特表2021-502182(P2021-502182A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-502182塞栓装置を送達するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502182(P2021-502182A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】塞栓装置を送達するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20201225BHJP
【FI】
   A61B17/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-526010(P2020-526010)
(86)(22)【出願日】2018年10月24日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月6日
(86)【国際出願番号】US2018057369
(87)【国際公開番号】WO2019094197
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】15/809,911
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】515345089
【氏名又は名称】アバンテック バスキュラー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォルマー,ブレット,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ホシノ,ライアン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】デベア,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハフマスター,アンドリュ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ハルデン,カール,スターリング
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD63
(57)【要約】
塞栓装置を送達するシステムおよび方法が開示されている。ある実施形態では、システムおよび方法は、カテーテル、カプラー、および塞栓装置の組み合わせを対象としてもよい。カプラーはカテーテル内に配置されている。塞栓装置は近位端で保持機構に連結される。塞栓装置が動脈内の所定の位置に送達されるまで、塞栓装置は、カプラーが保持機構に係合することによって、カテーテルに係合する。塞栓装置は、カテーテル上に形成された固定機構にカプラーを固定することによって、送達カテーテルにさらに固定される。送達カテーテルが動脈内の所望の位置に到達すると、塞栓装置は、カプラーのループ部がまずロックウィンドウから分離し、次いで保持機構から分離するように、単純にカプラーを近位に引っ張ることによって、送達カテーテルから解放される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配置された弾性カプラーを有し、かつ、塞栓装置の開口部と係合するように構成されたカテーテルと、
前記カプラーに動作可能に連結され、前記カプラーを前記塞栓装置に係合するように操作するように構成された作動装置と、
を備えることを特徴とする塞栓処置装置。
【請求項2】
前記弾性カプラーは、上方に曲がるとともに前記開口部に向かって延びる操作可能な先端部を備えることを特徴とする請求項1に記載の塞栓処置装置。
【請求項3】
前記弾性カプラーは、軸を有する細長部材を備え、前記操作可能な先端部は前記軸から離れて動作し続けることを特徴とする請求項2に記載の塞栓処置装置。
【請求項4】
前記カテーテルは、前記カテーテル上に配置されたロックウィンドウを備え、かつ、前記ロックウィンドウで前記弾性カプラーに係合するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の塞栓処置装置。
【請求項5】
前記弾性カプラーは、操作可能な先端部を有し、かつ、前記ロックウィンドウで前記弾性カプラーを固定するように構成されることを特徴とする請求項4に記載の塞栓処置装置。
【請求項6】
前記カテーテルは、遠位端を備え、前記ロックウィンドウが前記カテーテルの遠位端に配置されることを特徴とする請求項4に記載の塞栓処置装置。
【請求項7】
前記弾性カプラーはループを備えることを特徴とする請求項1に記載の塞栓処置装置。
【請求項8】
前記塞栓装置の前記開口部は、前記塞栓装置の保持機構によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塞栓処置装置。
【請求項9】
前記弾性カプラーは形状記憶材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の塞栓処置装置。
【請求項10】
前記カテーテルは、前記カテーテル内に配置されるとともに前記係合部材の前記軸と交差するクロスバーを備えることを特徴とする請求項1に記載の塞栓処置装置。
【請求項11】
開口部を備えた保持リングを有する塞栓装置と、
細長カテーテルと、
前記細長カテーテル内にスライド可能に配置されるとともに、前記開口部を通して前記塞栓装置を保持するように構成された弾性カプラーと、を備えることを特徴とする塞栓装置送達システム。
【請求項12】
前記細長カテーテルは、前記細長カテーテル上に配置され、前記弾性カプラーを前記塞栓装置に係合させるように構成されたロックウィンドウをさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の塞栓装置送達システム。
【請求項13】
前記弾性カプラーは、前記開口部に係合し、かつ、前記ロックウィンドウから突出して、前記塞栓装置を前記細長カテーテルに固定するように構成された端部をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の塞栓装置送達システム。
【請求項14】
前記端部は、前記開口部および前記ロックウィンドウに係合するように、上方に曲がるように構成された可撓性材料を備えることを特徴とする請求項13に記載の塞栓装置送達システム。
【請求項15】
前記端部は、前記開口部および前記ロックウィンドウに係合するように、形状を変更させるように構成された形状記憶合金を備えることを特徴とする請求項13に記載の塞栓装置送達システム。
