(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
鋼材内の1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性を識別するために少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料及び/又は少なくとも1つの非ヒステリシス材料を含む鋼材を検査する非破壊評価方法を利用する方法は、ヒステリシス強磁性材料及び/又は非ヒステリシス材料を入力時変磁場により調査する工程と;鋼材を走査しヒステリシス強磁性材料及び/又は非ヒステリシス材料からの経時的な磁気応答及び/又は音響応答を検出する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性と鋼材内の1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性とを相関付ける工程と、を含み得る。
鋼材内の1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性を識別するために少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料及び/又は少なくとも1つの非ヒステリシス材料を含む鋼材を検査する非破壊評価方法を利用する方法であって、前記方法は、
前記ヒステリシス強磁性材料及び/又は前記非ヒステリシス材料を入力時変磁場により調査する工程と;
前記鋼材を走査し前記ヒステリシス強磁性材料及び/又は前記非ヒステリシス材料からの経時的な磁気応答及び/又は音響応答を検出する工程と;
前記受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と;
前記受信された磁気応答及び/又は音響応答の前記時間依存非線形特性を鋼材内の前記1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性とを相関付ける工程と、
を含み、
鋼材内の前記1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性は、前記鋼材の硬度、前記鋼材のグレード又はタイプ、前記鋼材内の材料相の存在、前記鋼材内のハードスポットの存在、前記鋼材内の金属損失又は亀裂の存在、前記鋼材内の欠陥の存在、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む、方法。
前記鋼部品は、鋼鈑、ボルト、鍛造品、鋳造品、パイプ、ライザー、表面、溶接部、溶接ルート、溶接キャップ及び継手からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するためのコンピュータ制御自動移動プラットフォームと、様々な空間位置における前記磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するための手動制御並進及び回転プラットフォームと、様々な空間位置における磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
少なくとも1つの磁気送信機と、磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つと、1つの任意選択的直流磁石とを含む携帯デバイスを提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
調査及び走査する前記工程は、前記調査用時変磁場を出力するように構成された少なくとも1つの磁気送信機と前記磁気応答及び/又は音響応答を受信するように構成された少なくとも1つの磁気センサ及び/又は音響センサとを含むデバイスにより行われる、請求項1に記載の方法。
前記時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データを生成するために前記受信された磁気応答及び/又は音響応答のパワースペクトル密度解析を含む周波数領域解析を行う工程を含む、請求項1に記載の方法。
前記1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程は前記スペクトル密度データの奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む、請求項16に記載の方法。
前記1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程は前記スペクトル密度データの偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む、請求項16に記載の方法。
前記時間依存非線形特性を相関付ける工程は、第2高調波と、前記材料の磁化状態及び前記材料の既存残留磁化を含む追加材料情報とを比較し相関付ける工程を含む、請求項21に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲内のすべての数値は、「約」又は「ほぼ」指示値により修飾され、当業者により予想されるであろう実験誤差及び変動を考慮する。本発明は、少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料からなる試料の非線形磁気応答を検出する方法及び装置を使用する非破壊材料検査システムを使用する方法に関する。磁性材料の線形応答関数は次式により与えられる。
B(x)=μ
0(H(x)+M(x))=F(H(x))
ここで、H(x)は、空中の位置(x)と共に変化し得る印加された磁場強度(アンペア/メートルの単位)であり、M(x)は材料の当初磁化状態だけでなく位置(x)にも依存する磁化(アンペア/メートルの単位)であり、μ
0は透磁率定数(ヘンリー/メートルの単位)であり、B(x)は空中の位置(x)と共に変化し得る磁束密度(テスラの単位)であり、F(H(x))はH(x)に線型に依存する関数である。以降、B(x)、H(x)、M(x)、F(H(x))はそれぞれB、H、M、F(H)と呼ばれる及び/又は対応パラメータが時間と共に変化すればB(t)、H(t)、M(t)、F(H(t))と呼ばれる。この線形従属性は静磁場において見られるタイプの応答である。漏洩磁束(MFL)及び電磁超音波トランスデューサ(EMAT)ツールなどの現在の検査ツールは、Hに主として線型に依存する関数に応答するように構成される。強磁性材料に関しこの依存性は複雑となり得るということに注意すべきである。印加磁場が時変である場合、線形演算子はもはや印加磁場と磁化との間の関係を記述しない。印加時変磁場H(t)による強磁性材料中の磁束密度B(t)は、一連の非線形関数の時間積分と共に線形演算子により近似され得る:
【数1】
【0022】
関数F
2は二次非線形応答を生じ、関数F
3は三次非線形応答を生じ、関数F
nはn次非線形応答を生じる。時間積分:
【数2】
は、磁束密度B(t)が関数F
n(H
n(t))の履歴に依存するということを表す。
【0023】
本発明は、材料状態を特徴付けるとともに材料内の不均質性を特徴付けるより良いやり方を提供するためにこれらの非線形応答を利用する。材料内の材料状態及び不均質性の例は、限定しないが以下のものを含む:溶接部の硬度、パイプ又は類似構造を製造するために使用される材料又はパイプ又は類似構造内に使用される材料の硬度、パイプ又は類似構造を製造するために使用される材料又はパイプ又は類似構造内に使用される材料のグレード、溶接のタイプ、材料の硬度、材料内の材料相の存在(例えば炭素鋼内のマルテンサイト又はベイナイト、ヒステリシス強磁性材料中の非ヒステリシス材料相、及び非ヒステリシス材料内のヒステリシス磁性材料相などの硬質鋼相の存在)、材料内のハードスポットの存在、材料内の金属損失又は亀裂の存在(例えば応力腐食亀裂)、材料内の欠陥の存在、及びそれらの組み合わせ。印加磁場H(t)が正弦波であり、周波数ωと共に正弦波的に変化すれば、二次応答は2ωとして変化し、三次応答は3ωとして変化し、n次応答はnωとして変化する。印加磁場が任意時間依存性を有すれば、非線形応答は、磁化及び磁束密度(式1中のB(t))から発生し得る信号の時間依存性の解析から抽出され得る。いくつかのケースでは、これは、磁化及び磁束密度(式1中のB(t))に起因する信号の時間依存性のフーリエ解析により行われ得る。いくつかの例では、非線形応答は、磁化及び磁束密度(式1中のB(t))に起因する信号の時間依存性から直接特徴付けられ得る。
【0024】
添付図面が次に参照され、ここで同様な参照符号は主題開示の同様な構造的特徴部又は態様を識別する。制限ではなく説明及び例示の目的のために、本開示による方法の実施形態の例示的図が
図1に示され、本方法は参照符号100により概して指定される。本開示の他の実施形態及び/又は態様は
図2A〜
図22Bに示される。本明細書において説明されるシステム及び方法は材料の材料状態(例えば、金属パイプライン中の材料相及び/又は欠陥)を判断するために使用され得る。
【0025】
以下では、ヒステリシス強磁性材料中の非線形磁気応答の一般的理解が提供される。以下に説明される実施形態は、研究される試料の材料状態及び不均質性を検出するための高速、簡単、且つ一般的やり方を提供する。本明細書において説明されるいくつかの実施形態は内蔵強磁性コアを必要としなく、したがって、精密な背景信号を提供するために大気環境中で較正され得る。本方法はまた、大気以外の環境における較正を可能にする(例えば油中に浸された試料)。
【0026】
印加時変磁場内の磁束密度(式1中のB(t))の非線形応答は検出され得る多くの応答を生じる。これらの応答は印加時変磁場から生成される磁束密度の時間依存性に追随し、非線形応答は磁化及び磁束密度(式1中のB(t))のヒステリシスの応答に起因する。理論的と実験的との両方で、対称ヒステリシス応答は奇数高調波を生じる一方で非対称ヒステリシス応答は偶数高調波を生じるということが示される。対称ヒステリシス応答は通常、限定しないが強磁性材料に結び付き、非対称ヒステリシス応答は通常、限定しないがヒステリシス材料内の残留磁化状態に結び付く。いくつかの実施形態がまた、ヒステリシス材料の磁化状態を検出するために適用され得る。本発明の一実施形態は、磁気送信機からの時変磁場による試料の調査と、試料の近傍にある磁気センサによる磁束密度(式1中のB(t))の検出とを含む。この実施形態の変形は、磁化にバイアスをかける直流磁場の取り込みを含む。別の変形形態は残留磁化による試料の測定を含む。さらに別の変形形態は消磁された試料の測定を含む。異なる実施形態は、磁気送信機からの時変磁場による試料の調査と、磁束密度(式1中のB(t))及び非線形磁気音響応答(例えばEMATと同様な)の検出とを含むが、音響信号の非線形スペクトルを考慮する。この実施形態の変形は磁化にバイアスをかける直流磁場の取り込みを含む。別の変形形態は残留磁化による試料の測定を含む。さらに別の変形形態は消磁された試料の測定を含む。
【0027】
非線形磁気応答の一般的原理は、時変磁場H(t)を試料へ印加することと応答を検出することとに依存する。この原理は、時変磁場が空間的可変励磁磁場:
【数3】
及び角周波数ω=2πfによる交流磁気変調:
【数4】
であるケースから示されることになる。このような交流変調は時変電流:
【数5】
により実現され得る(アンペールの法則:
【数6】
を考慮し、第2項:
【数7】
は我々の周波数範囲:
【数8】
では無視可能である)。直流励磁磁場:
【数9】
もまた、直流電流又は永久磁石により印加され得、源:
【数10】
により生成される全磁場に至る。炭素鋼などの強磁性材料及び鋼内の他のフェライト相に関して、場BとHとを結び付ける比透磁率μ
rはヒステリシス非線形演算子である。したがって、一次磁場:
【数11】
は、強磁性材料内部では非線形であろう、そして一次磁場はテイラー級数:
【数12】
として記述され得る。
【0028】
ファラデーの法則:
【数13】
により、鋼内に誘起された電界:
【数14】
及びその結果の渦電流:
【数15】
は、両方とも鋼の伝導率σが通常はスカラー線形演算子であるので非線形である。渦電流は、表皮厚さ:
【数16】
を有する導電材料の表面の周囲にだけ分散され、アンペールの法則∇×H
2=J
eddy=σE
2から、二次磁場:
【数17】
を生成する。この結果、二次励磁磁場:
【数18】
は、一次磁場:
【数19】
と同様な非線形情報を含むであろう。
【0029】
様々な強磁性材料が様々なヒステリシス曲線及び磁気応答を有し、同じ磁気変調下で様々な非線形高調波係数:
【数20】
を生じるであろう。高調波係数の差は以下の2つの方法により測定され得る:
【0030】
1.非線形磁気検出:全励磁磁場は非線形であり、大気内の点Aにおいて磁気センサにより測定され得る:
【数21】
。
【0031】
2.非線形磁気音響検出。大きな一定直流磁場:
【数22】
により、強いローレンツ体力:
【数23】
が発生し、時変機械的波を発射する。このような磁気音響応答もまた非線形である。
【0032】
最後に考慮するのは、正弦波変調:
【数24】
下の様々な非線形高調波の生成であり、この場合、すべての非線形効果は
【数25】
から生じる。局所ヒステリシスB−Hループがヒステリシス材料の内部で対称的な場合、
【数26】
は2分の1周期後にその方向を反転する:
【数27】
。これは通常、ほぼ零磁化において発生する。式1からのテイラー展開により、対称制約は
【数28】
及び
【数29】
を示唆する。したがって、nの偶数に関して、高調波係数:
【数30】
。換言すれば、対称B−H曲線は、偶数高調波の生成を禁止し、奇数高調波だけを許す。対照的に、B−Hループが非対称であれば、
【数31】
、展開された状態のすべてのテイラー係数:
【数32】
が存在する可能性がある。換言すれば、非対称B−H曲線は奇数高調波と偶数高調波との両方を許容する。
【0033】
次に
図1を参照すると、少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料からなる試料の1つ又は複数の材料状態を判断するための方法100は、時変磁場を印加することによりヒステリシス強磁性材料を調査する工程(例えばブロック101における)を含み得る。任意選択的に、ブロック101では追加の直流磁場が印加され得る。任意選択的に、消磁磁場(degaussing magnetic fields)がブロック101において印加され得る。任意選択的に、ブロック101における試料は残留磁化を有し得る。直流磁場は時間と共に変化しない磁場であり、消磁磁場は材料の残留磁化を消去するために使用される時変磁場である。時変磁気応答又は音響応答がブロック103において検出される。方法100はまた、受信された磁気応答又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程(例えばブロック105における)と、受信された磁気応答又は音響応答の時間依存非線形特性と材料の1つ又は複数の材料状態とを相関付ける工程(例えばブロック107における)とを含み得る。
【0034】
入力時変磁場によりヒステリシス強磁性材料を調査する工程は、限定しないが、時変磁場を生成する少なくとも1つの磁気送信機を利用する工程と、磁気送信機を調査対象試料の近傍位置に置く工程とを含み得る。例えば、磁気送信機の例示的近接性(又は近傍位置)は調査対象試料の表面まで1cmであり、磁気送信機のより好適な近傍位置は調査対象試料の表面まで0.2cm以下であり、磁気送信機のさらにより好適な近傍位置は調査対象試料の表面上に直接接触している。
【0035】
時変磁場は、限定しないが正弦波、方形波、三角波、並びに対称及び非対称パルスの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、好ましい時変磁場は、0.01ミリテスラ〜1テスラの範囲のピーク振幅と1Hz〜1MHzの範囲の周波数とを有する正弦波を含み得る。より好適な時変磁場は0.1ミリテスラ〜10ミリテスラのピーク振幅と100Hz〜100kHzの範囲の周波数とを有する正弦波を含み得る。4140炭素鋼材と、X60及び/又はX65炭素鋼などの熱機械制御処理(TMCP)により作られた他の炭素鋼材とを検査するために、好ましい時変磁場は0.01ミリテスラ〜1テスラの範囲のピーク振幅と1Hz〜1MHzの範囲の周波数とを有する正弦波を含み得、より好適な時変磁場は0.1ミリテスラ〜10ミリテスラのピーク振幅と100Hz〜100kHzの範囲の周波数とを有する正弦波を含み得る。さらに好適な時変磁場は0.1ミリテスラ〜10ミリテスラのピーク振幅と8kHz〜100kHzの範囲の周波数とを有する正弦波を含み得る。さらに好適な時変磁場は0.5ミリテスラ〜5ミリテスラのピーク振幅と8kHz〜100kHzの範囲の周波数とを有する正弦波を含み得る。
【0036】
他の非破壊検査ツールにおける慣習と同様に、当業者は非線形磁気応答及び/又は第3高調波の大きさを周波数範囲、振幅範囲及び材料相に対し較正することにより時変磁場を最適化し得る。
【0037】
磁気送信機は、限定しないが、送信コイルなどの時変磁場を生成するデバイス、ネオジム磁石、セラミック磁石、電磁石又は超伝導磁石などの並進/回転永久磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、好ましい磁気送信機は、2mm〜10cmの外径、1〜100,000の巻数及び0.001mH〜1000mHのインダクタンスを有する送信コイルを含み得る。いくつかの実施形態では、より好適な磁気送信機は、5mm〜5cmの外径、10〜1000の巻数及び0.01mH〜100mHのインダクタンスを有する送信コイルを含み得る。いくつかの実施形態では、より好適な磁気送信機は、1インチ(25.4mm)の外径、100の巻数及びL≒0.25mHのインダクタンスを有する送信コイルを含み得る。いくつかの実施形態では、より小さな径の磁気送信機が、より高い横方向空間分解能を有する検査結果を生成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、さらに好ましい磁気送信機が、検査結果の横方向空間分解能を改善するために1インチ未満の径を有する1つ又は複数のコイルを含み得る。
【0038】
磁気応答又は音響応答を検出する工程は、限定しないが、磁気応答又は音響応答をそれぞれ受信するとともに磁気応答又は音響応答を磁気応答信号又は音響応答信号に変換するように構成された少なくとも1つの磁気センサ又は音響センサを利用する工程を含み得る。好適には、磁気センサは磁気送信機近傍の領域内に位置する。一実施形態では、磁気センサと磁気送信機との間の距離は、50メートル未満、好適には10メートル未満、好適には1メートル未満、好適には10センチメートル未満、好適には1センチメートル未満、好適には1ミリメートル未満であり、さらに好適には互いに直接接触する。
【0039】
磁気応答は、限定しないが、入力時変磁場及び任意の追加磁場(additional magnetic fields)の結果として調査対象材料により生成される空間的可変磁場を含み得る。磁気センサは、限定しないが、少なくとも1つの点からの磁気応答又は感知領域にわたって平均化された磁気応答を受信するとともに磁気応答をコンピュータ又は観察者により解釈され得るディジタル又はアナログ信号に変換するデバイス(ピックアップコイル、ホールセンサ、フラックスゲート磁力計、セシウム原子磁力計又は超伝導SQUID磁力計など)を含み得る。いくつかの実施形態では、好ましい磁気センサは2mm〜10cmの外径、1〜100,000の巻数及び0.001mH〜1000mHのインダクタンスを有する探査コイルを含み得る。いくつかの実施形態では、より好適な磁気送信機は5mm〜5cmの外径、10〜1000の巻数及び0.01mH〜100mHのインダクタンスを有する送信コイルを含み得る。いくつかの実施形態では、さらに好ましい磁気センサは1インチの外径、100の巻数及びL≒0.25mHのインダクタンスを有する探査コイルを含み得る。いくつかの実施形態では、より小さな径の磁気センサが、より高い横方向空間分解能を有する検査結果を生成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、より好適な磁気センサは検査結果の横方向空間分解能を改善するために1インチ未満の径を有する1つ又は複数のコイルを含み得る。一実施形態では、磁気センサが、二次非線形効果に起因する信号を少なくとも記録するために十分に速く応答し得るように選択され、より好適な実施形態では、磁気センサは三次非線形効果に起因する信号を少なくとも記録するために十分に速く応答し得るように選択され、さらに好ましい実施形態では、磁気センサは5次非線形効果に起因する信号を少なくとも記録するために十分に速く応答し得るように選択される。
