(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-504620(P2021-504620A)
(43)【公表日】2021年2月15日
(54)【発明の名称】触媒蒸発器を動作させるための方法、およびその方法の使用
(51)【国際特許分類】
F02M 27/02 20060101AFI20210118BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20210118BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20210118BHJP
【FI】
F02M27/02 D
F01N3/08 A
F01N3/20 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-528195(P2020-528195)
(86)(22)【出願日】2018年11月22日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月20日
(86)【国際出願番号】EP2018082191
(87)【国際公開番号】WO2019101846
(87)【国際公開日】20190531
(31)【優先権主張番号】102017127847.8
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102018204456.2
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・スツォラク
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ズスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・リュメレ
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AA18
3G091AA19
3G091AA20
3G091AB06
3G091AB15
3G091BA03
3G091BA14
3G091CA18
3G091FA01
3G091FB02
(57)【要約】
燃料および酸化剤を触媒蒸発器に送り込むステップを伴う、触媒蒸発器(1)を動作させるための方法が記載されており、その方法は、(a)燃料の送り込みがパルス状の送り込みとして実施される、および/または、(b)酸化剤の送り込みがパルス状の送り込みとして実施されるという事実によって違うものとされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒蒸発器(1)を動作させるための方法であって、
燃料および酸化剤を前記触媒蒸発器(1)に供給するステップを含み、
(a)前記燃料はパルス添加として供給される、および/または、
(b)前記酸化剤はパルス添加として供給される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記燃料のパルス添加(a)において、第1の量の前記燃料が第1の期間の間に添加される、および/または、第2の量の前記燃料が第2の期間の間に添加される、および/または、燃料が第3の期間の間に添加されないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)前記第1の量の前記燃料が前記第1の期間の間に添加され、燃料が前記第3の期間の間に添加されない、または、
(ii)前記第1の量の前記燃料が前記第1の期間の間に添加され、前記第2の量の前記燃料が前記第2の期間の間に添加され、燃料が前記第3の期間の間に添加されない、または、
(iii)前記第1の量の前記燃料が前記第1の期間の間に添加され、前記第2の量の前記燃料が前記第2の期間の間に添加される
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の期間は10msから10sまでであること、または、前記第2の期間は10msから10sまでであること、または、前記第3の期間は10msから10sまでであることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤の前記パルス添加(b)において、第1の量の前記酸化剤が第1の期間の間に添加される、および/または、第2の量の前記酸化剤が第2の期間の間に添加される、および/または、酸化剤が第3の期間の間に添加されないことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記第1の量の前記酸化剤が前記第1の期間の間に添加され、酸化剤が前記第3の期間の間に添加されない、または、
(ii)前記第1の量の前記酸化剤が前記第1の期間の間に添加され、前記第2の量の前記酸化剤が前記第2の期間の間に添加され、酸化剤が前記第3の期間の間に添加されない、または、
