特表2021-502421(P2021-502421A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502421(P2021-502421A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】医療用充填材組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/876 20200101AFI20201225BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20201225BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20201225BHJP
   A61K 6/853 20200101ALI20201225BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20201225BHJP
   A61K 6/82 20200101ALI20201225BHJP
   A61K 6/824 20200101ALI20201225BHJP
   A61K 6/831 20200101ALI20201225BHJP
   A61K 6/802 20200101ALI20201225BHJP
   A61K 6/15 20200101ALI20201225BHJP
【FI】
   A61K6/876
   A61L27/02
   A61L27/04
   A61K6/853
   A61K6/818
   A61K6/82
   A61K6/824
   A61K6/831
   A61K6/802
   A61K6/15
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-544713(P2020-544713)
(86)(22)【出願日】2017年11月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月8日
(86)【国際出願番号】KR2017013677
(87)【国際公開番号】WO2019093568
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】10-2017-0148512
(32)【優先日】2017年11月9日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520159226
【氏名又は名称】マルチ コンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】チャン スン ウク
【テーマコード(参考)】
4C081
4C089
【Fターム(参考)】
4C081AB01
4C081AB11
4C081BB07
4C081CF131
4C081CF22
4C081CG02
4C081CG08
4C081DA13
4C089AA06
4C089BA02
4C089BA03
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA06
4C089BA13
4C089BA14
4C089BC03
4C089BC07
4C089BC10
4C089CA05
(57)【要約】
本発明は、神経、血管、細胞組織及び硬組織などが除去された空間に充填される医療用充填材組成物に関し、より詳細には、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムの中から選択されたいずれか一つ以上を含むカルシウム供給源、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ及び粘土鉱物の中から選択されたいずれか一つ以上を含むケイ素供給源、並びに、カルシウム供給源とケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して、ペースト化のための液体物質20〜70重量部を含み、カルシウム供給源とケイ素供給源とのポゾラン反応によって生成されるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)のカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が、0.25〜1.5であることを特徴とし、生体にやさしく、生体活性に優れており、生化学的に安定しているだけでなく、操作性及び密閉性に優れた医療用充填材組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化カルシウム及び酸化カルシウムの中から選択されたいずれか一つ以上を含むカルシウム供給源;
ヒュームドシリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ及び粘土鉱物の中から選択されたいずれか一つ以上を含むケイ素供給源;並びに
前記カルシウム供給源と前記ケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して、ペースト化のための液体物質20〜70重量部を含み、
前記カルシウム供給源と前記ケイ素供給源とのポゾラン反応によって生成されるカルシウムシリケート水和物のカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が、0.25〜1.5であることを特徴とする医療用充填材組成物。
【請求項2】
前記カルシウム供給源は、100nm以下の粒子サイズを有することを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項3】
前記ケイ素供給源は、100m2/g以上の比表面積を有することを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項4】
前記液体物質は、N−メチル−2−ピロリドン(N‐methyl‐2‐pyrrolidone, NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(diethylene glycol monoethyl ether, DEGEE)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項5】
放射線不透過性粉末をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項6】
前記放射線不透過性粉末は、強誘電体、ビスマス酸化物、ジルコニウム酸化物、タンタル酸化物、次硝酸ビスマス、タングステン酸カルシウム及び硫酸バリウムの中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることを特徴とする請求項5に記載の医療用充填材組成物。
【請求項7】
