(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-504875(P2021-504875A)
(43)【公表日】2021年2月15日
(54)【発明の名称】カソード材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20210118BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20210118BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20210118BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
C01B25/45 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-520276(P2020-520276)
(86)(22)【出願日】2018年11月27日
(85)【翻訳文提出日】2020年4月9日
(86)【国際出願番号】GB2018053415
(87)【国際公開番号】WO2019102226
(87)【国際公開日】20190531
(31)【優先権主張番号】1719637.9
(32)【優先日】2017年11月27日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・スティーブンス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・コプリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・クックソン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050DA09
5H050EA08
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
(57)【要約】
粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩材料は、1ppm以下の銅含有量で提供される。このような材料の製造方法も提供され、この方法は、2−アミノメチルピリジン官能基を含む吸着材を使用して、リチウム金属リン酸塩の形成に使用される鉄(II)前駆体から銅を除去することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式、
LixFe1−YMnYPO4
[式中、0.8≦x≦1.2及び0≦y≦0.9であり、前記Feの最大10原子%がドーパント金属で置換されてもよく、前記リン酸塩の最大10原子%が硫酸塩及び/又はケイ酸塩で置換されてもよい]を有し、1ppm以下の銅含有量を有する、粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩。
【請求項2】
0.1ppm以下、好ましくは0.01ppm以下の銅含有量を有する、請求項1に記載の粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩。
【請求項3】
ニッケル含有量が10ppm以下、好ましくは5ppm以下である、請求項1又は2に記載の粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩。
【請求項4】
前記ドーパント金属が、Co、Ni、Al、Mg、Sn、Pb、Nb、B、Cr、Mo、Ru、V、Ga、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Zr、Cd、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩を調製するためのプロセスであって、
(i)鉄(II)塩の酸性溶液を吸着材と接触させて、鉄(II)前駆体溶液を形成する工程であって、前記吸着材が2−アミノメチルピリジン官能基を含む、鉄(II)前駆体溶液を形成する工程と、
(ii)前記鉄(II)前駆体溶液を、少なくとも1つのリチウム源、少なくとも1つのリン酸塩源、所望により少なくとも1つのマンガン源、所望により少なくとも1つのドーパント金属源、所望により少なくとも1つのケイ酸塩源、及び所望により少なくとも1つの硫酸塩源と組み合わせて、前駆体混合物を形成する工程と、
(iii)水熱条件下で前記前駆体混合物から粒子状リチウム金属リン酸塩を得る工程と、
(iv)前記粒子状リチウム金属リン酸塩を炭素源と接触させる工程と、
(v)前記粒子状リチウム金属リン酸塩及び炭素源を加熱して、前記粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩を形成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項6】
