特表2021-505281(P2021-505281A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-505281放射線治療の計画または管理の電子モデリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-505281(P2021-505281A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】放射線治療の計画または管理の電子モデリング
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210122BHJP
【FI】
   A61N5/10 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2020-531460(P2020-531460)
(86)(22)【出願日】2018年12月5日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月22日
(86)【国際出願番号】US2018064095
(87)【国際公開番号】WO2019113228
(87)【国際公開日】20190613
(31)【優先権主張番号】15/836,474
(32)【優先日】2017年12月8日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517150065
【氏名又は名称】エレクタ、インク.
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087479
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 好人
(72)【発明者】
【氏名】ヒッソイニー サミ
(72)【発明者】
【氏名】モロー マイケル
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AN01
(57)【要約】
放射線治療の計画と管理は、組織内の光生成電子をシミュレーションするモンテカルロコンピュータシミュレーションツールを含むことができる。シミュレーションでは、組織ボクセルを出て空気ボクセルに入った電子が評価されて、空気ボクセル内のらせん状の軌道に沿って回転している電子を特定することができる。詳細な電子輸送モデルを用いて、少なくとも1つの完全ならせん状の円周または他の指定された距離を通過した後、より単純な線形弾道運動モデルを確立することができる。これにより、組織ボクセルに再突入するらせん状電子を正確に考慮しながら、シミュレーションが高速化される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された磁場中の対象における放射線の線量をモデリングする装置に実装された方法であって、
モデリングされた線量の一部はリターン電子効果を含み、モデリングすることは、コンピュータシミュレーションされた電子が、シミュレーションされた印加された磁場により誘導されモデリングされたローレンツ力により領域から出て戻ることを含み、
前記方法は、
高密度のボクセルと低密度のボクセルとを含む保存された画像データを受け取るステップと、
前記保存された画像データにアクセスするコンピュータプロセッサ回路を用いて、高密度のボクセルを出て低密度のボクセルに入るコンピュータシミュレーションされた電子の累積経路長データを計算するステップであって、コンピュータシミュレーションされた電子が、低密度のボクセルから高密度のボクセルに戻るときに前記累積経路長データをゼロにするステップと、
前記累積経路長データが前記印加された磁場内の1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内で指定された経路長しきい値データを超えたと前記コンピュータプロセッサ回路により判断されたときに、前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内の電子の軌道を、印加された磁場に合わせた線形弾道運動としてモデリングするステップと
を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記累積経路長データが前記印加された磁場内の前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内で前記指定された経路長しきい値データを超えないときに、前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内の前記印加された磁場の前記ローレンツ力により誘導されたらせん状軌道を提供する電子輸送モデルを用いて、前記コンピュータシミュレーションされた電子の軌道をモデリングするステップを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
印加された磁場の特性を用いて、前記らせん状軌道をモデリングするステップを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
前記らせん状軌道をモデリングするために用いられる前記印加された磁場の特性は、前記印加された磁場の大きさまたは方向のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法において、
前記経路長しきい値データは、少なくとも1つの完全ならせん状の円周であるように指定されている
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
前記経路長しきい値データは、1つの全周と2つの全周との間に位置する前記らせん状軌道に沿った位置であるように指定されている
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、
前記コンピュータプロセッサ回路を用いて、前記指定された経路長しきい値データによって提供される経路長値を超えて位置する前記らせん状軌道に沿って前記指定された位置をランダムまたは疑似ランダムに選択するステップを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、
線形弾道運動としてモデリングされた後、高密度ボクセルを出て低密度ボクセルに入り次に高密度ボクセルに戻ったコンピュータシミュレーションされた電子をモデリングし、前記コンピュータプロセッサ回路を用いて、少なくとも部分的にランダムまたは擬似ランダムに指定されたまたは他の可変的に指定された前記高密度ボクセルへの進入角度を割り当てるステップを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、
前記コンピュータプロセッサ回路により実行されるモンテカルロコンピュータシミュレーションを用いて、1つまたはそれ以上の高密度ボクセル内のモデリングされた放射線量を決定するステップであって、1つまたはそれ以上の高密度ボクセルのグループから出たり戻ったりするコンピュータシミュレーションされた電子をモデリングすることを含むステップを更に有する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、
前記低密度ボクセルは前記対象に関連する空気の領域を表し、前記対象内で前記モデリングされた軌道の前記線形弾道運動がシミュレーションされている
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
前記印加された磁場に整列した線形弾道運動として前記1つまたはそれ以上の低密度ボクセル内で前記コンピュータシミュレーションされた電子の軌跡をモデリングするステップは、前記空気の領域でのエネルギー損失に対して計算することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、
前記モデリングされた放射線量に少なくとも部分的に基づいて、MR−LINACまたは他の放射線治療装置の治療計画を確立または調整するステップを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法において、
前記モデリングされた放射線量に基づいて直接的または間接的に前記対象に放射線治療を施すステップを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
印加された磁場中の対象における放射線の線量をモデリングする装置に実装された方法を実行するための命令を含むデバイス可読媒体であって、
モデリングされた線量の一部はリターン電子効果を含み、モデリングすることは、コンピュータシミュレーションされた電子が、シミュレーションされた印加された磁場により誘導されモデリングされたローレンツ力により領域から出て戻ることを含み、
前記方法は、
高密度のボクセルと低密度のボクセルとを含む保存された画像データを受け取るステップと、
前記保存された画像データにアクセスするコンピュータプロセッサ回路を用いて、高密度のボクセルを出て低密度のボクセルに入るコンピュータシミュレーションされた電子の累積経路長データを計算するステップであって、コンピュータシミュレーションされた電子が、低密度のボクセルから高密度のボクセルに戻るときに前記累積経路長データをゼロにするステップと、
前記累積経路長データが前記印加された磁場内の1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内で指定された経路長しきい値データを超えたと前記コンピュータプロセッサ回路により判断されたときに、前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内の電子の軌道を、印加された磁場に合わせた線形弾道運動としてモデリングするステップと
を有する
ことを特徴とするデバイス可読媒体。
【請求項15】
請求項14記載のデバイス可読媒体において、
前記累積経路長データが前記印加された磁場内の前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内で前記指定された経路長しきい値データを超えないときに、前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内の前記印加された磁場の前記ローレンツ力により誘導されたらせん状軌道を提供する電子輸送モデルを用いて、前記コンピュータシミュレーションされた電子の軌道をモデリングする
ことを特徴とするデバイス可読媒体。
【請求項16】
印加された磁場中の対象における放射線の線量をモデリングするように構成されたコンピュータシステムであって、
モデリングされた線量の一部はリターン電子効果を含み、モデリングすることは、コンピュータシミュレーションされた電子が、シミュレーションされた印加された磁場により誘導されモデリングされたローレンツ力により領域から出て戻ることを含み、
前記コンピュータシステムは、
高密度のボクセルと低密度のボクセルとを含む保存された画像データを受け取るステップと、
前記保存された画像データにアクセスするコンピュータプロセッサ回路を用いて、高密度のボクセルを出て低密度のボクセルに入るコンピュータシミュレーションされた電子の累積経路長データを計算するステップであって、コンピュータシミュレーションされた電子が、低密度のボクセルから高密度のボクセルに戻るときに前記累積経路長データをゼロにするステップと、