【0040】
音響応答は、限定しないが、入力時変磁場及び任意の追加磁場の結果として調査対象材料により生成される機械的運動を含み得る。音響センサは、限定しないが、少なくとも1つの点からの音響応答又は感知領域にわたって平均化された音響応答を受信するとともに音響応答を圧電音響トランスデューサ、マイクロホン、地震計又はジオフォンなどのコンピュータ又は観察者により解釈され得るディジタル又はアナログ信号に変換するデバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、好ましい音響センサは、1.2cmの径及び500kHzの共振周波数を有するセラミック圧電音響トランスデューサを含み得る。一実施形態では、音響センサは二次非線形効果に起因する信号を少なくとも記録するために十分に速く応答し得るように選択され、より好適な実施形態では、音響センサは三次非線形効果に起因する信号を少なくとも記録するために十分に速く応答し得るように選択され、さらに好ましい実施形態では、音響センサは5次非線形効果に起因する信号を少なくとも記録するために十分に速く応答し得るように選択される。
【0041】
時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データを生成するために、受信された磁気応答又は音響応答のパワースペクトル密度解析などの周波数領域解析を行う工程を含み得る。いくつかの実施形態では、時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データの1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程を含み得る。
【0042】
1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの1つ又は複数の高調波係数を判断する工程を含み得る。例えば、1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第3及び/又は第5高調波を判断する工程を含み得る。時間依存非線形特性を相関付ける工程は、第3及び/又は第5高調波と調査対象試料の1つ又は複数の材料状態とを比較し相関付ける工程を含み得る。いくつかの実施形態では、正規化後に10
−6以上の範囲のスペクトル密度データの大きな第3高調波は、限定しないが調査対象試料内のフェライト又はパーライト炭素鋼相の存在を含む材料状態と相関があり、正規化後に10
−8〜10
−6の範囲のスペクトル密度データの小さな第3高調波は、限定しないがマルテンサイト又はラスベイナイト炭素鋼相などの硬質鋼相の存在又は調査対象試料内の空隙などの非ヒステリシス材料の存在を含む材料状態と相関がある。
【0044】
調査対象試料は、限定しないが、1つ又は複数の材料状態を有する少なくとも1つの材料相からなる試験材料を含み得る。材料内の材料状態及び不均質性の例は、限定しないが以下のものを含む:溶接部の硬度、パイプ又は類似構造を製造するために使用される材料又はパイプ又は類似構造内に使用される材料の硬度、パイプ又は類似構造を製造するために使用される材料又はパイプ又は類似構造内に使用される材料のグレード、溶接のタイプ、材料の硬度、材料内の材料相の存在、材料内のハードスポットの存在、材料内の金属損失又は亀裂の存在、材料内の欠陥の存在、及びそれらの組み合わせ。例えば、1つ又は複数の材料状態は、ヒステリシス強磁性材料又は非ヒステリシス材料のうちの少なくとも1つの材料相を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒステリシス強磁性材料は、限定しないが、鋼、ニッケル、コバルト、及びそれらの合金(多様な炭素鋼などの)のうちのいくつかを含み得る。非ヒステリシス材料は、限定しないが大気、アルミニウム、オーステナイトステンレス鋼、二相ステンレス鋼及び高マンガン鋼を含み得る。材料相は、限定しないが、様々な化学成分及び/又は結晶配位を有するオーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ベイナイト、ラスベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトのうちのうちの少なくとも1つを含み得る。試料の非均質性は、限定しないが、2つ以上の材料相からなる試験材料を含み得る。非均質性の非限定的例はハードスポット及び/又は亀裂/欠陥(例えば鋼管内の)である。
【0045】
本開示の少なくとも1つの態様によると、非一時的コンピュータ可読媒体は、本明細書に記載の任意の好適な方法及び/又はその任意の好適な部分を行うための命令を含み得る。例えば、本方法は、時変磁場を生成し、ピックアップコイルからの磁気応答又は音響応答信号を長期にわたって検出する工程と、受信された磁気応答又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と、受信された磁気応答又は音響応答の時間依存非線形特性と材料の1つ又は複数の材料状態とを相関付ける工程とを含み得る。本明細書に記載の方法の任意の実施形態の任意の他の好適な部分が追加的に又は代替的に含まれ得る。
【0046】
図2Aを加えて参照すると、本開示の少なくとも1つの態様によると、ヒステリシス強磁性材料(例えばヒステリシス強磁性材料を含む試料221)の1つ又は複数の材料状態を検出するためのデバイス200は、調査磁場を出力するように構成された送信コイル201と、磁気応答又は音響応答をそれぞれ受信し、磁気応答又は音響応答を磁気信号又は音響応答信号へ変換するように構成されたピックアップコイル203又は音響トランスデューサ(例えば以下にさらに詳細に説明されるような)とを含み得る。デバイス200は、任意の好適な方法(例えば上に説明された)及び/又はその任意の好適な部分を実行するように構成されたプロセッサ205を含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、デバイス200は、ユーザに材料の1つ又は複数の状態を示すように構成された出力デバイス207を含み得る。システム200は当業者により認識されることになる任意の他の好適な信号処理部品(例えば1つ又は複数のディジタイザ、電流計、信号発生器、1つ又は複数の帯域フィルタ、1つ又は複数の前置増幅器又は増幅器など)を含み得る。出力デバイス207は、限定しないが、適切な即時リアルタイム行為について1人又は複数のユーザに通知することを意味する指示器を含み得、ユーザは指示器を直接観測し得る。出力デバイス207はまた、限定しないが、ユーザと通信するためのデバイスを含み得、これもまた、適切な即時リアルタイム行為についてユーザに通知することを意味するが、ユーザは離れた場所にいてもよく、通信は有線経路を介しても無線経路を介してもよい。出力デバイス207はまた、後の検索及び後処理及び解析のためのデータ収集及び格納デバイスを含み得る。
【0048】
炭素鋼はパイプライン及び石油及びガス産業における主要資材である。一般的に、すべての炭素鋼は複数の材料相からなる。フェライト(炭素鋼の軟質層)は炭素鋼内の主要材料相である。マルテンサイト又はラスベイナイトなどの硬質相は、高温(例えば900℃)から室温まで急速に焼き入れされると鋼内に形成される可能性があり、これは製鋼所板製造中又は電気抵抗シーム溶接プロセス中に発生する可能性がある。マルテンサイト又はラスベイナイトの相などの硬質鋼相の存在は、軟質フェライト相と比較して破損及び亀裂を被りやすいので特に不安定になり得る。この結果、フェライト及びマルテンサイトからなる炭素鋼試料が本明細書において試験されるが、パイプラインへの適用はこのようなデバイスが使用され得る良い例であるからである。任意の他の好適な材料及びアプリケーションが本明細書では企図される。
【0049】
示された実施形態では、電圧又は電流信号(例えば周波数fの正弦波)が信号発生器209を介し生成され得る。電流がその中を通ることにより、送信コイル201は変調磁場を生成する磁気送信機として使用される。以下のデータを生成するために使用される送信コイル201は、約1インチの外径、100の巻線、及びL≒0.25mHの1インダクタンスを含む。送信コイルの電気インピーダンスはZ
coil=R
internal+iωLである。通常、コイルの内部抵抗R
internalは比較的小さい(我々が試験したコイルでは<1Ω)が一方、虚数誘導性項は周波数に比例して増加する。任意の好適な特性を有する任意の他の好適なコイルが使用され得る。
【0050】
インダクタのインピーダンス効果を最小化し出力電流を最大化するために、キャパシタC211が全インピーダンスを
【数33】
へ変更するために使用される一方で虚数項は
【数34】
又は
【数35】
の場合に相殺され得る。1kHz〜100kHzの周波数は以下のデータを生成する際に使用された。同送信コイル201に関して
【数36】
を保証するために、様々なキャパシタンスが様々な周波数において使用され得る。送信コイル201を通る電流は電流計213により測定され、第1のディジタイザ215により記録され得る。
【0051】
近傍の材料からの磁気応答を検出するため、ピックアップコイル203などの磁気センサが時変磁気信号を測定するために使用され得る。ピックアップコイル203を介し生成される電圧は、
【数37】
であり、これはピックアップコイル203の巻数N、局所磁場の時間微分:
【数38】
及びループの断面積Aに関係する。この電圧は例えば第2のディジタイザ217を介し測定され得る。任意選択的前置増幅器及び/又は帯域フィルタ219が、必要に応じ例えば弱い信号を増強する又は測定信号中の特定周波数成分を検出するために、ピックアップコイル203と第2のディジタイザ217との間で利用され得る。両方のディジタイザから送信電流及びピックアップ電圧の波形を受信した後、PSD解析が、試験材料の非線形係数及び/又はピーク値を抽出するためにプロセッサ205によりリアルタイムで行われ得る。
【0052】
送信コイル201、ピックアップコイル203及び調査対象材料は任意の好適な構成で配置され得る。2つの具体例が
図2A、3Aに示される。
図2Aでは、送信コイル201及びピックアップコイル203は調査対象材料(例えば強磁性板)の同じ側に置かれる。この構成は非破壊パイプライン検査のための従来のPIGへ容易に適用される可能性がある。
図3Aでは、代替構成が、調査対象材料の両側に置かれた送信コイル201とピックアップコイル203とにより示される。
【0053】
したがって、
図2Aに示すように、システム200は調査対象材料の片側での使用のために構成され得る。上に提示されたように、いくつかの実施形態では、判断されるべき材料の1つ又は複数の状態は例えば材料相を含み得る。試料221の代りの大気(基準として)の、マルテンサイト(第1の相として)の、及びフェライト(第2の相として)の材料相を判断するための例示的結果が以下の表1及び
図2B〜2Dに示される。
【0054】
対照実験として、デバイス200は、2分の1メートル内に導電/磁性材料の無い大気中で10kHzの周波数において試験された。送信電流及びピックアップ電圧のパワースペクトル密度(PSD)が実線及び破線曲線として示される。高次高調波(第2、第3、第4及び第5)のピークは、10kHzの主周波数より少なくとも7桁の大きさだけ低い。高調波のこれらの小さな値は、電子的処理及びシステム雑音に起因しており、材料試験のための基準として較正されるべきである。
【0056】
図3Aを参照すると、いくつかの実施形態では、システム200は調査対象材料の両側での使用のために構成され得る。大気(基準として)の、マルテンサイト(第1の相として)の、及びフェライト(第2の相として)の材料相を判断するための例示的結果が以下の表2及び
図3B〜3Dに示される。
【0058】
両方の例に見られるように、奇数高調波は、様々な材料タイプ間の強度差の程度を示し、例えば様々な材料の区別を可能にする。非線形応答は、マルテンサイト又はフェライト(例えば、38.1mmの(L)×25.4mm(W)×4.7mm(H))のクーポン(試料221)がコイルの端に置かれると劇的に変化する。偶数高調波は著しい変化を受けないが一方、奇数高調波のピークは劇的に増加し、最も著しい増加は30kHz及び50kHzにおける第3及び第5高調波から来る(例えば
図2Cと
図2D)。特に、第3高調波のピークは、マルテンサイトクーポン(
図2C)では1桁超増加し、フェライトクーポンでは3桁超増加する(
図2D)。示されたデータでは、主高調波ピークが標準較正として使用され、すべての高次高調波係数は主高調波ピークに対し正規化された。
【0059】
再び、最も際立った痕跡は第3及び第5高調波であるということが分かった。同じ現象は、同じ側構成(例えば
図2A)又は両側構成(例えば
図3A)のいずれでも観測される。両方の構成において、大気(約1×10
−8)、マルテンサイト(約1×10
−7〜5×10
−7)及びフェライト(約1×10
−5〜5×1
−5)にわたる第3高調波の著しいコントラストが、例えばパイプライン鋼中のハードスポットを構成するマルテンサイト相などの硬質相を検出するために直接利用され得る独特な非線形磁痕跡を与える。
【0060】
原理的に、送信コイルの自己インダクタンスは近傍の強磁性材料により変更され、この変化は当然、ヒステリシス応答に起因して非線形のはずである。我々は、大気、マルテンサイト及びフェライト試料全体にわたり送信電流のPSDの比較的小さい増加(
図2B〜3Dの実線曲線)を観測した。単一送信コイルからの電圧及び電流を解析するだけで強磁性材料同士を区別することが可能であるが、様々な材料の痕跡は、ピックアップコイルからの測定された応答と比較してそれほど区別可能ではない。この点に関し、送信コイルと二次コイルはいくつかの実施形態では同一コイルであり得る。
【0061】
表3を参照すると、いくつかの実施形態では、システム200は調査対象材料の片側における使用のために構成され得、送信及びピックアップコイルは調査対象試料の表面までの制限距離を有する好適な近傍位置に置かれ得る。調査対象試料と2つのコイルとの間の距離及び/又は間隔はリフトオフ距離と呼ばれる。表1及び
図2C〜2Dは2つのコイルが調査対象試料の表面と直接接触している場合の独特な非線形磁気痕跡を実証したが、表3は、0.8mm又は2.0mmのリフトオフ距離がある場合ですら同様な独特な非線形磁気痕跡が観測されるということを示す。フェライト又はマルテンサイトのいずれかに関し、正規化された第3高調波はリフトオフ距離の量の増加と共に若干低下するが、フェライトの場合の全般的な第3高調波のピークは0、0.8mm又は2.0mmのリフトオフ距離にかかわらずマルテンサイトのケースと比較して約2桁だけ大きい。第3高調波、マルテンサイト(約1×10
−7〜5×10
−7)及びフェライト(約1×10
−5〜5×10
−5)のこの強く且つ著しいコントラストは、印加中に一定又は時変リフトオフ距離が存在する場合ですらマルテンサイト相などの特殊材料相を検出するために直接利用され得る独特な非線形磁気痕跡を提供する。
【0063】
図4A及び4Bを参照すると、コンピュータシミュレーションが、磁気ヒステリシス応答を取り込むとともにフェライト相及びマルテンサイト相の実験的に観測された第3高調波を理解するために行われた。ここで使用されたヒステリシスモデルは元々Jiles及びAthertonにより開発されており、J−Aモデルとして知られる。特殊材料のヒステリシス応答を記述するためにJ−Aモデルには5つのパラメータが存在し、シミュレーションにおいて、文献ではこれらの5つのパラメータはJ−Aヒステリシス曲線と実験的測定結果とを最良に整合させることにより得られる。フェライト相及びマルテンサイト相に関して、2つの異なる組のパラメータが得られ、完全なヒステリシス曲線(フェライト相に関しては実線曲線、及びマルテンサイト相に関しては破線曲線)が
図4Aに示される。次に、COMSOL multiphysicsコンピュータソフトウェアパッケージが、
図2A〜3Dと同じ実験条件及びパラメータ下で磁気応答をシミュレートするために使用される。
【0064】
シミュレーションは、非線形ヒステリシス透磁率を考慮するために5つのJ−Aパラメータを有する完全マクスウェル方程式ソルバーを取り込む。シミュレーションが零残留磁化で開始すると、結果(
図4B)は、フェライトとマルテンサイトとの両方のケースだけにおける奇数高調波の存在を示し、これは対称B−H曲線の理論的説明と整合する。さらに、シミュレーション結果では、フェライトの第3及び第5高調波はマルテンサイトのものより約1.5桁(約40倍)大きく、これもまた上記実験的観察に一致する。信頼できるシミュレーションツールにより、高調波の生成とヒステリシス曲線との間の定量的リンケージが解明され、加えて、特別なアプリケーションにおける硬質相の検出を最適化するために特別な振幅及び周波数の交流磁気変調を設計することが可能である。
【0065】
図4Aはフェライト(実線)及びマルテンサイト(点線)の完全なヒステリシス曲線を示す。文献では5つのJ−Aパラメータはヒステリシス曲線と実験的測定結果とを整合させることにより得られる。
図4Bは、
図2Aの構成のマルテンサイト(点線)及びフェライト(実線)の非線形磁気検出のシミュレーションパワースペクトル密度(PSD)結果を示す。見て分かるように、奇数高調波だけが対称磁化のおかげで現われる。第3及び第5高調波に関し、観測されたフェライトとマルテンサイトとの間の約1.5桁の強度差は上記実験的観察と整合する。
【0066】
次の例では、追加実験的試験が、測定された非線形痕跡をより良く理解するために行われる。強磁性材料のヒステリシスループは非常に非線形であり且つ履歴依存であるので、我々は、これらの材料の非線形磁気応答がそれらの磁化状態に依存するということを予測するであろう。したがって、非線形磁気応答の測定結果は原理的に試験材料の磁化状態の指標であり、磁気異常の検出において追加情報を提供する可能性がある。
【0067】
理論的説明に基づき、局所的対称ヒステリシスループは奇数高調波だけを生じ、これは次の2つのシナリオにおいて発生するであろう:1)材料はその飽和磁化と比較して小さな残留磁化を有し、これは
図2A〜3Dのケースに当てはまる、又は2)材料は小さな交流磁気変調に対し垂直な方向に外部から磁化される。
【0068】
後者のシナリオは
図5Aにおいて試験される。同じクーポン221(フェライト又はマルテンサイト、38.1mm(L)×25.4mm(W)×4.7mm(H))は、クーポン221の両端に置かれた2つのネオジム永久磁石223a、223bによりその長手側縁全体にわたり磁化される。磁石のうちの一方223aは上向きN極を有し、他方223bは反対配向にある。大きな炭素鋼板225が、磁束ループを完成するために下端部に取り付けられる。一束の送信コイル及びピックアップコイル201、203は1インチ×2インチの断面を有し、我々は、
図5Aと同様に、両端近傍のフリンジ磁場との干渉を回避するためにコイル束の短手側(1インチ)とクーポン221の長手側(1.5インチ)とをアライメントする。このシナリオでは、クーポン221の中心における磁化は水平方向であり、一方コイルからの小さな交流磁気変調は垂直方向である。実験結果が表4に示され、フェライトのケースとマルテンサイトのケースとの両方に関し、高調波のすべてのピークはこの垂直磁化前後に微少変化を受ける。加えて、偶数高調波は、非常に小さく、基準の大気ケース(表の第1の行)の雑音レベルと似ており、これは我々の理論的説明と整合する。
