特表2021-505738(P2021-505738A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-505738液体樹脂注入のための樹脂組成物及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-505738(P2021-505738A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】液体樹脂注入のための樹脂組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20210122BHJP
【FI】
   C08G59/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-531453(P2020-531453)
(86)(22)【出願日】2018年12月5日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月6日
(86)【国際出願番号】US2018064064
(87)【国際公開番号】WO2019113204
(87)【国際公開日】20190613
(31)【優先権主張番号】1720433.0
(32)【優先日】2017年12月7日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.KEVLAR
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミーガン, ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ビヨー, クロード
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036DC03
4J036DC10
4J036DC14
4J036HA12
4J036JA11
4J036JA12
(57)【要約】
(a)アミン化合物がすべて溶融されるまで固体アミン化合物の混合物を加熱するステップ;(b)溶融アミン化合物の混合物を35℃以下の温度冷却して、アミンブレンド(A)を形成するステップ;(c)アミンブレンド(A)を1種以上のエポキシモノマーを含む熱硬化性樹脂(B)と、液体樹脂組成物を形成するために有効な温度で組み合わせるステップ;及び(d)繊維状予備成形物に液体樹脂組成物を注入するステップを含む、樹脂注入方法。アミンブレンド(A)は、構造1又は構造2

によって表される芳香族ジアミンを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂注入方法であって、
a)アミン化合物がすべて溶融されるまで固体アミン化合物の混合物を加熱するステップ;
b)溶融されたアミン化合物の混合物を35℃以下、好ましくは20℃〜35℃の範囲の温度に冷却して、アミンブレンド(A)を形成するステップ;
c)アミンブレンド(A)を1種以上のエポキシモノマーを含む熱硬化性樹脂(B)と、液体樹脂組成物を形成するために有効な温度で組み合わせるステップ;及び
d)繊維状予備成形物に液体樹脂組成物を注入するステップ,
を含み、
ここで、ステップ(a)における固体アミン化合物の混合物は、少なくとも3種のアミン化合物を含み、その少なくとも1種は、個別の融点(Tm1)を有し、構造1又は構造2:
によって表される芳香族ジアミンであり、
他のアミン化合物は、Tm1.よりも高い、元来の個別の融点(Tm2)を有しる芳香族ジアミンである、方法。
【請求項2】
アミンブレンド(A)が、5℃/分の傾斜速度で示差走査熱量測定(DSC)によって決定して、−50℃〜150℃又は0℃〜30℃のTを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
m2が、5℃/分の傾斜速度でDSCによって決定して、130℃〜250℃の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
融点Tm2を有する芳香族ジアミンが、以下の構造3〜構造6:
から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アミンブレンド(A)が、以下の組合せ:
(i)構造3及び構造4と組み合わせての構造1及び/又は構造2;
(ii)構造5及び構造6と組み合わせての構造1及び/又は構造2;
(iii)構造3及び構造4の少なくとも1つ並びに構造5及び構造6の少なくとも1つと組み合わせての構造1及び/又は構造2
から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アミンブレンド(A)が、構造3〜構造6の芳香族ジアミンと組み合わせての芳香族ジアミン構造1又は構造2を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
