(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-506725(P2021-506725A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】鉱物処理プロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 33/40 20060101AFI20210125BHJP
C07C 57/13 20060101ALI20210125BHJP
C07C 51/353 20060101ALI20210125BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210125BHJP
【FI】
C01B33/40
C07C57/13
C07C51/353
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-552139(P2020-552139)
(86)(22)【出願日】2018年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2018085346
(87)【国際公開番号】WO2019121587
(87)【国際公開日】20190627
(31)【優先権主張番号】17386049.5
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンヴニス エマヌイル
(72)【発明者】
【氏名】ゼルヴァキ モニカ
(72)【発明者】
【氏名】カプラロウ クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】カラリス タナシス
(72)【発明者】
【氏名】デデロウディス クリストス
【テーマコード(参考)】
4G073
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073CM16
4G073FA20
4G073FB29
4G073FD01
4G073FD08
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4H006AC21
4H006BA68
4H006BS10
4H039CA19
4H039CL11
(57)【要約】
スメクタイト粘土の処理方法、前記方法によって得られたスメクタイト粘土及び処理済みスメクタイト粘土の種々の使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スメクタイト粘土の処理方法であって、下記:
一価カチオンを含むスメクタイト粘土を準備すること;及び
前記スメクタイト粘土を溶媒の存在下で二価カチオン塩と接触させることを含み;
前記二価カチオン塩は、前記スメクタイト粘土中に存在する一価カチオンの対応塩より前記溶媒に溶けやすく;かつ
前記二価カチオン塩は塩化物でなく及び/又は前記スメクタイト粘土と前記二価カチオン塩は、組成物の総質量に基づいて約60wt%以下の溶媒の存在下で接触し、及び/又はこの処理方法は、前記スメクタイト粘土の酸活性化と同時に行なわれる、前記方法。
【請求項2】
前記スメクタイト粘土が、一価及び二価カチオンの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スメクタイト粘土がベントナイトである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記スメクタイト粘土中の二価カチオンが、カルシウム、マグネシウム又はその組み合わせである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が水である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記スメクタイト粘土及び/又は前記二価カチオン塩がスラリーの形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記スメクタイト粘土中の一価カチオンが、ナトリウム、カリウム又はその組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記二価カチオン塩中の二価カチオンが、処理すべきスメクタイト粘土中に存在する二価カチオンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記二価カチオン塩がカルシウム塩である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記二価カチオン塩が、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、アジ化物、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、モリブデン酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、酸化物、過マンガン酸塩、亜セレン酸塩又はタングステン酸塩である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記二価カチオン塩が、硝酸カルシウム、例えば硝酸カルシウム四水和物である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
