(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、少なくとも1つのCD137結合ドメイン及び少なくとも1つのPDL1結合ドメインを含む多重特異性抗体、ならびに医薬組成物及びその使用方法に関する。本発明はさらに、前記多重特異性抗体をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞、及び前記多重特異性抗体を産生する方法に関する。
前記抗体が、少なくとも1つのヒト血清アルブミン結合ドメイン、好ましくは1つのヒト血清アルブミン結合ドメインをさらに含む、請求項1又は2に記載の多重特異性抗体。
前記CD137−BDが、それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、配列番号71のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列を含み、好ましくは、前記VHは、G51C突然変異(AHo番号付け)を含み、前記VLは、T141C突然変異(AHo番号付け)を含む、請求項4又は5に記載の多重特異性抗体。
前記PDL1−BDが、それぞれ配列番号92、93及び94のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号108、109及び110のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、配列番号104と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号115と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列を含み、好ましくは前記VHは、G56A及びY105F突然変異(AHo番号付け)を含み、及び前記VLは、S9A及びA51P突然変異(AHo番号付け)を含む、請求項8又は9に記載の多重特異性抗体。
前記HSA−BDが、(a)配列番号161のVH配列及び配列番号171のVL配列;又は(b)配列番号185のVH配列及び配列番号195のVL配列を含む、請求項3〜11のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
請求項1〜12のいずれか1項に記載の多重特異性抗体又はその結合ドメイン若しくはその断片をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0082】
CD137を刺激する治療用抗体の利用は非常に有望な治療戦略であるが、抗CD137アゴニスト抗体の有効性の低さや、高い毒性と有害事象などの問題と結びついている。例えば、フルレングスの2価IgGによるT細胞共刺激受容体の架橋は、ウレルマブの場合のように、T細胞の全体的な刺激をサポートし、結果として用量制限毒性をもたらす(
図1A)。したがって、T細胞の全身的な過剰刺激なしにCD137シグナル伝達を強力に誘導することができ、したがって現在利用可能な抗体よりも低い用量制限毒性及び有害事象の速度を有する新規抗CD137アゴニスト抗体が医療分野で必要とされている。
【0083】
本発明は、(a)少なくとも1つのCD137結合ドメイン(CD137−BD)、及び(b)少なくとも1つのPDL1結合ドメイン(PDL1−BD)を含む多重特異性抗体を提供する。本開示の多重特異性抗体は、標的化された様式で、例えば、関心のある部位、つまりPDL1陽性腫瘍の微小環境で、CD137シグナル伝達を刺激することができる。本発明の多重特異性抗体は、例えば、PF−05082566(Fisher at al., Cancer Immunol Immunother 61:1721-1733 (2012))又はFcγ−受容体相互作用の場合のように、抗ヒトF(ab’)2二次抗体による架橋や組織培養プラスチックへの固定化を必要とせず、強力なCD137シグナル伝達を媒介、例えば、刺激することができるしたがって、本発明の多重特異性抗体は、Fcγ受容体と相互作用することなく、強力なCD137シグナル伝達を媒介、例えば、刺激するその能力のため、CD137を発現する細胞の枯渇を引き起こさない。さらに、驚くべきことに、本開示の多重特異性抗体は、CD137が一価である場合でさえ、特に本開示の新規CD137結合ドメインを含む場合、クラスター化し、CD137を刺激することができるが、PDL1陽性細胞、したがってCD137の全身活性化を回避する。多重特異性抗体の一価CD137結合とFcレス構造により、エフェクター細胞に対するCD137のアゴニズムは、抗体が同時に標的細胞の表面上のPDL1に結合する場合にのみ発生することが保証される。
【0084】
さらに、驚くべきことに、本開示の多重特異性抗体は、(a)少なくとも1つのCD137結合ドメイン(CD137−BD)、(b)少なくとも1つのPDL1結合ドメイン(PDL1−BD)、及び(c)少なくとも1つのヒト血清アルブミン結合ドメイン(HSA−BD)を含み、(i)非架橋二価抗体と比較してCD137のクラスター化が強化されている、(ii)PDL1を遮断し、CD137を刺激する能力を保持しながら抗体の半減期が増加する、及び(iii)有益な動態(例えば、CD137の活性化レベルが高い)などのさらに有益な特性を示した。さらに、半減期を延長する抗HSAドメインの追加は、便利な投与を可能にするだけでなく、分子の腫瘍微小環境への送達を促進するべきである。
【0085】
したがって、本発明の多重特異性抗体は、従来の組成物及び治療を超える明確な治療上の利点を提供する。
【0086】
明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0087】
本明細書では、「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、特に明記しない限り、制限のない非限定的な意味で使用される。したがって、そのような後者の実施形態に関して、「含む」という用語は、「からなる」というより狭い用語を含む。
【0088】
本明細書で特に明記しない限り、本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の参照は、単数及び複数の両方をカバーすると解釈されるべきである。又は文脈によって明らかに矛盾している。例えば、用語「細胞」は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。化合物、塩などに複数形が使用されている場合、これは単一の化合物、塩なども意味すると解釈される。
【0089】
第1の態様では、本発明は、(a)少なくとも1つのCD137結合ドメイン(CD137−BD)、及び(b)少なくとも1つのPDL1結合ドメイン(PDL1−BD)を含む多重特異性抗体に関する。
【0090】
本明細書で使用される「抗体」などの用語は、全抗体又はその単鎖;任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はその単鎖、及び抗体CDR、VH領域又はVL領域を含む分子(多特異的抗体を含むがこれに限定されない)を含む。天然に存在する「全抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3で構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、CLという1つのドメインで構成されている。VH領域とVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化でき、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在している。各VHとVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている。重鎖及び軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0091】
本明細書で使用される、抗体の「結合ドメイン」、「その抗原結合断片」、「抗原結合部分」などの用語は、与えられた抗原(例えば、CD137、PDL1、HSA)に特異的に結合する能力を保持する無傷の抗体の1つ又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、無傷の抗体の断片によって実行できる。いくつかの実施形態では、本発明の多重特異性抗体の結合ドメインは、Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;VHドメインとCH1ドメインで構成されるFd断片;抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);単離された相補性決定領域(CDR)、dsFv、scAb、STAB、単一ドメイン抗体(sdAb又はdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、及び単一ドメイン軽鎖抗体、VHH、VNAR、サメのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及び限定されないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチンを含む代替の足場に基づく結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えば、f−starテクノロジー(F−star’s Modular Antibody Technology(商標))からなる群から選択される。適切には、本発明の結合ドメインは、単鎖Fv断片(scFv)又は単一抗体可変ドメインである。好ましい実施形態では、本発明の結合ドメインは、単鎖Fv断片(scFv)である。
【0092】
「相補性決定領域」(「CDR」)という用語は、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定された境界を有するアミノ酸配列であって、例えば、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (“Kabat” numbering scheme), Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273, 927-948 (“Chothia” numbering scheme), ImMunoGenTics (IMGT) numbering (Lefranc, M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999); Lefranc, M.-P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003) (“IMGT” numbering scheme) and numbering scheme described in Honegger & Pluckthun, J. Mol. Biol. 309 (2001) 657-670(AHo」 番号付け)に記載されるものが含まれる。例えば、古典的な形式では、Kabatの下で、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基は、31−35(HCDR1)、50−65(HCDR2)、及び95−102(HCDR3)に番号が付けられ、軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基は、24−34(LCDR1)、50−56(LCDR2)、及び89−97(LCDR3)に番号付けられる。Chothiaでは、VHのCDRアミノ酸は、26−32(HCDR1)、52−56(HCDR2)、及び95−102(HCDR3)、及びVLのアミノ酸残基は、24−34(LCDR1)、50−56(LCDR2)、及び89−97(LCDR3)の番号が付けられる。KabatとChothiaの両方のCRR定義を合わせると、CDRは、ヒトVHのアミノ酸残基26−35(HCDR1)、50−65(HCDR2)、及び95−102(HCDR3)、ヒトVLのアミノ酸残基24−34(LCDR1)、50〜56(LCDR2)、89〜97(LCDR3)で構成される。IMGTでは、VHのCDRアミノ酸残基は、約26−35(HCDR1)、51−57(HCDR2)及び93−102(HCDR3)に番号が付けられ、VLのCDRアミノ酸残基は約27−32(LCDR1)、50−52(LCDR2)、89−97(LCDR3)に番号付けられる(「Kabat」による番号付け)。IMGTでは、抗体のCDRはプログラムIMGT/DomainGap Alignを使用して決定できる。
【0093】
本発明の文脈では、特に別段の言及がない限り、Honegger&Pluckthun(「AHo」)によって提案された番号付けシステムが使用される(Honegger & Pluckthun, J. Mol. Biol. 309 (2001) 657-670)。さらに、次の残基はAHo番号付けスキームに従ってCDRとして定義される:LCDR1(CDR−L1とも呼ばれる):L24−L42;LCDR2(CDR−L2とも呼ばれる):L58−L72;LCDR3(CDR−L3とも呼ばれる):L107−L138;HCDR1(CDR−H1とも呼ばれる):H27−H42;HCDR2(CDR−H2とも呼ばれる):H57−H76;HCDR3(CDR−H3とも呼ばれる):H108−H138。明確にするために、Honegger&Pluckthunによる番号付けシステムでは、様々なVH及びVLサブファミリー、特にCDRの両方に自然に存在する抗体に見られる長さの多様性を考慮に入れており、配列におけるギャップを提供する。したがって、所与の抗体可変ドメインでは、通常、1〜149位のすべてがアミノ酸残基によって占有されるわけではない。
【0094】
本明細書で使用される「結合特異性」という用語は、個々の抗体が、異なる抗原決定基とではなく、1つの抗原決定基と反応する能力を指す。本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」又は「に特異的である」という用語は、標的と抗体との間の結合などの測定可能であり再現可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む分子の不均一な集団の存在下での標的の存在を決定する。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも、より容易に、及び/又はより長い持続時間で、この標的に結合する抗体である。その最も一般的な形(及び定義された参考文献が言及されていない場合)では、「特異的結合」は、当該分野で公知のアッセイ方法にしたがって、例えば特異性に従って決定される、対象の標的と無関係の分子を区別する抗体の能力を指す。そのような方法は、ウエスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、SPR(表面プラズモン共鳴)試験及びペプチドスキャンを含むが、これらに限定されない。例えば、標準的なELISAアッセイを行うことができる。スコアリングは、標準的な発色(例えば、西洋ワサビペルオキシドを含む二次抗体及び過酸化水素を含むテトラメチルベンジジン)によって実施することができる。特定のウェルでの反応は、例えば450nmでの光学密度によって記録される。典型的なバックグラウンド(=ネガティブ反応)は約0.1ODである。典型的な陽性反応は約1ODである。これは、正のスコアと負のスコアの比率が10倍以上になる可能性があることを意味する。さらなる例では、バックグラウンドとシグナルとの間の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の差が特異的結合を示すSPRアッセイを実施することができる。典型的には、結合特異性の決定は、単一の参照分子ではなく、粉乳、トランスフェリンなどの約3〜5個の無関係な分子のセットを使用して行われる。
【0095】
適切には、本発明の抗体は単離された抗体である。本明細書で使用される「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、CD137及びPDL1を特異的に結合する単離された抗体は、CD137及びPDL1以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない。例えば、CD137、PDL1及びヒト血清アルブミンに特異的に結合する単離された抗体は、CD137、PDL1及びヒト血清アルブミン以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない可能性がある。
【0096】
適切には、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、アミノ酸配列と実質的に同一であるか、又は同じ遺伝的起源に由来する抗体を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する結合特異性と親和性、又は特定のエピトープに対する結合特異性と親和性を示す。
【0097】
本発明の抗体には、キメラ、ヒト及びヒト化が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
「キメラ抗体」(又はその抗原結合断片)という用語は、(a)定常領域又はその一部が改変され、置換され、又は交換されて、抗原結合部位(可変領域)が、異なる又は変更されたクラス、エフェクター機能及び/又は種の定常領域、又はキメラ抗体に新しい特性を与える完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬剤に連結され;又は(b)可変領域又はその一部は、異なる又は変更された抗原特異性を有する可変領域と変更、置換又は交換される、抗体分子(又はその抗原結合断片である。
例えば、マウス抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリンからの定常領域で置き換えることにより改変することができる。ヒト定常領域での置換により、キメラ抗体は、元のマウス抗体と比較してヒトにおける抗原性を低下させながら、抗原を認識する際のその特異性を保持することができる。
【0099】
本明細書で使用される「ヒト抗体」(又はその抗原結合断片)という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体(及びその抗原結合断片)を含むことが意図されている。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域はまた、そのようなヒト配列、例えば、ヒト生殖系列配列、又はヒト生殖系列配列の変異バージョンに由来する。本発明のヒト抗体及びその抗原結合断片は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異誘発によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーなどの、当該技術分野において工程である様々な技術を用いて生成することができる(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol, 227:381 (1991); Marks et al, J. Mol. Biol, 222:581 (1991))。ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できるのは、Cole et al, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boemer et al, J. Immunol, 147(l):86-95 (1991)に記載される方法である。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol, 5: 368-74 (2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無効にされているトランスジェニック動物、例えば免疫化異種生物に抗原を投与することにより調製できる(例えば、XENOMOUSE(商標)テクノロジーに関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体に関して、例えば、Liら、Proc.Natl.Acad.Science.USA、103:3557〜3562(2006)を参照されたい。
【0100】
本明細書で使用される「ヒト化」抗体(又はその抗原結合断片)は、非ヒト抗体の反応性を保持しながら、ヒトにおいて免疫原性が低い抗体(又はその抗原結合断片)である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をそれらのヒト対応物(すなわち、定常領域ならびに可変領域のフレームワーク部分)で置き換えることによって達成することができる。追加のフレームワーク領域の変更は、ヒトのフレームワーク配列内だけでなく、別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列内でも行うことができる。本発明のヒト化抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異誘発によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異、又は安定性又は製造を促進するための保存的置換)を含み得る。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855, 1984; Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92, 1988; Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536, 1988; Padlan, Molec. Immun., 28:489-498, 1991; and Padlan, Molec. Immun., 31: 169-217, 1994を参照されたい。ヒト工学技術の他の例としては、米国特許第5,766,886号に開示されているXoma技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本明細書で使用される「組換えヒト化抗体」という用語は、例えばトランスフェクトーマなどのヒト化抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子のすべて又は一部の配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む他の手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体。などの組換え手段によって調製、発現、作製又は単離されるすべてのヒト抗体を含む。
【0102】
適切には、本発明の抗体又はその抗原結合断片はヒト化されている。適切には、本発明の抗体又はその抗原結合断片はヒト化されており、ウサギ由来のCDRを含む。
【0103】
本明細書で使用される「多重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つ以上の異なる標的(例えば、CD137及びPDL1)上の2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体を指す。「多重特異性抗体」という用語は、二重特異性、三重特異性、四重特異性、五重特異性及び六重特異性を含む。本明細書で使用される「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる標的(例えば、CD137及びPDL1)上の2つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。本明細書で使用される「三重特異性抗体」という用語は、少なくとも3つの異なる標的(例えば、CD137、PDL1及びHSA)上の3つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0104】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸や糖側鎖などの化学的に活性な分子の表面グループで構成され、通常、特定の3次元構造特性と特定の電荷特性を有する。「コンフォメーション」及び「線形」エピトープは、前者への結合は変性溶媒の存在下で失われるが、後者は失われないという点で区別される。
【0105】
本明細書で使用される「立体構造エピトープ」という用語は、ポリペプチド鎖が折りたたまれてネイティブタンパク質を形成するときに表面に集まり、Fab結合のためにHD交換の有意に低下した速度を示す抗原のアミノ酸残基を指す。立体配座エピトープは、機能的エピトープを含むがこれに限定されない。
【0106】
「線形エピトープ」という用語は、タンパク質と相互作用分子(抗体など)との間の相互作用点のすべてが、タンパク質の一次アミノ酸配列(連続)に沿って直線的に発生するエピトープを指す。
【0107】
本明細書で使用される「認識する」という用語は、その立体構造エピトープを見出し、それと相互作用する(例えば、結合する)その抗体抗原結合断片を指す。
【0108】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、CD137特異性について一価、二価又は多価である。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、CD137特異性について二価である。好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、CD137特異性について一価である。
【0109】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、PDL1特異性について一価、二価又は多価である。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、PDL1特異性について二価である。好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、PDL1特異性について一価である。
【0110】
「多価抗体」という用語は、複数の原子価を有する単一の結合分子を指し、「原子価」は、同一の標的分子上のエピトープに結合する抗原結合部分の数として説明される。したがって、単一の結合分子は、標的分子上の複数の結合部位に結合することができる。多価抗体の例には、二価抗体、三価抗体、四価抗体、五価抗体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書で使用する「一価抗体」という用語は、CD137などの標的分子上の単一のエピトープに結合する抗体を指す。また、本明細書で使用する「結合ドメイン」又は「一価結合ドメイン」という用語は、CD137などの標的分子上の単一のエピトープに結合する結合ドメインを指す。
【0112】
本明細書で使用される「二価抗体」という用語は、CD137標的分子などの少なくとも2つの同一の標的分子上の2つのエピトープに結合する抗体を指す。
【0113】
最近、追加のクロスリンク機能を得て、特定のレベルのCD137活性化を達成するために、PDL1及びCD137に結合する多価及び多特異性融合ポリペプチドの使用が提案された。Eckelmanらは、INBRX−105(2つのPDL1結合ドメイン、2つのCD137結合ドメイン及びFc領域を持つ多特異性及び多価ポリペプチド)の場合のCD137の二価の関与は、生産的なCD137シグナル伝達を効果的にクラスター化及び仲介するには不十分である一方で、PDL1陽性細胞の存在下での2番目の細胞表面抗原PDL1の動作は、CD137のさらなるクラスター化と生産的シグナル伝達を可能にする(WO2017/123650)。
【0114】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、ここで、(a)ただ1つのCD137結合ドメイン(CD137−BD)を含む多重特異性抗体を発見し、(b)少なくとも1つのPDL1結合ドメイン(PDL1−BD)は、CD137シグナル伝達を標的化する方法で効果的に活性化することができることを見出した。本発明のCD137分子に対して安定な多特異的(例えば、二重特異性/三重特異性)一価は、PDL1結合ドメインによって認識される別の細胞型の非存在下では、T細胞上のCD137を刺激することができないことが示されている(
図1B)。本発明の多重特異性抗体の抗PDL1ドメインがPDL1陽性細胞の表面に露出したPDL1分子に結合するため、CD137の効果的な活性化はPDL1陽性細胞の存在下でのみ起こる(
図1C及び
図2)。これは、特定の位置における本発明の多重特異性抗体の密度の増加をもたらし、したがって、CD137結合ドメインの密度の増加をもたらす。したがって、CD137−BDは効果的にクラスター化し、CD137を刺激することができる。PDL1及びCD137へのこの付随的な結合は、腫瘍反応性T細胞の選択的活性化を引き起こし、同時にPD−1シグナル伝達をブロックする(
図2)。腫瘍細胞でのPDL1の高い過剰発現により、CD137シグナル伝達は腫瘍細胞の存在下で局所的にのみ活性化され、全身毒性の低下につながる。したがって、本発明の抗体は、現在の治療選択肢と比較していくつかの有益な効果を有することが期待される。本発明の抗体は、(i)免疫関連の有害事象のより低い率、及び(ii)用量制限毒性のより低い率を有すると予測される。
【0115】
好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、CD137特異性について一価である。重要なことに、本発明のCD137特異性多重特異性抗体の一価は、PDL1−BDのその抗原への結合によって引き起こされるクラスター化の不在下でのCD137活性化の欠如により、全身的にCD137シグナル伝達を誘導することができない。一実施形態では、本発明は、(a)1つのCD137−BD;及び(b)少なくとも1つのPDL1−BD、好ましくは1つ又は2つのPDL1−BD、より好ましくは1つのPDL1−BDを含む多重特異性抗体に関する。したがって、本発明の多重特異性抗体は、PDL1特異性について一価、二価又は多価、好ましくはPDL1特異性について一価である。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、1つのCD137−BD及び1つのPDL1−BDを含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、1つのCD137−BD及び1つのPDL1−BDからなる。
【0116】
「CD137」という用語は、特に、本明細書において配列番号197として複製される、UniProt ID番号Q07011を有するヒトCD137を指す。適切には、本発明のCD137−BDは、CD137、特にUniProt ID番号Q07011に示されるヒトCD137を標的とする。好適には、CD137−BDを含む本発明の多重特異性抗体は、ヒト及びカニクイザル(Macaca fascicularis)CD137を標的とする。好ましくは、CD137−BDを含む本発明の多重特異性抗体は、CD137/CD137L相互作用を遮断しない。
【0117】
本発明のCD137−BDは、CD137に特異的に結合する。適切には、本発明の多重特異性抗体はCD137−BDを含み、前記CD137−BDはCD137に特異的に結合する。特定の実施形態では、前記CD137−BDは、特にSPRによって決定されるように、ヒトCD137に対する結合特異性を有し、ヒトCD40に結合せず、及び/又はヒトOX40に結合しない。
【0118】
適切には、本発明のCD137−BDはCD137アゴニストである。「アクチベーター」又は「活性化抗体」又は「アゴニスト」又は「アゴニスト抗体」又は「アゴニスト結合ドメイン」又は「活性化結合ドメイン」は、それが結合する抗原によるシグナル伝達を増強又は開始するものである。本発明の文脈において、用語「CD137アゴニスト」は、それらのクラスター形成時にCD137シグナル伝達を活性化することができる本発明のCD137結合ドメインを包含し、例えば、前記CD137−BDの少なくとも2つの結合により、結合したCD137分子の多量体化とそれらの活性化を可能にする。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗体は、天然のリガンドの存在なしにシグナル伝達を活性化する。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明のCD137−BDは、モノクローナル抗体又は抗体断片に由来する。
【0120】
本発明の多重特異性抗体での使用に適したCD137−BDは、本開示で提供される新規結合ドメインである。本発明の新規のCD137−BDは、実施例を含む、本明細書に記載されるように単離されたヒト化モノクローナル抗体を含むが、これらに限定されない。そのようなCD137−BDの例は、その配列が表1に列挙されている抗体又はその結合ドメインである。本明細書に記載の抗体及び結合ドメインの生成及び特徴付けに関するさらなる詳細は、実施例に提供されている。本発明の新規CD137−BDは、本発明の目的に特に適している。少なくとも1つの前記CD137−BDを含む本発明の多重特異性抗体、例えば、CD137結合特異性が一価で、PDL1陽性細胞の存在下でCD137を活性化できる。
【0121】
適切には、CD137−BDはCD137に特異的に結合し、以下のパラメーターの1つ以上によって特徴付けられる:
(i)50nM未満、特に10nM未満、特に5nM未満、特に1nM未満、特に500pM未満、特に100pM未満、より具体的には50pM未満の解離定数(KD)でヒトCD137に結合し、特に前記抗体はscFv(一価の親和性)である;
(ii)SPRで測定した場合、Koff率速度が10
-3s
-1以下、又は10
-4s
-1以下、又は10
-5s
-1以下でヒトCD137に結合し、前記抗体はscFvである;
(iii)SPRで測定した場合、少なくとも10
4M
-1s
-1以上、少なくとも10
5M
-1s
-1以上、少なくとも10
6M
-1s
-1以上のKon速度でヒトCD137に結合し、特に、前記抗体はscFvである;
(iv)必要に応じて、ウレルマブと競合しない;
(v)必要に応じて、ウトミルマブと競合しない;
(vi)必要に応じて、Macaca fascicularis(カニクイザル)CD137と交差反応する;及び
(vii)必要に応じて、特に競合ELISAで測定した場合、CD137とそのリガンドCD137Lの相互作用を阻害しない。
【0122】
「アビディティ」という用語は、抗体−抗原複合体の全体的な安定性又は強度の有益な尺度を指す。それは3つの主要な要因によって制御される:抗原と抗体の両方の価数;相互作用するパーツの構造配置。最終的にこれらの要因は、抗体の特異性、つまり特定の抗体が正確な抗原エピトープに結合する可能性を定義する。
【0123】
本明細書で使用する場合、「親和性」という用語は、単一の抗原性部位における抗体と抗原の間の相互作用の強さを指す。各抗原部位内で、抗体の「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合力を介して、多数の部位で抗原と相互作用する。相互作用が多いほど、親和性が強くなる。
【0124】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを指す。特に明記しない限り、本明細書で使用する「結合親和性」、「結合する」、「結合する」又は「結合している」は、結合対のメンバー(例えば、抗体断片及び抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む、当技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。一般に、低親和性抗体は抗原との結合が遅く、解離しやすい傾向があるが、高親和性抗体は一般に抗原との結合が速く、結合が長く維持される傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、それらのいずれも本発明の目的に使用することができる。結合親和性、すなわち結合強度を測定するための特定の例示的かつ例示的な実施形態を以下に説明する。
【0125】
本明細書で使用される「Kassoc」、「Ka」又は「Kon」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を指すことが意図され、一方、用語「Kdis」、「Kd」又は「Koff」は、本明細書で使用する場合、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指すことが意図されている。一実施形態では、本明細書で使用される「KD」という用語は、Kd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指すものとする。「KD」若しくは「KD値」又は本発明による「KD」若しくは「KD値」は、一実施形態では、MASS−1 SPR機器(Sierra Sensors)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって測定される。アフィニティを測定するには、ウサギIgGのFc領域に特異的な抗体(Bethyl Laboratories、カタログ番号A120−111A)を標準アミン−カップリング手順を使用してセンサーチップ(SPR−2アフィニティセンサー、高容量アミン、Sierraセンサー)に固定化する。B細胞上清中のウサギモノクローナル抗体は、固定化された抗ウサギIgG抗体によって捕捉される。十分な捕捉を可能にするために、B細胞上清中の最小限のIgG濃度が必要である。モノクローナル抗体の捕捉後、ヒトCD137 ECD(Peprotech、カタログ310−15−1MG)、又はPDL1−BDの場合と同様に、ヒトPDL1(Peprotech)を90nMの濃度で3分間、フローセルに注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからのタンパク質の解離を5分間進行させた。各注入サイクル後、10mMグリシン−HClを2回注入して表面を再生する。見かけの解離(kd)と会合(ka)の速度定数と見かけの解離平衡定数(KD)は、MASS−1分析ソフトウェア(Analyzer、Sierra Sensors)で1対1のLangmuir結合モデルを用いて計算され、適合の品質は、曲線適合の品質の尺度である相対的Chi2(分析物の外挿された最大結合レベルに対して正規化されたChi2)に基づいて監視される。Chi2の値が小さいほど、1対1のラングミュア結合モデルへの適合がより正確になる。リガンド結合の応答単位(RU)が抗体捕捉のRUの少なくとも2%である場合、結果は有効であると見なされる。リガンド結合用のRUが抗体捕捉用のRUの2%未満の試料は、捕捉された抗体へのCD137又はPDL1の特異的結合を示さないと見なされる。平衡解離定数(KD)は、koff/konの比率として計算される。例えば、Chen et al, J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照されたい。
【0126】
適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137に対する親和性は、CD137Lに対するCD137Lの親和性に匹敵するか、又はそれより高い場合がある。適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137に対する親和性は、CD137に対するウレルマブの親和性に匹敵するか、それよりも高い可能性がある。CD137結合ドメインのより高い親和性は、本発明の多重特異性抗体における使用に特に適切であり得、前記抗体は、CD137に対して一価であることが理解される。抗体又はその結合断片の結合親和性は、例えば、解離定数(KD)によって決定され得る。強い親和性は低いKDで表され、弱い親和性は高いKDで表される。
【0127】
したがって、適切な実施形態では、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、特にSPRにより測定される場合、5〜50,000pM、5〜40,000pM、5〜30,000pM、5〜20,000pM、5〜10,000pM、5〜9,000pM、5〜8,000pM、5〜7,000pM、5〜6,000pM、5〜5,000pM、5〜2,500pM、5〜1,000pM、5〜750pM、5〜500pM、5〜250pM、5〜100pM、5〜75pM、5〜50pM、5〜30pMのKDでヒトCD137に結合する。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、特にSPRによって測定した場合、10nM〜10pM、好ましくは10nM〜0.1nM、例えば5nM〜0.1nM、より好ましくは5nM〜1nMのKDでヒトCD137に結合する。
【0128】
適切な実施形態では、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、特にSPRによって測定した場合、約50nM未満、約45nM未満、約40nM未満、約35nM未満、約30nM未満、約25nM未満、20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、未満約6nM、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.25nM未満、又は0.1nM未満、50pM未満、40pM未満、30pM未満、20pM未満のKDでヒトCD137に結合する。適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、特にSPRによって測定した場合、10nM未満のKDでヒトCD137に結合する。好ましくは、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、特にSPRによって測定される場合、5nM未満のKDでヒトCD137に結合する。適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、特にSPRによって測定した場合、1nM未満のKDでヒトCD137に結合する。適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、特にSPRによって測定される場合、50pM未満のKDでヒトCD137に結合する。
【0129】
適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、表面プラズモン共鳴(SPR)で測定した場合、少なくとも103M
-1s
-1以上、少なくとも10
4M
-1s
-1以上、少なくとも5×10
4M
-1s
-1以上、少なくとも10
5M
-1s
-1以上、少なくとも5×10
5M
-1s
-1以上、少なくとも10
6M
-1s
-1以上、少なくとも5×10
6M
-1s
-1以上、少なくとも10
7M
-1s
-1以上、少なくとも5×10
7M
-1s
-1以上のKon速度でヒトCD137に結合する。適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、SPRで測定した場合、少なくとも10
4M
-1s
-1以上、特に少なくとも10
5M
-1s
-1以上のKon速度でヒトCD137に結合する。特に、前記抗体がscFv(一価親和性)である。
【0130】
適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、表面プラズモン共鳴(SPR)で測定した場合、10
-3s
-1以下、3×10
-3s
-1以下、5×10
-3s
-1以下、5×10
-3s
-1以下、10
-4s
-1以下、5×10
-4s
-1以下、10
-5s
-1以下、5×10
-5s
-1以下、10
-6s
-1以下、又は10
-7s
-1以下のKoff速度でヒトCD137に結合する。適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、SPRによって測定した場合、10
-4s
-1以下、特に10
-5s
-1以下のKoff速度でヒトCD137に結合する。
【0131】
適切には、本発明の多重特異性抗体又は本発明のCD137−BDは、SRPで測定した場合、少なくとも60%以上、少なくとも70%以上、少なくとも75%以上、少なくとも80%以上、少なくとも85%以上、少なくとも90%以上、少なくとも95%以上のヒトCD137への結合を有し、ウレルマブで得られた結合レベルに正規化された。
【0132】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、ウレルマブとの結合に関して交差競合しない。したがって、本発明は、ウレルマブとは異なるエピトープに結合するCD137−BDを提供する。ウレルマブはBMS−663513とも呼ばれ、ブリストル・マイヤーズスクイブの完全ヒト化IgG4 mAbであり、WO2004/010947、US6,887,673及びUS7,214,493に記載され、これらは参照に全体が本明細書に援用される。別の実施形態では、本発明のCD137−BDは、ウレルマブとの結合について交差競合する。
【0133】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、ウトミルマブとの結合について交差競合しない。したがって、本発明は、ウトミルマブとは異なるエピトープに結合するCD137−BDを提供する。ウトミルマブは、PF−05082566とも呼ばれ、ファイザー社の完全ヒトIgG2 mAbであり、参照により全体が本出願に組み込まれている、WO2012/032433及びUS8,821,867に記載されている。別の実施形態では、本発明のCD137−BDは、ウトミルマブとの結合について交差競合する。
【0134】
さらなる実施形態では、本発明のCD137−BDは、ウレルマブ又はウトミルマブのいずれとも結合することについて交差競合しない。したがって、本発明は、ウレルマブ及びウトミルマブとは異なるエピトープに結合する本発明のCD137−BDを提供する。
【0135】
「競合する」又は「交差競合する」という用語及び関連する用語は、本明細書では互換的に使用され、標準的な競合結合アッセイにおいて、抗体又は他の結合剤が他の抗体又は結合剤のCD137への結合を妨害する能力を意味する
【0136】
抗体又は他の結合剤が、CD137、PDL1などの目的のターゲットへの別の抗体又は結合分子の結合を妨害できる能力又は程度、したがって、本発明に従って交差競合すると言えるかどうかは、標準的な競合結合アッセイを使用して決定することができる。適切な定量的交差競合アッセイは、FACSベース又はAlphaScreenベースのアプローチを使用して、標的への結合に照らして、ラベル付き(Hisタグ付き、ビオチン化又は放射性ラベル付き)の抗体又はその断片と他の抗体又はその断片との結合の競合を測定する。一般に、交差競合抗体又はその断片は、例えば、交差競合アッセイにおいて標的に結合し、その結果、アッセイ中及び二次抗体又はその断片の存在下で、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドの記録された置換は、所定の量で存在する試験される可能性があるクロスブロッキング抗体又はその断片であるものによって、試験される可能性のある交差ブロッキングによる最大理論的置換(例えば、(ブロッキングされていない)冷たい(例えば、非標識)抗体又はその断片による置換)の最大100%である。好ましくは、交差競合抗体又はその断片は、10%〜100%、より好ましくは50%〜100%の記録された置換を有する。本発明の目的のために、競合ELISAが利用され、対応するプロトコルは、本開示の「実施例」セクションに詳細に記載されている。一実施形態では、本発明のCD137−BDは、ウレルマブ及び/又はウトミルマブのCD137タンパク質への結合を阻害せず、これは、本発明のCD137−BDが、CD137への結合について、それぞれウレルマブ及び/又はウトミルマブと競合できないことを示す;そのようなCD137−BD又は前記ドメインを含む抗体は、非限定的な理論によれば、それぞれウレルマブ又はウトミルマブとしてCD137上の異なる(例えば、構造的に異なる又は空間的に離れた)エピトープに結合することができる。一実施形態では、本発明のCD137−BDは、ウレルマブ又はウトミルマブのCD137タンパク質への結合を阻害し、これは、本発明のCD137−BDが、CD137への結合について、それぞれウレルマブ又はウトミルマブと競合できることを示す;そのようなCD137−BD又は前記ドメインを含む抗体は、非限定的な理論によれば、それぞれウレルマブ又はウトミルマブとして、CD137上の同じ又は重複する(例えば、構造的に類似又は空間的に近位の)エピトープに結合し得る。
【0137】