アミンブレンド(A)が、構造3、構造4及び構造5の芳香族ジアミンと組み合わせての構造1又は構造2の芳香族ジアミンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
アミンブレンド(A)が、構造3、構造4及び構造6の芳香族ジアミンと組み合わせての構造1又は構造2の芳香族ジアミンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
アミンブレンド(A)が、構造3又は構造4、及び構造5又は構造6の芳香族ジアミンと組み合わせての構造1及び/又は構造2の芳香族ジアミンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
アミンブレンド(A)が、構造3及び構造4の芳香族ジアミンと組み合わせての構造1及び/又は構造2の芳香族ジアミンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
アミンブレンド(A)が、構造3又は構造4、及び構造5及び構造6の芳香族ジアミンと組み合わせての構造1及び/又は構造2の芳香族ジアミンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
アミンブレンド(A)及び樹脂(B)が、1:99〜99:1、又は1:9〜9:1、又は30:70〜50:50の重量比(A:B)で混合される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アミンブレンド(A)及び樹脂(B)が、1:1の重量比(A:B)で混合される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a)において、固体アミン化合物の混合物が、Tm2よりも低い低下した温度(T)で溶融する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
低下した温度(T)が、170℃よりも低い、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アミンブレンド(A)が、20℃〜35℃の範囲の温度でガラス状の非晶質相である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
繊維状予備成形物を密閉型に置き、型中に液体樹脂組成物を射出する前に型を加熱して、予備成形物中への液体樹脂組成物の注入に影響を及ぼすステップをさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
型が、繊維状予備成形物の射出の間に20℃〜220℃のドエル温度で維持される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
樹脂組成物が、型中への射出の間に、90℃〜160℃の範囲の温度で、10ポイズ未満、好ましくは5ポイズ未満の粘度を有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
樹脂注入が完了された後に型の温度を上昇させて、樹脂注入予備成形物の硬化に影響を及ぼし、それにより、硬化複合物品を形成するステップをさらに含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
液体樹脂注入のための2成分樹脂システムであって、
(A)少なくとも3種の異なるアミン化合物のアミンブレンド;及び
(B)1種以上のエポキシモノマーを含む熱硬化性樹脂を含み、
ここで、成分(A)及び成分(B)は、互いから物理的に分離され、実質的に均一な樹脂組成物を形成するために組み合せ可能であり、並びに
ここで、成分(A)のアミン化合物の少なくとも1種は、構造1又は構造2:
によって表される芳香族ジアミンであり、
及び他のアミン化合物は、構造3〜構造6:
から選択される芳香族ジアミンである、樹脂システム。
【請求項22】
アミンブレンド(A)が、構造3〜構造6から選択される少なくとも2種のアミン化合物と組み合わせての構造1及び/又は構造2の芳香族ジアミンを含む、請求項21に記載の樹脂システム。
【請求項23】
アミンブレンド(A)が、構造3〜構造6の芳香族ジアミンと組み合わせての芳香族ジアミン構造1及び/又は構造2を含む、請求項21に記載の樹脂システム。
【請求項24】
アミンブレンド(A)が、5℃/分の傾斜速度で示差走査熱量測定(DSC)によって決定して、−50℃〜150℃、一部の実施形態では、0℃〜30℃のTを有する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の樹脂システム。
