(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-506801(P2021-506801A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】精製されたエクソソーム生成物、作成方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/51 20150101AFI20210125BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20210125BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20210125BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20210125BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20210125BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20210125BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20210125BHJP
A61L 15/32 20060101ALI20210125BHJP
A61L 15/64 20060101ALI20210125BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20210125BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20210125BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20210125BHJP
【FI】
A61K35/51
A61K35/14 Z
A61K35/35
A61K35/28
A61K35/32
A61K35/30
A61L15/22 100
A61L15/32 100
A61L15/64 100
A61K9/19
A61P17/02
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-532716(P2020-532716)
(86)(22)【出願日】2018年12月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月12日
(86)【国際出願番号】US2018065627
(87)【国際公開番号】WO2019118817
(87)【国際公開日】20190620
(31)【優先権主張番号】62/598,765
(32)【優先日】2017年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】アッタ ベーファー
(72)【発明者】
【氏名】ソウルマズ ボロウマンド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ブイ.キャラハン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB31
4C076CC19
4C076EE01
4C076EE36
4C076EE41
4C076EE42
4C076EE43
4C081AA02
4C081BA12
4C081CD04
4C081CD12
4C081CD15
4C081CD23
4C081CD34
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB42
4C087BB44
4C087BB59
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
精製されたエクソソーム生成物は直径250nm以下の球状又はスフェロイドのエクソソームを含む。いくつかの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は10%以下の含水率を有する。前記精製されたエクソソーム生成物は人工血液生成物の調製のために再構成されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径300nm以下の直径を有する球状又はスフェロイドのエクソソームを含む精製されたエクソソーム生成物。
【請求項2】
10%以下の含水率を有する、請求項1の精製されたエクソソーム生成物。
【請求項3】
冷蔵せずに少なくとも6か月の棚寿命を有する請求項1の精製されたエクソソーム生成物。
【請求項4】
以下の組成物を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の精製されたエクソソーム生成物:
1%から20%のCD63-エクソソーム;及び
80%から99%のCD63+エクソソーム。
【請求項5】
前記生成物が少なくとも50%のCD63-エクソソームを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の精製されたエクソソーム生成物
【請求項6】
前記生成物が少なくとも99%のCD63-エクソソームを含む請求項5の精製されたエクソソーム生成物。
【請求項7】
水中で再構成された先の請求項のいずれか一項の精製されたエクソソーム生成物を含む組成物。
【請求項8】
前記精製されたエクソソーム生成物が30%以下の濃度で提供された請求項7の組成物。
【請求項9】
以下を含む組成物:
生体適合性マトリックス;及び
生体適合性マトリックスに結合した先の請求項のいずれか一項の精製されたエクソソーム生成物。
【請求項10】
前記生体適合性マトリックスがコラーゲン、トロンビン、ゼラチン、アルギン酸又は他の天然に生じた基底膜の産物を含む請求項9の組成物。
【請求項11】
精製されたエクソソーム生成物の調製方法であって、以下を含む方法:
以下を含む出発材料の取得:
血液、
血液生成物、又は
以下を含む非血液生成物:
臍帯ワルトンゼリー、
脂肪由来の間質血管画分
アフェレーシス骨髄産物
滑液
脳脊髄液、又は
間葉系幹細胞
前記出発材料の濾過又はアフェレーシス;
前記濾過された材料のプール;
前記プールされた材料の撹拌;及び
前記プールされ撹拌された材料の凍結乾燥。
【請求項12】
前記出発材料が臍帯血を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記出発材料が30歳未満のヒト、術後のドナー、閉経前の女性、周産期の女性又は胎盤から得られた請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記出発材料の−20℃以下の温度での凍結をさらに含む請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記出発材料の濾過が重力に基づく濾過の使用を含む請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記プールされ撹拌された材料の凍結乾燥の前に以下をさらに含む請求項11から15のいずれか一項に記載の方法:
前記プールされ撹拌された材料の冷凍;及び
前記プールされ撹拌され冷凍された材料の解凍。
【請求項17】
凍結乾燥する前に前記プールされた材料の隔離をさらに含む請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記プールされ撹拌された材料が少なくとも5時間凍結乾燥した請求項11から17のいずれか一項に記載の方法
【請求項19】
前記プールされ撹拌された材料が最大170時間凍結乾燥した請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記出発材料が閉経前の女性由来の血液を含む請求項11から19のいずれか一項の方法。
【請求項21】
前記出発材料が周産期の女性由来の血液を含む請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記出発材料が胎盤由来の血液を含む請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記出発材料が臍帯由来の血液を含む請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記出発材料が臍帯由来のゼリーを含む請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
人工血液生成物の調製方法であって、以下を含む方法:
医薬的に許容可能な担体の中での請求項1から5のいずれか一項に記載の精製されたエクソソーム生成物の再構成。
【請求項26】
前記医薬的に許容可能な担体が生理学的緩衝液、滅菌水又は基底膜溶液を含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記再構成され精製されたエクソソーム生成物と生分解性の高分子足場、非生分解性の高分子足場又はナノチューブとの混合をさらに含む請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記出発材料が閉経前の女性由来の血液を含む請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記出発材料が周産期の女性由来の血液を含む請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記出発材料が胎盤由来の血液を含む請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記出発材料が臍帯由来の血液を含む請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記出発材料が臍帯由来のゼリーを含む請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
人工血液生成物の調製方法であって、以下を含む方法:
医薬的に受容可能な担体の中での請求項6に記載の精製されたエクソソーム生成物の再構成。
【請求項34】
前記医薬的な許容可能な担体が生理学的緩衝液、滅菌水又は基底膜溶液を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記再構成され精製されたエクソソーム生成物と生分解性の高分子足場、非生分解性の高分子足場又はナノチューブとの混合をさらに含む請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記出発材料が閉経前の女性の血液を含む請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記出発材料が周産期の女性由来の血液を含む請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記出発材料が胎盤由来の血液を含む請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記出発材料が臍帯由来の血液を含む請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記出発材料が臍帯由来のゼリーを含む請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