【請求項16】
前記細長カテーテルは、近位端を備え、前記近位端は、前記カプラーを前記ロックウィンドウおよび前記開口部から解放するように、前記近位端に向けて前記カプラーの前記端部を操作するように構成されたことを特徴とする請求項13に記載の塞栓装置送達システム。
【請求項17】
前記細長カテーテルは、遠位端を備え、前記ロックウィンドウは、前記塞栓装置が前記細長カテーテル内に部分的に含まれるように、前記細長カテーテルの前記遠位端に隣接して配置されていることを特徴とする請求項12に記載の塞栓装置送達システム。
【請求項18】
前記細長カテーテルは、前記細長カテーテル内に配置されるとともに前記係合部材の軸と交差するクロスバーを備えることを特徴とする請求項11に記載の塞栓装置送達システム。
【請求項19】
塞栓装置を送達する方法であって、
操作可能な先端部を有する弾性カプラーに前記塞栓装置の開口部を係合させることによって、送達装置をカテーテルに係合させるステップであって、前記カプラーは前記カテーテル内に配置されている、ステップと、
前記カテーテルを患者の動脈に挿入するステップと、
動脈瘤に隣接した動脈内で、前記塞栓装置を前記カテーテルと共に操作するステップと、
前記カプラーを開口部から引っ込めるステップと、
前記カテーテルを前記動脈から取り外すステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記操作可能な先端部を、前記カテーテルに配置されたロックウィンドウに固定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記塞栓装置を解放するために、近位方向で前記カプラーを引っ張ることによって前記カプラーを作動するステップをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記係合させるステップは、前記塞栓装置を固定するように、前記カプラーを前記カテーテルの前記遠位端に押圧することをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記カプラーを引っ込めるステップの間、前記カテーテル内に配置されたクロスバーで前記カプラーを直線化することをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動脈瘤は、動脈の壁部に形成される血液の隆起であり、脳、大動脈、脚および脾臓を含むあらゆる動脈で発達する可能性がある。様々な動脈瘤が、典型的には嚢状の形体で形成され、嚢状動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血として知られる発作が起こりうる。動脈瘤をクリップで挟む、または密閉する観血的手術が、動脈瘤の治療および除去の選択肢であるが、当該手術には時にリスクが伴い、より大きなサイズの動脈瘤および/またはより敏感な場所にできた動脈瘤に対して不適切または危険な場合がある。従って、動脈瘤の治療、減少および/または除去は患者の長期にわたる健康にとって重要である。
【背景技術】
【0002】
観血的手術の代替として、外科医は、発達した動脈瘤を治療するために、閉塞性塞栓装置を動脈内に配置する、最小限の侵襲的治療を実施することがある。かかる治療において、閉塞性塞栓装置(例えばブロック装置)が嚢状の動脈瘤を血管から分離または遮断するための位置で嚢状動脈瘤に配置される。閉塞性塞栓装置の配置は、当該閉塞性塞栓装置が血管に挿入され、血管を介して操縦され、動脈瘤を治療するように、典型的には閉塞性塞栓装置を運搬するカテーテルを使用して実施される。
【0003】
従来の塞栓装置配備システムは、患者体内の動脈内で、塞栓装置を操作、配置および解放しながら、塞栓装置の配置することに難しさを呈しており、その扱いにくさが証明されている。このことは特に脳動脈瘤に該当する。配備処置は塞栓装置の正確な配置を必須とし、この処置中のいかなる誤りもが脳への重大な損傷を引き起こす可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面と合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、より良好に理解されるため、請求項の態様および多くの付随する有利点が、より容易に認識されるであろう。
【0005】
図1(a)】脳動脈瘤の患者の概略図である。
【0006】
図1(b)】図1(a)の治療中の脳動脈瘤をより詳細に示している。
【0007】
図2(a)】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
図2(b)】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
図2(c)】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
【0008】
図3】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った図2(a)−(c)に示される塞栓装置送達システムの、上方ロックウィンドウを通って延長するカプラーの操作可能な先端部の図である。
【0009】
図4】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った図2(a)−(c)に示される塞栓装置送達システムの、下方ロックウィンドウを通って突出するカプラーの操作可能な先端部の図である。
【0010】
図5】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った図2(a)−(c)に示される塞栓装置送達システムの、近位端に接続された作動ハンドルの図である。
【0011】
図6】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った図5の作動ハンドルの分解組立図である。
【0012】
図7】本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った塞栓装置送達方法を示したフロー図である。
【0013】
図8(a)】本明細書で開示される発明の主題のさらなる実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
図8(b)】本明細書で開示される発明の主題のさらなる実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
【0014】
