(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-502972(P2021-502972A)
(43)【公表日】2021年2月4日
(54)【発明の名称】癌のポジオチニブ治療に対する反応を示すバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20210108BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20210108BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20210108BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20210108BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20210108BHJP
C12Q 1/6841 20180101ALI20210108BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20210108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210108BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20210108BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20210108BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20210108BHJP
【FI】
A61K31/517
C12Q1/6886 ZZNA
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6841 Z
C12Q1/02
A61P35/00
C07K14/47
C12N15/12
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-526411(P2020-526411)
(86)(22)【出願日】2018年11月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月13日
(86)【国際出願番号】KR2018013882
(87)【国際公開番号】WO2019098666
(87)【国際公開日】20190523
(31)【優先権主張番号】10-2017-0151831
(32)【優先日】2017年11月14日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514039912
【氏名又は名称】ナショナル キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】512250119
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・パク
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ヒ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウン・チン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ヤン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ミン・チェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ワン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヨン・キム
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA17
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4B063QQ08
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4B063QX01
4C086AA01
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4C086BC47
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4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
(57)【要約】
癌において、ポジオチニブ治療に対する敏感性または抵抗性を示すバイオマーカー及びその使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジオチニブを含む、個体の癌を治療するための薬学的組成物であって、前記個体の癌細胞は、
ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を含むものである組成物。
【請求項2】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、大腸癌、腎臓癌、血液癌または膵腸癌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記個体は、HER2陽性転移性乳癌を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記個体は、以前に、ポジオチニブではない、HER2標的化された癌治療を受けている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子の細胞外ドメインをコーディングする領域、または前記ERBB2遺伝子の10kb以内の上流領域に1以上の突然変異を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子のlog2(比率)値は、1以上、2以上または4以上であり、前記比率は、前記癌細胞コピー数を正常細胞コピー数で除算したものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記癌細胞は、ポジオチニブ敏感性である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
ERBB2遺伝子領域において、前記突然変異は、配列番号1のERBB2のアミノ酸配列において、Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異、配列番号2のERBB2をコーディングするヌクレオチド配列において、1898番GのCへの置換、配列番号3のヌクレオチド配列において、100番AのGへの置換、及び配列番号4の100番CのTへの置換からなる群から選択された1以上の置換突然変異を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異は、配列番号2のヌクレオチド配列において、1702番CのGへの置換、1802番CのGへの置換、1884番CのGへの置換、2653番CのTへの置換、428番GのAへの置換、1301番GのAへの置換、及び2620番GのAへの置換からなる群から選択された1以上の置換である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
癌を有する個体を治療するための医薬の製造において、ポジオチニブの使用であって、前記個体の癌細胞は、
ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものである使用。
【請求項11】
癌を有する個体に、治療的有効量のポジオチニブを投与する工程を含む、個体で癌を治療する方法であって、前記個体の癌細胞は、
ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有する方法。
【請求項12】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、大腸癌、腎臓癌、血液癌または膵腸癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記個体は、HER2陽性転移性乳癌を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記個体は、以前に、ポジオチニブではない、HER2標的化された癌治療を受けている、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子の細胞外ドメインをコーディングする領域、または前記 ERBB2遺伝子の10kb以内の上流領域に1以上の突然変異を有する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子の平均コピー単位数が2以上である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項17】
ERBB2遺伝子領域において、前記突然変異は、配列番号1のERBB2のアミノ酸配列において、Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異、配列番号2のERBB2をコーディングするヌクレオチド配列において、1898番GのCへの置換、配列番号3のヌクレオチド配列において、100番AのGへの置換、及び配列番号4の100番CのTへの置換からなる群から選択された1以上の置換突然変異を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項18】
Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異は、配列番号2のヌクレオチド配列において、1702番CのGへの置換、1802番CのGへの置換、1884番CのGへの置換、2653番CのTへの置換、428番GのAへの置換、1301番GのAへの置換、及び2620番GのAへの置換からなる群から選択された1以上の置換である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
