特表2021-502493(P2021-502493A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-502493電解二酸化マンガン及びその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502493(P2021-502493A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】電解二酸化マンガン及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/21 20060101AFI20201225BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20201225BHJP
   H01M 10/26 20060101ALI20201225BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20201225BHJP
【FI】
   C25B1/21
   H01M4/50
   H01M10/26
   H01M10/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2020-544077(P2020-544077)
(86)(22)【出願日】2018年11月7日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月7日
(86)【国際出願番号】CA2018051407
(87)【国際公開番号】WO2019090422
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】62/583,952
(32)【優先日】2017年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520159400
【氏名又は名称】オクトパス テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OCTOPUS TECHNOLOGIES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ボナクダルポア,アーマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,デヴィッド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ネスヴァデラニ,ファーハング
(72)【発明者】
【氏名】ストセフスキー,イワン
【テーマコード(参考)】
4K021
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
4K021AB18
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB02
4K021BB03
4K021BB04
5H028AA06
5H028BB04
5H028BB10
5H028HH01
5H028HH03
5H028HH10
5H050AA07
5H050BA11
5H050CA05
5H050CB13
5H050GA03
5H050GA15
5H050GA18
5H050HA01
5H050HA10
5H050HA15
5H050HA18
(57)【要約】
本発明は、二酸化マンガンの2つの相を含み、これら二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す電解二酸化マンガン組成物に関する。二酸化マンガンの2つの相は、9:1と1:3との間の比で存在してもよい。二酸化マンガンの2つの相は、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱であってもよい。本発明は更に、前記電解二酸化マンガン組成物を含む電池、及び前記電解二酸化マンガン組成物の製造方法に関する。本発明は更に、セル内における電極の製造に関し、セルは、電池として使用され、電極は、二酸化マンガンの2つの相から本質的になる電解二酸化マンガン組成物を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化マンガンの2つの相を含み、前記二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す、電解二酸化マンガン組成物。
【請求項2】
前記二酸化マンガンの2つの相は、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱である、請求項1に記載の電解二酸化マンガン組成物。
【請求項3】
ラムスデル鉱に対するアフテンスク鉱の比が、9:1と1:3との間である、請求項1または2に記載の電解二酸化マンガン組成物。
【請求項4】
ラムスデル鉱に対するアフテンスク鉱の比が約1:3である、請求項3に記載の電解二酸化マンガン組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解二酸化マンガン組成物を含むカソードと、
アノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に配置されたセパレータと、
電解液と、を備え、
前記電解液が、前記カソード、前記アノード、及び前記セパレータに接する、電池。
【請求項6】
前記電解液は、亜鉛塩を含む、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、トリフル酸亜鉛、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記亜鉛塩は、硫酸亜鉛であり、前記電解液中の前記硫酸亜鉛の濃度は、0.5M〜2.5Mである、請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記電解液中の前記硫酸亜鉛の濃度は、2.0Mである、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記電解液は、マンガン種を更に含む、請求項6に記載の電池。
【請求項11】
前記マンガン種は、硫酸マンガンである、請求項10に記載の電池。
【請求項12】
前記亜鉛塩は、硫酸亜鉛であり、前記電解液中の前記硫酸亜鉛の濃度は、0.5M〜2.5Mであり、前記電解液中の前記硫酸マンガンの濃度は、0.1M〜0.2Mである、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記電解液中の前記硫酸マンガンの濃度は、0.1M〜0.2Mである、請求項11に記載の電池。
【請求項14】
前記電解液のpHは、3〜7である、請求項6〜11のいずれか1項に記載の電池。
【請求項15】
前記pHは、3.5〜4.5である、請求項14に記載の電池。
【請求項16】
前記pHは、3.5〜4.3である、請求項15に記載の電池。
【請求項17】
前記電解液は、pH緩衝系を更に含む、請求項6〜14のいずれか1項に記載の電池。
【請求項18】
前記電解液のpHは、4.5〜5.5である、請求項17に記載の電池。
【請求項19】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解二酸化マンガン組成物の製造方法であって、
(a)カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間にあるセパレータとを備えた電気化学セルを設け、前記カソード、前記アノード、及び前記セパレータが、電解液と流体的に接し、前記電解液が、マンガンを含む種を含む工程と、
(b)前記カソードと前記アノードとの間に、約1.8Vcell〜約2.5Vcellの電位を、予め定められた時間にわたって印加する工程と、
(c)電解二酸化マンガン組成物を形成し、当該電解二酸化マンガン組成物を前記アノード上に析出させる工程と、
(d)前記電解液のpHを3〜7に維持する工程と
を備える、製造方法。
【請求項20】
前記アノード上に前記電解二酸化マンガン組成物を析出させる際に、10PSI〜170PSIの圧力を印加する工程を更に備える、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記圧力は、10PSI〜100PSIである、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解二酸化マンガン組成物の製造方法であって、
(a)カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間にあるセパレータとを備えたセルを設け、前記カソード、前記アノード、及び前記セパレータが、電解液と流体的に接し、前記電解液が、マンガンを含む種を含む工程と、
(b)前記セルの充放電を行う工程と、
(c)前記セルの放電の前に、前記セルを2時間以上にわたって所定の電位に保持する工程と、
(d)電解二酸化マンガン組成物を形成し、当該電解二酸化マンガン組成物を前記アノード上に析出させる工程と
を備える、製造方法。
【請求項23】
前記(b)の工程において、前記セルは、1.85Vcellと0.9Vcellとの間で充放電される、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
前記(c)の工程において、前記セルは、1.85Vcellの電位に保持される、請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記(c)の工程の前記所定の電位は、1.75Vcell〜2Vcellである、請求項22に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解二酸化マンガン組成物に関する。本発明はまた、電解二酸化マンガン組成物を調製する方法に関する。本発明はまた、電解二酸化マンガン組成物を組み込んだ再充電可能な電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化マンガン(MnO)は、電池及び顔料の材料として、並びにマンガンを含む他の組成物の前駆物質として一般に使用される無機化合物である。多くの無機化合物と同様に、二酸化マンガンは天然に存在しており、様々な多形または相として存在する。このような多形体には、α−MnO、β−MnO(軟マンガン鉱)、γ−MnO(ラムスデル鉱)、及びε−MnO(アフテンスク鉱)が含まれるが、これらに限定されない。しかしながら、そのような自然界での存在にもかかわらず、商用を意図した二酸化マンガンは、合成されるのが一般的である。
【0003】
現在の商用を意図した二酸化マンガンは、通常、化学的手段または電解的手段のいずれかによって形成される。既知の電解二酸化マンガン組成物(「EMD」)は、一般にHSO−MnSO電解法から製造される。このような方法には、通常、熱硫酸槽(例えば、約90℃〜約100℃)中におけるEMDの合成が含まれる。
【0004】
現在市販されているEMDは、アフテンスク鉱、ラムスデル鉱、及び軟マンガン鉱の3つの相を、様々な比率で含むのが一般的である。図1aを参照すると、現在市販されているEMDのうち、約40重量%のアフテンスク鉱、約59重量%のラムスデル鉱、及び約1重量%の軟マンガン鉱からなるEMDのXRDディフラクトグラム(即ち、東ソーHH)の一例が示されている。図1bを参照すると、現在市販されているEMDのうち、約52重量%のアフテンスク鉱、約47重量%のラムスデル鉱、及び約1重量%の軟マンガン鉱からなるもう1つのEMD(即ち、エラケム)のXRDディフラクトグラムの一例が示されている。現在市販されているEMD中に存在する多形体は、一般的に、高い結晶性を示す。
