(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-503624(P2021-503624A)
(43)【公表日】2021年2月12日
(54)【発明の名称】自己補償型液晶リタデーションスイッチ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20210115BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20210115BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-526930(P2020-526930)
(86)(22)【出願日】2018年11月19日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月8日
(86)【国際出願番号】US2018061861
(87)【国際公開番号】WO2019100020
(87)【国際公開日】20190523
(31)【優先権主張番号】62/588,095
(32)【優先日】2017年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518140922
【氏名又は名称】シャープ、ゲイリー ディー
(71)【出願人】
【識別番号】519325304
【氏名又は名称】マクゲッティガン、アンソニー ディー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャープ、ゲイリー ディー
(72)【発明者】
【氏名】マクゲッティガン、アンソニー ディー
【テーマコード(参考)】
2H088
2H149
【Fターム(参考)】
2H088EA05
2H088EA42
2H088EA47
2H088HA17
2H088HA18
2H088MA01
2H149AA20
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149DA23
2H149DA24
2H149DA26
2H149EA03
2H149FD05
2H149FD06
(57)【要約】
本明細書では、2つまたはそれ以上のスイッチング可能な可変複屈折液晶デバイスが、受動的なリターダと組み合わせて使用され、2つのリタデーション値の間でスイッチングするデバイスが製造される。上記デバイスは、新規の自己補償スキームを使用して、広い入射角の範囲にわたって2つの電圧状態の各々で垂直入射のリタデーションを維持する。この設計の一実施形態によれば、厚さ方向のリタデーションは、非通電状態および完全通電状態の両方においてゼロのままである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リタデーションスイッチングデバイスであって、
面内のリタデーションと、厚さ方向のリタデーションとを有する受動的なバイアスリターダと、
厚さ方向のリタデーションと連関する、第1の全リタデーションと、電圧制御された面内のリタデーションとを有する第1の液晶セル(LC1)と、
厚さ方向のリタデーションと連関する、第2の全リタデーションと、電圧制御された面内のリタデーションとを有する第2の液晶セル(LC2)と、
LC1が低電圧に駆動され、LC2が高電圧に駆動され、LC1およびLC2が各々、第1の面内のリタデーションおよび第1の厚さ方向のリタデーションを有する、第1の電圧状態と、
LC1が高電圧に駆動され、LC2が低電圧に駆動され、LC1およびLC2が各々、第2の面内のリタデーションおよび第2の厚さ方向のリタデーションを有する、第2の電圧状態と
を含み、
前記バイアスリターダ、LC1、およびLC2は、第1の電圧状態と第2の電圧状態との間のスイッチングが、面内の複合リタデーションの変化をもたらすように、直列に配置され、
両方の電圧状態での厚さ方向の複合リタデーションの大きさが、最大の面内の複合リタデーションより小さい、リタデーションスイッチングデバイス。
【請求項2】
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチが、一方の状態では、一軸性のAプレートリターダとして挙動し、他方の状態では、Cプレートリターダとして挙動する、請求項1記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項3】
前記第1の液晶セルの光軸が、前記第2の液晶セルの光軸と実質的に交差する、請求項1記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項4】
スイッチの各々のプレチルトは、3度未満である、請求項2記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項5】
スイッチの各々は、スプレイを有し、スイッチの各々の一方の状態または他方の状態のいずれかで、前記スプレイから生じるReは、10ナノメートル未満である、請求項2記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項6】
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの全リターダンスは、実質的に同じである、請求項2記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項7】
前記バイアスリターダは、Aプレートリターダである、請求項1記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項8】
液晶セルの光軸は、前記バイアスリターダの光軸に実質的に平行または垂直である、請求項7記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項9】
前記バイアスリターダ、前記第1のLCスイッチ、および前記第2のLCスイッチの面内のリターダンスは、実質的に同じである、請求項7記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項10】
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの各々の面内のリターダンスは、前記バイアスリターダの面内のリターダンスよりも最大で20%大きい、請求項7記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項11】
前記Aプレートリターダは、λ/4のReおよびλ/8のRthを有する一軸性の1/4波長リターダであり、λは、それを通過する光の波長である、請求項2記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項12】