前記強誘電体は、チタン酸ビスマス(Bi4Ti312)及びチタン酸バリウム(BaTiO3)の中から選択されたいずれか一つ以上を含むペロブスカイト(perovskite)構造の金属酸化物であることを特徴とする請求項6に記載の医療用充填材組成物。
【請求項8】
前記放射線不透過性粉末は、シリカがコーティングされたことを特徴とする請求項5に記載の医療用充填材組成物。
【請求項9】
前記医療用充填材組成物が硬化した後、硬化する前の体積の1〜3%膨脹した体積を有するようにスメクタイト粘土鉱物(smectite clay mineral)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項10】
前記スメクタイト粘土鉱物は、ベントナイト(bentonite)及びヘクトライト(hectorite)の中から選択されたいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項9に記載の医療用充填材組成物。
【請求項11】
前記液体物質100重量部に対して、ポリオール(polyol)10重量部以下をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項12】
前記ポリオールは、キシリトール(xylitol)及びエリスリトール(erythritol)の中から選択されたいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項11に記載の医療用充填材組成物。
【請求項13】
前記医療用充填材組成物は、カルシウムアルミネート及び硫酸カルシウムをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項14】
前記カルシウムアルミネートは、トリカルシウムアルミネート(tricalcium aluminate, C3A)及びドデカカルシウムヘプタアルミネート(dodecacalcium hepta‐aluminate, C127)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることを特徴とする請求項13に記載の医療用充填材組成物。
【請求項15】
前記医療用充填材組成物は、歯科用で使用されることを特徴とする請求項1に記載の医療用充填材組成物。
【請求項16】
前記医療用充填材組成物は、圧縮強度が15MPa以下であり、幼歯用根管充填材として使用されることを特徴とする請求項15に記載の医療用充填材組成物。
【請求項17】
前記医療用充填材組成物は、硬化させる過程で外部から提供される超音波によって気泡の生成が最小限におさえられることを特徴とする請求項15に記載の医療用充填材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用充填材組成物に関し、より詳細には、神経、血管、細胞組織及び硬組織などが除去された空間に充填される医療用充填材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療用充填材組成物は、治療を目的に神経、血管、細胞組織及び硬組織などが除去された空間に充填される物質であって、多様な分野で適用されている。
【0003】
特に、歯科分野のうち、歯牙内部の神経、血管及びその他細胞組織を除去した後、その空間に材料を充填し、密封して歯牙の機能を維持させる根管(神経)治療(endodontic treatment)分野において、医療用充填材組成物は必須である。
【0004】
医療用充填材組成物のうち一つとして、MTA(mineral trioxide aggregate)は根管治療分野で広範囲に使用される物質であって、主に歯根穿孔の修復、歯髄切断術、部分歯髄切断術、覆髄(pulp capping)、根管充填(root canal filling)、歯根端逆充填(root‐end retrofilling)などの治療において使用され、密閉性及び生体親和性に優れるという長所から、生活歯の歯髄治療に主に適用される水酸化カルシウムよりも、三次象牙質の形成や炎症細胞浸潤の面で優位にある。
【0005】
一般に、MTAは、カルシウムシリケート(calcium silicate)、カルシウムアルミネート(calcium aluminate)及び石膏を主成分として含んで構成され、体液、唾液、その他液体などが存在する環境で、カルシウムシリケートが水と反応することで、カルシウムシリケート水和物(calcium silicate hydrate, C−S−H)と水酸化カルシウム(calcium hydroxide)を生成する。ここで、MTAの水和反応によって生成される生成物の約75%が、一般的にカルシウムシリケート水和物(C−S−H)であり、残りの約25%が水酸化カルシウムであるものと推定される。
【0006】
このようにMTAの水和反応によって生成される主な水和相であるカルシウムシリケート水和物相は、非晶質(amorphous)であるか半結晶(semicrystalline)の構造を有するので、C−S−Hの化学式を決定することが曖昧であり、よって、一般にカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)によって分類される。
【0007】
より具体的に、テイラー(Tayler)に従って、カルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が1より小さければ、トバモライトモデル(tobermorite model)、1より大きければ、ジェンナイトモデル(jennite model)に分類されるか、ノナット(Nonat)に従って、カルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が1より小さければ、C−S−H(α)、1〜1.5であれば、C−S−H(β)、そして1.5以上であれば、C−S−H(γ)に分類されることができる。
【0008】
また、カルシウムシリケート水和物(C−S−H)は、粗い繊維結晶形状から、不規則的で、よじれた網状に繋がっているものまで、多様な形態を有し、コロイド状態で非常に高い表面積と内部空隙を有する層構造からなり、MTA硬化体内で約50〜60%の体積を占める。
【0009】
また、水酸化カルシウムは六角板状の結晶を有し、MTA硬化体内で約20〜25%の体積を占める。水酸化カルシウムの量は、MTAに含まれたカルシウムシリケートの種類及び水和反応の程度と関連する。
【0010】
実例として、カルシウムシリケートの種類の中で、トリカルシウムシリケート(tricalcium silicate)は約80%以上溶解されながら水酸化カルシウムを生成するのに対し、ジカルシウムシリケート(dicalcium silicate)は一部だけ溶解されるから、生成される水酸化カルシウムの量が少ない。さらに、水和反応の初期には少ない量のカルシウムシリケートが反応するため、生成される水酸化カルシウムの量が少ない。