図9(a)】本明細書で開示される発明の主題のさらに別の実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
図9(b)】本明細書で開示される発明の主題のさらに別の実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
図9(c)】本明細書で開示される発明の主題のさらに別の実施形態に従った塞栓装置送達システムの図である。
【0015】
同様の構成要素および特徴を言及するために、本発明および図面を通じて同一の付番が使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書で開示される実施形態の発明の主題は、法的要件を満たすように特定性を伴って説明されているが、本説明は特許請求の範囲を限定することを必ずしも意図してはいない。請求される発明の主題は、別の方法で具現化されてもよく、異なる要素またはプロセスを含んでもよく、また、他の既存の、または将来の技術と組み合わせて使用されてもよい。本説明は、個々のプロセスの順番、または要素の構成が明確に説明されている場合を除き、様々なプロセスまたは要素の間の特定の順番または構成を暗示していると解釈されるべきではない。
【0017】
実施形態は、本明細書の一部を形成するとともに、本明細書に説明されるシステムおよび方法が実行されるであろう例示的実施形態を一例として示した、添付の図面を参照することにより、以下に、より完全に説明される。ただし、塞栓装置送達システムは、多くの異なる形態で具現化することが可能であり、本明細書中で明記される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本発明が法定要件を満足し、当業者に対して発明の主題の権利範囲を伝えるように提供されるものである。
【0018】
要約すると、本明細書で開示される発明の主題は、塞栓装置送達システム、方法および装置に関するものであってもよい。実施形態では、例えば、塞栓装置送達システムは、送達カテーテル、該送達カテーテル内に設置されたカプラー、および、当該カプラーによって運搬および配置されうる塞栓装置を備える。送達カテーテルは、カプラーが、チューブの遠位端に向かって配置されたコイル係合機構と共に、チューブ内部にスライド可能に配置されるように、中空チューブであってもよい。ある実施形態では、カプラーは、送達カテーテルの遠位端に向かって、コイルに係合するためのループ部を有する細長の形状であってもよい。カプラーのループ部は、様々な角度で曲げられるような、弾性材料、または、ニチノールすなわちニッケルチタンなどの形状記憶合金であってもよい。送達カテーテルとカプラーとは共に動脈に挿入され、動脈瘤の近傍に配置するとともに動脈瘤を治療するために、塞栓装置を動脈瘤へと運搬する。
【0019】
塞栓装置は、保持機構(例えば開口部)によってカプラーの遠位端に連結されてもよい。塞栓装置が動脈の所定の位置に送達されるまで、塞栓装置は、カプラーのループ部を塞栓装置の保持機構にインターロックすることによって、送達カテーテル内に配置されるカプラーに固定されてもよい。以下にさらに詳述されるように、カプラーの操作可能な係合部材が塞栓装置の方端で保持機構に係合し、次いで、所望のタイミングまで、塞栓装置が送達カテーテルから分離するのを防ぐように、固定機構(例えば上方ロックウィンドウ)に対して突出してもよい。カプラーの操作可能な係合部材は、カプラーの動きを抑制するために、U字型曲線の底部がさらなる固定機構(例えば下方ロックウィンドウ)に対して延長するように、U字型の形状であってもよい。上方ロックウィンドウは、塞栓装置をカプラーに送達位置で固定するために、ループ部の先端が上方ロックウィンドウに係合するように、遠位端付近のチューブの少なくとも一方の端部に形成されている。下方ロックウィンドウは、U字曲線の最下部の曲線が下方ロックウィンドウに係合し、さらに、操作可能な係合部材の先端が上方ロックウィンドウに同時に係合するように、遠位端付近のチューブの上方ロックウィンドウの正反対側に形成される。送達カテーテル内のチューブの軸に交差して形成されるクロスバーは、操作可能な係合部材の遠位方向および近位方向のいずれかへの動きを抑制することによって、クロスバーと、送達カテーテルの遠位端との間の所定位置に、カプラーがとどまることをさらに支援する。カプラーの近位端は、カプラーが執刀医によって操作可能となるように、作動装置(アクチュエータ)と連結されている。作動装置は、執刀医が塞栓装置を解放する機構でカプラーを操作するためのハンドラを有している。送達カテーテルが動脈の所望の位置に到達すると、塞栓装置は、カプラーのU字曲線部とカプラーのループ部が、まずロックウィンドウから分離され、次いで、カプラーが保持機構を分離することによって塞栓装置を解放するように、作動装置を介して、単純に近位にカプラーを引っ張ることによって、送達カテーテルから解放されてもよい。引っ張る動作の間、フックや曲線端部を有していないカプラーのループ部は、配置後の塞栓装置の衝突、引っ張り、および動作の大きなリスクがない。なぜなら、カプラーの可撓性を有するループ端部は、クロスバーを含む、または含まない保持機構の端部によって直線化されており、ロックウィンドウおよび保持機構から、より容易に操作ができるからである。さらに、直線化されたカプラーは、送達カテーテルのチューブを通って容易に引き抜かれることが可能である。この点は、一旦配置された塞栓装置を容易に取り除く、または移動するために、フック、または他の非可撓性係合/送達構成要素を使用する、従来の塞栓装置送達システムに対する有利性である。さらに、本明細書で論じられる実施形態の単純な構造は、より手頃な価格で効率的に製造できる。これらの、および他の有利性は、以下の図1−6の詳細な説明によって、より明確となろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(a)は脳動脈瘤30を持つ患者10の透視図である。動脈瘤は心臓および脳を含む、人体のあらゆる動脈に形成されうる。脳20の血管(例えば動脈)40に形成される動脈瘤は、脳動脈瘤(cerebral aneurysmまたはbrain aneurysm)30と呼ばれる。この例では、脳動脈瘤30は風船に似ている。動脈瘤30は動脈の脆弱性に起因することから、薄い動脈壁40を含む、またはそのような動脈壁40に近い動脈瘤30は破裂する場合がある。破裂した動脈瘤(図示せず)は発作の発症に大きく影響するため、破裂する前に治療されなければならない。図1(b)はより詳細な、塞栓装置送達装置を使用した治療の最中の、図1(a)の脳動脈瘤である。図1(b)の塞栓装置送達システムは、配備(deployment)カテーテル50と、場合によっては配備カテーテル50内部にマイクロカテーテル60を含む。従来型の塞栓配備システムは、動脈40に挿入され、所望の位置に到達するまで、動脈40を通過させられる。所望の位置で、配備カテーテル50および/またはマイクロカテーテル60は動脈瘤30の内部に、または動脈瘤30の付近で、塞栓装置70を解放する。