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記一方の状態または前記他方の状態の一方にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記一方の状態または前記他方の状態の他方にあるときに、デバイスの複合Rthがゼロであるように、Aプレートバイアスリターダのリタデーションと前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチのリタデーションは整合し、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記一方の状態にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記他方の状態にあるときに、デバイスの複合Reはゼロであり、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記他方の状態にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記一方の状態にあるときに、デバイスの複合Reはλ/2である、請求項2記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項13】
前記バイアスリターダは、Cプレートリターダである、請求項1記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項14】
Cプレートバイアスリターダは、λ/8のRthを有し、λは、それを通過する光の波長である、請求項13記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項15】
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記一方の状態または前記他方の状態の一方にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記一方の状態または前記他方の状態の他方にあるときに、デバイスの複合Rthがゼロであるように、Cプレートバイアスリターダのリタデーションと前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチのリタデーションは整合し、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記一方の状態にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記他方の状態にあるときに、デバイスの複合Reはλ/4であり、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記他方の状態にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記一方の状態にあるときに、デバイスの複合Reは−λ/4である、請求項13記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項16】
入力偏光子をさらに含む、請求項1記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項17】
入力偏光子の後に配置される幾何学的補償器をさらに含み、前記幾何学的補償器は、前記入力偏光子および検光子が交差することによる幾何学的漏れを最小にする、請求項1記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項18】
出力検光子をさらに含み、前記出力検光子は、偏光子に対して交差している、請求項16記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項19】
出力に偏光選択反射面をさらに含む、請求項16記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項20】
出力に配置される1/4波長リターダをさらに含む、請求項16記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項21】
出力に配置される幾何学的位相回折光学素子をさらに含む、請求項16記載のリタデーションスイッチングデバイス。
【請求項22】
デバイスであって、
偏光子と、
面内のリタデーション(Re)と、厚さ方向のリタデーション(Rth)とを有するAプレートリターダと、
光軸を有する第1の液晶(LC)スイッチであって、前記第1のLCスイッチのReが前記AプレートリターダのReと加算されるように配置され、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第1の液晶(LC)スイッチと、
光軸を有する第2のLCスイッチであって、前記第2のLCスイッチのReが前記AプレートリターダのReと差分されるように配置され、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第2のLCスイッチと
を含み、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチは、スイッチの他方が前記他方の状態にあるときにはいつでも、スイッチの一方が前記一方の状態にあるように制御され、
デバイス全体の複合Rthは、前記一方の状態または前記他方の状態のいずれかで、個々のスイッチのいずれかのRthよりも実質的に小さく、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチは、前記一方の状態では、一軸性のAプレートリターダとして挙動し、前記他方の状態では、Cプレートリターダとして挙動し、
スイッチの各々のプレチルトは、3度未満であり、
スイッチの各々は、スプレイを有し、スイッチの各々の前記一方の状態または前記他方の状態のいずれかから生じるReは、10ナノメートル未満であり、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの1つが前記一方の状態または前記他方の状態の一方にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記一方の状態または前記他方の状態の他方にあるときに、前記デバイスの複合Rthがゼロであるように、前記Aプレートリターダのリタデーションと前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチのリタデーションは整合し、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記一方の状態にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記他方の状態にあるときに、前記デバイスの複合Reはゼロであり、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの一方が前記他方の状態にあり、前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチの他方が前記一方の状態にあるときに、デバイスの複合Reはλ/2である、デバイス。