創傷治癒の加速のための方法であって、以下を含む方法:
創傷が治療されずに治癒するよりも短時間で創傷を治癒するのに有効な量で請求項25から32のいずれか一項に記載の人工血液生成物の創傷への投与。
【請求項42】
創傷床の血管新生を増加させる方法であって、以下を含む方法:
創傷が治療されずに治癒するよりも短時間で創傷を治癒するのに有効な量で請求項25から32のいずれか一項に記載の人工血液生成物の創傷への投与。
【請求項43】
創傷の上皮化を増加させる方法であって、以下を含む方法:
創傷が治療されずに治癒するよりも短時間で創傷を治癒するのに有効な量で請求項25から32のいずれか一項に記載の人工血液生成物の創傷への投与。
【請求項44】
前記創傷が虚血性である請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
組織中の新生物を阻害する方法であって、以下を含む方法:
新生物を示す組織に対する請求項33から40のいずれか一項に記載の人工血液生成物の投与。
【請求項46】
請求項41から45のいずれか一項に記載の方法であって、その中で:
前記人工血液生成物は生体適合性マトリックスの少なくとも一つの部分に結合させ、物品を形成する;そして人工血液生成物の投与は多数の前記物品が創傷又は組織に接触することを含む。
【請求項47】
前記生体適合性マトリックスが生分解性高分子足場、非生分解性高分子足場又はナノチューブを含む請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記凍結乾燥された生成物が1mL当たりに少なくとも1×1010個のエクソソームを含む請求項11から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記凍結乾燥された生成物がエクソソームの集団を含み、その中で前記エクソソームの少なくとも95%が100nmの分布範囲内に入る直径を有する、請求項11から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記エクソソームの少なくとも90%が60nmの分布範囲内に入る直径を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
1mL当たりに少なくとも1×1010個のエクソソームを含む精製されたエクソソーム生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は2017年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/598,765号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
本開示は一つの側面において、精製されたエクソソーム生成物を記載する。いくつかの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は、300nm以下の直径を有する球状又はスフェロイドのエクソソームを含む。いくつかの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物はそのエクソソームの少なくとも95%が100nmの分布範囲内に入る直径を有するエクソソームの集団を含む。いくつかのこれらの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は前記エクソソームの少なくとも90%が60nmの分布範囲内に入る直径を有するエクソソームの集団を含む。
【0003】
いくつかの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は10%以下の含水率を有する。
【0004】
いくつかの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は冷蔵せずに少なくとも6か月の棚寿命を有する。
【0005】
別の側面において、本開示は再構成された生成物であって、上記に概要された精製されたエクソソーム生成物の任意の態様が水中で再構成された生成物を記載する。いくつかの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は30%以下の濃度で提供される。
【0006】
いくつかの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物はCD63
+エクソソーム及びCD63
-エクソソームの混合物を含みうる。いくつかのこれらの態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は少なくとも50%のCD63
-エクソソームを含みうる。他の態様において、前記精製されたエクソソーム生成物は1%から20%のCD63
-エクソソーム及び80%から99%のCD63
+エクソソームを含みうる。
【0007】
別の側面において、本開示は一般的に生体適合性マトリックス及び上記に概要された精製されたエクソソーム生成物の任意の態様を含む組成物を記載する。いくつかの態様において、前記生体適合性マトリックスはコラーゲン、トロンビン、ゼラチン、アルギン酸又は別の天然の基底膜の産物を含みうる。
【0008】
別の態様において、本開示は精製されたエクソソーム生成物の調製方法を記載する。一般的に、前記方法は出発材料の入手、出発材料の濾過、濾過された材料のプール、前記プールされた材料の撹拌、及び前記プールされ撹拌された材料の凍結乾燥を含む。その出発材料は血液、血液生成物又はある非血液生成物を含みうる。適した非血液生成物は例えば、臍帯ワルトンゼリー、脂肪由来の間質血管画分、アフェレーシス骨髄産物、滑液、脳脊髄液又は間葉系幹細胞を含む。
【0009】
いくつかの態様において、前記出発材料は30歳未満のヒト、術後のドナー、閉経前の女性、周産期の女性又は胎盤から得られる。
【0010】
いくつかの態様において、その方法は、そのプールされ撹拌された材料を凍結乾燥する前に、そのプールされ撹拌された材料の冷凍及びそのプールされ撹拌され冷凍された材料の解凍を含む。
【0011】
いくつかの態様において、その材料は少なくとも5時間凍結乾燥される。いくつかのこれらの態様において、そのプールされ撹拌された材料は170時間凍結乾燥される。
【0012】
別の側面において、本開示は人工血液生成物の調製方法を記載し、その方法は一般的に医薬的に許容可能な担体の中の上記に概要された精製されたエクソソーム生成物の任意の態様の再構成を含む。
【0013】
いくつかの態様において、その再構成された血液生成物はその精製されたエクソソーム生成物と生分解性の高分子足場、非生分解性の高分子足場又はナノチューブとの混合により調製されてもよい。
【0014】
別の側面において、本開示は創傷治癒の加速のための方法を記載する。一般的に、その方法は創傷が治療されずに治癒するよりも短時間で創傷を治癒するのに有効な量で、上記に概要された人工血液生成物の任意の態様を創傷へ投与することを含む。
【0015】
別の側面において、本開示は創傷床の血管新生の増加のための方法を記載する。一般的に、その方法は創傷が治療されずに治癒するよりも短時間で創傷を治癒するのに有効な量で、上記に概要された人工血液生成物の任意の態様を創傷へ投与することを含む。
【0016】
別の側面において、本開示は創傷の上皮化の増加のための方法を記載する。一般的に、その方法は創傷が治療されずに治癒するよりも短時間で創傷を治癒するのに有効な量で、上記に概要された人工血液生成物の任意の態様を創傷へ投与することを含む。
【0017】
別の側面において、本開示は組織中の新生物を阻害するための方法を記載する。一般的に、その方法は少なくとも50%のCD63
-エクソソームを含む人工血液生成物の態様を新生物を示す組織へ投与することを含む。
【0018】
上記の概要は各開示された態様又は本発明の全ての実施を説明することを意図したものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願のいくつかの場所において一連の実施例を通じてガイダンスを提供し、その例示は様々な組み合わせで用いられうる。各例示において、その記載されたリストは代表的な集団としてのみ寄与し、かつ限定リストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本特許又は本願のファイルはカラーで作成された少なくとも一つの図面を含む。カラー図面を含む本特許又は本特許出願公開公報の写しは、要求により及び必要な手数料を支払うことにより、官庁から提供されるだろう。
【0020】
【
図1】精製されたエクソソーム生成物(PEP)の図。(A)PEP及びコラーゲン生物足場ゲルの製造。(B)コラーゲン繊維はPEPの微小小胞に対する運搬容器として働く。
【0021】
【
図2】精製されたエクソソーム生成物(PEP)を異なった濃度で有するコラーゲン足場の電界放出形走査電子顕微鏡(Fe−SEM)の図。(A)コラーゲンのみ;(B)5%PEPを有するコラーゲン:(C)10%PEPを有するコラーゲン;(D)20%PEPを有するコラーゲン。
【0022】
【
図3】異なる倍率(A、B)での多血小板血漿及び異なる倍率(C、D)での精製されたエクソソーム(PEP)を示す原子間力顕微鏡の図。
【0023】
【
図4】In vitroの細胞遊走スクラッチアッセイ。(A)0時間、12時間、24時間及び48時間でのPEP処理、PRP処理及び未処理(FBS)のヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)分析はPEP処理で遊走率の増加を示す;ピンクのマージンはそのスクラッチ領域を描写する。(B)(A)の画像化されたデータの線グラフ表示。(C)IncuCyte Essen BioScienceによる創傷コンフルエンスのパーセンテージの定量化が示され、バイオスキャフォールド処理されたHDFでより大きな細胞成長率を実証する。
【0024】
【
図5】In vitroの血管新生のPEP刺激(A)NHDF及びHUVEC細胞の共培養物を、PEP、PRP又はFBS内に播種した0日目及び8日目。(B)8日後の刺激された血管新生のネットワークの代表的なマスクされた図。データは平均±SEM(n=8)として示された代表的である二つの別々の試験である。スケールバーは800μmである。
【0025】
【
図6】創傷閉鎖のPEPの効果(A)in vivoでの28日間の虚血性ウサギ耳の試験の0日目及び28日目の創傷閉鎖の代表的な画像。(B)各治療群についてin vivoでの28日間の創傷床閉鎖の追跡。(C)これらのデータは平均±s.t.dとして示された。スチューデントのt検定を用いて統計的有意性処理をした(***=p<0.0001及び**p<0.01)。(D)創傷の大きさの定量化はバイオゲルがコラーゲンでの治療及び未治療の傷口と比較してより早く閉鎖することを実証した。
【0026】
【
