和状態の外骨格デバイスの拡張可能な部分を示す。
図2図1に示された外骨格デバイスの実施形態の拡張可能な部分の拡大直交図を提供し、拡張可能な部分は非拡張状態になっている。
図3】非拡張状態の外骨格デバイスの拡張可能な部分の拡大側面図を提供する。
図4図3の線4−4に沿った、非拡張状態の拡張可能な部分を通る円周方向の断面図を提供する。
図5】外骨格デバイスの拡張可能な部分の円周方向の断面図であり、外骨格デバイスの縦軸に対して横断し、拡張可能な部分が部分的に拡張した状態である。
図6図1に示す外骨格デバイスの実施形態を示し、拡張した状態の拡張可能な部分を示す。
図7】拡張した状態の外骨格デバイスの拡張可能な部分の拡大側面図を提供する。
図8図7の線8−8に沿った、拡張した状態の拡張可能な部分を通る円周方向の断面図を提供する。
図9】外骨格デバイスの拡張可能な要素を被験者の体内の標的位置に導入するための技術の実施形態を示す断面図であり、外骨格デバイスの拡張可能な部分が拡張可能な器具の拡張器の上方に配置された状態で外骨格デバイス及び拡張可能な器具が予め組み立てられ、次いで、拡張可能な部分及び拡張器が組み立てられた関係で共に標的位置に導入される。
図10】外骨格デバイスの拡張可能な要素を被験者の体内の標的位置に導入するための技術の別の実施形態を示す断面図であり、拡張可能な器具の拡張器が標的位置に導入され、次いで、外骨格デバイスの拡張可能な部分が標的位置にある拡張可能な器具の拡張器の上方に配置されるまで外骨格デバイスが拡張可能な器具の上方の体内に導入される。
図11】外骨格デバイスの拡張可能な要素を被験者の身体と共に標的位置に導入するための技術の更に別の実施形態を示す断面図であり、外骨格デバイスの拡張可能な要素が標的位置に到達するまで外骨格デバイスが被験者の体内に導入され、次いで、拡張可能な器具の拡張器が外骨格デバイスの拡張可能な部分内に位置するまで拡張可能な器具が外骨格デバイスの管腔を通して体内に導入される。
図12】外骨格デバイスの拡張可能な部分の実施形態内の拡張可能な器具の拡張器の実施形態を示す断面図であり、拡張器と拡張可能な部分が非拡張状態又は緩和状態である。
図13】拡張した状態の図12の拡張器と拡張可能な部分の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示による外骨格デバイス10の一実施形態は、図1図8に示される。外骨格デバイス10は、拡張可能な部分30を有する細長い医療デバイスを備える。外骨格デバイス10は、遠位部分16、中間部分18、および近位部分20を含む本体12によって少なくとも部分的に画定される。
【0024】
外骨格デバイス10の本体12の遠位部分16の少なくとも一部は、その中を通る管腔14が画定される管状の形状を有してもよい。図示された実施形態では、本体12は、その全体の長さに沿った管状の形状を有し、従って、管腔14は、本体12の全体の長さを通って延在する。
【0025】
本体12は、実質的に一体的な構造を備えてもよく、または、共に固定された複数の組み立てられた要素を含んでもよい。本体12が実質的に単一の構造を含む実施形態では、単一の要素(例えば、チューブ等)から画定されてもよい。複数の組み立てられた要素を含む本体12の一実施形態は遠位部分16を含んでもよく、遠位部分16は、本体12の残りの部分とは別個に形成され、その後に組み立てられて本体12の残りの部分に結合され、本体12の残りの部分は、中間部分18及び近位部分20を含む。
【0026】
本体12は、種々の好適な材料のいずれかから、又は、好適な材料の組み合わせから形成されてもよい。いくつかの実施形態では、本体12全体又はその遠位部分16は、金属(例えば、ステンレス鋼、ニッケル・チタン合金(nitinol)等)或いはポリマ(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等)のような実質的に剛性の材料から形成され得るハイポチューブ(a hypotube)から画定されるか、又は、それを備えてもよい。本体12が、本体12の残りの部分から別個に形成された遠位部分16を備える実施形態では、本体12の残りの部分は、限定されるものではないが、カテーテルが形成され得る材料(例えば、シリコーン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ラテックス等)、並びに、種々の他の材料を含む、種々の好適な材料のいずれかから形成されてもよい。
