特表2021-502533(P2021-502533A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502533(P2021-502533A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】冷却水監視制御システム
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20201225BHJP
   F28G 13/00 20060101ALI20201225BHJP
【FI】
   F28F27/00 511K
   F28G13/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2020-524321(P2020-524321)
(86)(22)【出願日】2018年11月9日
(85)【翻訳文提出日】2020年4月30日
(86)【国際出願番号】US2018060071
(87)【国際公開番号】WO2019094747
(87)【国際公開日】20190516
(31)【優先権主張番号】62/584,671
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/720,605
(32)【優先日】2018年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】プラカシュ アヌパム
(72)【発明者】
【氏名】ラガダプディ ラヴィーンドラ
(72)【発明者】
【氏名】クラマジク スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンターロン スティーブン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィタール ヨビック
(57)【要約】
冷却水処理を制御する方法は、冷却塔から冷却水を受容する1つ以上の下流熱交換器の動作データを測定することに関与し得る。例えば、下流熱交換器の暖かい流れおよび冷たい流れの両方の入口および出口の温度を測定することができる。熱交換器を通過する流れからのデータを使用して、熱交換器の熱伝達効率を決定することができる。熱伝達効率を、ある期間にわたって傾向付け、傾向の変化を検出して、冷却水の汚損の問題点を特定することができる。知覚される汚損の問題点の多数の潜在的な原因を評価して、予測原因を決定することができる。冷却水の汚損を低減、排除、または別様に制御するために選択された化学添加剤を、汚損の予測原因に基づいて制御することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
1つ以上のプロセッサによって、少なくとも1つの熱交換器の熱伝達効率を監視し、前記熱交換器の熱伝達効率傾向を確立することであって、前記熱交換器が、プロセス流側および冷却水流側を有する、確立することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記熱伝達効率傾向の変化を検出することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記冷却水流側のスケール汚損を示すデータを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記冷却水流側の腐食汚損を示すデータを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記冷却水流側の生物汚損を示すデータを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記熱伝達効率傾向の前記検出された変化の予測原因を、少なくとも、スケール汚損、腐食汚損、および生物汚損を示す前記受信したデータに基づいて、決定することと、
前記予測原因に基づいて、前記少なくとも1つの熱交換器の前記冷却水流側と流体連通している冷却水への化学添加剤の添加を制御することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記熱伝達効率を監視することが、少なくとも、前記熱交換器に入る前記冷却水流の温度、前記熱交換器を出る前記冷却水流の温度、前記熱交換器に入るプロセス流の温度、前記熱交換器を出る前記プロセス流の温度、および前記冷却水の流速、を示す複数のセンサからデータを受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱交換器の前記熱伝達効率を監視することが、以下の式に従って前記熱伝達効率を決定することを含み、
【数1】
式中、U値が、前記熱伝達効率であり、
【数2】
が、前記冷却水流の質量流速であり、Cが、前記冷却水流の比熱であり、△Twaterが、前記熱交換器を出る前記冷却水流の前記温度と、熱交換器に入る前記冷却水流の前記温度との差であり、Heat Tr.Areaが、前記熱交換器の表面積量であって、それにわたって熱エネルギーが前記プロセス流と前記冷却水流との間で伝達される、表面積量であり、Fが、前記熱交換の幾何学的形状に対応する補正因子であり、
【数3】
が、前記冷却水流および前記プロセス流が向流方向に流れる場合には、次の式を使用して計算されるか、
【数4】
または、前記冷却水流および前記プロセス流が並流方向に流れる場合には、次の式を使用して計算される、対数平均温度差であり、
【数5】
式中、TProcess,inが、前記熱交換器に入る前記プロセス水流の前記温度であり、TProcess,outが、前記熱交換器を出る前記プロセス流の前記温度であり、twater,inが、前記熱交換器に入る前記冷却水流の前記温度であり、twater,outが、前記熱交換器を出る前記冷却水流の前記温度である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱交換器に入る前記冷却水流の前記温度、前記熱交換器を出る前記冷却水流の前記温度、前記熱交換器に入る前記プロセス流の前記温度、および前記熱交換器を出る前記プロセス流の前記温度、に対応するデータを平滑化することをさらに含み、
前記熱伝達効率を決定することが、平滑化された温度値を使用して前記熱伝達効率を決定することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱伝達効率傾向を確立することが、ある期間にわたって前記熱交換器に対して監視された前記熱伝達効率に一次元曲線を適合することを含み、前記一次元曲線が、勾配を有し、
前記熱伝達効率傾向の変化を検出することが、閾値量以上の前記勾配の変化を決定することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値量が、1パーセント〜50パーセントの範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記閾値量が、5パーセント〜20パーセントの範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記熱伝達効率傾向を確立することが、ある期間にわたって少なくとも1日に1回、前記熱交換器の前記熱伝達効率を決定することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記期間が、1日〜100日の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記期間が、5日〜30日の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記熱交換器が清浄化後に供用状態に留置されると、前記期間が開始する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
スケール汚損を示すデータを受信することが、前記冷却水中のリン酸塩の濃度、前記冷却水中のカルシウムの濃度、前記冷却水中のマンガンの濃度、前記冷却水中のアルミニウム濃度、前記冷却水中の鉄の濃度、前記冷却水中のシリカの濃度、前記冷却水中の粒子を示す光学測定値、前記熱交換器の前記冷却水流側の表面の汚損またはそれらの類似物を示す光学測定値、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるデータを受信することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
スケール汚損を示すデータを受信することが、前記熱交換器の前記冷却水流側に沿った1つ以上のセンサからデータを受信することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
腐食汚損を示すデータを受信することが、前記冷却水中の鉄の濃度、前記冷却水中の銅の濃度、前記熱交換器の前記冷却水流側の表面の腐食またはそれらの類似物を示す光学測定値、前記熱交換器の前記冷却水流側のプローブの表面の腐食速度を示す線形偏光抵抗測定値、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるデータを受信することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記類似物が、前記熱交換器の前記冷却水流側を画定する金属と同じ冶金で形成された金属の切り取り試片である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
腐食汚損を示すデータを受信することが、前記熱交換器の前記冷却水流側に沿った1つ以上のセンサからデータを受信することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
腐食汚損を示すデータを受信することが、熱伝達効率が監視される前記熱交換器とは異なるモデル熱交換器に関連付けられた1つ以上のセンサからデータを受信することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記モデル熱交換器が、熱伝達効率が監視される前記熱交換器も通過する冷却水を受容し、通過させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生物汚損を示すデータを受信することが、前記冷却水中のアデノシン三リン酸の濃度、前記冷却水中の全有機炭素の量、前記冷却水中の酸化剤の残留濃度、前記冷却水の酸化還元電位、前記冷却水中の粒子を示す光学測定値、前記熱交換器の前記冷却水流側の表面の汚損またはそれらの類似物を示す光学測定値、微生物活性を示す蛍光測定値、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるデータを受信することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
生物汚損を示すデータを受信することが、前記熱交換器の前記冷却水流側に沿った1つ以上のセンサからデータを受信することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上のプロセッサによって、前記冷却水の温度および前記冷却水のpHのうちの少なくとも1つを示すデータをさらに受信する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
熱伝達効率傾向の前記検出された変化の前記予測原因を決定することが、前記1つ以上のプロセッサによって、集約スケール汚損スコアを、スケール汚損を示す前記受信したデータに基づいて、集約腐食汚損スコアを、腐食汚損を示す前記受信したデータに基づいて、ならびに集約生物汚損スコアを、生物汚損を示す前記受信したデータに基づいて決定することを、さらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記集約スケール汚損スコアを決定することが、スケール汚損を示す各重み付けデータパラメータを合計し、その平均を決定することを含み、
前記集約腐食汚損スコアを決定することが、腐食汚損を示す各重み付けデータパラメータを合計し、その平均を決定することを含み、
前記集約生物汚損スコアを決定することが、生物汚損を示す各重み付けデータパラメータを合計し、その平均を決定することを含み、
前記熱伝達効率傾向の前記検出された変化の前記予測原因を決定することが、前記集約スケール汚損スコア、前記集約腐食汚損スコア、および前記集約生物汚損スコアのうちの最大のものを特定することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
熱伝達効率傾向の前記検出された変化の前記予測原因を決定することが、重み付け因子を、スケール汚損、腐食汚損、および生物汚損を示す各受信したデータパラメータに適用することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記化学添加剤の添加を制御することが、前記予測原因に対抗するために選択された化学添加剤を制御することを含み、前記予測原因が、スケール汚損、腐食汚損、および生物汚損からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記化学添加剤の添加を制御することが、
前記予測原因に対抗するために選択された前記化学添加剤が前記冷却水流に導入される流速を増加させること、および
前記予測原因に対抗するために選択された前記化学添加剤のフローを開始すること、のうちの少なくとも1つを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記予測原因に対抗するために選択された前記化学添加剤の前記制御された添加に応答して、前記熱伝達効率傾向が閾値量を超えて変化しない場合、前記熱伝達効率傾向の前記検出された変化の代替的な予測原因を決定することと、
前記熱交換器の前記冷却水流側と流体連通している冷却水への代替的な化学添加剤の添加を制御することと、をさらに含み、前記代替的な化学添加剤が、前記代替的な予測原因に対抗するために選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記熱交換器の前記熱伝達効率を監視する前に、熱交換器ネットワーク内の複数の熱交換器を調査して、少なくとも1つの重要な熱交換器を特定することをさらに含み、