前記鉄(II)塩が、硫酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、又は塩化鉄(II)から選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記鉄(II)塩の酸性溶液が、少なくとも5重量%の鉄、好ましくは少なくとも6重量%の鉄、より好ましくは少なくとも8重量%の鉄を含む、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記吸着材が、2−アミノメチルピリジン官能基で変性された架橋ポリスチレン樹脂を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記吸着材が、2−アミノメチルピリジン官能基で変性されたシリコンポリマー複合体を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記2−アミノメチルピリジン官能基が、ビス(2−ピリジルメチル)アミン官能基である、請求項5〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記鉄(II)前駆体溶液が、0.1ppm未満、好ましくは0.01ppm未満の銅含有量を有する、請求項5〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項5〜11のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができる、粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩。
【請求項13】
請求項1〜4又は請求項12のいずれか一項に記載の粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩を含む、二次リチウムイオン電池用電極。
【請求項14】
請求項13に記載の電極を備える、二次リチウムイオン電池。
【請求項15】
二次リチウムイオン電池用電極の調製のための、請求項1〜4又は請求項12のいずれか一項に記載の粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低銅含有量の炭素被覆リチウム金属リン酸塩材料、かかる材料の製造方法、及び二次リチウムイオン電池用電極の調製のための当該材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸鉄リチウム(LFP)及びリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)などのリチウム金属リン酸塩材料は、二次リチウムイオン電池におけるカソード材料として広く使用されていることが分かっている。このことは、高い電力密度及び良好な安全性プロファイルなど、このような材料を組み込んだ電池の有利な特性による。このような電池で使用されるリチウム金属リン酸塩材料は、主に電気伝導性炭素で被覆された粒子の形態であり、典型的には、溶融プロセス、水熱プロセス、又は固体プロセスによって製造される。
【0003】
このようなカソード材料中に低濃度の不純物が存在することで、電池寿命が短縮される可能性があると推測されている。電気化学的性能が改善されたリチウム金属リン酸塩材料の調製のための改良されたプロセスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
驚くべきことに、2−アミノメチルピリジン官能基を含む特定の吸着材を使用して、リチウム金属リン酸塩材料の調製に概ね使用される鉄前駆体から微量の銅を除去できることが見出された。このような方法の使用により、非常に低い銅含有量のリチウム金属リン酸塩材料の形成が可能になることも見出された。このような材料は、繰り返される充放電サイクルにわたって改善された電気化学的性能を提供することが可能であるため、電池寿命の延長をもたらす。
【0005】
したがって、本発明の第1の態様では、式、Li
xFe
1−YMn
YPO
4[式中、0.8≦x≦1.2及び0≦y≦0.9であり、Feの最大10原子%がドーパント金属で置換されてもよく、リン酸塩の最大10原子%が硫酸塩及び/又はケイ酸塩で置換されてもよい]を有し、1ppm以下の銅含有量を有する、粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩が提供される。好ましくは、炭素被覆リチウム金属リン酸塩は、0.1ppm以下、より好ましくは0.01ppm以下の銅含有量を有する。このような材料は、本明細書に記載されるプロセスによって得ることができる。
【0006】