【0027】
外骨格デバイス10の拡張可能な部分30は、拡張可能な部分30内から拡張可能な部分30が画定される本体12の部分の壁13の内面13まで拡張力(例えば、半径方向外向きの拡張力等)を印加するに際して、図1図4に示すような非拡張状態から図5図8に示すような拡張した状態に外向きに(例えば、半径方向外向きに、等)拡張することができてもよい。拡張可能な部分30は、拡張力の除去に際して、非拡張状態に弾性的に又は実質的に弾性的に戻ることができてもよい。
【0028】
外骨格デバイス10の拡張可能な部分30は、図示されるように、外骨格デバイス10の本体12の遠位部分16に沿って配置されてもよい。拡張可能な部分30の遠位側32は、本体12の遠位端15に隣接して配置されてもよい。外骨格デバイスの本体の長さに沿って(例えば、中間部分18の少なくとも一部に沿って、遠位部分20の少なくとも一部に沿って、等)他の位置に(例えば、より近位の位置に)配置される拡張可能な部分を有する外骨格デバイスもまた、本開示の範囲内にある。
【0029】
拡張可能な部分30は、外骨格デバイス10の本体12の少なくとも一部を備えてもよく、或いは、それによって画定されてもよい。図1及び図6に示される外骨格デバイス10の実施形態では、拡張可能な部分30は、本体12の壁13を少なくとも部分的に貫通して延在するスリット32の列34a、34b、34c等によって画定される。スリット32(拡張可能な部分30の端部に配置されたいくつかのスリット32を除く)は、互いに同じ長さを有してもよい。各スリット32は、壁13を貫通して半径方向に(すなわち、拡張可能な部分30の縦軸31に向かって)延在してもよい。いくつかの実施形態では、各スリット32は、外面13から内面13まで本体12の壁13を完全に貫通して延在してもよい。他の実施形態では、各スリット32は、本体12の壁13を部分的に通って(例えば、壁13の外面13から壁13の内面13に向けて等)延在してもよい。各スリット32が本体12の壁13を通って延在する程度は、少なくとも部分的には、本体12が形成される材料に依存してもよい。スリット32は、外骨格デバイス10の本体12が形成される材料と適合する任意の技術によって形成されてもよい。非限定的な例として、レーザ切断プロセスが、本体12内にスリット32を形成するために使用されてもよい。
【0030】
列34a、34b、34c等の各々は、直線的に整列されたスリット32によって画定されてもよい。スリット32及び列34a、34b、34c等の各々は、列34a、34b、34c等の各々が拡張可能な部分30の発生器(即ち、拡張可能な部分30の一端から拡張可能な部分30の他端まで拡張可能な部分30の軸31に平行に延在するライン)に沿って配置されて、本体12に沿って長手方向に延在してもよい。
【0031】
列34a、34b、34c等の各々を有するスリット32は、隣接する列34a、34b、34c、34d、34e等の各々を有するスリット32に対してオフセットされてもよい。列34a、34b、34c等における各スリット32は、隣接する列34a、34b、34c等の各々を有する円周方向に隣接するスリット32のうちの1つ(スリット32が拡張可能な部分30の端部又はその近傍に位置する場合)または2つ(スリット32が拡張可能な部分30の長さに沿って中間に位置する場合)の約半分に重なってもよい。外骨格デバイス10の本体12の遠位部分16の周囲のスリット32の千鳥状の配置(Staggering)は、スリット32の間の本体12の中実部分をいわゆる「ランニングボンドパターン(running bond pattern)」に配列して、拡張可能な部分30にいわゆる「レンガ細工(brickwork)」の外観を提供してもよい。いくつかの実施形態では、スリット32の他の列34a及び34c等の各々の円周方向に対応するスリット32は、等しい長さを有し完全に整列されてもよい。
【0032】
