【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様では、本発明は増幅器に関し、この増幅器は、
・補償器であって、
− 2つのポートを備える回路網であって、その2つのポート間に少なくとも3つのコンデンサが直列に接続され、コンデンサの各対の間で抵抗器が所定の電圧に接続される、回路網と、
− 利得段であって、
・一方のポートに接続される利得段入力、および
・他方のポートに接続される利得段出力
を有する利得段と
を有する補償器と、
・主増幅器であって、
− 利得段入力に動作可能に接続される主増幅器出力と、
− 利得段出力に動作可能に接続される主増幅器入力と
を有する主増幅器と
を備える。
【0004】
本文脈では、増幅器とは、音声信号などといった信号を受け取って、好ましくはより大きい信号振幅を有する対応する信号を出力するように構成される要素である。しばしば、音声増幅器は、小さい信号強度(電圧)の電気的な音声信号を受け取って、より大きい信号強度を有する対応する信号を出力する。本文脈では、2つの信号は、少なくとも周波数区間において、少なくとも実質的に同じスペクトル成分を有する場合、対応している。
【0005】
増幅器は、音声信号以外の他のタイプの信号を増幅するため使用できることに留意されたい。増幅器は、アクチュエータを制御された様式で駆動するために、たとえば、リニアアクチュエータに供給する電源またはコントローラとして使用することができる。この状況では、増幅器は、アクチュエータに供給するように望むものに対応する、より小さい振幅の信号を受け取ることができ、ここで、増幅器は、アクチュエータの要件に適合された電流または電圧を出力することになる。
【0006】
増幅器は、回路網を有する補償器と利得段とを有し、回路網は、利得段の周りの帰還ループとして設けられ、利得段は、主増幅器の周りの帰還ループ中に設けられる。
【0007】
本文脈では、入力は、たとえば、信号を受け取るように構成される回路の一部である。多くの状況では、入力は、電気要素、チップ/ASICなどの導体などといった導体である。入力が増幅器自体に対する入力である場合などに(増幅器ケースの外側から、および/または前置増幅器からなど)、入力は、コネクタを備える場合がある。その場合、信号源は、入力に信号を送出するため、入力に取外し可能に接続することができる。あるいは、入力は、取外し性が求められない増幅器の一部への入力である場合があり、そのため、入力は、固定接続となる場合がある。固定接続は、信号を入力に送出するために、半田付けなどによって他の要素を恒久的に接続することができる、たとえば、導体、半田パッドなどを介して行うことができる。当然、入力は、チップの部分間の、チップの導体などといった内部部分であってよい。
【0008】
入力のように、出力は、増幅器の周囲への出力であってよく、そのため、出力が、たとえば、負荷、ケーブルなどへの取外し可能に取り付けるためのコネクタを備える場合がある。あるいは、出力は、増幅器の1つの構成要素から別の構成要素への出力であってよい。そのような構成要素が取外し可能であることを求められない場合、出力はそこへ恒久的に接続されてよい。恒久的に接続される状況では、出力は、導体、脚などであってよく、導体の一方の端部が入力であり、他方の端部が出力であってよい。
【0009】
しばしば、出力が同じ導体を共有する場合などに、主増幅器出力は増幅器自体の出力でもある。しかし、これらの出力間に、増幅器出力の後に、または単に出力に、フィルタなどといったさらなる回路を接続することが求められる場合がある。通常、主増幅器の動作から生じる高周波数雑音を除去するために出力にLCフィルタが接続され、その結果、この雑音は、出力に接続される負荷に伝達されない。フィルタの1つのポートが接続されるコネクタを出力が共有する場合があることに留意されたい。
【0010】
主増幅器は、それ自体で増幅器である。したがって、主増幅器は、上述の増幅器のように挙動することができる。しかし、主増幅器は、増幅器全体のものとは別の他のパラメータ、もしくは挙動を有することが求められる場合があり、または、許容される場合がある。たとえば、自励発振自体は増幅器全体に対する要件ではない場合があるにもかかわらず、補償器が主増幅器を発振から避けるよう制御するように構成される場合など、またはこの発振が望ましいような様式で、主増幅器が自励発振するように構成される場合がある。
