(81)【指定国】
      AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
    
  前記LRP10インヒビターまたはコンペティターが、リンパ球、好ましくはCD8+T細胞および細胞毒性Tリンパ球の腫瘍浸潤を増強することによって、癌免疫治療を実現する、請求項1に記載の使用。
  前記LRP10インヒビターまたはコンペティターが、化学療法および/または放射線療法を受けてきた患者において、全ての造血系列、好ましくはリンパ系列の回復を増強する、請求項3に記載の使用。
  前記LRP10インヒビターが、好ましくはLRP10エクトドメインに結合する、抗LRP10抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
  前記LRP10コンペティターが、1つまたは複数のLRP10リガンドに対する操作された可溶性の受容体であり、前記受容体が、内因性LRP10との結合について、競合する(例えばLRP10−Fcキメラ)、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
  配列番号1、5、7、11、15、19、および23からなる群から選択されるVL配列、ならびに配列番号2、8、12、16、20、24、27、および29からなる群から選択されるVH配列を含む、請求項7に記載の抗体またはそのフラグメント。
  遊走アッセイで、前記抗体またはそのフラグメントと接触した細胞(例えば、造血幹細胞またはT細胞)が、前記抗体またはそのフラグメントと接触していない対照細胞よりも迅速に、走化性刺激に向けて移動し、好ましくは、前記走化性刺激が、C−X−Cモチーフケモカイン12(CXCL12)、C−X−Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、スフィンゴシン−1−ホスファート(S1P)、C−Cモチーフリガンド2(CCL2)、および/またはC−Cモチーフリガンド21(CCL21)から選択される、請求項7に記載の抗体またはそのフラグメント。
  前記抗体またはそのフラグメントと接触した細胞(例えば、造血幹細胞またはT細胞)が、前記抗体またはそのフラグメントと接触していない対照細胞と比較して、Frizzledおよび/またはP21の発現の増大を示す、請求項7に記載の抗体またはそのフラグメント。
  場合によっては癌免疫治療および/または造血回復に用いられる、1つまたは複数のLRP10リガンドに対する可溶性の受容体であって、前記1つまたは複数のLRP10リガンドとの結合について内因性LRP10と競合し、好ましくはLRP10−Fcキメラである可溶性の受容体。
  請求項7から11のいずれか1項に記載の抗体もしくはそのフラグメント、または請求項13に記載の可溶性の受容体、ならびに薬学的に許容されるキャリアを含む、癌免疫治療および/または造血回復のための医薬組成物。
  LRP10インヒビターを同定する方法であって、細胞を試験剤と接触させることを含み、前記試験剤と接触していない対照細胞と比較した、走化性刺激に向かう移動の増大が、前記試験剤がLRP10インヒビターであることを示し、好ましくは、前記走化性刺激が、C−X−Cモチーフケモカイン12(CXCL12)、C−X−Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、スフィンゴシン−1−ホスファート(S1P)、C−Cモチーフリガンド2(CCL2)、および/またはC−Cモチーフリガンド21(CCL21)から選択される、方法。
  LRP10インヒビターを同定する方法であって、細胞を試験剤と接触させることを含み、前記試験剤と接触していない対照細胞と比較したFrizzledおよび/またはp21の発現の増大が、前記試験剤がLRP10インヒビターであることを示す、方法。
  前記試験剤が、1つまたは複数のLRP10リガンドに対する抗LRP10抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または可溶性の受容体(例えばLRP10−Fcキメラ)である、請求項15または16に記載の方法。
 
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
  前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は双方とも、例示的かつ説明的なものであるにすぎず、本開示の組成物および方法の制限ではないことが理解されるべきである。
 
【0023】
  LRP10の阻害、化学療法もしくは照射後の対象における造血回復の増強、および/または癌免疫治療の向上に関連する組成物および方法、ならびにそのような方法に用いることができるキットが本明細書中で開示される。本開示の一態様は、Lrp10内の突然変異またはLrp10のノックアウトが、造血回復の速度の上昇によって特徴付けられる表現型を、そして、混合キメラの場合には、突然変異細胞が野生型(WT)細胞に、競合において勝るという驚くべき発見に関する。したがって、例えば化学療法または照射の後に、LRP10のインヒビター、例えば抗体を用いて、対象において造血回復を促進することができる。また、理論によって拘束されることを望むものではないが、LRP10阻害は、チェックポイント阻害と同等であり、CD8+T細胞が、普通よりも効果的に腫瘍に浸潤することを可能し得ると考えられる。したがって、LRP10阻害はまた、癌の免疫治療処置を(例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球の数を増大させることによって)増大させるのに用いることもできる。
 
【0024】
  LRP10は、以前に機能が知られていない単一の血漿膜貫通受容体である。予想外にも、Lrp10  KO  T細胞は、WT細胞よりも迅速に、走化性刺激に向かって移動する。さらに、Lrp10  KO  T細胞は、Fizzledおよびp21(p21は、非標準的な(non−canonical)Wntシグナリング経路の最終生成物である)の高い発現を示す。一部の実施形態において、走化性遊走アッセイで、Frizzled発現および/またはp21発現は、LRP10のインヒビターのスクリーニングにおいて、マーカーとして用いることができる。
 
【0025】
  したがって、LRP10インヒビター、例えば本明細書中で開示される抗体および可溶性の受容体は、化学療法または照射の後に造血回復を向上させること、かつ/または癌免疫治療を向上させることによって、対象を処置するのに用いることができる。
 
【0026】
定義
  便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲に使用される特定の用語を、ここに集める。別段の定めがない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、一般的に、本開示が属する技術の当業者が理解するのと同じ意味を有する。
 
【0027】
  本明細書中で用いられる以下の用語およびフレーズは、以下の意味を有することが意図される。
 
【0028】
  冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的のうちの1つに、または複数(すなわち、少なくとも1つ)に言及するために、本明細書中で用いられる。一例として、「要素(an  element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
 
【0029】
  本明細書中で用いられる用語「約」は、明示される値の20%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内の許容可能な変動を意味する。
 
【0030】
  「Lrp10」および「LRP10」(LRP9、LRP−10、MST087、またはMSTP087としても知られている)は、互換的に用いられ、そしてLDL受容体関連タンパク質10を指し、「Lrp10」は、通常、特に明記しない限り、遺伝子またはmRNA、およびタンパク質生成物「LRP10」を指す。当該用語は、完全な遺伝子、cDNA配列、完全なアミノ酸配列、またはそれらのあらゆるフラグメントもしくは変異体を含むことを理解すべきである。一部の実施形態において、LRP10は、ヒトLRP10である。
 
【0031】
  本明細書中で用いられる用語「LRP10インヒビター」は、LRP10活性を阻害し、下方調節し、抑制し、または下方制御する治療剤を含むことが意図される。当該用語は、化合物、例えば小分子インヒビターおよび生物剤(例えば抗体)、干渉RNA(shRNA、siRNA)、可溶性アンタゴニスト、遺伝子編集/サイレンシングツール(CRISPR/Cas9、TALEN)等を含むことが意図される。
 
【0032】
  「抗LRP10抗体」は、LRP10(例えば、その細胞外ドメイン)に免疫特異的に結合する抗体である。抗体は、単離された抗体であってもよい。LRP10へのそのような結合は、値が、例えば、1μM以下、100nM以下、または50nM以下であるKdを示す。Kdは、当業者に知られているあらゆる方法によって測定することができ、例えば表面プラスモン共鳴アッセイまたは細胞結合アッセイがある。抗LRP10抗体は、モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントであってもよい。例示的な抗LRP10抗体は、LRP10の、そのリガンド(例えば内因性リガンド)との結合を阻害してもよい。
 
【0033】
  本明細書中で用いられる「抗体」は、標的エピトープに結合する結合ドメインを含む1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質である。用語抗体は、免疫グロブリン重鎖分子および軽鎖分子を含むモノクローナル抗体、単重鎖可変ドメイン抗体、ならびにそれらの変異体および誘導体(モノクローナル抗体および単重鎖可変ドメイン抗体のキメラ変異体が挙げられる)を含む。結合ドメインは、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされ、タンパク質は、抗原に免疫特異的に結合する。認識されている免疫グロブリン遺伝子として、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、これらは順番に、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEをそれぞれ定義する。種としてヒトおよびマウスが挙げられるほとんどの脊椎動物について、典型的な免疫グロブリン構造ユニットは、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成されるテトラマーを含み、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。「VL」および「VH」は、これらの軽鎖および重鎖の可変ドメインをそれぞれ指す。「CL」および「C
H」は、軽鎖および重鎖の定常ドメインを指す。β鎖のループ(VLおよびVH上にそれぞれ3つ)が、抗原への結合を担っており、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。「Fab」(フラグメント、抗原結合)領域は、抗体の各重鎖および軽鎖由来の1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメイン、すなわちVL、CL、VH、およびCH1を含む。
 
【0034】
  抗体として、無傷の免疫グロブリンおよびその抗原結合フラグメントが挙げられる。用語「抗原結合フラグメント」は、抗原に結合し、または抗原結合(すなわち、特異的結合)について無傷の抗体と(すなわち、フラグメントが由来する無傷の抗体と)競合する抗体のポリペプチドフラグメントを指す。抗原結合フラグメントは、当該技術において周知である組換え方法または生化学的方法によって生成することができる。例示的な抗原結合フラグメントとして、Fv、Fab、Fab’、(Fab’)2、CDR、パラトープ、およびVn鎖およびVL鎖が、連続ポリペプチドを形成するように互いに(直接的に、またはペプチドリンカーを介して)結合されている単鎖Fv抗体(scFv)が挙げられる。
 
【0035】
  重鎖抗体として知られている別のクラスの抗体(HCA、2本鎖抗体または2本鎖重鎖抗体とも呼ばれる)が、ラクダ科の動物、例えば、ヒトコブラクダ、フタコブラクダ、野生フタコブラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーニャ、およびグアナコにおいて報告されている(Hamers−Casterman  et  al.,Nature,363,446−448(1993);Wesolowski  et  al.,Med.Microbiol.Immunol(2009)198:157−174;また、米国特許第5,759,808号明細書;米国特許第5,800,988号明細書;米国特許第5,840,526号明細書;および米国特許第5,874,541号明細書を参照)。IgG型の従来の4本鎖免疫グロブリン(ラクダ科の動物によっても生成される)と比較して、これらの抗体は、従来の免疫グロブリンの軽鎖およびCH1ドメインを欠いており、そしてそれらの可変ドメインは、時折、「VHH」と称される。VHHは、4つのフレームワーク領域または「FR」、FR1、FR2、FR3、およびFR4を含んでよい。フレームワーク領域は、3つのCDR、CDR1、CDR2、およびCDR3によって中断される。これらの天然に存在する重鎖抗体の顕著な特徴の1つは、VHHのVL界面位置44、45、および47(Rabatナンバリング)のそれぞれGlu、Arg、およびGlyの支配的な存在である。従来の4本鎖抗体のVH内の同位置は、ほぼ排他的に、Gly、Leu、およびTrpによって占められる。これらの差異は、従来の4本鎖抗体のVHドメインの関連する不溶性と比較して、ラクダ科の動物のHCA可変ドメイン(VHH)の高い可溶性および安定性を担うと考えられる。ラクダ科の動物のVHHドメインの2つのより顕著な特徴は、その比較的長いCDR3、およびCDR内でのシステイン対の高い出現率である。システイン対は、ジスルフィド架橋の形成を媒介するので、抗体結合部位の表面トポロジーの調節に関与するようである。ラクダのsdAb−リゾチーム複合体の結晶構造において、sdAbから突出し、かつCDRジスルフィド結合によって部分的に安定化された堅いループが、結合部位から延びて、リゾチーム活性部位中に深く侵入する(Desmyter  et  al.,Nature  Struct.Biol.,3,803−811(1996))。
 
【0036】
  また、抗体として、変異体、キメラ抗体、およびヒト化抗体が挙げられる。本明細書中で用いられる用語「抗体変異体」は、重鎖および/または軽鎖内の単一または複数の突然変異を有する抗体を指す。一部の実施形態において、突然変異は、可変領域内に存在する。一部の実施形態において、突然変異は、定常領域内に存在する。「キメラ抗体」は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれの一部分が、特定の種に由来する、または特定のクラスに属する抗体内の対応する配列に相同である一方、鎖の残りのセグメントが、別のものにおける対応する配列に相同である抗体を指す。典型的には、当該キメラ抗体において、軽鎖および重鎖の双方の可変領域は、哺乳動物の1種に由来する抗体の可変領域を模倣する一方、定常部分は、別のものに由来する抗体内の配列に相同である。そのようなキメラ形態の1つの明らかな利点は、例えば、ヒト細胞調製物に由来する定常領域と併用で、好都合にも可変領域を、例えば非ヒト宿主生物由来の容易に利用可能なハイブリドーマまたはB細胞を使用して現在知られている源から由来させ得ることである。可変領域は、調製の容易さの利点を有し、そして特異性は、その源によって影響されない一方、ヒトの定常領域は、非ヒト源由来の定常領域よりも、抗体が導入された場合に、ヒト対象由来の免疫応答を誘発する可能性が低い。しかしながら、定義は、この特定の例に限られない。「ヒト化」抗体は、非ヒト種由来の免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位、ならびに、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく、分子の残りの免疫グロブリン構造を有する分子に言及する。抗原結合部位は、定常ドメイン上に融合した完全な可変ドメイン、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域上にグラフトされた相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含んでもよい。抗原結合部位は、野生型であってもよいし、1つまたは複数のアミノ酸置換によって修飾されていてもよく、例えば、ヒト免疫グロブリンにより密接に似るように修飾されてもよい。ヒト化抗体の一部の形態は、全てのCDR配列(例えば、マウス抗体由来の6つ全てのCDRを含有するヒト化マウス抗体)を保存する。ヒト化抗体の他の形態は、1つまたは複数(1、2、3、4、5、または6つ)のCDRを有し、これらは、元の抗体に対して変更されており、1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。
 
【0037】
  本明細書中に記載される、VHHが挙げられる抗体のアミノ酸残基は、Rabatの一般的なナンバリングに従って番号を付けられてよい(Rabat,  et  al.(1991)Sequences  of  Proteins  of  Immunological  Interest,5th  edition.Public  Health  Service,NIH,Bethesda,MD)。
 
【0038】
  VHH等の抗体と、標的としてのLRP10のエピトープとの間の結合の文脈において本明細書中で用いられる用語「結合」は、分子間での非共有結合性の相互作用のプロセスに言及する。好ましくは、前記結合は、特異的である。抗体の特異性は、親和性に基づいて判定することができる。特異的な抗体は、そのエピトープに対する結合親和性または解離定数Kdが、10
−7M未満、好ましくは10
−8M未満であり得る。
 
【0039】
  用語「親和性」は、抗体の結合ドメインとエピトープとの間の結合反応の強度に言及する。これは、結合ドメインとエピトープとの間で作用する引力および斥力の合計である。本明細書中で用いられる用語親和性は、解離定数Kdを指す。
 
【0040】
  用語「抗原」は、抗体等の選択的結合剤が結合することができ、そして加えて、動物において用いられて、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を生成することができる分子または分子の一部を指す。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有してもよい。
 
【0041】
  用語「癌」は、宿主自身の細胞の無制御の、異常な増殖に広く言及し、これが、宿主において、周囲組織の、そして異常な細胞増殖の最初の部位に遠位の潜在的な組織の侵入の原因となる。主要なクラスとして、上皮組織(例えば、皮膚、扁平上皮細胞)の癌である癌腫;結合組織(例えば、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管その他)の癌である肉腫;血液形成組織(例えば骨髄組織)の癌である白血病;免疫細胞の癌であるリンパ腫および骨髄腫;ならびに脳および脊髄組織由来の癌が挙げられる中枢神経系の癌が挙げられる。「癌」、「新生物」、および「腫瘍」は、本明細書中で互換的に用いられる。本明細書中で用いられる「癌」は、白血病、癌腫、および肉腫が挙げられる全ての種類の癌、新生物、または悪性腫瘍を指し、新しいか再発かに拘らない。癌の具体例として、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、および混合型の腫瘍がある。癌の限定されない例として、脳、黒色腫、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、腎臓、肺、非小細胞性肺、中皮腫、卵巣、前立腺、肉腫、胃、子宮、および髄芽腫の新しい癌または再発した癌がある。
 
