特表2021-502106(P2021-502106A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-502106細菌調製物、洗浄液の調製方法、洗浄液、および汚れた標的の洗浄方法
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  • 特表2021502106-細菌調製物、洗浄液の調製方法、洗浄液、および汚れた標的の洗浄方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502106(P2021-502106A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】細菌調製物、洗浄液の調製方法、洗浄液、および汚れた標的の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20201225BHJP
【FI】
   C12N1/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-526222(P2020-526222)
(86)(22)【出願日】2018年11月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月15日
(86)【国際出願番号】FI2018050833
(87)【国際公開番号】WO2019092324
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】20176015
(32)【優先日】2017年11月13日
(33)【優先権主張国】FI
(31)【優先権主張番号】20185343
(32)【優先日】2018年4月10日
(33)【優先権主張国】FI
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520151231
【氏名又は名称】グリーン ベリー オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ハアプサアリ ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】カアルレラ ティモ
(72)【発明者】
【氏名】アウランコ エスコ
(72)【発明者】
【氏名】カレヴァ オリ−ペッカ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BD33
4B065BD36
4B065CA57
(57)【要約】
本発明は、細菌調製物、洗浄溶液の調製方法、洗浄溶液、および不純物を含む標的を洗浄する方法に関する。洗浄液は、少なくとも部分カプセル等の細菌調製物を含み、プロバイオティクス等の人および動物に害のない細菌を水等の液体に混合したものである。使用される水は、好適には水道水であり、そこから前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分が除去され、好適には全てまたはほぼ全ての塩も除去されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を調製するための細菌調製物であって、前記細菌調製物には、人および動物に害のない細菌の芽胞、ならびに細菌性栄養素が含まれていることを特徴とする、細菌調製物。
【請求項2】
前記細菌調製物が、以下の投与カプセル、プレス片、濃縮物、粉末、顆粒、液体濃縮物、ゲル、アンプル、スプレーおよび錠剤、好ましくは投与カプセルからなる群より選択される細菌芽胞および細菌性栄養素を含む調製物であることを特徴とする、請求項1に記載の細菌調製物。
【請求項3】
前記栄養素は、
a.糖を含み、好ましくは前記糖は、フルクトース、ラクトースおよびグルコースからなる群から選択される少なくとも1つの糖を含み、ならびに
b.アミノ酸を含み、好ましくは前記アミノ酸は、L−アラニン、L−グリシン、L−バリンおよびL−アスパラギンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含み、ならびに
c.任意に添加剤、充填剤、酵素および/または塩を含む
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の細菌調製物。
【請求項4】
前記細菌調製物が塩、好ましくは塩化ナトリウム(NaCl)または塩化カリウム(KCl)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細菌調製物。
【請求項5】
人および動物に害のない細菌の前記芽胞は、バチルス属の菌株から選択され、好ましくは前記芽胞は、以下、バチルス・サブチリス、バチルス・サブチリスvar.amyloliquefaciens、バチルス・プミルス、バチルス・リケニホルミス、およびバチルス・メガテリウムからなる群から選択され、前記細菌調製物は、1つの菌株またはいくつかの菌株の混合物、好ましくは枯草菌を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細菌調製物。
【請求項6】
前記細菌調製物が凍結乾燥された細菌芽胞を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細菌調製物。
【請求項7】
人および動物に無害であり、方法において細菌調製物を水と混合する、細菌を含有する洗浄液の調製方法であって、前記洗浄液を調製する際に、前記細菌調製物を、細菌芽胞および細菌性栄養素を含有する細菌調製物として、好ましくはこれらを含有する部分カプセルとして、液体中に混合することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記洗浄液を調製する際の前記混合の後、洗浄液を使用する前に少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは1時間〜16時間混合液を保持することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
例えば、部分カプセルに充填されたプロバイオティクスの芽胞、好ましくは、1つの菌株または桿菌属のいくつかの菌株の混合物を含む前記細菌調製物が、前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分が除去された水、好ましくは水道水と混合されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