【0011】
下で記載されるように、主増幅器は、好ましくはD級増幅器である。しかし、主増幅器は、代替方法として、A級、B級、またはAB級で動作するように通常バイアスすることができる、トランジスタなどといった、伝統的な構成要素に基づいた線形増幅器であってよい。
【0012】
主増幅器は、上で記載した入力および出力のようであってよい、主増幅器入力および主増幅器出力を有する。下で述べる経路から主増幅器を取り外すことを可能にするのは、通常求められず、そのため、主増幅器入力/出力が、回路内、回路間などで、たとえばPCB上で導体などによって形成できることを留意されたい。
【0013】
述べたように、主増幅器出力は、利得段入力に動作可能に接続され、主増幅器入力は、利得段出力に動作可能に接続される。
【0014】
本文脈における、入力が出力に動作可能に接続される、またはその逆とは、信号を入力から出力に供給できることを意味する。しかし、この信号は、前記入力と前記出力の間の経路に沿って、フィルタ処理、増幅、減衰、またはそれらの組合せを行うことができる。
【0015】
経路は、利得段入力などといった入力から主増幅器出力などといった出力へ、(およびその逆に)規定することができ、この経路は、単純な導体であってよく、または、抵抗器、インダクタ、コンデンサ、増幅器、加算ノードなどといった電子構成要素を備えることができる。
【0016】
一般的に、回路網とは、単純に導体であってよいが、能動および/または受動の1つまたは複数の電子構成要素を備えることが多い回路である。回路網は、その間で信号を回路網に供給すること、および/または回路網から得ることができる、2つ以上のポートまたは導体/コネクタを有する。
【0017】
本補償器の回路網では、少なくとも3つのコンデンサが2つのポート間に直列に設けられる。当然、追加のコンデンサ、抵抗器、インダクタ、増幅器、能動構成要素、または受動構成要素などといった追加の電子構成要素を設けることができる。
【0018】
第1のポートから第2のポートに主経路が存在すると、ポート間に3つのコンデンサが直列に接続され、この主経路が、3つのコンデンサを次々に経由する。他の構成要素を含む経路が主経路から分岐することができ、主経路に再結合することもできる。また、主経路は、抵抗器などのさらなる構成要素を含むことができる。
【0019】
コンデンサの各対の間で、抵抗器が、所定の電圧に(コンデンサに)接続される。この所定の電圧は、好ましくは、グランドのように、少なくとも実質的に一定である。
【0020】
したがって、3つのコンデンサが直列に接続されるとき、2つのそのような抵抗器が設けられる。抵抗器は、好ましくは、同じ所定の電圧に接続されるが、これは要件ではない。
【0021】
スイッチなどといった1つもしくは複数の要素を、1つ、2つ、もしくはそれ以上、全部などのコンデンサを短絡するために、またはコンデンサの両端間の電圧を規定もしくは制限するために、設けることができる。これは、求められることが多い、リセット機能となることができる。リセット機能は、恒久的または連続的であってよい。
【0022】
好ましくは、補償器の周波数応答(周波数の関数としての補償器利得)は、回路網の周波数応答に対して実質的に反比例である。回路網中に直列に3つ以上のコンデンサを有することの全体的な利点は、回路網の全体的な挙動が、少なくとも3次の高域通過フィルタのものであって、したがって、補償器が低周波数で著しく大きい利得を有するものになるということである。
【0023】
一実施形態では、回路網のコンデンサのうちの1つまたは複数と並列に配置される少なくとも1つの抵抗器を有する第2の回路網が設けられる。そのような抵抗器を追加することには、中間周波数における補償器利得を、DCにおける補償器利得と引き換えにできるという利点がある。第2の回路網なしに3つのコンデンサの回路網を使用する補償器は、低周波数において3次の傾きを有し、場合によっては、厳密に要求されるよりも、DCにおいてより大きい補償器利得を有することになる。第2の回路網は、その利得の一部を犠牲にする一方で、高い周波数における補償器利得を増加させることを可能にする。
【0024】
好ましい実施形態では、利得段は演算増幅器である。しかし、利得段は、所望であればトランジスタまたはFETであってよい。
【0025】
