【実施例】
【0119】
実施例1.中枢神経系(CNS)障害を治療するためのタンニン酸の強力な部分の同定及びその有効性の決定
D−アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)を阻害するタンニン酸の活性は、以下のように決定された。
【0120】
DAAOの活性は、既知の基質であるD−プロリンの異化の阻害を測定することにより、インビトロで決定された。補因子FAD(40μM)を最初にDAAO溶液に追加した。アッセイでは、タンニン酸の潜在的な阻害剤を、リン酸緩衝生理食塩水(137mM NaCl、3mM KCl、10mM Na
2HPO
4、2mM NaH
2PO
4、pH7.4)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(5U/ml)、o−フェニレンジアミン(OPD、0.03%)、及び0.6μgのヒト(又はブタ)DAAOを含む反応混合物と混合し、約5分間インキュベートした。プレインキュベーション期間後、40mM D−プロリンを基質として加え、反応を10分間継続した。OPDは西洋ワサビペルオキシダーゼによって酸化され、2,3−ジアミノフェナジン(DAP)を形成した。DAPの吸光度は、分光光度法により453nmで測定された。アッセイは、IC
50を生成するために阻害剤の連続希釈で行われ、Prism(Graphpad Software)によって分析された。分析では、分光光度法の測定値を標準方程式に適合させ、50%阻害(IC
50)の濃度を決定した。すべての酵素アッセイは、96ウェルプレート形式で室温にて行った。
【0121】
図1に示すように、粗タンニン酸はグループとして、強力なD−アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)阻害活性を示し、IC
50値は5.47μMであった。
【0122】
タンニン酸のサブグループ(特定の数のガロイル部分を有する)のDAAO阻害活性は、次のように決定された。ガロイル部分の数が異なるタンニン酸画分を、グラジエント溶出でアセトニトリルと蒸留水の移動相を使用した逆相カラム(LiChroprep(登録商標)RP−18)で分離した。80μM(表2)及び300nM(
図2、表2)での各タンニン酸画分のDAAO阻害活性は、ブランク対照として蒸留水及び10%DMSO水溶液と、ポジティブ対照として安息香酸ナトリウムを使用して、上記の方法で分析した。
【0123】
【表3】
【0124】
表2は、ガロイル部分の数が異なるタンニン酸の抗DAAO活性を示す。4つ以上のガロイル部分を有するタンニン酸は、4つ未満のガロイル部分を有するタンニン酸と比較して、DAAOの阻害においてはるかに高い活性を示した。すべてのDAAOアッセイは、80μMのタンニン酸を用いて行われた。
【0125】
【表4】
【0126】
表3は、30nMでガロイル部分の数が異なるタンニン酸の抗DAAO活性を示す。3のガロイル部分は弱い活性を示したが、より多くの数のガロイル部分はDAAO活性の有意に高い阻害を示した。(G=ガロイル基の数)。
【0127】
【表5】
【0128】
以下の表4は、ガロイル部分の数が異なるタンニン酸の抗DAAO活性のIC
50(μM)を示す。IC
50は、ガロイル部分の数が異なるタンニン酸ごとに決定された。これは、3を超えるガロイル部分を有する強力なタンニン酸を示す。4以上のガロイル部分を有するタンニン酸は、4未満のガロイル部分を有するタンニン酸と比較して、はるかに小さいIC
50を示し、DAAOの阻害により強力である。(G=ガロイル基の数)。
【0129】
【表6】
【0130】
したがって、3を超えるガロイル部分を有するタンニン酸の精製は、タンニン酸混合物と比較して、より小さいIC
50で示される効力を高める(表5)。結果は、3以上のガロイル部分(例えば、4〜10)を有するタンニン酸が、3以下のガロイル部分を有するタンニン酸よりも高いDAAO阻害効力を示したことを示す。
【0131】
実施例2.基本的な行動機能と認知行動に対するタンニン酸の効果
この研究の目的は、タンニン酸の複数回投与が基本的な代謝、行動機能、認知行動に及ぼす影響を検証することであった。この実験では、タンニン酸の反復注射又は経口投与後、各マウスの体重、自発運動、不安様行動、空間学習と記憶、うつ病様行動、感覚運動ゲーティング機能を調べた。これらの活動は、NMDA受容体によって媒介されることが知られている。(Wu et al., PNAS; 110(36):14765-70 (2013); Furuya et al., Eur J Pharmacol, 364(2-3):133-140 [1999]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014]; McLamb et al., Pharmacol Biochem Behav, 37(1):41-45 [1990]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010]; Wiley et al, Eur J Pharmacol, 294(1):101-107 [1995]; Wu et al., Psychopharmacology (Berl), 177(3):256-263 [2005])。この研究の例示的な図を
図3に示す。
【0132】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3〜5匹のマウス)で、動物部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意された。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に行われた。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0133】
タンニン酸の反復注射
タンニン酸はSigma(Sigma−Aldrich、USA)から購入した。成体マウスは、3つのグループにランダムに割り当てられた:(1)対照、(2)タンニン酸(10mg/kg)、及び(3)タンニン酸(30mg/kg)、それぞれ、ベヒクル対照(PBS)、10mg/kgのタンニン酸、及び30mg/kgのタンニン酸によって処理された。行動試験の2週間前に、すべてのマウスに1日おきにベヒクル対照又はタンニン酸を腹腔内(i.p.)に注射した。身体の発達と代謝の指標となる各マウスの体重を注射の日に記録した。
【0134】
タンニン酸の反復注射がマウスの基本的な行動機能及び認知的行動に及ぼす影響の調査上記のベヒクル対照又はタンニン酸で処理されたすべてのマウスは、5つのタスクで順次試験された:(1)自発運動試験のオープンフィールドタスク、(2)高架式十字迷路による不安様行動試験、(3)空間バーンズ迷路による学習及び記憶試験、(4)尾懸垂による抑うつ様行動試験、及び(5)プレパルス阻害による感覚運動機能試験。異なるタスクの間に少なくとも1週間の間隔を空けた。キャリーオーバーの影響を最小限に抑えるために、タスクをシーケンスに配置して、ストレスの少ないタスクの前にストレスの多いタスクが発生しないようにした。手順については、Current protocol in Neuroscience (Developmental Editor: Eric Prager, Online ISBN: 9780471142300, DOI: 10.1002/0471142301)で説明され、これらの関連する開示は、意図された目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
結果
身体発達と体重減少
反復注射の期間中、タンニン酸(10mg/kg)群の体重は対照群よりも低いレベルで増加したが、タンニン酸(30mg/kg)の体重は対照よりも非常に軽かった。
図4を参照されたい。
【0136】
自発的な自発運動
オープンフィールドタスクは、新規性によって引き起こされる探索行動とマウスとラットの両方の一般的な活動の一般的な測定である。この研究では、マウスをPLEXIGLAS(登録商標)ケージ(37.5cm×21.5cm×18cm)に50〜65ルクスの光度で配置した。それらの自発的な自発運動は、EthoVisionビデオ追跡システム(Noldus Information Technology、オランダ)を使用して60分間測定された。各マウスの移動距離を運動活動の指標として測定した。
図5に示すように、タンニン酸は、投与量に依存して、処理されたマウスの移動距離を短縮した。
【0137】
同様の実験が行われ、マウスに単回投与で10mg/kg、30mg/kg、100mg/kg、300mg/kg、600mg/kgが経口投与され、その運動活動が30分、60分、90分、120測定された。試験されたすべての用量のタンニン酸は、ビヒクル対照で処置されたマウスと比較して、処置されたマウスの運動を減少させた。結果を
図6に示す。
【0138】
不安様行動
2本の開いたアームと2本の閉じたアームからなる高架式十字迷路を使用して、本能的に不安な行動を評価した。迷路は床から50cm上昇し、2本の開いたアーム(それぞれ長さ50cm×幅10cm)、2つの閉じたアームと屋根のない高さ45cmの壁(それぞれ長さ50cm×幅10cm)、及び四角形中央プラットフォーム(10×10cm)を有した。各マウスを中央プラットフォームに配置し、閉じたアームの1つに向けて、50〜65ルクスの光強度で5分間観察した。迷路の各部分に費やされた時間と、迷路の各部分の移動距離は、EthoVision追跡システム(Noldus Information Technology、オランダ)によって記録された。
【0139】
各グループの嫌悪期間の比率を
図7パネルAに示した。対照グループと比較して、タンニン酸(30mg/kg)グループはわずかに高い嫌悪期間の比率を示したが、タンニン酸(10mg/kg)グループでは示さなかった。各グループの嫌悪距離比を
図7パネルBに示した。タンニン酸(30mg/kg)グループは、対照グループと比較して有意に高い嫌悪距離比を示した。各グループのリスク評価の数を
図7パネルCに示す。対照グループと比較して、両方のタンニン酸グループは有意に低いリスク評価を示した(すべてp<0.05)。