二価カチオン塩が塩化物でなく及び/又は臭化物でなく及び/又はハロゲン化物でなく及び/又は硫黄を含まない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記スメクタイト粘土を、前記スメクタイト粘土、前記二価カチオン塩、及び前記溶媒を含む組成物の質量に基づいて約1wt%以上の量、例えば約1wt%〜約20wt%の範囲の量で使用する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記二価カチオン塩を、前記スメクタイト粘土中の一価カチオンを前記塩中の二価カチオンと交換するのに必要とされる化学量論量の約90%以上の量で使用する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記二価カチオン塩を、前記スメクタイト粘土中の一価カチオンを前記塩中の二価カチオンと交換するのに必要とされる化学量論量以上の量で使用する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記二価カチオン塩を、前記スメクタイト粘土の総質量に基づいて、約50%以下、例えば約10%以下の量で使用する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記スメクタイト粘土と前記二価カチオン塩を含む組成物が、約10以下、例えば約5以下のpHを有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記スメクタイト粘土と前記二価カチオン塩が、約15wt%以上の溶媒の存在下で接触する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記スメクタイト粘土と前記二価カチオン塩が、約60wt%以下の溶媒の存在下で接触する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記処理済みスメクタイト粘土中の二価カチオン対一価カチオン比が約20:80以上、例えば約50:50以上又は約90:10以上である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記処理済みスメクタイト粘土が一価カチオンを含まない、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記処理済みスメクタイト粘土が二価カチオンのみを含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記処理済みスメクタイト粘土中に二価カチオンのみが存在し、これらの二価カチオンは、前記スメクタイト粘土と接触した前記二価カチオン塩中に存在する二価カチオンである、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法によって得られた及び/又は得ることができるスメクタイト粘土。
【請求項25】
約20:80以上、例えば約50:50以上又は約90:10以上の二価カチオン対一価カチオン比を有するスメクタイト粘土。
【請求項26】
前記スメクタイト粘土が一価カチオンを含まない、請求項23に記載のスメクタイト粘土。
【請求項27】
前記スメクタイト粘土が二価カチオンのみを含む、請求項23又は24に記載のスメクタイト粘土。
【請求項28】
前記スメクタイト粘土中の二価カチオンが、カルシウム、マグネシウム又はその組み合わせである、請求項23〜25のいずれか1項に記載のスメクタイト粘土。
【請求項29】
前記スメクタイト粘土中の一価カチオンが、ナトリウム、カリウム又はその組み合わせである、請求項23〜26のいずれか1項に記載のスメクタイト粘土。
【請求項30】
前記スメクタイト粘土がベントナイトである、請求項23〜27のいずれか1項に記載のスメクタイト粘土。
【請求項31】
請求項22〜28のいずれか1項に記載のスメクタイト粘土の、触媒として若しくは動物飼料組成物の添加物として若しくは医薬品組成物の添加剤として若しくは毒素結合剤としての又は漂白土における使用。
【請求項32】
前記スメクタイト粘土を、不飽和脂肪酸からの二量体酸の製造において触媒として使用する、請求項29に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般的に、ベントナイト等のスメクタイト粘土を、スメクタイト粘土中に存在する一価カチオンの少なくとも一部を二価カチオンと交換するために処理する方法に関する。本発明はさらに、この方法によって得ることができるスメクタイト粘土及びこれらの処理済みスメクタイト粘土の種々の使用、例えば触媒として、例えば一不飽和酸からの二量体酸の製造における触媒としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ベントナイト等のスメクタイト粘土は、スメクタイト鉱物構造、すなわち2枚の四面体シート間に挟まれた八面体シートの2:1型構造を有する。スメクタイト粘土は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウム等の1個以上のカチオンによって平衡を保つことができる可変の正味負電荷を有し、これらは層間面の外部に吸着している。スメクタイト粘土中に存在する特定カチオンは、スメクタイト粘土が得られた場所に応じて異なり得る。しかしながら、スメクタイト粘土は一般的にカチオンの混合物、例えば二価及び一価カチオンの混合物を含む。個別用途に適した特定タイプのカチオンをスメクタイト粘土に含めるのが望ましいことがある。例えば、高い親水性が必要とされる場合、主にナトリウムイオンを含むスメクタイト粘土を使用するのが有利なことがある。従って、スメクタイト粘土を処理して所望タイプのカチオンを含むスメクタイト粘土を得るための代替法及び/又は改善された方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
概要
本発明の第一態様に従って、スメクタイト粘土の処理方法であって、下記:
一価カチオンを含むスメクタイト粘土を準備すること;及び
このスメクタイト粘土を溶媒の存在下で二価カチオン塩と接触させることを含み;