本発明の第2の態様では、粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩を、1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下、より好ましくは0.01ppm以下の銅含有量で調製するためのプロセスが提供され、該プロセスは、(i)鉄(II)塩の酸性溶液を吸着材と接触させて、鉄(II)前駆体溶液を形成する工程であって、吸着材が2−アミノメチルピリジン官能基を含む、鉄(II)前駆体溶液を形成する工程と、(ii)鉄(II)前駆体溶液を、少なくとも1つのリチウム源、少なくとも1つのリン酸塩源、所望により少なくとも1つのマンガン源、所望により少なくとも1つのドーパント金属源、所望により少なくとも1つのケイ酸塩源、及び所望により少なくとも1つの硫酸塩源と組み合わせて、前駆体混合物を形成する工程と、(iii)水熱条件下で前駆体混合物から粒子状リチウム金属リン酸塩を得る工程と、(iv)粒子状リチウム金属リン酸塩を炭素源と接触させる工程と、(v)粒子状リチウム金属リン酸塩及び炭素源を加熱して、粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩を形成する工程と、を含む。
【0007】
驚くべきことに、初期酸性溶液中に高い鉄(II)濃度が存在する場合でも、吸着材を使用して微量の銅を除去できることが見出された。これにより、大規模生産のための手法が使用可能となる。典型的には、鉄(II)塩の酸性溶液は、少なくとも5重量%の鉄、好ましくは少なくとも6重量%の鉄、より好ましくは少なくとも8重量%の鉄を含む。
【0008】
典型的には、吸着材は、例えば、2−アミノメチルピリジン官能基で変性された架橋ポリスチレン樹脂、又は2−アミノメチルピリジン官能基で変性されたシリコンポリマー複合体を含んでもよい。官能基は、好ましくはビス(2−ピリジルメチル)アミンを含んでもよい。
【0009】
リチウム金属リン酸塩材料は、二次リチウムイオン電池用電極の調製に特に有用である。したがって、本発明の更なる態様では、本明細書に記載される粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩を含む二次リチウムイオン電池用電極、及びそのような電極を備える二次リチウムイオン電池が提供される。
【0010】
発明の詳細な説明
ここで、本発明の好ましい及び/又は任意選択的な特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の好ましい及び/又は任意選択的な特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせのいずれかで、組み合わせることができる。
【0011】
特定の吸着材を使用して、リチウム金属リン酸塩材料の製造に使用される前駆体である鉄(II)塩から非常に低濃度の銅を除去できることが見出された。鉄(II)塩は、多くの産業用途において高い有用性があり、容易に入手可能である。例えば、硫酸鉄(II)は、Sigma Aldrichから入手可能な七水和物FeSO
4.7H
2Oなどの水和物として市販されている。市販の硫酸鉄(II)源は、典型的には、5ppm超の濃度で銅を含有する。
【0012】
本明細書に記載されるプロセスは、鉄(II)塩の酸性溶液を調製し、酸性溶液を吸着材と接触させて、鉄(II)前駆体溶液を形成する第1工程を含み、吸着材は2−アミノメチルピリジン官能基を含む。
【0013】
典型的には、鉄(II)塩は、硫酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、又はリン酸鉄(II)(Fe
3(PO
4)
2)から選択される。好ましくは、鉄(II)塩は、硫酸鉄(II)七水和物などの硫酸鉄(II)である。
【0014】
鉄(II)塩の酸性溶液は水性であり、典型的には、1〜3の範囲のpH、好ましくは1〜2の範囲のpHを有する。酸性溶液のpHは、酸の添加、例えば硫酸の添加により、所望のpH値を達成するために調整され得る。
【0015】
鉄(II)塩の酸性溶液は、典型的には、大規模生産に好適な鉄含有量で調製される。典型的には、酸性溶液中の鉄含有量は、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも6重量%、又は少なくとも7重量%、更により好ましくは少なくとも8重量%である。酸性溶液の最大鉄含有量は、本プロセスにおいて特に制限されないが、例えば、約12重量%未満であってもよい。
【0016】
鉄(II)塩の酸性溶液を、2−アミノメチルピリジン基を含む吸着材と接触させて、鉄(II)前駆体溶液を形成する。当業者であれば、2−アミノメチルピリジン基は、典型的には、アミノ基を介して支持構造に連結されており、吸着材は、2−アミノメチルピリジン(A)及び/又はビス−(2−ピリジルメチル)アミン(B)基(それぞれ、アミノ基を介して連結されている)を有する材料を含むことを理解するであろう:
【0018】
吸着材は、2−アミノメチルピリジン及び/又はビス−(2−ピリジルメチル)アミン基などの2−アミノメチルピリジン官能基で変性された架橋ポリスチレン樹脂を含んでもよい。このような樹脂は市販されており、例えば、Lewatit(登録商標)MonoPlus TP220及びDOWEX(登録商標)M4195(Lenntech BVから入手可能)である。
【0019】