【0140】
空間学習と記憶
以前に記載されているように(Barnes, J Comp Physiol Psychol, 93(1):74-104 [1979])、空間学習と記憶を調べるために、マウスをバーンズ迷路で試験した。このパラダイムは、限定されないが、統合失調症、うつ病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、中毒障害、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脳卒中、及び脆弱X症候群などのCNS障害のマウスモデルでよく検討されている(Cook et al., 2014; Gotz and Ittner, 2008; Hendriksen and Vles, 2008; Conklin et al., 2000; Song et al., 2006; Lai et al., 2014; Vasterling et al., 2002; Hyman, 2005; Schaar et al., 2010; Santos et al., 2014; Zhu et al., 2007; Deckersbach et al., 2000を参照されたい。 試験装置は、周囲に等間隔に配置された20個の穴(直径7cm、穴の間は7cm)の高さ(床から50cm)の円形PLEXIGLAS(登録商標)プレート(直径100cm)であった。マウスをプレート上で訓練して、標的穴の後ろに隠されたエスケープボックス(25×8×6cm)を特定した。これは、モリス水迷路タスクの隠されたプラットフォームのアナログとして指定された。ターゲットホールの位置は、マウスごとに選択されたが、マウス間でランダム化された。マウスは最初、不透明なシリンダーで覆われたプレートの中央に置かれ、シリンダーは、嫌悪感のあるトーン(440Hz、85dB)とライト(100ルクス)の両方をオンにして、試験の開始から10秒後に取り外された。マウスは、周囲の視覚的手がかりにしたがって標的穴を見つけるように訓練され、連続する3日間にわたって1日あたり3回の訓練試行で嫌悪トーンから脱出した。空間記憶は「プローブ試験」によって測定された。トレーニングトライアルとプローブトライアルはすべて3分間録画された。次に、トレーニング試験のエスケープレイテンシと、プローブ試験中の異なる象限(ターゲット、左、右、及び反対)の時間の割合を分析した。プローブ試験では、
図8に示すように、タンニン酸(30mg/kg)グループはターゲットゾーンに対して有意な優先度を示したが、他のグループはそうではなかった。
【0141】
タンニン酸を様々な用量で複数回注射して処置したマウスの基本的な代謝、行動機能、及び認知行動特性を、実施例2に記載の実験で調べた。要約すると、3つの主要な所見が認められた。
【0142】
第1に、タンニン酸(30mg/kg)グループのマウスの体重が減少した。このグループのマウスは、オープンフィールドで低い自発運動も示した。オープンフィールドタスクは、新規性が誘発する自発運動と一般的な運動機能を試験するために使用された(Powell et al., Biol Psychiatry, 59(12):1198-1207 [2006]; van den Buuse, Schizophr Bull, 36(2):246-270 [2010])。理論に縛られることなく、タンニン酸の注射を繰り返し行ったマウスの運動活動の低下は、新しい環境への慣れが速いためであると考えられる。
【0143】
第2に、タンニン酸で処理したマウスの不安様行動は、高架式十字迷路で減少した。高架式十字迷路タスクは、抗不安薬又は不安誘発性化合物の推定スクリーニングのためのマウスモデルである(Rodgers et al., Braz J Med Biol Res, 30(3):289-304 [1997]; Steimer, Dialogues Clin Neurosci, 13(4):495-506 [2011])。オープンアームで過ごす時間の割合の増加は、プラス迷路での不安の低下を表す。実験では、繰り返し注射を行ったマウスは、開いたアームで過ごす時間の割合が高いだけでなく、開いたアームで移動距離の割合が高く、リスク評価が低かった。これらの結果は、タンニン酸の繰り返し注射が高架式十字迷路の不安様行動を軽減したことを裏付けている。
【0144】
第3に、タンニン酸を繰り返し注射したマウスは、バーンズ迷路で空間記憶検索の強化を示した。バーンズ迷路は、マウスの認知機能、特に空間学習と記憶を評価するタスクである(Rosenfeld et al., J Vis Exp, (84):e51194 [2014])。特定の認知機能領域の理解の進歩に基づいて、統合研究、認知症、アルツハイマー病、うつ病、強迫性障害(OCD)などを含む多くの精神疾患における認知障害の影響が強調される臨床研究が増加している(Kirova et al., Biomed Res Int, 748212 [2015]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014]; Okasha et al., Acta Psychiatr Scand, 101(4):281-285 [2000]; Rosenblat et al., Int J Neuropsychopharmacol, pii: pyv082 [2015]; Terry et al., Ann Neurol, 30(4):572-580 [1991])。プローブ試験(記憶回復フェーズ)では、タンニン酸(30グループ)がターゲットゾーンに対する優先度を表示した。この証拠は、高用量のタンニン酸の反復注射が正常なマウスの認知機能を高めることができることを示した。さらに、NMDA受容体シグナル伝達は、学習プロセスと記憶の統合における重要な役割と考えられる(Newcomer et al., Hippocampus, 11(5):529-542 [2001]; Rezvani, Animal Models of Cognitive Impairment, 1(4) [2006])。したがって、タンニン酸の繰り返し注射は、マウスのNMDAシグナル伝達を介して認知機能を高める可能性がある。
【0145】
したがって、この研究の結果は、タンニン酸が体重減少及び基本的な行動機能、多動性、不安、記憶、及び/又は認知行動の改善に効果的であることを示す。例えば、ADHDの子どもの大部分は併存性の学習障害を抱えており、学習と記憶への影響を考えると、タンニン酸によっても改善することができる。
【0146】
実施例3.MK−801処理されたマウスにおけるタンニン酸注射の救出及び保護効果
この実験の目的は、よく知られたNMDA受容体拮抗薬であるMK−801を使用して、CNS障害の治療におけるタンニン酸の潜在的な作用機序を評価することであった。タンニン酸とMK−801は、それぞれ行動試験(つまり、オープンフィールドとプレパルス阻害)の前に腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0147】
実験計画
この実験は、タンニン酸の作用メカニズムを特徴付けるために設計された。MK−801はジゾシルピンとしても知られ、NMDA受容体の拮抗薬である(Kovacic et al., Oxid Med Cell Longev, 3(1):13-22 [2010])。これは、常同行動、無快感症、学習及び記憶障害、作業記憶障害及び感覚運動機能異常を含む、中枢神経系疾患のNMDA低機能誘発症状の多くの側面で使用される(Furuya et al., Eur J Pharmacol, 364(2-3):133-140 [1999]; McLamb et al., Pharmacol Biochem Behav, 37(1):41-45 [1990]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010]; White et al., Pharmacol Biochem Behav, 59(3):613-617 [1998]; Wu et al., Psychopharmacology (Berl), 177(3):256-263 [2005])。これらの実験の目的は、低機能NMDA受容体のマウスに対するタンニン酸の影響を評価することであった。例示的な実験計画を
図9に示す。
【0148】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3〜5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行される。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0149】
薬物投与
マウスはランダムに6つのグループに割り当てられた:
グループ1:PBS+生理食塩水対照;
グループ2:PBS+MK−801;
グループ3:タンニン酸(10mg/kg)+MK−801;
グループ4:タンニン酸(15mg/kg)+MK−801;
グループ5:タンニン酸(20mg/kg)+MK−801;及び
グループ6:タンニン酸(30mg/kg)+MK−801
【0150】
グループ2〜6の各マウスには、生理食塩水に溶解したMK−801(Sigma−Aldrich、米国)の急性投与(0.1mg/kg、i.p.)を行動試験の20分前に受けた。グループ3〜6の各マウスには、MK−801投与の20分前にタンニン酸(Sigma−Aldrich、米国;PBSに溶解した10、15、20、又は30mg/kg、i.p.)の急性投与を受けた。
【0151】
MK−801処置されたマウスに対するタンニン酸投与の影響の検討
この研究のすべてのマウスは、2つのタスクの間に少なくとも1週間の間隔をあけて、オープンフィールドタスクとプレパルス阻害タスクで試験された。追加のマウスコホートを使用して、プレパルス阻害に対するタンニン酸の様々な供給源の効果を試験した。
【0152】
結果
MK−801処理マウスの運動に対するタンニン酸の影響対照グループ(グループ1)と比較して、MK−801グループ(グループ2)は、超運動活動を示した。