【0042】
  用語「細胞の増強」または「免疫治療の増強」は、環境内での細胞の流入または細胞の増殖に広く言及し、当該細胞は、組成物の投与前の環境において実質的に存在せず、かつ組成物それ自体の中に存在しない。環境を増強する細胞として、免疫細胞、間質細胞、細菌細胞、および真菌細胞が挙げられる。特に注目する環境は、癌細胞が属する、または位置する微環境である。一部の例において、微環境は、腫瘍微環境または腫瘍排出リンパ節である。他の例において、微環境は、前癌性組織部位、組成物の局所投与の部位、または組成物が、遠く離れた投与の後に蓄積することとなる部位である。
 
【0043】
  用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる、あらゆる決定因子、好ましくはポリペプチド決定因子を含む。特定の実施形態において、エピトープ決定因子には、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニル等の分子の化学的に活性な表面基(surface  grouping)が挙げられ、そして特定の実施形態において、特異的な三次元構造特性および/または特異的な電荷特性を有してもよい。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。特定の実施形態において、抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複合混合物内の標的抗原を選択的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。エピトープマッピング方法が、当該技術において周知であり、例えば、X線共結晶解析、アレイベースのオリゴペプチドスキャニング、部位特異的突然変異誘発、高スループット突然変異誘発マッピング、および水素−重水素交換がある。
 
【0044】
  エピトープに結合する抗体上の部位は、「パラトープ」と呼ばれ、これは典型的に、一旦結合すると、エピトープに近接するアミノ酸残基を含む。Sela−Culang  et  al.,Front  Immunol.2013;4:302を参照。
 
【0045】
  「免疫組織化学」または「IHC」は、組織切片の細胞内で抗原を検出して、生物組織内で、対象とする抗原を免疫特異的に認識する抗体の結合および以降の検出を可能にするプロセスを指す。IHC技術のレビューについて、例えば、Ramos−Vara  et  al.,Veterinary  Pathology  January  2014  vol.51  no.1,42−87(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照。IHCの結果を評価するために、様々な質的スコアリングシステムおよび半定量的スコアリングシステムが開発されてきた。例えば、Fedchenko  et  al.,Diagnostic  Pathology,2014;9:221(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照。一例が、H−スコアであり、細胞のパーセンテージの、染色強度の序数値との乗算の結果を加えることによって求められ(「シグナルなし」について0から、「強いシグナル」について3にまでスコア化される)、300の値が考えられる。
 
【0046】
  「免疫特異的」または「免疫特異的に」(時折「特異的に」と互換的に用いられる)は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされるドメインを介して、対象とするタンパク質の1つまたは複数のエピトープに結合するが、抗原分子の混合集団を含有するサンプル内で他の分子を実質的に認識せず、かつこれに結合しない抗体に言及する。典型的には、抗体は、同種抗原に免疫特異的に結合し、K
dが、表面プラスモン共鳴アッセイまたは細胞結合アッセイによって測定されて50nM以下の値である。そのようなアッセイの使用は、当該技術において周知である。
 
【0047】
  用語「免疫応答」は、T細胞媒介免疫応答および/またはB細胞媒介免疫応答を含む。例示的な免疫応答として、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生および細胞毒性が挙げられる。また、用語免疫応答は、例えば、サイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの抗体産生(液性応答)および活性化といった、T細胞活性化によって間接的にもたらされる免疫応答が挙げられる。
 
【0048】
  「免疫治療」は、癌を処置するために対象の免疫系を用いる処置であり、例えば、固有の免疫治療、腫瘍浸潤リンパ球(「TIL」)の養子移入、活性特異的免疫治療(「AST」)、養子細胞免疫治療(「ACT」)、養子免疫治療、癌抗原免疫治療(「CAT」)、サイトカイン発現癌免疫治療、モノクローナル抗体、治療癌ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス免疫治療、養子T細胞移入、サイトカイン免疫治療、アジュバント免疫治療が挙げられる。
 
【0049】
  用語「免疫療法剤」は、対象において腫瘍または癌に対して免疫応答を生じさせるように宿主免疫系を刺激することができるあらゆる分子、ペプチド、抗体、または他の剤を含むことができる。種々の免疫療法剤が、本明細書中に記載される組成物および方法に有用である。
 
【0050】
  用語「交差競合する」、「交差競合」、「交差ブロックする」、「交差ブロックされた」、および「交差ブロッキング」は、本明細書中で互換的に用いられて、抗体またはそのフラグメントの、標的LRP10への直接的な、または本開示の抗LRP10抗体のアロステリック調節を介した間接的な結合に干渉する能力を意味する。抗体またはそのフラグメントが、標的への別のものの結合に干渉することができる程度、そして従って、本開示に従って交差ブロックまたは交差競合すると言えるかは、競合結合アッセイを用いて判定することができる。特に適切な一定量的交差競合アッセイは、標識された(例えば、Hisタグ付けされた、ビオチン化された、または放射性標識された)抗体またはそのフラグメントと、標的への結合に関する他の抗体またはそのフラグメントとの競合を測定するためのFACS−またはAlphaScreenベースのアプローチを用いる。一般に、交差競合抗体またはそのフラグメントは、例えば、交差競合アッセイにおいて、アッセイ中に、そして第2の抗体またはそのフラグメントの存在下で、本開示に従う免疫グロブリン単可変ドメインまたはポリペプチドの記録される置換が、所定の量で存在する、試験される潜在的交差ブロッキング抗体またはそのフラグメントによる理論上の最大置換(例えば、交差ブロックされるのに必要なコールド(例えば、非標識)抗体またはそのフラグメントによる置換)の(例えば、FACSベースの競合アッセイにおいて)最大100%であるように、標的と結合することができるものである。好ましくは、交差競合抗体またはそのフラグメントは、記録される置換が、10%〜100%、より好ましくは50%〜100%である。
 
【0051】
  本明細書中で互換的に用いられる用語「抑制する」、「抑制」、「阻害する」、「阻害」、「中和する」、および「中和している」は、活性の完全なブロッキングが挙げられる、生物活性(例えば、LRP10活性または腫瘍細胞増殖)の統計学的に有意なあらゆる低下を指す。例えば、「阻害」は、生物活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低下を指し得る。
 
【0052】
  用語「対象」または「患者」は、予防的または治療的な処置を受けるヒトまたは他の哺乳動物を含む。
 
【0053】
  本明細書中で用いられる用語「処置する」、「処置すること」、および「処置」は、治療的または予防的な措置を指し、例えば本明細書中に記載されるものがある。「処置」の方法は、本明細書中で提供されるLRP10インヒビターの、患者、例えば癌を抱える患者への、癌または再発した癌を予防し、治療し、遅延させ、重症度を引き下げ、または1つもしくは複数の病徴を改善するための、あるいはそのような処置がない場合に予想されるよりも患者の生存期間を長引かせるための投与を使用する。また、「処置」の方法は、本明細書中で提供されるLRP10インヒビター(例えば抗体)の、患者への、化学療法もしくは照射の後に造血回復を増強するための、かつ/またはそのような処置がない場合に予想されるよりも患者において癌免疫治療を向上させるための投与を使用する。
 
【0054】
  本明細書中で用いられる用語「有効量」は、化学療法もしくは照射の後に対象において造血回復を促進するのに、かつ/または、患者に投与された場合に、癌の処置(例えば免疫治療)、予後、もしくは診断を達成するのに十分である剤、例えばLRP10インヒビター、例えば抗LRP10抗体の量を指す。治療的に有効な量は、当業者によって容易に判定され得る、処置されることとなる患者および疾患症状、患者の体重および年齢、疾患症状の重症度、投与の様式等に応じて変わることとなる。投与用の投薬量は、例えば、本明細書中で提供される抗体またはその抗原結合部分の約1ng〜約10,000mg、約5ng〜約9,500mg、約10ng〜約9,000mg、約20ng〜約8,500mg、約30ng〜約7,500mg、約40ng〜約7,000mg、約50ng〜約6,500mg、約100ng〜約6,000mg、約200ng〜約5,500mg、約300ng〜約5,000mg、約400ng〜約4,500mg、約500ng〜約4,000mg、約1μg〜約3,500mg、約5μg〜約3,000mg、約10μg〜約2,600mg、約20μg〜約2,575mg、約30μg〜約2,550mg、約40μg〜約2,500mg、約50μg〜約2,475mg、約100μg〜約2,450mg、約200μg〜約2,425mg、約300μg〜約2,000、約400μg〜約1,175mg、約500μg〜約1,150mg、約0.5mg〜約1,125mg、約1mg〜約1,100mg、約1.25mg〜約1,075mg、約1.5mg〜約1,050mg、約2.0mg〜約1,025mg、約2.5mg〜約1,000mg、約3.0mg〜約975mg、約3.5mg〜約950mg、約4.0mg〜約925mg、約4.5mg〜約900mg、約5mg〜約875mg、約10mg〜約850mg、約20mg〜約825mg、約30mg〜約800mg、約40mg〜約775mg、約50mg〜約750mg、約100mg〜約725mg、約200mg〜約700mg、約300mg〜約675mg、約400mg〜約650mg、約500mg、または約525mg〜約625mgに及び得る。投薬は、例えば、毎週、2週毎、3週毎、4週毎、5週毎、または6週毎であってもよい。投薬レジメンは、最適な治療応答を実現するように調整されてよい。また、有効量は、剤のあらゆる有毒作用または有害作用(副作用)が最小にされ、かつ/または有益な作用を上回るものである。投与は静脈内に、正確に、あるいはおおよそ、毎週6mg/kgもしくは12mg/kg、または隔週で12mg/kgもしくは24mg/kgであってもよい。更なる投薬レジメンが、以下に記載される。
 
【0055】
  本明細書中で用いられる組換え核酸技術、細菌学、免疫学、抗体工学、ならびに分子生物学および細胞生物学の分野で用いられる他の用語は、通常、該当する技術の当業者によって理解されるであろう。例えば、組換えDNAを調製し、オリゴヌクレオチド合成を実行し、かつ組織培養およびトランスフォーメーション(例えば、エレクトロポレーション、トランスフェクション、またはリポフェクション)を実行する従来の技術が用いられてもよい。酵素反応および精製技術は、メーカーの仕様書に従って、または当該技術において一般的に達成されるように、もしくは本明細書中に記載されるように、実行されてもよい。前述の技術および手順は、通常、当該技術において周知の、そして本明細書の全体を通して引用され、かつ考察される種々の一般的な、そしてより具体的な参考文献に記載される従来の方法に従って、実行されてもよい。例えば、Sambrook  et  al.,2001,Molecular  Cloning:A  Laboratory  Manual,3rd  ed.,Cold  Spring  Harbor  Laboratory  Press,Cold  Spring  Harbor,N.Y.(あらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれる)を参照。具体的な定義が示されない限り、本明細書中に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医薬および薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらのラボの手順および技術は、当該技術において周知であり、かつ一般的に使用されるものである。標準的な技術が、化学合成、化学分析、医薬の調製、製剤化、および送達、ならびに患者の処置に用いられてもよい。
 
【0056】
  本明細書中で用いられる用語「含んでいる」または「含む」は、所定の実施形態において存在するが、指定されていない要素の包含に対してオープンである組成物、方法、およびそれらの各構成要素に関して用いられる。
 
【0057】
  本明細書中で用いられる用語「から本質的になる」は、所定の実施形態に必要とされる要素を指す。当該用語は、本開示の実施形態の基本的かつ新規な、または機能的な特性に物質的に影響を与えない付加的な要素の存在を容認する。
 
【0058】
  用語「からなる」は、本明細書中に記載される組成物、方法、およびそれらの各構成要素に言及し、これらは、実施形態の説明において列挙されていないいかなる要素も除く。
 
【0059】
  本明細書および添付の特許請求の範囲に用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の参照を含む。ゆえに、例えば、「方法」への言及は、本明細書中に記載されるタイプの1つまたは複数の方法および/もしくは工程、ならびに/または本開示その他を読めば直ぐに当業者に明らかとなろうものを含む。
 
【0060】
  種々の態様および実施形態が、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に説明される。
 
【0061】
LRP10
  低密度リポタンパク質受容体(LDLR)は、体内でのリポタンパク質代謝を媒介する細胞表面受容体である。ヒトにおいて、LDLR遺伝子は、第19染色体上にバンド19p13.2にて存在し、18個のエキソンに分けられる。LDLR遺伝子の遺伝的欠乏は、家族性高コレステロール血症(ヒトにおいて最も一般的な遺伝的疾患の1つ)を生じさせる(Goldstein,J.L.et  al.The  Metabolic  Basis  of  Inherited  Disease,sixth  ed.,McGraw−Hill,New  York,1989,pp.1215−1250)。LDLR遺伝子は、5つの官能ドメイン、複数のシステインリッチリピートで構成されるリガンド結合ドメイン、β−プロペラ構造を形成する配列Tyr−Trp−Thr−Asp(YWTD)を有する上皮成長因子(EGF)前駆体相同性ドメイン、O結合型糖ドメイン、膜貫通ドメイン、およびコーティングされたpit標的化シグナル(coated  pit  targeting  signal)を有する細胞質ドメインからなる単一の膜貫通タンパク質をコードする(H.Tolleshaug,J.L.et  al.,Cell,30(1982),pp.715−724)。LDLRに加えて、超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)、アポリポタンパク質E受容体2(ApoER2、LRP8としても知られている)、LDLR関連タンパク質−1(LRP1、CD91、またはα2マクログロブリン受容体、α2mRとしても知られている)、LRP2(メガリンまたは糖タンパク質330、GP330としても知られている)、LRP3(ST7およびLRP9にかなり似ている)、LRP4(コリンとしても知られている)、LRP5(LRP7としても知られている)、LRP6(ADCAD2またはSTHAG7としても知られている)、LRP10(LRP9、LRP−10、MST087、またはMSTP087としても知られている)、およびLR11(sorLAとしても知られている)の受容体は、哺乳動物において、LDLR遺伝子ファミリーの一部であると考えられる(Jeong,Y.H.Biochem  Biophys  Res  Commun.2010  Jan  1;391(1):1110−5)。ほとんどのLDLR遺伝子ファミリーは、LDLRに構造的に類似するので、このファミリーのほとんどのメンバーが、リポタンパク質代謝において主要な役割を果たすと考えられてきた。LDLR遺伝子ファミリーについての他の役割は、(1)VLDLRおよびApoER2が、細胞外リーリンシグナルを移動ニューロン(migrating  neuron)に送信し、これは、胚脳発達中の脳のニューロンレイヤリングを支配する(Trommsdorff,M.et  al.,Cell,97(1999),pp.689−701)、(2)LRP1は、ウイルスおよび毒素の細胞エントリを調節し、そして、血小板由来の成長因子受容体−βシグナリングを血管壁内で調節することによって、アテローム性動脈硬化症から保護する(Herz,J.et  al.,Curr.Opin.Lipidol.,15(2004),pp.175−181)、(3)LRP2は、いくつかの細胞外シグナリング分子、例えば、ビタミンD、ビタミンA、および性ステロイドの可用性を媒介するエンドサイトーシス受容体として作用する(Hammes,A.et  al.,Cell,122(2005),pp.751−762)、(4)LRP3は、β−VLDLの細胞吸収を調節する、(5)LRP4は、タイプII膜貫通セリンプロテアーゼとして、そして血圧を調節する前心房性ナトリウム利尿ペプチド変換酵素として役立つ(Yan,W.et  al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97(2000),pp.8525−8529)、(6)LRP5およびLRP6は、WntおよびFrizzledタンパク質に結合して、細胞増殖、細胞極性、および細胞結末の決定に関係するWntシグナリング経路を活性化する(Tami,K.et  al.,Nature,407(2000),pp.530−535)、そして(7)LR11は、アミロイドβペプチドを生成するアミロイド前駆体タンパク質のエンドサイトーシスを調節することによって、アルツハイマー病の進行に関与し得る(Herz,J.et  al.,Curr.Opin.Lipidol.,15(2004),pp.175−181)ことである。
 
