特表2021-501339(P2021-501339A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-501339息の中の化合物を検出し識別するためのポータブルデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-501339(P2021-501339A)
(43)【公表日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】息の中の化合物を検出し識別するためのポータブルデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20201211BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20201211BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20201211BHJP
【FI】
   G01N33/497 A
   G01N27/327 353
   G01N27/416 302G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-543424(P2020-543424)
(86)(22)【出願日】2018年10月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月19日
(86)【国際出願番号】IB2018058513
(87)【国際公開番号】WO2019087082
(87)【国際公開日】20190509
(31)【優先権主張番号】62/579,240
(32)【優先日】2017年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520152489
【氏名又は名称】エヌゲイジアイティー・デジタル・ヘルス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レッディー,サティア
(72)【発明者】
【氏名】マードック,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】レッディー,ラージ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA37
2G045CB22
2G045DA72
2G045DA80
2G045DB30
2G045FB05
(57)【要約】
本開示は、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するためのポータブルデバイスおよび方法に関する。本明細書に記述されるデバイスおよび方法は、実時間で1つ以上の化合物を検出し識別することができる。デバイスは、ハウジングに接続されたマウスピースと、1つ以上の化合物を検出し識別するデータを収集する、ハウジング内に配置されたセンサーモジュールと、センサーモジュールによって収集されたデータを電気的に伝送する、センサーモジュールに接続され、ハウジング内に配置された通信装置と、通信装置およびセンサーモジュールに接続され、ハウジング内に配置されたバッテリーとを含んでいてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するためのポータブルデバイスであって、
ハウジングに接続されたマウスピースと、
1つ以上の化合物を検出し識別するデータを収集する、ハウジング内に配置されたセンサーモジュールと、
センサーモジュールによって収集されたデータを電気的に伝送する、センサーモジュールに接続され、ハウジング内に配置された通信装置と、
通信装置およびセンサーモジュールに接続され、ハウジング内に配置されたバッテリーと
を備える、ポータブルデバイス。
【請求項2】
通信装置によって伝送されたデータを処理して、化合物を検出し識別する処理装置が、通信装置に電子的にまたは無線により接続される、請求項1に記載のポータブルデバイス。
【請求項3】
処理装置が、サンプル中で検出された化合物の識別を、処理装置からディスプレーに伝送する、請求項2に記載のポータブルデバイス。
【請求項4】
ハウジングに取り付けられた錠剤ディスペンサーをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
ハウジング内のセンサーモジュールによって収集されたデータを増幅する、センサーモジュールに接続された増幅器をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
1つ以上の化合物が実時間で検出される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