図7】術後第2週の虚血性創傷治癒の組織学的解析。(A及びB)代表的なH&E画像を各治療に対して示す:非虚血性コントロール、虚血性未治療コントロール、コラーゲンを添加した虚血性創傷及びPEPを添加した虚血性創傷。スケールバー:1mm;20倍。(C及びD)ウサギの耳の虚血性創傷は顕著な細胞浸潤及び創傷端での表皮の厚さの増加を示している。H&E、ヘマトキシリン及びエオシン。
【0027】
【
図8】術後28日目の創傷床の細胞のα−SMA免疫組織化学的染色。繊維芽細胞から分化した筋線維芽細胞を矢印で示す。新しく形成された血管の周囲のα−SMA陽性細胞は矢印の頭で示される。*=p値<0.01。
【0028】
【
図9】PEPによる骨格筋の成長。PEPは筋芽細胞前駆体(MyoD+衛星/筋芽細胞)の迅速な増殖を誘発する。PEPを用いた培養条件の変更は培養中の筋管形成を誘発した(アクチニン)。
【0029】
【
図10】PEPによる骨格筋増殖。PEPは標準培養条件(FBS)に対して24時間及び48時間後(右パネル)の筋芽細胞前駆体の迅速な増殖を誘導する。PEPを用いた培養条件の変更は培養中の筋管形成を誘導する(PEP48時間)。
【0030】
【
図11】PEPによる傷の修復。(A)筋損傷において皮下腔内のPEPの使用は、コラーゲン足場単体の際には見られなかった、2週間もの期間にわたり、外科的コラーゲン足場内の細胞の充実性の大幅な増加を誘導した。(B)4週間の観察期間後、前駆細胞はPEPを搭載した足場内で(同様の組織への近接性に依存して)脂肪組織のいずれかの骨格筋において分化したが、コラーゲンのみの足場では脱細胞化されたままであった。
【0031】
【
図12】酸化ストレスを抑制する活性を有するPEP調製物内に含まれるタンパク質を検出するウエスタンブロット分析。PEPの3つの異なるバッチ(B2、B3、B4)を20%溶液(PEPバイアル内に5mL生理食塩液)内に溶解し、0.2ミクロンフィルターで濾過し、そしてタンパク質の濃度をBCAアッセイキット(Pierce, Thermo Fisher Scientific, Inc., Waltham, MA)を用いて定量化した。これより、各試料1.5μLを23.5μLの溶解バッファーに溶解し、そして3分間85℃で加熱した。20gのタンパク質を12.5%のポリアクリルアミドゲル(CRITERION,Bio−Rad Laboratories, Inc.,Hercules, CA)にロードした。
【0032】
【
図13】表示の量のソーティングしたCD63
+PEPエクソソーム又は表示の量のCD63
-PEPエクソソームで治療後の時間の関数としての細胞増殖の分析。CD63
+PEPエクソソームは試験期間中陰性コントロール(無血清培地)と比較して連続して細胞増殖を促進した。CD63
+PEPエクソソームは約30時間後にさらに連続した増殖を促進し、一方でその陽性コントロールは約20時間の迅速な増殖を示しその後平坦又はゆっくりと増殖した。CD63
-PEPエクソソームは陰性コントロールと比較し細胞増殖を阻害した。PEP内のこれらの集団の両方の存在が治療に対する細胞増殖の適した誘導を可能にし、しかも制御できない増殖を防ぐ。
【0033】
【
図14】代替の伝統的な方法に由来する細胞外小胞(EV)又はエクソソームに対するPEPの分析。超遠心分析及びタンジェンシャルフローフィルトレーションは溶液からエクソソーム又はEVを濃縮するための二つの確立された方法である。ここで、エクソソームの大きさ及び量のナノサイトに基づく分析は、これらの方法論が>200nmの大きさ及び粒子が1×10
10/mLを十分に下回る数で実施される場合に、EVの高度に不均一な集団を明らかにした。他方、本PEP誘導方法論は非常に狭い範囲のサイズのエクソソーム(<100nm)及び1×10
10を超える粒子収量をもたらす。
【0034】
【
図15】PEPの細胞内への導入。赤色の蛍光タグを付したPEPエクソソームの免疫蛍光は細胞内のこのエクソソーム生成物の迅速な取り込みを実証した。
【0035】
【
図16】虚血再灌流部位への蛍光ラベルしたPEPの送達は毛細血管の漏出に起因した迅速な取り込みを明らかにする。遠赤蛍光色素を有するラベル化されたPEPを左前下行肢の90分間の梗塞の緩和後10分でブタの心臓に送達した。Xenogen Systemを介するブタ心臓の肉眼的な分析は梗塞領域での遠赤蛍光色素の存在を示す。組織学的な分析は梗塞領域のp−セレクチン(エクソソームマーカー)の存在と非梗塞領域のp−セレクチンが無いことの対比を示す。これはPEPが組織内、例えば心筋への包埋のために損傷後の毛細血管漏洩を活用する機能を有することを実証した。
【0036】
【
図17】Xenogen Systemにより可視化されたように遠赤蛍光色素を有するラベル化されたPEPの生体分布はIVで与えられた場合は肝臓、IPで与えられた場合は消化管を標的にすることが認められる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は固有の構造を有する新規の精製されたエクソソーム生成物(PEP)、そのPEPを含む組成物、そのPEPの調製方法及びそのPEPの使用方法を記載する。その使用方法は創傷治癒に関する様々な適用を含む。適切な量のPEPは他の障害された創傷の治療を修復させうる。
【0038】
PEP(精製されたエクソソーム生成物)の命名法にもかかわらず、本明細書で記載されたその生成物は細胞外小胞及び/又はエクソメアから調製されうる。従って、本明細書で特に断りの無い限り、本開示での「エクソソーム」という用語は生成物それ自身がPEPについて記載された物理的、構造的、及び/又は機能的な特徴を有する限りエクソソームだけではなく、エクソメア及び細胞外小胞も含む。
【0039】
病態生理学的な異常、例えば糖尿病、末梢血管疾患又は感染症を有する患者の非治癒性の創傷は、重大な世界の医学的問題を表している。創傷治癒の複雑なプロセスは炎症、増殖及び細胞外マトリックス沈着の間に生じる複数の生物学的及び分子的事象により統治されている。
【0040】
正常な創傷において、炎症細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、成長因子の産生、細胞増殖及び血管新生は治癒工程の進行を編成する。不適切な成長因子の産生、減少された血管新生及び細胞遊走の障害は、創傷の正常な修復プロセスを妨げる要因である。実際に、近接する動脈閉塞、血管の圧迫又は微小血管の閉塞又は血栓症による皮膚灌流障害は、非治癒性の創傷の中心的な危険因子のままであり続ける。
【0041】
非治癒性の創傷の現在の臨床的な処置は創傷廓清及び適切な創傷被覆の局所的な治療を含む。創傷治癒の補助には陰圧創傷閉鎖法(NPWT)及び高圧酸素療法(HBO)を含んでもよい。血管新生の復帰は創傷治癒サイクルの破綻を反転させうり、そして持続的に分かるような速度での修復に寄与しうる。多血小板血漿(PRP)の適用による必須の創傷治癒の成長因子の局所投与はまた、様々な組織修復モデルにおいて正常な修復に寄与する。
【0042】
さらに、糖尿病性の創傷の改善及び促進は細胞由来のエクソソームを用いて成し遂げられうる。創傷治癒及び血管新生を加速させるためにエクソソームに基づいた治療効果は体液由来のエクソソームを用いて実証された。
【0043】
エクソソームは微小小胞(直径で40nmから100nm)であり、全ての異なる細胞種から分泌され、そして細胞間伝達シグナルを提供する。miRNA及びタンパク質を含む様々な異なる運搬分子はエクソソームを介して細胞の間で移送されうる。創傷治癒のエクソソームの機能の現在の知識は限られたままである。
【0044】
本開示は新規のエクソソーム組成物、その調製及びその使用のための様々な適用を記載する。本明細書で記載の研究において、多数のエクソソーム製剤が超構造レベルで同定されるために評価された。この取り組みを用いて、新規の精製されたエクソソーム生成物(PEP)を固有の超構造を有して産生した。
【0045】
そのPEPの調製のための出発材料は全血又は任意の適当なアフェレーシス血液産物(白血球除去製品、血漿分離製品、低温貧血血漿、新鮮な冷凍された血漿、フェレーシス血小板製品、多血小板血漿、乏血小板血漿又は任意の赤血球及び白血球が除去された産物を含む)を限定なく含む任意の適当な血液産物でよい。その血液又は血液産物は30歳以下の一般的な集団、40歳以下の一般的な集団、術後の集団、閉経前の女性、周産期の女性、胎盤又は臍帯血を含む任意の適当な起源から得られてもよいが、一般的な集団に限定されない。PEPの調製のための出発材料は、互換的で、適当な非血液起源、例えば臍帯ワルトンゼリー、脂肪由来の間質血管画分、アフェレーシス骨髄産物、滑液、脳脊髄液、間葉系幹細胞、上皮細胞、天然の幹細胞、胚性幹細胞、誘導された多能性幹細胞、又はこれらの若しくは任意の別の細胞起源の条件培地であってもよい。
【0046】
必要ならば、前記出発材料はPEPを調製するために必要とされるまで冷凍されてもよい。典型的に、前記出発材料は−20℃又は−80℃で、そして好ましくは現行の適正製造基準(CGMP)の工場内で保存されてもよい。
【0047】
PEPの調製のための工程は濾過工程から開始する。その開始材料は濾過の前に必要であれば、例えば血液産物の2から30ユニット(典型的には5から15)を解凍する。重力に基づく濾過で十分だが、任意の適当な濾過工程を実施してもよい。その濾過産物をいくつかの撹拌ステップで産物の結合のためにプールする。十分な試料の混合のために用いられる任意の撹拌方法が用いられうる。撹拌は例えば、5分間の手動の撹拌及び/又は5から15分間の機械的な撹拌を含みうるが、これらの選択肢に限らない。そのプールされた濾過産物を、もし所望するなら、−20℃から−80℃で冷凍し、そしてさらなる工程のための準備まで保存してもよい。もし冷凍保存するなら、その材料を制御された条件、例えば、1分間当たり0.1℃から5℃の割合での加温で解凍してもよい。
【0048】
所望するなら、その濾過産物は例えばガラスバイアルに分注してよい。所望の含水量の水準に依存して、最小0.1mLから10mLの容量を最小1mLのバイアルから最大50mLのバイアルに用いてもよい。一定分量の産物は、次に一定の凍結乾燥の性質を保証するため、調節された温度変化を経験する。
【0049】
凍結乾燥は、凍結乾燥が実施される(天然か人工的かのいずれかの)大気圧で水の凝固温度以下の任意の温度で実施されうる。それゆえいくつかの態様において、凍結乾燥は−180℃以上、−160℃以上、−140℃以上、−120℃以上、−100℃以上、−90℃以上、−80℃以上、−70℃以上、−60℃以上、−50℃以上、−40℃以上、−30℃以上、又は−20℃以上の最低温度で実施されうる。いくつかの態様において、凍結乾燥は0℃以下、−5℃以下、−10℃以下、−15℃以下、−20℃以下、−25℃以下、−30℃以下、−35℃以下、−40℃以下、−45℃以下、−50℃以下、−55℃以下、−60℃以下、−65℃以下、−70℃以下、−75℃以下の最高温度で実施されうる。いくつかの態様において、上記に説明する任意の最低温度及び最低温度より温かい上記に説明する任意の最高温度によって規定されるエンドポイントにより特徴づけられる温度範囲内で凍結乾燥は実施されうる。それゆえ、例えば、いくつかの態様において、凍結乾燥は−10℃から−100℃の温度で実施されうる。その最初の凍結工程において、温度は所望の最終温度に到達するまで1分当たり早くて2℃、遅くて0.1℃ずつ低下させてよい。