【0069】
ヒステリシスループのこの対称性は磁化の方向が交流変調の方向に対し垂直でなければ破られ得る。
図5Bのように、コイル束を90度だけ水平方向に回転し、その長手側(約2インチ)と鋼クーポンの長手側とをアライメントさせれば、送信コイル201から生成される交流磁気変調は、鋼クーポンの端においてフリンジ磁場と強く干渉し、したがって、ヒステリシスループの対称性を破り、偶数高調波を許容するであろう。同じ構成における磁化の無い鋼クーポンと比較して、表5では我々は実に、我々の理論と整合する第2高調波の増加を実験的に観測した。加えて、奇数高調波のピークは少なくとも1桁の大きさだけ低減される。
【0070】
図5A及び5Bは、強い外部磁場下のモデル材料の非線形磁気応答を試験するためのセットアップの実施形態を示す。
図5Aの実施形態において、コイル束の短手側が鋼クーポンの長手側とアライメントすると、磁気変調は鋼クーポンの外部磁化に対し概ね垂直である。したがって、外部磁化は非線形応答を変更しなく、実験結果は以下の表4に要約される。
【0072】
図5Bの実施形態において、コイル束の長手側が鋼クーポンの長手側にアライメントすると、磁気変調は鋼中のフリンジ磁場と強く干渉し、これらはかろうじて互いに垂直である。対称性破れ(symmetry breaking)は、以下の表5に要約されるように第2高調波の上昇及び奇数高調波の驚くべき低下に至る。
【0074】
より顕著な対称性破れ効果を見るために、強磁性材料は強く磁化され得、外部磁化はその後除去され得る。試験は、飽和磁化の2分の1の値を越える残留磁気又は残留磁化を有する低炭素鋼の試料(モデル材料である)を使用して行われた。
図6A〜6Cでは、この炭素鋼試料に対する一連の試験が磁化前後に行われた。低炭素鋼板が強く磁化される前、奇数高調波の著しい上昇が、表1、2内の前述のデータと同様な
図6Bに示すように検出される。次に、大きな炭素鋼板が、1.27cm立方の0.8テスラネオジム永久磁石により特定点「B」の周囲に局所的に磁化される。永久磁石を炭素鋼板から除去した後、点「B」近くの残留磁化は炭素鋼板上の0.4テスラを越えるはずである。磁化前の炭素鋼のPSD(
図6B)と比較して、磁化された領域「B」近くの非線形磁気検出は、
図6Cにおける偶数高調波の強烈な増加を示す。奇数高調波による鋼相検出に加えて偶数高調波の検出は材料の既存残留磁化を含む(材料の磁化状態などの)追加材料情報を提供する可能性があるということが今や明らかである。
【0075】
図6A〜6Cは、
図2A構成において測定された大気(
図6A)、低炭素鋼板(
図6B)及び磁化後の低炭素鋼板(
図6C)の非線形磁気検出のパワースペクトル密度(PSD)結果を示す。破線曲線と実線曲線はそれぞれピックアップ電圧のPSDと送信電流のPSDである。表6は、ここではすべての試料にわたるピックアップ電圧の正規化高調波係数を要約する。
【0077】
図6A〜6Cにおいて、ピックアップ回路は第3高調波周囲の信号対雑音比を強化する(30kHzに共振周波数を有するRLC帯域フィルタを使用して)ために若干修正され、その結果、大気環境における基準較正は電子雑音からより強い高調波を受ける一方で、試料間の高次高調波の比は変更されない。
【0078】
鋼の磁化の操作に加えて、試料は1kHz〜100kHzまでの様々な周波数において試験された。1kHz及び10kHzにおける低炭素鋼によるいくつかの例が表7に示され、100kHzによる例が後で
図9D〜Fに示される。表7は、1kHz及び10kHzにおける大気及び炭素鋼の非線形磁気検出の正規化高調波係数を示す。
【0080】
導電材料の周波数依存表皮厚さ
【数39】
及び磁壁の複雑な動力学により、非線形磁気応答の周波数依存性を予測するのは難しい。しかし、我々の実験は、1kHz〜100kHzの周波数帯域にわたる強磁性材料における著しい非線形磁気応答を測定することが可能であるということを実証した。この周波数依存応答は、様々な深さからの材料情報を提供するために使用され得る。
【0081】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが、非線形磁気音響検出を規制するために外部磁場を使用する工程を含む。コンピュータシミュレーションがこのような実施形態の作用を実証するために行われた。対称性破れ効果は、鋼の残留磁化を探査するのに有用である可能性がある偶数高調波の生成に至るが、奇数高調波に対する影響は比較的複雑になり得る。
図6B、6Dのような第3高調波の増強と
図5Bのような第3高調波の低下との両方が観測された。
図7A〜7Cを参照し、これらの図は測定の一貫性を実現するとともにこのような潜在的複雑性を回避するために鋼管中の磁化を規制する方法の実施形態を限定することなく示す。本方法の実施形態は、10
5A/mの磁化と
図7Aの凡例内に規定された寸法とを有する馬蹄形磁石により印加される外部磁場に関与する。COMSOL multiphysicsコンピュータソフトウェアパッケージは、馬蹄形磁石が例えば0.5m/sの速度で管壁に沿って垂直方向に移動している場合の磁場強度をシミュレートするために使用され得る。
図7B及び7Cは空間的に変化する誘起された磁場を示す。
【0082】
図7Aは、鋼管701上を移動する馬蹄形磁石700の実施形態を示す。領域703及び705は幅3cmを有する矩形である。領域707は4cmの垂直方向長さを有する。領域709は2cmの内径及び5cmの外径を有する。パイプは15cmの半径及び8mmの厚さを有し軸対称である。パイプは半径3mmの円形領域711以外はフェライト相からなる。磁石700は0.5m/sの速度で垂直方向に上昇する。
図7Bは馬蹄形磁石及び管壁内の磁束密度の垂直方向z成分を示す。
図7Cは、馬蹄形磁石及び管壁内の磁束密度の水平方向r成分の実施形態を示す。
【0083】
馬蹄の脚同士間の鋼管中の磁場は、材料の小さな硬質相欠陥及びヒステリシス性質のおかげで水平方向の|B
r|≒0.8×10
−2Tのわずかな摂動を有するほぼ垂直z方向にほぼ沿ったもの(|B
z|≒−0.2〜0.4T)である。この結果、この外部磁気規制は、
図7Aの円形領域711近くの垂直軸に沿った鋼管中の磁化を効果的に修正及びアライメントする可能性があり、この構成に基づく小さな垂直方向交流磁気変調は、
図5Aにおいて実証されたような独特且つ認識可能な第3高調波痕跡を生じるのでパイプライン応用における好ましい実装の1つになるであろう。
【0084】
図8A及び8Bを次に参照すると、非線形磁気検出と共に、本明細書における実施形態は同じ原理に基づく非線形磁気音響検出を含む。
図8Aは非線形磁気音響検出のためのセットアップ800の実施形態を示す。大きな炭素鋼板801(6インチ×2インチ×0.5インチ)が例えば2つのネオジム永久磁石803a、803bにより磁化され得る。炭素鋼ロッド805(又は任意の他の好適な材料ロッド)が、磁束ループを完成するために永久磁石803a、803bの両側へ取り付けられ得る。音響トランスデューサ807が炭素鋼板801の6インチ×2インチ表面の前方中心へ取り付けら(例えば、接着され)得、電流送信コイル(不図示)が炭素鋼板の対向表面の後方中心へ取り付けられ得る。
【0085】
大きな炭素鋼板が
図8Aのように取り付けられた2つのネオジム永久磁石により磁化されると、炭素鋼板内部に強い直流磁場
【数40】
が存在する。小さな交流磁気変調が送信コイルにより印加されると、時変磁場が、強い直流磁場と相互作用する振動渦電流
【数41】
を生成し、振動するローレンツ体力
【数42】
及び機械的運動を生じる。この結合された応答は一般的には磁気音響応答と呼ばれ、機械的運動は圧電音響トランスデューサなどの音響センサを介し測定される。
【0086】
図8Bは非線形磁気音響検出の実験的PSD結果を示す。破線曲線と実線曲線はそれぞれ受信された音響信号と送信電流のPSDである。シミュレーションに使用されたトランスデューサは500kHzの共振周波数を有するので、機械的運動は10kHz磁気変調に関しかろうじて測定可能だった。100kHz磁気変調がその代りに使用され、音響信号(
図8B中の破線曲線)のPSD内の強い第3高調波生成が観測された。上に論述したように、より弱い第3高調波もまた、自己インダクタンスの変化のおかげで送信電流(
図8B内の実線曲線)のPSD内に現われる。
【0087】
本明細書において説明される非破壊材料検査システムの実施形態又は設計は、限定しないが、磁気送信機、磁気センサ、音響センサ、及び調査対象材料の好適な近傍位置に置かれた馬蹄形磁石の複数の複製を含み得る。いくつかの実施形態では、このような実施形態は、限定しないが、1つの磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を含む。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機901の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機901と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサ900の4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機1001の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機1001と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサ1000の8つの複製を含み得る(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。いくつかの実施形態では、このような実施形態は、限定しないが、その2本の脚が調査対象材料の表面と接触する少なくとも1つの馬蹄形磁石を含む。いくつかの実施形態では、このような実施形態は、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含む。いくつかの実施形態では、このような実施形態は、限定しないが、調査対象材料中の磁化を規制するために任意選択的磁石又は電磁石を含む。いくつかの実施形態では、このような実施形態は、限定しないが、直流磁場を提供するために任意選択的磁石又は電磁石を含む。
【0088】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが、溶接部内に硬質相を有する実際のパイプ上での検出のために使用され得る。
図11A〜11Fを参照すると、実施形態は、例えば実際のパイプライン鋼内の異常を検出するために適用され得る。70年代以前の年代物パイプラインから取られた21cmの半径と0.5cmの厚さを有する約10cm長の円筒状パイプ部が試験された。パイプの大部分はフェライト/パーライト相を有する一方で、パイプ中のシーム溶接部は、熱処理のない電気抵抗溶接により接合され、したがってベイナイト又はマルテンサイト硬質鋼相を含む。測定中、コイル束の長手側は円周方向にアライメントされる。様々な角度位置における非線形磁気応答は10kHz磁気変調においてパイプ部の内側と外側との両方から測定された。正規化第3高調波係数が
図11A及び11Bに示される。
【0089】
図11Aは、10kHz磁気変調による円筒状パイプ部周囲の正規化第3高調波係数のデータを示す。破線曲線はパイプの外側からの測定結果を表し、実線曲線はパイプの内側からの測定結果を表す。
図11Bは、シーム溶接部からの円周方向距離に対してプロットされた
図11Aの同じデータを示す。
図11Cは、そのシーム溶接部内に硬質鋼相を有しないパイプライン材料の円弧状部全体にわたる別個の実験において測定された10kHz磁気変調による正規化第3高調波係数のデータを示す。破線曲線はパイプの外側からの測定結果を表し、実線曲線はパイプの内側からの測定結果を表す。
【0090】
図11Aでは、パイプの外側からの測定(破線曲線)は、フェライト/フェライトパーライト領域内の約1×10
−5の変動する第3高調波と、ベイナイト又はマルテンサイト硬質鋼相を含むシーム溶接部近傍のほぼ1×10
−7までの劇的な低下とを示す。ハードスポットの角度位置は、294.5度における破線曲線中の最小点として識別され、これは実際の硬質微細構造スポットの1度以内にある。
【0091】
コイルがパイプの内部に位置するいくつかの実施形態では、円柱内部の磁束線は全く異なり得、強く圧縮され得、非線形測定結果を変えさせ得る。パイプの内側からの実験的測定結果は実に、異なるパターンの第3高調波応答(
図11Aの実線曲線)と溶接部近傍の二重極小とを示す。対称性考察から、二重極小の中間点(293.2度)は、実際の硬質マルテンサイトスポットの1度以内にも存在する測定された異常の位置を最も良く説明し得る。実線曲線中の四重パターンは材料の残留磁化に由来することがあり、一方、二重極小特徴と著しく低い高調波応答は完全な円筒状パイプ内部の特別なEM共鳴モードから生じることがある。
【0092】
比較して、
図11Cでは、我々は、そのシーム溶接部内にマルテンサイト又はベイナイト相などの硬質相が無いパイプライン材料の円弧状部を試験した。パイプ部の外側及び内側からの測定結果が
図11Cでは破線曲線及び実線曲線としてそれぞれ示される。この切断部は円弧状であり完全な円筒形状でないので、外側及び内側からの測定結果は似ている。両方のデータは実際の溶接バリ(49mm〜63mm)周囲の第3高調波の低下のある程度の低下を示すが、これらの異常(係数約1×10
−6)はマルテンサイト又はベイナイトなどの硬質相の存在(1×10
−7に近い際立った痕跡を有する)を示すのに十分なほどには著しくない。その代りに、溶接バリの外側表面における深さ約1mmの小さな亀裂が観測された。その結果、
図11C中の第3高調波の変化は溶接部周囲の空隙、亀裂又は様々な応力状態の存在を示すために使用され得る。
【0093】
これらの同じパイプ部はまた100kHzの交流磁気変調により試験され、このデータは円筒状パイプ部の
図11D、11Eと円弧状パイプ部の
図11Fとに示される。
図11D〜11Fは、
図11A〜11Cと同様な測定結果を示すが、100kHz磁気変調により管材の外側から測定された。円筒状パイプ部に関し、溶接部の外側からの測定結果は、マルテンサイト又はベイナイト相(
図11D及び11E)などの硬質相を含む溶接部周囲の際立った特徴を示す。相対的に、円弧状パイプ部に関し、非線形磁気応答の測定された曲線は、溶接部が小さな亀裂を有するフェライト又はフェライトパーライト相だけを含むのでむしろ平坦である。
【0094】
図12A〜12Cは、非ヒステリシス材料とヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料との間の検出及び差異の実施形態を示す。
図12A〜12Cの試験では、システム200は、
図12Bに示す調査対象材料の片側での使用のために構成され得る。上に提示されたように、いくつかの実施形態では、判断されるべき材料の1つ又は複数の状態は例えば1つ又は複数の特殊材料相を含み得る。非ヒステリシス材料とヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料との間の材料相を判断するための例示的結果が
図12A〜12Cに示される。
【0095】
図12Aにおける対照実験として、デバイス200は、2分の1メートル内に導電/磁性材料の無い大気中で10kHzの周波数において試験された。ここで使用される電流は、電子雑音フロアを低減するために、
図2B〜2D及び
図3B〜Dにおいて使用されるものより低い。ピックアップ電圧のパワースペクトル密度(PSD)が示される。高次高調波(第2、第3及び第4など)のピークは10kHzの主周波数より少なくとも9桁低い。これらの小さな値の高調波は電子的処理及びシステム雑音に起因しており、特殊材料試験のための基準として較正されるべきである。
【0096】
図12A〜12Cからのこれらの例において見られ得るように、偶数高調波と奇数高調波は両方とも、非ヒステリシス材料(
図12B)とヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料(
図12C)との間の強度差の程度を示し、例えば様々な材料の区別を可能にする。非ヒステリシス材料の非限定的例はオーステナイトステンレス鋼、二相ステンレス鋼及び高マンガン鋼を含む。ヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料の非限定的例は、イプシロンマルテンサイト介在物を有する高マンガン鋼を含む。
図12A〜12Bは、非線形磁気応答はコイルの端が非ヒステリシス材料の板(例えば200mm(L)×200mm(W)×20mm(H))上に置かれると劇的に変化しない、ということを示す。これは、非ヒステリシス材料が一定透磁率を有する線形磁性材料であるということと整合し、その結果、非線形磁気応答を生成しない。
図12A及び12Cは、非線形応答はコイルの端がヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料の板(例えば、材料重量分率において重量で5%を越える非均質性を有する200mm(L)×200mm(W)×20mm(H)の大きさの)上に置かれると劇的に変化する、ということを示す。奇数高調波と偶数高調波との両方のピークが劇的に増加する。特に、
図12Bの非ヒステリシス材料と比較して、
図12Cの第3高調波のピークは、ヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料により2桁増加し、ヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料を検出するために直接利用され得る独特な非線形磁気痕跡を提供する。
【0097】
他の非破壊検査ツールにおける慣習と同様に、当業者は、非線形磁気応答及び/又は第3高調波のピーク値を、非ヒステリシス材料中のヒステリシス強磁性材料の様々な分率の非均質性に対し較正し得る。したがって、適切な較正により、本開示の方法及びシステムは2つ以上の材料相を有する試料(ヒステリシス強磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料など)の材料相分率を測定するために使用され得る。
【0098】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが、実際のTMCP鋼鈑及び/又はパイプの表面上の及び/又はバルク内の望ましくない相の検出のために使用され得る。
図13A〜13Eを参照すると、実施形態は、例えば実際のパイプライン鋼内の異常を検出するために適用され得る。湾曲パイプ部は、TMCPパイプ(28インチ内径(ID)及び約3/4インチ厚)から切断され、パイプ部の約4インチ×4インチ領域が試験された。パイプの大部分はフェライト/パーライト及び/又は軟質粒状ベイナイトを有し、一方、ID面の一部分は、製鋼所においてTMCP製造プロセス中に自然に形成されたラスベイナイト又はマルテンサイト硬質鋼相を含む。
【0099】
磁気センサ/音響センサ1300及び磁気送信機1301を含むコイル束の長手側が
図13Aに示すように水平方向(またパイプの円周方向)にアライメントされた場合の正規化第3高調波のデータマップが
図13Aに示される。同じコイル束の長手側が
図13Bに示すように垂直方向(またパイプの縦方向)にアライメントされた場合の正規化第3高調波のデータマップが
図13Bに示される。
図13Cは、
図13Aと
図13Bとの両方からの及び任意の特定位置における合成データセットを有するデータマップである。
図13Cは、
図13Aと
図13B間の正規化第3高調波のより低い値だけを使用する。
【0100】
同じパイプ部上では、2つの異なる送信機センサ配向と
図13Aの左上周囲の白色から薄灰色と