吸着材はまた、2−アミノメチルピリジン官能基で変性されたシリコンポリマー複合体、例えば、CuWRAMとして商業的に呼ばれることがあるシリカ−ポリ(アリルアミン)−アミノメチルピリジンを含んでもよい。このような材料の調製は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0000523(A1)号に記載されている。
【0020】
鉄(II)塩の酸性溶液は、典型的には、鉄(II)塩の溶液を吸着材のベッドに通すことによって吸着材と接触させる。
【0021】
高濃度の鉄(II)が存在する場合でも、吸着材との接触によって、鉄(II)材料中において微量でも銅の濃度は低減できることが見出された。典型的には、吸着材との接触後の鉄(II)前駆体溶液は、0.1ppm未満、好ましくは0.075ppm未満、0.05ppm未満、又は0.025ppm未満、又は更により好ましくは0.01ppm未満の銅含有量を有する。鉄(II)前駆体溶液中の最小銅含有量は特に限定されないが、例えば0.005ppm以上であってもよい。
【0022】
本明細書に記載のプロセスによって形成される鉄(II)前駆体溶液の銅含有量は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を使用して、例えば、Agilent 7700 ICP−MSを使用して測定することができる。
【0023】
鉄(II)前駆体溶液を使用して、例えば、国際公開第2005051840(A1)号に記載されるように、例えば水熱プロセスを使用して、式Li
xFe
1−YMn
YPO
4のリチウム金属リン酸塩材料を製造することができる。
【0024】
このような方法は、鉄(II)前駆体溶液を、少なくとも1つのリチウム源、少なくとも1つのリン酸塩源、所望により少なくとも1つのマンガン源、所望により少なくとも1つのドーパント金属源、所望により少なくとも1つのケイ酸塩源、所望により少なくとも1つの硫酸塩源と組み合わせること、及び水熱条件下で粒子状リチウム金属リン酸塩を得ること、を伴う。
【0025】
好適なリチウム源としては、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、リン酸水素リチウム(Li
2HPO
4)、水酸化リチウム(LiOH)、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(Lil)、リン酸リチウム(Li
2PO
4)、又はこれらの混合物が挙げられる。水酸化リチウムが好ましい場合がある。
【0026】
好適なリン酸塩源としては、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸水素塩若しくはリン酸二水素塩、例えばリン酸アンモニウム若しくはリン酸二水素アンモニウム、リン酸リチウム若しくはリン酸鉄、又はこれらの任意の所望の混合物が挙げられる。リン酸が特に好ましい。
【0027】
好適なマンガン源としては、該当する場合、MnO、MnO
2、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、Mn(III)アセチルアセトネート、Mn(II)アセチルアセトネート、Mn(II)塩化物、MnCO
3、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸マンガン、マンガンノセン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
リン酸塩の最大10原子%が硫酸塩で置換された化合物は、例えば、米国特許出願公開第2015/0232337(A1)号(Clariant International Ltd)に記載されているように、当業者に既知の方法を用いて調製され得る。そのような場合、少なくとも1つの硫酸塩源を前駆体混合物に添加してもよく、例えば、追加のリチウム源としてLi
2SO
4を前駆体混合物に添加することが好ましい場合がある。
【0029】
Feの最大10原子%をドーパント金属で置換されてもよい場合、ドーパント金属源、例えば、選択された金属又は複数の金属のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、カルボキシレートなどが、前駆体混合物に含めるのに好適であることが、当業者には明らかであろう。
【0030】
リン酸塩の最大10原子%がケイ酸塩で置換された化合物は、当業者に既知の方法を用いて調製され得る。そのような場合、少なくとも1つのケイ酸塩源は、前駆体混合物に、例えば、オルガノシリコン、シリコンアルコキシド、テトラエチルオルトシリケート、Li
2SiO
4、及び/又はLi
4SiO
4から選択されるケイ酸塩源を添加してもよい。
【0031】