【0062】
  LRP10は、単一の血漿膜貫通受容体であり、LDLR遺伝子ファミリーの5つの官能ドメイン特性からなる。LRP10の構造的組織化は、LRP10が、LDLR遺伝子ファミリーと同様に、リガンドに結合し得ること、そしてLRP10が、エンドサイトーシス受容体またはシグナルトランスデューサーとしておそらく作用することを予測する(Jeong,Y.H.Biochem  Biophys  Res  Commun.2010  Jan  1;391(1):1110−5)。本開示に先立って、LRP10の機能は解明されていない。
 
【0063】
  ヒトLrp10の完全な遺伝子配列は、9,968bpの長さである(GenBank  ID  No.NC_000014.9)。成熟I型膜タンパク質は、696個のアミノ酸を含有し、算出分子量は74.8kdである(Sugiyama,T.et  al.,Biochemistry  39:15817−15825,2000)。低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質10アイソフォーム2前駆体のヒトcDNA配列は、4,785bpの長さであり(GenBank  ID  No.NM_001329226)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質10アイソフォーム1前駆体のヒトcDNA配列は、6,930bpの長さである(GenBank  ID  No.NM_014045)。マウスLrp10遺伝子の完全な遺伝子配列は、7,334bpの長さである(GenBank  ID  No.NC_000080.6)。
 
【0064】
  また、LRP10を阻害する、そして故に化学療法もしくは照射の後に対象において造血回復を増強する、かつ/または対象において癌免疫治療を向上させる組成物が提供される。組成物は、本明細書中に開示される1つまたは複数の抗LRP10抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでよい。一部の実施形態において、本明細書中で開示される抗LRP10抗体は、LRP10リガンドを、(例えば循環系内で)LRP10との結合から阻害することができる。一部の実施形態において、小分子化合物等の他のLRP10インヒビターもまた、LRP10とそのリガンドとの結合が挙げられる、LRP10の1つまたは複数の活性を阻害するのに用いることができる。特定の実施形態において、LRP10の可溶性バージョンが操作されてよく、これは、内因性の膜タンパク質LRP10と競合して、LRP10リガンドに結合することによって、間接的に、内因性LRP10とそのリガンドとの結合を阻害するように作用し得る。
 
【0065】
LRP10インヒビター
  LRP10の阻害は、例えば化学療法または照射の後に、対象において造血回復を増強することができ、かつ/または対象において癌免疫治療を実現することができる。したがって、LRP10インヒビターを、癌治療薬における効果的な剤として用いることができる。
 
【0066】
  種々のLRP10インヒビターが、本開示内に含まれる。例として、例えば、走化性遊走アッセイまたはFrizzledおよび/もしくはp21発現アッセイにおいて、LRP10に結合してその活性を阻害し、または低下させることができる化合物、例えば小分子インヒビターおよび生物剤(例えば抗体)が挙げられる。別の例示的なLRP10インヒビターが、1つまたは複数のLRP10リガンドに結合する可溶性のデコイ受容体である。また、Lrp10遺伝子発現レベルを調節する剤も挙げられ、例えば、Lrp10遺伝子またはそれに対する調節配列を特異的に標的化するように設計されている干渉RNA(shRNA、siRNA)および遺伝子編集/サイレンシングツール(CRISPR/Cas9、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ)がある。
 
【0067】
  一部の実施形態において、LRP10インヒビターを同定する方法が提供され、これは、細胞を試験剤と接触させることを含んでよく、抗体またはそのフラグメントと接触していない対照細胞と比較した、走化性刺激に向かう移動の増大が、試験剤がLRP10インヒビターであることを示し、好ましくは、走化性刺激は、C−X−Cモチーフケモカイン12(CXCL12)、C−X−Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、スフィンゴシン−1−ホスファート(S1P)、C−Cモチーフリガンド2(CCL2)、および/またはC−Cモチーフリガンド21(CCL21)から選択される。
 
【0068】
  LRP10インヒビターを同定する別の方法は、細胞を試験剤と接触させることを含んでよく、抗体またはそのフラグメントと接触していない対照細胞と比較したFrizzledおよび/またはP21の発現の増大が、試験剤がLRP10インヒビターであることを示す。
 
【0069】
  LRP10インヒビターは、癌細胞の増殖の少なくとも部分的な阻害(例えば、対照に対して少なくとも10%)によって、または患者におけるインビボでの腫瘍増殖(例えば、容積および/または転移)の少なくとも部分的な阻害によって、特徴付けられ得る。理論によって拘束されることを望むものではないが、癌において、主要な問題の1つは、CD8  T細胞およびその子孫、細胞毒性Tリンパ球が、腫瘍塊に浸潤して腫瘍細胞を死滅させるのに失敗することであると考えられる。当該失敗は、LRP10を介したシグナリングに依存し得る。ゆえに、例えばLRP10に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを用いた、LRP10の機能的阻害により、そのような浸潤が起こり得る。
 
【0070】
  特定の実施形態において、LRP10インヒビターは、抗LRP10抗体、例えばモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態において、抗LRP10抗体は、マウス抗LRP10抗体に由来する修飾された、例えば、キメラ抗体またはヒト化抗体であってよい。修飾抗体を製造する方法が、当該技術において知られている。一部の実施形態において、抗LRP10抗体は、ヒトLRP10タンパク質上に存在するエピトープ、例えば、細胞外エクトドメインまたはその一部に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。
 
【0071】
  一部の実施形態において、抗LRP10抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のVL配列(配列番号1、5、7、11、15、19、23)およびVH配列(配列番号2、8、12、16、20、24、27、29)の1つまたは複数を含んでよい。なお、完全な抗体配列について、各VLは、Ck(配列番号31)等の軽鎖定常領域に連結されて、完全な軽鎖を形成することができ、そして各VHは、ヒトIgG1  CH123(配列番号32)等の重鎖定常領域に連結されて、完全な重鎖を形成することができる。
 
【0072】
VL(配列番号1):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYNASDLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSSRTPTTFGQGTKVEIK
VL(配列番号5):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASPLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQVARTPNTFGQGTKVEIK
VL(配列番号7):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYRASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQPTSLPLTFGQGTKVEIK
VL(配列番号11):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASALQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQADSYPTTFGQGTKVEIK
VL(配列番号15):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYRASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQIKTRPTTFGQGTKVEIK
VL(配列番号19):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASLLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTSAGPGTFGQGTKVEIK
VL(配列番号23):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNDYYPTTFGQGTKVEIK
VH(配列番号2):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSQAMSWVRQAPGKGLEWVSSIPPGGPNTKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSYPSFDYWGQGTLVTVSS
VH(配列番号8):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSQIGTMGRPTTYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSGKKFDYWGQGTLVTVSS
VH(配列番号12):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRLAPGKGLEWVSSISTTGNSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDATSFDYWGQGTLVTVSS
VH(配列番号16):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSVIQRQGTGTEYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKNSRTFDYWGQGTLVTVSS
VH(配列番号20):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIPSRGQATKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSRHTFDYWGQGTLVTVSS
VH(配列番号24):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIATTGNTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKNTATFDYWGQGTLVTVSS
VH(配列番号27):
MAEVQLLESGGGLVQLGGSLRLSCAASGFTFSSQAMSWVRQAPGKGLEWVSSIPPGGPNTKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSYPSFDYWGQGTLVTVSS
VH(配列番号29):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIYTSGAATTYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSYPSFDYWGQGTLVTVSS
Ckアミノ酸配列(配列番号31):
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
IgG1  CH123アミノ酸配列(配列番号32):
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
 
【0073】
  一部の実施形態において、抗LRP10抗体またはその抗原結合フラグメントは、
VL  CDR1(配列番号33):RASQSISSYLN
VL  CDR2(配列番号34):NASDLQS
VL  CDR2(配列番号35):AASPLQS
VL  CDR2(配列番号36):RASRLQS
VL  CDR2(配列番号37):AASALQS
VL  CDR2(配列番号38):DASLLQS
VL  CDR2(配列番号39):AASTLQS
VL  CDR3(配列番号40):QQSSRTPTT
VL  CDR3(配列番号41):QQVARTPNT
VL  CDR3(配列番号42):QQPTSLPLT
VL  CDR3(配列番号43):QQADSYPTT
VL  CDR3(配列番号44):QQIKTRPTT
VL  CDR3(配列番号45):QQTSAGPGT
VL  CDR3(配列番号46):QQNDYYPTT
VH  CDR1(配列番号47):SQAMS
VH  CDR1(配列番号48):SYAMS
VH  CDR2(配列番号49):QIGTMGRPTTYADSVKG
VH  CDR2(配列番号50):SISTTGNSTYYADSVKG
VH  CDR2(配列番号51):VIQRQGTGTEYADSVKG
VH  CDR2(配列番号52):SIPSRGQATKYADSVKG
VH  CDR2(配列番号53):SIATTGNTTYYADSVKG
VH  CDR2(配列番号54):SIPPGGPNTKYADSVKG
VH  CDR2(配列番号55):SIYTSGAATTYADSVKG
VH  CDR3(配列番号56):SYPSFDY
VH  CDR3(配列番号57):SGKKFDY
VH  CDR3(配列番号58):DATSFDY
VH  CDR3(配列番号59):NSRTFDY
VH  CDR3(配列番号60):SRHTFDY
VH  CDR3(配列番号61):NTATFDY
のCDRの1つまたは複数を含んでよい。
 
【0074】
  CDR配列のアラインメントを、表1〜6に示す。
 
【0081】
  一部の実施形態において、抗LRP10抗体またはその抗原結合フラグメントは、
VL  CDR1(配列番号33):RASQSISSYLN
VL  CDR2(配列番号62):X1ASX2LQS(X1=N、A、R、D;X2=D、P、R、A、L、T)
VL  CDR3(配列番号63):QQX3X4X5X6PX7T(X3=S、V、P、A、I、T、N;X4=S、A、T、D、K;X5=R、S、T、A、Y;X6=T、L、Y、R、G;X7=T、N、L、G)
VH  CDR1(配列番号64):SX8AMS(X8=Q、Y)
VH  CDR2(配列番号65):X9IX10X11X12GX13X14TX15YADSVKG(X9=S、Q、V;X10=P、G、S、Q、A、Y;X11=P、T、R、S;X12=G、M、T、Q、R、S;X13=P、R、N、T、Q、A;X14=N、P、S、G、A、T;X15=K、T、Y、E)
VH  CDR3(配列番号66):X16X17X18X19FDY(X16=S、D、N;X17=Y、G、A、S、R、T;X18=P、K、T、R、H、A;X19=S、K、T)
のCDRの1つまたは複数を含んでよい。
 
【0082】
  また、競合結合アッセイにおいて、本明細書中で開示される抗LRP10抗体またはその抗原−結合フラグメントのいずれかと交差競合する抗体またはそのフラグメントが、本開示内に含まれる。一部の実施形態において、そのような交差競合抗体は、本明細書中で開示される抗LRP10抗体またはその抗原結合フラグメントと同じエピトープに結合することができる。
 
【0083】
  特定の実施形態において、抗LRP10抗体は、それぞれがLRP10上の同じ、または異なるエピトープに結合する2つ以上の抗LRP10抗体の混合物またはカクテルを含んでもよい。一実施形態において、混合物またはカクテルは、それぞれがLRP10上の同じ、または異なるエピトープに結合する3つの抗LRP10抗体を含む。
 
【0084】
  別の実施形態において、LRP10インヒビターとして、LRP10の発現または活性を阻害する核酸分子、例えばRNA分子が挙げられ得る。Lrp10の発現および/または活性を特異的に阻害する、Lrp10に特異的な干渉RNA、例えばshRNAまたはsiRNAを、当該技術において知られている方法に従って設計することができる。
 
【0085】
LRP10コンペティター
  一部の実施形態において、LRP10コンペティターは、1つまたは複数のLRP10リガンドに結合することによって、内因性LRP10へのリガンドの結合と競合し、かつこれを阻害し、または低下させることができる可溶性のデコイ受容体であってよい。例えば、デコイ受容体は、LRP10のエクトドメインの全てまたは一部に相当し、かつ膜貫通領域を欠いたアミノ酸配列を含有してもよい。アミノ酸配列は、野生型配列と比較して、1つまたは複数の置換、欠失、および/または付加を含有する一方、その、1つまたは複数のLRP10リガンドとの結合活性を保持または増強し得る。アミノ酸配列は、抗体(例えばIgG1)の定常末端に融合またはグラフトされることで、循環系内で可溶性となり得る。一部の実施形態において、デコイ受容体は、ヒトLRP10−抗体Fcフラグメント(LRP10−Fc)キメラであってよい。
 
【0086】
  一部の実施形態において、Fcドメインは、IgGドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4  Fcドメインである。一部の実施形態において、Fcドメインは、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。一部の実施形態において、Fcドメインは、二量体化活性を有する。
 
【0087】
  一部の実施形態において、Fcドメインは、配列番号67のIgG1  Fcドメイン、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRWSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号67)
 
【0088】
  実施形態において、Fcドメインは、エフェクタ減弱化Fcドメインである。実施形態において、エフェクタ減弱化Fcドメインは、例えば野生型IgG1  Fcドメインと比較して、例えば配列番号67の野生型IgG1  Fcドメインと比較して、エフェクタ活性が低下している。一部の実施形態において、エフェクタ活性は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を含む。実施形態において、エフェクタ活性は、例えば配列番号67の野生型IgG1  Fcドメインと比較して、ADCCアッセイにおいて10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%低下している。一部の実施形態において、エフェクタ活性は、相補体依存性細胞毒性(CDC)を含む。実施形態において、エフェクタ活性は、例えば配列番号67の野生型IgG1  Fcドメインと比較して、Armour  et  al.,「Recombinant  human  IgG  molecules  lacking  Fc  gamma  receptor  I  binding  and  monocyte  triggering  activities.」Eur  J  Immunol(1999)29:2613−24に記載されるCDCアッセイ等のCDCアッセイにおいて、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%低下している。
 
【0089】
  一部の実施形態において、Fcドメインは、配列番号68のIgG2定常領域もしくはそのフラグメント、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSWTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRWSVLTWHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号68)
 
【0090】
  一部の実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG2  Fcドメイン、例えば配列番号69のヒトIgG2ドメイン、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
ERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRWSVLTWHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号69)
 
【0091】
  一部の実施形態において、Fcドメインは、配列番号80のIgG2Da  Fcドメイン、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。実施形態において、Fcドメインは、Rabatナンバリングシステムを用いたA330S突然変異およびP331S突然変異の一方または双方を含む。実施形態において、Fcドメインは、Armour  et  al.「Recombinant  human  IgG  molecules  lacking  Fc  gamma  receptor  I  binding  and  monocyte  triggering  activities.」Eur  J  Immunol(1999)29:2613−24に記載されるものである。
ERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRWSVLTWHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPssIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号70)
 
【0092】
  種々の実施形態において、デコイ受容体は、循環系内で安定するように調製されてよい。一部の実施形態において、デコイ受容体は、例えば、内因性LRP10とのLRP10リガンドの結合と競合することでこれを減少させ、または妨げることによって、1つまたは複数のLRP10リガンドを中和かつ/または阻害する。特定の実施形態において、デコイ受容体は、LRP10エクトドメインのみよりも効果的に作用し得る。
 
【0093】
  可溶性の受容体は、組換えDNA技術によって融合タンパク質を生成する等の、当該技術において知られている方法によって調製することができる。LRP10エクトドメインまたはその官能部分(例えばリガンド結合フラグメント)が、抗体(例えばIgG1)の定常末端に融合されてもよい。例えば、ヒトLRP10エクトドメインまたはその官能部分をコードするDNA配列が、場合によってはリンカーを介して、IgG1のFc末端についてのヒト遺伝子をコードするDNA配列に連結するように操作されてもよい。次に、操作されたDNAは、LRP10エクトドメインをIgG1  Fcに連結するタンパク質を生成するように発現されてよい。
 
【0094】
抗LRP10抗体の調製
  抗LRP10抗体を、当該技術において通常知られている種々の方法を用いて製造することができる。例えば、ファージディスプレイ技術を用いて、ヒト抗体ライブラリーをスクリーニングして、治療用の完全ヒトモノクローナル抗体を生成することができる。高親和性バインダーを、中和研究用の候補と考えることができる。これ以外にも、マウスまたはウサギをヒトタンパク質で免疫化して、候補バインダーを同定かつ試験して、重鎖および軽鎖の結合部位を、ヒト抗体コーディング配列中にグラフティングすることによって、ヒト化抗体を最終的に生成することができる、従来のモノクローナルアプローチが用いられてもよい。
 