前記累積経路長データが前記印加された磁場内の1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内で指定された経路長しきい値データを超えたと前記コンピュータプロセッサ回路により判断されたときに、前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内の電子の軌道を、印加された磁場に合わせた線形弾道運動としてモデリングするステップと
を実行するように構成されたプロセッサ回路を有する
ことを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、
前記プロセッサ回路は、前記累積経路長データが前記印加された磁場内の前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内で前記指定された経路長しきい値データを超えないときに、前記1つまたはそれ以上の低密度のボクセル内の前記印加された磁場の前記ローレンツ力により誘導されたらせん状軌道を提供する電子輸送モデルを用いて、前記コンピュータシミュレーションされた電子の軌道をモデリングするステップを実行するように構成されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17記載のシステムにおいて、
前記経路長しきい値データは、少なくとも1つの完全ならせん状の円周であるように指定されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18記載のシステムにおいて、
前記経路長しきい値データは、1つの全周と2つの全周との間に位置する前記らせん状軌道に沿った位置であるように指定されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項16記載のシステムにおいて、
前記コンピュータプロセッサ回路は、前記指定された経路長しきい値データによって提供される経路長値を超えて位置する前記らせん状軌道に沿って前記指定された位置をランダムまたは疑似ランダムに選択するステップを実行するように構成されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項16記載のシステムにおいて、
前記プロセッサ回路は、線形弾道運動としてモデリングされた後、高密度ボクセルを出て低密度ボクセルに入り次に高密度ボクセルに戻ったコンピュータシミュレーションされた電子をモデリングし、前記コンピュータプロセッサ回路を用いて、少なくとも部分的にランダムまたは擬似ランダムに指定されたまたは他の可変的に指定された前記高密度ボクセルへの進入角度を割り当てるステップを実行するように構成されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項16記載のシステムにおいて、
前記モデリングされた放射線量に少なくとも部分的に基づいて治療計画を確立または調整するためのMR−LINACまたは他の放射線治療装置に含まれる、または、接続される
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本国際出願は、2017年12月8日に提出された米国出願番号第15/836,474号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、しかし限定ではなく、人間または動物の対象物などへの放射線治療の計画または管理に関する。
【背景技術】
【0003】
放射線療法は、人間または動物の対象に放射線を投与することを含む。慎重な計画は、放射線が対象の標的領域に確実に届くが、放射線の恩恵を受けることが期待されず、放射線の副作用の影響を受ける可能性がある1つまたはそれ以上の近くの領域を避けるのに役立つ。
【0004】
3次元(3D)画像データは、放射線治療の計画に使用できる。そのような3D画像データは、例えば、磁気共鳴(MR)またはコンピュータ断層撮影(CT)画像装置から得ることができる。3D画像データは、様々な密度の画像データを表すボクセルを含むことができる。例えば、対象内の組織の3Dボクセルデータは、対象外の空気を表すボクセルよりも高い密度を表す。体腔内(例えば、気管支内)の空気に対応するボクセルも、周囲の組織より密度が低い。骨組織ボクセルは、軟組織ボクセルよりも密度が高い。
【0005】
対象内の所望の関心領域に放射線を送達するための1つの技術には、光子を生成することを含む。例えば、組織に入射する光子は、組織内に自由電子を生成することができる。自由電子は、特に磁場の影響下で組織内の複雑な軌跡をたどることができ、例えば、対象がMR撮像装置の磁場内にあるときに放射線療法が行われたときに存在し得る。
【発明の概要】
【0006】
印加された磁場は、真空中の電子にらせん状の軌道をもたらし、対象の組織領域内で、エネルギー損失を含むより複雑な相互作用を受け得る。真空中の電子軌道と同様に、空気を通過する電子軌道は、印加された磁場内で一般にらせん状の軌道をたどり、空気との相互作用によるエネルギー損失を受ける。
【0007】
電子輸送は、放射線治療計画のようなモンテカルロシミュレーション(Monte Carlo simulation)を用いるようにコンピュータシミュレーションすることができる。例えば、電子輸送をシミュレーションするCondensed History Techniqueは、「I. Kawrakow et al., "The EGSnrc Code System: Monte Carlo Simulation of Electron and Photon Transport", Ionizing Radiation Standards, National Research Council Canada, Ottawa, Canada (NCRCC Report PIRS-701), Jun.9, 2017(例えば、Section 2.4, "Simulation of Electron Transport"を参照)」に記載されている。
【0008】
電子輸送のそのようなモンテカルロコンピュータシミュレーションは、計算が非常に複雑であり、したがって時間がかかる。3D撮像データから取得したボクセル密度情報を使用するなど、空間的にモデリングされた放射線量を計算するには、放射線量の正確なコンピュータシミュレーション−印加された磁場の存在下での組織と空気を介した(または様々な質量密度とZ当価値(Z-equivalent value)を介した)電子輸送と、その結果としての電子の軌跡に対するローレンツ力の計算−が必要である。本願発明者等は、空間的にモデリングされた放射線量の計算に伴う計算時間の削減と、一方、関心領域への放射線のシステマチックなアンダードーズまたはオーバードーズを回避するなどの十分な精度を維持し、十分な関心のある領域の外に不要な放射線量を供給しないようにする十分な選択性との必要性をとりわけ認識している。
【0009】
例示的な実施例として、本願発明者らは、印加された磁場のローレンツ力によって課されるらせん状の軌道により組織を離れ、組織に再び入る、対象の組織内で生成される電子をモデリングすることが有用であることを認識した。複雑なCondensed History Techniqueを用いて、組織を出る電子のらせん状の軌跡をモデリングすることができるが、電子が組織に再び入ることなく少なくとも1つのらせん状の円周の累積経路長を通過した後、より単純化された線形弾道運動を行うことができ、それは、本明細書でさらに説明するように、モンテカルロシミュレーションを大幅に高速化するのに役立つ。より一般的には、この手法は、より密度の高いボクセルを離れて1つまたはそれ以上の密度の低いボクセル(例えば、特定のユーザ定義の密度しきい値を下回る密度を持つボクセル)の領域に入る電子に適用でき、それは、対象の外部の周囲の空気に入る場合だけでなく、対象の中にある空腔に入る場合にも適用できる。
【0010】
オプションで、モンテカルロシミュレーション用のより複雑なCondensed Historyモデルからより単純化された線形弾道運動モデリングへの移行の初期位置を、らせん状の軌道に沿ってランダムまたは疑似ランダムに割り当てることができ、各電子に同じ遷移位置を割り当てることにより、この手法によって体系的なバイアスがかかるのを回避することができる。
【0011】
更に、本明細書で説明するように、らせん状の電子軌道が線形弾道運動として近似されている場合でも、空気中の移動によるエネルギー損失を適切に考慮することができる。
【0012】
例えば、本明細書では、適用された磁場における被験者の放射線の線量をモデル化する機械実装方法を含むことができる手法について説明する。モデリングされた線量の一部には、印加された磁場によって引き起こされるらせん状の軌道に起因する、領域から出て行く電子からのリターン電子効果が含まれる可能性がある。この方法は、高密度ボクセルと低密度ボクセルにセグメント化された画像データを受け取ることを含むことができる。高密度ボクセルを出て、低密度ボクセルに入る電子の場合などで、累積経路長を計算することができる。電子が低密度ボクセルから高密度ボクセルに戻るときに、この累積経路長をゼロに設定することができる。累積経路長が、印加された磁場内の1つまたはそれ以上の隣接する低密度ボクセルで指定された経路長しきい値を超える場合、1つまたはそれ以上の隣接する低密度ボクセル内の電子の軌跡は、印加された磁場と整列できる方向のような、線形弾道運動としてモデリングできる。一実施例では、累積経路長が、適用された磁場の1つまたは以上の連続した低密度ボクセルで指定された経路長しきい値を超えない場合、電子軌道は、より複雑な電子輸送モデル(例えば、Condensed History又は別のより複雑な電子輸送モデル)を用い、1つまたはそれ以上の連続した低密度ボクセルに印加された磁場によって誘導されるらせん状の軌道を提供して、モデリングすることができる。一実施例では、より複雑なモデルは、対象の組織内など、高密度ボクセルによって表される領域内でも用いることができる。
【0013】
上記記載は、本特許出願の主題の概要を提供することを意図している。本発明の排他的または網羅的な説明を提供することは意図されていない。発明の詳細な説明は、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、同様の数字は、異なる図において類似の構成要素を説明することがある。異なる文字の接尾辞を持つ同様の数字は、同様の構成要素の異なる実例を表すことがある。図面は、一般に、限定ではなく実施例として、本文書で説明される様々な実施形態を示す。
図1図1は、放射線治療システムの一実施例を示す図である。
図2図2は、治療ビームを提供するように構成された放射線治療出力を含む放射線治療システムの一実施例を示す図である。
図3A図3Aは、大きさB(>0)の印加された磁場下での真空中の電子軌道の一実施例を概念的に示す図である。
図3B図3Bは、印加磁場がない場合(B=0:左側)と、印加磁場がある場合(B>0:右側に表示)における、人間または動物の対象の組織を通る電子軌道の一実施例を示す図である。
図3C図3Cは、電子が、高密度領域を出て、低密度領域に入る興味深いケースの電子軌道を概念的に示す図である。
図4図4は、入射光子ビーム(「ビーム」)によって標的とされた対象内の組織の領域(対象の組織の領域は、図4に示される方向の磁場「B」内に存在する)を概念的に示す図である。
図5図5は、磁気共鳴(MR)撮像装置により生成される磁場内のような印加された磁場内に対象の一部が配置されるような、対象における放射線の線量をモデリングすることを含む、コンピュータプロセッサ回路によって実行され得る、コンピュータシミュレーションの方法の一部の一実施例を示す図である。
