特表2021-502408(P2021-502408A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-502408炎症性皮膚疾患を治療するための複合医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502408(P2021-502408A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】炎症性皮膚疾患を治療するための複合医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/69 20060101AFI20201225BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20201225BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201225BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20201225BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20201225BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20201225BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20201225BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20201225BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20201225BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20201225BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20201225BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20201225BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20201225BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20201225BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20201225BHJP
【FI】
   A61K31/69
   A61K31/519
   A61P43/00 121
   A61P29/00
   A61P17/00
   A61P37/08
   A61P17/08
   A61P17/06
   A61P37/02
   A61K9/10
   A61K9/107
   A61K9/06
   A61K9/12
   A61K9/14
   A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-544101(P2020-544101)
(86)(22)【出願日】2019年5月9日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月13日
(86)【国際出願番号】CN2019086094
(87)【国際公開番号】WO2019242422
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】201810637196.3
(32)【優先日】2018年6月20日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520165423
【氏名又は名称】合肥医工医葯股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520165434
【氏名又は名称】合肥恩瑞特葯業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】何 広衛
(72)【発明者】
【氏名】儲 昭興
(72)【発明者】
【氏名】許 勤龍
(72)【発明者】
【氏名】莫 佳佳
(72)【発明者】
【氏名】趙 炎
(72)【発明者】
【氏名】卞 林翠
(72)【発明者】
【氏名】谷 元鳳
(72)【発明者】
【氏名】邵 莉
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA24
4C076AA29
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC20
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD46
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086DA43
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA43
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は医薬技術分野に関し、具体的に、炎症性皮膚疾患を治療するための複合医薬組成物に関する。本発明の複合医薬の薬学的活性成分はトファシチニブとクリサボロールにより構成され、該組成物はより高い治療効果とより少ない投薬量で、著しい相乗的治療効果を果たすことを特徴とする。本発明の医薬組成物は炎症性皮膚疾患の治療に適用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的活性成分と薬学的に許容される担体とを含有し、前記薬学的活性成分はトファシチニブとクリサボロールとで構成されることを特徴とする、複合医薬組成物。
