(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-506204(P2021-506204A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】位相同期化装置
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20210122BHJP
H04L 27/227 20060101ALI20210122BHJP
H03L 7/08 20060101ALI20210122BHJP
H03L 7/081 20060101ALI20210122BHJP
【FI】
H04L7/00 970
H04L27/227 100
H03L7/08 107
H03L7/081
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-552646(P2020-552646)
(86)(22)【出願日】2018年10月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】KR2018013001
(87)【国際公開番号】WO2019124721
(87)【国際公開日】20190627
(31)【優先権主張番号】10-2017-0174436
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0044942
(32)【優先日】2018年4月18日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520208591
【氏名又は名称】ポインツ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】POINT2 TECHNOLOGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュニョン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、ヒョソプ
【テーマコード(参考)】
5J106
5K047
【Fターム(参考)】
5J106AA03
5J106BB02
5J106CC01
5J106CC25
5J106CC54
5J106CC59
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5J106DD24
5J106GG10
5J106KK39
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5K047EE04
5K047GG09
5K047GG11
5K047GG27
5K047GG45
(57)【要約】
本発明は、位相同期化装置に関するもので、より詳細には、受信機を通じて受信されたRF信号に基づいて復元された信号の位相エラーを補正するための確率的RF位相同期システム(Stochastic RF Phase Synchronization System、SRFPS)に関するものである。本発明の一実施形態に係る位相同期化装置は、予め定められた臨界電圧値に基づいて復元された信号をサンプリングしてサンプリング値を出力するサンプリング部、前記サンプリング値を基に生成されるヒストグラム関数を用いて、前記復元された信号に対するコスト値を算出し、前記コスト値に基づいて最適の位相オフセット値を決定する位相変移制御部および前記最適の位相オフセット値に応じて発振信号の位相を変移させる位相変移部を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた臨界電圧値に基づいて復元された信号をサンプリングしてサンプリング値を出力するサンプリング部;
前記サンプリング値を基に生成されるヒストグラム関数を用いて、前記復元された信号に対するコスト値を算出し、前記コスト値に基づいて最適の位相オフセット値を決定する位相変移制御部;および
前記最適の位相オフセット値に応じて発振信号の位相を変移させる位相変移部を含む、位相同期化装置。
【請求項2】
前記サンプリング部は、
前記臨界電圧値を最小臨界電圧値から最大臨界電圧値まで変化させながら、前記復元された信号をサンプリングする、請求項1に記載の位相同期化装置。
【請求項3】
前記サンプリング値の出力回数を累積して、前記復元された信号に対する累積分布関数を生成する累積部をさらに含み、
前記ヒストグラムは、前記の累積分布関数に基づいて生成される、請求項1に記載の位相同期化装置。
【請求項4】
前記累積部は、
前記サンプリング値のうち、予め定められた累積対象のサンプリング値の出力回数を累積して、前記累積分布関数を生成する、請求項3に記載の位相同期化装置。
【請求項5】
前記ヒストグラム関数は、前記累積分布関数を微分して生成される、請求項3に記載の位相同期化装置。
【請求項6】
前記位相変移制御部は、