図13Bの右下周囲の白色から薄灰色とを有する2つの異なる異常区域が現われる。様々な送信機センサ配向からの両方の区域が実際の材料硬度特性と整合するということを検証するために、TMCPパイプ部は切断され、10個の輪切り材料試料がパイプ部の様々な部分で作られた。次に、それらの試料は金属組織学的に研磨され、ビッカース硬度数(VHN)測定が圧入により表面下100μmにおいて100グラム負荷により断面内で行われた。例えば、輪切り試料のうちの1つが
図13Eのボックス13Dの位置から切断され、特定試料の対応するビッカース硬度数(VHN)測定結果が、簡単なデータプロットだけでなく1次元測定バーで
図13Dに示される。
図13Eは10個のVHN結果のグループを実証する。輪切り試料が切り出された位置に硬度測定バーが置かれる。
【0101】
ビッカース硬度測定結果と整合して、特に正規化第3高調波データマップ(
図13A〜
図13C)内の非線形磁気応答は
図13Eにおいて検証されるように左上硬質区域と右下硬質区域との両方を捕捉することができる。具体的には、
図13Aと
図13Bにおける送信機センサ配向を有するデータは、
図13Eの左上硬質区域と右下硬質区域とをそれぞれ捕捉することができる。データ異方性は熱間圧延プロセスなどの製造プロセスから生成される炭素鋼内の固有組織異方性に由来する。より良い且つより完全な検査結果を実現するために、好ましい送信機センサ配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対になるセンサの多くの複製を含み得る。
【0102】
示された実施形態では、以下のデータを生成するために使用される送信コイル201及びピックアップコイル203は約3/4インチ(19.1mm)の最大外径とL≒7mHのインダクタンスとを有するコイルを含む。
図14A〜14Cに示されるデータでは、送信コイル201及びピックアップコイル203は調査対象材料(例えば強磁性板)の同じ側に置かれた。
【0103】
より小さな径を有するコイルは、
図2B〜D及び
図3B〜Dに示すような前に開示された1インチコイルと同様なやり方で働く。対照実験として、デバイス200は、2分の1メートル内に導電/磁性材料の無い大気中で10kHzの周波数において試験された。ピックアップ電圧のパワースペクトル密度(PSD)が
図14A〜14Cに示される。高次高調波(第2、第3、第4、第5など)のピークは、大気の場合10kHzの主周波数より少なくとも8桁低い(
図14A)。これらの小さな値の高調波は、電子的処理及びシステム雑音に起因しており、材料試験のための基準として較正されるべきである。
【0104】
図2B〜Dから
図3B〜Dの本開示と同様に、奇数高調波は、様々な材料タイプ間の強度差の程度を示し、例えば様々な材料の区別を可能にする。非線形応答は、マルテンサイト又はフェライトのクーポン(例えば、38.1mmの(L)×25.4mm(W)×4.7mm(H))がより小さなコイルの端に置かれると劇的に変化する。偶数高調波は著しい変化を受けないが、一方、奇数高調波のピークは劇的に増加し、最も著しい増加は30kHz及び50kHzにおける第3及び第5高調波から来る(例えば
図14B及び14C)。特に、第3高調波のピークは、マルテンサイトクーポン(
図14B)では3桁超増加し、フェライトクーポン(
図14C)では5桁超増加し、例えばパイプライン鋼中のハードスポットを構成するマルテンサイト相などの硬質相を検出するために直接利用され得る独特な非線形磁気痕跡を提供する。
【0105】
本開示の少なくとも1つの態様によると、より小さな径の磁気送信機及びセンサが、より高い横方向空間分解能を有する検査結果を生成するために使用され得る。示された実施形態では、以下のデータを生成するために使用される送信コイル201及びピックアップコイル203は
図15A〜15Bにおいて使用されるような3/4インチ径のコイルを含む。送信コイルとピックアップコイルとの両方は2次元自動化スキャナのキャリッジ上に取り付けられる。2次元自動スキャナは、いずれの次元においても0.1mm未満の最小ステップサイズでもって平坦な水平面内でキャリッジを移動することができ、キャリッジ及び/又はコイルの2次元空間的運動及び位置は制御され、コンピュータプログラムコードを介し監視され得る。
【0106】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが、表面上の及び/又はバルク内の空間的に変化する硬質相を有する実際のパイプ及び板上の検出のために使用され得る。
図15A〜15Bを参照すると、実施形態は例えば炭素鋼板内の異常を検出するために適用され得る。平坦な4140炭素鋼板(例えば、12インチ(L)×6インチ(W)×1・1/4インチ(H))が、
図15A右側パネル内に示すように試験された。同板の大部分はフェライト/パーライト及び/又は軟質粒状ベイナイト相を有し、一方、7つの水平方向連続の硬質相領域又は硬質区域が存在する。これらのシミュレートされた硬質区域は、真空環境において電子ビームを使用した局所的表面加熱とそれに続いてヒートシンクとしての鋼製ボディによる自己温度消光とにより作られる。HZ1〜HZ7において使用される加熱パラメータは異なり、したがって、これらの7つの硬質区域は、様々な局所硬度及び幅を有し、様々な体積分率のラスベイナイト又はマルテンサイト硬質鋼相を含む。
【0107】
2次元自動化スキャナによる測定中、送信及びピックアップコイルは調査対象試料の表面に対し0.1cm内に置かれ、コイル束の長手側は板方向の長手方向(12インチ(304.8mm))にアライメントされる。鋼鈑全体にわたる様々な2次元位置における非線形磁気応答は10kHz磁気変調において測定された。この測定結果から、正規化第3高調波係数のデータマップが
図15A左パネルに示される。
図15A左パネルにおいて詳述されるように、より暗い灰色はより高い値の正規化第3高調波(より軟い材料特性)を示し、白色はより低い値の正規化第3高調波(より硬い材料特性)を示す。すべての7つの硬質相領域(HZ1〜HZ7)は、中でも、様々なレベルの第3高調波を有する非線形磁気応答測定により検出される。
【0108】
非線形磁気応答測定及びその結果のデータマップが材料硬度特性と整合するということを検証するために、4140炭素鋼板は
図15A右側のパネルと同様に破線15Bに沿って切断された。破線15Bに沿って、7つの輪切り材料試料が作られ金属組織学的に研磨された。ビッカース硬度数(VHN)測定は圧入により表面下100μmにおいて100グラム負荷により断面内で行われた。破線15Bに沿ったHZ1〜HZ5全体にわたる硬度測定結果が
図15B右側パネルに示される。HZ6及びHZ7に関して、硬度測定は、表面下100μmにおいて測定される場合はいかなる高い硬度も捕捉せず、HZ6とHZ7との両方が100μmの深さにおいて高硬度の区域を有しないということを実証する。ビッカース硬度測定(特に非線形磁気応答)に従って、正規化第3高調波が同じ破線15Bに沿ってプロットされ、その結果は
図15B左パネル内に示され、正規化第3高調波のデータは、結果の高さと幅との一貫した相関を有するすべてのHZ1〜HZ7を捕捉することができる。具体的には、FWHM(半値全幅:Full width at half maximum)幅が、第3高調波応答と硬度測定との両方のためのすべての測定された硬質区域に関して標識付けされる。第3高調波応答から測定された幅は、実際の情報として概して考えられる硬度測定から測定された幅から1mm〜2mm以内の変動である。示された実施形態では、非線形磁気応答は2mm以上の横方向空間分解能をもって表面硬質区域を検出することができる。
【0109】
図16A〜16Bを参照すると、実施形態は例えば炭素鋼板内の異常を検出するために適用され得る。
図16A左側パネルを参照すると、平坦なTMCP炭素鋼板(例えば、9インチ(L)×5インチ(W)×1インチ(H))が試験された。この板の大部分がフェライト/パーライト相及び/又は軟質粒状ベイナイト相を有する一方で、4つの垂直方向連続の硬質相領域又は硬質区域(その中心は板上に十字マーカ印により標識付けされる)が存在する。これらのシミュレートされた硬質区域は、真空環境において電子ビームを使用した局所的表面加熱とそれに続いてヒートシンクとしての鋼製ボディによる自己温度消光とにより作られる。ここで使用された加熱パラメータは、前述の板(
図A14)においてHZ2〜HZ5に使用されたものと同じパラメータであり、したがって、これらの4つの硬質区域は様々な局所硬度及び幅を有し、様々な体積分率のラスベイナイト又はマルテンサイト硬質鋼相を含む。同じ加熱パラメータにより、4140炭素鋼とTMCP炭素鋼間のHZ2〜HZ5の硬度もまた、ベース鋼板の化学的性質が異なるため、異なる。
【0110】
同じ2次元自動化スキャナにより、非線形磁気応答測定結果から、正規化第3高調波係数のデータマップが
図16A右側パネルに示される。
図16A右側パネルにおいて詳述されるように、黒色〜濃い灰色はより高い値の正規化第3高調波(より軟質い材料特性)を示し、白色〜薄い灰色はより低い値の正規化第3高調波(より硬い材料特性)を示す。すべての4つの硬質相領域(HZ2〜HZ5)は、中でも、様々なレベルの第3高調波を有する非線形磁気応答測定により検出される。
【0111】
材料硬度特性と整合する非線形磁気応答測定結果の感度を検証及び試験するために、TMCP炭素鋼板は
図16A左パネルと同様に破線16Bに沿って切断された。破線16Bに沿って、1つの輪切り材料試料が作られ金属組織学的に研磨され、ビッカース硬度数測定は圧入により表面下100μmにおいて100グラム負荷により断面内で行われた。一例として、HZ3全体にわたる断面硬度マップが16B上側パネルに示される。断面において、高硬質区域は約8.0mmの幅と1.1mmの深さとを有する半楕円形状を有し、同硬質区域内のビッカース硬度数(250より大きなVHN)の平均増分は40である。バルク領域(250未満のVHN)内の材料微細構造は、走査電子顕微鏡画像(
図16B左下)に示すように粒状ベイナイトと針状フェライトとの混合物であり、高硬質区域(250より大きなVHN)内の材料微細構造は
図16B右下に示すように粒状ベイナイトとラスベイナイトとの混合物である。ビッカース硬度数測定結果に従って、第3高調波応答からのHZ3のFWHM幅は、同じ破線16B全体にわたる約10.0mmであると判断され、2mm空間分解能を有する硬度測定結果と整合する。
【0112】
他の非破壊検査ツールにおける慣習と同様に、当業者は、非線形磁気応答及び/又は第3高調波のピーク値を、様々なレベルのビッカース硬度数(VHN)、表面領域サイズ、及び試料内の硬質冶金学的相の深さに対して較正し得る。したがって、適切な較正により、本開示の方法及びシステムは、硬質冶金学的相の非均質性を有するヒステリシス材料などの2つ以上の材料相を有する試料の材料相部分だけでなくビッカース硬度数も測定するために使用され得る。
【0113】
前述の方法は、限定しないが、ボルト、鍛造品、鋳造品などを含む他の鋼部品の検査まで拡張され得る。
【0114】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが非ヒステリシス材料内のヒステリシス磁性材料相の検出のために使用され得る。非ヒステリシス材料は、限定しないがアルミニウム、オーステナイトステンレス鋼、二相ステンレス鋼及び高マンガン鋼を含み得る。ヒステリシス磁性材料相の例は、限定しないがマルテンサイト、イプシロンマルテンサイト、フェライト、パーライト、ベイナイト、ラスベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトのうちのうちの少なくとも1つを含む。非ヒステリシス材料内のヒステリシス磁性材料相の検出の第1の例示的アプリケーションは、二相ステンレス鋼(DSS)をグレード付けするために又は品質管理測度として使用され得るDSS中の磁性フェライト含有の量を判断することを含む。さらに具体的には、フェライトオーステナイトDSS中のデルタフェライトの量は、確定され、フェライトオーステナイトDSSをグレード付けするために使用され得る、又はデルタフェライトの量が所望範囲に入るかどうかを判断するために品質管理として使用され得る。
【0115】
さらに別の例では、非ヒステリシス材料内のヒステリシス磁性材料相の検出は、オーステナイトステンレス鋼(例えばグレード304、308、316など)溶接部及びオーステナイトステンレス鋼溶接部が高温に晒される場合に(例えば配管、容器、反応器及び溶接オーバーレイなどの精製所運転装置が水素化処理状態に晒される場合に)品質管理のために使用され得る。このような状態下では、シグマ相(例えばフェライトの)(ヒステリシス磁性材料相)が形成し得、材料を壊れ易くする。本明細書において説明される方法及びデバイスは、精製所運転装置のすべて又は一部分内の脆化シグマ相の量を測定する又は脆化シグマ相の有無を検出するために使用され得る。水素化処理中、通常、精製所運転装置及びその溶接部はオーステナイトステンレス鋼を含む。水酸化処理中、通常、反応器の下流の精製所運転装置はオーステナイトステンレス鋼を含み、反応器の上流の、反応器内の、及び反応器の下流の精製所運転装置内の溶接部はオーステナイトステンレス鋼を含む。水酸化処理における反応器は通常、オーステナイト鋼溶接オーバーレイを有するCr−Mo材料からなる。いくつかの実施形態では、本明細書において説明される方法及びデバイスはまた、D/S内の水酸化反応器内の厚肉Cr−Mo反応器のオーステナイトステンレス鋼配管、容器、及び溶接オーバーレイの製作のために使用される周溶接部及びシーム溶接部中のフェライト含有の量を測定する又はその有無を検出するために使用され得る。フェライト含有の量は、ステンレス鋼溶接部内の溶接凝固亀裂を防止するための望しい量を満足する必要がある。
【0116】
非ヒステリシス材料内のヒステリシス磁性材料相を検出する前述の例のそれぞれでは、非線形磁気応答信号とヒステリシス磁性材料相の含有量とを相関付けるために、非ヒステリシス材料内に様々な量のヒステリシス磁性材料相を有する較正試料が用意され得る。
【0117】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが、溶接部の硬度を特徴付けるために使用され得る。
図13A〜Eに関する開示と同様に、様々な溶接材料のVHN又はブリネル硬度数(BHN:Brinell Hardness number)は、本明細書において説明される非線形磁気応答信号と相関付けられ得る。溶接部の硬度の特徴付けを適用する第1の例では、携帯デバイス(a handheld device)が、溶接部(新しい、古い、又は修理された)に対する又はその一部分に対する非線形磁気応答信号を測定するために使用され得、次に、非線形磁気応答信号はVHN及び/又はBHNと相関付けられ得る。
【0118】
溶接部の硬度の特徴付けを適用する別の例は、電気抵抗溶接(ERW:electric resistance weld)のタイプ(例えば低周波数熱処理型ERW、低周波数非熱処理型ERW、高周波数熱処理型ERW及び高周波数非熱処理型ERW)を識別することである。この例では、ERWの非線形磁気応答信号と比較された非線形磁気応答信号ベースパイプはERWのタイプと相関があり得る。このような相関は標準較正測定を介し判断され得る。このような方法の実施形態は、インラインパイプライン検査ゲージ、自動又は手動牽引式パイプライン検査ツール、製鋼所検査ツール、溝内検査ツール、携帯検査デバイスなどを含み得る。特徴付けを適用するさらに別の例では、溶接部の硬度は、溝内検査を使用してベースパイプの硬度及びパイプグレードを識別することである。この例では、非線形磁気応答信号は、較正され、ベースパイプの材料の硬度、引張り及び/又は降伏強度と相関付けられ得る。このような相関は溝内検査を使用してパイプグレードを判断するために使用され得る。
【0119】
溶接部の硬度の特徴付けを適用するさらに別の例では、修理後の溶接部(例えばシーム溶接部及び/又は周溶接部)の硬度。一例では、修理された溶接部は、水素化処理反応器内で使用される圧力容器(例えばCr−Mo 1/2Cr鋼からなる)と関連付けられ得る。修理プロセスは、溶接部と溶接部周囲の金属の一部分とを除去することと、その領域を交換/補修することとを含み得る。新たに形成された溶接部は任意選択的に熱処理され得る。検査プロセスは、修理後の溶接部(ポスト溶接熱処理の有無にかかわらず)が、溶接部の硬度の工業規格及び/又は社内仕様を満たす及び/又は溶接部内のハードスポットを識別するかどうかを判断する工程を含み得る。
【0120】
別の同様な例は21/4 Cr−V鋼容器に関連する溶接部の硬度を測定する工程を含む。検査プロセスは、製作溶接部及び/又は修理(ポスト溶接熱処理の有無にかかわらず)後の溶接部が、溶接部の硬度の工業規格及び/又は社内仕様を満たす及び/又は溶接部内のハードスポットを識別するかどうかを判断する工程を含み得る。
【0121】
さらに別の同様な例は、経時的な溶接部硬度の管理を含む。すなわち、容器、パイプなどは、ハードスポットの硬度及び/又は位置及びサイズを経時的に監視することにより検査され得る。検査は、携帯デバイス及び自動クローラを含み得る任意の好適なデバイスにより行われ得る。検査プロセスは製作溶接部及び/又は修理溶接部(ポスト溶接熱処理の有無にかかわらず)に対し行われ得る。
【0122】
溶接硬度及び/又は溶接部内のハードスポットと相関付けられた非線形磁気応答信号を使用する別の実施形態では、特に溶接ルート及び/又は溶接キャップが検査及び分析され得る。好ましい例では、このアプリケーションは、ライザーの現場溶接とサワーサービス(sour service)パイプラインとへ適用され得る。任意選択的に、本明細書において説明される非線形磁気応答信号方法/デバイスによるルート溶接部の検査はレーザルートプロファイリングと組み合わせて行われ得る。ルート溶接(例えば周溶接ルート)内の硬度の増加は、不適切な溶接手順(例えば、溶接ルートに近いCu冷却シューズ(Cu cooled shoes)を使用する)における高冷却速度及び/又はCu冷却シューズなどの機器からの溶接金属中への溶解されたCu汚染から生じ得る。
【0123】
溶接部内の溶接硬度及び/又はハードスポットと相関付けられた非線形磁気応答信号を使用するさらに別の例では、裏溶接の品質が評価され得る。裏溶接は手動でなされる周溶接に対する内部修理である。裏溶接部内のハードスポットの硬度及び/又は位置並びにサイズを判断する工程は、裏溶接部が硬度の工業規格及び/又は社内仕様を満たすかどうかを検証し得る、又はさらなる修理が必要かどうかを判断し得る。このような方法の実施形態は、インラインパイプライン検査ゲージ、自動又は手動牽引式パイプライン検査ツール、携帯検査デバイスなどを含み得る。
【0124】
溶接部内の溶接硬度及び/又はハードスポットと相関付けられた非線形磁気応答信号を使用する別の例では、本明細書において説明される方法及びデバイスは、周溶接部を生成ために使用される溶接バグ及び/又は周溶接部を検査するために使用される超音波試験バグと併せて使用され得る。バグは、周溶接部を生成する及び/又は周溶接部を検査するためにパイプの外周を回る自動機械である。本明細書において説明されるデバイスは、形成された(すなわち溶接バグにより)後に又は周溶接部の超音波応答を測定する(すなわち超音波試験バグにより)際に周溶接部の非線形磁気応答信号を測定するためにバグと一体化され得る。
【0125】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが、パイプ又は類似構造を製造するために使用される材料又はパイプ又は類似構造内に使用される材料の硬度、引張り強度、及び/又は降伏強度を特徴付けるために使用され得る。
図13A〜Eに関する開示と同様に、パイプ又は類似構造を製造するために使用される材料又はパイプ又は類似構造内に使用される材料の硬度(例えばVHN又はBHN)、引張り強度、及び/又は降伏強度は本明細書において説明される非線形磁気応答信号と相関付けられ得る。硬度、引張り強度、及び/又は降伏強度が判断されると、パイプグレードが導出され得る。このような方法の実施形態は、インラインパイプライン検査ゲージ、自動又は手動牽引式パイプライン検査ツール、製鋼所検査ツール、溝内検査ツール、携帯検査デバイスなどを含み得る。