本発明はまた、表1に列挙されたCD137−BDと同じエピトープに結合する結合ドメインを提供する。したがって、追加の結合ドメインは、それらがCD137結合アッセイにおける本発明の他の抗体及びその抗原結合断片と交差競合する(例えば、統計的に有意な方法で、その結合を競合的に阻害する)能力に基づいて同定することができる。
【0138】
本発明のCD137−BDのCD137タンパク質への結合を阻害する試験結合ドメインの能力は、試験結合ドメインがCD137への結合についてそのCD137−BDと競合できることを実証している;そのような結合ドメインは、非限定的な理論によれば、それが競合するCD137−BDと同じ又は関連する(例えば、構造的に類似又は空間的に近位の)CD137上のエピトープに結合することができる。特定の実施形態では、本発明のCD137−BDと同じCD137上のエピトープに結合する結合ドメインは、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。そのようなヒト又はヒト化モノクローナル抗体は、本明細書に記載されるように調製及び単離され得る。
【0139】
抗原上の所望のエピトープが決定されると、例えば、本発明に記載される技術を使用して、そのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。あるいは、発見プロセス中に、抗体の生成及び特徴付けにより、望ましいエピトープに関する情報が明らかになる場合がある。この情報から、同じエピトープへの結合について抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。これを達成するためのアプローチは、相互競合研究を実施して、互いに競合的に結合する抗体を見つけることであり、例えば、抗体は抗原への結合について競合する。それらの交差競合に基づいて抗体を「ビニング」するためのハイスループットプロセスは、WO2003/48731に記載されている。当業者によって理解されるように、実際には、抗体が特異的に結合することができるあらゆるものがエピトープであり得る。エピトープは、抗体が結合するそれらの残基を含み得る。
【0140】
エピトープを含む所与のポリペプチドの領域は、当技術分野で周知の任意の数のエピトープマッピング技術を使用して特定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E.Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, New Jerseyを参照されたい。例えば、線形エピトープは、例えば、固体支持体上で多数のペプチド(タンパク質分子の部分に対応するペプチド)を同時に合成し、ペプチドが依然として支持体に付着している間にペプチドを抗体と反応させることにより決定され得る。そのような技術は、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第4,708,871号;Geysen et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8:3998-4002; Geysen et al., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:78-182; Geysen et al., (1986) Mol. Immunol. 23:709-715に記載されている。同様に、立体配座エピトープは、例えば、水素/重水素交換、X線結晶学及び2次元核磁気共鳴などによって、アミノ酸CD137の空間的立体配座を決定することによって容易に識別される。
例えば、上記のエピトープマッピングプロトコルを参照されたい。タンパク質の抗原性領域は、例えば、Oxford Molecular Groupから入手可能なOmigaバージョン1.0ソフトウェアプログラムを使用して計算されたものなど、標準的な抗原性及びハイドロパシープロットを使用して特定することもできる。このコンピュータプログラムは、抗原性プロファイルを決定するためのホップ/ウッズ法(Hopp et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci USA 78:3824-3828);ハイドロパシープロットのためのKyte−Doolittle技術(Kyte et al., (1982) J.MoI. Biol. 157: 105-132)を採用する。
【0141】
適切には、CD137−BDはCD137に特異的に結合し、以下のパラメーターの1つ以上によって特徴付けられる:
a)scFv形式の場合、示差走査蛍光分析(DSF)によって測定された場合、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも55℃、より好ましくは少なくとも60℃の融解温度(Tm)を有し、特に前記抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4、150mM NaClのリン酸−クエン酸緩衝液、特にpH6.4の50mMのリン酸−クエン酸緩衝液、150mM NaCl中で処方される。
b)scFv形式の場合、4℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間保存した後、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度である場合、モノマー含有量が7%未満、例えば、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満の喪失であり、特に、本発明の抗体、例えば、前記抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4で150mM NaClを含む50mMリン酸クエン酸塩緩衝液に処方される;及び/又は
c)scFv形式の場合、40℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間保存した後、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度である場合、モノマー含有量が5%未満、例えば、4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満の喪失であり、特に、本発明の抗体、例えば、前記抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4で150 mM NaClを含む50mMリン酸クエン酸塩緩衝液に処方される。
【0142】
DSFは以前に説明されている(Egan, et al., MAbs, 9(1) (2017), 68-84; Niesen, et al., Nature Protocols, 2(9) (2007) 2212-2221)。scFv構築物の熱変性の遷移の中点は、蛍光色素SYPRO(登録商標)Orangeを使用した示差走査蛍光分析によって決定される(Wong & Raleigh, Protein Science 25 (2016) 1834-1840参照)。pH6.4のリン酸−クエン酸緩衝液のサンプルは、50μg/mLの最終タンパク質濃度で調製され、総容量100μlに5xSYPRO(登録商標)Orangeの最終濃度を含む。調製したサンプルの25マイクロリットルを、3重に白い壁のAB遺伝子PCRプレートに加える。アッセイはサーマルサイクラーとして使用されるqPCRマシンで実行され、ソフトウェアのカスタム色素キャリブレーションルーチンを使用して蛍光発光が検出される。試験サンプルを含むPCRプレートは、25℃から96℃まで1℃ずつ上昇し、各温度上昇後に30秒間休止する。総分析時間は約2時間である。Tmは、ソフトウェアのGraphPad Prismにより、数学的な2次導関数法を使用して曲線の変曲点を計算する。報告されたTmは、3つの測定値の平均である。
【0143】
モノマー含有量の損失は、SE−HPLCクロマトグラムの曲線下の面積によって決定される。SE−HPLCは、USPの第621章で概説されているように、固体固定相と液体移動相に基づく分離技術である。この方法は、疎水性固定相と水性移動相を利用して、サイズと形状に基づいて分子を分離する。分子の分離は、特定のカラムのボイドボリューム(V0)と総透過ボリューム(VT)の間で発生する。SE−HPLCによる測定は、自動サンプル注入と280nmの検出波長に設定されたUV検出器を備えたChromaster HPLCシステム(Hitachi High−Technologies Corporation)で行われる。装置は、結果のクロマトグラムの分析もサポートするソフトウェアEZChrom Elite(Agilent Technologies、バージョン3.3.2 SP2)によって制御される。タンパク質サンプルは遠心分離により清澄化され、注入前にオートサンプラーで4〜6℃の温度に保たれる。scFvサンプルの分析には、Shodex KW403−4F(Showa Denko Inc、#F6989202)のカラムを、標準化された緩衝生理食塩水移動相(50mMリン酸ナトリウムpH6.5、300mM塩化ナトリウム)とともに、推奨される流速0.35mL/分で使用する。注入あたりの目標サンプル負荷は5μgであった。サンプルは、280nmの波長でUV検出器によって検出され、データは適切なソフトウェアスイートによって記録される。結果のクロマトグラムは、V0からVTの範囲で分析され、それにより、10分を超える溶出時間のマトリックス関連ピークが除外される。
【0144】
本発明は、CD137タンパク質に特異的に結合するCD137−BDを提供し、前記結合ドメインは、表1に列挙されたVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、本発明は、CD137タンパク質に特異的に結合するCD137−BDを提供する。前記CD137−BDは、表1にリストされたVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3、又はそれ以上のVH CDRを含む(又はそれからなる)。
【0145】
本発明はまた、CD137タンパク質に特異的に結合するCD137−BDを提供し、前記CD137−BDは、表1に列挙されたVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、本発明は、CD137タンパク質に特異的に結合するCD137−BDを提供する。前記CD137−BDは、表1に列挙されたVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3つ、又はそれ以上のVL CDRを含む(又はそれからなる)。
【0146】
本発明の他のCD137−BDは、変異しているが、表1に記載されている配列で示されているCDR領域と、CDR領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。一態様では、本発明の他のCD137−BDは、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸が、表1に記載されている配列で示されているCDR領域と比較した場合、CDR領域で変異している変異アミノ酸配列を含む。
【0147】
「同一」又は「同一性」という用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列との関連で、同じである2つ以上の配列又は部分配列を指す。核酸、ペプチド、ポリペプチド又は抗体配列に関する「パーセント(%)配列同一性」及び「相同性」は、必要に応じて、配列を整列させ、ギャップを導入した後、最大の配列同一性を達成するために、保存的置換を配列同一性の一部として考慮しないで、特定の核酸、ペプチド、又はポリペプチド配列の酸残基において、ヌクレオチド又はアミノ残基と同一である候補配列中のヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST−2、又はALIGNソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0148】
配列比較では、通常、1つの配列が参照配列として機能し、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列がコンピューターに入力され、必要に応じてサブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。デフォルトのプログラムパラメーターを使用することも、別のパラメーターを指定することもできる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0149】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの2つの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれin Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402, 1977; 及びAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990に記載される。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公開されている。
【0150】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120重み付け残差テーブル、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller(Comput. Appl.
さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossom 62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、ギャップウェイトの16、14、12、10、8、6、又は4、長さの重みの1、2、3、4、5、又は6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanとWunsch(J. Mol, Biol. 48:444-453, 1970)アルゴリズムを使用して決定できる。
【0151】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコード化されたアミノ酸、ならびにヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、O−ホスホセリンなど、後で修飾されるアミノ酸である。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。特に明記しない限り、特定のポリペプチド配列はまた、その保存的に改変された変異体を暗黙のうちに包含する。
【0152】
適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号1、4、5、8、11、35、38、41及び44のいずれか1つ、好ましくは配列番号1から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR1(HCDR1);(b)配列番号2、6、9、12、36、39、42及び45のいずれか、好ましくは配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR2(HCDR2);(c)配列番号3、7、10、13、37、40、43及び46のいずれか、好ましくは配列番号3から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR3(HCDR3);(d)配列番号18、21、24、48、51及び54のいずれか、好ましくは配列番号18から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR1(LCDR1);(e)配列番号19、22、25、49、52、及び55、好ましくは配列番号19のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR2(LCDR2);及び(f)配列番号20、23、26、50、53及び56のいずれか、好ましくは配列番号20から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR3(LCDR3)を含む。好適には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号1、4、5、8、11、35、38、41、及び44のいずれか1つ、好ましくは配列番号1と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR1(HCDR1);(b)配列番号2、6、9、12、36、39、42及び45のいずれか、好ましくは配列番号2と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する重鎖可変領域CDR2(HCDR2);(c)配列番号3、7、10、13、37、40、43及び46のいずれか、好ましくは配列番号3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する重鎖可変領域CDR3(HCDR3);(d)配列番号18、21、24、48、51、及び54のいずれか、好ましくは配列番号18と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する軽鎖可変領域CDR1(LCDR1);(e)配列番号19、22、25、49、52、及び55のいずれか、好ましくは配列番号19と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する軽鎖可変領域CDR2(LCDR2);及び(f)配列番号20、23、26、50、53、及び56のいずれか、好ましくは配列番号20と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する軽鎖可変領域CDR3(LCDR3)を含む。
【0153】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(b)それぞれ配列番号4、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(c)それぞれ配列番号5、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(d)それぞれ配列番号8、9、及び10のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(e)それぞれ配列番号11、12、及び13のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号24、25、及び26のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(f)それぞれ配列番号35、36、及び37のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号48、49、及び50のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(g)それぞれ配列番号38、39、及び40のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号51、52、及び53のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(h)それぞれ配列番号41、42、及び43のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号48、49、及び50のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(i)それぞれ配列番号44、45、及び46のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号54、55、及び56のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0154】
好適には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)それぞれ配列番号1、2、及び3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、LCDR3配列;(b)それぞれ配列番号4、6、及び7と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(c)それぞれ配列番号5、6、及び7と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(d)それぞれ配列番号8、9、及び10と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ及び配列番号18、19、及び20と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(e)それぞれ配列番号11、12、及び13と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号24、25、及び26と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(f)それぞれ配列番号35、36、及び37と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号48、49、及び50と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(g)それぞれ配列番号38、39、及び40と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号51、52、及び53と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(h)配列番号41、42、及び43と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号48、49、及び50と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(i)配列番号44、45、及び46と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号54、55、及び56と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を有する。好ましい態様において、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号1、2、及び3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号1と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR1;(b)配列番号2と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR2;(c)配列番号3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR3;(d)配列番号18と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR1;(e)配列番号19と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR2;及び(f)配列番号20と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0155】
さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号6のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号7のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号21のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号22のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号4又は配列番号5と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号6と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号7と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号21と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号22と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号23と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。
【0156】
なおさらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号35のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号37のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号48のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号49のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号50のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号35と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号36と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号37と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号48と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号49と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号50と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。
【0157】
さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号40のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号51のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号52のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号53のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、
(a)配列番号38と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号39と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号40と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号51と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号52と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号53と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。
【0158】
好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、CD137−BDを含み、前記CD137−BDは、(a)配列番号59、62、65及び68のいずれか1つ、好ましくは配列番号59から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号60、63、66及び69のいずれか、好ましくは配列番号60から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号61、64、67及び70のいずれか、好ましくは配列番号61から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号74、77及び80のいずれか、好ましくは配列番号74から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号75、78及び81のいずれか、好ましくは配列番号75から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR2;及び(f)配列番号76、79及び82のいずれか、好ましくは配列番号76から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR3を含む。適切には、本発明の多重特異性のCD137−BDは、(a)配列番号59、62、65及び68のいずれか1つ、好ましくは配列番号59と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号60、63、66及び69のいずれか1つ、好ましくは配列番号60と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号61、64、67及び70のいずれか1つ、好ましくは配列番号61と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号74、77及び80のいずれか1つ、好ましくは配列番号74と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有する軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号75、78及び81のいずれか1つ、好ましくは配列番号75と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有する軽鎖可変領域CDR2;ならびに(f)配列番号76、79及び82のいずれか1つ、好ましくは配列番号76と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0159】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列;(b)それぞれ配列番号62、63及び64のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号77、78及び79のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列;(c)それぞれ配列番号65、66及び67のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列;(d)それぞれ配列番号68、69及び70のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号80、81、及び82のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75、76のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列を含む。
【0160】
好適には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)それぞれ配列番号59、60及び61と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75及び76と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(b)それぞれ配列番号62、63及び64と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号77、78及び79と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(c)それぞれ配列番号65、66、及び67と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75及び76と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(d)それぞれ配列番号68、69及び70と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号80、81及び82と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号59、60及び61と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3、及びそれぞれ配列番号74、75及び76と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、(a)配列番号59と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR1;(b)配列番号60と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR2;(c)配列番号61と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むHCDR3;(d)配列番号74と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR1;(e)配列番号75と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR2;及び(f)配列番号76と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0161】
さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、VHドメイン及びVLドメインを含む。本発明の文脈において、用語「VH」(可変重鎖)、「VL」(可変軽鎖)、「Vκ」及び「Vλ」は、配列の同一性及び相同性に従ってグループ化された抗体重鎖及び軽鎖配列のファミリーを指す。例えば、BLOSUM(Henikoff, S. & Henikoff, J. G., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 10915-10919)などの相同性検索マトリックスを使用することによる配列相同性の決定方法、及び相同性による配列のグループ化のための方法は、当業者に周知である。VHに関して、例えば、Knappik et al., J. Mol. Biol. 296 (2000) 57-86に示されるように、Vκ及びVλを同定することができ、VHはVH1A、VH1B、VH2〜VH6、VκはVκ1〜Vκ4、VλはVλ1〜Vλ3にグループ化される。インビボでは、抗体Vκ鎖、Vλ鎖、及びVH鎖は、生殖細胞系列κ鎖V及びJセグメント、生殖細胞系λ鎖V及びJセグメント、ならびに重鎖V、D及びJセグメントのランダムな再配置の結果である。所与の抗体可変鎖がどのサブファミリーに属するかは、対応するVセグメントによって、特にフレームワーク領域FR1〜FR3によって決定される。したがって、本出願において特定のセットのフレームワーク領域HFR1〜HFR3のみによって特徴付けられる任意のVH配列は、任意のHFR4配列、例えば、重鎖生殖系列Jセグメントの1つから取られたHFR4配列、又は再配置されたVH配列から取得されたHFR4配列と組み合わせることができる。
【0162】
適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、VH4又はVH3ドメインフレームワーク配列、好ましくはVH4ドメインフレームワーク配列、より好ましくはVH3ドメインフレームワーク配列を含む。
【0163】
VH3ファミリーに属するVHの特定の例は、配列番号71に示されている。特に、配列番号71から取られたフレームワーク領域FR1〜FR4は、VH3ファミリーに属する(表1、太字で示されていない領域)。適切には、本明細書で使用される場合、VH3ファミリーに属するVHは、配列番号71のFR1〜FR4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1〜FR4を含むVHである。
【0164】
VH4ファミリーに属するVHの特定の例は、配列番号14に示されている。特に、配列番号14から取られたフレームワーク領域FR1からFR4は、VH4ファミリーに属する(表1、太字ではない領域)。適切には、本明細書で使用される場合、VH4ファミリーに属するVHは、配列番号14のFR1〜FR4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1〜FR4を含むVHである。
【0165】
適切には、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3フレームワーク、好ましくはVκ1フレームワークFR1〜3、及びVκFR4、特にVκ1FR4、Vκ3FR4、及びVλFR4から選択されるフレームワークFR4を含む。適切なVκ1フレームワークFR1〜3は、配列番号27又は配列番号83に示されている(表1、FR領域は太字では記されていない)。適切なVκ1フレームワークFR1〜3は、FR1〜3に対応し、配列番号27又は配列番号83から取られたアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む(表1、FR領域は太字では記されていない)。適切なVλ FR4は、配列番号199〜配列番号205に示されるとおりである。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。
【0166】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、
(i)以下のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列:
a.それぞれ配列番号1、2、及び3、ならびにそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は
b.それぞれ配列番号35、36、及び37、ならびにそれぞれ配列番号48、49、及び50のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は
c.それぞれ配列番号59、60、及び61、ならびにそれぞれ配列番号74、75、及び76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;好ましくはVH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4、より好ましくはVH3ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;ならびに
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及び特に、配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、より具体的には配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号199のアミノ酸配列を含むVλ FR4を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む。
【0167】
好ましい態様において、本発明の多重特異性抗体の前記CD137−BDは、それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0168】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、
(i)以下のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列:
a.それぞれ配列番号4、6、及び7、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列:
b.それぞれ配列番号5、6、及び7、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は
c.それぞれ配列番号38、39、及び40、及びそれぞれ配列番号51、52、及び53のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;好ましくはVH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4、より好ましくはVH3ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及び特に、配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、より具体的には配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号199のアミノ酸配列を含むVλ FR4を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む。
【0169】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、以下を含むVLを含む:
(i)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;
(ii)ヒトVκフレームワーク領域FR1〜FR3、特にヒトVκ1フレームワーク領域FR1〜FR3;
(iii)(a)FR4のヒトVλ生殖系列配列、特に配列番号199〜205の列挙から選択されるVλ生殖系列配列、好ましくは配列番号199のアミノ酸配列を含むVλFR4;及び(b)配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むFR4の最も近いヒトVλ生殖系列配列と比較して、1つ又は2つの変異、特に1つの変異を有するVλベースの配列、好ましくは配列番号199のアミノ酸配列を含むVλFR4から選択されるFR4
を含むVlを含む。
【0170】
好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、
(i)以下のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列:
a.それぞれ配列番号4、6、及び7、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
b.それぞれ配列番号5、6、及び7、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は
c.それぞれ配列番号38、39、40、及びそれぞれ配列番号51、52、及び53のLCDR1、LCDR2、LCDR3配列;
(ii)VH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;及び
(iii)Vκ1フレームワークFR1、FR2、及びFR3を含むVLフレームワーク、配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、特に配列番号199〜配列番号205、好ましくは配列番号199で示されるVλFR4を含むVLドメイン
を含む。
【0171】
別の好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、
(i)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;及び
(iii)Vκ1フレームワークFR1、FR2、及びFR3を含むVLフレームワーク、配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、特に配列番号199〜配列番号205、好ましくは配列番号199で示されるVλFR4を含むVLドメイン
を含む。
【0172】
より好ましい態様において、本発明の多重特異性抗体のCD137−BDは、
(i)それぞれ配列番号59、60、及び61のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75、及び76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;及び
(iii)Vκ1フレームワークFR1、FR2、及びFR3を含むVLフレームワーク、配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、特に配列番号199〜配列番号205、好ましくは配列番号199で示されるVλFR4を含むVLドメイン
を含む。
【0173】
適切には、本発明のCD137−BDは、表1に列挙されたVHドメインを含む。適切には、本発明のCD137−BDは、1に列挙されたVHアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中に約10以下のアミノ酸が変異している(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。適切には、本発明のCD137−BDは、表1に記載されているVHアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)の約20以下のアミノ酸が変異している(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。本発明の他のCD137−BDは、変異しているが、表1に記載されている配列に示されているVH領域とVH領域と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。
【0174】
適切には、本発明のCD137−BDは、表1に列挙されたVLドメインを含む。適切には、本発明のCD137−BDは、表1に列挙されたVLアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中に約10以下のアミノ酸が変異している(ここで、突然変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。適切には、本発明のCD137−BDは、表1に列挙されたVLアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20以下のアミノ酸が変異している(ここで、突然変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。本発明の他のCD137−BDは、変異しているが、VL領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含み、VL領域は表1に記載されている。
【0175】
適切には、本発明のCD137−BDは、配列番号14、15、16、17及び47、好ましくは配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び配列番号27、28、29、30及び57、好ましくは配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0176】
適切には、本発明のCD137−BDは、配列番号14、15、16、17及び47のいずれか、好ましくは配列番号17から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び配列番号27、28、29、30及び57のいずれか、好ましくは配列番号30から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0177】
さらなる実施形態では、本発明のCD137−BDは、(a)配列番号14のVH配列及び配列番号27のVL配列;(b)配列番号15のVH配列及び配列番号28のVL配列;(c)配列番号16のVH配列及び配列番号29のVL配列;(d)配列番号17のVH配列及び配列番号30のVL配列;又は(e)配列番号47のVH配列及び配列番号57のVL配列を含む。好ましい態様において、本発明のCD137−BDは、配列番号17のVH配列及びVL配列番号30の配列を含む。