本発明の文脈において、水熱条件下で前駆体混合物から粒子状リチウム金属リン酸塩を得ること、という用語は、室温を超える温度及び1バールを超える蒸気圧での前駆体混合物の処理として理解されるべきである。水熱処理は、例えば、国際公開第2005/051840号に記載されているように、当業者に既知の方法で実施することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。水熱処理は、100〜250℃、特に100〜180℃の温度、及び1バール〜40バールの蒸気圧、特に1バール〜10バールの蒸気圧で実施することが好ましい。前駆体混合物は、典型的には、密閉容器又は耐圧容器内で反応する。反応は、好ましくは、不活性又は保護ガス雰囲気中で行われる。好適な不活性ガスの例としては、窒素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、又はこれらの混合物が挙げられる。水熱処理は、例えば、0.5〜15時間、特に6〜11時間実施することができる。全く非限定的な例として、以下の特定の条件を選択することができる:50℃(前駆体混合物の温度)から160℃までの1.5時間の加熱時間、160℃での10時間の水熱処理、160℃から30℃までの3時間の冷却。
【0032】
試薬と接触する成分が銅を含まないように配置された器具を使用して、例えば、銅及び/又は真鍮の取り付け具を備えた器具を避けて、前駆体混合物を調製し、水熱反応を実行することは有利であり得る。
【0033】
リチウム金属リン酸塩は、炭素被覆されている。炭素被覆を形成するために、水熱プロセスによって形成される粒子状リチウム金属リン酸塩は、典型的には、加熱又は焼成工程の前に炭素源と接触する。
【0034】
炭素源の種類は、本発明において特に限定されない。炭素源は、典型的には、焼成工程にさらされると分解して炭素質残留物になる炭素含有化合物である。例えば、炭素源は、デンプン、マルトデキストリン、ゼラチン、ポリオール、糖(マンノース、フルクトース、スクロース、ラクトース、グルコース、ガラクトースなど)、並びにポリアクリレート、ポリビニルアセテート(PVA)及びポリビニルブチレート(PVB)などの炭素系ポリマーのうちの1つ以上であってもよい。あるいは、炭素源は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及び炭素繊維(気相成長炭素繊維、VGCFなど)のうちの1つ以上などの単体炭素であってもよい。ラクトースが特に好ましい場合がある。
【0035】
添加される炭素源の量は、本発明において特に限定されない。例えば、添加される炭素源の量は、炭素含有量が1〜5重量%、例えば2〜3重量%の炭素被覆リチウム金属リン酸塩が得られるように選択することができる。添加される炭素源の量は、炭素前駆体の性質及びその炭素化収率に応じて、粒子状リチウム金属リン酸塩の重量に基づいて、3〜15重量%、例えば3〜7重量%の範囲であり得る。
【0036】
当業者であれば、炭素源が、多数の手段によって粒子状リチウム金属リン酸塩と組み合わされてもよいことを理解するであろう。例えば、粒子状リチウム金属リン酸塩は、高エネルギーミル粉砕工程などの炭素源の存在下でミル粉砕工程に供されてもよい。代替の1つとして、リチウム金属リン酸塩は、水などの溶媒の存在下で炭素源と混合され、次いで混合物が噴霧乾燥されてもよい。場合によっては、水熱処理の前に、炭素源を前駆体混合物に添加することが好ましい場合があることも、当業者には理解されよう。このような場合、プロセスの工程(iv)はもはや必要とされないことが理解されるであろう。
【0037】
加熱工程(v)では、粒子状リチウム金属リン酸塩及び炭素源を加熱して、粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩を提供する。加熱工程(v)は、2つの役割を果たす。第1に、炭素源が熱分解され、リチウム金属リン酸塩粒子上に伝導性炭素被覆を形成する。第2に、リチウム金属リン酸塩を所望のオリビン構造に結晶化させる。典型的には、加熱は、不活性雰囲気、例えばアルゴンなどの不活性ガス中で実施される。あるいは、還元雰囲気中で実施されてもよい。これは、典型的には、550℃〜800℃、例えば600℃〜750℃、又は600℃若しくは650℃〜700℃の範囲の温度で実施される。680℃が特に好適である。典型的には、焼成は3〜24時間行われる。加熱時間は、製造の規模に依存する(すなわち、より多くの量が調製される場合、より長い加熱時間が好ましい場合がある)。商業規模では、例えば8〜15時間が好適であり得る。
【0038】
記載されたプロセスは、式Li
xFe
1−YMn
YPO
4を有する粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩の調製に有用であり、式中、0.8≦x≦1.2及び0≦y≦0.9であり、Feの最大10原子%がドーパント金属で置換されてもよく、リン酸塩の最大10原子%が硫酸塩及び/又はケイ酸塩で置換されてもよく、炭素被覆リチウム金属リン酸塩は、1ppm以下の銅含有量を有する。
【0039】
リチウムは、化学量論量よりわずかに少ないか、又は多く存在する場合がある。xの値は、0.8以上である。これは、0.9以上、又は0.95以上の場合がある。xの値は、1.2以下である。これは、1.1以下、又は1.05以下の場合がある。xの値は、1、又は約1の場合がある。
【0040】