(iii)前記第1の量の前記酸化剤が前記第1の期間の間に添加され、前記第2の量の前記酸化剤が前記第2の期間の間に添加される
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の期間は10msから10sまでであること、および/もしくは、前記第2の期間は10msから10sまでであること、および/もしくは、さらなる期間が10msから10sまでであること、または、前記第1の期間は1sから5sまでであること、および/もしくは、前記第2の期間は1sから5sまでであること、および/もしくは、さらなる期間が1sから5sまでであることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料は、ガソリン、ディーゼル、バイオオイル、熱分解油、バイオディーゼル、重油、アルコール、フィッシャートロプシュ燃料、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、オキシメチレンエーテル、エステル、アルデヒド、芳香族化合物、アミン、カルボン酸、アルカン、天然ガス、キャンプ用ガス、LPG、フレアガス、埋立地ガス、バイオガス、およびこれらの燃料のうちの少なくとも2つの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤は、酸素または酸素含有媒体、特に、空気もしくは残留酸素を伴う排気ガスを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
排気物がエンジン内で低減されるように燃料特性を変えるための、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項11】
内燃エンジンの排気ガス後処理システムにおけるライトオフ温度を低下させるための、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項12】
吸蔵触媒のための還元剤を発生させるための、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒蒸発器を動作させるための方法、およびその方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンの燃料特性を調節するために触媒蒸発器を使用することが知られている。WO2007/042246A2には、液体燃料を蒸発させて改質するための方法が記載されており、その方法では、第1の反応室において、燃料が蒸発され、第1の触媒を用いて、空気の供給で強力に準化学量論的に酸化され、第2の反応室において、蒸発された燃料が供給された空気と混合されることで改質され、第1の反応室において供給される空気量と第2の反応室において供給される空気量との比は30:70から70:30の間に設定される。
【0003】
DE102010012945B4には、液体燃料および/または可燃物を蒸発させるための方法が開示されており、その方法では、液体燃料および/または可燃物は吸収性材料に適用され、酸素含有ガス混合物または酸素が空気供給によって導入され、酸素/燃料比が準化学量論的である。この方法を実行するために、a)中央における軸方向および径方向において空気透過性の空気供給部と、b)空気供給部の長さの少なくとも一部にわたって空気供給部の周りに同心で配置される触媒システムと、c)触媒システムの周りに同心で配置される緩衝帯域と、d)緩衝帯域の周りに同心で配置される燃料分配のための吸収性材料とを備え、少なくとも1つの気密封止要素が構成部品a)からd)の間に嵌め込まれる、装置が使用され得る。
【0004】
DE102015120106A1には、少なくとも1つの分配帯域と、少なくとも1つの酸化帯域と、少なくとも1つの変換帯域とを有するユニットを使用する、燃料の点火特性を調節するための方法が開示されている。この方法では、燃料は、分配構造を有する分配帯域において分配され、燃料のうちの少なくとも一部は、酸化帯域において、触媒支持体における少なくとも1つの触媒での少なくとも1つの酸化剤で酸化され、分配された燃料および/または別の供給された燃料の少なくとも一部は、変換帯域において熱および/または触媒で変換させられる。方法は、燃料の点火特性が、利用可能な燃料の完全な酸化のために必要とされる酸素に対する酸化剤に含まれる酸素のモル比、および/またはユニットにおける圧力、および/または滞留時間、および/または温度によって調節される。
【0005】
概して、それ自体知られている触媒蒸発器は、例えば、燃料と、例えば空気といった酸化剤とを均一に混合するための予備処理として使用され得る。同時に、窒素酸化物(NO
X)および煤排出物がエンジン内で低減されるように燃料特性が変更され得る。改質反応の反応生成物(水素(H