この二価カチオン塩は、スメクタイト粘土中に存在する一価カチオンの対応塩より溶媒に溶けやすい、方法を提供する。
特定実施形態では、二価カチオン塩は塩化物でない。代わりに又はさらに、特定実施形態では、スメクタイト粘土と二価カチオン塩は、組成物の総質量に基づいて約60wt%以下の溶媒の存在下で接触する。代わりに又はさらに、特定実施形態では、スメクタイト粘土と二価カチオン塩は、約5以下のpHで接触する。代わりに又はさらに、特定実施形態では、処理方法は、スメクタイト粘土の酸活性化と同時に行なわれる。
【0004】
本発明の第一態様の方法では、一価カチオンの少なくとも一部が二価カチオン塩中の二価カチオンと交換される。従って、本方法は、スメクタイト粘土中の二価カチオン対一価カチオン比を大きくすることができる。特定実施形態では、一価カチオンの全てが二価カチオンと交換される。従って、特定実施形態では、本方法は、一価カチオンを含まず、例えば、二価カチオンのみを含むことがあるスメクタイト粘土を形成し得る。
本発明の第二態様に従って、本発明の第一態様によって得られた及び/又は得ることができるスメクタイト粘土を提供する。
本発明の第三態様に従って、約90:10以上の二価カチオン対一価カチオン比を有するスメクタイト粘土を提供する。
本発明の第四態様に従って、本発明の第二及び第三態様のスメクタイト粘土の、触媒としての使用を提供する。特定実施形態では、スメクタイト粘土を、不飽和脂肪酸、例えば一不飽和脂肪酸からの二量体酸の製造において触媒として使用する。
【0005】
本発明の任意の態様の特定実施形態では、スメクタイト粘土はベントナイトである。
特定実施形態では、二価カチオン塩は塩化物を含まず及び/又は臭化物を含まない。特定実施形態では、二価カチオン塩は硫黄を含まない。
特定実施形態では、二価カチオン塩は、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、アジ化物、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、モリブデン酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、酸化物、過マンガン酸塩、亜セレン酸塩又はタングステン酸塩である。特定実施形態では、二価カチオン塩は、硝酸カルシウム、例えば硝酸カルシウム四水和物である。
【0006】
特定実施形態では、スメクタイト粘土と二価カチオン塩は、約60wt%以下の溶媒(例えば水)の存在下で接触する。特定実施形態では、スメクタイト粘土と二価カチオン塩は、約15wt%以上の溶媒(例えば水)の存在下で接触する。
特定実施形態では、スメクタイト粘土を二価カチオン塩と接触させることによって形成される組成物のpHは約10以下である。特定実施形態では、スメクタイト粘土を二価カチオン塩と接触させることによって形成される組成物のpHは約5以下である。
特定実施形態では、本発明のスメクタイト粘土は、約90:10以上の二価カチオン対一価カチオン比を有する。特定実施形態では、本発明のスメクタイト粘土は一価カチオンを含まない。特定実施形態では、スメクタイト粘土は二価カチオンのみを含む。
【0007】
本発明の任意の態様の特定実施形態は、下記利点の1つ以上を提供し得る。
・スメクタイト粘土中の二価カチオン対一価カチオン比を大きくするためのスメクタイト粘土中の一価カチオンの二価カチオンとの交換;
・低pHでプロセスを行なうことができる;
・少量の水でプロセスを行なうことができる;
・プロセスの生成物の塩化物及び臭化物の含有量の最小化。
【0008】
本発明の規定態様の任意の微粒子の1つ以上に関連して提供した詳細、例及び優先度についてさらに本明細書に記載する。これらは本発明の全ての態様に等しく当てはまる。本明細書に記載の実施形態、例及び優先度のそれらの全ての可能なバリエーションのいずれの組み合わせも、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈により明白に矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明者らは、驚いたことに及び有利なことに、例えば、水であり得る溶媒の存在下でスメクタイト粘土を二価カチオン塩と接触させることによって、スメクタイト粘土中に存在する一価カチオンを二価カチオンと交換することができることを見出した。二価カチオン塩は、カチオン交換反応を推進するためにスメクタイト粘土中に存在する一価カチオンの対応塩より溶媒(例えば水)に溶けやすい。従って、本明細書では、スメクタイト粘土を処理する方法又はスメクタイト粘土中に存在する一価カチオンを二価カチオンと交換する方法又はスメクタイト粘土中の二価カチオン対一価カチオン比を大きくする方法を提供する。特定実施形態では、スメクタイト粘土中に存在する一価カチオンの全てが二価カチオンと交換される。特定実施形態では、処理済みスメクタイト粘土は二価カチオンのみを含む。従って、特定実施形態において、本明細書では、一価カチオンを含むスメクタイト粘土、例えば一価及び二価カチオンの混合物を含むスメクタイト粘土から二価カチオンのみを含むスメクタイト粘土を製造する方法を提供する。
【0010】
本明細書で使用する用語「スメクタイト粘土」は、スメクタイト鉱物構造、すなわち2枚の四面体シート間に挟まれた八面体シートの2:1型構造を有する粘度を含む物質を指す。スメクタイト粘土は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム又はマグネシウムカチオン等の1つ以上のカチオンによって平衡を保つことができる可変の正味負電荷を有する。スメクタイト粘土は、カチオンタイプの組み合わせ、例えば一価、二価及び三価カチオンの混合物を含むことがある。スメクタイト粘土は、例えば、一価及び二価カチオンの混合物を含む(例えばそれのみを含む)ことがある。