【0011】
また、このようなMTAは、従来使用されていたアマルガム、IRM、Super EBAより密閉性には優れるが、硬化時間が長く、操作性が不便であり、変色が発生するなどの問題点が存在する。
【0012】
また、MTAの水和過程で周辺の酸性環境に大きく影響されて、物理的性質や構造が弱くなる問題があり、硬化した後にもMTA硬化体が口腔内の唾液や歯肉溝滲出液に露出すれば、その構造が急激に弱くなるだけでなく、根管内で歯質の破壊抵抗性(fracture resistance)を弱化させ、生活歯髄で歯髄腔の急激な狭窄をもたらすようになる。
【0013】
これはMTAの水和反応によって生成される水酸化カルシウムが、唾液や歯肉溝滲出液と反応して、石膏、水酸化ナトリウム及び水酸化マグネシウムを生成し、これによって体積が増加することにより、膨張圧が発生するからである。実際に、水酸化カルシウムのモル体積は33.2cm3であるのに対し、石膏のモル体積は74.2cm3であって、水酸化カルシウムが石膏に変わるようになると、約2.2倍の体積増加が発生する。
【0014】
また、石膏がアルミン酸カルシウム水和物、モノサルフェート、そしてトリカルシウムアルミネート(C3A)とさらに反応してエトリンガイト(ettringite)を生成するが、この過程で同様に体積が増加し、これによって膨張圧が発生することにより、MTA硬化体の割れをもたらすようになる。
【0015】
したがって、これを解決するために、水が存在する環境でシリカとアルミナ成分が水酸化カルシウムと反応して、カルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成する反応であるポゾラン反応(pozzolanic reaction)を用いる方法が研究された。
【0016】
しかしながら、ポゾラン反応を用いてカルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成する従来の技術は、カルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生体内で生成させることが困難があり、生体内で生成させるといっても、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入された後、硬化させる過程で収縮が生じて密閉性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10−1385237号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、上記のような問題を解決すべく、本発明は、水が存在する環境、すなわち生体内の修復及び充填が必要な空間に注入されると、ポゾラン反応によってカルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成し、また、硬化させる過程で収縮が生じないため、密閉性に優れる医療用充填材組成物を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような目的を達成するための本発明は、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムの中から選択されたいずれか一つ以上を含むカルシウム供給源、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ及び粘土鉱物の中から選択されたいずれか一つ以上を含むケイ素供給源、並びに、カルシウム供給源とケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して、ペースト化のための液体物質20〜70重量部を含み、カルシウム供給源とケイ素供給源とのポゾラン反応によって生成されるカルシウムシリケート水和物のカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が、0.25〜1.5であることを特徴とする医療用充填材組成物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の医療用充填材組成物は、水が存在する環境、すなわち、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入されると、ポゾラン反応によってカルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成する。そして、このように生成されたカルシウムシリケート水和物(C−S−H)を含む医療用充填材組成物硬化体は生体にやさしく、生体活性に優れるだけでなく、生化学的にも安定した中性の化合物であって、唾液や歯肉溝滲出液などに腐食されないため、唾液や歯肉溝滲出液などと接触し得る部位の穿孔修復に効果的に使用することができる。
【0021】
また、操作性及び密閉性に優れていて、微細漏出から自由であるという長所のため、密閉のための追加の施術が必要なく、二次感染を抑制できるのみならず、一定の大きさ以上の過剰な圧力をかけながら注入しても、歯根端から出ることがないため、安全の面で優れた効果がある。
【0022】
さらに、ペースト状で、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入することが容易であり、注入された後にも周辺組織に効果的に吸収されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】製造例1−1によって製造された医療用充填材組成物硬化体のSEM結果である。
図2】製造例1−1によって製造された医療用充填材組成物硬化体のEDSマッピング(mapping)結果である。
図3】製造例1−1によって製造された医療用充填材組成物硬化体のXRD結果である。
図4】製造例1−1〜製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体の細胞毒性実験結果である。
図5】実施例1と従来の医療用充填材組成物硬化体との細胞毒性実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の具現例及び実施例を詳細に説明する。ところが、本願は、種々の異なる形態に具現されることができ、ここで説明する具現例及び実施例に限定されない。そして、図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略する。
【0025】
本願明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0026】
本願明細書の全体において、用語「約」は、言及された意味で固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値で又はその数値に近接した意味で使用され、本発明の理解を助けるために正確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を、非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0027】
