(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-501733(P2021-501733A)
(43)【公表日】2021年1月21日
(54)【発明の名称】水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドの製造方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドを用いた物質のカプセル化方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドおよびケイ素含有複合層を用いてカプセル化された物質およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/027 20060101AFI20201218BHJP
B01J 13/02 20060101ALI20201218BHJP
【FI】
C01B33/027
B01J13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-517871(P2020-517871)
(86)(22)【出願日】2018年10月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月27日
(86)【国際出願番号】DE2018000320
(87)【国際公開番号】WO2019091506
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】102017010263.5
(32)【優先日】2017年11月7日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】カディス・ベディニ・アンドリュー・パオロ
(72)【発明者】
【氏名】クリンゲビール・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ハース・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フローレ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カリウス・ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】チェン・チュングァン
(72)【発明者】
【氏名】ノッテン・ピーター
【テーマコード(参考)】
4G005
4G072
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BB20
4G005DA05Y
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4G005DC02W
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4G072HH03
4G072JJ47
4G072KK17
4G072LL15
4G072MM01
4G072MM21
4G072MM31
4G072PP01
4G072RR01
4G072RR12
4G072RR23
4G072UU30
(57)【要約】
本発明は、水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドの製造のための、および水素化アモルファスケイ素含有複合層で物質をカプセル化するための方法、並びにケイ素含有複合コロイド、およびケイ素含有複合層でカプセル化された物質、およびそれらの使用に関する。
本発明によれば、少なくとも一種の有機溶剤および/または無機溶剤中に溶解されているヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または異なるヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物、あるいは溶剤なしでも既に液体の状態で存在する少なくとも一種のヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または異なるヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物を、キャビテーションに曝す。その結果、水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドが生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化アモルファスケイ素含有コロイドまたは複合コロイドであって、水素化アモルファスケイ素含有コロイドまたは複合コロイドは、ケイ素含有シェルを有し、このシェルは、中空のコロイドまたは複合コロイドを取り囲み、ここで、これらのコロイドまたは複合コロイドは球の形状を有することを特徴とする、前記コロイドまたは複合コロイド。
【請求項2】
前記シェルが3〜10nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のコロイドまたは複合コロイド。
【請求項3】
50〜200nmの直径を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のコロイドまたは複合コロイド。
【請求項4】
少なくとも一種の有機および/または無機溶剤中に溶解されたヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または異なるヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物、あるいは溶剤無しでも既に液状で存在する少なくとも一種のヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または異なるヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物がキャビテーションに曝されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の水素化アモルファスケイ素含有コロイドもしくは複合コロイドを製造するための、並びに前記水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドで物質をカプセル化するための方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有複合コロイド、および水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドでカプセル化された物質。