1つ以上の化合物が、アプレミラスト、レナリドミド、ソフォスブビルおよびベルプラスチ(velprasti)、レジパスビルおよびソフォスブビル、カンナビス、ソフォスブビル、オピエート、ヒドロモルホン、ジャルディアンス(Jardiance)、ジャヌビア(Januvia)、アテノール、リシノプリル、アムロジピンベシル酸塩、コザール(Cozaar)、テクツラン(Tekturan)、レブラミド(Revlamid)、イブランス(Ibrance)、イムブルビカ(Imbruvica)、イクスタンジ(Xtandi)、キシチガ(Xytiga)、ベンクレキサット(Venclexat)、ゼローダ(Xeloda)、ソルバジ(Solvadi)、ハーボニー(Harvoni)、エプクルサ(Epclusa)、アトロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン(rosivastatin)、ピタバスタチン(pitvastatin)、ミコフェノール酸モフェチル、葉酸、テトラヒドロカンナビノール、シクロスポリン、タクロリムス(Tacrolimus)、またはシロリムス(Sirolimus)である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
1つ以上の化合物が、1つ以上のマーカー化合物を含む1つ以上のナノ粒子でコーティングされる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
識別され検出される化合物が、マーカー化合物である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
マーカー化合物がフェノールである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
フェノールが、カテコール、バニリン、またはグアイコール(guaicol)である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
マーカー化合物が、機能化された無機金属酸化物ナノ粒子である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
錠剤ディスペンサーが、デバイスによって検出され識別される1つ以上の化合物を含む錠剤を分配する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項14】
対電極と、
1つ以上の固定化生体分子を含む多層カーボンナノチューブを含む作用電極と、
参照電極と、
電極がその上に配置される支持体と
を備える、センサー。
【請求項15】
被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するための方法であって、
センサーモジュールと通信装置とバッテリーとを含むハウジングに接続されたマウスピース内に収集された被験者の息を伝送するステップと、
センサーモジュールで1つ以上の化合物の存在および識別に関するデータを収集するステップと、
通信装置を介してデータを処理装置に伝達するステップと、
伝達されたデータを処理して、1つ以上の化合物を検出し識別するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、2017年10月31日に出願された米国仮出願第62/579,240号の優先権を米国特許法第119条(e)に基づき主張する。
【0002】
本開示は、被験者の息の中の1つ以上の化合物を、検出し識別するためのポータブルデバイスおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるデバイスおよび方法は、実時間で1つ以上の化合物を検出し識別する。
【背景技術】
【0003】
息の中の物質は、例えば医薬品を含む化学化合物など、被験者における様々な材料の摂取の証拠をしばしば提供する。息の中で検出され得る化合物の例は、限定するものではないがアプレミラスト、レナリドミド、ソフォスブビルおよびベルプラスチ(velprasti)、レジパスビルおよびソフォスブビル、カンナビス、ソフォスブビル、オピエート、ヒドロモルホン、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、オメガ3、オメガ6、またはオメガ9、食品添加物、セイヨウオトギリソウ(St.John’s wart)またはペパーミント油の成分、対応する代謝分解産物などを含む。
【0004】
被験者の息における化合物検出の重要な適用例は、医薬品処方の服薬遵守である。しばしば患者は、記憶喪失または単純な物忘れに起因して、処方された投薬を適時にまたは全く摂取することができず、そのことが深刻な医学的問題に至る可能性がある。さらに、そのような患者を治療する医療従事者は、服薬遵守の欠如に気付かず、それが適正な治療上の措置を妨げる可能性がある。現在、いくつかの方法によって息の中の物質が検出され得るが(例えば、Mifsudら、米国特許第5,801,297号;Gordonら、米国特許第9,709,582号;Soodら、国際公開No. WO2012/1221283;およびLaurencoら、Metabolites 2014年、4、465−498頁参照)、患者の服薬遵守を実時間で直接測定するものはない。既存の方法は、面倒なサンプル収集およびその後の分析を必要とし、結果の報告が遅れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,801,297号明細書
【特許文献2】米国特許第9,709,582号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/1221283号
