特表2021-503014(P2021-503014A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-503014牛妊娠関連グリコタンパク質1に特異的に結合する抗体及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-503014(P2021-503014A)
(43)【公表日】2021年2月4日
(54)【発明の名称】牛妊娠関連グリコタンパク質1に特異的に結合する抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20210108BHJP
   C12N 5/18 20060101ALI20210108BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210108BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20210108BHJP
【FI】
   C07K16/18ZNA
   C12N5/18
   G01N33/53 D
   G01N33/543 501A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-545029(P2020-545029)
(86)(22)【出願日】2018年11月8日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月15日
(86)【国際出願番号】KR2018013572
(87)【国際公開番号】WO2019098603
(87)【国際公開日】20190523
(31)【優先権主張番号】10-2017-0152257
(32)【優先日】2017年11月15日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520170911
【氏名又は名称】エスエルエスバイオ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ボン・フィ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュ・ハ
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ナ・キム
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AB04
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045CA42
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA72
(57)【要約】
bPAG1(bovine pregnancy-associated glycol protein 1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片;該抗体を生産するハイブリドーマ細胞;該抗体を有効成分として含む牛の妊娠診断用組成物;牛の妊娠診断キット;及び牛の妊娠診断方法に係り、該抗体は、牛の妊娠性血漿タンパク質であるbPAG1に特異的に結合するので、牛のように繁殖が重要な動物において、妊娠を簡単に診断することができるが、繁殖効率を高め、畜産業に有用に利用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛の妊娠関連グリコタンパク質1(bPAG1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するエピトープポリペプチドに特異的に結合するものである請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体の重鎖は、免疫グロブリンM(IgM)である請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片は、受託番号KCLRF−BP−00416であるハイブリドーマ細胞によって生産されるものである請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を生産するハイブリドーマ細胞(受託番号KCLRF−BP−00416)。
【請求項6】
bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む牛の妊娠診断のための組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む牛の妊娠を診断するためのキット。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片を検体試料に接触させる段階と、および前記抗体または抗原結合断片に結合されたbPAG1タンパク質を検出する段階と、を含む牛の妊娠を診断する方法。
【請求項9】
前記検出する方法は、酵素免疫分析法(ELISA)、ウェスタンブロッティング、免疫蛍光、免疫組織化学染色、流細胞分析法、免疫細胞化学法、放射能免疫分析法(RIA)、免疫沈澱分析法、免疫拡散分析法、補体固定分析法及びタンパク質チップからなる群のうちから選択されたいずれか一つを遂行することを含むものである請求項8に記載の牛の妊娠を診断する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月15日に出願された大韓民国特許出願第10−2017−0152257号を優先権として主張し、前記明細書の開示内容は、全体として援用により、本出願の明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、牛妊娠関連グリコタンパク質1(bPAG1:bovine pregnancy-associated glycoprotein 1)タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関する。
