(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
ポリヌクレオチド分子、毒素、ポリヌクレオチド分子または他の薬学的に活性なペイロードを含有するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン−ナノ粒子または直接コンジュゲート複合体は、FN3ドメインライブラリーを目的のタンパク質またはヌクレオチドでパニングし、FN3ドメインを回収し、FN3ドメインを毒素またはASOもしくはsiRNA分子などの活性ポリヌクレオチドを含有するナノ粒子にコンジュゲートすることにより得られる。フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン−核酸コンジュゲートは、FN3ドメインライブラリーを目的のタンパク質またはヌクレオチドでパニングし、FN3ドメインを回収し、FN3ドメインを核酸(例えば、ASOまたはsiRNA)にコンジュゲートすることにより得られる。ナノ粒子複合体、核酸コンジュゲートまたはFN3ドメイン毒素コンジュゲートは、疾患および状態、例えば、腫瘍学または自己免疫徴候の処置において使用しうる。
前記ポリヌクレオチドが、siRNA、mRNA、miRNA、miRNAアンタゴニスト、dsRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、DNA、U1アダプター、および免疫賦活性ポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
前記FN3ドメインが、PSMA、EGFR、EpCAM、CD22、BCMA、CD33、CD71および/またはCD8に結合する、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
前記FN3ドメインが、PSMAまたはEGFR、EpCAM、CD22、BCMA、CD33、CD71および/もしくはCD8に結合し、ナノ粒子が、AR、EGFRおよび/またはKRasを標的としたsiRNA分子であるポリヌクレオチドを含む、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
前記ナノ粒子が、CDPもしくは改変CDP、脂質ナノ粒子またはポリマーナノ粒子であり、前記FN3ドメインがPSMAに結合するFN3ドメインであり、前記siRNA分子がARを標的にする、請求項1に記載の組成物。
前記ナノ粒子が、CDPもしくは改変CDP、脂質ナノ粒子またはポリマーナノ粒子であり、前記FN3ドメインがEGFRに結合するFN3ドメインであり、前記siRNA分子がEGFRまたはKRasを標的にする、請求項1に記載の組成物。
前記ポリヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、前記FN3が、PSMA、EGFR、EpCAM、CD22、BCMA、CD33、CD71および/またはCD8に結合するFN3ドメインである、請求項10に記載の組成物。
FN3ドメイン−ナノ粒子複合体を調製する方法であって、FN3ドメインをナノ粒子に、前記FN3ドメインを前記ナノ粒子にコンジュゲートして前記ナノ粒子複合体を形成するのに十分な条件下で、接触させることを含む、前記方法。
前記ポリヌクレオチドが、siRNA、mRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、DNA、U1アダプター、および免疫賦活性オリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
前記FN3ドメインが、PSMA、EGFR、EpCAM、CD22、BCMA、CD33、CD71および/またはCD8に結合する、請求項27〜29のいずれか一項に記載の組成物。
EpCAMに結合する前記FN3ドメインが、Tyr25、Arg26、Pro27、Leu81、Pro82、およびTyr85からなる群から選択される1つまたは複数の位置に置換を含む、請求項31に記載の組成物。
前記FN3ドメインが、配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むFN3ドメインである、請求項27に記載の組成物。
配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46の配列を含むペプチドであって、少なくとも1つの残基が、6、8、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、および93の位置の残基に対応する位置でシステインで置換されている、ペプチド。
6、8、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、および93の位置の残基に対応する位置でシステインを含む、請求項37に記載のペプチド。
前記ポリヌクレオチドが、siRNA、mRNA、miRNA、miRNAアンタゴニスト、dsRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、DNA、U1アダプター、および免疫賦活性ポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項49または50に記載の方法。
患者においてがんまたは自己免疫疾患を処置する方法であって、先行する請求項のいずれかの組成物またはペプチドを前記患者に投与して前記がんまたは前記自己免疫疾患を処置することを含む、前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態は、例えば、核酸治療ペイロードまたは他のペイロードの送達のために使用できる細胞会合標的リガンドへのFN3ドメイン分子を含む組成物およびそのようなFN3ドメイン分子を作製する方法を提供する。一部の実施形態では、活性部分は核酸分子を含有するナノ粒子であり、FN3ドメイン分子は、共有結合を通じてなどの、直接的または間接的にナノ粒子に結合されている。別の実施形態では、活性部分は、FN3ドメイン分子へ共有結合するよう操作された化学修飾核酸分子である。
【0014】
FN3ドメイン分子はヒトテネイシン由来(参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許第8,278,419号明細書に記載されているtencon FN3ドメイン由来、参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許第8,569,227号明細書に記載される安定化したtenconFN3ドメイン由来、または参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許第9,200,273号明細書に記載される別の結合表面を有するtencon分子由来)、または他のフィブロネクチンドメイン由来(参照によりその全体を本明細書に組み込む米国特許第8,293,482号明細書に記載されるコンセンサスFN3ドメイン)のFN3ドメインのコンセンサス配列に基づいていてよい。
【0015】
一部の実施形態では、ナノ粒子はシクロデキストリンまたは改変シクロデキストリンを含有するポリマーを含むシクロデキストリンナノ粒子を含む。他の実施形態では、ナノ粒子は、2つまたはそれよりも多いポリマーで構成されたポリマーマトリックスで構成されている。さらに別の実施形態では、コポリマーはPLGAまたはPLAおよびPEGのコポリマーである。さらに別の実施形態では、ポリマーマトリックスは、PLGAまたはPLAならびにPLGAまたはPLAおよびPEGのコポリマーを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、脂質ナノ粒子またはポリマーナノ粒子である。一部の実施形態では、ナノ粒子はリポソームを含み、そこではリポソーム二分子層膜は、親水性ポリマーで誘導体化された小嚢形成脂質を含有する。別の実施形態では、ナノ粒子は、親水性ポリマーで被覆された超常磁性酸化鉄コアを含む。別の実施形態では、ナノ粒子はデンドリマーを含む。さらなる実施形態では、ナノ粒子は少なくとも1つの脂質および乳化剤を含む固体脂質ナノ粒子である。
【0016】
別の実施形態では、FN3ドメイン分子は、システイン操作フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(米国特許出願第14/512,801号明細書に記載されており、前記特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込む)。
【0017】
本発明の別の態様は、細胞標的に対して結合特異性を有するFN3ドメイン分子を治療活性のあるsiRNA分子を含有するナノ粒子と連結させることにより細胞リガンドを標的にし、組成物を対象または患者に投与する方法である。
【0018】
一部の実施形態では、ナノ粒子はCDPもしくは改変CDPまたは固体脂質ナノ粒子であり、FN3ドメイン分子は前立腺特異的膜抗原(PSMA)または上皮成長因子受容体(EGFR)を標的にし、siRNAは、アンドロゲン受容体(AR)、EGFR、KRasまたはPLK−1に対して活性である。1つの特定の実施形態では、ナノ粒子はCDPもしくは改変CDPまたは固体脂質ナノ粒子であり、FN3ドメイン分子はPSMAを標的にし、siRNAはARに対して活性である。別の特定の実施形態では、ナノ粒子はCDPもしくは改変CDPまたは固体脂質ナノ粒子であり、FN3ドメイン分子はEGFRまたはPSMAを標的にし、siRNAはEGFR、KRasまたはARに対して活性である。さらに別の特定の実施形態では、コンジュゲートは化学修飾siRNAであり、FN3ドメインはEGFRまたはPSMAを標的にし、siRNAはPLK−1に対して活性である。一部の実施形態では、FN3ドメインは、PSMA、EGFR、EpCAM、CD22、BCMA、CD33、CD71および/またはCD8に結合するドメインである。一部の実施形態では、FN3ドメインは、異なる分子に対して特異的である複数のドメインを含有する。
【0019】
FN3ドメイン分子は、システイン残基を含有しないのでコンジュゲーションには好適である。したがって、独特のシステインを部位特異的変異誘発によりFN3ドメイン分子に付加し、簡単で確立した化学を使用する部位特異的コンジュゲーションのために使用することができる。ナノ粒子ターゲティングまたは核酸コンジュゲートでは、部位特異的カップリングは、適切な標的結合に極めて重要であるターゲティングリガンドの配向を保証するので、キーとなる重要な利点である。標的化ナノ粒子では、ここに記載される3種の技術(siRNA、ナノ粒子、FN3ドメイン分子)の混合は、遺伝子発現抑制または遺伝子送達のための高度に特異的で強力な治療薬を創造すると予想される。標的核酸コンジュゲートでは、最適化RNA化学とFN3ドメイン分子の組合せは、遺伝子発現抑制のための高度に特異的で強力な治療薬を創造すると予想される。
【0020】
詳細な説明
本明細書で使用される用語「フィブロネクチンIII型(FN3)様ドメイン」(FN3ドメイン)とは、フィブロネクチン、テネイシン、細胞内細胞骨格タンパク質、サイトカイン受容体および原核生物酵素を含むタンパク質中に頻繁に存在するドメインのことである(Bork and Doolittle, Proc Nat Acad Sci USA 89:8990-8994, 1992; Meinke et al., J Bacteriol 175:1910-1918, 1993; Watanabe et al., J Biol Chem 265:15659-15665, 1990)。例示的なFN3ドメインは、ヒトテネイシンCに存在する15の異なるFN3ドメイン、ヒトフィブロネクチン(FN)に存在する15の異なるFN3ドメイン、および、例えば、米国特許出願公開第2010/0216708号明細書に記載されている非天然合成FN3ドメインである。個々のFN3ドメインは、ドメイン番号およびタンパク質名により言及される。例えば、テネイシンの3番目のFN3ドメイン(TN3)、またはフィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン(FN10)などである。
【0021】
本明細書で使用される用語「置換する(substituting)」もしくは「置換された(substituted)」または「突然変異する(mutating)」もしくは「突然変異した(mutated)」とは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列において1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドを変更する、欠失するまたは挿入してその配列の変異体を作製することである。
【0022】
本明細書で使用される用語「無作為化する(randomizing)」もしくは「無作為化された(randomized)」または「多様化された(diversified)」もしくは「多様化する(diversifying)」とは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列において少なくとも1つの置換、挿入または欠失を作ることである。
【0023】
本明細書で使用される「変異体」とは、参照ポリペプチドまたは参照ポリヌクレオチドとは1つまたは複数の改変、例えば、置換、挿入または欠失で異なるポリペプチドまたはポリヌクレオチドのことである。
【0024】
本明細書で使用される用語「特異的に結合する」または「特異的結合」とは、所定の抗原に解離定数(K
D)1×10
−6Mもしくはそれ未満、例えば、1×10
−7Mもしくはそれ未満、1×10
−8Mもしくはそれ未満、1×10
−9Mもしくはそれ未満、1×10
−10Mもしくはそれ未満、1×10
−11Mもしくはそれ未満、1×10
−12Mもしくはそれ未満、または1×10