【0021】
動脈瘤30の位置、および特性に応じて、塞栓装置70は、図1(b)のように、さらなる血流が動脈瘤30に向かうことを防ぐために、嚢状動脈瘤30の内部に配置されるか、動脈瘤のネックに配置される。塞栓装置の配備機構は、図1(b)に示されるように、塞栓装置70を配備カテーテル50から押し出すステップと、塞栓装置70に係合するためにねじまたは糸または繊維(図示せず)を使用し、塞栓装置を分離するときに、当該糸または繊維を切断するステップと、塞栓装置70を解放するために、圧力(図示せず)、熱(図示せず)、または電気(図示せず)を使用するステップと、塞栓装置70を配備カテーテル50(図示せず)から解放するためのインターロック(連結)機構を解除するステップと、を含んでもよい。塞栓装置送達システムのインターロック機構は、配備カテーテル50が、配備カテーテル50に強固に連結された塞栓装置70を用いて動脈40を移動するように、典型的には、塞栓装置70を、動脈40内部を通して運搬するために、配備カテーテル50の一部分と塞栓装置70とを連結する。しかし、従来型の塞栓装置配備システムにおけるインターロック機構は、配備カテーテル70が、効果的に塞栓装置を解放するために望ましい位置に到達するまで、塞栓装置をしっかりと保持するなど、信頼性を実現するために多数の構成要素または機能を必要とする。多くの従来のインターロック機構は、配備カテーテル50および塞栓装置70を固定するように連結するための追加的なロック構成要素を必要とする。だが、信頼性と円滑な送達とを実現するために多くの構成要素を有することが、配備システムの異常または故障の可能性の高さにより、着実かつ信頼性の高い送達という目的を妨げることになり、結果として治療中の重大なミスを引き起こす。
【0022】
図2(a)―(c)は、本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った塞栓装置送達システム100の図である。図2(a)は、ある実施形態の送達カテーテル110に連結された塞栓装置160を示している。送達カテーテル110は、送達カテーテル110の軸(図示せず)に沿った近位端112および遠位端120を含み得る。送達カテーテル110の遠位端120が動脈に挿入されるとき、遠位端120は所望の位置(例えば動脈瘤の位置)に到達するように、動脈を通って操縦されて得る。送達カテーテル110の遠位端120は、動脈を通って操縦されるので、塞栓装置160は送達カテーテル110の遠位端120に強固に連結されていなければならない。送達カテーテル110は、近位端112から遠位端120へと延伸する中空内部チューブによる細長のシリンダとして設計されてもよい。送達カテーテル110は動脈を通って移動するため、細長のシリンダとしての送達カテーテル110には、可撓性材料が使用されてもよい。ある実施形態では、送達カテーテル110の可撓性材料は、シリコン、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレ(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロンに加え、螺旋中空撚り線チューブのような金属製カテーテル部品、および、レーザーカット可撓チューブを含む。送達カテーテル110用の可撓性材料は、米国アイオワ州のFort Wayne Metals社から入手可能なHHS(helical hollow strand)(登録商標)を含んでもよい。
【0023】
送達カテーテル110は、送達カテーテル110の中心軸に沿って配置されるカプラー(結合器)130をさらに含んでいる。カプラー130は近位端132および遠位端140を有し得る。ある実施形態では、カプラー130の近位端132は、送達カテーテル110の近位端112を通って延伸する直線部材であってもよい。近位端132は、執刀医がカプラー130を送達カテーテル110内部で逆行するように動かすことによって、カプラー130を作動する機構をさらに含んでもよく、この点は図5でさらに詳述されている。カプラー130の直線部材は、カプラー130の遠位端方向の係合部材140をさらに形成してもよい。ある実施形態では、係合部材140は、ニチノール、NiTi、すなわちニッケルチタンなどの形状記憶合金で製造された小口径ループとして形成されてもよい。形状記憶合金は、超弾性、および、元の形状を記憶する独自の特性を有している。従って、形状記憶合金は延伸されて延伸形態に維持されてもよいが、当該合金は延伸状態から解放されると元の形状に戻る。操作可能な係合部材140は、熱、電気、または物理的な力に暴露されると、より剛性を増長/減少し、および/またはより弛緩性を増長/減少するようにさらに構成されてもよい。図2(b)および2(c)に関して論じられているように、上記は塞栓装置の送達処置中、カプラー130が送達装置160に係合、操作および分離することを可能にする。
【0024】
送達カテーテル110に連結された塞栓装置160は、動脈内部または動脈瘤付近の適切な位置に配置されると膨張するように構成された塞栓装置160を含んでもよい。ある実施形態では、塞栓装置160はプラチナ製コイルであってもよい。塞栓装置160は、近位端172および遠位端174を含むことができ、また、送達カテーテル110と強固に連結するために、保持機構180を塞栓装置160の近位端172に形成してもよい。様々な実施形態において、保持機構180は、塞栓装置160と分離して形成され、塞栓装置160の近位端172で取り付けられた閉リング、フープ、またはアイレット(小穴)として形成されてもよい。さらなる実施形態では、保持機構180は、塞栓装置160と一体的に形成されてもよい。カプラー130に係合するのに適したかかる近位端172を有した保持機構180は、開口部190を形成し、当該開口部190によって、カプラーの近位端172が係合および貫通してもよい。保持機構180は、ポリプロピレンまたはコイルの一次巻線からのプラチナ繊維で形成されてもよい。塞栓装置の配置および送達の間、保持機構180(および、時には塞栓装置160全体)が、遠位端120付近で、送達カテーテル110内部に配置されてもよい。従って、保持機構180および塞栓装置160は、動脈を通して操作されている間に送達カテーテル110の遠位端120内部に保持されるように、開口部190の直径および塞栓装置160の直径は、送達カテーテル110の内径よりも狭くてもよい。