【0178】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、(a)それぞれ配列番号4、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;(b)それぞれ配列番号4、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%同一であるVL配列;(c)それぞれ配列番号5、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;(d)それぞれ配列番号4、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHはG51C変異(AHo番号付け)を含み、前記VLはT141C変異(AHo番号付け)を含む;又は(e)それぞれ配列番号38、39、及び40のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号51、52、及び53のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列を含む。
【0179】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、
(a)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;
(b)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%同一であるVL配列;
(c)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;
(d)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHはG51C変異(AHo番号付け)を含み、前記VLはT141C変異(AHo番号付け)を含む;又は
(e)それぞれ配列番号35、36、及び37のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号48、49、及び50のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列
を含む。
【0180】
好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、列配列番号17のアミノ酸配と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、VHは、G51C変異(AHo番号付け)及び前記VLはT141C変異(AHo番号付け)を含む、を含む。適切には、本発明の前記CD137−BDは、フレームワーク領域内で人工ドメイン間ジスルフィド架橋を形成するように変異され、特に、システインの対は、前記VH上のGly51(AHo番号付け)及び前記VL上のThr141(AHo番号付け)を置き換える。驚くべきことに、ドメイン間ジスルフィド架橋を含むこのようなCD137−BDは、熱安定性が大幅に向上していることがわかった。
【0181】
ジスルフィド架橋(「SS架橋」又は「diS」)に関する「人工」という用語は、S−S架橋が、野生型抗体によって自然に形成されるのではなく、親分子の操作された変異体によって形成されることを意味する。ここで、少なくとも1つの外来アミノ酸がジスルフィド結合に関与する。人工ジスルフィド架橋の部位特異的操作は、天然免疫グロブリン、又はWO2009/000006に記載されているようなモジュラー抗体で自然に利用可能なものとは明らかに異なる。これは、人工ジスルフィド架橋の橋脚の部位の少なくとも1つが通常、野生型抗体のCys残基の位置とは別に配置され、フレームワーク領域内に代替又は追加のジスルフィド架橋を提供するためである。本発明の人工ジスルフィド架橋は、ベータドメイン構造を安定化するか、ドメイン(「ドメイン間架橋」)又はドメインの鎖(「鎖間架橋」)を架橋する抗体ドメイン(「ドメイン内架橋」)内で操作して、本発明による多重特異性抗体の構造を制約し、潜在的な結合パートナーとの相互作用をサポートすることができる。
【0182】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、
(a)配列番号14のVH配列及び配列番号27のVL配列;
(b)配列番号15のVH配列及び配列番号28のVL配列;
(c)配列番号16のVH配列及び配列番号29のVL配列;
(d)配列番号17のVH配列、及び配列番号30のVL配列;又は
(e)配列番号47のVH配列及び配列番号57のVL配列
を含む。
【0183】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、
(a)配列番号14のVH配列及び配列番号27のVL配列;
(b)配列番号15のVH配列及び配列番号28のVL配列;
(c)配列番号16のVH配列及び配列番号29のVL配列;
(d)配列番号17のVH配列、及び配列番号30のVL配列;又は
(e)配列番号47のVH配列及び配列番号57のVL配列
を含む。
【0184】
好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号17のVH配列及び配列番号30のVLを含む。
【0185】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、表1に記載されている。一実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34又は配列番号58からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一である。一実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34又は配列番号58に示されるとおりである。実施形態において、本発明のCD137−BDは、配列番号31又は配列番号33又は配列番号34に示されるとおりである。好ましい実施形態において、本発明のCD137−BDは、示されるとおりである。より好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号34に示されるとおりである。
【0186】
好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号71、72及び73、好ましくは配列番号71、より好ましくは配列番号73からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び、配列番号83、84及び85、好ましくは配列番号83、より好ましくは配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号71、72及び73のいずれか、好ましくは配列番号71、より好ましくは配列番号73から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び、配列番号83、84及び85のいずれか、好ましくは配列番号83、より好ましくは配列番号85から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0187】
さらなる実施形態では、本発明のCD137−BDは、(a)配列番号71のVH配列及び配列番号83のVL配列;(b)配列番号72のVH配列及び配列番号84のVL配列;又は(c)配列番号73のVH配列及び配列番号85のVL配列を含む。好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号71のVH配列及びVL配列を含む。より好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号73のVH配列及び配列番号85のVL配列を含む。
【0188】
好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、(a)それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75、及び76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号71のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一であるVH配列、及び配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHはG51C変異(AHo番号付け)を含み、前記VLはT141C変異(AHo番号付け)を含む;(b)それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、配列番号72のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一であるVH配列、及び配列番号84のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;又は(c)それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75、及び76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号73のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%同一であるVH配列、及び配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHはG51C変異(AHo番号付け)を含み、前記VLはT141C変異(AHo番号付け)を含む、を含む。
【0189】
好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号71のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一のVH配列、及び配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一のVL配列を含み、好ましくは前記VHはG51C変異(AHo番号付け)を含み、及び前記VLはT141C変異(AHo番号付け)を含む。適切には、本発明の前記CD137−BDは、フレームワーク領域内で人工ドメイン間ジスルフィド架橋を形成するように変異され、特に、システインの対は、前記VH上のGly51(AHo番号付け)及び前記VL上のThr141(AHo番号付け)を置き換える。驚くべきことに、ドメイン間ジスルフィド架橋を含むこのようなCD137−BDは、熱安定性が大幅に向上していることがわかった。
【0190】
好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号71のVH配列、及び配列番号83のVLを含む。より好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号73のVH配列、及び配列番号85のVLを含む。
【0191】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは表1に記載されている。一実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号86、87及び88からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一である。一実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号86、配列番号87、又は配列番号88に記載される。好ましい態様において、本発明のCD137−BDは、配列番号86に記載される。より好ましい態様において、CD137−BD本発明のBDは、配列番号88に記載される。
【0192】
本発明の他のCD137−BDは、アミノ酸又はアミノ酸をコードする核酸が変異されているが、表1に記載されている配列と少なくとも60、70、80、90又は95パーセントの同一性を有するものを含む。実施形態では、それは、表1に記載された配列に示される可変領域と比較した場合、実質的に同じ治療活性を保持しながら、1、2、3、4又は5以下のアミノ酸が可変領域で変異している変異アミノ酸配列を含む。本明細書で使用される「実質的に同じ活性」という用語は、親CD137−BD、特に表1に記載されている本発明のCD137−BDについて決定した場合、実質的に同じ活性が少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも100%、又は少なくとも110%、又は少なくとも120%、又は少なくとも130%、又は少なくとも140%、又は少なくとも150%、又は少なくとも160%、又は少なくとも170%、又は少なくとも180%、又は少なくとも190%、例えば、最大200%の活性であることによって指示される活性を指す。
【0193】
これらの各結合ドメイン又は抗体はCD137に結合でき、抗原結合特異性は主にCDR1、2及び3領域によって提供されるため、VH CDR1、2及び3配列とVL CDR1、2及び3配列は、「混合して適合させる」ことができる(すなわち、各結合ドメイン又は各抗体は、本発明の他のCD137結合を作成するためにVH CDR1、2及び3とVL CDR1、2及び3を含んでいる必要があるが、異なる結合ドメイン又は抗体のCDRを混合して適合させることができる)。そのような「混合及び適合される」CD137−BDは、当技術分野で公知の結合アッセイ及び実施例に記載されているもの(例えばELISA)を使用して試験することができる。VH CDR配列が混合及び適合されると、特定のVH配列からのCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置き換える必要がある。同様に、VL CDR配列を混合して適合させる場合、特定のVL配列からのCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列は構造的に類似したCDR配列で置換される必要がある。新規のVH及びVL配列は、本発明のモノクローナル抗体又はの結合ドメインについて本明細書に示されるCDR配列からの構造的に類似した配列で1つ又は複数のVH及び/又はVL CDR領域配列を変異させることによって作され得ることは、当業者には容易に明らかである。
【0194】
さらに別の実施形態では、本発明は、表1に記載の配列と相同であるアミノ酸配列を含むCD137−BDを提供し、前記結合ドメインはCD137に結合し、表1に記載のこれらの結合ドメインの所望の機能特性を保持する。
【0195】
例えば、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むCD137−BDを提供し、ここで、重鎖可変領域は、配列番号14、15、16、17、47、71、72及び73、好ましくは配列番号17、より好ましくは配列番号71からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号27、28、29、30、57、83、84及び85、好ましくは配列番号30、より好ましくは配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含み;ここで、結合ドメインは、ヒトCD137タンパク質に特異的に結合する。
【0196】
一実施形態では、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、表1に記載される配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得る。一実施形態では、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、1、2、3、4又は5個以下のアミノ酸位置でのアミノ酸置換を除いて同一であり得る。
【0197】
一実施形態では、本発明のCD137−BDは、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで、これらのCDR配列の1つ又は複数が、本明細書に記載のCD137−BDに基づく特定のアミノ酸配列又はその保存的改変を有し、CD137−BDは本発明のCD137−BDの所望の機能特性を保持する。
【0198】
「保存的に改変された変異体」又は「保存的変異体」という用語は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体は、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、機能的に同一の多数の核酸が任意のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるすべての位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、核酸のあらゆる可能なサイレント変異を記述する。当業者は、核酸中の各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)が機能的に同一の分子を生じるように改変され得ることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションは、記載された各配列に内在している。
【0199】
ポリペプチド配列について、「保存的に改変された変異体」又は「保存的変異体」は、化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす、ポリペプチド配列への個々の置換、欠失又は付加を含む。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野でよく知られている。そのような保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間ホモログ、及び対立遺伝子に加えられ、それらを除外しない。次の8つのグループには、互いに保守的な置換であるアミノ酸が含まれる:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照)。一実施形態では、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響を与えたり変更したりしないアミノ酸修飾を指すために使用される。
【0200】
したがって、本発明は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、及びCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなるCD137−BDを提供し、ここで、重鎖可変領域CDR1は、好ましくは、配列番号1、4、5、8、11、35、38、41、44、59、62、65、及び68のいずれか、好ましくは配列番号1、より好ましくは配列番号59、又はその保存的変異体から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなり;重鎖可変領域CDR2は、配列番号2、6、9、12、36、39、42、45、60、63、66、及び69のいずれか、好ましくは配列番号2、より好ましくは配列番号60、又はその保存的変異体から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなり;重鎖可変領域CDR3は、配列番号3、7、10、13、37、40、43、46、61、64、67及び70のいずれか、好ましくは配列番号3、より好ましくは配列番号61、又はその保存的変異体から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなり;軽鎖可変領域CDR1は、配列番号18、21、24、48、51、54、74、77及び80のいずれか、好ましくは配列番号18、より好ましくは配列番号74、又はその保存的変異体から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなり;軽鎖可変領域CDR2は、配列番号19、22、25、49、52、55、75、78及び81のいずれか、好ましくは配列番号19、より好ましくは配列番号75、又はその保存的変異体から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなり;及び軽鎖可変領域CDR3は、配列番号20、23、26、50、53、56、76、79及び82のいずれか、好ましくは配列番号20、より好ましくは配列番号76、又はその保存的変異体から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる、を含み、ここで、前記CD137−BDは、追加の架橋の有無にかかわらずCD137シグナル伝達を活性化することができる。
【0201】
一実施形態では、哺乳動物細胞での発現に最適化された本発明のCD137−BD又はCD137−BDを含む多重特異性抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有し、ここで、これらの配列の1つ又は複数は、本明細書に記載のCD137−BDに基づく特定のアミノ酸配列を有する又はその保存的改変を有し、及びCD137−BD又は該CD137−BDを含む多重特異性抗体は、本発明のCD137−BDの所望の機能特性を保持する。したがって、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、哺乳動物細胞での発現に最適化された本発明のCD137−BD又は該CD137−BDを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、重鎖可変領域は、配列番号14、15、16、17、47、71、72及び73のいずれか、好ましくは配列番号17、より好ましくは配列番号71から選択される酸配列、及びそれらの保存的改変を含み;軽鎖可変領域は、配列番号27、28、29、30、57、83、84及び85のいずれか、好ましくは配列番号30、より好ましくは配列番号83から選択されるアミノ酸配列、及びその保守的改変を含み;ここで、前記CD137−BDは、追加の架橋の有無にかかわらずCD137シグナル伝達を活性化することができる。
【0202】
本明細書で使用される場合、「最適化された」という用語は、ヌクレオチド配列が、産生細胞又は生物、一般に真核細胞、例えばピキアの細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はヒト細胞において好ましいコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られている開始ヌクレオチド配列によって元々コードされていたアミノ酸配列を完全に又は可能な限り保持するように操作される。本明細書で最適化された配列は、哺乳動物細胞で好ましいコドンを有するように操作されている。しかしながら、他の真核細胞又は原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現もまた、本明細書において想定される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、最適化されたとも呼ばれる。
【0203】
別のタイプの可変領域修飾は、VH及び/又はVL CDR1、CDR2、及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それにより「親和性成熟」として知られる、目的の抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を向上させることである。部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発を行って突然変異を導入し、抗体結合又は他の目的の機能的特性への影響を、本明細書に記載され、実施例で提供されるin vitro又はin vivoアッセイで評価することができる。(前述のように)保守的な変更を導入できる。突然変異は、アミノ酸の置換、付加又は欠失であり得る。さらに、典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下の残基が変更される。
【0204】
「親和性成熟した」抗体又は結合ドメインは、変更がないその親ドメインの抗体又は結合ドメインと比較して、抗原に対する抗体又は結合ドメインの親和性の改善をもたらす、その1つ又は複数の可変ドメインに1つ又は複数の変更があるものである。一実施形態では、親和性成熟した抗体又は結合ドメインは、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性さえ有する。親和性成熟した抗体又はドメインは、当技術分野で知られている手順によって生成される。例えば、Marks et al, Bio/Technology 10:779-783 (1992)は、VH及びVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟について記述する。超可変領域(HVR)及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、例えば、Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Jackson et al, J. Immunol. 154(7):3310- 9 (1995); and Hawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)に記載される。
【0205】
一実施形態では、本発明の「親和性成熟した」CD137−BDは、I44V;F89V;Y105F変異を含むVH44(特に配列番号15によるアミノ酸配列を含む);及びA51P変異を含むVL(特に配列番号28によるアミノ酸配列を含む)を含む。
【0206】
別の実施形態では、本発明の「親和性成熟した」CD137−BDは、I44V;V82K;F89V;Y105F変異を含むVH4(特に配列番号16によるアミノ酸配列を含む);及びI2L;A51P変異を含むVL(特に配列番号29によるアミノ酸配列を含む)を含む。
【0207】
本発明のCD137−BDは、開始の結合ドメインから変更された特性を有し得る、改変された結合ドメインを操作するために、本明細書に示されるVH及び/又はVL配列の1つ以上を出発物質として有する抗体又はその結合ドメインを使用して調製することができる。結合ドメインは、可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)の一方又は両方の1つ以上の残基を、例えば1つ以上のCDR領域内及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内で修飾することによって操作することができる。
【0208】
実施することができる可変領域操作の1つのタイプは、CDRグラフティングである。抗体又はその結合ドメインは、主に、6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外部の配列よりも、個々の抗体又はその結合ドメイン間で多様である。
CDR配列はほとんどの抗体−抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列にグラフトさせた、特定の天然に存在する抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣した組換え抗体又は結合ドメインを発現させることができる(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522- 525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad., U.S.A. 86: 10029-10033; U.S. Pat. No. 5,225,539 to Winter, and U.S. Pat. Nos. 5,530,101; 5,585,089; 5,693,762 and 6,180,370 to Queen et al.を参照されたい)。
【0209】
このようなフレームワーク配列は、生殖DNA抗体遺伝子配列又は再構成された抗体配列を含み、公開DNAデータベース又は公開された参考文献から取得できる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットのwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)、ならびに、それぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれるKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. fol. Biol. 227:776-798; Cox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836に見出すことができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列と再構成された抗体配列は、「IMGT」データベース(インターネットのwww.imgt.orgで入手可能;それぞれの内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれるLefranc, M.P. et al., 1999 Nucleic Acids Res. 27:209-212を参照されたい)に見出すことができる。
【0210】
本発明のCD137−BDで使用するためのフレームワーク配列の例は、本発明の選択されたCD137−BDによって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似しているものである。VH CDR1、2及び3配列、及びVL CDR1、2及び3配列は、フレームワーク配列の派生元である生殖系列免疫グロブリン遺伝子に見られる配列と同じ配列を有するフレームワーク領域にグラフトされ得るか、又はCDR配列は、生殖系列配列と比較して、1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にグラフトされ得る。例えば、特定の例では、フレームワーク領域内の残基を変異させて、抗体又はその結合ドメインの抗原結合能力を維持又は増強することが有益であることが見出されている(例えば、Queenらの米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号、及び第6,180,370号を参照されたい)。
【0211】
適切には、本発明のCD137−BDは、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、及び限定されないが、アンキリンベースのドメイン、フィノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えば、f−starテクノロジー(F−starのModular Antibody TechnologyTM))などの代替の足場に基づく結合ドメインからなる群から選択される。
【0212】
適切には、本発明のCD137−BDはscFv抗体断片である。「単鎖Fv」又は「scFv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、sFvが標的結合に望ましい構造を形成することが可能になる。「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VFドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能である(例えば、Pluckthun, The pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315を参照されたい)。
【0213】
特定の実施形態では、前記CD137−BDは、配列番号206によるリンカーを含むscFvである。
【0214】
さらなる実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号58、好ましくは配列番号34に示されるような一本鎖可変断片(scFv)である。1つの実施形態において、本発明のCD137−BDは、配列番号32に示されるような一本鎖可変断片(scFv)である。別の実施形態において、CD137−BDは、本発明のCD137は、配列番号33に示されるような一本鎖可変断片(scFv)である。好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号34に示されるような一本鎖可変断片(scFv)である。さらに好ましい実施形態では、本発明のCD137−BDは、配列番号86、87又は88、好ましくは配列番号86、より好ましくは配列番号88に示される一本鎖可変断片(scFv)である。
【0215】
本発明の多重特異性抗体で使用するための他の適切なCD137結合ドメインは、以下からなる群から選択される抗体を含むか又はそれに由来する:(i)ウレルマブ(BMS−663513;完全ヒト化IgG4 mAb;Bristol−Myers Squibb;WO2004/010947、US6,887,673及びUS7,214,493に記載され、これらは、参照によりそれらの全体が本出願に組み込まれる);及び(ii)オトミルマブ(PF−05082566;完全ヒトIgG2 mAb;Phizer;WO2012/032433及びUS8,821,867に記載され、これは参照によりその全体が本出願に組み込まれる)。
【0216】
本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのPDL1結合ドメイン(PDL1−BD)を含む。
【0217】
「PDL1」という用語は、特に、本明細書で配列番号198として再現された、UniProt ID番号Q9NZQ7を有するヒトPDL1を指す。好適には、本発明のPDL1−BDは、本明細書に配列番号198として複製されているUniProt ID番号Q9NZQ7に示されているPDL1、特にヒトPDL1を標的とする。適切には、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、PDL1−BD標的ヒト及びカニクイザル(Macaca fascicularis)PDL1を含み、好ましくはMus musculus PDL1と交差反応しない。本発明のPDL1−BDは、ヒトPDL1タンパク質に特異的に結合する。
【0218】
本発明のPDL1−BDは、PDL1阻害剤である。「ブロッカー」又は「ブロッキング抗体」又は「阻害剤」又は「阻害抗体」又は「アンタゴニスト」又は「アンタゴニスト抗体」又は「ブロッキング結合ドメイン」又は「阻害結合ドメイン」という用語は、それが結合する抗原の生物活性を阻害又は低下させる抗体又はその結合ドメインを指す。いくつかの実施形態では、遮断抗体又は遮断結合ドメイン又は拮抗薬抗体又は拮抗薬結合ドメインは、抗原の生物活性を実質的又は完全に阻害する。本発明のPDL1−BDは、PDL1のその結合パートナーへの結合能力を標的とし、低下させ、阻害し、それによりPDL1機能を妨害する。特に、本発明のPDL1−BDは、PDL1とその受容体、特にPD−1との相互作用を遮断する。いくつかの実施形態では、本発明のPDL1−BDは、PDL1とその1つ又は複数の受容体、特にPD−1及び/又はB7−1との相互作用を遮断する。
【0219】
一部の実施形態では、PDL1−BDは、モノクローナル抗体又は抗体断片に由来する。
【0220】
本発明の多重特異性抗体での使用に適したPDL1−BDは、本開示で提供される新規結合ドメインである。本発明の新規PDL1結合ドメインは、限定されないが、実施例を含む、本明細書に記載されるように単離されたヒト化モノクローナル抗体を含む。そのようなPDL1−BDの例は、その配列が表2に列挙されている抗体又はその結合ドメインである。
【0221】
適切には、本発明のPDL1−BDはPDL1に特異的に結合し、以下のパラメーターの1つ又は複数によって特徴付けられる:
(i)特に表面プラズモン共鳴(SPR)で測定した場合、10nM未満、特に5nM未満、特に1nM未満、特に500pM未満、さらに特に100pM未満、好ましくは50pM未満、より好ましくは10pM未満、より好ましくは5pMの解離定数(KD)でヒトPDL1に結合し、ここで、前記抗体はscFv(一価親和性)である;
(ii)SPRで測定した場合、Koff速度が10
-3s
-1以下、又は10
-4s
-1以下、又は10
-5s
-1以下でヒトPDL1に結合し、ここで、前記抗体はscFvである;
(iii)SPRで測定した場合、Kon速度が少なくとも103M−1s−1以上、少なくとも104M−1s−1以上、少なくとも105M−1s−1以上、少なくとも106M−1s−1以上でヒトPDL1に結合し、特に、前記抗体がscFvである;
(iv)表面プラズモン共鳴(SPR)で測定した場合、10nM未満、5nM未満、特に1nM未満、特に500pM未満、さらに特に100pM未満、好ましくは10pM未満の解離定数(KD)でMacaca fascicularis(カニクイザル)PDL1に結合する;
(v)特にSPRで測定した場合、Mus musculus PDL1に対して非交差反応性である;及び/又は
(vi)特にSPRで測定した場合、ヒトPDL2に結合しない。
【0222】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、PDL1、例えばヒトPDL1に対して高い親和性を有する。適切な実施形態では、本発明のPDL1−BDは、特に表面プラズモン共鳴(SPR)で測定した場合、1〜50,000pM、1〜40,000pM、1〜30,000pM、1〜20,000pM、1〜10,000pM、1〜5,000pM、1〜2500pM、1〜1000pM、1〜750pM、1〜500pM、1〜250pM、1〜100pMのKDでヒトPDL1に結合する。適切な実施形態では、本発明のPDL1−BDは、特にSPRで測定した場合、約50nM未満、約45nM未満、約40nM未満、約35nM未満、約30nM未満、約25nM未満、20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、約6nM未満、約未満5nM、約4nM未満、約3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.25nM未満、100pM未満、10pM未満、又は5pM未満のKDでヒトPDL1に結合する。適切には、本発明のPDL1−BDは、1nM未満のKDでヒトPDL1に結合する。適切には、本発明のPDL1−BDは、特にSPRで測定した場合、0.5nM未満のKDでヒトPDL1に結合する。適切には、本発明のPDL1−BDは、特にSPRで測定した場合、100pM未満のKDでヒトPDL1に結合する。好ましくは、本発明のPDL1−BDは、特にSPRにより測定されるように、10pM未満のKDでヒトPDL1に結合する。より好ましくは、本発明のPDL1−BDは、特にSPRで測定した場合、5pM未満のKDでヒトPDL1に結合する。
【0223】
適切には、本発明のPDL1−BDは、表面プラズモン共鳴(SPR)で測定した場合、少なくとも10
3M
-1s
-1以上、少なくとも104M
-1s
-1以上、少なくとも5×104M
-1s
-1以上、少なくとも10
5M
-1s
-1以上、少なくとも5×10
5M
-1s
-1以上、少なくとも10
6M
-1s
-1以上、少なくとも5×106M
-1s
-1以上、少なくとも10
7M
-1s
-1以上、少なくとも5×10
7M
-1s
-1以上のKon速度でヒトPDL1に結合する。好ましくは、本発明のPDL1−BDは、SPRにより測定した場合、少なくとも10
5M
-1s
-1以上、特に少なくとも10
6M
-1s
-1以上のKon速度でヒトPDL1に結合する。特に、抗体はscFv(一価親和性)である。
【0224】
適切には、本発明のPDL1−BDは、表面プラズモン共鳴(SPR)で測定した場合、10
-3s
-1以下、3×10
-3s
-1以下、5×10
-3s
-1以下、10
-4s
-1以下、5×10
-4s
-1以下、10
-5s
-1以下、5×10
-5s
-1以下、10
-6s
-1以下、又は10
-7s
-1以下のKoff速度でヒトPDL1に結合する。好ましくは、本発明のPDL1−BDは、SPRによって測定した場合、10
-3s
-1以下、10
-4s
-1以下、特に10
-5s
-1以下のKoff速度でヒトPDL1に結合する。
【0225】
適切には、本発明のPDL1−BDは、PDL1に特異的に結合し、以下のパラメーターの1つ又は複数によって特徴付けられる:(i)scFv形式の場合、示差走査蛍光分析により決定すると、少なくとも55℃、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも65℃、より好ましくは少なくとも70℃の融解温度(Tm)を有する(特に、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4のリン酸−クエン酸緩衝液、150mM NaClで製剤化され、特に、前記抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4で150mM NaClを含む50mMリン酸クエン酸緩衝液に製剤化される);(ii)scFv形式の場合、5回の連続した凍結融解サイクル後に、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度である場合、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のモノマー含有量の損失がある(特に、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4で150mM NaClを含む50mMリン酸クエン酸塩緩衝液中に製剤化される);及び/又は(iii)scFv形式の場合、4℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間保存した後、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度である場合、15%未満、例えば12%未満、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満のモノマー含有量の損失がある(特に本発明の抗体、例えば前記抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4で150mM NaClを含む50mMリン酸クエン酸塩緩衝液に製剤化される)。
【0226】
適切には、本発明のPDL1−BDは、表2に列挙されたVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、本発明のPDL1−BDは、表2に列挙されているVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3、又はそれ以上のVH CDRを含む。
【0227】
適切には、本発明のPDL1−BDは、表2に列挙されたVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、本発明のPDL1−BDは、。表2に列挙されているVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3又はそれ以上のVL CDRを含む。
【0228】
本発明の他のPDL1−BDは、変異しているが、表2に記載の配列に記述されるCDR領域と、CDR領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。本発明の他のPDL1−BDは、表2に記載されている配列で示されるCDR領域と比較した場合、CDR領域において、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以下のアミノ酸が変異しているアミノ酸配列を含む。
【0229】
本発明は、(a)配列番号89、92、93、96、99、119、122、123、126及び129のいずれか1つ、好ましくは配列番号89又は119、より好ましくは配列番号89から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号90、94、97、100、120、124、127及び130のいずれか、好ましくは配列番号90又は120、より好ましくは配列番号90から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号91、95、98、101、121、125、128及び131のいずれか、好ましくは配列番号91又は121、より好ましくは配列番号91から選択されたアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号105、108、111、135、138及び141のいずれか、好ましくは配列番号105又は135、より好ましくは配列番号105から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号106、109、112、136、139及び142のいずれか、好ましくは配列番号106又は136、より好ましくは配列番号106から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR2;(f)配列番号107、110、113、137、140及び143、好ましくは配列番号107又は137、より好ましくは、配列番号107から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれらからなる軽鎖可変領域CDR3、を含むPDL1−BDを提供する。
【0230】
適切には、本発明の単離された抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号89、92、93、96、99、119、122、123、126、及び129のいずれか、好ましくは配列番号89又は119、より好ましくは配列番号89と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号90、94、97、100、120、124、127及び130のいずれか、好ましくは配列番号90又は120、より好ましくは配列番号90と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号91、95、98、101、121、125、128及び131のいずれか、好ましくは配列番号91又は121、より好ましくは配列番号91と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号105、108、111、135、138及び141のいずれか、好ましくは配列番号105又は135、より好ましくは配列番号105と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号106、109、112、136、139及び142のいずれか、好ましくは配列番号106又は136、より好ましくは配列番号106と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR2;ならびに(f)配列番号107、110、113、137、140及び143のいずれかに、好ましくは配列番号107又は137、より好ましくは配列番号107と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0231】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、以下を含む:(a)それぞれ配列番号89、90、及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(b)それぞれ配列番号92、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(c)それぞれ配列番号93、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(d)それぞれ配列番号96、97、及び98のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(e)それぞれ配列番号99、100、及び101のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号111、112、及び113のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(f)それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(g)それぞれ配列番号122、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(h)それぞれ配列番号123、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(i)それぞれ配列番号126、127、及び128のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(j)それぞれ配列番号129、130、及び131のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号141、142、及び143のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列。一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、それぞれ配列番号89、90、及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。別の実施形態では、本発明のPDL1−BDは、それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0232】