【背景技術】
【0003】
産業動物である牛の飼育においては、ほとんどが、子牛生産を介して、農家の所得が成り立っている実情である。一方、牛の繁殖においては、受胎させることも重要であるが、受精させた牛の妊娠いかんを早期に診断することも、非受胎動物を早期に別途管理することができ、空胎期間を縮めることができるので、農家の原価節減が可能である。現在、牛妊娠診断のほとんどは、獣医または人工受精者により、妊娠30日ないし42日に、胎膜触診法によってなされている。また、他の方法としては、牛乳内のプロゲステロンを、放射性免疫法(RIA:radiommunoassay)を利用して検査する方法がある。該方法によれば、プロゲステロンは、妊娠の正常進行と正常維持に必要なステロイド系ホルモンであり、プロゲステロンの血清力価が妊娠初期に上昇するので、前記ホルモンの上昇程度を牛乳内で確認する方法である。しかし、前記放射性免疫分析法は、放射性物質を利用し、危険性が伴うだけではなく、複雑な実験装備を使用しなければならず、プロゲステロンの量は、牛によって異なるために、基準が不確かであり、正確な診断のためには、最小限2回以上の実験を行わなければならない問題点がある。従って、既存の問題点を解決すると共に、さらに簡便であって迅速に、牛の妊娠を初期に正確に診断することができる新たな方法の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO03/043524
【特許文献2】US7687281
【特許文献3】KR10−2013−0000950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一様相は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供することである。
【0006】
他の様相は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を生産するハイブリドーマ細胞(受託番号KCLRF−BP−00416)を提供することである。
【0007】
他の様相は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を提供することである。
【0008】
他の様相は、前記組成物を含む牛の妊娠診断用キットを提供することである。
【0009】
他の様相は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を検体試料と接触させる段階と、および前記抗体または抗原結合断片に結合されたbPAG1タンパク質を検出する段階と、を含む牛で妊娠を診断する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、牛の妊娠性血漿タンパク質であるbPAG1に特異的に結合する新規単一クローン抗体を生産するハイブリドーマ細胞を作製し、前記細胞から、前記抗体を多量に分離精製し、牛の妊娠いかんを、比較的簡単な方法で確認することにより、本発明を完成した。
【0011】
本明細書内の用語「牛の妊娠関連グリコタンパク質1(bPAG1:bovine pregnancy-associated glycoprotein 1)タンパク質」は、牛の妊娠性血漿タンパク質であり、妊娠によって出現または増量する血流タンパク質を総称する。前記bPAG1は、タンパク質の天然形態、その変異体、及びその機能的等価物を含む。前記bPAG1は、天然細胞または組み換え細胞から分離されると、あるいは人工的にも合成される。
【0012】
本明細書内の用語「抗体」は、単一抗原性部位に特異的に結合する抗体を意味する。前記抗体は、異なって言及がなければ、当業界で知られた重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドとによって形成された抗原結合特異的部位を含む分子またはその抗原結合断片でもある。前記抗体は、血漿細胞(plasma cell)またはハイブリドーマ細胞によっても生産されえる。前記抗体は、単一クローン抗体(monoclonal antibody)でもありうる。具体的には、受託番号KCLRF−BP−00416であるハイブリドーマ細胞によって生産されるbPAG1タンパク質に特異的に結合する単一クローン抗体であってもよい。本明細書内の用語「抗原・抗体複合体」は、bPAG1タンパク質と、それを認知する抗体との結合物を意味する。前記複合体は、試料中のbPAG1タンパク質の検出にも使用されえる。前記複合体は、例えば、牛の尿、血清または血漿のような生物学的試料において、bPAG1を検出するのにも使用される。
【0013】
一つの態様は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。具体的には、本発明による抗体は、前記抗体が、牛の妊娠性血漿タンパク質であるbPAG1タンパク質を選別的に認知することができる限り、抗原結合断片を含み、前記抗原結合断片は、F(ab’)2,Fab,Fab,Fv断片などを含んでもよい。
【0014】