【0005】
二酸化マンガンは、比較的豊富であり、低毒性であり、低価格であるため、アルカリZn/MnO電池の製造で一般的に使用されており、Zn/MnO電池自体が、電池の市場占有率においてかなりの割合を占めている。概して、Zn/MnO電池は、カソード(即ち、活性カソード材料として現在市販されているEMDを含むカソード)、アノード(即ち、活性アノード材料として亜鉛金属を含むアノード)、並びにこれらカソード及びアノードの両方が流体的に接するアルカリ電解液(例えば、水酸化カリウム溶液)を備える。アルカリZn/MnO電池の動作中、亜鉛アノード材料が酸化され、EMDカソード材料が還元されて、外部負荷に向けられた電流が生成される。このような電池を再充電すると、二酸化マンガンの還元の結果として形成された副生成物が酸化され、電解二酸化マンガンが再形成される。同様に、亜鉛金属の酸化の結果として形成された副生成物が還元され、亜鉛金属が再形成される。
【0006】
アルカリZn/MnO電池のほかに、二酸化マンガンをリチウム系及びナトリウム系の電池に組み込むこともできる(ビスワル(Biswal)ほか著、電解二酸化マンガン(EMD):世界規模の製造、埋蔵量、及び電気化学におけるその役割に関する見解、RSC Adv.,2015,5,58255−58283)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カソード材料としてEMDを組み込んだ電池またはキャパシタは、一般的に、高出力電圧、高エネルギ密度、良好な貯蔵寿命、低自己放電率、低分極、及び高放電容量などの望ましい特性を有しており、望ましい特性は、これらに限定されるものではない。しかしながら、このような電池またはキャパシタのサイクル性は伝統的に劣ったままとなっている。加えて、現在の商業的製造プロセスから生産されるEMDは、多くの電子的用途に適しているかもしれないが、このようなEMDは、新世代の電子デバイスへのエネルギ出力要件を満足しない可能性があるという示唆がある。
【0008】
更に、アルカリZn/MnO電池のアルカリ電解環境は、アノード上に形成されたZnOまたはZn(OH)、並びにカソード上に形成されたMn(OH)、Mn、及びMnなど(但し、これらに限定されるものではない)の不可逆的な副生成物の形成に寄与することが注目されている(シェン(Shen)ほか著、電源、2000、87、162)。電池動作の結果として形成されるこのような不可逆的な副産物により、容量の減衰やクーロン効率の低下、またはその両方といった望ましくない結果を招く可能性がある。
【0009】
本発明は、電解二酸化マンガン組成物に関する。本発明はまた、電解二酸化マンガン組成物を調製する方法に関する。本発明はまた、電解二酸化マンガン組成物を組み込んだ再充電可能な電池に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、二酸化マンガンの2つの相を含む電解二酸化マンガン組成物が示され、二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す。二酸化マンガンの2つの相は、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱であってもよい。二酸化マンガンの2つの相の比は、9:1と1:3との間であってもよい。
【0011】
本発明のもう1つの態様によれば、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に配置されたセパレータと、カソード、アノード、及びセパレータと流体的に接する電解液とを備える電池が示される。カソードは、二酸化マンガンの2つの相を含む電解二酸化マンガン組成物を含み、これら二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す。二酸化マンガンの2つの相は、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱であってもよい。二酸化マンガンの2つの相の比は、9:1と1:3との間であってもよい。電池の動作pHは、3〜7であってもよい。
【0012】
本発明のもう1つの態様によれば、二酸化マンガンの2つの相を含む電解二酸化マンガン組成物を調製する方法が示され、二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す。この方法は、カソード及びアノードが、マンガンを含む種を含んだ電解液に接しており、予め定められた時間にわたり、約1.8Vcell〜約2.5Vcellの電位を、これらカソードとアノードとの間に印加する工程と、電解二酸化マンガン組成物を形成し、当該電解二酸化マンガン組成物をアノード上に析出させる工程と、電解液のpHを3〜7に維持する工程とを備える。合成処理の際には、約10PSI〜100PSIの圧力を印加してもよい。
【0013】
本発明のもう1つの態様によれば、電池として使用するためのセル内に、直接、電解二酸化マンガン電極を調製する方法であって、当該電解二酸化マンガン電極は、電解二酸化マンガン組成物を含み、当該電解二酸化マンガン組成物は、二酸化マンガンの2つの相を含み、これら二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す、方法が示される。この方法は、(a)カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間にあるセパレータとを備えたセルを設け、カソード、アノード、及びセパレータが電解液と流体的に接し、電解液がマンガンを含む種を含む工程と、(b)セルの充放電を行う工程と、(c)セルの放電の前に、当該セルを2時間以上にわたって所定の電位に保持する工程と、(d)電解二酸化マンガン組成物を形成し、当該電解二酸化マンガン組成物をアノード上に析出させる工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
二酸化マンガンの2つの相を含み、これら二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方において少なくとも一部が非晶質性を示す電池は、現在市販されているEMDを含む電池よりも優れたサイクル性を示すことができる。二酸化マンガンの2つの相を含み、これら二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方において少なくとも一部が非晶質性を示す電池は、現在市販されているEMDを含む電池よりも優れた比容量を示すことができる。二酸化マンガンの2つの相を含み、これら二酸化マンガンの2つの相のうちの少なくとも一方において少なくとも一部が非晶質性を示す電池は、現在市販されているEMDを含む電池よりも、使用に伴う容量減衰を少なくすることができる。
【0015】
この発明の概要は、本発明の全ての態様を必ずしも全範囲にわたって記載するものではない。別の態様、特徴、及び利点は、以下の具体的な実施形態の説明を概観することにより、当業者にとって明らかなものとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】現在市販されている電解二酸化マンガン組成物(即ち、東ソーHH)のX線回折(XRD)ディフラクトグラムであり、当該XRDディフラクトグラムにより、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱、ラムスデル鉱、及び軟マンガン鉱の存在が示されている。
図1b】現在市販されている電解二酸化マンガン組成物(即ち、エラケム)のXRDディフラクトグラムであり、当該XRDディフラクトグラムにより、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱、ラムスデル鉱、及び軟マンガン鉱の存在が示されている。
図2a】中性EMD(本明細書で定義する)のXRDディフラクトグラムであり、第1の実施形態に係り、当該XRDディフラクトグラムは、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱及びラムスデル鉱の存在を示している。
図2b】中性EMDのXRDディフラクトグラムであり、第2の実施形態(即ち、NiZnAc)に係り、当該XRDディフラクトグラムは、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱及びラムスデル鉱の存在を示している。
図2c】中性EMDのXRDディフラクトグラムであり、第3の実施形態(即ち、FNB088)に係り、当該XRDディフラクトグラムは、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱及びラムスデル鉱の存在を示している。
図2d】中性EMDのXRDディフラクトグラムであり、第4の実施形態(即ち、ISA19_05)に係り、当該XRDディフラクトグラムは、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱及びラムスデル鉱の存在を示している。
図2e】中性EMDのXRDディフラクトグラムであり、第5の実施形態(即ち、ISA19_02)に係り、当該XRDディフラクトグラムは、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱及びラムスデル鉱の存在を示している。
図2f】中性EMDのXRDディフラクトグラムであり、第6の実施形態(即ち、ISA19_01)に係り、当該XRDディフラクトグラムは、電解二酸化マンガン組成物中のアフテンスク鉱及びラムスデル鉱の存在を示している。
図3】中性EMDを含む電極の製造に使用するセルの分解図である。
図4a】中性EMDを含む電極の製造に使用するセルの分解図であり、電極はセルの「現場(in-situ)」で生成される。
図4b】セルにおける現場での電極の調製中の、図4aに示すセルの容量対サイクルをプロットしたものである。
図5】中性EMDを含む電池の全般的な動作状態を示すプールベ図である。
図6a】現場外生成(Ex-situ)NEMD電極(本明細書で定義する)またはNEMD粉末電極(本明細書で定義する)を備えた電池、及び市販のEMDから形成される電極を備えた電池の比容量対サイクル数をプロットしたものである。
図6b図6aの電池のサイクル性試験の5回目の放電中に収集した、当該電池の電圧対比容量をプロットしたものである。
図7】市販のEMDから形成された電極を備えた電池と、NEMD粉末電極を備えた電池との、複数の充放電サイクルを経たdQ/dVをプロットしたものである。
図8a】現場外生成NEMD電極またはNEMD粉末電極を備えた電池と、市販のEMDから形成された電極を備えた電池との、比容量対サイクル数をプロットしたものである。
図8b図8aの電池の比エネルギ対サイクル数をプロットしたものである。
図8c図8aの電池のサイクル性試験の5回目の放電中に収集した、当該電池の電圧対比容量をプロットしたものである。
図9】現在市販されているEMDと中性EMDとのXRDディフラクトグラムの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面は、1つまたは複数の例示的な実施形態を示す。
【0018】