本発明の医療用充填材組成物は、カルシウム供給源とケイ素供給源とを含んでなる。
【0028】
カルシウム供給源は、水酸化カルシウム(calcium hydroxide, Ca(OH)2)及び酸化カルシウム(calcium oxide, CaO)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることが好ましい。これは、水酸化カルシウムは医学的な面で安全であるという長所があり、酸化カルシウムは反応性の面で優れるという長所を有するからである。
【0029】
また、水酸化カルシウムと酸化カルシウムは強塩基性であって、本発明の医療用充填材組成物が生体内の修復及び充填が必要な空間に注入された直後、抗菌作用、内毒素(endotoxin)中和作用及び硬組織形成誘導作用をする効果がある。
【0030】
ケイ素供給源は、水が存在する環境でカルシウム供給源とのポゾラン反応(pozzolanic reaction)が起きる物質であって、ポゾラン反応の生成物としてカルシウムシリケート水和物(calcium silicate hydrate, C−S−H)を生成し、本発明の医療用充填材組成物が硬化して形成される医療用充填材組成物硬化体の組職をさらに緻密にして、操作性と密閉性を向上する。
【0031】
また、ケイ素供給源は、放射線不透過性粉末であって、本発明の医療用充填材組成物に強誘電体粉末が含まれた場合、強誘電体粉末が電気的に反応して互いに凝集する現象を防止する役割を果たすことができる。
【0032】
このようなケイ素供給源は、自然から得ることができる天然ケイ素供給源又は人為的に作られる人為的ケイ素供給源を含むことができ、実例として、ヒュームドシリカ(fumed silica)、沈降シリカ(precipitated silica)、コロイダルシリカ(colloidal silica)及び粘土鉱物(clay mineral)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることが好ましい。
【0033】
ここで、粘土鉱物(clay mineral)としては、凝灰岩(tuff)、珪藻土(diatomite)、ゼオライト(zeolite)、メタカオリン(metakaolin)、モンモリロナイト(montmorillonite clay)、スメクタイト粘土鉱物(smectite clay mineral)及び合成膨潤性粘土(synthetic swellable clay mineral)などが含まれることができる。
【0034】
また、上述したカルシウム供給源とケイ素供給源とは、ポゾラン反応によって生成されるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)のカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が、0.25〜1.5になるように、本発明の医療用充填材組成物に含まれることが好ましく、より好ましくは1.0以下になるように含まれることが好ましい。
【0035】
実例として、カルシウム供給源として水酸化カルシウムを含み、ケイ素供給源として二酸化ケイ素(silicon dioxide, SiO2)を含む場合、水酸化カルシウムと二酸化ケイ素とのポゾラン反応によって生成されたカルシウムシリケート水和物(C−S−H)が、0.25〜1.5のカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)を有するようにするために、二酸化ケイ素が水酸化カルシウム100重量部に対して50〜330重量部で含まれることができ、これは水酸化カルシウムの分子量が74.093であり、二酸化ケイ素の分子量が60.09であることを考慮して算出されることができる。
【0036】
このように本発明から生成され、カルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が0.25〜1.5である、より好ましくは1.0以下であるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)は、従来のポルトランドセメントを含む医療用充填材組成物から生成される、カルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が1.0〜2.0であるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)に比べて、物理化学的に優れるという特徴がある。
【0037】
実例として、カルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が低くなるほど、シリケート鎖(silicate chain)の平均長さとC−S−Hの層間距離が増加するので、本発明から生成されるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)が、従来のポルトランドセメントから生成されるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)に比べて、広い比表面積(Brunauer‐Emmett‐Teller, BET)を有するという特徴がある。
【0038】
また、カルシウムシリケート水和物(C−S−H)のカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が1.0以下であるとき、生体親和性が急激に向上するので、生体活性及び生体親和性の面でも、本発明から生成されるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)が優れるという特徴を有する。
【0039】
また、本発明の医療用充填材組成物から生成されるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)の内部には、5nmより大きい空間に存在する毛管水(capillary water)、水和粒子の表面に水素結合方式で固着している吸着水(absorbed water)又は層間水(interlayer water)などの多様な形態で水が存在することにより、従来の医療用充填材組成物と違って、根管充填治療後にも生きている自然状態に近い水分環境を与えるようになる。さらに、これを通じて、根管治療による歯根破折の危険性を減少させるという効果がある。
【0040】
これ以外にも、本発明の医療用充填材組成物から生成されるカルシウムシリケート水和物(C−S−H)は、生化学的に安定した中性の化合物であって、唾液や歯肉溝滲出液などによって腐食されないので、唾液や歯肉溝滲出液などと接触し得る部位の穿孔修復に特に効果的に使用することができ、これに限定されず、永久歯及び幼歯の根管充填、歯根穿孔の修復、歯髄切断術、部分歯髄切断術、覆髄、歯根端逆充填などにも効果的に使用されることができる。