【0025】
送達カテーテル110が塞栓装置160に係合するとき、カプラー130の操作可能な係合部材140は、操作可能な係合部材140を保持機構180の開口部190に延ばすことによって、保持機構180に送達カテーテル110の遠位端120で係合する。この構成に関して、保持機構180が、操作可能な係合部材140のわずかな移動量で、保持機構180の開口部190内部を動き回ることを可能にするように、開口部190の内径が、操作可能な係合部材140の直径よりもわずかに大きくてもよい。ある実施形態では、操作可能な係合部材140は、上方に曲がった形状をすることにより、開口部190を通って上方に延びてもよい。操作可能な係合部材140は、当業者が曲線の方向に適宜方向を変更するように、執刀医による送達カテーテルの操作に起因して、送達カテーテル110の回転に反応し、上方ではなく下方または横方向に延びてもよい。さらなる実施形態では、操作可能な係合部材140は送達カテーテル110の軸から外れて操作される。操作可能な係合部材140の超弾性および形状記憶特性により、操作可能な係合部材140は、その形状を、例えば真っ直ぐな構成から上方に曲線を描く形状に変形することが可能である。さらなる実施形態では、操作可能な係合部材140は、保持機構180の開口部190を通って延びるように、一部分で垂直に湾曲してもよい。
【0026】
先に簡潔に論じられたように、送達カテーテル110は、該送達カテーテル110の遠位端120付近にて、中空チューブの内壁の片側の上方ロックウィンドウ150、および、送達カテーテル110の遠位端120付近にて、中空チューブの内壁のもう一方の側の下方ロックウィンドウ152を形成している。一実施形態では、操作可能な係合部材140はU字型曲線154を形成してもよく、操作可能な係合部材140の当該下方曲線154は、上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ152によるロック特性によって保持されてもよい。この構成において、操作可能な係合部材140の下方曲線154の底部は、下方ロックウィンドウ152内に維持されてもよく、操作可能な係合部材140の先端部200は、送達カテーテル110を動脈に向かって操縦する間、送達カテーテル110内の上方ロックウィンドウ150内に維持されてもよい。別の実施形態では、操作可能な係合部材140が送達カテーテル110の遠位端120で上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ152にロックされるように、下方ロックウィンドウ152の送達カテーテル110の遠位端120に対する距離よりも、上方ロックウィンドウ150の方が送達カテーテル110の遠位端120に近位に配置されている。図3および4は、本明細書で開示される発明の主題の実施形態に従った図2(a)−(c)の送達カテーテル110の、上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ152を通って延びる、カプラー130の操作可能な係合部材140の一部の断面図を示している。具体的には、図3は送達カテーテル110の上方ロックウィンドウ150の左側図面を表し、図4は送達カテーテル110の下方ロックウィンドウ152の正面図を表している。塞栓装置160が送達カテーテル110と連結する位置にあるとき(図2(a))、操作可能な係合部材140は保持機構180の開口部190に係合し、また、保持機構180の開口部190の位置の上部に配置された上方ロックウィンドウ150、および、下方ロックウィンドウ152を通ってさらに延びて、操作可能な係合部材140をその位置に固定してもよい。操作可能な係合部材140の先端200が下方ロックウィンドウ152を通過して、上方ロックウィンドウ150に到達すると、操作可能な係合部材140は、操作可能な係合部材140の先端200が上方ロックウィンドウ150を通って延びるようにさらに曲線を湾曲する。さらなる実施形態では、操作可能な係合部材140は、また、上方ロックウィンドウ150を通って垂直に湾曲するように垂直に湾曲してもよい。操作可能な係合部材140が上方曲線位置で形成されると、操作可能な係合部材140は、物理的力が操作可能な係合部材140に付加されるまで、その形状を維持する。操作可能な係合部材140の上方曲線形状は、操作可能な係合部材140を、例えば手動で、つまり、直線状の元の構成が曲線形状に変形するように、操作可能な係合部材140を、開口部190を通って延ばすためにカプラー130の遠位端140を操作することによって、物理的に湾曲することで形成されてもよい。様々な実施形態において、上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ152は長方形、楕円形、長円形、または円形で形成されてもよい。さらなる実施形態では、ロックウィンドウ150の幅は操作可能な係合部材140の先端200の幅よりもわずかに広くてもよい。このように、ロックウィンドウ150の内部は、先端200がロックウィンドウ150に固定されるように、先端200の限られた移動量で動き回ることを可能にする。
【0027】
上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ152によるロック機構に加えて、送達カテーテル110の中空チューブの軸に対して直角を成して延びるクロスバー156が、遠位方向140および近位方向132の両方向のカプラー130の移動をさらに制限してもよい。塞栓装置160が送達カテーテル110と連結した位置にあるとき(図2(a))、カプラー130は遠位端方向にスライドしてもよい。ただし、スライド中、操作可能な係合部材140の曲線がクロスバー156に接触し、遠位端方向のさらなる移動を規制する。加えて、カプラー130が近位方向に移動するとき、保持機構180および操作可能な係合部材140は、近位方向132へのさらなる移動を規制するように、クロスバー156と接触してもよい。
【0028】