【0126】
本開示の少なくとも1つの態様によると、実施形態は、限定しないが、パイプライン及び類似構造の完全性を低下させる応力腐食亀裂を引き起こし得る硬質区域(例えば、冷間加工領域又は凹部)を検出及び定位するために使用され得る。応力腐食亀裂は腐食環境における亀裂の形成又は成長である。オーステナイトステンレス鋼及びアルミ合金では、塩化物(例えばNaCl、KCl及びMgCl
2)が応力腐食亀裂の源であり得る。応力腐食亀裂は通常、故障が発生してはならないということを破壊力学が予測する条件下で伝播する表面内の小さな傷により開始する。応力腐食亀裂を引き起こし得る応力腐食亀裂及び/又は局所硬質加工区域(硬質区域)の領域を非破壊材料検査方法又はツールにより検出することができることで、パイプライン又は他の構造の故障を軽減する可能性がある。このような方法の実施形態は、インラインパイプライン検査ゲージ、自動又は手動牽引式パイプライン検査ツール、携帯検査デバイスなどを含み得る。
【0127】
当業者には明らかなように、本開示の態様は、システム、方法又はコンピュータプログラム製品として具現化され得る。したがって、本開示の態様は、完全にハードウェア実施形態、完全にソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又は本明細書ではすべて「回路」、「モジュール」又は「システム」と一般的に呼ばれ得るソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせる実施形態の形式を取り得る。さらに、本開示の態様は、その上に具現化されたコンピュータ可読プログラムコードを有する1つ又は複数のコンピュータ可読媒体内に具現化されたコンピュータプログラム製品の形式を取り得る。
【0128】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用され得る。コンピュータ可読媒体はコンピュータ可読信号媒体であってもよいしコンピュータ可読ストレージ媒体であってもよい。コンピュータ可読ストレージ媒体は例えば、限定するものではないが、電子、磁気、光、電磁気、赤外線、又は半導体システム、装置、デバイス又はこれらの任意の組み合わせであり得る。コンピュータ可読ストレージ媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)は、1つ又は複数のワイヤを有する電子的接続、携帯型コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブルROM(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、携帯型コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、光学的ストレージデバイス、磁気的ストレージデバイス、又はこれらの任意の好適な組み合わせを含むであろう。本文書の文脈では、コンピュータ可読ストレージ媒体は命令実行システム、装置又はデバイスにより又はそれに関連して使用するためのプログラムを含む又は格納し得る任意の有形な媒体であり得る。
【0129】
コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読プログラムがその上に具現化された伝搬データ信号であって例えばベースバンド内の又は搬送波の一部としての伝搬データ信号を含む。このような伝播信号は、限定しないが、電磁気、光、又はそれらの任意の好適な組み合わせを含む多様な形式のうちの任意の形式を取り得る。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読ストレージ媒体でない任意のコンピュータ可読媒体であって、命令実行システム、装置又はデバイスによる使用のための又はそれに関連する使用のためのプログラムを伝達、伝搬、又は輸送し得る任意のコンピュータ可読媒体であり得る。
【0130】
コンピュータ可読媒体上に具現化されるプログラムコードは、限定しないが、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなど又は上述したものの任意の好適な組み合わせを含む任意の適切な媒体を使用して送信され得る。
【0131】
本開示の態様の操作を行うためのコンピュータプログラムコードは、Java、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、「C」プログラミング言語又は同様なプログラミング言語などの従来手順プログラミング言語、及びLabView又は同様なプログラミング言語などのビジュアルプログラミング言語を含む1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれ得る。プログラムコードは、ユーザのコンピュータ上で完全に、スタンドアロンソフトウェアパッケージとしてのユーザのコンピュータ上で部分的に、ユーザのコンピュータ上で部分的に、リモートコンピュータ上で部分的に、又はリモートコンピュータ又はサーバ上で完全に実行し得る。後者のシナリオでは、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介しユーザのコンピュータへ接続され得る、又は、接続は外部コンピュータに対しなされ得る(例えばインターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介し)。いくつかの実施形態では、例えば現在のパイプライン検査ゲージ(PIG)技術では、PIG上のオンボードコンピュータ及びプロセッサはパイプラインで送られ、その間に、コンピュータは、オンボード送信機及びセンサを制御するために、予めロードされた命令及びプログラムコードを使用し、初期解析を行い、測定結果を格納する。パイプライン出口において、ユーザは、PIGを取り出し、格納済みデータをダウンロードし、このデータはさらに、様々なプログラムコードにより別のコンピュータ上で解析され、後処理され得る。
【0132】
本開示の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して上に説明された。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック並びにフローチャート図及び/又はブロック図内のブロックの組み合わせはコンピュータプログラム命令により実施され得るということが理解されることになる。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介し実行する命令がフローチャート及び/又はブロック図ブロック又はブロック群において規定された機能/行為を実施する手段を生成するように、マシンを製造するために汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサへ提供され得る。
【0133】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、フローチャート及び/又はブロック図ブロック又はブロック群内に規定された機能/行為を実施する命令を含むコンピュータ可読媒体内に格納された命令が製品を生成するようにコンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイスに特定のやり方で機能するように指示し得るコンピュータ可読媒体内に格納され得る。
【0134】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行する命令が、本明細書において規定された機能/行為を実施するためのプロセスを提供するように、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置上、又は一連の操作工程がコンピュータ上で行われるようにする他のデバイス上、コンピュータ実施工程を生成するための他のプログラム可能装置又は他のデバイス上にロードされ得る。
【0135】
実験室実験及びコンピュータシミュレーションを介し、様々なヒステリシス曲線を有する強磁性材料を検出及び区別する(例えば硬質マルテンサイトスポットと軟質フェライト相とを区別する)ための非線形磁気及び磁気音響システム並びに方法が開示された。ヒステリシス材料の例は、強磁性材料(例えば鋼、ニッケル、コバルトなど)と多様な炭素鋼などのそれらの合金のうちのいくつかとを含む。非線形磁気応答が材料の初期/残留磁化に依存するということも観察された。このような複雑性を回避するために、実施形態は、材料の内部の磁化を規制するための効果的な手法を含む。このような効果的な手法の例は、限定しないが、材料が小さな交流磁気変調に対して垂直な方向に外部から磁化される
図7A、7B、7Cのように上の論述において提供された。
【0136】
加えて、基本的電磁気力に基づき、非線形磁気応答の自然派生物は非線形電気的渦流生成である。大きな永久磁場と結合されると、この渦電流は非線形機械的波を生成し、評価されたヒステリシス材料により磁気音響応答を生成する。磁気異常の検出(例えばパイプライン検査における)を改善するために、非線形磁気実施形態は、従来のPIGシステム内のMFLセットアップへ取り込まれ得、非線形磁気音響検出実施形態は当業者により認識されるように既存EMATセンサに対し適用され得る。
【0137】
実施形態は、例えばパイプ中の欠陥及びハードスポット/領域を識別するためのかつてない非線形磁気及び磁気音響検出を提供する。実施形態は、非線形磁気応答の深い理解により可能にされる様々なヒステリシス材料(例えば軟質フェライト鋼/領域と硬質マルテンサイト鋼/領域)を区別するための非常に際立った特徴を提供する。特に、偶数高調波応答と奇数高調波応答との両方が調査され、材料の磁気特性及び状態に対するそれらの関係が発見された。加えて、実施形態は、本方法が高速検査及び深さ走査に非常に好都合であり得る広周波数帯域(例えば100Hz〜1MHz)全体にわたり使用され得るので現場用途に非常に好都合であり、実施形態は、金属コア無しに低電流及び低磁場において働き、したがって、比較的エネルギー効率が良い。
【0138】
非破壊パイプライン検査の改善はパイプ破損及び漏洩のリスクを著しく低減する。実施形態はパイプライン検査の方法を保有する新しいツールを提供する。
【0139】
非破壊材料検査システムを使用するアプリケーション及び方法
上に説明されるとともに添付図面に示される本開示の方法及びシステムは、優れた特性を有する非破壊材料検査を提供する。1つのアプリケーションでは、本方法及びシステムは、検査される鋼材内の1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性を識別するためにインライン検査の非破壊評価ツールとして使用され得る。検査される鋼材の例は、限定しないが、鋼板、ボルト、鍛造品、鋳造品、パイプ、ライザー、表面、溶接、溶接ルート、溶接キャップ、継手などを含む。材料内の材料状態及び不均質性の例は、限定しないが鋼材の硬度、鋼材のグレード又はタイプ、鋼材内の材料相の存在、鋼材内のハードスポットの存在、鋼材内の金属損失又はクラックの存在、鋼材内の欠陥の存在、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0140】
上述のアプリケーションでは、材料相は、限定しないが、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ベイナイト、ラスベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトのうちのうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、入力時変磁場により材料を調査するとともに受信された磁気応答又は音響応答の時間依存非線形特性と材料の1つ又は複数の材料状態とを相関付ける非破壊評価ツール上に取り込まれ得る。非破壊評価試験ツールの非限定的例は、インラインパイプライン検査ゲージ、自動又は手動牽引式パイプライン検査ツール、製鋼所検査ツール、及び携帯検査デバイスを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、磁気送信機、磁気センサ、音響センサ、及び調査対象材料の好適な近傍位置に置かれた馬蹄形磁石の複数の複製を含み得る。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、1つの磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を含む。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製を含む(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、その2本の脚が調査対象材料の表面と接触する少なくとも1つの馬蹄形磁石を含む。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含む。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、調査対象材料中の磁化を規制するために任意選択的磁石又は電磁石を含む。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、直流磁場を提供するために任意選択的磁石又は電磁石を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、様々な空間位置における磁気応答又は音響応答を検出するために磁気送信機、磁気センサ及び音響センサを移動するためのコンピュータ制御自動プラットフォームを含み得る。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、様々な空間位置における磁気応答又は音響応答を検出するために磁気送信機、磁気センサ及び音響センサを移動するための手動制御並進及び回転プラットフォームを含み得る。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機及び1つの磁気センサを含む携帯デバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、アプリケーションにおける調査対象試料は、限定しないが、低周波数熱処理型電気抵抗溶接(ERW)パイプ、低周波数非熱処理型ERWパイプ、高周波加熱処理型ERWパイプ及び高周波非熱処理型ERWパイプを含み得る。
【0143】
非破壊材料検査システムを使用する4つの特定アプリケーション及び方法のさらなる詳細は以下のとおりである:
【0144】
1.鋼部品検査
サービス中のパイプライン又はチューブの性能を劣化させ寿命を低減する硬質冶金学的相(例えば:マルテンサイト又はラスベイナイト)などの望ましくない相のパイプライン又はダウンホール用途のラインパイプへ作製される鋼板のような鋼部品を非破壊的に調査する必要性がある。大口径ラインパイプは通常、熱機械制御処理(TMCP)方法1711(
図17A)を使用して熱間圧延鋼板から製造され、その後、「U」形状へ冷間成形され、続いて金型内で「O」形状へ成形され、ロングシーム溶接後にパイプへ展開され(UOE)、又は「J」、「C」及び「O」形状(JCO)へ順次押し曲げられ、その後、ロングシーム溶接され、最終形状及び寸法へ展開される。ロングシーム溶接は通常、サブマージアーク溶接(SAW:submerged arc welding)、ダブルサブマージアーク溶接(DSAW:double submerged arc welding)又は電気抵抗溶接プロセス(ERW:electric resistance welding process)により作られる。TMCP板の製造中、インゴット又は連続鋳造プロセス1701、熱間圧延1703、及び加速冷却(ACC:accelerated cooling)1705などの以下の鋼処理工程1700(
図17Aに示す)のうちの任意のものにおいて、TMCP鋼鈑1707の表面上(又はバルク内)の望ましくない相の形成に至るプロセス乱れがあり得る。TMCP板1707製造のプロセス制御及び品質管理が望ましくない相を検査又はスクリーニングすることを可能にし得る非破壊検査技術の必要性がある。一実施形態では、上に開示された非線形磁気及び磁気音響検出方法及びシステムは、
図17A及び
図17Bに示すように加速冷却工程1705後にTMCP板表面を走査する(1713)ことができる検査デバイス1709内に取り込まれる。この検査デバイス1709は、台車(a trolley)を手動で使用することにより又は自動化走査システム上で板1707を走査し(1713)得る。走査からのデータは、望ましくない相が鋼鈑1707内に存在するかどうかと、望ましくない相(例えば板表面上の硬質微構造区域の形成)の量が所定閾値を越えるかどうかとを判断するために、オンラインで解析される(1715)か、又は格納され、オフラインで解析される(1715)。望ましくない相の量が閾値を超える場合(1717)、板1707は、ラインパイプへのさらなる処理から排除される(1719a)、又はラインパイプへさらに処理される前に好適な処理(例えば焼き戻し)により改善(remediated)される(1719b)。望ましくない相の量が閾値未満であれば(1721)、板1707はラインパイプへさらに処理される(1723)。ACC工程1705後の板1707のこのような検査は、望ましくない相の形成を最小化するプロセスを最適化するために鋼及び板処理工程へフィードバックを提供するであろう。
【0145】
上述のアプリケーションでは、望ましくない相の例は、限定しないが、マルテンサイト、ベイナイト、ラスベイナイト及び任意の非ヒステリシス材料のうちのうちの少なくとも1つを含み得る。鋼鈑内の材料相は、限定しないが、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ベイナイト、ラスベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトのうちのうちの少なくとも1つを含み得る。上述のアプリケーションの検査デバイス1709は、限定しないが、デバイス200の複数の複製(
図2A、3Aなど)並びに鋼鈑の好適な近傍位置に置かれた磁気送信機、磁気センサ、音響センサ及び馬蹄形磁石の複数の複製を含み得る。各磁気送信機は磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製と対をなし得る。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製を含む(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。加えて、検査デバイス1709は、限定しないが、様々な空間位置において磁気応答又は音響応答を検出するために磁気送信機、磁気センサ及び音響センサを移動するためのコンピュータ制御型自動化移動プラットフォーム又は台車などの手動制御型移動プラットフォームを含み得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、検査デバイス1709は、限定しないが、その2本の脚が鋼鈑の表面と接触する少なくとも1つ又は複数の任意選択的馬蹄形磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1709は、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1709は、限定しないが、鋼鈑中の磁化を規制するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1709は、限定しないが、磁気音響応答のための直流磁場を提供するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。
【0147】
前述の方法は、限定しないが、ボルト、鍛造品、鋳造品などを含む他の鋼部品の検査まで拡張され得る。