個体から得た癌細胞含有試料において、
ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものを検出する工程であって、
前記ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示す工程と、
前記ポジオチニブ敏感性癌を有する個体に、治療的有効量のポジオチニブを投与する工程と、
を含む、個体においてポジオチニブ敏感性癌を治療する方法。
【請求項20】
個体から得た癌細胞含有試料において、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものを検出する工程であって、
前記ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示す工程
を含む、ポジオチニブ敏感性癌を有する個体を確認する方法。
【請求項21】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、大腸癌、腎臓癌、血液癌または膵腸癌である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記検出する工程は、個体から分離された癌細胞が、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するか否かということを決定するための分析の結果を提供する試験を要請する工程を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
前記検出する工程において、前記ERBB2遺伝子領域における、1以上の突然変異は、前記ERBB2遺伝子領域でERBB2の細胞外ドメインをコーディングする領域、またはERBB2遺伝子領域のERBB2遺伝子の10kb以内の上流領域おける、1以上の突然変異である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項24】
前記検出する工程は、シーケシング、サイズ分析、プライマー伸張分析、対立遺伝子特異的プライマー伸張分析、対立遺伝子特異的ヌクレオチド混成化分析、5’ヌクレアーゼ分解分析、分子ビーコンを使用する分析法、一本鎖構造多形、混成化分析及びオリゴヌクレオチド結紮分析からなる群から選択された1以上の分析を行うことを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項25】
前記検出する工程は、単一ヌクレオチド多形(SNP)アレイ、比較ゲノム混成化(CGH)、サザンブロット分析、蛍光性インサイチュ混成化(FISH)及びシルバーインサイチュ混成化(SISH)からなる群から選択された1以上の分析を行い、遺伝子の平均コピー単位数を測定する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項26】
前記検出する工程において、前記癌細胞が、前記ERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有し、ERBB2遺伝子の平均コピー単位数が2以上である場合、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示すことと決定する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項27】
前記検出する工程は、個体から得た癌細胞含有試料を提供する工程を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項28】
癌を有する個体に、治療的有効量のポジオチニブではない、他の癌治療薬物を投与する工程を含む、個体で癌を治療する方法であって、前記個体の癌細胞は、
ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、CDK12遺伝子の増幅の不存在、ERBB2遺伝子のコピー数変異の不存在、BRCA1遺伝子のコピー数変異の不存在、STAT3遺伝子のコピー数変異の不存在、及びFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有する方法。
【請求項29】
個体から分離された癌細胞が、
ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、CDK12遺伝子の増幅の不存在、ERBB2遺伝子のコピー数変異の不存在、BRCA1遺伝子のコピー数変異の不存在、STAT3遺伝子のコピー数変異の不存在、及びFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有するか否かということに基づいて、ポジオチニブではない、他の乳癌治療薬物で癌を治療するための個体を選択する工程であって、前記1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに抵抗性であることを示す工程と、
前記選択された個体に、治療的有効量のポジオチニブではない、他の癌治療薬物を投与する工程と、
を含む、個体で癌を治療する方法。
【請求項30】
個体から得た癌細胞含有試料において、
ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、CDK12遺伝子の増幅の不存在、ERBB2遺伝子のコピー数変異の不存在、BRCA1遺伝子のコピー数変異の不存在、STAT3遺伝子のコピー数変異の不存在、及びFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有するものを検出する工程であって、前記1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに抵抗性であることを示す工程と、
前記個体に、治療的有効量のポジオチニブではない、他の癌治療薬物を投与する工程と、
を含む、個体においてポジオチニブ抵抗性癌を治療する方法。
【請求項31】
個体から得た癌細胞含有試料において、
ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異の不存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、CDK12遺伝子の増幅の不存在、ERBB2遺伝子のコピー数変異の不存在、BRCA1遺伝子のコピー数変異の不存在、STAT3遺伝子のコピー数変異の不存在、及びFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有するものを検出する工程であって、
前記1以上の存在は、前記癌細胞がポジオチニブに抵抗性であることを示す工程
を含む、ポジオチニブ抵抗性癌を有する個体を確認する方法。
【請求項32】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、大腸癌、腎臓癌、血液癌または膵腸癌である、請求項28ないし31のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロス・リファレンス
本出願は、韓国特許庁に、2017年11月14日付けで出願された韓国特許出願番号第10−2017−0151831に対して優先権を主張し、そこに記載された事項は、参照として、それ全体が本明細書に導入される。
【0002】
技術分野
1以上の具体例は、ポジオチニブ敏感性癌を有する個体を確認する方法、個体においてポジオチニブ敏感性癌を治療する方法、個体の癌を治療するための薬学的組成物及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポジオチニブは、Her1、Her2及びHer4を含むEGFRファミリーを、選択的に非可逆的に阻害する低分子化合物であり、EGFR及びHer2の活性化効果、及び耐性突然変異体(mutant)に対する阻害効果にも非常にすぐれるパンHER阻害剤(pan-Her inhibitor)である。ポジオチニブは、試験管内で、Her1またはHer2が過発現されたり、活性化突然変異を有したりする多様な癌腫の腫瘍細胞の成長を阻害させる。また、動物生体に、そのような腫瘍細胞を移植した異種移植動物モデルにおいて、腫瘍成長を効果的に遮断する効果を示す。
【0004】
しかし、ポジオチニブに対する敏感性または抵抗性を示すバイオマーカーを使用し、敏感性または抵抗性の細胞を確認する方法は知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1以上の具体例は、ポジオチニブ敏感性癌を有する個体を確認する方法を含む。
【0006】
1以上の具体例は、個体において、ポジオチニブ敏感性癌を治療する方法を含む。
【0007】
1以上の具体例は、個体の癌を治療するための薬学的組成物を含む。
【0008】
1以上の具体例は、癌を治療するための医薬の製造における、ポジオチニブの使用を含む。
【0009】
1以上の具体例は、ポジオチニブ抵抗性癌を有する個体を確認する方法を含む。
【0010】
1以上の具体例は、個体において、ポジオチニブ抵抗性癌を治療する方法を含む。
【0011】