【請求項25】
アミンブレンド(A)が、25℃を含めて、20℃〜35℃の範囲の温度でガラス状の非晶質相である、請求項21〜24のいずれか一項に記載の樹脂システム。
【発明の詳細な説明】
【発明を実施するための形態】
【0001】
マトリックス樹脂中に埋め込まれた補強繊維からなる繊維強化複合物は、スポーツ用品並びに高性能構造物、例えば、航空機及び自動車の部品の製造で使用されてきた。熱硬化樹脂、特にエポキシ樹脂は、それらの望ましい特性、例えば、耐熱性及び耐薬品性、接着抵抗及び耐磨耗性のためにこのような繊維強化複合物のためのマトリックス樹脂として広範囲に使用されてきた。硬化性エポキシ樹脂に広く使用される硬化剤としては、多官能性アミンが挙げられる。
【0002】
三次元ポリマー複合部品は、その1つが液体成形である、種々の方法を使用して製造され得る。樹脂トランスファー成形(RTM)及びVARTMは、液体樹脂を繊維予備成形物中に射出することを必要とする製造プロセスの例である。RTMプロセスの間、予備成形物は、取り囲まれた型キャビティ内に置かれ、樹脂が加圧下でキャビティ内に射出される。予備成形物と共の型は、しばしば真空下に置かれ、その結果、真空が予備成形物内のすべての取り込まれた空気を除去し、RTMプロセスの速度を速める。液体樹脂が型キャビティを充填すると直ぐに、樹脂は硬化され、複合部品の形成をもたらす。片面ツールが通常、真空バギングと共に使用され、真空が液体樹脂を予備成形物中に引き込むこと以外は、VARTMはRTMと同様である。これらの技術は、多くの場合、妥当な生成速度で、非常に複雑な形状の部品を製造するためによく適する。繊維アーキテクチャ、予備成形物及びファブリッククリンプの透過性、樹脂粘度、並びに操作の温度は、ファブリックの湿潤に影響を有する。液体樹脂は、典型的には、限定されないが、エポキシアミン、エポキシ無水物、ビスマレイミド及びベンズオキサジンを含む、化学のセレクションから選択される。
【0003】
エポキシアミン化学に関連して、適当な多官能性アミン硬化剤の構造は、ある程度まで、達成されるべき配合物の反応性、及び一又は二成分RTM方法論の選択によって決定づけられる。
【0004】
一成分RTM配合物は、単一の注入可能又は射出可能な組成物中に硬化剤、エポキシ樹脂及び強靭化剤を含有する。配合物のエポキシ成分及びアミン成分に関連して、それらは、典型的には、繊維状予備成形物内への樹脂組成物の加熱及び射出前に、単一相の均一な組成物を形成する。したがって、浸透プロセスが行われる温度(例えば、治具温度)であって、その温度で樹脂が、型と流体連結状態の容器(又はポット)に保存及び維持される温度(すなわち、ポット温度)、及び硬化剤の分子構造(反応性)に特別の注意が払われる必要がある。
【0005】
好適な硬化剤は、以下に一般式:
によって表されるアミンであり、
ここで、位置R、X若しくはYに電子吸引基、位置Xに立体障害基、又はXに立体障害基及びY若しくはRに電子吸引基の組合せがあってもよい。典型的な電子吸引基は、限定されないが、ハロゲン又はスルホンによって与えられ、典型的な立体障害基は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル若しくはイソプロピル鎖、又はそれらの誘導体から選択される。
【0006】
X、Y及びR位置での置換、並びに芳香族環の使用は、アミン官能基上の孤立電子対を非活性化し、硬化反応が起こるために必要な活性化エネルギーを増加させるように選択されてもよい。次に、これは、ポット及び治具温度が、樹脂粘度を減少させ、樹脂ポット中で起こる反応(例えば、硬化)の最小量で、又は繊維状予備成形物が樹脂で浸透/注入されている間に、迅速、効率的及び強固な浸透/注入プロセスを促進するより高い温度に有利に働くように選択され得ることを意味する。
【0007】
単一成分RTM配合物又はプロセスに必要な樹脂ポット中の低下した反応性(ポットライフ)を与えるために適切な硬化剤を注意深く選択する必要性は、しばしば、プロセス複雑性を課すことなしに硬化剤としてある特定のアミン化合物を含めることを困難、又は不可能にする。プロセス複雑性としては、限定されないが、ある特定の芳香族アミン化合物の存在のために配合物の溶解性の低下又は全体反応性における増加に対処するための、樹脂浸透点前での高められた温度での硬化剤の前溶解が挙げられてもよい。芳香族アミン化合物の2種のこのような例は、3,3’−DDS及びCAFである。
【0008】