前記ヒストグラム関数および予め定められた境界電圧値に基づいて前記コスト値を算出する、請求項1に記載の位相同期化装置。
【請求項7】
前記位相変移制御部は、
下記数1を用いて、前記コスト値を算出する、請求項5に記載の位相同期化装置。
【数1】
(ここで、Wは、前記コスト値、θは、前記復元された信号に適用された現在の位相オフセット値、−V
Cは、第1中央境界電圧値、V
Cは、第2中央境界電圧値、−V
Eは、第1エッジ境界電圧値、V
Eは、第2エッジ境界電圧値、αおよびβは、予め定められた定数、Hは、前記ヒストグラム関数)
【請求項8】
前記位相変移制御部は、
前記復元された信号に適用された現在の位相オフセット値に基づいて算出された前記コスト値が最小値であるとき、前記現在の位相オフセット値を前記最適の位相オフセット値として決定する、請求項1に記載の位相同期化装置。
【請求項9】
前記位相変移制御部は、
予め定められた周期によって前記現在の位相オフセット値を変化させながら、前記最適の位相オフセット値を決定する、請求項1に記載の位相同期化装置。
【請求項10】
前記復元された信号は、
I信号およびQ信号のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の位相同期化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期化装置に関するもので、より詳細には、受信機を通じて受信されたRF信号に基づいて復元された信号の位相エラーを補正するための確率的RF位相同期システム(StochasticRFPhaseSynchronizationSystem、SRFPS)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
RF(Radio Frequency)通信とは、電波を用いて遠隔地に情報を伝達する通信技術をいう。一般的に伝送しようとする情報は、映像、音声およびテキストなどのデータであるが、これらを信号に表示すると、相対的に非常に低い周波数帯域に限定されている様子を示す。このように、元の情報信号が存在する低い周波数帯域を基底帯域(baseband)という。基底帯域の情報を伝送線路を通さずに伝送しようとすると、電波の形態で伝送が可能な高い周波数の信号によって情報信号が運ばれるようにする必要がある。この過程を変調(modulation)といい、運びに用いられる高い周波数の電波を搬送波(carrier)という。
【0003】
RF通信システムを構成する送信機は、映像、音声およびテキストなど伝送しようとするデータ信号に基づいて、振幅、周波数または位相を変化させた変調波を搬送波に載せてRF信号として送信する。送信機によって送信されたRF信号を受信する受信機は、受信されたRF信号から変調波を抽出して、送信機が伝送しようとするデータ信号を復元し、このような復元過程を復調(demodulation)という。
【0004】
ところで、送信機と受信機との間の環境的な要因(例えば、地形、地物による信号の反射)または送信機および受信機の内部に配置される様々な素子の影響により、送信機で送信するRF信号の位相エラーが生じるようになる。したがって、受信機側では、データ信号を復元するにおいて受信されたRF信号に含まれた位相エラーを補正する必要がある。
【0005】
図1は、従来の技術によるRF通信システムで使用される受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0006】
図1を参照すると、従来の技術による受信機は、RF信号を受信するためのアンテナ(ANT)、受信されたRF信号の雑音を最小化して増幅する低雑音増幅機(Low NoiseAmplifier、LNA)(104)、所定の周波数を有する発振信号を生成する電圧制御発振機(Voltage Controlled Oscilator、VCO)(112)、電圧制御発振機(112)から出力された発振信号と低雑音増幅機(104)から出力される信号を用いて、入力されたRF信号の周波数を変換して、同位相信号(In−phase信号、以下、「I信号」)および前記I信号と90°の位相差を有する直交位相信号(Quadrature phase信号、以下、「Q信号」)を出力する復調機(106)を含む。広く知られているように、復調機(106)から出力されるI信号およびQ信号は、アンテナ(ANT)を通じて入力されたRF信号の周波数と電圧制御発振機(112)の出力周波数との差に該当する周波数を有する。
【0007】
復調機(106)は、入力されたRF信号と電圧制御発振機(112)から出力される発振信号の入力を受けて処理し、入力RF信号の周波数を変換するIミキサー(I mixer)(108)とQミキサー(Q mixer)(110)とを含む。Iミキサー(108)とQミキサー(110)とは、電圧制御発振機(112)から出力される発振信号および位相変移機(114)によって90°だけの位相が変移した発振信号によってオン/オフされるトランジスタなどで構成され、RF信号の周波数を変換し、それぞれI信号およびQ信号を出力する。