「頂部」、「底部」、「上方」、「下方」、「垂直」、及び「横方向」などの方向に関する用語は、以下の説明において、単に相対的な関係を提示する目的で使用するものであって、使用の際に、どの物品がどのように配置されるか、または組立体の内部もしくは周囲環境に対してどのように取り付けられるかについて、いかなる限定の示唆も意図するものではない。用語「含む」と併せて本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」または「an」の使用は、「1つ」を意味する場合もあるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つまたは1つより多数」の意味にも合致する。単数形で表現されるいかなる要素もまた、その複数形を包含する。複数の形態で表される任意の要素もまた、その単数形態を包含する。本明細書で使用する「複数」という用語は、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上など、1つより多いことを意味する。
【0019】
本明細書において、用語「備える」、「有する」、「含む」、及び「含有する」、並びにその文法的な変形は、包括的なものであり、または制限を定めないものであって、付加的な、示されていない要素や方法ステップを排除するものではない。用語「本質的に・・・からなる」は、組成、使用、または方法に関連して本明細書で使用する場合、更なる要素、方法ステップ、または更なる要素及び方法ステップの両方が存在し得ることを意味するが、これらの追加は、示された組成、方法、または使用の機能のしかたに実質的に影響を及ぼさない。用語「・・・からなる」は、組成、使用、または方法に関連して本明細書で使用する場合、更なる要素や方法ステップの存在を排除するものである。
【0020】
本明細書において、用語「約」は、その後に示された値が続く場合、その示された値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0021】
本明細書において、用語「電池」は、1つの電気化学セル、または直列、並列、もしくはそれらの組み合わせで接続された2つ以上の電気化学セルを意図するものである。本明細書で使用する場合、用語「セル」は、1つの電気化学セル、または直列、並列、もしくはそれらの組み合わせで接続された2つ以上の電気化学セルを意図するものである。本明細書で使用する場合、用語「電池」及び「セル」は、置き換え可能である。
【0022】
本明細書において、「Cレート」は、電池を放電する際の、MnOの機能上達成可能な200mAh・g−1の比容量に関する割合を表す。例えば、2Cレートは、MnO電極の200mAh・g−1の比容量を30分で完全放電することになり、1Cレートは、MnO電極の200mAh・g−1の比容量を1時間で完全放電することになり、C/2レートは、MnO電極の200mAh・g−1の比容量を2時間で完全放電することになり、C/10速度は、MnO電極の200mAh・g−1の比容量を10時間で完全放電することになる。
【0023】
本明細書において、用語「カットオフ容量」または「容量カットオフ」は、電池の放電ステップを停止する電量容量を表す。
【0024】
本明細書において、用語「カットオフ電圧」または「電圧カットオフ」は、(i)放電ステップを停止するか、または(ii)充電ステップを停止する電池の電圧を表す。
【0025】
本発明は、少なくとも部分的には、二酸化マンガンの様々な相を含むEMDに関するものであって、二酸化マンガンの相のうちの少なくとも1つは、少なくとも一部が非晶質性を示す。いくつかの実施形態において、EMDは、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱を含む。いくつかの実施形態において、EMDは、本質的にアフテンスク鉱及びラムスデル鉱からなる。いくつかの実施形態において、EMDはアフテンスク鉱及びラムスデル鉱からなる。いくつかの実施形態において、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱以外の相は、EMD内で検出されない。EMDの結晶性、非晶質性、またはその両方は様々であり得る。EMDの表面積の程度も様々であり得る。EMDにおけるアフテンスク鉱、ラムスデル鉱、またはその両方の格子間隔は様々であり得る。EMDにおける、アフテンスク鉱、ラムスデル鉱、またはその両方の単位格子は様々であり得る。
【0026】
[電解二酸化マンガン組成物]
本明細書で考察するように、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱を含む電解二酸化マンガン組成物があり、二酸化マンガンの相のうちの少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す。例えば、ラムスデル鉱の少なくとも一部が、非晶質性を示すものであってもよい。電解二酸化マンガン組成物は、約30重量%〜約90重量%のアフテンスク鉱を含むことができる。例えば、電解二酸化マンガン組成物は、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%のアフテンスク鉱を含むことができる。電解二酸化マンガン組成物は、約10重量%〜約70重量%のラムスデル鉱を含むことができる。例えば、電解二酸化マンガン組成物は、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%のラムスデル鉱を含むことができる。アフテンスク鉱とラムスデル鉱の比は、約9:1と約3:9との間とすることができる。このような電解二酸化マンガン組成物は、それぞれ「中性EMD」と称することがある。
【0027】
図2aのXRDディフラクトグラムを参照すると、第1の実施形態に係り、アフテンスク鉱及びラムスデル鉱を含む電解二酸化マンガン組成物があり、二酸化マンガンの相の少なくとも一方は、少なくとも一部が非晶質性を示す。アフテンスク鉱及びラムスデル鉱以外の相(例えば、軟マンガン鉱)は検出されない。本実施形態で意図するところでは、電解二酸化マンガン組成物が、本質的に24.82重量%のアフテンスク鉱及び75.18重量%のラムスデル鉱からなり、アフテンスク鉱対ラムスデル鉱の比は約1:3である。
【0028】
以下の表1は、現在市販されているEMD(即ち、「市販」と識別されているもの)と比較した、中性EMD(即ち、「非売」と識別されているもの)の別の実施形態に関する非限定的なリストを示している。中性EMDのこれらの非限定的な別の実施形態のXRDディフラクトグラムは、図2b〜2fに示されている。
【0029】
【表1】
【0030】
中性EMDは、現在市販されているEMDより無秩序な結晶構造を有していてもよく、この無秩序の程度は、結晶相の粒径によって評価される。例えば、中性EMDは、現在市販されているEMDよりも小さいラムスデル鉱粒径を示すものであってもよい。いくつかの実施形態において、本発明で生成されるEMDは、現在市販されているEMDにおけるラムスデル鉱粒径の約半分のラムスデル鉱粒径を示す。いくつかの実施形態において、中性EMDは、現在市販されているEMDにおけるラムスデル鉱粒径の約3分の1のラムスデル鉱粒径を示す。別の例として、中性EMDは、現在市販されているEMDよりも小さなアフテンスク鉱粒径を示すものであってもよい。いくつかの実施形態において、中性EMDは、現在市販されているEMDにおけるアフテンスク鉱粒径の約5/6のアフテンスク鉱粒径を示す。比較例は、以下の実施例4にも示される。
【0031】
[二酸化マンガン電解質組成物の調製]
中性EMDは、電気分解によって合成される。中性EMDは、粉末またはそれ以外の適切な形態に形成され、処理されてもよい。このような処理済み中性EMDは、本明細書において「NEMD粉末」と称することがある。
【0032】
中性EMDを合成する方法の第1の実施形態によれば、そのような合成のための電気化学セルが設けられる。この電気化学セルは、カソードと、アノードと、これらカソードとアノードとの間にある電解液とを備える。別の実施形態では、別の任意の適切なセルを使用することができる。
【0033】
アノードは、適切な幅、高さ、及び厚さのニッケル金属箔(例えば、MTI社製のMF−NiFoil−25u)を備える。例えば、アノードは、幅4cm、高さ14cm、及び厚さ0.04mmとすることができる。別の実施形態では、アノードが、別の適切な集電材料を含むか、もしくは別の特定の物理的特徴を有するか、またはその両方を具備する。別の特定の物理的特徴を有した別の適切な集電材料の例には、金属発泡体、3−D金属、カーボン紙、多孔質カーボン、グラファイト、及び3−D構造化カーボンが含まれるが、これらに限定されない。多孔質アノード(発泡材料を含む)については、理論にとらわれることなく、多孔質アノードの大きな表面積により、同じ処理量で二酸化マンガンのより薄い層の析出が可能となるため、析出した二酸化マンガンのより良好な利用が可能となると考えられる。
【0034】
カソードは、適切な幅、高さ、及び厚さの亜鉛箔(例えば、デクスメット社(Dexmet Corporation)製の亜鉛)を備える。例えば、カソードは、幅4cm、高さ14cm、及び厚さ0.5mmとすることができる。別の実施形態において、カソードは、ニッケル金属箔、白金金属箔、錫系材料、インジウム系材料、及び炭素系材料を含む任意の適切な材料とすることができるが、これらに限定されない。
【0035】
電解液は、その中に溶解された亜鉛系の塩を含む。本実施形態で意図するところでは、電解液が、約2.0Mの硫酸亜鉛七水和物を含む。別の実施形態において、電解液は、別の濃度の硫酸亜鉛七水和物を含む。硫酸亜鉛七水和物の適切な濃度の例には、約0.5Mから飽和まで、約0.5M〜約2.5M、約1.0Mから飽和まで、約1.0M〜約2.5M、約1.5Mから飽和まで、及び約1.5M〜約2.5Mの各範囲のものが含まれるが、これらに限定されない。例えば、硫酸亜鉛七水和物は、約0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5Mの濃度で溶液中に存在することができる。別の実施形態では、上記と同じまたは類似の濃度で電解液に溶解される、別の水和硫酸亜鉛または非水和硫酸亜鉛を使用することができる。別の実施形態では、亜鉛系の塩が、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、トリフル酸亜鉛、またはこれらを組合せて適切な濃度で電解液に溶解されるものとすることができるが、これらに限定されない。
【0036】
電解液は、約1.0Mの硫酸マンガン一水和物を更に含む。別の実施形態において、電解液は、別の適切な濃度の硫酸マンガン一水和物を含む。硫酸マンガン一水和物の適切な濃度の例には、約0.1M〜約1.5M、約0.6M〜約1.5M、約0.6M〜約1.0M、約0.1M〜約0.6Mの範囲のものが含まれるが、これらに限定されない。例えば、電解液は、約0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5Mの濃度の硫酸マンガン一水和物を含むことができるが、これらに限定されない。別の実施形態では、上述の濃度と同じまたは類似の濃度で電解液に溶解される、他の水和硫酸マンガンまたは非水和硫酸マンガンを使用することができる。別の実施形態において、電解液は、硫酸マンガン一水和物と同じまたは実質的に同様の機能を有した別の適切なマンガン種を含む。
【0037】
中性EMDを合成するために、約1.8Vcell〜約2.5Vcell(例えば、1.8Vcellと2.5Vcellとの間)の電位が、予め定められた時間(例えば、18時間、24時間、48時間)にわたって、カソードとアノードとの間に印加される。例えば、1.8Vcell、1.9Vcell、2.0Vcell、2.1Vcell、2.2Vcell、2.3Vcell、2.4Vcell、2.5Vcellの電位を、カソードとアノードとの間に印加することができる。別の実施形態では、約0.2mA・cm−2〜約10.0mA・cm−2の電流(例えば、約3.0mA・cm−2〜約4.0mA・cm−2、約3.5mA・cm−2〜約5.0mA・cm−2)が、カソードとアノードとの間に印加される。二酸化マンガンの合成条件として、予め定められた時間にわたって室温(即ち、約20℃〜約25℃)に維持される。中性EMDは、セル内で合成され、予め定められた時間にわたってアノードの表面に析出する。この第1の実施形態で意図するところでは、2.5Vcellの電位が、24時間にわたってカソードとアノードとの間に印加される。