【0148】
2.鋼パイプラインシーム溶接検査
サービス中のパイプライン又はチューブの性能を劣化させ寿命を低減する硬質冶金学的相(例えば:マルテンサイト又はラスベイナイト)などの望ましくない相のパイプライン完全性を評価するための鋼パイプラインを非破壊的に調査する必要性もある。大口径ラインパイプは通常、TMCP方法を使用して熱間圧延鋼板から製造され、その後、JCO又はUOEプロセスを使用して最終形状及び寸法へ冷間成形される。ロングシーム溶接は通常、サブマージアーク溶接(SAW)、ダブルサブマージアーク溶接(DSAW)又は電気抵抗溶接プロセス(ERW)により作られる。大口径ラインパイプと小口径ラインパイプとの両方はまた、熱間圧延ストリップから製造され、ラインパイプを作るために好適なロングシーム溶接プロセスを使用して連続的に低温曲げされ溶接され得る。採用されるロングシーム溶接は、現代ラインパイプの高周波ERW(HF−ERW)であってもよいし、1970年以前に製造された年代物ラインパイプの低周波ERW(LF−ERW)又はHF−ERW、又はフラッシュバット溶接又は同様なプロセスのうちのいずれかであってよい。製鋼所におけるラインパイプの製造中、ロングシーム溶接プロセス又はロングシーム溶接のポスト溶接熱処理(PWHT:post-welding heat treatment)中にプロセス乱れがあり得る。例えば、ERWにより作られた1970年以前の年代物パイプにおけるロングシーム溶接は、通常は内径(ID)から外径(OD)にわたる2〜10mm幅である熱変質区域(HAZ:heat affected zone)を含む。硬質冶金学的相などの望ましくない相は、接合ラインにおいて及び/又はHAZ内においての両方で形成される可能性がある。溶接部が熱処理されなければパイプ製造中の不適切なポスト溶接熱処理プロセスは、ラインパイプシーム溶接部内の硬質冶金学的相などの望ましくない相を残し得、これらはその後、サービス中に導入され得る。したがって、現在サービス中であるパイプラインに関し、パイプ内の製品(例えば原油、天然ガス、ガソリンなど)の流れへの最小妨害により望ましくない相に関し検査又はスクリーニングすることによりパイプラインの完全性の脅威を評価し得る非破壊検査技術の必要性がある。一実施形態では、上記開示された非線形磁気及び磁気音響検出方法及びシステムは、
図18Aに示すようにパイプ1803のIDを検査又は走査する(1807)ことができるパイプライン検査ゲージ(PIG)1801上の1つ又は複数の検査デバイス1800内に取り込まれる。検査1807中、PIG1801はパイプライン1803を介し送られ、オンボード検査デバイス1800は、データ取得及び収集(及び/又は初期解析)を行い(1807)、測定結果を格納する。パイプライン出口又はPIG受信機位置において、ユーザは、PIGを取り出し、格納済みデータをダウンロードする。このデータは、パイプライン内に望ましくない相が存在するかどうかと、望ましくない相の位置と、望ましくない相の量が所定閾値値を越えるかどうかとを判断する(1811)ためにさらに解析され、後処理され得る(例えば別のコンピュータにおいて)(1809)。望ましくない相の量が特定位置において閾値を超える場合(1813)、当該位置におけるパイプラインセグメントは、
図18Bのフローチャートのように好適な処理(例えば焼き戻し又はアニーリング)により交換され得る(1815a)又は改善され得る(1815b)。望ましくない相の量が特定位置において閾値を超える場合(1817)、当該位置におけるパイプラインセグメントはサービス中のままであり得る。
【0149】
上記アプリケーションでは、望ましくない相の例は、限定しないが、マルテンサイト、ベイナイト、ラスベイナイト及び任意の非ヒステリシス材料のうちのうちの少なくとも1つを含み得る。パイプライン1803中の材料相は、限定しないが、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ベイナイト、ラスベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトのうちの少なくとも1つを含み得る。上記アプリケーションの検査デバイス1800は、限定しないが、デバイス200の複数の複製(
図2A、3Aなど)、及び管壁のIDの好適な近傍位置に置かれた磁気送信機、磁気センサ、音響センサ及び馬蹄形磁石の複数の複製を含み得る。各磁気送信機は磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製と対をなし得る。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製を含む(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1800の複数の複製は、1つ又は複数の長手方向位置(
図18A上に示されるように2つの位置)においてPIG1801の外周をカバーするような配置で置かれる。好ましい配置は、1つの長手方向位置当たり外周周囲に検査デバイス1800の少なくとも20個の複製を含み得る。より好ましい配置は、1つの長手方向位置当たり外周周囲に検査デバイス1800の少なくとも100個の複製を含み得る。さらに好ましい配置は、1つの長手方向位置当たり外周の周囲に密に詰め込まれる可能性がある最大数の検査デバイス1800を含み得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、検査デバイス1800は、限定しないが、その2本の脚が管壁のIDに接触する少なくとも1つ又は複数の任意選択的馬蹄形磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1800は、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1800は、限定しないが、パイプ1803内の磁化を規制するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1800は、限定しないが、磁気音響応答のための直流磁場を提供するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。
【0151】
3.パイプライン、ライザー、配管及び溶接構造内の溶接部の検査
ライザー、パイプライン及び他の配管システム内の周溶接部などの溶接部、又は硬質冶金学的相(例えば:マルテンサイト又はラスベイナイト)などの望ましくない相(サービス中のライザー、パイプライン又はチューブの性能を劣化させ寿命を低減し得る)の配管及び溶接構造内の隅肉溶接部又は重ね溶接部又は突き合せ溶接部を非破壊的に検査する必要性もある。ライザー、パイプライン及び他の配管システムの建設段階中、配管又はラインパイプの部分は通常、配管又はパイプライン又はライザーの連続的な又は長い部分を作り上げるために外周に沿って互いに接合/溶接される。これは周溶接と呼ばれる。同様に、溶接継手を有する配管システム又は構造の構築中、一般的に使用される溶接タイプは、限定しないが、周溶接、隅肉溶接、重ね溶接又は突き合せ溶接を含む。様々なタイプの溶接は通常、限定しないがガスメタルアーク溶接(GMAW:Gas Metal Arc Welding)、シールド金属アーク溶接(SMAW:Shielded Metal Arc Welding)、ガスタングステンアーク溶接(GTAW:Gas Tungsten Arc Welding)又はフラックス入りアーク溶接(FCAW:Flux-Cored Arc Welding)を含む溶接プロセスによりなされる。溶接中にプロセス乱れがあり得、硬質冶金学的相などの望ましくない/有害な相が、溶接部内に(例えば、ID中の周溶接部のルートにおいて、OD上の周溶接部の溶接キャップにおいて)形成し、パイプライン、ライザー又は配管システム又は溶接構造の構築中に改善を必要とする可能性がある。この結果、望ましくない相を検査するために溶接のプロセス制御及び品質管理を可能にし得る非破壊検査技術の必要性がある。一実施形態では、上記開示された非線形磁気及び磁気音響検出方法及びシステムはIDを検査/走査することができる手動(例えば繋留又は牽引式システム)又は自動(例えばロボットクローラ)検査ツール上の、又はパイプのOD又は構造又は配管溶接のキャップの検査の手動又は自動システム上の1つ又は複数の検査デバイス内に取り込まれる。周溶接部1905のルートを走査するためのID検査ツール1900の例が
図19Aに示される。周溶接部1905の溶接キャップを走査するためのOD検査ツール1909の例が
図19Aに示される。2つのラインパイプ部分1907aと1907bとの間の1つの周溶接部1905の構築1913の後、ルートパス若しくはルート及びホットパス、又はホット、ルート及びいくつかのフィルパスの堆積後に、並びに次の周溶接へ進む前に又は部分的に完成された周溶接後の検査の場合に現在の溶接を完成する前に、ID検査ツール1900又はOD検査ツール1909は、オンボード検査デバイス1903がパイプID又はODからの周溶接部1905の好適な近傍位置に到達し、次に、データ取得及び解析を行うようにパイプ1907a、1907bに沿って押され得る(1915)。次に、ユーザはID検査ツールを(例えば繋留器1901により)取り出し(1917)、データは、周溶接部1905のルートに望ましくない相が存在するかどうかと、望ましくない相の位置と、望ましくない相の量が所定閾値値を越えるかどうかとを判断する(1919)ためにオンボードコンピュータによりオンラインで解析される。望ましくない相の量が閾値を超える場合(1921)、フローチャート
図19Bのように、周溶接部1905は除去/切り出され、次の周溶接へ進む前に次の溶接パス(例えば、IDにおけるルートパス又はルート及びホットパス後の)又はポスト溶接熱処理(例えば焼き戻し又は焼きならし)のための焼き戻しビーディング技術を適用するなどにより、新しい周溶接部と交換される(1923a)又は好適な処理により改善される(1923b)。望ましくない相の量が閾値未満であれば(1925)、ID検査ツール1900又はOD検査ツール1909は次の周溶接部へ移動される。
【0152】
上述のアプリケーションでは、望ましくない相の例は、限定しないが、マルテンサイト、ベイナイト、ラスベイナイト及び任意の非ヒステリシス材料のうちのうちの少なくとも1つを含み得る。パイプライン中の材料相は、限定しないが、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ベイナイト、ラスベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトのうちのうちの少なくとも1つを含み得る。上述のアプリケーションの検査デバイス1903は、限定しないが、デバイス200の複数の複製(
図2A、3Aなど)、並びに配管又は溶接構造内の管壁又は溶接部のID又はODの好適な近傍位置に置かれた磁気送信機、磁気センサ、音響センサ及び馬蹄形磁石の複数の複製を含み得る。各磁気送信機は磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製と対をなし得る。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製を含む(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1903の複数の複製は、1つ又は複数の長手方向位置(
図19A上に示される2つの位置)において牽引式検査ツール1900、1909の外周をカバーするような配置で置かれる。好ましい配置は、1つの長手方向位置当たり外周周囲に検査デバイス1903の少なくとも20個の複製を含む。より好ましい配置は、1つの長手方向位置当たり外周周囲に検査デバイス1903の少なくとも100個の複製を含む。さらに好ましい配置は、1つの長手方向位置当たり外周の周囲に密に詰め込まれる可能性がある最大数の検査デバイス1903を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、検査デバイス1903は、限定しないが、その2本の脚が管壁のID又はODに接触する少なくとも1つ又は複数の任意選択的馬蹄形磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1903は、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1903は、限定しないが、パイプ中の磁化を規制するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス1903は、限定しないが、磁気音響応答のための直流磁場を提供するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。
【0154】
4.鋼部品、パイプラインシーム及び周溶接部、配管内の溶接部、及び溶接構造の携帯検査
加えて、鋼部品(例えば鋼鈑、ボルト、鍛造品、鋳造品など)、シーム溶部接、周溶接部、隅肉溶接部、突き合せ溶接部及び重ね溶接部などの材料及び溶接部を、サービス中のパイプライン又はチューブ、配管、又は溶接構造の性能を劣化させ寿命を低減する硬質冶金学的相(例えば:マルテンサイト又はラスベイナイト)などの望ましくない相の携帯検査ツールにより非破壊的に調査する必要性がある。既にサービス中であるパイプラインの非破壊検査によりシームタイプ及び熱処理状態を識別する必要性もある。大口径ラインパイプは通常、TMCP方法を使用して熱間圧延鋼板から製造され、その後、JCO又はUOEプロセスを使用して最終形状及び寸法へ冷間成形される。TMCP板の製造中、インゴット又は連続鋳造プロセス、熱間圧延、及び加速冷却(ACC)などの以下の鋼処理工程(
図10Aに示す)のうちの任意のものにおいて、TMCP鋼鈑の表面上(又はバルク内)の望ましくない相の形成に至るプロセス乱れがあり得る。ERW、SAW又はDSAWなどのロングシーム溶接プロセス中に又はポスト溶接熱処理(PWHT)中にプロセス乱れもあり得る。大口径ラインパイプと小口径ラインパイプとの両方はまた、熱間圧延ストリップから製造され、ラインパイプを作るために好適なロングシーム溶接プロセスを使用して連続的に低温曲げ及び溶接される。採用されるロングシーム溶接は、現代ラインパイプの高周波ERW(HF−ERW)であってもよいし、1970年以前に製造された年代物ラインパイプの低周波ERW(LF−ERW)又はHF−ERW、又はフラッシュバット溶接又は同様なプロセスのうちのいずれかであってよい。製鋼所におけるラインパイプの製造中、ロングシーム溶接プロセス又はロングシーム溶接のポスト溶接熱処理(PWHT)中にプロセス乱れがあり得る。例えば、ERWにより作られた1970年以前の年代物パイプにおけるロングシーム溶接は、内径(ID)から外径(OD)にわたる通常は2〜10mm幅である熱変質区域(HAZ)を含む。硬質冶金学的相などの望ましくない相は、接合ラインにおいて及び/又はHAZ内においての両方で形成される可能性がある。溶接部が熱処理されない又は不適切なポスト溶接を受ければ、パイプ製造中の熱処理プロセスは、ラインパイプシーム溶接部内に硬質冶金学的相などの望ましくない相を残し得、これらの望ましくない相はその後、サービス中に導入される。ライザーの建設段階中、パイプライン及び他の配管システム、配管又はラインパイプの部分は通常、配管又はパイプライン又はライザーの連続的な又は長い部分を作り上げるために、外周に沿って互いに接合/溶接される。これは周溶接と呼ばれる。同様に、溶接継手を有する配管システム又は構造の構築中、一般的に使用される様々な溶接タイプは、限定しないが、周溶接、隅肉溶接、重ね溶接又は突き合せ溶接を含む。様々なタイプの溶接は通常、限定しないがガスメタルアーク溶接(GMAW)、シールド金属アーク溶接(SMAW)、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)又はフラックス入りアーク溶接(FCAW)を含む溶接プロセスによりなされる。
【0155】
すべての上述のプロセス中、硬質冶金学的相などの相は、鋼鈑内、シーム溶接部内、又は周溶接部内に形成し得、いくつかのサービス(例えば湿潤H
2Sサービス又はサワーサービス)状況下では、有害であり得る。非破壊検査技術が、硬質微細構造又は溶接タイプなどの微構造相(例えばラインパイプシーム溶接がLF−ERW又はHF−ERW溶接か、溶接が熱処理されたか否か)を検査する必要性がある。一実施形態では、上記開示された非線形磁気及び磁気音響検出方法及びシステムは、
図20Aに示すように炭素鋼材を含む様々な金属を検査/走査することができる携帯検査デバイス2000内に取り込まれる。一実施形態では、ユーザは、加速冷却工程後に又はその後の任意の段階においてTMCP板表面2001を走査するために携帯ツール2000を使用し得る。別の実施形態では、ユーザは、パイプライン、ライザー又は配管構築中、又はその完了後、又は長年のサービス後のいずれかに、パイプライン2007のODから周溶接部2009を走査するために携帯ツール2000を使用し得る。別の実施形態では、ユーザは、構築中に、又はその完了後に、又は長年のサービス後に、パイプライン2011又は溶接構造の周溶接部、隅肉溶接部2013、重ね継ぎ部、突き合せ溶接部を走査するために携帯2000ツールを使用し得る。さらに別の実施形態では、ユーザは、パイプライン2003及びそのシーム溶接部2005を走査するために、及び限定しないがLF−ERW熱処理パイプ、LF−ERW非熱処理パイプ、HF−ERW熱処理パイプ及びHF−ERW非熱処理パイプを含むERW溶接タイプを識別するために携帯ツール2000を使用し得る。すべての検査プロセス2015中、走査からのデータは、望ましくない相が対応鋼材内に存在するかどうかと、望ましくない相の位置と、望ましくない相の量が所定閾値値レベルを越えるかどうかとを判断する(2019)ために、オンライン又はオフラインで解析される(2017)。望ましくない相の量が特定位置において閾値を超える場合(2021)、当該位置における鋼材は、フローチャート
図20Bに示すように、好適な処理(例えば焼き戻し)による交換(2023a)又は改善(2023b)を必要とする。望ましくない相の量が特定位置において閾値未満であれば(2025)、当該位置は品質管理に合格する、又はサービス中のままである。別の実施形態では、走査からのデータは、シームタイプと、年代物パイプラインの溶接部がポスト溶接熱処理されたか否かと、を判断する(2029)ためにオンライン又はオフラインのいずれかで解析される。
【0156】
上述のアプリケーションでは、望ましくない相の例は、限定しないが、マルテンサイト、ベイナイト、ラスベイナイト及び任意の非ヒステリシス材料のうちのうちの少なくとも1つを含み得る。鋼材内の材料相は、限定しないが、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ベイナイト、ラスベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトのうちのうちの少なくとも1つを含み得る。上述のアプリケーションの携帯検査デバイス2000は、限定しないが、デバイス200の複数の複製(
図2A、3Aなど)並びに磁気送信機、磁気センサ、音響センサ及び馬蹄形磁石の複数の複製を含み得、走査中、送信機及びセンサは鋼材の好適な近傍位置に置かれる。各磁気送信機は磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製と対をなし得る。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製を含む(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、検査デバイス2000は、限定しないが、その2本の脚が鋼材の表面と接触する少なくとも1つ又は複数の任意選択的馬蹄形磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2000は、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2000は、限定しないが、鋼中の磁化を規制するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2000は、限定しないが、磁気音響応答のための直流磁場を提供するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。