図6図6は、磁気共鳴(MR)撮像装置により生成される磁場内のような印加された磁場内に対象の一部が配置されるような、対象における放射線の線量をモデリングすることを含む、コンピュータプロセッサ回路によって実行され得る、コンピュータシミュレーションを実行するような、本明細書で説明される方法の1つまたはそれ以上の装置またはマシンの実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、特に、放射線治療の計画や管理など、特に、MR撮像装置のような印加磁場が存在する環境で、放射線量のモンテカルロシミュレーションの速度を向上させるのに役立つ技術について説明する。特に、対象の内部または付近の電子は、必要に応じて複雑ならせん状の軌道を用いてモデリングすることができるが、モデリングは、本明細書で更に説明するように、適切な場合、より計算効率の高い線形弾道運動軌道モデルに簡略化することができる。例えば、自由電子は、組織内などの対象内で生成され得る。特定の例示的な実施例では、そのような自由電子は、放射線治療装置によって提供される入射光子から生じ得る。生成方法に関係なく、対象内または対象の近くのそのような自由電子は、印加磁場から生じるローレンツ力を受ける可能性があり、本明細書で説明するように、らせん状の軌道またはより計算効率の高い線形弾道運動の軌道によってモデリングすることができる。
【0016】
図1は、患者、患者の一部、または、患者または患者の一部を表す標的物体を含む「ファントム」に放射線療法を提供するための例示的な放射線治療システム100を示す。放射線治療システム100は、画像処理装置112を含む。画像処理装置112は、ネットワーク120に接続され得る。ネットワーク120は、インターネット122に接続され得る。ネットワーク120は、画像処理装置112を、データベース124、病院データベース126、腫瘍学情報システム(OIS)128、放射線治療装置130、画像取得装置132、表示装置134、ユーザインターフェース136のうちの1つまたはそれ以上のものに接続することができる。画像処理装置112は、放射線治療装置130によって使用される放射線療法治療計画142を生成するように構成することができる。
【0017】
画像処理装置112は、メモリ装置116、プロセッサ114、および通信インターフェース118を含むことができる。メモリ装置116は、オペレーティングシステム143、放射線療法治療計画142(例えば、オリジナルの治療計画、適合された治療計画など)、ソフトウェアプログラム144(例えば、人工知能、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、放射線治療計画ソフトウェア)、およびプロセッサ114によって実行される他の任意のコンピュータ実行可能命令のような、コンピュータ実行可能命令を格納することができる。一実施形態では、ソフトウェアプログラム144は、疑似CT画像のような合成画像を生成することによって、1つのフォーマット(例えば、MRI)の医用画像を別のフォーマット(例えば、CT)に変換することができる。例えば、ソフトウェアプログラム144は、あるモダリティ(例えば、MRI画像)の医用画像146を異なるモダリティの合成画像(例えば、疑似CT画像)に変換するための予測モデルを訓練する画像処理プログラムを含むことができ、あるいは、訓練された予測モデルは、CT画像をMRI画像に変換することができる。別の実施形態では、ソフトウェアプログラム144は、対応する画像ボクセルおよび線量ボクセルがネットワークによって適切に関連付けられるように、患者画像(例えば、CT画像またはMR画像)をその患者の線量分布(画像としても表される)に登録することができる。さらに別の実施形態では、ソフトウェアプログラム144は、画像情報のいくつかの態様を強調する画像の署名付き距離関数または処理されたバージョンのような患者画像の関数を代替してもよい。そのような関数は、ボクセルテクスチャのエッジや違い、またはニューラルネットワークの学習に役立つその他の構造的側面を強調する。別の実施形態では、ソフトウェアプログラム144は、線量情報のいくつかの側面を強調する線量分布の関数を代替してもよい。そのような関数は、標的の周りの急勾配、またはニューラルネットワークの学習に役立つその他の構造的側面を強調する。メモリ装置116は、医用画像146、患者データ145、および放射線療法治療計画142を作成および実施するために必要な他のデータを含むデータを格納することができる。
【0018】
ソフトウェアプログラム144を格納するメモリ116に加えて、ソフトウェアプログラム144は、ハードドライブ、コンピュータディスク、CD−ROM、DVD、HD、ブルーレイDVD、USBフラッシュドライブ、SDカード、メモリスティック、またはその他の適切なメディアのようなリムーバブルコンピュータ媒体に格納することができ、画像処理装置112にダウンロードされたときソフトウェアプログラム144は、画像プロセッサ114によって実行することができる。
【0019】
プロセッサ114は、メモリ装置116に通信可能に結合されることができ、プロセッサ114は、そこに格納されたコンピュータ実行可能命令を実行するように構成することができる。プロセッサ114は、医用画像146をメモリ116に送信または受信することができる。例えば、プロセッサ114は、通信インターフェース118およびネットワーク120を介して画像取得装置132から医用画像146を受信して、メモリ116に格納することができる。プロセッサ114は、また、メモリ116に格納された医用画像146を、通信インターフェース118を介して、ネットワーク120に送信し、データベース124または病院データベース126のいずれかに格納される。
【0020】
さらに、プロセッサ114は、医用画像146および患者データ145と共にソフトウェアプログラム144(例えば、治療計画ソフトウェア)を利用して、放射線療法治療計画42を作成することができる。医用画像146は、患者の解剖学的領域、器官、または関心セグメンテーションデータのボリュームに関連する画像データのような情報を含むことができる。患者データ145は、(1)機能臓器モデリングデータ(例えば、直列対並列臓器、適切な用量反応モデルなど)、(2)放射線量データ(例えば、線量−体積ヒストグラム(DVH)情報)、または(3)患者および治療コースに関する他の臨床情報(例えば、他の手術、化学療法、以前の放射線療法など)のような情報を含むことができる。
【0021】
さらに、プロセッサ114は、ソフトウェアプログラムを利用して、例えば、ニューラルネットワークモデルによって使用される更新されたパラメータなどの中間データを生成することができ、または、中間の2Dまたは3D画像を生成することができ、その後、それらはメモリ116に記憶される。その後、プロセッサ114は、実行可能な放射線療法治療計画142を、通信インターフェース118とネットワーク120を介して、放射線治療装置30に送信することができ、そこで放射線療法計画は、放射線で患者を治療するために使用される。さらに、プロセッサ114は、ソフトウェアプログラム144を実行して、画像変換、画像セグメンテーション、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、および人工知能のような機能を実装することができる。例えば、プロセッサ114は、医用画像を訓練または輪郭化するソフトウェアプログラム144を実行することができ、そのようなソフトウェア144は、実行されると、境界検出器を訓練し、形状辞書を利用することができる。
【0022】
プロセッサ114は、例えば、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU:Graphics Processing Unit)、および/またはアクセラレーテッド・プロセッシング・ユニット(APU:Accelerated Processing Unit)のような1つまたはそれ以上の汎用処理装置を含む処理装置であってもよい。詳細には、いくつかの実施形態では、プロセッサ114は、複合命令セットコンピューティング(CISC:complex instruction set computing)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC:reduced instruction set computing)マイクロプロセッサ、超長命令ワード(VLIW:very long instruction Word)マイクロプロセッサ、他の命令セットを実装するプロセッサ、または命令セットの組み合わせを実装するプロセッサであってもよい。プロセッサ114は、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP:digital signal processor)、システムオンチップ(SoC:System on a Chip)、またはその他の適切なプロセッサのような1つまたはそれ以上の専用処理装置によって実装されることができる。当業者に理解されるように、いくつかの実施形態では、プロセッサ114は、汎用プロセッサではなく、専用プロセッサであってもよい。プロセッサ114は、Intel(登録商標)によって製造されたPentium(登録商標)、Core(登録商標)、Xeon(登録商標)、またはItanium(登録商標)ファミリー、AMD(登録商標)によって製造されたTurion(登録商標)、Athlon(登録商標)、Sempron(登録商標)、Opteron(登録商標)、FX(登録商標)、Phenon(登録商標)ファミリー、Sun Microsystemsによって製造された様々なプロセッサのいずれか、または他の適切なプロセッサのような、1つまたはそれ以上の既知の処理装置を含み得る。プロセッサ14は、また、Nvidia(登録商標)によって製造されたGeForce(登録商標)、Quadro(登録商標)、Tesla(登録商標)ファミリー、Intel(登録商標)によって製造されたGMA、Iris(登録商標)ファミリー、またはAMD(登録商標)によって製造されたRadeon(登録商標)ファミリーのような、グラフィック処理ユニットを含み得る。プロセッサ14は、また、Intel(登録商標)によって製造されたXeon Phi(登録商標)ファミリーのような、加速処理装置を含み得る。開示された実施形態は、いかなるタイプのプロセッサに限定されるものではなく、大量の撮像データを識別、分析、維持、生成、および/または提供するというコンピューティング命令を満たすように構成されている。さらに、「プロセッサ」という用語は、複数のプロセッサ、例えばマルチコア設計またはそれぞれがマルチコア設計を有する複数のプロセッサを含むことができる。プロセッサ114は、本開示の例示的な実施形態による様々な動作、プロセス、および方法を実行するために、例えば、メモリ116に格納されたコンピュータプログラム命令のシーケンスを実行するように構成され得る。
【0023】