前記熱交換器の前記熱伝達効率を監視し、前記熱伝達効率傾向を確立することが、前記重要な熱交換器の前記熱伝達効率を監視し、前記重要な熱交換器の前記熱伝達効率傾向を確立することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記重要な熱交換器が、前記複数の熱交換器の各々の保守履歴、前記複数の熱交換器の各々の動作性能、前記複数の熱交換器の各々のバイパス代替物、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに基づいて選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上のプロセッサによって、前記冷却水への前記化学添加剤の前記制御された添加に応答して、前記熱伝達効率傾向の変化を検出することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記熱伝達効率傾向が、前記冷却水への前記化学添加剤の前記制御された添加の前の前記熱伝達効率傾向の勾配よりも浅い勾配を示す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化学添加剤が、前記熱交換器に入る前記冷却水流を受容する前記熱交換器の入口の上流の冷却塔で注入される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記熱伝達効率傾向の前記変化を検出することに応答して、前記冷却水の流速を増加させることをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記化学添加剤が、スケール抑制剤、腐食抑制剤、殺生物剤、pH制御剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記熱交換器の前記プロセス流側のプロセス流が、有機系化学物質を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記熱交換器が、空気分離プラントに組み込まれ、前記熱交換器の前記プロセス流側のプロセス流が、ガスである、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記熱交換器が、アンモニア製造プロセスに組み込まれる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記熱交換器が、発電所に組み込まれる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記熱交換器が、シェルアンドチューブ式熱交換器、およびプレート式熱交換器からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
方法であって、
冷却水回路内の複数の熱交換を評価し、重要な熱交換器である、前記複数の熱交換器のうちの少なくとも1つを特定することと、
前記重要な熱交換器の熱伝達効率を監視し、汚損を示す前記熱伝達効率の変化を決定することと、
スケール汚損、生物汚損、および腐食汚損を含む、前記重要な熱交換器で発生する複数の異なる潜在的な汚損のメカニズムを示すデータを受信することと、
前記複数の異なる潜在的な汚損のメカニズムを示す前記受信したデータに基づいて、前記熱伝達効率傾向の前記変化の予測原因を決定することと、
前記予測原因に基づいて、重要な熱交換器と流体連通している冷却水への化学添加剤の添加を制御することと、を含む、方法。
【請求項41】
前記熱伝達効率を監視することが、少なくとも、前記重要な熱交換器に入る前記冷却水流の温度、前記重要な熱交換器を出る前記冷却水流の温度、前記重要な熱交換器に入るプロセス流の温度、前記重要な熱交換器を出る前記プロセス流の温度、および前記冷却水の流速、を示す複数のセンサからデータを受信することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
汚損を示す前記熱伝達効率の変化を決定することが、ある測定期間の熱伝達効率傾向と、以前に確立された熱伝達効率傾向との比較を実施することを含む、請求項40または41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記比較が、前記測定期間の熱伝達効率傾向と、前記以前に確立された熱伝達効率傾向との間の差および比率のうちの1つである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記測定期間の熱伝達効率傾向と前記以前に確立された熱伝達効率傾向とを時間正規化し、前記比較を時間正規化された傾向に対して実施することをさらに含む、請求項42および43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
熱伝達効率傾向の前記検出された変化の前記予測原因を決定することが、重み付け因子を、前記複数の異なる汚損のメカニズムを示す各受信したデータパラメータに適用することを含む、請求項40〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記重み付け因子を各受信したデータパラメータに適用することが、前記受信したデータパラメータのうちのいくつかについて、熱伝達効率の前記変化を決定した後に測定したときの前記受信したデータパラメータと、熱伝達効率の前記変化の前に測定したときの前記受信したデータパラメータとの間で比較した際の前記受信したデータパラメータの変化の量を決定することと、前記重み付けパラメータを前記変化の量に適用することと、を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
熱伝達効率傾向の前記検出された変化の前記予測原因を決定することが、集約スケール汚損スコアを、スケール汚損を示す前記受信したデータに基づいて、集約腐食汚損スコアを、腐食汚損を示す前記受信したデータに基づいて、ならびに集約生物汚損スコアを、生物汚損を示す前記受信したデータに基づいて決定することを、さらに含む、請求項40〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記集約スケール汚損スコアを決定することが、スケール汚損を示す各重み付けデータパラメータを合計し、その平均を決定することを含み、
前記集約腐食汚損スコアを決定することが、腐食汚損を示す各重み付けデータパラメータを合計し、その平均を決定することを含み、
前記集約生物汚損スコアを決定することが、生物汚損を示す各重み付けデータパラメータを合計し、その平均を決定することを含み、
前記熱伝達効率傾向の前記検出された変化の前記予測原因を決定することが、前記集約スケール汚損スコア、前記集約腐食汚損スコア、および前記集約生物汚損スコアのうちの最大のものを特定することを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記化学添加剤の添加を制御することが、
前記予測原因に対抗するために選択された前記化学添加剤が前記冷却水流に導入される流速を増加させること、および
前記予測原因に対抗するために選択された前記化学添加剤のフローを開始すること、のうちの少なくとも1つを含む、請求項40〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記重要な熱交換器を特定することが、前記複数の熱交換器の各々の保守履歴、前記複数の熱交換器の各々の動作性能、前記複数の熱交換器の各々のバイパス代替物、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに基づいて、前記重要な熱交換器を特定することを含む、請求項40〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
システムであって、
蒸発冷却により冷却水流の温度を低減する冷却塔と、
冷却水入口、冷却水出口、プロセス流入口、およびプロセス流出口を有する、熱交換器と、
前記冷却水入口を通って前記熱交換器に入る冷却水流の温度、前記冷却水出口を通って前記熱交換器を出る前記冷却水流の温度、前記プロセス流入口を通って前記熱交換器に入るプロセス流の温度、および前記プロセス流出口を通って前記熱交換器を出る前記プロセス流の温度、を測定するように位置決めされた第1の複数のセンサと、
スケール汚損、生物汚損、および腐食汚損を含む、前記熱交換器で発生する複数の異なる潜在的な汚損のメカニズムを示すパラメータを測定するように構成された第2の複数のセンサと、
前記冷却水流に化学添加剤を注入するように位置決めされたポンプと、
前記第1の複数のセンサ、前記第2の複数のセンサ、および前記ポンプに通信可能に連結されたコントローラと、を備え、前記コントローラが、
前記第1の複数のセンサからデータを受信し、前記第1の複数のセンサからの前記受信したデータに基づいて前記熱交換器の熱伝達効率を決定し、ある期間にわたって前記熱交換器の熱伝達効率傾向を確立し、前記熱伝達効率傾向の変化を検出すること、
前記複数の異なる潜在的な汚損のメカニズムを示す前記受信したデータに基づいて、前記熱伝達効率傾向の前記変化の予測原因を決定すること、および
前記予測原因に基づいて、前記冷却水への化学添加剤の添加を制御すること、を行うように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月10日に出願された米国仮特許出願第62/584,671号、および2018年8月21日に出願された米国仮特許出願第62/720,605号の利益を主張し、それらの各々の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、冷却水システムに関し、より具体的には、冷却水制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
水冷却塔は、製油所および化学生成物製造プラントに見られるような大容量の熱交換システムで使用される。冷却塔は、冷却塔内の冷却剤の一部を蒸発させることによって、吸収された熱を、循環する水冷却剤から除去するために使用される。残りの冷却剤を、ポンプによって塔の基部にあるリザーバまたは汚水槽から抽出し、熱負荷を通じて継続的に供給することができる。かかるシステムでは大量の水が蒸発するため、スケール、シルト、またはその他の水汚染物質が時間の経過と共に再循環水中に蓄積することがある。
【0004】
再循環する冷却水が接触する表面に汚損が発生する程度を防止または制限するのを助けるために、冷却水に様々な化学物質を添加することができる。典型的な動作環境では、技術者は冷却水システムから冷却水のサンプルを採取し、サンプルの化学分析を実施し得る。技術者は、分析に基づいて、冷却水に添加される化学物質のタイプを調整し得る。多くの場合、技術者は、週に1回または月に1回など、限定された基準で冷却水の分析を実施するためだけに施設の現場にいる場合がある。その結果、施設のプロセス条件の変更は、プロセス条件が改変されてからしばらく時間が経過するまで検出されない場合がある。さらに、変更されたプロセス条件に対応するために冷却水の化学的性質が変更された場合でも、かかる変更は、概して、望ましくない冷却水の条件を防止するための予測的な変更ではなく、反動的な変更である。
【発明の概要】
【0005】
概して、本開示は、冷却水を監視および制御するための技術およびシステムを対象とする。いくつかの例では、冷却水回路内の冷却水の条件は、内部を通って冷却水が運搬される1つ以上の下流熱伝達ユニットの熱性能を評価することによって監視および/または制御される。例えば、熱交換ネットワークは、多数の熱交換器に流体的に接続され、多数の熱交換器に冷却水を供給する、1つ以上の冷却塔を含み得る。冷却水は各熱交換器の片側を通過することができ、冷却されるプロセス流体は、流体が固体の金属壁によって分離された状態で、熱交換器の反対側を通過する。熱交換器を横切る熱交換は、並流(平行)または向流(反対)方向で行うことができる。
【0006】
冷却水制御システムを配備するには、冷却水回路内の多数の熱交換器を調査して、熱交換器が位置する施設の動作性能に重要な1つ以上の熱交換器を特定することができる。例えば、熱交換器を評価して、それらの汚損履歴、汚損条件が必須である場合の回路内のバイパス熱交換器の可用性、水側の汚損に対する感度、または1つ以上の特定の交換器の熱伝達効率がユーザのプロセスの整合性にとって重要であることを示す他の条件を決定することができる。重要であると特定された熱交換器が監視用にまだ装備されていない限り、様々な監視器具を追加して、熱交換器の性能を監視することができる。例えば、熱交換器に出入りする冷却水流の温度、ならびに熱交換器に出入りするプロセス流の温度を測定するための温度センサを追加することができる。別の例として、交換器を通過する冷却水の流速を測定するためのセンサおよび/または交換器を横切る圧力降下を測定するための差圧センサを追加することができる。
【0007】
重要な熱交換器について監視されるパラメータのタイプに関係なく、熱交換器の熱伝達効率に対応するパラメータは、温度データに少なくとも部分的に基づいて決定され得る。例えば、熱交換器の熱伝達効率の傾向を確立して、傾向からの将来の偏差を決定することができる参照を提供することができる。続いて、熱交換器の熱伝達効率を監視し、熱伝達効率の変化を検出することができる。熱伝達効率傾向の変化は、汚損の初期または加速を示すことがあり、これは、かかる汚損の影響を停止または軽減するための介入的な冷却水制御措置をとるための検出可能な証拠を提供することができる。
【0008】
実際には、熱伝達効率傾向の変化は、多くの異なる冷却水関連の根本原因を有する。熱伝達効率傾向の検出された負の偏差を軽減するための適切な冷却水制御措置は、根底にある根本原因によって変化し得る。本開示によるいくつかの例では、冷却水制御技術は、熱伝達効率条件の悪化につながる汚損を引き起こし得る多数の異なるタイプの潜在的な根本原因を示すデータを取得することに関与する。例えば、多くのセンサを提供して、熱効率特性が監視されている熱交換器を通過する冷却水の異なる特性とパラメータとを測定することができる。センサは、スケール汚損、腐食汚損、および生物汚損などの異なるタイプの汚損のメカニズムを示すデータを提供し得る。単一のセンサの測定値またはパラメータを、特定の汚損のメカニズムに関連付けることができる。代替的に、冷却水の多数の異なるパラメータを測定して、特定の汚損のメカニズムを示すデータを提供することができる。
【0009】
いずれの場合も、熱伝達効率傾向の変化につながる汚損の予測根本原因を、異なるタイプの汚損のメカニズムに関連付けられたデータに基づいて決定することができる。例えば、各特定のタイプの汚損のメカニズムに関連付けられたデータをスケーリングし、かつ/または重み付けして、汚損を引き起こしていると評価されている他の原因またはメカニズムよりも可能性が高い特定の原因またはメカニズムを特定することができる。次いで、冷却水制御措置をとって、予測汚損原因に対抗することができる。例えば、予測汚損原因に対抗するために選択された1つ以上の化学添加剤を冷却水に導入することができ、かつ/またはかかる化学添加剤(複数可)の速度を調整することができる。追加的または代替的に、冷却水塔をブローダウンして、循環冷却水の一部を新鮮な補給水で置き換えることができる。
【0010】
いくつかの用途では、重要な熱交換器の熱伝達効率を監視して、予測汚損原因に応答してとられる補正措置(複数可)の有効性を評価する。例えば、重要な熱交換器の熱伝達効率を監視して、例えば、熱伝達効率が補正措置(複数可)をとる前よりも緩徐な速度で悪化していることを示す、熱伝達効率傾向の第2の変化を検出することができる。熱伝達効率傾向の変化が補正措置(複数可)に応答して検出されない場合、および/または熱伝達効率傾向がかかる補正措置をとる前よりもなおさらに悪化する場合、予測根本原因は汚損課題の実際の根本原因ではないと決定することができる。したがって、代替的な予測根本原因を特定し、1つ以上の代替的な冷却水制御措置をとることができる。一例として、代替的な予測汚損原因に対抗するために選択された1つ以上の化学添加剤を、元の予測汚損原因に対抗するように制御される添加剤の代わりに制御することができる。
【0011】