【請求項5】
ヒドリドシランとして、化学式SinH2n+2(n>2)の線状もしくは分岐状シラン類または化学式SinH2n(n>4)の環状シラン類から、あるいはオルガノシラン類、ハロゲンシラン類またはオルガノハロゲンシラン類からなる群から、好ましくはトリシラン、テトラシラン、ペンタシラン、ヘキサシラン、ヘプタシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、ネオペンタシラン、トリクロロシランからなる群からの少なくとも一種の成分を使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
キャビテーションが、磁歪式もしくは圧電式超音波源および/または液体駆動もしくはガス駆動式音響変換器によって生成されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
溶剤として、線状(n)およびイソ(i)アルカン類、好ましくはn−またはi−ペンタン(C5H12)、n−またはi−ヘキサン(C6H14)、並びに環状アルカン類、好ましくはシクロヘキサン(C6H12)、シクロヘプタン(C7H14)、またはシクロオクタン(C8H16)、または更に芳香族化合物、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンからなる群からの少なくとも一種の成分を使用することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
溶剤として、酸素含有または無機化合物、好ましくは水、アルコール、エーテル、アルコキシアルカン、シロキサンが使用されることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
−120℃〜250℃の間の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
0.5barと1000barとの間の圧力範囲で行われることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一種の有機溶剤および/または無機溶剤中に溶解されているヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または異なるヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物、あるいは溶剤無しでも既に液体の状態で存在する少なくとも一種のヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または異なるヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物に、キャビテーションの前に、その最中にまたはその後に、少なくとも一種の添加剤を添加することを特徴とする、請求項4〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
固体状、液状または気体状の物質が添加剤として使用されることを特徴とする、請求項4〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
Au、c−Si、CdSe、CuO、Cu2O、Cu2S、CuS、Li、LiH、Fe3O4、Fe2O3、FeS、FeS2、FeSi2、SnS、ZnS、ZrS、分子、好ましくはアレンドロネート、シスプラチン、ドキソルビシン、エピルビシン、フルオロウラシル、イダルビシン; ペンチン類、好ましくは1−もしくは2−ペンチン、またはボラン類、好ましくはジボラン、ペンタボランもしくはデカボラン、白リンの群からの化合物; ホスファン類もしくはホスフィン類などの一般的な化合物の群からの少なくとも一種の成分が、添加剤または物質として使用されることを特徴とする、請求項4〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一種の物質が添加され、これが、前述のプロセスステップにより、ケイ素含有層でカプセル化またはコーティングされるかまたはケイ素含有層中に埋設されることを特徴とする、請求項4〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
コーティングの後に、焼結および/または結晶化を水素含有および/または低圧雰囲気中で行われることを特徴とする、請求項4〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
製造中に、UV照射および/またはマイクロ波照射および/または積極的な冷却が行われることを特徴とする、請求項4〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
エネルギー貯蔵部品中のアノード材料として適用するための、請求項1〜3のいずれか一つに記載の水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドの使用。
【請求項18】
治療薬、薬剤キャリアおよび/または蛍光マーカーおよび/または磁気共鳴断層撮影用マーカーまたは造影剤および/または熱中症治療薬として適用するための、請求項1〜3のいずれか一つに記載の水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドの製造方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有複合層を用いた物質のカプセル化方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイド、およびケイ素含有複合層を用いてカプセル化された物質およびそれらの使用に関する。本発明は更に、中空でありおよびケイ素含有シェルを有する水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、気体状の低級シラン、すなわちモノシラン(SiH