【0050】
一旦、所望の最終温度に到達すると、一次乾燥のために真空圧が適用される。その真空圧は任意の適当な真空圧でよい。それゆえ、いくつかの態様においては、適用された最小の真空圧は1mTorr以上、例えば5mTorr以上、10mTorr以上、15mTorr以上、20mTorr以上、25mTorr以上、50mTorr以上、75mTorr以上、100mTorr以上、150mTorr以上、200mTorr以上でありうる。いくつかの態様において、その最大の適用された真空圧は500mTorr以下、例えば、400mTorr以下、300mTorr以下、200mTorr以下、100mTorr以下、90mTorr以下、80mTorr以下、70mTorr以下、60mTorr以下、又は50mTorr以下であってもよい。いくつかの態様において、適用されたその真空圧は、上記に説明する任意の最小真空圧及び最小真空圧よりも高い任意の最大真空圧により規定されるエンドポイントを有する範囲として特徴づけられてもよい。それゆえ、例えば適用された真空圧は、10mTorrから300mTorrに及んでもよい。
【0051】
この初期段階では、少なくとも15分、例えば少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも40分、少なくとも50分、少なくとも60分、少なくとも70分、少なくとも80分、少なくとも90分、少なくとも100分、少なくとも120分、少なくとも140分、少なくとも160分、少なくとも180分、少なくとも200分、少なくとも220分、又は少なくとも240分の最小のホールド時間で保持されうる。その初期段階では30日以下、例えば15日以下、10日以下、5日以下、1日以下、1200分以下、900分以下、600分以下、300分以下、270分以下、240分以下、210分以下、180分以下、150分以下、120分以下、90分以下、75分以下、60分以下、又は45分以下の最大のホールド時間で保持されうる。いくつかの態様において、その初期段階では上記に説明する任意の最小期間及び最小期間よりも長い上記に説明する任意の最大期間により規定されるエンドポイントを有する範囲として特徴づけられたホールド時間が保持されうる。ある態様において、例えば、その初期段階では30分から300分のホールド時間が保持されうる。
【0052】
開始の容量に依存し、追加の乾燥工程及び最終温度の変化を所望する。任意の追加の乾燥工程のために、その最終温度は、凍結乾燥が実施される(天然又は人工のいずれかの)大気圧で水の凝固温度以下の任意の温度になりうる。適当な最終温度は上記に説明する一次乾燥工程と同様である。一以上の乾燥工程が凍結乾燥工程に含まれる場合、各乾燥工程の最終温度は一次乾燥工程の最終温度とは無関係に及び/又は任意の追加の乾燥工程とは無関係に決定されてもよい。いくつかの態様において、追加の乾燥工程は−10℃から−100℃の温度で実施されうる。他の態様において、追加の乾燥工程は−20℃から−140℃の温度で実施されうる。
【0053】
一以上の乾燥工程が凍結乾燥工程に含まれる場合、各乾燥工程の真空圧は一次乾燥工程の真空圧とは無関係に及び/又は任意の追加の乾燥工程とは無関係に決定されてもよい。いくつかの態様において、追加の乾燥工程について真空圧は10mTorrから300mTorrに及びうる。別の態様において、追加の乾燥工程について真空圧は50mTorrから400mTorrに及びうる。
【0054】
一以上の乾燥工程が凍結乾燥工程に含まれる場合、各乾燥工程のホールド時間は一次乾燥工程のホールド時間に無関係に及び/又は任意の追加の乾燥工程に無関係に決定されてもよい。いくつかの態様において、追加の乾燥工程のホールド時間は30分間から300分間に及びうる。別の態様において、追加の乾燥工程のホールド時間は200分間から7,200分間に及びうる。
【0055】
いくつかの態様において、より温かい温度での乾燥工程がその上所望されうる。より温かい温度でのこの乾燥工程は真空下で0℃から42℃に及ぶ温度で実施されうる。その真空圧は任意の追加の乾燥工程について上記に記載のようにありうる。より温かい温度での乾燥工程は10%又はそれ以下の含水率の水準を達成するために適当な任意の時間に対して実施されうる。いくつかの態様において、そのような含水率の水準を達成することは、温度及び真空圧の状況に依存して30分から7,200分かかってもよい
【0056】
それゆえ、至適の凍結乾燥パラメータは、少なくとも部分的には、利用される装置の容量、出発材料の含水量、出発体積及び出発材料の密度(例えば、培養培地に対する血清学的な材料)に基づいている。
【0057】
凍結乾燥した製品に達するために、ケーキング剤が特定の適用のために用いられてもよいが、PEPを導き出すためには必要でない。適当なケーキング剤はポリビニルピロリドン(PVP)、ブドウ糖、グリシン及び非結晶の糖(例えばスクロース、トレハロース、マンニトール)を含むが、限定されるものではない。ある態様において、その凍結乾燥工程は最小5時間から最長170時間かかりうる。この過程後のその最終産物はケーキ化された固形物の形成に基づき視覚的に出荷され、出荷の判断基準は製造ロットあたり95%より多くの適切なケーキを要求する。これらの測定基準に適合しなければ、ロット全体が廃棄される。
【0058】
前記PEPは従来の技術を用いて調製された従来のエクソソーム構造と異なる構造を有する。従来の濃縮されたエクソソームは
図3A及び
図3Bに示されるように、(凍結乾燥状態に無関係の)雪の結晶状の構造を示す。対照的に本明細書のPEPのエクソソームは
図3C及び
図3Dに示されるようにより小さく及びより球状である。原子間力顕微鏡及びSEMでは、誘導したPEP生成物は非常に球形であり、そして任意のせん断力、濾過又は遠心分離を含む工程で見られる凝集したエクソソーム構造のような「雪の結晶」に対して、エクソソームの凝集がないことが見いだされた。
【0059】
それゆえ、ある場合において、前記PEPは構造が結晶性でなく、300nm以下の直径を有する球状又はスフェロイドであることにより、従来のエクソソーム生成物から区別される。PEPエクソソームはそれゆえ300nm以下の、例えば250nm以下、200nm以下、175nm以下、150nm以下、125nm以下、100nm以下、95nm以下、90nm以下、85nm以下、80nm以下、75nm以下の最大直径を有しうる。PEPエクソソームは、少なくとも20nm、少なくとも25nm、少なくとも30nm、少なくとも35nm、少なくとも40nm、少なくとも45nm、少なくとも50nm、少なくとも55nm、少なくとも60nm、少なくとも65nm、少なくとも70nm、又は少なくとも80nmの最小直径を有しうる。いくつかの場合において、PEPエクソソームの直径は上記に説明する任意の最小直径及びその最小直径よりも大きい上記に説明する任意の最大直径により規定されるエンドポイントを有する範囲として表されうる。いくつかの態様において、それゆえ、そのPEPは50nmから200nm、例えば100nmから200nmの直径を有するものとして特徴づけられてもよい。
【0060】
さらに、
図14は以下により詳細に説明されるように、本明細書に記載のPEP調製物が従来のエクソソームの調製物と比較してより狭い直径の分布を有しうるとことを示すデータを提供する。例えば、いくつかの態様において、PEP調製物のエクソソームの直径は300nmより小さい分布、すなわち、最大の直径と最小の直径との間の差を有しうる。
図14は600nm以上の直径の分布を有する従来のエクソソームの調製物を示す。
図14はエクソソームの95%以上が100nmの直径と200nmの直径との間の100nmの分布内に入る直径を有し、そしてエクソソームの90%が60nmの分布(132nm±30nm)内に入る直径を有するPEPの調製物を示す。
【0061】
いくつかの態様において、前記PEPは低い含水量、例えば10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下の含水量を有しうる。
【0062】
前記PEPは治療組成物を形成するため医薬的に許容可能な担体で製剤化及び/又は再構成されてもよい。本明細書で用いられる「担体」は任意の溶媒、分散媒、溶剤、希釈剤、等張性の試薬、生理学的な緩衝剤、担体溶媒、懸濁液、コロイド、水等が含まれる。医薬的に活性な物質に対するそのような媒体及び/又は試薬の使用は当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は試薬はその活性成分に不適合でない限り、治療組成物内においてその使用が考えられる。補助的な活性成分をその組成物内に取り込んでもよい。本明細書で用いられる「医薬的に許容できる」とは、生物学的でない又は別の所望されない材料を意味し、すなわちその材料は任意の所望されない生物学的な影響を及ぼさず又はそれが含まれている治療組成物の任意の他の成分と有害な状態で相互作用したりすることなく、PEPとともに個人に投与されうる。代表的な医薬的に許容できる担体は、例えば、生理学的な緩衝剤、滅菌水、生分解性の高分子、人工的な高分子、又は任意の適当な濃度の基底膜溶液を含む。PEPに対するさらなる適切な担体は、温度、圧力又はその他の環境変化の下で液体から固体へと状態変化させる能力を有する任意の物質を含む。この場合において、PEPを液相でそのような物質に溶解し、そして担体がコラーゲンである本明細書の実施例である
図2、3で示されるように一旦固体として材料内に取り込まれる(トラップされる)だろう。
【0063】
前記PEPはそれゆえ治療組成物へと製剤化してよい。その治療組成物は好適な投与経路に適応する様々な形式で製剤化してよい。それゆえ、治療組成物は既知の経路、例えば経口、非経口(例えば皮内、経皮、皮下、筋肉内、動脈内、冠動脈内、静脈内、腹腔内等)、又は局所(例えば鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮、直腸等)を介して投与されうる。治療組成物は粘膜表面、例えば鼻又は呼吸器粘膜への投与によって(例えばスプレー又はエアロゾルによって)投与されうる。組成物はまた、持続性又は遅延性の放出を介して投与されうる。加えて、溶液型又は上記のマトリックス/ゲルとの組み合わさったいずれかのPEPは様々な組織内又は体腔内に外科的に埋め込まれてもよい。再建、歯科的に又は化粧品への適用のために、PEPを液体型又はマトリックスと結合した型で、例えば皮下、粘膜下又は顔面の深層へ送達してもよい。
【0064】
それゆえ、前記PEPは溶液、懸濁、エマルジョン、スプレー、エアロゾル又は任意の混合物の型を含むが限定されず、任意の適当な型において提供されてもよい。組成物は、任意の医薬的に許容される賦形剤、担体又は溶媒を含む製剤で送達されてよい。例えば、その製剤は従来の局所投与の型、例えば、クリーム、軟膏、エアロゾル製剤、非エアロゾルスプレー、ゲル、ローション等で送達されてよい。その製剤はさらに一以上の添加物、例えば、アジュバント、皮膚浸透エンハンサー、増粘剤等を含んでよい。加えて、PEPの使用は、研磨工程、例えばマイクロダーマブレージョン、マイクロニードル、レーザーピール、ケミカルピール、又は他の皮膚を研磨するプラットフォームと組み合わせて適用されてもよい。これらの設定で、PEPは溶液中、基底中、又はマトリックス/ゲルとしてのいずれかで送達されるだろう。さらに、髪の再生において、PEPは上記又は皮下の運搬を介して送達されるだろう。