スリット32の円周方向に隣接する列34a、34b、34c等は、本体12の周囲に等距離に離間して配置されてもよい。拡張可能な部分30は、スリット32の偶数個の列34a、34b、34c等を含んでもよい。スリット32の偶数個の円周方向に隣接する列34a、34b、34c等が本体12の周囲に等距離に離間して配置される実施形態では、拡張可能な部分30の各スリット32は、円周方向に隣接するスリット32に対して千鳥状に配置されてもよい。
【0033】
スリット32の隣接する対の列34aと34b、34bと34c、34cと34d等の各々の間に配置される本体12の中実部分は、拡張可能な部分30のストラット36を備える。より具体的には、各ストラット36は、スリット32の隣接する列34aと34b、34bと34c、34cと34d等の間に本体12の中実部分を備えてもよい。スリット32の列34a、34b、34c等の隣接するスリット32の間に配置された本体12の中実部分は、円周方向に隣接するストラット36の間の接合部38を備える。言い換えると、各スリット32は、一対の円周方向に隣接するストラット36の間にギャップを備える。
【0034】
本開示による外骨格デバイスの特定の実施形態では、本体12は、約0.073インチ(即ち、約1.85mm)の外径(OD)と約0.067インチ(即ち、約1.7mm)の内径(ID)とを有するステンレス鋼のハイポチューブを備えてもよい。従って、本体12の壁13は、約0.003インチ(即ち、約0.076mm)の厚さを有する。スリット32の12個の列34a、34b、34c等は、本体12の周囲に等距離に配置され、各スリット32の幅を構成する約0.018インチ(即ち、約0.43mm)の幅を有する12個のストラット36を画定する。各スリット32は、約1インチ(即ち、約2.54cm)の長さを有し、同じ列34a、34b、34c等の隣接スリット32が互いに約0.015インチ(即ち、約0.38mm)離間して、約0.015インチ(即ち、約0.38mm)の長さを有する接合部38を画定してもよい。円周方向に隣接するスリット32は、互いに約半インチ(即ち、約1.27cm)だけオフセットされてもよい。
【0035】
図1図4に示すように、拡張可能な部分30が非拡張状態にある場合、拡張可能な部分30が画定される本体12の部分の壁13の外面13は実質的に滑らかで、材料が本体12の壁13から除去されて各スリット32を形成するときに生じる不連続部の主要因となることがある。図5に示すように、拡張可能な部分30が拡張し始めると、スリット32は開口し、ストラット36は円周方向に配置された配向(即ち、各ストラット36の外面13が本体12の壁13の周囲に沿って配向されている)からより半径方向の配向へ回転してもよい。拡張可能な部分30のストラット36のすべては、同じ方向(例えば、反時計回り、時計回り等)に回転してもよい。各ストラット36が回転し始めると、ストラット36のエッジ37は、拡張された拡張可能な部分30の外側の範囲で露出される。図5は、部分的に拡張した状態または中間状態の拡張可能な部分30を示す。
【0036】
図6〜8は、完全に拡張した状態における外骨格デバイス10の拡張可能な部分30を示す。図8に示すように、拡張可能な部分30が完全に拡張されると、各ストラット36は90°まで回転し、各ストラット36は実質的に半径方向に配向されてもよい。
【0037】
拡張可能な部分30が拡張した状態(即ち、部分的に拡張した状態、完全に拡張した状態等)にある場合、ストラット36及びそれらの少なくとも部分的に外側に向かう対向エッジ37は、治療すべき位置に押し付けられてもよく、本明細書中では治療部位とも称される。拡張可能な部分の部材が治療すべき位置に押し付けられると、拡張可能な部分の部材は、その位置に接触したり、更にはその位置に刻み目を付けたりしてもよい。拡張可能な部分の部材が薬剤を担持する実施形態では、薬剤は、ストラット36から治療された位置まで移されてもよい。薬剤はまた、処置された位置に形成された任意の刻み目に導入されてもよい。
【0038】
図1及び図6に戻って参照すると、外骨格デバイス10の遠位端40は、被験者の体内(例えば、被験者の体内の血管内等)への導入、被験者の体内を通る前進を可能にする構成を有してもよい。いくつかの実施形態では、外骨格デバイス10の遠位端40は、円錐台形状(a frustoconical configuration:切頭円錐形状)を有してもよい(即ち、尖った先端を欠く切頭円錐の形状を有してもよい)。遠位端40のそのような構成は、緩やかなテーパ(例えば、約5°のテーパ、約8°のテーパ、約10°のテーパ等)を有してもよい。