メモリ装置116は、医用画像146を格納することができる。いくつかの実施形態では、医用画像146は、1つまたはそれ以上のMRI画像(例えば、2DMRI、3DMRI、2DストリーミングMRI、4DMRI、4D容積測定MRI、4DシネMRI、など)、機能的MRI画像(例えば、fMRI、DCE−MRI、拡散MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)画像(例えば、2DCT、コーンビームCT、3DCT、4DCT)、超音波画像(例えば、2D超音波、3D超音波、4D超音波)、陽電子放射断層撮影(PET)画像、X線画像、X線透視画像、放射線治療ポータル画像、単一光放出コンピュータ断層撮影(SPECT)画像、コンピュータ生成合成画像(例えば、疑似CT画像)など、を含み得る。さらに、医用画像146は、また、医用画像データ、例えば、トレーニング画像、およびグラウンドトゥルース画像、等高線画像、および線量画像を含み得る。一実施形態では、医用画像146は、画像取得装置132から受け取ることができる。したがって、画像取得装置132は、MRI撮像装置、CT撮像装置、PET撮像装置、超音波撮像装置、蛍光透視装置、SPECT撮像装置、統合線形加速器およびMRI撮像装置、または、患者の医用画像を取得するための他の医療撮像装置を含み得る。医用画像146は、画像処理装置112が、開示された実施形態による動作を実行するために使用することができる任意のタイプのデータまたは任意のタイプのフォーマットで受け取られ、格納され得る。メモリ装置116は、読み取り専用メモリ(ROM)、相変化ランダムアクセスメモリ(PRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)のようなダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、スタティックメモリ(例えば、フラッシュメモリ、フラッシュディスク、スタティックランダムアクセスメモリ)、および、キャッシュ、レジスタ、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、またはその他の光学式ストレージ、カセットテープ、その他の磁気記憶装置のようなその他のタイプのランダムアクセスメモリ、のような非一時的なコンピュータ可読媒体、または、画像、データ、または、プロセッサ14、または任意の他のタイプのコンピュータ装置によりアクセスすることができる(例えば、任意のフォーマットで格納される)コンピュータ実行可能命令を含む情報を格納するために使用できる他の任意の非一時的媒体であり得る。コンピュータプログラム命令は、プロセッサ114によってアクセスされ、ROMまたは他の任意の適切なメモリ位置から読み取られ、プロセッサ114による実行のためにRAMにロードされ得る。例えば、メモリ116は、1つまたはそれ以上のソフトウェアアプリケーションを格納することができる。メモリ116に格納されたソフトウェアアプリケーションは、例えば、一般的なコンピュータシステムのためのオペレーティングシステム143およびソフトウェア制御装置を含み得る。さらに、メモリ116は、プロセッサ114によって実行可能なソフトウェアアプリケーション全体またはソフトウェアアプリケーションの一部のみを格納することができる。例えば、メモリ装置116は、1つまたはそれ以上の放射線療法治療計画142を格納することができる。
【0024】
画像処理装置112は、プロセッサ114およびメモリ116に通信可能に結合された通信インターフェース118を介してネットワーク120と通信することができる。通信インターフェース118は、画像処理装置112と放射線治療システム100の構成要素との間の通信接続を提供する(例えば、外部装置とのデータの交換を可能にする)ことができる。例えば、通信インターフェース118は、いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース136に接続するための適切なインターフェース回路を有することができ、それは、ユーザが放射線治療システム100に情報を入力することができる、ハードウェアキーボード、キーパッド、またはタッチスクリーンとすることができる。
【0025】
通信インターフェース118は、例えば、ネットワークアダプタ、ケーブルコネクタ、シリアルコネクタ、USBコネクタ、パラレルコネクタ、高速データ伝送アダプタ(例えば、ファイバ、USB3.0、サンダーボルト、など)、無線ネットワークアダプタ(例えば、WiFiアダプタのような)、電気通信アダプタ(例えば、3G、4G/LTE、など)などを含み得る。通信インターフェース118は、画像処理装置112が、ネットワーク120を介して遠隔配置された構成要素のような、他の機械および装置と通信することを可能にする1つまたはそれ以上のデジタルおよび/またはアナログ通信装置を含み得る。
【0026】
ネットワーク120は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、無線ネットワーク、クラウドコンピューティング環境(例えば、サービスとしてのソフトウェア、サービスとしてのプラットフォーム、サービスとしてのインフラストラクチャ、など)、クライアントサーバー、広域ネットワーク(WAN)など機能を提供することができる。例えば、ネットワーク120は、他のシステムS1(138)、S2(140)、およびS3(141)を含むLANまたはWANとすることができる。システムS1、S2、およびS3は、画像処理装置112と同一であってもよく、または異なるシステムであってもよい。いくつかの実施形態では、ネットワーク120内の1つまたはそれ以上のシステムは、本明細書で説明される実施形態を協調的に実行する分散コンピューティング/シミュレーション環境を形成することができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のシステムS1、S2、およびS3は、CT画像(例えば、医用画像46)を取得するCTスキャナを含むことができる。さらに、ネットワーク20をインターネット22に接続して、インターネット上で遠隔地にあるサーバーおよびクライアントと通信することができる。
【0027】
したがって、ネットワーク120は、画像処理装置112と、OIS128、放射線治療装置130、および画像取得装置132のような多くの他の様々なシステムおよび装置との間のデータ伝送を可能にすることができる。さらに、OIS128および/または画像取得装置132によって生成されたデータは、メモリ116、データベース124、および/または病院データベース126に格納され得る。データは、必要に応じて、プロセッサ114によりアクセスされるために、ネットワーク120を介して通信インターフェース118を介して送信/受信することができる。
【0028】
画像処理装置112は、ネットワーク120を介してデータベース124と通信して、データベース124に格納された複数の様々なタイプのデータを送受信することができる。例えば、データベース124は、放射線治療装置130、画像取得装置132、または放射線療法に関連する他の機械に関連する情報である機械データを含み得る。マシンデータ情報は、放射線ビームサイズ、アーク配置、ビームオン/オフ時間、マシンパラメータ、セグメント、マルチリーフコリメータ(MLC)構成、ガントリ速度、MRIパルスシーケンスなどが含まれ得る。データベース124は、記憶装置であり得、適切なデータベース管理ソフトウェアプログラムを備え得る。当業者は、データベース124が、中央にまたは分散して配置された複数の装置を含み得ることを理解するであろう。
【0029】
いくつかの実施形態では、データベース24は、プロセッサ可読記憶媒体(図示せず)を含み得る。一実施形態におけるプロセッサ可読記憶媒体は単一の媒体であり得るが、用語「プロセッサ可読記憶媒体」は、1つまたはそれ以上のコンピュータ実行可能命令またはデータのセットを格納する単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型または分散型データベース、および/または関連するキャッシュおよびサーバー)と解釈されるべきである。用語「プロセッサ可読記憶媒体」は、プロセッサによる実行のための命令のセットを格納または符号化することができ、かつ、プロセッサに本開示の1つまたはそれ以上の方法論のいずれかを実行させる任意の媒体を含むと解釈されるものとする。したがって、用語「プロセッサ可読記憶媒体」は、固体メモリ、光学および磁気媒体を含むがこれらに限定されないものと解釈されるべきである。例えば、プロセッサ可読記憶媒体は、1つまたはそれ以上の揮発性、非一時的、または不揮発性の有形のコンピュータ可読媒体とすることができる。
【0030】
画像プロセッサ114は、データベース124と通信して、画像をメモリ116に読み込むか、または画像をメモリ116からデータベース124に格納することができる。例えば、データベース124は、データベース124が画像取得装置132から受信した複数の画像(例えば、3DMRI、4DMRI、2DMRIスライス画像、CT画像、2D透視画像、X線画像、MRスキャンまたはCTスキャンからの生データ、医学におけるデジタル画像および通信(DIMCOM)データ等)を格納するように構成されている。データベース124は、ソフトウェアプログラム44を実行するとき、または放射線療法治療計画42を作成するときに、画像プロセッサ14によって使用されるデータを格納することができる。データベース124は、ネットワークによって学習されたモデルを構成するネットワークパラメータおよび結果として生じる予測データを含む、訓練されたニューラルネットワークによって生成されたデータを格納することができる。画像処理装置112は、データベース124、放射線治療装置130(例えば、MRI−リニアック)、および/または画像取得装置132のいずれかからの画像データ146(例えば、2DMRIスライス画像、CT画像、2D蛍光透視画像、X線画像、3DMRI画像、4DMRI画像、など)を受け取り、治療計画142を生成することができる。
【0031】
一実施形態では、放射線治療システム100は、患者の医用画像(例えば、磁気共鳴画像法(MRI)画像、3DMRI、2DストリーミングMRI、4D容積測定MRI、コンピュータ断層撮影(CT)画像、コーンビームCT、陽電子放射断層撮影(PET)画像、機能的MRI画像(例えば、fMRI、DCE−MRIおよび拡散MRI)、X線画像、透視画像、超音波画像、放射線治療ポータル画像、シングルフォトエミッションコンピュータ断層撮影(SPECT)画像など)を取得できる画像取得装置132を含むことができる。画像取得装置132は、例えば、MRI撮像装置、CT撮像装置、PET撮像装置、超音波装置、蛍光透視装置、SPECT撮像装置、または、患者の1つまたはそれ以上の医用画像を取得するための他の任意の適切な医療撮像装置であり得る。画像取得装置132によって取得された画像は、撮像データおよび/または試験データのいいずれかとしてデータベース124内に格納することができる。例として、画像取得装置132によって取得された画像は、また、画像処理装置112によって、医用画像データ146としてメモリ116に格納することができる。
【0032】
一実施形態では、例えば、画像取得装置132は、単一装置として放射線治療装置130と一体化してもよい(例えば、「MRI−Linac」とも呼ばれる線形加速器と組み合わせたMRI装置)。このようなMRI−Linacを使用して、例えば、放射線療法治療計画142に従って放射線治療を正確に所定の標的に向けるように、患者の標的器官または標的腫瘍の位置を決定することができる。
【0033】
画像取得装置132は、関心領域(例えば、標的臓器、標的腫瘍、またはその両方)についての患者の解剖学的構造の1つまたはそれ以上の画像を取得するように構成されている。各画像、典型的には2D画像またはスライスは、1つまたはそれ以上のパラメータ(例えば、2Dスライスの厚さ、向き、および場所、など)を含むことができる。一実施形態では、画像取得装置132は、任意の向きで2Dスライスを取得することができる。例えば、2Dスライスの方向には、矢状方向、冠状方向、または軸方向が含まれる。プロセッサ114は、2Dスライスの厚さおよび/または向きなどの1つまたはそれ以上のパラメータを調整して、標的器官および/または標的腫瘍を含めることができる。一実施形態では、2Dスライスは、3DMRIボリュームなどの情報から決定することができる。そのような2Dスライスは、例えば、放射線治療装置130を使用するとき、患者が放射線治療を受けているあいだ、「ほぼリアルタイム」で画像取得装置132によって取得することができる。「ほぼリアルタイム」とは、少なくとも数ミリ秒以内にデータを取得することを意味する。