−13Mもしくはそれ未満で結合する本発明のFN3ドメインの能力のことである。典型的には、本発明のFN3ドメインは、例えば、Proteon Instrument(BioRad)を使用する表面プラズモン共鳴により測定した場合、所定の抗原に非特異的抗原(例えば、BSAまたはカゼイン)に対するそのK
Dの少なくとも10分の1であるK
Dで結合する。
【0025】
用語「ライブラリー」とは、変異体のコレクションのことである。ライブラリーは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド変異体で構成されていてもよい。
【0026】
本明細書で使用される用語「安定性」とは、分子がその正常な機能活性、例えば、所定の抗原への結合、の少なくとも1つを保持するように、生理的条件下で折り畳まれた状態を維持する能力のことである。
【0027】
本明細書で使用される「Tencon」とは、米国特許第8,278,419号明細書に記載される配列を有する合成フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのことである。
【0028】
用語「ベクター」は、生物学的システム内で複製可能なまたはそのようなシステム間で移動させることができるポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは典型的には、複製起点、ポリアデニル化シグナルまたは生物学的システムにおいてこれらのポリヌクレオチドの複製もしくは維持を促進するように機能する選択マーカーなどのエレメントを含有する。そのような生物学的システムの例は、細胞、ウイルス、動物、植物、およびベクターを複製することができる生物学的成分を利用する再構成された生物学的システムを含みうる。ベクターを含むポリヌクレオチドは、DNAもしくはRNA分子またはこれらのハイブリッドでもよい。
【0029】
用語「発現ベクター」は、生物学的システムでまたは再構成された生物学的システムで利用されて、発現ベクターに存在するポリヌクレオチド配列にコードされているポリペプチドの翻訳を指示することができるベクターを意味する。
【0030】
用語「ポリヌクレオチド」は、糖−リン酸骨格または他の等価な共有化学により共有結合されているヌクレオチドの鎖を含む分子を意味する。二本および一本鎖DNAおよびRNAはポリヌクレオチドの典型的な例である。
【0031】
用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合により連結されてポリペプチドを形成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。約50アミノ酸未満の小ポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合がある。
【0032】
本明細書で使用される「価」とは、分子中の抗原に対して特異的な結合部位の特定の数の存在を指す。したがって、用語「一価」、「二価」「四価」、および「六価」とは、分子中の抗原に対して特異的な、それぞれ1つ、2つ、4つおよび6つの結合部位の存在を指す。
【0033】
本明細書で使用される「混合物」とは、互いに共有結合されていない2つまたはそれよりも多いFN3ドメインの試料または調製物のことである。混合物は、2つまたはそれよりも多い同一のFN3ドメインまたは異なったFN3ドメインからなってもよい。
【0034】
本発明の目的では、ナノ粒子はポリマーマトリックスを含む場合がある。一実施形態では、ポリマーマトリックスは2つまたはそれよりも多いポリマーを含む。別の実施形態では、ポリマーマトリックスは、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酸、フマル酸ポリプロピル(polypropylfumerates)、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、もしくはポリアミン、またはそれらの組合せを含む。さらに別の実施形態では、ポリマーマトリックスは、1つまたは複数のポリエステル、ポリ酸無水物、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリシアノアクリレートを含む。別の実施形態では、少なくとも1つのポリマーはポリアルキレングリコールである。さらに別の実施形態では、少なくとも1つのポリマーはポリエステルである。別の実施形態では、ポリエステルはPLGA、PLA、PGAおよびポリカプロラクトンからなる群から選択される。別の実施形態では、ポリマーマトリックスは、CDPまたは改変CDP PEGポリマーからなっていてもよい。別の実施形態では、ナノ粒子は脂質分子を含んでいてもよい。別の実施形態では、ナノ粒子は固体脂質ナノ粒子を含んでいてもよい。
【0035】
組成物
本発明は、細胞標的に対する結合特異性を有し、活性siRNA分子を含有するもしくは化学修飾されたsiRNA分子に直接コンジュゲートされたCDPもしくは改変CDPまたは固体脂質ナノ粒子に結合している単一特異性および多特異性(例えば、二重特異性)FN3ドメインを提供する。
【0036】
Tencon配列に基づくライブラリーからのFN3ドメインの単離
Tenconは、ヒトテネイシンC由来の15のFN3ドメインのコンセンサス配列から設計された天然には存在しないフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobs et al., Protein Engineering, Design, and Selection, 25:107-117, 2012; U.S. Pat. Publ. No. 2010/0216708)。Tenconの結晶構造は、FN3ドメインに特徴的である7つのベータ鎖を接続する6つの表面露出ループを示しており、ベータ鎖はA、B、C、D、E、FおよびGと呼ばれ、ループはAB、BC、CD、DE、EFおよびFGループと呼ばれる(Bork and Doolittle, Proc Natl Acad Sci USA 89:8990-8992, 1992; 米国特許第6,673,901号明細書)。これらのループ、またはそれぞれのループ内の選択された残基は、siRNAを含有するCDPもしくは改変CDP PEGまたは固体脂質ナノ粒子などの、活性剤のターゲティングに有用である細胞タンパク質およびヌクレオチドに結合する新規の分子を選択するのに使用可能であるフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリーを構築するために、無作為化することができる。
【0037】
Tencon配列に基づくライブラリー設計は、したがって、下に記載されるライブラリーTCL1またはTCL2などの、無作為化FGループ、または無作為化BCおよびFGループを有しうる。TenconBCループは7アミノ酸長であり、したがって、1、2、3、4、5、6または7アミノ酸を、BCループで多様化されたライブラリーにおいて無作為化し、Tencon配列に基づいて設計しうる。TenconFGループは7アミノ酸長であり、したがって、1、2、3、4、5、6または7アミノ酸を、FGループで多様化されたライブラリーにおいて無作為化し、Tencon配列に基づいて設計しうる。Tenconライブラリーにおけるループでのさらなる多様性は、ループでの残基の挿入および/または欠失により達成しうる。例えば、FGおよび/またはBCループは1〜22アミノ酸延長する、または1〜3アミノ酸減らしうる。TenconにおけるFGループは7アミノ酸長であり、抗体重鎖における対応するループは4〜28残基の範囲に及ぶ。最大多様性を与えるためには、FGループを配列においてならびに長さにおいて多様化して、4〜28残基の抗体CDR3長範囲に対応させうる。例えば、FGループは、追加の1、2、3、4または5アミノ酸ループを延長させることにより長さにおいてさらに多様化することができる。
【0038】
Tencon配列に基づくライブラリー設計は、FN3ドメインの側で形成され、2つまたはそれよりも多いベータ鎖および少なくとも1つのループを含む無作為化された代わりの表面も有しうる。1つのそのような別の表面は、CおよびFベータ鎖中のアミノ酸ならびにCDおよびFGループにより形成される(C−CD−F−FG表面)。
【0039】
Tencon配列に基づくライブラリー設計は、残基位置11、14、17、37、46、73または86位に置換を有し、その変異体が改善された熱安定性を示すTencon変異体などのTencon変異体に基づいて設計されるライブラリーも含む。例示的なTencon変異体は、米国特許出願公開第2011/0274623号明細書に記載されており、ベースTencon配列と比べた場合、置換E11R、L17A、N46V、E86Iを有するTencon27を含む。
【0041】
Tenconおよび他のFN3配列ベースのライブラリーは、無作為なまたは限定されたセットのアミノ酸を使用して選択された残基位置で無作為化することができる。例えば、無作為な置換を有するライブラリー中の変異体は、20個の天然に存在するアミノ酸すべてをコードする、NNKコドンを使用して作製することが可能である。他の多様化スキームでは、アミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、Ser、Arg、Asp、Glu、Gly、およびCysをコードするDVKコドンを使用可能である。あるいは、20個のアミノ酸残基すべてを生じ、同時に終止コドンの頻度を減らすNNSコドンを使用可能である。多様化することになる位置に偏ったアミノ酸分布のあるFN3ドメインのライブラリーを、例えば、Slonomics(登録商標)technology(http:_//www_sloning_com)を使用して合成することができる。この技術は、何千もの遺伝子合成過程に十分な普遍的構成単位として作用する予め作られた二本鎖トリプレットのライブラリーを使用する。トリプレットライブラリーは、任意の所望のDNA分子を作るのに必要な考えられるあらゆる配列組合せを表す。コドン命名は周知のIUBコードに従っている。
【0042】
ターゲティングのために細胞タンパク質またはヌクレオチドに特異的に結合するFN3ドメインは、スキャフォールドタンパク質をコードするDNA断片をRepAをコードするDNA断片にライゲートして、それぞれのタンパク質がそれをコードするDNAと安定的に会合しているインビトロ翻訳後に形成されるタンパク質−DNA複合体のプールを作製するシスディスプレイを使用してTenconライブラリーなどのFN3ライブラリーを作製し(米国特許第7,842,476号明細書; Odegrip et al., Proc Natl Acad Sci U S A 101, 2806-2810, 2004)、当技術分野で公知であり実施例に記載される任意の方法により目的のタンパク質またはヌクレオチドへの特異的結合についてライブラリーをアッセイすることにより、単離することができる。使用可能な例示的な周知の方法は、ELISA、サンドイッチ免疫アッセイ、ならびに競合および非競合アッセイである(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York参照)。目的のタンパク質またはヌクレオチドに特異的に結合する同定されたFN3ドメインは、その活性についてさらに特徴付けられる。
【0043】
目的のタンパク質またはヌクレオチドに特異的に結合するFN3ドメインは、任意のFN3ドメインを鋳型として使用してライブラリーを作製し、内部で提供される方法を使用して目的のタンパク質またはヌクレオチドに特異的に結合する分子を求めてライブラリーをスクリーニングして、作製することができる。使用可能な例示的なFN3ドメインは、テネイシンCの3番目のFN3ドメイン、Fibcon、およびフィブロネクチンの10番目のFN3ドメインである。標準クローニングおよび発現技法を使用して、ライブラリーをベクター中にクローニングするまたはライブラリーの二本鎖cDNAカセットを合成して、ライブラリーをインビトロで発現する、または翻訳する。例えば、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun, Proc Natl Acad Sci USA, 94, 4937-4942, 1997)、mRNAディスプレイ(Roberts and Szostak, Proc Natl Acad Sci USA, 94, 12297-12302, 1997)、または他の無細胞系(米国特許第5,643,768号明細書)が使用可能である。FN3ドメイン変異体のライブラリーは、例えば、任意の適切なバクテリオファージの表面に表示される融合タンパク質として発現させてもよい。バクテリオファージの表面に融合ポリペプチドを表示するための方法は周知である(米国特許出願公開第2011/0118144号明細書;国際公開第2009/085462号パンフレット;米国特許第6,969,108号明細書;米国特許第6,172,197号明細書;米国特許第5,223,409号明細書;米国特許第6,582,915号明細書;米国特許第6,472,147号明細書)。
【0044】
目的のタンパク質またはヌクレオチドに特異的に結合するFN3ドメインは、熱フォールディングとアンフォールディングの熱安定性および可逆性を改善するなどのその特性を改善するように改変することができる。高度に類似する熱安定性の配列との比較に基づく合理的な設計、ジスルフィド架橋を安定化させる設計、アルファらせん傾向を増加させる突然変異、塩架橋の操作、タンパク質の表面電荷の変更、定向進化およびコンセンサス配列の組成物を含む、タンパク質および酵素のはっきりした熱安定性を増加するいくつかの方法が適用されてきた(Lehmann and Wyss, Curr Opin Biotechnol, 12, 371-375, 2001)。高い熱安定性は、発現されるタンパク質の収量を増やし、可溶性または活性を改善し、免疫原性を減らし、製造中のコールドチェーンの必要性を最小限に抑える可能性がある。Tenconの熱安定性を改善するよう置換することができる残基は、残基位置11、14、17、37、46、73または86位であり、米国特許出願公開第2011/0274623号明細書に記載されている。これらの残基に対応する置換は、FN3ドメインまたは二重特異性FN3ドメイン含有分子に組み込むことができる。