適切には、本発明のPDL1−BDは、(a)それぞれ配列番号89、90、及び91と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号105、106、及び107と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(b)それぞれ配列番号92、94、及び95と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号108、109、及び110と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(c)それぞれ配列番号93、94、及び95と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号108、109、及び110と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(d)それぞれ配列番号96、97、及び98と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号105、106、及び107と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(e)それぞれ配列番号99、100、及び101と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号111、112、及び113と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(f)それぞれ配列番号119、120、及び121と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号135、136、及び137と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(g)それぞれ配列番号122、124、及び125と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号138、139、及び140と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(h)それぞれ配列番号123、124、及び125と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号138、139、及び140と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(i)それぞれ配列番号126、127、及び128と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号135、136、及び137と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列;(j)それぞれ配列番号129、130、及び131と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号141、142、及び143と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列配列を含む。一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、それぞれ配列番号89、90、及び91と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列;及びそれぞれ配列番号105、106、及び107と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。別の実施形態では、本発明のPDL1−BDは、それぞれ配列番号119、120、及び121と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列;及びそれぞれ配列番号135、136、及び137と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0233】
好適には、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号89のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号90のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号91のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号105のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号106のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;(f)配列番号107のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。適切には、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号89と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号90と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号91と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号105と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号106と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号107と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。
【0234】
さらなる実施形態では、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号92又は配列番号93のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号94のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号95のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号108のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号109のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;(f)配列番号110のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。適切には、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号92又は配列番号93と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号94と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号95に対して少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号108と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号109と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号110と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。
【0235】
適切には、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号119のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号120のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号121のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号135のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号136のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号137のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。適切には、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号119と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号120と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号121と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号135と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号136と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号137と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。
【0236】
さらなる実施形態では、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号122又は配列番号123のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号124のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号125のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号138のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号139のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号140のアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む:適切には、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号123と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR1;(b)配列番号124と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR2;(c)配列番号125と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるHCDR3;(d)配列番号18と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR1;(e)配列番号19と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR2;及び(f)配列番号140と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなるLCDR3を含む。
【0237】
さらなる実施形態において、本発明は、PDL1(例えば、ヒトPDL1タンパク質)に特異的に結合するPDL1−BDを提供し、ここで、前記結合ドメインは、VHドメイン及びVLドメインを含む。
【0238】
適切には、本発明のPDL1−BDはVH1A、VH1B、VH3又はVH4を含む。一実施形態では、本発明のPDL1−BDはVH3ドメインを含む。一実施形態では、本発明のPDL1−BDはVH4ドメインを含む。別の実施形態では、本発明のPDL1−BDは、VH1A又はVH1Bドメインを含む。
【0239】
VH1ファミリーに属するVHの特定の例は、配列番号103に示されている。特に、配列番号103から取られたフレームワーク領域FR1〜FR4は、VH1ファミリーに属している(表1、太字で示されていない領域)。適切には、本明細書で使用される、VH1ファミリーに属するVHは、配列番号103のFR1〜FR4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1〜FR4を含むVHである。
【0240】
VH3ファミリーに属するVHの特定の例は、配列番号104に示されている。特に、配列番号104から取られたフレームワーク領域FR1〜FR4は、VH3ファミリーに属している(表2、太字で示されていない領域)。適切には、本明細書で使用される、VH3ファミリーに属するVHは、配列番号104のFR1〜FR4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1〜FR4を含むVHである。
【0241】
VH4ファミリーに属するVHの特定の例は、配列番号102に示されている。特に、配列番号102から取られたフレームワーク領域FR1からFR4は、VH4ファミリーに属している(表2、太字で示されていない領域)。好適には、本明細書で使用される、VH4ファミリーに属するVHは、配列番号102のFR1〜FR4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1〜FR4を含むVHである。
【0242】
適切には、本発明のPDL1−BDは、VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3フレームワーク、好ましくはVκ1フレームワークFR1〜3、及びVκFR4、特にVκ1FR4、Vκ3FR4、及びVλFR4から選択されるフレームワークFR4を含む。適切なVκ1フレームワークFR1〜3は、配列番号114に示されている(表2、FR領域は非太字で示されている)。適切なVκ1フレームワークFR1〜3は、FR1〜3に対応するアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有し、配列番号114から取られたアミノ酸配列を含む(表2、FR領域は非−大胆な)。適切なVλ FR4は、配列番号199〜配列番号205に示されるとおりである。一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、配列番号199から配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。
【0243】
したがって、一実施形態では、本発明のPDL1−BDは以下を含む:
(i)以下のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列:
a.それぞれ配列番号92、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
b.それぞれ配列番号122、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列:又は
c.それぞれ配列番号123、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメイン、好ましくはVH4ドメイン;ならびに
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、具体的にはVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及びVκFR4、具体的にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択されるフレームワークFR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、より好ましくはVλ FR4は配列番号199に記載される、を含むVLドメイン。
【0244】
別の実施形態では、本発明のPDL1−BDは以下を含む:
(i)それぞれ配列番号93、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH1A、VH1B、VH3又はVH4ドメイン、好ましくはVH1A又はVH1Bドメイン;ならびに
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、具体的にはVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及びVκFR4、具体的にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択されるフレームワークFR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくはVλ FR4は配列番号199〜配列番号205に記載され、より好ましくはVλ FR4は配列番号199に記載される、を含むVLドメイン。
【0245】
特定の実施形態では、本発明のPDL1−BDは以下を含む:
(i)それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメイン、好ましくはVH4ドメイン;ならびに
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、具体的にはVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及びVκFR4、具体的にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択されるフレームワークFR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくはVλ FR4は配列番号199〜配列番号205に記載され、より好ましくはVλ FR4は配列番号199に記載される、を含むVLドメイン。
【0246】
好ましい実施形態では、本発明のPDL1−BDは以下を含む:
(i)それぞれ配列番号89、90、及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;好ましくは、VH3ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;ならびに
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、具体的にはVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及びVκFR4、具体的にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択されるフレームワークFR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくはVλ FR4は配列番号199〜配列番号205に記載され、より好ましくはVλ FR4は配列番号199に記載される、を含むVLドメイン。
【0247】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、以下を含むVLを含む:
(i)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;
(ii)ヒトVκフレームワーク領域FR1〜FR3、特にヒトVκ1フレームワーク領域FR1〜FR3;
(iii)(a)FR4のヒトVλ生殖系列配列、特に配列番号199〜205の列挙から選択されたVλ生殖系列配列から選択されるFR4、好ましくはVλFR4は配列番号199に示されるとおりである;及び(b)配列番号199〜配列番号205、好ましくは配列番号199のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むFR4の最も近いヒトVλ生殖系列配列と比較して、1つ又は2つの変異、特に1つの変異を有するVλベースの配列。
【0248】
本発明のPDL1−BDは、表2に列挙されたVHドメインを含む。適切には、本発明のPDL1−BDは、表2に列挙されたVHアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)内の約10以下のアミノ酸が変異している(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。適切には、本発明のPDL1−BDは、表2に列挙されたVHアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20以下のアミノ酸が変異している(ここで、突然変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。本発明の他のPDL1−BDは、変異されているが、VH領域において、表2で説明されている配列に示されているVH領域と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。
【0249】
本発明のPDL1−BDは、表2に記載されているVLドメインを含む。適切には、本発明のPDL1−BDは、表2に記載されているVLアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)内の約10以下のアミノ酸が変異している(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。適切には、本発明のPDL1−BDは、表2に列挙されているVLアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20以下のアミノ酸が変異している(ここで、突然変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。本発明の他のPDL1−BDは、変異しているが、VL領域において、表2に記載されている配列に描かれているVL領域と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。
【0250】
適切には、本発明のPDL1−BDは、配列番号102、103、104、132、133及び134、好ましくは配列番号102又は104、より好ましくは配列番号104からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号114、115、144及び145、好ましくは配列番号114又は115、より好ましくは配列番号115からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0251】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、配列番号102、103、104、132、133及び134、好ましくは配列番号102又は104、より好ましくは配列番号104のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号114、115、144及び145、好ましくは配列番号114又は115、より好ましくは配列番号115のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0252】
さらなる実施形態では、本発明のPDL1−BDは、(a)配列番号102のVH配列及び配列番号114のVL配列;(b)配列番号103のVH配列及び配列番号114のVL配列;(c)配列番号104のVH配列及び配列番号115のVL配列;(d)配列番号132のVH配列及び配列番号144のVL配列;(e)配列番号133のVH配列及び配列番号145のVL配列;又は(f)配列番号134のVH配列及び配列番号144のVL配列を含む。好ましい実施形態では、本発明のPDL1−BDは、配列番号102のVH配列及び配列番号114のVL配列を含む。より好ましい実施形態では、本発明のPDL1−BDは、配列番号104のVH配列及び配列番号115のVL配列を含む。
【0253】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、以下の含む:
(a)それぞれ配列番号92、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号102と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号114と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL;
(b)それぞれ配列番号93、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号103と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号114と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;
(c)それぞれ配列番号92、93及び94のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号108、109及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号104と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号115と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHはG56A及びY105F変異(AHo番号付け)を含み、前記VLはS9A及びA51P変異(AHo番号付け)を含む;
(d)それぞれ配列番号122、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号132と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号144と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;
(e)それぞれ配列番号123、124、125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号133と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号145と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHはV2S、V25A、I44V、G56A、V82K、F89V及びY105F変異(AHo番号付け)を含み、前記VLは、I2F、M4L及びA51P変異(AHo番号付け)を含む;又は
(f)それぞれ配列番号122、124及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号134と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号144と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHは、V25A、I44V、G56A、V82K及びF89V変異(AHo番号付け)を含む、を含む。
【0254】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは以下を含む:
(a)それぞれ配列番号89、90、91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号102と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号114と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;
(b)それぞれ配列番号89、90、91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号103と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号114と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;
(c)それぞれ配列番号89、90、91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号105、106、107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号104と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号115と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、VHはG56A及びY105F変異(AHo番号付け)を含み、VLはS9A及びA51P変異(AHo番号付け);
(d)それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号132と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号144と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列;
(e)それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号133と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、配列番号145と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、ここで、前記VHは、V2S、V25A、I44V、G56A、V82K、F89V及びY105F変異(AHo番号付け)を含み、前記VLは、I2F、M4L及びA51P変異(AHo番号付け)を含む;又は
(f)それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号134と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、配列番号144と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは、前記VHは、V25A、I44V、G56A、V82K及びF89V変異(AHo番号付け)を含む。
【0255】
好ましい態様において、本発明のPDL1−BDは、それぞれ配列番号89、90、及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、それぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号104と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセント同一であるVH配列、及び配列番号115と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列を含み、好ましくは、前記VHはG56A及びY105F変異(AHo番号付け)を含み、前記VLはS9A及びA51P変異(AHo番号付け)を含む。
【0256】
一実施形態では、PDL1に特異的に結合するPDL1−BDは、表2に記載される結合ドメインである。一実施形態では、PDL1に特異的に結合する本発明のPDL1−BDは、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号146、配列番号147、又は配列番号148に示されるとおりである。一実施形態において、PDL1に特異的に結合する本発明のPDL1−BDは、配列番号116又は配列番号117、又は配列番号118、好ましくは配列番号116、より好ましくは配列番号118に記載されている。一実施形態では、PDL1に特異的に結合する本発明のPDL1−BDは、配列番号146又は配列番号147又は配列番号148、好ましくは配列番号146、より好ましくは配列番号148に示されるとおりである。
【0257】
本発明の他のPDL1−BDには、アミノ酸又はアミノ酸をコードする核酸が変異しているが、表2に記載されている配列と少なくとも60、70、80、90又は95パーセントの同一性を有するものが含まれる。一実施形態では、実質的に同じ活性を保持しながら、表2に記載された配列に示されている可変領域と比較した場合、1、2、3、4又は5以下のアミノ酸が可変領域で変異している変異アミノ酸配列を含む。本明細書で使用される「実質的に同じ活性」という用語は、実質的に同じ活性が、親PDL1−BD、特に表2に記載されている本発明のPDL1−BDについて決定された場合の活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又はさらには少なくとも100%、又は少なくとも110%、又は少なくとも120%、又は少なくとも130%、又は少なくとも140%、又は少なくとも150%、又は少なくとも160%、又は少なくとも170%、又は少なくとも180%、又は少なくとも190%、例えば、最大200%であることによって示される活性を指す。
【0258】
これらの各結合ドメインはPDL1に結合することができ、抗原結合特異性は主にCDR1、2及び3領域によって提供されるため、VH CDR1、2及び3配列とVL CDR1、2及び3配列は「混合及び適合」され得る。そのような「混合及び適合される」PDL1−BDは、当技術分野で公知の結合アッセイ及び実施例に記載されているもの(例えばELISA)を使用して試験することができる。VH CDR配列を混合して適合させる場合、特定のVH配列からのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3配列を、構造的に類似したCDR配列で置き換える必要がある。同様に、VL CDR配列を混合して適合させる場合、特定のVL配列のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3配列を、構造的に類似したCDR配列で置き換える必要がある。
【0259】
さらに別の実施形態では、本発明のPDL1−BDは、表2に記載されている配列と相同なアミノ酸配列を含み、前記BDはPDL1に結合し、表2に記載されている抗体の所望の機能特性を保持する。
【0260】
例えば、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むPDL1−BDを提供し、ここで、重鎖可変領域は、配列番号102、103、104、132、133及び134、好ましくは配列番号102又は104、より好ましくは配列番号104からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含み;
軽鎖可変領域は、配列番号114、115、144及び145、好ましくは配列番号114又は115、より好ましくは配列番号115からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。
【0261】
一実施形態では、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、表2に記載される配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であり得る。一実施形態では、VH及び/又はVLアミノ酸配列は、1、2、3、4又は5個以下のアミノ酸位置でのアミノ酸置換を除いて同一であり得る。
【0262】
一実施形態では、本発明は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含むPDL1−BDを提供し、これらのCDR配列の1つ又は複数が特定されている本明細書に記載されるPDL1−BD又はその保存的改変に基づくアミノ酸配列、及びPDL1−BDは本発明のPDL1−BDの所望の機能特性を保持する。
【0263】
したがって、本発明は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含むPDL1−BDを提供し、ここで、重鎖可変領域CDR1は、配列番号89、92、93、96、99、119、122、123、126及び129、好ましくは配列番号89又は119、より好ましくは配列番号89のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はその保存的変異体を含み;重鎖可変領域CDR2は、配列番号90、94、97、100、120、124、127及び130、好ましくは配列番号90又は120、より好ましくは配列番号90のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はその保守的変異体を含み;重鎖可変領域CDR3は、配列番号91、95、98、101、121、125、128及び131、好ましくは配列番号91又は121、より好ましくは配列番号91のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はその保守的変異体を含み;軽鎖可変領域CDR1は、配列番号105、108、111、135、138、及び141、好ましくは配列番号105又は135、より好ましくは配列番号105のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はその保守的変異体を含み;軽鎖可変領域CDR2は、配列番号106、109、112、136、139及び142、好ましくは配列番号106又は136、より好ましくは配列番号106のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はその保存的変異体を含み;軽鎖可変領域CDR3は、配列番号107、110、113、137、140、及び143、好ましくは配列番号107又は137、より好ましくは配列番号107のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はその保守的変異体を含み;ここで、PDL1−BDは、PDL1に特異的に結合し、PD−1/PDL1相互作用をブロックすることができる。
【0264】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、哺乳動物細胞における発現に最適化されており、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有し、これらの配列の1つ又は複数は、本明細書に記載される結合ドメインに基づいて特定のアミノ酸配列又はその保存的変異体を有し、結合ドメインは、本発明のPDL1−BDの所望の機能特性を保持する。したがって、本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む哺乳動物細胞での発現に最適化されたPDL1−BDを提供し、ここで、重鎖可変領域は、配列番号102、103、104、132、133及び134、好ましくは配列番号102又は104、より好ましくは配列番号104のいずれかから選択されるアミノ酸配列、及びその保存的変異体を含み;軽鎖可変領域は、配列番号114、115、144及び145、好ましくは配列番号114又は115、より好ましくは配列番号115のいずれかから選択されるアミノ酸配列、及びその保存的変異体を含み;ここで、PDL1−BDはPDL1に特異的に結合し、PD−1/PDL1相互作用をブロックすることができる。
【0265】
一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、G56A及びY105F変異を含むVH3、特に配列番号104に記載のアミノ酸配列を含むVH3を含む;好ましくはS9Aを含むVL;A51P変異、特に配列番号115に記載のアミノ酸配列を含む。
【0266】
1つの実施形態において、本発明の「親和性成熟した」PDL1−BDは、V25A;I44V;G56A;V82K;F89V変異を含むVH4を含み、特に配列番号134のアミノ酸配列を含む;好ましくは配列番号144のアミノ酸配列を含むVLを含む。さらなる実施形態では、本発明の「親和性成熟した」PDL1−BDは、V2S;V25A;I44V;G56A;V82K;F89V;Y105F変異を含むVH4、特に配列番号133のアミノ酸配列を含み;及びI2F;M4L;A51P変異を含むVL、特に配列番号145のアミノ酸配列を含む。
【0267】
本発明のPDL1−BDはさらに、本明細書に示されるVH及び/又はVL配列の1つ又は複数を有する抗体又は結合ドメインを出発材料として使用して調製することができ、修飾結合ドメインは、開始抗体又は結合ドメインから変更された特徴を有し得る。結合ドメインは、可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)の一方又は両方の1つ以上の残基を、例えば1つ以上のCDR領域内及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内で修飾することによって操作することができる。
【0268】
好適には、本発明のPDL1−BDは、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、ならびに、限定されないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位からなる群から選択される(例えば、f−スター技術(F−starのModular Antibody TechnologyTM))。
【0269】
適切には、本発明のPDL1−BDはscFv抗体断片である。特定の実施形態では、前記PDL1−BDは、配列番号206によるリンカーを含むscFvである。
【0270】
さらなる実施形態では、本発明のPDL1−BDは、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号146、配列番号147及び配列番号148に示される単鎖可変断片(scFv)である。1つの実施形態において、本発明のPDL1−BDは、配列番号116又は配列番号117又は配列番号118に示されるようなscFvであり、好ましくは配列番号116又は118、より好ましくは配列番号118である。一実施形態では、本発明のPDL1−BDは、配列番号146又は配列番号147又は配列番号148、好ましくは配列番号147又は148、より好ましくは配列番号148に示されるようなscFvである。
【0271】
他の適切なPDL1−BDは、(i)アベルマブ(MSB0010718C;ヒトIgG1抗PDL1モノクローナル抗体;Merck−Serono;全体として本願に組み込まれるWO2013/079174に記載);(ii)アテゾリズマブ(MPDL3280A、RG7446;ヒトIgG抗PDL1モノクローナル抗体;Hoffmann−La Roche);(iii)MDX−1105(BMS−936559;ヒトIgG4抗PDL1モノクローナル抗体;Bristol−Myers Squibb;全体として本願に組み込まれるWO2007/005874に記載);(iv)デュルバルマブ(MEDI4736;ヒト化IgG1抗PDL1モノクローナル抗体;AstraZeneca;全体として本願に組み込まれるWO2011/066389及びUS2013/034559に記載);(v)KN035(抗PDL1モノクローナル抗体;3D医薬品);(vi)LY3300054(抗PDL1モノクローナル抗体;Eli Lilly);及び(vii)YW243.55.S70(全体として本願に組み込まれるWO2010/077634及び米国特許第8,217,149号に記載)からなる群から選択される抗体を含むか、又はそれに由来する。
【0272】
本発明者らはさらに驚くべきことに、CD137−BDとPDL1−BDの親和性又は結合力の間の特定の比率で、最大活性の濃度ウィンドウが拡張され、これが治療用途に有益であると予測され、本発明の多重特異性抗体又はそれを含む医薬組成物の投与におけるより高い柔軟性を可能にすることを見出した。したがって、一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD及び少なくとも1つのPDL1−BDを含み、前記PDL1−BDの親和性に対する前記CD137−BDの親和性は、特にSPRで測定した場合、少なくとも5.0、好ましくは少なくとも10、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、より好ましくは少なくとも500、例えば少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000倍弱い。言い換えれば、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD及び少なくとも1つのPDL1−BDを含み、前記CD137−BDは、特にSPRで測定した場合、前記PDL1−BDのヒトPDL1への結合の解離定数(KD)と比較して、少なくとも5.0、好ましくは少なくとも5.0、好ましくは少なくとも10、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、より好ましくは少なくとも500、例えば少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000倍高い解離定数(KD)でヒトCD137に結合する。したがって、適切には、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD及び少なくとも1つのPDL1−BDを含み、前記CD137−BDは、特にSPRで測定した場合、前記PDL1−BDのヒトPDL1への結合の解離定数(KD)に対して、5〜1,000倍、例えば、10〜1,000倍、好ましくは50〜1,000倍、より好ましくは100〜1,000倍、200〜1,000倍、300〜1,000倍、400〜1,000倍、500〜1,000倍、600〜1,000倍、700〜1,000倍、800〜1,000倍、900〜1,000倍の解離定数(KD)でヒトCD137に結合する。さらなる実施形態では、前記CD137−BDは、特にSPRで測定した場合、10nM〜10pM、好ましくは10nM〜0.1nM、例えば、5nM〜0.1nM、より好ましくは5nM〜1nMの解離定数(KD)でヒトCD137に結合し、特にここで、前記PDL1−BDは、1nM〜1pM、好ましくは0.5nM〜1pM、より好ましくは100pM〜1pMの解離定数(KD)でヒトPDL1に結合する。別の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD及び少なくとも1つのPDL1−BDを含み、ここで、前記CD137−BDは、前記PDL1−BDの結合力と比較して、少なくとも5.0、好ましくは少なくとも10、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、より好ましくは少なくとも500、例えば、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000倍弱い(低い)の結合力を有する。