それら、及び/または他の態様は、下記添付図面と共に考慮されるが、具体例の下記説明から明確になり、さらに容易に理解されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ERBB3遺伝子(突然変異数=10)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図2】BARD1遺伝子(突然変異数=9)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図3】NOTCH3遺伝子(突然変異数=13)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図4】SH2B3遺伝子(突然変異数=6)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図5】SETBP1遺伝子(突然変異数=13)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図6】PIK3CA遺伝子(突然変異数=34)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図7】CDK12遺伝子増幅(増幅がある個体数=42)に対して遺伝子増幅と予後(A、B、及びC)及びPFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図8】BRCA1遺伝子欠失(欠失個体数=9)に係わり、遺伝子欠失及びその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図9】STAT3遺伝子欠失(欠失個体数=5)に関する、遺伝子欠失及びその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図10】FGFR3遺伝子欠失または増幅(変異数=5)に関する、遺伝子コピー数変異及びその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
【
図11】ERBB2突然変異と予後との相関関係を示した図面である。
【
図12】ERBB2突然変異とPFSとの相関関係を示した図面である。
【
図13】75人の患者において、突然変異が観察された13人の患者に対して、ERBB2遺伝子及びその上流領域における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示した図面である。
【
図14】75人の患者において、突然変異が観察された34人の患者に対して、PIK3CA遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示した図面である。
【
図15】75人の患者において、突然変異が観察された10人の患者に対して、ERBB3遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示した図面である。
【
図16】75人の患者において、突然変異が観察された9人の患者に対して、BARD1遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示した図面である。
【
図17】75人の患者において、突然変異が観察された12人の患者に対して、NOTCH3遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示した図面である。
【
図18】75人の患者において、突然変異が観察された6人の患者に対して、SH2B3遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示した図面である。
【
図19】75人の患者において、突然変異が観察された13人の患者に対して、SETBP1遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
課題解決手段(solution to problem)
具体例、その例が添付された図面に例示された具体例に係わる参照は、詳細になされ、図面上で同一符号で表示された構成要素は、全体として、同一構成要素を意味する。この点において、本具体例は、異なる形態を有することができ、以下で開示される記載に限定されるものであると解釈されるものではない。従って、具体例は、ただ、本明細書の態様について説明するために、図面を参照することによって、以下に記載される。本明細書に使用されているように、用語「及び/または」は、1以上の関連した列挙事項の任意の組み合わせ、及びすべての組み合わせを含む。「少なくとも一つ」のような表現が構成要素リストの前に記載される場合、構成要素全体リストに係わるものであり、リストの個別的な構成要素に係わるものではない。
【0014】
本明細書において、用語「個体(subject)」は、本開示が適用されたり遂行されたりする任意の個人(individual)または患者(patient)を示す。前記個体は、ヒトを含む動物でもある。前記動物は、哺乳動物でもある。前記動物は、マウス・鼠・ハムスター及びモルモットを含む齧歯類、猫、犬、兎、牛、馬、山羊、羊、豚及び霊長類(猿、チンパンジー、オランウータン及びゴリラ)を含む。
【0015】
本明細書において、用語「ポジオチニブ敏感性(sensitive to poziotinib)」または「ポジオチニブ敏感性癌(poziotinib-sensitive cancer)」は、ポジオチニブ不在時に比べ、ポジオチニブ存在時、低減された成長を有する細胞または癌を示す。敏感性(sensitivity)は、前記細胞に対するポジオチニブの細胞毒性(cytotoxic)、または細胞静止効果(cytostatic effect)を示すことができる。敏感性細胞または細胞株は、ポジオチニブの存在下において、成長速度(growth rate)が、1.5,2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20または25倍以上変化する。敏感性は、またゲノム配列または遺伝子コピー数の変化、特定蛋白質またはmRNA発現の増加または減少などによっても測定される。前記敏感性の細胞または細胞株は、特定蛋白質またはmRNAの発現が、1.5,2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20または25倍以上変化する。
【0016】
本明細書において、用語「ポジオチニブ抵抗性(resistant to poziotinib)」または「ポジオチニブ抵抗性癌(poziotinib-resistant cancer)」は、ポジオチニブ存在時、正常(または、基底)成長を有し、ポジオチニブの不存在時と実質的に類似している細胞または癌を示す。抵抗性(resistance)は、ポジオチニブの存在下での細胞成長速度の相対的な維持、あるいはゲノム配列または遺伝子のコピー数の変化、または特定蛋白質発現またはmRNA発現の増加または減少などによっても測定される。
【0017】
抵抗性細胞または細胞株は、ポジオチニブ存在時、1以上の抵抗性バイオマーカーパラメータにおいて、1.5,2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20,25倍以上の変化を有することができる。
【0018】
本明細書において、用語「治療学的有効量(therapeutically effective amount)」または「有効量(effective amount)」は、本明細書に記述されたポジオチニブの量が、症状の緩和、例えば、関連する医学的状態の治療、治癒(healing)、予防または改善、あるいはそのような状態(conditions)の治療、治癒、予防または改善の速度上昇を引き起こすに十分であること、典型的には、治療された患者集団において、統計的に有意の改善を提供することを示す。単独に投与される個別活性成分に言及するとき、治療学的な有効量または用量(dose)は、その成分のみを意味する。組み合わせ物を指すとき、連続的に(serially)または同時的にということを含み、組み合わせていかに投与されても、治療効果をもたらす活性成分の組み合わされた量を意味する。多様な 具体例において、ポジオチニブの治療学的有効量は、食欲喪失、口腔痛症、上腹部痛症、疲労、腹部膨脹、持続的な痛症、骨痛症、吐き気、嘔吐、便秘、体重減少、頭痛、直腸出血、夜間発汗、消化不良及び痛症排尿を含む癌と係わる症状を緩和させることができる。
【0019】
本明細書において、用語「治療(treatment)」は、予防的治療(prophylatic treatment)または治療的治療(therapeutic treatment)を示す。1以上の具体例において、「治療」は、治療目的または予防目的のために、化合物または組成物を個体に投与することを示す。
【0020】
「治療的(therapeutic)」治療は、徴候(signs)または症状(symptoms)を低減させたり除去させたりするための病理学的な徴候または症状を示す個体に投与する治療である。徴候または症状は、生化学的、細胞性、組織学的、機能的または物理的、主観的または客観的なものでもある。
【0021】
「予防的(prophylactic)」治療は、病理(pathology)発生危険を低減させるために、疾病の徴候を示さないか、あるいは疾病の初期徴候のみを示す個体に投与する治療である。本明細書に記載された化合物または組成物は、病理発生の可能性(likelihood)を低減させるか、あるいは発生したならば、前記病理の深刻性を最小化させるために、予防的治療としても提供される。
【0022】
「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」は、ヒト及び哺乳動物を含む対象動物において、薬学的用途に適する組成物を示す。該薬学的組成物は、治療的有効量の、本願に記述されたポジオチニブまたは他の産物(product)、選択的には、他の生物学的活性剤、及び選択的には、薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む。一具体例において、薬学的組成物は、活性成分、及び担体を構成する不活性成分を含む組成物だけではなく、2以上の成分の組み合わせ(combination)、複合体化(complexation)または凝集(aggregation)、または1以上の成分の解離(dissociation)、または1以上の成分の他類型の反応または相互作用から、直接または間接的に生成される産物を含む。従って、本開示の薬剤学的組成物は、本開示の化合物と薬剤学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を混合して製造された任意の組成物を含む。前記薬学的組成物は、単一投与剤形(unit dosage form)でもある。前記薬学的組成物は、経口または非経口(parenterally)の剤形を有することができる。前記薬学的組成物は、錠剤または注射剤の形態を有するものでもある。ポジオチニブを含む薬学的組成物の例は、米国特許公開US20130071452A1に開示されており、その内容は、援用によって本明細書に含まれる。