例えば、スメクタイト粘土は、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト又はこれらの1つ以上の組み合わせを含むか又はそれから本質的に成るか又はそれから成り得る。特定実施形態では、スメクタイト粘土は、モンモリロナイトを含むか又はそれから本質的に成るか又はそれから成る。ベントナイトは、主にモンモリロナイトを含むスメクタイト粘土である。従って、特定実施形態では、スメクタイト粘土はベントナイトである。
【0011】
本明細書に記載の方法で処理すべきスメクタイト粘土は一価カチオンを含む。特定実施形態では、スメクタイト粘土は、一価、二価及び三価カチオンの混合物を含む(例えばそれのみを含む)。特定実施形態では、スメクタイト粘土は、一価及び二価カチオンの混合物を含む(例えばそれのみを含む)。特定実施形態では、スメクタイト粘土は一価カチオンのみを含む(換言すれば、一価でないいずれのカチオンをも含まない)。特定実施形態では、一価カチオンは、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン又はその組み合わせから選択される。特定実施形態では、二価カチオンは、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン又はその組み合わせから選択される。特定実施形態では、三価カチオンはアルミニウムカチオンである。特定実施形態では、本明細書に記載の方法によって処理すべきスメクタイト粘土(例えばベントナイト)は、カルシウムカチオンとナトリウムカチオンの混合物を含む。特定実施形態では、本明細書に記載の方法によって処理すべきスメクタイト粘土(例えばベントナイト)は、カルシウムカチオンとナトリウムカチオンのみの混合物を含む。一般に、スメクタイト粘土中のカチオンへの言及は、スメクタイト粘土中の交換可能カチオンを指す。
【0012】
ナトリウムカチオンを含むスメクタイト粘土(例えばベントナイト)には、天然に存在するスメクタイト粘土と処理済みスメクタイト粘土の両方が含まれる。例えば、天然に存在するスメクタイト粘土中のカルシウム、カリウム又はアルミニウム等のカチオンは、例えばソーダ灰活性化によってナトリウムカチオンと交換された可能性がある。これは、ナトリウム活性化スメクタイト粘土と呼ばれることがある。ソーダ灰活性化は、例えば、少なくとも約20wt%、例えば少なくとも約22wt%又は少なくとも約35wt%の含水量を有するスメクタイト粘土へのソーダ灰粉末(炭酸ナトリウム)の添加、及び例えば、押出又は混練による混合を含み得る。次にソーダ灰活性化スメクタイト粘土を乾燥させ、所望の粒径分布を有する粉末に加工(例えば製粉)することができる。
【0013】
本発明の特定実施形態で使用するスメクタイト粘土が、天然に存在する原料から得られるときには、何らかの鉱物不純物が地基盤材料を不可避的に汚染する可能性がある。しかしながら、一般に、スメクタイト粘土は、好ましくは5質量%未満、好ましくは1質量%未満の他の鉱物不純物を含有するであろう。
スメクタイト粘土は、少なくとも約70wt%のスメクタイト鉱物構造を含み得る。例えば、スメクタイト粘土は、少なくとも約75wt%又は少なくとも約80wt%又は少なくとも約85wt%又は少なくとも約90wt%又は少なくとも約95wt%又は少なくとも約96wt%又は少なくとも約97wt%又は少なくとも約98wt%又は少なくとも約99wt%のスメクタイト鉱物構造を含み得る。例えば、スメクタイト粘土は、約100wt%までのスメクタイト鉱物構造を含み得る。例えば、スメクタイト粘土は、約99wt%まで又は約98wt%まで又は約97wt%まで又は約95wt%まで又は約90wt%までのスメクタイト鉱物構造を含み得る。
【0014】
スメクタイト粘土は、例えば、約40wt%以下の水分を含み得る。例えば、スメクタイト粘土は、約35wt%以下又は約30wt%以下又は約25wt%以下又は約20wt%以下又は約15wt%以下の水分を含み得る。含水量は、例えば、スメクタイト粘土を質量がさらに変化しなくなるまで加熱し、加熱前後の質量を比較することによって測定可能である。スメクタイト粘土は、例えば、約0wt%以上の水分を含み得る。例えば、スメクタイト粘土は、約4wt%以上又は約5wt%以上又は約10wt%以上又は約15wt%以上の水分を含み得る。特に、スメクタイトは二価カチオン塩と接触すると、この範囲内の含水量を有し得る。これは、例えば、ASTM D2216-10、質量による土壌及び岩石の含水量の実験室測定のための標準試験方法(Standard Test Methods for Laboratory Determination of Water (Moisture) Content of Soil and Rock by Mass)によって測定することができる。
所望の粒径を得るため、例えば、本明細書に記載の処理方法の前又は後にスメクタイト粘土(例えばベントナイト)を加工してよい。加工は、例えば、粉砕、製粉及び/又は篩分けを含み得る。スメクタイト粘土は、例えば、少なくとも約90wt%の約200メッシュ(74ミクロン)未満の粒子、例えば少なくとも約92wt%、例えば少なくとも約94wt%、例えば少なくとも約95wt%、例えば少なくとも約96wt%、例えば少なくとも約98wt%、例えば少なくとも約99wt%の約200メッシュ(74ミクロン)未満の粒子を有し得る。
【0015】
本明細書に記載の処理方法では、水等の溶媒の存在下でスメクタイト粘土を二価カチオン塩と接触させる。接触は、例えば、振盪、混練及び/又は押出を伴うことがある。特定実施形態では、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を水の存在下で混合し、結果として生じるスメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物を押し出す。特定実施形態では、スメクタイト粘土及び/又は二価カチオン塩はスラリーの形態である。従って、特定実施形態では、スラリー状態でスメクタイト粘土を二価カチオン塩と接触させる。