yの値は0以上である。これは、0.2以上、又は0.5以上、又は0.65以上の場合がある。yの値は、0.9以下である。これは、0.85以下の場合がある。本発明の好ましい実施形態では、0.5≦y≦0.9、又はより好ましくは0.65≦y≦0.9である。
【0041】
リチウム金属リン酸塩は、ドープされていてもドープされていなくてもよい。したがって、用語「あるリチウム金属リン酸塩、又はリチウム金属リン酸塩(a or the lithium metal phosphate)」は、本発明の範囲内で、ドープされた又はドープされていないリチウム金属リン酸塩の両方を意味する。Feの最大10原子%は、ドーパント金属、例えば最大5原子%で置換されてもよい。ドーパント金属は、Co、Ni、Al、Mg、Sn、Pb、Nb、B、Cr、Mo、Ru、V、Ga、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Zr、Cd、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、ドーパント金属は、Al、Mg、Ca、Co、Zr、Zn、Cr、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。より好ましくは、ドーパント金属は、Mg又はAlである。リチウム金属リン酸塩がドープされる場合、典型的には、水熱処理の前に、少なくとも1つのドーパント金属源を、前駆体混合物に添加することができる。リチウム金属リン酸塩がドープされていないことが好ましい場合がある。
【0042】
リチウム金属リン酸塩のリン酸塩の最大10原子%は、硫酸塩及び/又はケイ酸塩で置換されてもよい。このような場合、水熱処理の前に、少なくとも1つの硫酸塩及び/又はケイ酸塩源が前駆体混合物に添加される。リン酸塩は硫酸塩及び/又はケイ酸塩で置換されていないことが好ましい場合がある。
【0043】
式Li
xFe
1−YMn
YPO
4[式中、0.8≦x≦1.2及び0≦y≦0.9]を有する粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩がドープされておらず、硫酸塩及び/又はケイ酸塩で置換されたリン酸塩を有さないことが好ましい場合がある。そのような場合の1つでは、y=0であり、式LiFePO
4を有し、これが特に好ましい場合がある。
【0044】
リチウム金属リン酸塩の化学量論は、典型的には、調製反応の収率及び出発原料の純度を考慮して、リチウム金属リン酸塩が調製される出発原料を参照して計算される。
【0045】
炭素被覆リチウム金属リン酸塩の銅含有量は、1ppm以下である。好ましくは、炭素被覆リチウム金属リン酸塩は、0.75ppm未満、例えば0.5ppm未満、0.25ppm未満、又はより好ましくは0.1ppm未満、0.075ppm未満、0.05ppm未満、0.025ppm未満、又は更により好ましくは0.01ppm未満の銅含有量を有する。炭素被覆リチウム金属リン酸塩中の最小銅含有量は特に限定されないが、例えば、0.005ppm以上であってもよい。
【0046】
炭素被覆リチウム金属リン酸塩の銅含有量は、例えばAgilent 5110 SVDV ICP−OESを使用して、例えば、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−OES)によって測定することができる。
【0047】
炭素被覆リチウム金属リン酸塩のニッケル含有量もまた、本発明のプロセスによって有益に低減され得る。本発明の一実施形態では、炭素被覆リチウム金属リン酸塩は、10ppm未満、好ましくは5ppm未満のニッケル含有量を有する。炭素被覆リチウム金属リン酸塩中の最小ニッケル含有量は、特に限定されないが、例えば、1ppm以上であってもよい。炭素被覆リチウム金属リン酸塩のニッケル含有量は、例えば、Agilent 5110 SVDV ICP−OESを使用して、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−OES)によって測定することもできる。
【0048】
形成された炭素被覆リチウム金属リン酸塩は、典型的には、XRDデータのRietveld分析によって決定された場合、少なくとも50nmの結晶子サイズを有する。結晶子サイズの上限は特に限定されないが、500nm以下、又は200nm以下であってもよい。観察された結晶子サイズが大きいほど、結晶化度が高く、結晶欠陥が少ないことを示し、このことにより、リチウム金属リン酸塩材料内のリチウムイオン伝導を強化し、ひいては電気化学的性能を強化することができる。
【0049】
本発明のプロセスは、炭素被覆リチウム金属リン酸塩を含む電極(典型的にはカソード)を形成する工程を更に含んでもよい。典型的には、これは、粒子状炭素被覆リチウム金属リン酸塩のスラリーを形成し、スラリーを集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面に塗布し、所望により加工(例えば、カレンダー加工)して電極の密度を高めることによって実施される。スラリーは、溶媒、結合剤、及び追加の炭素材料のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0050】