4)およびジシラン(Si
2H
6)などのケイ素−水素化合物は、例えばPECVD(プラズマ促進化学蒸着法)、ホットワイヤCVDまたはホットウォール反応器などの真空プロセスを用いてケイ素含有ナノ粒子を製造するために前駆体として使用されている。
【0003】
液状に存在するシラン、例えばトリシランSi
3H
8を用いた場合は、常圧および常温で行われる従来技術の方法は本出願人は知らない。
【0004】
例えばL.E.Pell,et.al.,“Synthesis of amorphous silicon colloids by trisilane thermolysis in high temperature supercritical solvents”,Langmuir 20(2004) 6546−6548(非特許文献1)に記載されているプロセスは、アモルファスで水素含有のコロイドを、オートクレーブ中で、400℃と500℃との間の温度および200barと400barとの間の圧力で製造する方法を開示している。
【0005】
シクロヘキサシラン(Si
6H
12)については、アモルファスで水素含有のナノ粒子の製造を可能にする気相−熱分解プロセスが知られているが、これは、900℃と1100℃との間の温度で行われる。上記プロセスは、刊行物「“Synthesis of silicon quantum dots using cyclohexasilane(Si
6H
12)”,Guruvenket et al.,J.Mater.Chem.C,2016,4,8206(非特許文献2)」に記載されている。
【0006】
液状のケイ素−水素含有化合物および音響キャビテーションに基づいて、コロイドまたは複合コロイドを室温および常圧下に製造することを可能にするプロセスを本発明者らは知らない。更に、更なる化学的処理ステップ無しで中空でありかつ水素化されておりそしてケイ素含有層を有する水素化ケイ素含有複合コロイドは本発明者らは知らない。
【0007】
従来技術のプロセスには、様々な欠点が伴う。従来技術によるプロセスは、大概は、結晶性かまたは水素化されていないナノ粒子を与える。該プロセスは技術的に煩雑であり、そして気相高温プロセスまたはプラズマ−もしくはレーザー技術プロセスに基づくか、あるいは高圧を必要とする。従来技術のこれらの欠点は、例えば、水素化アモルファスケイ素含有コーティングを用いた物質または異物の直接的なカプセル化が可能ではないという結果を招く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】L.E.Pell,et.al.,“Synthesis of amorphous silicon colloids by trisilane thermolysis in high temperature supercritical solvents”,Langmuir 20(2004) 6546−6548
【非特許文献2】“Synthesis of silicon quantum dots using cyclohexasilane (Si6H12)”,Guruvenket et al.,J.Mater.Chem.C,2016,4,8206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、本発明の課題は、上記の欠点を避ける、水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドの製造方法およびこれらの水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドを用いたカプセル化方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有複合コロイド、および水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドでカプセル化された物質、およびそれらの使用を提供することである。特に上記方法は、低温、例えば室温でおよび低圧、例えば常圧で行い得るべきである。上記方法は、簡単に実施可能であり、かつ僅かな装置の費用を要するべきである。また上記方法は、水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドを用いた添加剤または物質のカプセル化または埋設を可能とするか、またはこれらの水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドを用いたコーティングを可能とするべきである。更に、水素化アモルファスケイ素含有複合コロイド、並びに水素化アモルファスケイ素含有コーティングでカプセル化されている物質を提供することも目的である。本発明の更なる課題の一つは、中空でありおよびケイ素含有シェルを有する、水素化アモルファスケイ素含有または水素化ケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の枠内において、「コロイド」という用語は、液状および固形のナノ粒子、並びにナノスケースのサイズではない液状または固形の粒子、例えばミクロ粒子または集塊物のことと解される。該コロイドは、液体中の液滴もしくは気体のエマルションまたは懸濁液であることができ、これらは、本発明による音波処理/キャビテーションの間にまたはその後に固形のコロイドに変換される。
【0011】
本出願の枠内において、「複合コロイド」という用語は、ケイ素とそれ以外のものから構成されるコロイド、例えば炭素または薬剤が、一緒に合成および/または埋設および/またはカプセル化されたコロイドのことと解される。
【0012】
本出願の枠内において、「カプセル化」という用語は、一般的に、コロイドでまたはコロイド中に物質をコーティングまたは埋設することと解される。
【0013】
請求項1および下位の請求項の前提部から出発して、上記課題は、本発明によれば、請求項1および下位の請求項の特徴部に記載の特徴によって解決される。
【0014】