【請求項2】
前記トファシチニブと前記クリサボロールの重量比は、1:8〜8:1である請求項1に記載の複合医薬組成物。
【請求項3】
炎症性皮膚疾患の治療用の薬物を調製するための請求項1または2に記載の複合医薬組成物の使用。
【請求項4】
炎症性皮膚疾患が、アレルギー性皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎または接触性皮膚炎である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
炎症性皮膚疾患は、乾癬または全身性エリテマトーデスによって引き起こされる皮膚の炎症反応である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
剤形は外用製剤である、請求項1または2に記載の複合医薬組成物。
【請求項7】
外用製剤の剤形は乳剤、クリーム剤、ゲル剤、発泡剤、粉剤、リニメント剤、洗剤、噴霧剤またはパッチ剤である、請求項6に記載の複合医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野、具体的には、炎症性皮膚疾患を治療するための複合医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は炎症性皮膚疾患の治療に用いられる。
【背景技術】
【0002】
炎症は一般的で重要な基本的な病理学的プロセスであり、体表面の外傷感染およびさまざまな臓器で最も一般的で頻繁に発生する疾患はすべて炎症性疾患に属する(非特許文献1)。炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触性皮膚炎及び全身性エリテマトーデスなどの皮膚の炎症とかゆみを特徴とする疾患を含む。
【0003】
皮膚の炎症とかゆみは炎症性皮膚疾患の2つの重要な特徴である。JAK−STATシグナル経路はサイトカインによって刺激されるシグナル伝達経路であり、細胞の増殖、分化、アポトーシス、免疫調節などの重要な生物学的プロセスに参加する。JAK−STAT経路は、さまざまな炎症の発生と進行に緊密に関連している。最新の研究では、JAK−STAT経路は皮膚のかゆみとも緊密に関連し、TSLP、インターロイキン2〜7(IL−2〜7)、GM−CSF(顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子)、GH(成長ホルモン)、EGF(上皮成長因子)、PDGF(血小板由来因子)およびIFN(インターフェロン)などを含む多くのサイトカインと成長因子は、JAK−STATシグナル経路を介してシグナルを伝達することがわかっている。TSLPは皮膚のかゆみの主因と考えられる。トファシチニブ(Tofacitinib)は、関節リウマチの治療のためにファイザーが開発したJAK1/JAK3阻害剤である。最近の第II相臨床試験では、2%トファシチニブを患部に直接塗布すれば、アトピー性皮膚炎に対して特定の治療効果を示し、患者のかゆみ症状を改善できることが示された。
【0004】
ホスホジエステラーゼ(PDEs)は、cAMPおよび/またはcGMPの加水分解を促進できるスーパーファミリーである(非特許文献2)。環状アデノシン一リン酸(cAMP)は、炎症や炎症細胞のさまざまな機能を阻害することができ、多くの疾患や病症で重要な役割を果たす。これらの細胞では、cAMP固有のPDE4がPDEの主な形態である。PDE4阻害剤はcAMPレベルを上昇させることができ、炎症、喘息、および他の病症に使用できるが、これらに限定されない(非特許文献3)。クリサボロール(Crisaborole)は、アトピー性皮膚炎の治療のために2016年に承認された外用PDE−4阻害剤である。
【0005】
トファシチニブとクリサボロールの構造式は次のとおりである。
【0006】
【化1】
【0007】
しかしながら、現在、上記の薬物は臨床で使用する際にいずれも一定の欠点があり、より優れた効能を有する新たな治療薬を発見または開発することは依然として重要な応用価値を持っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cruz−Migoni S,Caamano J.Fat−Associated Lymphoid Clusters in Inflammation and Immunity[J].Front Immunol.2016,7:612
【非特許文献2】Murthy VS,Mangot AG.Psychiatric aspects of phosphodiesterases: An overview[J].Indian J Pharmacol,2015, 47(6):594−599
【非特許文献3】Parikh N,Chakraborti AK.Phosphodiesterase4(PDE4) Inhibitors in the Treatment of COPD:Promising Drug Candidates and Future Directions[J].Curr Med Chem,2016,23(2):129−41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、固定した用量比でトファシチニブとクリサボロールを組み合わせることで意外なことに、この組成物はより少ない投薬量でより強力な治療効果が得られ、著しい相乗的治療効果を示し、且つ、高い臨床使用価値を持つことが見出される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トファシチニブとクリサボロールの複合医薬組成物を開示する。薬力学的試験により、本発明の複合医薬組成物は、より高い治療効果とより少ない投薬量で、かゆみおよび炎症により引き起こされる皮膚疾患の治療において著しい相乗的治療効果を果たすことが証明される。