【0008】
一方、復調機(106)から出力されるI信号およびQ信号には、それぞれ先に言及された位相エラーが含まれている。このような位相エラーを補償するために、従来には、アナログ−デジタル変換機(Analog−Digital Converter、ADC)(116、120)およびデジタル信号処理機(Digital Signal Processor、DSP)(118、122)がそれぞれ使用される。復調機(106)から出力されるI信号およびQ信号は、それぞれADC(116、120)によってデジタル信号に変換され、DSP(118、112)に入力される。DSP(118、112)は、予め定められた特定のアルゴリズムまたは信号処理方法によって、I信号およびQ信号に含まれる位相エラーを補償する。このような処理によって、最終的に復元されたI信号(I)およびQ信号(Q)がそれぞれ出力される。
【0009】
このように、
図1のような従来の受信機を使用する場合、ADCおよびDSPのようなモジュールの使用が必須的である。このようなADCおよびDSPの使用により、受信機の電力消耗が激しくなり、設計が複雑になるという問題がある。特に、BPSK(BiPhase Shift Keying)によって変調されたRF信号を、
図1のような受信機で復調する場合、位相エラーの補償のために、別の直交位相信号が必要になるという問題もある。
【0010】
図2は、従来の技術によるRF通信システムで使用される他の受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0011】
図2を参照すると、従来の技術による受信機は、RF信号を受信するためのアンテナ(ANT)、RF信号と所定の周波数を有する発振信号を生成する電圧制御発振機(208)、電圧制御発振機(112)から出力された発振信号および位相変移機(206)によって90°だけの位相が変移した発振信号を用いて、入力されたRF信号の周波数を変換する第1ミキサー(202)および第2ミキサー(204)、第1ミキサー(202)および第2ミキサー(204)から出力される信号のうち、特定の周波数よりも低い帯域の信号のみをフィルタリングして出力するローパスフィルタ(212、214)、ローパスフィルタ(212、214)から出力された二つの信号の積に比例する値を出力する乗算機(216)、乗算機(216)から出力された信号をフィルタリングするループフィルタ(LoopFilter)(210)を含む。発振機(208)は、ループフィルタ(210)から出力される信号に基づいて発振信号を生成する。
図2のような構成に係る復調方式をコスタスループ(Costas Loop)という。
【0012】
図2のような従来の技術によれば、RF信号の位相エラーをADCやDSPを使用しなくても補償することができる。しかし、
図2のようなコスタスループ方式の受信機は、ハードウェアの設計が非常に複雑であるという問題がある。また、
図2のような復調方式を使用しても、位相エラーの補償において、依然として別の直交位相信号が必要になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来に比べて、受信機の電力消耗を減らすと同時に、より簡単な受信機の設計を可能にする位相同期化装置を提供することを目的としている。
【0014】
また、本発明は、RF信号を復元する過程で、位相エラーの補償において、別の直交位相信号を必要としない位相同期化装置を提供することを目的としている。
【0015】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されていない本発明の他の目的およびメリットは、下記の説明によって理解されることができ、本発明の実施例によってより明らかに理解されるはずである。また、本発明の目的およびメリットは、特許請求の範囲に示した手段およびその組み合わせによって実現できることが容易に分かるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態に係る位相同期化装置は、予め定められた臨界電圧値に基づいて復元された信号をサンプリングしてサンプリング値を出力するサンプリング部、前記サンプリング値を基に生成されるヒストグラム関数を用いて前記復元された信号に対するコスト値を算出し、前記コスト値に基づいて最適の位相オフセット値を決定する位相変移制御部および前記最適の位相オフセット値に応じて発振信号の位相を変移させる位相変移部を含む。
【0017】
本発明の一実施例において、前記サンプリング部、前記臨界電圧値を最小臨界電圧値から最大臨界電圧値まで変化させながら、前記復元された信号をサンプリングする。
【0018】
また、本発明の一実施例において、前記位相同期化装置は、前記サンプリング値の出力回数を累積して、前記復元された信号に対する累積分布関数を生成する累積部をさらに含み、前記ヒストグラムは、前記累積分布関数に基づいて生成される。