【0023】
「薬学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)」は、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline solution)、デキストロースの5%水溶液、及びエマルジョン(例えば、オイル/水または水/オイルのエマルジョン)のような任意の標準薬剤学的担体、緩衝剤などを意味する。賦形剤の非制限的な例は、補助剤、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑剤、滑沢剤、甘味剤、香料及び着色剤を含む。望ましい薬学的担体は、活性剤の意図された投与方式に依存する。典型的な投与方式は、腸内(例えば、経口)または非経口(例えば、皮下・筋肉内・静脈内または腹腔内の注射、あるいは局所、経皮または粘膜の投与)を含む。
【0024】
本明細書において、活性剤の「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」または「薬理学的に許容可能な(pharmacologically acceptable)」塩は、生物学的、または他の方式として、望ましくない物質ではないのである。すなわち、前記塩は、望ましくない生物学的効果を起こさず、またはそれが含有された組成物の任意の成分、あるいは個体の身体上または内部に存在する任意の成分と有害な方式で相互作用せずにも個体に投与される。
【0025】
本明細書において、「核酸(nucleic acid)」または「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」または「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」またはその文法的等価物は、共に共有的に連結された2個以上のヌクレオチドを意味する。核酸は、一般的に、一本鎖形態または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド重合体またはリボヌクレオチド重合体(純粋または混合)である。該用語は、標準核酸(reference nucleic acid)と類似した結合、構造または機能的性質を有し、標準ヌクレオチドと類似した方式で代謝される、合成された、天然発生的及び非自然発生的なヌクレオチド類似体、あるいは変形されたバックボーン残基、または結合(linkage)を含む核酸を含んでもよい。そのような類似体の非制限的な例は、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド及びペプチド−核酸(PNA)を含む。一部の場合、1以上の異なる結合を有することができる核酸類似体、例えば、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートまたはO−メチルホスホロアミダイト結合が含まれるが、核酸は、一般的には、ホスホジエステル結合を含むであろう。用語「核酸」は、ある状況においては、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドと相互交換可能にも使用される。
【0026】
本明細書において、用語「ポリペプチド(polypeptide)」、「ペプチド(peptide)」及び「蛋白質(protein)」は、典型的に、アミノ酸残基の重合体を指すために、相互交換的に使用される。アミノ酸は、一般的に知られた三文字記号、またはIUPAC−IUBバイオケミストリー命名委員会(IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commission)で勧める一文字記号によっても表示される。
【0027】
本明細書において、用語「試料(sample)」及び「生物学的試料(biological sample)」は、本明細書に開示された発明に適する任意の試料を示す。前記試料は、核酸及び/または蛋白質を含む。本発明の生物学的試料は、組織試料、例えば、唾液生検、コア針生検または切除生検からなる群から選択された生検試料(specimen)でもある。1具体例において、本発明の生物学的試料は、体液、例えば、血液、血清、血漿、痰(sputum)、肺吸引物(lung aspirate)または尿でもある。
【0028】
本明細書において、用語「増幅(amplification)」は、遺伝子またはアンプリコン(amplicon)と係わって使用されるとき、log
2(比率)>1、言い換えれば、増幅イベントが、前述の遺伝子またはアンプリコンの数を正常細胞に比べ、2倍以上になるようにすることを示す。ここで、log
2(比率)において、該比率は、(対象細胞のコピー数/正常細胞のコピー数)を示す。正のlog
2(比率)(「positive log−ratio」ともいう)である場合、DNAコピー数獲得(gain)を示し、負のlog
2(比率)(以下、「negative log−ratio」ともいう)は、DNAコピー数の損失(loss)または欠失(deletion)を示す。従って、DNAコピー数損失または欠失は、(対象細胞のコピー数/正常細胞のコピー数)値が1未満、すなわち、対象細胞のコピー数が正常細胞のコピー数より少ないことを示す。以下、用語DNAコピー数「損失」及び「欠失」は、互いに交換可能に使用される。前記染色体のコピー数増幅は、log
2(比率)値が、1以上、2以上、3以上、6以上または7以上でもある。
【0029】
本明細書において、用語「正常細胞(normal cells)」または「対応する正常細胞(corresponding normal cells)」は、前記癌細胞タイプのような器官(organ)に由来した同タイプの細胞を示す。一態様において、前記対応する正常細胞は、健康な個人から得られた細胞の試料を含む。そのような対応する正常細胞は、試験されている癌細胞を提供する個体と年齢マッチし、かつ/または同一性別である個体からも得られるが、その限りではない。他の態様において、前記対応する正常細胞は、癌を有する個体の他の健康な組織部分から得られた細胞の試料を含んでもよい。1以上の 具体例において、ゲノム増幅の決定は、癌由来のゲノムを正常細胞のそれとの比較によってもなされる。
【0030】
第1態様は、ポジオチニブを含む、個体の癌を治療するための薬学的組成物であって、前記個体の癌細胞は、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流(upstream)で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を含むものである組成物を提供する。
【0031】
前記癌は、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、大腸癌、腎臓癌、血液癌または膵腸癌でもある。
【0032】
ポジオチニブ、すなわち、1−[4−[4−(3,4−ジクロロ−2−プルオロアニリノ)−7−メトキシキナゾリン−6−イル]オキシピペリジン−1−イル]プロプ−2−円−1−オン、またはその薬剤学的に許容可能な水和物及び/または塩は、化学式1の構造を有する。
【化1】
【0033】
前記薬剤学的に許容可能な塩(pharmaceutically acceptable salt)は、無機塩、有機酸塩または金属塩でもある。前記無機塩は、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩または二硫酸塩(disulfuric acid salts)でもある。前記有機酸塩は、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸、ベシル酸、カンシル酸またはエジシル酸の塩でもある。前記金属塩は、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩またはカリウム塩でもある。一具体例において、ポジオチニブは、塩酸塩であり、錠剤でもある。ポジオチニブは、0.1mgないし50mg/体重kg/日の量でも投与される。
【0034】
ポジオチニブは、Her1、Her2及びHer4を含むEGFRファミリーを、選択的であって非可逆的に阻害する低分子化合物であり、EGFR及びHer2の活性化、並びに耐性突然変異体(mutant)に対する阻害の効果にも非常にすぐれるパンHER阻害剤(pan−Her inhibitor)である。ポジオチニブの活性は、米国特許US8,188,102B及び同US2013/0071452A1に開示されており、それら文献は、援用によって本明細書に含まれる。米国特許US8,188,102Bにおいて、化学式Iの化合物は、実施例36の化合物である。ポジオチニブは、試験管内において、Her1またはHer2の過発現や、活性化突然変異を有する多様な癌腫の腫瘍細胞の成長を阻害させ、ゲフィチニブ(gefitinib)またはエルロチニブ(erlotinib)に対して耐性を帯びる肺癌細胞の成長も、効果的に阻害させる。また、動物生体に、そのような腫瘍細胞を移植した異種移植動物モデルにおいて、腫瘍成長を効果的に遮断する効果を示す。それだけではなく、ポジオチニブは、EGFR及びその突然変異に対する広範囲であって卓越した阻害効果を示し、知られた他のEGFR標的抗体薬物及び低分子薬物の耐性領域まで含み、治療領域が広範囲であり、さらに効果的でもある。それを基にした他の薬物との併用療法も、多様な固形癌の耐性に対する効果改善、既存治療剤より改善された反応率、及び生存期間延長効果を示すことができる。
【0035】
ポジオチニブは、乳癌を含む癌治療に対し、現在臨床試験中にある。本発明は、そのような臨床試験結果を基に、ポジオチニブ敏感性またはポジオチニブ抵抗性のバイオマーカーを見い出した。
【0036】
前記薬学的組成物は、治療的有効量のポジオチニブではない他の癌治療剤、薬学的に許容される賦形剤、担体及び希釈剤のうち1以上を含んでもよい。前記他の癌治療剤は、EGFRファミリー阻害剤でもある。