【0039】
カラー42は、外骨格デバイス40の遠位端40に、及び/又は、外骨格デバイス10の拡張可能な部分30の遠位側に設けられてもよい。カラー42は、被験者の体内への外骨格デバイス10の導入、並びに、被験者の体内を通る外骨格デバイス10の前進を容易にしてもよい。そのようなカラー42は、滑らかで、任意で、可撓性を有してもよい(例えば、シリコーンのような可撓性を有する弾性材料で形成されてもよい、等)。いくつかの実施形態では、カラー42は、拡張可能な部分30の遠位端の回りに設けられて、拡張可能な部分30の遠位端における拡張を制限してもよい。
【0040】
放射線不透過性マーカ44が、外骨格デバイス10の遠位端40に設けられてもよい。遠位端40は放射線不透過性材料(例えば、白金等)で形成されて放射線不透過性マーカ44を画定してもよく、或いは、放射線不透過性材料のバンドが外骨格デバイス10の遠位端40に又はその近傍に(例えば、拡張可能な要素30の遠位側に直接隣接して、等)配置されてもよい。放射線不透過性マーカ44は、被験者の体内の外骨格デバイス10及び/又はその拡張可能な部分30の位置の可視化(例えば、蛍光透視法による、等)を可能にしてもよい。
【0041】
図1及び図6に示すように、外骨格デバイス10の中間部分18は、拡張可能な部分30の近位側に位置し、外骨格デバイス10の近位部分20は、外骨格デバイス10及び任意の関連するデバイスを導入、前進及び/又は操作する個人(例えば、医療従事者等)に最も近い中間部分18の近位側に位置する。
【0042】
外骨格デバイス10の中間部分18及び/又は近位部分20は、外骨格デバイス10の拡張可能な部分30を拡張することができる細長い医療器具、及び、外骨格デバイス10と共に使用されてもよい他の医療デバイスを含む、1つ以上の他の細長い医療器具(例えば、ガイドワイヤ、1つ以上の拡張可能な器具等)(図1図8には示されていない)を受け入れること及び/又は他の方法で係合することができてもよい。いくつかの実施形態では、外骨格デバイス10の中間部分18、及び任意で、近位部分20は、拡張可能な部分30の近位側と同じ伸張性を有する管状要素を備えてもよい。管状要素は、1つ以上の他の細長い医療器具を受け入れることができる管腔を含んでもよい。いくつかの実施形態では、外骨格デバイス10の中間部分18、及び任意で、近位部分20は、外骨格デバイス10の本体12の延長部を備えてもよい。代替的には、外骨格デバイス10の近位部分20、及び任意で、中間部分18は、外骨格デバイス10の本体12の近位端に位置合わせされ固定される他の別に製造された構造(例えば、カテーテル、他のチューブ、テザー等)を備えてもよい。
【0043】
次に、図9図11を参照すると、本開示の外骨格デバイス10(図1図8)を被験者の体内に導入するための種々の技術の実施形態が示されている。
【0044】
図9では、被験者の体内で外骨格デバイス10の拡張可能な要素30を治療部位S又は標的位置に導入するための技術の一実施形態が示されている。その方法では、ガイドワイヤWは、被験者の体内に導入され、当該技術分野で公知の方法で治療部位Sに前進させ、任意で、治療部位Sを通って前進させる。図9に示される治療部位Sは血管Vに沿った狭窄または閉塞位置(例えば、動脈又は静脈のような血管等)であるが、外骨格デバイス10の拡張可能な部分30が被験者の解剖学的構造(anatomy)の他の臓器や特徴を治療するために使用されてもよいことに留意されたい。図9では、外骨格デバイス10と拡張可能な器具110が予め組み立てられ、外骨格デバイス10の拡張可能な部分30が拡張可能な器具110の拡張器130の上方に配置される。外骨格デバイス10と拡張可能な器具110との予備組立は、外骨格デバイス10を拡張可能な器具110に固定することを含んでもよい。外骨格デバイス10と拡張可能な器具110は、次いで、ガイドワイヤWの上方に配置され、共に(即ち、同時に)被験者の体内に導入され、拡張可能な部分30および拡張器130が治療部位Sに到達するまでガイドワイヤWに沿って前進されてもよい。
【0045】