本発明による方法を用いることで、いまや、上記の欠点を回避する、水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドの製造方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドを用いた物質のカプセル化方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイド、並びにケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドでカプセル化された物質、およびこれらの使用を提供することができる。特に上記方法は、低温、例えば室温でおよび低圧、例えば大気圧で行うことができる。上記方法は、簡単に実施可能であり、かつ僅かな装置の費用しか要しない。また上記方法は、水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドを用いたあるいは水素化アモルファスケイ素含有コーティングを用いた物質のカプセル化も可能にする。更に、水素化アモルファスケイ素含有複合コロイド、並びに水素化アモルファスケイ素含有コーティングでカプセル化されている物質を提供できる。上記方法は、中空でおよびケイ素含有シェルを有する水素化アモルファスケイ素含有コロイドおよび複合コロイドの製造を可能にする。
【0015】
本発明による方法に従い製造されるコロイドおよび複合コロイドは、追加的な有利な特性を有する。
【0016】
本発明によるケイ素含有コロイドおよび/または複合コロイドは、好ましは球形の幾何学的形状を有する。ケイ素含有のシェルも、水素化ケイ素含有シェルも、コロイドおよび/または複合コロイドの中空空間を取り囲む。該コロイドおよび/または複合コロイドは、好ましくは50〜200nmの直径を有する。該ケイ素含有シェルは、好ましくは3〜10nmの範囲の厚さを有する。
【0017】
例えば、体積だけでなく、外表面も様々な水素含有基、すなわち−SiH、−SiH
2および−SiH
3基で仕切られる。更に、その表面は(酸素で)酸化されていない状態にあるので、該表面の特別な性質は、コロイドもしくは複合コロイドの表面化学の官能化の労力をかなり軽減する。
【0018】
該コロイドまたは複合コロイドの更に別の有利な性質の一つは、それらが固形の基材上に薄層として有する本発明によるナノもしくはメソ孔性配列である。用途に応じて、このような層は、回転塗布法、液滴塗布法、噴霧塗布法、ドクターブレード塗布法またはナイフ塗布法を用いて形成することができる。結着剤または伝導性剤を全く添加せずに、これらの本発明に従い形成される多孔性の層は、リチウムイオン半電池におけるリチウム化の時に驚くほど高い比容量および長い安定性を示し、それゆえ、従来技術と比べて圧倒的に有利である。本発明の有利な発展形態は、下位の請求項に記載されている。
【0019】
以下に、本発明を、それの一般的な形態として説明するが、これは限定的に解釈するべきものではない。
【0020】
本発明による方法では、少なくとも一種の有機溶剤および/または無機溶剤中に溶解されているヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または種々のヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物、あるいは溶剤なしでも既に液体の状態で存在する少なくとも一種のヒドリドシランまたはヒドリドシラン誘導体または種々のヒドリドシランおよび/もしくはヒドリドシラン誘導体の混合物を、キャビテーションに曝す。キャビテーションは、例えば、磁歪式または圧電式超音波源によっておよび/または液駆動もしくはガス駆動性音響変換器によって発生させることができる。
【0021】
この際、本発明に従い、水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドが生じる。本発明の枠内において、コロイドとは、例えば、少なくとも1つの長さの寸法において0.1nmと100μmとの間のサイズを有する固体または粒子(Partikel)または小片(Teilchen)または凝集体(Aggregate)または集塊体(Agglomerate)のことと理解されるべきである。
【0022】
ヒドリドシランとしては、本発明では、次の化合物を使用することができる: 化学式Si
nH
2n+n(nは1、2、3、・・・である)の線状もしくは分岐状ケイ素水素化合物または式Si
nH
2n(nは5、6、・・・である)の環状ケイ素水素化合物。
【0023】
例えば、ヒドリドシランとしては、化学式Si
nH
2n+2(n≧2)の線状もしくは分岐状シラン類または化学式Si
nH
2n(n>4)の環状シラン類から、あるいはオルガノシラン類、ハロゲンシラン類またはオルガノハロゲンシラン類からなる群から、好ましくはトリシラン、テトラシラン、ペンタシラン、ヘキサシラン、ヘプタシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、ネオペンタシラン、トリクロロシラン、または液状ゲルマン類(Ge
nH
2n+2、n≧2)の群から選択される少なくとも一種の成分を使用することができる。
【0024】
ヒドリドシラン誘導体としては、本発明では、以下の化合物を使用できる:一般式SiH
nX
4−n(X=F、Cl、Br、I、CH
3、および1<n<4)の化合物。
【0025】
混合溶液とは、様々なヒドリドシラン類からまたは様々なヒドリドシラン誘導体からまたはヒドリドシラン類とヒドリドシラン誘導体との組み合わせからなる混合物を含む溶液のことと理解される。
【0026】
少なくとも二種のヒドリドシラン類を使用することもでき、この場合、該方法によって製造される複合コロイドは、少なくとも二種の成分、特に上記のヒドリドシラン類からなるサブコンビネーションとなる。
【0027】
該方法では、キャビテーションによって生成されたマイクロバブルは、溶液中で破裂する。
【0028】
溶剤としては、有機溶剤も、無機溶剤も適している。溶剤としては、例えば線状(n)およびイソ(i)アルカン類、例えばn−またはi−ペンタン(C
5H
12)、n−またはi−ヘキサン(C
6H
14)、並びに環状アルカン類、例えばシクロヘキサン(C
6H
12)、シクロヘプタン(C
7H
14)、シクロオクタン(C
8H
16)、または更に芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンを使用することができる。
【0029】
また溶剤としては、酸素含有化合物または無機化合物、例えば水、アルコール、エーテル、アルコキシアルカン、シロキサンを使用することもできる。
【0030】