【請求項23】
デバイスであって、
偏光子と、
光軸を有し、面内のリタデーション(Re)と、厚さ方向のリタデーション(Rth)とを有する、Aプレートリターダと、
光軸を有し、面内のリタデーション(Re)と、厚さ方向のリタデーション(Rth)とを有し、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第1の液晶(LC)スイッチと、
光軸を有し、面内のリタデーション(Re)と、厚さ方向のリタデーション(Rth)とを有し、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第2のLCスイッチと
を備え、
前記Aプレートリターダと前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチは、前記第1のLCスイッチのReが前記AプレートリターダのReと加算され、前記第2のLCスイッチのReが前記AプレートリターダのReと差分されるように、それぞれの光軸に対して配置され、
前記第1のLCスイッチおよび前記第2のLCスイッチは、互いに逆位相で動作し、
デバイス全体の複合Rthは、前記一方の状態または前記他方の状態のいずれかで、個々のスイッチのいずれかのRthよりも実質的に小さい、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2017年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/588,095号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
先行技術の単純なリタデーションスイッチは、単一の可変複屈折液晶(LC)デバイスを含む。これは、反平行配向ネマチックLCである、電気制御複屈折(ECB)デバイスを使用して実施され得る。あるいは、それは、垂直配向ネマチック(VAN)LC、または平行配向ネマチックLCであるπセルであり得る。それは、特定の設計で円偏光を生成することが知られている、64°のツイストネマチックなどの混合モードのネマチックでもあり得る。
【0003】
ネマチックLCデバイスは、基板の面上への光軸の積算投影(integrated projection)を変化させることによってリタデーションをスイッチングする。典型的なECBに関して、デバイスは、0ボルトで実質的に正の一軸(+Aプレート)のリターダとして挙動し、十分に高い電圧で実質的にゼロの面内のリタデーションを有している。多くの用途において、垂直入射のリタデーションは、入射円錐角度の範囲にわたって維持されることが好ましい。ECBまたはVANデバイスなどのデバイスは、非常にわずかな過度のリタデーション(すなわち、無変調または受動的であるリタデーション)で動作し得るため、比較的魅力的である。また、十分に高いスイッチング電圧を有していることで、これらのデバイスは、基板境界でのスプレイに関連づけられた角度依存性に悩まされることはほとんどない。逆に、πセルは、高い受動的なリタデーション(たとえば、合計のπセルのリタデーションの2/3から5/6)を有し得て、低電圧状態での高度のスプレイを示し得る。したがって、πセルは、高電圧状態および低電圧状態の両方においてオフノーマルな比較的乏しいリタデーション均一性を有し得る。
【0004】
この背景技術に対して、本発明が開発された。
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、リタデーションスイッチングデバイスが開示され、リタデーションスイッチングデバイスは、面内のリタデーションと、厚さ方向のリタデーションとを有する受動的なバイアスリターダと、厚さ方向のリタデーションと連関する、第1の全リタデーションと、電圧制御された面内のリタデーションとを有する第1の液晶セル(LC1)と、厚さ方向のリタデーションと連関する、第2の全リタデーションと、電圧制御された面内のリタデーションとを有する第2の液晶セル(LC2)と、LC1が低電圧に駆動され、LC2が高電圧に駆動され、LC1およびLC2が各々、第1の面内のリタデーションおよび第1の厚さ方向のリタデーションを有する、第1の電圧状態と、LC1が高電圧に駆動され、LC2が低電圧に駆動され、LC1およびLC2が各々、第2の面内のリタデーションおよび第2の厚さ方向のリタデーションを有する、第2の電圧状態とを含む。バイアスリターダ、LC1、およびLC2は、第1の電圧状態と第2の電圧状態との間のスイッチングが、面内の複合リタデーションの変化をもたらすように、直列に配置される。両方の電圧状態での厚さ方向の複合リタデーションの大きさは、最大の面内の複合リタデーションより小さい。
【0006】
第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチは、一方の状態では、一軸性のAプレートリターダとして挙動し、他方の状態では、Cプレートリターダとして挙動し得る。第1の液晶セルの光軸は、第2の液晶セルの光軸と実質的に交差し得る。スイッチの各々のプレチルトは、3度未満であり得る。スイッチの各々は、スプレイを有し得て、スイッチの各々の一方の状態または他方の状態のいずれかで、スプレイから生じるR
eは、10ナノメートル未満であり得る。第1および第2のLCスイッチの全リターダンスは、実質的に同じであり得る。
【0007】
バイアスリターダは、Aプレートリターダであり得る。液晶セルの光軸は、バイアスリターダの光軸に実質的に平行または垂直であり得る。バイアスリターダ、第1のLCスイッチ、および第2のLCスイッチの面内のリターダンスは、実質的に同じであり得る。第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの各々の面内のリターダンスは、バイアスリターダの面内のリターダンスよりも最大で20%大きくなり得る。Aプレートリターダは、λ/4のR
eおよびλ/8のR
thを有する一軸性の1/4波長リターダであり得て、λは、それを通過する光の波長である。第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が一方の状態または他方の状態の一方にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が一方の状態または他方の状態の他方にあるときに、デバイスの複合R
thがゼロであり得るように、Aプレートバイアスリターダのリタデーションと第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチのリタデーションは整合し得て、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が一方の状態にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が他方の状態にあるときに、デバイスの複合R