本文脈では、補償器は、動作可能な接続によって、主増幅器の出力と入力の間の帰還ループ中に接続される回路である。補償器は、回路網に起因して、少なくとも3次のフィルタとして振る舞う。補償器の全体的な機能は、その所望の値により近づけるように主増幅器の出力を調整することである。
【0026】
好ましい実施形態では、増幅器の入力からの信号が、やはり、比較器に供給される。次いで、補償器は、好ましくは、第1の周波数範囲では誤差信号が増幅され、第2の周波数範囲では誤差信号が増幅されない、または減衰される場合があるようなやり方で、増幅器入力から得られた信号を主増幅器出力から得られた信号と比較することにより見いだされる誤差信号をフィルタ処理する。第1の周波数範囲は、動作させる所望の周波数帯域に対応する。音声増幅器では、この帯域は、たとえば、0Hz〜40kHz、0Hz〜20kHz、または20Hz〜20kHzであってよい。第2の周波数範囲は、たとえば、60kHz以上、100kHz以上といった、第1の帯域より上の帯域であってよい。第2の周波数帯域は、無限に、または、1MHzなどといった非常に高い周波数にさえ続く必要はない。D級増幅器の場合には、第2の周波数範囲は、典型的には、スイッチング周波数を含む。伝統的な線形増幅器では、第2の周波数範囲は、1MHzで終了する場合がある。
【0027】
補償器は、通常、主増幅器出力から主増幅器入力への帰還ループ中にだけ設けられるわけではなく、増幅器自体の入力から主増幅器入力への順方向経路にも設けられる。
【0028】
好ましい実施形態では、補償器は、少なくとも2つの動作モードを有するように構成される。補償器の特定の動作モードを選択するのに、様々な理由がある。動作の1つのモードでは、所望の場合、補償器を完全に無効にすることさえできる。
【0029】
異なる動作モードでは、回路網の異なる部分を利用することができ、さもなくば、回路網のフィルタ処理特性を変えることができる。
【0030】
一実施形態では、補償器について選択される動作のモードは、増幅器の別の部分、典型的には主増幅器の動作によって決定される。この場合、主増幅器は、少なくとも第1の増幅器動作モードと第2の増幅器動作モードのうちの一方で動作するように構成することができる。
【0031】
1つの増幅器動作モードは、主増幅器が、特定の範囲における特定の周波数応答、特定の利得、スイッチング周波数などを有するモードであってよい。しばしば、第1の増幅器モードが所望の動作モードであり、第2の増幅器モードは、好ましくはないが、主増幅器において完全には避けることができないモードである。典型的な第2の増幅器モードはクリッピングモードであり、ここでは、主増幅器が、電源電圧によって実質的に制限される出力電圧を作り、スイッチングを停止する、または第1のモードの範囲外の周波数でスイッチングする。クリッピングモードで動作すると、主増幅器は、主増幅器入力信号の変化に対してごくわずかな応答だけを
有する。
【0032】
したがって、第1の増幅器モードは、主増幅器入力信号における追加の小さい変化に応答する主増幅器出力信号における追加の変化が、主増幅器入力信号におけるその追加の変化だけからなる信号に対する主増幅器出力信号の応答と実質的に同じであるモードとして特徴づけることができる。すなわち、大きい信号の存在が、追加の小さい信号に応答する主増幅器の能力に実質的に影響を及ぼさない場合である。
【0033】
第3のモードは、主増幅器が、潜在的に損傷を与えるような負荷条件に対して主増幅器自体を保護するものであってよい。たとえば、一時的にオフにすることによってそうすることができる。
【0034】
第4のモードは、主増幅器がオフにされるものであってよい。これは、電源起動/停止シーケンスの一部として、またはユーザによるコマンドの結果であってよい。
【0035】
補償器および/または利得段は、主増幅器が少なくとも第2の増幅器動作モードで動作しているときなど、動作のあるモードでは、無効にすることができる。こうした無効化は、任意の所望の様式で具体化することができ、いくつかの様式で利得段または補償器を休止にすることができる。1つの状況では、補償器が無効にされると、補償器が設けられる経路に沿うなどの、補償器を通る信号の伝達を防ぐことができる。したがって、補償器は、主増幅器にわたる帰還ループにおける信号搬送を効果的に防ぐことができる。
【0036】