【0038】
この第1の実施形態において意図するところでは、中性EMDは、pHが約3.5〜約4.3である環境において合成される。例えば、このpH環境は、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3とすることができる。
【0039】
合成されてアノードの表面に析出した中性EMDは、アノードの表面から取り外され、電解液から回収されて、乾燥される。例えば、アノード(析出した中性EMDを有する)が、電気化学セルから取り出される。中性EMDに脱イオン水を噴霧し、当該中性EMDをアノードの表面から取り外す。取り外された中性EMDは、予め定められた時間にわたり、当該中性EMDを脱イオン水中で撹拌することによって洗浄される。例えば、この予め定められた時間には、約3時間〜約8時間が含まれるがこれらに限定されない任意の期間とすることができる。例えば、この予め定められた時間には、約3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間が含まれるが、これらに限定されない任意の期間とすることができる。この非限定的な実施形態で意図するところでは、予め定められた時間が約8.0時間となっている。次に、脱イオン水をデカントし、予め定められた時間にわたり、中性EMDを脱イオン水中で再び洗浄し、脱イオン水をデカントする。洗浄工程は、所望の頻度で繰り返してもよい。
【0040】
第1の実施形態で意図するところでは、次に、中性EMDを3000rpmで遠心分離し、残存する脱イオン水から中性EMDを分離し、回収した中性EMDを乾燥させる。好適な乾燥条件の例には、回収した電解二酸化マンガンを、高温(例えば、約50℃〜約90℃、約50℃〜約80℃、約50℃〜約70℃、約50℃〜約60℃、約60℃〜約90℃、約60℃〜約80℃、約60℃〜約70℃、約70℃〜約90℃、約70℃〜約80℃、約80℃〜約90℃)で、予め定められた時間(例えば、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間)にわたって乾燥させることが含まれるが、これらに限定されない。この第1の実施形態で意図するところでは、回収した中性EMDは粉末状にされる。別の実施形態において、回収した中性EMDは、それ以外の任意の適切な状態とすることができる。別の実施形態として、中性EMDは、当技術分野で公知の任意の別の適切な方法によって回収するようにしてもよい。
【0041】
別の実施形態において、電解液は、当該電解液中に適切な濃度で存在する適切なpH緩衝系を更に含む。適切な濃度には、約0.05M〜約0.20M、約0.05M〜約0.25M、約0.05M〜約0.20M、約0.05M〜約0.15M、約0.06M〜約0.19M、約0.07M〜約0.18M、約0.08M〜約0.16M、及び約0.09M〜約0.15Mの濃度範囲が含まれるが、これらに限定されない。例えば、適切な濃度には、約0.01M、0.02M、0.03M、0.04M、0.05M、0.06M、0.07M、0.08M、0.09M、0.10M、0.11M、0.12M、0.13M、0.14M、0.15M、0.16M、0.17M、0.18M、0.19M、及び0.20Mが含まれるが、これらに限定されない。適切なpH緩衝系の例には、酢酸塩、硫酸塩、及びこれらの組み合わせから選択されるものが含まれるが、これらに限定されない。適切な緩衝系の一例は、それぞれが約0.1Mの濃度で電解液に溶解するMn(CHCOO)とNaSOとを含むものである。適切な緩衝系のもう1つの例は、それぞれが約0.1Mの濃度で電解液に溶解するMn(CHCOO)とNaSOとから本質的になるものである。適切なpH緩衝系の存在下で、中性EMDが合成される環境は、一般に、約4.5〜約5.5のpHを有する。例えば、pH環境は、約5.5〜約6.5とすることができる。例えば、pH環境は、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4とすることができる。
【0042】
別の実施形態において、合成は、約5℃〜10℃、約5℃〜15℃、約5℃〜19℃、約26℃〜35℃、約36℃〜45℃、約46℃〜55℃、約56℃〜65℃、約66℃〜75℃、約76℃〜85℃、約86℃〜95℃の温度範囲を含む、室温以外の任意の好適な温度で生じるが、これに限定されるものではない。例えば、EMDの合成は、5℃、6℃、7℃、8℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃で生じさせることができる。
【0043】
別の実施形態では、電解液のpHを約3〜約7に維持する任意の適切なpH緩衝系を使用することができる。適切なpH緩衝系には、クエン酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、電解液のpHを約0〜約7に維持する任意の適切なpH緩衝系を使用することができる。別の実施形態では、電解液のpHを約7〜約9に維持する任意の適切なpH緩衝系を使用することができる。
【0044】
合成条件が高温(例えば、90℃〜100℃)に維持されることが多く、時には長時間(例えば、12時間〜24時間)にわたり高温が維持されるような商業的プロセスを用いてEMDを合成するよりも、中性EMDを合成するのに必要なエネルギ需要は少なく、熱攻撃的な要件は少ないと考えられる。
【0045】
NEMD粉末は、電池(例えば、Zn/MnO電池)での使用に適合するようにしてもよい。NEMD粉末は、電池(例えば、Zn/MnO電池)に使用してもよい。
【0046】
[NEMD粉末からの電極の製造]
NEMD粉末を集電体と組み合わせて電極を形成するようにしてもよい。NEMD粉末を含むか、またはNEMD粉末から形成される電極は、本明細書において「NEMD粉末電極」と称する場合がある。
【0047】
NEMD粉末電極の第1の実施形態では、NEMD粉末をカーボンブラック(例えば、バルカン(Vulcan、登録商標)のXC72R)と混合した後、7重量%のポリフッ化ビニリデン(例えば、EQ−Lib−PVDF、MTI社)及びn−メチル−2−ピロリドン(例えば、EQ−Lib−NMP、MTI社)を主成分とする溶液に添加して、混合液を形成する。この混合液をカーボンペーパの集電体基材(例えば、TGP−H−120カーボンペーパ)に塗布する。この液を、集電体基材上で18時間にわたり約100℃で乾燥する。乾燥すると、NEMD粉末電極が形成される。形成されたNEMD粉末電極中のNEMD粉末対カーボンブラック対PVDFの比は、7:2:1である。
【0048】
集電体基材は、実質的に2−D構造または3−D構造とすることができる。集電体基材は、様々な多孔度(例えば、5%〜70%)、及び曲がりくねった状態を有することができる。いくつかの実施形態において、集電体基材は、金属、合金、または金属酸化物とすることができる。適切な金属または合金の例には、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タングステン、及びニッケル系合金が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、集電体基材のための別の炭素支持体を使用することができる。このような炭素支持体には、カーボンナノチューブ、改質カーボンブラック、活性炭が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、これ以外の集電体基材を使用することができる。このような基材には、3−D構造化炭素、多孔質炭素、及びニッケル金属メッシュが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
NEMD粉末電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)の製造に組み込まれるようにしてもよい。NEMD粉末電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)の構成要素であってもよい。NEMD粉末電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)における使用に適合するようにしてもよい。NEMD粉末電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)に使用してもよい。
【0050】
別の実施形態では、上述の重量%以外の重量%のポリフッ化ビニリデンを含むポリフッ化ビニリデン溶液を使用することができる。例えば、このような溶液は、1重量%〜15重量%のポリフッ化ビニリデンを含有することができる。
【0051】
別の実施形態では、上述の乾燥温度以外の乾燥温度を使用することができる。例えば、乾燥温度は、約80℃〜約110℃のうちの任意の温度とすることができる。例えば、乾燥温度は、約80℃〜約110℃、80℃〜約100℃、80℃〜約90℃、90℃〜約110℃、90℃〜約100℃、約100℃〜約110℃とすることができる。別の実施形態では、上述の乾燥時間以外の乾燥時間を使用することができる。例えば、乾燥時間は、約1.5時間〜5時間のうちの任意の時間とすることができる。例えば、乾燥時間は、約5時間〜18時間、約5時間〜14時間、約5時間〜10時間、及び約5時間〜約8時間とすることができる。
【0052】
別の実施形態において、NEMD粉末対カーボンブラック対PVDFの比は様々に設定することができる。適切な比の例には、7:2:1、14:3:3、3:1:1、6:3:1、12:5:3が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
別の実施形態では、別のバインダ及びバインダ溶媒を使用することができる。例えば、グルタルアルデヒドで架橋されたポリビニルアルコール(PVA)を、水溶液の形成の際のバインダとして使用することができる。理論にとらわれることなく、PVAは電極の親水性を増加させ、それによって電池性能を改善すると考えられる。もう1つの例では、ゴム系バインダであるスチレンブタジエンを使用することができる。それ以外のバインダには、Mクラスゴム及びテフロン(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
別の実施形態では、硫酸塩、水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、酸化物、及びこれらの水和物などの添加剤を、電極の形成の際に添加することもできるが、これらに限定されない。アルカリ土類金属塩及び硫酸塩の例には、BaSO、CaSO、MnSO、及びSrSOが含まれるが、これらに限定されない。遷移金属塩の例には、NiSO及びCuSOが含まれるが、これらに限定されない。酸化物の例には、Bi及びTiOが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、銅系添加剤やビスマス系添加剤のような添加剤を、電極の形成の際に添加することができるが、これらに限定されない。理論にとらわれることなく、このような添加剤は、電池のサイクル性を改善すると考えられる。
【0055】