【0045】
タンパク質安定性およびタンパク質不安定性の測定は、タンパク質完全性の同じまたは異なる面として見ることができる。タンパク質は、熱により、紫外線もしくは電離放射線により引き起こされる変性、液体溶液中の場合は環境浸透圧およびpHの変化、小孔サイズ濾過により加わる機械的剪断力、紫外線照射、ガンマ線照射によるなどの電離放射線、化学的もしくは熱脱水、またはタンパク質構造崩壊を引き起こしうる他の任意の作用もしくは力に対して感受性または「不安定性(labile)」である。分子の安定性は、標準法を使用して決定することができる。例えば、分子の安定性は、標準法を使用して、熱融解(「TM」)温度、分子の半分がアンフォールドされる摂氏(℃)温度を測定することにより決定することができる。典型的には、TMが高くなるにしたがって、分子はそれだけ安定する。熱に加えて、化学的環境も、特定の三次元構造を維持するタンパク質の能力を変化させる。
【0046】
一実施形態では、目的のタンパク質またはヌクレオチドに結合するFN3ドメインは、TMの増加により測定される操作に先立つ同じドメインと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%またはそれよりも多い安定性の増加を示す。
【0047】
化学的変性も同様に種々の方法により測定することができる。化学変性剤は、塩酸グアニジウム、チオシアン酸グアニジウム、尿素、アセトン、有機溶媒(DMF、ベンゼン、アセトニトリル)、塩(硫酸アンモニウム、臭化リチウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム);還元剤(例えば、ジチオスレイトール、ベータメルカプトエタノール、ジニトロチオベンゼン、および水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物)、非イオン性およびイオン性界面活性剤、酸(例えば、塩酸(HCl)、酢酸(CH
3COOH)、ハロゲン化酢酸)、疎水性分子(例えば、リン脂質(phosopholipids))、ならびに標的化変性剤を含む。変性の程度の定量化は、標的分子に結合する能力などの機能的特性の喪失に頼る、または凝集する傾向、もとは溶媒が到達しにくい残基の露出、またはジスルフィド結合の崩壊もしくは形成などの物理化学的特性によることが可能である。
【0048】
一実施形態では、目的のタンパク質またはヌクレオチドに結合するFN3ドメインは、化学変性剤として塩酸グアニジウムを使用することにより測定される操作に先立つ同じスキャフォールドと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%またはそれよりも多い安定性の増加を示す。増加した安定性は、周知の方法を使用して漸増する濃度の塩酸グアニジウムでの処理による減少するトリプトファン蛍光の関数として測定できる。
【0049】
FN3ドメインは、例えば、標的分子結合の結合価、したがって、結合活性を高めるためのまたは2つもしくはそれよりも多い異なる標的分子に同時に結合する二重特異性もしくは多特異性スキャフォールドを作製するための手段として、モノマー、ダイマー、またはマルチマーとして作製してもよい。ダイマーおよびマルチマーは、例えば、アミノ酸リンカー、例えば、ポリグリシン、グリシンとセリン、またはアラニンとプロリンを含有するリンカーを包含することにより、単一特異的、二重特異的または多特異的タンパク質スキャフォールドを連結することにより作製しうる。例示的なリンカーは、(GS)
2、(GGGGS)
5、(AP)
2、(AP)
5、(AP)
10、(AP)
20、A(EAAAK)
5AAA、リンカーを含む。ダイマーおよびマルチマーは、NからC方向に互いに連結しうる。ポリペプチドを連結して新規の連結融合ポリペプチドにするための天然に存在するならびに人工的なペプチドリンカーの使用は文献で周知である(Hallewell et al., J Biol Chem 264, 5260-5268, 1989; Alfthan et al., Protein Eng. 8, 725-731, 1995; Robinson & Sauer, Biochemistry 35, 109-116, 1996; 米国特許第5,856,456号明細書)。さらに、FN3ドメインは、当技術分野で公知であるのと同じまたは類似する材料および方法を使用してsiRNAを含有するナノ粒子に連結してもよい。
【0050】
FN3ドメイン含有分子の変異体は本発明の範囲内である。例えば、得られた変異体が、親分子と比べた場合、目的のタンパク質またはヌクレオチドに対する類似する選択性および効力を保持している限り、FN3ドメイン含有分子において置換を行うことができる。例示的な改変は、例えば、親分子の特徴と類似する特徴を有する変異体をもたらす保存的置換である。保存的置換は、その側鎖において関連しているアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。遺伝的にコードされたアミノ酸は4つのファミリー:(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);および(4)非電荷極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)に分けることができる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族アミノ酸として一緒に分類されることもある。あるいは、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン);(3)脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、セリンとスレオニンは任意選択により、脂肪族ヒドロキシルとして別々にグループ分けされる;(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5)アミド(アスパラギン、グルタミン);および(6)硫黄含有(システインおよびメチオニン)としてグループ分けすることができる(Stryer (ed.), Biochemistry, 2nd ed, WH Freeman and Co., 1981)。二重特異性分子の特性を改善するため異なるクラスのアミノ酸間でのアミノ酸残基の置換を含む非保存的置換をFN3ドメイン含有分子に行うことが可能である。ポリペプチドまたはその断片のアミノ酸配列の変化が機能的な相同体を生じるかどうかは、本明細書に記載されるアッセイを使用して、非改変ポリペプチドまたは断片に類似する形で応答を生じる改変ポリペプチドまたは断片の能力を評価することにより、容易に決定することができる。1つよりも多い置換が起きたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、同じ様式で容易に試験することができる。
【0051】
半減期延長部分
FN3ドメイン含有分子は、例えば、共有結合相互作用により他のサブユニットを組み込んでもよい。本発明の一態様では、FN3ドメイン含有分子は半減期延長部分をさらに含む。例示的な半減期延長部分は、アルブミン、アルブミン結合タンパク質および/またはドメイン、トランスフェリンまたはトランスフェリン結合ドメインおよび断片およびその類似物、ならびにFc領域である。
【0052】
抗体定常領域のすべてまたは一部を本発明の分子に結合させて、抗体様の特性、特に、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方調節(例えば、B細胞受容体、BCR)などのFcエフェクター機能などの、Fc領域に関連する特性を分け与えてもよく、これらの活性の原因であるFcにおいて残基を改変することによりさらに改変することができる(概説については、Strohl, Curr Opin Biotechnol. 20, 685-691, 2009参照)。
【0053】
所望の特性のために、PEG5000またはPEG20,000などのポリエチレングリコール(PEG)分子、異なる鎖長の脂肪酸および脂肪酸エステル、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキデート(arachidate)、ベヘン酸、オレイン酸、アラキドン酸、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸、および同類の物、ポリリジン、オクタン、炭水化物(デキストラン、セルロース、オリゴ糖または多糖)などの追加の部分を本発明の二重特異性分子に組み込んでもよい。これらの部分は、タンパク質スキャフォールドコード配列との直接融合物でもよく、標準クローニングおよび発現技法により作製してもよい。あるいは、周知の化学カップリング方法を使用して、部分を本発明の組換え的に産生された分子に結合させてもよい。
【0054】
PEG部分は、例えば、システイン残基を分子のC終端に組み込み、周知の方法を使用してペジル(pegyl)基をシステインに結合させることによりFN3ドメイン分子に付加してもよい。
【0055】
ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞
本発明は、FN3ドメインをコードする核酸を、インビトロ転写/翻訳のために使用される線形DNA配列、原核生物、真核生物もしくは繊維状ファージ発現、組成物の分泌および/もしくはディスプレイ、またはその定方向突然変異原と適合性のベクターを含め、単離されたポリヌクレオチドとしてまたは発現ベクターの一部としてまたは線形DNA配列の一部として提供する。
【0056】
一部の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書で提供されるFN3ドメインをコードする。一部の実施形態では、FN3はEpCAMに結合するFN3ドメインである。一部の実施形態では、FN3ドメインは、本明細書に記載される配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46またはその変異体のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、14〜38の配列、またはその変異体を含む。
【0057】
ポリヌクレオチドは、自動ポリヌクレオチド合成装置上で固相ポリヌクレオチド合成などの化学合成により作製し、完全な一本鎖または二本鎖分子に組み立てうる。あるいは、ポリヌクレオチドは、PCRとそれに続くルーチン的なクローニングなどの他の技法により作製してもよい。所与の分かっている配列のポリヌクレオチドを作製するまたは得るための技法は、当技術分野では周知である。
【0058】
ポリヌクレオチドは、プロモーターまたはエンハンサー配列、イントロン、ポリアデニル化シグナル、RepA結合を促進するシス配列、および同類の物などの少なくとも1つの非コード配列を含みうる。ポリヌクレオチド配列は、例えば、タンパク質の精製もしくは検出を促進するためのヒスチジンタグもしくはHAタグなどのマーカーもしくはタグ配列、シグナル配列、RepAなどの融合タンパク質パートナー、FcまたはpIXもしくはpIIIなどのバクテリオファージコートタンパク質をコードする追加のアミノ酸をコードする追加の配列も含みうる。
【0059】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むベクターである。そのようなベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現のためのベクター、トランスポゾンベースのベクターまたは任意の手段による所与の生物もしくは遺伝的背景中へのポリヌクレオチドの導入に適した他の任意のベクターでもよい。そのようなベクターは、そのようなベクターによりコードされるポリペプチドの発現を制御する、調節する、引き起こすまたは可能にすることができる核酸配列エレメントを含む発現ベクターでもよい。そのようなエレメントは、転写エンハンサー結合部位、RNAポリメラーゼ開始部位、リボソーム結合部位、および所与の発現系においてコードされたポリペプチドの発現を促進する他の部位を含みうる。そのような発現系は、細胞ベースのまたは当技術分野で周知の無細胞系でもよい。
【0060】
本発明の別の実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。本発明のFN3ドメイン含有分子は、当技術分野では周知であるように、任意選択で、細胞株、混合細胞株、不死化細胞または不死化細胞のクローン集団により産生することができる。例えば、Ausubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, NY (1987-2001); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2
nd Edition, Cold Spring Harbor, NY (1989); Harlow and Lane, Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (1989); Colligan, et al., eds., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., NY (1994-2001); Colligan et al., Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, NY, NY, (1997-2001)を参照されたい。
【0061】