【0037】
本明細書において、用語「HER2」は、ヒトにおいて、ERBB2遺伝子によってコーディングされる蛋白質を示す。「HER2」は、ERBB2(ヒト)、HER2/neuまたはErbb2(齧歯類)とも言う。
【0038】
本明細書において、用語「PIK3CA」は、ホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート3−キナーゼ、触媒サブユニットアルファ(catalytic subunit alpha)を示す。PIK3CAは、クラスI PI 3−キナーゼ触媒サブユニットであり、p110α蛋白質とも言う。PIK3CAは、配列番号5のアミノ酸配列を有し、配列番号6のヌクレオチド配列によってコーディングされるものでもある。
【0039】
本明細書において、用語「BARD1(BRAC1−associated RING protein 1)」は、ヒトにおいては、BARD1遺伝子によってコーディングされる蛋白質である。ヒトBARD1蛋白質は、777アミノ酸を有し、RINGフィンガードメイン、4個ankryin反復及び2タンデムBRCTドメインを含む。
【0040】
本明細書において、用語「SETBP1(SET binding protein 1)」は、ヒトにおいては、SETBP1遺伝子によってコーディングされる蛋白質である。ヒトにおいて、該遺伝子は、19番染色体の長腕(q)12.3、すなわち、18q12.3に位置すると知られている。
【0041】
本明細書において、用語「NOTCH3(neurogenic locus notch homolog protein 3)」は、ヒトにおいては、NOTCH3遺伝子によってコーディングされる蛋白質である。ヒトにおいて、該遺伝子は、19番染色体のp13.12、すなわち、19p13.12に位置すると知られている。
【0042】
本明細書において、用語「SH2B3(SH2B adapter protein 3)」は、リンパ球アダプタ蛋白質(LNK:lymphocyte adapter protein)とも知られており、ヒトにおいては、12番染色体上において、SH2B3遺伝子によってコーディングされる蛋白質である。
【0043】
本明細書において、用語「CDK12(CDK12 cyclin-dependent kinase 12)」は、ヒトにおいては、CDK12遺伝子によってコーディングされる蛋白質キナーゼである。該酵素は、シクリン依存性キナーゼ蛋白質ファミリーの一員である。
【0044】
本明細書において、用語「BRCA1」は、腫瘍抑制蛋白質である。BRCA1は、ヒトにおいて、17q12.31の染色体上で発現されると知られている。
【0045】
本明細書において、用語「STAT3(signal transducer and activator of transcription 3)」は、ヒトにおいて、STAT3遺伝子によってコーディングされる転写因子(transcription factor)である。STAT3は、ヒトにおいて、17q21.2の染色体上で発現されると知られている。
【0046】
本明細書において、用語「FGFR3(fibroblast growth factor receptor 3)」は、FGFRファミリーの一員であり、ヒトにおいて、FGFR3遺伝子によってコーディングされる蛋白質である。
【0047】
前記組成物において、前記個体は、乳癌を有するものでもある。前記個体は、HER2陽性転移性乳癌を有するものでもある。前記個体は、以前、ポジオチニブではない、HER2標的化された癌治療を受けてもよい。前記癌治療は、HER2標的化された癌治療剤による治療でもある。前記治療剤は、EGFR阻害剤でもある。前記EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、カネチニブ、ペリチニブ、ネラチニブ、(R,E)−N−(7−クロロ−1−(1−(4−(ジメチルアミノ)ブト−2−エノイル)アゼパン−3−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−2−メチルイソニコチンアミド、トラスツズマブ、マルゲツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ネシツムマブ、ペルツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ネシツムマブ、セツキシマブ、イコチニブ、アファチニブ、及びその薬剤学的に許容可能塩から選択されたものでもある。前記治療剤は、抗EGFRファミリー抗体、または前記抗EGFRファミリー抗体を含む複合体でもある。前記抗EGFRファミリー抗体は、抗HER1抗体、抗HER2抗体または抗HER4抗体でもある。
【0048】
前記組成物において、前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子領域に、1以上、例えば、2以上、3以上または4以上の突然変異を有するものでもある。
【0049】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子の細胞外ドメイン(extracellular domain)をコーディングする領域、または前記上流領域に、1以上、例えば、2以上、3以上または4以上の突然変異を有するものでもある。
【0050】
前記組成物において、前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子の平均コピー単位数が、2以上、例えば、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、16以上、2ないし6、2ないし5、3ないし6、3ないし5、または4ないし6であるものでもある。
【0051】
前記癌細胞は、ポジオチニブ敏感性でもある。
【0052】
前記ERBB2遺伝子領域において、前記突然変異は、点突然変異(point mutation)でもある。前記点突然変異は、アミノ酸置換を引き起こすもの、mRNAスプライシング(splicing)を引き起こすもの、または前記上流領域の点突然変異でもある。前記突然変異は、配列番号1のERBB2のアミノ酸配列において、Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異、配列番号2のERBB2をコーディングするヌクレオチド配列において、1898番GのCへの置換、配列番号3のヌクレオチド配列において、100番AのGへの置換、及び配列番号4の100番CのTへの置換からなる群から選択された1以上の置換突然変異を含むものでもある。配列番号1及び3は、それぞれERBB2のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列であり、配列番号3及び4は、ERBB2遺伝子の上流領域のヌクレオチド配列である。Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異は、配列番号2のヌクレオチド配列において、1702番CのGへの置換、1802番CのGへの置換、1884番CのGへの置換、2653番CのTへの置換、428番GのAへの置換、1301番GのAへの置換、及び2620番GのAへの置換からなる群から選択された1以上の置換でもある。
【0053】
第2態様は、乳癌を有する個体を治療するための医薬の製造における、ポジオチニブの使用であって、前記個体の乳癌細胞は、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものである使用を提供する。
【0054】
第3態様は、乳癌を有する個体に、治療的有効量のポジオチニブを投与する工程を含む、個体において乳癌を治療する方法であって、前記個体の乳癌細胞は、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に、1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するところの方法を提供する。
【0055】
前記方法において、前記個体は、HER2陽性転移性癌を有するものでもある。前記HER2標的化された癌治療を受けでもよい。前記癌治療は、HER2標的化された癌治療剤による治療でもある。前記治療剤は、EGFR阻害剤でもある。前記EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、カネチニブ、ペリチニブ、ネラチニブ、(R,E)−N−(7−クロロ−1−(1−(4−(ジメチルアミノ)ブト−2−エノイル)アゼパン−3−イル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−2−メチルイソニコチンアミド、トラスツズマブ、マルゲツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ネシツムマブ、ペルツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ネシツムマブ、セツキシマブ、イコチニブ、アファチニブ、及びその薬剤学的に許容可能塩から選択されたものでもある。前記治療剤は、抗EGFRファミリー抗体、または前記抗EGFRファミリー抗体を含む複合体でもある。前記抗EGFRファミリー抗体は、抗HER1抗体、抗HER2抗体または抗HER4抗体でもある。
【0056】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子領域に、1以上、例えば、2以上、3以上または4以上の突然変異を有するものでもある。
【0057】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子の細胞外ドメインをコーディングする領域、または前記上流領域に、1以上、例えば、2以上、3以上または4以上の突然変異を有するものでもある。
【0058】
前記癌細胞は、前記ERBB2遺伝子の平均コピー単位数が、2以上、例えば、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、16以上、2ないし6、2ないし5、3ないし6、3ないし5、または4ないし6であるものでもある。