【0019】
また、本発明の一実施例において、前記累積部は、前記サンプリング値のうち、予め定められた累積対象のサンプリング値の出力回数を累積して、前記累積分布関数を生成する。
【0020】
また、本発明の一実施例において、前記ヒストグラム関数は、前記累積分布関数を微分して生成される。
【0021】
また、本発明の一実施例において、前記位相変移制御部は、前記ヒストグラム関数および予め定められた境界電圧値に基づいて前記コスト値を算出する。
【0022】
また、本発明の一実施例において、前記位相変移制御部は、下記[数1]を用いて、前記コスト値を算出する。
【0023】
【数1】
【0024】
(ここで、Wは、前記コスト値、θは、前記復元された信号に適用された現在の位相オフセット値、−V
Cは、第1中央境界電圧値、V
Cは、第2中央境界電圧値、−V
Eは、第1エッジ境界電圧値、V
Eは、第2エッジ境界電圧値、αおよびβは、予め定められた定数、Hは、前記ヒストグラム関数)
【0025】
また、本発明の一実施例において、前記位相変移制御部は、前記現在の位相オフセット値に基づいて算出された前記コスト値が最小値であるとき、前記現在の位相オフセット値を前記最適の位相オフセット値として決定する。
【0026】
また、本発明の一実施例において、前記位相変移制御部は、予め定められた周期によって前記現在の位相オフセット値を変化させながら、前記最適の位相オフセット値を決定する。
【0027】
また、本発明の一実施例において、前記復元された信号は、I信号およびQ信号のうちの少なくとも一つを含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来に比べて、受信機の電力消耗を減らすと同時に、より簡単な受信機の設計が可能であるというメリットがある。
【0029】
また、本発明によれば、無線信号を復元する過程において、位相エラーの補償において別の直交位相信号を必要としないというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来の技術によるRF通信システムで使用される受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0031】
【
図2】従来の技術によるRF通信システムで使用される他の受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0032】
【
図3】本発明の一実施形態に係る位相同期化装置を含む受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0033】
【
図4】本発明の一実施形態に係る位相同期化装置の累積部によって生成される累積分布関数(CumulativeDistributionFunction、CDF)の一例を示すグラフである。
【0034】
【
図5】
図4に示された累積分布関数を基に生成されるヒストグラム関数を示すグラフである。
【0035】
【
図6】位相エラーが最小であるRF信号を受信して復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示す。
【0036】
【
図7】位相エラーが最小であるRF信号を受信して復元された信号を基に生成されるヒストグラム関数を示す。
【0037】
【
図8】位相エラーが最大であるRF信号を受信して復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示す。
【0038】
【
図9】位相エラーが最大であるRF信号を受信して復元された信号を基に生成されるヒストグラム関数を示す。
【0039】
【
図10】位相エラーによるコスト値の変化を示すグラフである。
【0040】
【
図11】本発明の他の実施例に係る位相同期化装置を含む受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0041】
【
図12】本発明に係る位相同期化装置を含まない受信機によって復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示す。
【0042】
【
図13】本発明に係る位相同期化装置を含む受信機によって復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
前述の目的、特徴およびメリットは、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施すできるはずである。本発明を説明するにおいて、本発明に関連する公知技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不要に曖昧にすることがあると判断される場合には、詳細な説明を省略する。以下、添付の図面を参照して、本発明に係る好ましい実施例を詳細に説明することにする。図面において、同一な参照符号は、同一または類似する構成要素を指すものと使用される。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態に係る位相同期化装置を含む受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0045】