細菌および/または本質的に全ての塩を死滅させる成分が、活性炭、化学物質および/または逆浸透を用いて水から除去され、その後、前記細菌調製物が精製水中で混合されることを特徴とする、請求項7、8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄液を調製する際に使用される水が、以下のステップ:活性炭処理、化学物質、逆浸透、イオン交換、紫外線消毒、酸化性有機化合物の1つまたはいくつかを用いて脱塩水に変化することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも細菌調製物を含み、人および動物に害のないものを液体と混合する洗浄液であって、前記細菌調製物が細菌芽胞を含み、それは細菌性栄養素とともに細菌調製物、好ましくは部分カプセルに充填され、前記液体は前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分が除去された水であることを特徴とする洗浄液。
【請求項13】
前記細菌性栄養素は、細菌芽胞と共に細菌調製物、好ましくは部分カプセルに充填されることを特徴とする、請求項12に記載の洗浄液。
【請求項14】
前記細菌調製物が部分カプセルであり、前記部分カプセルの殻が前記細菌の栄養として機能するように配置されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の洗浄液。
【請求項15】
前記細菌調製物の内側、好ましくは部分カプセル内に、洗浄結果を高める薬剤も加えられている、および/または他の充填剤であることを特徴とする、請求項12、13または14に記載の洗浄液。
【請求項16】
前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分からの液体が水道水であり、細菌調製物と混合する前に塩、ミネラルまたは他の不純物を50ppm未満、望ましくは20ppm未満、最も好ましくは5ppm未満含むことを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項17】
前記細菌調製物中の細菌を死滅させる前記成分を、活性炭、化学物質および/または逆浸透を用いて液体から除去し、液体からも本質的に全ての塩を、好ましくは逆浸透および/またはイオン交換を用いて除去することを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項18】
前記細菌調製物の細菌芽胞が、プロバイオティクス芽胞であり、好適には、桿菌属の1つの株または数種の株であることを特徴とする、請求項12〜17のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項19】
人および動物に害のない細菌調製物を含む洗浄溶液を用いて、不純物を含む標的を洗浄し、洗浄対象の領域/スポット/標的が、人および動物に害のない細菌調製物と接触させる方法であって、洗浄対象の領域/スポット/標的を、少なくとも人および動物に害のない細菌芽胞を含む洗浄溶液に接触させ、液体中にその栄養成分を混合させ、そこから前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分を除去することを特徴とする方法。
【請求項20】
洗浄対象の領域/スポット/標的を洗浄溶液に接触させ、当該溶液は、少なくとも人および動物に害のない細菌芽胞を含み、それらの栄養素は水中に混合され、そこから前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分、前記細菌芽胞はプロバイオティクス芽胞であり、好ましくは1株または数株の桿菌属の混合物であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
洗浄対象の領域/スポット/標的を、洗浄液と接触させ、この洗浄液には少なくとも人および動物に害のない細菌の芽胞が含まれており、それらの栄養素は水と混合されており、それから前記細菌調製物および/または塩の細菌を死滅させる前記成分は、次のステップ:活性炭処理、化学薬品、逆浸透、イオン交換、UV消毒、酸化性有機化合物の1つ以上を使用して除去され、または洗浄対象の領域/スポット/標的を洗浄液と接触させ、この洗浄液には、人および動物に害のない少なくとも細菌の芽胞と、その脱塩水と混合された栄養素が含まれていることを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
洗浄液を調製する際に、前記混合後、形成された混合物を、洗浄液を使用する前に少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは1〜16時間保つことを特徴とする、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
不純物を含む標的を洗浄した後、前記細菌調製物と接触していた洗浄器具を水で洗浄し、そこから前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分を、本質的に+60〜+95℃、好ましくは+80〜+90℃の温度で除去してあることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
不純物を含む前記標的を洗浄した後、活性炭処理および/または逆浸透を用いて脱塩した、前記細菌調製物の前記細菌と接触していた前記洗浄器具を水で洗浄することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が機械的洗浄工程を含み、前記洗浄対象の領域/スポット/標的が洗浄器具を用いて処理されることを特徴とする、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌調製物、ならびに洗浄溶液を調製する方法、洗浄溶液、および不純物を含有する標的を洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による溶液は、非毒性洗浄および精製に関するものである。一般的に使用される洗剤および洗浄剤、後の洗浄剤は、多くの異なる成分から構成されており、製品ライフサイクル全体を通して環境への負担を引き起こす。
【0003】
洗浄剤の成分は、典型的に油ベースであり、これは再生可能な天然資源ではない。したがって、既知の洗浄剤の使用とその廃棄により、水、大気および土壌中に排出される。また、一部の洗浄剤の化学薬品に含まれる活性剤は毒性があり、生体内に蓄積し、食物連鎖において濃縮され得る。また、当該化学物質には、水系で富栄養化を引き起こす成分が含まれている。
【0004】