【0041】
さらに、従来の医療用充填材組成物は、微細漏出に脆弱であって、苦労して治療をしてからも、歯牙の多くの部分を削除し、ステンレス鋼で作られた金属クラウンを装着してもう一度密閉させなければならない問題があったが、本発明の医療用充填材組成物は、密閉性に優れていて、微細漏出から自由であるという長所がある。したがって、根管充填治療後に髄室床底(pulpar floor)の一部を本発明の医療用充填材組成物で塗布することだけでも、二次感染を抑制することができる。
【0042】
また、本発明のカルシウム供給源は粉末状態であり、ケイ素供給源とのポゾラン反応が円滑に起きて、カルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成できるようにする十分な大きさの比表面積(BET)を有することが好ましく、このために100nm以下のナノ粒子サイズを有することが好ましい。
【0043】
また、本発明のケイ素供給源も粉末状態であり、カルシウム供給源とのポゾラン反応が円滑に起きて、カルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成できるようにする十分な大きさの比表面積(BET)を有することが好ましく、より具体的に100m2/g以上の比表面積(BET)を有することが好ましい。
【0044】
なお、このように比表面積(BET)が広いケイ素供給源を使用すれば、ずり粘稠化効果(shear thickening effect)が発生し、これによって、本発明の医療用充填材組成物が歯根端の狭い空間で圧力が急激に上昇してゲル化が進行することにより、根管充填時に一定の大きさ以上の過剰な圧力をかけながら注入しても、歯根端から出ることがなくて、安全の面で優れた効果がある。
【0045】
したがって、大人の永久歯と違って、根管長を調節できる手段が施術者の感覚に依存するしかない幼歯に、特に効果的に適用されることができ、過度な注入圧力によって医療用充填材組成物が歯根端から出て永久歯胚にまで移る問題を解決することができる。
【0046】
また、本発明の医療用充填材組成物は、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入することが容易であり、保管も容易になるように、ペースト状に形成されたものが好ましく、このために、液体物質を含んでなることが好ましい。すなわち、本発明の医療用充填材組成物は、カルシウム供給源とケイ素供給源とが液体物質によって混合及び混錬されてペースト化された形態を有する。
【0047】
液体物質は、カルシウム供給源とケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して、20〜70重量部で含まれることが好ましく、これは20重量部未満で含まれれば、混合及び混錬が困難であり、70重量部超過で含まれれば、医療用充填材組成物が薄すぎて、注入するか保管することが不便になるという問題があるからである。
【0048】
このような液体物質は、極性を有し、粘性が低く、水と混ぜやすく、浸透促進(penetration enhancing)の特性に優れており、医学的に生体安全性が確保されて人体内で安全に使用できる液体であることが好ましく、実例として、N−メチル−2−ピロリドン(N‐methyl‐2‐pyrrolidone, NMP), ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(diethylene glycol monoethyl ether, DEGEE)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることが好ましい。
【0049】
このような液体物質によってペースト化された本発明の医療用充填材組成物は、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入された後、周辺組職に徐々に吸収されることができ、周辺組職から水が入ってくると、カルシウム供給源とケイ素供給源とがポゾラン反応をすることにより、カルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成するようになる。
【0050】
また、本発明の医療用充填材組成物は、放射線透過による観察を通じて施術の進行程度を正確に把握できるように、放射線不透過性を有することが好ましく、このために放射線不透過性粉末をさらに含むことが好ましい。
【0051】
放射線不透過性粉末は、強誘電体、ビスマス酸化物(bismuth oxide)、ジルコニウム酸化物(zirconium oxide)、タンタル酸化物(tantalum pentoxide)、次硝酸ビスマス(bismuth subnitrate)、タングステン酸カルシウム(calcium tungstate)及び硫酸バリウム(barium sulfate)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることが好ましく、ここで、特に強誘電体であることが好ましい。
【0052】
強誘電体は、外部の電場がなくても自ら分極(自発分極、spontaneous polarization)を持って外部電場によって分極の方向が変化できる特性を有する物質であって、ビスマス及びバリウムの中から選択されたいずれか一つ以上を含むペロブスカイト(perovskite)構造の金属酸化物粉末であることが好ましく、より具体的に、チタン酸ビスマス(Bi4Ti312)粉末及びチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることが好ましい。
【0053】
このような強誘電体は、圧電特性(piezoelectric)のような電気的特性で生体電気的信号の発生ができることにより、細胞の成長を促進させるのみならず、放射線不透過性を有しながらも細胞毒性が低く、生体親和性及び耐化学性に優れるという特徴を有する。
【0054】
したがって、放射線不透過性粉末として強誘電体粉末を含む本発明の医療用充填材組成物は、放射線不透過性を確保しながらも細胞毒性が低く、生体親和性及び耐化学性に優れるのみならず、生体内の神経、血管、細胞組織及び硬組織などが除去された空間に充填されたとき、細胞の成長を促進させる役割を果たすことができる。
【0055】
また、このような放射線不透過性粉末は、本発明の医療用充填材組成物の使用目的と放射線不透過性粉末の種類によって、好適な含量で含まれることが好ましい。
【0056】