2)および一酸化炭素(CO))は、燃料特性を変えるのに特に効果的である。ディーゼル酸化触媒における水素および一酸化炭素といった成分のライトオフ温度は、ディーゼルのライトオフ温度よりはるかに低く、そのため、エンジンが低温始動させられるとき、排気システムは動作温度により素早く到達する。
【0006】
また、蒸発器が、排気ガス後処理システムを同時に加熱するために使用され得る。
【0007】
触媒蒸発方法による燃料特性の変化は、動作圧力を増加させることと、空気比を増加させることとによって達成され得る。動作圧力における増加は内燃エンジンの過給によって制限される。空気比の増加は触媒における温度の上昇をもたらし、そのため任意に増加させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/042246号
【特許文献2】独国特許発明第102010012945号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102015120106号明細書
【特許文献4】米国特許第7,386,977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、先行技術から進展して、本発明の目的は、特には燃料特性が元の燃料の特性に対して好ましい手法で変えられ得る、先行技術から知られている欠点を有さない触媒蒸発器を動作させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、請求項1による触媒蒸発器を動作させるための方法と、請求項10から13による方法の使用とによって達成される。本発明の有利なさらなる発展は従属クレームにおいて見出せる。
【0011】
本発明によれば、触媒蒸発器を動作させるための方法であって、燃料および酸化剤を触媒蒸発器(1)に供給するステップを含み、
(a)燃料はパルス添加として供給される、および/または、
(b)酸化剤はパルス添加として供給される、
方法が提案されている。
【0012】
ステップ(a)では、酸化剤の対応する供給がもたらされ、ステップ(b)では、燃料の対応する供給が連続的であってよく、具体的には、これらの添加はパルス添加として設計されない。
【0013】
そのため、本発明による方法では、燃料もしくは酸化剤のいずれかまたは両方が一緒に、時間において限定された部分であるパルスの形態で添加される。パルスは、同じ種類の規則正しい繰り返しの添加の連続を表し得る。本明細書では、パルス添加は、パルス添加が添加のない中断時間を含む点で、連続添加と異なる。燃料添加のためのパルスおよび/または酸化剤添加のためのパルスは、等しい長さまたは異なる長さのものであり得る。
【0014】
一部の実施形態では、燃料のパルス添加(a)は、第1の量の燃料を第1の期間の間に添加する、および/または、第2の量の燃料を第2の期間の間に添加する、および/または、燃料を第3の期間の間に添加しない。
【0015】
一部の実施形態では、添加は、
(i)第1の量の燃料を第1の期間の間に添加し、燃料を第3の期間の間に添加せず、第2の期間については要件のないこと、または、
(ii)第1の量の燃料を第1の期間の間に添加し、第2の量の燃料を第2の期間の間に添加し、燃料を第3の期間の間に添加しないこと、または、
(iii)第1の量の燃料を第1の期間の間に添加し、第2の量の燃料を第2の期間の間に添加し、第3の期間については要件のないこと
によって行われ得る。
【0016】
「第1」、「第2」、および「第3」の用語は、添加の順番を示唆しているのではなく、添加を区別するために使用されているだけである。「第1の量」および「第2の量」の用語は、これらの量が互いと異なることを示唆している。
【0017】
一部の実施形態では、燃料供給に関して、上記の第1の期間は約10msから約10sまでとでき、上記の第2の期間は約10msから約10sまでとでき、上記の第3の期間は約10msから約10sまでとできる。本発明の他の実施形態では、第1および/または第2および/または第3の期間は約1秒間と約5秒間との間から選択され得る。
【0018】
パルスは、例えば、パルスにおける燃料の量、および/または、パルスの継続時間、および/または、2つのパルスの間の時間(単位時間当たりのパルスの周波数に対応する)といったパラメータを用いて、触媒蒸発器の動作についてのそれぞれの具体的な要件に従って調節され得る。当業者は、蒸発器の動作についての特定の要件および最適な結果を得るために、燃料添加のパルスをどのように調節するかを簡単な実験によって決定できる。
【0019】
驚くべきことに、燃料をパルスで触媒蒸発器に添加することによって、触媒の最大温度を超えることなく空気比を増加させることができることが見出された。この方法では、燃料のパルス添加は、元の使用される燃料と比較して燃料特性を変えるのを助ける。とりわけ、燃料のパルス添加は、水素および/または一酸化炭素の割合が相当に増加させられるような方法で燃料特性を変える。同時に、パルス動作モードは、最大出力から最小出力へのより素早い切替を可能にする。