化学物質を含む洗浄剤は、人にも健康影響を及ぼす。人は、口および皮膚を通して、また気道を通して、または環境を通して間接的に、洗浄剤化学物質に接触し得る。さらに、人は、食品を通して洗浄剤化学物質と接触し得る。すべての洗浄剤化学物質は、排水処理工程で分解されないため、化学物質は、水中、地下水中、さらには飲料水中に蓄積されるとともに、魚類などの人の栄養にも蓄積される。化学物質の課題はまた、その使用が尚さらに耐性の高い微生物株の発生を引き起こすことである。
【0005】
公知の洗浄剤、特に消毒洗浄剤における成分の1つは、塩化物化合物である。このような洗浄剤の問題点は、皮膚に対して腐食性があり、眼を刺激することであり、眼を傷つけることさえある。また、ガスを放出し、吸入するとアレルギーまたは喘息症状および呼吸困難を引き起こすことがある。さらに、塩化物化合物を含む洗浄剤は、環境に悪い。
【0006】
様々なアレルギーならびに香料および化学物質に対する感受性が増加し、これらに対する認識も高まっている。これが、洗浄事業が洗浄剤中の化学物質の使用を削減する方法の探索を開始した理由の一つである。したがって、化学物質を含まない洗浄を提供するための既知の解決法の1つとして、オゾン化水が洗浄剤として使用されてきた。オゾンは非常に反応性が高く、強力な酸化剤であるため、微生物を死滅させるのに有効である。しかし、同じ理由で、オゾンの課題は、また健康にとって非常に悪く、あらゆる種類の有機物表面を傷つける可能性があることである。
【0007】
オゾンはほとんどすべての化合物と非常に容易に反応し、接触する。そのため、たとえば吸入すると、細胞内の脂肪、タンパク質などと非常に強く反応し、細胞を傷つけるかまたは死滅させる。
【0008】
吸入すると、オゾンは昼食機能を麻痺させ、肺組織を傷つけ、咳および呼吸困難を引き起こす。高濃度のオゾンに関連する他の症状は、眼の刺激と発赤、鼻とのどの刺激、疲労、悪心と頭痛である。また、高濃度のオゾンによりアレルギー症状が悪化することがある。特にオゾンによる刺激症状に敏感なのは、喘息患者および小児である。
【0009】
研究によると、ヨーロッパで3%もの人が、オゾンの影響で死亡しており、間接的なもの、または交通排出によるもの、およびそれらに起因するオゾン濃度によるものである。オゾン化された水で洗浄する場合、洗浄器または洗浄する表面が受ける用量は、交通によって引き起こされるよりも数百倍強い。しかし、オゾン化された水の有害な影響は減少しており、その理由は、例えば、1回の洗浄機会による曝露の時間が短いためである。清掃される空間にいる人の方が曝露は短いが、清掃を行う人は1日8時間まで簡単に曝露される。また、研究によると、高いオゾン濃度への非常に短時間の曝露は、深刻な健康問題を引き起こす可能性がある。オゾンにより引き起こされた死亡および疾患の1つの問題は、疾患が肺疾患であり、その起源を示すことが不可能であることである。したがって、これらの疾患および死亡は、オゾンによって引き起こされたものとしては指摘されていない。
【0010】
オゾン化された水を用いた洗浄の尚他の問題点は、オゾン濃度が非常に速やかに低下することであり、そのため、1回の洗浄後にすでにオゾン化された水の洗浄能力が、より多大な機械的洗浄が必要となる汚れの除去が始まる程度に低下する。これは、例えば、より強く洗浄するべき表面をスクラブし始めることを意味する。しかし、より強い強度を使うと、洗浄を行う人に負担がかかる。
【0011】
前述した課題と欠点のため、さらに無害で非毒性の洗浄剤が開発されている。有望な開発ラインの1つは、洗浄剤の活性剤として人および動物に害のない細菌を使用することであった。これらの症例のほとんどで、洗浄剤にはプロバイオティクスが活性剤として使用されている。プロバイオティクスの使用は、病院および病院の細菌問題から始まっている。問題は、細菌が殺菌剤に対する耐性を発達させる能力であった。このための有効な解決法の1つは、プロバイオティクスであり、他の種類の細菌を置き換え、施設の細菌株をより健康な種類に変える。このように、プロバイオティクスはもともと洗浄剤の活性剤として開発されたものではなく、消毒剤により生じた耐性問題を解決するために開発されたものである。従来の液体プロバイオティクス濃縮調製物では、本質的な特徴は、非毒性ではなく、その代わりにプロバイオティクスを含むという事実であった。プロバイオティクス濃縮物では、細菌芽胞を安定化するために殺生物剤が必要である。目的は、濃厚飼料中の芽胞から細菌に発育してはならないことである。それらは通常、従来の洗浄剤より毒性が低く、したがって有害性が低いが、通常は界面活性剤、すなわち表面活性剤もそれらに加えられ、それらのいくつかは毒性であるので、それらは如何にしても非毒性ではない。
【0012】
これらの従来技術の解決法において、芽胞として貯蔵された細菌を含む活性剤は、バイアルおよびアンプルのような特殊な容器または缶に液体濃縮物として充填される。細菌芽胞を含み、このように詰め込まれた液体濃縮物は、例えばプロバイオティクス濃縮物と呼ばれる。
【0013】
既知のプロバイオティクス濃縮調製物の問題点は、その投与である。濃縮液が過剰に投与されるリスクがあるため、洗浄業界では投薬は大きな課題である。さらに、1つの課題は、プロバイオティクス細菌の活性を確保すること、すなわち、プロバイオティクス濃縮物から製造された洗浄液中の細菌芽胞を生菌に変化させることである。プロバイオティクス濃縮物から製造される洗浄液の問題点は、細菌芽胞が芽胞として残る代わりに繁殖細菌に発育しないことである。次に、再びプロバイオティクス濃縮物自体の1つの問題は、細菌芽胞の安定化であり、そのため、濃縮物で覚醒せず、芽胞が細菌に変わる。
【0014】
洗浄剤を使用する場合、プロバイオティクス濃縮物は、使用される洗浄剤溶液を調製するために水中に投入される。通常、使用する水の水質に設定された要件がないため、例えば通常の水道水に使用される水には、塩化物またはオゾンなどの微生物を死滅させる化合物が含まれている場合がある。この場合、プロバイオティクス濃縮物からの細菌またはその少なくともその一部は、調製された洗浄剤溶液中でかなり速く死滅し、このため、洗浄液を使用する際には、洗浄結果は所望通りにはならないからである。したがって、細菌から期待される利点、すなわち、生きている細菌細胞を他の種類の細菌と置き換えるために表面に運ぶことは、うまくいかないかもしれない。
【0015】