より具体的に、放射線不透過性粉末は、カルシウム供給源とケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して、20〜300重量部で含まれることができ、穿孔の修復や部分歯髄切断術、覆髄などに使用される場合には、相対的に少なく含まれ、根管充填用シーラーとして使用される場合には、相対的に多く含まれることが好ましい。
【0057】
実例として、放射線不透過性粉末がチタン酸ビスマス(Bi4Ti312)粉末の場合には、カルシウム供給源とケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して、20〜35重量部で含まれることが好ましく、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末の場合には、カルシウム供給源とケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して、40〜300重量部で含まれることが好ましい。
【0058】
また、このような放射線不透過性粉末は、シリカ(SiO2)が表面にコーティングされた粉末であることが好ましい。これは、シリカコーティング層が放射線不透過性粉末のリーチング(leaching)を抑制して、結果として歯牙が変色することを防止して審美的な効果を高めるだけでなく、生体親和性をさらに高める効果を有するからである。また、シリカコーティング層は、ポゾラン反応を誘導して、本発明の医療用充填材組成物が硬化して形成される医療用充填材組成物硬化体の組職をさらに緻密にして、操作性及び密閉性を高める効果がある。
【0059】
また、本発明の医療用充填材組成物は、硬化しながら膨脹が必要であるか、抗菌効果を増進させるために、スメクタイト粘土鉱物(smectite clay mineral)をさらに含むことができる。
【0060】
スメクタイト粘土鉱物は、ケイ素供給源として使用されることができるスメクタイト粘土鉱物と違って、カルシウム供給源とのポゾラン反応が起きず、医療用充填材組成物の膨脹にのみ関与する物質であることが好ましい。
実例として、スメクタイト粘土鉱物は、ベントナイト(bentonite)及びヘクトライト(hectorite)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることができ、本発明の医療用充填材組成物が硬化した後、硬化する前の体積の1〜3%、より好ましくは約2%膨脹した体積を有するように含まれることが好ましい。
【0061】
ここで、上記体積膨張率は、施術者が医療用充填材組成物をいくら細かく充填しても、完璧に充填できない空間まで密閉されるようにし、医療用充填材組成物硬化体に割れなどを全くもたらさない最適な範囲になる。
【0062】
また、本発明の医療用充填材組成物は、急速な凝結特性を有するようにして硬化を促進させるために、カルシウムアルミネート(calcium aluminate)及び硫酸カルシウム(calcium sulfate)をさらに含むことができる。
【0063】
カルシウムアルミネートは、トリカルシウムアルミネート(tricalcium aluminate, C3A)及びドデカカルシウムヘプタアルミネート(dodecacalcium hepta−aluminate, C127)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることが好ましく、カルシウム供給源とケイ素供給源とを混合した混合物100重量部に対して15重量部以下で含まれることが好ましい。
【0064】
硫酸カルシウムは、カルシウムアルミネート100重量部に対して50重量部で含まれることが好ましいが、特にこれに限定されず、カルシウムアルミネート100重量部に対して100重量部以下で含まれることができる。
【0065】
また、本発明の医療用充填材組成物は、抗バイオフィルム効果と増粘(viscosity modifier)及び分散(dispersing agent)のためにポリオール(polyol)をさらに含むことができ、ポリオールは、液体物質100重量部に対して10重量部以下、より好ましくは6〜9重量部で含まれることが好ましくて、実例として7重量部で含まれることができる。
【0066】
ポリオールは、抗バイオフィルム効果に優れ、少量でもカルシウム供給源である水酸化カルシウムと酸化カルシウムなどの強塩基性物質の分散能力が卓越しているだけでなく、液体物質として主に選択されるジメチルスルホキシド(DMSO)の氷点を下げることができる長所を有するキシリトール(xylitol)及びエリスリトール(erythritol)の中から選択されたいずれか一つ以上を含んでなることが好ましい。
【0067】
実例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、人体に毒性がほとんどなくて安全な化学薬品であるが、氷点が18.5℃と高くて、寒い時には使用することが不便になるが、このような場合、エリスリトールをジメチルスルホキシド(DMSO)100重量部に対して5〜10重量部で追加することにより、ジメチルスルホキシド(DMSO)の氷点を4℃以下へと下げることができる効果がある。
【0068】
また、本発明の医療用充填材組成物は、生体内の修復及び充填が必要な空間に直接注入して使用できること以外にも、水が存在するバイアル(vial)などのケースに入れて、これを高速で回転させることができる装備を用いて回転させることにより、微細な大きさのカルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成した後、これを得て使用することもできる。
【0069】
また、上述したように、本発明の医療用充填材組成物は歯科用で、覆髄、歯髄切断、逆充填、穿孔部位修復及び根管充填用などで使用されることができ、このような多様な使用目的によって好適な圧縮強度を有するように、本発明の医療用充填材組成物が含んでいる成分の含量が調節されることができる。
【0070】
一般に、圧縮強度は高いほど良いが、実例として、再治療の便宜性を高め、永久歯が幼歯を押し上げる力である萌出圧(eruption of teeth)に反応しなければならない幼歯用根管充填材として使用されるために、15MPa以下の圧縮強度を有するように制御されることができる。
【0071】
また、本発明の医療用充填材組成物は、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入された後、硬化させる過程で超音波が提供されて、気泡が形成されることが最小限におさえられることができる。
【0072】
実例として、本発明の医療用充填材組成物が根管充填材として使用される場合、まず、医療用充填材組成物を永久歯根管の中部3分の1(middle third)に注入し、ガッタパーチャコーン(gutta percha cone)を用いて医療用充填材組成物を根管長まで押し入れた後、超音波振動をガッタパーチャコーンに提供すれば、超音波振動によって根管内部の気泡が上に抜け出ることにより、結果として医療用充填材組成物の内部に気泡が形成されることを防止することができる。