スメクタイト粘土は、例えば、スメクタイト粘土、二価カチオン塩及び溶媒を含む組成物の質量に基づいて約1wt%以上の量で使用してよい。例えば、スメクタイト粘土は、組成物の質量に基づいて約2wt%以上又は約5wt%以上又は約10wt%以上又は約15以上の量で使用してよい。スメクタイト粘土は、組成物の質量に基づいて約80wt%まで又は約70wt%以下又約60wt%以下又は約50wt%以下又は約40wt%以下又は約30wt%以下又は約20wt%以下の量で使用してよい。例えば、スメクタイト粘土は、組成物の質量に基づいて約1wt%〜約80wt%又は約2wt%〜約60wt%又は約5wt%〜約40wt%の範囲の量で使用してよい。例えば、スメクタイト粘土は、組成物の質量に基づいて約1wt%〜約20wt%の範囲の量で使用してよい。
【0016】
二価カチオン塩は、二価カチオンを含有する任意の塩である。二価カチオン塩は、例えば、スメクタイト粘土中の一価カチオンの対応塩より溶媒(例えば水)に溶けやすいいずれの二価カチオン塩であってもよい。スメクタイト粘土中の一価カチオンの対応塩は、二価カチオン塩中の二価カチオンが、スメクタイト粘土中に存在する一価カチオンと交換されると作られる塩を指す。
二価カチオン塩中の二価カチオンは、例えば、マグネシウム、カルシウム又はその1つ以上の組み合わせであり得る。例えば、二価カチオン塩中の二価カチオンはカルシウムであり得る。二価カチオン塩中の二価カチオンは、例えば、処理すべきスメクタイト粘土中に存在する二価カチオンであり得る。
【0017】
二価カチオン塩は、例えば、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、アジ化物、炭酸塩、クロム酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、モリブデン酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、酸化物、過マンガン酸塩、亜セレン酸塩又はタングステン酸塩であり得る。二価カチオン塩は、例えば、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩又は水酸化物であり得る。二価カチオン塩は、例えば、硝酸塩であり得る。
二価カチオン塩は、例えば、水和物(結晶の不可欠な部分として規定比で結合した水分子を含有する無機塩)であり得る。例えば、水和物は、半水和物、一水和物、セスキ水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、六水和物、七水和物、八水和物、九水和物、十水和物、十一水和物又は十二水和物であり得る。例えば、水和物は四水和物であり得る。
【0018】
二価カチオン塩は、塩化物アニオンを含まないことがある。二価カチオン塩は、例えば、臭化物アニオンを含まないことがある。二価カチオン塩は、例えば、ハロゲン化物アニオンを含まないことがある。二価カチオン塩は、塩素原子及び/又は臭素原子及び/又はハロゲン原子(例えば、過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、臭素酸アニオン及びヨウ素酸アニオンを含めて)を含まないことがある。二価カチオン塩は、例えば、1つ以上の硫黄原子を含むいずれのカチオン又はアニオン(例えば、硫化物アニオン、硫酸アニオン、亜ジチオン酸アニオン、亜硫酸アニオン、テトラチオン酸アニオン及びチオ硫酸アニオンを含めて)をも含まないことがある。
特定実施形態では、二価カチオン塩は硝酸カルシウム、例えば硝酸カルシウム四水和物である。
二価カチオン塩は、例えば、乾燥粉末の形態であっよい。代わりに、二価カチオン塩は、溶液又は懸濁液の形態であってよい。
【0019】
スメクタイト粘土中の一価カチオンを二価カチオン塩中に存在する二価カチオンと交換するために必要とされる二価カチオン塩の化学量論量を計算することができる。例えば、銀チオ尿素カチオン交換容量法を用いてスメクタイト粘土中に存在する一価カチオンの濃度を計算し、次にこの計算された一価カチオンの濃度に取って代わるのに必要とされる二価カチオンの化学量論量を計算することができる。二価カチオン塩は、スメクタイト粘土中の一価カチオンに取って代わるために必要とされる二価カチオンの化学量論量の約90%以上の量で使用してよい。例えば、二価カチオン塩は、スメクタイト粘土中の一価カチオンに取って代わるために必要とされる二価カチオンの化学量論量の約92%以上又は約94%以上又は約95%以上又は約96%以上又は約98%以上又は約99%以上又は約100%以上の量で使用してよい。例えば、二価カチオン塩は、スメクタイト粘土中の一価カチオンに取って代わるために必要とされる二価カチオンの化学量論量の約150%以下又は約140%以下又は約130%以下又は約120%以下又は約110%以下又は約100%以下の量で使用してよい。
【0020】
二価カチオン塩は、例えば、スメクタイト粘土の総質量に基づいて約50%以下の量で使用してよい。例えば、二価カチオン塩は、スメクタイト粘土の総質量に基づいて約45wt%以下又は約40wt%以下又は約35wt%以下又は約30wt%以下又は約25wt%以下又は約20wt%以下又は約15wt%以下又は約10wt%以下の量で使用してよい。例えば、二価カチオン塩は、スメクタイト粘土の総質量に基づいて約9wt%以下又は約8wt%以下又は約7wt%以下又は約6wt%以下又は約5wt%以下又は約4wt%以下の量で使用してよい。例えば、二価カチオン塩は、スメクタイト粘土の総質量に基づいて約0.5wt%以上又約1wt%以上又は約1.5wt%以上又は約2wt%以上の量で使用してよい。例えば、二価カチオン塩は、スメクタイト粘土の総質量に基づいて約0.5wt%〜約50wt%又は約0.5wt%〜約30wt%又は約0.5wt%〜約10wt%又は約0.5wt%〜約5wt%の範囲の量で使用してよい。
