(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-501227(P2021-501227A)
(43)【公表日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び樹脂注入プロセス
(51)【国際特許分類】
C08G 59/32 20060101AFI20201211BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20201211BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20201211BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20201211BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20201211BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20201211BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20201211BHJP
B29C 70/48 20060101ALI20201211BHJP
B29K 63/00 20060101ALN20201211BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20201211BHJP
【FI】
C08G59/32
C08G59/40
C08L63/00 A
C08L51/04
B29C39/10
B29C39/24
B29C70/16
B29C70/48
B29K63:00
B29K105:08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-522375(P2020-522375)
(86)(22)【出願日】2018年10月23日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月9日
(86)【国際出願番号】US2018056986
(87)【国際公開番号】WO2019083921
(87)【国際公開日】20190502
(31)【優先権主張番号】1717639.7
(32)【優先日】2017年10月26日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミーガン, ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】オーリリア, マルコ
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F204AA39
4F204AB03
4F204AC05
4F204AD16
4F204AR06
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4F205AA39
4F205AB03
4F205AC05
4F205AD16
4F205AR06
4F205HA06
4F205HA12
4F205HA27
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4F205HB01
4F205HB11
4F205HF01
4F205HK05
4J002BN142
4J002CD031
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4J002FA082
4J002FD146
4J002GK00
4J036AA04
4J036AD08
4J036AD09
4J036AF27
4J036AJ02
4J036AJ14
4J036DC03
4J036DC10
4J036FB05
4J036HA12
4J036JA11
(57)【要約】
液体樹脂注入プロセスに適した硬化性エポキシ樹脂組成物。一実施形態では、前記樹脂組成物は、(a)少なくとも2種のポリエポキシド(そのうちの一方は、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルである)、(b)芳香族アミン硬化剤、及び(c)コア−シェルゴム粒子を含有する。別の実施形態では、前記樹脂組成物は、(a)少なくとも2種のポリエポキシド(そのうちの一方は、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテルである)、(b)芳香族アミン硬化剤、及び(c)コア−シェルゴム粒子を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体樹脂注入に適した硬化性エポキシ樹脂組成物であって、
(A)少なくとも2種のポリエポキシド(そのうちの一方は、二官能性エポキシドであり、他方は、式I:
によって表されるトリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルである)
(B)式II:
(式中、Aは、-NHRによって表されるアミン基であり、Rは、水素、1〜6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐アルキル基から独立して選択され、好ましくは、Aは、NH
2であり;
Bは、
から選択され;
Cは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基及びイソプロピル基から選択され;Xは、水素、又はCl、Br、F、及びIから選択されるハロゲンである)
によって表される少なくとも1種の芳香族アミン硬化剤;及び
(C)コア−シェルゴム粒子
を含む、硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化性エポキシ樹脂組成物が、90℃〜160℃の範囲内の温度で、10ポイズ未満、好ましくは5ポイズ未満の粘度を有する、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記二官能性エポキシドが、ビスフェノールF又はビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり、及び前記組成物の全重量に基づく重量で、50%まで、好ましくは24%〜38%の量で存在する、請求項1又は2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記二官能性エポキシドが、以下の式a又は式b:
によって表される、請求項1又は2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族アミン硬化剤が、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン又は9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルが、前記組成物の全重量に基づく重量で、0%超で18%まで、好ましくは2%〜10%の量で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエポキシドが、式III:
(式中、n=1〜5、R=Hである)
によって表されるエポキシノボラック樹脂をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシノボラック樹脂が、以下の式:
によって表される、請求項7に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシノボラック樹脂が、前記組成物の全重量に基づく重量で、0%超で18%まで、好ましくは1%〜7%の量で存在する、請求項7又は8に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリエポキシドが、式IV:
によって表されるビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテルをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテルが、前記組成物の全重量に基づく重量で、0%超で20%まで、好ましくは4%〜18%の量で存在する、請求項10に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記組成物が、その式中に1つ以上のナフタレン環を有するいかなるナフタレン系エポキシも欠いている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
液体樹脂注入に適した硬化性エポキシ樹脂組成物であって、
(A)少なくとも2種のポリエポキシド(そのうちの一方は、式IV:
によって表されるビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテルであり、他方のポリエポキシドは、その式中に少なくとも1つのナフタレン環を有するナフタレン系エポキシである);
(B)式II:
(式中、Aは、-NHRによって表されるアミン基であり、Rは、水素、1〜6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐アルキル基から独立して選択され、好ましくは、Aは、NH
2であり;Bは、
から選択され;
Cは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基及びイソプロピル基から選択され;Xは、水素、又はCl、Br、F、及びIから選択されるハロゲンである)
によって表される芳香族アミン硬化剤;及び
(C)コア−シェルゴム粒子
を含む、硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
ナフタレン系エポキシが、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル;1,7−ジヒドロキシナフタレン;1ナフタレンクレゾールグリシジルエーテル;1,2−ジヒドロキシナフタレン;1,3−ジヒドロキシナフタレン;1,4−ジヒドロキシナフタレン;1,5−ジヒドロキシナフタレン;2,3−ジヒドロキシナフタレン;2,7−ジヒドロキシナフタレン;及び
それらの組合せから選択される、請求項13に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
ナフタレン系エポキシが、前記組成物の全重量に基づく重量で、0%超で30%までの量で存在する、請求項13又は14に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
ビスフェノールF又はビスフェノールAのジグリシジルエーテルを、前記組成物の全重量に基づく重量で、30%まで、好ましくは17%〜28%の量でさらに含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
以下の式a又は式b:
によって表される二官能性エポキシドをさらに含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
前記芳香族アミン硬化剤が、
9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン又は9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンである、請求項13〜17のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項19】
前記硬化性エポキシ樹脂組成物が、90℃〜160℃の範囲内の温度で、10ポイズ未満、好ましくは5ポイズ未満の粘度を有する、請求項13〜18のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項20】
前記コア−シェルゴム粒子が、前記組成物の全重量に基づく重量で、1%〜20%、好ましくは0.3%〜10%の量で存在する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項21】
前記コア−シェルゴム粒子が、800nm未満、好ましくは100nm〜200nmの粒子サイズ(d90)を有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項22】
前記組成物が、いかなる熱可塑性ポリマーも欠いている、請求項1〜21のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項23】