【0065】
製剤は単位剤形で都合よく提供されてもよく、そして製薬業界で周知の方法で調製されてもよい。医薬的に許容可能な担体を有する組成物の調製方法はPEPを一以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般的に、製剤は活性化合物と液体担体、細かく分割された固形担体、又は両方とを均一及び/又は密接に会合させ、そしてその時、必要であれば、生成物を所望する製剤に成形することにより調製されてもよい。
【0066】
PEPは、再構成された/再水和されたエクソソーム生成物の構造的な挙動を調節しうる他の賦形剤と結合させてもよい。適当な賦形剤には、混合物若しくは精製された形態(脱細胞化された組織の足場を含む)のいずれかで適用される、例えば、コラーゲン、トロンビン、ゼラチン、アルギン酸塩又は任意のその他の天然の基底膜の生成物を含む生物学的マトリックスを含む。適当な賦形剤はまた、例えば、外科的又は瘻孔形成の欠損を充填するための迅速な凝集を促進するためにヒアルロン酸又はトロンビンの接着剤を含む。PEPは、温度、圧力、又は他の環境変化の下で液体から固体に状態を変化させる能力を有する添加剤又は賦形剤に適合する。
【0067】
上記の通り、PEPは低含水率の製剤で提供されてもよい。いくつかの態様において、それゆえ、PEP製剤は冷蔵せずに少なくとも6か月間、最長4年の棚寿命を有しえる。したがって、そのPEP製剤は、創傷治癒が必要であるが、冷蔵が不可能、不便又は費用がかかる、例えば未発達の地域又は軍事使用での使用で特に適しうる。低含水量のPEP製剤は容易に再溶解して、再構成されたPEP製品を形成する。例えば、乾燥したPEP製剤は、5分以内で20%までの溶液として再溶解しうる。再構成した20%のPEP溶液は、37℃で1時間かけてゲルを形成できる。ゲル製剤は、例えば、被験者に投与された後にPEPの局在化を促進することができ、及び/又は修復を必要とする組織にPEPの再生効果を促進する構造的な要素を作り出すことができる。PEPをコラーゲンと組み合わせると、再構成されたPEPが37℃でゲルを形成する速度を増加することができる。実際に、コラーゲンの存在下で再構成されたPEPがゲル化する速度は、少なくとも部分的には、コラーゲンの濃度に影響される。高濃度のコラーゲンを使用することで、ゲル化の速度の増加を成し遂げることができるが、ただし最大濃度で10mg/mLである。いくつかの態様において、PEPを、約5mg/mLのコラーゲン濃度でコラーゲンと組み合わせて使用する。他のゲル化剤、例えばトロンビン接着剤(例えば、TISSEEL,Baxter Healthcare Corp.,Deerfield,IL)、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)及びその他、との組み合わせで使用する。PEPがコラーゲンを含むゲルとして製剤化される場合に、そのPEPエクソソームはコラーゲン原線維に付着でき、「ビーズ・オン・ア・ストリング」の外観を作り出す。これに加えて、溶解溶液の浸透圧濃度に依存して、PEPではストリング上に積み重ねられたエクソソーム、ストリング上のとがったもの、又はストリング上の花の開いたパターンを含む、他のSEMの特徴が見られる。この効果は、少なくとも部分的に、精製されたコラーゲン溶液のコラーゲンの種類及び濃度に依存し、例えば、約5%から約30%の濃度を有するPEP溶液を用いる場合により一般的である。
【0068】
コラーゲンと結合するか、又は溶液中であるかに関わらず、前記PEPエクソソームは10%から20%以上のPEPエクソソームの二次的な凝集の証拠を示していない。さらに、3以上のエクソソームを含む凝集の証拠もない。上記の通り、この唯一の例外は、PEPが高浸透圧濃度の溶液、例えばTISSEELのCaCl
2溶液で再水和される場合である。
【0069】
投与されるPEPの量は、これらに限定されないが、様々な要因、例えば、被験者の体重、健康状態、及び/又は年齢、及び/又は投与経路に依存して変動しうる。それゆえ、所定の単位剤形に含まれるPEPの絶対量は広く変動しうり、そして要因、例えば、被験者の人種、年齢、体重及び身体状態、及び/又は投与方法に依存する。したがって、全ての考えられる用途のために有効なPEPの量を構成する量を一般的に述べることは実用的ではない。しかしながら、当業者は、そのような要因を十分に考慮して適当な量を容易に決定することができる。
【0070】
いくつかの態様において、前記方法は、例えば、溶液中でPEP濃度を少なくとも0.5%及び100%以下で有するPEPエクソソームの被験者への投与を含みうる。PEPエクソソームは、少なくとも1%、例えば、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%の最小濃度で被験者に投与されてもよい。PEPエクソソームは、100%以下、例えば、75%以下、50%以下、25%以下、20%以下、19%以上、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、又は2%以下の最大濃度で被験者に投与されてもよい。いくつかの態様において、PEPエクソソームは、上記の任意の最小濃度及び最小濃度よりも大きい上記の任意の最大濃度によって定義されるエンドポイントを有する範囲内の用量で被験者に投与されてもよい。それゆえ、例えば、PEPエクソソームは、少なくとも1%から30%以下、例えば、少なくとも5%から20%以下の濃度で被験者に送達されてもよい。
【0071】
いくつかの態様において、そのPEPを、例えば、週当たり単回投与から複数回投与まで投与しうるが、いくつかの態様においてその方法は、この範囲外の頻度でPEPを投与することにより実施されてもよい。PEP組成物の投与が有用である幅広い用途により、各用途の投与レジメンを特定することは実際的ではない。ある態様において、PEPは、月に約1回から週に約5回まで投与されてもよい。例えば、心筋梗塞の治療には単回投与で十分でありうる。他の用途、例えば、創傷治癒、美容用途、髪の再生については、毎週または毎日の投与が好ましいだろう。
【0072】
本明細書に記載のPEP組成物及び製剤は、多くの用途を有する。PEPは、例えば、間葉系幹細胞(MSC)及び/又は皮膚線維芽細胞の成長を、従来の治療法(例えば、血小板溶解物)又はウシ胎児血清よりも高い程度まで増大しうる。同様に、PEPは、骨分化、軟骨分化、及び/又は脂肪分化を、従来の治療法(例えば、血小板溶解物)又はウシ胎児血清よりも高い程度で誘導できる。PEPはまた、筋芽細胞の成長を従来の治療法(例えば、血小板溶解物)又はウシ胎児血清よりも高い程度で維持できる。PEPは、免疫療法、例えば、CAR−T、TRuC−T、NK−CAR、及び造血幹細胞のために使用される細胞の増殖特性を増強するために用いてもよいが、それらに限定されない。
【0073】
例えば、PEP組成物及び製剤は、増殖、抗アポトーシス、免疫制御及び新たな血管形成に主に焦点を当てた幅広い細胞応答を誘発しうる。PEPの存在下で損傷した組織は、再生に向かう傾向を有する。この応答は、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β、例えば、溶液中のPEPエクソソーム濃度に依存して50pg/mLから200ng/mL)、血管内皮増殖因子(VEGF、例えば、溶液中のPEPエクソソーム濃度に依存して10pg/mLから2ng/mL)、上皮成長因子(EFG、例えば、溶液中のエクソソーム濃度に依存して500pg/mLから50ng/mL)、線維芽細胞成長因子(FGF、例えば、溶液中のPEPエクソソーム濃度に依存して5pg/mLから1ng/mL)、HGF(溶液中のエクソソーム濃度に依存して50pg/mLから200ng/mL)、及びPDGF(溶液中のエクソソーム濃度に依存して、5pg/mLから300ng/mLの間にまたがる濃度のAA、BB、ABを含むすべてのサブタイプ)の増強した発現を実証する観察で具体化される。前記反応はこれらの因子に限定されないが、これらの因子が異なる組織で誘導されるという観察は、PEPの再生の影響の態様である。
【0074】
PEP治療はin vitroスクラッチアッセイを経て創傷コンフルエンスを増加する
【0075】
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)遊走におけるPEPの効果を、以前に細胞遊走の研究のゴールドスタンダードとして記載された(Liang et al.,2007.Nat Protoc 2:329−333)、in vitroのスクラッチアッセイを用いた多血小板血漿(PRP)治療と比較した。PEPを用いた治療は、コントロール及びPRP処理した繊維芽細胞と比較してHDFの遊走率の増加を引き起こした(
図4)。従って、スクラッチアッセイの量的な測定は48時間でコントロール及びPRP処理したHDFと比較してPEP処理したHDF条件で創傷の浸潤(
図4B)及び創傷コンフルエンス(
図4C)の両方の高い割合を実証した。スクラッチアッセイに続いて、24時間で57%、48時間で81%というコントロールのHDFと比較して、PEP処理したHDFの創傷コンフルエンスは24時間で98%であり、そして48時間で100%以上であった。
【0076】
PEP治療はチューブの長さを増加する
【0077】
基底膜マトリックスチューブの形成試験は血管新生のシグナル経路を研究するために用いられうる。実際にPEP−処理したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)はチューブ形成の迅速な基底レベルを示し、創傷床の血管新生のための最適な条件を示唆する)(
図5)。総ネットワーク長の定量化ではコントロールの5000ミクロンと比較し、PEPの増殖条件において>15,000ミクロン(p値p<0.001)をもたらした(
図5B)。興味深いことに、PRP治療はまた、チューブ形成を穏やかに10、000ミクロン増加させる(p<0.001)。まとめると、これらの結果は、PEP治療がin vivoの再上皮化及び血管密度の既知の標準に相関するin vitroでの遊走、増殖及びチューブ形成の速度を増加することを示す。
【0078】
虚血性創傷の術後の様子及び創傷の治癒時間
【0079】
虚血性創傷の治癒の低侵襲のウサギ耳モデル(Chien,S.& Wilhelmi,B.J.,2012.J Vis Exp,e3341;Chien,S.,2007.Wound Repair Regen 15:928−935)を血管結さつを評価するために用いた。虚血性創傷をPEP又はコラーゲンのみのいずれかで4週間(1週間あたり1治療で)治療し、そして創傷治癒の程度を非虚血性創傷及び未治療の虚血性創傷と比較した(
図6A)。創傷の大きさの定量化で、PEP処理した創傷がコラーゲン処理及び未処理の虚血性創傷と比較してより早い閉鎖を有したことを実証した(
図6A、6B)。具体的には、コラーゲン処理した創傷が28日後に0.67mmに減少したことと比較して、2−cmのPEP処理した創傷は、28日後に0.05mmに減少した;非虚血性創傷が28日後に0.06mmに減少し、そして未治療の虚血性創傷は28日後に1.3mmに減少した(