[現場外生成(Ex-situ)NEMD電極を形成するための集電体上への中性EMDの直接的な析出]
中性EMDを合成し、集電体上に直接析出させて、中性EMDを含む電極を形成するようにしてもよい。このようにして形成された電極は、この後で電池に組み込まれるようにしてもよい。電池への組み込みに適合する中性EMDの直接的な析出から形成された電極(即ち、電極は電池の外部で製造される)は、本明細書において「現場外生成NEMD電極」と呼ぶ場合がある。
【0056】
図3を参照すると、現場外生成NEMD電極を形成する第1の実施形態により、デルドリンベース(deldrin-based)のセル100が設けられる。セル100は、本体110及び蓋170を備える(蓋は、図4では2つの部分を有するものとして示されている)。本体110は、内部空洞112を画定する複数の壁と底部とを有する。壁の周囲には複数のボルト114が配置されている。蓋170は、(i)ボルト114を貫通させて受容する複数の孔172と、(ii)アノード接続端子190を貫通させて受容する孔174と、(iii)カソード接続端子192を貫通させて受容する孔176とを備える。別の実施形態では、これ以外の任意の適切なセルを使用することができる。
【0057】
亜鉛箔(例えば、約0.5mmの厚さを有するデクスメット(Dexmet)のSO31050)を備えたカソード120は、デルドリンベースのセル100の内部空洞112内に配置される。約2.0MのZnSO・7HOと、約0.6MのMnSO・HOとを含む電解液は、カソード120が流体的に接する(例えば、電解液中に浸漬される)状態になるまで、内部キャビティ112に注入される。カソード120は、カソード接続端子192がカソード120と直接接触した状態で配置されるように、本体110の内部空洞112内に配置される。
【0058】
セパレータ130は、内部キャビティ112内に配置される。セパレータ130は、第1の層及び第2の層の2つの層を有する。第1の層及び第2の層の各々は、セロファンフィルムの副層と、当該副層に結合されたポリエステル不織布(例えば、ネプトコ社(Neptco Inc.)製のNWP150)の副層とから本質的になる。この実施形態で意図するところでは、第1の層及び第2の層の各々は、約2.3cm×約4.8cmの領域を有する。別の実施形態において、第1の層及び第2の層は、これ以外の適切な領域を有することができる。
【0059】
セパレータ130の第1の層及び第2の層は、それぞれのポリエステル不織布の副層が互いに隣接するように配置される。セパレータ130は、カソード120が第1層のセロファンフィルムの副層に隣接するように、カソード120の上に配置される。セパレータ130は、約0.15mmの厚さを有する。また、セパレータ130は、電解液と流体的に接している(例えば、電解液中に浸漬されている)。セパレータ130は、カソード接続端子192がカソード120と直接接触した状態で配置されるように、本体110の内部空洞112内に配置される。
【0060】
カーボンペーパ(例えば、約0.037mmの厚さを有するTGP−H−120カーボンペーパ)を備えたアノード140は、当該アノード140がセパレータ130の第2の層のセロファンフィルムの副層に隣接するように、デルドリンベースのセル100の内部空洞112内に配置される。電解液は、アノード140も電解液と流体的に接する(例えば、電解液中に浸漬される)状態になるまで、内部空洞112に注入される。アノード140は、アノード接続端子190がアノード140と直接接した状態で配置されるように、本体110の内部空洞112内に配置される。
【0061】
アノード140の上には、圧力板150が配置される。圧力板150の上方には、圧縮バネ160が配置される。蓋170は、圧縮バネ160の上方に配置され、圧縮バネ160が、圧力板150と蓋170との間で圧縮される。圧力が、アノード140及びセパレータ130、並びにその下方のカソード120に印加される。孔172はボルト114を受容し、ナット180が蓋170に接するようになるまで当該ナット180をボルト114に螺合させることによって、蓋170が適所に固定される。ナット180は、約45PSI〜約50PSIの圧力が圧力板、従ってアノード140及びセパレータ130、並びにその下方のアノード120に印加されるまで締め付けられる。別の実施形態では、これ以外の適切な圧力を、デルドリンベースのセル100のアノード140及びセパレータ130、並びにカソード120に対して印加することができる。
【0062】
アノード接続端子190は、孔174を貫通して挿入され、アノード140と直接接するように構成される。カソード接続端子192は、孔176を貫通して挿入され、カソード120と直接接するように構成される。アノード接続端子190及びカソード192に接続がなされ、予め定められた時間(例えば、約18時間〜48時間のうちの任意の時間)にわたって、カソードとアノードとの間に、約2.5Vcellの電位が印加され、または約0.3mA・cm−2の電流が供給される。別の実施形態では、カソードとアノードとの間に、約1.8Vcell〜約2.5Vcellの電位を印加することができる。例えば、1.8Vcell、1.9Vcell、2.0Vcell、2.1Vcell、2.2Vcell、2.3Vcell、2.4Vcell、2.5Vcellの電位を、カソードとアノードの間に印加することができる。二酸化マンガンの合成条件として、予め定められた時間にわたって室温(即ち、約20℃〜約25℃)に維持される。中性EMDが合成され、アノード140上に直接析出させることによって、現場外生成NEMD電極が形成される。
【0063】
現場外生成NEMD電極は、セル100から取り出され、1回以上の洗浄工程を経る。例えば、現場外生成NEMD電極は、1回、2回、3回、4回、5回、またはこれを上回る回数で、各回、約1分間以上にわたって脱イオン水で洗浄するようにしてもよい。その後、洗浄したEMD電極を高温で乾燥させる。適切な高温範囲には、50℃〜90℃、50℃〜80℃、50℃〜70℃、50℃〜60℃、60℃〜90℃、60℃〜80℃、60℃〜70℃、70℃〜90℃、70℃〜80℃、80℃〜90℃が含まれるが、これらに限定されない。この第1の実施形態で意図するところでは、洗浄したEMD電極を、70℃〜80℃の温度で乾燥させる。
【0064】
現場外生成電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)の製造に組み込まれるようにしてもよい。現場外生成電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)の構成要素であってもよい。現場外生成電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)における使用に適合するようにしてもよい。現場外生成電極は、電池(例えば、Zn/MnO電池)に使用してもよい。
【0065】
別の実施形態では、硫酸亜鉛七水和物が、任意の適切な濃度で電解液中に存在する。適切な濃度の非限定的な例には、約0.5Mから飽和まで、約0.5M〜約2.5M、約1.0Mから飽和まで、約1.0M〜約2.5M、約1.5Mから飽和まで、及び約1.5M〜約2.5Mの範囲の濃度が含まれる。例えば、硫酸亜鉛七水和物は、約0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5Mの濃度で溶液中に存在することができる。別の実施形態では、上述の濃度と同じまたは類似の濃度で電解液に溶解された水和硫酸亜鉛を使用することができる。別の実施形態において、亜鉛系塩は、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、トリフル酸亜鉛、これらを組合せて適切な濃度で電解液に溶解されるものとすることができるが、これらに限定されない。
【0066】
別の実施形態では、硫酸マンガン一水和物が、任意の適切な濃度で電解液中に存在する。適切な濃度の非限定的な例には、約0.1M〜約0.6M、約0.1M〜約0.3M、約0.2M〜約0.6M、約0.2M〜約0.3M、約0.3M〜約0.6M、約0.4M〜約0.6Mの範囲の濃度が含まれる。適切な濃度の非限定的な例には、約0.1M〜約0.2Mの範囲の濃度が含まれる。例えば、硫酸マンガン一水和物は、約0.21M、0.22M、0.23M、0.24M、0.25M、0.26M、0.27M、0.28M、0.29M、0.30M、0.31M、0.32M、0.33M、0.34M、0.35M、0.36M、0.37M、0.38M、0.39M、0.40M、0.41M、0.42M、0.43M、0.44M、0.45M、0.46M、0.47M、0.48M、0.49M、0.50M、0.51M、0.52M、0.53M、0.54M、0.55M、0.56M、0.57M、0.58M、0.59M、0.60Mの濃度で電解液中に存在することができる。例えば、硫酸マンガン一水和物は、約0.10M、0.11M、0.12M、0.13M、0.14M、0.15M、0.16M、0.17M、0.18M、0.19M、0.20Mの濃度で電解液中に存在することができる。別の実施形態では、上述の濃度と同じまたは類似の濃度で電解液に溶解される別の水和硫酸マンガンまたは非水和硫酸マンガンを使用することができる。別の実施形態において、電解液は、硫酸マンガン一水和物と同じまたは実質的に同様の機能を有した別の適切なマンガン種を含む。
【0067】
別の実施形態において、電解液は、当該電解液中に適切な濃度で存在する適切なpH緩衝系を更に含む。例えば、適切な濃度には、約0.05M〜約0.20M、約0.05M〜約0.20M、約0.05M〜約0.15M、約0.06M〜約0.19M、約0.07M〜約0.18M、約0.08M〜約0.17M、及び約0.09M〜約0.16Mの濃度範囲が含まれるが、これらに限定されない。例えば、適切な濃度には、約0.05M、0.06M、0.07M、0.08M、0.09M、0.10M、0.11M、0.12M、0.13M、0.14M、0.15M、0.16M、0.17M、0.18M、0.19M、0.20Mが含まれるが、これらに限定されない。適切なpH緩衝系の非限定的な例には、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせが含まれる。適切なバッファー系の非限定的な例は、それぞれが約0.1Mの濃度で電解液に溶解するMn(CHCOO)及びNaSOを含むものである。
【0068】
別の実施形態では、電解液のpHを約3〜約7に維持する任意の適切なpH緩衝系を使用することができる。適切なpH緩衝系には、クエン酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、電解液のpHを約0〜約7に維持する任意の適切なpH緩衝系を使用することができる。別の実施形態では、電解液のpHを約7〜約9に維持する任意の適切なpH緩衝系を使用することができる。
【0069】
別の実施形態において、カソードは、ニッケル金属箔、白金金属箔、銅系材料、及びインジウムスズ系材料を含むが、これらに限定されない、任意の適切な材料とすることができる。
【0070】
別の実施形態において、セパレータは、セロファンフィルムの副層とポリエステル不織布の副層とから本質的になる単一の層とすることができる。別の実施形態において、セパレータは、カチオン交換膜及びアニオン交換膜などのイオン伝導膜とすることができるが、これらに限定されない。別の実施形態において、セパレータは、当技術分野で公知の任意の適切なセパレータとすることができる。
【0071】