【0073】
以下、本発明の製造例、比較例及び実施例を用いてより詳細に説明する。ここで使用するすべての試薬は、一般に市販されるものを使用しており、具体的な記載がない場合は、特別な精製なしに使用している。また、下記の製造例、比較例及び実施例は、本発明の例証のためのものであって、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0074】
製造例1
水酸化カルシウム(calcium hydroxide, Ca(OH)2)、沈降シリカ(precipitated silica)及びジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)を混合し、ポゾラン反応によってカルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が下記表1のようにそれぞれ1.5、1.2、0.9及び0.7を有するカルシウムシリケート水和物(C−S−H)が生成されるように混合して、医療用充填材組成物を製造した。その後、100%湿度及び36℃の温度を有する雰囲気にさらして硬化を完了することにより、医療用充填材組成物硬化体を製造した。
【0075】
【表1】
【0076】
図1は、製造例1−1によって製造された医療用充填材組成物硬化体を走査電子顕微鏡(FE−SEM)を通じて確認したイメージ結果であり、図2は、EDSマッピング(mapping)を通じてカバレージ(coverage)及び分布図を確認した結果であり、図3は、XRD(X-Ray Diffraction)分析結果グラフである。そして、下記の表2は、EDS(X線分光分析)を通じて元素の存在を確認した結果である。
【0077】
【表2】
【0078】
図1図3及び表2に示すように、製造例1−1によって製造された医療用充填材組成物硬化体内に炭酸カルシウム(calcium carbonate, CaCO3)が生成されたことが見られるが、これはカルシウムシリケート水和物(C−S−H)の一部が空気中の二酸化炭素と反応して生成されたものであって、このような反応は、人体内でも同一に起こり得る反応であるので、このように生成された極微量の炭酸カルシウムによって、医療用充填材組成物硬化体の密閉性がさらに向上できることと予測される。
【0079】
また、製造例1によって製造された医療用充填材組成物硬化体を観察した結果、製造例1−1〜製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体は、いずれも体積が収縮する現象が発生していないことが確認できた。
【0080】
【表3】
【0081】
表3は、製造例1−1と製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体と、市販の従来の医療用充填材組成物が硬化して形成される硬化体との密閉性を実験した結果であり、その実験方法は次の通りである。
【0082】
本実験では、従来の医療用充填材組成物として、学界で対照群として最も多く使用される、検証された製品であるレジン系のAH−plusを使用した。
【0083】
医療用充填材組成物を永久歯根管の中部3分の1(middle third)に注入して、ガッタパーチャコーン(gutta percha cone)を用いて医療用充填材組成物を根管長まで押し入れた後、超音波振動をガッタパーチャコーンに提供して、超音波振動によって根管内部の気泡が上に抜け出るようにした。その後、歯牙根端孔(又は歯尖孔、apical foramen of tooth)半径2mmを除き、マニキュア(nail varnish)を用いて2回コーティングした後、食塩水(saline solution)に浸して37℃の温度を有する雰囲気で24時間硬化させた。その後、頂点(apical)から1/3部分まで0.2%のローダミンB染料(rhodamine B dye solution)に浸して37℃の温度を有する雰囲気で24時間保持させた後、取り出して水で洗浄した。その後、マニキュアを除去した後、縦方向に切断し、切断面を観察して、頂点から染料が染色された最も深い部分までの長さ(Length of micro‐leakage)を測定した。なお、表3において、Mean±SDは、平均値±標準偏差である。
【0084】
表3に示すように、製造例1−1と製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体は、いずれもAH−plusと統計学的に有意差がみられないので、本発明の医療用充填材組成物硬化体の密閉性が非常に良好であると判断できた。
【0085】
特に、製造例1−1に比べて、製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体の長さが、AH−plusと非常に類似の値を示しており、これは製造例1−1に比べて、製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体の密閉性がより優れるということを意味し、これを通じて、カルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が1.0以下のカルシウムシリケート水和物(C−S−H)が生成された医療用充填材組成物硬化体が、相対的に密閉性がより優れるということを確認することができた。
【0086】
図4は、製造例1によって製造された医療用充填材組成物硬化体の細胞毒性をMTT分析法を用いて実験した結果グラフであり、その実験方法は次の通りである。
【0087】
直径10mm、厚さ2mmの試験片を作製した後、湿度が維持される37℃の培養器で3〜7日間保管した。その後、紫外線(UV light)に一晩(overnight)さらして滅菌した後、0.5cm2/mlの濃度で3日間37℃の培養器で抽出し、抽出した培地は上層液のみ集めて別に保管した。細胞毒性実験に使用するMC3T3−E1細胞株は、MEM−α培地に10%FBSを添加して培養し、24ウェルプレート(well plate)にMT3T3−E1細胞株を1ウェル(well)当たり1.5×104個ずつ分注して、一日間培養した。このとき、サンプルは4倍の数で準備し、1、2、3日目のプレートをそれぞれ準備した。その後、培養された細胞株の培養液を除去し、抽出した培地を1ウェル(well)当たり1mlずつ分注して培養し、培養1、2、3日目にMTTアッセイ(assay)を行った。まず、細胞培養液を除去し、PBSに溶かした0.05%MTT溶液を200μlずつ処理した後、37℃のインキュベーター(incubator)で2時間培養した。その後、DMSO溶液をそれぞれ200μlずつ入れて、10分後、96ウェルプレート(well plate)に200μlずつ分けて吸光度(optical density; OD)を測定して、細胞生存率を評価した。ここで、細胞生存率は、3つの実験群の測定結果値の平均と標準偏差を用いて導出した。
【0088】