【特許文献4】米国特許第4,656,008号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Laurencoら、Metabolites 2014年、4、465−498頁
【非特許文献2】Meulenkamp,J. Phy.Chem B 1998、5566
【非特許文献3】Vaseemら、Chapter 4、Metal Oxide Nanostructures and their Applications、Ahmad UmarおよびYoon Bong Hahn編、Volume 5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、例えば医療従事者などの遠隔ユーザーへの同時報告を伴った、実時間で分析結果を提供する、被験者の息の中の化合物を直接検出するための自動化されたポータブルデバイスおよび方法が求められている。そのようなデバイスおよび方法は、医薬品レジメンに対する患者の服薬遵守の測定において、有意な価値のあるものになるであろうし、したがって、適時に処方された医薬品を摂取することを被験者が失敗したことに関連する医学的課題が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される実施形態は、息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するためのポータブルデバイスおよび方法を提供することによって、これらおよびその他の必要性を満足させる。他の態様では、錠剤用のコーティング、新規な錠剤、および新規なセンサーが提供される。
【0009】
一態様では、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するためのポータブルデバイスが提供される。デバイスは、ハウジングに接続されたマウスピースと、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するデータを収集する、ハウジング内に配置されたセンサーモジュールと、センサーモジュールによって収集されたデータを外部処理装置に伝送する、センサーモジュールに接続され、ハウジング内に配置された通信装置と、センサーモジュールおよび通信装置に接続され、ハウジング内に配置されたバッテリーとを含む。いくつかの実施形態では、処理装置は通信装置に電気的にまたは無線で接続され、通信装置によって伝送されたデータが解析されて、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別する。さらに他の実施形態では、ディスペンサーがハウジングに取り付けられる。
【0010】
別の態様では、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するための方法が提供される。方法は、マウスピース内に収集された被験者の息を、センサーモジュールと通信装置とバッテリーとを含むハウジングに送るステップと、センサーモジュールで化合物の識別(identity)に関するデータを収集するステップと、通信装置でデータを処理装置に伝送するステップと、通信データを処理装置で解析して、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するステップとを含む。
【0011】
さらに別の態様では、錠剤用のコーティングが提供される。コーティングは、ナノ粒子と、ナノ粒子に埋め込まれた1つ以上のマーキング化合物と、ポリマーマトリックスとを含む。
【0012】
さらに別の態様では、カプセルが提供される。カプセルは、ナノ粒子と、ナノ粒子に埋め込まれた1つ以上のマーキング化合物と、ポリマーマトリックスとを含む組成物に混合された、1つ以上の化合物を備える。
【0013】
さらに別の態様では、錠剤が提供される。錠剤は、錠剤の形をとる1つ以上の化合物と、ナノ粒子、ナノ粒子に埋め込まれた1つ以上のマーキング化合物、およびポリマーマトリックスを含む、錠剤を覆うコーティングとを含む。
【0014】
さらに別の態様では、錠剤が提供される。錠剤は、錠剤の形をとる1つ以上の化合物と、機能化された(functionalized)無機金属酸化物ナノ粒子およびポリマーマトリックスを含む、錠剤を覆うコーティングとを含む。
【0015】
さらに別の態様では、センサーが提供される。センサーは、対電極と、1つまたは複数の生体分子に付着された多層カーボンナノチューブを含む作用電極と、参照電極と、電極が配置される支持体とを含む。
【0016】
さらに別の態様では、センサーが提供される。センサーは、対電極と、多層カーボンナノチューブを含む作用電極と、参照電極と、電極が配置される支持体とを含む。
【0017】
本開示は、添付図面と併せて読むときに以下の詳細な記述から、最も良く理解される。通例により、図面の様々な特徴は、縮尺に合わせて描かれていないことが強調される。むしろ様々な特徴の寸法は、明瞭化のために任意に拡大されまたは縮小される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】被験者の息の中の1つ以上の化合物を識別し検出する、ポータブルデバイスの例を示す図である。
図2】被験者の息の中の1つ以上の化合物を識別し検出する、プロセスを示す図である。