2成分RTM加工は、エポキシ樹脂成分(これは強靭化剤を任意選択で含有してもよい)及び硬化性剤(curative)(すなわち、硬化剤(hardener)又は硬化剤(curingagent))成分(これはまた、任意選択の強靭化剤を含有してもよい)が、樹脂浸透/射出の直前での、2成分が混合されるプロセスにおけるある点まで互いに物理的に分離されることを可能にする。この技術は、一緒に組み合わされ得る化合物の選択肢を広くする機会を与える一方で、効率的な混合のために樹脂及び硬化剤成分の粘度を一致させるように注意が払われる必要がある。次に、これは、一部の硬化剤成分が、それらの溶融粘度、又は適合溶融粘度を達成するために硬化性剤を溶融させるために必要な温度と、注入装置の能力との間の非適合性のために排除され得ることを意味する。さらに、硬化性剤が、溶融され得ることを想定すると、溶融温度が、可能な限り低く、したがって、低い溶融粘度が可能な最低温度で達成されることが有利である。これは、樹脂及び硬化性剤が混合され、したがって、高い温度が、樹脂注入前の混合点での樹脂組成物中の硬化性剤と樹脂との間の未熟反応を引き起こし得る場合に、硬化性剤の融点に達する高い温度の使用を回避する。
【0009】
硬化剤の低温溶融及び硬化剤とエポキシ樹脂との低温混合を促進するための1つの手法は、室温で液体物質であるアミン化合物を選択することである。しかしながら、これらのアミン化合物を含有する硬化樹脂組成物は、室温で固体である芳香族アミンを含有する組成物にしばしば機械的に劣る。別の手法は、溶解固体芳香族アミンを持つために液体アミンを(キャリアとして)使用することであるが、この手法は、液体キャリア成分中の溶解成分の溶解性によって限定される。第3の手法は、固体ジアミンをブレンドして、より低い温度で加工され得る低下した/抑制された融点の硬化剤を形成することである。この抑制された/低下した融点の硬化剤が、RTMプロセスの間に結晶形態を戻さないことを確実にするために注意が払われる必要がある。
【0010】
解決策が本明細書に開示され、それによって、抑制された/低下した融点の硬化剤が、通常はそれらの高い融点のためにRTM/VaRTM多成分配合物中への組み込みに適さないと考えられるアミン化合物の包含を可能にするために使用される。このような解決策は、樹脂注入のための樹脂配合物の加工性において改善を提供する。
【0011】
本開示の一態様は、以下の2種の主要な成分:(A)少なくとも3種のアミン化合物のブレンドを含有する硬化性成分;及び(B)1種以上のエポキシモノマーを含有する熱硬化性樹脂成分、並びに任意選択の添加剤、例えば、強靭化剤を有する2成分樹脂システムに関する。
【0012】
アミンブレンド(硬化性成分)は、5℃/分の傾斜速度で示差走査熱量測定(DSC)によって決定して、−50℃〜150℃、一部の実施形態では、0℃〜35℃のTを有する。
【0013】
成分(A)及び成分(B)は、RTM又はVaRTMなどの樹脂注入プロセスが行われるまで、互いから物理的に分離される。RTM/VaRTMの間、これらの2成分は、実質的に均一又は均一な混合物を形成するために組み合せ可能であり、これは、次いでその中の繊維状予備成形物中に射出される。
【0014】
一部の実施形態では、アミンブレンドは、20℃〜35℃、一部の実施形態では、25℃の範囲の温度でガラス状の非晶質相である。用語「非晶質」は、結晶の長い距離の秩序を欠く非結晶質固体を意味する。結晶質固体は、鋭い融点を有し、すなわち、それは、明確な温度で液体状態に変化し、これは、DSCなどの技術を使用して容易に同定される。対照的に、非晶質固体は、鋭い融点を有しない。むしろ、非晶質固体は、それが加熱後に軟化し、固相から液相へのなんらの急激な又は鋭い変化を受けることなく流れ始める軟化点又はガラス転移温度を有する。本明細書に開示されるアミン化合物の非晶質又はガラス状状態は、ガラス転移温度を超える溶融の証拠なしに、DSC及びガラス転移の存在によって実証され得る。
【0015】
本明細書で使用される場合の用語「均一な」は、全体を通して同じ組成を有することを意味し、混合物の個別部分は、容易には同定可能でなく、すなわち、全体を通して一様な組成及び特性である。用語「実質的に均一な」は、混合物の80%超が、均一であることを意味する。
【0016】
一般に、成分(A)及び成分(B)のための化学量論は、アミン化合物(A)が、樹脂成分(B)のエポキシ基1個当たり0.5〜1.1のアミノ基(すなわち、NH)を与えるのに十分な量で存在する。より具体的には、成分(A)及び成分(B)は、例えば、25:75、30:70、50:50(又は1:1)を含めて、1:99〜99:1、又は1:9〜9:1の重量比A:Bで混合されてもよい。
【0017】
アミン混合物
硬化性成分(A)中アミン化合物の少なくとも1種は、構造1又は構造2:
(1)
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(「APB133」)(T=107℃)
(2)