eはゼロであり得て、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が他方の状態にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が一方の状態にあるときに、デバイスの複合R
eはλ/2であり得る。
【0008】
バイアスリターダは、Cプレートリターダであり得る。Cプレートバイアスリターダは、λ/8のR
thを有し得て、λは、それを通過する光の波長である。第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が一方の状態または他方の状態の一方にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が一方の状態または他方の状態の他方にあるときに、デバイスの複合R
thがゼロであり得るように、Cプレートバイアスリターダのリタデーションと第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチのリタデーションは整合し得て、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が一方の状態にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が他方の状態にあるときに、デバイスの複合R
eはλ/4であり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が他方の状態にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が一方の状態にあるときに、デバイスの複合R
eは−λ/4であり得る。
【0009】
デバイスは、入力偏光子をさらに含み得る。デバイスは、入力偏光子の後に配置される幾何学的補償器をさらに含み得て、幾何学的補償器は、入力偏光子および検光子が交差することによる幾何学的漏れを最小にする。デバイスは、出力検光子をさらに含み得、出力検光子は入力偏光子に対して交差している。デバイスは、出力に偏光選択反射面をさらに含み得る。デバイスは、出力に配置される1/4波長リターダをさらに含み得る。デバイスは、出力に配置される幾何学的位相回折光学素子をさらに含み得る。
【0010】
また、デバイスが開示され、デバイスは、偏光子と、面内のリタデーション(R
e)と、厚さ方向のリタデーション(R
th)とを有するAプレートリターダと、光軸を有する第1の液晶(LC)スイッチであって、第1のLCスイッチのR
eがAプレートリターダのR
eと加算されるように配置され、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第1の液晶(LC)スイッチと、光軸を有する第2のLCスイッチであって、第2のLCスイッチのR
eがAプレートリターダのR
eと差分されるように配置され、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第2のLCスイッチとを含み、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチは、スイッチの他方が他方の状態にあるときにはいつでも、スイッチの一方が一方の状態にあるように制御され、デバイス全体の複合R
thは、一方の状態または他方の状態のいずれかで、個々のスイッチのいずれかのR
thよりも実質的に小さく、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチは、一方の状態では、一軸性のAプレートリターダとして挙動し、他方の状態では、Cプレートリターダとして挙動し、スイッチの各々のプレチルトは、3度未満であり、スイッチの各々は、スプレイを有し、スイッチの各々の一方の状態または他方の状態のいずれかから生じるR
eは、10ナノメートル未満であり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの1つが一方の状態または他方の状態の一方にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が一方の状態または他方の状態の他方にあるときに、デバイスの複合R
thがゼロであり得るように、Aプレートリターダのリタデーションと第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチのリタデーションは整合し得て、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が一方の状態にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が他方の状態にあるときに、デバイスの複合R
eはゼロであり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの一方が他方の状態にあり、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチの他方が一方の状態にあるときに、デバイスの複合R
eはλ/2である。
【0011】
デバイスが開示され、デバイスは、偏光子と、光軸を有し、面内のリタデーション(R
e)と、厚さ方向のリタデーション(R
th)とを有する、Aプレートリターダと、光軸を有し、面内のリタデーション(R
e)と、厚さ方向のリタデーション(R
th)とを有し、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第1の液晶(LC)スイッチと、光軸を有し、面内のリタデーション(R
e)と、厚さ方向のリタデーション(R
th)とを有し、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である、第2のLCスイッチとを備え、Aプレートリターダと第1および第2のLCスイッチは、第1のLCスイッチのR
eがAプレートリターダのR
eと加算され、第2のLCスイッチのR
eがAプレートリターダのR
eと差分されるように、それぞれの光軸に対して配置され、第1のLCスイッチおよび第2のLCスイッチは、互いに逆位相で動作し、デバイス全体の複合R
thは、一方の状態または他方の状態のいずれかで、個々のスイッチのいずれかのR
thよりも実質的に小さい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の自己補償型リタデーションスイッチの断面図である。
【
図2】交差する偏光子間での完全通電状態における、単純な先行技術のECB半波LCリターダに関する、入射角(AOI)でのコントラスト比の方位依存性を示す。
【