しかし、従来技術に従う更に別の適切でかつ当業者に既知の全ての有機溶剤、例えば高沸点溶剤、例えば高級アルコールまたはテルペン類、例えばn−ドデカンまたはスクワランも使用することができる。また溶剤としては、少なくとの二種の成分、特に上述の溶剤の少なくとも二種の成分からなる溶剤混合物も使用することができる。
【0031】
該方法は、−120℃と250℃との間の温度範囲で行うことができる。−30℃と125℃との間の温度範囲が好ましい。特に、該方法は、周囲温度で、特に室温で行うことができる。
【0032】
該方法は、0.5barと1000barとの間の圧力範囲で行うことができる。1barと100barとの間の圧力範囲が好ましい。特に、該方法は、常圧で、特に大気圧で行うことができる。
【0033】
超音波は、例えば15kHz〜50MHzの周波数範囲であることができるが、この範囲に限定されない。
【0034】
本発明の更に別の形態の一つでは、上記溶剤は添加剤を含むこともできる。本発明の枠内では、「添加剤」という用語は、音波処理の前、間または後に溶液中に使用した時に、生成したコロイドの水素とのおよび/またはケイ素との化学結合を招かないおよび/または弱くまねくおよび/または強くまねく物質のことと理解される。
【0035】
化学結合をまねく添加剤は、固形、液状または気体状の物質であることができ、例えば、リチウム含有化合物またはドープ物質、例えばホウ素含有および/またはリン含有化合物、または対応する組成物、合金もしくは複合コロイドに変わる全てのタイプの化合物であることができる。「複合コロイド」という用語は、本発明の方法により水素とケイ素だけからなるものではないコロイドのことと理解される。
【0036】
生成したコロイドの水素とおよび/またはケイ素と化学結合を結ばないおよび/または弱い化学結合を結ぶ添加剤は、固体状、液状または気体状分子、例えばナノ粒子または治療薬であることができる。
【0037】
これらの添加剤は、「カプセル化すべき」または「コーティングすべき」物質とも呼ばれる。これらの物質が生成したコロイドの表面内部におよび/または表面上に存在する場合は、該プロセスは、本発明の枠内では、「埋設」または「カプセルか」と、または「コーティング」とも理解される。カプセル化とは異なり、コーティングの場合には、コーティングが不完全なカプセル化であり、この際、物質が、生成されるコロイドの表面内におよび/または表面上に100%の割合では存在しないということが可能である。本発明によれば、上記の物質の元々の目的の作用は、部分的にまたは完全に得られる状態となるべきである。埋設またはカプセル化するべき物質は、好ましくは、これらが、キャビテーションによって生成される気泡中に収まるように小さいものであるべきである。それ故、これは、有利には、<100μmの直径を有するのがよい。
【0038】
コーティングの場合には、物質は、>100μmのより大きな直径を有してもよい、というのも、これらの物質は、複合コロイドの表面上に次第にコーティングされ、そこでは、これらは、音波処理の際にまたはキャビテーション気泡の破裂の際に、これらの気泡の付近に加えられるからである。該添加剤または物質は、ケイ素含有組成物および複合コロイドを合成できるという結果をもたらす。該溶液には少なくとも一種の添加剤を添加できるが、少なくとも二種の添加剤の組み合わせ、特に上記の添加剤の少なくとも二種の組み合わせも使用できる。該複合コロイドの製造のためには、前記添加剤は、ヒドリドシラン溶液の合成の前またはその最中に加えることができる。
【0039】
溶剤中の一種または複数のヒドリドシランの濃度は、0〜≦100重量%の間であることができる。添加剤無しでヒドリドシラン溶液を用いる場合には、例えば0.1〜50重量%のヒドリドシラン濃度が使用される(残部は溶剤)。添加剤を用いてヒドリドシラン溶液を用いる場合には、例えば0.01〜50重量%濃度の添加剤が使用され、残部は、ヒドリドシラン類および溶剤からなる。
【0040】
該方法を用いることにより、0.5nm〜10μmの範囲、特に1.5nm〜1μmの範囲の粒度の複合コロイドを製造することができる。
【0041】
該方法は、長い音波処理時間および/またはろ過もしくは分離方法、例えばメンブランフィルタまたは遠心分離によるろ過もしくは分離方法、および/またはその後の熱および/または光分解処理によって、有利な特性を持つ格別なコロイドの本発明による製造、例えば200nm超の集塊体および凝集体の形成を可能にする。更に別の実施形態の一つでは、本発明による方法を用いることで、水素化されたアモルファスケイ素含有コーティングで覆われた添加剤または物質を製造することができる。
【0042】
このためには、溶剤およびヒドリドシランおよび任意選択に少なくとも一種の添加剤を含む溶液に対して、前記溶液に超音波を作用させることによって水素化アモルファスケイ素含有材料でコーティングされる少なくとも一種の物質が加えられる。
【0043】
カプセル化するべき前記添加剤または物質は、固形状および/または液状および/または気体状であることができる。
【0044】
添加剤としてまたはコーティングするべきおよび/もしくは埋設するべきおよび/もしくはカプセル化するべき物質としては、限定はされないが、Au、c−Si、CdSe、CuO、Cu
2O、Cu
2S、CuS、Fe
3O
4、Fe
2O
3、FeS、FeS
2、FeSi
2、Li、LiH、SnS、ZnS、ZrS、およびさらにアレンドロネート、シスプラチン、ドキソルビシン、エピルビシン、フルオロウラシル、イダルビシンなどの分子、並びにさらに1−もしくは2−ペンチンなどのペンチン類またはジボラン、ペンタボランもしくはデカボランなどのボラン類、白リンの群からの化合物、またはさらにホスファン類もしくはホスフィン類などの一般的な化合物からなるナノ粒子および/またはさらにコロイドを使用することができる。少なくとも二種の物質、特に上記の添加剤または物質の群からの少なくとも二種の物質を使用して、物質のコーティングされた混合物を製造することもできる。
【0045】
本発明による方法を用いることで、溶液状態の添加剤または物質を、水素化アモルファスケイ素含有コロイドのシェル中に直接内破的に(implosiv)埋設またはカプセル化することができる。これは、他の方法を使用した場合は可能ではない、というのも、標準的な粒子合成法は、旧来の光分解的および/または熱分解的プロセスにまたは核生成メカニズムを用いた成長に基づくためである。
【0046】