別の実施形態において、アノードは、適切な幅、高さ、及び厚さのニッケル金属箔(例えば、MTI社製のMF−NiFoil−25u)を備える。例えば、アノードは、幅4cm、高さ14cm、及び厚さ0.04mmとすることができる。別の実施形態において、アノードは、別の適切な集電材料を含むか、もしくは別の特定の物理的特徴を有するか、またはその両方を具備する。別の特定の物理的特徴を有する別の適切な集電材料の例には、金属発泡体、カーボンペーパ、多孔質カーボン、ガス拡散層、及び3−D構造化カーボンが含まれるが、これらに限定されない。金属発泡体の例には、ニッケル発泡体が含まれるが、これに限定されない。多孔質アノード(発泡材料を含む)については、理論にとらわれることなく、多孔質アノードの大きな表面積により、合成された中性EMDが付着する部位が設けられると考えられる。
【0072】
別の実施形態において、アノード(例えば、炭素系アノードまたは金属メッシュアノード)は、付加的な炭素質層(例えば、活性炭、加硫、グラフェン、またはカーボンナノチューブ)でコーティングすることができる。理論にとらわれることなく、このような付加的なコーティングによって、電解の際のアノード上への二酸化マンガンの電着が促進されると考えられる。別の実施形態では、アノード(例えば、炭素系アノード)を前処理することができる。アノードの前処理には、アンモニアとキャリアガス(例えば、Ar、He、またはN)との混合物中における高温(例えば、500℃〜900℃)でのカソードの熱処理を含めることができる。理論にとらわれることなく、アノードの前処理によって、アノードの表面が酸化し、電解の際のアノード上への二酸化マンガンの析出速度が改善すると考えられる。理論にとらわれることなく、アノードの前処理によって、電極の親水性が増大すると考えられる。前述の前処理を受けた電極を組み込んだ電池は、前述の前処理を受けていない電極を組み込んだ電池よりも、良好な電池性能をもたらす可能性がある。
【0073】
別の実施形態において、中性EMDを析出させるアノードは、限定されるものではないが、カーボンブラック層などの被覆物でコーティングされる。例えば、カーボンブラック層を炭素系集電体基材(例えば、カーボンペーパのアノード)にコーティングすることができる。理論にとらわれることなく、炭素系集電体基材へのカーボンブラック層のコーティングにより、アノード上での中性EMDの形成の際に電池の比容量(mAh)が増加すると考えられる。カーボンブラック層の特性は、所望の効果を達成するように操作することができる。例えば、カーボンブラック層は、小さい表面積または大きい表面積(例えば、ブラックパール(Black Pearls)2000)としたり、特定の3−D格子構造を有するか、または様々な深さでアノードに含浸させたりすることができる。アノード自体の特性の変動と結合した、このようなコーティング層の修正により、製造者が電池の具体的なエネルギ容量を操作できるようになると考えられる。
【0074】
別の実施形態では、例えば、硫酸塩、水酸化物、アルカリ塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、酸化物、及びこれらの水和物などの添加剤を、中性EMDを含む電極(例えば、現場外生成NEMD電極)の生成の際に添加することもできるが、添加剤は、これらに限定されない。アルカリ土類金属塩及び硫酸塩種の例には、BaSO、CaSO、MnSO、及びSrSOが含まれるが、これらに限定されない。遷移金属塩の例には、NiSO及びCuSOが含まれるが、これらに限定されない。酸化物の例には、Bi及びTiOが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、銅系添加剤及びビスマス系添加剤などの添加剤を、電極の形成の際に添加することもできるが、添加剤は、これらに限定されない。理論にとらわれることなく、このような添加剤は、電池のサイクル性を改善すると考えられる。
【0075】
別の実施形態では、当技術分野で公知の別の加圧手段を使用することができる。例えば、空気袋のような圧縮空気圧を含む圧縮手段を使用することができる。
【0076】
別の実施形態において、合成は、約10℃〜19℃、約26℃〜35℃、約36℃〜45℃、約46℃〜55℃、及び約56℃〜65℃の間の温度範囲を含むが、これらに限定されない室温以外の別の任意の適切な温度で行われる。
【0077】
別の実施形態において、アノード140及びセパレータ130並びにその下方のカソード120に印加される圧力は、任意の適切な圧力とすることができる。例えば、適用される圧力は、約10PSI〜約170PSI、約50PSI〜約160PSI、約50PSI〜約150PSI、約50PSI〜約140PSI、約50PSI〜約130PSI、約50PSI〜約120PSI、約50PSI〜約110PSI、約50PSI〜約100PSI、約50PSI〜約90PSI、約50PSI〜約80PSI、約50PSI〜約70PSI、及び約50PSI〜約60PSIとすることができるが、これらに限定されない。例えば、適用される圧力は、約40PSI、41PSI、42PSI、43PSI、44PSI、45PSI、46PSI、47PSI、48PSI、49PSI、50PSI、51PSI、52PSI、53PSI、54PSI、55PSI、56PSI、57PSI、58PSI、59PSI、60PSI、61PSI、62PSI、63PSI、64PSI、65PSI、66PSI、67PSI、68PSI、69PSI、70PSI、71PSI、72PSI、73PSI、74PSI、75PSI、76PSI、77PSI、78PSI、79PSI、80PSI、81PSI、82PSI、83PSI、84PSI、85PSI、86PSI、87PSI、88PSI、89PSI、90PSI、91PSI、92PSI、93PSI、94PSI、95PSI、96PSI、97PSI、98PSI、99PSI、100PSI、101PSI、102PSI、103PSI、104PSI、105PSI、106PSI、107PSI、108PSI、109PSI、110PSIとすることができるが、これらに限定されない。理論にとらわれることなく、現場外生成NEMD電極を備え、当該現場外生成NEMD電極が加圧下で生成される電池は、市販のEMD電極を備えた電池よりも大きなエネルギ密度を有する可能性があると考えられる。別の実施形態では、カソード140及びセパレータ130並びにアノード120に大気圧のみが加わる。
【0078】
現場外生成NEMD電極は、市販のEMD粉末を含む電極、または市販のEMD粉末から形成される電極よりも、それぞれの製造工程の際に必要となるグラファイト粉末、バインダ、及びインクコーティングが少ないため、より低い製造コストとなる可能性があると考えられる。
【0079】
[現場生成(in-situ)NEMD電極を形成するための集電体上への中性EMDの直接的な析出]
中性EMDを合成し、集電体上に直接析出させて、中性EMDを含む電極を形成するようにしてもよい。このような電極は、電池として直接使用することができるセルの、その場(in-situ)で形成してもよい。このような電極は、本明細書において「現場生成(in-situ)NEMD電極」と呼ぶ場合がある。
【0080】
図4aを参照すると、現場生成NEMD電極を調製する第1の実施形態により、コイン型セル200が設けられる。このコイン型セル200は、外側ケーシング210と、ステンレス鋼で作られた蓋270とを備える(例えば、MTI社製のCR2032)。外側ケーシング210は、基部と、基部を取り囲む側壁とを有する。側壁及び基部は、内部空洞212を画定する。コイン型セル200の直径は約20mmである。また、コイン型セル200は、適切なエラストマ材料(例えば、ポリプロピレン)からなるガスケット280(例えば、Oリング)、スペーサ250、及びワッシャ260を備える。また、コイン型セルは、カソード240、アノード220、及びカソード240とアノード220との間にあるセパレータ230を備え、これらは全て電解液と流体的に接している(例えば、電解液中に浸漬されている)。別の実施形態では、これ以外の任意の適切なセルを使用することができる。
【0081】
アノード220は、コイン型セル200の内部キャビティ212内に配置される。本実施形態で意図するところでは、アノード220は、約15mmの直径を有した一片のカーボンペーパ(例えば、約0.037mmの厚さのTGP−H−120)である。別の実施形態では、これ以外の適切な寸法とすることができる。約2.0MのZnSO・7HO(例えば、アナケミアカナダ社(Anachemia Canada Co.)の98%純度製品)と、約0.1MのMnSO・HO(例えば、アナケミアカナダ社(Anachemia Canada Co.)の99%純度製品)とを含む電解液を、当該電解液にカソード220が流体的に接する(例えば、電解液中に浸漬される)状態になるまで、コイン型セル200の内部空洞212に注入する。
【0082】
セパレータ230もコイン型セル200内に配置されている。セパレータ230は、第1の層及び第2の層の2つの層を有する。この第1の実施形態で意図するとことでは、第1の層及び第2の層の各々が、セロファンフィルムの副層と、当該副層に結合されたポリエステル不織布(例えば、ネプトコ社(Neptco Inc.)製のNWP150)の副層とから本質的になる。また、第1の層及び第2の層の各々は、約17mmの直径を有する。第1の層及び第2の層は、それぞれのポリエステル不織布の副層が互いに隣接するように配置される。セパレータ230は、アノード220が第1の層のセロファンフィルムの副層に隣接するように、アノード220の上に配置される。セパレータ230は、約0.15mmの厚さを有する。セパレータ230は、電解液と流体的に接している(例えば、電解液中に浸漬されている)。
【0083】
カソード240は、亜鉛箔(例えば、約0.5mmの厚さのデクスメット(Dexmet)のSO31050)を備え、アノード240がセパレータの第2の層のセロファンフィルムの副層に隣接するようにコイン型セル200内に配置される。電解液は、カソード240も電解液と流体的に接する(例えば、電解液中に浸漬される)状態となるまで、コイン型セル200に注入される。本実施形態で意図するところでは、カソード240が、約15mmの直径を有する。別の実施形態では、これ以外の適切な寸法を設けることができる。
【0084】
スペーサ250はカソード240に隣接して配置され、ワッシャ260はスペーサ250に隣接して配置され、ガスケット280はワッシャ260に隣接して配置される。スペーサ250及びワッシャ260は、ステンレス鋼からなる。蓋270はガスケット280の上に配置され、蓋270と外側ケーシング210とが互いに圧着されてコイン型セル200を形成する。
【0085】
現場生成NEMD電極を合成するため、コイン型セル200を、0.1mA・cm−2で1.85Vcellとなるまで定電流で充電した後、約2時間以上(例えば、3時間)にわたり1.85Vcellに保持する。次に、コイン型セル200を、0.1mA・cm−2で0.9Vcellまで放電させる。この時点で、コイン型セル200を、0.1mA・cm−2で1.85Vcellとなるまで定電流で再び充電する。上述のVcell及び上述のmA・cm−2でのコイン型セル200の充放電によって、アノードへの中性EMDの析出、従ってコイン型セル200内における現場生成NEMD電極の本来の位置での形成がなされる。図4bを参照すると、アノードへの中性EMDの析出が進むことにより、最初の80回程度のサイクルにわたってセルの比容量が増加している(黒の円形ドットによるプロットを参照)。80回程度のサイクルを超えると、比容量のわずかな減少が観察された。上述の観察内容は、その電解液中に硫酸マンガンを含まない参照セルと比較される(図4bの「×」によるプロットを参照)。図4bに示すように、この参照セルについては、繰り返しにおけるセルの比容量の増加は観察されなかった。電解合成の工程は、室温(即ち、約20℃〜約25℃)で行われる。