【0273】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD及び少なくとも1つのPDL1−BDを含み、ここで、前記CD137−BDの親和性に対する前記PDL1−BDの親和性は、特にSPRで測定した場合、少なくとも5.0、好ましくは少なくとも10、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、より好ましくは少なくとも500、例えば少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000倍強い。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD及び少なくとも1つのPDL1−BDを含み、ここで、前記PDL1−BDは、特にSPRで測定した場合、前記CD137−BDのヒトCD137への結合の解離定数(KD)と比較して少なくとも5.0、好ましくは少なくとも5.0、好ましくは少なくとも10、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、より好ましくは少なくとも500、例えば少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000倍低い解離定数(KD)でヒトPDL1に結合する。別の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD及び少なくとも1つのPDL1−BDを含み、前記PDL1−BDは、特にSPRで測定した場合、CD137−BDの結合力と比較して、少なくとも5.0、好ましくは少なくとも10、例えば、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、より好ましくは少なくとも500、例えば少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000倍強い(高い)結合力を有する。
【0274】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号31又は34、好ましくは配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含み;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号116又は118、より好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む、を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号31又は34、好ましくは配列番号34のアミノ酸配列を含み;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号116からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含む、を含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号31又は34、好ましくは配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含むscFvであり;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号116又は118、より好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含むscFvである、を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号31又は34、好ましくは配列番号34のアミノ酸配列を含むscFvであり;(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号116又は118、より好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含むscFvである、を含む。
【0275】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む、を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号32のアミノ酸配列を含む;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含む、を含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含むFvであり;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含むFvである、を含む。さらなる態様において、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号32のアミノ酸配列を含むFvであり;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含むFvである、を含む。
【0276】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含み;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号33のアミノ酸配列を含み;(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むFvであり、及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148からなる列挙、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含むFvである。さらなる態様において、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号33のアミノ酸配列を含むFvであり;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含むFvである。
【0277】
好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、配列番号86又は配列番号87又は配列番号88、好ましくは配列番号86、より好ましくは配列番号88のアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む;及び(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、CD137−BDは、配列番号86又は配列番号87又は配列番号88、好ましくは配列番号86、より好ましくは配列番号88のアミノ酸配列を含む;(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは、配列番号116、117、118、146、147、及び148からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号118からなる列挙から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0278】
好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、以下を含む:
(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号17のVH配列、及び配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号30のVL配列;及び
(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは以下を含む:(a)それぞれ配列番号89、90、91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号102のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号102のVH配列、及び配列番号114のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号114のVL配列;又は
(b)それぞれ配列番号89、90、91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号104のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号104のVH配列、及び配列番号115のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号115のVL配列;又は
(c)それぞれ配列番号119、120、121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号133のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号133のVH配列、及び配列番号145のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号145のVL配列;又は
(d)それぞれ配列番号119、120、121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号134のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号134のVH配列、及び配列番号144のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号144のVL配列。
【0279】
より好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は以下を含む:
(i)少なくとも1つのCD137−BD、ここで、前記CD137−BDは、それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列、配列番号71のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは、配列番号71のVH配列、及び配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号83のVL配列を含む;及び
(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、ここで、前記PDL1−BDは以下を含む:
(a)それぞれ配列番号89、90、及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号102のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号102のVH配列、及び配列番号114のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号114のVLのVL配列;又は
(b)それぞれ配列番号89、90、及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号104のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号104のVH配列、及び配列番号115のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号115のVH配列;又は
(c)それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号133のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号133のVH配列、及び配列番号145のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号145のVH配列;又は
(d)それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号134のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVH配列、好ましくは配列番号134のVH配列、及び配列番号144のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント同一であるVL配列、好ましくは配列番号144のVH配列。
【0280】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、2つの異なる特異性(PDL1及びCD137)を有する。適切には、本発明の多重特異性抗体は二重特異性抗体である。本発明の多重特異性抗体は、さらなる特異性(三重特異性)又は特異性(四重特異性、五重特異性又は六重特異性抗体)を含み得る。一実施形態では、多重特異性抗体は三重特異性である。
【0281】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、免疫グロブリンFc領域ポリペプチドを含む。本明細書における用語「Fc領域」は、天然配列Fc領域及び変異Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。適切な天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、JGG2B)、IgG3及びIgG4が含まれる。「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcyRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、対立遺伝子変異体及びこれらの受容体の選択的スプライス形態を含み、FcγRII受容体は、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有するFcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含む(M. Daeron, Annu. Rev. Immunol. 5:203-234 (1997)を参照されたい)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991); Capet et al, Immunomethods 4: 25-34 (1994); de Haas et al, J. Lab. Clin. Med. 126: 330-41 (1995)に概説される。将来特定されるものを含む他のFcRは、本明細書では「FcR」という用語に含まれる。「Fc受容体」又は「FcR」という用語はまた、母体のIgGの胎児への移行に関与する新生児受容体、FcRnを含む。Guyer et al., J. Immunol. 117: 587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24: 249 (1994)。FcRnへの結合を測定する方法は知られている(例えば、Ghetie and Ward, Immunol. Today 18: (12): 592-8 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology 15 (7): 637-40 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. TJI (8): 6213-6 (2004); WO2004/92219 (Hinton et al)を参照されたい)。in vivoでのFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清の半減期は、例えば、トランスジェニックマウス又はヒトFcRnを発現するトランスフェクトヒト細胞株において、又は変異Fc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類においてアッセイすることができる。WO2004/42072(Presta)は、FcRへの結合を改善又は減少させた抗体変異体を記載する。また、例えば、Shields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照されたい。
【0282】
別の実施形態では、本発明の抗体は、免疫グロブリンFc領域ポリペプチドを含まない。
【0283】
同じ又はより低い分子量で特異性/機能性の数を増やすために、Fv、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片などの抗体断片及び他の抗体断片を含む抗体を使用することが有利である。これらのより小さい分子は、抗体全体の抗原結合活性を保持し、免疫グロブリン分子全体と比較して、改善された組織浸透及び薬物動態特性も示すことができる。そのような断片は、免疫グロブリン全体よりも多くの利点を示すようであるが、in vivoで長い半減期を与えるFcドメインがないため、血清からのクリアランス率が高くなる(Medasan et al., 1997, J. Immunol. 158:2211-2217)。低分子量の分子は、標的組織(固形癌など)により効率的に浸透するため、同じ又はより低い用量で効果が向上する可能性がある。
【0284】
本発明者らは、驚くべきことに、(a)少なくとも1つのCD137−BD、及び(b)少なくとも1つのPDL1−BDを含む本発明の多重特異性抗体へのヒト血清アルブミン結合ドメイン(HSA−BD)の追加が以下の有益な効果を有することを見出した:
(i)少なくとも1つのヒト血清アルブミンドメインを含む本発明の多重特異性抗体の血清半減期は、IgGのそれと同等である;
(ii)本発明の多重特異性抗体へのヒト血清アルブミン結合ドメインの追加は、他の結合ドメインの機能と互換性がある、例えば、PDL1−BDはそのブロッキング活性を保持し、CD137−BDは、クラスタリング時にCD137シグナル伝達を活性化するその能力を保持する;
(iii)ヒト血清アルブミン結合ドメインは、CD137を活性化するために本発明の多重特異性抗体のEC50を増加させるとしても、予期せぬことに最大効果サイズを改善する、例えば、CD137シグナル伝達の最大活性化は著しく高くなる。
【0285】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、ヒト血清アルブミンに対して特異性を有するさらなる結合ドメインを含み得る。一実施形態では、多重特異性抗体は、(i)少なくとも1つのCD137−BD;(ii)少なくとも1つのPDL1−BD;及び(iii)少なくとも1つのHSA−BDを含む。適切には、本発明の多重特異性抗体は、(i)1つのCD137−BD;(ii)少なくとも1つのPDL1−BD、好ましくは1つのPDL1−BD又は2つのPDL1−BD、より好ましくは1つのPDL1−BD;及び(iii)少なくとも1つのHSA−BD、好ましくは1つのHSA−BDを含む。
【0286】
「HSA」という用語は、特にUniProt ID番号P02768のヒト血清アルブミンを指す。ヒト血清アルブミン(HSA)は、585アミノ酸からなるヒト血清中の66.4kDaの豊富なタンパク質(総タンパク質の50%)である(Sugio, Protein Eng, Vol. 12, 1999, 439-446)。多機能HSAタンパク質は、脂肪酸、金属イオン、ビリルビン、及び一部の薬物などの多くの代謝産物と結合して輸送することを可能にする構造に関連付けられている(Fanali, Molecular Aspects of Medicine, Vol. 33, 2012, 209-290)。血清中のHSA濃度は約3.5〜5g/dLである。アルブミン結合抗体及びその断片は、例えば、それに結合した薬物又はタンパク質のインビボ血清半減期を延長するために使用され得る。
【0287】
いくつかの実施形態では、HSA−BDは、モノクローナル抗体又は抗体断片に由来する。
【0288】
本発明の多重特異性抗体での使用に適したHSA−BDは、本開示で提供される結合ドメインである。本発明のHSA−BDは、その配列が表3に列挙されているヒト化モノクローナル抗体を含むが、これらに限定されない。
【0289】
本発明のHSA−BDは、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する。本発明のHSA−BDは、表3に列挙されたVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、本発明は、表3に列挙されるVH CDRのいずれかの配列を有する1、2、3、又はそれ以上のVH CDRを含むHSA−BDを提供する。
【0290】
本発明はまた、表3に列挙されるVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含むHSA−BDを提供する。特に、本発明は、表3に列挙されるVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3又はそれ以上のVL CDRを含むHSA−BDを提供する。
【0291】
本発明の他のHSA−BDは、変異されているが、なおも表3に記載されるCDR領域と、CDR領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。本発明の他のHSA−BDは、表3に記載されている配列で示されるCDR領域と比較した場合、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以下のアミノ酸がCDR領域で変異している変異アミノ酸配列を含む。
【0292】
本発明のHSA−BDは、(a)配列番号149、152、155、158、173、176、179及び182のいずれか1つ、好ましくは配列番号149又は173、より好ましくは配列番号149から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号150、153、156、159、174、177、180及び183のいずれか、好ましくは配列番号150又は174、より好ましくは配列番号150から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号151、154、157、160、175、178、181及び184のいずれか、好ましくは配列番号151又は175、より好ましくは配列番号151から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号162、165、168、186、189、及び192のいずれか、好ましくは配列番号162又は186、より好ましくは配列番号162から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号163、166、169、187、190、及び193のいずれか、好ましくは配列番号163又は187、より好ましくは配列番号163から選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR2;及び(f)配列番号164、167、170、188、191及び194のいずれか、好ましくは配列番号164又は188、より好ましくは配列番号164のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR3を含む。適切には、本発明のHSA−BDは、(a)配列番号149、152、155、158、173、176、179及び182のいずれか、好ましくは配列番号149又は173、より好ましくは配列番号149と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR1;(b)配列番号150、153、156、159、174、177、180及び183のいずれか、好ましくは配列番号150又は174、より好ましくは配列番号150と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR2;(c)配列番号151、154、157、160、175、178、181及び184のいずれか、好ましくは配列番号151又は175、より好ましくは配列番号151と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる重鎖可変領域CDR3;(d)配列番号162、165、168、186、189、及び192のいずれか、好ましくは配列番号162又は186、より好ましくは配列番号162と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有する選択されたアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR1;(e)配列番号163、166、169、187、190、及び193のいずれか、好ましくは配列番号163又は187、より好ましくは配列番号163と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR2;及び(f)配列番号164、167、170、188、191及び194のいずれか、好ましくは配列番号164又は188、より好ましくは配列番号164と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはそれからなる軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0293】
一実施形態では、本発明のHSA−BDは、(a)それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;(b)それぞれ配列番号152、153、及び154のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号165、166、及び167のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は(c)それぞれ配列番号173、174、及び175のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号186、187、及び188のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は(d)それぞれ配列番号176、177、及び178のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号189、190、及び191のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。好ましい実施形態では、本発明のHSA−BDは、それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。適切には、本発明のHSA−BDは、(a)それぞれ配列番号149、150、及び151と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は(b)それぞれ配列番号152、153、及び154と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号165、166、及び167と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、又は(c)それぞれ配列番号173、174、及び175と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号186、187、及び188と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、又は(c)それぞれ配列番号176、177、及び178と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号189、190、及び191と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。好ましい実施形態では、本発明のHSA−BDは、(a)それぞれ配列番号149、150、及び151と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0294】
さらなる実施形態において、本発明は、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するHSA−BDを提供し、ここで、前記結合ドメインは、VHドメイン及びVLドメインを含む。
【0295】
適切には、本発明のHSA−BDは、VH3又はVH4を含む。一実施形態では、本発明のHSA−BDは、VH3ドメインフレームワーク配列を含む。VH3ファミリーに属するVHの特定の例は、配列番号161の下に表される。特に、配列番号161から取られたフレームワーク領域FR1〜FR4は、VH3ファミリーに属する(表3、太字で示されていない領域)。適切には、本明細書で使用される、VH3ファミリーに属するVHは、配列番号161のFR1〜FR4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1〜FR4を含むVHである。VH3配列の別の例、及びVH4配列の例は、Knappik et al., J. Mol. Biol. 296 (2000) 57-86に見出すことができる。適切には、本発明のHSA−BDは、VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、特にVκ1又はVκ3フレームワーク、好ましくはVκ1フレームワークFR1〜3、及びフレームワークFR4を含み、これは、VκFR4、特にVκ1FR4、Vκ3FR4、及びVλFR4から選択される。適切なVκ1フレームワークFR1〜3は、配列番号171に示される(表3、FR領域は非太字でマークされる)。Vκ1配列の別の例、及びVκ2、Vκ3、又はVκ4配列の例は、Knappik et al., J. Mol. Biol. 296 (2000) 57-86に見出すことができる。適切なVκ1フレームワークFR1〜3は、FR1〜3に対応するアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有し、配列番号171から取られたアミノ酸配列を含む(表3、FR領域は太字でなく示される)。適切なVλ FR4は、配列番号199〜配列番号205に示されるとおりである。一実施形態では、本発明のHSA−BDは、配列番号199から配列番号205のいずれかから、好ましくは配列番号199から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセンの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。
【0296】
したがって、一実施形態では、本発明のHSA−BDは、
(i)以下のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列:
(a)それぞれ配列番号152、153、及び154のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号165、166、及び167のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は
(b)それぞれ配列番号176、177、及び178のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号189、190、及び191のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;好ましくはVH3ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、具体的にはVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及びVκFR4、具体的にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択されるフレームワークFR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列に記載されるVλ FR4、より好ましくは配列番号199のアミノ酸配列に記載されるVλ FR4を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む。
【0297】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のHSA−BDは、
(i)それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;好ましくはVH3ドメインフレームワーク配列FR1〜FR4;及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2及びFR3、具体的にはVκ1又はVκ3 FR1〜FR3、好ましくはVκ1 FR1〜FR3、及びVκFR4、具体的にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択されるフレームワークFR4、好ましくは配列番号199〜配列番号205のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、より好ましくは配列番号199のアミノ酸配列を含むVλ FR4を含むVLフレームワークを含むVLドメイン
を含む。
【0298】
一実施形態では、本発明のHSA−BDは、
(i)CDRドメインCDR1、CDR2及びCDR3;
(ii)ヒトVκフレームワーク領域FR1〜FR3、具体的にはヒトVκ1フレームワーク領域FR1〜FR3;
FR4であって、(a)FR4のヒトVλ生殖系列配列、特に配列番号199〜205、好ましくは配列番号199の列挙から選択されるVλ生殖系列配列;及び(b)配列番号199〜配列番号199のいずれか、好ましくは配列番号199から選択される挙げられる配列を含むFR4の最も近いヒトVλ生殖系列配列と比較して、1つ又は2つの変異、特に1つの変異を有するVλベースの配列から選択されるFR4
を含むVLを含む。
【0299】
本発明のHSA−BDは、表3に列挙されたVHドメインを含む。適切には、本発明のHSA−BDは、表3に列挙されたVHアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)内の約10以下のアミノ酸が変異している(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。適切には、本発明のHSA−BDは、表3に列挙されているVHアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20以下のアミノ酸が変異している(ここで、突然変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。本発明の他のHSA−BDは、変異しているが、表3で説明されている配列に示されているVH領域と、VH領域において、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。
【0300】
本発明のHSA−BDは、表3に列挙されたVLドメインを含む。適切には、本発明のHSA−BDは、表3に列挙されたVLアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約10以下のアミノ酸が変異している(ここで、突然変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。適切には、本発明のHSA−BDは、表3に列挙されているVLアミノ酸配列を含み、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20以下のアミノ酸が変異している(ここで、突然変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換又は欠失である)。本発明の他のHSA−BDは、変異しているが、表3に記載されている配列に記載されるVL領域と、VL領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。
【0301】
適切には、本発明のHSA−BDは、配列番号161及び185、好ましくは配列番号161からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;配列番号171及び195、好ましくは配列番号761からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0302】
一実施形態では、本発明のHSA−BDは、配列番号161及び185のいずれか、好ましくは配列番号161から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び配列番号171及び195のいずれか、好ましくは配列番号161から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0303】
さらなる実施形態では、本発明のHSA−BDは、(a)配列番号161のVH配列及び配列番号171のVL配列;又は(b)配列番号185のVH配列及び配列番号195のVL配列を含む。好ましい実施形態では、本発明のHSA−BDは、配列番号161のVH配列及び配列番号171のVL配列を含む。
【0304】
実施形態では、本発明のHSA−BDは、
(a)それぞれ配列番号152、153、及び154のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号165、166、及び167のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号161と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するVH配列は、及び配列番号171と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%のとの同一性を有するVL配列;又は
(b)それぞれ配列番号176、177、及び178のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列と、それぞれ配列番号189、190、及び191のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号185と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するVH配列、及び配列番号195と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するVL配列
を含む。
【0305】
一実施形態では、本発明のHSA−BDは、
(a)それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号161と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するVH配列、及び配列番号171と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するVL配列;又は
(b)それぞれ配列番号173、174、及び175のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号186、187、及び188のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、配列番号185と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するVH配列、及び配列番号195と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するVL配列
を含む。
【0306】
適切には、本発明のHSA−BDは、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、及び限定されないが、アンキリンベースのドメイン、フィノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えば、f−starテクノロジー(F−starのModular Antibody TechnologyTM))などの代替の足場に基づく結合ドメインからなる群から選択される。
【0307】
適切には、本発明のHSA−BDはscFv抗体断片である。一実施形態では、本発明のHSA−BDは、配列番号172又は配列番号196、好ましくは配列番号172に示されるとおりである。
【0308】
本発明の多重特異性抗体での使用に適した他のHSA−BDは、(i)血清アルブミンに結合するポリペプチド(例えば、Smith et al., 2001, Bioconjugate Chem. 12:750-756; EP0486525; US6267964; WO 2004/001064; WO 2002/076489; 及びWO 2001/45746);(ii)Holt et al., Protein Engineering, Design & Selection, vol 21, 5, pp283-288, WO 2004/003019, WO 2008/096158, WO 2005/118642, WO 2006/0591056及びWO 2011/006915に記載されている抗血清アルブミン結合単一可変ドメイン;(iii)WO 2009/040562, WO 2010/035012及びWO 2011/086091に記載されている抗血清アルブミン抗体からなる群から選択される抗体を含むか又はそれに由来する。
【0309】
本発明の多重特異性抗体は、任意の適切な形式であり得る。
【0310】
適切には、多重特異性抗体の結合ドメインは作動可能に連結されている。本発明の多重特異性抗体の結合ドメインは、それらのそれぞれの抗原又は受容体に同時に結合することができる。
【0311】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD、少なくとも1つのPDL1−BDを含み、ここで:(i)前記CD137−BD及び前記PDL1−BDは、両方とも互いに作動可能に連結される。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD、少なくとも1つのPDL1−BD、少なくとも1つのHSA−BDを含み、(i)前記CD137−BD及び前記PDL1−BDは両方とも作動可能に上記のHSA−BDに連結されている;又は(ii)前記CD137−BD及び前記HSA−BDの両方は、前記PDL1−BDに作動可能に連結されている;又は(iii)前記PDL1−BD及び前記HSA−BDは両方とも、前記CD137−BDに作動可能に連結されている。好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、少なくとも1つのCD137−BD、少なくとも1つのPDL1−BD、少なくとも1つのHSA−BDを含み、前記CD137−BD及び前記HSA−BDは両方とも前記PDL1−BDに作動可能に連結される。
【0312】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、2つの分子(例えば、ポリペプチド、ドメイン、結合ドメイン)が、それぞれが機能的活性を保持するように付着していることを示す。2つの分子は、それらが直接又は間接的に(例えば、リンカーを介して、部分を介して、リンカーを介して部分に)付着するかどうかにかかわらず、「作動可能に連結」され得る。「リンカー」という用語は、本発明の結合ドメイン又は抗体断片の間に任意に配置されるペプチド又は他の部分を指す。分子を共有結合させるために、いくつかの戦略を使用できる。これらには、限定されないが、タンパク質又はタンパク質ドメインのN末端とC末端の間のポリペプチド結合、ジスルフィド結合を介した結合、及び化学架橋試薬を介した結合が含まれる。この実施形態の一態様では、リンカーは、組換え技術又はペプチド合成によって生成されるペプチド結合である。2つのポリペプチド鎖が接続される特定のケースに適したリンカーの選択は、2つのポリペプチド鎖の性質(例えば、それらが自然にオリゴマー化するかどうか)、N−と既知の場合は接続されるC末端、及び/又はタンパク質分解と酸化に対するリンカーの安定性に依存する。さらに、リンカーは、柔軟性を提供するアミノ酸残基を含み得る。
【0313】
本発明との関連で、「ポリペプチドリンカー」という用語は、それぞれがリンカーの一端に付着している2つのドメインを接続しているペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の鎖からなるリンカーを指す。ポリペプチドリンカーは、それらが所望の活性を保持するように互いに対して正しいコンフォメーションをとるように、2つの分子を連結するのに十分な長さを有するべきである。特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、2〜30アミノ酸残基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30アミノ酸残基)の連続鎖を有する。さらに、ポリペプチドリンカーに含めるために選択されたアミノ酸残基は、ポリペプチドの活性を著しく妨害しない特性を示すべきである。したがって、全体としてのリンカーペプチドは、ポリペプチドの活性と一致しない、内部フォールディングを妨げる、又は1つ以上のモノマーのアミノ酸残基との結合又は他の相互作用を形成する電荷を示すべきではない。受容体単量体ドメインの結合を妨げる。特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは非構造化ポリペプチドである。有用なリンカーには、グリシン−セリン又はGSリンカーが含まれる。「Gly−Ser」又は「GS」リンカーとは、グリシンとセリンが連続したポリマー(例えば、(Gly−Ser)n、(GSGGS)n(GGGGS)n及び(GGGS)n(nは、少なくとも1つの整数である))、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、シェーカーカリウムチャネルのテザーなどのその他の柔軟なリンカー、及びその他の様々な柔軟なリンカーを意味し、これらは当業者に承認される。これらのアミノ酸はどちらも比較的構造化されておらず、したがって成分間の中性テザーとして機能できるため、グリシン−セリンポリマーが好ましい。第二に、セリンは親水性であるため、球状グリシン鎖である可能性があるものを可溶化することができる。第三に、同様の鎖が、一本鎖抗体などの組換えタンパク質のサブユニットを結合するのに効果的であることが示されている。
【0314】
適切には、多重特異性抗体は、任意の適切な多重特異性から選択される形式であり、例えば、当該技術分野で公知である二重特異性の形式、例えば、非限定的な例として、以下に基づく形式が挙げられ、一本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(タンダブ)、線形二量体scDb(LD−scDb)、環状二量体scDb(CD−scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE;タンデムdi−scFv)、タンデムtri−scFv、トリボディ(Fab−(scFv)2)又はバイボディ(Fab−(scFv)1)、Fab、Fab−Fv2、モリソン(IgG CH3−scFv融合(モリソンL)又はIgG CL−scFv融合(モリソンH))、トリアボディ、scDb−scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体、テトラボディ、scFv−Fc−scFv融合、scFv−HSA−scFv融合、ジダイアボディ、DVD−Ig、COVD、IgG−scFab、scFab−dsscFv、Fv2−Fc、IgG−scFv融合、例えばbsAb(軽鎖のC末端に連結されたscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されたscFv)、Ts1Ab(両方の重鎖及び軽鎖のN末端に連結されたscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されたされたdsscFv)、ヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、例えば、Knob−into−Hole抗体(KiH)(KiHテクノロジーによって調製された二重特異性IgG);Fv、scFv、scDb、タンデムdi−scFv、タンデムtri−scFv、Fab−(scFv)2、Fab−(scFv)1、Fab、Fab−Fv2、N−及び/又はC−に融合したCOVDヘテロ二量体Fcドメイン又はその他のヘテロ二量体化ドメインのいずれかの鎖の末端、MATCH(WO 2016/0202457; Egan T., et al., mAbs 9 (2017) 68-84に記載される)及びDuoBodies(Duobodyテクノロジーによって徴された二重特異性IgG)(MAbs. 2017 Feb/Mar;9(2):182-212. doi: 10.1080/19420862.2016.1268307)が含まれる。本明細書での使用に特に適しているのは、単鎖ダイアボディ(scDb)又はscDb−scFvである。