【0020】
本発明による方法で使用され得る触媒蒸発器は、燃料と、例えば空気といった酸化剤との均一な混合を予備処理として提供できる。触媒蒸発器は、本発明による方法で使用され得るように、排気ガス後処理の間の加熱のために、それ自体知られている手法で使用され得る。本発明による方法であれば、窒素酸化物(NO
X)および煤排出物がエンジン内で低減されるような方法で燃料特性が変更され得る。本発明によれば、改質反応の反応生成物(水素(H
2)および一酸化炭素(CO))の量における増加に向けた燃料特性の特に好ましく効果的な変化が達成される。さらに、本発明による方法では、蒸発器は、排気ガス後処理システムの同時の加熱のためにも有利に使用され得る。さらに、本発明による方法では、ディーゼル酸化触媒における水素および一酸化炭素といった成分のライトオフ温度は、ディーゼルのライトオフ温度よりはるかに低く、そのため、エンジンが低温始動させられるとき、排気システムは動作温度により素早く到達する。
【0021】
本発明による方法は、燃料油を燃焼させるガスバーナにとって、および、エンジンの内部および排気ガス後処理システムの両方において、自己点火内燃エンジンまたはディーゼルエンジンにとって、相当のコストおよび出力の利点を有する。また、本発明による方法は、火花点火を伴う内燃エンジンの場合にエンジンの内部で使用されるとき、相当のコストおよび出力の利点を有する。
【0022】
前述したように、燃料はパルス添加の形態で添加される。先行技術による触媒蒸発器を動作させるとき、燃料と酸化剤との両方が所定の量で連続的に添加され、つまり、添加される酸化剤および燃料の量が時間に対して一定のままである。本発明による方法では、あらかじめ設定された量の燃料が特定の時間にわたって添加され、燃料が添加されない期間、つまり、燃料添加が「ゼロ」の値に設定される期間が続くことが特に有利であることが証明されている。添加される燃料の量は、先行技術において先に使用されており、先行技術から知られている触媒蒸発器に添加される燃料の量の範囲にある。
【0023】
本発明による方法の代替(b)では、第1の量の酸化剤が第1の期間の間の酸化剤のパルス添加の間に添加され得る、および/または、第2の量の酸化剤が第2の期間の間に添加され得る、および、酸化剤が第3の時間の間に添加されなくてもよい。
【0024】
一部の実施形態では、添加は、
(i)第1の量の酸化剤が第1の期間の間に添加され、酸化剤が第3の期間の間に添加されず、第2の期間については要件のない方法で、または、
(ii)第1の量の酸化剤が第1の期間の間に添加され、第2の量の酸化剤が第2の期間の間に添加され、酸化剤が第3の期間の間に添加されない方法で、または、
(iii)第1の量の酸化剤が第1の期間の間に添加され、第2の量の酸化剤が第2の期間の間に添加され、第3の期間については要件のない方法で
行われ得る。
【0025】
「第1」、「第2」、および「第3」の用語は、添加の順番を示唆しているのではなく、添加を区別するために使用されているだけである。本明細書では、「第1の量」および「第2の量」の用語は、これらの量が互いと異なることを示唆している。
【0026】
一部の実施形態では、上記の第1の期間は、酸化剤の添加を検討している代替(b)では約10msから約10sまでとでき、上記の第2の期間は約10msから約10sまでとでき、さらなる期間は約10msから約10sまでとできる。他の実施形態では、上記の第1の期間は、酸化剤の添加を検討している代替(b)では約1sから約5sまでとでき、上記の第2の期間は約1sから約5sまでとでき、さらなる期間は約1sから約5sまでとできる。
【0027】
同じ利点は、燃料のパルス添加との関連で前述したような酸化剤のパルス添加で達成でき、そのため、この点における上記の説明が完全に参照される。
【0028】
先行技術からそれ自体知られている触媒蒸発器が、本発明による方法で使用され得る。当業者は、触媒蒸発器が原理的にどのように動作され得るかも知っている。
【0029】
設計の詳細および動作モードに関して完全に参照される特に好ましい触媒蒸発器がDE102015120106A1に記載されている。少なくとも1つの燃料の点火特性を設定するための装置は、
・少なくとも1つの燃料入口および少なくとも1つの酸化剤入口と、
・燃料のための少なくとも1つの分配構造で燃料を分配するための少なくとも1つの分配帯域と、
・少なくとも1つの触媒を伴う少なくとも1つの触媒支持体を収容する、燃料の少なくとも一部の酸化のための少なくとも1つの酸化帯域と、
・少なくとも一部の触媒、および/または燃料の熱変換のための少なくとも1つの変換帯域と、
・変更された点火特性を有する燃料のための少なくとも1つの出口と
を備え、
酸化剤入口、触媒支持体、および分配帯域は、酸化帯域において発生する熱が分配帯域および/または変換帯域へと流れるガスまたはガス混合物へと伝達され得るような方法で配置および設計される。