発現のために選択される宿主細胞は、哺乳動物起源でもよく、またはCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、SP2/0、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫もしくは植物細胞、またはその任意の派生的、不死化されたもしくは形質転換された細胞から選択してもよい。あるいは、宿主細胞は、ポリペプチドをグリコシル化できない種または生物、例えば、BL21、BL21(DE3)、BL21−GOLD(DE3)、XL1−Blue、JM109、HMS174、HMS174(DE3)、および天然のまたは操作された大腸菌(E. coli)種、クリブシエラ(Klebsiella)種、もしくはシュードモナス(Pseudomonas)種系統のいずれかなどの原核細胞または生物から選択してもよい。
【0062】
本発明の別の実施形態は、FN3ドメイン含有分子が発現されるような条件下で単離された宿主細胞を培養すること、およびドメインまたは分子を精製することを含む、FN3ドメイン含有分子を産生する方法である。
【0063】
FN3ドメイン含有分子は、周知の方法により、例えば、プロテインA精製、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈澱、酸抽出、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、組換え細胞培養物から精製することができる。
【0064】
投与/医薬組成物
治療用途では、FN3ドメイン含有分子は、薬学的に許容される担体中に活性成分としてドメインまたは分子の有効量を含有する医薬組成物として調製しうる。用語「担体」とは、活性化合物と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または溶媒のことである。そのような溶媒は、水ならびにピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油および同類の物などの石油、動物、植物または合成起源の油を含む油などの液体が可能である。例えば、0.4%の生理食塩水および0.3%のグリシンを使用できる。これらの溶液は無菌であり、一般的に微粒子状物質がない。これらの溶液は、従来の周知の殺菌技法(例えば、濾過)により無菌化してもよい。組成物は、pH調整および緩衝剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤ならびに着色料、等などの生理的条件に近似するのに必要な薬学的に許容される補助物質を含有してもよい。そのような医薬製剤中の本発明の分子の濃度は、幅広く、すなわち、約0.5%重量%未満、通常は、約1%重量%または少なくとも約1重量%から15または20重量%にまでも異なることがあり、選択された特定の投与様式に従って、主に、必要とされる用量、液量、粘度、等に基づいて選択される。他のヒトタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、を含む適切な溶媒および製剤は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21
st Edition, Troy, D.B. ed., Lipincott Williams and Wilkins, Philadelphia, PA 2006, Part 5, Pharmaceutical Manufacturing pp 691-1092(特にpp. 958-989を参照されたい)に記載されている。
【0065】
FN3ドメイン含有分子の治療用途のための投与様式は、非経口投与などの、薬剤を宿主に送達するいかなる適切な経路、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内もしくは皮下、肺;経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸);製剤を錠剤、カプセル、溶液、粉末、ゲル、粒子で使用する;ならびに注射器、体内埋め込み装置、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプに含有される;または当技術分野で周知である、当業者が認識している他の手段でもよい。部位特異的投与は、例えば、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、側脳室内、結腸内、子宮頚部内、胃内、肝内、心臓内、骨内(intraosteal)、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、関節滑液嚢内、胸腔内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、膣、直腸、頬側、舌下、鼻腔内、または経皮送達により達成されうる。
【0066】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mlの無菌緩衝水、および約1ng〜約100mg、例えば、約50ng〜約30mgまたはさらに好ましくは、約5mg〜約25mgの本発明のFN3ドメインを含有するように調製しうる。同様に、静脈内注入用の本発明の医薬組成物は、約250mlの無菌リンゲル液、および約1mg〜約30mg、例えば、約5mg〜約25mgのFN3ドメイン含有分子を含有するように調合しうる。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は周知であり、さらに詳細には、例えば、"Remington's Pharmaceutical Science", 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, PAに記載されている。
【0067】
FN3ドメイン含有分子は、貯蔵のために凍結乾燥させ、使用に先立って適切な担体で復元することができる。この技法は、従来のタンパク質調製物に効果的であることが明らかにされており、当技術分野で公知の凍結乾燥および復元技法を用いることができる。
【0068】
FN3ドメイン含有分子は、単一用量で対象に投与してもよく、または投与は、例えば、1日、2日、3日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1カ月、5週間、6週間、7週間、2カ月もしくは3カ月後に繰り返してもよい。反復投与は同じ用量でも異なる用量でも可能である。投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれよりも多く繰り返すことが可能である。
【0069】
FN3ドメイン含有分子は、第2の治療薬と組み合わせて同時に、逐次または別々に投与してもよい。第2の治療薬は、化学療法薬、抗血管新生薬、または細胞傷害性薬物でもよい。がんを処置するために使用される場合、FN3ドメイン含有分子は、手術、放射線療法、化学療法またはそれらの組合せなどの従来のがん療法と組み合わせて使用してもよい。
【0070】
一部の実施形態では、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン−ナノ粒子複合体を含む組成物が提供され、組成物はナノ粒子の表面にコンジュゲートされたFN3ドメインを含む。コンジュゲーションは、共有結合または静電相互作用を通じてなどの非共有結合が可能である。一部の実施形態では、FN3ドメインはナノ粒子の外部表面と会合している、結合している、または他の方法で連結している。一部の実施形態では、FN3ドメイン分子は、膜貫通タンパク質に類似して、ナノ粒子の表面を通じて会合している。一部の実施形態では、FN3ドメイン分子はナノ粒子の表面を交差し(横切っ)てはいない。ナノ粒子は、脂質ナノ粒子などの、本明細書で提供されるままで可能である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)ナノ粒子である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、シクロデキストリンポリマーナノ粒子(CDP)などのシクロデキストリンナノ粒子である。一部の実施形態では、ナノ粒子はペグ化されている。ここでのあるタイプのナノ粒子の記述は、実例目的のみをめざしており、本明細書で開示されるまたは公知である他のナノ粒子は、FN3ドメイン分子ナノ粒子複合体において使用可能である。
【0071】
一部の実施形態では、ナノ粒子はポリヌクレオチドを含む(含有する)ことができる。ポリヌクレオチドは、例えば、ポリヌクレオチドによりカプセル化することができる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドを含むFN3ドメイン−ナノ粒子複合体は、FN3ドメインとの相互作用を通じて細胞に結合し、ポリヌクレオチドを、例えば、細胞内に内部移行されることにより細胞に送達することができる。ポリヌクレオチドは、化学修飾ポリヌクレオチドなどの、いかなるタイプのポリヌクレオチドでも可能である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、cDNA、siRNA、mRNA、miRNA、miRNAアンタゴニスト、dsRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、DNA、U1アダプター、もしくは免疫賦活性ポリヌクレオチド、またはそれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはsiRNA、アンチセンス、またはmiRNAである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、siRNAまたはmiRNAである。
【0072】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、活性剤を含む(含有する)またはカプセル化する。活性剤は、本明細書で提供される場合、ポリヌクレオチドに付け加えられるまたはポリヌクレオチドに取って代わることも可能である。一部の実施形態では、活性剤は、タンパク質、ペプチド、小分子化合物、もしくは免疫賦活性剤、またはそれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、小分子は、FN3ドメイン分子に結合している細胞型に送達することができる治療薬または毒素である。
【0073】
一部の実施形態では、FN3ドメインは、PSMA、EGFR、EpCAM、CD22、BCMA、CD33、CD71および/もしくはCD8、またはそれらの任意の組合せに結合する。PSMA FN3ドメインの例は、例えば、米国特許出願第15/148312号明細書に見出すことができ、前記特許文献はこれによって参照によりその全体を組み込む。EGFR FN3ドメインの例は、例えば、米国特許出願第14/085340号明細書および米国特許出願第14/086250号明細書に見出すことができ、前記特許文献のそれぞれはこれによって参照によりその全体を組み込む。EpCAM FN3ドメインの例は、例えば、本明細書に提供されている。EGFR FN3ドメインの例は、例えば、米国特許出願第14/085340号明細書および米国特許出願第14/086250号明細書に見出すことができ、前記特許文献のそれぞれはこれによって参照によりその全体を組み込む。EGFR FN3ドメインの例は、例えば、米国特許出願第15/839915号明細書に見出すことができ、前記特許文献のそれぞれはこれによって参照によりその全体を組み込む。他のFN3ドメインも使用することが可能である。
【0074】
本明細書で提供されるように、FN3ドメインはナノ粒子にコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、ナノ粒子は、クリックタイプの環化付加またはマレイミドコンジュゲーションを通じてFN3にコンジュゲートされる。
【0075】
一部の実施形態では、組成物は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)部分も含むことができる。
【0076】
一部の実施形態では、FN3ドメイン−ナノ粒子複合体を調製する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、(i)目的のタンパク質またはヌクレオチドでFN3ドメインライブラリーをパニングすること:(ii)目的のタンパク質またはヌクレオチドに結合するFN3ドメイン分子を回収すること;および(iii)FN3ドメイン分子をナノ粒子とコンジュゲートすることを含む。
【0077】
一部の実施形態では、FN3ドメイン−ナノ粒子複合体を調製する方法が提供される。一部の実施形態では、FN3ドメインをナノ粒子にコンジュゲートしてナノ粒子複合体を形成するのに十分な条件下でFN3ドメインをナノ粒子に接触させることを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子はポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、siRNA、mRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、DNA、U1アダプター、および免疫賦活性ポリヌクレオチドからなる群から選択される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは治療的に活性である。一部の実施形態では、複合体は本明細書で提供される活性剤を含む。
【0078】