図10に示すように、タンニン酸の10、20、及び30グループ(グループ3、5、及び6)は、対照グループよりも低い歩行活動を示した。MK−801グループ(グループ2)と比較して、すべてのタンニン酸
図10に示すように、グループはより低い歩行活動を示した。
【0153】
MK−801は、限定されないが、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レビーを伴う認知症、及び老人性認知症を含む動物モデルとして頻繁に適用される多動を生じる(Rubia et al., 2010; Sheppard and Bradshaw, 1999; Bent et al., 2014; Powell and Miyakawa, 2006; Nestler and Hyman, 2010; Bubenikova -Valesova et al., 2008; Gobira et al., 2013; Lai et al., 2014; Maio et al., 2014; Sontag et al., 2010; Ding et al., 2014; Walitza et al., 2007; Finestone et al., 1982; Golimstok et al., 2011)。
【0154】
MK−801処理マウスのプレパルス阻害に対するタンニン酸の影響−感覚運動機能
事前注意プロセスは自動的かつ迅速で、意識的な認識の外で動作する傾向があるが、意図的注意プロセスはリソースが限られており、より多くの努力を必要とし、動作がより遅くなる。前注意プロセスの一般的な尺度は、プレパルス阻害である。このパラダイムは、限定されないが、統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼瞼けいれん、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、アルツハイマー病、アルツハイマーの軽度認知症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、及び非てんかん発作を含むいくつかのCNS障害のマウスモデルで一般的に検討されている(McAlonan et al., 2002; Braff et al., 2001; Giakoumaki et al., 2007; Ueki et al., 2006; Perriol et al., 2005; Ludewig et al., 2002; Castellanos et al., 1996; Cadenhead et al., 2000; Matsuo et al., 2017; Lai et al., 2014; McCool et al., 2003; Arguello & Gogos, 2006を参照されたい)。これは、欠陥は、ヒト症状と同じように現れるためである。
【0155】
プレパルス阻害は、SR−LAB驚異的な装置(San Diego Instruments, San Diego, CA, USA)を使用した感覚運動ゲーティング機能の指標として使用された。72dBのバックグラウンドノイズの下では、各セッションは5分の蓄積期間と、それに続く4つのブロックでの64回の試行で構成された。パルスのみ(PA)の試験は、40ms、120dBのホワイトノイズバーストであった。プレパルス(pp)+パルス試験では、40ms、120dBパルスの100ms前に、78dB(pp6)、82dB(pp10)、及び90dB(pp18)の20msホワイトノイズプレパルス刺激が提示された。非刺激(NS)試験では、バックグラウンドノイズのみが表示された。最初のブロックと最後のブロックは、それぞれ6つのPA試験で構成された。中央の2つのブロックは、PA、pp+パルス、及びNSトライアルで構成された。これらの試験は疑似ランダムに提示され、平均15秒の種族間の間隔で区切られていた(10〜20秒の間で変化する)。プレパルス阻害のパーセンテージは、次の式で評価された:%PPI=100×[(PAスコア)−(pp−Pスコア)]/(PAスコア)(式中、PAスコアは、中央ブロックにおけるPA値の平均であった)。タンニン酸は、
図11及び12に示すように、
図11に示すように、用量依存的にプレパルス阻害を改善した。
【0156】
78dBのプレパルス強度では、6つのグループ間に有意差は見られなかった。82dBのプレパルス強度で、MK−801とタンニン酸(10mg/kg)のグループは、対照グループとの差を示さなかった。対照群と比較して、タンニン酸(15mg/kg)群は、わずかに高い割合のプレパルス阻害を示し、タンニン酸(20mg/kg)とタンニン酸(30mg/kg)群は、プレパルス阻害の有意に高い割合を示した。対照群と比較して90dBのプレパルス強度に関して、タンニン酸(15mg/kg)、タンニン酸(20mg/kg)、タンニン酸(30mg/kg)のグループでは、プレパルス阻害の割合が大幅に高くなっている。
図11に示すように、対照群と比較して、MK−801及びタンニン酸(10mg/kg)群ではそのような結果は観察されなかった。
【0157】
MK−801処理マウスのプレパルス阻害に対する異なるタンニン酸源の影響
この実験の目的は、プレパルス阻害に対するタンニン酸の様々な供給源の影響を評価することであった。この研究では、15mg/kgでSigma−Aldrich(供給源A)及びSpectrum、USA(供給源B)から購入したタンニン酸を使用した。供給源A及びBのタンニン酸の抗DAAO活性のIC
50(μM)は、それぞれ0.291及び0.636である。
【0158】
78dB及び82dBのプレパルス強度に関して、2つの供給源のタンニン酸で処理したマウスと対照グループ又はMK−801グループとの間に有意差は観察されなかった。90dBのプレパルス強度に関して、両方のタンニン酸グループは、対照グループと比較して有意に高い割合のプレパルス阻害を示したが、MK−801グループではそのような結果は観察されなかった。
図12に示すように、供給源A(Sigma−Aldrich)タンニン酸とソースB(Spectrum、米国)タンニン酸で処理したマウスから得られた結果は類似していた。
【0159】
精神病の症状は動物モデルで観察及び測定することが困難であるが、精神病関連の行動は、精神運動興奮、興奮症状、感覚ゲーティング、MK−801などの精神模倣薬に対する感受性などを試験することができる(Arguello et al., Neuron, 52(1): 179-196 [2006]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014])。マウスでは、オープンフィールドタスクでの超運動活動と新規性誘発運動活動の変化(新規性への慣れの障害又は探索の増加)に関連するパラメーターを使用して、精神運動の興奮と興奮症状をそれぞれ測定できる(Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014]; Powell et al., Biol Psychiatry, 59(12):1198-1207 [2006]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010])。本研究では、タンパク酸の投与、i.p.による又はos(p.o.)経路あたりの両方で、逆転/保護されたMK−801がオープンフィールドで運動亢進活動を誘発した。結果は、タンニン酸が精神病の症状(例えば、妄想及び幻覚)を治療するための潜在的な治療薬であることを示した。
【0160】
プレパルス阻害タスクでは、15mg/kgのタンニン酸が、MK−801で処理されたマウスの感覚運動ゲーティング機能を強化するのに十分であった。さらに、タンニン酸の様々な供給源は、プレパルス阻害課題における感覚運動機能の増強に影響を与えなかった。プレパルス阻害の障害は、マウスモデルでは統合失調症の表現型として一般的に考えられている。これは、欠損の症状がヒトでも同様に確認できるためである(Arguello et al., Neuron, 52(1):179-196 [2006]; Geyer et al., Schizophr Bull, 13(4):643-668 [1987]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014])。プレパルス阻害の障害は、他の中枢神経疾患にも見出され、例えば、自閉症スペクトラム障害((McAlonan et al., Brain, 125(Pt 7):1594-1606 [2002])、強迫性障害、ハンチントン病、夜尿症、注意欠陥障害、トゥレット症候群、眼瞼けいれん、非てんかん発作、心的外傷後ストレス障害(Braff et al., Psychopharmacology (Berl), 156(2-3):234-258 [2001])、パニック障害、双極性障害障害、アルツハイマー病の軽度認知症、レビー小体型認知症、注意欠陥多動性障害とチック障害の合併(Giakoumaki et al., Biol Psychiatry, 62(12):1418-1422 [2007]; Ludewig et al., Depress Anxiety, 15(2):55-60 [2002]; Perriol et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry, 76(1):106-108 [2005]; Ueki et al., Psychiatry Clin Neurosci, 60(1):55-62 [2006])が挙げられる。
【0161】
そのため、タンニン酸は様々なCNS障害の有望な治療薬である。さらに、タンニン酸は自発運動とMK−801誘発性運動亢進の両方を低減し、タンニン酸がADHDとその関連疾患の症状を改善する治療薬として機能できることを示す。
【0162】
さらに、タンニン酸はそれによって治療されるマウスの体重を維持及び/又は減少させることができることが観察され、タンニン酸が体重の制御及び/又は肥満及びその障害、例えば、摂食障害、神経性食欲不振、神経性過食症、脳卒中、冠状動脈性心臓病、心臓発作、うっ血性心不全、先天性心疾患、高血圧、非アルコール性脂肪性肝炎、インスリン抵抗性、高尿酸血症、甲状腺機能低下症、変形性関節症、胆石、不妊症(性腺機能低下症と性欲亢進症)、肥満性低換気症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性閉塞性肺疾患、及び喘息の治療に有効であることを示す。