前記組成物が、前記式IIの芳香族アミン硬化剤以外のいかなる硬化剤も含まない、請求項1〜22のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項24】
液体樹脂を受けるように構成された繊維状予備成形物を提供するステップと、前記繊維状予備成形物に請求項1〜23のいずれか一項に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を注入するステップと、前記注入予備成形物を硬化温度(Tc)で硬化させるステップとを含む、成形物品を生成させるための液体樹脂注入(LRI)製造方法。
【請求項25】
a.前記繊維状予備成形物を密閉型内に置くステップと;
b.前記型を初期温度に加熱するステップと;
c.前記硬化性エポキシ樹脂組成物を前記型中に射出して、前記繊維状予備成形物に前記エポキシ樹脂組成物を注入するステップと;
d.前記樹脂注入予備成形物を、前記初期温度より高い硬化温度(Tc)で、硬化物品を形成するために十分な期間硬化させるステップと
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、樹脂トランスファー成形(RTM)などの樹脂注入プロセスによる繊維強化複合構造の製造、及びそのような樹脂注入プロセスに適した樹脂組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0002】
三次元繊維強化複合部品は、種々の方法を使用して製造することができ、その1つが液体樹脂注入である。樹脂トランスファー成形(RTM)及び真空補助RTM(VARTM)は、液体樹脂を繊維状予備成形物中に射出することを必要とする製造プロセスの例である。RTMプロセスの間、予備成形物は密閉された型キャビティ内に置かれ、樹脂が加圧下でキャビティ内に射出される。予備成形物を有する型はしばしば真空下に置かれ、真空が予備成形物内の全ての閉じ込められた空気を除去し、RTMプロセスを速めるようにする。液体樹脂が型キャビティを充填すると、樹脂は硬化され、複合部品が形成される。片面ツールが通常、真空バギングと共に使用され、圧力勾配が液体樹脂を予備成形物中に押し込むこと以外は、VARTMはRTMと同様である。繊維状予備成形物は、積層配置においてレイアップされる通常は布プライの形態の乾燥強化繊維の集成体である。これらの技術は、多くの場合、適度の生成速度で非常に複雑な形状の部品を製造するためによく適する。
【0003】
熱硬化樹脂、特にエポキシ樹脂は、耐熱性及び耐薬品性、接着抵抗及び耐磨耗性などのそれらの望ましい特性のためにこのような繊維強化複合部品のためのマトリックス樹脂として広範囲に使用されている。RTM加工のために、樹脂相中に硬化剤を溶解することは、樹脂と硬化剤との均質混合によって、樹脂組成物が周囲温度においてさえも自己反応性の要素を示すことの理解及び引き換えと共に、簡単な「加熱、射出/ウエットアウト及び硬化」プロセスの方法論を容易にする。繊維強化複合材料を生成させるためにエポキシ樹脂と広く使用される硬化剤としては、とりわけ、脂肪族及び芳香族アミンが挙げられる。硬化剤の構造及びそれらの官能基の反応性は、反応速度及び樹脂組成物の加工性を制御するためにしばしば使用される。
【0004】
航空宇宙用途などの構造用途のための繊維強化ポリマー複合物を設計する場合、ポリマーマトリックスにおける高レベルの強靭性及び硬化複合材料における高レベルの耐損傷性を維持しながら、硬化ポリマーマトリックスのガラス転移温度(T
g)、特に湿潤T
gを上昇させ、及び硬化速度を減少させることが望ましい。このような特性は、高速度衝撃に対する高い強靭性又は耐性が望まれるファンブレード、エンジンナセル及び収納ケーシングなどの航空宇宙構造物の製造に特に望ましい。繊維強化ポリマーに由来する航空宇宙複合部品は、水分拡散などの環境攻撃によって劣化され得る。湿潤T
gは、硬化材料(試験クーポンの形態での)が水分で飽和されている条件下での硬化材料のガラス転移温度を意味し、このような条件は、稼働中の環境を示していると考えられる。繊維強化ポリマーに由来する航空宇宙複合部品はまた、稼働中のそれらの時間にわたっての材料特性の変化に耐性を示すことも望ましい。この挙動を特徴付けるために使用される1つの方法は、硬化樹脂系を高温で保持し、高温での時間の関数としてガラス転移温度の進展を追跡することである。
【0005】
本開示は、液体樹脂注入プロセス、特にRTM及びVARTMに適する硬化性樹脂組成物を提供する。
【0006】
一実施形態によれば、硬化性樹脂組成物は、以下の成分:
(A)少なくとも2種のポリエポキシド(そのうちの一方は、二官能性エポキシドであり、他方は、式I:
によって表されるトリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルである)
(B)式II:
(式中、Aは、-NHRによって表されるアミン基であり、Rは、水素、1〜6個の炭素原子(C
1〜C
6)を有する直鎖及び分岐アルキル基から独立して選択され、好ましくはAは、NH
2であり;
Bは、
から選択され、
Cは、C
1〜C
6アルキル基及びイソプロピル基から選択され;及びXは、Cl、Br、F、Iから選択されるハロゲン、又は水素(H)である)
によって表される少なくとも1種の芳香族アミン硬化剤;及び
(C)コア−シェルゴム粒子
を含有する。
【0007】
式Iのトリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルは、組成物の全重量に基づく重量で、0%超で18%まで、例えば、2%〜10%の量で存在する。式Iによって包含される商業的に入手可能なポリエポキシドは、HuntsmanからのTactix(登録商標)742である。
【0008】
式IIの好適な芳香族アミン硬化剤としては、9,9−ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)フルオレン(又はCAF)及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、それぞれ、以下の式1及び式2:
が挙げられる。
【0009】
式IIの他の好適な芳香族アミンとしては、
