(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502267(P2021-502267A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】ガラス板を機械加工する方法
(51)【国際特許分類】
B24B 9/10 20060101AFI20201225BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20201225BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20201225BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20201225BHJP
【FI】
B24B9/10 Z
B24B49/16
B24B47/22
C03C19/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-544110(P2020-544110)
(86)(22)【出願日】2018年10月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月8日
(86)【国際出願番号】EP2018079626
(87)【国際公開番号】WO2019091820
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】17200843.5
(32)【優先日】2017年11月9日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】504369498
【氏名又は名称】バイストロニック マシーネン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・シュタプフ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート・ハルター
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・グロール
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
4G059
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB92
3C034CA17
3C034CB01
3C049AA03
3C049AA12
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3C049AB04
3C049AB06
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3C049BA01
3C049BA02
3C049BA06
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3C049CA01
3C049CA06
3C049CB01
4G059AA01
4G059AC03
(57)【要約】
ガラス板(1’)を機械加工する方法であって、ガラス板の縁部(1a’)は、少なくとも1つの研削工具(10)を使用して機械加工され、ガラス板およびモーター(11)によって回転するよう設定された研削工具は、互いに相対的に動かされ、方法は、研削工具を駆動するために使用されるモーター(11)の消費電力の関数である変数が、加工されている少なくとも縁部(1a’)の一部に沿って、検出され、目標位置(1)に対するガラス板(1’)のオフセットを決定するために評価される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板(1’)を機械加工するための方法であって、前記ガラス板の縁部(1a’)は、少なくとも1つの研削工具(10)を用いて機械加工され、前記ガラス板およびモーター(11)によって回転するよう設定された前記研削工具は、互いに対して移動し、前記研削工具を駆動するために使用される前記モーター(11)の消費電力の関数である変数(I)が、機械加工されている前記縁部(1a’)の少なくとも一部に沿って検出され、かつ目標位置(1)に対する前記ガラス板(1’)のオフセットを決定するために前記変数(I)が評価されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記縁部(1a’)は、2回の研削によって機械加工され、2回目の研削において検出される変数の値が、1回目の研削において決定されたオフセットを校正するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
回転する前記研削工具(10)が前記縁部(1a’)に接触していない状態に対して前記変数の値が決定されるステップ、
前記ガラス板(1’)の上面から見て前記縁部が延在する方向が所定の角度の値を越えて変化する部分で生じる前記変数の値が前記評価のために省略されるか、または調整されるステップ、