更に、本発明の枠内では、複合コロイドとは、固体状および/または液状および/または気体状の添加剤または物質の使用の下に、キャビテーションを用いて合成され、そして添加剤または物質が、水素化アモルファスケイ素含有コーティングで完全にカプセル化されるか、あるいは水素化アモルファスケイ素含有層で部分的にまたは完全にコーティングされている、コロイドのこととも理解される。該添加剤または物質は、複合コロイド中の水素および/またはケイ素への化学結合をもってまたはこのような結合は無しで存在することができる。
【0047】
該方法は、室温または低温および常圧で実行可能な液相プロセスであるため、高真空技術は必要ではなく、これは本発明の利点の一つである。
【0048】
該方法の有利な形態の一つでは、水素化アモルファスケイ素含有コロイドの製造は、好ましくはArまたはN
2雰囲気中で行うのがよく、例えばグローブボックス中で典型的には<10ppmのH
2OおよびO
2濃度で行うのがよい。
【0049】
本発明は、破裂可能な微少気泡内に存在することができる、物質の直接的な埋設および/またはカプセル化を可能にする。
【0050】
本発明に従い得られる水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドは、例えば光起電または光触媒用途において吸光材料および/もしくはドープ材料またはプラズモン反射格子または光散乱層として、センサー、量子ドット発光ダイオード、導波管、一重項酸素生成、排水処理のために、エネルギー貯蔵用途におけるアノード材料として、例えばリチウムイオン−、ナトリウムイオン−またはリチウムスルフィドバッテリーセル中に使用できる。本発明に従い得られる、水素化アモルファスケイ素含有コロイドまたは複合コロイドでコーティングまたはカプセル化された物質は、イン・ビトロまたはイン・ビボ薬剤キャリアのために、イン・ビトロまたはイン・ビボ光蛍光的または磁気共鳴断層撮影方法のために蛍光マーカーおよび/または磁気共鳴断層撮影用マーカーまたは造影剤として、イン・ビトロまたはイン・ビボ治療薬、薬剤キャリアおよび/または熱中症治療薬として、または光線力学的治療法において使用することができる。
【0051】
特に、該コロイドまたは複合コロイドまたはコーティングもしくはカプセル化された物質は、太陽電池、リチウムイオンバッテリーセルのためのアノードのためにおよびバイオ−もしくはナノ医療領域における治療薬として使用することができる。
【0052】
本発明によれば、本発明による方法で製造できることを特徴とする、複合コロイドがおよび水素化アモルファスケイ素複合コロイドでカプセル化された物質が提供される。
【0053】
該方法の有利な形態の一つでは、コーティングの後に、焼結および/または結晶化を水素含有および/または低圧雰囲気中で行うことができる。
【0054】
該方法の更に別の有利な形態の一つでは、製造の間に、UV照射および/またはマイクロ波照射および/または積極的冷却を行うことができる。
【0055】
特に好ましい実施形態の一つでは、本発明によるコロイドまたは複合コロイドは、溶剤として脱イオン水を使用してトリシランから製造される。こうして製造されたナノ粒子は親水性であり、そして水中で安定した分散液を形成し、そして酸化も、水素化もされている。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の対象を実施例および図面に基づいてより詳細に説明するが、本発明の対象はそれにより限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】添加剤として2−ペンチンを用いたトリシラン溶液の音波処理によって製造された炭化ケイ素複合コロイドのX線光電子スペクトル。
【
図2】炭化ケイ素複合コロイドの透過型電子顕微鏡画像。
【
図3】本発明による超音波処理を施していないFe
3O
4ナノ粒子のエネルギー分散型X線分光分析を用いた走査透過型電子顕微鏡画像および元素分析。
【
図4】本発明による超音波処理後の薄いケイ素層でコーティングされたFe
3O
4ナノ粒子のエネルギー分散型X線分光分析を用いた走査透過型電子顕微鏡画像(
図4(HAADF))および元素分析。
【
図5】本発明に従い製造されたケイ素含有コロイドの走査電子顕微鏡画像。
【
図6】温度処理プロセス後の本発明に従い製造されたケイ素含有サンゴ様コロイドの走査電子顕微鏡画像。
【
図7】回転塗布法を用いて室温で製造されたケイ素含有コロイドからなる高多孔性層の走査電子顕微鏡画像。
【
図8】回転塗布法を用いて室温で製造されたケイ素含有コロイドからなる高多孔性層の走査電子顕微鏡クローズアップ画像。
【
図9】本発明に従い製造されたケイ素含有複合コロイドからの多孔性薄層アノードの第一のリチウム化または脱チリウム化サイクルのサイクリックボルタンメトリー測定。
【
図10】本発明に従い製造されたケイ素含有複合コロイドからの多孔性薄層アノードの第二のリチウム化または脱リチウム化サイクルのサイクリックボルタンメトリー測定。
【
図11】本発明に従い製造されたケイ素含有複合コロイドからの多孔性薄層アノードの定電流サイクルおよびクーロン効率
【
図12】トリシランの代わりにトリクロロシランからなる溶液の音波処理によって製造された本発明によるケイ素−水素含有複合コロイドのフーリエ変換赤外スペクトル。
【
図13】STEMを用いたHAADF画像であり、50〜200nmの間の直径を有する本発明によるケイ素含有ナノ粒子が示されている。
【
図14】本発明によるナノ粒子のシェルの範囲のHAADF画像、並びに右上の挿入図には、エネルギー分散X線分光法を用いたケイ素(Si)の関連する空間解像された元素特異的分布の画像。
【
図15】溶剤としての脱イオン水(H
2O)の使用の下にトリシランから製造されたケイ素−水素含有複合コロイドのFTIRスペクトル。
【実施例】
【0058】
例1 − 添加剤として2−ペンチンを用いたトリシラン溶液の音波処理によって製造された炭化ケイ素複合コロイドのX線光電子スペクトル。
【0059】
図1に示されたX線光電子分光分析(XPS)測定に基づいて、炭化ケイ素複合コロイドの本発明による合成を示す。XPSスペクトルは、炭素のC1sピークを示す。横座標Xは、結合エネルギーを(eV)で示し、そして縦座標Yは、XPS強度を相対的単位(r.E)で示す。
【0060】