4−メチル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
4−クロロ−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2−エチル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2−ヨード−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
3−ブロモ−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
9−(4−メチルアミノフェニル)−9−(4−エチルアミノフェニル)フルオレン、
1−クロロ−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2−メチル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2,6−ジメチル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
1,5−ジメチル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2−フルオロ−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
1,2,3,4,5,6,7,8−オクタフルオロ−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2,7−ジニトロ−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2−クロロ−4−メチル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2,7−ジクロロ−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2−アセチル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2−メチル−9,9−ビス(4−メチルアミノフェニル)フルオレン、
2−クロロ−9,9−ビス(4−エチルアミノフェニル)フルオレン、
2−t−ブチル−9,9−ビス(4−メチルアミノフェニル)フルオレン
が挙げられる。
【0010】
また好適であるのは、4,4’−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA);4,4’−メチレン−ビス−(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)(MMIPA)である。BがO=S=Oである、式IIの他の芳香族アミンとしては、それぞれ、式3及び式4:
によって表される、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)が挙げられる。
【0011】
用語「ポリエポキシド」は、2個以上のエポキシド基:
を含有する化合物を意味する。
【0012】
二官能性エポキシドは、2個の官能基を有するポリエポキシドである。好適な二官能性エポキシドとしては、室温で低粘度(例えば、25℃で<1000センチポイズ)を有するものが挙げられる。二官能性エポキシドの具体例は、ジフェノール又はジアルケン化合物のエポキシ化反応生成物、例えば、ビスフェノールF、ビスフェノールA、又はビスフェノールZのジグリシジルエーテル;ブタンジオールのジグリシジルエーテル(例えば、HuntsmanからのAraldite(登録商標)DY−D);6.8〜8.0当量/kgのエポキシ含有量及び100〜600センチポイズの25℃での粘度を有する低粘度脂環式エポキシ樹脂(例えば、HuntsmanからのAraldite(登録商標)CY179)である。
【0013】
他の好適な二官能性エポキシドとしては、以下の式5及び式6:
の化合物(又はモノマー)が挙げられる。
【0014】
二官能性エポキシドは、組成物の全重量に基づく重量で、50重量%まで、例えば、
24%〜38%の量で存在してもよい。
【0015】
樹脂組成物中の式Iのポリエポキシド及び式IIの芳香族アミンCAFの存在は、式Iのポリエポキシドなしの同じ樹脂組成物と比較する場合、高レベルの強靭性を維持しながら硬化樹脂マトリックスの湿潤T
gの上昇に寄与するように思われる。さらに、式Iのポリエポキシドは、他の周知の多官能性樹脂、例えば、HuntsmanからのAraldite(登録商標)MY0510(トリグリシジルp−アミノフェノール)、MY0610(トリグリシジルm−アミノフェノール)及びMY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン)と比較する場合、高温でのT
g安定性の改善を与えるように思われる。
【0016】
上に開示された硬化性樹脂組成物は、式III:
(式中、n=1〜5、R=Hである)
によって表されるエポキシノボラック樹脂をさらに含んでもよい。
【0017】
特に好適なエポキシノボラック樹脂は、以下の式:
によって表されるものである。
【0018】
このようなエポキシノボラック樹脂は、Dow Chemical Co.からD.E.N.(商標)431として商業的に入手可能である。
【0019】
エポキシノボラック樹脂は、組成物の全重量に基づく重量で、0%超で18%まで、例えば、1%〜7%の量で存在してもよい。
【0020】
上に開示された硬化性樹脂組成物は、フルオレニルエポキシ、特に、式IV:
によって表されるビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテルをさらに含んでもよい。
存在する場合、フルオレニルエポキシは、組成物の全重量に基づく重量で、0%超で20%まで、例えば、4%〜18%の量で存在してもよい。
【0021】
樹脂組成物中の式IVのフルオレニルエポキシド及び式IIの芳香族アミン、例えば、CAFの存在は、フルオレニルエポキシドなしの同じ樹脂組成物と比較する場合、硬化樹脂マトリックスの湿潤T