第1直線軸(x)方向、第2直線軸(y)方向および/または回転方向におけるオフセットが決定されるステップ、
少なくとも1つの方のオフセットを得るために、所定のガラス板の形に基づいて、検出された前記変数の値に適用される少なくとも1つの重み関数が定義されるステップ、
の少なくとも1つの評価ステップが実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標位置(1)および前記ガラス板(1’)の実際の位置を互いに調整し(103)、次のガラス板の機械加工中に考慮される補正値が決定され、検出された前記変数の値が所定の許容範囲内となるまでこの手順が実行される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数のガラス板が続いて機械加工され、各場合において、検出された前記変数の値が所定の許容範囲内であることが確認される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラス板(1’)および前記研削工具(10)の相対移動が行われ、前記ガラス板のみ、または前記研削工具のみが移動するか、または両方が移動し、前記研削工具が直線軸に沿って移動する際に、前記ガラス板が好ましくは回転、および/または直線軸に沿って移動する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
検出された前記変数の値が所定の閾値より小さいかどうかを決定することによって、前記ガラス板(1’)が機械加工されていない場所、および/または部分的にしか機械加工されていない場所がないことが確認され、当てはまらない場合、前記ガラス板が完全に研削されていないという情報が前記ガラス板に関連付けられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
検出される変数が、好ましくは前記研削工具を駆動するために使用される前記モーター(11)によって消費される電流に対応する電気的変数である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガラス板(1’)を機械加工するための装置であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実行することができ、装置は、前記ガラス板のための支持体(9)と、前記ガラス板の前記縁部(1a’)を機械加工するために使用され、モーター(11)によって回転するよう設定可能な少なくとも1つの研削工具(10)と、前記研削工具を駆動するために使用される前記モーターの前記消費電力の関数である変数を検出および評価するためのコントローラ(15)と、を有し、前記支持体および前記研削工具は、前記縁部を機械加工するために互いに対して移動可能となるように構成され、前記コントローラには、実行された場合に、前記方法を行うことができるようなプログラムが設けられた、装置。
【請求項10】
検出された前記変数の値、計算されたオフセット、および/または前記目標位置および実際の位置を互いに調整するために計算された補正値に関する情報が動作中に表示されるモニターを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の装置においてコンピュータプログラムが実行される場合に請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法が実行されることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムが格納されたデータキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を機械加工する方法に関し、ガラス板の縁部は、少なくとも1つの研削工具を使用して機械加工され、ガラス板と研削工具は、互いに対して移動される。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、例えば、本出願人による特許文献1から知られている。所定の形状を有するガラス板の製造では、縁部の研削を利用して、正確な所望の最終寸法を取得したり、および/または縁部に所望のプロファイル(角または丸みなど)を与えたりする。縁部が均一に機械加工されるように正確な研削を可能にするには、対応する正確な情報が、研削工具の位置に対するガラス板またはその縁部の位置に関して必要である。たとえば、装置を新しいガラス板の形状の研削に使用する場合、この情報は不正確すぎる場合があり、再構成する必要がある。また、構成後に温度変動などにより装置の長さが変化し、機械加工中にガラス板が、装置が想定した位置に正確に配置されなくなる可能性もある。
【0003】
特許文献2は、ガラス板の平行な長手方向側面が2つの研削ホイールによって研削される方法を記載している。駆動モーターに流れる電流は、2つの波形で表示装置に表示される。ガラス板の位置情報が正確でないため、上記の不正確な加工の問題を修正する手段はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 255 476号明細書