【0315】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、scDb(ダイアボディ)、scDb−scFv、トリアボディ、及びトリボディからなる列挙から選択される形式である。本明細書での使用に特に適しているのは、一本鎖ダイアボディ(scDb)、特に二重特異性単量体scDbである。また、本明細書での使用に特に適するのは、scDb−scFv、特に前記CD137−BD及び前記PDL1−BDがscDbの形態であり、前記HSA−BDが前記scDbに作動可能に連結されたscFvである。
【0316】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、その断片は、同じポリペプチド鎖(VH−VL)においてVLに接続されたVHを含む。同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを許可するには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインとペアになり、2つの抗原結合部位が作成される。ダイアボディは二価又は二重特異性である可能性がある。ダイアボディは、例えば、EP404097, WO 93/01161, Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003), 及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。トリアボディとテトラボディはまた、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0317】
二重特異性scDb、特に二重特異性単量体scDbは、特に、リンカーL1、L2及びL3の順に連結された2つの可変重鎖ドメイン(VH)又はその断片及び2つの可変軽鎖ドメイン(VL)又はその断片を含み、VHA−L1−VLB−L2−VHB−L3−VLA、VHA−L1−VHB−L2−VLB−L3−VLA、VLA−L1−VLB−L2−VHB−L3−VHA、VLA−L1−VHB−L2−VLB−L3−VHA、VHB−L1−VLA−L2−VHA−L3−VLB、VHB−L1−VHA−L2−VLA−L3−VLB、VLB−L1−VLA−L2−VHA−L3−VHB又はVLB−L1−VHA−L2−VLA−L3−VHBであり、ここで、VLA及びVHAドメインは共同で第1抗原の抗原結合部位を形成し、VLB及びVHBは共同で第2抗原の抗原結合部位を形成する。
【0318】
リンカーL1は、特に2〜10アミノ酸、より具体的には3〜7アミノ酸、最も具体的には5アミノ酸のペプチドであり、リンカーL3は特に1〜10アミノ酸、より具体的には2〜7アミノ酸、最も具体的には5アミノ酸のペプチドである。特定の実施形態では、リンカーL1及び/又はL3は、4つのグリシンアミノ酸残基及び1つのセリンアミノ酸残基(GGGGS)nの1つ又は2つのユニットを含み、n=1又は2、好ましくはn=1である。より特定の実施形態では、リンカーL1及び/又はL3は、配列番号207又は配列番号2018、好ましくは配列番号207に示されるとおりである。
【0319】
中間リンカーL2は、特に10〜40アミノ酸、より具体的には15〜30アミノ酸、最も具体的には20〜25アミノ酸のペプチドである。特定の実施形態では、前記リンカーL2は、4つのグリシンアミノ酸残基及び1つのセリンアミノ酸残基(GGGGS)nの1つ以上のユニットを含み、ここで、n=1、2、3、4、5、6、7又は8、好ましくはn=4である。より特定の実施形態では、リンカーL2は、配列番号206に示されるとおりである。
【0320】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体はscDbである。特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号209、210、211、212、213、214、及び215のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDbである。1つの実施形態において、本発明の多重特異性抗体は、配列番号209、210、211、212、213、214、及び215のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むscDbである。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号209、210、211、212、213、214、及び215のいずれかから選択されるアミノ酸配列からなるscDbである。
【0321】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、scDb−scFvである。「scDb−scFv」という用語は、一本鎖Fv(scFv)断片が柔軟なGly−Serリンカーによって一本鎖ダイアボディ(scDb)に融合される抗体形式を指す。一実施形態では、前記柔軟なGly−Serリンカーは、2〜40アミノ酸、例えば、2〜35、2〜30、2〜25、2〜20、2〜15、2〜10アミノ酸、特に10アミノ酸のペプチドである。特定の実施形態では、前記リンカーは、4つ(4)のグリシンアミノ酸残基及び1つ(1)のセリンアミノ酸残基(GGGGS)nの1つ又は複数のユニットを含み、ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、又は8、好ましくはn=2である。より特定の実施形態では、前記リンカーは、配列番号208に示されるとおりである。
【0322】
特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230及び231のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvである。適切には、本発明の多重特異性抗体は、配列番号222のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvである。本発明の多重特異性抗体は、配列番号223又は224と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvである。
【0323】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、配列番号216と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで、(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号4、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びのLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号122、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号152、153、及び154のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号165、166、及び167のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0324】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、配列番号217と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号38、39、及び40のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号51、52、及び53のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号122、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号152、153、及び154のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号165、166、及び167のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0325】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、配列番号218と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで、(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号4、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号122、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号176、177、及び178のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号189、190、及び191のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0326】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、配列番号219と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98の同一性パーセントを有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号38、39、及び40のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号51、52、及び53のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号122、124、及び125のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号138、139、及び140のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号176、177、及び178のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号189、190、及び191のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0327】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、配列番号220と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで、(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号4、6及び7のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号92、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号152、153、及び154のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号165、166、及び167のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0328】
適切には、本発明の多重特異性抗体は、配列番号221と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで、(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号4、6、及び7のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号21、22、及び23のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号92、94、及び95のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号108、109、及び110のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号176、177、及び178のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号189、190、及び191のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0329】
好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号222又は配列番号223又は配列番号224、好ましくは配列番号222、より好ましくは配列番号223と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、(a)BD前記多重特異性抗体のCD137−は、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号89、90、及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0330】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号225又は配列番号226又は配列番号227又は配列番号228、好ましくは配列番号225又は配列番号228、より好ましくは配列番号225と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで、(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号18、19、及び20のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0331】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、及び228、好ましくは配列番号222又は223、より好ましくは配列番号223のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むscDb−scFvである。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、及び228、好ましくは配列番号222又は223、より好ましくは配列番号223のいずれかから選択されるアミノ酸配列からなるscDb−scFvである。
【0332】
さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号229又は配列番号230又は配列番号231、好ましくは配列番号229又は配列番号231、より好ましくは配列番号229と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで、(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号59、60及び61のHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75及び76のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号119、120、及び121のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号135、136、及び137のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0333】
好ましい態様において、本発明の多重特異性抗体は、配列番号229又は配列番号230又は配列番号231、好ましくは配列番号229又は配列番号231、より好ましくは配列番号229と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvである。特定の実施形態であh、本発明の多重特異性抗体は、配列番号229又は配列番号230又は配列番号231、好ましくは配列番号229又は配列番号231、より好ましくは配列番号229と少なくとも60、70、80、好ましくは少なくとも90、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むscDb−scFvであり、ここで(a)前記多重特異性抗体のCD137−BDは、それぞれ配列番号59、60、61のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号74、75、76のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(b)前記多重特異性抗体のPDL1−BDは、それぞれ配列番号89、90及び91のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及びそれぞれ配列番号105、106、及び107のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(c)前記多重特異性抗体のHSA−BDは、それぞれ配列番号149、150、及び151のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び配列番号162、163、及び164のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0334】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230及び231のいずれか、好ましくは配列番号222又は223、より好ましくは配列番号223から選択されるアミノ酸配列を含むscDb−scFvである。さらなる態様において、本発明の多重特異性抗体は、配列番号216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230及び231のいずれか、好ましくは配列番号222又は223、より好ましくは配列番号223から選択されるアミノ酸配列からなるscDb−scFvである。より好ましくは好ましい実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号229、230及び231のいずれか、好ましくは配列番号229又は231、より好ましくは配列番号229から選択されるアミノ酸配列を含むscDb−scFvである。より特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、配列番号229、230及び231のいずれか、好ましくは配列番号229又は231、より好ましくは配列番号229から選択されるアミノ酸配列からなるscDb−scFvである。
【0335】
本発明の一実施形態では、本発明の多重特異性抗体はモリソン−L形式である。
【0336】
特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号232のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソンL軽鎖、及び(ii)配列番号233のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソンL重鎖を含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号232のアミノ酸を含むモリソンL軽鎖、及び(ii)配列番号233のアミノ酸配列を含むモリソンL重鎖を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号232のアミノ酸を含むモリソンL軽鎖、及び(ii)配列番号233のアミノ酸配列を含むモリソンL重鎖からなる。
【0337】
別の実施形態において、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号236のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソン−L軽鎖、及び(ii)配列番号237のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソンL重鎖を含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号236のアミノ酸を含むモリソンL軽鎖、及び(ii)配列番号237のアミノ酸配列を含むモリソンL重鎖を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号236のアミノ酸を含むモリソンL軽鎖、及び(ii)配列番号237のアミノ酸配列を含むモリソンL重鎖からなる。
【0338】
本発明の一実施形態では、本発明の多重特異性抗体はモリソンH形式である。
【0339】
特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号234のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソンH軽鎖、及び(ii)配列番号235のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソンH重鎖を含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号234のアミノ酸を含むモリソンH軽鎖、及び(ii)配列番号235のアミノ酸配列を含むモリソンH重鎖を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号234のアミノ酸を含むモリソンL軽鎖、及び(ii)配列番号235のアミノ酸配列を含むモリソンL重鎖からなる。
【0340】
別の実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号238のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソンH軽鎖、及び(ii)配列番号239のいずれかと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むモリソンH重鎖を含む。一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号238のアミノ酸を含むモリソンH軽鎖、及び(ii)配列番号239のアミノ酸配列を含むモリソンH重鎖を含む。さらなる実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、(i)配列番号238のアミノ酸を含むモリソンL軽鎖、及び(ii)配列番号239のアミノ酸配列を含むMorrison−L重鎖からなる。
【0341】
本発明の一実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、WO 2016/0202457;Egan T., et al., mAbs 9 (2017) 68-84に記載されているMATCH形式である。
【0342】
本発明の多重特異性抗体は、当技術分野で公知の任意の好都合な抗体製造方法を使用して作製することができる(例えば、二重特異性構築物の作製に関して、Fischer, N. & Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14;二重特異性ダイアボディ及びタンデムscFvに関してHornig, N. & Farber-Schwarz, A., Methods Mol. Biol. 907 (2012)713-727及び99/57150を参照されたい)。本発明の二重特異性構築物の調製のための適切な方法の特定の例は、とりわけ、
Genmab技術(Labrijn et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110 (2013) 5145-5150参照)及びMerus(de Kruif et al., Biotechnol. Bioeng. 106 (2010) 741-750)技術を含む。機能的抗体Fc部分を含む二重特異性抗体の製造方法も当技術分野で知られている(例えば、Zhu et al., Cancer Lett. 86 (1994) 127-134、及びSuresh et al., Methods Enzymol. 121 (1986) 210-228参照)。
【0343】
これらの方法は、典型的には、例えば、骨髄腫細胞を、ハイブリドーマ技術を使用して所望の抗原で免疫化されたマウスからの脾臓細胞と融合する手段(例えば、Yokoyama et al., Curr. Protoc. Immunol. Chapter 2, Unit 2.5, 2006)によって、又は組換え抗体工学(レパートリークローニング又はファージディスプレイ/酵母ディスプレイ)(例えば、Chames & Baty, FEMS Microbiol. Letters 189 (2000) 1-8)によってモノクローナル抗体の生成を伴い、2つ以上の異なるモノクローナル抗体の抗原結合ドメイン又はその断片又は部分の組み合わせにより、既知の分子クローニング技術を使用して二重特異性又は多重特異性構築物を与える。
【0344】
本発明の多重特異性分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、構成要素結合特異性を結合させることによって調製することができる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は、別々に生成され、次いで互いに結合され得る。結合特異性がタンパク質又はペプチドである場合、共有結合のために様々なカップリング剤又は架橋剤を使用することができる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−5−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロハキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al., 1984 J. Exp. Med. 160: 1686; Liu, M A et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照されたい)。他の方法には、Paulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83)、及びGlennie et al., 1987 J. Immunol. 139: 2367-2375に記載されるものがふくまれる。結合剤は、SATA及びスルホ−SMCCであり、どちらもPierce Chemical Co.(Rockford、111)から入手可能である。
【0345】
結合特異性が抗体である場合、それらは2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によって結合することができる。特定の実施形態において、ヒンジ領域は、結合の前に、奇数の、例えば1つのスルフヒドリル残基を含むように改変される。
【0346】
あるいは、2つ以上の結合特異性を同じベクターにコード化し、同じ宿主細胞で発現させて組み立てることができる。この方法は、二重特異性分子がmAb X mAb、mAb X Fab、Fab X F(ab’)2又はリガンドX Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本発明の多重特異性抗体は、1つの単鎖抗体及び結合決定基を含む単鎖分子、又は2つの結合決定基を含む単鎖多重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの単鎖分子を含み得る。多重特異性抗体及び分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;及び米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0347】
多重特異性抗体のそれらの特異的標的への結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)、又はウエスタンブロットアッセイによって確認することができる。これらのアッセイのそれぞれは、一般的に、対象の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を使用することにより、特定の対象のタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。
【0348】
さらなる態様では、本発明は、本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメインをコードする核酸を提供する。そのような核酸配列は、哺乳動物細胞における発現のために最適化され得る。
【0349】
「核酸」という用語は、本明細書では「ポリヌクレオチド」という用語と互換的に使用され、一本鎖又は二本鎖形態の1つ又は複数のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを指す。この用語には、既知のヌクレオチド類似体又は修飾されたバックボーン残基又は結合を含む核酸が含まれ、これらは、合成、自然発生、及び非自然発生であり、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様に代謝される。そのような類似体の例には、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホレート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が含まれる。特に明記しない限り、特定の核酸配列は、保存的に改変されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列、ならびに明示的に示された配列も暗黙的に包含する。具体的には、以下に詳述するように、1つ以上の選択された(又はすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991; Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608, 1985; Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98, 1994)で置換された配列を生成することにより、縮退コドン置換を達成することができる。
【0350】
本発明は、上記の多重特異性抗体のセグメント又はドメインを含むポリペプチドをコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。適切な発現ベクターから発現される場合、これらの核酸分子によってコードされるポリペプチドは、本発明の多重特異性抗体の抗原結合能力又は能力を示すことができる。
【0351】
また、本発明において提供されるのは、表1〜3に示される本発明の多重特異性抗体の結合ドメインの少なくとも1つのCDR領域及び通常は3つすべてのCDR領域をコードするポリヌクレオチドである。コードの縮重のため、様々な核酸配列が免疫グロブリンのアミノ酸配列のそれぞれをコードする。
【0352】
ポリヌクレオチド配列は、本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメインをコードする既存の配列(例えば、以下の実施例に記載の配列)の新規の固相DNA合成又はPCR突然変異誘発によって生成することができる。核酸の直接化学合成は、Narang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68: 109, 1979のホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett., 22: 1859, 1981のジエチルホスホロアミダイト法;及び米国特許第4,458,066号の固体支持法などの当技術分野で公知の方法によって達成することができる。PCRによるポリヌクレオチド配列への変異の導入は、例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H. A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, N.Y., 1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, Calif, 1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991; Eckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載されるように行うことができる。
【0353】
本発明ではまた、本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメインを産生するための発現ベクター及び宿主細胞も提供される。
【0354】
「ベクター」という用語は、それが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチド分子を指すことが意図される。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントが連結され得る環状の二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。
【0355】
さらに、特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形である。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、交換可能に使用され得る。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの発現ベクターの他の形態を含むことを意図している。この特定の文脈において、「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、それは転写調節配列と転写配列との機能的関係を指す。例えば、プロモーター又はエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞又は他の発現系においてコード配列の転写を刺激又は調節する場合、コード配列に機能的に連結されている。一般に、転写された配列に作動可能に連結されたプロモーター転写調節配列は、転写された配列に物理的に隣接している、すなわち、それらはシス作用性である。しかし、エンハンサーなどの一部の転写調節配列は、物理的に隣接している必要はなく、転写が増強するコード配列に近接している必要もない。
【0356】
様々な発現ベクターを使用して、多重特異性抗体鎖又は結合断片をコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルスベース及び非ウイルス発現ベクターの両方を使用して、哺乳動物宿主細胞において抗体を産生することができる。非ウイルスベクター及びシステムには、プラスミド、エピソームベクター、典型的にはタンパク質又はRNAを発現するための発現カセット、及びヒト人工染色体が含まれる(例えば、Harrington et al., Nat Genet. 15:345, 1997を参照されたい)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞におけるCD137結合ポリヌクレオチド及びポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベクターには、pThioHis A、B及びC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、B及びC(Invitrogen,San Diego,Calif.)、MPS Vベクター、及び他のタンパク質を発現するための当該技術分野で既知の多数の他のベクターが含まれる。有用なウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40、パピローマウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクター及びセムリキフォレストウイルス(SFV)に基づくベクターが含まれる。Brent et al.(前掲); Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995; and Rosenfeld et al., Cell 68: 143, 1992を参照されたい。
【0357】
発現ベクターの選択は、ベクターが発現される予定の宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、多重特異性抗体鎖又は断片をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター及び他の調節配列(例えば、エンハンサー)を含む。一実施形態では、誘導性プロモーターを使用して、誘導条件下を除いて、挿入された配列の発現を防止する。誘導性プロモーターには、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター又は熱ショックプロモーターが含まれる。形質転換された生物の培養は、その発現産物が宿主細胞によりよく許容されるその配列をコードするための集団を偏らせることなく非誘導条件下で拡大することができる。プロモーターに加えて、多重特異性抗体鎖又は断片の効率的な発現のために、他の調節要素も必要又は望ましい場合がある。これらの要素には、通常、ATG開始コドンと隣接するリボソーム結合部位又は他の配列が含まれる。さらに、使用中の細胞系に適切なエンハンサーを含めることにより、発現効率を高めることができる(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20: 125, 1994; Bittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987を参照されたい)。例えば、SV40エンハンサー又はCMVエンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させることができる。
【0358】
発現ベクターはまた、本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメイン配列を挿入することによってコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成するための分泌シグナル配列位置を提供し得る。より頻繁には、挿入された本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメイン配列は、ベクターに含まれる前にシグナル配列に連結される。多重特異性抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインの結合ドメインをコードする配列を受け取るために使用されるベクターは、時々、定常領域又はその一部をコードする。このようなベクターは、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の発現を可能にし、それにより、無傷の抗体及びその抗原結合断片の産生をもたらす。通常、このような定常領域はヒトのものである。
【0359】
「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指す。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されていることを理解されたい。突然変異又は環境の影響により後継世代で特定の変更が発生する可能性があるため、そのような子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲に含まれる。
【0360】
本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメインを保持及び発現するための宿主細胞は、原核生物又は真核生物のいずれかであり得る。大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び発現に有用な1つの原核生物宿主である。使用に適した他の微生物宿主には、枯草菌などの桿菌、及びサルモネラ、セラチア、及び様々なシュードモナス種などの他の腸内細菌科が含まれる。これらの原核生物宿主では、典型的には宿主細胞と適合性のある発現制御配列(例えば複製起点)を含む発現ベクターを作製することもできる。さらに、ラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、ベータ−ラクタマーゼプロモーターシステム、又はファージラムダのプロモーターシステムなど、様々なよく知られたプロモーターがいくつも存在する。プロモーターは、典型的には、任意でオペレーター配列を用いて発現を制御し、転写及び翻訳を開始及び完了するためのリボソーム結合部位配列などを有する。酵母などの他の微生物もまた、本発明のCD137結合ポリペプチドを発現させるために使用することができる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用できる。
【0361】
1つの実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメインを発現及び産生するために使用される。例えば、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株、又は外因性発現ベクターを保有する哺乳動物細胞株のいずれかであり得る。これらには、正常な致死的又は正常な又は異常な不死の動物又はヒト細胞が含まれる。例えば、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換B細胞及びハイブリドーマを含む、無傷の免疫グロブリンを分泌できる多くの適切な宿主細胞株が開発されている。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養の使用は、例えば、Winnacker, FROM GENES TO CLONES, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987で一般的に検討されている。哺乳動物宿主細胞用の発現ベクターは、複製起源、プロモーター、及びエンハンサーなどの発現制御配列(例えば、Queen, et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986を参照)、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要な処理情報部位、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。これらの発現ベクターは通常、哺乳類の遺伝子又は哺乳類のウイルスに由来するプロモーターを含んでいる。適切なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、段階特異的、及び/又は調節可能又は調節可能であり得る。有用なプロモーターには、限定されないが、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPS Vプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(例えば、ヒト前初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーター、及び当技術分野で公知のプロモーター−エンハンサーの組み合わせが含まれる。
【0362】
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主のタイプに応じて異なる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核細胞に一般的に利用されているが、リン酸カルシウム処理又はエレクトロポレーションは他の細胞宿主に使用することができる(一般的には上記のSambrookらを参照されたい)。他の方法には、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介形質転換、注射及びマイクロインジェクション、弾道法、ウイロソーム、免疫リポソーム、ポリ核酸核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22への融合(Elliot and O'Hare, Cell 88:223, 1997)、DNAの薬剤強化取り込み、及びex vivo形質導入が含まれる。組換えタンパク質を長期間、高収量で生産するには、安定した発現がしばしば望まれる。例えば、本発明の多重特異性抗体又はその断片又はその結合ドメインを安定に発現する細胞株は、ウイルス複製起点又は内因性発現エレメント及び選択可能なマーカー遺伝子を含む本発明の発現ベクターを使用して調製できる。ベクターの導入後、細胞を選択培地に切り替える前に、細胞を濃縮培地で1〜2日間成長させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在は、選択培地で導入された配列を首尾よく発現する細胞の増殖を可能にする。耐性があり、安定してトランスフェクトされた細胞は、細胞タイプに適した組織培養技術を使用して増殖させることができる。したがって、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合断片を産生する方法を提供し、前記方法は、本発明の抗体又は抗原結合断片をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養するステップを含む。それにより、本開示の前記抗体又はその断片が発現される。
【0363】
一態様では、本発明は、本発明の多重特異性抗体又はその結合ドメイン又はその断片を産生する方法に関し、この方法は、本発明の多重特異性抗体又はその結合ドメイン又はその断片をコードする核酸を発現する宿主細胞を培養するステップを含む。
【0364】
さらなる態様では、本発明は、本発明の多重特異性抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される担体は、組成物を増強又は安定化するか、又は組成物の調製を容易にする。薬学的に許容される担体には、生理学的に適合性のある溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。
【0365】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で知られている様々な方法によって投与することができる。投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であるか、又は標的部位の近位に投与することができる。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち本発明の多重特異性抗体は、化合物を不活性化し得る酸の作用及び他の自然条件から化合物を保護するための材料でコーティングされ得る。
【0366】
本発明の医薬組成物は、当技術分野でよく知られており、日常的に実施されている方法に従って調製することができる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 20th ed., 2000; and Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978. Pharmaceutical compositions are preferably manufactured under GMP conditionsを参照されたい。医薬組成物は、GMP条件下で製造されることが好ましい。典型的には、本発明の多重特異性抗体の治療的に有効な用量又は有効な用量が、本発明の医薬組成物において使用される。本発明の多重特異性抗体は、当業者に知られている従来の方法により、薬学的に許容される剤形に処方される。投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単一のボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、又は治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少又は増加してもよい。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、非経口組成物を投薬単位形態で処方することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、治療される対象の単位用量として適した物理的に個別の単位を指す。各ユニットは、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性化合物を含む。