1つの課題はまた、プロバイオティクス濃縮物中のプロバイオティクス芽胞が、適切な栄養を受けた後にのみ、調製した洗浄剤溶液中で再現性があり、機能している細菌に変わることである。この用途におけるプロバイオティクス芽胞とは、プロバイオティクス細菌の芽胞を意味する。通常、水道水にはこれらの栄養素が十分に含まれていないため、洗浄液を洗浄する表面に広げた後にのみ、および次にまた表面に適切な栄養が含まれている場合にのみ機能が得られる。したがって、従来技術の溶液に従ってプロバイオティクス濃縮物を使用することは、特定の、および均一な品質の洗浄溶液を調製することを可能にしない。さらに、液体プロバイオティクス濃縮物は非常に限られた有効期間を有するため、長期間貯蔵することはできない。これは、これらの調製物を取り扱うためのロジスティックスに関する一定の要件を設定する。1つの課題はまた、芽胞が容器の底に残る傾向があるため、使用前に濃縮物を振盪する必要があり、この場合、必要な細菌芽胞量が噴霧瓶から得られない危険性もあることである。液体プロバイオティクス濃縮物の運搬は環境にも負担をかけ、多くの空間を取り込み、それらを使用することは人間工学的ではなく、凍結し、プラスチック廃棄物を作り出し得る。
【0016】
従来技術のプロバイオティクス洗浄剤の使用に関連する別の問題は、プロバイオティクス濃縮物における細菌芽胞が、種々の毒素、通常は殺生物剤を用いて安定化されていることである。さらに、強毒性であり、このようにして、非毒性の洗浄、すなわち非毒性そのものの考え全体を破壊した緊張剤が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、前述した課題を解決し、経済的で簡単な細菌調製物、および本質的に非毒性の洗浄液の調製方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、洗浄効率が良好で、健康または環境に害を及ぼさない、経済的で化学物質を含まず、非毒性の洗浄液に最も近いものを提供することである。さらに、人および動物に害のない細菌を活性剤として使用する洗浄液を提供することを目的としている。また、本発明の目的は、健康を害することがなく、環境にとって安全であり、使用しやすい、汚れた表面を洗浄する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そこで、本発明は、洗浄液調製用細菌調製物に関し、細菌調製物には、人および動物に害のない細菌の芽胞と、細菌の栄養素が含まれている。本発明による細菌調製物は、請求項1の特徴付け部分に提示されているものを特徴とする。
【0019】
洗浄液を調製するための本発明による方法は、請求項7の特徴付け部分において提示されたものを特徴とする。これに対応して、本発明による洗浄液は、請求項12の特徴付け部分に提示されたものを特徴とする。さらに、不純物を含む標的を洗浄するための本発明による方法は、請求項19の特徴付け部分に提示されたものを特徴とする。本発明の他の実施形態は、他の請求項に提示されたものによって特徴付けられる。
【0020】
本発明の目的を遂行するために、人および動物に害のない細菌を含む洗浄液を調製するために、本発明による方法において、細菌調製物を水と混合する。好適には、前記細菌調製物は、細菌芽胞および細菌性栄養素を含む部分カプセルのような細菌調製物として水と混合される。
【0021】
本発明は、細菌芽胞が適当な栄養素と共にコンパクトな形態で充填されれば、調製された洗浄液中で細菌芽胞が速やかに機能性および生殖性細菌に変換されるという発見に基づいている。したがって、本発明による細菌調製物、方法、およびそれによって得られる洗浄溶液は、多くの利点を有する。本発明の考え方は、害のない細菌の大部分が洗浄される表面にもたらされ、それが、可能性のある有害な細菌、すなわち病原性細菌に取って代わるというものである。本発明による溶液では、細菌が機能性であり、洗浄液中に酵素を産生するため、また洗浄結果が改善されるであろう。酵素は、洗浄結果をさらに改善する。先行技術の解決法では、細菌の機能と再現性が同じレベルではなく、代わりに細菌は主に芽胞型であったため、酵素によってもたらされる利点は利用されていない。本発明の解決法では、細菌を洗浄される表面に添加し、その細菌はすでに機能性であるので、当該細菌は細菌に特徴的な方法で即座に機能することができる。このようにして、細菌芽胞は無駄にならず、代わりにその全能力を利用することができる。
【0022】
好ましくは、本発明による洗浄溶液は、少なくとも液体と混合された人および動物に害のない細菌化合物を含み、当該細菌化合物は、細菌性栄養素と共に、細菌調製物、例えば、部分カプセル中に充填された細菌芽胞を含む。好適には、前記液体は水であり、ここから、前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分、および本質的にはまた全ての塩、ならびに塩に加えて、また他の可能なミネラル、特にカルシウムおよびマグネシウムを含むものが除去されている。好適には、細菌性栄養素は、細菌芽胞と共に、部分カプセルのような細菌調製物に充填され、また部分カプセル殻は、前記細菌に対する栄養素として機能するように配置される。
【0023】
水は、選択された洗浄方法に適したあらゆる種類の適切な水または原水でよい。好適には、使用される水は、水道水であり、それらは、精製され、かつ/または、次の処理の1つもしくはいくつかを用いて脱塩水にされた:活性炭処理、化学物質、逆浸透、イオン交換、紫外線消毒、酸化性有機化合物。
【0024】
本発明による溶液の利点は、洗浄溶液が化学物質を含まない溶液であることである。したがって、本発明に従って使用される洗浄液は、ヒトに対してアレルギー症状または健康問題を引き起こさない。さらに、洗浄液は環境にやさしい。本質的に全ての塩が洗浄溶液中で液体として除去された脱塩水を使用する場合、乾燥後に洗浄された表面上に無機汚れは残らない。これに加えて、脱塩水は不純物をより良好に除去し、結合することが不可欠であるため、それを用いて得られた洗浄結果は、水道水よりも良好である。1つの利点は、また、本発明による洗浄液の非毒性のために、洗浄液の使用は、細菌株がより耐性に発育するのを促進しないことである。本発明による溶液は、残渣のない洗浄を可能にする。
【0025】
使用した細菌芽胞が凍結乾燥のように部分カプセルなどの閉じた細菌調製物中にある場合、さらなる利点は、細菌芽胞の寿命が優れ、ロジスティックスもより容易になることである。本発明による調製物の利点は、例えば、液体濃縮物よりもかなり少ない空間を取り込み、それらはより軽く、それらは凍結しないことである。1つのさらなる利点は、部分カプセルと部分カプセルの殻が細菌芽胞のための栄養を含んでいるので、洗浄液を調製しながら、溶液のための水に接触するとすでに効率的に繁殖している細菌に急速に発達するであろうことである。このように、洗浄対象の標的に配布された洗浄液は、迅速かつ効率的に効果を発揮することになる。さらにもう一つの利点は、部分カプセルのような細菌調製物は、多くのスペースを必要としないことである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、さまざまな栄養素の混合物を含むさまざまな溶液中で、細菌がどのくらいの速さで発芽し、機能性に変化するかを示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本出願において、以下の用語および表現は、以下の意味を有する:
「細菌調製物」とは、少なくとも、人および動物に害のない細菌芽胞と細菌性栄養素とを含む配合剤である。好適には、細菌調製物は、部分カプセル、押圧された片、粉末、顆粒または錠剤、特に部分カプセルなどの固体である。細菌調製物は、部分カプセル、押圧された片、濃縮物、粉末、顆粒、液体濃縮物、ゲル、アンプル、スプレーまたは錠剤からなる群から選択することができる。加えて、混合物は、他の必要な添加剤および充填剤を含んでいてもよく、これらは非毒性である。細菌調製物の内容物は、水に溶解して洗浄液を形成し得る。
【0028】
「細菌」または「細菌芽胞」は細菌であり、人および動物に害はない。これらは、好ましくは、食品品質が承認されたプロバイオティクスである。たとえば、人および動物に害のない細菌は、桿菌属の菌株から選択され得る。より具体的には、芽胞は、例えば、以下、バチルス・サブチリス、バチルス・サブチリスvar.amyloliquefaciens、バチルス・プミルス、バチルス・リケニホルミス、およびバチルス・メガテリウムからなる群から選択され、それによって、細菌調製物は、1つの株またはいくつかの株の混合物を含む。
【0029】
発明の詳細な説明
洗浄において、プロバイオティクスのような人および動物に害のない細菌を使用することは、そのようなものとして知られている。プロバイオティクスを使用する際の焦点は、洗浄結果ではなく、代わりに有害な細菌の予防であった。
【0030】
プロバイオティクスはまた、洗浄される表面から汚れおよび脂肪を効率的に除去することができる。プロバイオティクスの効率は、伝統的な洗浄とは逆に、有毒物質で洗浄される表面から有害な微生物を死滅させることを目的とするプロバイオティック洗浄微生物では、人および動物に害のないが、表面に広がるという事実に基づいている。この場合、例えばプロバイオティック細菌では、有害な微生物から細菌が生きている空間を引き継ぐ。しばらくして有害微生物がなくなるか、またはその菌株が著しく減少した。本発明は、細菌が洗浄結果の改善にも関与することに基づく。殺生物剤の使用を代用してもよい。プロバイオティクスを使用することによって、殺生物剤は毎日の洗浄において交換され得る。
【0031】
試験の結果、洗浄する表面に有害細菌、すなわち病原性細菌が大幅に減少するか、または完全に消失することが示されている。
【0032】
本発明による溶液、例えば、細菌調製物およびそれから製造される洗浄溶液は、従来技術の溶液と比較して有意な利点をもたらす。
【0033】
さらに、本発明の目的は、可能な限り非毒性の洗浄を提供することである。一実施形態によれば、本発明による細菌調製物および方法は、完全に非毒性の洗浄を提供する。
【0034】
洗浄結果は、4つの異なる因子:時間、温度、化学および力学の合計として伝統的に記述される。本発明による洗浄方法は、洗浄を単純化する。なぜなら、当該方法では、化学工程(すなわち、化学物質)を放置することができるからである。
【0035】
本発明による溶液、特に方法は、人および動物が直接接触する表面に特に適している。これらのためには、完全な非毒性および害のある細菌を害のない細菌に置き換えることが大きな利点である。
【0036】
本発明による洗浄溶液は、化学物質を含まない溶液であり、最も単純な形態では、例えばプロバイオティクスのような、人および動物に害のない細菌が混合された脱塩水のみを含む。本明細書中および後の脱塩水とは、少なくとも人および動物に害のない細菌を死滅させる成分が除去された水を意味する。好ましくは、また前述の水から本質的に全ての塩が除去されている。さらに、カルシウムおよびマグネシウムなどのミネラル、ならびに硬度に影響を及ぼすその他の成分が、水から除去されている。
【0037】
好適には、使用する水は水道水である。他の原水でもよい。通常、水道水には塩化物または塩化物含有化合物が成分として含まれているので、プロバイオティクス芽胞などの細菌芽胞を混合する前に、例えば脱塩水などの水を精製すべきである。そうでなければ、塩化物は細菌を死滅させるか、または少なくともその機能性を低下させるだろう。微生物の大部分は、かなり低い塩化物濃度ですでに死滅している。世界のさまざまな地域で、さまざまな塩化物化合物が使用されており、その量もさまざまであり、それによって塩化物を除去する必要性も様々である。
【0038】
塩化物の負の影響を解消することに加えて、水を精製するもう一つの重要な理由は、塩分およびミネラルを除去することであり、それによって水の洗浄能力が向上するであろう。それはいわゆる「飢餓水道」に変換され、より効果的に汚れと結合する。表面に残渣が残らないため、洗浄性も向上する。水の硬度を増す成分を除去することで、洗浄結果が向上する。同じ方法を用いて、重金属も水から除去され、これは、非毒性洗浄をさらに増強する。
【0039】
好ましくは、プロバイオティクスのような、人および動物に害のない細菌を死滅させる成分は、活性炭、化学物質および/または逆浸透を用いて、洗浄液に使用される水から除去される。さらに、逆浸透および/またはイオン交換を用いて、本質的に全てまたはほぼ全ての塩が、洗浄液に使用される水から除去される。好ましくは、洗浄液を調製する前に、逆浸透法を用いて水を精製する。本発明の洗浄液に使用する水は、洗浄液を調製する際に、塩および/または塩ミネラルおよび/または他の不純物を、50ppm未満、好ましくは20ppm、より好ましくは10ppm、最も好ましくは5ppm未満で含む。
【0040】
本発明の洗浄液に使用される、人および動物に害のない細菌は、前記細菌のための細菌性栄養素と共に、部分カプセル内などの細菌調製物として充填される。ラクトースのような栄養素が、好ましくは用いられる。好ましい実施形態において、本発明の細菌調製物はまた、栄養素として糖を含む。好ましくは、糖は少なくとも1つの糖を含み、これはフルクトース、ラクトースおよびグルコースからなる群から選択される。好ましい実施形態では、細菌調製物はアミノ酸を含み、好ましくはアミノ酸は少なくとも1つのアミノ酸を含み、それはL−アラニン、L−グリシン、L−バリンおよびL−アスパラギン、ならびに任意に塩、添加剤および/または充填剤からなる群から選択される。細菌調製物は、トリプトンのような他の栄養素を含むこともある。
【0041】