【0086】
現場生成NEMD電極を備えたコイン型セル200は、電池としてそのまま使用してもよい。現場生成NEMD電極を備えた電池は、電池調製手順を単純化すると考えられる。
【0087】
別の実施形態において、コイン型セルの外側ケーシングは、任意の適切な材料で作られる。別の実施形態において、コイン型セルの直径は、電池サイズの工業規格に適合可能な任意の適切な直径としてもよい。別の実施形態において、スペーサは、任意の適切な材料で作られる。別の実施形態において、ワッシャは、ポリプロピレンを含む任意の適切な材料で作られるが、これに限定されない。
【0088】
別の実施形態において、電解液中の硫酸亜鉛七水和物は、任意の適切な濃度となっている。適切な濃度の非限定的な例には、約0.5Mから飽和まで、約0.5M〜約2.5M、約1.0Mから飽和まで、約1.0M〜約2.5M、約1.5Mから飽和まで、及び約1.5M〜約2.5Mの範囲の濃度が含まれる。例えば、硫酸亜鉛七水和物は、約0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5Mの濃度で溶液中に存在することができる。別の実施形態では、上述の濃度と同じまたは類似の濃度で電解液に溶解された別の水和硫酸亜鉛または非水和硫酸亜鉛を使用することができる。別の実施形態において、亜鉛系の塩は、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、トリフル酸亜鉛、またはこれらを組合せて適切な濃度で電解液中に溶解されるものとすることができるが、これらに限定されない。
【0089】
別の実施形態において、電解液中の硫酸マンガン一水和物は、任意の適切な濃度で存在する。適切な濃度には、約0.1M〜約0.2Mの範囲の濃度が含まれる。例えば、硫酸マンガン一水和物は、約0.10M、0.11M、0.12M、0.13M、0.14M、0.15M、0.16M、0.17M、0.18M、0.19M、0.20Mの濃度で電解液中に存在することができる。別の実施形態では、電解液中の硫酸マンガン一水和物の濃度を飽和させる。理論にとらわれることなく、付加的な硫酸マンガンは、形成された二酸化マンガンが充電サイクル中に関与し得るいくつかの逆反応を、少なくとも部分的に抑止する可能性があり、製造された電池のサイクル性を改善する可能性があると考えられる。別の実施形態では、上述の濃度と同じまたは同様の濃度で電解液に溶解された別の水和硫酸マンガンまたは非水和硫酸マンガンを使用することができる。別の実施形態において、電解液は、硝酸マンガンなど、硫酸マンガン一水和物と同じまたは実質的に同様の機能を有した別の適切なマンガン種を含むが、これに限定されない。
【0090】
別の実施形態において、電解液は、適切な濃度で存在する適切なpH緩衝系を更に含む。例えば、適切な濃度は、約0.01M〜約0.30M、約0.01M〜約0.20M、約0.01M〜約0.15M、約0.02M〜約0.29M、約0.03M〜約0.27M、約0.04M〜約0.26M、約0.05M〜約0.25M、約0.05M〜約0.20M、約0.05M〜約0.15M、約0.06M〜約0.24M、約0.07M〜約0.23M、約0.08M〜約0.22M、及び約0.09M〜約0.21Mの濃度範囲を含むが、これらに限定されない。例えば、適切な濃度には、約0.01M、0.02M、0.03M、0.04M、0.05M、0.06M、0.07M、0.08M、0.09M、0.10M、0.11M、0.12M、0.13M、0.14M、0.15M、0.16M、0.17M、0.18M、0.19M、0.20M、0.21M、0.22M、0.23M、0.24M、0.25M、0.26M、0.27M、0.28M、0.29、0.30が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、濃度は、約0.05M〜約0.20M(例えば、0.05M〜0.20M)の範囲にある。適切なpH緩衝系の非限定的な例には、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせから選択されるものが含まれる。適切な緩衝系の一例は、それぞれが約0.1Mの濃度で電解液に溶解されるMn(CHCOO)及びNaSOである。
【0091】
別の実施形態において、カソードは、ニッケル金属箔及び白金金属箔を備えるが、これらに限定されない、任意の適切な電極とすることができる。
【0092】
別の実施形態において、セパレータは、微孔構造のセパレータである。別の実施形態において、セパレータは、セロファンフィルムの副層とポリエステル不織布の副層とから本質的になる単一の層とすることができる。別の実施形態において、セパレータは、カチオン交換膜及びアニオン交換膜などのイオン伝導膜とすることができるが、これらに限定されない。別の実施形態において、セパレータは、当技術分野で公知の任意の適切なセパレータとすることができる。
【0093】
別の実施形態において、アノードは、適切な幅、高さ、及び厚さのニッケル金属箔(例えば、MTI社製のMF−NiFoil−25u)を備える。例えば、アノードは、幅4cm、高さ14cm、及び厚さ0.04mmとすることができる。別の実施形態において、アノードは、別の適切な集電材料を含むか、もしくは別の特定の物理的特徴を有するか、またはその両方を具備する。別の特定の物理的特徴を有した別の適切な集電材料の例には、金属発泡体、カーボンペーパ、多孔質カーボン、ガス拡散層、及び3−D構造化カーボンが含まれるが、これらに限定されない。金属発泡体の例には、ニッケル発泡体、ステンレス鋼、スチールウール、及びタングステン発泡体が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
別の実施形態では、アノード(例えば、炭素系アノード)を前処理することができる。アノードの前処理には、アンモニアとキャリアガス(例えば、Ar、He、またはN)との混合物中における高温(例えば、500℃〜900℃)でのアノードの熱処理を含めることができる。
【0095】
別の実施形態において、中性EMDを析出させるアノードは、カーボンブラック層などの被覆物でコーティングされるが、被覆物は、これに限定されるものではない。例えば、カーボンブラック層を炭素系集電体基材(例えば、カーボンペーパのカソード)にコーティングすることができる。カーボンブラック層の特性は、所望の効果を達成するように操作することができる。例えば、カーボンブラック層は、小さい表面積または大きい表面積(例えば、ブラックパール(Black Pearls)2000)としたり、特定の3−D格子構造を有するか、または様々な深さでアノードに含浸させたりすることができる。
【0096】
別の実施形態において、電解液は、1以上の化学添加剤を更に含む。化学添加剤の例には、アルカリ塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、酸化物、及びこれらの水和物が含まれるが、これらに限定されない。アルカリ土類金属塩の例には、BaSO、CaSO、及びSrSOが含まれるが、これらに限定されない。遷移金属塩の例には、NiSO、及びCuSOが含まれるが、これらに限定されない。酸化物の例には、Bi及びTiOが含まれるが、これらに限定されない。理論にとらわれることなく、1以上の化学添加剤は、電池のサイクル性を改善する可能性があると考えられる。
【0097】
別の実施形態において、合成は、約10℃〜19℃、約26℃〜35℃、約36℃〜45℃、約46℃〜55℃、及び約56℃〜65℃の間の温度範囲を含むが、これらに限定されない室温以外の別の任意の好適な温度で行われる。
【0098】
別の実施形態では、当技術分野で公知の任意の適切な圧力を、アノード、セパレータ、及びカソードに印加するようにしてもよい。印加する圧力は、約10PSI〜約170PSI、約50PSI〜約170PSI、約50PSI〜約160PSI、約50PSI〜約150PSI、約50PSI〜約140PSI、約50PSI〜約130PSI、約50PSI〜約120PSI、約50PSI〜約110PSI、約50PSI〜約100PSI、約50PSI〜約90PSI、約50PSI〜約80PSI、約50PSI〜約70PSI、及び約50PSI〜約60PSIとすることができるが、これらに限定されない。例えば、適用される圧力は、約50PSI、51PSI、52PSI、53PSI、54PSI、55PSI、56PSI、57PSI、58PSI、59PSI、60PSI、61PSI、62PSI、63PSI、64PSI、65PSI、66PSI、67PSI、68PSI、69PSI、70PSI、71PSI、72PSI、73PSI、74PSI、75PSI、76PSI、77PSI、78PSI、79PSI、80PSI、81PSI、82PSI、83PSI、84PSI、85PSI、86PSI、87PSI、88PSI、89PSI、90PSI、91PSI、92PSI、93PSI、94PSI、95PSI、96PSI、97PSI、98PSI、99PSI、100PSIとすることができるが、これらに限定されない。別の実施形態では、大気圧のみがカソード、セパレータ、及びアノードに加わる。
【0099】
別の実施形態では、電池の充電/放電サイクルの充電ステップにおける電圧カットオフが存在しない。例えば、0.1mA・cm−2で1.85Vcellを超えるまで(例えば、2Vcell以上)、定電流でコイン型セルを充電するようにしてもよい。充電の電圧カットオフを伴わないサイクルにより、アノードへの中性EMDの析出が速くなり、アノードへの中性EMDの付着量も増大する(例えば、8mg/cm)と考えられる。別の実施形態において、コイン型セルは、0.1mA・cm−2で約1.75Vcell〜約2.0Vcellとなるまで、定電流で充電され、約2時間以上にわたり、この電圧範囲内に維持される。
【0100】
現場生成NEMD電極は、それぞれの製造工程の際に必要となるグラファイト粉末、バインダ、及びインクコーティングが、市販のEMD粉末を含む電極、または市販のEMDから形成される電極よりも少ないことによって、製造コストが低くなる可能性があると考えられる。
【0101】
[電池の特性評価]
本発明は更に、(i)中性EMDを含む電極と、(ii)アノードと、(iii)アノードとカソードとの間のセパレータと、(iv)カソード、アノード、及びセパレータが流体的に接する電解液とを備えた電池に関する。このような電池は、本明細書では「NEMD電池」と称する場合がある。
【0102】
中性EMDを含む電極は、NEMD粉末電極、現場外生成NEMD電極、または現場生成NEMD電極であってもよい。中性EMDを含む電極は、電池のカソードとして機能する。
【0103】
電池のアノードは、亜鉛箔(例えば、デクスメット(Dexmet)のSO31050)、ニッケル金属箔、及び白金金属箔などの金属箔とすることができるが、これらに限定されない。別の実施形態において、アノードは、バインダ(例えば、テフロン(登録商標))と混合された亜鉛/酸化亜鉛粉末から形成することができる。別の実施形態において、アノードは、硫酸インジウムなどの添加剤を含むことができるが、添加剤は、これに限定されない。理論にとらわれることなく、硫酸インジウムはアノードでの水素発生を抑制すると考えられる。
【0104】
セパレータは、上述のようないずれかのセパレータとすることができる。
【0105】
電解液は、上述のようないずれかの電解液とすることができる(例えば、「現場生成(in-situ)NEMD電極を形成するための集電体上への中性EMDの直接的な析出」という表題の部分に記載されるような電解液を参照)。一実施形態において、電解液は、0.1M〜0.2MのMnSO・HOを含む。