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る受信機は、低雑音増幅機(302)、ミキサー(304)、第1バッファ(306)、第2バッファ(308)、そして位相同期化装置(30)を含む。
【0046】
アンテナ(ANT)を通じて受信されるRF信号は、まず低雑音増幅機(302)に入力される。低雑音増幅機(302)は、受信されたRF信号の雑音を最小化して増幅して出力する。低雑音増幅機(302)によって増幅されたRF信号は、ミキサ(304)に入力される。ミキサー(304)は、電圧制御発振機(318)によって生成される発振信号を用いて、低雑音増幅機(302)によって増幅されたRF信号の周波数を変換して復元された信号(D)を出力する。
【0047】
ミキサー(304)によって出力された復元された信号(D)は、第1バッファ(306)および第2バッファ(308)を通して、最終的に復元された信号(S)として出力される。実施例によっては、第1バッファ(306)および第2バッファ(308)は省略されてもよいし、バッファの個数が変わってもよい。
【0048】
電圧制御発振機(318)は、外部から供給される基準信号(REF)に基づいて、所定の周波数を有する発振信号を出力する。本発明の一実施例において、電圧制御発振機(318)によって出力される発振信号の位相は、位相同期化装置(30)によって調節される。位相同期化装置(30)によって位相が調節された発振信号は、逓倍器(320)によって周波数が調節された後、ミキサー(304)に入力される。実施例によっては、逓倍器(320)の逓倍数(例えば、6)は変わってもよい。
【0049】
一方、本発明に係る位相同期化装置(30)は、第1バッファ(306)から出力された復元された信号(D)を基に発振信号の位相を調節する。このような位相同期化装置(30)の発振信号の位相調節によって、アンテナ(ANT)を通じて受信されるRF信号に含まれた位相エラーが補償される。
【0050】
図3を参照すると、本発明に係る位相同期化装置(30)は、サンプリング部(310)、累積部(312)、位相変移制御部(314)、位相変移部(316)を含む。以下では、
図3ないし
図10を参照して、本発明に係る位相同期化装置(30)の機能および動作に関して具体的に説明する。
【0051】
まず、サンプリング部(310)は、予め定められた臨界電圧(threshold Voltage)値に基づいて復元された信号(D)をサンプリングし、サンプリング値を出力する。以下では、サンプリング部(310)が1ビットサンプラーで構成された場合を想定して説明する。1ビットサンプラーは、サンプリングの結果に応じて、1ビットの大きさを有するサンプリング値、すなわち、0または1を出力する。サンプリング部(310)は、外部から入力されるクロック信号(CLK)に基づいてサンプリング動作を行うことができる。
【0052】
1ビットサンプラーで構成されるサンプリング部(310)は、復元された信号の電圧の大きさを予め定められた臨界電圧値と比較するが、このような比較動作をサンプリング動作とする。例えば、サンプリング部(310)は、復元された信号の電圧の大きさが臨界電圧値よりも大きい場合、1を出力し、そうでなければ0を出力する。
【0053】
本発明の一実施例において、サンプリング部(310)は、臨界電圧値を予め設定された最小臨界電圧値から予め設定された最大臨界電圧値まで変化させながら、復元された信号(D)をサンプリングすることができる。例えば、サンプリング部(310)は、臨界電圧値を−100mVの最小臨界電圧値から10mVずつ増加させ、かつ100mVの最大臨界電圧値に到るまで、それぞれの臨界電圧値を基に復元された信号(D)に対するサンプリング動作を行うことができる。
【0054】
次いで、累積部(312)は、サンプリング部(310)によって出力されるサンプリング値の出力回数を累積して、復元された信号(D)に対する累積分布関数(Cumulative Distribution Function、CDF)を生成する。本発明の一実施例において、累積部(312)は、サンプリング部(310)によって出力されるサンプリング値のうち、予め定められた累積対象のサンプリング値の出力回数を累積して累積分布関数を生成することができる。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態に係る位相同期化装置の累積部によって生成される累積分布関数の一例を示すグラフである。
【0056】