【0034】
画像処理装置112は、1人またはそれ以上の患者のための放射線療法治療計画142を生成および保存することができる。放射線療法治療計画142は、各患者に適用される特定の放射線量に関する情報を提供することができる。放射線療法治療計画142は、また、ビーム角、線量ヒストグラム、ボリューム情報、治療中に使用される放射線ビームの数、ビーム当たりの線量のような他の放射線療法情報を含み得る。
【0035】
画像プロセッサ114は、スウェーデンのストックホルムにあるエレクタAB社によって製造されたMonaco(登録商標)のような治療計画ソフトウェアのようなソフトウェアプログラム44を使用することにより、放射線療法治療計画142を生成することができる。放射線療法治療計画142を生成するために、画像プロセッサ114は、画像取得装置132(例えば、CT装置、MRI装置、PET装置、X線装置、超音波装置、など)と通信して、患者の画像にアクセスし、かつ、腫瘍のような標的の輪郭を描くことができる。いくつかの実施形態において、腫瘍の周囲にある、または腫瘍のすぐ近くにある健康な組織のような1つまたはそれ以上のリスク臓器(OAR)の描写が必要になる場合がある。したがって、OARが標的腫瘍に近いときに、OARのセグメンテーションが行われる。さらに、標的腫瘍がOAR(例えば、膀胱および直腸に近い前立腺)に近い場合には、OARを腫瘍からセグメンテーションすることにより、放射線治療システム100は、標的内だけでなくOAR内の線量分布を調べることができる。
【0036】
OARと区別して標的臓器または標的腫瘍の輪郭を描くためには、放射線治療を受けている患者のMRI画像、CT画像、PET画像、fMRI画像、X線画像、超音波画像、放射線治療ポータル画像、SPECT画像のような医用画像が、画像取得装置132によって非侵襲的に取得され、身体の部分の内部構造を明らかにすることができる。医用画像からの情報に基づいて、関連する解剖学的部分の3D構造を取得することができる。さらに、治療計画プロセス中に、標的腫瘍の効率的な治療(例えば、標的腫瘍が効果的な治療のために十分な放射線量を受けるという)とOARへの低線量(例えば、OARが可能な限り低い放射線量を受けるという)との間のバランスを達成するために、多くのパラメータが考慮される。考慮され得る他のパラメータには、標的臓器および標的腫瘍の位置、OARの位置、OARに対する標的の動きが含まれる。例えば、三次元構造は、MRI又はCT画像の各二次元レイヤまたはスライス内の標的の輪郭を描くまたはOARの輪郭を描くこと、および各二次元レイヤまたはスライスの輪郭を結合することにより取得することができる。輪郭は、手動で(例えば、スウェーデンのストックホルムのエレクタAB社によって製造されたMONACO(登録商標)のようなプログラムを用いて医師、線量測定士、または医療従事者によって)または自動で(例えば、スウェーデンのストックホルムのエレクタAB社によって製造されたアトラスベースの自動セグメンテーションソフトウェアであるABAS(登録商標)を用いて)生成することができる。特定の実施形態では、標的腫瘍またはOARの3D構造は、治療計画ソフトウェアによって自動的に生成される。
【0037】
標的腫瘍とOARの位置を特定して輪郭を描いた後、線量測定士、医師、または医療従事者は、標的腫瘍に照射される放射線の線量と共に、腫瘍に近接したOAR(例えば、左右の耳下腺、視神経、目、水晶体、内耳、脊髄、脳幹、または他の解剖学的構造)が受ける可能性のある最大線量とを決定することができる。関連する解剖学的構造(例、標的腫瘍、OAR)の放射線量を決定した後、逆計画法(inverse planning)として知られるプロセスを実行して、望ましい放射線量分布を達成する1つまたはそれ以上の治療計画パラメータを決定することができる。治療計画パラメータの例には、(例えば、標的ボリュームの輪郭を定める、機密構造の輪郭を描く、などの)ボリューム描写パラメータ、標的腫瘍およびOARの周囲のマージン、ビーム角選択、コリメータ設定、および/またはビームオン時間が含まれる。逆計画プロセス中、医師は、OARが受ける可能性のある放射線量の境界を設定する線量制約パラメータを定めること(例えば、腫瘍標的への全線量と任意のOARへのゼロ線量を定めること;脊髄、脳幹、および視覚構造が、それぞれ、45Gy以下の線量、55Gy以下の線量、および54Gyより低い線量を受けると定めること)ができる。逆計画の結果は、メモリ116またはデータベース124に保存される放射線療法治療計画142を構成することができる。これらの治療パラメータのいくつかは相関している可能性がある。例えば、治療計画を変更しようとして1つのパラメータ(例えば、標的腫瘍への線量を増やすなどのさまざまな目的の重み)を調整すると、少なくとも1つの他のパラメータに影響を与え、その結果、異なる治療計画が開発される可能性がある。したがって、画像処理装置112は、放射線治療装置130が患者に放射線療法治療を提供するために、これらのパラメータを有する調整された放射線療法治療計画42を生成する。
【0038】
さらに、放射線治療システム100は、表示装置134およびユーザインターフェース136を含むことができる。表示装置134は、医用画像、インターフェース情報、治療計画パラメータ(例えば、輪郭、線量、ビーム角、など)、治療計画、標的、標的の位置特定、および/または標的の追跡、または、ユーザへの適切な情報、を表示するように構成された1つまたはそれ以上の表示画面を含むことができる。ユーザインターフェース136は、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、または、ユーザが放射線治療システム100に情報を入力することができる任意のタイプのデバイスであり得る。または、表示装置134およびユーザインターフェース136は、タブレットコンピュータ、例えば、アップル社製のiPad(登録商標)、Lenovo社製のThinkpad(登録商標)、サムソン社製のGalaxy(登録商標)のようなデバイスに組み込むことができる。
【0039】
さらに、放射線治療システム100のありとあらゆる構成要素は、仮想マシン(例えば、VMWare、Hyper−Vなど)として実装されてもよい。例えば、仮想マシンはハードウェアとして機能するソフトウェアであってもよい。したがって、仮想マシンは、ハードウェアとして一緒に機能する少なくとも1つまたはそれ以上の仮想プロセッサ、1つまたはそれ以上の仮想メモリ、および/または1つまたはそれ以上の仮想通信インターフェースを含むことができる。例えば、画像処理装置112、OIS128、画像取得装置132は、仮想マシンとして実装されてもよい。利用可能な処理能力、メモリ、および計算能力が与えられるならば、放射線治療システム100全体を仮想マシンとして実装することができる。
【0040】
図2Aは、X線源または線形加速器のような放射線源、カウチ216、撮像検出器214、および放射線治療出力204を含む、例示的な放射線治療装置150を示す。放射線治療装置202は、放射線ビーム208を出射して患者に治療を提供するように構成されている。放射線治療出力204は、マルチリーフコリメータ(MLC)のような1つまたはそれ以上の減衰器またはコリメータを含むことができる。
【0041】
図2において、患者は、治療台216により支持されて領域212に配置され、放射線療法治療計画に従って放射線療法線量を受け取ることができる。放射線治療出力204は、ガントリ206または他の機械的支持体に載せられまたは取り付けられることができる。1つまたはそれ以上のシャーシモーター(図示せず)は、カウチ216が治療領域に挿入されるとき、ガントリ206と放射線治療出力204をカウチ216の周りで回転させることができる。一実施形態では、ガントリ206は、カウチ216が治療領域に挿入されるとき、カウチ216の周りで連続的に回転されてもよい。別の実施形態では、カウチ216が治療領域に挿入されるとき、ガントリ206は所定の位置まで回転されてもよい。例えば、ガントリ206は、軸(「A」)を中心に治療出力204を回転させるように構成することができる。カウチ216と放射線治療出力204の両方は、横方向(「T」)に移動可能、横方向(「L」)に移動可能、または、横軸(「R」と表示)を中心とした回転のように1つまたは複数の周りの回転のように、患者の周りの他の位置に独立して移動可能である。1つまたは複数のアクチュエータ(図示せず)に通信可能に接続されたコントローラは、放射線療法治療計画に従って患者を放射線ビーム208の位置に、または外に適切に配置するために、カウチ216の動きまたは回転を制御することができる。カウチ216とガントリ206の両方が複数の自由度で互いに独立して移動可能であるので、放射線ビーム208が腫瘍を正確に標的とすることができるように患者を配置することができる。
【0042】
図2に示す座標系(軸A、T、Lを含む)は、アイソセンタ210に位置する原点を有する。アイソセンタは、放射線治療ビーム208が、処方された放射線量を患者の上または内部の場所に送達するような、座標軸の原点と交差する場所として定義することができる。または、アイソセンタ210は、ガントリ206によって軸Aの周りに位置決めされた放射線治療出力204の様々な回転位置について、放射線治療ビーム208が患者と交差する場所として定義することができる。
【0043】
ガントリ206は、また、取り付けられた撮像検出器214を有し得る。撮像検出器214は、好ましくは放射線源204の反対側に配置され、一実施例では、撮像検出器214は、治療ビーム208のフィールド内に配置することができる。
【0044】
撮像検出器214は、ガントリ206上に、好ましくは、治療ビーム208との位置合わせを維持するような、放射線治療出力204の反対側に取り付けることができる。ガントリ206が回転すると、撮像検出器214が回転軸の周りを回転する。一実施形態では、撮像検出器214は、フラットパネル検出器(例えば、直接検出器またはシンチレータ検出器)とすることができる。このようにして、撮像検出器214を使用して、治療ビーム208を監視することができ、または、撮像検出器214を使用して、ポータルイメージングなどの患者の解剖学的構造を撮像することができる。放射線治療装置202の制御回路は、システム100内に統合されてもよいし、システムとは別個であってもよい。
【0045】
図示された実施形態では、カウチ216、治療出力204、またはガントリ206のうちの1つまたは複数を自動的に配置することができ、治療出力204は、特定の治療送出インスタンスの指定線量に従って治療ビーム208を確立することができる。ガントリ206、カウチ216、または治療出力204の1つまたはそれ以上の異なる向きまたは場所を使用するような放射線治療処置計画に従って、一連の治療送達を指定することができる。治療の提供は連続して行うことができるが、アイソセンタ210のような患者の上または患者の内部の所望の治療軌跡で交差することができる。それにより、処方された累積線量の放射線療法を、治療部位の近くの組織への損傷が低減または回避しながら、治療部位に送達することができる。
【0046】