熱交換器の冷却水側の初期の汚損条件を正確かつ迅速に検出し、それに反応することにより、より深刻な汚損を回避することができる。いくつかの用途では、リアルタイムの監視および制御を提供して、熱交換器の熱効率条件の予想外の悪化に対する迅速な応答を促進する。この迅速な介入により、熱交換器が汚損された条件を検出する前に完全に汚損されると達成することができない方法で、次の物理的な清浄化まで熱交換器の耐用年数を延ばすことができる。
【0012】
一例では、少なくとも1つの熱交換器の熱伝達効率を監視し、熱交換器の熱伝達効率傾向を確立することを含む方法が記載されている。熱交換器は、プロセス流側と冷却水流側とを有する。本方法は、熱伝達効率傾向の変化を検出することを含む。本方法はさらに、冷却水流側のスケール汚損を示すデータ、冷却水流側の腐食汚損を示すデータ、および冷却水流側の生物汚損を示すデータを受信することに関与する。本方法は、熱伝達効率傾向の検出された変化の予測原因を決定し、予測原因に基づいて、少なくとも1つの熱交換器の冷却水流側と流体連通している冷却水への化学添加剤の添加を制御することを含む。
【0013】
別の例では、冷却水システムを制御する方法が記載されている。本方法は、熱交換器ネットワーク内の複数の熱交換器を調査して、少なくとも1つの重要な熱交換器を特定することに関与する。本方法は、重要な熱交換器の熱伝達効率を監視することと、重要な熱交換器の熱伝達効率傾向を確立することと、熱伝達効率傾向の変化を検出することと、を含む。加えて、本方法は、冷却水流側のスケール汚損を示すデータを受信すること、冷却水流側の腐食汚損を示すデータを受信すること、冷却水流側の生物汚損を示すデータを受信すること、に関与する。本方法はまた、熱伝達効率傾向の検出された変化の予測原因を決定することに関与し、予測原因としては、スケール汚損、腐食汚損、および生物汚損からなる群から選択される原因が挙げられる。本方法はさらに、予測原因に基づいて、少なくとも1つの重要な熱交換器の冷却水流側と流体連通している冷却水への化学添加剤の添加を制御することと、冷却水への化学添加剤の制御された添加に応答して、熱伝達効率傾向の変化を検出することと、に関与する。
【0014】
別の例では、冷却水処理を制御する方法が記載されている。本方法は、少なくとも、熱交換器に入る冷却水流の温度、熱交換器を出る冷却水流の温度、熱交換器に入るプロセス流の温度、および熱交換器を出るプロセス流の温度を示す複数のセンサからデータを受信することを含む。本方法はまた、複数のセンサからの受信したデータに基づいて、熱交換器の熱伝達効率を決定することと、ある期間にわたって熱交換器の熱伝達効率傾向を確立することと、に関与する。本方法はさらに、熱伝達効率傾向の変化を検出することと、熱交換器の熱伝達効率傾向の検出された変化に応答して、冷却水流への化学添加剤の添加を制御することと、に関与する。
【0015】
別の例では、冷却塔、熱交換器、複数のセンサ、ポンプ、およびコントローラを含むシステムが記載されている。冷却塔は、蒸発冷却により冷却水流の温度を低減する。熱交換器は、冷却水入口、冷却水出口、プロセス流入口、およびプロセス流出口を有する。複数のセンサは、冷却水入口を通って熱交換器に入る冷却水流の温度、冷却水出口を通って熱交換器を出る冷却水流の温度、プロセス流入口を通って熱交換器に入るプロセス流の温度、およびプロセス流出口を通って熱交換器を出るプロセス流の温度を測定するように位置決めされている。ポンプは、熱交換器の上流に位置決めされ、冷却水流に化学添加剤を注入するように構成されている。コントローラは、複数のセンサおよびポンプに通信可能に連結され、複数のセンサからデータを受信すること、複数のセンサからの受信したデータに基づいて、熱交換器の熱伝達効率を決定すること、ある期間にわたって熱交換器の熱伝達効率傾向を確立すること、熱伝達効率傾向の変化を検出すること、および熱交換器の熱伝達効率傾向の検出された変化に応答して、ポンプを制御すること、を行うように構成されている。
【0016】
1つまたは複数の例の詳細が、添付の図面および以下の説明に記載される。他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図2による冷却水監視制御システムを実装することができる多数の熱交換器を含有する熱交換器ネットワークの一例を例示する、フロー図である。
【0018】
図2】冷却水監視制御システムの一例の概念図である。
【0019】
図3図2による冷却水監視制御システムを実装することができるアンモニア製造プロセスの一例を例示するフロー図である。
【0020】
図4】熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
図5】熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
図6】熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
図7】熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
【0021】
図8図4〜7に例示される温度データを提供する熱交換器の冷却水流速データの例を示す。
【0022】
図9図4〜8の平滑化された温度データと流速データとを使用して計算された熱伝達係数の例を示すグラフである。
【0023】
図10】周期性マーカーを重ねた、図4〜8の平滑化された温度データと流速データとを使用して計算された熱伝達係数の例を示すグラフである。
【0024】
図11図8の流速データに対応する冷却水流の酸化還元電位(ORP)値の例を示す。
【0025】
図12】別の例示的な熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
図13】別の例示的な熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
図14】別の例示的な熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
図15】別の例示的な熱交換器のフロー流に関する生および平滑化された温度データの例を示す。
【0026】
図16図12〜15に例示される温度データを提供する熱交換器の冷却水流速データの例を示す。
【0027】
図17図12〜16の平滑化された温度データと流速データとを使用して計算された熱伝達係数の例を示すグラフである。
【0028】
図18】ある期間にわたる平滑化された温度データを使用して計算された実験的な熱伝達係数を示すグラフである。
【0029】
図19図18のデータに関連付けられた異なる潜在的な汚損のメカニズムの集約汚損スコアを示す棒グラフである。
【0030】
図20】ある期間にわたる平滑化された温度データを使用して計算された実験的な熱伝達係数を示すグラフである。
【0031】
図21図20のデータに関連付けられた異なる潜在的な汚損のメカニズムの集約汚損スコアを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、概して、1つ以上の比較的暖かい流れとの熱交換に使用される冷却水源への1つ以上の化学剤の添加を制御するためのシステムおよび技術を含む、冷却水監視制御システムを対象とする。冷却水に添加される1つ以上の化学剤は、冷却水と流体接触する熱交換面に汚損が堆積するのを防止するか、またはその程度を最小限に抑えることができる。これにより、制御された冷却水化学物質添加による熱交換ネットワークが実装されている施設の効率を改善することができる。
【0033】
本開示によるシステムおよび技術は、任意の所望の冷却水システムおよび任意の熱交換器用途に実装することができるが、いくつかの例では、本技術は、ネットワーク化された熱交換器のシステムに実装される。ネットワーク化された熱交換器の冷却水側は、冷却水がネットワークを通って再循環し、ネットワーク内の多数の熱交換器を、例えば、直列および/または並列に通過するように、互いに流体連結され得る。多数の熱交換器が再循環冷却水を共有する用途では、熱交換器を調査して、冷却水システムを制御するためにさらなる監視を実施することができるネットワーク内の1つ以上の重要な熱交換器を特定することができる。熱交換器を評価して、ネットワーク内の1つ以上の特定の熱交換器を特定することができ、これらの特定の熱交換器は、それらの汚損の可能性、全体的な設計に対するそれらの現在の性能、水側の汚損に対する感度、および/またはプロセス全体に対するそれらの重要性に基づいて、ネットワーク内の他の熱交換器よりも綿密に監視されるべきである。かかる熱交換器を重要な熱交換器として指定することができ、重要な熱交換器(複数可)およびネットワーク内の他の熱交換器の両方に供給する冷却水システムを制御するための熱交換器で熱効率の監視を実施することができる。
【0034】
図1は、本開示による冷却水監視制御システムを実装することができる多数の熱交換器を含有する熱交換器ネットワーク100の一例を例示するフロー図である。この例に示されるように、多数の熱交換器104A〜104Eは、冷却塔102によって供給される冷却水流に流体的に接続されている。冷却水は、熱交換器104Aおよび104Bを通って並列に流れ、続いて、冷却塔に戻る前に熱交換器104C〜104Eを通って直列に流れる。各熱交換器104は、プロセス流側と冷却水流側とを有し、これらは、互いに分割され、熱エネルギーを、プロセス流側を通過するプロセス流から、冷却水側を通過する冷却水流へと伝達させる。図1の熱交換器ネットワーク100は、5つの熱交換器を有するものとして例示されているが、熱交換器ネットワークは、より少ない熱交換器(例えば、2つ、3つ、4つ)、またはより多くの熱交換器(例えば、6つ、7つ以上)を有することができ、本開示はこの点に限定されないことを理解されたい。
【0035】
ネットワーク内に多数の熱交換器がある用途では、熱交換器のうちの1つまたは多数(および任意選択で、すべての熱交換器)は、図2の熱交換器104に関連して記載されるセンサを含むことができる。冷却水システムを管理するコントローラは、センサからデータを受信することができる。データは、熱交換器ネットワーク100内で監視されているもう1つの熱交換器の熱伝達効率および/またはシステムを通って流れる冷却水の特性に関する情報を提供することができる。以下でもより詳細に記載されるように、コントローラによって受信される、システムを通って流れる冷却水の特性は、熱交換器ネットワーク内で発生する潜在的な汚損の原因を示し得る。したがって、熱交換器ネットワーク100内で検出された汚損を軽減しようとするために、冷却水制御措置をとることができる。
【0036】
熱交換器ネットワーク100内のすべての熱交換器の熱伝達効率に関するデータを収集することができるが、実際には、監視する必要がある交換器の数と各熱交換器の異なる汚損条件により、かかる広範囲の監視が非実用的になる場合がある。したがって、これらの用途では、ネットワーク内の多数の熱交換器(任意選択で、ネットワーク内のすべての熱交換器)の初期調査を実施して、さらなる監視が適切な1つ以上の特定の熱交換器を特定することができる。本調査は、調査される熱交換器の動作履歴、設計履歴、および/または現在の性能データを取得して、1つ以上の熱交換器を、監視するためのネットワーク内の他の熱交換器よりも重要であると(例えば、1つの熱交換器のみ、2つの熱交換器、または2つ以上の熱交換器を重要であると)指定することに関与し得る。
【0037】
さらなる監視のために重要な熱交換器にすることができる、熱交換器ネットワーク100内の熱交換器の特定の属性は、具体的な用途に応じて変化し得る。概して、本調査は、熱交換器ネットワーク100内のどの熱交換器(複数可)が、汚損された場合に熱交換器ネットワークが統合されるプロセス全体の効率および動作性により大きな影響を与えるかを特定するように求める場合がある。一例として、熱交換器ネットワーク100内の特定の熱交換器が、ネットワーク内の他の熱交換器よりも速い速度で冷却水側の汚損の履歴を有する(例えば、熱交換器ネットワーク全体の清浄化サイクルを潜在的に指示する)場合、かかる交換器を重要な熱交換器として指定することができる。別の例として、熱交換器ネットワーク100内の特定の熱交換器の動作性能が、ネットワーク内の他の熱交換器よりも設計動作性能から逸脱している場合、かかる交換器を重要な熱交換器として指定することができる。重要性に関する性能特性は、例えば、熱交換器の設計構成および標的動作特性に応じて変化し得るが、交換器を通る冷却水の速度が1フィート/秒未満であり、かつ/または冷却水流出口温度が華氏140度超であるなどのパラメータは、汚損のより高い可能性を示し、熱交換器が重要な熱交換器に指定されていることを保証し得る。
【0038】
熱交換器ネットワーク100内の特定の熱交換器をさらなる監視のために重要な熱交換器として指定すべきかどうかを評価する際に、バイパス熱交換器の可用性を考慮に入れることができる。バイパス熱交換器は、熱交換器ネットワーク100内の別の熱交換器、例えば、重要性について評価されている熱交換器と並列のものであってもよい。バイパス熱交換器は、オフラインであってもよいし、または別様に追加のスループット容量を有していてもよい。主交換器が汚損した場合、バイパス熱交換器をオンラインにし、かつ/または追加のフローを主交換器からバイパス熱交換器に向けることができる。したがって、重要性について評価されている主交換器の汚損は影響力が強い場合があるが、熱交換器ネットワークおよび/またはプロセス全体をシャットダウンすることなく、フローを向け直すためのバイパス交換器の可用性は、主交換器を重要な交換器として指定することを妨げることにつながる場合がある。
【0039】
冷却水制御システムに関連付けられたコントローラは、熱交換器ネットワーク100内の多数の熱交換器の重要性に関連付けられたデータを受信し、さらなる監視が実施されるべきである、ネットワーク内の1つ以上の重要な熱交換器を特定することができる。例えば、調査される熱交換器の動作履歴、設計履歴、および/または現在の性能データに関連付けられたデータを、コントローラに関連付けられたメモリに記憶することができる。次いで、コントローラ上で実行されるソフトウェアは、記憶されたデータを分析して、熱交換器ネットワーク100内の1つ以上の熱交換器が重要な熱交換器であることを特定することができる。代替的に、冷却水制御方法を実装するユーザは、サイト固有の因子に基づいて、特定の熱交換器(複数可)を重要なものとして指定することができる。
【0040】
特定の熱交換器を重要なものとして指定するために使用される特性およびプロセスに関係なく、そのように指定された熱交換器を監視して、熱交換器を通って流れる冷却水の状態に関する情報および洞察を取得することができる。例えば、重要な熱交換器を通って流れる流れを監視するためのセンサを追加して、冷却水システムを制御するための熱交換器の熱効率に関するデータを提供することができる。
【0041】