【0163】
実施例4.MK−801処理マウスに対するタンニン酸経口投与の救出及び保護効果
この実験の目的は、よく知られたNMDA受容体拮抗薬であるMK−801を使用して、CNS障害の治療におけるタンニン酸の潜在的な作用機序を評価することであった。タンニン酸とMK−801は、それぞれ行動試験(すなわち、オープンフィールド、プレパルス阻害、バーンズ迷路とショ糖選好)の前に、それぞれ経口強制飼養(p.o.)と腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0164】
実験計画
この実験は、タンニン酸の作用メカニズムを特徴付けるために設計された。MK−801はジゾシルピンとしても知られ、NMDA受容体の拮抗薬である(Kovacic et al., Oxid Med Cell Longev, 3(1):13-22 [2010])。これは、常同行動、無快感症、学習及び記憶障害、作業記憶障害及び感覚運動機能異常を含む、中枢神経系疾患のNMDA低機能誘発症状の多くの側面で使用されている(Furuya et al., Eur J Pharmacol, 364(2-3):133-140 [1999]; McLamb et al., Pharmacol Biochem Behav, 37(1):41-45 [1990]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010]; White et al., Pharmacol Biochem Behav, 59(3):613-617 [1998]; Wu et al., Psychopharmacology (Berl), 177(3):256-263 [2005])。これらの実験の目的は、低機能NMDA受容体のマウスに対するタンニン酸の影響を評価することであった。例示的な実験計画を
図13に示す。
【0165】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3〜5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行された。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0166】
薬物投与
マウスは無作為に5つのグループに割り当てられた:
グループ1:PBS+生理食塩水対照;
グループ2:PBS+MK−801;
グループ3:タンニン酸(10mg/kg)+MK−801;
グループ4:タンニン酸(30mg/kg)+MK−801;及び
グループ5:タンニン酸(100mg/kg)+MK−801。
【0167】
グループ2〜5の各マウスは、行動試験の20分前に、IP注射により、通常の生理食塩水に溶解したMK−801(Sigma−Aldrich、米国)(オープンフィールド及びバーンズ迷路課題では0.1mg/kg、プレパルス阻害及びショ糖選好タスクでは0.2mg/kg)の急性投与を受けた。グループ3−6の各マウスは、MK−801投与の20分前に、タンニン酸(メルクミリポア、ドイツ;PBSに溶解、10、30、又は100mg/kg、経口)の急性経口投与を受けた。
【0168】
結果
MK−801投与マウスに対するタンニン酸投与の影響の検討
この研究のすべてのマウスは、オープンフィールドタスク、プレパルス阻害タスク、バーンズ迷路、ショ糖選好で、タスク間の間隔が少なくとも1週間である状態で試験された。
【0169】
MK−801処理マウスの歩行運動に対するタンニン酸経口投与の効果
この試験では、MK−801(0.1mg/kg)注射の20分前にタンニン酸を経口投与した。
図14に示すように、MK−801は運動量亢進を誘発し、タンニン酸はMK−801が誘発する運動量亢進を用量依存的に救出した。
【0170】
MK−801処理マウスのプレパルス阻害に対するタンニン酸の影響
対照群と比較して、MK−801(0.2mg/kg)は強力なプレパルス阻害障害を誘発した。78dB及び82dBのプレパルス強度では、タンニン酸(10、30、及び100mg/kg)は、MK−801によって誘発されるプレパルス阻害の障害を救出/保護しなかった。90dBのプレパルス強度の観点から、MK−801グループと比較して、タンニン酸(30mg/kg)及びタンニン酸(100mg/kg)グループは、MK−801によって誘発されたプレパルス阻害欠損に対して、大幅な救出/保護効果を示した。
図15に示すように、MK−801とタンニン酸(10mg/kg)のグループでは同様の結果は観察されなかった。
【0171】
MK−801処理マウスの空間学習と記憶に対するタンニン酸の影響
図16に示すように、タンニン酸は用量依存的にMK−801処理マウスのバーンズ迷路課題の記憶検索を改善する。
【0172】
MK−801投与マウスのうつ病様行動(無快感症)に対するタンニン酸の影響
対照群と比較して、MK−801群のマウスは、ショ糖溶液(2%)への選好を示さなかった。MK−801グループと比較して、タンニン酸30mg/kg及び100mg/kgのマウスは、
図17に示すように、MK−801によって誘発されるうつ病様行動(快感消失)に対して救出/保護効果を示した。ショ糖選好試験は、通常、限定されないが、うつ病、大うつ病性障害、無快感症、統合失調症の陰性症状、慢性の軽度で予測不可能なストレスなどのいくつかの精神疾患のマウスモデルで調べられている(Anderson et al., 2006; Carvalho et al., 2013; Briones et al., 2011; Der-Avakian and Markou, 2012; Tye et al., 2013; Edwards and Koob, 2012; Brigman et al., 2010; Koo and Duman, 2007; Nestler and Hyman, 2010; Overstreet, 2012; Papp et al., 1991; Santiago et al., 2010; Skalisz et al., 2002; Szczypka et al., 2001; Taylor et al., 2010; Vardigan et al., 2010; Willner et al., 1987; You et al., 2011)。
【0173】
実施例5.マウスにおけるタンニン酸の鎮痛効果
この実験の目的は、マウスにおけるタンニン酸の鎮痛効果を評価することであった。タンニン酸は、行動試験(すなわち、フォンフレイ試験)の前に腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0174】
実験計画
別のコホートは、フォン・フライ試験(痛み感覚の典型的なアッセイ)に使用された。
図22に示すように、各マウスの足を引っ込める閾値は、薬物注射前と薬物注射の30、60、90、120分後にサンプリングされた。
【0175】
方法と材料
動物及び飼育
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる餌と水を用意した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行された。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも8週齢)であった。
【0176】
薬物投与
マウスはランダムに2つのグループに割り当てられた:
グループ1:PBS対照;
グループ2:タンニン酸(15mg/kg)
グループ1の各マウスは、i.p.注射によるビヒクル対照としてPBSの急性投与を受けた。グループ2の各マウスは、タンニン酸の急性投与を受けた(Merck Millipore, Germany、PBSに溶解、15mg/kg、腹腔内)。
【0177】
結果
マウスにおけるタンニン酸注射の鎮痛効果
ベースライン時、グループ間に差は見られなかった。PBS対照と比較して、グループ2の閾値は、
図19に示すように、薬物注射後30分、60分、90分で有意に高かった。フォンフレイ試験は、限定されないが、痛覚過敏及び異痛症を含む神経因性疼痛、糖尿病性多発神経障害の感覚異常、慢性疼痛症候群(Park et al., 2015; Savage and Ma, 2015; Caterha et al., 2000; Nicotra et al., 2014; Keizer et al., 2007; Chakrabarty et al., 2011; Obrosova et al., 2007; Orita et al., 2011; Reeve et al., 2000参照)を含むいくつかのCNS障害のマウスモデルで一般的に検討されている。
【0178】
実施例6.異なるタンニン酸組成の比較様々なサプライヤーからの3つの市販タンニン酸の組成とD−アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)に対する阻害活性を比較した。
【0179】
実験計画
3つの市販タンニン酸の組成をHPLCにより決定し、D−AAOに対する阻害活性を実施例1に例示された方法により決定した
【0180】
方法と材料
HPLC条件
−機器:Agilent 1260カラム:Atlantis T3 150×4.6mm、30μm
−移動相A:水+0.1%トリフルオロ酢酸
−移動相B:メタノール:アセトニトリル2:8(v/v)
−カラム温度:25℃
−検出器:DAD 280nm
−流量:1.5mL/分
−試料の前処理:10mg/mL
−注入量:10μL
−希釈剤:水
−勾配:
【0181】
【表7】
【0182】
結果
組成:
異なる植物又は植物由来の3つのタンニン酸のHPLCクロマトグラムを
図20〜22に示す。
【0183】
DAAOに対する阻害活性:
3つの市販タンニン酸のDAAOとその組成に対する阻害活性を表6に示す。
【0184】
【表8】
【0185】
Rhus chinensisから抽出されたタンニン酸は、Quercus infectoriaのタンニン酸よりも6〜12Gの割合がはるかに高く、2〜5Gの割合がはるかに低いため、他の2つよりもDAAO阻害力が高くなる。