【0030】
一部の実施形態では、本発明による方法で使用される触媒蒸発器は、例えば支持体に適用され得る触媒を有し得る。触媒を伴う支持体は、中間空間が反応容器の内面と触媒の表面との間に形成されるような方法で反応容器へと導入され得る。
【0031】
前述した触媒蒸発器の動作モードは、例を用いて以下に記載されている。反応物の良好な混合物の形成は、多くの化学的過程の安定した効率的な動作にとって好ましい。具体的には、例えば燃焼といった酸化過程では、均一な混合は排気物を低減し、煤の形成を防止する。この目的のために、液体燃料は気相へと変換させられ得る。混合の利点は、様々な使用(バーナ、粒子フィルタ、改質装置)について証明されている。エンジンとの繋がりは特に重要である。目的は、蒸発器をエンジンの内部の使用に適応させること、および、エンジン試験スタンドにおいて窒素酸化物および煤排出物の低減を立証することである。
【0032】
触媒蒸発器を動作させるとき、例えば、液体燃料が触媒蒸発器の反応器の壁の内側に添加され、一方、空気が触媒側において添加される。燃料の僅かな部分が触媒において酸化し、発生した熱が燃料を完全に蒸発させるために使用される。熱は、高温の触媒表面から燃料膜の表面へと熱放射によって主に伝達される。燃料が送り込まれる反応器の壁は燃料自体より常に低温である。そのため、堆積物または付着物が形成されない。
【0033】
燃料は、その保存されているエネルギーが燃焼によって使用可能なエネルギーへと変換され得る化学物質である。この例は、内燃エンジンにおいて原動力へと変換される燃料である。一部の実施形態では、燃料は、ガソリン、ディーゼル、バイオオイル、熱分解油、バイオディーゼル、重油、アルコール、フィッシャートロプシュ燃料、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、オキシメチレンエーテル、エステル、アルデヒド、芳香族化合物、アミン、カルボン酸、アルカン、天然ガス、キャンプ用ガス、LPG、フレアガス、埋立地ガス、バイオガス、およびこれらの燃料のうちの少なくとも2つの混合物から選択され得る。具体的には、液体燃料は、本発明による方法で使用され得る。これらの燃料であれば、前述した利点が特に好ましい方法で達成される。
【0034】
一部の実施形態では、酸化剤は、酸素、または、具体的には空気もしくは残留酸素を伴う排気ガスといった、酸素を含む媒体を含み得る。したがって、前述した利点が特に好ましい方法で達成される。
【0035】
有利には、先にすでに説明したように、燃料特性は好ましい方法で変えられる。そのため、本発明による方法は、排気物が低減されるような方法で燃料特性を変えるために最良に適合させられる。さらに本発明による方法は、具体的には乗用車のディーゼルエンジンにおいて、内燃エンジンの排気ガス後処理システムにおけるライトオフ温度を低下させるために、蒸発器のために使用され得る。さらに、発明による方法は、吸蔵触媒のための還元剤を発生させるのに適する。これは、米国特許第7,386,977(B2)号に従って行われ得る。この特許公報では、COおよびH
2は、再生のためにメタンから発生される。本発明では、COおよびH
2は、米国特許第7,386,977(B2)号と類似する手法でディーゼルから発生され得る。
【0036】
本発明は、本発明の全体的な概念の制限なく、図面を用いて以下においてより詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】例として使用され得る触媒蒸発器の図である。
【
図2】
図1の触媒蒸発器の作用モードの原理を示している。
【
図3a】燃料がパルス手法で添加されている、本発明による触媒蒸発器の連続作用モードと様々なパルス動作モードとの比較を示す図である。
【
図3b】燃料がパルス手法で添加されている、本発明による触媒蒸発器の連続作用モードと様々なパルス動作モードとの比較を示す図である。
【
図3c】燃料がパルス手法で添加されている、本発明による触媒蒸発器の連続作用モードと様々なパルス動作モードとの比較を示す図である。
【
図3d】燃料がパルス手法で添加されている、本発明による触媒蒸発器の連続作用モードと様々なパルス動作モードとの比較を示す図である。
【
図3e】燃料がパルス手法で添加されている、本発明による触媒蒸発器の連続作用モードと様々なパルス動作モードとの比較を示す図である。
【
図4a】酸化剤の様々なパルス添加を示す図である。
【
図4b】酸化剤の様々なパルス添加を示す図である。
【
図4c】酸化剤の様々なパルス添加を示す図である。
【
図4d】酸化剤の様々なパルス添加を示す図である。
【
図5a】
図3aおよび
図3bにおける動作モードに従って得られる燃料組成を示す図である。
【
図5b】
図3aおよび
図3bにおける動作モードに従って得られる燃料組成を示す図である。
【
図5c】
図3aおよび
図3bにおける動作モードに従って得られる燃料組成を示す図である。