1つの実施形態によれば、本発明による細菌調製物は固体である。細菌芽胞は凍結乾燥され、そのため寿命が非常に良好であるため、固体調製物が望ましい。さらに、固体細菌調製物は、殺生物剤を用いなくてもその保存性が確保できるという利点がある。
【0042】
細菌調製物は、好ましくは部分カプセルである。さらに、当該場合の部分カプセルの殻は、前記細菌に対する栄養として機能する可能性がある。殻は、好ましくはゼラチンである。細菌は芽胞として部分カプセルの内側にあり、好ましくは凍結乾燥した芽胞であり、極端な条件でも長期間耐えることができ、殺生物剤を保存する必要がない。細菌は安定剤なしで保存されるため、凍結乾燥も好まれる。さらに、この部分カプセルは、種々の添加剤を含むことができる。好ましくは、部分カプセルは、洗浄液の洗浄結果をより効果的にする薬剤を添加剤として含む。これらの物質の1つは、例えば炭酸ナトリウム、すなわちソーダである。1つの実施形態によれば、本発明の細菌調製物は、ソーダを含む。
【0043】
凍結乾燥は、細菌調製物を調製するための好適な方法である。なぜなら、それゆえ、それらは依然として毒性なしで安定であるからである。細菌の良好な安定性は、長い寿命を保証することができるので、本発明の細菌調製物にとって非常に重要な特徴である。たとえば、細菌が液体と混合されると、安定した状態を保てず、自分の時間に覚醒しない、言い換えれば、その細菌は保存されないというリスクがある。別の選択肢は、細菌芽胞を塩中に保存することであり得る。本発明の溶液の目的は、細菌の非毒性安定化を提供することであった。これを凍結乾燥で可能にする。好適な実施形態によれば、凍結乾燥は、少なくとも−20℃、例えば−20℃〜−196℃、または例えば−20℃〜−90℃である温度で実施される。
【0044】
1つの実施形態によれば、細菌調製物は、さらに酵素を含む。酵素を用いれば、洗浄結果をさらに改善することができる。酵素は、不純物の種類に応じて選択することができる。例えば、血液および脂肪染色の除去は、細菌調製物に適切な酵素を添加することによって増強され得る。酵素は、好ましくは、人および動物に害のない酵素である。また、異なる酵素の組み合わせも可能である。1つの好ましい実施形態において、細菌調製物は、塩も含む。塩は、細菌の発芽を早めることができる。塩は、好ましくは、例えば塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムである。
【0045】
一実施形態によれば、本発明の細菌調製物は、細菌芽胞および細菌性栄養素を含有する調製物であり、当該調製物は、部分カプセル、押圧された片、濃縮物、粉末、顆粒、液体濃縮物、ゲル、アンプル、スプレーおよび錠剤、好ましくは部分カプセルからなる群より選択される。
【0046】
1つの実施形態によれば、本発明の細菌調製物は、脂肪、脂肪酸および/またはトリグリセリドを含まない。
【0047】
1つの実施形態によれば、細菌調製物は、部分カプセルの形態であり、細菌芽胞、および細菌性栄養素からなり、前記栄養素は、糖を含み、好ましくは、糖は、以下のフルクトース、ラクトースおよびグルコースからなる群からの少なくとも1つの糖を含み、アミノ酸は、好ましくは、アミノ酸は、少なくとも1つのアミノ酸を含み、それは、以下のL−アラニン、L−グリシン、L−バリンおよびL−アスパラギン、ならびに任意に塩、添加剤、充填剤および/または酵素からなる群から選択される。
【0048】
本発明による洗浄溶液は、所望の量の細菌調製物が溶解された精製水、例えば、上記の部分カプセルを含む。部分カプセル等の殻は、水に溶解し、部分カプセル内の細菌芽胞、同様に栄養素、およびおそらくまた充填剤も、溶解局面中に水と接触する。それによって、細菌芽胞は活性に発達し、分裂して細菌を増殖させ、カプセル内から栄養素を多く受け、殻から溶解すると、細菌は速やかに増殖し、洗浄液が有効になる。完全に機能している細菌は、汚れを栄養素として利用することができ、それによって芽胞よりも効率的に汚れを除去する。細菌芽胞が細菌に発育する過程の速度は、栄養素に依存する。速度は、例えば、少なくとも0.5時間、または少なくとも1時間、少なくとも2時間または少なくとも3時間とすることができる。好ましくは、洗浄液は、洗浄前に1時間〜16時間保つ。部分カプセルなどの細菌調製物は、洗浄液を使用する前に少なくとも液体に溶解する時間を有し、これは通常0.5時間以内に起こることが必須である。当該過程の速度は、液体の温度を変化させることによって変化させることができる。液体の温度は、好ましくは少なくとも20℃である。より迅速なプロセスを得るために、液体の温度は、好ましくは30℃または約30℃である。しかし、温度が高くなりすぎると、細菌の芽胞および細菌が損傷を受けることがある。
【0049】
1つの実施形態によれば、細菌調製物は、少なくとも5000万、例えば5000万〜10億、好ましくは1億〜5億のCFU、すなわちコロニー形成単位を含む。また、その量は、8000万〜8億CFU、または1億5000万〜4億5000万CFUであり得る。これに加えて、細菌調製物は、合計で約0.1g〜2g、または0.2g〜1.2g、好ましくは0.5〜1g、1gカプセルを栄養素として含む。
【0050】
部分カプセルのような調製物のサイズは、好ましくは0.5g〜5g、またはさらに10g、好ましくは1g〜2gである。重量は総重量であり、これには任意の添加剤および充填剤も含まれる。適切な重量は、細菌調製物の形態と目的に依存する。
【0051】
洗浄液1リットル当たりの細菌調製物の必要量は、例えば以下の通りである;
細菌調製物は、部分カプセルの形態であり、これにより500mlの液体につき1カプセルが添加される。カプセルには1億〜5億CFU、すなわちコロニー形成単位が含まれている。さらに、1カプセル中に0.5g〜1gの栄養素が含まれている。
【0052】
細菌調製物の総量は、例えば、1g/500ml〜5g/500mlであり得る。量は、栄養素の効率に依存する。
【0053】
細菌調製物の組成物の一例:
0サイズのカプセル(すなわち、500mgカプセル)は、以下の量の栄養素を含んでいてもよい:
グルコース:5.6mmol/l
グリシン:10mmol/l
塩化カリウム:10mmol/l
細菌芽胞:1億CFU(すなわち、コロニー形成単位)
【0054】
本発明の方法によれば、前記洗浄液は、細菌芽胞が細菌芽胞から生殖性細菌へと発育するにつれて、部分カプセル内の栄養素と部分カプセルの殻の栄養素が細菌芽胞に利用できるように水に溶解される、部分カプセル等の細菌芽胞および細菌性栄養素を含む細菌調製物として、人および動物に害のない細菌を含む細菌調製物と水とを混合して調製される。
【0055】