図3】様々な入射角に対する0ボルトでの単純な先行技術のECB半波LCリターダの分光透過率を示す。光軸は平行偏光子に対して45°にあり、平行偏光子は、最小の漏れおよび中心波長の大きさをより明確に示すために使用されている。方位45°におけるリタデーションの青方偏移(POIはOAを含む)は−80nmであり、方位−45°における赤方偏移は+72nmである。比較的小さいリタデーション偏移で方位0/90°における幾何学的漏れも存在する。
【
図4】交差する偏光子間で本開示のリタデーションスイッチを使用する、シャッタに関するいくつかの入射角(AOI)でのコントラスト比の方位依存性を示す。LC1は完全に通電され、LC2は非通電(差分のリターダンス)である。本開示の自己補償は、交差する偏光子の幾何学的回転を補正する補償器とともに、ワーストケースのコントラストを45°のAOIで220:1まで増大させる。
【
図5】様々な入射角に対する本開示のリターダスイッチの分光透過率を示す。LC1は非通電であり、LC2は完全に通電されている(加算されたリタデーション)。最小の漏れおよび中心波長をより明確に示すために、平行偏光子が使用されている。リタデーション偏移は、単純なLC変調器のリタデーション偏移と比較して穏やかである。
【
図6】自己補償型スイッチおよび検光子を含む、光シャッタを示す。
【
図7】自己補償型スイッチおよび偏光選択反射器を含む、ビームステアラを示す。
【
図8】自己補償型スイッチおよび幾何学的位相レンズを含む、可変焦点距離レンズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示される実施形態は、様々な変更および代替形態が可能であるが、その特定の実施形態は、図面において例として示されており、本明細書で詳細に説明されている。しかし、本発明を開示される特定の形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明が、特許請求の範囲によって定義されるように本発明の実施形態のすべての修正、同等物、および代替物を包含するものであることを理解されたい。本開示は図面を参照して説明され、ここで、同様の参照番号は実質的に同様の要素を示す。
【0014】
本開示は、入射角の最大範囲にわたって垂直入射挙動を維持する特異な液晶偏光スイッチを明らかにしている。垂直入射挙動は、(たとえば)2つまたはそれ以上の所望の面内のリタデーション値(R
e)を表す電気光学的状態を含み得る。たとえば、2つの状態は、ゼロのリタデーションを有するR
eおよび半波長のリタデーションを含み得る。例示的な偏光スイッチは、2つまたはそれ以上の電気光学的状態で、(A)最小の過剰な(すなわち受動的な)リタデーション、(B)最小のスプレイ、および(C)最小の厚さ方向のリタデーション(R
th)を有し得る。一実施形態では、受動的なリタデーション、スプレイ、および厚さ方向のリタデーションは、実質的にゼロである。ネマチックLCデバイスは、通常、連関するR
eおよびR
thのスイッチング(coupled R
e and R
th switching)を示すため、本明細書で教示される技術は、アクティブ補償または自己補償を使用して、2つまたはそれ以上の状態で、これらを分離し、R
thを最小化する。
【0015】
本開示は、2つまたはそれ以上の電気光学的状態において、厚さ方向のリタデーション(R
th)を最小化する目的でリタデーションを変調するために、加算−差分のスキームを使用し得る。このタイプのスイッチングの先行技術の例は、円偏光アイウェアレンズの1つと組み合わせて使用される、(Stereographiesによって開発された)「Zスクリーン」である。「プッシュプル型」変調器の目的は、特に、受動的な円偏光アイウェアを用いた高速対称3Dスイッチングを製造することであり、広い許容角度を達成する目的ではない。実際には、Zスクリーンは、実際には、いくつかの設計上の制限のために、視野が不十分である。Sharpらによる最近の特許は、1つまたは複数のCプレートリターダを使用して、πセルの過剰または受動的なリタデーションを補償することに特有である、この問題を軽減している(その内容全体が引用により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,167,236号明細書を参照)。受動的なリタデーションは、(複屈折にセルギャップを乗じた)LCセルの全リタデーションと極端な電気光学的状態間で変調される最大リタデーションとの差として計算され得る。たとえば、ゼロのR
eと130nmのR
eとの間で変動し、570nmの受動的なリタデーションを与えるために、700nmの全リタデーションを必要とするπセルが必要とされ得る。また、スプレイと組み合わせた大きなセルのリタデーションが原因で、補償は、非常に大きなFOVを達成することができない。逆に、本開示は、大きなパーセンテージのセルのリタデーション、およびいくつかの場合では、実質的にセル全体のリタデーションを変動させるのに十分な電圧とともに、最小の受動的なリタデーションを有するセルを使用する。一実施形態では、非常に広い範囲の入射角にわたって、両方の状態で、複合リタデーションを維持するために、交差した光軸を有する整合した複数のLCセルが、整合したAプレートリターダと組み合わせて使用される。光軸を完全に面内に有する一軸性のリターダである、受動的なAプレートは、最適な厚さ方向のリタデーション補償(R
th)を提供しながら、加算−差分のリタデーションスキームを可能にするという二重の目的を有することができる。
【0016】
ネマチックLCデバイスは、典型的に、真の可変複屈折スイッチを相当するものではない。むしろ、それらは、電気的に駆動されたときに、基板の面上への分子ディレクタ(光軸)の積算投影(integrated projection)を変調することによって動作する。低プレチルトを仮定すると、デバイスは、実質的に0ボルト状態での+Aプレート(基板の面内に光軸を有する一軸のリターダ)として挙動する。完全に通電されると、スプレイの厚さ方向(Z範囲)は、非常に小さくなり得て(第1および第2のLCスイッチの各々の一方の状態または他方の状態のいずれかでスプレイに起因するR
eは、10ナノメートル未満であり得る)、デバイスは、実質的に+Cプレートリターダ(基板に対して垂直な光軸を有する一軸性)として挙動し得る。このように駆動されるECBデバイスは、面内のリタデーションR
eおよび厚さ方向のリタデーションR
thによって特徴付けられ得て、以下として定義される。
【0019】
式中、dは、液晶セルの厚さであり、n
xおよびn
yは面内の屈折率であり、およびn
zは厚さ方向の屈折率である。R
thは、面内の屈折率の平均と厚さ方向の屈折率との間の差に起因するリタデーションとして認識され得る。それは、入射場がzに沿った非ゼロの投影を有するときに、性能の低下に寄与し得る。実際に、面内および厚さ方向の両方に延伸されるリターダフィルム(たとえば、日東電工株式会社のNRZ製品)は、条件R