図6A、6B)。コラーゲン又はPEPのいずれかを用いた治療では4週目に上皮化を促進する結果をもたらした。これはケラチン14染色で実証された(
図7A、7B)。それゆえ、PEP治療はin vivoの虚血性モデルでの創傷閉鎖及び上皮細胞の遊走を加速する。
【0081】
羊のポリクローナルvWF抗体で染色した創傷試料は、未治療のコントロールとコラーゲン処理した創傷とを比較した場合又は、乾燥コラーゲン足場を再水和する10−20%の溶液としてPEPを再構成した場合に、バイオゲル(
図2で示されるPEP−コラーゲン足場を含む)で治療した創傷においてより高いvWF染色された細胞を示す(
図6又は
図7参照、PEP豊富なコラーゲン足場は、非虚血性創傷でみられる状態までに創傷治癒を改善する)。定量的な分析では、処理されたバイオゲルの集団(1視野あたり53.7%の内皮細胞;n=3)と未処理の集団(1視野あたり22.2%の内皮細胞;n=3)との間で、統計学的に有意な違いがある(p<0.01)ことが確認され、血管新生の増加と対応した。
【0082】
PEPで処理された創傷部位のα−SMA発現
【0083】
図8は28日間のPEPにより処理した創傷部位におけるα−SMAの発現レベルを示す。PEP処理した創傷床におけるその示された紡錘状の形のα−SMA陽性細胞はその線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を実証する(
図8)。加えて、新たに形成された血液細胞(
図8矢頭)周辺の平滑筋細胞のα−SMAの発現はこれらの創傷床で血管形成の開始を示す。α−SMA陽性細胞の定量分析では、PEP処理した集団とコラーゲン処理した集団及び未処理の集団との間で、線維芽細胞の分化及び高密度の成熟した血管と一致し、統計学的に有意な違いがある(p<0.01)ことを確証した。
【0085】
図9はPEP存在下で増殖した平滑筋衛星細胞の位相差、免疫蛍光及び模式図を示す。ここで、衛星細胞の低いコンフルエンスは筋芽細胞、筋細胞(MyoD+)内の増殖能力を実証し、そして最終的には機能的な筋管(アクチニン+)に組織化する能力を示す。
図10において、これらの発見は、PEPと衛星細胞が機能的な組織を生じさせられない別の増殖条件、例えばFBS(又は示していないPRP及び血小板溶解物)との直接対比によりさらにサポートされた。
図11において、このパラダイムのさらなる実証がのコラーゲンマトリックスの移植のみ又はPEP富化が後続するいずれかのin vivoの試験で提供された。
図11A及び
図11BはPEPの豊富な条件で、2週間で骨格筋が発生し、そして8週間で十分に分厚い筋肉量の回復が認める強い証拠があることを実証する。この再生反応はコントロール(コラーゲンのみ)の集団では見られなかった。これらのデータは、前駆体で豊富な組織、例えば皮膚、骨格筋(咽頭/喉頭、尿及び肛門括約筋、及び筋骨格系に関連するそれらと共に横隔膜を含む)、消化管、膣、膀胱、子宮、及び他の構造組織を含む平滑筋を有する組織の再生を誘導するためのPEPの豊富な環境の使用に裏付けられた根拠を提供する。
【0086】
図12は、B2、B3及びB4でラベルした、三つの異なるPEP調製物のウエスタンブロット分析を示す。各試料を代表的なエクソソームのタンパク質のチューブリン、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、CD63、ヘム酸素添加酵素(HO−1)、及びプログラム細胞死リガンド1(PD−L1)に特異的に結合する抗体を用いて探索した。チューブリンはヒトの細胞に遍在するタンパク質である。SOD1、SOD2及びSOD3は、活性酸素種(ROS)により生じる損傷を制限する抗酸化酵素である。CD63はエクソソームの膜表在タンパク質である。HO−1はヘムの分解を触媒し、そして酸化ストレスにより誘導される酵素である。PD−L1は特定の事象、例えば妊娠、組織の同種移植、自己免疫疾患の間に免疫システムの抑制に含まれる膜貫通タンパク質である。
図12は三つの別々に調製されたPEP調製物にわたって代表的なタンパク質のバンド形成により証明されるように、PEPを調製するために用いた過程が高い一貫性のあるタンパク質の特性を作ることを示す。
【0087】
図13は様々なPEP調製濃度を用いた時間依存的な細胞増殖を示す。
図13はまた、調製物内のエクソソーム表面のCD63発現に基づくPEP調製のソーティングの効果を示す。PEP調製物は典型的にCD63
+エクソソーム及びCD63
-エクソソームの混合物を含む。CD63
+エクソソームは膜結合小胞のソーティングに適当な任意の方法によりPEP調製からソートされてもよい。CD63
+エクソソームのソーティングの代表的な方法は、親和性による分離、磁性ビーズによる分離、フロー分離等を含むが、これらに限定されない。陽性コントロールは見せかけの小胞で処理された場合の細胞増殖を示す。細胞増殖は20時間まで迅速に増加し、そして次に細胞がコンフルエントに到達したために平らになる。対照的に、PEP調製で処理された細胞は、成長し続ける(例えば、20時間から60時間まで)。CD63
+エクソソームを有するPEPで処理された細胞はまた、約40時間後に多かれ少なかれ一定の割合で継続する成長を示す。CD63
-エクソソームを有するPEPで処理された細胞はまた、約40時間後に多かれ少なかれ一定の増殖率を示すが、陰性コントロール(無血清培地で成長する細胞)よりも低い割合を示す。それゆえ、創傷治癒及び/又は組織の再生を含む用途で所望されうるように、CD63
+エクソソームを含むPEPは細胞増殖を促進できる。しかしながら無制限の細胞増殖は、新生物の増殖をもたらす。CD63
-エクソソームを含むPEPは、例えばコンフルエントへの到達による成長を遅延する細胞機構を招くことがあり、それゆえCD63
+エクソソームを含むPEP調製物は無制限の細胞増殖をもたらすリスクを限定しうる。
【0088】
未修飾のPEP調製物、すなわち調製物内のエクソソーム集団のソーティング又は隔離により特性を変化させてないPEP調製物はCD63
+及びCD63
-エクソソームの混合物を天然に含む。CD63
-エクソソームは無制限の細胞増殖を阻害できるので、天然にCD63
+及びCD63
-エクソソームを含む未修飾のPEP調製物は創傷治癒のための細胞増殖及び/又は組織の再生を刺激することと無制限の細胞増殖を制限することの両方ができる。また、CD63
-エクソソームは無制限の細胞増殖を阻害できるので、CD63
-エクソソームが豊富であるPEP調製物は、例えばCD63
+エクソソームの少なくとも一部のソーティング及び除去により、抗腫瘍療法として用いられうる。
【0089】
さらに、CD63
+エクソソームのソーティングにより、CD63
+エクソソームを天然のPEP調製物から取り除き、次いでCD63
+エクソソームの所望される量を戻して加えることにより、PEP生成物のCD63
+エクソソームとCD63
-エクソソームとの比率を制御できる。いくつかの態様において、PEP調製物はCD63
-エクソソームのみを有しうる。
【0090】
別の態様において、PEP調製物はCD63
+エクソソーム及びCD63
-エクソソームの両方を有しうる。CD63
+エクソソームとCD63
-エクソソームとの比率は、少なくともある程度は、特定の用途に所望される細胞増殖の量に依存し変えてよい。例えば、CD63
+/CD63
-エクソソーム比は、CD63
+エクソソームにより誘導される所望された細胞増殖及び細胞接触阻害を介して達成されるCD63
-エクソソームにより提供される細胞増殖の阻害を提供する。あるシナリオにおいて、例えば非付着性細胞(例えば血液由来成分)が存在する組織内では、この比率は処理された組織に対して細胞増殖又は細胞阻害の適当な均衡を提供するために調製されてもよい。細胞間接触は、例えば非付着性細胞を有する組織においてきっかけとならないので、無制限の細胞増殖を防ぐためにCD63
+エクソソーム比を減らしてよい。逆に、細胞のクローンの集団を広げる所望があれば、例えば、同種の細胞を基礎とする治療又は免疫療法において、大きな細胞の集団がとても少ない起源から由来しうることを保証するためにCD63
+エクソソームの比率を増やすことができる。
【0091】
それゆえ、様々な態様において、PEP調製物におけるCD63
+エクソソームとCD63
-エクソソームとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、又は30:1であってもよい。ある態様において、そのPEP生成物をCD63
+エクソソームとCD63
-エクソソームとの比を9:1で含むために製剤化する。
【0092】
図14はPEPをもたらす本明細書に記載の方法と比較した、例えば超遠心分離及びタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)といった技術の大きさの分布及び総エクソソーム量を強調する。これらの別々の技術のNanoSight分析は、超遠心分離又はTFFのいずれかを用いたエクソソーム(細胞外小胞)量が、超遠心分離において41nmから776nmまで及びTFFにおいて56nmから829nmの範囲のエクソソームの大きさの幅広い分布をもたらすことを示す。逆に、典型的なPEP由来物は65nmから280nmのより狭い大きさの分布のエクソソーム(又は細胞外小胞)をもたらし、大部分のエクソソームは100nm〜200nmである。さらに、超遠心分離とTFFとの両方について1mLあたりの粒子の量は2×10
8であるが、PEP調製物は再現性よく6×10
11粒子数/mLを生じる。
【0093】
図15は、蛍光色素で染色した場合にPEPが培養細胞内に迅速に入る能力を有することを実証する。
図16はPEPがまた、組織環境内に送達された場合に迅速に細胞に入ることを示す。ここで、PEPはブタの虚血再灌流障害モデルにおいて、冠動脈内のアプローチを介して送達される。この心筋梗塞のモデルにおいて、適当にサイズの血管形成バルーンを用いてLADを90分間閉塞する。再灌流後、遠赤外蛍光脂質色素を用いてラベル化されたPEPは左前下行枝に注射された。心臓はPEPの送達の30分以内に収集し、そして肉眼的に遠赤外シグナルを評価した。作成されたXenogen画像に見られるように、送達した全てのPEPは心臓の梗塞領域内に捕捉された(上図)。組織学的な分析では、p−セレクチン(エクソソームマーカー)による追跡で梗塞においては心筋細胞内のPEPの存在を実証したが、非梗塞組織内ではなかった。これは、PEPが組織、例えば心筋の細胞内に迅速に包埋されるために損傷後の毛細血管漏出を活用する能力を有することを実証する。さらに、これは傷の状況で又は組織の損傷の防止のためのいずれかでPEPの動脈内の送達に対する根拠を提供する。
【0094】
図17は静脈内(IV)及び腹腔内(IP)に送達した場合のPEPの体内分布を追跡する。10分から6日間にわたる観察期間で、IVで送達された場合にほぼ全てのPEPは肝臓内に分布し脾臓内で若干のシグナルが認められた。IPでの送達では肝臓への関与なしに及び脾臓への最小限の関与でPEPを消化管に隔離した。後眼窩(RO)を介してのIVでの送達では、生体分布において有意差は示さなかった。これは、肝臓を標的に所望する場合、PEPが健常時及び病気時にIVで運ばれうることを示した。