【0059】
前記癌細胞は、ポジオチニブ敏感性でもある。
【0060】
ERBB2遺伝子領域において、前記突然変異は、点突然変異でもある。前記点突然変異は、アミノ酸置換を引き起こすもの、mRNAスプライシングを引き起こすもの、または前記上流領域の点突然変異でもある。前記突然変異は、配列番号1のERBB2のアミノ酸配列において、Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異、配列番号2のERBB2をコーディングするヌクレオチド配列において、1898番GのCへの置換、配列番号3のヌクレオチド配列において、100番AのGへの置換、及び配列番号4の100番CのTへの置換からなる群から選択された1以上の置換突然変異を含むものでもある。Q568E、P601R、I628M、P885S、R143Q、R434Q及びE874Kからなる群から選択された1以上のアミノ酸置換を引き起こすヌクレオチド突然変異は、配列番号2のヌクレオチド配列において、1702番CのGへの置換、1802番CのGへの置換、1884番CのGへの置換、2653番CのTへの置換、428番GのAへの置換、1301番GのAへの置換、及び2620番GのAへの置換からなる群から選択された1以上の置換でもある。
【0061】
前記投与は、経口または非経口によってもなる。該非経口投与は、皮下注射、静脈内投与、筋肉内投与、内臓内投与、真皮内投与、腹膜内投与などを含む。
【0062】
第4態様は、個体から得た癌細胞含有試料において、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するか否かということを検出する工程であって、前記ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示す工程と、前記ポジオチニブ敏感性癌を有する個体に、治療的有効量のポジオチニブを投与する工程と、を含む、個体においてポジオチニブ敏感性癌を治療する方法を提供する。
【0063】
第5態様は、個体から得た癌細胞含有試料において、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するか否かということを検出する工程であって、前記ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示す工程を含む、ポジオチニブ敏感性癌を有する個体を確認する方法を提供する。
【0064】
第4態様及び第5態様において、前記検出する工程は、個体から分離された癌細胞が、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するか否かということを決定するための分析の結果を提供する試験を要請する工程を含んでもよい。第4態様において、前記要請は、投与する工程を遂行する者と異なる者に要請するものでもある。
【0065】
第4態様及び第5態様において、前記検出する工程は、個体から得た癌細胞含有試料を提供する工程を含んでもよい。また、前記検出する工程は、前記試料において、核酸またはその発現産物を分析する工程を含んでもよい。前記分析は、ERBB2遺伝子、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域、ERBB3遺伝子、BARD1遺伝子、SETBP1遺伝子、PIK3CA遺伝子、NOTCH3遺伝子、SH2B3遺伝子、CDK12遺伝子、BRCA1遺伝子、STAT3遺伝子、及びFGFR3遺伝子からなる群から選択された1以上において、突然変異及び遺伝子コピー数のレベルを測定するものでもある。前記分析は、当該技術分野で知られている方法によっても行われる。
【0066】
前記検出する工程は、シーケシング(sequencing)、サイズ分析、プライマー伸張分析、対立遺伝子特異的プライマー伸張分析、対立遺伝子特異的ヌクレオチド混成化分析、5’ヌクレアーゼ分解分析、分子ビーコンを使用する分析法、一本鎖構造多形(single-stranded conformation polymorphism)、混成化分析、及びオリゴヌクレオチド結紮(ligation)分析からなる群から選択された1以上の分析を行うことを含んでもよい。そのような分析により、遺伝子中の突然変異のレベルを測定することができる。
【0067】
前記検出する工程は、ERBB2遺伝子、ERBB3遺伝子、BARD1遺伝子、SETBP1遺伝子、PIK3CA遺伝子、NOTCH3遺伝子、SH2B3遺伝子、CDK12遺伝子、BRCA1遺伝子、STAT3遺伝子及びFGFR3遺伝子からなる群から選択された1以上の遺伝子の平均コピー単位数を測定し、平均コピー単位数増幅があるか否かということを確認する工程を含んでもよい。平均コピー単位数測定は、当該技術分野で知られている方法によっても行われる。前記平均コピー単位数測定は、単一ヌクレオチド多形(SNP:single nucleotide polymorphism)アレイ、比較ゲノム混成化(CGH:comparative genomic hybridization)、サザンブロット分析、蛍光性インサイチュ混成化(FISH)及びシルバーインサイチュ混成化(SISH)からなる群から選択された1以上の分析を行うことを含んでもよい。
【0068】
第4態様及び第5態様において、前記検出する工程において、前記ERBB2遺伝子領域に、2以上、3以上または4以上の突然変異の存在は、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示すものでもある。
【0069】
第4態様及び第5態様において、前記検出する工程において、前記ERBB2遺伝子の細胞外ドメインをコーディングする領域、または前記上流領域に、1以上、例えば、2以上、3以上または4以上の突然変異の存在は、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示すものでもある。
【0070】
第4態様及び第5態様において、前記検出する工程において、前記ERBB2遺伝子領域に、1以上の突然変異が存在し、かつERBB2遺伝子の平均コピー単位数が、2以上、例えば、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、16以上、2ないし6、2ないし5、3ないし6、3ないし5、または4ないし6である場合、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示すものでもある。
【0071】
第4態様及び第5態様において、前記方法は、試料において、前記遺伝子の発現レベルを測定する工程を含んでもよい。前記発現レベルは、前記遺伝子から発現されるmRNAまたは蛋白質のレベルでもある。前記測定する工程は、転写体発現アレイ、RNAインサイチュ混成化(RNA in situ hybridization)、ノーザンブロット分析、直接的なエクソン及び転写体の配列分析(sequencing)を介した転写体係数(enumeration)のうち1以上を含んでもよい。蛋白質のレベルを分析する工程は、蛋白質アレイ(例:ELISA、及び逆相(reverse phase)蛋白質分析RPPA、あるいは細胞または組織破砕物(lysate)または抽出物(extract)のウェスタンブロット分析)、標的蛋白質の存在に係わる組織切片の免疫組織化学染色分析(IHC:immunohistochemical staining analysis)、あるいは標的蛋白質の蛋白質発現の増加を検出するための抗体基盤方法を含んでもよい。
【0072】
第4態様及び第5態様において、前記検出する工程は、個体から得た癌細胞由来ポリヌクレオチド及び/または蛋白質を提供する工程と、前記ポリヌクレオチド及び/または蛋白質をマイクロアレイと接触させ、テスト試料に係わる突然変異プロファイル、遺伝子及び蛋白質の発現プロファイルを提供する工程と、前記突然変異プロファイル、遺伝子及び蛋白質の発現プロファイルを、対照群試料から得たプロファイルと比較する工程と、を含んでもよい。前記マイクロアレイは、標的ヌクレオチドに結合するポリヌクレオチドプローブ、または標的蛋白質に結合する結合物質が固定されたものでもある。前記結合物は、抗体でもある。
【0073】
第6態様は、個体から分離された癌細胞が、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するか否かということに基づいて、ポジオチニブで癌を治療するための個体を選択する工程であって、前記1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示す工程と、前記選択された個体に、治療的有効量のポジオチニブを投与する工程と、を含む、個体で癌を治療する方法を提供する。
【0074】
前記方法において、前記選択する工程は、個体から得た癌細胞含有試料において、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものを検出する工程であって、前記1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに敏感性であることを示す工程を含んでもよい。前記検出する工程は、前記の通りである。
【0075】
前記選択する工程は、個体から分離された癌細胞が、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するか否かということを決定するための分析の結果を提供する試験を要請する工程を含んでもよい。前記要請は、投与する工程を遂行する者と異なる者に要請するものでもある。
【0076】