図10は、外骨格デバイス10の拡張可能な要素30を被験者の体内の治療部位Sに導入するための技術の別の実施形態を示す。図10に示す方法では、ガイドワイヤW(図9)はまず被験者の体内に導入され、被験者の体内を通って治療部位Sへ、そして、任意で、治療部位Sを通って前進される。ガイドワイヤWを所定の位置にあると、拡張可能な器具110は、それから、被験者の体内に導入され、拡張可能な器具110の遠位端または近傍の拡張器130が治療部位Sに到達するまで、被験者の体内を通って前進されてもよい。拡張器130が治療部位Sにあると、ガイドワイヤWは、いくつかの実施形態では、拡張可能な器具110から、従って、被験者の身体から取り除かれてもよい。外骨格デバイス10は、拡張可能な器具110の上方に配置されてもよく(例えば、拡張可能な器具110の近位端が外骨格デバイス10の管腔14(図1及び図4)に配置されてもよい、等)、ガイドワイヤWが所定の位置に留まっている場合、ガイドワイヤWの上方に配置されてもよい。外骨格デバイス10は、それから、被験者の体内に導入され、拡張可能な部分30が拡張器130の上方で治療部位Sに配置されるまで、拡張可能な器具110の上方で被験者の体内を通って前進されてもよい。
【0046】
図11は、ガイドワイヤW(図9)を被験者の体内に導入し、被験者の体内を通って治療部位Sに前進させ、そして、任意で、治療部位を通って前進させることを含む、外骨格デバイス10の導入及び前進の方法の実施形態を示す。ガイドワイヤWを所定の位置にあると、外骨格デバイス10は、それから、被験者の体内に導入され、外骨格デバイス10の拡張可能な部分30が治療部位Sに到達するまで、被験者の体内を通って前進されてもよい。拡張可能な部分30が治療部位Sにあると、ガイドワイヤWは、いくつかの実施形態では、外骨格デバイス10から、従って、被験者の身体から取り除かれてもよい。拡張可能な器具110は、外骨格デバイス10の近位部分20(図1及び図6)と共に組み立てられ(例えば、外骨格デバイス10の管腔14(図1及び図4)に導入される等)、それから、拡張可能な器具110の拡張器130が外骨格デバイス10の拡張可能な部分30内の所望の位置に配置され、従って、治療部位Sに配置されるまで、外骨格デバイス10に沿って被験者の体内を前進されてもよい(例えば、外骨格デバイス10の管腔14を通る等)。
【0047】
外骨格デバイス10の拡張可能な部分30が治療部位Sに導入され拡張可能な器具110の拡張器130の上方に導入される方法にかかわらず、図12に示すように、外骨格デバイス10の拡張可能な部分30が治療部位Sにあり、拡張可能な器具110の拡張器130が拡張可能な部分30内にあると、拡張器130は、図13に示すように、拡張可能な部分30を拡張するのに好適な方法で拡張されてもよい(例えば、バルーンカテーテルのバルーンが膨張されてもよい、等)。図5及び図6図8を更に参照すると、拡張可能な部分30の拡張により、拡張可能な要素30のストラット36のエッジ37は、ストラット36のエッジ37が押し付けられる治療部位S(例えば、アテローム性プラーク(an atherosclerotic plaque)の部位のような罹患部位、創傷部位等)の位置に接触し、そして、任意で、治療部位Sの位置に刻み目を付けてもよい。
【0048】
図11に示すような実施形態では、異なる構成の拡張器130(例えば、増大する直径に拡張するバルーンを備えたバルーンカテーテル等)を備えた複数の異なる拡張可能な器具110は、連続して治療部位Sに導入され、操作され(又は使用され)、単一で予め配置された外骨格デバイス10を通って治療部位Sから取り除かれてもよい。
【0049】
前述の説明は多くの詳細を提供するが、これらは添付の請求項のいずれかの範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に入り得るいくつかの特定の実施形態に関連する情報を提供するに過ぎない。異なる実施形態からの特徴を組み合わせて使用してもよい。加えて、添付の特許請求の範囲は、他の実施形態を包含してもよい。特許請求の範囲の範囲内にある開示された主題のすべての追加、削除、及び修正は、特許請求の範囲によって包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】