さらに、補償器が増幅器自体の入力から主増幅器入力への順方向経路にやはり設けられる場合、この経路をやはりブロックすることができる。
【0037】
別の状況では、無効化は、補償器が対象の周波数区間にわたって(0Hz〜100kHzなど)、単位利得などといった所定の利得を有するときなどに、周波数フィルタ処理能力を有さない補償器を設けることなどによって、補償器を「見えなく」することによって行うことができる。この場合、無効化した補償器によって、その両端間の信号の搬送を可能にすることができる。
【0038】
たとえば、回路網が補償器の所望の特性を得ることに影響を及ぼす多数の様式が存在するが、1つの動作モードでは、コンデンサのうちの1つまたは複数を短絡することが好ましい。1つのモードでは、すべてのコンデンサが短絡される。このモードでは、利得段が演算増幅器を備えることができる。演算増幅器の出力と入力の間のすべてのコンデンサを短絡すると、このことによって、周波数に無関係な挙動を行う回路網を設けること、すなわち、補償器に周波数に無関係な挙動を課すこと、または少なくとも、低周波数での補償器の利得および位相シフトを減らすことが可能になる。
【0039】
この短絡は、いくつかの様式で行うことができる。1つの状況では、回路網は、ダイオードにわたる電圧がダイオードの順方向電圧を超えると自動的に導電性となり、したがって、ダイオードに並列に接続される構成要素を短絡するダイオードまたは2つの逆並列ダイオードを備える。この電圧は、主増幅器から得ることができ、その結果、主増幅器がクリップし、それによって過大な電圧を出力する場合、または予期される電圧から過度に逸脱する場合、補償器は、自動的に無効化することになる。
【0040】
本文脈では、ダイオードの2つのポートまたはコネクタがコンデンサの2つのポートまたはコネクタに接続されると、ダイオードがコンデンサの両端間に接続される。ダイオードが複数の直列に接続されたコンデンサの両端間に接続される場合、ダイオードは、直列に接続されたコンデンサの反対側の外側のコネクタに接続される。当然、複数のダイオードを、複数のコンデンサを短絡するために使用することができる。
【0041】
ダイオードにわたる電圧がダイオードの順方向電圧を超えると、ダイオードは導電性となり、したがって、ダイオードがつなぐ任意のコンデンサを短絡することになる。複数のダイオードが直列に設けられる場合、複数のダイオードの両端間の電圧が組み合わせた順方向電圧を超えると、複数のダイオードは導電性になることになる。
【0042】
代替方法は、別の回路に、主増幅器が第1の増幅器動作モードを離れたか、または第2、第3、もしくは第4の増幅器動作モードであるかを決定させ、次いで、補償器に補償器自体を無効にさせるなどといった反応をするように補償器が構成される所定の信号を補償器に対して送信させることである。この信号は、たとえば、補償器への電力を切断することができる。
【0043】
他の状況では、検出回路が、主増幅器が第1の増幅器動作モードを離れたか、または第2、第3、もしくは第4の増幅器動作モードであるかを決定し、次いで、補償器自体を無効にさせるような反応をするように補償器が構成される所定の信号を補償器に対して送信することができる。
【0044】
したがって、補償器利得段を、オフにするように構成することができる。これは、たとえば、上の信号が、たとえば、利得段への電力を遮断すること、利得段からバイアス電流を除去すること、または利得段の部品を短絡もしくは切断することのために使用されると行うことができる。あるいは、回路網の少なくとも一部の短絡は、スイッチとして動作して検出回路からの信号によって制御されるたとえばトランジスタまたはFETといったスイッチを使用して行うことができる。あるいは、そのようなスイッチを、補償器の入力に直列に挿入して、通常はオン(すなわち閉じ)、主増幅器がたとえば第2の増幅器動作モードであると検出回路が決定するとオフになるように構成することができる。
【0045】
一実施形態では、相互コンダクタンス増幅器がコンデンサのうちの1つまたは複数の両端間に接続され、主増幅器が少なくとも第2の増幅器動作モードであるときに動作する。これは、コンデンサ電圧がそれ以上変化し得ないという点で短絡と同様の効果を有する。相互コンダクタンス増幅器は、その入力と出力が同じ電位である必要はない。
【0046】