【0095】
  抗体は、典型的に、ポリペプチド鎖の2つの同じ対を含み、各対は、1つの全長「軽」鎖(典型的には分子量が約25kDaである)および1つの全長「重」鎖(典型的には分子量が約50〜70kDaである)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、典型的に、抗原認識を典型的に担う、約100〜110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、典型的に、エフェクタ機能を担う定常領域を定義する。重鎖および軽鎖の各可変領域は、典型的に、3つの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる)によって結合された、4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む、同じ一般的な構造を示す。各対の2本鎖由来のCDRは、典型的に、フレームワーク領域によってアラインされ、このアラインメントにより、特異的なエピトープへの結合が可能となり得る。N末端からC末端まで、軽鎖可変領域および重鎖可変領域は双方とも、典型的に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、典型的に、Rabat  Sequences  of  Proteins  of  Immunological  Interest(1987  and  1991,National  Institutes  of  Health,Bethesda,Md.)、Chothia  &  Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917、またはChothia  et  al.,1989,Nature  342:878−883)の定義に従う。
 
【0096】
  抗体は、モノクローナル抗体の開発と共に、医薬剤として有用となり、かつ注目されるようになった。モノクローナル抗体は、培養において継代細胞株によって抗体分子を生成するあらゆる方法を用いて生成される。モノクローナル抗体を調製する適切な方法の例として、Kohler  et  al.(1975,Nature  256:495−497)のハイブリドーマ法およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,1984,J.Immunol.133:3001;およびBrodeur  et  al.,1987,Monoclonal  Antibody  Production  Techniques  and  Applications,Marcel  Dekker,Inc.,New  York,pp.51−63)が挙げられる。
 
【0097】
  モノクローナル抗体は、治療薬としての使用用に修飾されてもよい。一例として、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の、対応する配列と同一または相同である一方、鎖の残りが、別の種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の、対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体がある。他の例として、所望の生物活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントがある。米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison  et  al.(1985),Proc.Natl.Acad.Sci.USA  81:6851−6855を参照。関連した開発として、抗体が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含む一方、抗体鎖の残りが、別の種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の、対応する配列と同一または相同である「CDRグラフト化」抗体がある。
 
【0098】
  別の開発は、「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術において周知である(米国特許第5,585,089号明細書、および米国特許第5,693,762号明細書を参照;また、ラマ抗体のヒト化について、Cecile  Vincke  et  al.J.Biol.Chem.2009;284:3273−3284も参照)。通常、ヒト化抗体は、非ヒト動物によって生成され、そして、典型的には抗体の非抗原認識部分に由来する、特定のアミノ酸残基は、対応するアイソタイプのヒト抗体内の前記残基に相同であるように修飾される。例えば、ヒト化は、当該技術において記載される方法(Jones  et  al.,1986,Nature  321:522−525;Riechmann  et  al.,1988,Nature  332:323−327;Verhoeyen  et  al.,1988,Science  239:1534−1536)を用いて、齧歯類可変領域の少なくとも一部を、ヒト抗体の対応する領域と置換することによって、実行することができる。
 
【0099】
  より最近では、抗原を、ヒトに曝露せずに、ヒト抗体(「完全ヒト抗体」)が開発されている。ヒト抗体のレパートリを、内因性マウス免疫グロブリン産生の非存在下で生成することでできるトランスジェニック動物(例えばマウス)を用いて、そのような抗体が、場合によってはキャリアにコンジュゲートした、抗原(典型的には少なくとも6つの連続したアミノ酸を有する)による免疫化によって生成される。例えば、Jakobovits  et  al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA  90:2551−2555;Jakobovits  et  al.,1993,Nature  362:255−258;およびBruggermann  et  al.,1993,Year  in  Immunol.7:33を参照。これらの方法の一例において、マウス免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無能化して、そのゲノム中にヒト重鎖タンパク質および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を挿入することによって、トランスジェニック動物が生成される。次に、部分的に修飾された動物(修飾の完全な相補体には満たない)が交雑されて、所望の免疫系修飾の全てを有する動物が得られる。免疫原が投与されると、当該トランスジェニック動物は、可変領域を含むヒト(マウスではない)アミノ酸配列を有する、抗原に免疫特異的である抗体を生成する。国際公開第96/33735号パンフレットおよび国際公開第94/02602号パンフレット(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)を参照。更なる方法が、米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第90/04036号パンフレット、ならびに欧州特許第546073B1号明細書および欧州特許出願公開第546073A1号明細書(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。また、ヒト抗体は、本明細書中に記載されるように、宿主細胞内での組換えDNAの発現によって生成されてもよいし、ハイブリドーマ細胞内での発現によって生成されてもよい。
 
【0100】
  一部の実施形態において、ファージディスプレイ技術が、治療抗体の有無に関してスクリーニングするのに用いられてもよい。ファージディスプレイにおいて、抗体レパートリが、糸状バクテリオファージの表面上に提示され得、そして構築されたライブラリーは、免疫原に結合するファージの有無に関してスクリーニングされてもよい。抗体ファージは、バクテリオファージの遺伝子工学、ならびに抗原ガイド選択およびファージ増殖の繰り返されるラウンドに基づく。この技術により、LRP10モノクローナル抗体のインビトロ選択が可能となる。ファージディスプレイプロセスは、抗体−ライブラリー調製で始まって、ファージディスプレイベクター中への可変重鎖(VH)PCR産物および可変軽鎖(VL)PCR産物のライゲーションが後に続いて、モノクローナル抗体のクローンの分析に達する。抗体レパートリを表すVHおよびVL  PCR産物は、ファージディスプレイベクター(例えば、ファージミドpComb3X)中にライゲートされ、これは、VHおよびVLを、元々M13バクテリオファージに由来した、大腸菌(Escherichia  coli)の糸状バクテリオファージのpillマイナーカプシドタンパク質に融合したscFvとして発現するように操作されている。しかしながら、ファージディスプレイベクターpComb3Xが、大腸菌(E.coli)内で完全なバクテリオファージをコードするのに必須の他の遺伝子全てを有するわけではない。それらの遺伝子について、ヘルパーファージが、ファージディスプレイベクターライブラリーで形質転換される大腸菌(E.coli)に加えられる。ファージのライブラリーが生じ、各々が、その表面上にLRP10モノクローナル抗体を発現し、そして各ヌクレオチド配列を有するベクターを保有する。また、ファージディスプレイは、LRP10モノクローナル抗体それ自体(ファージカプシドタンパク質に付着していない)を、大腸菌(E.coli)の特定の株において生成するのに用いることができる。ファージディスプレイベクター内で、生成されたmAbの特性評価および精製を可能にするように、付加的なcDNAが、VL配列およびVH配列の後に操作される。具体的には、組換え抗体は、溶液からの簡単な精製を可能にするヘマグルチニン(HA)エピトープタグおよびポリヒスチジンを有してもよい。
 
【0101】
  多様な抗体ファージライブラリーが、ヘルパーファージが感染した約10
8個の独立した大腸菌(E.coli)形質転換体から生成される。バイオパニングを用いて、ライブラリーが、先にリストした免疫原配列またはそのフラグメントに結合するファージの有無について、モノクローナル抗体の発現された表面を介してスクリーニングされ得る。環状パニングが、潜在的に非常に稀な抗原結合クローンを引き出すことを可能にし、(ELISAプレート上に、または、溶液中で細胞表面上に固定された)抗原へのファージ結合、洗浄、溶出、および大腸菌(E.coli)内でのファージバインダーの再増幅の複数のラウンドからなる。各ラウンド中に、非バインダーを洗浄して、結合ファージクローンを選択的に溶出することによって、特異的なバインダーがプールから選択される。3または4ラウンド後の、それらの表面LRP10モノクローナル抗体を介してのファージクローンの高度に特異的な結合が、固定された免疫原の特異的選択にとって特徴的である。
 
【0102】
  別の方法は、親和性クロマトグラフィによる精製に適したC末端Hisタグを、先でリストした免疫原配列に加えるものである。精製したタンパク質を、適切なアジュバントと一緒にマウスに接種してよい。ハイブリドーマ内で生成されたモノクローナル抗体が、免疫原への結合について試験されてよく、そして、本明細書中のアッセイにおいて記載されるように、陽性バインダーがスクリーニングされてよい。
 
【0103】
  また、完全ヒト抗体を、ファージディスプレイライブラリーから生成することができる(Hoogenboom  et  al.,1991,J.Mol.Biol.227:381;およびMarks  et  al.,1991,J.Mol.Biol.222:581中に開示されている)。これらのプロセスは、糸状バクテリオファージの表面上での抗体レパートリの提示、および選択抗原への結合によるファージの以降の選択を介した免疫選択を模倣する。そのような一技術が、国際公開第99/10494号パンフレット(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されており、これは、そのようなアプローチを用いた、MPL受容体およびmsk受容体についての高親和性かつ機能性のアゴニスト抗体の単離を記載している。
 
【0104】
  一部の実施形態において、713個のアミノ酸のヒトLRP10タンパク質配列のアミノ酸18〜713からなるヒトLRP10エクトドメインを、免疫原として用いることができる。また、LRP10エクトドメインのフラグメントまたは一部を、免疫原として用いることもできる。1つまたは複数の免疫原を用いて、モノクローナル抗体を高めることができる。潜在的治療抗LRP10抗体を生成することができる。
 
【0105】
  一例において、マウスLrp10遺伝子中にノックインされたヒトLRP10エクトドメイン、およびヒトT細胞(ヒトドナー由来のJurkatまたは初代T細胞)を有するマウスモデルを用いて、ノックアウト突然変異を表現型模写するモノクローナル抗体を試験して、潜在的抗LRP10抗体候補として同定することができた。ノックアウト突然変異を表現型模写するモノクローナル抗体として、血中のT細胞(例えば、CD4+およびCD8+)の数が多く、B:T細胞比が低く、かつ/またはNK細胞数が低いものが挙げられる。そのような試験として、例えばウェスタンブロットで検出されるエンドポイント、例えばFrizzledおよび/またはP21タンパク質発現の増強、そして二次的に、照射または化学療法後のT細胞移動の増強、および造血再構成の増強のスクリーニングが挙げられる。スクリーニングの後に、完全ヒトモノクローナル抗体が、臨床前試験用に開発されてから、安全性および効力について臨床ヒト治験において試験されてよい。そのような抗体は、化学療法もしくは照射の後に対象において造血回復を増強し、かつ/または、癌免疫治療を(例えば、腫瘍浸潤リンパ球の数を増大させることによって)向上させることができる臨床候補であり得る。
 
【0106】
  上述の抗体をコードするヌクレオチド配列を決定することができる。また、その後、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体を、組換え方法によって生成してもよい。抗体をコードする核酸を、当該技術において通常知られている材料および手順を用いて、宿主細胞中に導入して、発現させることができる。
 
【0107】
  本開示は、LRP10に対する1つまたは複数のモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、抗体は、LRP10エクトドメインに結合する。好ましい実施形態において、本開示は、重鎖免疫グロブリン分子および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、ならびにこれらを含むアミノ酸配列、特にそれらの可変領域に相当する配列を提供する。好ましい実施形態において、具体的にはCDR1からCDR3の、CDRに相当する配列が提供される。更なる実施形態において、本開示は、ハイブリドーマ細胞株であって、ヒトLRP10に対する免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体、好ましくは精製されたヒトモノクローナル抗体を、そこから生成されるように発現するハイブリドーマ細胞株を提供する。
 
【0108】
  本開示の抗LRP10抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域のCDRは、同じ種、または別の種由来のフレームワーク領域(FR)にグラフトされてもよい。特定の実施形態において、抗LRP10抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスヒトFRにグラフトされてもよい。コンセンサスヒトFRを生じさせるために、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列由来のFRがアラインされて、コンセンサスアミノ酸配列が同定される。抗LRP10抗体の重鎖または軽鎖のFRは、異なる重鎖または軽鎖由来のFRで置換されてもよい。抗LRP10抗体の重鎖および軽鎖のFR内の稀なアミノ酸は、典型的に置換されない一方、残りのFRアミノ酸が置換されてよい。稀なアミノ酸は、FR内に通常見出されない位置にある特定のアミノ酸である。本開示の抗LRP10抗体由来のグラフト化可変領域は、抗LRP10抗体の定常領域と異なる定常領域に用いられてもよい。これ以外にも、グラフト化可変領域は、単鎖Fv抗体の一部である。CDRグラフト化は、例えば、米国特許第6,180,370号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,585,089号明細書、および米国特許第5,530,101号明細書(あらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。
 
【0109】
  一部の実施形態において、本開示の抗体は、ハイブリドーマ株によって生成されてよい。当該実施形態において、本開示の抗体は、おおよそ4pM〜1μMの解離定数(Kd)でLRP10に結合する。本開示の特定の実施形態において、抗体は、約100nM未満、約50nM未満、または約10nM未満のKdでLRP10に結合する。
 
【0110】
  好ましい実施形態において、本開示の抗体は、IgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプのものであり、IgG1アイソタイプが最も好ましい。本開示の好ましい実施形態において、抗体は、ヒトカッパ軽鎖、およびヒトIgG1、IgG2、またはIgG4重鎖を含む。特定の実施形態において、抗体の可変領域は、IgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプについての定常領域以外の定常領域にライゲートされる。特定の実施形態において、本開示の抗体は、哺乳動物の細胞内での発現用にクローニングされた。
 
【0111】
  代わりの実施形態において、本開示の抗体は、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株内で発現されてよい。当該実施形態において、特定の抗体をコードする配列は、適切な哺乳動物の宿主細胞のトランスフォーメーション用に用いられてよい。当該実施形態に従えば、トランスフォーメーションは、ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入する、知られているあらゆる方法を用いて達成され得、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス中(またはウイルスベクター中)にパッケージングすること、および宿主細胞をウイルス(またはベクター)で形質導入すること、または当該技術において知られているトランスフェクション手順によるものが挙げられる。そのような手順は、米国特許第4,399,216号明細書、米国特許第4,912,040号明細書、米国特許第4,740,461号明細書、および米国特許第4,959,455号明細書(これらの特許は全て、あらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなすものとする)によって例示されている。通常、用いたトランスフォーメーション手順は、形質転換されることとなる宿主によって決まり得る。哺乳動物細胞中に異種ポリヌクレオチドを導入する方法が、当該技術において周知であり、以下に限定されないが、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム析出、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内へのポリヌクレオチドのカプセル化、および核中へのDNAの直接的マイクロインジェクションが挙げられる。
 
【0112】
  本開示の方法の特定の実施形態に従えば、本開示のLRP10抗体の重鎖定常領域、重鎖可変領域、軽鎖定常領域、または軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、標準的なライゲーション技術を用いて、適切な発現ベクター中に挿入される。好ましい実施形態において、LRP10重鎖定常領域または軽鎖定常領域は、適切な可変領域のC末端に取り付けられて、発現ベクター中にライゲートされる。ベクターは典型的に、使用される特定の宿主細胞内で機能的であるように選択される(すなわち、ベクターは、遺伝子の増幅および/または遺伝子の発現が起こり得るように、宿主細胞機構と適合する)。発現ベクターのレビューについて、Goeddel(ed.),1990,Meth.Enzymol.Vol.185,Academic  Press.N.Y.を参照。
 
【0113】
  典型的には、あらゆる宿主細胞に用いられる発現ベクターは、プラスミド維持のための、そして外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有してよい。そのような配列として、典型的に、プロモーター、1つまたは複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよび受容体スプライス部位を含有する完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されることとなるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能なマーカー要素のヌクレオチド配列の1つまたは複数が挙げられる。これらの配列は、当該技術において周知である。
 
【0114】
  本開示の発現ベクターは、出発ベクター、例えば市販のベクターから構築されてもよい。そのようなベクターは、所望のフランキング配列の全てを含有してもよいし、全てを含有しなくてもよい。本明細書中に記載されるフランキング配列の1つまたは複数が、ベクター内にまだ存在しない場合、それらを個々に得て、ベクター中にライゲートしてもよい。各フランキング配列を得るのに用いられる方法が、当業者に周知である。
 