図4には、サンプリング部(310)が臨界電圧値を−100mVの最小臨界電圧値から10mVずつ増加させ、かつ100mVの最大臨界電圧値に到るまで、それぞれの臨界電圧値を基に復元された信号(D)に対するサンプリング動作を行った結果、出力されるサンプリング値のうち、累積対象のサンプリング値である「0」が出力された回数をそれぞれの臨界電圧値に記録して生成された累積分布関数が示されている。以下では、累積対象のサンプリング値が「0」に設定される場合を挙げて説明するが、実施例によっては、累積対象のサンプリング値が「1」に設定されてもよい。
【0057】
累積部(312)によって、
図4のような累積分布関数が生成されると、累積部(312)または位相変移制御部(314)は、累積分布関数を微分してヒストグラム関数を生成する。
図5には、
図4に示された累積分布関数を基に生成されるヒストグラム関数を示すグラフが示されている。
【0058】
一方、本発明の他の実施例において、位相変移制御部(314)は、サンプリング部(310)から出力される累積対象のサンプリング値を用いて、
図5に示されたようなヒストグラム関数を直接生成することもできる。このような実施例において、位相同期化装置(30)は、累積部(312)を含まない。次いで、位相変移制御部(314)は、先に生成されたヒストグラム関数に基づいて最適の位相オフセット値を決定する。本発明において、最適の位相オフセット値とは、アンテナ(ANT)を通じて入力されたRF信号に含まれた位相エラーが最終復元された信号(S)に及ぼす影響を最小化できる位相オフセット値を意味する。
【0059】
本発明の一実施例において、位相変移制御部(314)は、先に生成されたヒストグラム関数および予め定められた境界電圧値に基づいてコスト値を算出することができる。ここで境界電圧値とは、コスト値を算出するために任意に設定できる値であり、第1中央境界電圧値、第2中央境界電圧値、第1エッジ境界電圧値、第2エッジ境界電圧値を含む。
【0060】
より具体的には、位相変移制御部(314)は、下記[数1]を用いて、現在適用されている位相オフセット値に応じる復元された信号(D)のコスト値を算出することができる。
【0062】
[数1]において、Wは、コスト値、θは、復元された信号(D)に適用されている現在の位相オフセット値、−V
Cは、第1中央境界電圧値、V
Cは、第2中央境界電圧値、−V
Eは、第1エッジ境界電圧値、V
Eは、第2エッジ境界電圧値、Hは、先に生成されたヒストグラム関数を意味する。また、αおよびβは、それぞれ予め定められた定数であって、0以上の値を有してもよい。
図5に示されたヒストグラム関数の形状によって、αおよびβのうちいずれか一つだけが0に設定されてもよいし、αおよびβは、互いに異なる値に設定されてもよい。
【0063】
[数1]によると、本発明に係るコスト値(W)は、
図5に示されたヒストグラムの第1中央境界電圧値(−V
C)および第2中央境界電圧値(V
C)の間の積分値から、両方のエッジ部分の積分値(−∞から第1エッジ境界電圧値(−V
E)の間の積分値および第2エッジ境界電圧値(V
E)から∞の間の積分値のうちの少なくとも一つ)を引いた値と定義できる。
【0064】
位相変移制御部(314)は、[数1]によって算出される復元された信号(D)に適用されている現在の位相オフセット値(θ)に対するコスト値(W(θ))を、以前の位相オフセット値(θ’)に基づいて算出されたコスト値(W(θ’))と比較する。位相変移制御部(314)は、比較結果、コスト値が最小値を有するようにする位相オフセット値を最適の位相オフセット値として決定する。
【0065】
このような比較のために、位相変移制御部(314)は、最適の位相オフセット値が決定された以降にも、位相変移部(316)によって発振信号に適用される位相オフセット値、すなわち、現在の位相オフセット値を予め定められた周期によって継続的に変更することができる。位相変移制御部(314)は、このように変更された現在の位相オフセット値に応じるコスト値を、以前に算出されたコストの値と比較することによって、引き続き、最適の位相オフセット値を検出することができる。
【0066】
このように、本発明に係る位相変移制御部(314)がコスト値を基に最適のオフセット値を決定することは、RF信号に含まれた位相エラーによる位相オフセット値に応じてコスト値が変化するためである。
【0067】
図6は、位相オフセット値が最小であるとき、RF信号を受信して復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示し、
図7は、位相オフセット値が最小であるとき、RF信号を受信して復元された信号を基に生成されるヒストグラム関数を示す。また、
図8は、位相オフセット値が最大であるとき、RF信号を受信して復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示し、
図9は、位相オフセット値が最大であるとき、RF信号を受信して復元された信号を基に生成されるヒストグラム関数を示す。