一部の実施形態では、コンジュゲートにコンジュゲートされたフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを含む組成物が提供される。コンジュゲートは細胞に送達されるペイロードと呼ぶこともできる。送達は、例えば、細胞へのFN3ドメインの内部移行を通じて内部的に行うことが可能であり、または外部的に行うことも可能であり、コンジュゲートはFN3ドメインが結合する細胞と相互作用することができる。一部の実施形態では、コンジュゲート(ペイロード)が本明細書で提供される。一部の実施形態では、コンジュゲートは毒素である。一部の実施形態では、毒素はMMAFまたはMMAEである。一部の実施形態では、FN3ドメインは、PSMA、EGFR、EpCAM、CD22、BCMA、CD33、CD71および/またはCD8に結合する。一部の実施形態では、FN3ドメインはEpCAMに結合する。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、Tyr25、Arg26、Pro27、Leu81、Pro82、およびTyr85からなる群から選択される1つまたは複数の位置に置換を含む。一部の実施形態では、FN3ドメインは、配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むFN3ドメインである。一部の実施形態では、FN3ドメインは、本明細書に記載される配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46のアミノ酸配列またはそれらの変異体を含む。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、14〜38の配列、またはそれらの変異体を含む。
【0079】
一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインを含むペプチドが提供される。一部の実施形態では、FN3ドメインはEpCAMに特異的に結合する。一部の実施形態では、FN3ドメインは、配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46の配列を含むまたはからなる。一部の実施形態では、FN3ドメインは、本明細書に記載される配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46のアミノ酸配列またはそれらの変異体を含む。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、14〜38の配列またはそれらの変異体を含む。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46のアミノ酸配列の1つに62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性であるアミノ酸配列を含む。パーセント同一性は、NCBIウェブサイトを通じて入手可能であるBlastPを使用して2つの配列を整列させるためのデフォルトパラメータを使用して判定することができる。
【0080】
一部の実施形態では、配列は以下の通りである。
【0085】
一部の実施形態では、FN3ドメインは、本明細書で提供される配列の1〜5個の置換または突然変異を含有する。一部の実施形態では、タンパク質は、配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46の配列を含み、少なくとも1つの残基が、6、8、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、および93の位置の残基に対応する位置でシステインで置換されている。一部の実施形態では、ペプチドは、6、8、10、11、14、15、16、20、30、34、38、40、41、45、47、48、53、54、59、60、62、64、70、88、89、90、91、および93の位置の残基に対応する位置でシステインを含む。
【0086】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるEpCAMまたは他のFN3ドメインを発現する細胞を標的にする方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、細胞を、本明細書で提供されるEpCAMまたは他のFN3ドメインに結合するFN3ドメインに接触させることを含む。一部の実施形態では、EpCAMまたは他のFN3ドメインに結合するFN3ドメインはコンジュゲート(ペイロード)にコンジュゲートされている。本明細書に記載されるコンジュゲート(ペイロード)に加えて、コンジュゲートは異種分子にコンジュゲートされたFN3ドメインも含むことができる。一部の実施形態では、異種分子は、検出可能な標識または細胞傷害性薬などのしかしこれに限定されない治療薬である。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは検出可能な標識にコンジュゲートされている。検出可能な標識の非限定的例は本明細書で提供される。
【0087】
一部の実施形態では、治療薬にコンジュゲートされているEpCAMに結合するFN3ドメインが提供される。細胞傷害性薬などのしかしこれに限定されない治療薬、ポリヌクレオチド、または本明細書で提供される治療薬などのしかしこれに限定されない他のタイプの治療薬の非限定的例。
【0088】
検出可能な標識にコンジュゲートされているEpCAMに結合するFN3ドメインを使用して、腫瘍組織などの試料上でEpCAMの発現をインビボまたはインビトロで評価することができる。
【0089】
検出可能な標識は、EpCAMに結合するFN3ドメインにコンジュゲートしている場合、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または他の化学的方法によって、EpCAMを検出可能にする組成物を含む。
【0090】
例示的な検出可能な標識は、放射性同位元素、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光色素(fluorescent dyes)、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に使用されているような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、発光分子、化学発光分子、蛍光色素(fluorochromes)、フルオロフォア、蛍光消光剤、着色分子、放射性同位元素、シンチラント(scintillants)、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、抗体またはその断片、ポリヒスチジン、Ni
2+、フラグタグ(Flag tags)mycタグ、重金属、酵素、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、電子供与体/受容体、アクリジニウムエステル、および比色原基質(colorimetric substrates)を含むがこれらに限定されない。
【0091】
検出可能な標識は、検出可能な標識が放射性同位元素である場合などの、シグナルを同時に発してもよい。一部の実施形態では、検出可能な標識は、磁場もしくは電場、または電磁場などの、外的刺激により刺激される結果としてシグナルを発する。
【0092】
例示的な放射性同位元素は、γ−放出、オージェ放出、β−放出、アルファ−放出または陽電子放出放射性同位元素でもよい。例示的な放射性同位元素は、
3H、
11C、
13C、
15N、
18F、
19F、
55Co、
57Co、
60Co、
61Cu、
62Cu、
64Cu、
67Cu、
68Ga、
72As、
75Br、
86Y、
89Zr、
90Sr、
94mTc、
99mTc、
115In、
123I、
124I、
125I、
131I、
211At、
212Bi、
213Bi、
223Ra、
226Ra、
225Acおよび
227Acを含む。
【0093】
例示的な金属原子は、カルシウム原子、スカンジウム原子、チタニウム原子、バナジウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子、ガリウム原子、ゲルマニウム原子、ヒ素原子、セレン原子、臭素原子、クリプトン原子、ルビジウム原子、ストロンチウム原子、イットリウム原子、ジルコニウム原子、ニオブ原子、モリブデン原子、テクネチウム原子、ルテニウム原子、ロジウム原子、パラジウム原子、銀原子、カドミウム原子、インジウム原子、スズ原子、アンチモン原子、テルル原子、ヨウ素原子、キセノン原子、セシウム原子、バリウム原子、ランタン原子、ハフニウム原子、タンタル原子、タングステン原子、レニウム原子、オスミウム原子、イリジウム原子、白金原子、金原子、水銀原子、タリウム原子、鉛原子、ビスマス原子、フランシウム原子、ラジウム原子、アクチニウム原子、セリウム原子、プラセオジム原子、ネオジウム原子、プロメチウム原子、サマリウム原子、ユーロピウム原子、ガドリニウム原子、テルビウム原子、ジスプロシウム原子、ホルミウム原子、エルビウム原子、ツリウム原子、イッテルビウム原子、ルテチウム原子、トリウム原子、プロトアクチニウム原子、ウラン原子、ネプツニウム原子、プルトニウム原子、アメリシウム原子、キュリウム原子、バークリウム原子、カリホルニウム原子、アインスタイニウム原子、フェルニウム原子、メンデレビウム原子、ノーベリウム原子、またはローレンシウム原子などの20を超える原子番号の金属である。
【0094】
一部の実施形態では、金属原子は20を超える原子番号のアルカリ土類金属である。
【0095】
一部の実施形態では、金属原子はランタニドである。
【0096】
一部の実施形態では、金属原子はアクチニドである。
【0097】
一部の実施形態では、金属原子は遷移金属である。
【0098】
一部の実施形態では、金属原子は貧金属である。
【0099】
一部の実施形態では、金属原子は、金原子、ビスマス原子、タンタル原子、およびガドリニウム原子でもよい。
【0100】
一部の実施形態では、金属原子は、原子番号53(すなわち、ヨウ素)から83(すなわち、ビスマス)までの金属でもよい。
【0101】
一部の実施形態では、金属原子は磁気共鳴画像法に適した金属でよい。
【0102】
金属原子は、Ba
2+、Bi
3+、Cs
+、Ca
2+、Cr
2+、Cr
3+、Cr
6+、Co
2+、Co
3+、Cu
+、Cu
2+、Cu
3+、Ga
3+、Gd
3+、Au
+、Au
3+、Fe
2+、Fe
3+、F
3+、Pb
2+、Mn
2+、Mn
3+、Mn
4+、Mn
7+、Hg
2+、Ni
2+、Ni
3+、Ag
+、Sr
2+、Sn
2+、Sn
4+、およびZn
2+などの+1、+2、または+3酸化状態の形態の金属イオンでもよい。金属原子は、酸化鉄、酸化マンガン、または酸化ガドリニウムなどの金属酸化物を含んでいてもよい。
【0103】
適切な色素は、例えば、5(6)−カルボキシフルオセイン、IRDye 680RDマレイミドまたはIRDye 800CW、ルテニウムポリピリジル染料、および同類の物などの、任意の市販の染料を含む。
【0104】
適切なフルオロフォアは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインチオセミカルバジド、ローダミン、テキサスレッド、CyDyes(例えば、Cy3、Cy5、Cy5.5)、Alexa Fluors(例えば、Alexa488、Alexa555、Alexa594;Alexa647)、近赤外(NIR)(700〜900nm)蛍光色素、およびカルボシアニンおよびアミノスチリル色素である。
【0105】
検出可能な標識にコンジュゲートされたEpCAMに結合するFN3ドメインは、例えば、イメージング剤として使用して、腫瘍分布、腫瘍細胞の存在および/または腫瘍の再発についての診断を評価してもよい。
【0106】
一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、細胞傷害性薬などのしかしこれに限定されない治療薬にコンジュゲートされている。
【0107】
一部の実施形態では、治療薬は、化学療法薬、薬物、増殖阻害薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素またはその断片)、または放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート(radioconjugate))である。
【0108】
本明細書に開示される治療薬にコンジュゲートされたEpCAMに結合するFN3ドメインは、EpCAM発現細胞(例えば、腫瘍細胞)、およびそこでの細胞内蓄積への治療薬の標的化送達に使用してもよい。いかなる特定の理論にも縛られていないが、このタイプの送達は、これらの非コンジュゲート剤の全身投与が正常細胞に受け入れられないレベルの毒性をもたらす可能性があるところでは助けになることができる。
【0109】
一部の実施形態では、治療薬は、チューブリン結合、DNA結合、トポイソメラーゼ阻害、DNA架橋結合、キレート化、スプライソソーム阻害、NAMPT阻害、およびHDAC阻害などのしかしこれらに限定されない機構によりその細胞傷害性および/または細胞分裂停止効果を誘発することができる。
【0110】
一部の実施形態では、治療薬は、スプライソソーム阻害薬、NAMPT阻害薬、またはHDAC阻害薬である。一部の実施形態では、薬剤は、免疫系アゴニスト、例えば、TLR7,8,9、RIG−I(dsRNA)、およびSTING(CpG)アゴニストである。一部の実施形態では、薬剤は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンデシン、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、リシン、ゲルダナマイシン、マイタンシノイドまたはカリケアマイシンである。
【0111】
一部の実施形態では、治療薬は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ダイアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、またはトリコテセンなどの酵素的に活性な毒素である。