前記選択する工程は、個体から得た癌細胞含有試料を提供する工程と、前記試料を分析し、前記癌細胞が、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有するものを確認する工程と、前記癌細胞が、ERBB2遺伝子のコピー数増幅、ERBB2遺伝子及びその10kb以内の上流で構成されるERBB2遺伝子領域に1以上の突然変異を有するもの、ERBB3野生型遺伝子、BARD1野生型遺伝子、SETBP1野生型遺伝子、PIK3CA野生型遺伝子、NOTCH3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、SH2B3遺伝子に1以上の突然変異を有するもの、CDK12遺伝子のコピー数増幅、BRCA1遺伝子コピー数の欠失、STAT3遺伝子コピー数の欠失、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異がないものからなる群から選択された1以上を有する場合、前記個体をポジオチニブで治療するための個体として決定する工程と、を含んでもよい。
【0077】
前記選択する工程は、前記癌細胞が、前記ERBB2遺伝子領域に、1以上、例えば、2以上の突然変異を有する場合、前記個体をポジオチニブで治療するための個体として選択することを含んでもよい。
【0078】
前記選択する工程は、前記癌細胞が、前記ERBB2遺伝子領域において、ERBB2の細胞外ドメインをコーディングする領域、またはERBB2遺伝子の前記上流領域において、1以上の突然変異を有する場合、前記個体をポジオチニブで治療するための個体として選択することを含んでもよい。
【0079】
前記選択する工程は、前記癌細胞が、前記ERBB2遺伝子領域に、1以上の突然変異を有し、ERBB2遺伝子の平均コピー単位数が2以上である場合、前記個体をポジオチニブで治療するための個体として選択するものでもある。
【0080】
第1態様ないし第6態様で、NOTCH3遺伝子における1以上の突然変異は、R75Q、D1171V、C388Y、D1598V、E1161K、G1347R、R1175W、A198V、P2191L、D1443A、R1175W、R1761C、L1518M、R1309L、R1175W及びR572Lからなる群から選択された1以上でもある。また、SH2B3遺伝子における1以上の突然変異は、I568T、A536T、R551W、A102S及びI568Tからなる群から選択された1以上でもある。
【0081】
第7態様は、癌を有する個体に、治療的有効量のポジオチニブではない、他の癌治療薬物を投与する工程を含む、個体で癌を治療する方法であって、前記個体の癌細胞は、ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有するところの方法を提供する。
【0082】
第8態様は、個体から分離された癌細胞が、ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有するか否かということに基づいて、ポジオチニブではない、他の癌治療薬物で癌を治療するための個体を選択する工程であって、前記1以上の存在は、前記癌細胞がポジオチニブに抵抗性であることを示す工程と、前記選択された個体に、治療的有効量のポジオチニブではない、他の癌治療薬物を投与する工程と、を含む、個体で癌を治療する方法を提供する。
【0083】
第9態様は、個体から得た癌細胞含有試料において、ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有するものを検出する工程であって、前記1以上を有するものは、前記癌細胞がポジオチニブに抵抗性であることを示す工程と、前記個体に、治療的有効量のポジオチニブではない、他の癌治療薬物を投与する工程と、を含む、個体においてポジオチニブ抵抗性癌を治療する方法を提供する。
【0084】
第10態様は、個体から得た癌細胞含有試料において、ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在、BARD1遺伝子における1以上の突然変異の存在、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異の存在、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異の存在、並びにFGFR3遺伝子のコピー数変異の存在からなる群から選択された1以上を有するものを検出する工程であって、前記1以上の存在は、前記癌細胞がポジオチニブに抵抗性であることを示す工程を含む、ポジオチニブ抵抗性癌を有する個体を確認する方法を提供する。
【0085】
第7態様ないし10態様において、ERBB3遺伝子における1以上の突然変異の存在は、T355I、R967K、R1127H、E1189K、T1342K、R1127H及び1093_1096delからなる群から選択された1以上を引き起こすヌクレオチド突然変異、BARD1遺伝子における1以上の突然変異は、359_369del及びV571Eからなる群から選択された1以上を引き起こすヌクレオチド突然変異、SETBP1遺伝子における1以上の突然変異は、V1450M、R1008H、T1078H、H1206L、E1466D、R627C、E740K及びE1466Dからなる群から選択された1以上を引き起こすヌクレオチド突然変異、PIK3CA遺伝子における1以上の突然変異は、I889M、E542K、H1047R、H1047L及びE545Kからなる群から選択された1以上を引き起こすヌクレオチド突然変異でもある。
【実施例】
【0086】
以下、本発明について、実施例を介して、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0087】
実施例1:乳癌患者の遺伝的情報によるポジオチニブの効能
本発明者らは、乳癌患者にポジオチニブを投与し、患者の遺伝型による効能を確認した。
【0088】
1.ポジオチニブ投与、及び乳癌患者の遺伝型分析
ポジオチニブは、現在臨床開発中にあるパンHER(pan−HER)阻害剤小分子乳癌治療剤である。ポジオチニブは、前臨床及び初期臨床の研究において、HERファミリーチロシンキナーゼの非可逆的阻害を介して、強力な抗腫瘍活性を示した。最近、ポジオチニブ単独治療(monotherapy)のオープンラベル・多中心・二相試験を介して、ポジオチニブが、2回以上のHER2標的治療に失敗したHER2陽性転移性乳癌を有する患者に対する乳癌選択事項(option)であるか否かということを評価した。本発明者らは、HER2陽性転移性乳癌の遺伝的プロファイルを評価し、HER2陽性転移性乳癌(MBC)に対するポジオチニブの潜在的バイオマーカーを調査した。
【0089】
実験方法は、次の通りである。MBCを有する全ての参加者は、米国臨床癌学会及び米国病理学者大学HER2ガイドライン(American Society of Clinical Oncology/College of-American Pathologiest Her2 guideline)によって決定されたHER2陽性転移性乳癌として診断された。それら患者から、新鮮な組織試料またはFFPE試料を得て、ネクストジェネレーションシーケシングのためのDNA及びRNAの抽出に使用した。
【0090】
本発明者らは、前記試料からDNA及びRNAを抽出し、NGS(next generation sequencing)を行った。カスタマイズされた381癌遺伝子パネル(CancerSCAN
TM、三星病院自体制作)を使用し、標的化されたディープシーケシングを行い、シーケシングデータと免疫組織化学と臨床結果(clinical outcome)との相関関係を分析した。
【0091】
前記乳癌患者にポジオチニブの有効量を投与した。その結果、患者の予後を観察した。該予後は、部分寛解(PR:partial remission)、安定的疾病(SD:stable disease)及び進行的疾病(PD:progressive disease)で区分して確認した。また、各患者に対し、病気進行のない生存期間(PFS:progress free survival)を確認した。
【0092】
2.遺伝型及びポジオチニブ治療に対する敏感性分析結果
2015年4月から2016年2月まで、106人の患者が臨床試験に登録された。それら患者のうち75人に対し、バイオマーカーデータが利用可能であった。
【0093】
75人のうち、PRは、14人であり、SDは、41人であり、PDは、20人であった。遺伝子は、129個の突然変異(mutation)とコピー数変異体(CNV:copy number variant)が発見された。CNVは、変異頻度が5以上のものを選択した。有意臨界値(significance threshold)は、p値<0.05である。HER IHCの点数は、63個乳癌患者において、3+であり、12人において、2+であった。HER2のIHC点数は、HER2(p=0.001)のコピー数(CN)と正に(positively)関連しているが、11個乳癌組織は、HER2のコピー数増幅を示していない(HER2 IHC点数2+が6人であり、HER2 IHC点数3+が5人である)。
【0094】
その結果、ERBB3遺伝子(突然変異数=10)、BARD1遺伝子(突然変異数=9)、SETBP1(突然変異数=13)及びPIK3CA遺伝子(突然変異数=34)は、突然変異が存在する場合、予後が良好ではないということと係わっている。NOTCH遺伝子(突然変異数=13)及びSH2B3遺伝子(突然変異数=6)は、突然変異が存在する場合、予後が良好であるということと係わっている。CDK12(コピー数増幅がある個体数=42)、及びERBB2遺伝子のコピー数増幅は、それぞれ好ましい予後と係わっている。BRCA1遺伝子及びSTAT3遺伝子のコピー数欠失は、好ましくない予後と係わっている。また、FGFR3遺伝子(コピー数変異の数=5)は、欠失または増幅があれば、好ましくない予後と係わっている。
【0095】
図1は、ERBB3遺伝子(突然変異数=10)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
図1に示されているように、ERBB3遺伝子に突然変異がある場合、予後、及びPFSの改善と関連性があった(p値は、それぞれ0.003及び0.0012である)。
【0096】
図2は、BARD1遺伝子(突然変異数=9)に関する、突然変異およびその予後(A)、(B)と、PFS(C)との関連性を示す図面である。
図2に示されているように、BARD1遺伝子に突然変異がある場合、予後の悪化と関連性があった。