【0186】
実施例7.比較のための異なる植物又は植物源の没食子からのタンニン酸の抽出
タンニン酸は、示されているように異なる植物又は植物源の胡桃から抽出され、D−アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)に対する阻害活性が調査された。
【0187】
方法
没食子粉砕法
適切な植物又は植物源(下記の表6を参照)からタンニン酸を生成する没食子を機械式粉砕機で粉砕し、40メッシュのふるいに通して、細かい没食子粉末を生成した。
【0188】
細かい没食子粉末抽出法
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの適切な溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、又は1,4−ジオキサン)に入れた。このようにして形成された混合物を室温又は40℃で一晩撹拌した。得られた溶液を濾過し、濾液を真空中で濃縮して、タンニン酸を含む組成物を生成した。
【0189】
結果
DAAOに対する阻害活性:
上記の方法に従った、DAAOに対する様々な植物又は植物源の没食子から抽出されたタンニン酸の阻害活性を表7に示す。様々な直径の没食子とそのDAAO IC
50の比較を
図23に示す。
【0190】
【表9】
【0191】
表6及び
図23に示されているように、Rhus chinensis又はRhus potaniniiのいずれの没食子も、Quercus infectoriaのものよりも、DAAOに対するIC
50が低くなっている(強い阻害)。さらに、Rhus chinensis(直径3〜4cm)及びRhus potaninii(直径4〜5cm)からの小さな没食子は、同じ植物又は植物源からの大きい(直径6〜7cm)没食子と比較して、IC
50が低くなる。
【0192】
実施例8.異なる植物又は植物源の没食子から抽出されたタンニン酸の濃縮法
本明細書に記載されている各植物又は植物源の胡桃から抽出されたタンニン酸は、下記のように濃縮された。DAAOに対するそれらの阻害活性を調査した。
【0193】
濃縮法1
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はエタノール)に入れ、このようにして形成された混合物をRT又は20〜60℃のいずれかで12時間撹拌した。得られた溶液を濾過し、濾液を真空中で濃縮して、タンニン酸を含む組成物を形成した。組成物を50.0mLの50又は30%メチルエチルケトン/ヘキサン溶液(ヘキサン中の50%又は30%メチルエチルケトン)と混合した。このようにして形成された混合物をさらに室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油性の層(下層)を真空で濃縮して、粗固体を生成した。固形物を適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)50.0mLに溶解し、得られた溶液を木炭(1.6g)と混合した。得られた混合物を室温で12時間撹拌し、CaSO
4又はMgSO
4(2.5g)を混合物に加えた。このようにして形成された混合物をさらに室温で30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄し、真空で濃縮した。得られた固体(タンニン酸を含む)をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、次にこのように形成された溶液を撹拌し、CH
2Cl
2(72.0mL)と滴下混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸固体を生成した。
【0194】
濃縮法2
細かい粉末状の粉末(20.0g)を200.0mLの適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール)に入れ、室温で12時間撹拌した。このようにして形成された溶液を濾過し、収集した濾液を200.0mLのヘキサンと混合した。混合物を室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油層(下層)を真空中で濃縮し、こうして得られた固体を50.0mLの適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノールなど)に溶解した。得られた溶液を木炭(1.6g)と混合し、さらに室温で12時間撹拌した。このようにして得られた混合物をCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)とさらに混合し、室温で30分間撹拌した。混合物をセライトのベッドを通して濾過し、(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノールなど)(100mL×2)で洗浄し、真空で濃縮した。このようにして得られた粗残留物をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、このように形成された溶液を撹拌し、CH
2Cl
2(72.0mL)とゆっくりと混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0195】
濃縮法3
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れ、RTで12時間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を回収した。次に濾液をヘキサン200.0mLに加えた。このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油性層(下層)を収集し、40.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)及び木炭(1.6g)と混合し、得られた混合物を室温で12時間撹拌した。混合物をCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)とさらに混合し、RTで30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)で洗浄した(100mLx2)。得られた濾液を減圧濃縮し、得られた固形物をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解した。このようにして形成された溶液を撹拌し、CH
2Cl
2(72.0mL)と滴下して混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、真空下、40℃で2時間乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を形成した。
【0196】
濃縮法4
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れて混合物を形成し、これを室温で12時間撹拌した。混合物を木炭(1.6g)と混合し、RTで12時間撹拌した。得られた混合物をさらにCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)で洗浄した(100mL×2)。濾液を真空で濃縮し、得られた残渣をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、こうして形成された溶液を撹拌し、CH
2Cl
2(72.0mL)とゆっくりと混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0197】
濃縮法5
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れ、このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌した。混合物を木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。混合物をさらにCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌した。混合物をセライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄した。濾液を約10〜15mLに濃縮し、得られた溶液をCH
2Cl
2(60〜90mL)と滴下して混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、真空下、40℃で2時間乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を形成した。
【0198】
濃縮法6
細かい粉末状の粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れ、形成された溶液を室温で12時間撹拌してから、ろ過した。濾液を集め、木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。混合物をさらにCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌した。次いで、得られた混合物をベッドセライトで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄し、合わせた濾液を真空蒸発により濃縮した。このようにして形成された粗固体をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、溶液を撹拌し、CH
2Cl
2(72.0mL)とゆっくりと混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、真空下、40℃で2時間乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を得た。
【0199】
濃縮法7