【0068】
ご参考に、アイパターン(Eye Pattern)とは、特定信号のレベル移動の流れを特定時間単位内で一画面に重畳して示した波形である。このような重畳波形が、人の目に似ており、アイパターンと呼ばれ、信号が交差しない中央部分の垂直、水平に開かれた領域をアイオープニング(eye opening)に指す。
【0069】
位相エラーなどの影響により、測定対象の信号にノイズが多いほど、アイオープニングは小さくなり、逆に、ノイズが少なくて信号の強さが良好であるほど、アイオープニングは大きくなる。アイオープニングを中心にクロックタイミングとレベル臨界値(Threshold)の基準電圧が決定され、アイオープニングが大きく、かつ、きれいほど、信号のビット誤り率(BER)が良好であることを示す。
【0070】
位相エラーによる位相オフセット値が最小であるRF信号を基に復元された信号のアイオープニング(
図6を参照)は、位相エラーによる位相オフセット値が最大である信号(
図8)のアイオープニングに比べて、その大きさがより大きく生じる。
【0071】
図7には、
図6に示されたように、位相エラーによる位相オフセット値が最小であるRF信号を基に復元された信号を、サンプリング部(310)を用いてサンプリングし、累積部(312)を用いて生成される累積分布関数を微分して生成されるヒストグラム関数が示されている。また、
図9には、
図8に示されたように、位相エラーによる位相オフセット値が最大であるRF信号を基に復元された信号を、サンプリング部(310)を用いてサンプリングし、累積部(312)を用いて生成される累積分布関数を微分して生成されるヒストグラム関数が示されている。
【0072】
位相エラーによる位相オフセット値が最小であるRF信号に基づいたヒストグラム(
図7)では、第1中央境界電圧値(−V
C)および第2中央境界電圧値(V
C)の間の積分値が、エッジ境界電圧値(V
E)以降の領域の積分値よりも相対的に小さく生じることを確認することができる。
【0073】
これに対し、位相エラーによる位相オフセット値が最大であるRF信号に基づいたヒストグラム(
図9)では、第1中央境界電圧値(−V
C)および第2中央境界電圧値(V
C)の間の積分値が、エッジ境界電圧値(V
E)以降の領域の積分値よりも相対的に大きく生じることを確認することができる。
【0074】
このような相違により、位相エラーによる位相オフセット値が最小であるRF信号を基に復元された信号のコスト値は、位相エラーによる位相オフセット値が最大であるRF信号を基に復元された信号のコスト値よりも小さく生じる。
【0075】
このような位相オフセット値とコスト値との間の関係をまとめると、
図10の通りである。
図10は、位相オフセット値に応じるコスト値の変化を示すグラフである。
図10に示されたように、本発明に係るコスト値は、位相オフセット値が最小値、すなわち、0であるとき、最小値を示し、位相オフセット値が最大値(−π/2、π/2)であるとき、最大値を示す。
【0076】
したがって、本発明に係る位相変移制御部(314)は、現在の位相オフセット値(θ)が適用された発振信号によって復元された信号(D)に対するヒストグラムを基に算出されるコスト値を、以前に算出されたコスト値と比較して、比較結果、最小値を有するコスト値に対応する現在の位相オフセット値(θ)を最適の位相オフセット値として決定する。
【0077】
最適の位相オフセット値が決定された以降にも、位相変移制御部(314)は、現在の位相オフセット値(θ)を予め定められた周期によって変化させながら、前述のコスト値の算出およびそれに伴う最適の位相オフセット値の決定過程を周期的に行うことができる。
【0078】
本発明の一実施例において、位相変移制御部(314)は、現在の位相オフセット値(θ)を無差別な方式(bruteforce)に、すなわち、ランダムに変化させながら最適の位相オフセット値を決定することができる。また、他の実施例において、位相変移制御部(314)は、最適の位相オフセット値を中心に予め定められた間隔(例えば、5°または10°など)だけ現在の位相オフセット値(θ)を増加または減少させる方式で、現在の位相オフセット値を変化させることもできる。
【0079】
さらに、
図3を参照すると、位相変移部(316)は、位相変移制御部(314)によって決定された最適の位相オフセット値に応じて、電圧制御発振機(318)によって出力される発振信号の位相を変移(shift)させる。前述のように、最適の位相オフセット値が決定された以降にも、位相変移制御部(314)は、位相オフセット値(θ)を周期的に変化させることができ、位相変移部(316)は、位相変移制御部(314)によって変化した現在の位相オフセット値(θ)に応じて発振信号の位相を調節する。
【0080】