【0115】
  ベクターが構築され、そして抗LRP10抗体を含む軽鎖、もしくは重鎖、または軽鎖および重鎖をコードする核酸分子が、ベクターの適切な部位中に挿入された後に、完成したベクターは、増幅および/またはポリペプチド発現に適した宿主細胞中に挿入されてもよい。選択された宿主細胞中への抗LRP10抗体用の発現ベクターのトランスフォーメーションは、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共析出、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、または他の知られている技術が挙げられる周知の方法によって達成されてよい。選択される方法は、部分的に、用いられることとなる宿主細胞のタイプによることとなる。これらの方法および他の適切な方法は、当業者に周知であり、例えば、前掲のSambrook  et  al.内に示されている。
 
【0116】
  宿主細胞は、適切な条件の下で培養される場合、抗LRP10抗体を合成し、これはその後、(宿主細胞が培地中に分泌するならば)培地から、または(分泌されないならば)生成する宿主細胞から直接的に収集されてよい。適切な宿主細胞の選択は、種々の要因、例えば、所望の発現レベル、活性に所望され、または必須であるポリペプチド修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)、および生物学的に活性な分子への折畳みの容易さによって決まることとなる。
 
【0117】
  発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株が、当該技術において周知であり、米国菌培養収集所(American  Type  Culture  Collection;ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株(以下に限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHEP  G2)、およびいくつかの他の細胞株が挙げられる)が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、どの細胞株が高い発現レベルを有して、構成的LRP10結合特性を有する抗体を生成するかを判定することによって、細胞株を選んでもよい。別の実施形態において、それ自体抗体を製造しないが、異種抗体を製造かつ分泌する能力を有するB細胞系列(例えば、マウス骨髄腫細胞株NS0およびSP2/0)から、細胞株を選択してもよい。
 
【0118】
医薬組成物およびその使用
  一態様において、癌免疫治療および/または造血回復用の医薬の製造のためのLRP10インヒビターまたはコンペティターの使用が提供される。別の態様において、患者において腫瘍増殖を抑制する方法が提供され、当該方法は、患者に有効量のLRP10インヒビターまたはコンペティターを投与することを含む。
 
【0119】
  別の態様において、本明細書中に開示される方法に用いることができる医薬組成物、すなわち、例えば化学療法もしくは照射の後に、対象において造血回復を増強し、かつ/または癌免疫治療を実現する医薬組成物が提供される。
 
【0120】
  一部の実施形態において、医薬組成物は、LRP10インヒビターまたはコンペティターおよび薬学的に許容されるキャリアを含む。LRP10インヒビターまたはコンペティターは、薬学的に許容されるキャリアと共に、医薬組成物に製剤化されてよい。加えて、医薬組成物は、例えば、化学療法もしくは照射の後に対象において造血回復を増強し、かつ/または癌免疫治療を実現する、患者の処置のための組成物の使用についての指示を含んでよい。
 
【0121】
  一実施形態において、LRP10インヒビターは、抗LRPK抗体またはその抗原結合フラグメントであってよい。
 
【0122】
  本明細書中で用いられる「薬学的に許容されるキャリア」として、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、バッファー、ならびに生理的に適合する他の賦形剤が挙げられる。好ましくは、キャリアは、非経口投与、経口投与、および局所投与に適している。投与経路に応じて、活性化合物、例えば小分子または生物剤は、化合物を、酸の作用、および化合物を不活化し得る他の自然条件から保護する材料でコーティングされてもよい。
 
【0123】
  薬学的に許容されるキャリアとして、滅菌水溶液または分散系、および滅菌注射可能な溶液または分散系の即座の調製用の滅菌粉末、ならびにタブレット、ピル、カプセル等の調製用の従来の賦形剤が挙げられる。医薬的に活性の物質の製剤化用のそのような媒体および剤の使用が、当該技術において知られている。従来のあらゆる媒体または剤が活性化合物と適合しないこと以外は、その、本明細書中で提供される医薬組成物での使用が意図される。また、補完活性化合物が、組成物中に組み込まれてもよい。
 
【0124】
  薬学的に許容されるキャリアとして、薬学的に許容される抗酸化剤が挙げられ得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例として、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫化水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウム等、(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、およびアルファ−トコフェロール等、ならびに(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、およびリン酸等が挙げられる。
 
【0125】
  本明細書中で提供される医薬組成物に使用されてもよい適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例として、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合液、ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。必要とされる場合、例えば、コーティング材料、例えばレシチンの使用によって、分散系の場合には必要とされる粒径の維持によって、そして界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが有用であり得る。組成物中に、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアレートの塩およびゼラチンを含むことによって、注射可能な組成物の長期間にわたる吸収がもたらされ得る。
 
【0126】
  また、これらの組成物は、機能的賦形剤、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤を含有してもよい。
 
【0127】
  治療組成物は、典型的に、滅菌されており、非系統発生的であり、かつ製造および保存の条件の下で安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または他の、高い薬物濃度に対して適切な規則性のある(ordered)構造体として製剤化されてよい。
 
【0128】
  活性化合物を、適切な溶媒中に必要とされる量で、必要に応じて、先で列挙される成分の1つまたは組合せと共に組み込んでから、滅菌、例えば微量濾過することによって、滅菌注射可能な溶液が調製されてよい。通常、活性化合物を、基本分散媒、および先で列挙されるもの由来の他の必要とされる成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、分散系が調製される。滅菌注射可能な溶液の調製用の滅菌粉末の場合、調製方法は、減圧乾燥およびフリーズ乾燥(凍結乾燥)を含み、これにより、活性成分、および溶液の、以前に滅菌濾過した溶液由来の所望のあらゆる追加成分の粉末が生じる。活性剤は、滅菌条件下で、付加的な薬学的に許容されるキャリアと、そして必要とされる場合があるあらゆる保存剤、バッファー、または推進剤と混合されてもよい。
 
【0129】
  微生物の存在の防止は、前掲の滅菌手順、そして種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の包含の双方によって、確実にされてよい。また、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムが組成物中に含まれることが所望されてもよい。また、注射可能な医薬形態の長期間にわたる吸収が、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの包含によってもたらされてもよい。
 
【0130】
  LRP10インヒビターを含む医薬組成物は、単独療法で投与されても併用療法で投与されてもよい。例えば、併用療法は、LRP10インヒビターおよび少なくとも1つまたは複数の付加的な治療剤、例えば、当該技術において知られている、以下でさらに詳細に考察される1つまたは複数の化学療法剤を含む、本明細書中で提供される組成物を含んでよい。また、医薬組成物は、放射療法および/または外科手術と併せて投与されてもよい。
 
【0131】
  投薬レジメンは、所望される最適な応答(例えば治療応答)を実現するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよいし、いくつかの分割用量が経時的に投与されてもよいし、用量が、治療状況の緊急性によって示されるように、比例的に増減されてもよい。
 
【0132】
  抗体の投与についての例示的な投薬量範囲として、10〜1000mg(抗体)/kg(患者の体重)、10〜800mg/kg、10〜600mg/kg、10〜400mg/kg、10〜200mg/kg、30〜1000mg/kg、30〜800mg/kg、30〜600mg/kg、30〜400mg/kg、30〜200mg/kg、50〜1000mg/kg、50〜800mg/kg、50〜600mg/kg、50〜400mg/kg、50〜200mg/kg、100〜1000mg/kg、100〜900mg/kg、100〜800mg/kg、100〜700mg/kg、100〜600mg/kg、100〜500mg/kg、100〜400mg/kg、100〜300mg/kg、および100〜200mg/kgが挙げられる。例示的な投薬スケジュールとして、3日毎に1回、5日毎に1回、7日毎に1回(すなわち、1週に1回)、10日毎に1回、14日毎に1回(すなわち、2週毎に1回)、21日毎に1回(すなわち、3週毎に1回)、28日毎に1回(すなわち、4週毎に1回)、そして1ヵ月に1回が挙げられる。
 
【0133】
  非経口組成物を、投与の容易さおよび投薬の均一性のために、ユニット剤型で製剤化することが有利であり得る。本明細書中で用いられるユニット剤型は、処置されることとなる患者用のユニタリ投薬として適した物理的に別個のユニットを指し;各ユニットは、所望の治療効果をもたらすように算出された活性剤の予め定められた量を、必要とされるあらゆる医薬キャリアを伴って含有する。ユニット剤型についての仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴、および達成されることとなる特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置(treatment  of  sensitivity)について活性な化合物を混ぜ合わせる、当該技術に固有の制限事項に直接依存して、決定される。
 
【0134】
  本明細書中で開示される医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、特定の患者に所望される治療応答を達成するのに有効である活性成分の量、組成、および投与モードが、患者に有毒であることなく得られるように変動してもよい。投与の文脈で本明細書中で用いられる「非経口」は、通常は注射による、経腸投与および局所投与以外の投与モードを意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊椎内、硬膜外、そして胸骨内の注射および点滴が挙げられる。
 
【0135】
  本明細書中で用いられるフレーズ「非経口投与」および「非経口的に投与された」は、通常は注射または点滴による、経腸投与(すなわち、消化管を経る)および局所投与以外の投与モードに言及し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊椎内、硬膜外、そして胸骨内の注射および点滴が挙げられる。静脈内の注射および点滴は、多くの場合(排他的にではない)、抗体投与に用いられる。
 
【0136】
  本明細書中で提供される剤が、医薬として、ヒトまたは動物に投与される場合、単独で、または、例えば、薬学的に許容されるキャリアと組み合わされて、0.001〜90%(例えば0.005〜70%、例えば0.01〜30%)の活性成分を含有する医薬組成物として、与えられてよい。
 
【0137】
  特定の実施形態において、化学療法もしくは照射の後に対象において造血回復を増強し、かつ/または癌免疫治療を向上させるための、本明細書中で提供される方法および使用は、LRP10インヒビター、およびLRP10インヒビターでない少なくとも1つの付加的な抗癌剤の投与を含んでもよい。
 
【0138】
  一実施形態において、少なくとも1つの付加的な抗癌剤は、少なくとも1つの化学療法薬を含む。そのような化学療法薬の非限定的な例として、白金ベースの化学療法薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、EndoTAG−1(商標)、(正に帯電する脂質ベースの複合体内にカプセル化されたパクリタキセルの製剤;MediGene)、アブラキサン(登録商標)(アルブミンに結合したパクリタキセルの製剤)、チロシンキナーゼインヒビター(例えば、イマチニブ/グリベック(登録商標)、スニチニブ/スーテント(登録商標)、ダサチニブ/スプリセル(登録商標))、およびそれらの組合せが挙げられる。
 
【0139】
  別の実施形態において、少なくとも1つの付加的な抗癌剤は、EGFRインヒビター、例えば抗EGFR抗体、またはEGFRシグナリングの小分子インヒビターを含む。例示的な抗EGFR抗体は、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))である。セツキシマブは、ImClone  Systems  Incorporatedから市販されている。抗EGFR抗体の他の例として、マツズマブ(EMD72000)、パニツムマブ(Vectibix(登録商標);Amgen);ニモツズマブ(TheraCIM(商標))、およびmAb  806が挙げられる。EGFRシグナリング経路の例示的な小分子インヒビターは、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))であり、これはAstraZenecaおよびTevaから市販されている。EGFRシグナリング経路の小分子インヒビターの他の例として、エルロチニブHCl(OSI−774;タルセバ(登録商標)、OSI  Pharma);ラパチニブ(Tykerb(登録商標)、GlaxoSmithKline);カネルチニブ(カネルチニブジヒドロクロリド、Pfizer);ペリチニブ(Pfizer);PKI−166(Novartis);PD158780;およびAg  1478(4−(3−クロロアニリノ)−6,7−ジメトキシキナゾリン)が挙げられる。
 
【0140】
  さらに別の実施形態において、少なくとも1つの付加的な抗癌剤は、VEGFインヒビターを含む。例示的なVEGFインヒビターは、抗VEGF抗体、例えばベバシズマブ(Avastatin(登録商標);Genentech))を含む。
 
【0141】
  さらに別の実施形態において、少なくとも1つの付加的な抗癌剤は、抗ErbB2抗体を含む。適切な抗ErbB2抗体として、トラスツズマブおよびペルツズマブが挙げられる。
 
【0142】
  一態様において、本開示に従う組合せの有効性の向上は、治療的相乗効果を達成することによって実証され得る。
 
【0143】
  用語「治療的相乗効果」は、所定の用量の2つの製品の組合せが、同じ用量の2つの製品の各々のみの最良よりも有効である場合に用いられる。一例において、治療的相乗効果は、パラメータ腫瘍容積についての繰返し測定による2元配置分散分析から得た推定値(例えば時間因子)を用いて、最良の単剤に対して組合せを比較することによって、評価することができる。
 
【0144】
  用語「相加的」は、所定の用量の2つ以上の製品の組合せが、2つ以上の製品の各々により得られる効力の合計に等しく有効である場合に言及する一方、用語「超相加的」は、組合せが、2つ以上の製品の各々により得られる効力の合計よりも有効である場合に言及する。
 
【0145】
  有効性(組合せの有効性を含む)が定量化され得る別の尺度が、logic細胞死滅の算出によるものであり、これは、logic細胞死滅=T−C(日)/3.32×T
dの式に従って求められる(式中、T−Cは、細胞の増殖の遅れを表し、これは、処置群(T)の腫瘍および対照群(C)の腫瘍が、予め定められた値(例えば、1gまたは10mL)に達した平均時間(日)であり、そしてT
dは、対照動物において腫瘍の容積が2倍になるのに必要な時間(日)を表す)。この尺度を用いる場合、logio細胞死滅が0.7以上であれば、製品は活性であると考えられ、logic細胞死滅が2.8を超えれば、製品は非常に活性であると考えられる。
 
【0146】
  この尺度を用いて、それ自体の最大耐量にて用いられる組合せ(各構成成分が通常その最大耐量以下の用量で存在している)は、logic細胞死滅が、単独で投与される場合の最良の構成成分のlogic細胞死滅の値よりも大きい場合に、治療相乗効果を示す。例示的な場合では、組合せのlogic細胞死滅は、組合せの最良の構成成分のlogic細胞死滅の値を、少なくとも1  log細胞死滅だけ超える。
 
【0147】
  癌免疫治療を実現する組成物および方法が本明細書中で開示される。当該方法は、それを必要とする対象において、LRP10を阻害すること、または内因性LRP10との結合について競合することを含んでよい。特定の実施形態において、LRP10を阻害すること、または内因性LRP10との結合について競合することは、リンパ球、好ましくはCD8+T細胞および細胞毒性Tリンパ球の腫瘍浸潤を増強することによって癌免疫治療を実現することができる。LRP10阻害(例えば抗LRP10抗体)は、例えば細胞毒性Tリンパ球腫瘍浸潤を増強することによって、スタンドアロン癌免疫治療として用いられてよい。一部の実施形態において、LRP10阻害は、他の癌免疫治療と併用されてよい。
 
【0148】
  造血回復を増強する方法であって、それを必要とする対象において、LRP10を阻害することと、内因性LRP10との結合について競合することとを含む方法も本明細書中で提供される。特定の実施形態において、前記阻害は、全ての造血系列、好ましくはリンパ系列の回復を増強する。一部の実施形態において、対象は、化学療法および/または放射線療法を受けた。
 
【0149】
  種々の実施形態において、本明細書中で開示される方法は、対象に、抗LRP10抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはデコイ可溶性LRP10の有効量を投与することを含んでよい。一般に、有効量は、治療的かつ/または予防的に投与されてよい。
 
【0150】
  処置は、そのような癌に苦しむ、癌を抱える、癌に感受性のある、または癌を進行させるリスクのある対象、特にヒトに適切に施されてよい。「リスクのある」対象の決定は、診断試験、または対象もしくはヘルスケアプロバイダーの意見(例えば、遺伝子検査、酵素またはタンパク質マーカー、家族歴等)によるあらゆる客観的判定または主観的判定によってなされてよい。そのような処置が必要な対象の同定は、対象またはヘルスケア専門家の判断であってよく、そして主観的(例えば意見)であっても客観的(例えば試験または診断法によって測定可能)であってもよい。
 