図2において、(A)及び(B)は、PD(進行性疾病の個体数)vsPRSD(部分寛解+安定した疾病個体数)、及びPD(進行性疾病個体数)vsPR(部分寛解個体数)に係わるフィッシャー正確確率検定結果である(p値は、それぞれ0.001及び0.0026である)。(C)は、PFSを示す
【0097】
図3は、NOTCH3遺伝子(突然変異数=13)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
図3に示されているように、NOTCH3遺伝子に突然変異がある場合、予後、及びPFSの改善と関連性があった(p値は、それぞれ0.0107及び0.0168である)。
【0098】
図4は、SH2B3遺伝子(突然変異数=6)に関する、突然変異およびその予後(A)、(B)と、PFS(C)との関連性を示す図面である。
図4に示されているように、SH2B3遺伝子に突然変異がある場合、予後、及びPFSの改善と関連性があった。A、B及びCにおいて、p値は0.0097、0.0266及び0.0285である。
【0099】
図5は、SETBP1遺伝子(突然変異数=13)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
図5に示されているように、SETBP1遺伝子に突然変異がある場合、予後、及びPFSの改善と関連性があった(p値はそれぞれ0.0332及び0.0049である)。
【0100】
図6は、PIK3CA遺伝子(突然変異数=34)に関する、突然変異およびその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
図6に示されているように、PIK3CA遺伝子に突然変異がある場合、予後及びPFSの悪化と関連性があった(p値は、それぞれ0.0307及び0.0274である)。
【0101】
図7は、CDK12遺伝子増幅(増幅がある個体数=42)に関する、遺伝子増幅及び予後(A、B及びC)、並びにPFS(D)との関連性を示す図面である。
図7に示されているように、CDK12遺伝子増幅がある場合、予後、及びPFSの改善と関連性があった。
【0102】
図8は、BRCA1遺伝子欠失(欠失個体数=9)に関する、遺伝子欠失及びその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
図8に示されているように、BRCA1遺伝子欠失がある場合、予後、及びPFSの改善と関連性があった。
【0103】
図9は、STAT3遺伝子欠失(欠失個体数=5)に関する、遺伝子欠失及びその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
図9に示されているように、STAT3遺伝子欠失がある場合、予後、及びPFSの改善と関連性があった。
【0104】
図10は、FGFR3遺伝子欠失または増幅(変異数=5)に関する、遺伝子コピー数変異及びその予後(A)と、PFS(B)との関連性を示す図面である。
図10に示されているように、FGFR3遺伝子欠失または増幅がある場合、予後及びPFSの悪化と関連性があった。
【0105】
ERBB2遺伝子については、増幅分析だけではなく、突然変異と症状とPFSとの相関関係を調査した。75人のうち13人の患者は、いずれもERBB2遺伝子またはその上流に突然変異を含んでいた。該突然変異は、総18個であり、一部患者は、複数個の突然変異を含んでいた。ポジオチニブによる治療に対して、肯定的予後、すなわち、部分的寛解を示す突然変異は、ほとんど細胞外ドメイン(extra-cellular domain)及び上流に位置した。
【0106】
図11は、ERBB2突然変異と予後との相関関係を示した図面である。
【0107】
図12は、ERBB2突然変異とPFSとの相関関係を示した図面である。
【0108】
図11及び
図12において、A、B、C、D及びEは、それぞれERBB2突然変異がある場合(A)、ERBB2突然変異が2個以上ある場合(B)、ERBB2突然変異が細胞外ドメインまたは上流にある場合(C)、ERBB2突然変異があり、コピー数増幅(log
2(比率)>2)がある場合(D)、及びERBB2突然変異があり、コピー数増幅(log
2(比率)>4)がある場合(E)に係わる分析を示す。
図11によれば、C、D及びEについて、有意であり、
図12によれば、C及びEが有意である。
【0109】
図13は、75人の患者において、突然変異が観察された13人の患者について、ERBB2遺伝子及びその上流領域における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示したものである。
【0110】
図13ないし
図19において、PR、SD及びPDは、それぞれ部分寛解(PR)、安定的疾病(SD)及び進行的疾病(PD)を示す。EP/PR及びIHCは、乳癌細胞がその表面上、細胞質及び核において、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びHER2を有するか否かということに係わる受容体状態を示す。EP/PRは、ER及びPR状態を示す。IHC(immunohistochemistry)は、IHCによって測定された乳癌細胞のHER2状態を示す。調査された全ての癌細胞は、2以上のHER2を発現していた。
【0111】
図13、
図14に示されているように、ポジオチニブが治療的効能を見える細胞は、いずれもlog
2(コピー数)が2以上、3以上または4以上であるERBB2遺伝子コピー数を有している。
【0112】
AA変化及びAA位置は、変異が起きたアミノ酸及びその位置を示す。番号は、配列番号1のアミノ酸配列を基準にした番号を示すものである。配列番号2は、NCBI accession番号NM_004448のヌクレオチド配列に該当し、配列番号1は、それによってコーディングされるアミノ酸に該当する。
【0113】
ドメインは、突然変異が起きたERBB2のドメインを示すものであり、ERBB2は、細胞外ドメイン(23−652番アミノ酸)、膜透過(transmembrane)ドメイン(653−675番アミノ酸)、細胞質ドメイン(676−1255番アミノ酸)及び蛋白質キナーゼ(protein kinase)ドメイン(720−987番アミノ酸)を含む。上流は、ERBB2をコーディングする領域ではない遺伝子の上流で起きた突然変異を示す。スタートは、染色体17のヌクレオチド配列を基準にした番号を示す。
【0114】
図13に示されているように、患者1ないし10は、部分的寛解及び安定的疾病を示し、ポジオチニブ治療が効果的であるということ示す。前記乳癌は、ERBB2遺伝子log
2(比率)が2以上、4以上、6以上または16以上を有するものでもある。前記乳癌は、転移性HER2陽性乳癌でもある。前記乳癌は、HER2は、IHCによる測定において、3+以上のレベルに発現されたものでもある。前記乳癌は、2以上または4以上の突然変異を有するものでもある。
【0115】
図14は、75人の患者において、突然変異が観察された34人の患者について、PIK3CA遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示したものである。
【0116】
図11ないし
図14において、コピー数は、いずれもlog
2(比率)を示すものである。
【0117】
図15は、75人の患者において、突然変異が観察された10人の患者について、ERBB3遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示したものである。
【0118】
図16は、75人の患者において、突然変異が観察された9人の患者について、BARD1遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示したものである。
【0119】
図17は、75人の患者において、突然変異が観察された12人の患者について、NOTCH3遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示したものである。
【0120】
図18は、75人の患者において、突然変異が観察された6人の患者について、SH2B3遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示したものである。
【0121】
図19は、75人の患者において、突然変異が観察された13人の患者について、SETBP1遺伝子における遺伝型分析、及びポジオチニブ治療による予後を示したものである。
【0122】
本明細書で説明された具体例は,説明のための意味にのみ考慮されねばならず、限定の目的に考慮されるものではないと理解されねばならない。それぞれの具体例において、特徴(features)または態様(aspects)の説明は、他の具体例において、他の類似した特徴または態様について、利用可能なものであると一般的に考慮されねばならない。
【0123】
1以上の具体例が前述の図面を参照して説明されたが、形態及び細部事項において、多様な変化が、下記特許請求の範囲によって定義されているような開示の精神(spirit)と範囲とを外れずにもなされうるということは、当業者であるならば、理解することができるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0124】
ポジオチニブ敏感性癌を有する個体を確認する方法によれば、ポジオチニブ敏感性癌を有する個体を効率的に確認することができる。
【0125】
個体においてポジオチニブ敏感性癌を治療する方法によれば、ポジオチニブ敏感性癌を効率的に治療することができる。
【0126】
個体の癌を治療するための薬学的組成物は、個体において、ポジオチニブ敏感性癌の治療にも使用される。
【0127】
癌を治療するための医薬の製造にける、ポジオチニブの使用は、癌を含む個体に投与するための医薬の製造にも効率的に使用される。
【0128】
ポジオチニブ抵抗性癌を有する個体を確認する方法によれば、ポジオチニブ抵抗性癌を有する個体を効率的に確認することができる。
【0129】
個体において、ポジオチニブ抵抗性癌を治療する方法によれば、個体において、ポジオチニブ抵抗性癌を効率的に治療することができる。
【国際調査報告】