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)−2−フェニルベンゼン(「APB144」)(T=115℃)
によって表される芳香族ジアミンである。
【0018】
APB133及びAPB144の融点(T)は、それぞれ、DSC(5℃/分の傾斜速度で)によって決定して、107℃及び115℃である。これらのジアミン化合物はまた、エポキシ樹脂との高い反応性を有する。溶融APB133及び/又はAPB144の存在は、元来のAPB133及びAPB144の溶融温度と比較して、元来はより高い個別のTを有する芳香族アミンの溶融温度を低下させ/抑制し得ることが見いだされた。このような高いTのアミンとしては、130℃超、例えば、130℃〜250℃のTを有するものが挙げられる。通常は2成分RTM配合物に適さないと考えられる高いTの芳香族アミンは、今や本明細書に開示される方法を適用することによって使用され得る。したがって、このようなRTM配合物の加工性は、改善される。
【0019】
それらの元来の形態でのより高いTを有する芳香族アミン化合物の例としては、以下の構造3〜構造6:
(3)
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)(T=179℃)
(4)
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)(T=173℃)
(5)
9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン(CAF)(T=200℃)
(6)
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(AF)(T=237℃)
の化合物が挙げられる。
【0020】
上の構造3〜構造6のアミン化合物は、通常は示されるとおりの高いTを有する固体である。それらは、APB133及び/又はAPB144と組み合わされて、元来の個別のTよりも低い抑制された又はより低い融点(T)を有するアミンブレンドを形成し得る。アミンブレンド(A)は、次いで高められた温度で熱硬化性樹脂成分(B)と組み合わされて、RTMなどの液体樹脂注入に適する樹脂組成物(好ましくは、均一な組成物)を形成する。このような樹脂組成物の調製は、アミン化合物がそれらの元来の結晶質形態で樹脂組成物に添加される場合に可能であるよりもより低い温度で行われ得る。
【0021】
抑制された融点を有するアミン混合物の様々な実施形態としては、
i.3,3’−DDS及び4,4’−DDSと組み合わせてのAPB133及び/又はAPB144;
ii.CAF及びAFと組み合わせてのAPB133及び/又はAPB144;
iii.(3,3’−DDS及び4,4’−DDS)及び(CAF又はAF)と組み合わせてのAPB133及び/又はAPB144;
iv.3,3’−DDS、4,4’−DDS、CAF及びAFと組み合わせてのAPB133又はAPB144
が挙げられる。
【0022】
アミン化合物の非晶質混合物は、
i.アミン化合物がすべて溶融されるまで固体アミン化合物(これは、元来は固体形態であり、50℃超の融点を有する)の混合物を加熱するステップ、及び
ii.35℃以下、例えば、20℃〜35℃の温度に溶融アミン化合物の混合物を冷却して、ガラス状の非晶質相でのアミンブレンドを形成するステップ
によって調製され得る。
【0023】
一実施形態では、溶融アミン化合物の混合物は、25℃に冷却される。アミン化合物のセレクション及び相対量は、この非晶質混合物のガラス転移温度(T)が、5℃/分の傾斜速度で示差走査熱量測定(DSC)によって決定して、−50℃〜150℃の範囲であるように変えられ得る。一部の実施形態では、非晶質混合物のTは、0℃〜30℃、他の実施形態では、−10℃〜55℃の範囲である。
【0024】
熱硬化性樹脂成分
いかなる硬化性剤も有しない熱硬化性樹脂成分(B)は、アミン成分(A)と混合される前に20℃〜150℃の範囲の温度で1〜1000ポイズの粘度を有してもよい。本開示では、粘度測定は、ASTM標準D2196に従ってブルックフィールド粘度計を使用して定常条件においてである。
【0025】
熱硬化性樹脂成分(B)は、1種以上のエポキシモノマーを含有し、その少なくとも1種は、ポリエポキシドである。用語「ポリエポキシド」は、2個以上のエポキシド基:
を含有する化合物を意味する。
【0026】
好適なエポキシモノマーとしては、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸のポリグリシジル誘導体が挙げられる。好適なポリエポキシドの例としては、ビスフェノール、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びビスフェノールKのポリグリシジルエーテルが挙げられる。また好適なのは、ホルムアルデヒドとフェノール又はその置換誘導体との縮合生成物であるエポキシ、すなわち、ノボラックポリグリシジルエーテルである。