一実施例において、bPAG1タンパク質に係わる単一クローン抗体と特異的に結合するエピトープ(epitope)を分析した結果、抗原の濃度依存的に、前記抗原と特異的に結合する抗体の量が増加することを確認することができた。特に、前記抗体は、同一抗原濃度において、配列番号2ないし4のアミノ酸配列を有するポリペプチドに比べ、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドに対して特異的に結合する量が顕著に多かった。従って、前記bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するエピトープポリペプチドに結合するものでもありうる。また、前記抗体の完全な形態は、2個の全体長の軽鎖、及び2個の全体長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されているものでもある。前記重鎖は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH、及び3個の不変領域ドメインCH1,CH2及びCH3を含む全長重鎖、並びにその断片のいずれもでもありうる。前記軽鎖は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL、及び不変領域ドメインCLを含む全長軽鎖、並びにその断片をいずれも意味することができる。ここで、前記重鎖は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びイプシロン(ε)の不変領域を含み、軽鎖は、カッパ(κ)タイプ及びラムダ(λ)タイプの不変領域を含む。前記抗体は、例えば、免疫グロブリンM(IgM)でもありうる。
【0015】
他の態様は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を生産するハイブリドーマ細胞(受託番号KCLRF−BP−00416)を提供する。前記bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の具体的な内容は、前述の通りである。具体的には、本発明の一実施例においては、マウスの脾臓細胞を確保し、それをマウス骨髄腫細胞と融合して培養した後、牛の妊娠性血漿タンパク質であるbPAG1に特異的に結合する抗体が確認されたハイブリドーマ細胞のみを選択した。その後、前記ハイブリドーマ細胞を、韓国細胞株研究財団(KCLB, Korean Cell Line Bank)に寄託し、2017年12月22日、受託番号KCLRF−BP−00416を受けた。
【0016】
前記抗体を生産するハイブリドーマ細胞は、それを、試験管内または生体内において、多量に培養するところにも使用されえる。前記ハイブリドーマ細胞が生産する抗体は、精製しないで使用することができるが、最善の結果を得るために、公知された方法により、高純度、例えば、95%以上に精製して使用することができる。前記抗体は、例えば、透析、塩沈殿、クロマトグラフィのような精製方法を利用し、培養培地または腹水液(ascites fluid)から分離することができる。
【0017】
他の態様は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む牛の妊娠診断用組成物を提供する。前記bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の具体的な内容は、前述の通りである。前記組成物は、前記抗体に対する希釈剤、バッファ、安定化剤のような担体を含んでもよい。前記組成物は、抗原・抗体複合体を検出するための検出試薬を含んでもよい。
【0018】
他の様相は、前記抗体または抗原結合断片を含む牛の妊娠診断用キットを提供する。前記bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の具体的な内容は、前述の通りである。具体的には、本発明による牛の妊娠診断用キットには、bPAG1タンパク質を特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片、及び免疫学的分析に使用されるツールまたは試薬が含まれてもよい。前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するエピトープポリペプチドに特異的に結合するものでもある。ここで、免疫学的分析に使用されるツールまたは試薬としては、適する担体、検出可能な信号を生成することができる標識物質、溶解剤、洗浄剤などが含まれてもよい。前記標識物質が酵素である場合、前記キットは、酵素活性を測定することができる基質及び反応停止試薬などを含んでもよい。
【0019】
前記担体は、可溶性担体、例えば、当分野に公知された生理学的に許容される緩衝液、例えば、PBS;不溶性担体、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド、ラテックスに金属をメッキした磁性微粒子のような高分子;その他紙;ガラス;金属;アガロース;及びそれらの組み合わせでもある。
【0020】
他の態様は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を検体試料に接触させる段階と、および前記抗体または抗原結合断片に結合されたbPAG1タンパク質を検出する段階と、を含む牛の妊娠を診断する方法を提供する。前記bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の具体的な内容は、前述の通りである。
【0021】
一具体例による牛の妊娠を診断する方法は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を検体試料に接触させる段階を含む。前記試料は、牛から分離された生物学的試料でもある。具体的には、前記試料は、妊娠いかんを確認しようとする牛の乳汁、組織、細胞、血液、血清、血漿、唾液または尿でもある。前記接触させる段階は、前記抗体またはその抗原結合断片と試料とを液体媒質内でインキュベーションすることでもある。前記インキュベーションは、試料中において、抗原と前記抗体とが抗原・抗体結合を行うのに適する温度、pH及び撹拌条件で行われるものでもある。前記インキュベーションは、2℃ないし37℃で行われるものでもある。前記インキュベーションは、pH6ないし8で行われるものでもある。