【0095】
それゆえ本開示は新規のエクソソームに基づく治療及びエクソソームに基づく治療組成物を記載する。記載したエクソソームに基づく組成物の生物学的効果は従来のエクソソーム調製物よりも高い。本明細書に記載したエクソソーム組成物と比較された従来のエクソソーム調製物との間の小さな超構造的な差異は細胞の取り込み及び利用、そしてそれゆえ異なった効果を導く異なる構造的な組成物に影響を与える。原子間力顕微鏡(AFM)の調査で、我々の新規に精製されたエクソソーム生成物(PEP)がクラスター及び凝集体を形成しないことを理解できた。これは氷の結晶又は花の模様を形成する傾向のある多血小板血漿(PRP)を用いた場合にはなかった(
図3)。PEPは創傷治癒、創傷床の血管新生、及び創傷の再上皮化について、牛胎児血清(FBS)又は従来の精製されたエクソソームの他の製剤よりも機能的に著しく優れていた。それゆえ、本明細書で記載されるように、エクソソーム生成物の分離及び精製は、すなわち均一の、単一の超構造的な組成物を保証する方法では、三次構造の形成とは対照的に、in vitroで示されるように生物学的効果における劇的な上方調節をもたらし、そして生物学的効果のあるマトリックスにおいてコラーゲンと複合体を形成した場合に最高に達する。これは、非治癒性の創傷床の非虚血性創傷に見られるそれに戻す再生を誘導できる。
【0096】
創傷治癒及び/又は組織の再生の促進のための従来の技術は、治療される組織の大きさにより制限されうる。組織のサテライトは約3mmから5mm離れた間隔をあけた再生組織の極として配置されるだろう。東の組織の極は約50μmから500μmであり、そして疾病又は損傷の領域に近接する切除した健康な少量の組織の物理的な解剖で臨床的に調製されうる。生物適合性サポート(例えば、生物適合性ウェブ、生物適合性マトリックス、生物適合性足場、等)と組み合わせたPEP調製物は、組織成長の多数の「サテライト」核を提供することによって組織の再生のためのこの限界を克服できる。各サテライト核はPEP調製物が接着する、吸着する、又は他の方法で取り付けられる生物適合性サポートを含みうる。そのサテライト核(細胞又は組織のクラスター)は、追加の増殖因子をさらに含みうる。多量のサテライト核が用いられる場合、各サテライト核の組成物は、任意の他のサテライト核と同じように、又は異なって、独立して設計されてもよい。使用時において、そのサテライト核は組織の再生を所望する場所に従ってその損傷した組織内に配置しうる。そのサテライト核の間隔は3mmから5mm離れていてよい。そのサテライト核は、様々なサテライト核から再生する組織が合体して連続的な再生組織を形成するまで、様々な核の間で並行に生じる組織の再生の焦点として寄与しうる。
図9は細胞又は組織のサテライトがPEPの設定において骨格筋組織のコンフルエントをどのようにもたらすかの例を示す。
【0097】
前述の説明及び以下の請求において、「及び/又は」という文言は一つ又は全てのリスト化された要素又は任意の2以上のリスト化された要素の結合を意味する;「含む」という文言及びその変種は制限のないものとして構成され、すなわち、追加の要素又はステップは付随的及び存在しうる又は存在しえない;特に断りのない限り、「a」、「an」、「the」及び「少なくとも一つ」は互換的に使用され、そして一又は一以上を意味する;エンドポイントによる数値的な範囲の列挙はその範囲内に包含される全ての数字を含む(例えば、1から5は1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)。
【0098】
前述の説明において、明確にするために特定の態様を単独で記載してもよい。特に断りのない限り、特定の態様の特徴は別の態様の特徴と一致しないことが明示化され、ある態様は一以上の態様に関連して本明細書で記載の適合可能な特徴の組み合わせを含みうる。
【0099】
別々のステップを含む本明細書に開示された任意の方法について、そのステップを任意のありうるオーダーにより行ってもよい。そして、適当なものとして、任意の二以上のステップの組み合わせを同時に行いうる。
【0100】
本発明を以下の実施例に示す。特定の実施例、材料、量、及び工程が本明細書で説明されるように発明の範囲及び精神に従い広く解釈されると理解されるであろう。
【実施例】
【0101】
実施例1:精製したエクソソーム生成物(PEP)の製造
【0102】
アフェレーシス血液産物を認定の血液バンクから収集し、最善の臨床的な標準のためのアドヒアランスを確認した。製品単位を−20℃又は−80℃のいずれかで冷凍し、現行の適正製造規範工場内で保存した。
【0103】
製造工程を開始するために、2−30ユニット(典型的には5−15ユニット)を融解し、20μm−40μmのフィルターを用いた重力を基にした濾過工程を経て、そして−20℃から−80℃で再冷凍される前にいくつかの撹拌工程で生成物を混合するためにプールした。そのプールした生成物を手動の撹拌で5分間撹拌し、5−15分間の機械的な撹拌を続けた。制御された条件下で、プールした産物を0.1℃から5℃の割合で解凍し、そして特定の容量を滅菌されたガラスバイアルに隔離した。所望の含水量の水準に依存して、最小1mL、最大50mLのバイアルに容量を最小0.1mLから10mLで利用しうる。分注した生成物は均一な凍結乾燥特性を保証するために、次に調製された温度変化を経る。その乾燥工程は最短で5時間及び最長で170時間かかりうる。この工程後の最終製品には製造ロットあたり95%以上の適当なケーキ化を要求する出荷基準を用いて、ケーキ化したペレット形成に基づき視覚的に出荷する。これらの基準に適合しないならば、そのロット全体を廃棄する。
【0104】
コラーゲン−PEP足場の製造
【0105】
精製したエクソソーム生成物(PEP)を48時間の冷凍したエクソソームの豊富な溶液を凍結乾燥することにより得た。3mg/mLの濃度のコラーゲンを凍結乾燥したPEPと混合し、20w/v%の終濃度に達した。その混合した溶液をゆっくりと6cmペトリ皿に注ぎ、そして37℃でインキュベートした。
図1AはPEPの製造工程の様々なステップを示した。
図1BはPEPとコラーゲン繊維との間の相関を説明した概要図である。
【0106】
走査電子顕微鏡(SEM)
【0107】
電界放出型の走査電子顕微鏡(Hitachi S−4700, Hitachi High−Technologies,Tokyo,Japan)を用いて、コラーゲンの形態学的な特性(
図2A、2B)及びコラーゲン−PEP(
図2C、2D)足場を観察した。足場を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.2、2.5%グルタルアルデヒドに調製し、一晩固定した。試料は続けて1%四酸化オスミウムで1時間後固定し、エタノールで脱水し、そして超臨界乾燥した。乾燥した試料は、環境温度でスパッターコーターを介して金でコートした。足場の顕微鏡写真を撮り、そしてその粒子サイズの分布をBeckman Coulter LS 32機器を用いて0.01mmから1,000mmの範囲で決定した。その平均の粒子サイズを6つのSEM写真の各30粒子の粒子サイズを測定することで計算した。
【0108】
原子間力顕微鏡(AFM)
【0109】
原子間力顕微鏡をコラーゲン及び生物学的効果のあるPEPの形態を調査するために実施した。コラーゲン又はPEPを切断したマイカディスクの表面に設置し、37℃で約30分間インキュベートした。インキュベーション後、水を用いて4−5回試料を洗浄し、そして次に窒素ガスで乾燥した。ナノスケールのAFM画像(512×512ピクセル)をNanoscopeIV PicoFroce Multimode AFM(Bruker Corporation,Billerica,MA)を用いて室温でタッピングモードで収集し、そしてNanoscope Analysis Version 1.40 software(Park,S.& Terzic,A,2010.J Struct Biol 169:243−251)を用いて分析した。代表的な画像を
図3に示す。
【0110】
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)の遊走試験:
【0111】
HDFを96ウェルINCUCYTE IMAGELOCK組織培養プレート(EssenBioScience,Inc.,Ann Arbor,MI)に播種し、1ウェルあたり2×10
4細胞で蒔き、そして加湿した37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。24時間後、INCUCYTE WOUNDMAKERを正確な及び再現性のある創傷を96ウェルIMAGELOCKプレートの全てのウェルに作り出すために用いた。傷つけた後に;培養液を各ウェルからアスピレートし、そして除去した細胞が落ち着き、そして再び付着することを防ぐためにそのウェルを穏やかに培養液で二回洗浄した。PBS緩衝液で洗浄した後、HDF遊走に対するPEPの効果を決定するために、100μLの培養液を、5w/v%の濃度でPEPを(FBSの無い)DMEMで希釈した溶液に置き換えた。続けて(FBSのある)DMEMで培養した細胞をコントロールとみなす。培養後、実験プレートをINCUCYTE ZOOMに設置し、そしてそのシステムが5分間平衡化することを許可した。ZOOMソフトウェアでスキャンの繰り返し(3時間おきに48時間)を予定し、そして画像を撮影し、そして記録した。経時変化における最初のスキャンは最初のひっかき傷のマスク(境界を示すデジタルの覆い/遊走する細胞及び損傷の無い領域の最先端)を生じるために用いた。この最初のひっかき傷のマスクを続く定量化の工程に用いた。ひっかき傷のマスクはまた、最初のスキャン後の全ての続く撮影時点について計算された。加えて、HDFの遊走の統計学的な分析が実施された;我々は画像の細胞の占有する領域と細胞の無い領域との間を区別するために最初のひっかき傷のマスクを頼るRelative Wound Density(RWD)を測定した。結果を
図4に示す。
【0112】
血管新生試験(in vitroのチューブ形成)
【0113】
in vitroの血管新生及びチューブ形成を行うために、PrimeKit−Cryo(Essen BioScience,Inc.,Ann Arbor,MI)を用いた。0日目に、NHDF(Normal Human Fibroblast)を解凍し、すすぎ、そしてコーニング96ウェルプレート内の播種培地に蒔いた。そのNHDFを続いてプレートへのそれらの接着を可能にするために1時間組織培養フード内で室温でインキュベートした。HUVEC CytoLight Greenの播種後、そのプレートをイメージングのためにINCUCYTE内に置く前に1時間室温でインキュベートした。実験の性能について我々の厳格な品質管理のガイドラインに適合するために、PrimeKitのための細胞密度を、最適化した。播種後、共培養物をINCUCYTE S3内に設置し、そしてTiled Field of View(FOV)モザイクイメージングモードを用いて8日間3時間毎に位相差及び蛍光の両方において画像を自動的に取得した。このモードにおける、6の総画像(横3画像×縦2画像)をウェルごとに取得し、ウェルのほぼ50%を覆う単一のより大きい画像に合併した(