本発明のプロセスは、炭素被覆リチウム金属リン酸塩を含む、電極を含む電池又は電気化学セルを構築すること、を更に含んでもよい。電池又はセルは、典型的には、アノード及び電解質を更に含む。電池又はセルは、典型的には、二次(再充電式)リチウムイオン電池であってもよい。
【0051】
ここで、本発明の理解を助けるために提供され、その範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照し、本発明を説明する。
【実施例】
【0052】
分析方法
硫酸鉄(II)溶液の銅含有量を、以下の方法を用いてICP−MSにより試験した。
【0053】
ICP−MS分析−硫酸鉄溶液を1000倍、2度繰り返して、1%HClに希釈し、Agilent 7700 ICP−MSを使用して、0ppb、0.1ppb、0.5ppb、及び5ppbの較正標準に対して銅を分析した。較正ブランク及び標準は、1%HClに合わせたマトリックスである。
【0054】
リン酸鉄リチウム材料の銅含有量を、以下の方法を用いてICP−OESにより試験した。
ICP−OES分析−0.2gの各リン酸鉄リチウム材料を、Anton Paar Microwave反応システム内で、2度繰り返して10mlの王水にて分解した。マイクロ波容器内に汚染がないことを徹底するために、10mLの王水のみを含有するブランクランを最初にマイクロ波に通してから廃棄した。
【0055】
次いで、得られた溶液を、イットリウムを含むクラスAメスフラスコで最大100mLにした。
【0056】
これらの溶液を、Agilent 5110 SVDV ICP−OESで、内部標準としてイットリウムを使用して、0ppm、0.1ppm、0.5ppmの較正標準に対する銅の軸モードで実行した。較正ブランク及び標準は、10%の王水、並びにリチウム、鉄及びリンで、サンプルと同じ濃度に合わせたマトリックスである。
【0057】
ICP−OES分析から得られた値を使用して、リン酸鉄リチウムサンプル中における銅(及び分析された各元素)のppm単位での量を計算した。
【0058】
モデル溶液から銅を除去する試験
硫酸鉄(II)七水和物(754g、Sigma Aldrich purissグレード)を脱イオン水(700ml)に溶解し、1.0M硫酸(82mL)を添加することにより、溶液を作った。溶液はpH1.1であった。溶液をアルゴンで1分間パージした後、キャップし、ボトルを開ける必要がある場合又はサンプリング後に、全ての溶液を再パージした。
【0059】
溶液を3部に分類した:
溶液A:上記で作製したとおり。
【0060】
溶液B:硫酸銅溶液(Fluka、purumグレード)をスパイクして、20ppmの銅含有量を得たもの。
【0061】
溶液C:硫酸銅溶液(Fluka、purumグレード)をスパイクして、100ppmの銅含有量を得たもの。
【0062】
溶液をICP−MSにより分析し、銅濃度及び鉄濃度を求めた(表1)。
【0063】
【表1】
【0064】
9.4mLのカラムに、樹脂(i)乾燥条件下、ピコリルアミン(CuWram)で変性したシリカ−ポリアミン複合樹脂(5.13g乾燥質量負荷)、又は(ii)Dowex(登録商標)M4195遊離塩基形態の硫酸塩;スラリー(3.18g乾燥質量負荷)としてジ−2(ビスピコリルアミン)で変性されたマクロ多孔性架橋スチレン樹脂を充填した。流量は、蠕動ポンプを使用して1時間あたり6ベッドボリューム(BV)(0.94mL/min)に維持し、カラムの出口をポリプロピレンボトルに集めた。次に、両方の樹脂に以下の手順を使用した。
【0065】
1.脱イオン水を使用してポンプを較正する。
2.12ベッドボリューム(BV)の20%硫酸溶液で樹脂をすすぐ。
3.硫酸を使用してpH1.1に調整した6BVの脱イオン水で洗浄する。
4.6BVの2つの部で収集された12BVの溶液Aを通す。
5.6BVの2つの部で収集された12BVの溶液Bを通す。
6.6BVの2つの部で収集された12BVの溶液Cを通す。
【0066】
サンプルを収集し、ICP−MSによる分析にかけた(表2、3):
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
CuWram樹脂を充填したカラムでは、溶液A(0.22ppm Cu)のサンプルは、出口において検出可能な銅(<10ppb)を示さず、入口溶液の銅濃度が、溶液B及びCでそれぞれ20及び100ppmに増加すると、その後に出口で銅が検出可能になった。
【0070】
Dow材料M4195は、銅を非常に効率的に除去した。この場合、3つの溶液を流して、入口で銅を0.22から100ppmまで増加させるにつれ、出口では銅が検出可能ではなくなった(<10ppb)。CuWRAMの容量は、実験の低pHでは低くなったが、溶液Aから銅を効率的に除去した。
【0071】
硫酸鉄(II)からの銅の除去の代替樹脂との比較
Dowex(登録商標)M4195遊離塩基形態の硫酸塩;ジ−2(ビスピコリルアミン)で変性されたマクロ多孔性架橋スチレン樹脂。