図2は、放射線治療出力を中心軸(例えば、軸「A」)の周りに回転させることができる構成を含む、患者に放射線治療を提供するように構成された放射線治療装置の一実施形態の概略を示す。他の放射線療法の出力構成を使用することができる。例えば、放射線治療出力は、複数の自由度を持つロボットアームまたはマニピュレータに取り付けることができる。更に別の実施形態では、治療出力を、患者から横方向に離れた領域に位置するように固定することができ、患者を支持するプラットフォームを使用して、放射線治療アイソセンタを患者内の指定された標的位置に整列させることができる。
【0047】
別の実施形態では、放射線治療装置を、線形加速器と画像取得装置との組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態では、画像取得装置は、当業者によって認識されるように、MRI、X線、CT、CBCT、スパイラルCT、PET、SPECT、光断層撮影、蛍光イメージング、超音波イメージング、または放射線治療ポータルイメージング装置等、のような装置とすることができる。
【0048】
印加磁場中の対象への被曝線量をモデリングする技法
本願発明者等は、とりわけ、MR撮像装置内のような特に印加磁場が存在する環境において、放射線治療の計画または管理のような、放射線量のモンテカルロシミュレーションの速度を改善することを助けることの必要性を認識した。例えば、特定のMR撮像装置は1.5Tの磁場を提供し、他の装置は0.5T、0.35T、または0.2Tの磁場を提供する。本技法は、他のレベルの磁場でも有用であり得る。
【0049】
特に、対象の内部または付近の電子は、必要に応じて複雑ならせん状の軌道を使用してモデリングできるが、モデリングは、本明細書で更に説明するように、適切な場合、より計算効率の高い線形弾道運動軌道モデルに簡略化できる。例えば、自由電子は、組織内などの対象内で生成され得る。特定の例示的な実施例では、そのような自由電子は、放射線治療装置によって提供される入射光子から生じ得る。生成方法に関係なく、対象内または対象の近くのそのような自由電子は、印加磁場から生じるローレンツ力を受ける可能性があり、本明細書で説明するように、らせん状の軌道またはより計算効率の高い線形弾道運動の軌道によってモデリングできる。
【0050】
これにより、放射線治療の計画や管理など、放射線量のモンテカルロシミュレーションの速度を向上させることができる。そのような技術は、対象内のチタンまたは他のインプラントから、または対象上または対象内に配置され、次に、印加磁場内にある近接照射療法シードまたは他の放射線源から発生する電子または光子にも適用できる。
【0051】
図3Aは、大きさB(>0)を有する印加磁場Bの下での真空中の電子の軌道の例を概念的に示す。図示するように、電子はらせん状の軌道をたどり、らせん状の経路を形成する。同様の磁場Bの下での空気中の電子軌道は、同様のらせん軌道をたどり、同様のらせん経路を作成するが、電子は、空気を通過する累積経路の関数として、あるエネルギー損失を受ける。
【0052】
図3Bは、磁場が印加されていない場合(B=0、左側に示す)および、磁場が印加されている場合(B>0、右側に示す)に、人間または動物の対象の組織を通る電子軌道の一例を概念的に示す。組織との相互作用は、磁場が加えられていない場合は、図3Bの左側に示されるように、普通は直線の軌道の経路を変更し、それ以外の場合は、図3Bの右側に示されるように、普通はらせん状の軌道の経路を変更する。
【0053】
図3Cは、電子が高密度領域を出て低密度領域に入る興味深いケースを概念的に示す。そのような場合の実施例は、対象の組織から出て対象の周囲の空気領域に入る電子、または、気管のような気道に入る電子によるような、対象内の空気領域に入る電子である。印加磁場が存在しない場合(B=0、図3Cの左側に示す)、低密度の空気領域に入ると、電子は、電子が離れる組織の構造によって影響され得る方向に配向し、ほぼ直線軌道を取ることができる。磁場が存在する場合(B>0、図3Cの右側に示す)、低密度の空気領域に入ると、電子は、電子が離れる組織の構造によって影響され得る方向で開始するらせん軌道を描くことができる。図3Cの右側に示すように、磁場の存在下で、電子のらせん軌道が組織に再び突入することをもたらす可能性がある。これは、電子リターン効果(ERE)と呼ばれる。そのような場合、再突入する電子は、対象の組織が受ける放射線量にさらに寄与する可能性がある。したがって、そのような電子組織再突入イベントのモデリングとシミュレーションは、放射線治療の計画や管理のような、放射線量の正確なシミュレーションを提供するために重要になり得る。他方、モンテカルロコンピュータシミュレーション中に計算リソースを費やして、対象から出て戻ってこない軌道上にある電子を正確にモデリングし続けると、何のメリットも得ずに時間がかかり、計算コストが高くなる可能性がある。このような問題点は、さまざまな治療計画シナリオの複数のシミュレーションを実行して評価および選択する機能を妨げる可能性がある。
【0054】
図4は、入射光子ビーム(「ビーム」)により標的とされる対象内の組織の領域を概念的に示し、ここで、対象の組織800の領域は、図4に示す方向の磁場「B」内に存在する。入射光子は、対象の組織800内の組織および自由電子(「生成された」電子と呼ぶことができる)と相互作用する。磁場Bが存在する組織800内では、電子は、図3Bの右側に示すような軌道に従い得る。図4は、磁場Bに対して横方向にある離れる電子e−の軌跡で、組織−空気界面の境界に対して垂直ではない角度で組織800を離れる電子e−の一実施例を示す。図4に概念的に示されるように、磁場Bは、横方向に離れる電子e−を磁場Bと整列する方向にらせん状の軌道をとらせる。この離れる電子e−が組織800に再突入しない限り(空気中の最初のらせん状の円周中に発生する可能性が最も高い)、モンテカルロコンピュータシミュレーションにおいて、この電子e−のらせん状の経路を正確にモデリングするために計算リソースを使い続けることは無駄である。その代わりに、この電子e−の軌道は、磁場Bに整列した方向の線形弾道運動としてより効率的に表すことができる。空気分子との相互作用によってこの電子によって引き起こされるエネルギー損失も、モンテカルロコンピュータシミュレーションのような線形弾道運動モデルを使用して適切かつ効率的にモデリングできる。線形弾道運動の結果、電子e−が組織800に再突入すると、より複雑ならせん運動のモデリングが、モンテカルロコンピュータシミュレーションにおいて再開できる。
【0055】
図5は、対象の一部が、磁気共鳴(MR)イメージング装置によって生成された磁場内のような、印加された磁場内に配置されるような、対象における放射線の線量をモデリングすることを含むコンピュータシミュレーションの、コンピュータプロセッサ回路によって実行できるような方法500の部分の一実施例を示す。本明細書で説明するように、コンピュータシミュレーション技術は、コンピュータシミュレーションされた印加磁場のコンピュータシミュレーションされたローレンツ力によって引き起こされるらせん状の軌跡により、領域から出たり戻ったりするようにコンピュータシミュレーションされた電子からのリターン電子効果を考慮し得る。
【0056】
ステップ502において、対象の一部についての三次元(3D)画像データを使用するような、モンテカルロシミュレーション反復が実行される。画像データは、ボクセルの空間3D配置を含む。各ボクセルは、MRまたは他の撮像装置によって観察された対応する組織密度の表示を含む。例えば、対象内の骨の領域は、軟組織の領域よりも高い密度値で表され、そして、軟組織は、対象の内外の空気領域よりも高い密度値で表される。一実施例では、画像データは、患者内ボクセルと患者外ボクセルを区別する、または、患者内組織ボクセルと、患者外ボクセルまたは空気領域の患者内のいずれかに位置する「空気」ボクセルを区別するように、両者を分類するためにボクセル密度値をしきい値と比較することにより、高密度値のボクセルと低密度のボクセルにセグメントされる。
【0057】
ステップ502において、モンテカルロコンピュータシミュレーションは、3D撮像データ内に表されるように、対象の組織領域上に入射する放射線治療装置によって生成された光子のシミュレーションを含むことができる。ステップ502でのモンテカルロシミュレーションは、入射光子などの組織内で生成された結果としての電子をモデリングすることもできる。そのような結果としての各電子について、ステップ502における詳細なモンテカルロシミュレーションの任意の反復が、そのような電子が組織ボクセル内のような高密度ボクセル内にあることを示す場合には、関連する累積経路長データはゼロに設定される。
【0058】
モンテカルロシミュレーションは、図3Bおよび3Cに関連して説明されているような、シミュレーションされた印加磁場内の電子輸送に対するシミュレーションされたローレンツ力を含む「詳細な電子輸送モデル」を用いて、組織のボクセルのような高密度ボクセル内で生成された電子の軌跡をモデリングすることができる。ステップ502でのモンテカルロシミュレーションは、「I. Kawrakow et al., "The EGSnrc Code System: Monte Carlo Simulation of Electron and Photon Transport", Ionizing Radiation Standards, National Research Council Canada, Ottawa, Canada (NCRCC Report PIRS-701), Jun.9, 2017(例えば、Section 2.4, "Simulation of Electron Transport"を参照)」に記載されているような、詳細な電子輸送シミュレーションモデル(detailed electron transport simulation model)を含み得るCondensed History Techniqueまたは同様のシミュレーションを用いることを含めることができる。「詳細な電子輸送シミュレーションモデル(detailed electron transport simulation model)」は、シミュレーションされた印加磁場内のローレンツ力により、空気中の電子のらせん軌道を生成する。詳細な電子輸送モデル(detailed electron transport model)は、高密度ボクセル内の電子に適用でき、かつ、「詳細な電子輸送シミュレーションモデル(detailed electron transport simulation model)」で、リターン電子効果を説明できる軌道曲率をシミュレーションしながら、本明細書で説明するような、より計算効率の高い線形弾道運動モデルに移行できるまで、低密度ボクセル内でより限定的方法で適用することもできる。
【0059】
ステップ504において、ステップ502における詳細なモンテカルロシミュレーションの反復が、高密度領域から(例えば、組織ボクセル領域から)低密度領域への(例えば、対象内部または対象外部の空気ボクセル領域への)電子の輸送をモデリングする場合には、このような電子が組織を出て空気に入るのを監視して、ステップ506で示される一連の行為から始まるような、印加磁場におけるローレンツ力によって引き起こされるらせん状の運動を説明できるより複雑な詳細な電子輸送モデルではなく、より計算効率の高い線形弾道モデルを使用して、シミュレーションを簡略化することができる。それ以外の場合、処理フローはステップ512に進み、シミュレーション中の個々の電子に対応する電子累積経路長データをゼロに設定またはリセットし、ステップ902に戻って、そのような電子に対する次のモンテカルロシミュレーションの反復を続けることができる。組織を出て空気に入る1つまたはそれ以上のシミュレーションされた電子の監視は、組織ボクセル領域内に残っている他の電子に対するステップ502でのモンテカルロシミュレーション反復と並行して、かつ、それと組み合わせて実行されることに留意されたい。