図3】被験者の息の中の1つ以上の化合物を識別し検出するポータブルデバイスの、断面図である。
図4】被験者の息の中の1つ以上の化合物を識別し検出するポータブルデバイスの、センサーモジュールを示す図である。
図5】被験者の息の中の1つ以上の化合物を識別し検出するポータブルデバイスのセンサーモジュールで使用され得る、センサーの例を示す図である。
図6】被験者の息の中の1つ以上の化合物を識別し検出するポータブルデバイスのセンサーモジュールで使用され得る、固定化生体分子を含むセンサーを示す図である。
図7】センサーモジュールによって提供されたデータを解析するために処理装置で使用され得る、ニューラルネットワークを示す図である。
図8】コーティングされた錠剤の例を示す図である。
図9】10ppmから100ppmに及ぶ異なる濃度でキトサンナノ粒子に埋め込まれたバニリンの検出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書には、被験者の息の中の化合物を検出し識別するためのポータブルデバイスおよび方法が開示されている。本明細書には、錠剤用のコーティング、新規な錠剤、および新規なセンサーも開示されている。
【0020】
図1を参照すると、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別するのに使用され得る、ポータブルデバイス100の例が例示されている。図1に示される例は、取り付けられたマウスピース(図示せず)、センサーモジュール(図示せず)、通信装置(図示せず)、充電器104、ディスペンサー108、およびスタンド106を含むハウジング102を含む。当業者に明らかなように、そのようなポータブルデバイスの多くのその他のデザインおよび構成が可能であり、上記例示は如何様にも限定するものではない。
【0021】
簡単に言うと、図1に示されるものなどのポータブルデバイスは、ハウジング内に配置されたセンサーモジュールで、被験者の息の中の1つ以上の化合物の存在および識別に関するデータを収集する。センサーモジュールは、収集されたデータを信号(例えば、光、熱、電気など)に変換し、データを、通信装置を介して処理装置に伝送し、処理装置はデータを解析して、被験者の息の中の1つ以上の化合物の存在および識別に関する情報を提供する。処理装置は、例えばニューラルネットワークを含んでいてもよく、このニューラルネットワークは、受信した信号を処理して被験者の息の中の1つ以上の化合物の存在および識別に関する情報を提供し、1つ以上の化合物の存在および識別をディスプレーに伝送してもよい。
【0022】
上述のプロセスが、図2に詳細に例示される。被験者202は、例えば、1つ以上の化合物を含む錠剤またはカプセル204を摂取しており、ハウジング208内に、マウスピース206を介して息を吹き込む。被験者の息はハウジング208に進入し、ハウジング208はバッテリー(図示せず)とセンサーモジュール(図示せず)と通信装置(図示せず)とを含んでおり、通信装置はセンサーモジュールによって収集されたデータを例えばクラウド210に(例えば、無線または電気的手段によって)伝送する。データは、クラウド210に格納されてもよく、処理装置212によってアクセスされてもよく、処理装置212は被験者の息の中の化合物を検出し識別し、上記結果を、ディスプレーを介してユーザーに伝達する。通信装置は、データを処理装置212に直接伝送してもよく、したがってクラウド210をバイパスする。理想的には、図2に示されるプロセスは、実時間で(即ち、事象が発生しているときと実質的に同時に、いかなる遅延も例えば1分未満で)行なわれる。しかしデータは、処理装置によって処理されユーザーに表示される前に、クラウドに格納されてもよい。
【0023】
ポータブルデバイス300を、図3に、断面図で示す。デバイス300は、ハウジング306に接続されたマウスピース304を有し、その内部を通して被験者が息のサンプル302を供給する(例えば、Gumpら、米国特許第4,656,008号、または本明細書に記述されるポータブルデバイスで使用され得るマウスピースの、例えば任意の商用の酒気検知器のマウスピース参照)。一般に、ハウジング306は、記述されるプロセスに適合性のある任意の材料から構築されてもよく、実質的に中実または中空であってもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング306は、プラスチックから製作されており、成型されたまたはプリントされたプラスチックで構築されかつハウジング306内に配置された様々なsを最適に位置決めするように働くケーシング312を含む。ハウジング306は、この実施形態において、蒸気入口308、センサーアレイ320、および蒸気出口314を有する、センサーモジュール310を含み、ケーシング312に取り付けられる。センサーモジュール310は、典型的にはプラスチックで作製され、乾燥剤(例えば、シリカゲル)、黒鉛、または塗装した電極(即ち、作用、対、および参照電極)を含み、センサー322を含む。電極は、金線で主回路(図示せず)に接続される。ワイヤ316は、ケーシング312に取り付けられた通信装置320を、センサーモジュール320に接続する。ワイヤ314は、通信装置320から指示を提供するのに、またはバッテリー324から電力をセンサーモジュール320に供給するのに、使用されてもよい。ワイヤ318は、通信装置が、データを無線でまたは電子的に、ポータブルデバイス300の外部にある処理装置へ伝送するのを可能とする。