細かい没食子粉末(20.0g)を50.0mLの50%又は30%メチルエチルケトン/ヘキサンに入れ、室温で12時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、固体を収集した。次に、固形物を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)と混合した。このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌し、濾過し、濾液を収集した。次に濾液を木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。得られた混合物をCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)とさらに混合し、RTで30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)で洗浄した(100mL×2)、そして濾液を真空蒸発により濃縮した。得られた残渣をアセトン又は酢酸エチル(12mL)に溶解し、撹拌後、CH
2Cl
2(72.0mL)を滴下した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0200】
濃縮法8
細かい没食子粉末(20.0g)を50%又は30%メチルエチルケトン/ヘキサン50mLに入れ、室温で12時間撹拌した。溶液を濾過し、収集した固体を溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)200.0mLと混合した。混合物を室温で12時間撹拌し、濾過し、収集した濾液を木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。得られた混合物をさらにCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)と混合し、室温で30分間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL帰る2)で洗浄し、濾液を約10〜15mLまで濃縮した。残留溶液をCH
2Cl
2(60〜90mL)とゆっくりと混合し、このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0201】
濃縮法9
細かい粉末状の粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はエタノール)に入れ、20〜60℃で12時間撹拌した。溶液を濾過し、集めた濾液をヘキサン200.0mLに入れた。このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油層(下層)を収集し、40.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)と混合し、このようにして形成された溶液を木炭(1.6g)と混合し、RTで12時間撹拌した。混合物をさらにCaSO
4又はMgSO
4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッドを通して濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮した。このようにして形成された残留物をアセトン又は酢酸エチル(12mL)に溶解し、次に溶液を撹拌し、CH
2Cl
2(72.0mL)と滴下混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40〜45℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0202】
濃縮法10
250mLの水に溶解したタンニン固体(100g)の商業供給源からの溶液、又は没食子の粉末又は小さなチップからの粗抽出物を、すべての固体が溶解するまでRTで撹拌し、その後、溶液に3.0gのK
2CO
3は50mLの水に溶解した。次に混合物を溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど)600mLでRTで1時間抽出し、この有機層を分離した。有機層にさらに20gのMgSO
4(複数可)を加え、室温で0.5時間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッド(20g)で濾過し、溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、100mL)で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。得られた残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、110mL)で希釈し、次に660mlの別の溶媒をRTで得られた溶液と混合し、得られた溶液を、添加が完了するまで撹拌した。混合物を室温で12〜18時間撹拌した。形成された固体を濾過により収集し、真空下、45℃で12時間乾燥した。得られたタンニン酸の組成を、HPLC−MS(
図26)及び
1H−NMRで分析した。濃縮法#10のタンニン酸の組成のHPLC−MSクロマトグラム(
図26)は、それぞれ15.99%と6.46%の非常に多量を含むUPS標準とWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationと比較して、0.35%未満の非タンニン酸不純物を含む。濃縮法#10のタンニン酸の組成の
1H−NMRスペクトルは、ガロリル及びグルコース部分のピークのみを示すが、USPスタンダード及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationのピークは、ガロイル及びグルコース部分以外のいくつかのピークを示す。濃縮法#10、USP標準、及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationからのタンニン酸の組成のさらなるHPLC−MS分析を表8に示す。濃縮法#10、USP。標準及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationからのタンニン酸の組成のさらに
1H−NMR分析を表9に示す。このように、濃縮法#10の後、タンニン酸の組成は、USP標準及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationのタンニン酸よりもはるかに高い純度を示すことが実証された。
【0203】
【表10】
【0204】
【表11】
【0205】
スラリー化法
上記のいずれかの濃縮法で得られた固形物を、2000mLの溶媒(ヘプタン、CH
2Cl
2、又はヘプタン/CH
2Cl
2(1:9から9:1)など)で35〜60℃にて8〜16時間スラリー化し、次に、形成された固体を濾過し、真空中で60〜70℃にて8時間蒸発させた。次に、固体を溶媒(ヘプタン、CH
2Cl
2又はヘプタン/CH
2Cl
2(1:9から9:1)など)2000mLで35〜60℃にて8〜16時間スラリー化した後、60〜70℃で8時間、固体を濾過し、真空で蒸発させた。最後に、固体をさらに2000mLの溶媒(ヘプタン、CH
2Cl
2又はヘプタン/CH
2Cl
2(1:9から9:1)など)で35〜60℃にて8〜16時間スラリー化し、生成した固体をろ過して、60〜70℃にて8時間真空中で蒸発させ、タンニン酸の固体を得た(収率:80%)。
【0206】
濃縮法11−没食子の抽出
没食子を完全に粉砕して細かい粉末を形成するか、大まかに小さなチップを最初に形成した。60〜100mLの溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、エタノール、又は水など)中の没食子粉末又は小さなチップ(10.0g)の溶液を35〜60℃で3時間、次に2番目の10.0gの没食子粉末又は小さなチップのバッチを溶液に加え、35〜60℃で3時間撹拌し続けた。10.0gの没食子粉末又は小さなチップの3番目のバッチを溶液に追加し、35〜60℃で8〜14時間撹拌した。撹拌期間が終了した後、溶液を濾過し、収集した濾液を真空で濃縮して、粗タンニン酸固体を得た(収率:54〜60%)。
【0207】
このマルチバッチのアプローチにより、粗タンニン酸抽出物の収率が大幅に向上することが判明した。比較結果については、以下の表10を参照されたい。
【0208】
【表12】
【0209】
以下の表11に示すように、没食子粉末と没食子スモールチップを使用すると、同様のタンニン酸抽出効率が得られることも判明した。
【0210】
【表13】
【0211】
濃縮法11−タンニン酸のさらなる濃縮
上記の粗タンニン酸固体(80g)を700mLの水に溶解した溶液を、すべての固体が溶解するまで室温で撹拌し、その後、溶液に、2.4gのK
2CO
3を100mLの水に溶解した溶液を加えた。次に混合物を1600mLの溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンを含む)でRTにて1時間抽出し、この有機層を分離した。有機層にさらに16gのMgSO
4(複数可)を加え、さらに室温で0.5時間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッドを通して濾過し(16g)、溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、80mL)で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトン、240mLを含む)で希釈した後、その溶液にヘキサン(720mL)を加え、室温で2時間撹拌した後、この有機層を分離された。得られた油性残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、240mL)で希釈した後、その溶液にヘキサン(720mL)を加え、RTで2時間撹拌し、次にこの有機層を分離した。得られた油性残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、100mL)で希釈し、次に別の溶媒660mlを室温で得られた溶液と混合し、添加が完了するまで撹拌した。混合物をさらに室温で12〜18時間撹拌した。形成された固体を濾過により収集し、真空下、45℃で6時間乾燥した。固体は、1600mLの溶媒(ヘプタン、CH