【0027】
具体的な例は、4,4’−ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体(TGDDM)、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタンのテトラグリシジル誘導体、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、o−クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル又はテトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルである。
【0028】
エポキシ成分においての使用に適した商業的に入手可能なエポキシ樹脂としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えば、Huntsman製のMY9663、MY720、及びMY721);N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソ−プロピルベンゼン(例えば、Momentive製のEPON1071);N,N,N’,N’−テトラクリシジル(tetraclycidyl)−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(例えば、Momentive製のEPON1072);p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えば、Hunstman製のMY0510);m−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHunstman製のMY0610);2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールA系材料のジグリシジルエーテル(例えば、Dow製のDER661、又はMomentive製のEPON828、及び好ましくは25℃で粘度8〜20Pa・sのノボラック樹脂;フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル(例えば、Dow製のDEN431又はDEN438);ジ−シクロペンタジエン系フェノールノボラック(例えば、Huntsman製のTactix(登録商標)556);ジグリシジル1,2−フタレート;ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)のジグリシジル誘導体(例えば、Huntsman製のPY306)が挙げられる。
【0029】
本開示の硬化性エポキシ系組成物はまた、限定されないが、熱可塑性ポリマー(例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミド、ポリイミド)、エラストマー(例えば、ATBN)、コア−シェルゴム粒子、シリカ粒子から選択される少量の強靭化剤を含んでもよい。RTMプロセスのために、強靭化性粒子は、例えば、MalvernZetasizer2000を使用して、動的光散乱によって決定して、1ミクロン未満、例えば、50nm〜800nmの粒子サイズを有するべきである。強靭化剤の量は、組成物の全重量に基づき20重量%未満、一部の実施形態では、7重量%未満である。
【0030】
樹脂注入方法及び成形物品の製造
本開示の別の態様は、液体樹脂注入方法又は液体成形方法、特に、RTM及びVaRTMに関する。このような方法において、上に検討された成分(A)及び成分(B)は、高められた温度で注入又は射出前に混合されて、注入/射出のために十分に低い粘度を有する樹脂組成物を形成する。
【0031】
樹脂組成物は、繊維状予備成形物中への注入/射出に適する、90℃〜160℃、又は80℃〜130℃の範囲内の温度で、10ポイズ未満、又は5ポイズ未満の粘度を有してもよい。
【0032】
RTMにおいて、繊維状予備成形物は、密閉型内に置かれ、これは、初期温度、例えば、25℃超、一部の実施形態では、90℃〜120℃に加熱され、続いて、液体樹脂組成物を型に射出して、予備成形物中への液体樹脂の注入に影響を及ぼす。型は、繊維状予備成形物の注入の間に20℃〜220℃のドエル温度で維持されてもよい。注入後の型の温度が完了されて、樹脂注入予備成形物の硬化に影響を及ぼし、それにより、硬化複合物品を形成する。注入が完了された後に型の温度は、上昇されて、樹脂注入予備成形物の硬化に影響を及ぼし、それにより、硬化複合物品を形成する。
【0033】