【0024】
図4は、センサーモジュール400を、さらに詳細に示す。入口402は、被験者の息のセンサーモジュール400への進入を可能とするチューブである。理想的には、センサーモジュール400は、被験者の息を受け取るようにハウジング内に位置決めされることになる。センサーモジュール400は、センサー408A−Dのアレイを含み、これらのアレイは独立して、被験者の息の中の1つ以上の化合物の存在を検出することが可能であり、典型的には成型されたプラスチックであるベース404に取り付けられる。いくつかの実施形態では、センサー408A−Dは、被験者の息の中の1つ以上の化合物の存在を検出するように選択される。センサー408A−Dに接触した後、被験者の息は、出口406を経てセンサーモジュール400から出て行くことができる。ある特定の実施形態では、センサーモジュール400は交換可能であり、したがってポータブルデバイスが多くの異なるタイプの化合物の存在および識別を認識するように迅速に適合されることが可能になる。センサーの数は変えることができ、図4によって限定されないことを、理解されるべきである。
【0025】
センサー408A−Dは、被験者の息の中の化合物の存在および識別を認識するために、例えば、金属酸化物、導電性無機もしくは有機材料(例えば、ゼオライト、有機金属化合物、多孔質有機ポリマー、多孔質分子固体)、または酵素、抗体、核酸などの生体材料を含んでいてもよい。一般に、本明細書に記述されるセンサーは、被験者の息の中の1つ以上の化合物の存在の検出を、信号(例えば、電気、光、熱など)に変換し、この信号は、分析、識別、および定量のために処理装置に伝送される。
【0026】
息の中の1つ以上の化合物、例えば被験者の息の中のアスコルビン酸を識別し検出するための単純な電気化学センサーを、図5に例示する。サンプル502は、対電極504、作用電極506、および参照電極508を含む電気化学センサーに遭遇する。対電極504は、例えば炭素塗料で作製され、一方、参照電極508は、例えば銀塗料で作製される。対および参照電極は、ホウ素がドープされたダイヤモンド、Ag、またはPtで作製されてもよい。本明細書に記述されるセンサーで使用され得る電極には、限定するものではないが多層カーボンナノチューブ(MWCNT)/Agナノハイブリッド/Au、Agナノ粒子/DNA/ガラス状炭素電極(GCE)、ナノ−CuO/Ni/Pt、PtPdFeナノ粒子/GCE、Coナノ粒子/GCE、CuO/Ni/Au、AgMnO−MWCNTs/GCEなどが含まれる。炭素塗料および多層カーボンナノチューブを含む作用電極506への電圧の印加は、被験者の息の中の1つ以上の化合物の存在および識別の認識をもたらす。
【0027】
多層カーボンナノチューブは、炭素の同素体であり、円筒構造および直径を有し、その長さは1nm未満から約100nmに及ぶ。多層カーボンナノチューブは、ナノメートル規模のサイズに関連した多くの驚くべき性質に起因して、広く様々な産業における多くの潜在的な適用例があり、したがって十分に知られておりかつ容易に利用可能である。いくつかの実施形態では、多層カーボンナノチューブが作用電極で使用される。
【0028】
作用電極に使用され得るその他の材料は、限定するものではないがスーパーオキシドジスムターゼ、ヘミン、Zn−スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ−システイン、キサンチンオキシダーゼ、ヒポキサンチン、シトクロームC、システイン、金、ドデシル硫酸ナトリウム、ナノチューブ複合材料、銀ナノ粒子、熱分解黒鉛、インジウムがドープされた酸化スズ、ガラス状炭素、炭素繊維などを含む。図5に例示される電気化学センサーにおいて、電極は、例えば、介在する絶縁層510と共にガラスエポキシチップ512上にアレイ化されている。電極を配置するための多くのその他の支持体は、当業者に知られており、全く従来通りである。アスコルビン酸が作用電極506に接触すると、当技術分野で十分知られているように、以下に示されるようにデヒドロアスコルビン酸に還元される。
【0029】
【化1】
【0030】
上述のセンサーモジュールでの使用のための、生体材料をベースにする例示的なセンサーを、図6に示す。センサー600は、支持体608上に固定化された生体分子606を含む。生物学的受容体606は、例えば酵素、細胞、タンパク質受容体、抗体、核酸などを含む。図6には、サンプル中に存在するが支持体608上の固定化生体分子606には結合していない、構成要素602が示される。図6には、生体分子606に特異的に結合する化合物604も示される。化合物604の、固定化生体分子606への結合の後、信号(例えば、電気、光、または熱)が発生され、この信号が変換器610から通信装置(図示せず)に、次いで信号増幅器612を介して処理装置614に伝達され、そこでデータが処理されて、化合物の存在および識別が確認される。信号増幅器612は、不安定性およびノイズを低減し、商業上の供給元から購入されてもよい(例えば、NICO2000 Ltd、62 Pebworth Road、Harrow、Middlesex、HA1 3UE、U.K.;Smart Shape Enterprise(1240 Rockwell Ave、Suite 3A、Cleveland OH 44114)参照。信号は、信号増幅器の仲介なしに、処理装置に直接伝達されてもよく、これは任意選択である。