図5は、本明細書で開示された発明の主題の実施形態に従った図2(a)−(c)の塞栓装置システム100の近位端112に接続された作動機構、すなわちハンドル300を示している。送達カテーテル110のカプラー130を操作するための作動ハンドル300は、図2(a)―(c)に示されたカプラー130から塞栓装置160を解放する。作動ハンドル300は、それを以て執刀医が患者の動脈内でカプラー130を直線方向に容易に操作できる任意の適切な手段であってもよい。ある実施形態では、ハンドル300は、カプラーを遠位方向に引っ張ることができる単純な機械ハンドルである。図5では、作動ハンドル300が、遠位部材310、近位部材330、回転バレル320、外側シャフト350、および内側シャフト360を含んで表されている。これらの構成要素310、320、330、350および360は互いに連結されている。別の実施形態では外側シャフト370が近位部材330に安定に固定されるように、接着剤が外側シャフト350と近位部材330との間に配置されてもよい。作動ハンドル330は、回転バレル320が、執刀医の人差し指と親指とによって把持可能であり、右または左方向に回転するように、執刀医が手の中に遠位部材310を把持するように設計されている。ある実施形態では、回転バレル320を左方向に回転することで、近位方向に内側シャフト360を伸長させてもよく、かつ、回転バレル320を右方向に回転することで、内側シャフト360を遠位方向に短縮させてもよい。
【0029】
図6は、図5の作動ハンドル300の分解組立図を示している。遠位部材310は回転バレル320と直接連結されており、保持バレル320の内部に形成されたねじ構造を利用して連結されてもよい。近位部材330は、2つのウィンドウ、すなわち、ビューウィンドウ334およびシャトルウィンドウ332を有している。シャトル(移動体)340はシャトルウィンドウ332内に配置され、遠位端から近位端へと移動する。ある実施形態では、シャトル340は、回転バレル320が左方向に回転されるときに、遠位端から近位端へと移動する。シャトル340は、内側シャフト360に接続され、左方向への回転バレル320の動作が、シャトル340を近位方向へと移動させることで、内側シャフト360を近位方向に伸長させる。ビューウィンドウ334は、執刀医が、内側シャフト360が近位方向にどれだけ移動したかを見ることができるように、ビューウィンドウ334内でスライドさせるためのマーカーを使用させてもよい。一方で、外側シャフトは近位部材330に連結され、内側シャフト360が、外側シャフト350の内部を通って移動することを可能にする。
【0030】
再度、図2(a)−(c)を参照すると、図2(b)は、塞栓装置160が、本明細書で開示された発明の主題の実施形態に従った送達カテーテル110から解放される位置にあることを示している。送達カテーテル110が所望の位置(例えば動脈瘤)に到達したときに、執刀医がカプラーの直線部材を引っ張ることによって、操作可能な係合部材140の解放が作動されてもよい。この実施形態で、操作可能な係合部材140の解放は、カプラー130の近位端132が送達カテーテル110の近位端112に向かって引っ張られたときに発生する。次いで、操作可能な係合部材140の下方曲線154は、下方ロックウィンドウ152から引っ張られ、操作可能な係合部材140の先端200も同時にロックウィンドウ150から下方向に引っ張られてもよい。操作可能な係合部材140の先端200は、塞栓装置160の保持機構180の開口部190を通って下方にさらに引っ張られてもよく、操作可能な係合部材140の下方曲線154は下方ロックウィンドウ152から完全に取り出される。操作可能な係合部材140が開口部190を通過する間、機能性係合部材140が開口部190から容易に引っ張り出されるように、曲がった、すなわち湾曲した部分をわずかに直線化するために、保持機構180の端部210は操作可能な係合部材140の上方に曲がった、すなわち湾曲した部分、および、クロスバー156の下側を押圧する。機能性係合部材140の先端200が、クロスバー156の下部を通過するとき、クロスバー156は、先端200がより真っ直ぐになるように、上方に曲がった、すなわち湾曲した部分を下方にさらに押圧する。これにより、操作可能な係合部材140が、カテーテル110の内壁を引きずったり傷をつけたりすることなく、送達カテーテル110の内部で障害なく引っ張られる。
【0031】
図2(c)は、ある実施形態の送達カテーテル110から完全に分離された塞栓装置160を示している。カプラー130が近位に引っ張られ、操作可能な係合部材140の先端200が保持機構180の開口部190から引っ張り出されると、塞栓装置160は送達カテーテル110の遠位端120から分離される。次いで、執刀医は、動脈から送達カテーテル110を引き抜くことによって、送達カテーテル110全体を慎重に取り外し、治療を完了してもよい。
【0032】
図7は、本明細書で開示された発明の主題の実施形態に従った送達カテーテル110に関する方法400を示したフロー図である。動脈への挿入の前に、塞栓装置160は、カプラー130の操作可能な係合部材140を保持機構180の開口部190に係合させることによって、送達カテーテル110に係合され得る(ステップ410)。カプラー130が塞栓装置160を送達カテーテル110に固定するように、カプラー130の操作可能な係合部材140は曲線形状を形成し、送達カテーテル110の上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ152にさらに延びる(ステップ420)。送達カテーテル110は、送達カテーテル110によって保持された塞栓装置160と共に、動脈に挿入され、動脈の所望の位置に操作される(ステップ430)。送達カテーテル110が所望の位置に到達すると、カプラー130の近位端が近位に引っ張られる(ステップ440)。カプラー130の操作可能な係合部材140が、引っ張られることによって、上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ152から引き抜かれる(ステップ450)。さらに近位に引っ張られことによって、操作可能な係合部材140は、保持機構180の開口部190からさらに引き抜かれる(ステップ460)。操作可能な係合部材140の先端200、特に操作可能な係合部材140の曲線形状がクロスバー156に接触すると、クロスバー156は、先端200が送達カテーテル110内を引きずったり傷をつけたりしないように、操作可能な係合部材140を押し下げる(ステップ470)。操作可能な係合部材140の先端200が開口部190から完全に引き抜かれると、塞栓装置160が送達カテーテル110から解放され、送達カテーテルは動脈から引き抜かれる(ステップ480)。
【0033】