【0151】
製剤の投与
  本開示の製剤(再構成される液体製剤が挙げられるがこれに限定されない)は、抗LRP10抗体による処置が必要な哺乳動物、好ましくはヒトに、知られている方法、例えばボーラスとしての静脈内投与に従って、または筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、もしくは吸入経路による、一定期間にわたる連続点滴によって、投与される。
 
【0152】
  好ましい実施形態において、製剤は、皮下(すなわち、皮膚の下への)投与によって、哺乳動物に投与される。そのような目的で、製剤は、シリンジを用いて注射されてもよい。しかしながら、製剤の投与用の他の装置が利用可能であり、例えば、注射装置(例えば、INJECT−EASE(商標)およびGENJECT(商標)装置);インジェクタペン(例えばGENPEN(商標));自動インジェクタ装置、無針装置(例えば、MEDIJECTOR(商標)およびBIOJECTOR(商標));および皮下パッチ送達系がある。
 
【0153】
  特定の実施形態において、本開示は、単回用量投与ユニット用のキットに関する。そのようなキットは、治療タンパク質または抗体の水性製剤のコンテナを含み、単一の、またはマルチチャンバの予め充填されたシリンジが挙げられる。例示的な予め充填されたシリンジは、Vetter  GmbH、Ravensburg、Germanyから入手可能である。
 
【0154】
  タンパク質の適切な投薬量(「治療的に有効な量」)は、例えば、処置されることとなる症状、症状の重症度および経過、タンパク質が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の臨床履歴および抗LRP10抗体に対する応答、用いられる製剤のフォーマット、ならびに主治医の裁量によって決まることとなる。抗LRP10抗体は、一度に、または一連の処置にわたって、患者に適切に投与され、診断から後は、患者にいつ投与されてもよい。抗LRP10抗体は、唯一の処置として、または問題の症状を処置するのに有用な他の薬物もしくは治療と併せて、投与されてもよい。
 
【0155】
  抗LRP10抗体について、最初の候補投薬量が、患者への投与について約0.1〜20mg/kgに及んでよく、これは、1つまたは複数の別々の投与の形態をとってもよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用である場合がある。そのような治療の経過は、従来技術によって容易に監視される。
 
【0156】
  本開示の特定の実施形態に従えば、抗LRP10抗体(または、本明細書中で言及される、抗LRP10抗体、および付加的な治療活性剤のいずれかの組合せを含む医薬組成物)の複数回用量が、定義された時間にわたって対象に投与されてもよい。本開示のこの態様に従う方法は、本開示の抗LRP10抗体の複数回用量を、対象に順次投与することを含む。本明細書中で用いられる「順次投与する」は、抗LRP10抗体の各用量が、異なる時点にて、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週、または数ヵ月)によって分離された異なる日に、対象に投与されることを意味する。本開示は、抗LRP10抗体の初回単回用量に続いて、抗LRP10抗体の1回または複数回の第2の用量、そして場合によってはその後、抗LRP10抗体の1回または複数回の第3の用量を患者に順次投与することを含む方法を含む。抗LRP10抗体は、0.1mg/kg〜約100mg/kgの用量にて投与されてもよい。
 
【0157】
  用語「初回用量」、「第2の用量」、および「第3の用量」は、本開示の抗LRP10抗体の投与の時間的順序に言及する。ゆえに、「初回用量」は、処置レジメンの初めに投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり;「第2の用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;そして「第3の用量」は、第2の用量の後に投与される用量である。初回用量、第2の用量、および第3の用量は全て、同じ量の抗LRP10抗体を含有してもよいが、通常、投与頻度に関して、互いに異なってもよい。しかしながら、特定の実施形態において、初回用量、第2の用量、および/または第3の用量に含有される抗LRP10抗体の量は、処置中に、互いに変動してもよい(例えば、必要に応じて、上方調整または下方調整される)。特定の実施形態において、2回以上(例えば、2、3、4、または5回)の用量が、処置レジメンの初めに「ローディング用量」として投与されてから、以降の用量が、頻度を減らして投与される(例えば「維持用量」)。
 
【0158】
  本開示の特定の例示的な実施形態において、第2の用量および/または第3の用量はそれぞれ、直前の用量の1〜26(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2、またはそれ以上)週後に投与される。本明細書中で用いられるフレーズ「直前の用量」は、複数回投与の順序において、順序内の直ぐ次の用量の投与の前に(用量が間に入ることなく)患者に投与される抗LRP10抗体の用量を意味する。
 
【0159】
  本開示のこの態様に従う方法は、患者に、抗LRP10抗体の任意の回数の第2の用量および/または第3の用量を投与することを含んでもよい。例えば、特定の実施形態において、単回の第2の用量のみが、患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、またはそれ以上)の第2の用量が、患者に投与される。同様に、特定の実施形態において、単回の第3の用量のみが、患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、またはそれ以上)の第3の用量が、患者に投与される。
 
【0160】
  複数回の第2の用量を包含する実施形態において、第2の各用量は、他の第2の用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、第2の各用量は、直前の用量の1〜2週または1〜2ヵ月後に患者に投与されてもよい。同様に、複数回の第3の用量を包含する実施形態において、第3の各用量は、他の第3の用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、第3の各用量は、直前の用量の2〜12週後に患者に投与されてもよい。本開示の特定の実施形態において、第2の用量および/または第3の用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンのコースにわたって変動してよい。また、投与頻度は、臨床調査後の個々の患者の必要に応じて、医師によって処置中に調整されてもよい。
 
【0161】
  本開示は、2〜6回のローディング用量が、第1の頻度(例えば、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、月1回、2ヵ月毎に1回その他)にて患者に投与され、続いて2回以上の維持用量が、頻度を減らして患者に投与される投与レジメンを含む。例えば、本開示のこの態様に従えば、ローディング用量が、例えば月1回の頻度で投与される(例えば、2、3、4回、またはそれ以上のローディング用量が、月1回投与される)ならば、維持用量が、5週毎に1回、6週毎に1回、7週毎に1回、8週毎に1回、10週毎に1回、12週毎に1回等、患者に投与されてもよい。
 