Lewitat(登録商標)TP207;イミノジアセテートで変性されたマクロ多孔性架橋スチレン樹脂。
【0072】
硫酸鉄(II)七水和物(417g)を脱イオン水(1.67L)に溶解することにより、硫酸鉄(II)の溶液を調製した。溶液のpHは2.1であった。溶液を0.2μmのナイロンフィルタ膜で濾過し、アルゴンで10分間パージした後、キャップして、ボトルを開ける必要がある場合は、全ての溶液を再度パージした。濾過後及びカラムに通した後に、作製した溶液のサンプルを採取した。
【0073】
9.4mLのカラムに、(i)Dowex(登録商標)M4195遊離塩基形態の硫酸塩;スラリーとしてジ−2(ビスピコリルアミン)で変性されたマクロ多孔性架橋スチレン樹脂(乾燥質量負荷3.20g)、又は(ii)Lewitat(登録商標)TP207;スラリーとしてイミノジアセテートで変性されたマクロ多孔性架橋スチレン樹脂(乾燥質量3.25g)を充填した。流量は、蠕動ポンプを使用して1時間あたり9ベッドボリューム(BV)(1.41mL/min)に維持し、カラムの出口をガラスボトルに収集した。次に、両方の樹脂に以下の手順を使用した。
【0074】
1.脱イオン水を用いてポンプを較正する。
2.6BVの20%硫酸溶液(>95%、Fisher分析グレード)で樹脂をすすぐ。
3.6BVの脱イオン水で洗浄する。
4.廃棄された3BVの溶液を通して、カラムから水を洗い流す。
5.162BV(1.52L)でベッドを通してポンプ供給し、収集する。
【0075】
サンプルを収集し、ICP−MSによる分析にかけた(表4)。サンプルをArでパージした後、ボトルをキャップした。
【0076】
【表4】
【0077】
以下の結果を示す:
ジ−(2−ピコリルアミン)樹脂により、銅濃度は0.45ppmからICP−MSの検出限界(10ppb)未満まで低下し、ニッケルは6.9から1.0ppmまで低下した。
【0078】
イミノジアセテート樹脂により、銅は0.45ppmから0.13ppmまで低下し、ニッケル含有量にはほとんど影響がなかった。
【0079】
LiFePO
4の調製(FeSO
4の前処理なしの比較例)
この調製で使用される機器は、銅又は真鍮の取り付け具を有さなかった。
【0080】
蒸留水中のFeSO
4.7H
20(Voest Alp.,16.26kg)、LiOH.H
20(SQM、7.05kg)及びH
3PO
4(Prayron、75.7%、7.30kg)の混合物を、160℃で10時間、水熱処理した。得られた沈殿物を濾過し、濾過ケーキを水で洗浄した。得られた固体をラクトース(10.5重量%)及び水と混合し、次いで混合物を噴霧乾燥させた(Buechi lab噴霧乾燥機)。噴霧乾燥した材料を、窒素雰囲気の実験室炉で、750℃で3時間焼成した。次いで、得られた炭素被覆リン酸鉄リチウムをミル粉砕した(Fritschミル、0.08mmふるい)。
【0081】
LiFePO
4をICP−OESにより分析して、Cu、Ni、及びZnの量を定量化した(表5)。
【0082】
【表5】
【0083】
前処理済みFeSO
4でのLiFePO
4の調製
この調製で使用した機器は、銅又は真鍮の取り付け具を有さなかった。
【0084】
0.58Lのカラム(内径50mm)に、Dow M4195樹脂(0.35kg、50%乾燥含有量)をスラリー充填し、調整可能な末端部を使用して、空隙を残さずに樹脂を定位置に保持した(概算樹脂体積=0.54L)。樹脂を20%硫酸(3L)で洗浄し、次いで希硫酸溶液(pH2.0、3L)ですすいだ。
【0085】
FeSO
4溶液を1μmのソックフィルタを通して6時間にわたって再循環させた。次いで、蠕動ポンプを使用して、3kg/hの流量で、FeSO
4溶液(55kg)をカラムに通した。FeSO
4溶液の希釈を避けるために、最初の3kgを廃棄した。
【0086】
蒸留水中のFeSO
4溶液(前処理済み、Fe6.1重量%、51.3kg)、LiOH.H
2O(SQM、7.125kg)及びH
3PO
4(Prayron、75.7%、7.38kg)の混合物を、160℃で10時間、水熱処理した。得られた沈殿物を濾過し、濾過ケーキを水で洗浄した。得られた固体をラクトース(10.5重量%)及び水と混合し、次いで混合物を噴霧乾燥させた(Buechi lab噴霧乾燥機)。噴霧乾燥した材料を、窒素雰囲気の実験室炉で、750℃で3時間焼成した。次いで、得られた炭素被覆リン酸鉄リチウムをミル粉砕した(Fritschミル、0.08mmふるい)。得られたLiFePO
4は、XRDによって結晶性であることが示され、2.4重量%の炭素(CHN分析による)を含有し、Mastersizer 3000(Malvern)を用いたレーザー回折によって0.52μmのD
50を有した。
【0087】
LiFePO
4をICP−OESにより分析して、Cu、Ni及びZnの量を定量化した(表6)。
【0088】
【表6】
【0089】
前処理済みの硫酸鉄溶液から調製したLiFePO
4は、非常に低い濃度の銅(<1ppm)を示した。
【国際調査報告】