【0060】
ステップ506において、組織を出て空気に入る電子について、その電子の累積経路長データは、空気に入ると初期にゼロにセットする。累積経路長データ(または他の指定された累積経路長データしきい値)を使用して、その電子を、空気中で1つの完全ならせん状の描いたものとして、より詳細な電子輸送モデルを使用してシミュレーションすべきかどうかについて決定でき、その後、本明細書で説明するように、空気領域のこのような電子は、計算量の多い詳細な電子輸送モデル(それはらせんを考慮することができる)から、詳細度が低く計算量の少ない線形弾道運動モデルに切り替えることができる。
【0061】
また、本明細書でさらに説明するように、詳細な電子輸送モデルと、そのらせん軌道から単純化された線形弾道運動軌道への遷移は、1つの完全ならせん円周で正確に発生する必要はない。一実施例において、より単純化された線形弾道運動軌道モデルへの遷移には、1つの完全ならせん状の円周と2つの完全ならせん状の円周の間の疑似ランダムな位置が割り当てられる。この疑似ランダム遷移は、以下で更に説明するように、正確に1つの完全ならせん状円周でのらせん状モデルと線形弾道モデル間の均一な遷移により、多くの電子(そのいくつかは組織ボクセルに再突入する)に対する放射線量の系統誤差の蓄積を回避するのに役立つ。
【0062】
ステップ508において、空気に入る電子について、少なくとも1つの完全ならせん状の円周が完了するまで(または、他の指定された累積経路長のしきい値に達するまで)、らせん状の軌道モデルを用いた詳細なモンテカルロシミュレーションを続行する。
【0063】
ステップ510において、モンテカルロシミュレーションでスパイラル軌道を提供する詳細な電子輸送モデルを使用してシミュレーションされている電子について、高密度(例えば、組織ボクセル)領域の再突入が検出された場合には、ステップ512において、その電子に対応する累積経路長データの値はゼロにリセットされ、そして、詳細な電子輸送モデルと、そのらせん軌道を用いたモンテカルロシミュレーションは、高密度(例えば、組織ボクセル)領域に再突入した特定の電子について、ステップ502において続行する。そうでない場合、ステップ510において、電子が、高密度組織ボクセル領域に再突入しない場合には、ステップ514において、空気ボクセル領域を移動する電子の累積経路長データをチェックして、指定された累積経路長のしきい値(例えば、1つの完全ならせん状の円周、1つの完全なループのような指定された値)を超えるかどうかを決定する。一実施例において、この決定は、詳細な電子輸送モデルのらせん状軌道のジャイロ半径を、完全ならせん状円周に対応するループ長として決定する。ステップ514において、1つの完全ならせん状の円周が完了していない場合には、ステップ508において、詳細な電子輸送モデルと、そのらせん軌跡機能を用いた詳細なモンテカルロシミュレーションを続行することにより、詳細な電子輸送モデルと、そのらせん状の軌跡を用いて、らせん状のパスに沿った電子の増加する動きをシミュレーションするように、ステップ506において、その電子に対応する累積経路長データが再度増分更新(増加)される。
【0064】
ステップ514において、空気ボクセル領域を移動する電子に関連する累積経路長データが、高密度の組織ボクセル領域に再突入せずに、空気ボクセル領域のひとつの完全ループを超える場合には、ステップ518において、その電子が、より詳細な電子輸送モデルから印加磁場の方向と一致する方向のより単純化された線形弾道運動モデルに遷移するように指定される。しかし、前述のように、詳細な電子輸送モデルから単純化された線形弾道モデルへの正確な遷移は、らせん状の軌道に沿って擬似ランダムに選択された場所に延ばすことができる。これは、完全ならせん状の円周を完了した後、空気ボクセル内のすべての電子をらせん状の軌道から線形弾道的軌道に移行するようにシミュレーションすることにより、発生する可能性のある潜在的な系統誤差を回避する助けとなり得る。線形弾道軌道モデルは、以下で説明するように、そのような空気ボクセルを通過する間のエネルギー損失を考慮することができる。
【0065】
ステップ520において、簡略化された線形弾道軌道を用いてモデリングされた電子が、1つまたはそれ以上の空気ボクセルの領域から1つまたはそれ以上の組織ボクセルの領域に再び突入すると検出された場合には、ステップ522において、その電子に関連する電子エネルギーデータが、空気中での相互作用によるエネルギー損失に対して調整できる。そのような空気中の電子エネルギー損失は、直線軌道に関連する空気中のより近似した経路長の代わりに、所定のジャイロ半径のらせん状軌道に関連する空気中のより正確な経路長を用いることができる。例えば、簡略化された線形弾道運動軌道上の特定の長さが特定のジャイロ半径の200のスパイラルループに対応することがわかっている場合、より詳細な電子輸送モデルが代わりに使用されるならば、その電子が簡略化された線形弾道軌道を有するようにモデリングされている場合でも、ステップ522において、そのような200のスパイラルループの累積長を電子のエネルギー損失を決定するために用いることができる。また、ステップ512において、より詳細な電子輸送モデルと、そのらせん軌道機能を用いて、ステップ502において電子のモンテカルロシミュレーションを再開する前に、電子が再突入した組織に関連する累積経路長データをゼロにリセットする。
【0066】
組織ボクセルへの進入角度の疑似ランダム化が、より詳細な電子輸送モデルと、そのらせん軌道機能を用いてモンテカルロシミュレーションを再開する前に使用することができ、それは、より単純化された線形弾道運動モデルから、らせん状の軌道機能を有するより詳細な電子輸送モデルに移行する多くの電子に体系的な誤差が生じるのを防ぐのに役立つ。ステップ520において、簡略化された線形弾道軌道モデルを用いてモデリングされた電子が組織ボクセル領域に再突入しない場合(例えば、シミュレーションボリュームを出る場合)には、ステップ524において、そのような電子を、放射線治療の計画や実施などのために、対象の組織が受ける放射線量を決定する目的でさらなるシミュレーションから廃棄することができる。
【0067】
図5に関する上述する説明は、ボクセルデータが、組織および被験体の内部または外部の空気を表す低密度ボクセルを表す高密度ボクセルに分割することができる一実施例を強調するけれど、この技術は他の高密度ボクセルに同様に適用することができ、それにおいて、印加された磁場内でらせん状の電子軌道機能を可能にする詳細な電子輸送モデルが精度を提供するのに役立ち、そして、それにおいて、印加された磁場での線形弾道運動電子軌道モデルは、コンピュータシミュレーションの計算の複雑さを軽減し、シミュレーション速度を向上しながら、所望の目的を達成するのに適用される。
【0068】
要約すると、図5は、組織ボクセルを離れて空気ボクセルに入った光生成電子を評価して、らせん状の軌道に沿って回転している電子を特定できる一実施例を示している。円周スパイラル軌道のジャイロ半径は、電子に関連付けられた電子エネルギーデータに格納され得る電子エネルギー値や、電子の位置での印加された磁場Bの磁場強度または方向特性のような、1つまたはそれ以上の特性に基づいてモデリングすることができる。したがって、スパイラル軌道機能を有する詳細な電子輸送モデルからそれほど詳細でない線形弾道運動モデルに切り替えた後でも、低密度の空気ボクセル内の電子が通過する実際のスパイラル距離を決定できる。少なくとも1つの完全ならせん状の円周を通過するまで、らせん状の軌道機能を有する詳細な電子輸送モデルを維持することにより、より高密度の組織ボクセルに向かってカーブして再入力する電子は、放射線治療線量計算で説明できるが、らせん状に空気ボクセルへと移動し続ける電子は、線形弾道軌道モデルを適用することにより、より計算効率の高い方法で処理できる。
【0069】
らせん状の軌道機能を備えた詳細な電子輸送モデルを用いることから移行する場合、線形弾道軌道モデルを適用することに対して次のことが言えます。第1に、らせん状軌道の中心を通る軸を線形推定らせん方向として用いる等により、らせん軌道の線形推定方向を決定することができる。第2に、らせん状軌道の線形推定方向の交差角度が、磁場Bの方向との角度がより鋭角であるか、または、磁場Bの方向に対する角度がより鋭角であるか否かを決定する等のために、らせん状軌道のこの線形推定方向が、電子の位置での磁場Bの方向と比較することができる。第3に、より鋭角な角度を使用して、線形の弾道運動の軌跡を投影できる方向(磁場の方向または磁場の反対の方向)を選択して割り当てることができる。第4に、線形弾道運動のボクセルからボクセルへの光線追跡は、線形弾道運動軌道の割り当てられた方向で作成することができ、電子などの低密度ボクセルの連続したグループ内に電子がとどまり続ける限り、その軌道を続けることができる。第5に、高密度ボクセル(例えば、組織ボクセル)に到達すると、空気(または他の低密度ボクセル領域)の損失に関連するエネルギーの量を、本明細書に記載されるような電子エネルギーデータに格納された値から差し引くことができる。
【0070】
コンピュータシミュレーションの実施例では、放射線量モデリングモンテカルロシミュレーションが、患者の頭下部と頸部の領域に関連付けられたボクセルデータの3D撮像に対して実行された。組織のボクセルのみを通る電子輸送がモデリングされた場合、この実施例ではシミュレーション時間は152秒だった。患者の周囲に空気ボクセルが含まれており、らせん状の軌道を備えた詳細な電子輸送モデルを使用して、組織ボクセルにらせん状に戻る電子を表す精度の追加の利点をもって、空気ボクセルを通る電子輸送をモデリングした場合、この実施例ではシミュレーション時間は585秒だった。患者の周囲に空気ボクセルが含まれており、らせん状の軌道を持つ詳細な電子輸送モデルを用いて空気ボクセルの少なくとも1つの完全ならせん状の円周を完了した後、線形弾道軌道モデルを使用して、空気ボクセルを輸送する電子をモデリングした場合、この実施例ではシミュレーション時間は195秒だった。要約すると、空気ボクセルの線形弾道軌道モデリングはかなりのシミュレーション時間を節約するが、それは、同様に、被験者への放射線治療の計画と管理への最も適切なアプローチを決定するために実行可能なシミュレーションが可能なさまざまなシナリオの数を増やすのに役立つ。
【0071】
図6は、本明細書で説明される方法の1つまたはそれ以上を実施することができる装置またはマシン1000の実施形態のブロック図を一実施例として示す。画像処理装置112の1つまたはそれ以上のアイテムは、マシン1000によって実装される。マシン1000は、スタンドアロンデバイスとして動作することができ、または他のマシンに接続されても(例えば、ネットワーク化されても)よい。1つまたはそれ以上の実施形態において、画像処理装置112は、マシン1000の1つまたはそれ以上のアイテムを含むことができる。ネットワーク化された配置では、マシン1000は、サーバー、またはサーバークライアントネットワーク環境のサーバーのクライアントマシンの容量で、またはピアツーピア(または分散)ネットワーク環境のピアマシンとして動作する。マシンは、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、ネットワークルーター、スイッチまたはブリッジ、またはそのマシンが実行するアクションを指定する命令(シーケンシャルまたはそれ以外)を実行できるマシンであることができる。さらに、単一のマシンのみが示されているが、「マシン」という用語は、本明細書で説明する方法論の1つまたは複数を実行する命令のセット(または複数のセット)を個別または共同で実行するマシンの集合も含むものとする。