本発明によれば、例えばプロバイオティクスの芽胞を含む上記の細菌調製物、好ましくは桿菌属の1株または数株の混合物は、前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分および本質的には全ての塩も除去された水中に混合される。水道水を水として使用し、それは活性炭処理、化学物質、逆浸透、イオン交換、紫外線消毒、酸化性有機化合物の1つ以上のステップを用いて脱塩水にしてあることが特に好ましい。
【0056】
前述の方法で混合した洗浄液は、数日間またはさらに数週間にわたって使用することができる。このように、調製物は、例えば1日前に調製されてもよい。しかし、洗浄液は、洗浄液を使用する直前またはすぐ前に、脱塩した本質的に室温の水道水中で細菌調製物を混合して調製することが好ましい。好ましくは、混合は、洗浄液の使用の少なくとも1時間前、または数時間前に行う。時間は、例えば、1時間〜20時間または2時間〜16時間であり得る。1つの実施形態によれば、洗浄液は、その使用の少なくとも12時間前に調製される。それによって、大部分、すなわち、細菌芽胞の少なくとも50%が細菌芽胞から発芽細菌または栄養細菌に変換したことが保証される。細菌芽胞の少なくとも一部は洗浄前に溶液中の栄養細菌に変わる時間があることが不可欠である。これにより、洗浄結果の改善を達成することが可能になる。
【0057】
これに対応して、不純物を含む標的を洗浄するための本発明による方法では、洗浄される領域/スポット/標的を、洗浄液に接触させ、当該溶液は、少なくとも、人および動物に害のない細菌芽胞と、水中に混合されたその栄養素を含み、そこから、前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分が除去されたものである。前記細菌芽胞は、例えば、プロバイオティクス芽胞であり、好ましくは桿菌属の1株または数株である。例えば、バチルス・サブチリス、バチルス・サブチリスvar.amyloliquefaciens、バチルス・プミルス、バチルス・リケニホルミス、またはバチルス・メガテリウムである。1つの実施形態によれば、細菌調製物は、枯草菌の菌株を含む。この菌株は広範に研究されており、害のないことが示されているため、これが好ましい選択である。さらに、洗浄される表面上の有害な細菌を効率的に置換するので、本発明による溶液に良好に適している。
【0058】
好ましくは、洗浄される領域/スポット/標的は、洗浄溶液と接触され、当該洗浄溶液は、少なくとも、人および動物に害のない細菌芽胞および水と混合されたそれらの栄養素を含有し、そこから、前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分および/または本質的に全ての塩が、以下の1つ以上を使用して除去された:活性炭処理、化学薬品、逆浸透、イオン交換、UV消毒、酸化性有機化合物、または洗浄する領域/スポット/標的を洗浄液と接触させ、当該洗浄液には、少なくとも人および動物に害のない細菌の芽胞と、脱塩水に混合された栄養素が含まれる。好適には、使用する水は脱塩水道水である。また、水は、設定された要件を満たす、泉水のような他の適当な水であってもよい。精製すべき原水としては、例えば海水または湖水も利用でき、水質浄化法に適している。
【0059】
種々の大きさの異なる表面ならびに物体およびさらに繊維を、本発明による洗浄液および方法で精製することができる。本発明による洗浄方法は、機械的洗浄工程を含むことが好ましく、洗浄器具の片を本発明による洗浄液と組み合わせて使用する。このようにして、最も効果的な洗浄結果が得られる。
【0060】
好ましくは、不純物を含む標的を洗浄するための方法は、機械的洗浄ステップを含み、ここで洗浄すべき領域/スポット/標的は、洗浄器具で処理される。
【0061】
実際には、より小さい表面の洗浄は、例えば、以下の方法で行われる:1)本発明による洗浄溶液は、スプレーボトル中で混合され、これは、プロバイオティクスおよび脱塩水、すなわち、水のような、人および動物に対して害のない細菌調製物を含み、これから、前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分および本質的に全ての塩が除去されている;2)洗浄溶液は、ボトルから洗浄されるべき表面上に噴霧される;3)噴霧された表面は、清浄な洗浄布、好ましくは、マイクロ繊維布で拭かれる。
【0062】
同様に、より大きな表面、例えば床の洗浄は、以下の方法で行われる:1)プロバイオティクスなどの人および動物に害のない脱塩水および細菌調製物を、たらい、バケツまたはペールなどの水容器内の洗浄液に混合する、2)モップなどの洗浄器具の片を水容器内の洗浄液に湿らせる、3)洗浄する表面を湿潤/湿式洗浄器で拭く。
【0063】
別の方法もまた、:
1)洗浄液を投与瓶に混和する。
2)薬液ボトルは、バケツ/容器内の洗浄器具(モップまたは洗浄布など)を湿らせるために使用される。
3)洗浄する表面を、湿潤/湿式洗浄器具で拭き取る。
【0064】
より大きな表面は、好ましくは、通常、清潔な水のための独自の容器と、洗浄ブラシまたは他の対応する表面洗浄部材を有する、洗浄のための組合せ機械を使用して、洗浄してもよい。洗浄に関連して、本発明による洗浄溶液は、所望の混合比率が得られるまで、清浄な水容器中の脱塩水中で、人および動物に害のない細菌調製物を含む所望量の部分カプセルを混合することによって調製される。また、組合せ機械は自動ポーション機を備えていてもよく、それによって洗浄液の調製が自動的に行われる。
【0065】
汚れた標的を洗浄した後、人および動物に害のない細菌調製物、例えばプロバイオティクスと接触していた洗浄器具、例えば洗浄布、モップ、洗浄ブラシまたは同様の器具を、人および動物に害のない細菌調製物を死滅させる成分、例えばプロバイオティクスを除去した水で洗浄する。好ましくは、前記洗浄器具は、活性炭処理および/または逆浸透を用いて脱塩された水道水で洗浄される。
【0066】
洗浄水の温度は、例えば約+60〜+95℃、好ましくは約+80〜+90℃である。前述した洗浄器具は、例えば洗浄機で洗浄する。洗浄粉末は通常使用しないが、洗浄粉末を使用する場合は、いわゆる黒石けんまたは他の類似の天然石けんを使用してもよい。水の硬度を引き起こす成分を除去した脱塩水は、天然石けんでは沈殿を形成しない。天然石けんは、洗浄器具の洗浄に対してさえも完全に非毒性のプロセスが確保される可能性があるので、非毒性であり、したがって有益である。
【0067】
また、本発明による洗浄で使用される他のすべての洗浄器具は、洗浄される標的に直接接触していた前述の洗浄器具に加えて、前述の脱塩水による洗浄後に洗浄することができる。
【0068】