【0021】
スメクタイト粘土は、水等の溶媒の存在下で二価カチオン塩と接触する。スメクタイト粘土が二価カチオン塩と接触するときに存在する溶媒は、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物中の溶媒の総量を指す。組成物中の水の総量は、組成物中の自由水(鉱物又は塩の結晶相中の水ではない)を指す。これは、ASTM D2216-10、質量による土壌及び岩石の含水量の実験室測定のための標準試験方法(Test Methods for Laboratory Determination of Water (Moisture) Content of Soil and Rock by Mass)に従って測定することができる。
スメクタイト粘土が二価カチオン塩と接触するときに存在する溶媒の総量は、例えば、二価カチオン塩及び/又は形成される対応一価カチオン塩を溶かすのに十分な量であってよい。例えば、スメクタイト粘土が二価カチオン塩と接触するときに存在する溶媒の総量は、二価カチオン塩及び/又は形成される対応一価カチオン塩を溶かすのに必要とされる量より約50%より多くは超えず、例えば約40%より多くは超えず、例えば約30%より多くは超えず、例えば約20%より多くは超えず、例えば約10%より多くは超えなくてよい。
【0022】
例えば、組成物の総質量に基づいて約60wt%以下の溶媒(例えば水)の存在下でスメクタイト粘土と二価カチオン塩を混ぜ合わせてよい。換言すれば、スメクタイト粘土と二価カチオン塩が接触した後、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物は、組成物の総質量に基づいて約60wt%以下の溶媒を含んでよい。例えば、約55wt%以下又は約50wt%以下又は約45wt%以下又は約40wt%以下又は約39wt%以下又は約38wt%以下又は約37wt%以下又は約36wt%以下又は約35wt%以下の溶媒(例えば水)の存在下でスメクタイト粘土と二価カチオン塩を混ぜ合わせてよい。例えば、組成物の総質量に基づいて約4wt%以上の溶媒(例えば水)の存在下でスメクタイト粘土と二価カチオン塩を混ぜ合わせてよい。例えば、約10wt%以上又は約15wt%以上又は約16wt%以上又は約17wt%以上又は約18wt%以上又は約19wt%以上又は約20wt%以上又は約21wt%以上又は約22wt%以上又は約23wt%以上又は約24wt%以上又は約25wt%以上又は約26wt%以上又は約27wt%以上又は約28wt%以上又は約29wt%以上又は約30wt%以上の存在下でスメクタイト粘土と二価カチオン塩を混ぜ合わせよい。例えば、約4wt%〜約60wt%又は約15wt%〜約60wt%又は約20wt%〜約50wt%又は約20wt%〜約40wt%の溶媒(例えば水)又は約25wt%〜約40wt%の溶媒(例えば水)又は約30wt%〜約40wt%の溶媒(例えば水)又は約25wt%〜約35wt%の溶媒(例えば水)又は約30wt%〜約35wt%の溶媒(例えば水)の存在下でスメクタイト粘土と二価カチオン塩を混ぜ合わせてよい。特定実施形態では、約30wt%以上の溶媒(例えば水)の存在下でスメクタイト粘土と二価カチオン塩を混ぜ合わせる。
【0023】
特定実施形態では、スメクタイト粘土と二価カチオン塩の接触前に所望量で1種以上の出発物質(例えばスメクタイト粘土及び/又は二価カチオン塩)に溶媒(例えば水)を添加してよい。例えば、スメクタイト粘土と二価カチオン塩の接触前に溶媒(例えば水)と共にスメクタイト粘土及び/又は二価カチオン塩を噴霧してよい。特定実施形態では、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を混ぜ合わせた後に、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物に所望量で溶媒(例えば水)を添加してよい。特定実施形態では、天然に存在するスメクタイト粘土は、既に適量の水を含むことがある。特定実施形態では、スメクタイト粘土及び/又は二価カチオン塩及び/又はスメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物はスラリーであってよい。
【0024】
スメクタイト粘土と二価カチオン塩の接触後、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物は、例えば、約10以下のpHを有し得る。換言すれば スメクタイト粘土と二価カチオン塩を約10以下のpHで接触させてよい。例えば、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物は、約9.5以下又は約9以下又は約8.5以下又は又は約8以下又は約7.5以下又は約7以下のpHを有し得る。
例えば、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物は、約5以上又は約5.5以上又は約6以上又は約6.5以上又は約7以上のpHを有し得る。例えば、スメクタイト粘土と二価カチオン塩の接触後、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物は、約5〜約10又は約6〜約9又は約6〜約8の範囲のpHを有し得る。
【0025】