【実施例】
【0162】
  行った実験および達成された結果を含む以下の実施例を、説明の目的でのみ記載しており、本開示を限定するものとして解釈するべきでない。
【0163】
[実施例1]
ヒトに用いられる抗体標的としてのLRP10の発見
概要
  ENU突然変異誘発を用いて、ランダムな生殖細胞系列突然変異を生じさせて、現在まで、末梢血中の普通でないフローサイトメトリ表現型について、2,289血統から合計65,130匹のG3突然変異マウスをスクリーニングした。これらのマウスは、プロテオームの全体にわたってコーディングまたはスプライシングに影響を及ぼす合計126,220個の点突然変異のキャリアであった。一血統(R0765)は、多数のT細胞(CD4細胞およびCD8細胞の双方)が血中に存在する表現型を示した。他の異常として、低いB:T細胞比、および低いNK細胞数が挙げられた。原因となる突然変異を、LDL受容体ファミリーのメンバーをコードする遺伝子、Lrp10(Lrp9としても知られている)内で同定した。続いて、類似の発見を、遺伝子の他の突然変異対立遺伝子で観察し、CRISPR/Cas9標的化は、8bpのフレームシフト欠失突然変異によりこの影響を確認した。
【0164】
  CRISPRノックアウトマウスを用いて、ホモ接合突然変異T細胞を、ケモカインCXCL12による刺激に応答する遊走活性について調査した。細胞は、この刺激に向かう、大いに増強された移動を示した。
【0165】
  WT骨髄と50:50の比率にて混合して、照射したWTマウスに移植した場合、突然変異細胞は、WT細胞をかなり上回って増殖することが観察された。このことは、非常に強い増殖活性を示唆している。
【0166】
  癌化学療法中に、必要に応じて、適切なモノクローナル抗体でLRP10を中和することで、化学療法または照射の後の造血回復が補助されるであろうと提唱する。さらに、LRP10阻害が、チェックポイント阻害と同等であり、CD8  T細胞が、普通よりもずっと効果的に腫瘍に浸潤することを可能にし得ると提唱する。
【0167】
突然変異マウスおよびスクリーニング
  以前に記載されるように(Wang  T.et  al.,Proc  Natl  Acad  Sci  USA.2015  Feb  3;112(5),PMID:25605905)、Jackson  Laboratoryから購入した8〜10週齢の純血C57BL/6Jバックグラウンドの雄に、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)で突然変異を起こさせて、ランダムな生殖細胞系列突然変異を生じさせた。突然変異を起こしたG0雄を、C57BL/6J雌と交雑させて、結果として生じたG1雄を、C57BL/6J雌と交雑させて、G2マウスを生じさせた。G2雌を、そのG1雄親と戻し交雑させて、G3マウスを生じさせた。G3マウスを、末梢血中の普通でないフローサイトメトリ表現型の有無に関してスクリーニングした。現在まで、合計65,130匹のG3突然変異マウスを、2,289血統からスクリーニングした。これらのマウスは、プロテオームの全体にわたってコーディングまたはスプライシングに影響を及ぼす合計126,220個の点突然変異のキャリアであった。
【0168】
FACS分析
  突然変異G3マウスを、先で述べたように、(N−エチル−N−ニトロソウレア)ENU−突然変異誘発および戦略的育種によって生成した。末梢血を、>6週齢のG3マウスから頬採血によって収集した。RBCを、低張バッファー(ebiosceince、#00−4300−54)で溶解した。サンプルを、FACs染色バッファー(1(w/v)%BSA入りPBS)で、500×gにて6分間、1回洗浄した。RBC枯渇サンプルを、蛍光コンジュゲート抗体の、主要な免疫系列を包含する15個の細胞表面マーカー:B220(BD  Pharmingen、#557957);CD19(BD  Biosceince、#563557);IgM(BD  Pharmingen、#550881);IgD、CD3s(BD  Horizon、#553062);CD4(BD  Horizon、#562464);CD8a(Biolegend、#100752);CD11b(Biolegend、#101237);CD11c(BD  Horizon、#563048);F4/80(Tonbo  Bioscience、#50−4801−U100);CD44(BD  Horizon、#562464);CD62L(Tonbo  Bioscience、#60−0621−U100);CD5(BD  Horizon、#562739);CD43(BD  Pharmingen、#560663);NK  1.1(Biolegend、#564143)、および1:200  Fc  block(Fisher  Scientific、#352235)に対する100μl  1:200カクテル中で、4℃にて1時間染色した。フローサイトメトリのデータを、BD  LSR  Fortessa細胞アナライザで収集して、各G3マウスにおける免疫細胞集団の割合を、FlowJoソフトウェアで分析した。結果として生じたスクリーニングデータを、原因となる対立遺伝子の自動化マッピングのために、Mutagenetixにアップロードした。
【0169】
免疫の調節因子としてのLRP10の発見
  先のスクリーニング方法を用いて、ENU突然変異マウスの血統R0765由来の複数のG3マウスは、末梢血CD4
+細胞およびCD8
+T細胞の割合の増大を示した。他の異常として、低いB:T細胞比、および低いNK細胞数が挙げられた。この表現型を、chowmeinと命名して、低密度リポタンパク質関連受容体10(Lrp10)をコードする遺伝子(LDL受容体ファミリーのメンバーをコードする遺伝子)のコーディング配列内の、おそらく有害なミスセンス突然変異にマッピングした。続いて、類似の発見を、遺伝子の他の突然変異対立遺伝子で観察し、CRISPR/Cas9標的化は、8bpのフレームシフト欠失突然変異によりこの影響を確認した。ENU対立遺伝子は、単一の貫通受容体タンパク質のエクトドメイン内で、ポリペプチド鎖の位置246にて、アスパラギン酸のチロシンへの変化(D246Y)をもたらした。
【0170】
  原因および影響を確認するために、雌のC57BL/6Jマウスを、6.5Uの妊馬血清ゴナドトロピン(PMSG;Millipore、#367222)に続く、48時間後の6.5Uのヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG;Sigma−Aldrich、#C1063)の注射によって、過剰排卵させた。続いて、過剰排卵マウスを、C57BL/6J雄マウスと一晩交配させた。後日、受精卵を卵管から収集して、インビトロ転写したCas9  mRNA(50ng/pl)およびLrp10小塩基対合ガイドRNA(50ng/pl;5’−ACAGCCCTGGACTTGAGTTA−3’)を、胚の細胞質または前核中に注入した。PCRプライマーは、
(フォワード)AGTCCCCCAGGAAGAGGCAA(配列番号71)
(リバース)TCACCTAGGTTCTCACTAGCCCC  GT(配列番号72)
であった。
【0171】
  配列決定プライマーは、tgggagttctggcacttccctgであった。注入した胚を、M16培地(Sigma−Aldrich、#M7292)内で37℃、95%空気/5%CO2にて培養した。突然変異マウスの生成のために、2細胞ステージの胚を、偽妊娠HsdTCR(CD−1)(Harlan  Laboratories、#030)雌の卵管のアンプル中に移した(卵管あたり10〜20個の胚)。創始者Lrp10
−/−マウスは、第5のエキソン(CCTGGACTTGAG(TTACGGAG)ATGCAGTGCA)(配列番号73)内に8bpの欠失を有し(8bpの欠失を括弧内に表す)、713個のアミノ酸の野生型LRP10タンパク質と比較して、117個のアミノ酸の後ろに、早期終了の原因となると予測されるフレームシフトが生じた。CRISPR  Lrp10  KO株を、FACSスクリーンに供したところ、chowmein内で観察される末梢CD4
+細胞およびCD8
+T細胞の増大を再現していた。
【0172】
骨髄キメラ
  レシピエントマウスに、5時間の間隔にて2回、X線照射器による6Gyの照射をした。抗生物質の水を、照射後のレシピエントに与えた。
【0173】
  ドナーC57BL/6マウス(CD45.1)、CRISPR−Lrp10  KO(CD45.2)ホモ接合体由来の大腿骨を、10%(v/v)FBS(Life  Technologies、#10082−147)、10ユニット/mlペニシリン、およびストレプトマイシン(Life  Technologies、#15140−122)を補充したRPMI−1640培地(Life  Technologies、#72400−120)を含有する小皿(氷上)内に入れた。大腿骨を、25Gの針を用いて、この培地で洗い流した。小さい骨を除去するために、骨髄をホモジナイズして、溶液を滅菌40μmナイロン細胞ストレーナ(BD  Biosciences、#352340)に通過させて、50mlチューブ内に収集した。容量を、培地で50mlにしてから、700×g、4℃にて5分間、遠心分離した。次に、細胞を、5mlの赤血球溶解バッファー(Sigma−Aldrich、#R7757)中に再懸濁させて、1〜2分間インキュベートした。5mlの滅菌PBSをチューブに加えて、10μlの細胞および10μlのトリパンブルーを混合して、細胞の総数をカウントした。次に、細胞を、700×gにて5分間、遠心分離してから、細胞を1mlのPBS中に再懸濁させて、1.5mlのEppendorfチューブ中に移して、氷上で維持した。C57BL/6マウス(CD45.1)、CRISPR−Lrp10  KOマウス(CD45.2)由来の骨髄細胞、または1:1の混合物を、眼窩後注射により、示したレシピエントマウス中に移した(
図1)。末梢血を、移植後の時点にてサンプリングして、主要な免疫細胞集団内のドナーキメラの画分を、CD45コンジェニックマーカー(CD45.1  Biolegend、#110732、CD45.2  Biolegend、#109814)、CD3s(BD  Horizon、#553062)、CD4(BD  Horizon、#562464)、CD8a(Biolegend、#100752)、B220(BD  Pharmingen、#557957)、CD19(BD  Biosceince、#563557)、CD11b(Biolegend、#101237)、およびNK  1.1(Biolegend、#564143)に対する蛍光コンジュゲート抗体を用いるフローサイトメトリで評価した。全体として、各実験において、CRISPR−Lrp10  KOマウス(CD45.2)由来の突然変異細胞は、野生型C57BL/6マウス(CD45.1)細胞を有意に上回って増殖することが観察され、このことは、非常に強い増殖活性を示唆した(
図2、
図3、および
図4)。
【0174】
T細胞およびHSC遊走アッセイ
  CRISPRノックアウトマウスを用いて、ホモ接合突然変異T細胞を、C−X−Cモチーフケモカイン12(CXCL12)による刺激に応答する遊走活性について調査した(
図5)。この実験を実行するために、総T細胞を、C57BL/6マウスおよびCRISPR−Lrp10  KOホモ接合体の脾臓およびリンパ節から、陰性選択キット(StemCell  Technologies、#19851)を用いて単離した。次に、造血幹細胞(HSC)を、これらのマウスの骨髄から、HSC濃縮キット(StemCell  Technologies、#19756)を用いて単離した。次に、10μlの細胞および10μlのトリパンブルーを一緒に混合して、細胞の総数をカウントした。次に、細胞を、10
7/mlの密度にて1(w/v)%BSAを含有するRPMI中に再懸濁させた。100μlのこの懸濁液(10
6細胞)を、5ミクロンのポリカーボネート膜インサート(Corning、#CLS3421−48EA)を含有する24ウェルTranswellプレートの上方チャンバに加えた。0、20、または200ng/mlの間質細胞由来因子1(SDF−1)(Peprotech、#250−20A)(CXCL12としても知られている)を含有する600μlのRPMI/1(w/v)%BSAを、下方チャンバに加えた。Transwellプレートを、37度にて3.5時間インキュベートした。インキュベーションの後、上方チャンバを破棄して、下方チャンバに移動した細胞を、CD4(BD  Horizon、#562464)およびCD8a(Biolegend、#100752)に対する蛍光コンジュゲート抗体で染色した。LSR  Fortessa上で30秒以内に収集した総事象を測定することによって、細胞数を評価した。各ケモカイン濃度にて収集された事象の数を、インプット細胞集団の1:6希釈から30秒以内に収集された事象の数で割ることによって、移動細胞のパーセンテージを算出した。全体として、CRISPR−Lrp10  KOマウス由来の突然変異細胞は、野生型C57BL/6マウス細胞と比較して、CXCL12ケモカイン刺激に向かう、大いに増強された移動を示した(
図5)。
【0175】
p21およびFrizzled−6についてのウェスタンブロットアッセイ:
  Wntシグナリング経路は、動物において、多く細胞の分化、増殖、および機能、ならびに発達、成長、およびホメオスタシスのプロセスにおいて、基本的な役割を果たす。低密度リポタンパク質受容体(LDLR)関連タンパク質(LRP)5およびLRP6は、Frizzled受容体と共に、Wntタンパク質の共受容体であり、標準的なWnt/ベータ−カテニンシグナリングの活性化をトリガーする。LRP10がどのようにWnt/β−カテニンシグナリングを調節するかについて理解するために、T細胞およびHSCを、先に記載するように富化した。次に、バッファーA(50mM  HEPES、2mM  MgCl
2、10mM  KCl)中に1%SDS(ThermoFisher、#AM9820)、1:10,000ベンゾナーゼ(Sigma、#E1014)、および1:100プロテアーゼインヒビターカクテル(Cell  Signaling  Technology、#5871S)を含有するバッファー中に、非刺激細胞(約10
6個)を溶解した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce)を用いて測定した。細胞抽出物(各20μl;約1×10
6細胞に相当)を、NuPAGE(商標)Novex(商標)4〜12%ビス−トリスタンパク質ゲル(Life  Technologies、#NP0336BOX)上で分離させて、タンパク質を、12ボルトにて1時間、ニトロセルロース膜(Bio−Rad、#162−0115)に転写した。0.05(v/v)%Tween−20(TBS−T)を5(w/v)%BSAと共に含有するトリス緩衝生理食塩水中での室温にて2時間のブロッキングの後、膜を、TBS−T中5(w/v)%BSA内の一次抗体抗P21(Santa  Cruz  Bio  Tech、#SC−6246)、抗Frizzled(Santa  Cruz  Bio  Tech、#SC−393113)、および抗βアクチン(Cell  Signaling、#3700S)と4℃にて一晩、穏やかに揺らしながらインキュベートした。次に、膜を、室温にて1時間、第2の抗体ヤギ抗マウスIgM−HRP(Southern  Biotech、#1021−05)、ヤギ抗ウサギIgG−HRP(Thermo  fisher、#A16096)、またはヤギ抗ウサギIgG−HRP(Thermo  fisher、#A16096)とインキュベートした。化学ルミネセンスシグナルを、SuperSignal  West  Dura  Extended  Duration  Substrateキット(Fisher  Scientific、#PIA34075)を用いることによって発生させて、G:Box  Chemi  XX6系(Syngene)によって検出した。
図6に示すように、Lrp10
−/−T細胞、およびLrp10
−/−造血細胞は、Wntシグナリングの最終生成物であるp21の発現がより高い。また、Lrp10
−/−T細胞およびLrp10
−/−造血細胞は双方とも、膜貫通受容体、Fizzled  6を発現する。合わせて、このデータは、Lrp10
−/−T細胞およびLrp10
−/−造血細胞の競合潜在性の増大が、非標準的なWnt/β−カテニンシグナリング経路に依存することを実証している。
【0176】
フローサイトメトリ:
  末梢血球を単離して、赤血球(RBC)溶解バッファーを加えて、RBCを除去した。細胞を、主要な免疫系列を包含する以下のマウス細胞表面マーカー、B220、CD19、IgM、IgD、CD3s、CD4、CD5、CD11c、CD44、CD43、CD25、CD21、CD23、BP−1(BD  Pharmingen)、CD8a、CD11b、NK1.1(Biolegend)、F4/80、CD62L(Tonbo  Biosciences)に特異的な15個のマウス蛍光色素コンジュゲートモノクローナル抗体で、抗マウスCD16/32抗体(Tonbo  Biosciences)の存在下で4℃にて1時間、1:200の希釈にて染色した。染色後、細胞をPBS中で2回洗浄して、フローサイトメトリによって分析した。
【0177】
  図7に示すように、Lrp10の細胞外ドメイン内の点突然変異(D246Y)が、ENU突然変異誘発中に生じた。この突然変異についてホモ接合のマウスは、その末梢血中のCD3+、CD4+、およびCD8+T細胞の割合の増大を示した。これを、chowmein(Lrp10
ch/ch)と命名した。この突然変異は、遺伝形式が劣性であった。というのも、ヘテロ接合体(Lrp10
+/ch)および野生型マウス(Lrp10
+/+)が影響を受けなかったからである。
【0178】
腫瘍接種、抗PD−1処置、および腫瘍測定:
  B16F10黒色腫細胞を、10vol/vol%FBSを含有するDMEM中で増殖させた。100μLのDPBS中の合計2×10
5個のB16F10細胞を、C57BL/6Jマウス、野生型、ヘテロ接合、およびホモ接合のLRP10  CRISPR  KOマウスの右脇腹中にs.c.注射して、腫瘍を確立した。抗PD−1処置のために、200pLのDPBS中300μgの抗PD−1を、腫瘍接種後の5、8、および11日目にマウス中にi.p.注射した。腫瘍を、デジタルキャリパ(Fisher)で測定して、腫瘍サイズを、容積=0.5×長さ×幅
2の式を用いて算出した。腫瘍の長さまたは幅が2cmに達したときに、マウスを殺した。
【0179】
  図8に示すように、CRISPR−Cas9を用いてLrp10ノックアウトマウス(Lrp10
−/−)を用意した。Lrp10
+/+マウスおよびLrp10
−/−マウスに、同系のB16黒色腫腫瘍細胞株を皮下注射した。腫瘍細胞注射の7日後に、マウスに、チェックポイント阻害用の抗PD1の腹腔内注射を与えた。腫瘍容積を、腫瘍注射後の17、19、および24日目に測定した。Lrp10
−/−は、これらの時点にて有意に低い平均腫瘍容積を示した。
【0180】
  図9に示すように、腫瘍注射後19日目に、末梢血を、B16を有するLrp10
+/+マウスおよびLrp10
−/−マウスから収穫した。担腫瘍Lrp10
−/−マウスは、末梢血中の総T細胞の割合がより高かった。腫瘍ナイーブLrp10
−/−と対照的に、CD8+T細胞のみが、担腫瘍Lrp10
−/−マウスにおいて上昇し、そして、CD44発現によって測定されるエフェクタ表現型が活性化された。
【0181】
[実施例2]
LRP10モノクローナル抗体の生成
  NCBI  ハツカネズミ(Mus  musculus)(www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/65107)LRP10の分析に基づいて、ハツカネズミ(Mus  musculus)LRP10由来の2つのフラグメント(XP_006519421.1およびNP_075369.2)が、Lrp10  ESTライブラリー由来の代わりにスプライスした転写産物として予測されると判断した。また、ヒト(Homo  sapiens)(www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/26020)LRP10(ヒト(Homo  sapiens)においてLRP9としても知られている)の分析に基づいて、ヒト(Homo  sapiens)LRP10由来の3つのフラグメント(NP_001316155.1、NP_054764.2、XP_005267567)が、Lrp10  ESTライブラリー由来の代わりにスプライスした転写産物として予測されると判断した。標準的なLRP10タンパク質としてのヒトNP_054764.2およびマウスNP_075369.2は双方とも、SignalP  4.1(www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)によって分析されるように、17残基シグナルペプチドを有する713残基長である。ヒトLRP10タンパク質は、マウスLRP10タンパク質に対する同一性が88%である。516−、713−、または721−残基変異体が挙げられる3つのヒト(Homo  sapiens)LRP10タンパク質変異体を、ClustalWによってアラインした。標準的なタンパク質と比較して、2つのアイソフォームは、残基135〜143を欠いており、そしてヒトLRP10アイソフォーム2は、最後の157残基を欠いている。標準的なヒトLRP10タンパク質は、最初の440残基からなるエクトドメイン、残基441〜463からなる膜貫通ドメイン、および残基464〜713からなる細胞内ドメインを有する。ヒトLRP10タンパク質の全てのアイソフォームを標的化するために、アイソフォーム2を、Lasergene/Proteanによって分析した。この分析に基づいて、残基第159〜第192、第294〜第360、および第378〜第434のポリペプチドは、抗ヒトLrp10抗体の候補である。
【0182】
  免疫原としての使用について表すことができる、タンパク質の最初の420アミノ酸のアミノ酸配列は、
  >sp|Q7Z4F1|LRP10_HUMAN  低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質10  OS=ヒト(Homo  sapiens)  GN=LRP10  PE=1  SV=2(配列番号74)である。
MLLATLLLLLLGGALAHPDRIIFPNHACEDPPAVLLEVQGTLQRPLVRDSRTSPANCTWLILGSKEQTVTIRFQKLHLACGSERLTLRSPLQPLISLCEAPPSPLQLPGGNVTITYSYAGARAPMGQGFLLSYSQDWLMCLQEEFQCLNHRCVSAVQRCDGVDACGDGSDEAGCSSDPFPGLTPRPVPSLPCNVTLEDFYGVFSSPGYTHLASVSHPQSCHWLLDPHDGRRLAVRFTALDLGFGDAVHVYDGPGPPESSRLLRSLTHFSNGKAVTVETLSGQAVVSYHTVAWSNGRGFNATYHVRGYCLPWDRPCGLGSGLGAGEGLGERCYSEAQRCDGSWDCADGTDEEDCPGCPPGHFPCGAAGTSGATACYLPADRCNYQTFCADGADERRCRHCQPGNFRCRDEKCVYETWVCDGQPDCADGSDEWDCSYVLPRK
【0183】
  完全長とは対照的に、上述のエクトドメインの一部を免疫原として用いることもできる。当該技術において知られている様々な方法、および本明細書中に開示した方法を、完全ヒトまたはヒト化抗LRP10抗体を生成するのに用いてもよい。また、例えば、先に述べたように、完全ヒトLRP10抗体を、ファージディスプレイライブラリーから生成することもできる。ヒト化抗LRP10抗体を、ハイブリドーマから得たモノクローナル抗体をヒト化することによって調製することができる。
【0184】
  例えば、親和性クロマトグラフィによる精製に適したC末端Hisタグを、免疫原に加えてよい。精製したタンパク質を、適切なアジュバントと共にマウスに接種してもよい。ハイブリドーマ内で生成されたモノクローナル抗体を、免疫原への結合について試験してもよく、そして陽性のバインダーを、T細胞の移動を中和し、または先に記載するアッセイにおいてヒトリンパ系細胞内でFrizzledおよび/もしくはp21発現に影響を与える能力の有無に関してスクリーニングしてもよい。その後、抗体を、臨床前研究および臨床研究のためにヒト化してもよい。
【0185】
バイオパニングおよびスクリーニング:
  典型的なバイオパニングは、許容可能な富化を達成するために、3〜5ラウンドを含む。
1.ライブラリーバイオパニング
  1)ELISAプレートの各ウェルを、50pLのコーティングバッファー(0.1M  NaHCCh、pH9.6)中の対象とする2μg標的でコーティングして、4℃にて一晩インキュベートする。コーティング溶液を捨てて、ウェルを、0.1%PBST[0.1(v/v)%Tween  20入りPBS]の洗浄バッファーで3回洗浄して、300pLブロッキングバッファー[2%PBSM(2%スキムミルクを含有するPBS)]を加えることによって、ウェルをブロックする。シールして、4℃にて一晩インキュベートする。
  2)ブロッキングバッファーを捨てて、50〜100pLのファージライブラリー(約10
11個のファージ粒子)を各ウェル(4ウェル)に加える。シールして、37℃にて2時間インキュベートする。
  3)使い終ったファージ溶液を除去する。ELISAプレートウォッシャ機を用いて、コーティングした表面を9回洗浄する
  4)最終洗浄溶液を除去した後に、200pLの溶出バッファーを加えて、37℃にて10分間インキュベートする。激しく10回ピペッティングする。溶出液を、100pLの中和バッファーを含有するミクロフュージチューブに移す。
2.ファージ滴定
  1)2×YT培地中にファージの連続希釈を用意する(ファージインプットについて、10
12〜13ファージ/mLの力価を予想する。10
−8〜10
−10に希釈する。ファージアウトプットについて、ラウンド1について10
−1〜10
−4に希釈する一方、ラウンド2および3について10
−2〜10
−6に希釈する)。
  2)500pLの対数期大腸菌(E.coli)TG1(OD600≪0.5)(30分37℃)を加える。
  3)2%グルコースおよび100pg/mLアンピシリンを含有する2×YTアガー上に100pLの感染細胞をプレーティングして、37℃にてO/N増殖させる。
3.選択したファージの救出
  1)総アウトプットを6mL  TG1(OD
600、
3/40.5)に加えることによって、大腸菌(E.coli)TG1を、溶出したファージアウトプットで感染させる。
  2)感染を、37℃の水浴中で30分間インキュベートする。
  3)9mL  2×YT−AG培地を加える。37℃にて一晩増殖させる。
  4)4℃、5,000rpmにて15分間遠心分離する。ペレットを、15%グリセロールを含有する2×YT培地中に再懸濁させて、−80℃にて保存する。今後の選択用に救出されるべきストックをマスターする。
4.バイオパニングの次のラウンド用のファージ増幅
  1)救出したグリセロールストックの一部を、25mL  2×YT−AG培地中に接種する。
  2)37℃での振盪によって指数期(OD
600、≒0.5)まで増殖させる。
  3)約2×10
11pfu  M13KO7ヘルパーファージを加える。
  4)感染を、37℃の水浴中で30分間インキュベートする。
  5)5,000rpmにて15分間遠心分離する。
  6)ペレットを、25mLの2×YT−AK培地中に再懸濁させる。
  7)250mLフラスコに移す。30℃にて一晩振盪(225rpm)して、増殖させる。
5.バイオパニングの次のラウンド用のファージ精製
  1)50mL遠心管内の培養体を、4,000gにて20分間スピンして、細菌をペレット化させる。
  2)上清に、5×PEG/NaClの容積の5分の1を加えて、少なくとも1時間氷上に置く。
  3)4℃、12,000gにて15分間スピンすることによって、ファージをペレット化させる。
  4)上清を捨てる。
  5)ペレットを1mL滅菌PBS中に再懸濁させる。
  6)1.5mLマイクロ遠心管に移す。
  7)マイクロ遠心管内でスピンして(2分、最大g)、残りの細菌を除去する。
  8)上清を新しいチューブに移す。この時、ファージは、更なるスクリーニングラウンドまたは選択アッセイに用いる準備が整っている。ファージを、力価の大きな低下なく、4℃にて保存することができる。長期保存のために、グリセロールを20%まで加えて、−80℃にて保存する。
【0186】
抗体の発現および精製
  1.抗体の軽鎖および重鎖のcDNAを、哺乳動物の発現用に最適化して化学的に合成した。cDNAを、発現ベクター中にクローニングした。