【0367】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に有毒ではなく、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療反応を達成するのに有効である有効成分の量を得るために変化させることができる。選択される投与量レベルは、様々な薬物動態因子、例えば、使用される本発明の特定の組成物、又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、使用される特定の化合物の投与経路、投与時間、排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物及び/又は税量、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態及び以前の病歴に依存する。
【0368】
本発明の多重特異性抗体は通常、複数の機会に投与される。単回投与の間隔は、毎週、毎月、又は毎年とすることができる。間隔はまた、患者における本発明の多重特異性抗体の血中レベルを測定することによって示されるように、不規則であり得る。あるいは、本発明の多重特異性抗体は、徐放性製剤として投与することができ、その場合、より少ない頻度の投与が必要とされる。投与量と頻度は、患者の抗体の半減期によって異なる。一般に、ヒト化抗体はキメラ抗体及び非ヒト抗体よりも長い半減期を示す。投与量及び投与頻度は、治療が予防的であるか治療的であるかによって異なり得る。予防的適用では、比較的低い投薬量が長期間にわたって比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、一生涯治療を受け続ける。治療用途では、疾患の進行が軽減又は終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要になる場合がある。その後、患者に予防計画を施すことができる。
【0369】
一態様では、本発明は、医薬品として使用するための本発明の多重特異性抗体又は本発明の医薬組成物に関する。適切な実施形態では、本発明は、増殖性疾患、特にそれを必要とする対象における癌の治療に使用するための多重特異性抗体又は医薬組成物を提供する。
【0370】
別の態様では、本発明は、増殖性疾患、特に癌の治療用の医薬品の製造に使用するための多重特異性抗体又は医薬組成物を提供する。
【0371】
別の態様では、本発明は、増殖性疾患、特にそれを必要とする対象における癌を治療するための多重特異性抗体又は医薬組成物の使用に関する。
【0372】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする対象における増殖性疾患、特に癌の治療のための医薬の製造における多重特異性抗体又は医薬組成物の使用に関する。
【0373】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本発明の多重特異性抗体を対象に投与することを含む、対象を治療する方法に関する。適切な実施形態では、本発明は、本発明の多重特異性抗体の治療有効量を対象に投与することを含む、対象における増殖性疾患、特に癌を治療する方法に関する。
【0374】
「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類などの哺乳動物及び非哺乳動物が含まれる。特に明記しない限り、「患者」又は「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0375】
本明細書で使用される「治療」、「治療すること」、「治療する」、「治療された」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患の部分的又は完全な治癒に関して、及び/又は疾患に起因するか、又は疾患の進行を遅らせるという悪影響に関して治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、例えば、ヒトにおける疾患の任意の治療を網羅し、以下:(a)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること;(b)疾患を緩和する、すなわち、疾患を後退させることを含む。
【0376】
「治療有効量」又は「有効量」という用語は、疾患を治療するために哺乳動物又は他の対象に投与された場合に、そのような疾患の治療をもたらすのに十分である薬剤の量を指す。「治療上有効な量」は、治療される対象の薬剤、疾患及びその重症度、ならびに年齢、体重などに応じて変化する。
【0377】
一実施形態では、増殖性疾患は癌である。「癌」という用語は、異常な細胞の急速で制御されない成長を特徴とする疾患を指す。癌細胞は局所的に、又は血流とリンパ系を介して体の他の部分に広がる可能性がある。「腫瘍」及び「癌」という用語は、本明細書では互換的に使用され、例えば、両方の用語は、固形及び液体、例えば、びまん性又は循環性の腫瘍を包含する。本明細書で使用される場合、「癌」又は「腫瘍」という用語は、前癌性ならびに悪性の癌及び腫瘍を含む。「癌」という用語は、本明細書では、すべての固形及び血液悪性腫瘍を含む、広範囲の腫瘍を意味するために使用される。そのような腫瘍の例には、限定されないが、良性又は特に悪性腫瘍、固形腫瘍、脳腫瘍、腎臓癌、肝臓癌、副腎癌、膀胱癌、乳癌、胃癌(例えば、胃腫瘍)、食道癌、卵巣癌、子宮頸癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、膣癌、甲状腺癌、黒色腫(例えば、切除不能又は転移性黒色腫)、腎細胞癌、肉腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫又は胃腸癌、特に結腸癌又は結腸直腸腺腫、首及び頭の腫瘍、子宮内膜癌、カウデン症候群、レルミット・デュクロス病、バナヤン・ゾナナ症候群、前立腺過形成、特に上皮性の腫瘍、好ましくは乳癌又は扁平上皮癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(例えば、フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病)、急性リンパ芽球性白血病(例えば、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病)、非ホジキンリンパ腫、形質細胞骨髄腫、ホジキンリンパ腫、白血病、及びそれらの組み合わせが含まれる。好ましい実施形態では、癌は肺癌、好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)である。別の実施形態では、前記癌は結腸直腸癌である。
【0378】
本発明の多重特異性抗体又は本発明の組成物は、固形腫瘍だけでなく液体腫瘍の増殖も阻害する。さらなる実施形態では、増殖性疾患は固形腫瘍である。「固形腫瘍」という用語は、特に、乳癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、胃癌(特に胃癌)、子宮頸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、及び頭頸部の腫瘍を意味する。さらに、腫瘍の種類及び使用される特定の組み合わせに応じて、腫瘍体積の減少を得ることができる。本発明の多重特異性抗体、又は本発明の組成物はまた、癌を有する対象における腫瘍の転移の広がり及び微小転移の成長又は発達を防止するのに適している。
【0379】
一実施形態では、前記癌は、PDL1陽性であり、好ましくは、前記癌は、健康な組織と比較して高レベルのPDL1を発現し、特に、前記癌は、健康な組織でのPDL1発現(それぞれmRNA又はタンパク質)と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍高いレベルでPDL1(mRNA又はタンパク質)を発現する。いくつかの実施形態では、前記癌は悪性である。一部の実施形態では、前記癌は良性である。一部の実施形態では、前記癌は原発性である。一部の実施形態では、前記癌は二次性である。一実施形態では、前記癌は肺癌、好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)である。別の実施形態では、前記癌は結腸直腸癌である。
【0380】
一態様では、本発明は、本発明の多重特異性抗体又は本発明の医薬組成物を含むキットに関する。キットには、以下を含む1つ又は複数の他の要素を含めることができる:他の試薬、例えば、標識、治療剤、又は抗体を標識又は治療剤にキレート化するか、そうでなければ結合するのに有用な薬剤、又は放射線防護組成物;投与のための抗体分子を調製するためのデバイス又は他の材料;薬学的に許容される担体;及び対象への投与のためのデバイス又は他の材料。特定の実施形態では、キットは、本発明の多重特異性抗体を薬学的有効量で含む。さらなる実施形態において、キットは、凍結乾燥された形態の本発明の多重特異性抗体の薬学的有効量及び希釈剤、ならびに必要に応じて、使用説明書を含む。前記キットは、再構成のためのフィルター針及び注射用の針をさらに含み得る。
【0405】
本出願の本文全体を通して、明細書の本文(例えば、表1から5)と配列列挙の間に不一致がある場合、仕様の本文が優先される。
【0406】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは理解されるであろう。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別個に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供することもできる。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかもありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態及びその要素のすべてのサブコンビネーションもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかもすべてのそのようなサブコンビネーションが本明細書で個別かつ明確に開示されたかのように本明細書で開示される。
【0407】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されているものに加えて、本発明の様々な変更が、前述の説明から当業者には明らかになるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0408】
それぞれの特許法の下で可能な範囲で、ここに引用されているすべての特許、出願、出版物、試験方法、文献、及びその他の資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0409】
以下の実施例は、上記の本発明を例示するが、決して本発明の範囲を限定することを意図しない。関連技術の当業者にそのように知られている他の試験モデルも、請求された発明の有益な効果を決定することができる。
【実施例】
【0410】
実施例1:PDL1、CD137、HSA及びMSAとの親和性
方法:
異なる種のPDL1への親和性は、Biacore T200デバイス(GE Healthcare)を使用したSPR測定によって決定された。ヒトIgGのFc領域に特異的な抗体をアミンカップリングによってセンサーチップ(CM5センサーチップ、GE Healthcare)に固定化した。Fcを含むMorrison形式を除いて、すべての形式で、異なる種のPDL1−Fcキメラタンパク質が固定化抗体によって捕捉された。この実験では、Fcタグ付きヒトCD137(R&D Systems、カタログ838−4B−100)及びFcタグ付きヒトPDL1(Sino Biological、カタログ10084−H02H)は、GE HealthcareのHuman Antibody Captureキット(カタログBR−1008−39)を用いて捕捉された。
【0411】
PDL1に特異的な分子の3倍連続希釈液(0.12〜90nM)をフローセルに3分間注入し、解離を10分間監視した。各注入サイクルの後、3M MgCl
2溶液を1回注入して表面を再生した。見かけの解離(kd)及び関連付け(ka)速度定数と見かけの解離平衡定数(KD)は、1対1のラングミュア結合モデルを使用して計算された。異なる種のCD137−Fcキメラタンパク質が固定化抗体によって捕捉されたことを除いて、PDL1と同じ設定を使用して、異なる種のCD137への親和性を決定した。
【0412】
Fcを含む形式は、ヒトIgGのFc領域に特異的な抗体によって直接捕捉された。PDL1細胞外ドメイン又はCD137細胞外ドメインの90〜0.35nMの範囲の2倍連続希釈液を、バイオセンサーチップで捕捉されたIgGへの結合について試験した。各注入サイクルの後、3M MgCl
2溶液を1回注入して表面を再生した。
【0413】
異なる種の血清アルブミン(SA)に対する分子の親和性は、Biacore T200デバイス(GE Healthcare)を使用したSPR測定によって決定された。SAは、アミンカップリング化学を使用して、CM5センサーチップ(GE Healthcare)に直接結合された。再生スカウティングと表面性能試験を行って最適なアッセイ条件を見つけた後、用量反応を測定し、得られた結合曲線を二重参照(空の参照チャネルとゼロの検体注入)し、1:1ラングミュアモデルを使用して速度論パラメーターを取得してフィッティングした。このアッセイは、pH5.5の1×PBS−Tween緩衝液で行った。
【0414】
結果:
scDb−scFvのヒトPDL1への親和性を表6に示す。ヒトPDL1への結合は、すべてのscDb−scFvについて確認された。ヒト化構築物の結合速度の測定値は、クローン33−03−G02のCDRと構造(STR)グラフトを比較すると、PDL1の結合親和性に違いがあることを示し、STRグラフトは、同じクローンのCDRグラフトと比較すると、親和性が20倍向上する(表6のPRO885対PRO1126)。クローン37−20−B03に由来するCDRグラフト(PRO997)は、クローン33−03−G02のSTRグラフトと比較して、約2倍高い親和性を示す。33−03−G02のCDRグラフトの結合親和性は、異なる多重特異性形式に結合されたときに親のscFvの結合親和性と類似する(表6のPRO830をPRO885、PRO951、PRO1123、PRO1124、PRO963、PRO966、PRO1057、PRO1058、PRO1059及びPRO1060と比較されたい)。両方のクローンに由来するscFvは、ヒト及びカニクイザルPDL1とほぼ同じ親和性を示す(表6のPRO977及びPRO830を参照されたい)。対応するscFvと比較すると、抗PDL1部分33−03−G02 sc18、37−20−B03 sc01、及び37−20−B03 sc09.1を含む多重特異性の親和性は類似していることが判明した(PRO1392、33−03−G02 sc18のscFv:KD=9.94E−12M;PRO908、37−20−B03 sc01のscFv:KD=5.94E−12M;及びPRO1347、37−20−sc09.1のscFv:KD=9.00E−12M)。対照的に、対応するscFv PRO1183と比較すると、抗PDL1部分33 03−G02 sc03を運搬するすべてのscDb−scFvでヒトPDL1への親和性の低下が観察された(33 03−G02 sc03のscFv:KD<2.09E−12M)。これらの構築物の親和性の損失は、主に解離速度が増加するオフレートの加速によるものである。PDL1に対する最高の親和性は、抗PDL1結合部分37−20−B03 sc09.1を含むPRO1430で見出された。
【0415】
表6に示すように、すべてのscDb−scFvでヒトCD137への結合が確認された。クローン38−02−A04及び38−27−C05に由来する2つのCD137特異的ヒト化構築物のCDRグラフトの結合速度の測定は、ほぼ同じ親和性を示す(表6のPRO885とPRO951を比較されたい)。クローン38−02−04の場合、フレームワーク領域にグラフトした記載された構造残基は、200倍を超える親和性の改善をもたらした(表6のPRO885とPRO1124を比較されたい)。さらに、クローン38−02−04に由来する構築物については、マウスCD137への結合が観察されたが、親和性は非常に低下した。興味深いことに、ヒトCD137への親和性は、対応するscFvの親和性と比較すると、抗CD137結合部分38−02−A04 sc13及び38−27−A11 sc03を含む多重特異性分子で類似していたが(それぞれ、PRO1352、38−02−A04 sc13のscFv、KD=1.47E−09M、及びPRO1360、38−27−A11 sc03のscFv、KD=2.34E−10M)、scDbヘアピンの内側部分における抗CD137部分38−27−A11 sc02を運搬するscDb−scFv分子(scDb−iドメイン、つまりPRO1480)の親和性は、対応するscFvの親和性よりも実質的に優れていた(PRO1359、KD=3.24E−09M;PRO1359、KD=3.07E−09M)。対照的に、抗CD137部分38−27−A11 sc02がscDbヘアピンの外側の部分に配置された場合、親和性はscFv PRO1359の1つに匹敵する。この親和性の向上は、scDbヘアピンの内部にある場合、ドメインの安定性が高まることによって引き起こされるのではないかと推測することができる。結果として、scDbヘアピンの内部にある抗CD137部分38−27−A11 sc02を含む多重特異的ヒトCD137に対する親和性は、抗CD137部分38−27−A11 sc03を有するscDb−scFvsの親和性とほぼ同じであり(PRO1480とPRO1481を比較)、これは予期しない結果を表す。
【0416】
scDb−scFvsの血清アルブミン(SA)への結合は、SPRによって確認された。クローン19−01−H04に由来するSA結合ドメインを含むscDb−scFvは、ヒト血清アルブミンへの高親和性結合を示すが、げっ歯類SAへの結合は観察されなかった。クローン23−13−A01を含むscDb−scFvの場合、結合はヒトSAで観察され、さらに分子はげっ歯類SAとの親和性が低下して結合する(表6を参照)。PRO1430、PRO14379及びPRO1480のpH5.5でのHSAへの結合は、高親和性(低ナノモル濃度のKD値)であり、試験された分子間で同等であることが判明した(IgGクローン19−01−H04)。さらに、pH値を7.4に上げても、分子のHSAへの親和性に実質的な影響はなかった(データは示していない)。
【0417】
実施例2:PDL1とTCR活性化分子を発現するCHO細胞、及びPD−1を発現し、NFAT応答要素の下にルシフェラーゼ遺伝子を含むJurkat細胞を使用する細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイにおけるPDL1/PD−1相互作用の遮断
方法:
生物発光レポーター遺伝子アッセイでは、NFAT(活性化T細胞の核因子)−ルシフェラーゼレポーターとヒトPD−1を安定して発現する人工Jurkat T細胞がエフェクターT細胞として機能する。ヒトPDL1及びT細胞受容体(TCR)活性化因子を安定的に発現する細胞は、抗原提示細胞として機能する。2つの細胞株を共培養すると、TCR活性化分子/TCR複合体の架橋を介してJurkat NFAT経路の活性化が誘導される。PDL1発現細胞が関与すると、PD−1エフェクターT細胞におけるPD−1シグナル伝達がT細胞機能を阻害し、NFAT経路の阻害をもたらす。PD−1とPDL1受容体の相互作用の遮断は、NFAT経路の再活性化につながる。100μlの細胞培養液(DMEM/F12、10%FCS)中の35,000個のCHO/PDL1/TCR活性化分子(BPS Bioscience)細胞を、白色細胞培養プレートの内側のウェルに加え、37℃で16〜20時間、5%CO
2でインキュベートした。翌日、各ウェルから95μlの細胞培養液を除去し、参照アベルマブを含む、試験対象の各分子(3,000から0.46ng/ml)の2倍濃縮段階希釈液を50μl加えた。次に、アッセイ緩衝液(10%FCSを含むRPMI1640)で400,000細胞/mlに希釈したPD−1(BPS Bioscience)を発現するエフェクターJurkat細胞50μlを各ウェルに加え、プレートを37℃で5時間、5%CO
2でインキュベートした。最後に、製造元のプロトコルに従って調製された50μLのルシフェラーゼ基質(BPS Bioscience)をウェルごとに加え、プレートを暗闇で30分間インキュベートし、Topcountを使用して発光を測定した。
【0418】
【表6】
【0419】
結果:
各プレートの個々のIC50値は、各プレートで測定された参照分子アベルマブのIC50に対してキャリブレーションされた(相対IC50:IC50、アベルマブ/IC50、試験scFv)。効力を表7にまとめる。これは、試験したすべての分子のIC50がアベルマブのIC50の0.1倍から3.73倍であることを示す。
【0420】
【表7】
【0421】
PD−1へのPDL1結合を中和する効力に対するCDRセットとフレームワーク選択の影響を評価するために、3つの抗PDL1 scFvがNFATレポーター遺伝子細胞ベースのアッセイで試験された。PRO830は、VH4フレームワークにグラフトされたクローン33−03−G02のCDRセットを含み、PRO997及びPRO1013は、それぞれVH4又はVH1フレームワークにグラフトされたクローン37−20−B03のCDRセットを含む。PRO830は、42.88ng/mlのIC50値で試験された3つのscFvの最も低い効力を有し、34.09ng/mlのIC50値でアベルマブと同様の効力を有する。PRO997は最も強力な分子である。同じCDRセットの効力は、VH1フレームワークよりもVH4フレームワークにグラフトした場合の方が約2倍高かった。IC50値は、それぞれ11.12ng/ml対21.29ng/mlであった(
図3及び表7)。
【0422】
PD−1へのPDL1結合の中和効力は、33−03−G02 PDL1ドメイン(CDRグラフト)の前と後(構造グラフト)のドメイン最適化を所有する二重特異性分子について決定された。CDRグラフト(PRO885)は、構造グラフト(PRO1126)と比較された。ドメインの最適化により中和効力が3倍に向上し、IC50値はPRO885では137.2ng/ml、PRO1126では48.15ng/mlであった(
図4及び表7)。
【0423】
PDL1/PD−1相互作用を中和する効力は、半減期延長について、クローン38−02−A04又は38−27−A11に由来する抗CD137ドメイン、クローン33−03−G02又はクローン37−20−B03に由来する抗PDL1ドメイン、及び2つの異なるヒト血清アルブミン結合ドメインを所有するいくつかの三重特異性分子についても評価された(
図5及び表7)。クローン23−12−A01−sc03に由来するHSAドメインもまたマウス血清アルブミンに結合する。実験は、25mg/ml HSAの存在下で行われた。PRO1057の中和効力(IC50=665.1ng/ml)は、アベルマブよりも低かった(
図5及び表7)。
【0424】
血清中の半減期を延長する別の形式、いわゆるモリソン形式を、細胞ベースの効力レポーター遺伝子アッセイで試験した。この形式では、1つの特異性がIgG部分(二価)によって運ばれ、2番目のターゲットに対する特異性を持つ2つのscFvが、柔軟性ペプチドリンカーによってIgGの重鎖(HC)又は軽鎖(LC)に連結される。試験したすべてのモリソン分子は、両方のIgGアームにクローン33−03−G02のCDRグラフトの抗PDL1ドメインを保持した。2つの構築物PRO1059及びPRO1060は、2つの抗CD137 scFvの重鎖(HC)又は軽鎖(LC)への融合によって異なる。PRO1062は、PRO1060と同じアーキテクチャであり、CD137ドメインが異なる。すべての分子の中和効力は類似していた(
図6及び表7)。
【0425】
実施例3:競合ELISAを用いたPDL1とPD−1及びB7.1との相互作用のブロック
これらのアッセイは、PDL1とPD−1又はPDL1とB.71の間の相互作用をブロックするPDL1阻害剤の能力を評価するために実行された。scFvs、scDbs、scDb−scFv、及びモリソンを含む様々な形式を競合ELISAで分析し、参照IgGアベルマブと比較した。
【0426】
PDL1/PD−1競合ELISA
方法
4μg/mlのヒトPD−1を4℃で一晩コーティングしたELISAマイクロプレートを、ウェルあたり450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。各ウェルに1%BSAと0.2%tween(希釈緩衝液)を含む300μlのPBSを加えることにより、プレートを室温で1時間ブロックした。阻害剤は、1ng/mlのビオチン化ヒトPDL1を含む希釈緩衝液で、300倍から0.005ng/mlの範囲の最終濃度に3倍のステップで段階的に希釈した。混合物を、回転ミキサー(21rpm)で穏やかに攪拌しながら室温で1時間プレインキュベートし、ウェルあたり450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した後、マイクロプレートに加えた。プレートを穏やかに攪拌しながら室温で1.5時間インキュベートし、ウェルあたり450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した後、10ng/mlのストレプトアビジン−ポリHRP40を各マイクロプレートウェルに添加した。RTで1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄し、TMB基質溶液を加えた。6分後に1M HClを加えることにより酵素反応を停止させ、参照波長として690nmを使用して450nmで吸光度を測定した。IC50値の計算では、4つのパラメーターのロジスティック(4PL)カーブフィットが、参照減算値を使用してGraph Pad Prismで実行された。
【0427】
結果
各プレートの個々のIC50値は、各プレートで測定された参照分子アベルマブのIC50に対してキャリブレーションされた(相対IC50:IC50、アベルマブ/IC50、試験scFv)。効力を表8にまとめる。
図7及び表8に示すように、競合ELISAで試験すると、すべてのPDL1阻害剤がPD−1とPDL1の相互作用をブロックした。 scFv PRO830は類似の効力との相互作用をブロックしたが、PRO997及びPRO1013はアベルマブよりも有意に低いIC50値を示し、より強力な阻害剤である。複数の特定の形式、つまりscDbsやMorrisonsに組み合わせると、すべての分子がその阻害特性を保持した。PRO885はアベルマブよりも効力が低かったのに対し、改善された抗PDL1ドメインを含むPRO1126については、より低いIC50値が決定された。モリソン形式は、アベルマブと比較した場合、効力がわずかに劣っていた。PRO1057の中和効果は、ヒト血清アルブミンの存在下でも示され、IC50値は約2倍高かった。
【0428】
【表8】
【0429】
PDL1/B7.1競合ELISA
方法
4μg/mlのヒトB7.1で4℃で一晩コーティングしたELISAマイクロプレートを、ウェルあたり450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。各ウェルに1%BSAと0.2%tween(希釈緩衝液)を含む300μlのPBSを加えることにより、プレートを室温で1時間ブロックした。阻害剤を3倍の段階で段階的に希釈し、40ng/mlのビオチン化PDL1を含む希釈緩衝液で900〜0.015ng/mlの範囲の最終濃度にした。混合物を、回転ミキサー(21rpm)で穏やかに攪拌しながら室温で1時間プレインキュベートし、ウェルあたり450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した後、マイクロプレートに加えた。プレートを穏やかに攪拌しながら室温で1.5時間インキュベートし、ウェルあたり450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した後、10ng/mlのストレプトアビジン−ポリHRP40を各マイクロプレートウェルに添加した。RTで1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄緩衝液で3回洗浄し、TMB基質溶液を加えた。6分後に1M HClを加えることにより酵素反応を停止させ、参照波長として690nmを使用して450nmで吸光度を測定した。IC50値の計算では、4つのパラメーターのロジスティック(4PL)カーブフィットが、参照減算値を使用してGraph Pad Prismで実行された。
【0430】
結果
各プレートの個々のIC50値は、各プレートで測定された参照分子アベルマブのIC50に対してキャリブレーションされた(相対IC50:IC50、アベルマブ/IC50、試験scFv)。効力を表8にまとめる。PRO1126を除いて、すべてのPDL1阻害剤は、PD−1とB7.1の相互作用をブロックする能力についても試験された。PRO830はアベルマブと同様の効力を示したのに対し、PRO997とPRO1013のIC50値は低くなった。すべてのscDbsとMorrisonsもPDL1とB.7−1の間の相互作用を抑制した。scDb PRO885はアベルマブと同様の効力を示したが、モリソンのIC50値は約2〜3.4倍低かった。
図8と表8にデータを示す。
【0431】
実施例4:ヒト化抗CD137ドメインによるCD137及びCD137中和の阻害なし
方法:
PRO885がCD137へのCD137リガンド(CD137L)の結合を妨害しないことを示すために、競合ELISAを採用した。市販の阻害性ポリクローナル抗CD137ヤギ抗体(Antibodies online、Cat#ABIN636609)が参照として使用された。手短に言えば、CD137をELISAプレートに一晩コーティングし、PRO885の段階希釈をELISAプレートに加えた。その後、ビオチン化CD137Lを添加し、結合したリガンドをストレプトアビジン−HRPの添加により検出した。最後に、HRP基質TMBが追加された。5分間の現像後、反応を1M HCl溶液で停止した。参照として、450nmと690nmで吸光度を測定した。
【0432】
結果:
クローン38−02−A04に由来するCD137ドメインを含むPRO885で得られた滴定曲線を
図9Aに示し、クローン38−27−C05に由来するCD137ドメインを含むPRO951で得られた結合曲線を
図9Bに示す。クローン38−27−A11に由来するCD137ドメインを含むPRO1359及びPRO1360で得られた滴定曲線を
図9Cに示す。参照抗体はCD137LのCD137への結合を完全に防止したが、PRO885、PRO951、PRO1359及びPRO1360は、CD137LのCD137への結合を有意に阻害しなかったため、中和なしと定義された。
【0433】
実施例5:ウレルマブとウトミルマブに対する38−02−A04及び38−27−C05のエピトープビニング
方法:
タンパク質PRO885(38−02−A04 CDRグラフトを含むscDb)、PRO951(38−27−C05 CDRグラフトを含むscDb)、クローン38−27−A11に由来するウサギIgG、及び競合分子ウレルマブのCD137の結合エピトープ(BMS)及びオトミルマブ(Pfizer)は、MASS−1デバイス(Sierra Sensors)を使用したSPRエピトープビニングアッセイで比較された。分子が互いにCD137への結合をブロックするかどうかを調べるために、サンドイッチ構成が選択された。したがって、PRO885、PRO951、クローン38−27−A11由来のウサギIgG、ウレルマブ、及びウトミルマブは、高容量アミンセンサーチップ(HCA、Sierraセンサー)に固定化された。次に、90nMの抗原CD137(PeproTech、カタログ310−15)をscDbs、ウサギIgG 38−27−A11、ウレルマブ、又はウトミルマブに注入して捕捉し、すぐに22.5nMの二次抗体を注入した(PRO885、PRO951、ウサギIgG 38−27−A11、ウレルマブ又はオトミルマブ)。各タンパク質のCD137の捕捉レベルと2番目の結合応答レベルを決定した(応答単位、RU)。関与するタンパク質の分子量と捕捉レベルに依存する理論的な最大応答(Rmax)を計算することにより、捕捉された抗原上のタンパク質の相対結合レベル(%)が決定された。分子が、CD137上の同じ、重複している(例えば、構造的に類似又は空間的に近位)又は類似のエピトープに結合する場合、捕捉されたCD137の上に注入された抗体の結合は観察されない。その結果、抗体の結合が観察されると、2つの抗体ペアは重複しないエピトープに結合する。相対結合レベル(%)を各抗体ペアについて決定した。定義により、10%未満の結合レベルは、CD137と同じ又は重複している(例えば、構造的に類似又は空間的に近位)ことを示し、30%を超えると、重複していないエピトープを指す。
【0434】
結果:
PRO885がセンサーチップに固定化されると、3つの抗体PRO951、ウレルマブ、オトミルマブのすべてが、PRO885によって捕捉されたCD137への結合を示した。予想通り、コントロールを使用したPRO885では結合は観察されなかった(
図10及び
図11)。PRO951がセンサーチップに固定化されると、ウレルマブとPRO885は結合を示したが、対照として使用されたウトミルマブとPRO951は有意な結合を示さなかった(
図10及び
図12)。これらの結果は、クローン38−02−A04に由来するPRO885が、CD137のウレルマブ、ウトミルマブ、及び38−27−C05に由来するPRO951とは異なるエピトープに結合することを示す。対照的に、RO951は、ウトミルマブと重なっているが、ウレルマブとPRO885とは重なっていないエピトープに結合する。
【0435】
IgG 38−27−A11は、重複しないエピトープを示唆するCD137への結合についてオトミルマブと競合しなかったが、同じ又は重複するエピトープを示唆するCD137への結合についてウレルマブと競合した(
図10)。
【0436】
実施例6:CD137を発現するトランスジェニックNFkB Jurkatレポーター細胞株の細胞ベースのアッセイを使用することによる、抗PDL1xCD137分子のCD137アゴニスト効果の評価
導入
このアッセイでは、Jukat細胞におけるCD137シグナル伝達の活性化を評価した。CD137シグナル伝達の活性は、Jurkatレポーター細胞株におけるCD137誘導NF−kB活性化によって駆動されるルシフェラーゼ発現の測定によって報告される。ルシフェラーゼの発現は、CD137の活性と直接相関する。さらに、シグナル経路の活性化に必要なCD137のクラスター化は、Jurkat細胞とPDL1発現細胞株の間の免疫シナプスの形成を介して促進される。したがって、レポーター細胞株におけるCD137のクラスター化と活性化にはPDL1発現が必要である。
【0437】
方法
PDL1発現CHO(クローンA2)細胞及びHCC827細胞を未刺激又は24時間、10ng/mlのIFNγで刺激してPDL1発現を増加させ、96ウェル培養プレートに25,000細胞/ウェルで播種した。陰性対照として、PDL1発現のないCHO WT細胞を同じ細胞密度で播種した。次に、抗PDL1xCD137分子と競合ウレルマブの段階希釈液を調製し、細胞に加えた。次に、Jurkatレポーター細胞を、HSAを25mg/mlで含むか含まないアッセイ培地で調製し、ウェルあたり40,000細胞の細胞密度で添加した。ルシフェラーゼ発現をルシフェラーゼ試薬の添加により検出し、Jurkat細胞の添加の6又は24時間後に発光リーダーにより読み取った。ウレルマブ(
図13〜18、
図19A)又はPRO885(
図19B)で測定されたRLUに対する試験サンプルの相対発光単位(RLU)を正規化してデータを分析し、CD137シグナル伝達の相対活性化の値を得た。
【0438】
PDL1発現を高めるために10ng/mlのIFNγで24時間刺激されたPDL1発現HCC827細胞を、96ウェル培養プレート上のウェルあたり50μlの細胞培養液(RPMI、10%FCS)に25,000細胞で播種した。陰性対照として、PDL1発現のないCHO−K1 WT細胞を同じ細胞密度で播種した。次に、25μlの4倍濃縮された、試験対象の各分子の5倍連続希釈液と、40,000から0.02ng/mlの参照PRO1186及びPRO885を加えた。次に、アッセイ緩衝液(10%FCS及び100mg/ml HSAを含むRPMI1640)で1.6E+06細胞/mlに希釈した25μlのCD137発現エフェクターJurkat細胞(Promega)を各ウェルに添加し、HSAの最終濃度を25mg/mlにした。次に、プレートを37℃、5%CO2で6時間、24時間インキュベートした。最後に、製造元のプロトコルに従って調製されたルシフェラーゼ基質(BPS Bioscience)50μLをウェルごとに加え、プレートを暗所で15分間インキュベートし、Flexstation IIIを使用して発光を測定した。各プレートの個々のEC50、IC10/EC90、及びAUC値は、各プレートで測定された参照分子PRO1186のそれぞれの値に対して較正された(表16C)。用量応答曲線のEC50及びEC90値は、相対発光単位(RLU)が増加するポイントの4つのパラメーターロジスティックフィットを使用して取得された。一方、RLUが減少するポイントは、4つのパラメーターロジスティックを使用してフィットされた。IC10値を計算するために、拘束された底に適合する。曲線下面積(AUC)は、PRO885正規化データを使用してすべてのサンプルについて計算された。すべてのパラメーターは、GraphPad prismソフトウェアを使用して取得された。
【0439】
結果
I.CHO−PDL1細胞を使用したPRO885及びPRO951の試験:
図13に示すように、PRO885及びPRO951は、PDL1発現CHO細胞の存在下で、ウレルマブよりも効率的にCD137シグナル伝達を活性化した。PRO885は最高の効力と最高の活性化シグナルを示した(PRO885、EC50=11.72ng/ml、PRO951:EC50=33.68ng/ml;ウレルマブ:EC50=79.11ng/ml、表9)。PDL1が存在しない場合、PRO885もPRO951もレポーター細胞でCD137を活性化できなかったが、ウレルマブはPDL1とは無関係にCD137シグナル伝達の活性化を示した。
【0440】
【表9】
【0441】
II.CHO−PDL1細胞を使用したSTRグラフトscDbの試験:
図14と表10に示すように、抗PDL1xCD137 scDb分子は、CD137シグナル伝達を、ウレルマブよりも効率的に刺激した。ウレルマブとは対照的に、PDL1を発現する標的細胞が存在する場合、scDbに対してのみ刺激効果が見られなかった。すべてのscDbは、PDL1を高レベルで発現するCHO細胞の存在下でNf−kBレポーター遺伝子の活性化を刺激する同一の効力を示した。次に、同じ分子を、より少量のPDL1を発現する細胞の存在下で試験した。
【0442】
III.IFNγなしのHCC827細胞を使用したSTRグラフトscDbの試験:
図15と表11に示すように、抗PDL1xCD137 scDb分子は、CD137シグナル伝達をウレルマブよりも効率的に刺激した。親和性が改善されたCD137ドメインを有するscDb(38−02−A04、PRO1120、及びPRO1124のSTRグラフト)は、CDRグラフトされたCD137ドメインと比較した場合、CD137活性化において改善された効力を示した(例えば、PRO885、EC50=13.02ng/ml、PRO1124:EC50=5.62ng/ml、表11)。注目すべきことに、PDL1ドメイン(Pro1126)のSTRグラフトで見つかったため、PDL1への親和性の増加はまた、親分子PRO885と比較し場合、増加した効力に至った(PRO885、EC50=13.02ng/ml、PRO1126:EC50=6.97ng/ml、表11)。高濃度では、STRグラフトscDbは、活性化のシグナルを減少させる傾向を示した。これは、STRグラフトCD137ドメイン(PRO1120及びPRO1126)を有する分子でより顕著であった。興味深いことに、PDL1ドメインのSTRグラフトをCD137のCDRグラフトと組み合わせた場合、高濃度でのシグナルの減少は観察されなかった(
図15のPRO885とPRO1124を比較されたい)。したがって、CD137とPDL1への親和性の増加に伴い、効力はわずかに増加した。PDL1への親和性の増加はこの効果に寄与しなかったが、高濃度(ベル形の曲線)でのシグナルの減少は、CD137への親和性の増加とともにより顕著になった。したがって、各ドメインの絶対的な親和性よりもむしろ、CD137とPDL1に対する親和性の比率が、最大活性の濃度ウィンドウを拡張するために重要であると考えられる。
【0443】
【表10】
【0444】
IV.IFNγを含むHCC827細胞を使用したSTRグラフトscDbの試験:
IFNγによるHCC827の刺激は、scDb分子の効力を変更せずに活性化のシグナルを増加させた。注目すべきことに、この設定では、試験されたscDbの高濃度でのシグナルの低下はそれほど明白ではなく、PDL1発現との相関を示唆する(
図16及び表12)。
【0445】
V.CHO−PDL1細胞を使用した長い半減期の分子の試験:
図17及び18、表13及び14に示すように、試験された長い半減期の抗PDL1xCD137分子は、CD137シグナル伝達をウレルマブと同じ程度に刺激した。Morrision形式(PRO1060、PRO1062)をscDb−scFv形式(PRO1057、PRO1058)と比較すると、違いがあった。モリソン形式はより高い効力を示したが、活性化の最大シグナルは、scDb−scFvが試験されたときに大幅に増加した。注目すべきことに、24時間のインキュベーション後、PRO1057は活性化の驚くべき高いシグナルを示した。試験されたすべての長い半減期の分子は、PDL1発現細胞の存在下でのみCD137シグナル伝達を活性化した。興味深いことに、両方のターゲットに類似した親和性があるにもかかわらず、PRO1057はPRO1058よりもはるかに高い最大シグナルを示した。さらに、一価のscDb−scFv PRO1057は、それぞれの二価のモリソン形式PRO1060よりも強い活性化を示した。
【0446】
VI.IFNγを使用した場合と使用しない場合のHCC827細胞を使用した長い半減期の分子の試験:
図19A及び表15に示すように、試験された長い半減期の抗PDL1xCD137分子は、より少量のPDL1を発現する細胞の存在下で、ウレルマブと同じ程度にCD137シグナル伝達を刺激した。試験された分子の最大活性化は、標的細胞がIFNγによって刺激されたときにさらに増加し、CD137の活性化と標的細胞上のPDL1発現のレベルとの直接的な相関が示唆された。前述のように、PRO1057はモリソン形式(PRO1060)と比較して、より高いレベルのレポーター遺伝子活性化を示した。
【0447】
図19Bは、6時間と24時間、IFNγ(10ng/ml)刺激HCC827の存在下でのCD137活性アッセイにおける三重特異性scDb−scFv分子PRO1430、PRO1431、PRO1432、PRO1473、PRO1476、PRO1479、PRO1480、PRO1481及びPRO1482の試験結果を表す。
【0448】
PDL1xCD137多重特異性構築物によるNF−kBレポーター遺伝子活性化のデータを表16A、16B及び16Cにまとめる。
【0449】
候補分子の活性曲線の形状を比較するために、曲線の下の面積(AUC、ベルの形をした曲線のシグナル振幅と幅の複合測定、効果サイズ)、及びプラトーの幅(EC90/IC10比(治療ウィンドウの指標を提供する)を計算した(表16Cを参照)。最高のrel.AUC値(PRO1186に正規化した場合、ある時点で少なくとも1を超える)がPRO1430、PRO1479、PRO1480、及びPRO1481について見出された。注目すべきことに、試験サンプルのEC90/IC10比が高いことは、広いベル型の用量反応曲線を示し、結果として、完全な活性のより大きな濃度範囲を提案する。したがって、上位の候補は、数百倍の濃度範囲で完全な活性を示す。
【0450】
これらのパラメーターに基づくと、NF−kBレポーター遺伝子アッセイで最もパフォーマンスの高いscDb−scFvは、PRO1430、PRO1479及びPRO1480であった。
【0451】
【表11】
【0452】
【表12】
【0453】
【表13】
【0454】
【表14】
【0455】
【表15】
【0456】
【表16】
【0457】
【表17】
【0458】
【表18】
【0459】
【表19】
【0460】
【表20】
【0461】
実施例7:ヒトPBMC及びPDL1を発現するトランスジェニックCHO細胞を使用する細胞ベースのアッセイにおける付随するPDL1遮断及びCD137刺激のT細胞刺激効果の評価
方法
PDL1を発現するCHO−A2細胞を、抗ヒトCD3抗体でプレコートした96ウェル培養プレートに、ウェルあたり50,000〜200,000細胞の範囲の3つの異なる密度で播種した。プレートを37℃、5%CO
2で一晩インキュベートした。翌日、末梢血単核細胞(PBMC)が密度勾配遠心分離により新鮮なヒト全血から単離された。ウェルあたり100,000個のPBMCを96ウェルプレートに添加し、続いて抗PDL1xCD137 scDb PRO885を500、50及び5ng/mlの濃度で添加した。インキュベーションの76時間後、細胞上清を回収した。培養上清中のヒトインターロイキン−2(IL−2)レベルは、キットの指示に従って、BiolegendのIL−2ヒトELISA MAXアッセイを使用して定量した。IL−2濃度はIL−2標準曲線から内挿され、逆算され、EC50値の計算のためにPRO885濃度に対してプロットされた。
【0462】
結果
図20に示すように、IL−2は、PD−1/PDL1相互作用の同時遮断と二重特異性分子PRO885の追加によるCD137の刺激に続いてT細胞から分泌された。分泌されるIL−2レベルは、抗CD3抗体とCHO−A2細胞密度の増加、及びPRO885濃度の増加とともに増加した。抗CD3抗体がない場合、IL−2レベルは基礎IL−2分泌と同等であった。PRO885は、抗CD3抗体によって共刺激されたT細胞のみを活性化した。抗CD3による刺激がない場合、IL−2の用量依存的産生はなく、抗原特異的T細胞の選択的活性化を確認する。この発見は、PRO885が活性化T細胞のみを刺激することを示し、インビボPRO885が腫瘍特異的T細胞を特異的に刺激することを示唆する。
【0463】
実施例8:スーパー抗原SEAで刺激されたヒトPBMCを使用する細胞ベースのアッセイにおける、付随するPDL1遮断及びCD137刺激の刺激効果の評価
この実験では、PD−1/PDL1阻害とCD137アゴニズムの相乗効果を評価した。このアッセイでは、抗原提示細胞(APC)及びT細胞でPDL1を、T細胞でCD137をそれぞれ発現させるために、スーパー抗原ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)で刺激された末梢血単核細胞(PBMC)を使用した。抗PDL1xCD137分子を適用することにより、2つのT細胞調節シグナル伝達経路が同時に標的にされた:抑制性PD−1/PDL1経路の阻害と、二重特異性抗PDL1xCD137分子PRO885によって、又は三重特異性抗PDL1xCD137xHSA分子PRO1175、PRO1430、PRO1479若しくはPRO1480によって媒介される免疫シナプスの形成によるCD137経路の活性化。二重特異性抗PDL1xCD137分子PRO885(配列番号209)による、又は三重特異性抗PDL1xCD137xHSA分子PRO1175(配列番号220)、PRO1430(配列番号222)、PRO1479(配列番号223)若しくはPRO1480(配列番号229)によるT細胞の活性化が評価された。T細胞の活性化は、インターロイキン2(IL−2)の分泌によって評価され、ベンチマーク基準抗体アベルマブによって媒介されるPDL1阻害によって媒介される効果と比較された。さらに、抗PDL1 scFv、PRO997が試験され、同じ実験設定でアベルマブと比較された。さらに、二重特異性抗PDL1xCD137分子PRO885(配列番号209)による、又は三重特異性抗PDL1xCD137xHSA分子PRO1175(配列番号220)、PRO1430(配列番号222)、PRO1479(配列番号223)若しくはPRO1480(配列番号229)によるT細胞の活性化を参照抗体アベルマブ又はウレルマブ、又はそれらの組み合わせの効果と比較した。