特定実施形態では、本明細書に記載のベントナイト処理方法をスメクタイト粘土の酸活性化(スメクタイト粘土を酸、例えば強酸、例えば水中で少なくとも約95%、例えば100%イオン化される酸の存在下で加熱するプロセス)と同時に行なうことができる。酸は、例えば、塩酸、硫酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸又は硝酸であり得る。酸は、例えば、少なくとも約0.5M及び/又は約5Mまでの濃度で使用してよい。酸は、例えば、スメクタイト粘土と二価カチオン塩の接触前にスメクタイト粘土又は二価カチオン塩と混ぜ合わせてよい。例えば、酸を、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物と接触させてよい。スメクタイト粘土及び酸組成物(及び酸活性化が本明細書に記載の方法と同時に行なわれる場合は二価カチオン塩)は、例えば、約200℃まで、例えば約150℃まで、例えば約140℃まで、例えば約130℃まで、例えば約120℃まで、例えば約110℃まで、例えば約100℃までの温度に加熱してよい。例えば、スメクタイト粘土及び酸組成物(及び酸活性化が本明細書に記載の方法と同時に行なわれる場合は二価カチオン塩)は、少なくとも約50℃又は少なくとも約60℃又は少なくとも約70℃又は少なくとも約80℃又は少なくとも約90℃又は少なくとも約100℃の温度に加熱してよい。従って、特定実施形態ではスメクタイト粘土と二価カチオン塩を約5未満のpHで接触させてよい。従って、スメクタイト粘土と二価カチオン塩の接触後、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物は、例えば、約5以下又は約4.5以下又は約4以下又は約3.5以下又は約3以下又は約2.5以下又は約2以下又は約1.5以下のpHを有し得る。例えば、スメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物は、約0以上又は約0.5以上又は約1以上のpHを有し得る。例えば、約0〜約5又は約0〜約4又は約0〜約3又は約0〜約2の範囲のpHでスメクタイト粘土と二価カチオン塩を接触させてよい。
【0026】
スメクタイト粘土と二価カチオン塩が接触した後、結果として生じるスメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物を、スメクタイト粘土中に存在する一価カチオンが二価カチオン塩中に存在する二価カチオンと交換できるようにする時間放置してよい。この時間は、例えば、少なくとも約1時間であってよい。例えば、この時間は、少なくとも約2時間又は少なくとも約3時間又は少なくとも約4時間又は少なくとも約5時間又は少なくとも約6時間であってよい。例えば、この時間は、約48時間まで又は約36時間まで又は約24時間まで又は約18時間まで又は約12時間までであってよい。結果として生じるスメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物を、例えば、約15℃〜約25℃、例えば約18℃〜約24℃、例えば約20℃〜約22℃の範囲の温度で放置してよい。
結果として生じるスメクタイト粘土と二価カチオン塩を含む組成物を、例えば、乾燥させ及び/又は所望の粒径に加工(例えば粉砕によって)することができる。
結果として生じる組成物を、例えば、約20wt%以下又は約15wt%以下又は約14wt%以下又は約13wt%以下又は約12wt%以下の含水量まで乾燥させてよい。例えば、結果として生じる組成物を、約2wt%以上又は約5wt%以上又は約10wt%以上の含水量まで乾燥させてよい。
【0027】
本明細書では本明細書に開示する方法によって得られる及び/又は得ることができる処理済みスメクタイト粘土をも開示する。本明細書では約90:10以上の二価カチオン対一価カチオン比を有するスメクタイト粘土をも開示する。
本明細書で開示する処理済みスメクタイト粘土は、例えば、約20:80以上の二価カチオン対一価カチオン比を有し得る。例えば、本明細書で開示する処理済みスメクタイト粘土は、約30:70以上又は約40:60以上又は約50:50以上又は約60:40以上又は約70:30以上又は約80:20以上又は約90:10以上の二価カチオン対一価カチオン比を有し得る。本明細書で開示する処理済みスメクタイト粘土は、例えば、約100:0以下又は約99:1以下又は約98:1以下又は約97:1以下又は約96:1以下又は約95:1以下の二価カチオン対一価カチオン比を有し得る。例えば、本明細書で開示する処理済みスメクタイト粘土は、約20:80〜約100:0又は約30:70〜約99:1又は約40:60〜約95:1の二価カチオン対一価カチオン比を有し得る。
【0028】
本明細書で開示する処理済みスメクタイト粘土は、例えば、約90:10以上の二価カチオン対一価カチオン比を有し得る。例えば、処理済みスメクタイト粘土は、約92:8以上又は約94:6以上又は約95:5以上又は約96:4以上又は約98:2以上又は約99:1以上の二価カチオン対一価カチオン比を有し得る。これらの範囲には、一価カチオンを含まないスメクタイト粘土が含まれる。特定実施形態では、処理済みスメクタイト粘土は一価カチオンを含まない。換言すれば、本明細書に記載の方法を行なう前にスメクタイト粘土中に存在する一価カチオンは全て交換される。特定実施形態では、処理済みスメクタイト粘土は、二価カチオン(例えばカルシウム及び/又はマグネシウムカチオン)のみを含む。換言すれば、本明細書に記載の方法を行なう前にスメクタイト粘土中に存在する全ての非二価カチオンは二価カチオンと交換される。特定実施形態では、処理済みスメクタイト粘土中に二価カチオンのみが存在し、これらは本明細書に記載の方法に用いる二価カチオン塩中に存在する二価カチオンである。換言すれば、スメクタイト粘土中に存在する全てのカチオンが、二価カチオン塩中の二価カチオンと交換されたか又は処理前にスメクタイト粘土中に存在する二価カチオンが、二価カチオン塩中に存在する二価カチオンと同一であった。
【0029】