gの上昇に寄与するように思われる。一部の実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、その式中に1つ以上のナフタレン環を有するいかなるナフタレン系エポキシも欠いている。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、樹脂組成物は、以下の成分:
(A)少なくとも2種のポリエポキシド(そのうちの一方は、フルオレニルエポキシ、特に、上に開示された式IVによって表される化合物であり、他方は、ナフタレン系エポキシである);
(B)上に開示された式IIによって表される芳香族アミン硬化剤;及び
(C)コア−シェルゴム粒子
を含有する。
【0023】
ナフタレン系エポキシは、その式:
中に少なくとも1つのナフタレン環構造(又はベンゼン環の縮合対)を有する。
【0024】
ナフタレン系エポキシは、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル;1,7−ジヒドロキシナフタレン;1ナフタレンクレゾールグリシジルエーテル;1,2−ジヒドロキシナフタレン;1,3−ジヒドロキシナフタレン;1,4−ジヒドロキシナフタレン;1,5−ジヒドロキシナフタレン;2,3−ジヒドロキシナフタレン;2,7−ジヒドロキシナフタレン;及びそれらの組合せから選択されてもよい。
【0025】
ナフタレン系エポキシは、組成物の全重量に基づく重量で、0%超で30%まで、例えば、21%〜30%の量で存在してもよい。
【0026】
硬化性樹脂組成物について本明細書に記載される様々な実施形態では、全ての芳香族アミン(「A」)とポリエポキシド(「B」)の組合せのモル比(A:B)、A/Bは、1〜2(1:1〜2:1)、好ましくは1.5〜1.6(15:10〜16:10)の範囲であってもよい。
【0027】
本明細書に記載されるエポキシ樹脂組成物は好ましくは、90℃〜160℃の範囲内の温度で、10ポイズ未満、好ましくは5ポイズ未満、又は3ポイズ未満の粘度を有する。
【0028】
本開示における用語「硬化(curing)」又は「硬化(cure)」は、熱、化学反応又は照射によって引き起こされる熱硬化性材料(プレポリマー又は樹脂又はモノマー)の硬化を意味する。硬化のプロセスは、樹脂を不溶解性で、不溶性の架橋ポリマー網状組織に変化させる。硬化性樹脂組成物の文脈において、用語「硬化性(curable)」は、その組成物が、組成物を粘性液体状態から硬化状態に変換させる熱などの条件にかけることができることを意味する。
【0029】
コア−シェル粒子
コア−シェルゴム(CSR)粒子は、エポキシ系樹脂組成物中で強靭化剤として機能する。好ましくは、コア−シェルゴム粒子は、800nm未満、例えば、100nm〜200nmの粒子サイズ(d90)を有する。樹脂組成物中のCSR粒子の相対量は、組成物の全重量に基づく重量で、1%〜20%、一部の実施形態では、0.3%〜10%であってもよい。
【0030】
CSR粒子は、内側コア部分と内側コア部分を実質的に包む外側シェル部分とを有する。コア部分は好ましくは、エラストマー又はゴム特性、すなわち(特に外側シェル部分の材料と比較して)比較的低いガラス転移温度、好ましくは約0℃未満、例えば約−30℃未満を有するポリマー材料である。外側シェル部分は好ましくは、ガラス状ポリマー材料、すなわち周囲温度(20℃)超、好ましくは約50℃超のガラス転移温度を有する熱可塑性又は架橋熱硬化性ポリマーである。
【0031】
CSR粒子のコアは、ゴム化合物と同様のブタジエン/スチレンコポリマーであってもよく、シェルは、アクリレート、例えば、メチルメタクリレートのホモポリマー又はコポリマーであってもよい。
【0032】
一部の実施形態では、樹脂組成物は、粘度を所望の低いレベルに維持するために、いかなる熱可塑性ポリマー、例えば、ポリアリールスルホン(ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルエーテルスルホン(PEES)、及びそれらのコポリマーを含む)、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、及びポリフェニレンオキシド(PPO)も欠いている。
【0033】
任意選択の添加剤
硬化性樹脂組成物は、任意選択の添加剤、例えば、シリカなどのナノサイズ無機粒子を含んでもよい。無機粒子は、約2.0nm〜約800nm、好ましくは500nm以下、一部の実施形態では、100nm以下の範囲の粒子サイズを有する。このような任意選択の添加剤の量は、硬化性樹脂組成物の重量で5.0%以下である。
【0034】
樹脂注入法及び成形物品の製造
本開示の硬化性エポキシ系樹脂組成物は、RTM及びVaRTMを含めて、液体樹脂注入に適する。成形物品は、繊維状予備成形物を提供し、繊維状予備成形物に本明細書に開示される硬化性エポキシ樹脂組成物を注入し、樹脂注入予備成形物を硬化させることによって生成され得る。繊維状予備成形物は、多孔質で、液体樹脂組成物に対して透過性である。予備成形物を形成するために、テキスタイル材料の複数プライが所望の厚さにレイアップされる。
【0035】
予備成形物は、樹脂注入前に密閉型内に置かれてもよい。型は、初期温度に加熱され、十分に低い粘度を有する樹脂組成物が、予備成形物に樹脂を注入するために型中に射出される。樹脂注入予備成形物は、次いで、初期温度よりも高い硬化温度(T
c)で、硬化複合物品を形成するために十分な期間硬化される。
【0036】
特性測定
粒子サイズ
本開示では、粒子サイズは、例えば、Malvern Zetasizer 2000を使用して、動的光散乱によって測定される。粒子サイズ(d90)は、粒子の90%がこの値未満の粒子サイズを有するような粒子サイズ分布(体積ベース)を規定する。
【0037】
粘度
粘度測定は、ASTM標準D2196に従ってブルックフィールド粘度計を使用して定常条件においてである。
【0038】
ガラス転移温度
本開示では、ガラス転移温度(T
g)は、5℃/分の傾斜速度で示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【実施例】
【0039】
RTMプロセスのための一部の例示的な樹脂組成物を表1〜表3に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
PY306、MY0816及びLME10169は、Huntsman Advanced Materialsから入手可能である。
【国際調査報告】