2.軽鎖および重鎖のコーディング遺伝子を、30mLの293F細胞に共形質移入した。上清を、トランスフェクション後の6日目に収穫した。
3.抗体を、固定したプロテインAを用いる親和性クロマトグラフィによって精製した。
  1)1mlのプロテインAピュアレジンを、新しいディスポーザブルプラスチック重力流カラムに移す。樹脂を、10カラム容量(CV)の超高純度水で洗浄してから、10CVのTBS、pH7.5/8.0バッファーで平衡化させる。
  2)濾過した抗体上清をカラムにアプライして、重力によって流を通過させる。10CVのPBSで樹脂を2回洗浄する。上清および洗浄液の双方からフロースルーを収集して、氷上に、または4℃にて、更なる分析用に維持する。
  3)結合した抗体の溶出のために、4mlのグリシン−HCl溶出バッファー(pH2.7)を加えて、フロースルーを、1mlのトリス−HCl溶液(pH7.6)で予備充填したチューブ中に収集する。上記のように、更なる画分を収集する。画分のOD280nmがゼロであるときに(これは通常、3〜5画分後である)、溶出を止める。
  4)溶出後、樹脂を、10CVのグリシン−HCl(pH2.7)、10CVのPBS、10CVの超高純度水、および10CVの20(vol/vol)%エタノールでの順次的な洗浄にかける。樹脂を、今後の使用のために、20(vol/vol)%エタノール中に4℃にて保存する。
  5)SDS−PAGEによって全ての画分を分析する。
  6)画分を、可視タンパク質バンドと組み合わせて、透析チューブを用いて、>30容量の低エンドトキシンPBSバッファーに対して4℃にて少なくとも2時間透析する。
  7)透析されたタンパク質を、PBSで予め洗浄した遠心濃縮器(<10kDaのカットオフ)を用いて濃縮する。
  8)濃縮したサンプルを、シリンジ駆動0.22pmフィルターによって濾過して、タンパク質濃度をBCA法によって算出する。
【0187】
ELISA試験:
  1)特定のコーティングバッファー(0.1M  NaHCCb、pH9.6)中の標的タンパク質LR10(1pg/ml、0.1pg/ウェル)をコーティングする。4℃にて一晩インキュベートする。
  2)ウェルあたり300pLの洗浄バッファー(0.1%PBST)でウェルを3回洗浄する。
  3)300pLのブロッキングバッファー(3%BSA)で37℃にて1時間、ウェルをブロックする。
  4)ブロッキングバッファーを捨てて、洗浄バッファーでプレートを3回洗浄して、プレートをうつ伏せにして、毎回、紙タオルのきれいな部分にたたきつける。
  5)ウェルあたり100pLの段階希釈抗体を加える。37℃にて1時間インキュベートする。
  6)洗浄バッファーで3回洗浄する。HRPヤギ抗ヒトIgG(1:4,000)をブロッキングバッファー(3%BSA)中に希釈する。ウェルあたり100pLの希釈コンジュゲートを加えて、37℃にて1時間インキュベートする。
  7)洗浄バッファーで3回洗浄する。テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma、USA)を0.1mmol/Lクエン酸−リン酸バッファー中に溶解して、1μL/mL  H2O2を溶液に加える。ウェルあたり100μLの基質溶液を加えて、室温にて15分間インキュベートする。
  8)100pLの2mol/L  H2SO4溶液を加えて、反応を止める。
  9)490nmにセットしたマイクロプレートリーダーを用いて、プレートを読む。
【0188】
結果:
  Creative  Biolabs  Inc.のファージディスプレイHuScl−2(商標)ライブラリーを、3ラウンドのバイオパニングに用いた。Hisタグを付けた組換えヒトLRP10タンパク質、LRP10−516Hを、抗原として用いた。第3ラウンドのバイオパニング由来のサブライブラリーの配列決定により、以下のVL配列およびVH配列(アミノ酸配列およびヌクレオチド配列の双方)を有する固有の9クローンを同定した。なお、完全な抗体配列について、各VLは、軽鎖定常領域、例えばCk(配列番号31)に連結されて、完全な軽鎖を形成し得、そして各VHは、重鎖定常領域、例えばヒトIgG1  CH123(配列番号32)に連結されて、完全な重鎖を形成し得る。
【0189】
クローン1(AB1)
タンパク質配列
VL(配列番号1):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYNASDLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSSRTPTTFGQGTKVEIK
VH(配列番号2):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSQAMSWVRQAPGKGLEWVSSIPPGGPNTKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSYPSFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号3):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATAATGCATCCGATTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGTCGTCGCGGACGCCTACGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号4):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTAGGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCTATTCCTCCGGGTGGTCCTAATACAAAGTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAAGTTATCCTTCTTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン2(AB2)
タンパク質配列
VL(配列番号5):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASPLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQVARTPNTFGQGTKVEIK
VH(配列番号2):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSQAMSWVRQAPGKGLEWVSSIPPGGPNTKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSYPSFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号6):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGCGGCATCCCCGTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGGTGGCTCGTACGCCTAATACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号4):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTAGGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCTATTCCTCCGGGTGGTCCTAATACAAAGTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAAGTTATCCTTCTTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン3(AB3)
タンパク質配列
VL(配列番号7):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYRASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQPTSLPLTFGQGTKVEIK
VH(配列番号8):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSQIGTMGRPTTYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSGKKFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号9):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATAGGGCATCCCGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGCCGACTTCGTTGCCTCTGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号10):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATAGATTGGGACGATGGGTCGGCCGACAACTTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAAGTGGGAAGAAGTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン4(AB4)
タンパク質配列
VL(配列番号11):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASALQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQADSYPTTFGQGTKVEIK
VH(配列番号12):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRLAPGKGLEWVSSISTTGNSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDATSFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号13):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGCTGCATCCGCTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGGCTGATTCTTATCCTACTACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号14):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCTGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCTATTTCTACTACTGGTAATAGTACATATTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAGATGCTACTAGTTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン5(AB5)
タンパク質配列
VL(配列番号15):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYRASRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQIKTRPTTFGQGTKVEIK
VH(配列番号16):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSVIQRQGTGTEYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKNSRTFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号17):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATCGTGCATCCCGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGATTAAGACAAGGCCTACGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号18):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAGTTATTCAGCGTTAGGGTACTGGTACAGAGTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCAAAAAATTCGCGGACGTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン6(AB6)
タンパク質配列
VL(配列番号19):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASLLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTSAGPGTFGQGTKVEIK
VH(配列番号20):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIPSRGQATKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSRHTFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号21):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGATGCATCCCTTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGACTTCTGCGGGTCCTGGTACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号22):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAAGTATTCCTAGTCGTGGTTAGGCAACAAAGTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGCGCGAAATCGCGTCATACTTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン7(AB7)
タンパク質配列
VL(配列番号23):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNDYYPTTFGQGTKVEIK
VH(配列番号24):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIATTGNTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKNTATFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号25):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGCTGCATCCACTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGAATGATTATTATCCTACTACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号26):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCTATTGCTACTACTGGTAATACTACATATTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAAATACTGCTACTTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン8(AB8)
タンパク質配列
VL(配列番号1):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYNASDLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSSRTPTTFGQGTKVEIK
VH(配列番号27):
MAEVQLLESGGGLVQLGGSLRLSCAASGFTFSSQAMSWVRQAPGKGLEWVSSIPPGGPNTKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSYPSFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号3):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATAATGCATCCGATTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGTCGTCGCGGACGCCTACGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号28):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCTTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTAGGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCTATTCCTCCGGGTGGTCCTAATACAAAGTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAAGTTATCCTTCTTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
クローン9(AB9)
タンパク質配列
VL(配列番号1):
TDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYNASDLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSSRTPTTFGQGTKVEIK
VH(配列番号29):
MAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIYTSGAATTYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSYPSFDYWGQGTLVTVSS
ヌクレオチド配列
VL(配列番号3):
ACGGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATAATGCATCCGATTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGTCGTCGCGGACGCCTACGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAA
VH(配列番号30):
ATGGCCGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCTATTTATACTTCTGGTGCTGCTACAACTTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAAGTTATCCTTCTTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGC
Ckアミノ酸配列(配列番号31):
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
IgG1  CH123アミノ酸配列(配列番号32):
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0190】
  発明者らは、哺乳動物細胞の発現用のこれらの抗体のcDNAを化学的に合成した。軽鎖および重鎖の遺伝子をそれぞれ、発現ベクター中にクローニングして、293F細胞中に共形質移入した。発明者らは、最初に、抗体発現試験用の各クローンについて、80mLの培養液を用いた。
図10に示すように、8抗体が首尾よく発現した一方、AB5の発現は低過ぎて、検出できなかった。プロテインAベースの親和性クロマトグラフィによる精製の後、8つの抗体は全て、高い純度を達成した。
【0191】
  クローンAB5について、発明者らはまた、CHO発現系を試みたが、その発現レベルはなお、非常に低かった。このことは、このクローンの不十分な発現度が、抗体配列それ自体に起因することを示している。
【0192】
  8つの十分に発現された抗体について、発明者らは、ELISAによって、標的抗原に対する結合活性を試験した(表7および
図11)。8クローンのうち、5つ[AB1(L1+H1)、AB2(L2+H1)、AB3(L3+H2)、AB7(L7+H6)、およびAB8(L1+H7)]が、抗原への高い親和性を示したが、他の3つの抗体は、結合活性を示さなかった。
【0193】
  5つの高親和性抗体について、AB1およびAB2は、最良の結合活性を示した。このことは、これらの2つの配列の頻度が最も高いという配列決定の結果と一致した。
【0194】
【表7】
【0195】
[実施例3]
モノクローナル抗体の機能試験
ウェスタンブロット
  P21の発現を、ヒト抗体によるLrp10機能のブロッキングについて調査した。直接的ウェスタンブロット分析のために、陰性選択方法(StemCell  Technologies、#19851)を用いて単離した精製脾臓汎T細胞を、100μg/mlヒト抗Lrp10抗体AB1、AB2、AB3、AB4、AB6、AB7、AB8、またはAB9と共に、または無しで4時間培養して、バッファーA(50mM  HEPES、2mM  MgCl
2、10mM  KCl)中1(w/v)%SDS(Thermo)、0.01(w/v)%ベンゾナーゼ(Sigma)、プロテアーゼインヒビターカクテル(Cell  Signaling  Technology)のバッファー中に溶解した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce)を用いて測定した。10μgのタンパク質を、4〜12%ビス−トリスタンパク質ゲル(Life  Technologies)上で分離させて、タンパク質を、13ボルトにて45分間、ニトロセルロース膜(Bio−Rad)に転写した。5(w/v)%スキムミルク(NFDM)入り0.05(v/v)%Tween−20(TBS−T)を含有するトリス緩衝生理食塩水内での室温にて1時間のブロッキングの後、膜を、TBS−T中5(w/v)%BSA内の一次抗体抗P21(Santa  Cruz)および抗βアクチン(Cell  Signaling  Technology)と4℃にて一晩、穏やかに揺らしながらインキュベートした。次に、膜を、室温にて1時間、第2の抗体ヤギ抗ウサギまたはマウスIgG−HRP(Thermo  fisher)と、穏やかに揺らしながらインキュベートした。化学ルミネセンスシグナルを、SuperSignal  West  Dura  Extended  Duration  Substrateキット(Thermo  Fisher)を用いることによって発生させて、G:Box  Chemi  XX6系(Syngene)によって検出した。全体として、AB2は、野生型C57BL/6マウス細胞において、P21発現の大きな増強を示した。
【0196】
  発明者らは、Lrp10
−/−マウスから精製したT細胞が、Lrp10
+/+T細胞と比較して、細胞周期インヒビターp21の発現を増大させたことを以前に観察した。T細胞を、Lrp10
+/+マウスの脾臓から精製して、様々な抗ヒトLrp10クローンとインキュベートした。P21発現レベルを、ウェスタンブロットで測定した。
図12に示すように、非処理のT細胞と、抗Lrp10抗体で処理したT細胞との間に、p21発現の差異はなかった。抗体2で処理したT細胞は、約35kdにて強い免疫反応バンドを示した。これは、翻訳後修飾(例えばグリコシル化またはSUMO化)の誘導を反映しているかもしれない。左右のパネルは、2つの別個の実験を示す。
【0197】
T細胞遊走アッセイ
  C57BL/6を用いて、T細胞を、C−X−Cのモチーフケモカイン12(CXCL12)による刺激に応答する遊走活性について調査した。この実験を実行するために、総T細胞を、C57BL/6マウスの脾臓およびリンパ節から、陰性選択キット(StemCell  Technologies、#19851)を用いて単離した。次に、10μlの細胞および10μlのトリパンブルーを一緒に混合して、細胞の総数をカウントした。次に、細胞を、10
7/mlの密度にて1(w/v)%BSAを含有するRPMI中に再懸濁させた。100μlのこの懸濁液(10
6細胞)を、50μg/ml  Lrp10抗体と、または無しで30分間前処理してから、細胞を、5ミクロンのポリカーボネート膜インサート(Corning、#CLS3421−48EA)を含有する24ウェルTranswellプレートの上方チャンバに加えた。200ng/mlの間質細胞由来因子1(SDF−1)(Peprotech、#250−20A)(CXCL12としても知られている)を含有する、50μg/ml  Lrp10抗体入り、または無しの600μlのRPMI/1(w/v)%BSAを、下方チャンバに加えた。Transwellプレートを、37度にて3.5時間インキュベートした。インキュベーションの後、上方チャンバを破棄して、下方チャンバに移動した細胞を、LSR  Fortessa上で60秒以内に収集した総事象を測定することによって評価した。各ケモカイン濃度にて収集された事象の数を、インプット細胞集団の1:6希釈から60秒以内に収集された事象の数で割ることによって、移動細胞のパーセンテージを算出した。全体として、AB2およびAB7は、野生型C57BL/6マウス細胞において、CXCL12ケモカイン刺激に向かう、大いに増強された移動を示した。
【0198】
  群間の差異の統計学的有意性を、GraphPadを用いて、示す統計学的検定を実行することによって分析した。P<0.05とき、群間の生の値の差異を、統計学的に有意であると考えた。P値を、
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;ns、P>0.05(有意でない)によって表す。
【0199】
  発明者らは以前に、Lrp10
−/−T細胞が、トランスウェルアッセイにおいて、SDF−1(Cxcl12、CXCR4のリガンド)に応答する移動速度の増大を示すことを観察した。Lrp10
+/+脾細胞を、様々な抗Lrp10抗体クローンと、またはビヒクルとインキュベートして、トランスウェルチャンバの上方ウェル内に入れた。下方チャンバは、SDF−1を200ng/mlにて含有した。細胞を、3.5時間移動させた。その後、下方チャンバ内の移動したT細胞の数を、フローサイトメーターでカウントした。移動速度を、インプット数に対する、移動したT細胞の数として表現する。
図13に示すように、抗Lrp10抗体は全て、ビヒクルのみと比較して、より高い移動速度を誘導した。抗体2、7、および8は、SDF−1に応答して、ビヒクルよりも約2倍高い最高移動速度を誘導した。
【0200】
  本開示の種々の態様は、単独で、組み合わせて、または先に記載される実施形態において具体的に考察されていない種々の配置で用いられてもよいので、その用途において、先の説明で示される、または図中で例示される構成要素の詳細および配置に限定されない。例えば、一実施形態に記載される態様は、いかなる方法であれ、他の実施形態に記載される態様と組み合わされてもよい。
【0201】
  本開示の特定の実施形態が考察されてきた一方、上の詳述は実例であって、制限ではない。本開示の多くの変形が、本明細書をレビューして直ぐに、当業者に明らかとなろう。本開示の完全な範囲は、特許請求の範囲、およびその均等物の完全な範囲、ならびに本明細書、およびそのような変形の参照によって決定されるべきである。
【0202】
引用による組込み
  本明細書中で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が、全ての目的についてその全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとすることが具体的に示されているかの如く、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。