【特許文献2】特開2007‐136632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラス板の縁部の正確な機械加工を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成する方法は、請求項1で定義される。さらなる請求項は、方法、方法を実行することができる装置、コンピュータプログラム、およびデータキャリアの好ましい実施形態を説明している。
【0007】
目標位置、すなわち所望の位置に対するガラス板のオフセットは、研削工具を駆動するために使用されるモーターの消費電力の関数である変数を検出および評価することによって決定することができる。これにより、ガラス板の起こり得るオフセットと正確な研削を修正することができる。たとえば、モーターの電流をそのような変数として使用することができる。さらに、新しいガラス板形状を加工するための装置の構成が簡素化され、研削縁部が所望の品質であることを確認するために、連続生産を監視することができる。
【0008】
本発明による方法は、矩形形状だけでなく、任意の形状、すなわち直線および/または曲線部分から構成される輪郭を有する形状のガラス板の任意の形状の正確な機械加工を可能にする。
【0009】
機械加工されるガラス板は、例えば、実際の位置を定義するために支持体に配置される。実際の位置は、オフセットによって目標位置から逸脱する場合がある。オフセットは、ガラス板の裏側で定義される平面Pの変位と見なすことができる。変位は、線形および/または回転変位とすることができる。加工中、平面P内でガラス板および少なくとも1つの研削工具は、互いに相対的に移動することができる。
【0010】
ガラス板のオフセットは、次のパラメータの1つ以上で定義できる。
・第1の直線軸に沿った偏移
・第2の直線軸に沿った偏移
・回転軸回りの回転。
好ましくは、以下の条件の少なくとも1つが満たされる:
・第1の直線軸は、平面P内に延在する。
・第2の直線軸は、平面P内に延在する。
・第1と第2の直線軸は、互いに角度を付けて配置され、好ましくは、それらは互いに横方向に配置され、最も好ましくは、それらは互いに垂直である。
・回転軸は平面Pに垂直に延在する。
【0011】
好ましくは、上記の3つのパラメータ(第1/第2の直線軸に沿った移動、回転軸回りの回転)の少なくとも1つは、研削工具の駆動に使用されるモーターの消費電力の関数である変数を検出および評価することによる方法で決定される。ガラス板の機械加工の精度を向上させるために、上記のすべてのパラメータを決定する必要はない。これは、例えば1つ以上のパラメータが他のパラメータよりも支配的でない場合とすることができる。たとえば、実際の位置と目標位置の間の回転が小さいために無視でき、および/または実際の位置と目標位置の間の偏移が、特定の軸に沿って他の軸に沿ったよりも大きくなる傾向がある。
【0012】
好ましくは、オフセットは、長さの単位および/または角度の単位で決定される。これは、例えば校正測定により達成され得る。
【0013】
好ましくは、オフセットは、コントローラによって実行される計算によって決定される。コントローラには、オフセットを計算するように構成されたプログラムが提供されている場合がある。計算には、数学的モデルを変数の検出された曲線値に適合させること、変数の検出された値の少なくとも一部を平均化すること、校正測定から得られた値を考慮に入れることなどが含まれる。
【0014】
好ましくは、決定されたオフセットは、後続の機械加工サイクルで考慮に入れられる。そのような後続のサイクルで、同じガラス板が少なくとももう一度機械加工されてもよく、および/または別のガラス板が機械加工されてもよい。
【0015】
好ましくは、決定されたオフセットに基づいて、ガラス板の実際の位置を目標位置に調整する補正が決定される。この補正は、後続の機械加工サイクルで考慮される場合がある。
【0016】
好ましくは、ガラス板の完全な周縁は、1つ以上の研削工具を使用して機械加工される。
【0017】
本発明は、以下を示す図面を参照して、例示的な実施形態に基づいて以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ガラス板を機械加工するための装置を概略的に示す。
【
図2】ガラス板を機械加工するための装置の例示的な実施形態を斜視図で示す。
【
図3】ガラス板の縁部に沿った研削工具の位置の関数として、研削工具を駆動するためのモーターによって必要とされる電流の値の例を示す。
【
図4】
図3の曲線に対応する研削速度とその微分係数を示す。
【
図5】x方向(
図5(a))、y方向(
図5(b))、および回転方向(
図5(c))における長方形のガラス板形状の重み関数の例を示す。
【
図6】
図5の重み関数を適用したx方向(
図6(a))、y方向(
図6(b))、回転方向(
図6(c))の電流値の例を示す。
【