図2は、熱交換器のネットワークで実施された調査に従って重要な熱交換器であると指定された熱交換器104に対して実装され得る冷却水監視制御システム10の一例の概念図である。例示される例では、システム10は、冷却塔102と、1つ以上の熱交換器104と、熱交換ネットワークを通じて再循環される冷却水流に1つ以上の化学剤を導入し得るポンプ106と、を含む。コントローラ136は、システム10の全体的な動作を管理する。動作中、比較的暖かいプロセス流は熱交換器104のプロセス流側を通過することができ、比較的冷たい冷却水流は交換器の冷却水側を通過する。流体を、熱交換器内の固体壁面によって分離して、流体の混合を防止することができる。熱エネルギーは、比較的暖かいプロセス流から比較的冷たい冷却水流へと伝達され得、その結果、プロセス流の温度の低減、および冷却水流の温度の増加をもたらす。図2の例示的なシステムは、例示の目的で単一の熱交換器104のみを含むが、本開示の概念を利用する熱交換ネットワークは、図1に関して上で論じられるように、多数の熱交換器(例えば、各々が熱交換器104として構成されていることが記載されている)を含み得る。
【0042】
図2の例の熱交換器104は、冷却水入口108と、冷却水出口110と、を含む。熱交換器はまた、プロセス流入口112と、プロセス流出口114と、を含む。冷却水流116は、冷却水入口108を通って熱交換器104に入り、熱交換器内部の1つ以上の分割された経路を通って流れ、冷却水出口110を通って熱交換器から出ることができる。同様に、プロセス流118は、プロセス流入口112を通って熱交換器104に入り、冷却水流から分離された熱交換器内部の1つ以上の分割された経路を通って流れ、プロセス流出口114を通って熱交換器を出ることができる。いくつかの構成では、冷却水流およびプロセス流は、熱交換器を通って並流方向に流れる。他の構成では、プロセス流中の冷却水流は、熱交換器を通って向流方向に流れる。概して、熱交換器104は、シェルアンドチューブ式熱交換器、プレート式熱交換器、または他のタイプの熱伝達デバイスなど、任意の所望のタイプの熱交換器設計を使用して実装され得る。
【0043】
例示される構成では、冷却水流116は、上流冷却塔102から熱交換器104に送達され、熱交換器を通過した後に冷却塔に再度リサイクルされる。上に示されるように、冷却水流116は、熱交換器104に入る前に1つ以上の熱交換器を通過し、かつ/または冷却塔102に戻る前に熱交換器104を通過した後に1つ以上の熱交換器を通過し得る。冷却塔102では、熱伝達回路を通って流れる冷却水流に伝達された熱エネルギーを除去し、大気に吐出することができる。例えば、冷却塔102は、冷却水流を空気と直接接触させ、その結果、蒸発冷却により冷却水流の温度の低減をもたらすことができる。冷却水は、熱交換ネットワークから引き出され、熱交換ネットワークを通過する前に、汚水槽またはリザーバに送達され得る。
【0044】
冷却水は、蒸発による水の損失に加えて、熱交換システムから周期的に除去され得る。吐出線120を使用して、システムが動作している間に汚水槽またはリザーバの水の一部をブリードオフ(または「ブローダウン」)することができる。いずれの場合でも、「補給」水線122は、冷却システムに新鮮な水を供給して、蒸発または意図的な投棄による水の損失を補うことができる。
【0045】
実際には、様々な問題点が熱交換器の冷却水側からの熱交換器104の熱性能に影響を与え得る。例えば、冷却水が高レベルの固形物(例えば、シルト、破片)を含有する場合、固形物は、熱交換器104を通る冷却水流体経路を部分的にまたは完全に閉塞し得る。一例として、冷却水は、冷却水と接触する熱交換器104の内面に堆積物を形成させ得る。
【0046】
例えば、冷却水の蒸発は、システムを介してリサイクルされる冷却水流中の塩(例えば、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム)の濃度につながることがある。これらの塩は、冷却水と接触する熱交換器104の表面にスケーリング堆積物を形成し得る。別の例として、冷却水が有機材料および微生物を含有する場合、バイオフィルムが冷却水と接触する熱交換器104の表面に堆積し得る。さらに別の例として、例えば、金属構成要素(例えば、鉄、アルミニウム、および/または亜鉛)の酸化により、冷却水流内で腐食生成物が発生し得る。これらの腐食生成物はまた、冷却水と接触する熱交換器104の表面に堆積し得る。汚損のメカニズムまたは原因とは無関係に、冷却水と接触する熱交換器104の表面にバリア層が蓄積すると、熱交換器を通る熱伝達の効率が低減し得る。
【0047】
熱伝達ネットワークを通過する冷却水流の潜在的な汚損条件を低減または排除するのを助けるために、1つ以上の化学物質を冷却水に添加して、汚損物質の形成および/または堆積を抑制することができる。図2の構成では、システム10は、1つ以上のそれぞれの化学添加剤リザーバ124A〜124Z(集合的に、「化学物質リザーバ124」と呼ばれる)に流体的に接続された1つ以上のポンプ106A〜106Z(集合的に、「ポンプ106」と呼ばれる)を含む。ポンプ106は、冷却水と接触する表面上の汚損物質の形成および/または堆積を抑制するように選択された1つ以上の化学物質を冷却水に添加するように動作し得る。冷却水に注入され得る化学添加剤の例としては、ポリマー(分散剤およびスケール抑制剤)、ホスフィノコハク酸オリゴマー(PSO、スケールおよび腐食抑制剤)などの有機リン化合物、亜鉛(腐食抑制剤)、オルトリン酸塩(腐食抑制剤)、ポリリン酸塩(スケールおよび腐食抑制剤)、殺生物剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。追加的または代替的に、1つ以上の化学添加剤を冷却水に注入して、冷却水のpHを調整することができる。pH調整制御剤の例としては、鉱酸、有機酸、および無機塩基が挙げられる。
【0048】
図2の例示される構成では、ポンプ106は、冷却塔102と熱交換器104との間の冷却水に化学添加剤を添加するものとして例示されている。実際には、化学添加剤は、冷却塔に関連付けられた汚水槽などの任意の好適な場所で冷却水流に導入され得る。さらに、図2のシステム10は、単一の化学添加剤リザーバ124に流体連結された単一のポンプ106を例示しているが、ポンプ106は、異なる化学物質を含有する多数のリザーバと選択的に流体連通し得、かつ/またはシステム10は、各々が冷却水に異なる化学物質を導入するように構成された多数のポンプを含み得る。上に論じられるもののうちのいくつかまたはすべてを含む多数の異なる化学添加剤を提供することによって、冷却水に導入される化学物質のタイプを、冷却水の条件の変化に基づいて、変更することができる。
【0049】
システム10の冷却水への化学添加剤の添加を制御するために、熱交換器104の熱性能を監視することができる。熱交換器104の熱性能を監視して、熱エネルギーが比較的暖かいプロセス流から比較的冷たい冷却水流へと伝達される効率を評価することができる。熱交換器104の熱伝達効率は、熱交換器が新しいか、または清浄化を受けたときに最大になる場合がある。例えば、熱交換器104を、化学的および/または機械的清浄化の実装例を使用して周期的に清浄化して、熱交換器のプロセス側および/または冷却側の汚損を除去し、熱交換器の熱交換表面が清浄であり、実質的にまたは完全に汚損されていないことをもたらすことができる。供用状態で時間がたつと、熱交換器の熱伝達面のプロセス流側および/または冷却水流側に汚損が蓄積する場合がある。結果として、熱交換器104の熱伝達効率は、ある清浄化から次の清浄化までの供用の過程で悪化することがある。
【0050】
熱交換器104の熱伝達効率を監視するのを助けるために、多数のセンサを配備して、熱交換器の異なる動作態様を監視することができる。図2の例では、システム10は、熱交換器104に入る冷却水流116の温度を測定する温度センサ126と、熱交換器を出る冷却水流の温度を測定する温度センサ128と、を含む。システムはまた、熱交換器104に入るプロセス流118の温度を測定する温度センサ130と、熱交換器を出るプロセス流の温度を測定する温度センサ132と、を含む。温度センサは熱交換器104にすぐ隣接して位置決めされているように模式的に例示されているが、温度センサを、熱交換器から上流または下流の場所に位置決めして、温度センサが、熱交換器に出入りするそれぞれの流れの温度の好適で正確な測定を提供することをもたらすことができる。
【0051】
システム10は、熱交換器104の異なる動作パラメータを測定するための追加のおよび/または異なるセンサを含み得る。例えば、システムは、冷却水流116および/またはプロセス流118の流速を測定するための1つ以上のフローセンサを含み得る。例示される例では、システム10は、熱交換器104を出る冷却水流の流速を測定するように位置決めされたフローセンサ134を示す。他の例では、冷却水流116および/またはプロセス流118の流速は、熱交換器を通って運搬される大量の流体を示す動作環境内のポンプ速度または他の情報に基づいて決定され得る。システム10で有用に用いられ得る他のセンサとしては、(例えば、熱交換器を横切る冷却水流および/またはプロセス流の差圧を測定するための)圧力センサが挙げられる。
【0052】
熱交換器104の特性を監視することに加えて、システム10は、熱交換器104を含むシステムを通って流れる冷却水の特性に関して、オンラインで監視し、かつ/またはオフライン分析源からのデータ受信することができる。データは、熱交換器104の冷却水側の潜在的な汚損特性および対応する汚損原因(複数可)を示す情報を提供し得る。これを熱交換器104からの熱伝達効率情報と組み合わせて使用し、システム10内の冷却水を制御することができる。
【0053】
実際に観察され得る汚損の典型的な原因としては、スケールに起因する汚損、腐食に起因する汚損、および/または生物学的源に起因する汚損(いわゆる生物汚損)が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「スケール汚損」という用語は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、酸化マンガン、リン酸アルミニウム、シルト、および砂などの成分を含むが、これらに限定されない、冷却水からの、または冷却水中で形成される粒子状物質による熱交換表面の汚損を指す。
【0055】
「腐食汚損」という用語は、主に金属酸化物などの腐食形成堆積物による熱交換表面の汚損を指し、これらは、その場で、またはシステム内の他の場所からの破損および再堆積によって形成され得る。
【0056】
「生物汚損」という用語は、生物学的有機体、それらの細胞外分子、または代謝副産物による熱交換表面の汚損を指す。
【0057】
熱交換器104の冷却水側の1つ以上の潜在的な汚損原因を示す情報を取得するために、システム10は、異なる潜在的な汚損のメカニズムに関連付けられた情報を生成することがき、かつ/またはコントローラ136は、異なる潜在的な汚損のメカニズムに関連付けられた情報を受信することができる。各潜在的な汚損のメカニズムは、測定される単一のパラメータに関連付けることができるか、または測定される多数のパラメータに関連付けることができ、集合的に、潜在的な汚損のメカニズムが実際に根底にある汚損のメカニズムである可能性に関する情報を提供する。例えば、システム10で評価される各潜在的な汚損のメカニズムに関連付けられた多数の異なるパラメータを、潜在的な関連付けられた汚損のメカニズムが見込みのある実際に根底にある汚損のメカニズムであるかどうかを決定する際に測定し、集合的に考慮することができる。
【0058】
熱交換器104を通って流れる冷却水内のメカニズムの異なる汚損条件を示すデータを取得するために、システム10は、熱交換器104の冷却水側の汚損条件に関する情報を提供する多数の異なるセンサ135A〜135Z(集合的に「センサ135」)を含むことができる。例えば、図2では、システム10は、熱交換器104の冷却水側のスケール汚損を示す情報を提供する少なくとも1つのセンサ135A、熱交換器の冷却側の腐食汚損を示す情報を提供する少なくとも1つのセンサ135B、および熱交換器の冷却水側の生物汚損を示す情報を提供する少なくとも1つのセンサ135C、を有するものとして例示されている。
【0059】
かかるセンサは、システム10で様々な方法で実装され得る。例えば、センサのうちの1つ以上を、直接または主冷却水流から引き出されたスリップ流を介してのいずれかで、熱交換器104(例えば、交換器の上流または下流)を通って流れる冷却水に沿って位置決めすることができる。代替的に、センサのうちの1つ以上を、熱交換器104を通って流れる冷却水と直接流体連通していないオフライン監視ツールとして実装することができる。これらの用途では、熱交換器104を通って流れる冷却水をシステムから抽出し、オフライン分析システムに輸送することができる。かかるオフライン分析は、例えば、1つ以上のセンサを使用したサンプルの直接評価に関与し得るか、またはサンプルに関連するデータを生成するためにサンプルで湿潤化学処理を実施するなど、サンプルのさらなる処理に関与し得る。いずれの場合も、センサ135によって生成されたデータ、および/または評価中の冷却水に別様に関連付けられたデータは、例えば、メモリへの格納用および/またはさらなる処理用に、コントローラ136によって受信され得る。
【0060】
例えば、次の表は、データの捕捉頻度の例と共に、オンラインおよび/またはオフラインの監視技術を使用して取得され得る冷却水データの例を例示している。
【表1】
【0061】
前述の表に例証されるような分析データは、本明細書に記載される分析制御技術を実施するために、コントローラ136によってアクセス可能なコンピュータ可読媒体に入力および/または記憶され得る。システム100のコントローラ136に起因するコンピューティング機能は、物理的にオンサイトであろうと遠隔に位置しようと、システムに関連付けられた任意の1つ以上のコントローラで実施することができ、本明細書に記載される機能は、任意の特定のハードウェアデバイスまたはハードウェアデバイスの組み合わせで実施されることに限定されないことを理解されたい。したがって、コントローラ136で実施されるある特定のコンピューティング機能の説明は、論考の目的のためであり、本開示はこの点に限定されない。
【0062】
システム10の汚損条件がスケールによって引き起こされている可能性を評価するために、コントローラ136は、スケール汚損のメカニズムに関連付けられたデータを受信することができる。システム10のセンサ135は、冷却水中のリン酸塩の濃度、冷却水中のカルシウムの濃度、冷却水中のマンガンの濃度、冷却水中のアルミニウム濃度、冷却水中の鉄の濃度、冷却水中のリン酸塩の濃度、冷却水中のアルカリ度の濃度、および/または冷却水中のシリカの濃度、に関するデータを生成することができ、それらのデータをコントローラ136は受信することができる。これらの構成要素のうちの1つ以上の濃度の増加は、スケール汚損の増加に関連付けられる場合がある。
【0063】
別の例として、センサ135は、冷却水中の粒子の濃度および/またはサイズを示す測定値を提供するために光学センサを使用して実装され得る。例えば、光学センサを使用して、冷却水の濁度および/または光散乱特性を測定することができる。冷却水中の粒子の濃度の増加は、スケール汚損成分に関連付けられ、スケール汚損のメカニズムを示唆する場合がある。追加的または代替的に、光学センサを使用して、熱交換器104、または熱交換器が曝露されるのと同じ冷却水条件に曝露される金属切り取り試片または試験ストリップなど、熱交換器104の類似物の冷却水流側の表面の汚損形成を測定することができる。光学センサは、監視される表面に形成された汚損物質を光学的に評価して、汚損物質の特性、およびそれに応じて、汚損物質がスケール汚損のメカニズム(または腐食もしくは生物汚損)に関連付けられているかどうかを決定することができる。