【0072】
例示的なマシン1000は、バス1008を介して互いに接続されているプロセッシング回路1002(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、特定用途向け集積回路、1つまたはそれ以上のトランジスタ、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、ダイオード、論理ゲート、マルチプレクサ、バッファ、変調器、復調器、無線装置(例えば、送信または受信無線装置またはトランシーバのような回路)、センサ1021(例えば、エネルギー(光、熱、電気、機械、またはその他のエネルギー)のあるフォームを他のフォームに変換するトランスデューサーなど、またはそれらの組み合わせ)、メインメモリ1004、およびスタティックメモリを含み得る。記載された方法に関連するまたはデータム(datum)又はデータ(data)は、そのようなメモリに格納され、またはそのようなメモリから取り出され、本明細書に記載された方法を実行するために必要に応じて初期化又は更新され得る。マシン1000(例えば、コンピュータシステム)は、ビデオディスプレイユニット1010(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))をさらに含み得る。マシン1000は、英数字入力装置1012(例えば、キーボード)、ユーザインターフェース(UI)ナビゲーション装置1014(例えば、マウス)、ディスクドライブまたは大容量記憶装置1016、信号生成装置1018(例えば、スピーカー)およびネットワークインターフェース装置1020も含み得る。
【0073】
ディスクドライブユニット1016は、本明細書で説明される方法または機能のうちのいずれか1つまたはそれ以上によって具現化または利用される命令およびデータ構造(例えば、ソフトウェア)1024の1つまたはそれ以上のセットが記憶される機械可読媒体1022を含み得る。命令1024は、また、マシン1000、メインメモリ1004およびプロセッサ1002による実行中に、完全にまたは少なくとも部分的に、メインメモリ1004および/またはプロセッサ1002内に常駐し、機械可読媒体を構成することができる。
【0074】
図示されたマシン1000は、出力コントローラ1028を含み得る。出力コントローラ1028は、マシン1000への、またはマシン1000からのデータフローを管理する。出力コントローラ1028はデバイスコントローラと呼ばれ、出力コントローラ1028と直接相互に作用するソフトウェアはデバイスドライバと呼ばれる。
【0075】
機械可読媒体1022は、例示的な実施形態では単一の媒体であるように示されているが、用語「機械可読媒体」は、1つまたはそれ以上の命令またはデータ構造を格納する、単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型または分散型データベース、および/または関連するキャッシュおよびサーバー)を含み得る。「機械可読媒体」という用語は、機械による実行のための命令を格納、符号化、または搬送することができ、機械に本発明の方法論の1つまたはそれ以上を実行させることができ、またはそのような命令によって利用される、または関連するデータ構造を保存、エンコード、または実行することができる、いかなる有形媒体も含むものとする。したがって、「機械可読媒体」という用語は、ソリッドステートメモリ、光学および磁気媒体を含むと解されるが、これらに限定されない。機械可読媒体の特定の例は、半導体メモリデバイスを含む不揮発性メモリ、たとえば、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、およびフラッシュメモリデバイス、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク。光磁気ディスク、およびCD−ROMおよびDVD−ROMディスクを含む。
【0076】
命令1024は、さらに、伝送媒体を使用して通信ネットワーク1026を介して送信または受信され得る。命令1024は、ネットワークインターフェース装置1020や、いくつかの周知の転送プロトコル(例えば、HTTP)のうちのいずれか1つを使用して送信され得る。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネット、携帯電話ネットワーク、プレインオールドテレフォン(POTS)ネットワーク、および無線データネットワーク(例えば、WiFi、WiMaxネットワークなど)が含まれる。「伝送媒体」という用語は、機械による実行のための命令を保存、エンコード、または実行できる無形媒体を含み、そのようなソフトウェアの通信を促進するためのデジタルまたはアナログ通信信号または他の無形媒体を含むものとする。
【0077】
本明細書で使用する「通信可能に結合」とは、いずれかの結合上のエンティティがその間のアイテムを介して通信する必要があり、それらのエンティティがアイテムを介して通信せずに互いに通信できないことを意味する。
【0078】
上記の説明は、詳細な説明の一部を形成する添付の図面への参照を含む。図面は、本発明を実施することができる特定の実施形態を示すものである。これらの実施形態は、本明細書では「例」とも呼ばれる。そのような例は、図示または記載されたものに追加した要素を含むことができる。しかし、本願発明者らは、また、図示または記載されている要素のみが提供されている例を考慮している。さらに、本願発明者らは、また、特定の例(またはその1つまたは複数の態様)に関して、あるいは他の例(またはその1つまたは複数の態様)に関して示された、または説明された要素の任意の組合せまたは置換を用いる例を考慮している。
【0079】
本明細書と、参照により組み込まれたそれら文書との間で矛盾する用法がある場合には、本明細書の用法が支配する。
【0080】
本明細書では、用語「a」、「an」は、特許文書において一般的であるように使用され、「少なくともひとつ」または「1つまたは複数」の他の例または用法とは独立に1つまたは複数を含む。本明細書では、用語「または(or)」は、「AまたはB(A or B)」が、そうでないと示されない限り、「Aを含むがBを含まない(A but not B)」、「Bを含むがAを含まない(B but not A)」、「AおよびB(A and B)」を含むように、非排他的であることを指すために使用される。本明細書では、用語「including(含む)」および「in which(その中で)」は、それぞれの用語「comprising(含む)」および「wherein(ここで)」の平易な英語の等価物として使用される。また、添付の特許請求の範囲において、用語「含む(including)」、「含む(comprising)」は、オープンエンドであり、すなわち、請求項のそのような用語の後に列挙されている要素に追加した要素を含むシステム、装置、物品、組成物、製剤、またはプロセスが、依然としてその請求項の範囲内にあるとみなされる。さらに、添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」、および「第3の」などの用語は、単なるラベルとして使用されており、それらの対象に数値要件を課すことを意図していない。
【0081】
「平行(parallel)」、「垂直(perpendicular)」、「丸い(round)」、「四角い(square)」のような幾何学用語は、文脈で別の指示がない限り、絶対的な数学的精度を要求することを意図したものではない。代わりに、そのような幾何学用語は、製造または同等の機能による変動を許容する。例えば、要素が「丸い(round)」または「概して丸い(generally round)」と記述されている場合、正確に円形ではない要素(例えば、やや長方形または多辺の多角形のもの)もこの説明に含まれる。
【0082】
本明細書で説明される方法の例は、少なくとも部分的に機械またはコンピュータで実施することができる。いくつかの例は、上記の例で説明されたような方法を実行するように電子デバイスを構成するように動作可能な命令で符号化された、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体を含むことができる。そのような方法の実装は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コードなどのコードを含むことができる。そのようなコードは、様々な方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成する場合がある。さらに、一実施例では、コードは、実行中などに、1つまたはそれ以上の揮発性、非一時的、または不揮発性の有形のコンピュータ可読媒体に有形に格納することができる。これらの有形のコンピュータ可読媒体の例には、ハードディスク、取り外し可能な磁気ディスク、取り外し可能な光ディスク(例えば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカード、またはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などを含むことができる。
【0083】
上記の説明は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではない。例えば、上記の例(またはその1つまたはそれ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。上記の説明を検討して当業者によるようにして、他の実施形態を用いることができる。要約書は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために、米国特許法施行規則第1.72条(b)に準拠して提供される。本明細書は、特許請求の範囲または意味を解釈または限定するために使用されることはないとの理解のもとに提出されている。また、上記の発明の詳細な説明では、開示を簡素化するために、さまざまな機能をグループ化することがある。これは、特許請求されていない開示された機能が、特許請求の範囲に不可欠であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は、特定の開示された実施形態のすべての特徴より少ないことがある。したがって、以下の請求項は、実施例または実施形態として詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態としてそれ自体で成立し、そのような実施形態は、様々な組み合わせまたは置換で互いに組み合わせることができると考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに決定されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020年7月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
2は、X線源または線形加速器のような放射線源、カウチ216、撮像検出器214、および放射線治療出力204を含む、例示的な放射線治療装置150を示す。放射線治療装置202は、放射線ビーム208を出射して患者に治療を提供するように構成されている。放射線治療出力204は、マルチリーフコリメータ(MLC)のような1つまたはそれ以上の減衰器またはコリメータを含むことができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【国際調査報告】