【0011】
ここで、トファシチニブとクリサボロールの重量比の範囲は好ましくは1:8〜8:1である。
【0012】
本発明の複合医薬組成物は好ましくは局所投与剤形を用い、好ましくは乳剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、発泡剤、粉剤、リニメント剤、洗剤、噴霧剤またはパッチ剤である。
【0013】
本発明に記載される組成物は、アレルギー性皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触性皮膚炎など、および乾癬および全身性エリテマトーデスなどの免疫疾患によって引き起こされる皮膚の炎症反応を含むがこれらに限定されない炎症性皮膚疾患を治療するために使用される。
【0014】
以下は、本発明の複合医薬組成物の一部の薬力学的試験および結果である。
【0015】
1.ホルボールエステルにより誘発されるマウス耳腫脹モデルに対する本発明の複合医薬組成物の治療効果
SPFグレードのICRマウス(雄、18〜22g)を、体重に応じて、異なる配合比率の化合物組とモデル組に分け、各組に10匹のマウスが割り当てられる。実験対象の薬物を20μLの溶媒DMSOで溶解させ、具体的な組分け番号は下記のとおりである。
【0016】
(1)異なる配合比率の化合物組
【0017】
トファシチニブ:クリサボロール=2mg:2mg/20μL(投与量比率=1:1、a組)
【0018】
トファシチニブ:クリサボロール=2mg:1mg/20μL(投与量比率=2:1、b組)
【0019】
トファシチニブ:クリサボロール=2mg:0.5mg/20μL(投与量比率=4:1、c組)
【0020】
トファシチニブ:クリサボロール=2mg:0.25mg/20μL(投与量比率=8:1、d組)
【0021】
トファシチニブ:クリサボロール=2mg:0.2mg/20μL(投与量比率=10:1、e組)
【0022】
トファシチニブ:クリサボロール=2mg:0.125mg/20μL(投与量比率=16:1、f組)
【0023】
トファシチニブ:クリサボロール=1mg:2mg/20μL(投与量比率=1:2、g組)
【0024】
トファシチニブ:クリサボロール=0.5mg:2mg/20μL(投与量比率=1:4、h組)
【0025】
トファシチニブ:クリサボロール=0.25mg:2mg/20μL(投与量比率=1:8、i組)
【0026】
トファシチニブ:クリサボロール=0.2mg:2mg/20μL(投与量比率=1:10、j組)
【0027】
トファシチニブ:クリサボロール=0.125mg:2mg/20μL(投与量比率=1:16、k組)
【0028】
(2)モデル組
【0029】
(3)クリサボロール(4mg/20ul)
【0030】
(4)トファシチニブ(4mg/20ul)
【0031】
(5)空白組:20ulのDMOSを溶媒として塗抹し対照とした。
【0032】
実験方法
各組のマウスに対して、右耳の前後にいずれもホルボールエステル20ul(5μg/20ul/耳)を塗抹してモデリングし、左耳に20μlの溶媒(アセトン)を塗抹し、モデル組以外に、各投薬組のマウスの右耳は、モデリング前30分、モデリング後15分に、対応する薬剤を20μl/耳で塗抹した。モデリングの6時間後に、シックネスゲージで耳腫脹の程度を測り、炎症の指標とした。また動物を殺し、耳を切り落とし、6mmの穿孔機で穿孔し、切り落とされた耳の重量を量り、腫脹の程度(重量)を計算した。
【0033】
実験の結果
【0034】
【表1】
【発明の効果】
【0035】
上記の結果から、トファシチニブ:クリサボロールは、16:1〜1:16の範囲で、ホルボールエステル誘発のマウス耳腫脹を抑制する効果が著しいことがわかった。ここで、トファシチニブ:クリサボロール=1:8〜8:1場合、その消炎効果はトファシチニブ(4mg/20μL)とクリサボロール(4mg/20μL)の単独使用時の治療効果より高く、著しい相乗的消炎効果が示された。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施例1
軟膏剤、調合量は下記のとおりである。
【0037】
【表2】
【0038】
調合量のクリサボロールとトファシチニブを取り、総量27.98%のプロピレングリコールとグリセリンの混合溶液に溶解または分散させ、均一に分散させた後、適量の抗酸化剤を加え、均一に混合しておく。また、総量70%の白色ワセリン、モノステアリン酸グリセリルを取り、ステンレス鋼のタンクに入れ、加熱し、65℃±5℃で溶かし、温度を保持し、撹拌機/ホモジナイザーで混合した後、上記混合溶液を徐々に溶融マトリックスに加え、熱源を除去し、完全に均一になるまで、冷却後に引き続き混合し、軟膏剤を取得する。
【0039】
(付記)
(付記1)
薬学的活性成分と薬学的に許容される担体とを含有し、前記薬学的活性成分はトファシチニブとクリサボロールとで構成されることを特徴とする、複合医薬組成物。
【0040】
(付記2)
前記トファシチニブと前記クリサボロールの重量比は、1:8〜8:1である付記1に記載の複合医薬組成物。
【0041】
(付記3)
炎症性皮膚疾患の治療用の薬物を調製するための付記1または2に記載の複合医薬組成物の使用。
【0042】
(付記4)
炎症性皮膚疾患が、アレルギー性皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎または接触性皮膚炎である、付記3に記載の使用。
【0043】
(付記5)
炎症性皮膚疾患は、乾癬または全身性エリテマトーデスによって引き起こされる皮膚の炎症反応である、付記3に記載の使用。
【0044】
(付記6)
剤形は外用製剤である、付記1または2に記載の複合医薬組成物。
【0045】
(付記7)
外用製剤の剤形は乳剤、クリーム剤、ゲル剤、発泡剤、粉剤、リニメント剤、洗剤、噴霧剤またはパッチ剤である、付記6に記載の複合医薬組成物。
【国際調査報告】