th=0をもたらし得て、これによって、入射角(AOI)に実質的に依存しないリタデーションが与える。
【0020】
正の一軸性のLCリターダを仮定すると、上記から、
0ボルトで、R
e=(n
e−n
0)d、およびR
th=+R
e/2が得られ、
式中、n
eは(ラビング方向、または光軸に沿った)異常屈折率であり、n
0は直交方向の通常の屈折率である。また、
全通電状態では、R
e=0、およびR
th=−R
eも得られる。
【0021】
上記の状態のいずれにおいても、R
th値は、非ゼロであり、したがって、オフノーマルの性能が損なわれる可能性があることに留意されたい。さらに、ECBの基本的な挙動は、R
eの変調と密接に結び付いているため、変調されたR
thを生成することである。これは、いずれの状態の性能も向上させるための有効な受動的な補償を排除する。
【0022】
単純な変調器は、R
th値をバイアスする(たとえば)Cプレートを追加することによって、またはR
eおよびR
th値の両方をバイアスするAプレートを追加することによって補償され得る。これは、一方の状態の性能が、LCディスプレイの暗状態FOVなどの、他方の状態よりも高い優先度である場合に、有益であり得る。しかし、このような補償器は、1つの電圧状態に対してゼロの複合R
th値を生成し得るが、それは他方の状態の複合R
th値を犠牲にして行う。たとえば、通電されたセルの正のCプレートのリターダンスに整合した負のCプレートは、大きな範囲の入射角にわたって、ゼロの面内のリタデーションを生成する。しかし、その結果、0ボルトの厚さ方向のリタデーションは、R
th=+3R
e/2となる。したがって、非通電状態での性能は、入射角でさらに低下する。
【0023】
最も広い意味では、本開示は、スイッチング可能なリターダに適用される。一般性を失うことなく、これは、2つの状態が、広い範囲の入射角にわたるゼロのリタデーション、およびゼロ次の半波長のリタデーションを示す光シャッタ用途において、簡便に実証される。
図1は自己補償型リタデーションスイッチの断面を示し、Γは3つすべての素子のリタデーションである。この構成では、1つのセルは、他のセルが低であるときに、高に駆動され、その逆もしかりである。このようにして、1つのLCデバイスは、+Cプレートのリタデーションを生成し、他のLCデバイスは、+Aプレートのリタデーションを生成する。垂直入射では、デバイスは、基本的に、法線を中心として90°に電気的に回転され得る面内のQWリターダである。このように、LCのリタデーションは、受動的なAプレートのリタデーションで加算されるか、または差分される。式1および2は、面内での光軸配向に依存しないため、R
th値の変調はなく、一般にゼロである。
【0025】
表が示すように(Γ=λは、リタデーションの全波長を示す)、複合リタデーションは、両状態でのゼロの厚さ方向のリタデーションとともに、半波およびゼロの面内のリタデーション間で変調する。概して、実質的に100%の変調であるセルのリタデーションと組み合わされた3つのリタデーション値の整合は、両状態のAOI自己補償とともに、Γのリタデーション値とゼロのリタデーション値との間のスイッチングを提供する。
【0026】
偏光スイッチが典型的に交差する偏光子間に配置される光シャッタの場合、AOI性能を最適化するための追加の設計考慮が存在する。一対の理想的な交差する偏光子の単純なケースでは、コントラストは、オフノーマルで低下する。オフノーマルでの幾何学的な回転に完全に起因して、別個に補償される必要がある、方位±45°における最大の漏れが存在する。45°のAOIでのワーストケースの方位におけるコントラスト比は、単に88:1である。(たとえば)偏光子吸収軸に沿ったRth=0を有する2軸性の半波長リターダの挿入は、これを実質的に補正する。この構成要素は、具体的には、オフノーマルであるこれらの方位角において、偏光子の幾何学的な回転の問題を修正する。ゼロ次のHW補償器は、空気中において、45°の極端な入射角でコントラストを88:1から375:1まで高めることができる。代替的に、Aプレート/Cプレートの組み合わせ、または負のCプレートと組み合わされた2軸性のリターダは、当該技術分野で知られているように、同様の機能を提供することができる。
【0027】
ベンチマーク目的で、垂直入射で黒状態を生成するために完全に通電された、交差する偏光子間の45°での単純な先行技術のECB HWリターダの挿入は、空気中において、ワーストケースの方位および45°の入射角で、7:1のコントラストしかを与えない。基本的に、大きな+Cプレートのリタデーションのセルは、
図2に示されるように、オフノーマルである、方位±45°におけるコントラストを実質的に低下させるように作用する。さらに、0ボルト(たとえば、HW)状態での非ゼロのRthの存在は、オフノーマルの性能に影響を及ぼす。
図3は、垂直入射での透過スペクトル、および、オフノーマルである、いくつかの方位角での透過スペクトルを示している。非ゼロのRthは、45°のAOIにおいて、POIが光軸を含むときに、HWの中心波長のリタデーションである、−80nmの青方偏移を生成し、POIが直交軸にあるときに、72nmの赤方偏移を生成する。要約すると、先行技術のリターダスイッチは、非通電状態と完全通電状態の両方において、実質的なAOI不安定性を示す。シャッタまたは立体視3Dシステムに関連する、このようなHW偏移は、角度を有する色ずれを示し得る。3D投影システムにおいて、これは、画面上での白色点の空間変位として発現され得る。
【0028】
図1は、本開示の自己補償型リタデーションスイッチの概略図である。この場合、スイッチは、偏光光を受容するように示されている入力幾何学的補償器を含む。入力幾何学的補償器は、幾何学的回転を補正するためのものであり、当該技術分野で周知である。各内容が参照によって本明細書に組み込まれる、“Analytical Solutions for Uniaxial-Film-Compensated Wide-View Liquid Crystal Displays,”J. Display Technology 2, 2-20, 2006、および“Transmittance Enhancement for Randomly Aligned Liquid Crystal Displays with Circular Polarizers,”Jpn. J. Appl. Phys. 41, L1383-L1385, 2002を参照されたい。次に、Aプレートリターダなどの固定リターダが含まれる。これに続いて、一対の液晶スイッチが含まれ、その各々は、光軸を有し、面内のリタデーション(Re)および厚さ方向のリタデーション(Rth)を有し、一方の状態と他方の状態との間でスイッチング可能である。一対の液晶スイッチは、それらの光軸が互いに直交するように配置され得る。出力時に、光は図示のように偏光され得る。
図1の構成では、先に述べたように幾何学的回転補償器を使用することで、性能が大幅に改善される。