図5A)。1日目に、播種培地をウェルごとに150μLの(キットで提供された)増殖培地に置換した。2日目に、試験試薬(5%PEP又は5%RPR又は10%FBS)を試験培地に添加した。4日目及び7日目に、試験試薬を新鮮な試験試薬培地に置換した。その進行を8日間監視した;チューブ形成を拡張したINCUCYTEアルゴリズムを用いて動的に加工した。
【0114】
動物モデル及びウサギの手術
【0115】
全身麻酔下及び無菌法を用いて、ウサギの耳を前処理し、そしてサージカルクリッパーを用いて毛をきれいに整えた。その後、虚血性創傷を以前に記載されたように作成した(Ahn,S.T.&Mustoe,T.A,1990.Ann Plast Surg24:17−23)。簡潔に、三層の動脈及び静脈の一層以上の選択した区分で、虚血性基材は断絶3−0Nylon縫合を用いたウサギの耳の閉鎖に基づく創傷で作成した。虚血性創傷を作成するために、環状の、全層の損傷を2−cmの穿孔器で耳の腹側に作成した。実験グループでは滅菌包帯を巻き付ける前に創傷に生物足場を投与したが、一方でコントロールグループではその創傷を滅菌包帯で覆うのみであった。
【0116】
組織診断
【0117】
皮膚の損傷部位の細胞浸潤を評価するために、グループごとに所望の時点で三個の損傷由来の試料を収集した。生検領域から皮膚の試料を得るため、ウサギを屠殺し、そして組織を切開で取り除いた。皮膚組織の損傷した領域を続いて安定化のためのフィルター膜(有機溶媒に耐性のある任意の膜、例えばニトロセルロース)に設置し、試料を正確に半分に切断した。切断を創傷の中央で開始できるように、半分の創傷を、直接的にOptimal Cutting Temperature(OCT)組織凍結包埋剤に(凍結切片のために)包埋するか、又は4%パラホルムアルデヒドで一晩固定しそしてパラフィンに包埋するか、いずれかで包埋した。ホルマリンで固定した試料を8μmで切断し、ヘマトキシリン及びエオジンで染色した。
【0118】
ヘマトキシリン及びエオジン(H&E)染色
【0119】
キシレン(2×3分)、50のキシレン:50の100%エタノール(1×3分)、100%エタノール(2×3分)、95%エタノール(1×3分)、70%エタノール(1×3分)、50%エタノール(1×3分)、そして最終的にH
2O(1×5分)の一連のインキュベーションで、8−μmの皮膚組織のパラフィン切片を、加工し、切断し、そして脱ワックスし、そして浸水した。スライドをHarrisヘマトキシリン溶液(HHS32,Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)で室温で5分間染色し、そして続けて水に色がなくなるまで(約5分間)の間蛇口から水道水を出しながら染色びん中で水洗した。スライドを酸性アルコール(70%エタノール内に1%HCl)内に切片がピンク色に変わるまで2又は3回浸した。スライドを水道水で3から5分間洗い、そして次にアンモニア水(1LのH
2Oに1mLのNH
4OH)に切片が著しく暗くなるまで5又は6回浸した。スライドを水道水で3から5分間洗い、続いてエオジンY水溶液(HT110232,Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を1分間スライドに加えた。スライドを再度水道水で3から5分間洗った。スライドを次に95%エタノール(2×3分)、100%エタノール(2×3分)、50のキシレン:50の100%エタノール(1×3分)そしてキシレン(2×3分)の一連のインキュベーションにより脱水した。スライドはそれらをパーマウント又はキシレンベースの封入剤を用いてカバースリップするまでキシレン内に(1時間以下で)保存した。
【0120】
免疫組織化学的検査
【0121】
キシレン(2×3分)、キシレン:エタノール(1×3分)、100%エタノール(2×3分)、95%エタノール(1×3分)、70%エタノール(1×3分)、50%エタノール(1×3分)、そして最終的にH
2O(1×5分)の一連のインキュベーションで、8−μmの皮膚組織のパラフィン切片を、加工し、切断し、脱ワックスし、そして浸水した。その後、抗原賦活化を組織切片をマイクロ波(850W)で3分間事前に温めたTris−EDTA緩衝液(10mM Tris,1mM EDTA pH8)又は0.01Mクエン酸緩衝液(pH6)に浸すことで行った。スライドを360Wで10分間加温した。これに続き、1×PBSで洗浄する前に30分間室温(RT)に冷却してもよい。切片を0.1%Tritonを含むPBSで5分間インキュベートし、そして次にPBSで1洗浄当たり5分間、3回洗浄した。切片を即座にブロッキング工程にかけた。抗体でインキュベートする前に、室温で1時間、10%のヤギ血清、1%BSA、0.01%TritonをPBSで希釈したものを用いて切片インキュベートしたことで、一次抗体の非特異的な結合を防いだ。1時間のブロッキング後、ブロッキング溶液を取り除くためにスライドを吸い取り紙上で穏やかに軽くたたいた。一次抗体は0.5%BSAを含むPBSで希釈され、そして湿度室内で一晩4℃で120μLの一次抗体を用いて各切片をインキュベートした。陰性コントロールを0.5%BSA/PBSでインキュベートし、一次抗体を取り除いた。インキュベーション後、結合しなかった一次抗体を1洗浄あたり3分間の三回のPBSの洗浄で取り除いた。その後、各スライドを120μLのpoly−HRP−抗マウス/ウサギ/ラットIgGを用いて室温で1時間インキュベートした。
【0122】
PBSでの洗浄(3×5分)後、カバーガラスをMowie Oilを用いてのせ、そして室温で硬化するために置いた。結果をライカの共焦点顕微鏡で視覚化し、撮影した。
【0123】
共焦点顕微鏡観察
【0124】
全ての画像をライカのTCS−SP5共焦点顕微鏡で40倍又は20倍の倍率で撮影した。必要により各画像に対して目視でセットしたDAPI色素を用いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)色素に対する励起レーザーを、各試験のために標準化した。画像の加工をPHOTOSHOP7.0イメージングソフトウェアを用いて行った(Adobe System Inc,San Jose,CA)。
【0125】
実施例2
【0126】
PEPの3つの異なるバッチを20%溶液(PEPバイアルに5mLの生理食塩水)に溶解し、0.2ミクロンフィルターで濾過し、そしてタンパク質の濃度をBCAアッセイキットを用いて定量した(Pierce,Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)。これから、1.5μLの各試料を23.5μLの溶解緩衝液で溶解し、そして3分間85℃で加温した。20gのタンパク質を12.5%ポリアクリルアミドゲルにロードした(CRITERION,Bio−Rad Laboratories,Inc,Hercules,CA)。
【0127】
結果を
図12に示す。
【0128】
実施例3
【0129】
Milteni CD63磁性ビーズを陽性及び陰性エクソソーム集団に分離するために利用した。培養に基づいた評価のための一連の希釈の前に、これらの集団を沈殿し、そして定量化した。IncuSiteシステムにおいて、培養したHUVECを5%PEP(陽性コントロール)、無血清溶液(陰性コントロール)、及び記載されたCD63+/CD63−濃度に置いた。結果を
図13に示す。
【0130】
実施例4
【0131】
エクソソーム集団を16時間、30,000×gで超遠心分離、PEP誘導工程に対して50KDa質量分離フィルターを用いてタンジェンシャルフローフィルトレーションを用いて精製した。超遠心分離及びTFF由来の液状型の試料を1000倍に希釈し、そして分析のためにNanoSight内に設置した。凍結乾燥したPEPを100%溶液として滅菌水で溶解し、そしてサイズの分布及び定量化のためにNanoSightシステム(EVの性質決定のためのゴールドスタンダード)で評価する前に1000倍に希釈した。結果を
図14に示す。
【0132】
実施例5
【0133】
RFP及び遠赤外の範囲の蛍光脂質色素を20%PEP調製物に添加し、そして結合しなかった色素の洗浄のために10分間17,000gで遠心分離した。再懸濁した沈殿物を均質化のために超音波破砕し、そして細胞培養条件内への送達(
図15)、心筋梗塞に続く冠動脈内送達(
図16)及び体内分布分析のためのIV送達(
図17)をする前に0.2μmフィルターを介して凝集物を取り除くために濾過した。
【0134】
本明細書で引用された全ての特許、特許出願、及び出版物、及び電磁的に利用可能な材料(例えばGenbank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列登録、及び例えばSwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列登録、及びGenBank及びRefSeqにおける注釈されたコード領域の翻訳を含む)の完全な開示はそれらの全体において参照により組み入れられる。本出願の開示と参照により本明細書に組み込まれた任意の書類の開示との間で任意の一貫していない事象においては、本出願の開示を適用するものとする。詳細な記載及び実施例の差し控えは理解の明瞭さのみが与えられる。必要のない制限にはそこから理解されるものはない。本発明は示された及び記載された正確な詳細に限定されず、当業者に明らかな差異について請求項により定義された発明内に含まれるだろう。
【0135】
特に断りのない限り、明細書及び請求の範囲に用いた成分の量、分子量等を表現する数値は全て「約」という文言によりあらゆる状況で修飾されていると解釈されるべきである。従って、特に断りのない限り、反対に、明細書及び請求の範囲に説明される数値的なパラメータは本発明により得られると期待される所望の性質に依存して変動しうる概算である。最低でも、そして請求の範囲の均等論を制限するための試みとしてではなく、それぞれの数値的なパラメータを報告された有効数字の数の観点において及び一般的な丸め技術によって少なくとも解釈すべきである。
【0136】
本発明の幅広い範囲に説明する数値的な範囲及びパラメータが概算であるにも関わらず、特定の例を説明する数値的な値を、可能な限り正確に報告している。しかしながら、全ての数値的な値はそれらの対応の試験計測で見られる標準偏差に必然的に由来する範囲を本質的に含む。
【0137】
特に断りのない限り、全ての表題は読者の利便性のためであり、そして表題に続く本文の意味の制限のために用いられるべきでない。
【手続補正書】
【提出日】2020年8月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
【
図6】創傷閉鎖のPEPの効果(A
)創傷の大きさの定量化はバイオゲルで処置した創傷がコラーゲンでの治療及び未治療の傷口と比較してより早く閉鎖することを実証した。これらのデータは平均±s.t.dとして示された。スチューデントのt検定を用いて統計的有意性処理をした(***=p<0.0001及び**p<0.01)。(B)上図:in vivoでの28日間の虚血性ウサギ耳の試験の0日目及び28日目の創傷閉鎖の代表的な画像。
下図:各治療群についてin vivoでの28日間の創傷床閉鎖の追跡。
【国際調査報告】