図7】連続生産用の装置を構成するための方法シーケンスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、ガラス板の縁部を機械加工するために使用される装置を概略的に示している。(縁部は、ガラス板の上面と下面の間の外周領域である。)装置は、機械加工中にガラス板がその上に置かれる支持体9、電気モーター、例えばスピンドルモーターによって回転状態に設定され得る研削工具10、およびコントローラ15を含む。電気モーターとしては、例えば非同期モーターや同期モーターが適している。研削工具10は、例えば、一部品または多部品の研削ディスクとして設計されている。
【0020】
支持体9および研削工具10は、ガラス板の縁部が研削されるように互いに対して移動可能である。これは、たとえば次のように、さまざまな方法で実現できる。
・ 支持体9は静止しており、研削工具10はガラス板の縁部の周りを移動可能である。
・ 研削工具10は静止しており、支持体9は、ガラス板の縁部が研削工具を通過して移動できるように移動可能である。
・ 支持体9および研削工具10は移動可能であり、例えば、支持体9は回転中心回りに回転可能であり、研削工具10は直線軸に沿って前後に移動可能である、または支持体9は直線軸に沿って前後に移動可能であり、研削工具10は、第2の直線軸に沿って前後に移動可能であり、2つの軸は、例えば、直角に、互いに対して横方向に配置される。
【0021】
支持体9および/または研削工具10を動かすために、対応する適切な駆動装置および任意にガイドが提供される。研削工具10は、駆動装置によって、たとえば経路制御装置によって送られる。そして、研削工具10は、固定された所定の経路をたどる。研削工具を他の方法で、たとえば力制御装置または経路制御装置と力制御装置によって送ることも考えられる。
【0022】
図2は、一例として、二重矢印8aによって示されるように、回転中心の回りを回転可能である回転テーブル8と、二重矢印10aによって示されるように直線軸に沿って前後に移動可能な研削工具10とを有する装置を示す。回転テーブル8は、機械加工中にガラス板が置かれ、それによってガラス板がしっかりと保持される1つ以上の吸引ユニットの形式の支持体9を含む。
図2には、コントローラ15と、研削工具10を駆動するための電気モーター11も示されている。研削工具は、電気モーター11とともに、ガイドとしてトラック13に沿って移動可能なキャリッジ12に配置されている。
【0023】
図1に戻ると、実際の位置にあるガラス板1’も示されている。新しいガラス板形状を機械加工するための装置の構成中、コントローラ15は、ガラス板1’の所望の形状に関する情報を有するが、必ずしもガラス板の正確な位置を知っているわけではない。
図1のガラス板1は、その目標位置を表し、これに基づいて、コントローラ15が支持体9および/または研削工具10の動きを決定し、それにより、ガラス板縁部1aが目標位置において研削される。
図1から、実際の位置と目標位置がオフセットされていることがわかる。オフセットは、平面内の変位および/または平面内の回転に起因する場合がある。
図1では、たとえば、x軸とy軸は、目標位置のガラス板縁部1aが指定される座標系を定義し、x’軸とy’軸は、実際の位置のガラス板縁部1a’が指定される座標系を定義する。x’‐y’座標系は、x‐y座標系に対して、ベクトルa変位し、角度α回転する。
【0024】
理想的な場合、すなわち、実際の位置と目標位置が同じ場合、研削工具10の駆動中の電気モーター11の消費電力は、事前定義されたプロセスパラメーター、たとえば、ガラス板の形状、研削速度、送りのみの関数である。たとえば、本質的に直線の経路に沿って研削している間、消費電力は本質的に一定である。発明者は、オフセットが対応する消費電力の変動をもたらすことを発見した。消費電力に対応する変数を検出および評価することにより、オフセットに関する結論を導き出すことができる。例えば、消費電力を反映する変数として、研削工具10を駆動するために電気モーター11が必要とする電流を使用してもよい。コントローラ15は、支持体9および/または研削工具10、ならびに電気モーター11の動きを制御するために使用される。コントローラ15には、検出された変数を評価するための適切なプログラムが設けられる。動作中、支持体9および/または研削工具10の特定の位置について、電気モーター11の電流値および/またはいくつかの他の変数が、消費電力の関数として検出される。
図2の変形例では、電流に加えて、たとえば回転テーブル8の回転位置(度単位)、研削工具10の直線軸上の位置、および選択的に、たとえば力制御された送りなどのその他のパラメータ−が記録される。
【0025】
以下の説明では、一例として、検出される変数として電流が使用される。他のいくつかの電気的な変数、たとえば電圧または電流と電圧の組み合わせを使用することが考えられる。
【0026】
検出された電流曲線Iの例を
図3に示す。縦軸は、たとえばアンペア単位の電流であり、横軸の値は、ガラス板1aの円周上の位置に対応する。動作中は、位置が変位すると電流値が繰り返し検出される。これにより、N個の測定値が得られる。(