2Cl
2又はヘプタン/CH
2Cl
2(1:9から9:1)など)を用いて35〜60℃で16時間、スラリー化し、その後、固体をろ過し、60〜70℃で8時間、真空中で蒸発させた。次に、固体を1600mLの溶媒(ヘプタン、CH
2Cl
2又はヘプタン/CH
2Cl
2(1:9〜9:1)など)で35〜60℃で8〜16時間スラリー化し、固体をろ過して、60〜70℃で8時間真空で蒸発させた。固体をさらに1600mLの溶媒(ヘプタン、CH
2Cl
2又はヘプタン/CH
2Cl
2(1:9から9:1)を含む)で35〜60℃で8〜16時間スラリー化し、固体をろ過して真空で60〜70℃で8時間蒸発させ、望ましいタンニン酸を得た(収率:62%)。
【0212】
以下の表12は、HPLCにより決定された、本明細書に記載の濃縮法11により調製されたタンニン酸組成物中のタンニン酸の含有量を示す。この方法で調製されたタンニン酸組成物は、小さなタンニン酸(例えば、4未満のガロイル部分を有する)を実質的に含まず、かなりの部分が大きなタンニン酸である(例えば、8を超えるガロイル部分を有する)。本明細書に開示されるように、このようなタンニン酸組成物は、優れた治療効果が期待される。
【0213】
【表14】
【0214】
上記の調製プロセスの概略図を
図27に示す。
【0215】
結果
DAAOに対する阻害活性:
DAAOに対する、様々な植物又は植物源の没食子から抽出された、様々に濃縮されたタンニン酸の阻害活性を表13及び14に示す。
【0216】
【表15】
【0217】
表13に示すように、本明細書に記載されているいずれかの調製方法によるすべての濃縮タンニン酸は、濃縮されていないタンニン酸(直接抽出のみであり、1〜5ガロイル部分を有するタンニン酸の除去なし、木炭及びCaSO
4又はMgSO
4による処理なし、ならびに/又は第2の溶媒及び塩化メチレンによるさらなる処理なし)よりも低いIC
50値(より強い阻害を示す)を示した。さらに、濃縮法2及び3では、方法1及び7と比較して、DAAOに対するIC
50の活性が最も低い濃縮タンニン酸が得られ、濃縮法3では、濃縮法2よりもIC
50値が低い濃縮タンニン酸が得られた。さらに示されるように、EtOHとそれに続く濃縮法1による抽出からのタンニン酸は、同じ濃縮法と続くMEKによるものよりもわずかに弱い阻害を示した。
【0218】
【表16】
【0219】
表14に示すように、40℃の抽出温度での酢酸エチル(EtOAc)による抽出と、それに続く濃縮法3により、DAAOに対して、それぞれ、室温でのMEKによる抽出、40℃でのMEKによる抽出、及び40℃でのMEKに続く濃縮法3による抽出よりもはるかに低いIC
50の濃縮タンニン酸が得られた。さらに、表13と表14に示すように、直径6cm以下のRhus chinensisの没食子は、6cmより大きいものよりも低いIC
50値を示した。
【0220】
【表17】
【0221】
表15に示すように、濃縮法10のタンニン酸は、上記で示したように、最低量1〜4G、最高量5〜12Gの組成のDAAO IC
50が最低であった。
【0222】
残留溶媒:
1H−NMRで測定された残留溶媒を表16に示す。
【0223】
【表18】
【0224】
上記のように、3回のスラリー化後、残留溶媒、すなわちアセトンとジクロロメタンがさらに減少した。
【0225】
実施例9.MK−801処理されたマウスにおける濃縮#10タンニン酸の救出及び保護効果
この実験の目的は、よく知られているNMDA受容体拮抗薬であるMK−801モデルを使用して、CNS障害の治療における濃縮#10タンニン酸を評価することであった。タンニン酸とMK−801は、それぞれ行動試験(つまり、オープンフィールドとプレパルス阻害)の前に、それぞれ経口強制飼養(p.o.)と腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0226】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3〜5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意した。コロニーは12/12時間の明/暗サイクルで22±2℃の温度で維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行される。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0227】
歩行試験のための薬物投与
マウスは無作為に5つのグループに割り当てられた:
グループ1:ddH
2O+生理食塩水対照;
グループ2:ddH
2O+MK−801;
グループ3:Merck TA(50mg/kg)+MK−801;
グループ4:CCBiotech TA(50mg/kg)+MK−801;及び
グループ5:濃縮#10(50mg/kg)+MK−801。
【0228】
グループ2〜5の各マウスには、生理食塩水に溶解した0.2mg/kgのMK−801(Sigma−Aldrich、米国)の急性投与を、運動活動試験の20分前にi.p.注射で受けた。グループ3−6の各マウスは、MK−801投与20分前にp.o.により、ddH
2Oに溶解した50mg/kgのタンニン酸の急性経口投与を受けた。Merch Millipore(Merck TA)及びWufeng Chicheng Biotech(CCBiotech TA)から購入したタンニン酸、及び濃縮法10(濃縮#10)から50mg/kgのタンニン酸をこの研究で使用した。
【0229】
プレパルス阻害試験のための薬物投与
マウスは無作為に4つのグループに割り当てられた:
グループ1:ddH
2O+生理食塩水対照;
グループ2:ddH
2O+MK−801;
グループ3:濃縮#10(50mg/kg)+MK−801;及び
グループ4:濃縮#10(200mg/kg)+MK−801。
【0230】
グループ2〜4の各マウスは、プレパルスインヒビチン試験の20分前にi.p.注射により、生理食塩水に溶解した0.3mg/kgMK−801(Sigma−Aldrich、米国)の急性投与を受けた。グループ3〜4の各マウスは、MK−801投与の20分前にp.o.により、ddH
2Oに溶解した濃縮#10タンニン酸50又は200mg/kgの急性経口投与を受けた。
【0231】
結果
濃縮#10タンニン酸がMK−801処理マウスの運動活動に及ぼす影響
オープンフィールドタスクは、新規性によって引き起こされる探索行動とマウスとラットの両方の一般的な活動の一般的な測定である。この研究では、マウスをPLEXIGLAS(登録商標)ケージ(37.5cm×21.5cm×18cm)に50〜65ルクスの光度で配置した。それらの自発的な自発運動は、SMARTビデオ追跡システム(Panlab、Harvard Apparatus)を使用して30分間測定された。各マウスの移動距離を運動活動の指標として測定した。
【0232】
この実験の目的は、運動活動に対するタンニン酸の様々な供給源の影響を評価することであった。対照グループ(グループ1)と比較して、MK−801グループ(グループ2)は、超運動活動を示した。MK−801グループ(グループ2)と比較すると、Wufeng Chicheng Biotech(CCBiotech TA;グループ4)と濃縮法10(濃縮#10;グループ5)のグループのタンニン酸はどちらも有意に低い運動活動を示したが、タンニン酸メルクミリポア(メルクTA;グループ3)からではなかった。さらに、
図24に示すように、濃縮#10(グループ5)は、CCBiotech TA(グループ4)よりも低い歩行活動を示した。
【0233】
濃縮#10タンニン酸がMK−801処理マウスのプレパルス阻害に及ぼす影響
プレパルス阻害は、SR−LAB驚異的な装置(San Diego Instruments、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用した感覚運動ゲーティング機能の指標として使用された。65dBのバックグラウンドノイズの下では、各セッションは5分の蓄積期間と、それに続く4つのブロックでの64回の試行で構成された。パルスのみ(PA)の試行は、40ms、120dBのホワイトノイズバーストであった。プレパルス(pp)+パルスの試行では、71ms(pp6)、75dB(pp10)、及び83dB(pp18)の20msホワイトノイズプレパルス刺激が、40ms 120 dBパルスの100ms前に提示された。非刺激(NS)試験では、バックグラウンドノイズのみが表示された。最初のブロックと最後のブロックは、それぞれ6つのPAトライアルで構成されていた。中央の2つのブロックは、PA、pp+パルス、及びNSトライアルで構成された。これらの試験は疑似ランダムに提示され、平均15秒の部族間間隔で区切られていた(10〜20秒の間で変化する)。プレパルス阻害のパーセンテージは、次の式で評価された。%PPI=100×[(PAスコア)−(pp−Pスコア)]/(PAスコア)。PAスコアは中央ブロックのPA値の平均であった。
【0234】
対照群と比較して、MK−801(0.3mg/kg)は、すべてのプレパルス強度でロバストなプレパルス阻害障害を誘発した。71dBのプレパルス強度で、タンニン酸(50及び200mg/kg)は、MK−801によって誘発されるプレパルス阻害の障害を救済/保護しなかった。75dB及び83dBのプレパルス強度の観点から、MK−801グループと比較して、タンニン酸(50mg/kg)及びタンニン酸(200mg/kg)グループはMK−801誘発性のプレパルス阻害欠損に対して有意な救出/保護効果を示した。50mg/kg及び200mg/kgの濃縮#10タンニン酸で処理したマウスから得られた結果は、
図25に示すように類似していた。これは、50mg/kgの比較的低用量での濃縮#10タンニン酸の天井効果を示す。
【0235】
実施例10.様々な供給源からのタンニン酸の急性毒性研究