使用したシクロオクタン溶液は、25体積%のトリシラン濃度を有し、そして添加剤としては、2−ペンチンを13体積%の濃度で使用した。音波処理のための本発明による条件は次の通りであった:プロセス温度=8℃、音波処理期間=320分、ソノトロード振幅=216μm。乾燥した複合コロイドを、金をコーティングしたガラス基材上で測定した。
図1における約283eVでの成分(A)は、ケイ素−炭素結合を示す。その結果、ケイ素含有複合コロイド中の炭素原子の埋設を認めることができる。
【0061】
例2 − 炭化ケイ素複合コロイドの走査電子顕微鏡画像。
【0062】
例1からの炭化ケイ素複合コロイドを表すために、走査電子顕微鏡画像を
図2に示す。該ナノ粒子は球形であり、そして2nmと7nmとの間の直径を有する。
【0063】
例3 − 本発明による超音波処理を施していないFe
3O
4ナノ粒子のエネルギー分散型X線分光分析を用いた走査透過型電子顕微鏡画像および元素分析。
【0064】
図3の左上の走査透過型電子顕微鏡画像(HAADF)では、Fe
3O
4ナノ粒子が炭素格子上に示されており、これは、未処理のトリシラン−シクロオクタン溶液から抽出された。エネルギー分散型X線分光分析を用いて撮影された残りの画像は、酸素(O)、鉄(Fe)およびケイ素(Si)の空間解像された元素特異的分布を示す。Si分布とFe
3O
4ナノ粒子の位置との間に局所的関係はない。その結果、ケイ素によるFe
3O
4ナノ粒子のコーティングまたはカプセル化についての結論を導くことはできない。
【0065】
例4 − 本発明による超音波処理後の薄いケイ素層でコーティングされたFe
3O
4ナノ粒子のエネルギー分散型X線分光分析を用いた走査透過型電子顕微鏡画像(
図4(HAADF))および元素分析。
【0066】
左上の走査透過型電子顕微鏡画像では、炭素格子上にFe
3O
4ナノ粒子が示されており、これは、230μmのソノトロード振幅で140分間音波処理した後に例3の溶液から抽出された。エネルギー分散型X線分光分析を用いて撮影された残りの画像は、酸素(O)、鉄(Fe)およびケイ素(Si)の空間解像された元素特異的分布を示す。S分布とFe
3O
4ナノ粒子の位置との間に局所的関係を認めることができる。その結果、ケイ素によるFe
3O
4ナノ粒子のコーティングまたはカプセル化を確認し得る。
【0067】
例5 − 低温で本発明に従い製造されたケイ素含有コロイドの走査電子顕微鏡画像。
【0068】
図5の走査電子顕微鏡画像に示されるように、約−3℃の温度での音波処理およびその後のろ過(0.1μmPTFEシリンジフィルター)は、特に良好に限定された約200nmサイズのケイ素含有コロイド集塊体の製造をもたらす。
【0069】
例6 − 温度処理プロセス後の本発明に従い製造されたケイ素含有サンゴ様コロイドの走査電子顕微鏡画像。
【0070】
図6の走査電子顕微鏡画像は、液滴コーティングおよびその後の約450℃、20分間の温度処理後のケイ素含有コロイドを示す。形状はサンゴ様の形である。
例7 − 回転塗布法を用いて室温で製造されたケイ素含有コロイドからなる高多孔性層の走査電子顕微鏡画像。
【0071】
図7の走査電子顕微鏡画像は、室温での回転塗布の後のケイ素含有コロイドを示す。このコロイド層は、スポンジ様の形状を有する。
【0072】
例8 − 回転塗布法を用いて室温で製造されたケイ素含有コロイドからなる高多孔性層の走査電子顕微鏡クローズアップ画像。
【0073】
図8の走査電子顕微鏡クローズアップ画像は、ケイ素含有コロイド薄層の高多孔性形状を示す。
【0074】
例9 − 本発明に従い製造されたケイ素含有複合コロイドからなる多孔性薄層アノードの定電位サイクリックボルタンメトリー測定。
【0075】
図9は、参照および対電極として金属リチウムを備えた3電極システムにおける本発明に従い製造されたアノードの第一のリチウム化もしくは脱リチウム化サイクルを示す。横座標Xは、電圧を(V)で示し、そして縦座標Yは比容量を(mA/cm
2)で示す。このアノードは、300℃で10分間の温度処理によって生成された表面上に10〜15at%の炭素を有するケイ素含有複合コロイドからなる。電解質は、プロピレンカーボネート中の1M LiClO
4からなる。測定は1mV/sで行い、そして電圧はLi/Li
+に対して与えられる。
図10は、第二のリチウム化もしくは脱リチウム化サイクルを示す。アノードの製造には結着剤および/または伝導性添加剤は全く使用しなかった。
【0076】
例10 − 本発明に従い製造されたケイ素含有ナノ粒子からなる多孔性薄層アノードの定電流測定。
【0077】
図11には、例9からのアノードの定電流測定を示す。横座標Xはサイクル数を示し、そして縦座標Y1は比容量を(mA/cm
2)で示す。縦座標Y2は、クーロン効率を示す。測定は、0Vおよび3Vの臨界電圧を用いて0.5C(104.2μA)の充電もしくは放電速度で行った。クーロン効率は、80サイクル後に99.7%超であった。
【0078】
例11 − トリシランの代わりにトリクロロシランからなる溶液の音波処理によって製造された本発明によるケイ素−水素含有複合コロイドのフーリエ変換赤外スペクトル。
【0079】
図12は、トリクロロシランから生成されたケイ素−水素含有複合コロイドのフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを示す。この複合コロイドをシリコンウェハ上にコーティングし、乾燥し、次いで室温で測定した。横座標Xは、波長を(cm
−1)で示し、そして縦座標Yは、FTIR信号強度を相対的単位(r.E)で示す。モード(A)は、Si−H
1.2曲げ−もしくははさみ振動を示し、モード(B)は、Si−O−Si伸張振動を示し、そしてモード(C)はSi−H
1.2は伸張振動を示す。これらのモードは、アモルファスケイ素−水素含有固体コロイドにとって特徴的なものである。
【0080】
例12 − 水性環境中で合成されたケイ素含有ナノ粒子のエネルギー分散型X線分光分析法を用いた走査透過型電子顕微鏡画像(STEM)および元素分析
図13は、STEMを用いたHAADF画像であり、50〜200nmの間の直径を有するケイ素含有コロイドが示されている。本発明によるコロイドの属性は、これが、
図13に示されるように、好ましくは球の形状を有し、中空であり、かつ(好ましくは3〜10nmの間の厚さを有する)シェルを有することを特徴とする。コロイドのこの本発明によるアーキテクチャは、トリシラン前駆体(Si