【0031】
再び図5を参照すると、生体分子をベースにしたセンサーは、生体分子を、作用電極506の多層カーボンナノチューブ成分に共有結合させることによって構築され得る。いくつかの実施形態では、生体分子が酵素である。他の実施形態では、生体分子がオキシダーゼである。さらに他の実施形態では、生体分子がラッカーゼである。ラッカーゼ、銅を含有するオキシダーゼは、以下に例示するようにフェノール(即ち、マーカー化合物)をキノンに酸化することが、当技術分野で十分知られている。
【0032】
【化2】
【0033】
ラッカーゼは、フェノールを酸化した後、電荷を多層カーボンナノチューブに移動させ、したがって電気信号をもたらす。ラッカーゼ系の感度は非常に高く、1ppb程度の低さの感度でいくつかのフェノールを検出する能力を持つ。例えばラッカーゼは、1−エチル−3−3(−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)スクシンイミドとの、リン酸緩衝液中での2時間にわたるインキュベーションにより、電極に付着され得る。固定化されたラッカーゼは、サイクリックボルタンメトリーによって実証されるように、バニリン、ならびに例えばカテコールおよびギアコール(guiacol)などのその他のマーカー化合物を、溶液中で酸化するのに有効であった。
【0034】
例示的な通信装置は、商業上の供給元から購入することができ(例えば、Qualcomm(R) Snapdragon(TM) SDM845 X20 LTEモデム、Qualcomm,Inc.製、San Diego、CA)、全く従来通りである。多くのそのような通信装置は当技術分野で知られており、本明細書に記述されるポータブルデバイスで使用され得る。
【0035】
例示的なバッテリーは、従来の、多くの商業上の供給元から入手可能なリチウムイオンバッテリーである(例えば、Panasonic DMW−BCM14バッテリー)。多くのバッテリーは、当技術分野で知られており、本明細書に記述されるポータブルデバイスで使用されてもよい。
【0036】
処理装置は、典型的には従来の汎用コンピューターとなり、ディスプレーデバイスと、その他のデバイスおよびシステムから任意の通信インターフェースを介して情報の受信および送信を可能にする通信インターフェースとを含む。処理モジュールは、典型的には、センサーモジュールから受信したデータを処理し、その結果をディスプレーデバイスに送信することによって、被験者の息の中の1つ以上の化合物を検出し識別することになる。センサーモジュールによって提供されたデータを解析するのに十分な処理能力を有する、当技術分野で知られている任意の汎用コンピューターは、本明細書に記述されるポータブルデバイスと併せて使用されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、センサーモジュールのセンサーからのデータは、例えば多層パーセプション、一般回帰ニューラルネットワーク、ファジー推論システムなどを含む、例えば人工ニューラルネットワークなどのパターンおよび認識システム、主成分解析、部分的最小二乗、多重線形回帰などの統計的方法を使用して、解析される。人工ニューラルネットワークは、複合(complex)出力パターンで複合入力パターンをマップするのに相互接続ノード(即ち、ニューロン)を使用する、データ処理アーキテクチャである。重要なことは、ニューラルネットワークが、様々な入出力トレーニングセットを使用することから学ぶことができることである。
【0038】
次に図7を参照すると、センサーモジュール702から受信したデータを処理することができる、例示的な人工ニューラルネットワーク700が示されている。一般に、ニューラルネットワークは、ニューロンの3つの異なる層を使用する。第1の層は、センサーモジュール702からデータを受信する入力層704、第2の層は隠れ層706であり、一方、第3の層は、710で解析の結果を提供する出力層708である。隠れ層706内の各ニューロンは、入力層704内の各ニューロおよび出力層708内の各ニューロンに接続されることに留意されたい。例示されたニューラルネットワークにおいて、隠れ層706は、入力層704から受信したデータを処理し、その結果を出力層708に提供する。ただ1つの隠れ層が図7に示されているが、任意の数の隠れ層が使用されてもよく、そのニューロンの数は、汎用コンピューターの処理能力およびメモリによってのみ制限される。入力ニューロンへの入力は、センサーモジュールのセンサーからの入力である。例えば7個のセンサーがセンサーモジュール内にある場合、入力層は7個のニューロンを有することになる。一般に、出力ニューロンの数は、センサーモジュールが検出し識別するようにトレーニングされた化合物の数に対応する。隠れニューロンの数は、大きく変動してもよい。いくつかの実施形態では、隠れニューロンの数は、約4から約10個の間である。
【0039】