この実施例の目的は、副作用を評価し、7日間の観察期間後、Sigma(Sigmaタンニン酸)から購入したタンニン酸と濃縮法10(濃縮#10)から購入したタンニン酸の最大耐量(MTD)を、強制経口投与(p.o.)後に決定することであった。
【0236】
方法及び材料
動物及び飼育条件C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3〜5匹のマウス)で、動物室のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、米国)で自由に利用できる食物と水を使用した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行される。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0237】
タンニン酸は、Sigma(Sigmaタンニン酸)から購入したか、濃縮法10(濃縮#10)から作成した。Sigmaタンニン酸の場合、成体マウスは4つのグループにランダムに割り当てられた:(1)対照、(2)タンニン酸(500mg/kg)、(3)タンニン酸(750mg/kg)、及び(4)タンニン酸(1000mg/kg)。それぞれ、ベヒクル対照(ddH
2O)、タンニン酸500mg/kg、タンニン酸750mg/kg、タンニン酸1000mg/kgで処理された。濃縮#10タンニン酸の場合、成体マウスは5つのグループにランダムに割り当てられた:(1)対照、(2)タンニン酸(200mg/kg)、(3)タンニン酸(500mg/kg)、(4)タンニン酸(1000mg/kg)、(5)タンニン酸(2000mg/kg)。それぞれ、ベヒクル対照(ddH
2O)、タンニン酸200mg/kg、タンニン酸500mg/kgで、1000mg/kgのタンニン酸及び2000mg/kgのタンニン酸で処理された。すべてのマウスに、ベヒクル対照又はタンニン酸を強制経口投与(p.o.)で投与した。動物は、死亡率、罹患率、呼吸、分泌物、糞便、及び水と食物摂取の能力の兆候について、研究期間中、1日2回(午前と午後)又は必要に応じて頻繁に観察される。各マウスの体重は、身体の発達と代謝の指標として機能し、研究全体を通じて毎日記録された。
【0238】
結果
Sigmaタンニン酸試験では、すべてのマウスに1000mg/kgのSigmaタンニン酸が投与され、投与後35分で不活動、胸骨横臥、呼吸数の変化が見られ、2日目には瀕死状態になった。試験中、症状は元に戻らなかった。3分の1のマウスは500mg/kg又は750mg/kgを投与され、投与後35分間で胸骨横臥を示した。研究中、全マウスに500mg/kg又は750mg/kgが生存した。Sigmaタンニン酸の最大耐量は750mg/kgであった。濃縮#10タンニン酸研究では、2000mg/kgのタンニン酸を投与されたすべてのマウスが、活動の低下、反り返り、投与直後の激しい呼吸を示し、10分で回復した。悪影響は観察されず、肉眼的剖検ではすべてのグループで有意な所見は得られなかった。濃縮#10タンニン酸の最大耐量は少なくとも2000mg/kgであった。結論として、濃縮#10タンニン酸はSigmaタンニン酸よりもはるかに高い最大耐量を示し、CNS及び肥満障害の治療として使用する方が安全である。
【0239】
他の実施形態
本明細書に開示されているすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。この明細書に開示されている各機能は、同じ、同等の、又は同様の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示された各特徴は、同等又は類似の特徴の一般的な一連の例にすぎない。
【0240】
上記の説明から、当業者は本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更及び修正を加えて、様々な使用法及び条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
【0241】
同等物
本明細書ではいくつかの発明の実施形態を説明及び図示してきたが、当業者は、機能を実行し、及び/又は結果及び/又は説明した1つ又は複数の利点を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定する。本明細書では、そのような変形及び/又は修正のそれぞれは、本明細書で説明される本発明の実施形態の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメーター、寸法、材料、及び構成が例示であることを意味し、本発明の教示が使用される、実際のパラメーター、寸法、材料、及び/又は構成が特定の用途又は複数のアプリケーションに依存することを容易に理解する。当業者は、本明細書に記載される特定の発明の実施形態に対する多くの同等物を認識し、又は通常の実験のみを使用して確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に説明及び請求された以外の方法で実施できることを理解されたい。本開示の発明性のある実施形態は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。さらに、2つ以上のそのような機能、システム、記事、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような機能、システム、記事、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲にある。
【0242】
本明細書で定義及び使用されるすべての定義は、辞書定義、参照により組み込まれる文書内の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を制御すると理解されるべきである。
【0243】
本明細書に開示されているすべての参考文献、特許、及び特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合によっては文書全体を網羅する場合がある。
【0244】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0245】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「どちらか又は両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解されたい。「及び/又は」でリストされた複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ又は複数」として解釈する必要がある。「及び/又は」節によって具体的に識別された要素以外の他の要素が、具体的に識別された要素に関連するかどうかに関係なく、任意に存在する場合がある。したがって、非限定的な例として、「含む」などのオープンエンドの言語と組み合わせて使用される場合、「A及び/又はB」への言及は、一実施形態では、Aのみ(任意にB);別の実施形態では、Bのみに(任意にA以外の要素を含む)を指し得る。さらに別の実施形態では、A及びBの両方に(任意に他の要素を含む)等である。
【0246】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「又は」は、上記で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「又は」又は「及び/又は」は包括的であると解釈される必要があり、すなわち、要素の数又はリストの少なくとも1つを含むが、複数を含むものであり、場合により、リストされていない追加のアイテムを含む。「1つのみ」又は「1つだけ」などの明確に反対の用語が示されている場合、又は特許請求の範囲で使用されている場合、「からなる」は、要素の数又はリストの1つだけ含めることを指す。一般に、本明細書で使用される「又は」という用語は、排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方でない」)を示すものとして解釈されるだけであり、例えば、「いずれか」、「その1つの」、「そのただ1つの」、又は「正確にその1つの」が挙げられる。特許請求の範囲で使用される場合、「から本質的になる」とは、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものである。
【0247】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、1つ又は複数の要素のリストに関連する語句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける任意の1つ又は複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙されているすべての要素の少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリストにおける要素の組み合わせを除外するものではない。また、この定義により、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に識別された要素以外の要素が、具体的に識別された要素に関連するかどうかに関係なく、任意で存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は、同等に、「A又はBの少なくとも1つ」又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意に複数のAを含み、Bが存在しない(任意にB以外の要素を含む);別の実施形態では、少なくとも1つの、任意で複数のBを含み、Aは存在しない(任意でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に複数を含むA、及び少なくとも1つ、任意に複数を含むB(及び任意に他の要素を含む)等である。
【0248】
反対に明確に示されていない限り、複数の工程又は行為を含む本明細書で請求される方法では、方法の工程又は行為の順序は、必ずしも、方法の工程又は行為が列挙されている順序に限定されないことも理解されたい。