一実施形態では、補償器利得段入力と主増幅器出力の間の接続は、ある動作モードで切断される。その場合、主増幅器にわたる帰還ループが切断され、主増幅器によって生成される誤差がそれ以上コンデンサを充電せず、その結果、主増幅器が第1の増幅器動作モードに再びなるときに、主増幅器が第1の増幅器動作モードで動作しなかった期間にコンデンサに蓄積された電荷によって動作が影響を受けない。
【0047】
述べたように、補償器は、主増幅器がクリップするときに1つの動作モードで動作し、通常または所望の動作期間など、主増幅器がクリップしていないときに別の動作モードで動作することができる。
【0048】
一実施形態では、増幅器は、補償器を所定の動作のモードで動作させるように構成されるユーザ操作可能要素を有する。このユーザ操作可能要素は、スイッチ、タッチパッド、キーボード、回転ノブなどであってよい。ユーザ操作可能要素は、所定の位置などを有することができ、そのため、その操作によって、補償器を所定の動作のモードで動作させる。あるいは、ユーザ操作可能要素は、たとえば超過した場合に、補償器を動作のモードで動作させるパラメータを設定するために使用することができる。したがって、このパラメータを設定することによって、ユーザは、補償器がいつ所定の動作のモードになるか影響を与えることができる。この動作のモードは、補償器の無効化であってよい。
【0049】
好ましい実施形態では、主増幅器はD級増幅器である。D級増幅器は、通常、比較器と、比較器によって制御されるスイッチング電力段とを備える。通常、主増幅器入力は、比較器への入力に接続される、または比較器への入力によって構成される。D級増幅器は、自励発振することができ、またはD級増幅器に課される発振周波数を有する場合がある。一般的に、D級主増幅器は、アイドルスイッチング周波数を有する。アイドルスイッチング周波数は、すべての入力信号を取り除き、電力段で見いだされるオン/オフサイクルの平均周期を測定することによって決定することができる。
【0050】
通常、アイドルスイッチング周波数は、200kHz〜2MHzの範囲にある。
【0051】
本文脈では、電力段とは、制御信号に応じて、電源から負荷への電流を制御する回路である。本文脈では、スイッチング電力段とは、すべての電力デバイスが、実質的にすべての時間、完全にオンまたは完全にオフのいずれかで動作する電力段である。電力デバイスは、トランジスタ、FET、IGBTなどであってよい。
【0052】
また、D級増幅器における比較器は、通常、2つの入力信号間、または入力信号と所定の電圧との間の差の正負に応じた2進数信号を出力する回路である。
【0053】
本文脈では、比較器の出力信号は、スイッチング電力段への制御信号として働く。
【0054】
スイッチング電力段出力は、主増幅器出力を形成する、または、主増幅器出力に接続することができる。しばしば、スイッチング段からの高周波数成分を除去するために、出力フィルタと呼ばれることが多い低域通過フィルタなどといったフィルタが、主増幅器出力に接続されるが、このフィルタは、常に必要なわけではなく、主増幅器の外側に設けること、または、主増幅器出力と電力段出力の間などといった、主増幅器の内側に設けることができる。
【0055】
主増幅器がD級増幅器であるとき、主増幅器出力と、比較器の入力および/または主増幅器への入力との間に接続される第1の帰還フィルタをさらに備えることが好ましい。第1の帰還フィルタは、高域通過フィルタであってよく、好ましくは、20Hzと20kHzの間の範囲のかなりの部分(少なくとも30%など)で、第1の周波数の2倍である第2の周波数における利得よりも低い第1の周波数における利得を有する、高域通過フィルタである。好ましくは、第2の周波数における利得は、第1の周波数における利得の少なくとも1.5倍である。
【0056】
本文脈では、高域通過フィルタは、その利得が、少なくとも所望の周波数区間にわたって、上昇傾向を呈するフィルタである。本文脈では、関連する周波数区間は、アイドルスイッチング周波数の1/4と1/2の間であり、利得は、高い周波数で大きく(小さい減衰)、低い周波数で小さい(大きい減衰)。
【0057】