図4に示すように、製造例1−1、製造例1−2によって製造された医療用充填材組成物硬化体の細胞生存率は、わずかな差でほぼ類似しており、これらと比べたとき、製造例1−3、製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体の細胞生存率が高いということがわかった。特に、製造例1−4によって製造された医療用充填材組成物硬化体の場合、統計学的に有意差を示し、遥かに高い細胞生存率を有するということがわかった。
【0089】
これを通じて、カルシウムとケイ素とのモル比(カルシウム/ケイ素)が1.0以下のカルシウムシリケート水和物(C−S−H)が生成された医療用充填材組成物硬化体が、相対的に細胞毒性が低く、生体活性がより優れるということが確認できた。
【0090】
実施例1
水酸化カルシウム(calcium hydroxide, Ca(OH)2)、沈降シリカ(precipitated silica)及びジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)を混合し、水酸化カルシウムと沈降シリカとを混合した混合物100重量部に対して、カルシウムアルミネート(calcium aluminate)5重量部と硫酸カルシウム5重量部をさらに混合したこと以外には、上記製造例1−1と同一に医療用充填材組成物硬化体を製造した。
【0091】
図5は、実施例1によって製造された医療用充填材組成物硬化体と市販の従来の医療用充填材組成物が硬化して形成される硬化体との細胞毒性を、MTT分析法を用いて実験した結果グラフであり、その実験方法は、上述した方法と同一である。
【0092】
本実験で使用した従来の医療用充填材組成物は、Endocem MTA、Endoseal MTA及びAH−plusであり、より具体的には、別途の液体物質を使用せず、水と混合するEndocem MTAとN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を液体物質として使用するカルシウムシリケート(calcium silicate)系のEndoseal MTA、そして学界で対照群として最も多く使用される、検証された製品であるレジン系のAH−plusを使用した。
【0093】
図5に示すように、実施例1によって製造された医療用充填材組成物硬化体の細胞生存率が、Endoseal MTAとAH−plusに比べて、1、2、3日目でいずれも高いことがわかる。したがって、これを通じて、本発明の医療用充填材組成物硬化体が、Endoseal MTAとAH−plusに比べて細胞毒性が低く、生体活性により優れるということが確認できた。
【0094】
なお、実施例1によって製造された医療用充填材組成物硬化体の細胞生存率が、Endocem MTAに比べても、2日目を除き、統計学的に有意差を示していないので、本発明の医療用充填材組成物硬化体の細胞毒性と生体活性が非常に良好であると判断できた。
【0095】
実施例2
水酸化カルシウム(calcium hydroxide, Ca(OH)2)、沈降シリカ(precipitated silica)及びジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)を混合し、水酸化カルシウムと沈降シリカとを混合した混合物100重量部に対して、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末200重量部をさらに混合したこと以外には、上記製造例1−1と同一に医療用充填材組成物硬化体を製造した。
【0096】
実施例3
水酸化カルシウム(calcium hydroxide, Ca(OH)2)、沈降シリカ(precipitated silica)及びジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide, DMSO)を混合し、水酸化カルシウムと沈降シリカとを混合した混合物100重量部に対して、カルシウムアルミネート(calcium aluminate)5重量部と、カルシウムアルミネート100重量部に対して、硫酸カルシウム無水物70重量部をさらに混合したこと以外には、上記製造例1−1と同一に医療用充填材組成物硬化体を製造した。ここで、カルシウムアルミネートは、トリカルシウムアルミネート(tricalcium aluminate, C3A)とドデカカルシウムヘプタアルミネート(dodecacalcium hepta−aluminate, C127)が3:7の重量比で混合されたものを使用した。
【0097】
実施例2と実施例3によって製造された医療用充填材組成物硬化体も、細胞毒性と生体活性が非常に良好であることを確認した。
【0098】
本発明の医療用充填材組成物の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する当業者が本発明を容易に実施できるようにする好ましい実施例に過ぎず、上述した実施例及び添付の図面に限定されるものではないので、これにより本発明の権利範囲が限定されるものではない。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきであろう。また、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能だということは当業者に明らかであり、当業者によって容易に変更可能な部分も本発明の権利範囲に含まれることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、医療用充填材組成物に関し、より詳細には、神経、血管、細胞組織及び硬組織などが除去された空間に充填される医療用充填材組成物に関する。
本発明の医療用充填材組成物は、水が存在する環境、すなわち、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入されれば、ポゾラン反応によってカルシウムシリケート水和物(C−S−H)を生成する。そして、このように生成されたカルシウムシリケート水和物(C−S−H)を含む医療用充填材組成物硬化体は、生体にやさしく、生体活性に優れるだけでなく、生化学的にも安定した中性の化合物であって、唾液や歯肉溝滲出液などに腐食されないため、唾液や歯肉溝滲出液などと接触し得る部位の穿孔修復に効果的に使用することができる。
【0100】
また、操作性及び密閉性に優れて微細漏出から自由であるという長所のため、密閉のための追加の施術が必要なく、二次感染を抑制できるだけでなく、一定の大きさ以上の過剰な圧力をかけながら注入しても、歯根端から出ることがなくて安全の面で優れた効果がある。
【0101】
さらに、ペースト状で、生体内の修復及び充填が必要な空間に注入することが容易であり、注入された後にも周辺組職に効果的に吸収されることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】