図3の例では、これは約450の測定値に対応する。もちろん、Nは、異なる場合がある。)
【0027】
電流曲線Iを評価するために、最初のステップで測定値が処理される。
図3から明らかなように、電流の下落が発生する可能性がある。この場合、測定の最初と最後の電流の下落は、研削作業の経路プランによって発生する。測定は、研削工具10がガラス板1’に向かって、またはガラス板1’から離れている間に値を記録することから始まる。実際の研削作業の開始点と終了点は、たとえば、最初のN1測定値と最後のN2測定値(たとえば、N1=N2=50またはその他の値)を取得し、支持体9および研削工具10の位置の値に基づき、対応するxおよびy座標を決定し、それらを互いに比較することによって決定することができる。測定の指定された開始点と終了点は、間隔が最小である2つの値の間にある。前後の測定値はすべて、オフセットを決定するための次の手順では使用されない。しかし、アイドルモードの、すなわちガラス板1’と接触していない研削工具10が必要とする電流の値は、省略された測定値から決定することができる。
【0028】
最初と最後の電流の下落の間で
図3に示されているさらに4つの電流の下落は、ガラス板1’の選択された形状から生じる。この場合、ガラス板は
図1のような形状、つまり、外部半径によって定義される4つの丸い角を有する。角では、ガラス板1’の上面図で見た、縁部が延びる方向が、所定の角度値を超えて、例えば45度を超えて変化する。このような方向転換中のいずれの場合でも研削工具10が研削している場合、支持面が小さいため、ガラスの除去はほとんど行われず、電流は著しく低下する。対照的に、計算された研削速度は、定義された期間中の2つの位置値の差として、方向の指定された変更中に補完的に動作する。つまり、電流の下落中に大幅に増加する。
図4では、
図3の電流曲線Iに対応する研削速度vが、単位時間あたりの長さの単位で示されている(この場合、20ミリ秒あたりのミリメートル)。
図4の下の曲線は、研削速度vの微分係数v’を示す。
【0029】
プログラムは、例えば、スピンドル電流Iと研削速度vの比を使用して、前述の電流の下落を除去する。
図4から明らかなように、方向の指定された変化の位置での微分係数v’には、正と負の外れ値がある。微分係数v’の値が事前定義された制限値(たとえば、
図4の例では±0.25)を超えている電流の測定値は、電流の下落として申告され、以降の評価のために省略されるか、たとえば、検出された電流の平均値に設定することによって調整される。
【0030】
電流の測定値が処理された後で、オフセットを決定することができる。
図1に関して前述したように、オフセットは3つのパラメータ、平面内の線形変位の2つのパラメータ(たとえば、変位ベクトルaのxとyの値)と、平面内の回転αの1つのパラメータによって定義することができる。複数の電流の測定値からのオフセットを決定するためのさまざまな方法が考えられる。たとえば、数学モデルを測定曲線に適合させること、反復などである。
【0031】
図2による装置の場合、例えば、以下の手順が考えられる:幾何学の結果として、回転テーブル8の回転の中心からの点の距離が大きくなるほど、この点はより遠くに移動する。目標位置でのガラス板縁部1aのコースは、x座標とy座標の値で定義できる。これらの値に基づいて、微分係数を作成し、±1に正規化することにより、重み関数がそれぞれの場合に決定される。
図5(a)および
図5(b)は、長方形のガラス板1の場合のxおよびy方向に対するこの重み関数の例を示す。ここでは、いずれの場合も、長方形の一側には効果がないが、他側には最大の効果がある。
【0032】
図5(c)は、ガラス板縁部1aのxおよびy座標について定められた値に基づいて、ベクトルの絶対値の微分係数を形成することによって得られる角度の重み関数を示す。
図5(c)の例では、効果は長方形の角で最も大きくなる。長方形の辺の中央では、ベクトルが辺に対して90度を向いているため、効果はいずれの場合もゼロになる。
【0033】
電流の測定値Iは、測定全体で平均化された電流値によって減らされ、x方向とy方向の重み関数で乗算される。
図5(a)、
図5(b)の例では、
図6(a)、
図6(b)の曲線が得られる。xとy方向のオフセットは、値を平均することにより、測定値あたりのアンペアの単位で取得される。
図6(a)と
図6(b)の例では、x方向のオフセットはゼロであり、y方向のオフセットは測定値あたり約0.13Aに相当する。
【0034】
角度オフセットのゆがんだ計算を防ぐために、平均値で減算された電流の測定値は、決定されたxオフセットとyオフセットに従って補正され、角度の重み関数で乗算される。
図5(c)の例では、この手順によって
図6(c)の曲線が得られる。角度オフセットは、値を平均することで得られる。
図6(c)の例では、この角度オフセットは、測定値あたり約0.025アンペアに相当する。
【0035】