ポータブルデバイスは、典型的には医学的に処方された化合物である(例えば、承認医薬品)化合物の、錠剤を分配するためのディスペンサーを含んでいてもよい。ディスペンサーは、被験者によるその摂取がポータブルデバイスによってモニターされることになる化合物の錠剤を、貯蔵し分配する、カートリッジまたは任意の従来のデザインであってもよい。したがってディスペンサーは、被験者の便宜のために、本明細書に記述されるポータブルデバイスのハウジングに取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、ディスペンサーに投入される化合物は、被験者の息の中で検出され得るマーカー化合物が含有されたコーティングで覆われる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポータブルデバイスを使用して検出され識別される1つ以上の化合物は、直接検出され識別される。例えば、ある特定の医薬品(例えば、モルヒネ)が被験者によって摂取される場合、ポータブルデバイスによって、モルヒネとして検出され識別され得る。直接識別され検出され得る医薬品には、限定するものではないがアプレミラスト、レナリドミド、ソフォスブビルおよびベルプラスチ(velprasti)、レジパスビルおよびソフォスブビル、カンナビス、ソフォスブビル、オピエート、ヒドロモルホン、ジャルディアンス(Jardiance)、ジャヌビア(Januvia)、アテノール、リシノプリル、アムロジピンベシル酸塩、コザール(Cozaar)、テクツラン(Tekturan)、レブラミド(Revlamid)、イブランス(Ibrance)、イムブルビカ(Imbruvica)、イクスタンジ(Xtandi)、キシチガ(Xytiga)、ベンクレキサット(Venclexat)、ゼローダ(Xeloda)、ソルバジ(Solvadi)、ハーボニー(Harvoni)、エプクルサ(Epclusa)、アトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン(rosivastatin)、ピタバスタチン(pitvastatin)、ミコフェノール酸モフェチル、葉酸、テトラヒドロカンナビノール、シクロスポリン、タクロリムスジャヌビア(Tacrolimus Januvia)、ジャヌメット(Janumet)、エリキュース(Eliquis)、イグザレルト(Xarelto)、またはシロリムス(Sirolimus)が含まれる。識別され検出され得るその他の化合物には、限定するものではないがビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、オメガ3、オメガ6、またはオメガ9が含まれる。
【0041】
しかし、他の実施形態において、医薬品の検出および識別では、例えば医薬品の経口剤形をコーティングするのに使用されてきたマーカー化合物の検出および識別を伴う。図8は、上記概念を示す。錠剤800は、コーティング804によって覆われた1つ以上の化合物802を含む。コーティング804は、ポリマーマトリックス中に配置された1つ以上の埋め込まれたマーカー分子をもつナノ粒子を含む。摂取後、コーティングは溶解し、医薬品から構成されたコア錠剤808を提供し、マーカー分子806を放出し、次いでこの分子が本明細書に記述されるポータブルデバイスによって被験者の息の中で検出され識別される。一般にコーティングは、経口剤の摂取直後に被験者の息の中でマーカー化合物が検出され得るように、唾液中で溶解すべきである。
【0042】
いくつかの実施形態では、錠剤用のコーティングが提供される。コーティングは、ナノ粒子、ナノ粒子に埋め込まれたマーカー化合物、およびポリマーマトリックスを含む。他の実施形態では、錠剤が提供される。錠剤は、錠剤形態にある1つ以上の化合物と、ナノ粒子、ナノ粒子に埋め込まれた1つ以上のマーキング化合物、およびポリマーマトリックスを含む、錠剤を覆うコーティングとを含む。さらに他の実施形態では、錠剤が提供される。錠剤は、錠剤形態にある1つ以上の化合物と、機能化された無機金属酸化物ナノ粒子およびポリマーマトリックスを含む、錠剤を覆うコーティングとを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、コーティングされた錠剤のコアを形成する医薬品は、アプレミラスト、レナリドミド、ソフォスブビルおよびベルプラスチ(velprasti)、レジパスビルおよびソフォスブビル、カンナビス、ソフォスブビル、オピエート、ヒドロモルホン、ジャルディアンス(Jardiance)、ジャヌビア(Januvia)、アテノール、リシノプリル、アムロジピンベシル酸塩、コザール(Cozaar)、テクツラン(Tekturan)、レブラミド(Revlamid)、イブランス(Ibrance)、イムブルビカ(Imbruvica)、イクスタンジ(Xtandi)、キシチガ(Xytiga)、ベンクレキサット(Venclexat)、ゼローダ(Xeloda)、ソルバジ(Solvadi)、ハーボニー(Harvoni)、エプクルサ(Epclusa)、アトロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン(rosivastatin)、ピタバスタチン(pitvastatin)、ミコフェノール酸モフェチル、葉酸、テトラヒドロカンナビノール、シクロスポリン、タクロリムス(Tacrolimus)、ジャヌビア(Januvia)、ジャヌメット(Janumet)、エリキュース(Eliquis)、イグザレルト(Xarelto)、またはシロリムス(Sirolimus)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、キトサンおよびポリマー、ポリビニルアルコールナノ粒子またはポリビニルピロリジン(polyvinylpyrolidine)ナノ粒子であって、当技術で十分知られている方法により作製され得るものである。