【
図5d】
図3aおよび
図3bにおける動作モードに従って得られる燃料組成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明による方法で使用され得る触媒蒸発器1を示している。触媒蒸発器は触媒2を有し、触媒2は金属網3に適用されている。触媒2および金属網3は、先行技術から知られている材料から作られ得る。触媒2を伴う金属網3は反応容器4に存在し得る。明確にするために、
図1は、反応容器4から引き出された金属網3を伴う触媒2を示している。金属網3を伴う触媒2が反応容器へと挿入される場合、中間空間が反応容器4の内面5と金属網3における触媒2の表面との間に形成される。
【0039】
図2は、
図1に示された触媒蒸発器の作用モードを概略的に示している。反応物の良好な混合物の形成は、多くの化学的過程の安定した効率的な動作にとって好ましい。具体的には、例えば燃焼といった酸化過程では、均一な混合は排気物を低減し、煤形成を防止する。触媒蒸発器の動作の間、液体燃料が気相へと変換される。混合の利点は、様々な用途(バーナ、粒子フィルタ、改質装置)について証明されている。エンジンとの繋がりは特に重要である。蒸発器は、内部のエンジンの使用に適応させることができ、窒素酸化物および煤排出物の低減がエンジン試験スタンドにおいて立証された。
【0040】
液体燃料が反応容器4の内面に添加され、一方、空気は触媒側に添加される。燃料の僅かな部分が触媒2において酸化し、この過程で発生した熱が燃料を完全に蒸発させるために使用される。熱は、触媒2の高温の表面から燃料膜の表面へと主に熱放射によって伝達さる。ここでは、燃料が適用される反応容器4の壁は、燃料自体より低温であり得る。したがって、堆積物または付着物が形成されない。
【0041】
図3aおよび
図3bは、添加された酸化剤(ここでは、空気)の量の曲線と燃料の量の曲線とを示している。
図3aに示された通常(つまり、連続)の動作モードでは、酸化剤および燃料は動作期間に対して一定の量で連続的に添加されている。それと対照的に(
図3b参照)、燃料の添加は、本発明による方法ではパルス添加として実行されている。他方で、酸化剤の添加はパルス添加として実行されておらず、先行技術から知られているように、連続的な添加の形態で実行されている。燃料のパルス添加の場合、燃料の添加を伴う期間(例では16.9g/min)に、燃料供給のない期間(0g/min)が続く。
図3bの例では、燃料供給のある期間および燃料供給のない期間は各々3秒間に設定されている。
【0042】
図3c〜
図3eは、燃料のパルス添加のさらなる実施形態を示している。
図3bでは、第1の量の燃料が第1の期間において添加され、より少ない第2の量の燃料が添加される第2の期間が直後に続く。これに、燃料が触媒蒸発器へと導入されない別の期間が続く。
【0043】
図3dは、2つの異なる量の燃料のパルス添加と、
図3cに示されているような燃料の添加のない期間とを、燃料の添加のない期間が各々の燃料添加の間にある状態で示している。
【0044】
図3eは、2つの異なる量の燃料のパルス添加を、燃料が添加されない期間のない状態で示している。
【0045】
図4a〜
図4dは、燃料の連続的な添加を伴う酸化剤の対応するパルス添加を示しており、それらの添加は
図3b〜
図3eに対応しており、そのため上記の説明が完全に参照され、それらの説明は結果に関して
図4a〜
図4dにも当てはまる。
【0046】
図5a〜
図5dは、
図3aに示された通常の動作(
図5aおよび
図5b)の間の燃料組成と、
図3bに示されている、本発明によるパルス動作(
図5cおよび
図5d)の間の燃料組成の変化とを比較している。燃料が本発明による方法では連続的に供給されないため、0.2より大きい空気比が触媒を過熱させることなく運用され得る。これらの大きな空気比は、一酸化炭素(CO)および水素(H
2)の割合を著しく増加させる。したがって、COの割合を3倍増加させ、さらにH
2の割合を9倍増加させることが可能であった。触媒蒸発器の動作モードを適応させることは、例えば車のエンジンにおいて、触媒蒸発器を動的な適用で使用させることができる。
【0047】
当然ながら、本発明は、図面で示した実施形態に限定されない。そのため、先の記載は、限定的として解釈されるべきではなく、説明のためとして解釈されるべきである。以下の特許請求の範囲は、述べられている特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に存在するような方法で理解されるものである。これはさらなる特徴の存在を排除しない。記載またはクレームが「第1」および「第2」の特徴を定める場合、この用語は、順位付けの順番を決定することなく、2つの同様の特徴の間で区別するために使用されている。
【符号の説明】
【0048】
1 触媒蒸発器
2 触媒
3 金属網
4 反応容器
5 内面
【国際調査報告】