図4は、交差する偏光子間で本開示のリタデーションスイッチを使用するシャッタについての、いくつかの入射角(AOI)でのコントラスト比の方位依存性を示す。LC1は完全に通電され、LC2は非通電(差分のリターダンス)である。本開示の自己補償は、交差する偏光子の幾何学的回転を補正する補償器とともに、45°のAOIでワーストケースのコントラストを220:1まで増大させる。ここで使用される仮定は、LCおよびAプレートが無分散型であることである(しかし、実際には、それらは、一方の状態の面内のリタデーションをゼロに維持するために、少なくとも分散型と整合され得る)。コントラスト対方位のプロットは、ゼロのリタデーション状態のコントラストが、ワーストケースの方位角および45°のAOIで220:1であることを示している。本質的に、本発明のスイッチの性能は、コントラストを7:1から220:1に増大させる。たとえば、立体視3Dシステムに関連して、これは、ステレオコントラスト比(またはゴーストクロストーク)がスクリーン全体にわたって、はるかに良好であり得ることを意味している。
【0029】
さらに、
図3の先行技術のスイッチで観察されたリタデーション偏移は、事実上無効にされる。
図5は、様々な入射角に対する、本開示のリターダスイッチについての分光透過率を示す。LC1は非通電状態であり、LC2は完全に通電されている(加算されたリタデーション)。透過極小の漏れおよび中心波長をより明確に例示するために、平行偏光子が使用される。リタデーション偏移は、単純なLC変調器のリタデーション偏移と比較して穏やかである。立体視3Dシステムに関連して、これは、スクリーン全体にわたって白色点の色ずれがほとんどないことを意味している。方位0/90°における、いくらかの幾何学的漏れが生じるが、これは、追加の受動的な補償を通じて、低減され得ることに留意されたい。これは、リターダの光軸の幾何学的回転によって引き起こされる。
【0030】
本明細書に開示されるデバイスは、LCスイッチの1つが通電され、他が非通電であるように動作するように意図されることに留意されたい。これは、逆位相の動作と呼ばれ得る。上述したように、これは、可算されたリターダンス(LC1が非通電およびLC2が通電)または差分のリターダンス(LC2が非通電およびLC1が通電)を含み得る。
【0031】
広受光角度のリターダスイッチは、多くの光学システムおよび用途を可能にする。偏光ベースまたは偏光感受型の光学システムでは、通常、入射光が完全にコリメートされない場合がある。先行技術の角度感受型の偏光スイッチ(複素振幅変調器、シャッタ、および偏光状態(SOP)の発生器を含む)に対して適切な位置に適応するための光学システムへの変更は、高価であり得、場合によっては不可能である。実質的に角度非感受型であるリタデーションスイッチを可能にすることによって、デバイスは、光学システム内の比較的任意の位置に配置され得て、適切に実行し得る。例としては、投影ディスプレイ、3Dディスプレイ、画像取り込みデバイス、偏光計、スイッチング可能な回折素子などが挙げられる。本明細書に開示される技術は、(たとえば)シャッタを単一ピクセルとして必要とする任意の用途、または高ダイナミックレンジ(HDR)の表示/取り込みなどのためのアレイにおいて使用され得る。デバイスは、2つの極端な電気光学的状態で最良の性能を発揮し得るが、(たとえば)パルス幅変調スキームを使用する時間的平均化によって、いくらかのグレーレベルの制御がもたらされ得る。代替的に、LCデバイスをアナログ方式で駆動させることによって、グレーレベルがもたらされ得る。
【0032】
本明細書に開示される技術は、高い性能が、2つまたはそれ以上の電気光学的状態で、広いAOI範囲にわたって達成される必要がある用途において、特に利点がある。準無彩色の性能が、最小の複屈折分散でゼロ次のリターダおよび材料を使用して、Γのリタデーション状態において達成され得る。LC材料が、逆分散で利用可能になるならば、それは、逆分散のAプレートフィルム(たとえば、帝人株式会社による広帯域のQWリターダ)と組み合わされて、真に無彩色のリターダスイッチを製造することができる。これは、(たとえば)シャッタのスループットを最大にする、または、より一般的には、拡張された波長範囲にわたってリタデーションスイッチングの大きさを維持するのに有益であり得る。さらに、ゼロのリタデーション状態を小さな受動的リターダでバイアスすることによって、効果的に等方性(無彩色)の状態であるゼロのリタデーション状態とHW状態との間の妥協点に達し得る。たとえば、逆分散フィルムは、低リタデーション状態で小さな面内のリタデーションを生成し得て、これは、高リタデーション状態に有益であり、したがって、性能のバランスがとられる。高リタデーション状態では、逆分散フィルムは、より無彩色にするために、より長波長で優先的なリタデーションを加え得る。
【0034】
表2に例示されるように、本開示のLCスイッチは、任意の加算−差分の面内のスイッチングを提供するために使用し得る。しかし、最適なR
th=0の条件が両状態で成立している唯一のケースは、3つすべての素子のリターダンスが整合している場合である。他のケースでは、(単純な変調器に対する)AOIの有益性は、表2に示される複合R
th値に応じて、選択される特定のリターダンスに依存する。見られ得るように、デバイス全体の複合R
thは、一方の状態または他方の状態のいずれかで、個々のスイッチのいずれかのR
thよりも実質的に小さい。
【0035】
本開示のスイッチは、バイナリモードまたはアナログモードのいずれかで動作し得て、後者は、中間ディレクタ分布に関連付けられた電圧でFOV性能の低下を被り得ることが理解される。すなわち、(実質的に)面内(Aプレート)または面外(Cプレート)のいずれでもないディレクタのプロファイルは、入射角による一次のリタデーション偏移を有し得る。加えて、中間ディレクタのプロファイルと関連付けられた幾何学的回転の効果は、より顕著になり得る。逆に、バイナリモードのデバイスは、有効にゼロの複合R
thでの二次のリタデーション偏移を有し得る。
【0036】
視野を最適化する1つの構成では、ディレクタのプロファイルは、バイナリのリタデーションスイッチでのように、極限状態間でのAプレート/Cプレートのスイッチングに近似させられる。ECBに関して、Aプレートの近似は、基板に対するセルのプレチルトを最小化する(3°未満、より好ましくは約1°)ことを伴い得る。それはまた、面外のディレクタ寄与率を増大させ得る小さな電圧を使用するのではなく、むしろ、0ボルトで所望のリタデーションを達成することを意味し得る。逆に、境界でのスプレイの程度が最小化されるのに十分な電圧を供給することによって、通電状態をCプレートに近似させ得る。すなわち、ディレクタは、セル全体にわたって、基板に対して実質的に垂直に存在する。Aプレート/Cプレートのスイッチングは、先に説明したように、(実質的に)ゼロの受動的なリタデーションおよびゼロのスプレイと同じことを表していると考えられ得る。スイッチがVANモードを使用して構築される場合でも、上記は当てはまり、電気光学的状態が反転される。