【0112】
一部の実施形態では、治療薬は、
212Bi、
131I、
131In、
90Y、または
186Reなどの放射性核種である。
【0113】
一部の実施形態では、治療薬は、ドラスタチンまたはドラスタチンペプチド性類似物および誘導体、オーリスタチンまたはモノメチルオーリスタチンフェニルアラニンである。例示的な分子は、米国特許第5,635,483号明細書および米国特許第5,780,588号明細書に開示されている。ドラスタチンおよびオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、ならびに核および細胞分裂を妨害し(Woyke et al (2001) Antimicrob Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、抗がんおよび抗真菌活性を有することが明らかにされている。ドラスタチンまたはオーリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)終端またはC(カルボキシル)終端を通じて(国際公開第02/088172号パンフレット)またはFN3ドメイン中に操作され入れられた任意のシステインを介してFN3ドメインに結合させてもよい。
【0114】
一部の実施形態では、治療薬は、例えば、アウリスタチン、カンプトテシン、デュオカルマイシン、エトポシド、マイタンシンおよびマイタンシノイド、タキサン、ベンゾジアゼピンもしくはベンゾジアゼピン含有薬物(例えば、ピロロ[1,4]−ベンゾジアゼピン(PBD)、インドリノベンゾジアゼピン、およびオキサゾリジノベンゾジアゼピン)またはビンカアルカロイドが可能である。
【0115】
一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、治療化合物にコンジュゲートされており、これは、例えば、がん、腸の自己免疫疾患、肺疾患、および同類の物の処置のために使用することができる。自己免疫疾患の例は、免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎、1型糖尿病、移植、またはGVHDを含むがこれらに限定されず、その方法は、請求項1に記載のいずれかの治療化合物を対象に投与して、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎、1型糖尿病、移植、またはGVHDを処置することを含む。一部の実施形態では、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎を含むがこれらに限定されない。自己免疫疾患の他の例は、1型糖尿病、多発性硬化症、心筋炎(Cardiomyositis)、白斑、脱毛、炎症性腸疾患(IBD、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、シェーグレン症候群、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、強皮症/全身性硬化症(SSc)または関節リウマチおよび同類の物を含むがこれらに限定されない。
【0116】
一部の実施形態では、がんまたは腫瘍は、乳がん、肺がん、結腸がん、または卵巣がんである。一部の実施形態では、がんは上皮がんである。
【0117】
「処置する(treat)」または「処置(treatment)」とは、治療処置および予防処置のことであり、目的は、がんの発症または転移などの望ましくない生理的変化または障害を予防するまたは速度を落とす(速度を緩める)ことである。一部の実施形態では、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能であれ検出不可能であれ、症状の軽減、疾患の程度の減弱、疾患の安定化状態(すなわち、悪化していない)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の寛解または緩和、および軽快(部分的であれ全体的であれ)を含むがこれらに限定されない。「処置」は、処置を受けない場合の予想される生存と比べて生存を延長することも意味することができる。処置を必要とするヒトは、状態もしくは障害をすでに持つヒトならびに状態もしくは障害を抱えやすいヒトまたは状態もしくは障害を予防するべきであるヒトを含む。
【0118】
「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに、投与量でおよび必要な期間で効果的な量のことである。本明細書に記載されるEpCAMまたは他のタンパク質に結合するFN3ドメインの治療有効量は、個人の疾患状態、年齢、性別、および体重などの要因に従って変動することがある。本明細書に記載されるEpCAMまたは他のタンパク質に結合する効果的なFN3ドメインの例示的な指標は、患者の改善された健康状態、腫瘍サイズの減少もしくは縮小、腫瘍の停止したもしくは減速された増殖、および/またはがん細胞の身体の他の場所への転移がないことである。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書に提供される疾患または状態を処置するための化合物は、オリゴヌクレオチド、RNA干渉分子、またはアンチセンス構築物などのしかしこれらに限定されない核酸分子である。一部の実施形態では、RNA干渉分子は、低分子干渉RNA分子または低分子ヘアピン型RNA干渉分子である。一部の実施形態では、RNA干渉分子は、例えば、宿主において複製するウイルスの能力を妨害することによる抗ウイルス薬、または本明細書に記載される他のポリヌクレオチドである。
【0120】
EpCAMに特異的に結合するFN3ドメインは、公知の方法を使用して検出可能な標識にコンジュゲートしてもよい。一部の実施形態では、検出可能な標識はキレート剤と複合体化される。一部の実施形態では、検出可能な標識は、リンカーを介してEpCAMに結合するFN3ドメインにコンジュゲートされている。
【0121】
検出可能な標識、治療化合物、または細胞傷害性化合物は、公知の方法を使用してEpCAMに結合するFN3ドメインに直接的に、または間接的に連結してもよい。適切なリンカーは当技術分野では公知であり、例えば、補欠分子族、非フェノールリンカー(N−スクシンイミジルベンゾエート(succimidyl-benzoates)の誘導体;ドデカボラート(dodecaborate))、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体、S−2−(4−イソチオシアナートベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)の誘導体、および1,4,8,11−テトラアザシクロドデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)の誘導体などのマクロサイクリックス(macrocyclics)と非環式キレート剤の両方のキレート化部分、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオン酸塩(SPDP)、イミノチオラン(iminothiolane)(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなどの)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベリン酸塩などの)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなどの)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなどの)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなどの)、ジイソシアン酸(トルエン2,6−ジイソシアン酸などの)、およびビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなどの)、ならびに他のキレート部分を含む。適切なペプチドリンカーは周知である。
【0122】
一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、腎クリアランスにより血液から取り除かれる。
【0123】
本明細書に提供されるように、一部の実施形態では、コンジュゲート(ペイロード)はナノ粒子の表面に連結される。ナノ粒子は、本明細書に提供される方法のいずれかにおいて使用するための本明細書に記載されるいかなるナノ粒子でも可能である。一部の実施形態では、コンジュゲートは、タンパク質分解を標的にする複合体である。一部の実施形態では、コンジュゲートは、E3ユビキチンリガーゼに対する結合部分である。一部の実施形態では、結合部分は、E3ユビキチンリガーゼおよびリンカーにより結合された標的タンパク質に結合するPROTACドメインである。
【0124】
一部の実施形態では、標的にされる細胞はEpCAMを発現する細胞である。一部の実施形態では、細胞は、乳房細胞、肺細胞、結腸細胞、卵巣細胞である。一部の実施形態では、細胞は上皮細胞である。
【0125】
一部の実施形態では、患者においてがんを処置する方法が提供され、方法は本明細書に記載される組成物またはペプチドを患者に投与してがんを処置することを含む。一部の実施形態では、がんは、乳がん、肺がん、結腸がん、または卵巣がんである。一部の実施形態では、がんは上皮がんである。一部の実施形態では、がんは、EpCAMまたは本明細書に記載される他のFN3ドメインを発現するまたは過剰発現するがんである。
【0126】
一部の実施形態では、EpCAMまたは本明細書で提供される複合体に結合するFN3ドメインを含むキットが提供される。キットは、治療用途のためにおよび診断用キットとして使用してもよい。
【0127】
一部の実施形態では、キットは、EpCAMまたは本明細書に記載される他のタンパク質に結合するFN3ドメインおよびFN3ドメインを検出するまたはFN3に標的にされた細胞に複合体もしくはFN3ドメインを送達するための試薬を含む。キットは、使用説明書;他の試薬、例えば、標識、キレート化、または他の方法でのカップリングに有用である薬剤、放射線防御組成物;撮像、診断または治療目的のための投与用にEpCAMに結合するFN3ドメインを調製するための装置または他の材料;薬学的に許容される担体;および対象への投与のための装置または他の材料を含む1つまたは複数の他の要素を含むことができる。
【0128】
一部の実施形態では、キットは、配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46の1つのアミノ酸配列を含むFN3ドメインを含む。一部の実施形態では、FN3ドメインは、本明細書に記載される配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46のアミノ酸配列またはその変異体を含む。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは14〜38の配列、またはその変異体を含む。
【0129】
一部の実施形態では、本明細書で提供される組成物または方法において使用されるFN3ドメインは、配列番号1〜6、8〜11、14〜38および40〜46のアミノ酸配列または変異体を含む。一部の実施形態では、EpCAMに結合するFN3ドメインは、14〜38の配列、またはその変異体を含む。
【0130】
本明細書で提供される配列は、タンパク質のN−またはC−終端にHISタグまたはHIS−Cタグを含んでもよい。これらのN−またはC−終端配列は、取り除かれ含まれないことが可能である。例えば、配列番号40は、MLPAPKNLVVSEVTCDSARLSWDDPWAFYESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNMRGLPLSAIFTTGGHHHHHHとして示され、一部の実施形態では、6個のHisタグが取り除かれて、MLPAPKNLVVSEVTCDSARLSWDDPWAFYESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVHNVYKDTNMRGLPLSAIFTTGG(配列番号49)となる。C終端タグは含まれないことが可能であるまたは精製もしくは検出目的で使用することができる。
【0131】
ある特定の用語で実施形態を記載してきたが、実施形態は以下の実施例も含み、これは特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0132】
[実施例1]Tenconライブラリーの構築
Tenconは、ヒトテネイシンC由来の15のFN3ドメインのコンセンサス配列から設計された免疫グロブリン様スキャフォールド、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobs et al., Protein Engineering, Design, and Selection, 25:107-117, 2012)。Tenconの結晶構造は、7つのベータ鎖を接続する6つの表面露出ループを示す。これらのループ、またはそれぞれのループ内の選択された残基は、特定の標的に結合する新規の分子を選択するのに使用することができるフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリーを構築するために無作為化することができる。
Tencon:
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAEFTT:(配列番号39)
【0133】
TCL1ライブラリーの構築