【0158】
5.非ヒステリシス材料内のヒステリシス磁性材料相を検出すること
高温条件(例えば、約450℃、約650℃)に晒される精製所運転装置内の溶接部を非破壊的に検査する必要性もある。例示的精製プロセスは、限定しないが水素化処理及び水酸化処理を含む。このような状態下では、シグマ相(ヒステリシス磁性材料相)がオーステナイトステンレス鋼内に形成し得、材料を壊れ易くする。したがって、精製所運転装置に関し、精製所運転装置の完全性に対する脅威を評価し得る非破壊検査技術の必要性、又は精製所運転に対する最小妨害でもって望ましくない相をスクリーニングする必要性がある。本明細書において説明される方法及びデバイスは、配管及び容器なとの精製所運転装置のすべて又は一部分内のシグマ相の量を測定する又はシグマ相の有無を検出するために使用され得る。水素化処理中、通常、精製所運転装置のバルクとその溶接部はオーステナイトステンレス鋼を含む。水酸化処理中、通常、反応器の下流の精製所運転装置のバルクはオーステナイトステンレス鋼を含み、反応器の上流の、反応器内の、及び反応器の下流の精製所運転装置内の溶接部のバルクはオーステナイトステンレス鋼を含む。水酸化処理における反応器は通常、Cr−Mo材料からなる。いくつかの実施形態では、本明細書において説明される方法及びデバイスはまた、D/S内の水酸化反応器内の厚肉Cr−Mo反応器のオーステナイトステンレス鋼配管、容器、及び溶接オーバーレイの製作のために使用される周溶接部及びシーム溶接部中のフェライト含有の量を測定する又はその有無を検出するために使用され得る。フェライト含有の量は、ステンレス鋼溶接部内の溶接凝固亀裂を防止するための所望量を満足する必要がある。
【0159】
一実施形態では、上記開示された非線形磁気及び磁気音響検出方法及びシステムは、携帯型(図示のように)の又は自動化された1つ又は複数の検査デバイス2100内に取り込まれる。デバイス2100(
図21A参照)は、例えば反応器2101、入口配管2103、出口配管2105、又は配管2103、2105と反応器2101との間の継手2107(例えば隅肉溶接部、反応器2101、入口配管2103又は出口配管2105の任意の溶接部を含む)を検査する(2109)ために使用され得る。検査中、デバイス2101は、データ取得及び収集2109(及び/又は初期解析)を行い、測定結果を格納する。このデータは、望ましくない相が精製所運転装置内に存在するかどうかと、望ましくない相の位置と、望ましくない相の量が所定閾値値を越えるかどうかとを判断する(2113)ためにさらに解析され、後処理され得る(例えば別のコンピュータにおいて)(2111)。望ましくない相の量が特定位置において閾値を超える場合(2115)、当該位置における精製所運転装置又は精製所運転装置全体は、
図21Bのフローチャートのように好適な処理(例えば焼き戻し又はアニーリング)により交換され得る(2117a)又は改善され得る(2117b)。望ましくない相の量が特定位置において閾値を超える場合(2119)、精製所運転装置はサービス中のまま(2120a)であり得、任意選択的に、精製所運転装置の予測残存寿命が推定され得る(2120b)。
【0160】
上述のアプリケーションの検査デバイス2100は、限定しないが、デバイス200の複数の複製(
図2A、3Aなど)、並びに配管又は溶接構造内の管壁又は溶接部のID又はODの好適な近傍位置に置かれた磁気送信機、磁気センサ、音響センサ及び馬蹄形磁石の複数の複製を含み得る。各磁気送信機は磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製と対をなし得る。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製を含む(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、検査デバイス2100は、限定しないが、その2本の脚が管壁のID又はODに接触する少なくとも1つ又は複数の任意選択的馬蹄形磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2100は、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2100は、限定しないが、パイプ中の磁化を規制するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2100は、限定しないが、磁気音響応答のための直流磁場を提供するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。
【0162】
他の非破壊検査ツールにおける慣習と同様に、当業者は、非線形磁気応答及び/又は第3高調波のピーク値を、非ヒステリシス材料内のヒステリシス磁性材料相の様々な分率に対し較正し得る。したがって、適切な較正により、本開示の方法及びシステムは、2つ以上の材料相を有する試料(ヒステリシス磁性材料の非均質性を有する非ヒステリシス材料など)のヒステリシス磁性材料相分率を測定するために使用され得る。
【0163】
6.感知硬度及び/又は溶接部内のハードスポット
周溶接部中の硬度を非破壊的に検査する及び/又はハードスポットを識別する必要性もある。一実施形態では、上記開示された非線形磁気及び磁気音響検出方法及びシステムは、バグ2201に関連付けられた1つ又は複数の検査デバイス2200内に取り込まれる(
図22A参照)。バグは、周溶接部2205を生成する及び/又は周溶接部2205を検査するためにパイプ2203の外周を回る自動機械である。本明細書において説明されるデバイス2200は、形成された(すなわち溶接バグにより)後に又は周溶接部2205の超音波応答を測定する(すなわち超音波試験バグにより)際にも周溶接部2205の非線形磁気応答信号を測定するためにバグ2201と共に取り込まれ得る。1つ又は複数のデバイス2200が周溶接部2205を検査する(2207)ために使用され得る。検査中、デバイス2200は、データ取得及び収集(2207)(及び/又は初期解析)を行い、測定結果を格納する。このデータは、周溶接部2205内に望ましくない相が存在するかどうかと、望ましくない相の位置と、望ましくない相の量が所定閾値値を越えるかどうかとを判断する(2211)ために、さらに解析され、後処理され得る(例えば別のコンピュータにおいて)(2209)。望ましくない相の量が特定位置において閾値を超える場合(2213)、当該位置における周溶接部2205又は周溶接部2205全体は
図21Bのフローチャートのように好適な処理理(例えば焼き戻し又はアニーリング)により修理され得る(2215)。望ましくない相の量が特定位置において閾値を超える場合(2217)、パイプ2203は使用のために洗浄されないままであり得る。
【0164】
上述のアプリケーションの検査デバイス2200は、限定しないが、デバイス200の複数の複製(
図2A、3Aなど)、並びに配管又は溶接構造内の管壁又は溶接部のID又はODの好適な近傍位置に置かれた磁気送信機、磁気センサ、音響センサ及び馬蹄形磁石の複数の複製を含み得る。各磁気送信機は磁気センサ及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製と対をなし得る。いくつかの実施形態では、好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製を含む(
図9に示す)。より好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製を含む(
図10に示す)。さらに好ましい配置は、各磁気送信機の周囲の様々な位置の及び/又は各磁気送信機と対をなす様々な大きさの磁気センサ及び/又は音響センサの最大数の複製を含み得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、検査デバイス2200は、限定しないが、その2本の脚が管壁のID又はODに接触する少なくとも1つ又は複数の任意選択的馬蹄形磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2200は、限定しないが、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つとを含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2200は、限定しないが、パイプ中の磁化を規制するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、検査デバイス2200は、限定しないが、磁気音響応答のための直流磁場を提供するために1つ又は複数の任意選択的磁石又は電磁石を含み得る。
【0166】
他の非破壊検査ツールにおける慣習と同様に、当業者は非線形磁気応答及び/又は第3高調波のピーク値を周溶接部の硬度及び/又は周溶接部内のハードスポットの存在に対し較正し得る。したがって、適切な較正により、本開示の方法及びシステムは溶接試料の硬度を測定するために使用され得る。
【0167】
例示的実施形態
第1の例示的実施形態は、鋼材内の1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性を識別するために少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料及び/又は少なくとも1つの非ヒステリシス材料を含む鋼材を検査する非破壊評価方法を利用する方法を含む。本方法は、ヒステリシス強磁性材料及び/又は非ヒステリシス材料を入力時変磁場により調査する工程と;鋼材を走査しヒステリシス強磁性材料及び/又は非ヒステリシス材料からの経時的な磁気応答及び/又は音響応答を検出する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性と鋼材内の1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性とを相関付ける工程とを含み、鋼材内の前記1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性は、鋼材の硬度、鋼材のグレード又はタイプ、鋼材内の材料相の存在、鋼材内のハードスポットの存在、鋼材内の金属損失又は亀裂の存在、鋼材内の欠陥の存在、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つを含む。この例示的実施形態は、以下の要素のうちの1つ又は複数を任意選択的に含み得る:
要素1:鋼部品は、鋼鈑、ボルト、鍛造品、鋳造品、パイプ、ライザー、表面、溶接部、溶接ルート、溶接キャップ及び継手からなる群から選択される;
要素2:鋼部品は鋼金属板であり、鋼金属板の走査工程は熱間圧延及び/又は加速冷却工程後に発生する;
要素3:走査工程は台車又は携帯デバイスを使用して手動で行われる;
要素4:走査工程は自動化走査システムを使用して自動的に行われる;
要素5:受信された磁気応答及び/又は音響応答はオンラインで解析される又はオフラインで格納され解析される;
要素6:鋼材内の1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性は鋼材内の材料相の存在であり、材料相は鋼材内には望ましくなく、前記方法はさらに、鋼材内に存在する望ましくない相の量が所定閾値レベルを超える場合にさらなる処理のために鋼材を改善する(または修正する、remediating)又は不合格とする(または除去する、rejecting)工程を含む;
要素7:改善工程が焼き戻し処理工程及び/又は焼なまし及び/又は焼きならし及び/又はポスト溶接熱処理工程に関わる要素6;
要素8:1つ又は複数の材料状態及び/又は1つ又は複数の非均質性に基づきフィードバックを鋼材処理工程へ提供する工程をさらに含む;
要素9:材料相はオーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ラスベイナイト、ベイナイト、針状フェライト及び準多角形状フェライトからなる群から選択される少なくとも1つを含む;
要素10:本方法はさらに、磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するためのコンピュータ制御自動移動プラットフォーム(a computer-controlled automatic moving platform)と、様々な空間位置における磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを提供する工程を含む;
要素11:本方法は、磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するための手動制御並進(manually controlled translating)及び回転プラットフォームと、様々な空間位置における磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを提供する工程を含む;
要素12:本方法は、少なくとも1つの磁気送信機と、磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つと、1つの任意選択的直流磁石とを含む携帯デバイスを提供する工程を含む;
要素13:調査及び走査する工程は、調査用時変磁場を出力するように構成された少なくとも1つの磁気送信機と、磁気応答及び/又は音響応答を受信するように構成された少なくとも1つの磁気センサ及び/又は音響センサとを含むデバイスにより行われる;
要素14:少なくとも1つの磁気センサ及び/又は音響センサは周囲の様々な位置における及び/又は少なくとも1つの磁気送信機のそれぞれと対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの4つの複製である要素13;
要素15:少なくとも1つの磁気センサ及び/又は音響センサは周囲の様々な位置における及び/又は少なくとも1つの磁気送信機のそれぞれと対をなす磁気センサ及び/又は音響センサの8つの複製である要素13;
要素16:入力時変磁場は追加磁場を含む;
要素17:追加磁場が一定直流磁場を含む要素16;
要素18:入力時変磁場は消磁磁場を含む;
要素19:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の1つの材料相を絶縁する工程を含む;
要素20:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の非ヒステリシス材料の存在を絶縁する工程を含む;
要素21:時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データを生成するために、受信された磁気応答及び/又は音響応答のパワースペクトル密度解析を含む周波数領域解析を行う工程を含む;
要素22:時間依存非線形特性を判断する工程はパワースペクトル密度データの1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程を含む要素21;
要素23:1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの1つ又は複数の高調波係数を判断する工程を含む要素22;
要素24:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素23;
要素25:奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第3及び/又は第5高調波を判断する工程を含む要素24;
要素26:時間依存非線形特性を相関付ける工程は第3及び/又は第5高調波と1つ又は複数の材料状態とを比較し相関付ける工程を含む要素25;
要素27:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素23;
要素28:偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第2高調波を判断する工程を含む要素27;
要素29:時間依存非線形特性を相関付ける工程は、第2高調波と、材料の磁化状態及び材料の既存残留磁化を含む追加材料情報とを比較し相関付ける工程を含む要素28。例示的組み合わせは、限定しないが、要素13及び任意選択的に任意の他の要素と組み合わせられた要素14又は15;任意の他の要素と組み合わせられた要素1;組み合わせられた及び任意選択的に任意の他の要素とさらに組み合わせられた要素21、22、23、24(任意選択的に要素25〜26の一方又は両方を有する)及び27(任意選択的に要素28〜29の一方又は両方を有する);要素3及び/又は11と組み合わせられた及び任意選択的に要素6〜8のうちの1つ又は複数の要素とさらに組み合わせられた要素2;要素4及び/又は10と組み合わせられた及び任意選択的に要素6〜8のうちの1つ又は複数の要素とさらに組み合わせられた要素2;要素12と組み合わせられた及び任意選択的に要素6〜8のうちの1つ又は複数の要素とさらに組み合わせられた要素2;任意の他の要素と組み合わせられた要素17を任意選択的に有する要素16;任意の他の要素と組み合わせた要素18;及び上記の組み合わせの組み合わせを含む。
【0168】
別の例示的実施形態は、鋼部品の材料相及び/又は材料品質を識別するために少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料からなる鋼部品を検査する非破壊評価方法を利用する方法を含む。本方法は、入力時変磁場によりヒステリシス強磁性材料を調査する工程と;鋼部品を走査しヒステリシス強磁性材料からの経時的な磁気応答及び/又は音響応答を検出する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性と鋼材の1つ又は複数の材料品質及び/又は材料相とを相関付ける工程とを含み、前記1つ又は複数の材料品質は、高硬度の領域、金属損失の領域、表面亀裂の領域、望ましくない相の量及びそれらの組み合わせを含む。任意選択的に、この例示的実施形態は、以下の要素のうちの1つ又は複数を含み得る:
要素30:鋼部品は鋼金属板、ボルト、鍛造品及び鋳造品からなる群から選択される;
要素31:鋼部品は鋼金属板であり、鋼金属板の走査工程は熱間圧延及び/又は加速冷却工程後に発生する;
要素32:走査工程は台車又は携帯デバイスを使用して手動で又は自動化走査システムを使用して自動的に行われる;
要素33:受信された磁気応答及び/又は音響応答はオンラインで解析される又はオフラインで格納され解析される;
要素34:鋼部品内に存在する望ましくない相の量が所定閾値レベルを超える場合、鋼部品はさらなる処理から排除される又は処理により改善される;
要素35:この処理が焼き戻し処理工程である要素34;
要素36:望ましくない相の量の形成を最小化するためにフィードバックを鋼部品処理工程へ提供する工程をさらに含む;
要素37:材料相は、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ラスベイナイト、ベイナイト、針状フェライト又は準多角形状フェライトのうちの少なくとも1つを含む;
要素38:鋼部品は、平板又は湾曲版である鋼金属板である;
要素39:本方法は、磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するためのコンピュータ制御自動移動プラットフォームと、様々な空間位置における磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを提供する工程を含む;