【0022】
一具体例による牛の妊娠診断方法は、前記抗体または抗原結合複合体を検出する段階を含む。前記検出する段階は、抗原・抗体複合体を直接分離し、その存在を確認する、あるいは分離することも分離しないこともなしに、前記複合体を、バイオケミストリ、免疫化学分析法などの方法を遂行して検出することでもある。前記分析方法は、酵素免疫分析法(ELISA)、ウェスタンブロッティング(Western blotting)、免疫蛍光(immunofluorescence)、免疫組織化学染色(immunohistochemistry staining)、流細胞分析法(flow cytometry)、免疫細胞化学法、放射能免疫分析法(RIA)、免疫沈澱分析法(immunoprecipitation assay)、免疫拡散分析法(immunodiffusion assay)、補体固定分析法(complement fixation assay)及びタンパク質チップ(protein chip)からなる群のうちから選択されたいずれか一つでもある。
【0023】
前記方法において、前記抗原・抗体複合体は、検出可能な標識(detectable label)によって標識されるか、あるいは検出可能な標識を発生させることができる物質によっても標識される。前記検出可能な標識、または検出可能な標識を発生させることができる物質は、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子(microparticla)、レドックス分子及び放射線同位元素からなる群のうちからも選択される。前記酵素は、例えば、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ及びGDPase、RNase、グルコースオキシダーゼ及びルシフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノ基転移酵素、ホスホエノールピルビン酸デカルボキシラーゼ、β−ラタマーゼ、またはそれらの組み合わせでもある。前記蛍光物質は、フルオレシン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリテリン、フィコシアニン、アロピコシアニン、o−フタルデヒド、フルオレスカミンなどがあるが、それらに制限されるものではない。リガンドには、ビオチン誘導体などがある。前記発光物質は、アクリジニウムエステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼなどがある。前記微細粒子は、コロイド金、着色されたラテックスなどがあるが、それらに制限されるものではない。レドックス分子には、フェロセン、ルテニウム錯化合物、ビオロゲン、キノン、Tiイオン、Csイオン、ジイミド、1,4−ベンゾキノン、ヒドロキノン、KW(CN)、[Os(bpy)2+、[RU(bpy)2+または[MO(CN)4−などでもある。前記放射線同位元素は、H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131Iまたは186Reなどでもある。
【0024】
前述のところのように、本発明によるbPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、牛の妊娠いかんによって出現または増量する血漿タンパク質に特異的に結合し、抗原・抗体複合体を形成し、前記抗原・抗体複合体の分析を介し、牛の妊娠いかんを比較的簡単な方法で診断することができるが、牛の繁殖効率を高め、畜産業に有用に利用されうる。
【発明の効果】
【0025】
一態様は、bPAG1タンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に係わるものであり、前記抗体は、牛の妊娠性血漿タンパク質であるbPAG1に特異的に結合するので、牛のように繁殖が重要な動物において、妊娠を簡単に診断することができるが、繁殖効率を高め、畜産業に有用に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるbPAG1タンパク質の分子的情報を示した図である。
図2】イソタイプスクリーニングテスト結果を示した図である。
図3A】免疫グロブリンMを分離した後、Bradford assayを介して確認した結果を示した図であり、分離された3B1クローンの定量グラフを示した図である。
図3B】免疫グロブリンMを分離した後、Bradford assayを介して確認した結果を示した図であり、分離された3B3クローンの定量グラフを示した図である。
図3C】免疫グロブリンMを分離した後、Bradford assayを介して確認した結果を示した図であり、分離精製した抗体のメンブレイン上での活性程度を示した写真である。
図4】bPAG1タンパク質に係わる単一クローン抗体のエピトープ分析結果を示した図である。
図5】牛の妊娠診断方法を示した模式図である。
図6】簡易製造したキットを利用し、牛の妊娠を診断した結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の理解の一助とするために、望ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をさらに容易に理解するために提供されるものであるのみ、下記実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【0028】