VaRTMにおいて、繊維状予備成形物は、可撓性真空バッグによって取り囲まれた片面型の上に置かれ、真空がかけられて、予備成形物中に液体樹脂を引き込む。
【0034】
予備成形物は、強化繊維の1つ以上の層から構成され、これは、液体樹脂に透過性である。予備成形物に樹脂組成物が完全に注入されたとき、型温度は、所定の期間、例えば、160℃〜200℃の範囲の硬化温度まで傾斜されて、樹脂組成物の完全な硬化を可能にする。記載された方法から得られた硬化生成物は、硬化複合物品である。
【0035】
本文脈における繊維状予備成形物は、複合物品の強化成分を構成する強化繊維のアセンブリであり、RTMなどの液体樹脂注入を介して液体樹脂を受けるように構成される。繊維状予備成形物は、繊維状材料の複数の層又はプライから構成され、それには、不織布マット、織りファブリック、編みファブリック、及び非クリンプ化ファブリックが挙げられてもよい。「マット」は、その形態を維持するために塗布されたバインダーを有するチョップド繊維フィラメント(チョップドストランドマットを生成するため)又は渦巻き状のフィラメント(連続ストランドマットを生成するため)などの、ランダムに配列された繊維から作られている不織テキスタイルファブリックである。好適なファブリックとしては、メッシュ、トウ、テープ、スクリム、組みひも、及び同様のものの形態で、方向性又は非方向性整列繊維を有するものが挙げられる。繊維状層又はファブリック中の繊維は、有機若しくは無機繊維、又はこれらの混合物であってもよい。有機繊維は、強靭又は剛性のポリマー、例えば、アラミド(Kevlarを含む)、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、及びこれらのハイブリッド組合せから選択される。無機繊維としては、炭素(グラファイトを含む)、ガラス(E−ガラス又はS−ガラス繊維を含む)、石英、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、及び他のセラミックから作られている繊維が挙げられる。高強度複合構造物、例えば、飛行機の主部を作製するために、補強繊維は、好ましくは≧3500MPa(又は≧500ksi)の引張り強度を有する。
【0036】
2成分樹脂システムは、熱硬化性樹脂成分及びアミン硬化剤が、型中への射出の前に成分が組み合わされる前にプロセスによって許容される最大量の時間の間分離して保持されることを可能にする。樹脂及び硬化剤の分離は、それが型中への樹脂射出前にエポキシ樹脂とアミン化合物との間の反応の量を最小化するので有利である。その結果は、改善された加工能力及び保存安定性を有する樹脂配合物である。
【実施例】
【0037】
実施例1
種々のアミンブレンドを、表1に示される重量比で、APB133、APB144、3,3’−DDS、4,4’−DDS、CAF及びAFから形成した。
【0038】
【0039】
表1では、Tは、ブレンドの融点を意味する。初期に固体形態でのアミン化合物を室温(20℃〜25℃)で混合した。アミン混合物の粉末ブレンドを、乳棒及び乳鉢を使用して調製した。DSCをブレンドアミンに対して実行して、ブレンドが熱的に処理されてガラス状材料を得るべき温度を決定した。粉末を穏やかに圧締めして、熱伝導を可能にし、それらの融点、170℃若しくは190℃よりも高い温度で1時間、又は(1)それらの融点を決定するためにDSCによって分析された温度でオーブン中に置き、(2)溶融ピークの端を明確にする温度(約170℃〜190℃)で1時間維持した。ジアミンブレンドを、熱処理後5℃/分の傾斜速度でDSCによって再分析し、結果として生じる再結晶化(>10J/g)現象又は残留溶融物(<−10J/g)を調べた。
【0040】
実施例2
アミン混合物(組成物E)を、表2に示される配合に従って調製した。
【0041】
【0042】
アミン混合物を撹拌しながらスチール缶中140℃の調製温度で20分間加熱し、次いでこの混合物を室温に冷却させた。
【0043】
多官能性エポキシ樹脂(Huntsman製PY306、MY0510、MY0610、及びMY721)、PES、及びコア−シェルゴム粒子から構成されるエポキシ系樹脂組成物を調製した。アミン混合物(硬化性成分)及び樹脂組成物(樹脂成分)の前加温を別個に行い、次いでそれぞれの成分を45分間脱気した。この2成分を1:1重量比で組み合わせ、撹拌した。得られた混合物を、次いで80℃でさらに5分間脱気し、次いでVaRTM加工のための樹脂ポット中に移した。
【0044】
196gsmの平織カーボンファブリックを使用して、擬似等方性レイアップ[+、0、−、90]3sを形成し、これを次いで樹脂注入のための予備成形物として使用した。80℃での予備成形物の首尾良い樹脂注入後直ぐに、樹脂注入予備成形物を、80℃から2℃/分傾斜に続いて180℃で2時間硬化させた。
【国際調査報告】