第1の帰還フィルタを通る帰還ループが使用されて、主増幅器の周波数応答をプログラムする。主増幅器が線形増幅器である場合、主増幅器として使用される回路が、本発明の教示を適用するのを有用にする周波数応答を既に有するかに応じて、第1の帰還フィルタに対応する回路要素が存在する場合も、存在しない場合もある。存在しない場合、第1の帰還フィルタを、線形増幅器の周りの帰還ループ内で使用して、所望の周波数応答を得ることができる。
【0058】
この第1の帰還フィルタは、任意の次数を有することができる。伝統的なD級増幅器では、このフィルタは、1次フィルタであるが、代わりにより高次のフィルタを使用することが有利な場合がある。これには、主増幅器の閉ループ利得を増加させる効果があり、それによって、第1の加算ノードを通して閉じるループで利用可能なループ利得が増加する。
【0059】
上で述べたように、順方向経路と通常呼ばれる経路を、増幅器自体の入力と主増幅器入力の間に規定することができる。好ましくは、補償器は、順方向経路の中に設けられる。
【0060】
好ましくは、順方向経路は、追加または代替で、低域通過フィルタを備える。加えて、低域通過フィルタは、入力から得られた信号と出力から得られた信号を組み合わせる加算ノードから低域通過フィルタに供給することによって、帰還ループの内部に配置することができる。順方向経路の中に低域通過フィルタを設けることの利点は、入力信号中の高周波数成分を減衰することに加えて、ループ利得を加えることである。
【0061】
主増幅器がD級増幅器であるとき、低域通過フィルタを、好ましくは、スイッチング周波数に適応して、このスイッチング周波数を低周波数に対して減衰させる。一実施形態では、低域通過フィルタは、アイドルスイッチング周波数で第1の利得を有し、アイドルスイッチング周波数の半分で第2の利得を有し、ここで、第2の利得が第1の利得の少なくとも1.5倍である。好ましくは、第2の利得は、第1の利得の少なくとも2倍、または第1の利得の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10倍またはそれ以上でさえある。
【0062】
一実施形態では、増幅器は、補償器の出力から入力への第3の経路をさらに備える。この経路は、増幅器入力からの経路とともに、出力および入力から補償器の入力への経路を通して供給される信号から得られる誤差信号に基づいて、補償器が、主増幅器への追加の入力信号を生成することを可能にする。誤差信号をフィルタ処理および増幅することによって、補償器は、主増幅器によって生成される歪を、少なくとも所望の周波数帯域内で打ち消す信号を作ることになる。
【0063】
一実施形態では、主増幅器は、実質的に積分器として働くように構成される。主増幅器がD級増幅器である場合、これは、第1の帰還フィルタを、DCではごくわずかな利得を有する高域通過フィルタなどといった高域通過フィルタであるように構成することによって行うことができる。本文脈では、積分増幅器とは、実質的に積分器のように働く増幅器である。すなわち、20Hzと20kHzの間の範囲のかなりの部分(少なくとも30%など)にわたって、第1の周波数における利得が第1の周波数の2倍である第2の周波数における利得よりも大きい。好ましくは、第1の周波数における利得は、第2の周波数における利得の少なくとも1.5倍である。
【0064】
有利なことに、ここで、1つまたは複数のさらなる帰還経路を設けることができ、そのうちの1つだけが、実質的なDC利得を有する。これが、本発明の第2の態様である。
【0065】
本発明の一実施形態では、第1の帰還またはループが、増幅器自体の出力であってよい主増幅器出力と利得段入力との間に追加で設けられる。このループは、当然、フィルタなどといった追加要素を備える場合があるが、増幅器の利得曲線をさらに整形するため回路網と一緒に働くことができる。1つの状況では、ループは、10〜100kHzの周波数区間の中に、局部的反共振または減少部を有する応答曲線または利得曲線を有する。
【0066】
本発明のそのまたは他の実施形態では、第2の帰還またはループが、増幅器自体の出力であってよい主増幅器出力と、利得段出力との間に追加で設けられる。この第2のループは、当然、フィルタなどといった追加要素を備える場合があるが、増幅器の利得曲線をさらに整形するため回路網と一緒に働くことができる。1つの状況では、ループは、10〜100kHzの周波数区間の中に、局部的反共振または減少部を有する応答曲線または利得曲線を有する。
【0067】
第3の態様では、本発明は、