抗体製造用抗原ペプチドは、bPAG1タンパク質の150〜200番目及び350〜400番目のアミノ酸配列のうちから40個を選定し、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH:keyhole limpet hemocyanin)の有無により、4種類で進めた。bPAG1タンパク質断片のアミノ酸配列は、配列番号5(PAG1_100)及び配列番号6(PAG1_300)の配列を有する。
【実施例】
【0029】
実施例1.抗原を用いた免疫反応誘導
1−1.bPAG1_100
準備例の抗原(bPAG1_100)100μlと、同量のコンプリートアジュバント(complete adjuvant)とを利用して抗原乳化液を作った後、8週齢のメスマウス(BALB/C)皮下に投与し、免疫反応を誘導した。一次投与後、2週間隔で、同一抗原100μlと、同量のインコンプリートアジュバント(incomplete adjuvant)とを利用し、前記マウスの皮下に投与した。抗原投与日程などに係わる事項は、下記表1に示されている通りである。
【0030】
1−2.bPAG1_100−KLH
抗原bPAG1_100−KLHを使用したという点を除いては、前記実施例1−1と同様方法で遂行した。
【0031】
1−3.bPAG1_300
抗原bPAG1_300を使用したという点を除いては、前記実施例1−1と同様方法で遂行した。
【0032】
1−4.bPAG1_300−KLH
抗原bPAG1_300−KLHを使用したという点を除いては、前記実施例1−1と同様方法で遂行した。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例2.抗体の力価確認
2−1.bPAG1_100
前記実施例1−1の抗原投与を3回進めた後、前記マウスの尾静脈から血清(serum)を少量採血し、ELISA testを介し、血清内多クローン抗体の力価を確認した。具体的には、bPAG1_100抗原2μg/mlを、ウェル当たり100μlずつ4℃で18時間反応させた後、コーティングした。翌日、ブロッキングバッファ(blocking buffer)を利用し、室温で1時間反応(blocking)させた。その後、マウス血液から得た血清を使用し、倍率に合うように希釈し、ウェルに100μlを分注した後、1時間室温で反応させた。反応が完了したプレートは、PBSTを使用して洗浄した後、HRPがコンジュゲーション(conjugation)されているヤギ抗マウスIgG−HRPを、1:2,000比率で希釈し、ウェルに100μlを分注し、室温で1時間反応させた。その後、PBSTを使用して洗浄し、TMB溶液を分注し、15分間反応させた後、反応停止液を使用して反応を終結させた。450/620nmで吸光度値を測定し、血清内力価(titer)を確認し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0035】
2−2.bPAG1_100−KLH
抗原bPAG1_100−KLHを使用したという点を除いては、前記実施例2−1と同様方法で遂行した。
【0036】
2−3.bPAG1_300
抗原bPAG1_300を使用したという点を除いては、前記実施例2−1と同様方法で遂行した。
【0037】
2−4.bPAG1_300−KLH
抗原bPAG1_300−KLHを使用したという点を除いては、前記実施例2−1と同様方法で遂行した。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
その結果、表2及び表3に示されているように、bPAG1の抗原性分析を介して合成して得られたPAG1−100とPAG1−300とのペプチドがbPAG1抗体を量産したということを確認することができた。
【0041】
実施例3.bPAG1タンパク質に係わる単一クローン抗体を生産するハイブリドーマ細胞の製造、及び単一クローン抗体の分離
3−1.ハイブリドーマ細胞の製造
前記実施例2の抗体力価確認実験を介して確認されたマウスの血清内力価を基準に、高力価を有する抗体が生成されたことを確認し、前記マウスのリンパ球を分離し、細胞融合を実施した。具体的には、前記実施例1−1ないし1−4において、免疫反応が誘導されたマウスの脾臓を、損傷なしに摘出し、DMEM(Dulbecco/Vogt modified Eagle’s minimal essential medium)培地で洗浄し、リンパ球を分離し、60mmディッシュ(dish)にDMEM培地を入れ、単一細胞に分離させた。その後、RBC溶解バッファ(lysis buffer)を使用し、リンパ球に混ざっている赤血球を除去した後、DMEM培地で洗浄し、準備された骨髄腫細胞(myeloma cell;SP2/0 Ag 14−ATCC #CRL−1581)とリンパ球とを、細胞数対比で1:5で混合した。その後、前記混合された細胞にPEG1500 1.7mlを添加して細胞融合を誘導し、96ウェルプレートに、ウェル当たり200μlずつ細胞を分注した後、COインキュベータ(incubator)で培養した。細胞融合2日後、各ウェル当たり50%を、HAT培地(hypoxanthine-aminopterinthymidine medium)に交換し、12日後、コロニー(colony)を確認し、bPAG1タンパク質ペプチド(ELISA確認用抗原)との反応いかんを、前記実施例2と同一ELISA(Asb.450nm)方式で進めて決定した。前記ELISAの結果において、O.D値を基準に、1.0以上である場合、陽性(positive)と選定し、単一クローン抗体を生産するための母細胞として選定し、その結果を下記表4に示した。
【0042】
【表4】
【0043】
3−2.単一クローン抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の選別
前記実施例3−1で製造した融合細胞群において、bPAG1にのみ特異的に反応する細胞を選別し、抗体生成いかんを確認するために、酵素免疫方法を利用してスクリーニングした。