3H
8)および溶剤としての脱イオン水(H
2O)の使用の下に、並びに作動サイクル(60〜70%)、振幅(190〜220μm)、トリシラン濃度(5〜15体積%)および温度(5〜10℃)からの特別な選択の下に、本発明よる方法によって可能となる。百分率表記の作業サイクルという用語は、全音波処理時間に対するソノトロード/超音波源の作動期間である。それ故、60%の作業サイクルは、ソノトロードが600ミリ秒間の間はスイッチが入れられており、そして400ミリ秒間の間はスイッチが切られていることを意味する。振幅の表示は、ソノトロード振幅、すなわちソノトロード先端の最大の空間的運動幅を意味する。
【0081】
図14は、本発明によるコロイドのシェルの範囲のHAADF画像、並びに右上の挿入図には、ケイ素(Si)のエネルギー分散型X線分光法(=EDX)を用いた関連する空間解像された元素特異的分布の画像を示す。元素分析は、コロイドのケイ素含有組成を示す。
【0082】
例13 − トリシラン水溶液の音波処理によって生成された本発明による水素化ケイ素含有複合コロイドのフーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)。
【0083】
図15は、溶剤としての脱イオン水(H
2O)の使用の下にトリシランから製造されたケイ素−水素含有複合コロイドのFTIRスペクトルを示す。この複合コロイドを、安定な分散液から取り出し、そしてシリコンウェハ上にコーティングし、乾燥し、次いで室温で測定した。横座標Xは、波長を(cm
−1)で示し、そして縦座標Yは、信号強度を相対的単位(r.E)で示す。モード(A)は、SiO曲げ振動を示し、モード(B)はSiH
x曲げ振動を示し、モード(C)はSi−O−Si伸張振動を示し、モード(D)はO
ySi−H
x伸張振動を示し、そしてモード(E)はH
2O伸張振動を示す。これらのモードは、アモルファスケイ素−水素含有コロイドにとって特徴的なものである。特に、モード(C)および(D)に基づいて、これらの複合コロイドが、酸化も(酸素含有)、水素化も(水素含有)されていると結論づけることができる。
【手続補正書】
【提出日】2019年9月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化アモルファスケイ素含有コロイドまたは複合コロイドであって、水素化アモルファスケイ素含有コロイドまたは複合コロイドは、ケイ素含有シェルを有し、このシェルは、中空のコロイドまたは複合コロイドを取り囲み、ここで、これらのコロイドまたは複合コロイドは球の形状を有し、前記ケイ素含有複合コロイドは、走査電子顕微鏡画像において球の形状および2nmと7nmとの間の直径を有し、および前記ケイ素含有コロイドは、走査透過型電子顕微鏡画像において、中空空間を有する球の形状および50〜200nmの間の直径を有し、および前記中空空間は、3〜10nmの間の厚さを有するシェルで覆われていることを特徴とする、前記コロイドまたは複合コロイド。
【請求項2】
複合コロイドを製造するために、添加剤を含むトリシラン−シクロオクタン溶液をソノトロードによるキャビターションに曝し、ここでトリシラン濃度は25体積%でありそして添加剤濃度は13体積%であり、およびソノトロードによる音波処理は、8℃のプロセス温度、320分間の音波処理期間および216μmのソノトロード振幅で行われ、およびコロイドの製造のために、溶剤としての水中のトリシラン前駆体(Si3H8)を、60〜70%の作動サイクル、190〜220μmの間のソノトロード振幅、5〜15体積%の間のトリシラン濃度を用いて5〜10℃の間のプロセス温度で、ソノトロードによるキャビテーションに曝すことを特徴とする、請求項1に記載の水素化アモルファスケイ素含有コロイドもしくは複合コロイドを製造するための、並びに前記水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドで物質をカプセル化するための方法、並びに水素化アモルファスケイ素含有複合コロイド、および水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドでカプセル化された物質。
【請求項3】
固体状、液状または気体状の物質が添加剤として使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子の群、好ましくはAu、c−Si、CdSe、CuO、Cu2O、Cu2S、CuS、Li、LiH、Fe3O4、Fe2O3、FeS、FeS2、FeSi2、SnS、ZnS、ZrS、分子、好ましくはアレンドロネート、シスプラチン、ドキソルビシン、エピルビシン、フルオロウラシル、イダルビシン; ペンチン類、好ましくは1−もしくは2−ペンチン、またはリチウム含有化合物またはドープ物質、例えばホウ素含有および/またはリン含有化合物、またはボラン類、好ましくはジボラン、ペンタボランもしくはデカボラン、白リンの群からの化合物; ホスファン類もしくはホスフィン類などの一般的な化合物の群からの少なくとも一種の成分が、添加剤または物質として使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一種の物質が添加され、これが、前述のプロセスステップにより、ケイ素含有層でカプセル化またはコーティングされるかまたはケイ素含有層中に埋設されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
コーティングの後に、焼結および/または結晶化を水素含有および/または低圧雰囲気中で行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
製造中に、UV照射および/またはマイクロ波照射および/または積極的な冷却が行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
エネルギー貯蔵部品中のアノード材料として適用するための、請求項1に記載の水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドの使用。
【請求項9】
治療薬、薬剤キャリアおよび/または蛍光マーカーおよび/または磁気共鳴断層撮影用マーカーまたは造影剤および/または熱中症治療薬として適用するための、請求項1に記載の水素化アモルファスケイ素含有複合コロイドの使用。
【国際調査報告】