・第1のポートおよび第2のポートを備える回路網であって、それらのポートの間に少なくとも2つのコンデンサが直列に接続され、コンデンサの各対の間で抵抗器が所定の電圧に接続される、回路網と、
・主増幅器入力と、
・主増幅器出力と、
・スイッチング電力段であって、
- 電力段入力、および
- 第1のポートに動作可能に接続される電力段出力、
を有するスイッチング電力段と、
・比較器であって、
- 第2のポートに接続される比較器入力、および
- 電力段入力に接続される比較器出力
を有する比較器と
を備える主増幅器に関する。
【0068】
この態様は、特定のタイプの主増幅器に関する。下で記載されるように、この主増幅器は、本発明の上の態様に関して記載した増幅器において使用することができる。当然、上の態様に関係するすべての実施形態、状況、および考慮事項は、この態様に等しく関連する。
【0069】
上で述べたように、主増幅器は、それ自体が増幅器であるが、通常の音声増幅器以外の別の所望の動作モードを有することが可能であってよい。
【0070】
主増幅器は、その間に少なくとも2つのコンデンサが直列に接続され、コンデンサの各対の間で抵抗器が所定の電圧に接続される2つのポートを備える回路網を備える。
【0071】
本主増幅器の回路網では、少なくとも2つのコンデンサが、2つのポート間に直列に設けられる。当然、追加のコンデンサ、抵抗器、インダクタ、増幅器、加算ノード、能動構成要素、または受動構成要素などといった追加の電子構成要素を設けることができる。
【0072】
第1のポートから第2のポートに主経路が存在すると、ポート間に2つのコンデンサが直列に接続され、この主経路が、2つのコンデンサを次々に経由する。他の構成要素を含む経路が主経路から分岐することができ、主経路に再結合することもできる。また、主経路は、抵抗器などのさらなる構成要素を含むことができる。
【0073】
コンデンサの各対の間で、抵抗器が、所定の電圧に(コンデンサに)接続される。この所定の電圧は、好ましくは、グランドのように、少なくとも実質的に一定である。
【0074】
したがって、3つのコンデンサが直列に接続される場合、2つのそのような抵抗器が設けられる。1より多いそのような抵抗器が設けられる場合、抵抗器は、好ましくは、同じ所定の電圧に接続されるが、これは要件ではない。
【0075】
ポート間に直列に2つ以上のコンデンサを有することの全体的な利点は、回路網の全体的な挙動が、少なくとも2次の高域通過フィルタのものであるということである。
【0076】
主増幅器は、入力および出力、ならびにスイッチング電力段および比較器を有する。D級増幅器で通常であるように、比較器は、スイッチング電力段に接続される。この場合、比較器入力が主増幅器への入力を形成することができ、その結果、主増幅器入力は、比較器入力に接続され、または実際に比較器入力を形成する。フィルタは、所望の場合、たとえば、主増幅器入力と比較器入力の間に設けることができる。
【0077】
同様に、スイッチング電力段出力は、主増幅器出力を形成する、または主増幅器出力に接続することができる。しばしば、スイッチング段からの高周波数成分を除去するために、出力フィルタと呼ばれることが多い低域通過フィルタなどといったフィルタが、主増幅器出力に接続されるが、このフィルタは、常に必要なわけではなく、主増幅器の外側に設けること、または、主増幅器出力と電力段出力の間などといった、主増幅器の内側に設けることができる。
【0078】
本文脈では、電力段とは、制御信号に応じて、電源から負荷への電流を制御する回路である。本文脈では、スイッチング電力段とは、すべての電力デバイスが、実質的にすべての時間、完全にオンまたは完全にオフのいずれかで動作する電力段である。電力デバイスは、トランジスタ、FET、IGBTなどであってよい。
【0079】
また、D級増幅器における比較器は、通常、2つの入力信号間、または入力信号と所定の電圧との間の差の正負に応じた2進数信号を出力する回路である。
【0080】
本文脈では、比較器の出力信号は、スイッチング電力段への制御信号として働く。
【0081】
この回路網は、比較器入力と電力段出力の間に設けられ、したがって、電力段および比較器にわたる帰還ループを形成する。帰還ループが使用されて、主増幅器の周波数応答をプログラムする。
【0082】
抵抗器の導体が、コンデンサの「外側の」導体に接続されるとき、たとえば、2つの直列に接続したコンデンサにわたって並列に抵抗器を接続することができる。