本明細書では本明細書に記載の処理済みスメクタイト粘土、例えば本明細書に記載の方法によって得られた及び/又は得ることができる処理済みスメクタイト粘土の種々の使用をさらに開示する。
使用は、スメクタイト粘土に一価カチオンより多くの二価カチオンを含めるのが好ましい場合のいずれの使用であってもよい。例えば、使用は、医薬品及び動物飼料製品におけるような非膨潤スメクタイト粘土の使用が好ましい場合のいずれの使用であってもよい。スメクタイト粘土は、例えば、フィラー及び/又は結合剤及び/又は吸収剤(例えば1種以上の毒素を吸収するため)として及び/又は乾燥剤として使用可能である。例えば、スメクタイト粘土は、動物飼料添加物として、マイコトキシン結合剤として及び/又はエンドトキシン結合剤として使用可能である。例えば、スメクタイト粘土は、医薬品組成物中の添加剤(例えばフィラー及び/又は結合剤)として使用可能である。
スメクタイト粘土は、例えば食用油、脂肪、工業用油及び/又はバイオディーゼルの加工のための漂白土に使用(例えば漂白土用原材料として)可能である。
【0030】
特定実施形態では、本明細書に記載の処理済みスメクタイト粘土は、飲料の処理のために使用可能であり、例えばワイン又は果汁等の液体の浄化方法で本明細書に記載のスメクタイト粘土を使用することができる。
特定実施形態では、油の脱色方法で本明細書に記載の処理済みスメクタイト粘土を使用することができる。
特定実施形態では、金属鋳造物の製造において結合剤として本明細書に記載の処理済みスメクタイト粘土を使用することができる。
特定実施形態では、毛織物の縮絨方法で本明細書に記載の処理済みスメクタイト粘土を使用することができる。
【0031】
特定実施形態では、処理済みスメクタイト粘土は、医薬品に及び/又は動物飼料製品及び/又はネコ用トイレ(cat litter)製品及び/又はセラミック製品(例えばセラミック製品用釉薬として)及び/又は化粧品及び/又は乾燥剤(dessicant)製品に及び/又は羊毛製品及び/又は除草剤及び/又は農薬及び/又は殺虫剤及び/又はテープ・ジョイント製品及び/又は油の脱色に適した漂白土製品に組み入れてよい。
特定実施形態では、処理済みスメクタイト粘土を触媒として使用することができる。例えば、不飽和脂肪酸(例えば一不飽和脂肪酸)からの二量体酸の製造において触媒として処理済みスメクタイト粘土を使用することができる。特に高い二価カチオン対一価カチオン比を有する処理済みスメクタイト粘土は、この用途に特に有用であり、例えばより高い二量化収率を与える。
【0032】
二量体酸の製造に用いる脂肪酸は、例えば、トール油、ダイズ油及びナタネ油等の天然源から得ることができる。そして、二量体酸は、例えばポリマー、可塑剤、印刷インク、樹脂、被覆剤、洗浄剤、界面活性剤、パーソナルケア(person care)製品、接着剤及びワックスを製造するために多様な用途で使用可能である。例えば、二量体酸から得られる製品は、溶媒、接着剤及び印刷インクに用いられる非反応性ポリアミド樹脂、或いは船舶や建築物の被覆剤及び接着剤、又は油田化学薬品、例えばさび止め剤、スケール抑制剤、湿潤剤、界面活性剤及び抗乳化剤等に用いられる反応性ポリアミド樹脂であってよい。
【実施例】
【0033】
実施例
天然の混合カチオンベントナイト(交換可能状態にナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムカチオンを含む)に水を振りかけて30wt%の含水量を与えてから微粉末形態の硝酸カルシウム四水和物と手動で混合した。硝酸カルシウム四水和物の量は、銀チオ尿素カチオン交換容量法によって測定した一価の交換可能カチオンの濃度を決定し、交換可能なナトリウム及びカリウムイオンの濃度の100%に相当するカルシウム濃度を与える化学量論量を使用することによって計算した。次にこのペーストを実験室押出機で2回押し出し、室温で少なくとも2時間放置した。結果として生じた生成物を次に12wt%の含水量まで乾燥させ、200メッシュより大きい粒子が10〜12%という微粉度まで粉砕した。
【0034】
この処理プロセスの成功は、A.P.I(Specification for Drilling - Fluid Materials API Specification) 13A (Spec 13A) 第16版、2004年2月、ISO 13500:1998 (修正))に従って生成物の粘度、吸水率(ASTM 946-83“ベントナイトの吸水率に関する標準方法、多孔板法(Standard method for water absorption of bentonite, porous plate method)”に準拠)及び自由膨潤(free swelling)指数(ASTM D 5890-95“ジオシンセティック粘土ライナーの粘土鉱物成分の膨潤指数の標準試験方法(Standard test method for swell index of clay mineral components of geosynthetic clay liners)”に準拠)を測定することによって検証した。結果を下表1に示す。
【0035】
表1.
【0036】
交換可能位置にナトリウムイオンを含有するベントナイトは、より多くの水を吸収する能力を有し、結果としてより高い膨潤指数を示す。また、ナトリウムカチオンを含むベントナイトのスラリーの粘度(600及び300rpmでのFann示度数)は、少なくとも一部のナトリウムイオンが交換されたスラリーの粘度より高い。表1は、処理済みベントナイトが原材料に比べて低い吸水率、膨潤及び見掛け粘度を有することを示し、従ってナトリウムイオンは、交換可能位置にあるカルシウムイオンに置き換えられたことを証明する。
前述の記載は、本発明の特定実施形態を制限することなく説明する。当業者に容易に分かる変形形態及び変更形態は、添付の特許請求の範囲において請求項により定義される本発明の範囲内であることを意味する。
【国際調査報告】