【0106】
もう1つの実施形態において、電池は、現場生成NEMD電極の合成の際の、「現場生成(in-situ)NEMD電極を形成するための集電体上への中性EMDの直接的な析出」という表題の部分で説明した電池であり、現場生成NEMD電極は電池のカソードとして機能し、セルのカソードは電池のアノードとして機能する。
【0107】
中性EMDを含む電極を備えた電池の性能は、電池の動作条件にも依存する可能性がある。図5を参照すると、中性EMDを含む電極を備えた電池の全般的な動作条件300(電位条件及びpH条件によって定義)を示すプールベ図が提示されている。例えば、電池の動作条件には、動作中に、電池のpHを約3.9〜約5.4に維持することを含めてもよい。例えば、電池の動作条件には、動作中に、電池の電圧を約1.1V〜約1.9Vに維持することを含めてもよい。別の実施形態では、別の動作条件が存在してもよいし、または別の動作条件を設けることが可能であってもよい。例えば、別の実施形態において、電池の動作条件は、約2.0〜約6.5の任意のpHに維持することであってもよい。
【0108】
<実施例1>
(i)現在市販されているEMDから形成された電極、(ii)NEMD粉末電極、または(iii)現場外生成NEMD電極を備えた電池を、「電圧カットオフ放電」方式のもとで互いに比較する。この方式において、セルは、低い方の特定のカットオフ電圧に達するまで、定電流で放電される(定電流放電)。その後、直ちに、セルは、高い方のカットオフ電圧に達するまで、同じ電流で充電(定電流充電)される。次に、セルは、更なる充電のために、一定時間にわたり、同じ高い方のカットオフ電圧(定電位充電)に保持される。
【0109】
電圧カットオフ放電方式の例示的な試験条件には、1.0Vcellに低下するまで、C/2レートで電池を定電流で放電すること、1.85Vcellに上昇するまで、C/2レートで電池を定電流で充電すること、及び2時間にわたり、1.85Vcellで電池の定電位充電を維持することが含まれる。このような放電と充電のサイクルが繰り返される。以下の表2は、これらの試験条件下で試験された電池のリストを提示する。
【0110】
【表2】
【0111】
図6aを参照すると、上述の試験手順によって測定された表2の電池の初期容量が示されている。図6aに見られるように、現在市販されているEMD(即ち、エラケム)から形成された電極を備えた電池は、比較的低い(即ち、50mAh/g未満の)初期容量を有する。現在市販されているEMDから形成された電極を備えた電池の容量は、サイクルの繰り返しと共に増加するが、この容量は、試験の際に100mAh/gを超えない。一方、NEMD粉末電極または現場外生成NEMD電極を備えた電池は、全般的に、試験の際、現在市販されているEMDから形成された電極を備えた電池よりも高い容量を示している。NEMD粉末電極または現場外生成NEMD電極を備え、表2に示される電池を参照すると、100mAh/gを超える初期容量を達成可能となっている。NEMD粉末電極または現場外生成NEMD電極を備え、表2に示される電池を参照すると、100mAh/gを超える容量が、上述の試験条件下で100サイクル以上にわたって持続される状態が、達成可能となっている。
【0112】
図6bを参照すると、5回目の放電後の、表2の電池の電圧/容量特性が提示されている。図示するように、現在市販されているEMDから形成された電極を備えた電池の初期容量は、NEMD粉末電極または現場外生成NEMD電極を備えた電池よりも低い。
【0113】
図7を参照すると、市販のEMDサンプル(即ち、エラケム)及びNEMD粉末サンプル(即ち、セルIDがSZA039_03)のdQ/dVプロット(即ち、電圧−容量プロットの逆導関数)が提示されている。dQ/dVプロットにおけるピークは、電圧−容量プロットにおける平坦部または平坦状の特徴に対応する。dQ/dVプロットに囲まれる領域は、ピークに対応する電圧範囲において変動する放電(または充電)容量に対応する。ピーク位置は、電池のサイクルにおける還元(即ち、放電ステップ)または酸化(即ち、充電ステップ)のプロセスのエネルギ特性に対応する。注目すべきこととして、現場外生成NEMD電極またはNEMD粉末電極を備えたいずれの電池についても、充電プロセス(即ち、1.64Vと1.68Vとの間)における第2のピークが、市販のEMD(例えば、セルIDがSZA052_02)から形成される電極を備えた電池についての、充電プロセス(即ち、1.64Vと1.68Vとの間)における第2のピークより大きく、且つ明確に示されている。
【0114】
<実施例2>
現場外生成NEMD電極を備えた電池とNEMD粉末電極を備えた電池とを、以下に記載する「定電流カットオフ放電」方式のもとで互いに比較する。この方式において、定電流放電ステップは、100mAh・g−1の容量に達すると終了する。この容量は、一般に、セル電圧が1.1V(方式1で使用)に達する前に得られる。100mAh・g−1は、産業上の目標を反映するように選択される。但し、別の実験的試験では、これ以外の容量の評価を行うことができる。
【0115】
定容量カットオフ放電方式の試験条件には、1.1Vcellの電圧に低下するまで、または100mAh・g−1の容量に低下するまで、C/2レートで電池を定電流放電すること、1.75Vcellに上昇するまで、C/2レートで電池を定電流充電すること、2時間にわたり、1.75Vcellで電池の定電位充電を維持すること、1.9Vcellに上昇するまで、C/2レートで電池を定電流充電すること、及び1時間にわたり、1.9Vcellで電池の定電位充電を維持することが含まれる。以下の表3は、これらの試験条件下で試験された電池のリストを提示する。
【0116】
【表3】
【0117】
図8aを参照すると、上述の試験手順によって測定された表3の電池の初期容量が示されている。図8aに見られるように、市販のEMDから形成された電極(例えば、セルIDがSZA052_02)を備えた電池は、1.1Vのカットオフに達するまでに100mAh/gを達成することはない。市販のEMD(例えば、エラケム)から形成された電極を備えた、このような電池の容量は、サイクルを繰り返す間に増大し、最終的に安定化するが、本実施例の試験条件下では100mAh/gに達しない。一方、現場外生成NEMD電極またはNEMD粉末電極を組み込んだ電池は、1.1Vのカットオフ電圧に達する前に、少なくとも100mAh/gを達成しており、本実施例の試験条件下で、100サイクル以上(例えば、150サイクル以上)の間、少なくとも100mAh/gの容量を維持している。
【0118】
図8bを参照すると、表3に示される電池の積分電圧−容量(即ち、サイクルの関数としての比エネルギ)のプロットが提示されている。図8bに示すように、NEMD粉末電極または現場外生成NEMD電極を備えた電池は、100サイクル以上(例えば、150サイクル以上、175サイクル以上)の間、約135mWh/gの安定したエネルギ密度を維持している。一方、現在市販されているEMD(例えば、セルIDがSZA052_02)から形成された電極を備えた電池のエネルギ密度は、初めのうちは増加し、100サイクル以上(例えば、150サイクル以上、175サイクル以上)後になって、約70mWh/gで安定化する。
【0119】
図8cを参照すると、5回目の放電後の、表3の電池の電圧/容量特性が提示されている。図示するように、NEMDを含む電池の電圧/容量特性は、約1.2Vを上回る状態を維持し、もたらされるエネルギは、概ね一定のままである。現在市販されているEMDを含む電池(例えば、セルIDがSZA052_02)は、これと同じような特性を示さない。
【0120】
<実施例3>
現場外生成EMD電極またはNEMD粉末電極を備えた電池の更なる例を以下の表4に示す。
【0121】
【表4】
【0122】
<実施例4>
図9を参照すると、現在市販されているEMD(即ち、エラケム)及び中性EMD(即ち、ISA019_02、表1参照)のXRDディフラクトグラムの比較が提示されている。図9の破線プロットを参照すると、約22°(ラムスデル鉱に帰属可能)、約37°(アフテンスク鉱に帰属可能)、約42°(アフテンスク鉱に帰属可能)、約56°(アフテンスク鉱に帰属可能)、約67°(アフテンスク鉱に帰属可能)に発生したピークがある。
【0123】
22°(ラムスデル鉱)で生じたピーク位置1100について、シェラーの式を適用すると、エラケムのEMD中に存在するラムスデル鉱の粒径は約3.2nmであることが判った。同様の適用及び計算により、ISA19_02の中性EMD中に存在するラムスデル鉱の粒径は約1nmであることが判った。この粒径の差は、ISA19_02の中性EMD中に存在するラムスデル鉱の少なくとも一部が、エラケムのEMD中に存在するラムスデル鉱よりも無秩序であり、その1箇所以上の部分が非晶質性を示している可能性があることを示唆するものである。更に、ピーク1100におけるISA19_02の中性EMDのより低い強度は、ISA19_02の中性EMD中に存在するラムスデル鉱が、エラケムのEMD中に存在するラムスデル鉱よりも秩序の度合いが低いことを示唆している。
【0124】
67°(アフテンスク鉱)に生じたピーク位置1003について、シェラーの式を適用すると、エラケムのEMD中に存在するアフテンスク鉱の粒径は約6.3nmであることが判った。同様の適用及び計算により、ISA19_02の中性EMD中に存在するアフテンスク鉱の粒径は約5.2nmであることが判った。この粒径の違いは、ISA19_02の中性EMD中に存在するアフテンスク鉱が、エラケムのEMD中に存在するアフテンスク鉱よりも無秩序であることを示唆するものである。更に、位置1000、1001、及び1002で生じるISA19_02の中性EMDのピークのより低い強度は、ISA19_02の中性EMD中に存在するアフテンスク鉱(及びその面)が、エラケムのEMD中に存在するアフテンスク鉱よりも秩序の度合いが低いことを示唆している。
【0125】
更に、位置1000、1001、1002、及び1003(全てアフテンスク鉱に対応する)における出現ピークは、ISA19_02の中性EMDの場合、エラケムのEMDの対応するピークと比較すると、小さい角度の方にシフトしている。このようなシフトは、アフテンスク鉱の原子面間の距離が、エラケムのEMDよりもISA19_02の中性EMDの方が大きいことを示唆するものである。別の中性EMDについても、現在市販されているEMDに対し、同様の観察結果が得られた。様々な中性EMD、並びに市販のEMDの解析の概要を、以下の表5に提示する。
【0126】
【表5】
【0127】
[総論]
本明細書で論じられるいずれの態様または実施形態のいずれの部分も、本明細書で論じられる別のいずれかの態様または実施形態のいずれかの部分と、一緒に実施し、または組み合わせてもよいと考えられる。上述のとおり、具体的な実施形態について説明したが、別の実施形態も可能であり、本発明に含まれることを理解されたい。上述の実施形態の変更及び調整が可能であることは、示していなくても当業者に明らかであろう。
【0128】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常に理解されるものと同様の意味を有する。更に、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではなく、またみなすべきでもない。
【0129】
特許請求の範囲の範囲は、本明細書に記載される例示的な実施形態によって限定されるべきではなく、全体として明細書の記載に矛盾しない最も広い解釈をするべきである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図8c
図9
【国際調査報告】