ミキサー(304)は、このように、位相変移部(316)によって位相が最適の位相オフセットだけ調節された位相を有する発振信号を用いて、低雑音増幅機(302)によって増幅されたRF信号の周波数を変換して復元された信号(D)を出力する。このように、位相が最適の位相オフセットだけ調節された発振信号によって復元された信号(D)がバッファ(306、308)を通して出力される最終信号(S)は、アンテナ(ANT)を通じて受信されたRF信号に含まれた位相エラーによる影響を最小限に有するようになる。
【0081】
図11は、本発明の他の実施例に係る位相同期化装置を含む受信機の構成を概略的に示したブロック図である。
【0082】
本発明に係る位相同期化装置(30)は、
図1を通じて前述した直交位相信号を用いた変調方式を通じて信号を復元する受信機にも適用され得る。
図11に示されたように、本発明に係る位相同期化装置(30)は、アンテナ(ANT)を通じて受信されたRF信号が第1低雑音増幅機(1102)、第1ミキサー(1104)、第1バッファ(1106)を通して出力される第1復元信号(D1)を基に最適の位相オフセット値を決定することができる。
【0083】
すなわち、位相同期化装置(30)は、第1復元信号(D1)を基にサンプリングを行い、サンプリングの結果に応じて、ヒストグラム関数を生成し、生成されるヒストグラム関数を基に前述のようなコスト値を算出することによって、コスト値に基づい最適の位相オフセット値を決定することができる。
【0084】
位相同期化装置(30)は、決定された最適の位相オフセット値を基に電圧制御発振機(1118)から供給される発振信号の位相を調節し、位相が調節された発振信号を第1ミキサー(1104)および位相変移機(1120)にそれぞれ供給する。位相変移機(1120)は、位相が調節された発振信号の位相をさらに90°だけ調節し、第2ミキサー(1112)に供給する。このような過程によって、アンテナ(ANT)を通じて受信されたRF信号に含まれた位相エラーが補償されたI信号およびQ信号が得られる。
【0085】
図11には、位相同期化装置(30)が第1復元信号(D1)を基に最適の位相オフセット値を決定する実施例が示されているが、実施例によっては、位相同期化装置(30)は、第2低雑音増幅機(1110)、第2ミキサー(1112)、第2バッファ(1114)を通して出力される第2復元信号(D2)を基に最適の位相オフセット値を決定することもできる。
【0086】
また、他の実施例において、位相同期化装置(30)は、第1復元信号(D1)および第2復元信号(D2)をいずれも用いて、最適の位相オフセット値を決定することもできる。この場合、位相同期化装置(30)は、第1復元信号(D1)に基づいて算出されるコスト値および第2復元信号(D2)に基づいて算出されるコスト値を加えた値の最小値を算出し、この最小値に対応する現在の位相オフセット値を最適の位相オフセット値として決定する。
【0087】
これまで説明された本発明に係る位相同期化装置(30)が適用された受信機は、位相エラーを補償するために、従来の技術による受信機で使用されるADCやDSPのようなモジュールを使用していないため、電力消耗が少なく、受信機の設計を容易にする。特に、
図11のような構成を有する受信機を使用してBPSK方式に変調されたRF信号を復調する場合、従来のように、位相エラーの補償のために、別の直交位相信号を必要としないというメリットがある。
【0088】
また、本発明に係る位相同期化装置(30)が適用された受信機は、
図2に示された従来の受信機と比較しても、受信機の設計がより容易であり、位相エラー補償のために、別の直交位相信号を必要としない。
【0089】
特に、本発明に係る位相同期化装置は、CMOS(ComplementaryMetal−oxideSemiconductor)のように、少ない電力を消耗し、かつ体積や面積の小さいモジュールとして実現できるというメリットを有する。
【0090】
図12は、本発明に係る位相同期化装置を含まない受信機によって復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示す。また、
図13は、本発明に係る位相同期化装置を含む受信機によって復元された信号のアイパターンを示すダイアグラムを示す。
【0091】
図12および
図13に示されたように、本発明に係る位相同期化装置を含まない受信機によって復元された信号のアイオープニングの大きさは、本発明に係る位相同期化装置を含む受信機によって復元された信号のアイオープニングの大きさよりも小さい。これは、本発明に係る位相同期化装置を適用した受信機を使用する場合、そうでない受信機を使用することに比べて、より高い品質の復元された信号が得られることを意味する。
【0092】
前述の本発明は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、本発明の技術的思想を外れない範囲内で、様々な置き換え、変形および変更が可能であるため、前述の実施例および添付の図面によって限定されるものではない。
【国際調査報告】