図8(a)−(b)は、本明細書で開示された発明の主題のさらなる実施形態に従った塞栓装置送達システム500の図面である。塞栓装置送達システム500は、送達カテーテル510、操作可能なカプラー530、塞栓装置560と一体的に形成された保持機構580を備えた塞栓装置560を同様に含んでもよい。送達カテーテル510は、操作可能なカプラー530、および、塞栓装置560内の保持リング580を受けるための中空チューブであってもよい。操作可能なカプラー530は、保持機構580に係合するために、送達カテーテル510の遠位端520に向かってU字型曲線係合部材540を形成している。係合部材540は、ニチノール、NiTi、すなわちニッケルチタンといった形状記憶合金で製造された小口径ループとして形成されてもよい。形状記憶合金は、超弾性、および、元の形状を記憶する独自の特性を有している。従って、形状記憶合金は延伸され、延伸形態で維持されてもよいが、当該合金は延伸状態から解放されると、元の形状に戻る。操作可能な係合部材540は、熱、電気または物理的な力に暴露されると、より剛性を増長/減少し、および/またはより弛緩性を増長/減少するようにさらに構成されてもよい。図8(b)に関して論じられているように、上記は塞栓装置の送達工程中、操作可能なカプラー530が送達装置560に係合、操作および分離することを可能にする。
【0034】
送達カテーテル510は、送達カテーテル510の遠位端520付近の、中空チューブの内壁の一方側の上方ロックウィンドウ550、および、送達カテーテル510の遠位端520付近の、中空チューブの内壁の他方側の下方ロックウィンドウ552を形成している。この実施形態では、上方ロックウィンドウ552は、図2(a)−(c)で説明される塞栓装置送達システム100の上方ロックウィンドウ150と比較して、送達カテーテル510の遠位端520に相対的により近い位置に配置されている。ある実施形態では、操作可能な係合部材540はU字型曲線554を形成してもよく、操作可能な係合部材540の当該下方曲線554は、上方ロックウィンドウ550および下方ロックウィンドウ552によるロック特性によって保持されてもよい。この構成において、操作可能な係合部材540の下方曲線554の底部は、送達カテーテル510を動脈に向かって操縦される間、下方ロックウィンドウ552内に維持されてもよく、操作可能な係合部材540の先端部600は、上方ロックウィンドウ550内に維持されてもよい。このロック位置において、U字型曲線554と先端600との間の操作可能な係合部材540の細長の部分556はほぼ直線を形成し、先端600は、垂直姿勢で、上方ロックウィンドウ550に向かって安定に延びてもよい。別の実施形態では、上方ロックウィンドウ550は、下方ロックウィンドウ552の送達カテーテル510の遠位端に対する距離よりも、送達カテーテル510の遠位端520に対してより近くに配置され、操作可能な係合部材540が、送達カテーテル510の遠位端520で、上方ロックウィンドウ150および下方ロックウィンドウ552とロックされるようになされている。操作可能な係合部材540は、図3の上方ロックウィンドウ150の左側図面、および、図4の下方ロックウィンドウ152の正面図と同様に、送達カテーテル510の上方ロックウィンドウ550および下方ロックウィンドウ552を通って延びる。
【0035】
塞栓装置560が送達カテーテル510と連結する位置にあるとき(図8(a))、操作可能な係合部材540は、保持機構580の開口部590に係合し、また、操作可能な係合部材540をその位置に固定するために、保持機構580の開口部590の位置の上部に配置された上方ロックウィンドウ550および下方ロックウィンドウ552を通ってさらに延びてもよい。操作可能な係合部材540が上方曲線位置に形成されると、操作可能な係合部材540は、物理的力が操作可能な係合部材540に付加されるまで、その形状を維持する。操作可能な係合部材540の上方曲線形状は、操作可能な係合部材540を、例えば手動で、つまり、直線状の元の構成が曲線形状に変形するように、操作可能な係合部材540を、開口部590を通って延ばすように操作可能な係合部材540の遠位端520を操作することによって、物理的に湾曲することで形成されてもよい。様々な実施形態において、上方ロックウィンドウ550および下方ロックウィンドウ552は長方形、楕円形、長円形、または円形で形成されてもよい。さらなる実施形態では、ロックウィンドウ550の幅は操作可能な係合部材540の先端600の幅よりもわずかに広くてもよい。このように、ロックウィンドウ550の内部は、先端600がロックウィンドウ550に固定されるように、先端600の限られた移動量で動き回ることを可能にする。
【0036】
図8(b)は、本明細書で開示された発明の主題のさらなる実施形態に従った送達カテーテル510から解放される位置にある塞栓装置560を示している。送達カテーテル510が所望の位置(例えば動脈瘤)に到達したときに、執刀医が操作可能な係合部材540の直線部材を引っ張ることによって、保持機構580からの操作可能な係合部材540の解放が作動されてもよい。この実施形態で、操作可能な係合部材540の解放は、操作可能な係合部材540の近位端(図示せず)が送達カテーテル510の近位端に向かって引っ張られたときに発生する。次いで、操作可能な係合部材540の下方曲線554は、下方ロックウィンドウ552から引っ張られ、同時に、操作可能な係合部材540の先端600がロックウィンドウ550から下方向に引っ張られてもよい。操作可能な係合部材540の先端600は、塞栓装置560の保持機構580の開口部590を通って下方にさらに引っ張られてもよく、操作可能な係合部材540の下方曲線554は下方ロックウィンドウ552から完全に取り出される。操作可能な係合部材540が開口部590を通過する間、機能性係合部材540が開口部590から容易に引っ張り出されるように、曲がった、すなわち湾曲した部分をわずかに直線化するために、保持機構580の端部610は、操作可能な係合部材540の上方に曲がった、すなわち湾曲した部分を押圧する。操作可能な係合部材540が近位に引っ張られ、操作可能な係合部材540の先端600が保持機構580の開口部590から引っ張り出されると、塞栓装置560が送達カテーテル510から分離される。次いで、執刀医は、動脈から送達カテーテル510を引き抜くことによって、送達カテーテル510全体を慎重に取り外し、治療を完了することができる。
【0037】