【0464】
方法
末梢血単核細胞(PBMC)は、密度勾配遠心分離により新鮮なヒト全血から単離された。次に、抗CD56抗体とMACS細胞分離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、NK細胞のPBMCを枯渇させた。次に、ウェルあたり100,000個のPBMCを96ウェルプレートに追加し、続いてSEAを含むアッセイ緩衝液に10ng/mlの濃度でPRO885、PRO997、PRO1175、PRO1430、PRO1479又はPRO1480、アベルマブ、ウレルマブ、アベルマブとウレルマブの組み合わせを段階希釈したものを追加した。37℃、5%CO
2で96時間インキュベーションした後、細胞上清を回収し、培養液のヒトインターロイキン−2(IL−2)レベルをキットの指示に従ってBioLegendのIL−2ヒトELISA MAXアッセイを使用して定量した。IL−2濃度は、IL−2標準曲線から内挿され、逆計算されて、EC50値の計算のためのためにアベルマブ、アベルマブとウレルマブの組み合わせ、及びPRO885濃度に対してプロットされ(
図21及び表18)、又はEC50値の計算のためにアベルマブ、ウレルマブ、アベルマブとウレルマブの組み合わせ、PRO885及びPRO1175、又はPRO1186濃度に対してプロットされた(
図23及び表19)。
【0465】
結果
【0466】
【表21】
【0467】
図21に示すように、IL−2は、PD−1/PDL1相互作用の同時遮断と二重特異性分子PRO885の追加によるCD137の刺激に続いてT細胞から分泌された。アベルマブと比較すると、PRO885はより高いT細胞活性化とより優れた効力を示した(PRO885、EC50=39.92ng/ml;アベルマブ、EC50=69.89ng/ml、表18)。この発見は、二重特異性抗PDL1xCD137 scDb PRO885が、アベルマブによる単なるPDL1遮断よりも強いT細胞刺激を誘発できることを示している。さらに、高親和性の抗PDL1 scFv PRO997は、アベルマブよりもT細胞の刺激において強力であることが判明した(PRO997、EC50=40.86ng/ml;アベルマブ、EC50=90.18ng/ml、表18)。
【0468】
さらに、二重特異性抗PDL1xCD137 scDb PRO885は、(i)ウレルマブよりも強いT細胞刺激を誘導でき(
図23)、(ii)ウレルマブよりもT細胞の刺激いより強力であった(PRO885、EC50=55.21ng/ml、ウレルマブ、EC50=278.3ng/ml、表19)。
【0469】
【表22】
【0470】
さらに、アベルマブとウレルマブの組み合わせは、アベルマブ単独よりも強力なT細胞刺激を誘導することができたが(
図23)、scDb−scFvs PRO1175、PRO1186、PRO1430、PRO1479及びPRO1480は、IL−2のさらに強力な産生を引き起こした(
図21及び23)。おそらくCD137をハイパークラスター化するその機能が原因である。scDb−scFv PRO1175は、(i)アベルマブとウレルマブの組み合わせよりも有意に強いT細胞刺激を誘導でき(
図23)、(ii)アベルマブとウレルマブの組み合わせよりもT細胞の刺激により強力であった(PRO1175、EC50=31.11ng/ml、アベルマブ+ウレルマブ、EC50=318.6ng/ml、表19)。さらに、PRO1430、PRO1479、PRO1482及びPRO1480は、他のscDb−scFv分子と比較して、PMBCでのIL−2産生を刺激する優れた効力を示した(
図21及び23)。試験した他のscDb−scFv分子と比較した場合、scDb−scFv PRO1480は、PMBCでのIL−2産生を刺激する最高の効力を示した(
図21)。
【0471】
実施例9:コスティムシグナリングはTCR刺激との組み合わせでのみ発生し、PDL1 IgG1とCD137 IgG4の組み合わせよりもPDL1xCD137 scDb−scFvで顕著になる
この実験では、PD−1/PDL1阻害とCD137アゴニズムの相乗効果を評価した。このアッセイでは、T細胞でのCD137の発現を誘導するために、PDL1発現CHO細胞と抗CD3抗体の存在下で末梢血単核球(PBMC)を使用した。抗PDL1xCD137分子を適用することにより、2つのT細胞調節シグナル伝達経路が同時に標的にされた:阻害性PD−1/PDL1経路の阻害と、三重特異性抗PDL1xCD137xHSA分子によって媒介される免疫シナプスの形成によるCD137経路の活性化(PRO1186)。三重特異性抗PDL1xCD137xHSA分子PRO1186によるT細胞の活性化は、インターロイキン−2(IL−2)又はIFNγの分泌によって評価され、ベンチマーク参照抗体アベルマブ、ウレルマブによって媒介される交差連結、又はそれらの組み合わせによって媒介されるPDL1阻害媒介される効果と比較された。
【0472】
方法
末梢血単核細胞(PBMC)は、密度勾配遠心分離により新鮮なヒト全血から単離された。次に、ウェルあたり100,000個のPBMCを、2mcg/mlの濃度の抗CD3抗体(BD Pharmingen、カタログ番号551916)を含む96ウェルプレートに添加し、ウェルあたり10,000個のCHO細胞がヒトPDL1を発現した後、アッセイ緩衝液にPRO1186、アベルマブ、ウレルマブ、及びアベルマブとウレルマブの組み合わせを段階希釈したものを添加した。37℃、5%CO
2での72時間のインキュベーション後、細胞上清を回収し、培養上清中のヒトインターロイキン−2(IL−2)及びIFNγレベルを定量した。キットの指示に従い、BioLegendのIL−2ヒトELISA MAXアッセイを使用して、ヒトインターロイキン−2(IL−2)レベルを定量した。IL−2濃度は、IL−2標準曲線から内挿された(
図23E)。ELISAによるキットの指示に従い、R&D SystemsのHumanIFN−γDuoSet ELISAアッセイを使用して、ヒトIFNγレベルを定量化した(
図23F)。
【0473】
結果
図23(E)及び(F)に示すように、IL−2及びIFNγは、PD1/PDL1相互作用の同時遮断と、三重特異性分子PRO1186の追加によるCD137の刺激に続いてT細胞から分泌された。この発見は、三重特異性抗PDL1xCD137xHSA scDb−scFv PRO1186が、アベルマブによる単なるPDL1遮断、又はウレルマブによるCD137遮断、又はそれらの組み合わせよりも強いT細胞刺激を誘導できることを示しす。PRO1186は、IL−2(
図23E)及びIFNγ(
図23F)の産生を誘発するのに、アベルマブ又はウレルマブ、あるいはその2つの組み合わせよりも強力であった。抗CD3抗体がない場合、IL−2及びIFNγのレベルは、試験したすべての濃度で基礎サイトカイン分泌に匹敵し、生産的なCD137シグナル伝達にはTCRシグナル伝達又はCD3関与が必要であることを示す。
【0474】
実施例10:ヒト細胞株由来肺癌異種グラフトモデルHCC827におけるCD137のPDL1遮断及び付随する局所刺激の抗腫瘍効果の評価
本発明の多重特異性抗体の抗腫瘍活性を、タコニック及び同種異系ヒト末梢血単核細胞由来の免疫不全NOGマウス株を用いたヒトHCC827 NSCLC異種グラフト片における抗PDL1及び抗CD137療法と比較した。グラフトしたヒトTリンパ球は、外来主要組織適合性(MHC)クラスI及びIIとマウス細胞からの他の抗原に対して異種反応性を示す。結果として、Tリンパ球は異なる臓器に炎症性浸潤を引き起こし、数週間後に動物の死に至る。これは異種グラフト片対宿主病(xGVHD)として公知であるプロセスである。抗PDL1や抗CD137などの免疫調節抗体による治療は、xGVHDを悪化させることが示された(Sanmamed MF et al. Nivolumab and urelumab enhance antitumor activity of human T lymphocytes engrafted in Rag2-/-IL2Rgnull immunodeficient mice. Cancer Res 2015;75(17):3466-3478)。腫瘍体積に対するPRO1057(scDb−scFv;配列番号218)とPRO1060(IgGの重鎖のC末端にCD137 scFvが融合したIgG−scFv;配列番号234及び235)の効果は、本発明の多重特異性抗体(例えば、PRO1137)と同じPDL1特異的可変ドメインを含むIgG1、及び同じCD137特異的可変ドメイン(PRO1138)を有するIgG4による処置と比較された。ローカライズされた抗腫瘍免疫応答のさらなる証拠を提供するために、CD8+、CD4+、制御性T細胞などの腫瘍浸潤リンパ球の頻度をフローサイトメトリーで分析した。抗CD137/抗PDL1治療後の免疫系の変調を全身的に調査するために、肝臓及び脾臓におけるCD4+及びCD8+T細胞の頻度をフローサイトメトリーで分析した。さらに、定量的ELISA法を使用して全身のIFNgレベルを分析した。
【0475】
研究設定と治療スケジュール
雌NOGマウスは、5×10
6個のHCC827細胞の片側注射を受けた。細胞を、PBS中の50%細胞懸濁液と50%マトリゲルの混合液に100μlの総注入量で注入した。NOGマウスへの腫瘍細胞の注入及び腫瘍グラフトの成功(中央群腫瘍体積80−100mm3)後、静脈内注射によってマウスを5×10
6個のヒトPBMCに置き換えた。無作為化の日に、各グループの4匹のマウスをドナーAのPBMCで再構成し、別の4匹のマウスをドナーBのPBMCで再構成した。PBMCの注射の1〜2時間後に治療を開始し、以下のように適用した。
【0476】
【表23】
【0477】
PRO1057の高用量(HD)と、PRO1060及びPRO1137の0.2mg用量は、NF−ATレポーター遺伝子アッセイにおけるPD−1/PDL1相互作用をブロックする抗体のin vitro活性に基づいて、0.1mg用量のAavelumab(マウスあたり)に対してモデル化された同じ相対活性を達成するように設定された。したがって、2mgのPRO1057、又は0.2mgのPRO1060、又は0.2mgのPRO1137は、0.1mgの用量のアベルマブに対する1つの相対単位(1r.U)として表すことができる。
【0478】
キャリパーによる体重測定及び腫瘍体積測定は、週に2回行われた。研究結果に応じて、定められた時点で動物を犠牲にした。3匹を除くすべての動物が「同じ」時点(17日目と18日目)で犠牲にされた。異種グラフト片対宿主病(xGVHD)の発症により、3匹の動物はすでに14日目に安楽死された。容量の都合上、各グループ前半のサンプル採取・処理は初日に行い、各グループ後半のサンプル採取・処理は翌日に行った。2匹の異なるドナーからのPBMCで再構成された動物は、2つのサンプリングコホートで等しく発現された。すべての動物の腫瘍、脾臓、肝臓を研究の最後に収集し、フローサイトメトリー用に処理して、次のヒトマーカーを分析した:生/死、CD4、CD8、CD25、FOXP3、TIM3、PD−1、及びグランザイムB。製造元の指示に従い、R&D SystemsのDuoSet(登録商標)ELISA開発システムを使用したELISAにより、血清サンプルのIFNgレベルを分析した。
【0479】
結果
免疫不全症を使用したヒトHCC827 NSCLC異種グラフト片における多重特異性抗体PRO1057(scDb−scFv抗PDL1xCD137xHSA)及びPRO1060(モリソン形式抗PDL1xCD137)、抗PDL1(PRO1137)及び抗CD137(PRO1138又はurelumab)の抗腫瘍活性NOGマウス系統及び同種異系ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)は、腫瘍体積を測定することにより評価された(
図24)。腫瘍体積は、17日目又は18日目にマウスが犠牲になるまで週2回測定された。腫瘍体積は、治療開始時の腫瘍体積(相対腫瘍体積)に対して正規化された。
図24に示すように、抗CD137(PRO1138又はurelumab)又は抗PDL1(PRO1137)モノクローナル抗体で処理されたHCC827腫瘍保有マウスは、ベヒクルコントロールグループと同様の腫瘍増殖を示した。対照的に、scPb−scFv(PRO1057)やIgG−scFv(PRO1060)などの抗PDL1xCD137二重特異性抗体による治療は、腫瘍増殖の明確な安定化をもたらした。さらに、ドナーBからのPBMCで再構成されたマウスにおける二重特異性抗PDL1xCD137分子による処置は、腫瘍の退縮をもたらした(
図24B及び24D)。特に、二重特異性分子による処置では、体重の中央値が低下することはなく、分子が試験した用量レベルで十分に許容されることを示唆しているが、ウレルマブによる処置では、治療開始から17日後に体重の中央値が減少した(
図25)。
【0480】
さらに、Tリンパ球、すなわちヒト制御性T細胞(CD4+、FoxP3+;
図26A)及びヒトCD8+T細胞の頻度が、治療の17日目又は18日目の腫瘍で分析された(
図26)。腫瘍浸潤リンパ球をフローサイトメトリーで調べ、腫瘍微小環境(TME)におけるヒトCD8+T細胞の頻度とヒト調節性T細胞(Treg)の頻度の比率を測定した(
図26B)。
【0481】
ウレルマブ処理のみで、腫瘍微小環境における制御性T細胞の頻度が減少し、抗PDL1(PRO1137)処理で、制御性T細胞が増加した(
図26A)。興味深いことに、PRO1057及びPRO1060治療グループにおけるPD1/PDL1の遮断とCD137の同時トリガー(おそらく同じ細胞上)により、抗PDL1治療グループで観察された制御性T細胞の増加が妨げられた(
図26A)。
【0482】
さらに、二重特異性抗PDL1xCD137抗体(PRO1057及びPRO1060)による治療では、単剤療法による治療グループ又はベヒクルコントロールグループと比較して、腫瘍内ヒトCD8+T細胞/ヒトTreg(CD4+FoxP3+)比が2倍以上改善された(
図26B)。PRO1057及びPRO1060で処理されたグループで観察されたCD8+/Treg比の増加は、腫瘍微小環境で二重特異性抗PDL1xCD137抗体によって効果的な抗腫瘍応答が誘発されたことを示す。二重特異性抗PDL1xCD137抗体で処理した後、制御性T細胞の頻度が減少し、腫瘍内ヒトCD8+T細胞/ヒトTreg(CD4+FoxP3+)比が増加したことは、抗腫瘍エフェクター/メモリーT細胞応答が首尾よく誘発されたことを示す。
【0483】
さらに、PD1陽性のCD4+及びCD8+細胞の頻度を測定して、腫瘍の微小環境における活性化T細胞の割合を評価した(
図27)。PD10陽性のCD8+及びCD4+T細胞の用量依存的な増加がPRO1057で観察され、高用量では、PRO1060及びPRO1037での処理と同様のレベルのPD1陽性T細胞に達し、PDL1ブロッキング活性に関して、3つの化合物の同等の投与が確認された(
図27A及びB)。2つの抗CD137抗体PRO1038及びウレルマブは、PD1陽性CD4+又はCD8+T細胞のパーセンテージに影響を与えなかったようであった。
【0484】
実施例11:ヒト臍帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSC)をグラフトされたNOGマウスにおける、DL1遮断及び付随するCD137の局所刺激の抗腫瘍効果の評価
本発明の多重特異性抗体の抗腫瘍活性を、ヒト臍帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSCs)をグラフトしたNOGマウス株を用いたヒトHCC827 NSCLC異種グラフト片における抗PDL1及び抗CD137単剤及び併用療法と比較した。腫瘍体積に対するPRO1186(scDb−scFv;配列番号221)の効果を、本発明の多重特異性抗体と同じPDL1特異的可変ドメイン(例えば、PRO1196、配列番号242及び243)、アベルマブ(Aavelumab)、ウレルマブと比較した。さらに、腫瘍体積に対するPRO1186(scDb−scFv;配列番号221)の効果を、本発明の多重特異性抗体(PRO1196、配列番号242及び243)と同じPDL1特異的可変ドメインを含むIgG1の併用治療と、同じCD137特異的可変ドメイン(PRO1138、配列番号244及び245)を有するIgG4を比較した。ローカライズされた抗腫瘍免疫応答のさらなる証拠を提供するために、CD8+、CD4+、制御性T細胞などの腫瘍浸潤リンパ球の頻度をフローサイトメトリーで分析した。抗CD137/抗PDL1治療後の免疫系の変調を全身的に調査するために、肝臓及び脾臓におけるCD4+及びCD8+T細胞の頻度をフローサイトメトリーで分析した。さらに、定量的ELISA法を使用して、全身のIFNγレベルを分析した。
【0485】
研究設定と治療スケジュール
ヒト臍帯血由来CD34+造血幹細胞(UCB HSC)をグラフトしたメスのNOGマウスに、HCC827 NSCLC細胞を皮下注射した。マウスは、5×10
6個のHCC827細胞の片側注射を受けた。細胞を、PBS中の50%細胞懸濁液と50%マトリゲルの混合液に100μlの総注入量で注入した。NOGマウスへの腫瘍細胞の注入及び腫瘍グラフトの成功(中央群腫瘍体積80〜100mm
3)後、マウス(n=10)を無作為に治療群に分けた。
【0486】
【表24】
【0487】
キャリパーによる体重測定及び腫瘍体積測定は、週に2回行われた。研究の終わりに腫瘍を採取し、フローサイトメトリーによってヒトT細胞の浸潤を評価した。すべての動物の腫瘍、脾臓、肝臓を研究の最後に収集し、フローサイトメトリー用に処理して、以下のヒトマーカーを分析した:生/死、CD4、CD8、CD25、FOXP3、TIM3、PD−1、及びグランザイムB。製造元の指示に従い、R&D SystemsのDuoSet(登録商標)ELISA開発システムを使用したELISAにより、血清サンプルのIFNγレベルを分析した。
【0488】
結果
ヒト臍帯血をグラフトした免疫不全NOGマウス系統を使用したヒトHCC827 NSCLC異種グラフト片における多重特異性抗体PRO1186(scDb−scFv抗PDL1xCD137xHSA)、抗PDL1(PRO1196又はavelumab)及び抗CD137(ウレルマブ)の抗腫瘍活性由来のCD34+造血幹細胞(UCB HSC)は、腫瘍体積を測定することで評価された(
図28及び29)。腫瘍体積は、マウスが25、29、又は30日目に犠牲になるまで週2回測定された。腫瘍体積は、治療開始時の腫瘍体積(相対腫瘍体積)に対して正規化された。
図28及び29に示すように、scDb−scFv(PRO1186)などの抗PDL1xCD137xHSA三重特異性抗体、及び抗PDL1(PRO1196)と抗CD137(PRO1138)の組み合わせによる治療は、腫瘍増殖の明確な安定化をもたらした。特に、三重特異性分子(PRO1186)による治療は、分子が中央値の減少につながらず、抗PDL1(PRO1196)と抗CD137(PRO1138)は、治療開始の24日後に、体重減少がそれぞれ10%又は15%を超える動物の数の増加をもたす(
図30)。抗PDL1xCD137xHSA(PRO1186)療法は、抗PDL1 IgG(PRO1196)又は抗CD137 IgG(ウレルマブ)による療法よりも腫瘍増殖の強い減少をもたらした。抗PDL1xCD137xHSA(PRO1186)療法は、より高い奏効率(30%vs 20%)をもたらし、一般に抗PDL1と抗CD137の併用療法よりも忍容性が高かった。これは、より高い頻度の細胞毒性T細胞(CD8+及びCD8+、GrB+)と相関し、腫瘍のCD8+/CD4+及びCD8+、GrB+/Treg比が増加する(
図31及び32)。Tリンパ球、すなわち細胞障害性T細胞(CD8+、GrB+)、CD4+T細胞、Treg細胞(
図31及び32)の頻度を腫瘍の治療の24日目、29日目、及び30日目に分析した。
【0489】
さらに、ヒトCD34+幹細胞置換NOGマウスを使用したHCC827異種グラフト研究で、動物の血清サンプルの抗PDL1xCD137xHSA(PRO1186)を定量化する薬物動態分析を実施した(
図33、表20)。ELISAプレートをCD137で一晩コーティングし、抗PDL1xCD137xHSA(PRO1186)の連続希釈液を加えて、検量線を作成した。結合した抗PDL1xCD137xHSA(PRO1186)は、ビオチン化ヒトPDL1、続い試験レプトアビジンポリHRPで検出された。希釈された血清サンプル中のPRO1186濃度は、検量線から内挿された。薬物動態パラメーターは、非コンパートメントアプローチを使用したPKソルバーソフトウェアアドインによって推定された。41.7時間、36.8時間、38.4時間の半減期は、それぞれグループPRO1186−HD(0.5mg)、PRO1186−MD(0.1mg)、PRO1186−LD(0.02mg)の投与後の最初の排出相を分析することにより決定された。
【0490】
【表25】
【0491】
実施例12:同系MC38結腸癌モデルにおけるPDL1遮断及び付随するCD137の局所刺激の抗腫瘍効果の評価
さらに、本発明の多重特異性抗体の抗腫瘍活性は、無傷の免疫系を有する同系C57BL / 6マウスのMC38結腸癌モデルで試験される。このモデルは、CD137アゴニストとPD−1/PDL1アンタゴニストの併用治療により抗腫瘍活性の増強を示すために他の人によって使用されている(Chen S et al. Combination of 4-1BB agonist and PD-1 antagonist promotes antitumor effector/memory CD8 T cells in a poorly immunogenic tumor model. Cancer Immunol Res 2014;3(2):149-160、及びRodriguez-Ruiz ME et al. Abscopal effects of radiotherapy are enhanced by combined immunostimulatory mAbs and are dependent on CD8 T cells and crosspriming. Cancer Res 2016;76(20):5994-6005)。
【0492】
本発明の多重特異性抗体の抗CD137ドメイン及び抗PDL1ドメインはどちらもマウスPDL1に対して交差反応性がないため、CrownBioによって確立された操作されたヒトCD137ノックインモデルが使用される。このモデルでは、マウスCD137の細胞外及び膜貫通ドメインが、CRISPR/Cas9システムを使用して、C57BL/6マウスのバックグラウンドでヒトCD137のそれぞれの配列に置き換えられた。さらに、マウスPDL1の代わりにCMVプロモーターの制御下でヒトPDL1を発現する改変MC38腫瘍細胞株が使用される。
腫瘍容積に対する本発明の多重特異性抗体の効果は、ND021と同じPDL1特異的可変ドメインを含むヒト化IgG1と同じCD137特異的可変ドメインを有するヒト化IgG4との併用治療と比較される。ローカライズされた抗腫瘍免疫応答のさらなる証拠を提供するために、CD8+、CD4+及び制御性T細胞などの腫瘍浸潤リンパ球の頻度がフローサイトメトリーによって分析される。抗CD137/抗PDL1治療に続く免疫系の変調を探索するために、肝臓及び脾臓におけるCD4+及びCD8+T細胞の頻度がフローサイトメトリー及びおそらく免疫組織化学によって分析される。さらに、定量的ELISA法を使用して、全身のIFNgレベルを分析できる。抗CD137/抗PDL1併用療法の安全性プロファイルをさらに特徴付けるために、アラニンアミノトランスフェラーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼのレベルの増加など、主に肝毒性(臨床で抗CD137療法で観察)に関連する臨床化学病理学パラメーターアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを評価することができる。
【0493】
実施例13:本発明の例示的な多重特異性抗体
一般的な説明scD
単鎖ダイアボディ(scDb)は、2つの異なる抗体からの2つのVH及び2つのVLドメインを含む、1つの鎖で構成される小さな二価抗体断片である(Holliger et al. PNAS, 1993 Jul 15;90(14):6444-8)。Numab scDb形式では、可変ドメインはGSリンカーによってVLA−VHB−VLB−VHAドメイン方向に接続される。これらの単鎖ダイアボディ(scDbs)のリンカーは、ドメインの正しいアセンブリを強制し、抗原結合活性を変更せずに安定性を向上させる。VLAをVHBに、VLBをVHAに接続する短いG4Sリンカーは、隣接するドメインのアセンブリを可能にし、ドメインを開いたコンフォメーションに保ち、対応するドメインの正しいペアリングを可能にするために必要なものよりもかなり短い。VLA−VHB及びVLB−VHAダイアボディアームは、VHBドメインとVLBドメイン間の長い(G4S)4リンカーによって接続され、頭から尾への配向で二量体化して、分子量が約50kDaのコンパクトな二重特異性分子を生成する。scDbは、E.coli又はCHO−S宿主細胞のいずれかで組換え発現させることができる。
図22Aを参照されたい。
【0494】
PRO885
PRO885は、2つの短い隣接するG4Sリンカーと長い中央(G4S)4リンカーによって接続された外側(VLA/VHA)PDL1結合ドメイン(33−03−G02 sc01)と内側(VHB/VLB)CD137特異的ドメイン(38−02−A04 sc01)を含むscDb分子である。どちらのドメインも、VH4様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。
【0495】
PRO951
PRO951は、2つの短い隣接したG4Sリンカーと長い中央(G4S)4リンカーで接続された外側(VLA/VHA)PDL1結合ドメイン(33−03−G02 sc01)と内側(VHB/VLB)CD137特異的ドメイン(38−27−C05 sc02)を含むscDb分子である。どちらのドメインも、ヒトのアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。PDL1特異的CDRは、VH4コンセンサス様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトし、CD137特異的CDRは、VH3のコンセンサス様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトした。
【0496】
PRO1123
PRO1123は、2つの短い隣接したG4Sリンカーと長い中央(G4S)4リンカーで接続された外部(VLA/VHA)PDL1結合ドメイン(33−03−G02 sc01)と内部(VHB/VLB)CD137特異的ドメイン(38−02−A04 sc05)を含むscDb分子である。どちらのドメインも、VH4コンセンサス様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。さらに、CD137ドメインには、VL−VH界面の形成に関与するウサギの残基がほとんど含まれていない。
【0497】
PRO1124
PRO1124は、2つの短い隣接したG4Sリンカーと長い中央(G4S)4リンカーで接続された外部(VLA/VHA)PDL1結合ドメイン(33−03−G02 sc01)と内部(VHB/VLB)CD137特異的ドメイン(38−02−A04 sc06)を含むscDb分子である。どちらのドメインも、VH4コンセンサス様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。さらに、CD137ドメインは、VL−VH界面の形成に関与し、抗原と相互作用する可能性のあるいくつかのウサギ残基を含む。
【0498】
PRO1125
PRO1125は、2つの短い隣接したG4Sリンカーと長い中央(G4S)4リンカーで接続された外側(VLA/VHA)PDL1結合ドメイン(33−03−G02 sc02)と内側(VHB/VLB)CD137特異的ドメイン(38−02−A04 sc01)を含むscDb分子である。どちらのドメインも、VH4コンセンサス様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。さらに、PDL1ドメインは、VL−VH界面の形成に関与するウサギの残基をほとんど含まない。
【0499】
PRO1126
PRO1126は、2つの短い隣接したG4Sリンカーと長い中央(G4S)4リンカーで接続された外側(VLA/VHA)PDL1結合ドメイン(33−03−G02 sc03)と内側(VHB/VLB)CD137特異的ドメイン(38−02−A04 sc01)を含むscDb分子である。どちらのドメインも、VH4コンセンサス様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。さらに、PDL1ドメインは、VL−VH界面の形成に関与し、抗原と相互作用する可能性のあるバック変異ウサギ残基を含む。
【0500】
PRO1134
PRO1134は、2つの短い隣接したG4Sリンカーと長い中央(G4S)4リンカーで接続された外部(VLA/VHA)PDL1結合ドメイン(33−03−G02 sc07)と内部(VHB/VLB)CD137特異的ドメイン(38−02−A04 sc01)を含むscDb分子である。どちらのドメインも、VH4コンセンサス様ヒトアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。さらに、PDL1ドメインは、VL−VH界面の形成に関与し、抗原と相互作用する可能性のあるウサギの生殖系列残基を含む。
【0501】
一般的な説明scDb−scFv
scDb−scFv)はNumabで開発された形式であり、(G4S)2リンカーを介して接続された3番目の単鎖可変ドメインペア(VLC/VHC)を上記のように非常に安定した単鎖ダイアボディ(scDb)形式に追加する(VLA−VHB−VLB−VHAドメイン方向(短いG4Sコアリンカーと長い(G4S)4中央リンカーを有する)。したがって、scDb−scFv形式は、単一タンパク質鎖上のscFvエンティティと約80kDaの分子量を有するscDbのタンデム配置からなる。scDb−scFv抗体断片は、哺乳動物細胞で組換え発現させることができる。
図22Bを参照されたい。
【0502】
PRO963
PRO963は、抗HSA scFv実体(19−01−H04−sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(33−03−G02 sc01、VLA/VHA)と抗CD137(38−02−A04 sc01、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1及びCD137特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、HSAドメインは、親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギ残基を含む、ヒトVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギのCDRからなる。
【0503】
PRO966(PRO1052)
PRO966は、抗HSA scFvエンティティ(19−01−H04−sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(33−03−G02 sc01、VLA/VHA)及び抗CD137(38−27−C05 sc01、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1及びCD137特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、HSAドメインは、親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギ残基を含む、ヒトのVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギのCDRからなる。
【0504】
PRO1057
PRO1057は、抗HSA scFvエンティティ(23−13−A01−sc03、VLC/VHC)とC末端で抗PDL1(33−03−G02 sc01、VLA/VHA)と抗CD137(38−02−A04 sc01、VHB/VLB)scDbコアで融合したscDb−scFv分子である。PDL1及びCD137特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、HSAドメインは、マウス血清アルブミンに対する交差反応性を含む親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギ残基を含む、ヒトのVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギのCDRからなる。
【0505】
PRO1058
PRO1058は、抗HSA scFv実体(23−13−A01−sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(33−03−G02 sc01、VLA/VHA)と抗CD137(38−27−C05 sc01、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1及びCD137特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、HSAドメインは、マウス血清アルブミンに対する交差反応性を含む親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギ残基を含む、ヒトのVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギのCDRからなる。
【0506】
PRO1186
PRO1086は、抗HSA scFv実体(23−13−A01−sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(37−20−B03 sc01、VLA/VHA)と抗CD137(38−02−A04 sc01、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。 PDL1及びCD137特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、HSAドメインは、マウス血清アルブミンに対する交差反応性を含む親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギ残基を含む、ヒトのVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギのCDRからなる。
【0507】
PRO1430
PRO1430は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(37−20−B03 sc01、VLA/VHA)と抗CD137(38−02−A04 sc13、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1特異的ドメインは、グラフトされたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、CD137及びHSAドメインは、ヒトVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトされたウサギのCDRからなる。HSAドメインは、親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含み、CD137特異的ドメインは、安定化するVL/VHドメイン間ジスルフィド結合を含む。
【0508】
PRO1479
PRO1479は、抗HSA scFvエンティティのあるターミナル(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(37−20−B03 sc09.1、VLA/VHA)と抗CD137(38−02−A04 sc13、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。すべてのドメインは、グラフトされたウサギのCDRを有するヒトVH3コンセンサス様アクセプターフレームワークである。PDL1及びHSA特異的ドメインは、親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含み、CD137特異的ドメインは、安定化VL/VHドメイン間ジスルフィド結合を含む。
【0509】
PRO1482
PRO1482は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗CD137(38−02−A04−sc13、VLA/VHA)及び抗PDL1(37−20−B03 sc03、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、CD137及びHSA特異的ドメインは、ヒトVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギCDRからなる。すべてのドメインは、親のウサギIgG結合特性の保持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含む。
【0510】
PRO1431
PRO1431は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(33−03−G02 sc18、VLA/VHA)と抗CD137(38−02−A04 sc13、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、CD137及びHSA特異的ドメインは、ヒトVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギCDRからなる。HSAドメインは、親ウサギIgG結合特性の保持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含み、CD137特異的ドメインは、安定化VL/VHドメイン間ジスルフィド結合を含む。
【0511】
PRO1473
PRO1473は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(33−03−G02 sc03、VLA/VHA)と抗CD137(38−02−A04 sc13、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、CD137及びHSA特異的ドメインは、ヒトVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギCDRからなる。HSA及びPDL1特異的ドメインは、親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基含み、CD137ドメインは、安定化VL/VHドメイン間ジスルフィド結合を含む。
【0512】
PRO1476
PRO1476は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗CD137(38−02−A04 sc13、VLA/VHA)と抗PDL1(33−03−G02 sc03、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、CD137及びHSA特異的ドメインは、ヒトVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギCDRからなる。HSA及びPDL1特異的ドメインは、親ウサギIgG結合特性の保持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含み、CD137固有ドメインは、安定化VL/VHドメイン間ジスルフィド結合を含む。
【0513】
PRO1432
PRO1432は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗CD137(38−02−A04 sc13、VLA/VHA)と抗PDL1(33−03−G02 sc18、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。PDL1特異的ドメインは、グラフトしたウサギのCDRを有するヒトVH4コンセンサス様アクセプターフレームワークであるが、CD137及びHSA特異的ドメインは、ヒトのVH3ベースのアクセプターフレームワークにグラフトしたウサギCDRからなる。HSA及びPDL1特異的ドメインは、親ウサギIgG結合特性の保持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含み、CD137特異的ドメインは、安定化VL/VHドメイン間ジスルフィド結合を含む。
【0514】
PRO1480
PRO1480は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(37−20−B03 sc09.1、VLA/VHA)及び抗CD137(38−27−A11sc02、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。すべてのドメインは、グラフトされたウサギのCDRを有するヒトVH3コンセンサス様アクセプターフレームワークである。PDL1及びHSA特異的ドメインは、親ウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含む。
【0515】
PRO1481
PRO1481は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC)とC末端で融合した抗PDL1(37−20−B03 sc09.1、VLA/VHA)と抗CD137(38−27−A11sc03、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。すべてのドメインは、グラフトされたウサギのCDRを有するヒトVH3コンセンサス様アクセプターフレームワークである。PDL1、CD137、及びHSA特異的ドメインは、親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含む。
【0516】
DiSを有するPRO1480
DiSを有するPRO1480は、抗HSA scFv実体(19−01−H04 sc03、VLC/VHC))とC末端で融合した抗PDL1(37−20−B03 sc09.1、VLA/VHA)及び抗CD137(38−27−A11sc07、VHB/VLB)scDbコアからなるscDb−scFv分子である。すべてのドメインは、グラフトされたウサギのCDRを有するヒトのVH3コンセンサス様アクセプターフレームワークである。PDL1及びHSA特異的ドメインは、親のウサギIgG結合特性の維持をサポートする追加のウサギフレームワーク残基を含み、CD137特異的ドメインは、安定化VL/VHドメイン間ジスルフィド結合を含む。
【0517】
一般的な説明IgG−scFv
IgG−scFv分子は、単一特異性IgGに融合したscFv部分からなる二重特異性抗体である(Coloma M.J., Morrison S.L. Nat. Biotechnol. 1997;15:159-163)。各軽鎖又は重鎖のアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかに、異なる特異性のscFvドメインを付加することができ、これにより、IgG−scFv二重特異性抗体タイプの多様なレパートリーがもたらされる。Numabで生成された分子は、IgG(H)−scFv又はIgG(L)−scFvタイプのもであり、2つのscFvは、完全長のIgG重鎖(HC)又は軽鎖(LC)のC末端に同じ特異性を有し、サイレンシングされたFc部分と、IgG部分とscFv部分を接続する(G4S)2リンカーを含む。両方のタイプの合計分子量は約200kDaであり、分子は哺乳類細胞で組換え発現させることができる。
図22C及び22Dを参照されたい。
【0518】
PRO1059(IgG(L)−scFv)
LCのC末端に融合した抗CD137 scFvドメイン(38−02−A04 sc01)を有するサイレント抗PDL1(33−03−G02−sc01)hIgG1。(G4S)2リンカーはIgG部分とscFv部分を接続する。これは、それ自体が(G4S)4リンカーを介して対応するVHドメインに接続されたVLドメインからなる。
【0519】
PRO1060(IgG(H)−scFv)
HCのC末端に融合した抗CD137(38−02−A04 sc01)scFvドメインを有するサイレント抗PDL1(33−03−G02−sc01)hIgG1。(G4S)2リンカーはIgG部分とscFv部分を接続する。これは、それ自体が(G4S)4リンカーを介して対応するVHドメインに接続されたVLドメインからなる。
【0520】
PRO1061(IgG(L)−scFv)
LCのC末端に融合した抗CD137 scFvドメイン(38−27−C05 sc01)を備えたサイレンシングされた抗PDL1(33−03−G02−sc01)hIgG1。(G4S)2リンカーはIgG部分とscFv部分を接続する。これは、それ自体が(G4S)4リンカーを介して対応するVHドメインに接続されたVLドメインからなる。
【0521】
PRO1062(IgG(H)−scFv)
HCのC末端に融合した抗CD137(38−27−C05 sc01)scFvドメインを有するサイレント抗PDL1(33−03−G02−sc01)hIgG1。(G4S)2リンカーはIgG部分とscFv部分を接続する。これは、それ自体が(G4S)4リンカーを介して対応するVHドメインに接続されたVLドメインからなる。
【0522】
選択されたドメインの生物物理学的特性
選択されたドメインはより大きなスケールで生成され(0.2L〜1.2Lの発現量)、精製後に遠心濃縮チューブを使用して10mg/mL以上に濃縮された(表21)。
【0523】
ScFvは、4週間の安定性研究などの安定性研究に供された。scFvは、水性緩衝液(pH6.4で150mM NaCLを含む50mMリン酸クエン酸緩衝液)に10mg/mlで処方され、<−80℃、4℃、40℃で4週間保存された。少なくとも、1週間後、2週間後、及び各研究の終了時に、製剤中のモノマー及びオリゴマーの割合をSE−HPLCピーク面積の積分によって評価した。一部の分子について、追加の時点が記録された。表22は、研究のd28で得られたd7とエンドポイントの測定値を比較する。
【0524】
さらに、scFv分子の互換性は、凍結融解(F/T)サイクル(コロイド安定性)に関して評価された。F/T安定性評価では、保存安定性研究(SE−HPLC、SDS−PAGE)と同じ分析方法とパラメーター(%モノマー含有量と%モノマー損失)を適用して、5つのF/Tサイクルにわたって分室の質をモニターした。表23は、5回の繰り返しF/Tサイクルにおけるモノマー含有量の推移を%で示す。F/Tサイクルを繰り返しても、どの分子も4%以上のモノマー含有量を喪失しなかった。
【0525】
分子の熱変性は、蛍光色素SYPROオレンジを使用して評価した。関連する賦形剤条件のサンプルを調製し、qPCR装置でアッセイを実施した。蛍光発光は、ソフトウェアのカスタム色素キャリブレーションルーチンを使用して検出された。試験サンプルを含むPCRプレートは、25℃から96℃まで1℃ずつ温度を上げていった。展開遷移の中間点(Tm)は、ソフトウェアのGraphPad Prismによって、数学的な2次導関数法を使用して計算され、曲線の変曲点が計算された。報告されたTmは、3つの測定値の平均である。表24は、一般的な緩衝液(pH6.4のリン酸−クエン酸緩衝液、150mM NaCl)で調合された分子の融解温度を示す。
【0526】
選択された上位の分子は、短期のpHストレス安定性試験にかけられ、scFv分子は、pH値が3.5から7.5の一連の水性(リン酸−クエン酸塩)緩衝液システムで1mg/mlで配合された。モノマー含有量(%)及びモノマー損失(%)は、それぞれの緩衝液システムで40℃で2週間保存した後に分析した(データは示されない)。研究の過程でのモノマー含有量、モノマー損失、濃度、及び濃度損失の表形式の要約を表25に示す。
【0527】
多重特異性抗体の生物物理学的特性
選択された多重特異性分子を4週間の安定性研究などの安定性研究に供し、多重特異性分子を次の緩衝液:150mM NaCl、1Mショ糖、pH5.5、10mg/mlを含む25mMリン酸クエン酸塩緩衝液に配合し、<−20℃、4℃、20℃及び40℃で4週間保存した。少なくとも、製剤中のモノマーとオリゴマーの割合は、SE−HPLCを利用して、1日、4日、1週間後、及び12週間まで毎週評価された。表は、調査結果をまとめた表26である。
【0528】
【表26】
【0529】
【表27】
【0530】
【表28】
【0531】
【表29】
【0532】
【表30】
【0533】
【表31】
【0534】
【表32】