本発明の様々な実施形態は、前述の例に具体的に限定されるものではなく、後に提示する特許請求の範囲の限界内で変化しうることは、当業者には明らかである。溶液には、化学物質を含まない洗浄溶液を調製し、使用することが必須であり、人および動物に害のない、それ自体知られているプロバイオティクスなどの細菌組成物を、部分カプセルなどの細菌調製物として、できるだけ細菌にやさしい水に混合し、それによって、従来技術の溶液のように、細菌調製物を任意の種類の水に混合する場合よりも、洗浄溶液の効果が明らかに良好である。さらに、人および動物に害のない前記細菌調製物は、細菌が必要とする栄養素および/または部分カプセルの殻も細菌に適した栄養素と一緒に、例えば部分カプセル内で細菌芽胞として保存されることが必須である。
【0069】
実施形態のより詳細な例:
1.人および動物に害のない細菌を含む洗浄液を調製する方法であって、当該方法において、細菌調製物は水と混合され、洗浄液を調製するときに、前記細菌調製物は、細菌芽胞および細菌性栄養素を含む部分カプセルとして液体中に混合されることを特徴とする方法。
【0070】
2.部分カプセルに充填されたプロバイオティクスの芽胞用、好適には桿菌属の1株または数株の混合物を含む前記細菌調製物を、水、好適には水道水と混合し、そこから前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分を除去することを特徴とする、例1に記載の方法。
【0071】
3.細菌調製物の細菌を死滅させる成分および/または本質的に全ての塩が、活性炭、化学物質および/または逆浸透を用いて水から除去され、その後、前記細菌調製物が精製水中に混合されることを特徴とする、例1または2に記載の方法。
【0072】
4.洗浄液を調製する際に使用する水を、活性炭処理、化学物質、逆浸透、イオン交換、UV消毒、酸化性有機化合物の1つまたはいくつかのステップを用いて脱塩水に変化させることを特徴とする、先行する例のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
5.少なくとも細菌調製物を含む洗浄液であって、人および動物に害のないものを液体と混合し、前記細菌調製物が細菌芽胞を含み、それは細菌性栄養素とともに細菌調製物、好ましくは部分カプセルに充填され、液体は前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分が除去された水であることを特徴とする洗浄液。
【0074】
6.前記細菌性栄養素が細菌芽胞と共に細菌調製物、好ましくは部分カプセルに充填されることを特徴とする、例5に記載の洗浄液。
【0075】
7,細菌調製物が部分カプセルであり、部分カプセルの殻が前記細菌の栄養として機能するように配置されていることを特徴とする、例5または6に記載の洗浄液。
【0076】
8.細菌調製物の内部に、好ましくは部分カプセル内に、また洗浄結果を向上させる剤および/または他の充填剤が添加されていることを特徴とする,例5、6または7に記載の洗浄溶液。
【0077】
9.前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分が水道水である液体であることを特徴とする、例5〜8のいずれか1つに記載の洗浄液。
【0078】
10.活性炭、化学物質および/または逆浸透を用いて、前記細菌調製物中の細菌を死滅させる前記成分を液体から除去し、液体からも本質的に全ての塩を除去し、好ましくは逆浸透および/またはイオン交換を用いることを特徴とする、例5〜9のいずれか1つに記載の洗浄液。
【0079】
11.前記細菌調製物の細菌芽胞が、プロバイオティクス芽胞、好ましくは、1つの染色液または桿菌属のいくつかの菌株の混合物であることを特徴とする、例5〜10のいずれか1つに記載の洗浄液。
【0080】
12.人および動物に害のない細菌調製物を含む洗浄液を用いて、洗浄対象の領域/スポット/標的を人および動物に害のない細菌調製物と接触させる方法であって、洗浄対象の領域/スポット/標的を、少なくとも人および動物に害のない細菌芽胞を含む溶液と接触させ、液体中にその栄養成分を混合させ、そこから当該細菌調製物中の細菌を死滅させる成分を除去したことを特徴とする洗浄方法。
【0081】
13.洗浄対象の領域/スポット/標的を洗浄液に接触させ、当該溶液は、少なくとも人および動物に害のない細菌芽胞を含み、それらの栄養素は水中に混合され、そこから前記細菌調製物中の細菌を死滅させる成分、前記細菌芽胞はプロバイオティクス芽胞であり、好ましくは1株または数株の桿菌属の混合物であることを特徴とする、例12に記載の方法。
【0082】
14.洗浄対象の領域/スポット/標的を洗浄液と接触させ、当該洗浄液には、人および動物に害のない少なくとも細菌芽胞と、水と混合された栄養素が含まれ、そこから、前記細菌調製物および/または塩の細菌を死滅させる前記成分は、以下のステップの1つ以上:活性炭処理、化学物質、逆浸透、イオン交換、UV消毒、酸化性有機化合物を使用して除去され、または洗浄対象の領域/スポット/標的を洗浄液と接触させ、当該洗浄液には少なくとも人および動物に害のない細菌芽胞が含まれており、その栄養素は脱塩水と混合されることを特徴とする、例12または13に記載の方法。
【0083】
15.不純物を含む標的を洗浄した後、前記細菌調製物と接触していた洗浄器具を水で洗浄し、そこから前記細菌調製物の細菌を死滅させる成分を、本質的に+60〜+95℃、好ましくは+80〜+90℃の温度で除去したことを特徴とする、例12〜14のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
16.不純物を含む標的を洗浄した後、細菌調製物の細菌と接触していた洗浄器具を水で洗浄し、活性炭処理および/または逆浸透を用いて脱塩したことを特徴とする、例15に記載の方法。
【実施例】
【0085】
実施例1.
本発明の方法および/または洗浄液にとって、細菌が発芽するか、または洗浄工程の前に栄養体に発育する時間を有していることが重要である。
【0086】
溶液中に存在する細菌の百分率を測定する試験を行った:芽胞/発芽/栄養細菌。試験には、逆浸透法を用いて精製した水を用いた。
【0087】
実施した測定値とその結果は、表1に見ることができる。また、図1に測定の結果を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
試験1は基準例である。試験2〜6では、細菌芽胞ならびに細菌性栄養素を含む本発明の細菌調製物が使用される。
【0090】
結果は、本発明の細菌調製物を使用した場合、最も速い細菌の「覚醒」、すなわち発芽、ならびに栄養状態への変化が起こることを示す。全体的に最も効率的な混合物は6番であり、糖(グルコース)、アミノ酸(グリシン)ならびに塩(KCl)を組み合わせた。

図1
【国際調査報告】