【0064】
コントローラ136は、潜在的なスケール汚損のメカニズムを示す追加のまたは異なるデータを受信し、その情報を使用して冷却水システムを制御することができる。一例として、コントローラ136は、冷却水側の熱交換器104の両端の圧力降下に対応するデータを受信し、圧力降下に基づいてC因子(熱伝導因子)を計算することができる。経時的なC因子の低下は、スケール汚損の形成を含み得る。
【0065】
システム10の汚損条件が腐食によって引き起こされている可能性を評価するために、コントローラ136は、腐食汚損のメカニズムに関連付けられたデータを受信することができる。システム10のセンサ135は、冷却水中の鉄の濃度、および/または冷却水中の銅の濃度に関するデータを生成することができ、それらのデータをコントローラ136は受信することができる。これらの構成要素のうちの1つ以上の濃度の増加は、腐食汚損成分に関連付けられる場合がある。別の例として、線形偏光プローブを使用して、冷却水中の腐食条件を示す抵抗測定を行うことができる。
【0066】
さらに別の例としては、光学センサを使用して、熱交換器104、または熱交換器が曝露されるのと同じ冷却水条件に曝露される金属切り取り試片または試験ストリップなど、熱交換器104の類似物の冷却水流側の表面の汚損形成を測定することができる。光学センサは、監視される表面に形成された汚損物質を光学的に評価して、汚損物質の特性、およびそれに応じて、汚損物質が腐食汚損のメカニズムに関連付けられているかどうかを決定することができる。熱交換器104の冷却水側の表面を直接測定するのではなく、システム10内の汚損条件を測定するために類似物を使用する場合、類似物は、熱交換器の冷却水流側を画定する金属と同じ冶金で形成されても、形成されなくてもよい。
【0067】
システム10の構成の一例では、モデルまたは試験熱交換器を熱交換器104と共に使用して、熱交換器104で発生する腐食挙動への洞察を提供することができる。モデル熱交換器は、主熱交換器104とは異なる熱交換器であり得、より小さい容量を有し得る。熱交換器104の冷却水側の類似物として機能する金属のチューブまたは切り取り試片をハウジング内に留置することができる。モデル熱交換器は、例えば、スリップ流(複数可)をとることにより、熱交換器104を通過する冷却水および/またはプロセス流に流体的に接続することができる。
【0068】
システム10の汚損条件が生物汚損によって引き起こされている可能性を評価するために、コントローラ136は、生物汚損のメカニズムに関連付けられたデータを受信することができる。システム10のセンサ135は、冷却水中のアデノシン三リン酸の濃度、冷却水中の全有機炭素の量、および/または冷却水の酸化還元電位に関するデータを生成することができ、それらのデータをコントローラ136は受信することができる。これらの成分は、生物汚損を引き起こし得る冷却水中の生物学的活性に関連付けられ得る。
【0069】
追加的または代替的に、光学センサを使用して、熱交換器104、または熱交換器が曝露されるのと同じ冷却水条件に曝露される金属切り取り試片または試験ストリップなど、熱交換器104の類似物の冷却水流側の表面の汚損形成を測定することができる。光学センサは、監視される表面に形成された汚損物質を光学的に評価して、汚損物質の特性、およびそれに応じて、汚損物質が生物汚損のメカニズムに関連付けられているかどうかを決定することができる。さらに別の例として、蛍光光度計を使用して、冷却水中の生物分子の励起によって引き起こされる蛍光を測定し、冷却水中の生物学的活性の指標を提供することができる。
【0070】
コントローラ136は、潜在的なスケール汚損のメカニズムを示す追加のまたは異なるデータを受信し、その情報を使用して冷却水システムを制御することができる。一例として、コントローラ136は、プランクトンおよび/または固着の活性のアッセイなど、冷却水に対して実施される生物学的アッセイに対応するデータを受信することができる。アッセイの結果は、冷却水中の生物学的有機体のレベル、およびそれに応じて、生物汚損のメカニズムの可能性を提供することができる。
【0071】
システム10は、システム内の冷却水の状態に関する情報、および熱交換器の冷却水側で発生する潜在的な汚損のメカニズムを提供する他のセンサ135を含み得る。例えば、熱交換器104を通って流れる冷却水の温度を監視することに加えて、pHセンサは、冷却水のpHを監視し得る。別の例として、化学添加剤を冷却水流に導入して潜在的な汚損原因に対抗する状況では、添加剤は、蛍光定量的に分析して冷却水中の化学物質の濃度を決定することができる蛍光的にタグ付けされたポリマーまたは不活性蛍光トレーサを含み得る。コントローラ136は、蛍光応答に基づいて化学添加剤の消費速度を評価して、検出された冷却水汚損が処理中の汚損のメカニズムまたは潜在的に異なる汚損のメカニズムに関連付けられているかどうかを決定するのを助けることができる。
【0072】
図2の例のシステム10はまた、コントローラ136を含む。コントローラ136は、システムの全体的な動作を管理するために、システム10のセンサ構成要素および制御可能な構成要素に通信可能に接続され得る。例えば、コントローラ136は、ポンプ106、冷却水入口温度センサ126、冷却水出口温度センサ128、プロセス流入口温度センサ130、プロセス流出口温度センサ132、フローセンサ134、およびセンサ135に通信可能に接続され得る。
【0073】
コントローラ136は、プロセッサ138と、メモリ140と、を含む。コントローラ136は、図2の例では有線接続として例示されている、有線または無線接続を介して通信可能に接続された構成要素と通信する。コントローラ136から送信され、コントローラによって受信される制御信号は、接続上を進むことができる。メモリ140は、コントローラ136を作動させるためのソフトウェアを記憶し、かつ例えば、温度センサ126、128、130、132、およびフローセンサ134からプロセッサ138によって生成または受信されたデータを記憶することもできる。プロセッサ138は、メモリ140に記憶されたソフトウェアを作動させて、システム10の動作を管理する。
【0074】
コントローラ136は、熱交換器104を含有する施設サイトに位置し得る1つ以上のコントローラを使用して実装され得る。コントローラ136は、ネットワーク144を介して1つ以上のリモートコンピューティングデバイス142と通信し得る。例えば、コントローラ136は、地理的に分散したクラウドコンピューティングネットワークと通信することができ、クラウドコンピューティングネットワークは、本開示のコントローラ136に帰属する機能のうちのいずれかまたはすべてを実施し得る。
【0075】
ネットワーク144は、1つのコンピューティングデバイスを別のコンピューティングデバイスに連結して、デバイスが一緒に通信することを可能にするように構成され得る。ネットワーク144を使用可能にして、1つの電子デバイスから別の電子デバイスに情報を通信するために、任意の形態のコンピュータ可読媒体を用いることができる。また、ネットワーク144は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)に加えて、インターネットなどの無線インターフェースおよび/または有線インターフェース、ならびにユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、他の形態のコンピュータ可読媒体、またはそれらの任意の組み合わせなどを介した直接接続を含み得る。異なるアーキテクチャおよびプロトコルに基づくものを含む相互接続されたLANのセットでは、ルーターがLAN間のリンクとして作用し、メッセージが相互に送信されることを可能にすることができる。LAN内の通信リンクとしては、ツイストワイヤペアまたは同軸ケーブルを挙げることができるが、ネットワーク間の通信リンクは、アナログ電話線、フルもしくはフラクショナル専用デジタル線、統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)、デジタル加入者線(DSL)、携帯電話リンクおよび衛星リンクを含む無線リンク、または他の通信リンクを利用し得る。さらに、リモートコンピュータおよび他の関連電子デバイスは、モデムおよび一時的な電話リンクを介してLANまたはWANのいずれかにリモートで接続され得る。
【0076】
動作中、温度センサ126、128、130、および132は、熱交換器104に出入りするそれぞれの流体流の温度を示すデータを生成することができる。同様に、フローセンサ134は、熱交換器104を出る冷却水の流速を示すデータを生成することができる。コントローラ136は、システム10全体に配備されたセンサからデータを受信し、センサによって生成されたデータを使用して、熱交換器104の熱伝達効率を決定することができる。受信した温度情報および/または流速情報を熱伝達効率値に関連付ける、メモリに格納された情報を参照して、コントローラ136は熱交換器の熱伝達効率値を決定することができる。
【0077】
いくつかの例では、コントローラ136は、以下の式(1)を使用して熱交換器104の熱伝達効率を決定することができる。
【数1】
【0078】
上の式(1)では、U値は、熱伝達効率であり、
【数2】
は、冷却水流の質量流速であり、Cは、冷却水流の比熱であり、△Twaterは、熱交換器を出る冷却水流の温度と、熱交換器に入る冷却水流の温度との差であり、Heat Tr.Areaは、熱交換器の表面積量であって、それにわたって熱エネルギーがプロセス流と冷却水流との間で伝達される、表面積量であり、Fは、熱交換の幾何学形状に対応する補正因子であり、
【数3】
は、対数平均温度差である。冷却水流の比熱、熱交換器104の熱伝達面積、および補正因子などのパラメータは、メモリに記憶されてもよいし、かつ/またはメモリに記憶された計算情報に基づいて計算可能であってもよい。例えば、ユーザは、ユーザ入力デバイスを使用して、冷却水流の比熱(例えば、水の比熱)に対応する情報、および熱交換器104の幾何学形状に対応する特性をコントローラ136のメモリ140に記憶することができる。
【0079】
上の式(1)の対数平均温度差は、下の式(2)または(3)を使用して計算することができる。
【数4】
【0080】
式(2)は、冷却水流とプロセス流とが向流方向に流れる状況で使用され得る。式(3)は、冷却水流とプロセス流とが並流方向に流れる状況で使用され得る。式(2)および(3)の両方において、TProcess,inは、温度センサ130によって測定される、熱交換器に入るプロセス水流の温度であり、TProcess,outは、温度センサ132によって測定される、熱交換器を出るプロセス流の温度であり、twater,inは、温度センサ126によって測定される、熱交換器に入る冷却水流の温度であり、twater,outは、温度センサ128によって測定される、熱交換器を出る冷却水流の温度である。
【0081】
コントローラ136は、システム10内のセンサからデータを受信し、熱交換器104の熱伝達効率を連続的にまたは周期的に決定することができる。例えば、コントローラ136は、熱交換器104の熱伝達効率を、少なくとも1時間に1回、少なくとも1分に1回、または少なくとも1秒に1回など、少なくとも1日に1回決定し得る。コントローラ136が熱交換器104の熱伝達効率を計算する頻度は、システム10内のセンサのサンプリングレート、コントローラ136の処理能力、および/または熱伝達効率が計算されるべき頻度を選択するオペレータ入力に応じて変化し得る。
【0082】
実際には、それは、熱交換器104が熱交換器の供用間隔中に高いままである(例えば、実質的に一定である)高い熱伝達効率を示す場合、望ましい。しかしながら、実際には、熱交換器104の熱伝達効率は、熱交換器のプロセス流側および/または熱交換器の冷却水側に汚損が蓄積するにつれて、時間と共に低下し得る。熱交換器に汚損が蓄積する速度と、熱交換器の熱効率が変化する対応する速度とを監視することによって、熱効率の変化の検出に応答して、冷却水流への1つ以上の化学添加剤の添加を制御するようにポンプ106を制御することによって、冷却水側で介入措置をとることができる。
【0083】
いくつかの例では、コントローラ136は、ある期間にわたって熱交換器104の熱伝達効率傾向を確立する。熱伝達効率傾向が確立される期間は、熱交換器が最初に供用状態に留置されたとき(例えば、新しいか、または清浄化後)に開始し得る。これは、熱交換器104が汚損される可能性が最も低いときである。代替的に、熱伝達効率傾向が確立される期間は、熱交換器がある期間にわたって供用状態に留置されていた後に開始し得る。例えば、熱伝達効率傾向は、(例えば、ブローダウン後に)冷却水流への変更が行われたとき、および/または熱交換器104を通って流れるプロセス流への変更(例えば、温度、圧力、組成の変更)が行われたときに始まることがある。
【0084】
熱交換器104の熱伝達効率傾向を測定する期間がいつ開始するかに関係なく、コントローラ136は、熱伝達効率挙動の統計的に合理的な傾向を提供するのに有効な期間にわたって熱伝達効率を測定し得る。例えば、コントローラ136は、少なくとも5日、少なくとも10日、少なくとも20日、または少なくとも30日など、少なくとも1日にわたって、熱交換器104の熱伝達効率を測定し得る。いくつかの例では、コントローラ136は、5日〜100日、10日〜45日など、または5日から30日など、1日〜120日の範囲の期間にわたって、熱交換器104の熱伝達効率を測定する。いくつかの例では、コントローラ136は、5日〜50日の範囲の進行期間など、ある特定の先行日数にわたる移動平均として熱伝達効率を測定する。
【0085】
コントローラ136は、測定期間中に受信したセンサ情報に基づいて熱伝達効率値を生成することができる。コントローラ136はさらに、測定期間中に決定された熱伝達効率値について統計的傾向分析を実施して、熱交換器104の熱伝達効率の傾向を特定することができる。
【0086】
いくつかの例では、コントローラ136は、曲線を、グラフのy軸にプロットされた熱伝達効率値に適合することができ、対応する測定時間はグラフのx軸にプロットされる。一例では、曲線は、y=m*x+bの形式を有する一次元式であり、式中、yは、熱伝達効率であり、xは、時間であり、mは、曲線の勾配であり、bは、曲線の切片である。曲線の勾配「m」は、熱交換器104の熱伝達効率に対応する傾向として、コントローラ136に関連付けられたメモリに記憶され得る。他の例では、より高い次元の多項式曲線がデータに適合し得る。
【0087】
いくつかの例では、コントローラ136は、熱伝達効率を計算する前に、センサ126、128、130、および132から受信した温度データおよび/またはセンサ134から受信した流速データを処理する。例えば、コントローラ136は、統計的平滑化アルゴリズムを使用してデータを平滑化して、データからノイズおよび外れ値を除去することができる。次いで、コントローラ136は、平滑化された温度値を使用して熱伝達効率を決定することができる。代替的に、コントローラ136は、生データの熱伝達効率値を計算し、計算された熱伝達効率値に平滑化アルゴリズムを適用することができる。平滑化されたデータを使用して、後続の傾向分析および変更検出を実施することができる。
【0088】