要素40:本方法は、磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するための手動制御並進及び回転プラットフォームと、様々な空間位置における磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを提供する工程を含む;
要素41:本方法は、少なくとも1つの磁気送信機と、磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つと、1つの任意選択的直流磁石とを含む携帯デバイスを提供する工程を含む;
要素42:入力時変磁場は追加磁場を含む;
要素43:追加磁場が一定直流磁場を含む要素42;
要素44:入力時変磁場は消磁磁場を含む;
要素45:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の1つの材料相を絶縁する工程を含む;
要素46:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の非ヒステリシス材料の存在を絶縁する工程を含む;
要素47:時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データを生成するために、受信された磁気応答及び/又は音響応答のパワースペクトル密度解析を含む周波数領域解析を行う工程を含む;
要素48:時間依存非線形特性を判断する工程はパワースペクトル密度データの1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程を含む要素47;
要素49:1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの1つ又は複数の高調波係数を判断する工程を含む要素48;
要素50:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素49;
要素51:奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第3及び/又は第5高調波を判断する工程を含む要素50;
要素52:時間依存非線形特性を相関付ける工程は第3及び/又は第5高調波と1つ又は複数の材料状態とを比較し相関付ける工程を含む要素51;
要素53:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素49;
要素54:偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第2高調波を判断する工程を含む要素53;
要素55:時間依存非線形特性を相関付ける工程は、第2高調波と、材料の磁化状態及び材料の既存残留磁化を含む追加材料情報とを比較し相関付ける工程を含む要素54。
【0169】
さらに別の例示的実施形態は、少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料からなる鋼パイプラインシーム溶接部の材料相及び/又は材料品質を識別するために上記溶接部をスクリーニングする非破壊評価方法を利用する方法を含む。本方法は、入力時変磁場によりヒステリシス強磁性材料を調査する工程と;鋼パイプラインを走査しヒステリシス強磁性材料からの経時的な磁気応答及び/又は音響応答を検出する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性と鋼パイプラインのシーム溶接部の1つ又は複数の材料品質及び/又は材料相とを相関付ける工程とを含み、前記1つ又は複数の材料品質は、高硬度の領域、金属損失の領域、表面亀裂の領域、望ましくない相の量及びそれらの組み合わせを含む。任意選択的に、この例示的実施形態は以下の要素のうちの1つ又は複数を含み得る:
要素56:非破壊評価方法は、鋼パイプラインのシーム溶接部の1つ又は複数の材料品質を検出するためのパイプライン検査ゲージ(PIG)上に取り込まれる;
要素57:パイプライン検査ゲージ(PIG)が鋼パイプラインの内径を検査する要素56;
要素58:受信された磁気応答及び/又は音響応答は、パイプライン検査中にオンラインで格納され解析される又はパイプライン検査からオフラインで格納され解析される要素57;
要素59:シーム溶接のある位置における鋼パイプライン内に存在する望ましくない相の量が所定閾値レベルを超える場合、パイプラインの変質部分は、シーム溶接部の当該位置において交換される、又はシーム溶接部の当該位置において冶金学的処理により又はシーム溶接部の当該位置において又は修理溶接することにより改善される要素58;
要素60:冶金学的処理は焼き戻し又は焼なまし処理工程である要素59;
要素61:材料相は、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ラスベイナイト、ベイナイト、針状フェライト又は準多角形状フェライトのうちの少なくとも1つを含む;
要素62:非破壊評価方法はパイプライン検査ゲージ(PIG)(パイプラインの内側に置かれた)の外周周囲の位置に置かれた磁気送信機、磁気センサ及び/又は音響センサ、並びに任意選択的磁石の複数の複製を含む;
要素63:非破壊評価方法は1つ又は複数の磁気センサ及び/又は音響センサと対をなす少なくとも1つの磁気送信機と、鋼パイプラインの内側の好適な近傍位置に置かれた任意選択的直流磁石とを含む要素62;
要素64:磁気送信機、磁気センサ及び/又は音響センサ及び任意選択的磁石の1つ又は複数の複製は1つ又は複数の長手方向位置において検査ツールの外周をカバーする配置で置かれ得る要素62;
要素65:非破壊評価方法は、その2本の脚がパイプラインの内壁と接触する少なくとも1つの馬蹄形磁石を含む要素62;
要素66:非破壊評価方法は、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサのいずれか1つとを含む;
要素67:本方法は、少なくとも1つの磁気送信機と、磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つと、1つの任意選択的直流磁石とを含む鋼パイプラインを走査する携帯デバイスを提供する工程を含む;
要素68:入力時変磁場は追加磁場を含む;
要素69:追加磁場は一定直流磁場を含む要素68;
要素70:入力時変磁場は消磁磁場を含む;
要素71:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の1つの材料相を絶縁する工程を含む;
要素72:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の非ヒステリシス材料の存在を絶縁する工程を含む;
要素73:時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データを生成するために、受信された磁気応答及び/又は音響応答のパワースペクトル密度解析を含む周波数領域解析を行う工程を含む;
要素74:時間依存非線形特性を判断する工程はパワースペクトル密度データの1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程を含む要素73;
要素75:1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの1つ又は複数の高調波係数を判断する工程を含む要素74;
要素76:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素75;
要素77:奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第3及び/又は第5高調波を判断する工程を含む要素76;
要素78:時間依存非線形特性を相関付ける工程は第3及び/又は第5高調波と1つ又は複数の材料状態とを比較し相関付ける工程を含む要素77;
要素79:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素75;
要素80:偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第2高調波を判断する工程を含む要素79;
要素81:時間依存非線形特性を相関付ける工程は、第2高調波と、材料の磁化状態及び材料の既存残留磁化を含む追加材料情報とを比較し相関付ける工程を含む要素80。
【0170】
別の例示的実施形態は、溶接部の材料相及び/又は材料品質を識別するために少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料からなるシステム内の、限定しないが周溶接部又は隅肉溶接部又は重ね溶接部又は突き合せ溶接部を含む鋼配管又は鋼管又は溶接構造の溶接部をスクリーニングする非破壊評価方法を利用する方法を含む。本方法は、入力時変磁場によりヒステリシス強磁性材料を調査する工程と;溶接部を走査しヒステリシス強磁性材料からの経時的な磁気応答及び/又は音響応答を検出する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性と鋼管又は鋼配管又は溶接構造の1つ又は複数の溶接部の材料品質及び/又は材料相とを相関付ける工程とを含み、前記1つ又は複数の材料品質は、高硬度の領域、金属損失の領域、表面亀裂の領域、望ましくない相の量及びそれらの組み合わせを含む。任意選択的に、この例示的実施形態は、以下の要素のうちの1つ又は複数を含み得る:
要素82:システムはライザー、パイプライン又は他の配管システムを含む;
要素83:非破壊評価方法は、システムの1つ又は複数の溶接部の1つ又は複数の材料品質を検出するためのシステムの内径又は外径を走査及び検査することができる手動ツール又は自動検査ツール上に取り込まれる;
要素84:鋼パイプライン又は配管の内径及び/又は外径の手動検査ツールは繋留又は牽引式システムである要素83;
要素85:鋼パイプライン又は配管の内径及び/又は外径の自動検査ツールはロボットクローラシステムである要素83;
要素86:受信された磁気応答及び/又は音響応答はパイプライン又は配管又は溶接構造検査中にオンラインで格納され解析される又はパイプライン又は配管又は溶接構造からオフラインで格納され解析される要素83;
要素87:溶接部内に存在する望ましくない相の量が所定閾値レベルを超える場合溶接部は交換される又は冶金学的処理により改善される;
要素88:冶金学的処理は、走査へ進み次の溶接部を検査する前の溶接の次の溶接パスの焼き戻しビーディング工程又はポスト溶接熱処理工程である要素87;
要素89:材料相は、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ラスベイナイト、ベイナイト、針状フェライト又は準多角形状フェライトのうちの少なくとも1つを含む;
要素90:ツールは磁気送信機、磁気センサ及び/又は音響センサ並びに任意選択的磁石の1つ又は複数の複製を含む要素83;
要素91:磁気送信機、磁気センサ、音響センサ及び任意選択的磁石は、パイプラインの内側及び/又は外側に位置する牽引式パイプライン検査ツールの外周周囲の位置に置かれた要素90;
要素92:磁気送信機、磁気センサ及び/又は音響センサ及び任意選択的磁石の1つ又は複数の複製は1つ又は複数の長手方向位置において検査ツールの外周をカバーする配置で置かれ得る;
要素93:非破壊評価方法は、1つ又は複数の磁気センサ及び/又は音響センサと対をなす少なくとも1つの磁気送信機と、システムの好適な近傍位置に置かれた任意選択的磁石とを含む;
要素94:非破壊評価方法はその2本の脚がパイプラインの内壁と接触する少なくとも1つの馬蹄形磁石を含む;
要素95:非破壊評価方法は、少なくとも1つの磁気送信機と、馬蹄形磁石の中心に位置する磁気センサ又は音響センサのいずれか1つとを含む;
要素96:本方法は、少なくとも1つの磁気送信機と、磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つと、1つの任意選択的直流磁石とを含む鋼パイプ、配管、及び溶接構造を走査する携帯デバイスを提供する工程を含む;
要素97:入力時変磁場は追加磁場を含む;
要素98:追加磁場は一定直流磁場を含む要素97;
要素99:入力時変磁場は消磁磁場を含む;
要素100:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の1つの材料相を絶縁する工程を含む;
要素101:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の非ヒステリシス材料の存在を絶縁する工程を含む;
要素102:時間依存非線形特性を判断する工程はパワースペクトル密度データを生成するために、受信された磁気応答及び/又は音響応答のパワースペクトル密度解析を含む周波数領域解析を行う工程を含む;
要素103:時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データの1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程を含む要素102;
要素104:1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの1つ又は複数の高調波係数を判断する工程を含む要素103;
要素105:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素104;
要素106:奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第3及び/又は第5高調波を判断する工程を含む要素105;
要素107:時間依存非線形特性を相関付ける工程は第3及び/又は第5高調波と1つ又は複数の材料状態とを比較し相関付ける工程を含む要素106;
要素108:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素102;
要素109:偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第2高調波を判断する工程を含む要素108;
要素110:時間依存非線形特性を相関付ける工程は、第2高調波と、材料の磁化状態及び材料の既存残留磁化を含む追加材料情報とを比較し相関付ける工程を含む要素109。
【0171】
さらに別の例示的実施形態は、鋼板及びパイプライン溶接部内の材料相及び材料品質、並びに少なくとも1つのヒステリシス強磁性材料からなる鋼板及び鋼パイプラインシーム溶接の溶接タイプ及び熱処理状態を識別する非破壊評価方法を利用する方法を含む。本方法は、入力時変磁場によりヒステリシス強磁性材料を調査する工程と;鋼板又は鋼パイプラインを走査しヒステリシス強磁性材料からの経時的な磁気応答及び/又は音響応答を検出する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性を判断する工程と;受信された磁気応答及び/又は音響応答の時間依存非線形特性と鋼板又は鋼パイプラインの1つ又は複数の材料品質及び/又は材料相とを相関付ける工程とを含み、前記1つ又は複数の材料品質は、高硬度の領域、金属損失の領域、表面亀裂の領域、望ましくない相の量及びそれらの組み合わせを含む。任意選択的に、この例示的実施形態は、以下の要素のうちの1つ又は複数を含み得る:
要素111:鋼パイプラインシーム溶接部は、ポスト溶接熱処理式低周波ERWパイプ、非熱処理低周波ERWパイプ、ポスト溶接熱処理式高周波ERWパイプ及び非熱処理高周波ERWパイプを含む;
要素112:非破壊評価方法は磁気送信機、磁気センサ及び/又は音響センサ及び任意選択的磁石の1つ又は複数の複製を含む;
要素113:非破壊評価方法は、磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するためのコンピュータ制御自動移動プラットフォームと、様々な空間位置における磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを含む。
要素114:非破壊評価方法は、磁気送信機、磁気センサ、及び/又は音響センサの1つ又は複数の複製を移動するための手動制御並進及び回転プラットフォームと、様々な空間位置における磁気応答及び/又は音響応答を検出するための任意選択的磁石とを含む。
要素115:非破壊評価方法は、少なくとも1つの磁気送信機と、磁気センサ又は音響センサの少なくともいずれか1つと、1つの任意選択的直流磁石とを含む携帯デバイスを含む。
要素116:受信された磁気応答及び/又は音響応答は、鋼板若しくはパイプライン検査中にオンラインで格納され解析される、又は鋼板若しくはパイプライン検査からオフラインで格納され解析される;
要素117:鋼鈑又はパイプライン内に存在する望ましくない相の量が所定閾値レベルを超える場合当該位置における鋼材は冶金学的処理により交換又は改善される;
要素118:冶金学的処理は焼入れ工程又はポスト溶接熱処理工程である要素117;
要素119:材料相は、オーステナイト、マルテンサイト、フェライト、パーライト、ラスベイナイト、ベイナイト、針状フェライト又は準多角形状フェライトのうちの少なくとも1つを含む;
要素120:非破壊評価方法は、シーム溶接タイプ、周溶接タイプ、及びシーム溶接又は周溶接のポスト溶接熱処理状態を判断するために使用される;
要素121:シーム溶接タイプはLF−ERW又はHF−ERWである要素120;
要素122:入力時変磁場は追加磁場を含む;
要素123:追加磁場は一定直流磁場を含む要素122;
要素124:入力時変磁場は消磁磁場を含む;
要素125:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の1つの材料相を絶縁する工程を含む;
要素126:時間依存非線形特性を相関付ける工程はヒステリシス強磁性材料内の非ヒステリシス材料の存在を絶縁する工程を含む;
要素127:時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データを生成するために、受信された磁気応答及び/又は音響応答のパワースペクトル密度解析を含む周波数領域解析を行う工程を含む;
要素128:時間依存非線形特性を判断する工程は、パワースペクトル密度データの1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程を含む要素127;
要素129:1つ又は複数の高調波ピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの1つ又は複数の高調波係数を判断する工程を含む要素128;
要素130:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素129;
要素131:奇数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第3及び/又は第5高調波を判断する工程を含む要素130;
要素132:時間依存非線形特性を相関付ける工程は第3及び/又は第5高調波と1つ又は複数の材料状態とを比較し相関付ける工程を含む要素131;
要素133:1つ又は複数の高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程を含む要素129;
要素134:偶数高調波係数及び/又はピーク値を判断する工程はスペクトル密度データの第2高調波を判断する工程を含む要素133;
要素135:時間依存非線形特性を相関付ける工程は、第2高調波と、材料の磁化状態及び材料の既存残留磁化を含む追加材料情報とを比較し相関付ける工程を含む要素134。
【0172】
主題開示の非破壊材料検査を使用するデバイス及び方法が実施形態を参照して示され説明されたが、当業者は、変更及び/又は修正が主題開示の精神及び範囲から逸脱すること無くなされ得るということを容易に理解することになる。