【0083】
本発明の別の態様は、
・増幅器入力と、
・第3の態様による主増幅器と、
・低域通過フィルタであって、
- 主増幅器出力および増幅器入力に動作可能に接続されるフィルタ入力、ならびに
- 主増幅器入力に動作可能に接続されるフィルタ出力
を有する低域通過フィルタと
を備える増幅器に関する。
【0084】
当然、上の態様に関係するすべての実施形態、状況、および考慮事項は、この態様に等しく関連する。
【0085】
当然、増幅器は、主増幅器出力に接続できる、または主増幅器出力によって形成できる出力を有する。上で記載したように、主増幅器出力にフィルタを設けることができる。
【0086】
低域通過フィルタは、主増幅器入力と増幅器入力と主増幅器出力の間に設けられる。したがって、増幅器入力で受け取った信号は、主増幅器入力に到達する前に、低域通過フィルタによってフィルタ処理される。加えて、主増幅器出力から受け取った信号は、主増幅器入力に到達する前に、低域通過フィルタによってフィルタ処理される。
【0087】
順方向経路は、増幅器入力から主増幅器入力へと規定することができる。この経路は、低域通過フィルタを備える。所望の場合、他のフィルタおよび構成要素を順方向経路に設けることができる。
【0088】
帰還経路は、主増幅器出力から主増幅器入力へと規定することができる。この経路の中に低域通過フィルタがやはり存在する。当然、帰還経路および順方向経路の中に異なる低域通過フィルタを設けることができるが、帰還経路および順方向経路が、低域通過フィルタを備える共通の経路部分を有することが好ましい。
【0089】
低域通過フィルタの望ましいパラメータおよび動作は、以下で記載される。
【0090】
本発明の最後の態様は、
・増幅器入力と、
・第5の態様による主増幅器と、
・無効化されるように構成された補償器であって、
- 主増幅器出力および増幅器入力に動作可能に接続される補償器入力、ならびに
- 主増幅器入力に動作可能に接続される補償器出力
を有する補償器と
を備える増幅器に関する。
【0091】
当然、上の態様に関係するすべての実施形態、状況、および考慮事項は、この態様に等しく関連する。
【0092】
当然、増幅器は、主増幅器出力に接続できる、または主増幅器出力によって形成できる出力を有する。上で記載したように、主増幅器出力にフィルタを設けることができる。
【0093】
補償器は、主増幅器入力と増幅器入力と主増幅器出力の間に設けられる。したがって、増幅器入力で受け取った信号は、主増幅器入力に到達する前に、補償器によってフィルタ処理される。加えて、主増幅器出力から受け取った信号は、主増幅器入力に到達する前に、補償器によってフィルタ処理される。
【0094】
順方向経路は、増幅器入力から主増幅器入力へと規定することができる。この経路は補償器を備える。所望の場合、フィルタなどといった他の構成要素を順方向経路に設けることができる。
【0095】
帰還経路は、主増幅器出力から主増幅器入力へと規定することができる。補償器は、この経路の中にやはり存在する。当然、帰還経路および順方向経路の中に異なる補償器を設けることができるが、帰還経路および順方向経路が、補償器を備える共通の経路部分を有することが好ましい。
【0096】
補償器の所望の動作および実装は、上でさらに記載される。
【0097】
一実施形態では、主増幅器は、実質的に積分器として働くように構成される。主増幅器がD級増幅器である場合、これは、第1の帰還フィルタを、DCではごくわずかな利得を有する高域通過フィルタであるように構成することによって行うことができる。
【0098】
有利なことに、ここで、1つまたは複数のさらなる帰還経路を設けることができ、そのうちの1つだけが、実質的なDC利得を有する。これが、本発明のさらなる態様である。
【0099】
いくつかの追加技術および解決策は、同じ日に出願され、その全体が参照によってここで本明細書に組み込まれる、「AMPLIFIER CIRCUIT」および「AN AMPLIFIER WITH AN AT LEAST SECOND ORDER FILTER IN THE CONTROL LOOP」という発明の名称の、出願人の同時係属の出願に見いだすことができる。
【0100】
以下では、本発明の好ましい実施形態が図面を参照して説明される。