コントローラ136は、システム10内のセンサから測定値を受信し続け、熱伝達効率傾向を確立した後、受信したセンサデータに基づいて熱伝達効率値を生成することができる。コントローラ136は、熱交換器104の熱伝達効率情報を、熱交換器について決定された熱伝達効率傾向と比較し、熱伝達効率傾向に変化があるかどうかを検出することができる。例えば、コントローラ136は、ある測定期間にわたって熱伝達効率傾向を決定し、その傾向を以前に確立された傾向と比較することができる。測定期間は、比較的短く(例えば、1日以下)ても、より長く(例えば、1週間以上など、1日以上)てもよい。コントローラ136が、熱交換器104から受信したデータに基づいて計算された熱伝達効率データに一次元式を適合させる用途では、コントローラは、測定期間中の熱伝達効率の勾配を決定することができる。コントローラ136は、測定期間中の熱交換器104の熱伝達効率傾向の勾配(比較期間)を、以前に確立された熱伝達効率傾向の勾配(ベースライン期間)と比較することができる。
【0089】
傾向の変化の相対的な比較と定量化のために、様々な異なるインジケータを使用して、熱伝達効率データのデータセットをベースライン期間と比較期間とに分割することができる。いくつかの例では、熱伝達効率データは、システム10の動作に影響を与える事象に基づいて、事象前のベースライン期間と事象後の比較期間とに分けられる。事象の例としては、プラントのシャットダウンおよびスタートアップ(例えば、ターンアラウンド)、冷却水が接触する一群の器具の変更(例えば、ポンプ、熱交換器)、冷却塔の水および/もしくは関連する化学物質送給物における水化学物質の不調(例えば、20%超、50%超、または100%超など、10%超の水中の化学種の濃度の変化)、動作温度の変化、プロセス流の組成もしくは条件の変化、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。事象前の熱伝達効率傾向データはベースライン期間を形成し得、事象後の熱伝達効率傾向データは比較期間を形成し得る。コントローラ136には、ユーザインターフェースを介したユーザ入力または事象の発生を示すコントローラによって受信された他の監視データを介して、事象を通知することができる。
【0090】
別の例として、コントローラ136は、ベースラインとして熱伝達効率傾向データの移動平均(例えば、10日〜3か月の範囲の期間を有する)を確立し、後の熱伝達効率傾向データを移動平均と比較して比較を提供することができる。さらに別の例として、コントローラ136は、持続時間に基づいて、監視された熱伝達効率データを2つの期間(例えば、ベースライン期間および比較期間)に分割し、2つの期間を互いに比較することができる。例えば、コントローラ136は、監視された熱伝達効率データを、ベースライン持続時間にわたって生成されたベースライン期間と、比較持続時間にわたって生成された比較期間とに分割することができる。ベースライン持続時間と比較持続時間は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。いくつかの例では、ベースライン持続時間と比較持続時間は各々、2週間の監視された熱伝達効率傾向データ〜4か月の監視された熱伝達効率傾向データ、または1か月の監視された熱伝達効率傾向データ〜3か月の監視された熱伝達効率傾向データなど、1週間の監視された熱伝達効率傾向データ〜6か月の監視された熱伝達効率傾向データの長さに及ぶ。
【0091】
熱伝達効率に対応するデータをベースライン期間と比較期間とに分割するためにコントローラ136が使用する技術に関係なく、いくつかの用途では、コントローラ136は、2つの期間にわたる熱伝達効率の変化を互いに比較する。例えば、コントローラ136は、各期間の適合された傾向線の勾配を比較することにより、ベースライン期間と比較期間とにわたる熱伝達効率のパーセントの変化を決定することができる。
【0092】
ベースライン期間の持続時間または長さが比較期間と異なり得るため、コントローラ136は、各期間にわたって計算された熱伝達効率の変化を標準化された持続時間に正規化し得る。例えば、コントローラ136は、計算された変化を年間換算された(12か月)期間または他の持続時間の期間に調整(例えば、線形外挿)することができる。例示として、ベースライン期間の持続時間が3か月である場合、コントローラ136は、ベースライン期間の計算された熱伝達効率の変化に4を掛けて、変化を12か月ごとに年換算することができる。
【0093】
コントローラ136は、ベースライン期間からの熱伝達効率傾向を比較期間の熱伝達効率傾向と比較することができる。コントローラ136は、ベースライン期間にわたる熱伝達効率の時間調整された(例えば、年換算された)変化を、比較期間にわたる熱伝達効率の時間調整された変化と比較することにより比較を実施することができる。異なる例では、コントローラ136は、(例えば、ベースライン期間にわたる熱伝達効率の時間調整された変化を、比較期間にわたる熱伝達効率の時間調整された変化から差し引くことにより)2つの値の差、2つの値の比率、または2つの値の比較を表す他のパラメータを計算することができる。
【0094】
コントローラ136は、測定期間中の熱伝達効率傾向が、以前に確立された熱伝達効率傾向と閾値量を超えて異なるかどうかを決定することができる。閾値量は、以前に確立された熱伝達効率値の5%以上、以前に確立された熱伝達効率値の10%以上、以前に確立された熱伝達効率値の25%以上、または以前に確立された熱伝達効率値の50%以上など、以前に確立された熱伝達効率値(例えば、勾配)の1%以上であり得る。例えば、閾値量は、2パーセント〜25パーセント、または5パーセント〜20パーセントなど、以前に確立された熱伝達効率値の1パーセント〜50パーセントの範囲であり得る。
【0095】
コントローラ36が2つの期間にわたる熱伝達効率の比較、例えば、ベースライン期間にわたる熱伝達効率の時間調整された変化と比較期間にわたる熱調整効率の時間調整された変化との差、を表すパラメータを決定する場合、閾値は、パーセンテージではなく、1つ以上の個別の値であってもよい。パラメータが年換算されたU値の差である場合(例えば、比較期間にわたる年換算されたU値の変化から、ベースライン期間にわたる年換算されたU値の変化を引いた場合)、閾値の値は、1年あたり−10以下のBTU/hr/ft2/degF、1年あたり−25以下のBTU/hr/ft2/degFなど、1年あたりゼロ以下のBTU/hr/ft2/degFであり得る。
【0096】
熱伝達効率傾向が以前に確立された熱伝達効率傾向から負側に逸脱している場合、測定期間中の熱交換器が以前の動作中よりも早く汚損していることを示し得る。処理せずに放置すると、より急速な汚損により熱交換器104の動作効率が低減することがあり、次の予定された清浄化の前に交換器を清浄化するために、費用がかかり計画外のシャットダウンが必要になる可能性がある。例えば、2つの監視された期間の間の比較に対応するパラメータが閾値以下であると決定されると、コントローラ136は、問題のある冷却水汚損が発生している可能性が高いと決定し得る。対照的に、パラメータが閾値を超えると決定された場合、コントローラ136は、問題のある冷却水汚損が発生していない可能性が高いと決定し得る。
【0097】
熱伝達効率傾向の検出された変化への応答を助けるために、コントローラ136は、熱伝達効率傾向の変化の予測原因を決定し、予測原因に基づいて冷却水システムを制御することができる。コントローラ136は、熱交換器140の冷却水側の異なる潜在的な汚損原因に対応して受信したデータに基づいて、熱伝達効率傾向の変化の予測原因を決定することができる。例えば、コントローラ136は、潜在的なスケール汚損の根本原因、潜在的な腐食汚損の根本原因、および生物汚損の根本原因に対応するデータに対応するデータを受信することができる。受信した異なるデータから、コントローラ136は、受信したデータに基づいて評価されている異なる原因から予測汚損原因または最も可能性の高い汚損原因を決定することができる。次いで、コントローラ136は、予測汚損原因に基づいて冷却水システム10を制御することができる。
【0098】
いくつかの例では、コントローラ136は、評価される異なるタイプの汚損のメカニズムに対応する受信された各データパラメータに重み付け因子を適用して、誘導汚損原因または予測汚損原因を決定する。各重み付け因子は、冷却水側の汚損問題の根底にある根本原因を決定する際に特定のデータパラメータが有する予測強度および証明値に対応し得る。特定の重み付け因子は、特定のパラメータを特定の汚損のメカニズムに関連させる経験的データの因果分析に基づいて決定され得る。監視および制御されている特定の冷却水プロセスに関連する用途固有の因子に基づいて、重み付け因子をさらに上向きまたは下向きに調整することができる。コントローラ136が特定の各データパラメータに使用される重み付け因子を決定し得るか、または重み付け因子がコントローラ136に関連付けられたメモリにプログラムされ、熱伝達効率傾向の検出された変化に関連付けられた汚損の予測原因を決定するためにコントローラによって使用され得る。
【0099】
コントローラ136によって適用される特定の重み付け因子は用途に基づいて変化し得るが、表1、2、および3は、異なるタイプの汚損のメカニズムに関連付けられ得る異なるパラメータに適用され得る例示的な重み付け因子の範囲を提供する。表では、ベースラインのパーセンテージとは、低い汚損率(例えば、ベースライン)の動作条件の持続時間の間に測定されたパラメータと比較して、熱伝達効率の変化(例えば、汚損率の増加)を検出した後に測定されたパラメータを指す。同様に、KPI(主要性能インジケータ)のパーセンテージとは、標的システム(例えば、ベースライン)の動作条件に関するパラメータの標的値と比較して、熱伝達効率の変化(例えば、汚損された状態)を検出した後に測定されたパラメータの値を指す。さらに、上記の表に列挙された汚損パラメータは例であり、本開示はこの点で限定されないことを理解されたい。
【表2】
【表3】
【表4】
【0100】
コントローラ136は、重み付け因子を、それぞれのデータパラメータに対応する重み付け因子を掛けることによって適用することができる。特定のパラメータに利用可能なデータポイントの数に応じて、コントローラ136は、パラメータの多数の測定値を平均化し、パラメータの平均化された値に重み付け因子を適用することができる。例えば、コントローラ136は、多数のデータポイントの平均、中央値、またはモードを決定して、パラメータの平均を提供し、次いで、平均化されたパラメータに重み付け因子を適用することができる。平均化される測定されたパラメータがとられる期間は、熱交換器104の熱伝達効率傾向の変化を検出すると開始し得る。熱伝達効率傾向の変化は、汚損条件の変化に対応する冷却水条件の変化の証拠となり得る。したがって、熱伝達効率傾向の変化を検出する前に行われた測定は、データが冷却水の変化した条件を反映し得ない場合には省略され得る。
【0101】
熱伝達効率傾向の検出された変化を引き起こしている可能性のある潜在的な汚損の予測原因を特定するために、コントローラ136は、潜在的な根本原因として評価される各汚損のメカニズムの集約汚損スコアを決定することができる。コントローラ136は、パラメータ汚損のメカニズムに関連付けられた重み付けされたパラメータを合計することにより、集約汚損スコアを決定することができる。例えば、コントローラ136は、スケール汚損を示す各重み付けされたデータパラメータを合計することにより、集約スケール汚損スコアを決定することができる。コントローラ136は、腐食汚損を示す各重み付けされたデータパラメータを合計することにより、集約腐食汚損スコアを決定することができる。さらに、コントローラ136は、生物汚損を示す各重み付けされたデータパラメータを合計することにより、集約生物汚損スコアを決定することができる。
【0102】
実際には、熱伝達効率の検出された変化の根本原因として評価される汚損の各タイプに関連付けられるデータパラメータの数は変化し得る。例えば、潜在的なスケール汚損原因に対応して測定されるパラメータの数は、潜在的な腐食汚損原因に対応して測定されるパラメータの数と異なる場合があり、これらの各々は、潜在的な生物汚損原因に対応して測定されるパラメータの数と同じであっても、異なってもよい。この不一致が存在する状況では、各タイプの汚損のメカニズムに対応する重み付けされたパラメータの合計は、パラメータの数に基づいて正規化され得る。例えば、コントローラ136は、各タイプの汚損のメカニズムに対応する重み付けされたパラメータの合計をパラメータの数で割ることができる。これにより、評価される各タイプの潜在的な汚損のメカニズムの集約汚損スコアが提供され、異なる汚損スコア間の相互比較を可能にするために正規化される。
【0103】
コントローラ136は、各タイプの潜在的な汚損のメカニズムの集約汚損スコアを互いに比較することによって、熱伝達効率傾向の検出された変化に帰属する汚損の予測原因を決定することができる。例えば、重み付け因子がどのようにスケーリングされるかに応じて、コントローラ136は、集約汚損スコアのうちの最も小さい(最小)または最も大きい(最大)スコアを特定することができる。次いで、コントローラ136は、熱伝達効率の検出された変化の予測原因として、特定された集約汚損スコアに関連付けられた汚損原因を確立することができる。次いで、コントローラ136は、予測原因に基づいて冷却水システムに導入されるもう1つの化学添加剤を制御することができる。
【0104】
いくつかの例では、コントローラ136は、異なる潜在的な汚損のメカニズムに対応する集約汚損スコアの各々を1つ以上の閾値の値と比較する。コントローラ136は、比較に基づいて、汚損の予測原因、または汚損が発生する可能性が低いことを決定することができる。コントローラ136が集約汚損スコアの各々と比較する特定の閾値の値(複数可)は、例えば、適用される重み付け因子の大きさに基づいて変化し得る。しかしながら、いくつかの用途では、コントローラ136は、集約汚損スコアの各々を、0.25の第1の閾値などの第1の閾値と比較する。この閾値の値は、使用される重み付け因子の大きさ、およびシステムを実装するユーザの汚損許容値に応じて変化し得る。使用される特定の値に関係なく、集約汚損スコアが第1の閾値を下回る場合、コントローラ136は、汚損スコアに関連付けられた汚損のメカニズムが汚損を引き起こす可能性が低く、措置が不要であることを示し得る。例えば、熱交換器が汚損に関係のない冷却水中のゆるい破片でブロックされている場合、集計汚損スコアを閾値と比較すると、熱伝達効率傾向の対応する変化がスケール、腐食、または微生物汚損によって引き起こされていないことが明らかになる場合がある。
【0105】
追加的または代替的に、コントローラ136は、集約汚損スコアの各々を第2の閾値と比較することができる。第2の閾値は、少なくとも2倍だけ第1の閾値と異なる場合がある。いくつかの例では、第2の閾値は、第1の閾値よりも大きい。例えば、第1の閾値が0.25である例では、第2の閾値は0.5であり得る。ただし、データに適用される特定の重み付け因子に応じて、異なる閾値の値を使用することもできる。集約汚損スコアが第2の閾値を上回る場合、コントローラ136は、汚損スコアに関連付けられた汚損のメカニズムが汚損を引き起こす可能性があり、是正措置が必要であることを示し得る。集約汚損スコアが2つの閾値の間にある場合、コントローラは、ユーザインターフェースに警告を発行し(例えば、措置をとるかとらないかにかかわらず)、潜在的な汚損の綿密な監視が必要であることを示す。