【0044】
細胞融合後12日目に培地を交換し、交換した培地を一次抗体として使用し、ELISA試験を行った。ELISA試験後、当該抗原に陽性を示すウェルを選択し、24ウェルに移して培養した。24ウェルで培養したハイブリドーマ細胞株を、同一方法でさらにELISA試験を行い、抗体力価を確認すると共に、抗体生成細胞株を二次スクリーニングした。24ウェルで育てた融合細胞の吸光度(O.D値)をELISAで確認し、吸光度が1を超える融合細胞のみを選択し、6ウェル培養フラスコに移して培養し、遠心分離した後、上澄み液を取ってELISAで確認し、三次スクリーニングを行った。三次スクリーニングを基に選択された融合細胞をさらに75T/C培養フラスコで移して培養し、ELISAで吸光度を確認し、吸光度が1を超える融合細胞のみを選択した。前記過程を経て選定された細胞株を下記表5に示した。
【0045】
【表5】
【0046】
表5に示されているように、bPAG1−100を結合部位とする抗体は、1A6,2A6,2B6,2C4,3A6,3B1,3B3細胞株及び3B5細胞株が最終選別され、bPAG−300を結合部位とする抗体は、4A1細胞株及び4A3細胞株が選別された。そのうち、融合細胞3B1を韓国細胞株研究財団(KCLB:Korean Cell Line Bank)に2017年12月5日付けで寄託した(受託番号:KCLRF−BP−00416)。
【0047】
実施例4.bPAG1タンパク質に係わる単一クローン抗体の生産及び精製
前記実施例3−2で最終選択した融合細胞から、bPAG1のタンパク質に係わる単一クローン抗体を量産するために、6週齢マウス(BALB/C)の腹腔に、0.5mlインコンプリートアジュバントを投与した。3日後、前記実施例3−1で選定されたハイブリドーマ細胞において、O.D値が高いと確認されたそれぞれの細胞を、マウス1匹当たり100μl(1x10cell)ずつ投与した。6〜10日後、前記マウスの腹腔から腹水(ascite)を採取した。
【0048】
実施例5.bPAG1タンパク質に係わる単一クローン抗体の分離
前記実施例3で選別した融合細胞から、bPAG1に特異的に結合する抗体を分離するために、透析パック(dialysis pack)に、注射器を使用して腹水を入れておいた。その後、2mM PB 2Lをビーカに入れ、マグネチックバーと試料とが入っている透析袋を入れた後、4℃で3〜4日間透析した。ここで、バッファは、1日に1回ずつ交換した。透析が完了した後、透析液内に存在した液体を収去して遠心分離した後、上澄み液を収去し、タンパク質の定量を行い、さらにメンブレン上で抗原・抗体反応を確認した。
【0049】
その結果、図3A及び図3Bに示すように、3B1融合細胞株の場合、腹水1ml当たり約1.5mgの抗体を生産し、3B3融合細胞株の場合、腹水1ml当たり約2mgの抗体を生産した。前記過程を介して分離された抗体のメンブレン上での活性を確認するために、メンブレンに妊娠した牛の血清を少量ローディングして乾燥させた後、金粒子を接合させた各抗体を展開溶液と混合して流した。その結果、図3Cに示されているのように、2C4,3B1,3B3抗体及び4A1抗体において、抗原(bPAG1)との結合を意味する鮮明なスポットを確認することができた。
【0050】
実施例6.bPAG1タンパク質に係わる単一クローン抗体のエピトープ(epitope)の分析
抗体生産に使用したペプチドを使用し、エピトープマッピング(epitope mapping)を実施した。マッピングに使用されたペプチドは、既存抗原生産に使用されたPAG1タンパク質の100,300sizeの一部のみを使用し、下記表6に示されているように、4種類で進めた。
【0051】
【表6】
【0052】
具体的には、抗原bPAG1_100及びbPAG1_300を、それぞれ100μg/ウェルのウェル当たり25,50,100μl及び200μlずつ分注してコーティングした後、室温で2時間反応させた。その後、ブロッキングバッファを利用し、室温で1時間ブロッキングした後、精製されたサンプルを使用し、ウェルに100μl分注し、1時間室温で反応させた。その後、反応が完了したプレートを、PBSTを使用して洗浄し、HRPがコンジュゲーションされているヤギ抗マウスIgMを、1:50,000比率で希釈し、ウェルに100μl分注し、1時間反応させた。反応完了後、PBSTを使用して洗浄し、TMB溶液を分注し、15分間反応させた。その後、反応停止液を使用して反応を終結させ、450/620nmで吸光度値を測定し、サンプル内力価を確認した。
【0053】
その結果、図4に示すように、抗原の濃度依存的に、前記抗原と特異的に結合する抗体の量が増加することを確認することができた。特に、ペプチド1の場合、同一抗原の濃度対比で、ペプチド2〜4に比べ、抗原と特異的に結合する量が顕著であるというところから見て、本発明による抗体エピトープがアミノ酸配列であるということが分かる。
【0054】
実施例7.分離精製した抗体を用いた牛の妊娠診断
前記実施例3で選別した抗体を利用し、妊娠した牛の血液内に存在すると知られているbPAG1を検出した。具体的には、前記抗体をメンブレンに分注し、金粒子が結合された抗原結合部位の異なる抗体を利用し、人工受精後6週、7週及び8週になった牛の血液を採取し、遠心分離して血清を分離した。分離された血清0.05mlを、簡易製造したキットの検体積載部にローディングし、15分経過した後で結果を判定した。
【0055】
その結果、図6に示されているように、受精6週後から、検査線に帯が生成されることを確認することができた。すなわち、前記抗体を利用した牛の血液内bPAG1の存在を確認することにより、牛の妊娠を診断することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】