他の実施形態では、キトサンと共に使用されるポリマーは、トリポリホスフェート、HPMC、HPC、PVP、エチルセルロース、PEG、酢酸フタル酸セルロース、およびこれらの誘導体、生体接着性コーティング、例えばポリ(ブタジエン−無水マレイン酸−co−L−DOPA)(PBMAD)などである。
【0045】
いくつかの実施形態では、マーカー化合物がフェノールである。他の実施形態では、フェノールが、カテコール、バニリン、またはグアイコール(guaicol)である。さらに他の実施形態では、コーティングを形成するのに使用されるポリマーマトリックスが、デキストラン、アルキュトリン酸(alcutric acid)のエステル、酢酸フタル酸セルロース、ポリ(メタクリル酸−co−メチルメタクリレート、トリメリト酸酢酸セルロース、ポリ(ビニルアセテートフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどである。
【0046】
いくつかの実施形態では、マーカー化合物が、機能化された無機金属酸化物ナノ粒子である。他の実施形態では、機能化された無機金属酸化物が、クエン酸で機能化されたZnOナノ粒子である。ZnOナノ粒子は、従来の方法を介して作製され得る(Meulenkamp,J. Phy.Chem B 1998、5566;Vaseemら、Chapter 4、Metal Oxide Nanostructures and their Applications、Ahmad UmarおよびYoon Bong Hahn編、Volume 5)。クエン酸によるZnO粒子の超音波処理は、センサーモジュールのセンサーによって検出される、クエン酸で機能化されたZnOナノ粒子を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態では、コーティングの厚さが約0.1ミクロンから約100ミクロンの間である。他の実施形態では、コーティングの厚さが約0.2ミクロンから約25ミクロンの間の厚さである。さらに他の実施形態では、コーティングの厚さが約0.3から約10ミクロンの間の厚さである。さらに他の実施形態では、コーティングの厚さが約0.5ミクロンである。
【0048】
当業者なら、ナノ粒子と、異なるマーカー化合物との、様々な濃度での組合せが、独自のコーティングの膨大なライブラリーを創出するのに使用され得ることが理解されよう。例えば、10ppmから100ppmに及ぶ異なる濃度でキトサンナノ粒子に埋め込まれたフェノールバニリンを含むコーティングは、図9に示されるように容易に区別され得る。バニリン、カテコール、およびギアコール(guiacol)のそれぞれ100ppmと複合体化されたキトサンナノ粒子を含むコーティングは、ラッカーゼアッセイの大きな感度により、上記フェノールは任意の数の異なる濃度で含むコーティングと容易に区別され得る。上記例は、作製され得る独自のコーティングの僅かな一部のみを表す。いくつかの実施形態では、識別され検出され得るバニリンの濃度は、1ppm、0.025ppm、または1ppb程度に低い。
【0049】
異なるコーティングの数は、使用される異なるマーカー化合物の数および検出され得るマーカー化合物の異なる濃度の数により、劇的に増加する。マーカーの化合物およびマーカー化合物の濃度は、区別され得るほぼ無限の数の異なるコーティングを創出するように、系統的に変えられ得る。検出され得る異なるのコーティングの例は、限定するものではないが下記:バニリン(vanillan)、カテコール、およびギアコール(guiacol)と複合体化された、100ppmロード(load)のキトサンナノ粒子の、カテコールおよびギアコールと複合体化された、50ppmロードのキトサンナノ粒子、バニリン(vanillan)およびギアコールと複合体化された、200ppmロードのキトサンナノ粒子、バニリン(vanillan)およびカテコールと複合体化された、150ppmロードのキトサンナノ粒子、およびバニリン(vanillan)と複合体化された、50ppmロードのキトサン、カテコールと複合体化された、100ppmロードのキトサン、およびカテコールと複合体化された、150ppmロードのギアコールを含む。
【0050】
本開示は、ある特定の実施形態に関連して記述されているが、本開示は、開示された実施形態に限定されるものではなく、むしろ添付される特許請求の範囲内に含まれる様々な修正例および均等な構成を包含することが意図されており、この特許請求の範囲は、法の下で認められるそのような修正例および均等な構造の全てを包含するように、最も広範な解釈がなされるものであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】