【0106】
コントローラ136は、予測汚損原因に対抗する措置をとることによって、予測汚損原因に基づいてシステム10を制御することができる。一例として、コントローラ136は、システム10を制御して、冷却塔102をブローダウンすることができる。別の例として、コントローラ136は、予測汚損原因に対抗するために選択された化学添加剤の添加を制御することによってシステム10を制御することができる。例えば、予測原因がスケール汚損である場合、コントローラ136は、スケール抑制剤および/またはpH制御剤の添加を制御して、システム内のスケール汚損の形成を抑制することができる。別の例として、予測原因が腐食汚損である場合、コントローラ136は、腐食抑制剤および/またはpH制御剤の添加を制御して、システム内の腐食汚損を抑制することができる。さらに別の例として、予測原因が生物汚損である場合、コントローラ136は、殺生物剤および/または生物分散剤の添加を制御して、システム内の生物汚損を抑制することができる。
【0107】
前述の是正措置は、コントローラ136によって実施されるものとして記載されているが、措置のうちのいくつかまたはすべてを実施するためにオペレータの介入が必要な場合とそうでない場合があることを理解されたい。例えば、実際には、コントローラ136は、予測汚損原因に対処するための制御命令および/または推奨される一連の措置を提供するコンピュータユーザインターフェース上でユーザアラート(例えば、ビジュアルテキストおよび/またはグラフィックス)を発行することができる。オペレータは、予測汚損原因に対抗する所望の措置を実装するために、手動でまたはプラント器具を制御するコントローラインターフェース(例えば、コンピュータ)を介してのいずれかで、プラント器具と相互作用することができる。
【0108】
冷却水に導入するのに利用可能な多数の異なる化学添加剤がある用途では、コントローラ136は、1つ以上の異なる化学添加剤を冷却水流に流体的に連結するバルブ(複数可)および/またはポンプ(複数可)を制御することによって、冷却水に導入されるべき異なる化学添加剤のうちの1つ以上を選択し得る。例えば、コントローラ136は、熱伝達効率傾向の検出された変化および予測汚損原因に基づいて、冷却水に導入される化学添加剤のタイプおよび/または化学添加剤が冷却水に導入される速度を変化させ得る。
【0109】
いくつかの例では、コントローラ136は、熱交換器104の熱伝達効率傾向が以前に確立された熱伝達効率傾向と比較して閾値量を超えて低下したことを示す変化を検出することに応答して、および予測汚損原因に基づいて、ポンプ106を起動するか、またはポンプ106の動作速度を増加させる。追加的または代替的に、コントローラ136は、変化を検出することに応答して、および(例えば、システムに導入される化学物質が予測汚損原因まで増加し得る場合に)予測汚損原因に基づいて、ポンプ106を停止するか、またはポンプ106の動作速度を低下させることができる。
【0110】
コントローラ136は、システム10内のセンサからデータを受信し続け、予測汚損原因に基づいて、(例えば、冷却水に導入される化学添加剤を調整して)システムを制御した後、熱交換器104の熱伝達効率を計算することができる。コントローラ136は、化学添加剤(複数可)に対して行われた変化(例えば、タイプおよび/または速度)に続いて、熱交換器104の熱伝達効率傾向を監視することができる。コントローラ136は、熱伝達効率が安定する(例えば、実質的に一定のままである)か、先に確立された傾向に向かって戻るか、または先に確立された傾向からさらに逸脱するかを決定することができる。熱伝達効率傾向が最初に検出された負の偏差に対応し得る対抗措置をとった後も一定のままであるか、または傾向がさらに低下する用途では、コントローラ136は、予測汚損原因が可能性の高い実際の原因ではないと決定することができる。例えば、コントローラ136は、対抗措置をとった後に熱伝達効率傾向を監視して、予測汚損原因に対処し、傾向が閾値量を超えて(例えば、プラスマイナス10%超など、プラスマイナス5%を超えて)変化したかどうかを決定することができる。プロセスの継続中に汚損が存在し続ける場合、傾向は負のままであるが、介入措置をとる前とは異なる(より浅い、またはより低い)勾配になる場合がある。
【0111】
かかる用途では、コントローラ136は、熱伝達効率傾向の検出された変化の代替的な予測原因を決定することができる。コントローラ136は、残りの潜在的な汚損のメカニズムに関連付けられた集約汚損スコア(例えば、予測汚損原因として既に特定された汚損のメカニズムの集計汚損スコアを除く)を比較することによって、汚損の代替的な予測原因を決定することができる。重み付け因子がどのようにスケーリングされるかに応じて、コントローラ136は、残りの集約汚損スコアのうちの最も小さい(最小)または最も大きい(最大)スコアを特定し、特定された集約汚損スコアに関連付けられた汚損原因を、熱伝達効率の検出された変化の代替的な予測原因として確立することができる。次いで、コントローラ136は、代替的な予測汚損原因に基づいて冷却水システムに導入されるもう1つの化学添加剤を制御することができる。
【0112】
コントローラ136は、代替的な予測汚損原因に対抗するためにとられた措置に応答して、熱伝達効率傾向を監視することができる。コントローラ136は、初めに検出された熱伝達効率傾向の変化の根本原因であると思われる予測汚損原因が特定されるまで、プロセスを繰り返すことができる。追加的または代替的に、コントローラ136は、熱伝達効率傾向の検出された変化が(例えば、スケール汚損、腐食汚損、または生物汚損によって引き起こされた)冷却水側の汚損に関連付けられていない可能性が高いことを示す出力(例えば、ユーザアラート)を発行することができる。例えば、熱伝達効率傾向の変化は、熱交換器104に入り、熱交換器を閉塞するバルク破片によって引き起こされ得る。別の代替案として、熱伝達効率傾向の検出された変化は、熱交換器104のプロセス側の汚損によって引き起こされ、冷却水側の汚損ではない場合がある。
【0113】
コントローラ136は、冷却水中の化学添加剤のタイプまたは濃度を変更するためにポンプ106を制御することに加えて、またはその代わりに、システム10内で様々な異なる制御措置を行うことができる。一例として、コントローラ136は、熱交換器の熱伝達効率傾向の変化を検出することに応答して、冷却水が熱交換器104を通って流れる速度を増加させることができる。例えば、コントローラ136が、熱交換器104の熱伝達効率の絶対等級の突然の変化および/または熱伝達効率傾向の著しい低下(例えば、急速な汚損を示す)を検出する場合、それは、シルト、破片、またはその他の物質により熱交換器が詰まっていることを示す場合がある。したがって、交換器を通過する冷却水の流速を増加させることは、熱交換器内に留まっている粒子状物質を洗い流すのを助ける場合がある。コントローラ136は、冷却塔102に関連付けられた汚水槽から熱交換器104に冷却水を供給するポンプ(例示せず)を制御して、熱交換器への冷却水の供給の流速を制御することができる。
【0114】
本開示による冷却水監視制御システムは、熱交換流体を使用して、熱交換器を介して1つ以上のプロセス流で熱エネルギーを伝達する任意のプロセスで実装され得る。熱交換器104の暖かい側を通って流れ得るプロセス流の例としては、有機系化学物質、原油、原油の誘導体(例えば、精製または部分精製原油生成物)、およびアンモニア製造プロセスの中間または最終生成物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、熱交換器は、熱交換器のプロセス側を通るポリマー製造プラントの有機モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーのフローに組み込まれ得る。別の例として、熱交換器は、再生可能源または再生不可能源から電気を生成する発電所に組み込まれ得る。熱交換器104の暖かい側を通って流れるプロセス流は、概して、液相であり得るが、蒸気相および/または気液多相流であり得る。例えば、熱交換器104は、熱交換器のプロセス流側のプロセス流がガスであるように、空気分離プラントに組み込まれ得る。
【0115】
図2は、図1に関して上で論じられるように、単一の熱交換器を含有する例示的な監視制御システムを例示しているが、例示的な用途は、直列および/または並列の多数の熱交換器を含み得る。コントローラ136は、センサからデータを受信し、接続された熱交換器の各々について熱伝達効率傾向を決定することができる。コントローラ136は、監視されている熱交換器のうちの少なくとも1つ、および任意選択で多数の熱伝達効率傾向の変化を検出し、検出された傾向に基づいて冷却水流への化学添加剤の添加を制御することができる。いくつかのかかる例では、コントローラ136は、予測汚損原因を決定し、多数の熱交換器の熱伝達効率傾向の変化(例えば、閾値量を超える)を検出すると、予測汚損原因に基づいて冷却水システム10を制御し得る。この場合、多数の熱交換器の変更された熱伝達効率傾向の検出は、1つの特定の熱交換器から誤ったセンサデータを受信するのではなく、汚損条件が実際に変化していることを示すことができる。
【0116】
図3は、アンモニア製造プロセスの一例を例示するフロー図である。例示される例に示されるように、例示的なプロセスは、内部を通って冷却水が運搬され得る多数の冷却熱交換器を含む。これらの例示的な熱交換器のうちの1つ以上(例えば、すべて)は、本明細書に記載される技術およびシステム、ならびに熱交換器効率傾向に基づいて制御される冷却水流への化学添加剤を使用して監視され得る。
【0117】
本開示に記載される技術は、少なくとも部分的にハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組み合わせで実装されてもよい。例えば、記載される技術の様々な態様は、1つ以上のマイクロプロセッサを含む1つ以上のプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の他の同等の集積もしくは個別論理回路、ならびにそのような構成要素の任意の組み合わせ内で実装されてもよい。「プロセッサ」という用語は、概して、上記の論理回路のうちのいずれかを単独で、もしくは他の論理回路と組み合わせて、または任意の他の同等の回路を指し得る。ハードウェアを備える制御ユニットもまた、本開示の技術のうちの1つ以上を実施し得る。
【0118】
そのようなハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアは、本開示に記載される様々な動作および機能を支持するために、同じデバイス内または別々のデバイス内で実装されてもよい。加えて、記載されるユニット、モジュール、または構成要素のいずれも、一緒に、または別個であるが相互運用可能な論理デバイスとして別々に実装されてもよい。モジュールまたはユニットとして異なる特徴を描写することは、異なる機能的態様を強調することを意図し、そのようなモジュールまたはユニットが別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを必ずしも暗示するわけではない。むしろ、1つ以上のモジュールまたはユニットと関連する機能は、別個のハードウェアもしくはソフトウェア構成要素によって実施されてもよく、または共通もしくは別個のハードウェアもしくはソフトウェア構成要素内に統合されてもよい。
【0119】
本開示に記載される技術はまた、命令を含有する非一時的コンピュータ可読媒体などのコンピュータ可読媒体で具現化されても、コード化されてもよい。コンピュータ可読記憶媒体内に埋め込まれた、またはコード化された命令は、プログラム可能なプロセッサまたは他のプロセッサに、例えば、命令が実行されるときに方法を実施させてもよい。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電子的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD−ROM、フロッピーディスク、カセット、磁気媒体、光媒体、または他のコンピュータ可読媒体を含む、揮発性および/または不揮発性メモリの形態を含んでもよい。
【0120】
以下の実施例は、本開示による冷却水監視制御システムおよび技術に関する追加の詳細を提供し得る。
【実施例】
【0121】
実施例1−アンモニアプラント
アンモニアプラントの熱交換器に温度センサを設置して、熱交換器へのフロー流の入口および出口の温度、ならびに熱交換器の入口を通る冷却水の流速を測定した。熱交換器は、合成ガスを熱交換器の暖かい側またはプロセス側に通過させ、冷却水を熱交換器の冷たい側に通して流した合成ガス冷却器であった。熱交換器は、向流のシェルアンドチューブ式熱交換器であった。合成ガスを、約99,000lb/hrの標的流速で熱交換器のシェル側に供給し、冷却水を、約1,000,000lb/hrの標的流速で供給した。
【0122】
冷却水を、約80,000ガロン/分の再循環率を有する冷却塔から供給した。冷却塔は、約500,000ガロンの容量を有し、華氏12度の温度差を示した。冷却水は、Clとして0.5ppmのFRCを示した。冷却水を最初に、35ppmの濃度で提供された腐食抑制剤(Nalco(登録商標)3DT129)、75ppmの濃度で提供されたスケール抑制剤(Nalco(登録商標)3DT191)、および10ppmの濃度で提供された黄色の金属抑制剤(Nalco(登録商標)3DT199)の3つの化学添加剤の組み合わせで制御した。
【0123】
4つの温度センサ、および超音波フローセンサからのデータを、有線接続によって第三者のデータロガーに通信した。データロガーは、この生データをクラウドサーバに無線で伝送した。クラウドサーバから、スプレッドシートソフトウェアを使用して、パーソナルコンピュータでデータにアクセスして分析した。
【0124】
熱交換器からの温度データを、0.1のスパンの局所回帰を使用して平滑化した。図4は、冷却水入口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ200を、平滑化されたデータ202と共に重ねて示している。図5は、冷却水出口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ204を、平滑化されたデータ206と共に重ねて示している。図6は、プロセス流入口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ208を、平滑化されたデータ210と共に重ねて示している。図7は、プロセス流出口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ212を、平滑化されたデータ214と共に重ねて示している。図8は、例示的な期間にわたる冷却水の流速(毎分ガロン)を示すグラフである。
【0125】
熱伝達効率の値および傾向を、熱交換器上に設置された温度センサから生成された平滑化された温度データを使用して計算した。熱伝達効率傾向を使用して、冷却水に導入された化学添加剤を含む冷却水システムを制御した。図9は、例示的な期間にわたる平滑化された温度データを使用して計算された熱伝達係数を示すグラフである。これらのデータの鋭角な谷部は、水の流速が低下したときに対応する。