TenconのFGループのみを無作為化するように設計されたライブラリー、TCL1は、シス−ディスプレイシステムを用いて使用するために構築された(Jacobs et al., Protein Engineering, Design, and Selection, 25:107-117, 2012)。このシステムでは、Tacプロモーター、Tenconライブラリーコード配列、RepAコード配列、シス−エレメント、およびoriエレメントについての配列を組み込んでいる一本鎖DNAが作製される。インビトロ転写/翻訳システムにおいて発現すると、それがコードされているDNAにシスで結合しているTencon−RepA融合タンパク質の複合体が産生される。次に、下に記載されるように、標的分子に結合する複合体は単離され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅される。
【0134】
シス−ディスプレイを用いて使用するためのTCL1ライブラリーの構築は、最終線形二本鎖DNA分子を半分に分けて作製するPCRの連続ラウンドにより達成された;5’断片はプロモーターおよびTencon配列を含有し、3’断片はrepA遺伝子ならびにシス−およびoriエレメントを含有する。半分に分けたこれらの部分は、全構築物を作製するために制限消化により組み合わされる。TCL1ライブラリーは、TenconのFGループ、KGGHRSN(配列番号50)でのみ無作為アミノ酸を組み込むように設計された。NNSコドンはこのライブラリーの構築において使用され、20のアミノ酸すべておよび1つの停止コドンのFGループ中への考えられる組込みが生じた。TCL1ライブラリーは6つの別々のサブライブラリーを含有し、多様性をさらに増やすために、それぞれが、7〜12残基の異なる無作為化FGループ長を有する。tenconベースのライブラリーの設計は表2に示されている。
【0136】
TCL1ライブラリーを構築するため、PCRの連続ラウンドを実施して、Tacプロモーターを付加し、F:Gループ中に縮重を築き、最終的な組み立てのために必要な制限部位を加えた。先ず、プロモーター配列およびFGループのTencon配列5’を含有するDNA配列をPCRにより2ステップで作製した。完全Tencon遺伝子配列に対応するDNAは、プライマーPOP2220およびTC5’からFGと一緒にPCR鋳型として使用した。この反応から得られたPCR産物を、プライマー130マーおよびTC5’からFGと一緒に次のラウンドのPCR増幅のための鋳型として使用して、Tenconへの5’およびプロモーター配列の付加を完了した。次に、最初のステップで作製されたDNA産物を、フォワードプライマーPOP2222および縮重ヌクレオチドを含むリバースプライマーTCF7、TCF8、TCF9、TCF10、TCF11、またはTCF12を用いて増幅することによりF:Gループ中に多様性を導入した。少なくとも8つの100μL PCR反応をサブライブラリーごとに実施し、PCRサイクルを最小限に抑えライブラリーの多様性を最大にした。少なくとも5μgのこのPCR産物は、ゲル精製し、それに続くPCRステップにおいてプライマーPOP2222およびPOP2234と一緒に使用し、Tencon配列の3’末端に6×HisタグおよびNotI制限部位を結合させた。このPCR反応は、15のPCRサイクルおよび少なくとも500ngの鋳型DNAのみを使用して実行した。得られたPCR産物はゲル精製し、NotI制限酵素で消化し、Qiagenカラムにより精製した。
【0137】
ライブラリーの3’断片は、PspOMI制限部位、repA遺伝子のコード領域、ならびにシス−およびoriエレメントを含む、ディスプレイのためのエレメントを含有する一定のDNA配列である。PCR反応は、M13フォワードおよびM13リバースプライマーを用いて、このDNA断片を含有するプラスミド(pCR4Blunt)(Invitrogen)を使用して実施した。得られたPCR産物はPspOMIにより一晩消化し、ゲル精製した。repA遺伝子を含有する3’DNAにライブラリーDNAの5’部分をライゲートするため、NotIおよびPspOMI酵素ならびにT4リガーゼの存在下で2pmolの5’DNAを等モル量の3’repA DNAにライゲートした。37℃での一晩のライゲーション後、少量のライゲートされたDNAをゲル上に流しライゲーション効率を調べた。ライゲートされたライブラリー産物は、12のPCR増幅に分割し、12サイクルのPCR反応は、プライマー対POP2250とDigLigRevで実行した。TCL1ライブラリーのサブライブラリーごとのDNA収量は32〜34μgの範囲に及んだ。
【0138】
ライブラリーの品質を評価するため、少量の作業ライブラリーをプライマーTcon5new2およびTcon6で増幅し、リガーゼ非依存性クローニングにより改変pETベクター中にクローニングした。プラスミドDNAはBL21−GOLD(DE3)コンピテント細胞(Stratagene)に形質転換し、96の無作為選抜コロニーをT7プロモータープライマーを使用して配列決定した。二重配列は見出されなかった。全体として、クローンのおおよそ70〜85%が完全プロモーターおよびTenconコード配列を有し、フレームシフト突然変異はなかった。機能的配列率は、停止コドンを持つクローンを排除するが、59%〜80%であった。
【0139】
TCL2ライブラリーの構築
TenconのBCとFGループの両方が無作為化されそれぞれの位置でのアミノ酸の分布が厳格に制御されているTCL2ライブラリーを構築した。表3は、TCL2ライブラリーにおける所望のループ位置でのアミノ酸分布を示している。設計されたアミノ酸分布は2つの目的があった。第1に、ライブラリーは、Tencon結晶構造の分析に基づいておよび/またはホモロジーモデリングから、Tenconフォールディングおよび安定性に構造的に重要であると予想される残基の方に偏っていた。例えば、29位は疎水性アミノ酸のサブセットのみであるように固定されていた。なぜならば、この残基はTenconフォールドの疎水性コアに埋もれていたからであった。設計の第2層は、抗体の重鎖HCDR3に優先的に見出される残基の分布の方へアミノ酸分布を偏らせて、高親和性バインダーを効率的に産生することを含んでいた(Birtalan et al., J Mol Biol 377:1518-28, 2008; Olson et al., Protein Sci 16:476-84, 2007)。この目標に向けて、表3の「設計された分布」とは、以下の:6%アラニン、6%アルギニン、3.9%アスパラギン、7.5%アスパラギン酸、2.5%グルタミン酸、1.5%グルタミン、15%グリシン、2.3%ヒスチジン、2.5%イソロイシン、5%ロイシン、1.5%リジン、2.5%フェニルアラニン、4%プロリン、10%セリン、4.5%スレオニン、4%トリプトファン、17.3%チロシン、および4%バリンの分布のことである。この分布はメチオニン、システイン、および停止コドンがない。
【0141】
TCL2ライブラリーの5’断片は、プロモーターおよびTenconのコード領域を含有しており、このコード配列はライブラリープールとして化学的に合成された(Sloning Biotechnology)。DNAのこのプールは少なくとも1×10
11の異なるメンバーを含有していた。断片の終端では、BsaI制限部位はRepAへのライゲージョンのための設計に含まれていた。
【0142】
ライブラリーの3’断片は、6×Hisタグ、repA遺伝子のコード領域、およびシスエレメントを含む、ディスプレイのためのエレメントを含有する一定のDNA配列であった。DNAは既存のDNA鋳型(上記)およびプライマーLS1008およびDigLigRevを使用してPCR反応により調製した。完全TCL2ライブラリーを集合させるため、全部で1μgのBsaI消化5’TenconライブラリーDNAを、同じ酵素を用いた制限消化により調製された3.5μgの3’断片にライゲートさせた。一晩のライゲーション後、DNAはQiagenカラムにより精製し、DNAは260nmで吸光度を測定することにより定量化した。ライゲートされたライブラリー産物は、プライマー対POP2250とDigLigRevを用いた12サイクルPCR反応により増幅させた。全部で72の反応を実施し、それぞれが鋳型として50ngのライゲートされたDNA産物を含有していた。TCL2作業ライブラリーDNAの全収量は約100μgであった。少量の作業ライブラリーを、ライブラリーTCL1について上に記載される通りに、サブクローニングし配列決定した。二重配列は見出されなかった。配列の約80%が、完全プロモーターおよびTenconコード配列を含有し、フレームシフト突然変異はなかった。
【0143】
TCL14ライブラリーの構築
上(BC、DE、およびFG)および下(AB、CD、およびEF)ループ、例えば、FN3ドメインにおける報告されている結合表面は、FN3構造の中心部を形成するベータ鎖により分離されている。ループのみで形成される表面とは異なる形状を有するFN3ドメインの2つの「側面」に存在する別の表面は、2つの逆平行ベータ鎖、CおよびFベータ鎖、ならびにCDおよびFGループによりFN3ドメインの1つの側面で形成され、本明細書ではC−CD−F−FG表面と呼ばれる。
【0144】
Tenconの別の表面を無作為化するライブラリーは、CおよびF鎖の選別された表面露出残基、ならびにCDおよびFGループの一部を無作為化することにより作製された。Tenconと比べた場合、以下の置換を有するTencon変異体、Tencon27を使用して、ライブラリー;E11R L17A、N46V、E86Iを作製した。このライブラリーを構築するのに使用される方法の完全な記述は米国特許出願第13/852,930号明細書に記載されている。
【0145】
[実施例2]細胞標的に結合するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインの選択
ライブラリースクリーニング
種々の方法を使用して、本明細書に記載されるFN3ドメインライブラリーのいずれかを選別し本発明におけるターゲティング使用のための目的のタンパク質またはヌクレオチドに結合するFN3ドメインを得ることができる。例えば、シスディスプレイを使用して、TCL1およびTCL2ライブラリーからFN3ドメインを選択することができる。組換えヒトタンパク質は、おそらくIgG1 Fcに融合されているが、パニングのための標準方法を用いて使用することができる。
【0146】
抗hEGFR FN3ドメイン分子G3の選択
シスディスプレイを使用して、米国特許出願第13/852,930号明細書に記載されるEGFR結合FN3ドメイン分子を選択した。手短に言えば、残基25〜645を包含しヒトIgG1のFcドメインに融合している組換えヒトEGFR−ECDをR&D Systemsから購入し、選択のためにビオチン化した。インビトロ転写および翻訳(ITT)では、2〜3μgのTCL14 DNAを、0.1mMの完全アミノ酸、1×S30プレミックス成分、および15μLのS30エキストラ(Promega)と一緒に全容量50μLでインキュベートし、30℃でインキュベートした。1時間後、450μLのブロッキング液(PBS pH7.4、2%のウシ血清アルブミン、100μg/mLのニシン精液DNA、および1mg/mLのヘパリンで補充された)を添加し、反応は氷上で15分間インキュベートさせておいた。EGFR−Fc:EGF複合体は、組換えヒトEGF(R&D Systems)とビオチン化組換えEGFR−Fcをブロッキング液において室温で1時間混合することにより、モル比1対1のEGFR対EGFで組み立てた。結合では、500μLのブロックされたITT反応を100μLのEGFR−Fc:EGF複合体と混合して、室温で1時間インキュベートし、その後結合した複合体は、磁気ニュートラアビジンまたはストレプトアビジンビーズ(Seradyne)でプルダウンした。結合していないライブラリーメンバーは、PBSTおよびPBSでの連続洗浄により取り除いた。洗浄後、DNAは、10分間で75℃まで加熱することにより結合した複合体から溶出させ、PCRにより増幅し、さらなるラウンドのパニングのために制限消化およびライゲーションによりRepAをコードするDNA断片に結合させた。高親和性バインダーは、それぞれのラウンド中標的EGFR−Fcの濃度を500nMから2.5nMにまで連続して下げ、洗浄厳密性を増やすことにより単離した。ラウンド6および7では、結合していない、または弱い結合のCentyrinsは、200倍モル過剰な非ビオチン化EGFR−Fcの存在下でPBSTにおいて1時間洗浄することにより取り除いた。ラウンド8および9では、結合していない、または弱い結合のCentyrinsは、2000倍モル過剰な非ビオチン化EGFR−Fcの存在下でPBSTにおいて1時間洗浄することにより取り除いた。FN3ドメインは発現ベクターにクローニングし、記載されるhEGFRへの結合についてスクリーニングした。
【0147】
[実施例3]FN3ドメインの操作
FN3ドメインを操作して、それぞれの分子の立体構造安定性を増やすことができる。突然変異L17A、N46V、およびE86I(米国特許出願公開第2011/0274623号明細書に記載されている)をDNA合成により分子中に組み込むことができる。PBS中での示差走査熱量測定を使用して、突然変異を対応する親分子の安定性と比較するために、それぞれの突然変異の安定性を評価することができる。
【0148】
[実施例4]FN3ドメインのシステイン操作
FN3ドメインのシステイン突然変異は、システイン残基を持たないベースTencon分子およびその変異体から作られる。これらの突然変異は、小分子薬物、蛍光タグ、ポリエチレングリコール、または任意の数の他の化学的実体の化学的コンジュゲーション用の部位の役割をするためにベースTencon配列または他のFN3ドメイン中に独特のシステイン残基を組み込む当技術分野で公知の標準分子生物学技法を使用して作ってもよい。選択される突然変異の部位はある特定の基準を満たすべきである。例えば、遊離のシステインを含有するように突然変異されたTencon分子は、(i)大腸菌(E.coli)中で高度に発現される、(ii)高いレベルの可溶性および熱安定性を維持する、および(iii)コンジュゲーションすることによる標的抗原への結合を維持するべきである。Tenconスキャフォールドは約90〜95アミノ酸だけなので、単一システイン変異体は、化学的コンジュゲーションに理想的な位置(複数可)を厳密に決定するためにスキャフォールドのすべての位置で容易に構築することができる。