図9(a)−(b)は、本明細書で開示された発明の主題のさらなる実施形態に従った塞栓装置送達システム700の図面である。塞栓装置送達システム700は、送達カテーテル710、操作可能なカプラー730、塞栓装置760と一体的に形成された保持機構780を備えた塞栓装置760を同様に含んでもよい。送達カテーテル710は、操作可能なカプラー730、および、塞栓装置760内の保持リング780を受けるために中空チューブであってもよい。操作可能なカプラー730は、保持機構780に係合するために、送達カテーテル710の遠位端720に向かってU字型曲線開ループ係合部材740を形成している。係合ループ740は、ニチノール、NiTi、すなわちニッケルチタンといった形状記憶合金で製造された小口径ループとして形成されてもよい。形状記憶合金は、超弾性、および、元の形状を記憶する独自の特性を有している。従って、形状記憶合金は延伸され、延伸形態で維持されてもよいが、当該合金は延伸状態から解放されると、元の形状に戻る。操作可能な係合ループ740は、熱、電気、または物理的な力に暴露されると、より剛性を増長/減少し、および/またはより弛緩性を増長/減少するようにさらに構成されてもよい。図9(b)および(c)に関して論じられているように、上記は塞栓装置の送達工程中、操作可能なカプラー730が送達装置760に係合、操作および分離することを可能にする。操作可能な係合ループ740が送達カテーテル710の内部での位置を維持するために、ループレデューサ(径違いソケット)820が送達カテーテル710の中空チューブ内に置かれてもよい。ループレデューサ820は、送達カテーテル710の近位端(図示せず)から遠位端720に延びる操作可能なカプラー730の直線部材を受けるための穴(図示せず)を有している。さらなる実施形態では、送達カテーテルの遠位端720は、塞栓装置の保持機構580が容易に維持されることが可能な切り欠き830を有していてもよい。
【0038】
塞栓装置760が送達カテーテル710に連結された位置にあるとき(図9(a))、操作可能な係合ループ740は、保持機構780の開口部790を通って延びてもよい。操作可能な係合ループ740が上方曲線姿勢に形成されると、操作可能な係合ループ740は、物理的力が操作可能な係合ループ740に付加されるまで、その形状を維持する。ある実施形態では、操作可能な係合部材740の上方曲線形状は、操作可能な係合部材740を、例えば手動で、つまり、直線状の元の構成が曲線形状に変形するように、操作可能な係合ループ740を、開口部790を通って延ばすように操作可能な係合ループ740の遠位端720を操作することによって、物理的に湾曲することで形成されてもよい。さらなる実施形態では、操作可能な係合ループ740の幅は保持機構780の開口部790の幅よりもわずかに広くてもよい。このように、保持機構780の開口部790の内部は、操作可能な係合ループ740が保持機構780に固定されるように、操作可能な係合ループ740の限られた移動量で動き回ることを可能にする。
【0039】
図9(b)は塞栓装置760が、本明細書で開示された発明の主題の実施形態に従った送達カテーテル710から解放される位置にあることを示している。送達カテーテル710が所望の位置(例えば動脈瘤)に到達したときに、執刀医が操作可能なカプラー730の直線部材を引っ張ることによって、保持機構780からの操作可能な係合ループ740の解放が作動されてもよい。この実施形態で、操作可能な係合ループ740の解放は、操作可能なカプラー730の直線部材が送達カテーテル710の近位端(図示せず)に向かって引っ張られたときに発生する。次いで、操作可能な係合ループ740は、塞栓装置760の保持機構780の開口部790から引っ張られ、ループレデューサ820の穴へと進行する。操作可能な係合ループ740がループレデューサ820の穴を通過する間、操作可能な係合ループ740の端部800が操作可能な係合ループ740の開ループを通過し、操作可能な係合ループ740がループレデューサ820の穴から容易に引っ張り出されるように、ロープ部分を閉鎖する。
【0040】
図9(c)は、ある実施形態の送達カテーテル710から完全に分離された塞栓装置760を示している。操作可能な係合ループ740が近位に引っ張られ、操作可能な係合ループ740の先端800が保持機構780の開口部790から引っ張り出されると、塞栓装置760は送達カテーテル710から分離される。次いで、執刀医は、動脈から送達カテーテル710を引き抜くことによって、送達カテーテル710全体を慎重に取り外し、治療を完了することができる。
【0041】
本明細書で引用される、出版物、特許出願および特許を含むすべての引用文献は、あたかも、各引用文献が、参照することにより組み込まれるように個別かつ具体的に示され、本明細書中にその全体が記載されていたかのように、参照することにより組み込まれている。
【0042】
明細書、および請求項での用語「a」、「an」、「the」および同様の指示対象の使用は、明細書中に明示されるか、あるいは内容によって明確に矛盾する場合を除き、単数および複数の両方を含めると解釈されるべきである。用語「有する」「含む」「包含する」および同様の指示対象は、特記しない限り、無制限の用語(例えば、「含む」を意味するが、それに限定されない)と解釈されるべきである。明細書中での数値範囲の引用は、特記しない限り、範囲に包括的に含まれる別個の数値のそれぞれを、個別に言及するための簡略な方法として目的を果たすことが意図されているに過ぎない。本明細書中で説明されるすべての方法は、明細書中に明示されるか、あるいは内容によって明確に矛盾する場合を除き、任意の適切な順番で実施されうる。本明細書中で提供される任意の、およびすべての例、または例示的用語(例えば、「〜のような」)は、実施形態の理解をより容易にすることのみを意図しており、特記しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる用語も、請求されていない要素が本発明の各実施形態に必須であることを示していると解釈されるべきではない。
【0043】
図面、または上記説明で描写された構成要素の異なる構成、および、示されていない、または説明されていない構成要素およびステップの異なる構成もあり得る。同様に、ある特性または副連結が有益であり、他の特性や副連結を言及することなく採用されてもよい。実施形態は限定的な目的ではなく、例示のために説明されており、代替的な実施形態が本特許の読者にとって明白となるだろう。従って、本発明の主題は上述した、または図面に描かれた実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態および修正がなされることが可能である。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
【国際調査報告】