【0126】
図10は、日付の例示的な範囲にわたる受信した温度および流速データに基づいて熱交換器について計算された熱伝達係数を示す。図11は、同じ日付の例示的な範囲にわたる冷却水流の酸化還元電位(ORP)を示し、これは、冷却水中の殺生物性化学添加剤の濃度を示す。図10および11のデータは、実験的な分析の5つの期間に区分されている。第1の期間では、熱伝達効率傾向を確立するデータを確立した。データは、熱伝達効率の下向き傾向を示した。第2の期間では、冷却水の流速が増加し、その結果、流速の変化に比例して熱交換器の熱伝達係数が増加した。第3の期間では、熱伝達効率の傾向を監視し、低下することを観察した。
【0127】
熱伝達係数の変化する傾向は、特に第3の期間の終わりに向かって、汚損条件の加速を示した。したがって、介入措置を開始した。冷却水を評価し、微生物の生物汚損が汚損の原因として示唆された。フェーズ4では、殺生物剤の投与量を冷却水に対して増加させ、その結果、熱伝達係数の増加をもたらした。この熱伝達の改善が、熱伝達係数または一部のその他の因子の変化する傾向を検出すると開始される殺生物剤の投与量の増加に応答したかどうかを理解するために、殺生物剤の投与量をフェーズ5で低下させた。データは、熱伝達係数が再び低下したことを示している。
実施例2−ビニルプラント
【0128】
ビニルプラントの熱交換器に温度センサを設置して、熱交換器へのフロー流の入口および出口の温度、ならびに熱交換器の入口を通る冷却水の流速を測定した。熱交換器は、プロピレン流を熱交換器の暖かい側またはプロセス側に通過させ、冷却水を熱交換器の冷たい側に通して流した。熱交換器は、向流のシェルアンドチューブ式熱交換器であった。プロピレンを、約270,000lb/hrの標的流速で熱交換器のシェル側に供給し、冷却水を最初に約4,600,000lb/hrの標的流速で供給した。
【0129】
冷却水を、約85,000ガロン/分の再循環率を有する冷却塔から供給した。冷却塔は、約1,000,000ガロンの容量を有し、華氏10度の温度差を示した。冷却水は、Clとして0.5ppmのFRCを示した。冷却水を最初に、37ppmの濃度で提供された腐食抑制剤(Nalco(登録商標)3DT177)、28ppmの濃度で提供されたスケール抑制剤(Nalco(登録商標)3DT390)、および10ppmの濃度で提供された黄色の金属抑制剤(Nalco(登録商標)3DT197)の3つの化学添加剤の組み合わせで制御した。
【0130】
4つの温度センサ、および超音波フローセンサからのデータを、有線接続によって第三者のデータロガーに通信した。データロガーは、この生データをクラウドサーバに無線で伝送した。クラウドサーバから、スプレッドシートソフトウェアを使用して、パーソナルコンピュータでデータにアクセスして分析した。
【0131】
熱交換器からの温度データを、0.05のスパンの局所回帰を使用して平滑化した。図12は、冷却水入口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ220を、平滑化されたデータ222と共に重ねて示している。図13は、冷却水出口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ224を、平滑化されたデータ226と共に重ねて示している。図14は、プロセス流入口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ228を、平滑化されたデータ230と共に重ねて示している。図15は、プロセス流出口温度(華氏度)対時間のグラフであり、生の測定データ232を、平滑化されたデータ234と共に重ねて示している。図16は、例示的な期間にわたる冷却水の流速(毎分ガロン)を示すグラフである。水の流速の段階的な変化を、水の流れの意図的な低下によって引き起こした。
【0132】
熱伝達効率の値および傾向を、熱交換器上に設置された温度センサから生成された平滑化された温度データを使用して計算した。熱伝達効率傾向を使用して、冷却水に導入された化学添加剤を含む冷却水システムを制御した。図17は、例示的な期間にわたる平滑化された温度データを使用して計算された熱伝達係数を示すグラフである。
【0133】
この実施例では、監視期間中に冷却水の流速を元の設計値まで再度低減させるための動作上の変更が行われたという事実にもかかわらず、測定期間中の熱伝達係数傾向は実質的に平坦であった。この実施例では、分析で使用されるベースライン期間は、水の流速の動作上の変更の前の期間として定義し、分析で使用される比較期間は、動作上の変更の後の期間として定義した。この実施例の熱伝達傾向データは、ベースライン期間と比較との間で大きな変化を示さなかった。これは、動作の変更を行うためにオペレータが被る余分な水と関連する電気ポンプのコストが正当化されない可能性が高く、オペレータがベースライン動作条件に再度戻る可能性があることを示唆している。
実施例3−アンモニアプラント動作の拡張監視
【0134】
本開示の原理に従う拡張監視および実験的試験は、5か月の実験期間にわたって、実施例1に記載されるアンモニアプラントで実施した。熱交換器からの温度データを、局所回帰を使用して平滑化した。熱伝達効率の値および傾向を、熱交換器上に設置された温度センサから生成された平滑化された温度データを使用して計算した。図18は、例示的な期間にわたる平滑化された温度データを使用して計算された熱伝達係数を示すグラフである。
【0135】
図18に示される監視された熱伝達傾向データは、汚損問題を示し得る閾値以上の熱伝達効率傾向の変化を検出するためにエクセルを使用して分析した。熱伝達係数データを、互いに対する比較分析のために2つの期間に分割し、変化の検出を可能にした。この実施例では、第1の期間は2月1日〜4月15日に及び、第2の期間は4月16日〜6月30日に及んだ。図18では、第1の期間のデータを三角形の記号で表し、第2の期間のデータを正方形の記号で表す。2つの期間の間の分割時間は、実施例の目的のためにデータの目視検査に基づいて決定した。他の用途では、監視されたデータは、外部事象の発生、新しいデータと移動平均との比較、または本明細書に記載される原理と一致する他の比較技術に基づいて分割され得る。
【0136】
本実施例では、2つの期間の熱伝達係数傾向は、勾配と切片とを有する一次元曲線を各熱伝達係数傾向に適合することによって特徴付けた。監視期間にわたる熱伝達係数の勾配の年換算された変化率もまた、各期間の年換算された熱伝達係数傾向線の勾配を比較することによって計算した。次いで、年換算された熱伝達係数傾向の変化率を、年換算された比較期間(第2の期間)から、年換算されたベンチマーク期間(第1の期間)を差し引くことによって計算した。この例のデータを次の表に示す。
【表5】
【0137】
年換算されたベンチマーク期間(第1の期間)と年換算された比較期間(第2の期間)との比較は、例えば、汚損の蓄積を示し得る、熱交換の熱伝達効率が悪化していることを示す負であった。この特定の実施例では、差は年換算された基準で−73%であった。これは、予想される動作条件を考慮すると、熱伝達効率の著しい悪化を示した。監視される熱伝達効率の変化率を比較することができる特定の用途に対して、異なる閾値を確立して、汚損原因のさらなる分析が保証されているかどうかを判断することができる。
【0138】
熱伝達傾向の変化の大きさを考慮して、熱交換器の予測汚損のメカニズムを決定するために、対象となる期間の冷却水のスケール汚損、腐食汚損、および生物汚損を示すデータを取得し、分析した。データを、オンラインセンサ、オフラインセンサ、および湿潤化学試験の組み合わせを使用して取得し、結果を、予測汚損分析を実施する算定プログラムによってアクセス可能なコンピュータ可読媒体に記憶させた。監視されるパラメータの個々の読み取り値をベンチマーク期間(第1の期間)にわたって平均化し、比較期間(第2の期間)にわたって個別に平均化し、比較期間とベンチマーク期間との間の変化率を決定した。この特定の実施例では、次の表の例示的なパラメータを対象となる期間にわたって監視した。
【表6】
【0139】
上記で再生成した実施例のデータから、スケール汚損を示すパラメータを使用して集約スケール汚損スコアを計算し、腐食汚損を示すパラメータを使用して集約腐食汚損スコアを計算し、生物汚損を示すパラメータを使用して集約生物汚損スコアを計算した。スコアは、比較期間とベンチマーク期間との間の対象となるパラメータごとに上記の表に従って決定された各変化率に重み付け因子を適用することによって計算した。次いで、各潜在的な汚損のメカニズムの集約スコアを、その潜在的な汚損のメカニズムに関連付けられていると指定されたすべての重み付けされたパラメータを平均化することによって計算した。分析の結果を次の表に示す。
【表7】
【0140】
上記に見られるように、0.77の集約生物汚損スコアが決定された。これは、それぞれ0.04および0.20のスケール汚損スコアおよび腐食汚損スコアよりも有意に大きかった。図19は、異なる潜在的な汚損のメカニズムの集約汚損スコアを示す棒グラフである。データは、熱交換器の熱伝達傾向の検出された変化に関連付けられた予測汚損のメカニズムが生物汚損であることを示している。したがって、冷却水への1つ以上の化学物質の添加を制御して、初期の生物汚損を低減または排除することを含む、生物汚損を軽減するための補正措置を講じることができる。
【0141】
この実施例の上に概説される予測原因および処理分析の結果は、アンモニアプラントのドメイン知識と冷却塔へのアンモニア漏洩に関する既知の課題とに基づく仮説と一致した。このアンモニア源は、水中で成長するバイオフィルムおよび微生物システムの窒素源を作り出す。ベースラインの場合、(U値が増加傾向にある期間中)約424mVの高いORP値を有し、比較の場合、約397mVのより低い値を有した。データは、いくつかの動作事例では、生物汚損が問題であると決定し、対応する是正措置をとるために、0.5以上の集約生物汚損スコアが適切な閾値になり得ることを示唆している。
【0142】
この実験例は、実際のシステムのORP設定点を定量化するのにも有用であった。これは通常、試行錯誤的プロセスである。熱伝達係数の本分析により、約425mVのORPが微生物の成長を抑制するためのより良い設定点であることを実証することができた(特定の実験システムの場合)。同時に、ベースラインの場合と比較の場合とで腐食スコアに大きな差は見られず、425mVのORP設定点は腐食ストレスを引き起こさないという仮説を裏付けた。しかしながら、ORPがベースラインの場合と比較の場合とで424mV〜397mVに下がると、腐食ストレスが増加するように見えることに留意することは非常に興味深い。これは、微生物による腐食を示唆している可能性がある。これは、MICが因子ではない場合、ORPの減少は、概して、腐食速度の低下を意味するため、直観に反する。

実施例4−ビニルプラント動作の拡張監視
【0143】
本開示の原理に従う拡張監視および実験的試験を、4か月の実験期間にわたって、実施例2に記載されるビニルプラントでも実施した。熱交換器からの温度データを、局所回帰を使用して平滑化した。熱伝達効率の値および傾向を、熱交換器上に設置された温度センサから生成された平滑化された温度データを使用して計算した。図20は、例示的な期間にわたる平滑化された温度データを使用して計算された熱伝達係数を示すグラフである。
【0144】
図20に示される監視された熱伝達傾向データは、汚損の問題点を示し得る閾値以上の熱伝達効率傾向の変化を検出するためにエクセルを使用して分析した。変化の検出のために、熱伝達係数データを、互いに対する比較分析のために2つの期間に分割した。この実施例では、第1の期間は11月16日〜1月16日に及び、第2の期間は1月17日〜3月16日に及んだ。図20では、第1の期間のデータを三角形の記号で表し、第2の期間のデータを正方形の記号で表す。
【0145】
2つの期間の熱伝達係数傾向は、勾配と切片とを有する一次元曲線を各熱伝達係数傾向に適合することによって特徴付けた。監視期間にわたる熱伝達係数の変化率もまた、各期間の監視された傾向の開始時の熱伝達係数を、監視された傾向の終了時の熱伝達係数と比較することによって計算した。続いて、各期間の変化率を、例えば、実際の期間が異なる持続時間のものであっても、2つの期間が互いに、標準化された基準で比較されるように、監視される期間から、年換算された(12か月)基準まで拡張した。次いで、熱伝達係数傾向の変化率を、年換算された比較期間(第2の期間)から、年換算されたベンチマーク期間(第1の期間)を差し引くことによって計算した。この例のデータを次の表に示す。
【表8】
【0146】
年換算されたベースライン期間(第1の期間)と年換算された比較期間(第2の期間)との比較は、熱交換の熱伝達効率が上向き(望ましい方向)の傾向であることを示す、正であった。この場合では、ベースライン期間と比較期間とを、破片汚損を発見した交換器の保守事象(例えば、交換器の清浄化)で分離した。したがって、本明細書に記載される技術を使用して、破片汚損を他のタイプの汚損、特にスケール汚損、腐食汚損、および微生物汚損と区別することができるかどうかを決定した。
【0147】
傾向の日付に基づいてこの仮説を探求するために、対象となる期間の冷却水のスケール汚損、腐食汚損、および生物汚損を示すデータを取得し、分析した。データを、オンラインセンサ、オフラインセンサ、および湿潤化学試験の組み合わせを使用して取得し、結果を、予測汚損分析を実施する算定プログラムによってアクセス可能なコンピュータ可読媒体に記憶させた。監視されるパラメータの個々の読み取り値をベンチマーク期間(第1の期間)にわたって平均化し、比較期間(第2の期間)にわたって個別に平均化し、比較期間とベンチマーク期間との間の変化率を決定した。この特定の実施例では、次の表の例示的なパラメータを対象となる期間にわたって監視した。
【表9】
【0148】
上記で再生成した実施例のデータから、スケール汚損を示すパラメータを使用して集約スケール汚損スコアを計算し、腐食汚損を示すパラメータを使用して集約腐食汚損スコアを計算し、生物汚損を示すパラメータを使用して集約生物汚損スコアを計算した。スコアは、比較期間とベンチマーク期間との間の対象となるパラメータごとに上記の表に従って決定された各変化率に重み付け因子を適用することによって計算した。次いで、各潜在的な汚損のメカニズムの集約スコアを、その潜在的な汚損のメカニズムに関連付けられていると指定されたすべての重み付けされたパラメータを平均化することによって計算した。分析の結果を次の表に示す。
【表10】
【0149】
上記に見られるように、集約生物汚損、スケール汚損、および腐食汚損のスコアはそれぞれ0.14、−0.12、および−0.09と決定した。図21は、異なる潜在的な汚損のメカニズムの集約汚損スコアを示す棒グラフである。概して、この実施例の特定の集約汚損スコアの値(負の値を含む)が低いほど、対応する汚損のメカニズムが評価対象のシステムで汚損を引き起こしている可能性は低くなる。この特定の実施例では汚損スコアがすべて0.25未満であるため、本データは、この熱交換器では、スケール汚損も、腐食汚損も、微生物汚損も有効な汚損のメカニズムではないという仮説を裏付けている。
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【国際調査報告】