オフセットの値を長さの単位または角度の単位に変換することは、たとえば、電気モーター11の電流が所定のガラスの厚さと研削速度、およびオフセットの所定の値で検出される校正測定によって可能である。校正測定は、単一のガラス板を複数回研削するか、複数のガラス板を研削することによって行うことができる。ガラス板は、選択的に廃棄され、オフセットに対して決定された値は、後続の機械加工されるガラス板に使用される。
【0036】
一実施形態では、ガラス板1’は2回研削される:最初の研削では、ガラス板1’は最終寸法ではなく、むしろ所定の幅b、例えばb=0.25mmまたは他の適切な値の残留縁部を有する寸法で研削される。残留縁部は、2回目の研削で除去される。したがって、2回目の研削に基づいて、幅bを除去するために消費される電流がわかる。校正値(たとえば、線形オフセットのアンペア/mm)は、2回目の研削の電流の値を平均し、アイドルモードでの電流の値を差し引き、
図5(a)、
図5(b)によるとここでの正規化は−1から+1にわたるため、結果を2で割ることによって決定できる。
【0037】
最初の研削の電流曲線に基づいて、オフセットは、アンペアの単位で決定でき、校正値を使用してmmまたは度の単位に変換できる。
【0038】
ここで説明する2つの研削作業の手順には、特に、プログラムがガラス板の厚さや研削速度に関する情報を必要とせずに、所定のガラス板形状に対して校正できるという利点がある。
【0039】
さらに、本発明者らは、2回目の研削の電流曲線を使用して、ガラス板が完全に研削されたか、すなわち機械加工されていない場所および/または部分的に機械加工された場所がないかどうかを決定できることを見出した。完全に研削されていないガラス板の場合、オフセットの電流値は比較的大きい。事前定義されたしきい値を超えると、ガラス板は完全に研削されたものとして認識されず、再加工または廃棄される。
【0040】
図7は、上記で説明したさまざまな方法のステップをまとめたものである。
ステップ100: ガラス板がオフセットなしで連続して研削されるように装置を構成するために、研削が開始される。
ステップ101: ガラス板は、最初の研削で残留縁部まで研削される。
ステップ102: 所定の幅を有する残留縁部は、2回目の研削で除去される。
ステップ103: プログラムは、
図1のx’‐y’座標系とx‐y座標系の間の変位および/または回転を補償するために、物理単位のオフセットと対応する補正値を決定する。
ステップ104: プログラムは、ガラス板が完全に研削されているかどうかをチェックする。そうでない場合は、以下が実行される。
ステップ105: ガラス板が処分され、決定された補正値を使用して、新しいガラス板がステップ102に従って最終寸法に研削される。
ステップ106: ユーザは、ガラス板が完全に研削されたかどうかについてさらにチェックする。このステップはオプションであり、省略できる場合がある。
ステップ107: 装置が構成され、複数のガラス板が研削される一連の生産が開始される。
【0041】
電流Iの検出と評価は、装置の構成だけでなく、連続生産の監視や継続的な調整にも使用できる。連続生産では、たとえば各ガラス板のオフセットを決定でき、たとえばオフセットの半分を次のガラス板の補正値として使用できる。
【0042】
経時的な電流Iの変動を監視することも考えられる。これは、装置が構成された後、つまりオフセットが存在しない場合に発生する経時変化に本質的に対応しているはずである。ガラス板の研削中にこれが当てはまらない場合、施設はもはや正しく校正されておらず、たとえば
図7の手順で再構成できる。
【0043】
ここで説明された測定は、ガラス板、特に自動車の窓ガラスやモニターやディスプレイ用のガラス板の縁部を研削するために、さまざまな方法で使用することができる。長方形、面取り、C形、丸みのある縁部、段付きカットなど、研削される任意の縁部プロファイルが考えられる。モーターの消費電力の関数である変数の検出と評価には、特に、オフセットを決定するために追加のセンサーを設ける必要がないという利点がある。
【0044】
装置は、変数の検出値に関する情報、例えば、検出された電流、決定されたオフセット、計算された補正値、および/または他のパラメータがモニターに表示されるように構成されてもよい。
【0045】
オフセットを決定するために、ガラス板の縁部に沿って変数のすべての値を検出または評価する必要はない。さらに、研削経路の一部のみの変数の値は、最大3つのパラメータを持つオフセットを決定するのに十分な測定点を表す。
【0046】
この方法は、複数の研削工具が研削に使用される装置、例えば、互いに対してオフセットされたモーターを備えた2つ以上の研削工具にも適用可能である。各研削工具は、オプションで縁部の一部のみを加工できる。ここで説明する方法を使用して、たとえば、各研削工具の補正値を決定し、平均補正値を設定できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガラス板
1a ガラス板縁部
8 回転テーブル
9 支持体
10 研削工具
11 電気モーター
12 キャリッジ
13 トラック
15 コントローラ
【国際調査報告】