【0037】
本開示のデバイスは、ステージ間への偏光子の介入の有無にかかわらず、カスケード接続され得る。各ステージが最適化された設計のAOI有益性を満たす程度まで、多段装置もAOI有益性を満たす。各ステージは、特定のリタデーション値をスイッチングし得て、それにより、リタデーション値の数は、2
Nとしてスケーリングし得る。ここで、Nはステージの数である。たとえば、1つのステージは、ゼロと1/4波長との間をスイッチングし、第2のステージは、ゼロと半波との間をスイッチングし得る。これにより、線形のQW増分でステップを踏む4つの状態のデバイスが得られる。もちろん、2つまたはそれ以上のステージを使用する他の構成も実現可能である。場合によっては、各ステージに対するAプレートのリタデーションは、複合リタデーション値を有する単一層に統合され得る。これにより、製造プロセスを簡略化し、必要とされる受動的なリターダの数を減少させることができる。
【0038】
立体視3Dに関連して、本明細書に開示される技術は、(投影または直視)ディスプレイに存在するスイッチングユニット、およびビューアに存在するアイウェアレンズに物理的に分離することができる。この場合、1つの線形偏光子と組み合わされたQWのAプレートは、(±45°の配向で)アイウェアレンズを構成し、他の偏光子および一対のLCデバイスは、ディスプレイに存在する。先行技術のZスクリーンとは異なり、このような自己補償型リターダスイッチは、極めて広角の3D観賞を可能にする。このようなデバイスは、(たとえば)現代の極度に短投影のプロジェクタとともに使用し得る。
【0039】
本明細書に教示されるリタデーションスイッチは、様々なタイプのスイッチングを提供するために、任意の偏光感受型素子と組み合わせ得る。
図7は、自己補償型スイッチおよび偏光選択反射器を含むビームステアラを示す。
図8は、その各内容が引用によって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,570,427号明細書および米国特許第8,264,623号明細書に記載されている種類の自己補償型スイッチおよび幾何学的位相レンズを含む、可変焦点距離レンズを示す。(たとえば、線形)偏光子に続くと、デバイスは、偏光状態発生器として作用し得る。
図6に示すように、線形偏光子に続き/追従すると、デバイスは、振幅/透過スイッチまたは光シャッタとして機能し得る。偏光感受型素子に追従すると、デバイスは、様々な形態のスイッチングを提供し得る。幾何学的位相光学素子は、(たとえば)ビームステアリング(
図7)および焦点距離スイッチング(
図8)を可能にする固有偏光を有している。様々なタイプの偏光ビームスプリッタ(PBS)も、バイナリビームステアリングを可能にする。ワイヤグリッドまたは多層(たとえば、3MのMOF)フィルムは、PBSとして機能するが、それらは熱成形可能でもある。これにより、それらは、同時係属中出願(その内容全体が引用により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第62/623,493号明細書)に記載されているように、光を通過させるか、または反射時に光を修正(たとえば、光パワーを導入)し得る。(その内容全体が引用により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第62/623,484号明細書に記載されているように)ステージ内に多次のリターダなどの光学素子を追加することで、スイッチング可能な偏光干渉波長フィルタを可能にする。リタデーションスイッチはまた、位相のみのモードでも使用し得て、それにより、絶対位相は、変調されるが、偏光状態は、変調されない。上記の変調例の混成体を生成する構成も、可能である。
【0040】
本発明はさらに、(たとえば)円形の固有偏光を有する素子との使用のために必要とされ得る、円形の偏光状態の左右回り間(between the handedness of circular polarization states)での広角度のスイッチングを可能にする。これは、コレステリック液晶および幾何学的位相回折素子(たとえば、レンズまたはビームステアラ)を含む。この場合、前述した、R
e値をバイアスするためのAプレートが、Cプレートに置き換えられ得る。後者は、Γを各LCセルのリタデーションとすると、−Γ/2のR
thリタデーションを有し得る。この状態は、各電圧状態において最小の複合リタデーションで面内R
eスイッチを生成し得る。
【0041】
表3は、Cプレートバイアススイッチに関する真理値表を示しており、(Aプレートバイアススイッチに関する真理値表を示した)表2に類似している。
【0043】
類似を拡張するように、表4は、Cプレートバイアススイッチの1/4波長の実施形態の真理値表を示す。この実施形態は、表1に示される、Aプレートバイアスされたs/p線形偏光スイッチに類似するLHCP/RHCP旋回スイッチ(LHCP/RHCP handedness switch)である。
【0045】
前述したように、一方の電圧状態の厚さ方向を他方の電圧状態を犠牲にして減少させ得るバイアスリターダが、追加され得る。このようなバイアスに感受しない指標は、2つの電圧状態でR
thを抑制する際の自己補償型スイッチの値を示し得る。これは、次のように与えられ得る。
【0047】
ここで、最適化された設計は、ΔR
th=0を有し得る。段落0020に記載される単一のLC可変リターダに関して、2つの極限電圧状態が、+Aプレートおよび+Cプレートのリターダ間のスイッチングに対応する場合、厚さ方向のリタデーションの全変動は、実質的にΔR
th=3R
e/2である。この例では、本発明の有効性に関する指標は、それゆえ、自己補償がこの値未満にΔR
thを減少させる度合いによって与えられ得る。例示的な場合では、表2に示されるように、整合したリターダは、ΔR
th=0を生成する。しかし、リターダ関係性の増分変化は、依然として有用な自己補償を生成することができる。たとえば、それは、リターダが以下の関係性を有する場合である。
【0049】
ここで、δ
1およびδ
2は、それぞれ、バイアスリターダとLCセルとの差である。各々が同様の値の増分シフトを有する場合、上記方程式は以下の値を与え得る。
【0051】
このような例における自己補償は、それゆえ、厚さ方向のリタデーションの変動が実質的に以下を満たす任意の関係性に対して有益であり得る。
【0053】
本発明の実施形態は、図面および前述の説明において詳細に図示され、説明されてきたが、そのような図示および説明は、例としてみなされるべきであり、特徴を限定するものではない。たとえば、上述した特定の実施形態は、他の記載された実施形態と組み合わせることができ、および/または他の方法で構成されてもよい(たとえば、プロセス要素が他のシーケンスで実行されてもよい)。したがって、例示的な実施形態およびその変形のみが示され、説明されていることが理解されるべきである。
【国際調査報告】