【0149】
[実施例5]独特のシステイン配置によりFN3ドメイン分子でナノ粒子をターゲティングする
標的化ナノ医療におけるFN3ドメインの有用性を確立するため、標的エンゲージメントおよびナノ粒子−FN3ドメインカップリング反応に対してFN3ドメイン分子が提供する利点を示す実験を実施した。開始コンジュゲーションおよびターゲティング実験では、単一の独特なシステインを、米国特許公開第14/512,801号明細書に記載されるナノ粒子とカップリングするためにタンパク質内の異なる場所に置かれるEGFR−ターゲティングFN3ドメイン(P54AR4−83v2)の6つの変異体を作り出した。これらのタンパク質は、83v10、83v11、83v12、83v13、83v14および83v15と名付けられた。これらのタンパク質ごとのアミノ酸配列は以下の通りであり:
83v10=E15C(配列番号40)
【0150】
【化1】
83v11=E12C(配列番号41)
【0151】
【化2】
83v12=R19C(配列番号42)
【0152】
【化3】
83v13=E54C(配列番号43)
【0153】
【化4】
83v14=K63C(配列番号44)
【0154】
【化5】
83v15=C−終端(配列番号45)
【0155】
【化6】
G3=C−終端(配列番号46)
【0157】
コンジュゲーション
超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)を合成し、表面はターゲティングエレメントとの下流コンジュゲーションのためにアミン化学ハンドルで官能基を持たせた。このナノ粒子ストックから、50μLの1mgFe/mL SPIONを6個の別々のエッペンドルフチューブ中にアリコートした。それぞれのFN3ドメイン分子は、最終50対1モル比のFN3ドメイン分子対SPIONが達成されるように、SPION試料に添加した。試料は、室温で4時間、1250rpmのサーモミキサー上で反応させておいた。試料は、MACS LSカラム上で磁気精製により、4時間に続いて精製した。次に、試料は、Millipore製のmicrocon30kDaカラムを使用して単回5分回転(5500×rcf)で濃縮した。
【0158】
上のコンジュゲーション反応を始めたすぐ後で、2〜3のコンジュゲート試料が沈澱していたことに注目した。特に、83v11および83v14が沈澱した。これにより、潜在的に安定なコンジュゲートとして3つの試料、83v10、83v12および83v15が残された。
【0159】
残った可溶性試料では、鉄濃度アッセイを実施した。特に、10μLのSPION試料は、10μLの3%H
2O
2および1mLの6M HClと一緒に暗所で10分間インキュベートした。次に、試料は410nmでのその吸光度について評価した。吸光度測定は、溶解鉄についての標準曲線と比べて、mg/mL濃度を決定した。さらに、5nmの平均鉄コアサイズおよび略球状粒子を仮定して、鉄のmg/mL濃度は、SPIOナノ粒子の推定分子量として113,008g/モルを使用してモル濃度に変換した。濃度は表4に示される通りに計算した。
【0161】
細胞結合アッセイ
最近作製されたFN3ドメイン分子−SPIONの活性を決定するため、細胞ターゲティングアッセイをインビトロで開始した。H292細胞を、ハンクス酵素遊離解離バッファー(Invitrogen−13150−016)を使用してT−150細胞培養フラスコから分離した。細胞および解離バッファーは細胞インキュベーターにおいて15分間インキュベートした。フラスコは穏やかに叩き、残っているすべての結合細胞を分離させ、バッファーおよび細胞は15mLのコニカルチューブに移した。細胞は1,000rcfで2分間回転させた。上澄みは、ペレット化した細胞を破壊しないように慎重に配慮して穏やかに取り除いた。残された細胞ペレットは、10%のFBSを含む1.5mLのフェノールレッドなしRPMI1640培地で復元した。懸濁液はおおよそ1.5×10
6細胞を含有することが判定された。100μLのこの懸濁液を96ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加した。FN3ドメイン分子−SPION試料濃度は上に収載されている。これらの既知の濃度から、FN3ドメイン分子−SPIONを、細胞と一緒のFN3ドメイン分子−SPIONの最終濃度が100μg/mL Feになるようにそれぞれのウェルに添加した。試料は3通り蒔き、30分間インキュベートし、次に、1,000×rcfでの3×遠心分離により精製し、dPBS pH7.2に再懸濁した。試料は最終容量300μLで懸濁し、Guava HTSフローサイトメータ上での分析のために透明な平底96ウェルプレートに移した。全体で8,000細胞を試料ごとに計数した。フローに続いて、集団試料はFlowJoを使用して分析した。それぞれの試料は、生きた細胞だけが蛍光について評価されるようにゲート開閉された。黒色ピーク(グラフの左側の方にピーク)が非標識H292細胞から得られる自己蛍光であるヒストグラムが得られた。青色ピーク(グラフの右側の方にピーク)は、ヒストグラムの上の試料タイトルに対応する。83v10、83v12および83v15は、tencon25対照またはブランク細胞と比べてプラスに移っている(
図1A〜1D)。棒グラフは、すべての試料の単一定量比較を示している(
図2)。すべての試料は、それぞれの試料の平均蛍光強度からブランク細胞自己蛍光を引くことにより正規化した。統計的有意(p<0.005)は、TenCon25−SPION試料と比べた場合、83v10−SPION、83v12−SPIONおよび83v15−SPIONについて見出された。
【0162】
FN3ドメイン分子−ナノ粒子細胞結合評価
標的特異的結合に加えて、リガンド結合を阻害することにより生物学的経路を遮断するいくつかのFN3ドメイン分子が選択された。ナノ粒子へのコンジュゲーションに続いてFN3ドメイン分子活性が保持されているかどうかを評価するため、以下のプロトコールおよび設定を使用してEGFR標的化ナノ粒子について活性評価を用意した。
【0163】
細胞調製
A431細胞を96ウェルプレートにおいてウェルあたり20kで蒔いた。24時間のインキュベーションに続いて、プレート培地は無血清RPMI+GlutaMAXに交換した。細胞は一晩インキュベートした。次の日、細胞プレートは、設定2で振盪させながら室温で1時間ブロッカーAバッファーを使用して遮断した。次に、細胞は20〜24時間枯渇させ、細胞培地は吸引により細胞から取り除いた。
【0164】
FN3ドメイン分子−SPION細胞処置
阻害因子(83v11−SPION、Blank SPIONおよび83v2)は、無血清培地で最終アッセイ濃度まで希釈した。100μLのそれぞれの阻害因子を、下のプレートマップに指示される希釈度で細胞に添加した。細胞は阻害因子と一緒に37℃で1時間インキュベートした。
【0165】
EGF刺激
溶解バッファーはMSDプロトコールに従って調製し、氷上で保存した。成長因子も無血清培地中2×濃度で調製した。最終濃度50ng/mLのEGFをそれぞれの細胞ウェルに添加した。枯渇対象については、無血清培地を使用した。
【0166】
全体では、100μlのEGFを、阻害因子インキュベーション終了時にそれぞれのウェルに添加し、枯渇対照は例外で、これは100μlの無血清培地を受ける。試料は37℃で15分間インキュベートした。
【0167】
細胞溶解
15分間のインキュベーションに続いて、培地は吸引により細胞から取り除いた。100μLの予め調製したMSD溶解バッファーを細胞プレートのそれぞれのウェルに添加した。プレートは、室温で10分間振盪させておいた。細胞が溶解されている間、MSDプレートは、150μLのTris洗浄バッファーで4回洗浄することにより調製した。MSDプレートを洗浄後、30μLの溶解された細胞を洗浄されたMSDプレートに移した。
【0168】
抗体の添加
抗体溶液を調製し、暗所に冷して保存し、MSDプレートを150μLのTris洗浄バッファーで4回洗浄し、吸引性タオルの上で叩いて洗浄バッファーのすべての痕跡を取り除いた。25μlの抗体溶液をそれぞれのウェルに添加した。MSDプレートは150μlのTris洗浄バッファーで4回洗浄し、吸引性タオルの上で叩いて洗浄バッファーのすべての痕跡を取り除いた。
【0169】
読取りプレート
MSD読取りバッファーを調製する:30mlのDI H
2O中に10mlの読取りバッファー
150μlの読取りバッファーを、泡を出さないように注意しながらそれぞれのウェルに添加する
【0170】
MSDセクターイメージャー上の読取りプレート
プレート読取りに続いて、データを収集し、GraphPad Prismソフトウェアを使用して処理した。特に、標的化83v11−SPIONをその親FN3ドメイン分子(83v2)および非標的化SPIONに対してプロットした。
図3のプロットグラフに図示されるように、FN3ドメイン分子は、ナノ粒子に結合された後でもその活性を維持している。なぜならば、83v11−SPIONは、非結合83v2 FN3ドメイン分子に類似してEGFRリン酸化を効率的に阻害することができるからである。
【0171】
[実施例6]EGFRまたはPSMA結合Centyrinを介した細胞傷害性ペイロードの細胞内送達
試薬および構築物:
黄色ブドウ球菌(S. aureus)ソルターゼAをコードする遺伝子はDNA2.0により作製し、T5プロモーター下での発現のためにpJexpress401ベクター(DNA2.0)にサブクローニングした。可溶性発現のためのソルターゼ構築物は、25アミノ酸からなる天然タンパク質のN終端ドメインを欠いている。なぜならば、このドメインは膜結合性だからである(Ton-That et al., Proc Natl Acad Sci U S A 96: 12424-12429, 1999)。ソルターゼは、精製用のN終端His6タグ、続いてタグ除去用のTEVプロテアーゼ部位で修飾した(ENLYFQS、配列番号12)。遺伝子は、酵素の触媒効率を増やすことが報告されている天然配列由来の5つの突然変異も含む(Chen et al., Proc Natl Acad Sci U S A 108: 11399-11404, 2011)(配列番号13)。プラスミドは、発現のために大腸菌(E.coli)BL21Gold細胞(Agilent)中に形質転換した。単一コロニーを選択し、カナマイシンを補充したLuria Broth(Teknova)で増殖させ、37℃で18時間、250rpmでインキュベートした。250mLのTerrific Broth(Teknova)に、カナマイシンを補充して、これらの継代培養から接種し、振盪しながら37℃で約4時間増殖させた。タンパク質発現は1mMのIPTGで誘導し、タンパク質は30℃で18時間発現させた。細胞は遠心分離により6000gで収穫し、精製まで−20℃で保存した。凍結細胞ペレットは室温で30分間解凍し、30mLの組換えリゾチーム(EMD Millipore)あたり1μLを補充したBugBusterHTタンパク質抽出試薬(EMD Millipore)に1グラムの細胞ペーストあたり5mlで懸濁させ、室温で振盪器上30分間インキュベートした。ライセートは、遠心分離により74600gで30分間浄化した。
【0172】
上澄みは、バッファーA(0.5MのNaClおよび10mMのイミダゾールを含有する50mMのリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0)で予め平衡させた3mLのQiagen Superflow Ni−NTA樹脂を充填した重力カラム上に注いだ。負荷後、カラムは100mLのバッファーAで洗浄した。タンパク質は250mMのイミダゾールを補充したバッファーAで溶出させ、PBS(Gibco)で平衡させた調製用ゲル濾過カラム、TSK Gel G3000SW 21.5×600mm(Tosoh)上に負荷した。ゲル濾過クロマトグラフィーは、AKTA−AVANTクロマトグラフィーシステムを使用して、流速10ml/分、PBS中室温で実施した。次に、精製したソルターゼはTEVプロテアーゼで消化し、His6タグを取り除いた。28mgのソルターゼは、1mMのDTTを補充した供給されたバッファー中、30℃で2時間、3000ユニットのAcTEVプロテアーゼ(Invitrogen)と一緒に10mLでインキュベートした。タグなしソルターゼをNi−NTA樹脂で精製した。反応は、PD−10カラム(GE Healthcare)を使用してTBSバッファー(50mMのTris pH7.5、150mMのNaCl)中に交換し、バッファーAで予め平衡させた0.5mLのQiagen Superflow Ni−NTA樹脂を充填した重力カラム上に注いだ。通過画分を収集し、樹脂は3mLのバッファーAで洗浄し、通過画分に添加した。ソルターゼを含有する通過画分は、10kDaカットオフ付きのAmicon15濃縮器において(EMD Millipore)約0.5mLまで濃縮した。追加のTBSバッファーを添加し、試料は再び濃縮して(2回繰り返す)バッファーをTBSに交換した。40%グリセロールの3分の1容積を添加し(最終濃度10%グリセロール)、ソルターゼは短期間使用では−20℃でまたは長期間では−80℃で保存した。
【0173】
Centyrinの大規模発現、精製およびコンジュゲーション
PSMAまたはEGFRに結合するCentyrinは以前記載されたまたは上記(米国特許出願公開第2014/0155326号明細書)の通りに発見された。これらを、T7プロモーター下での発現のためにpET15bベクター中にクローニングし、またはDNA2.0により作製し、T5プロモーター下での発現のためにpJexpress401ベクター(DNA2.0)中にサブクローニングした。得られたプラスミドは、発現のために大腸菌(E.coli)BL21 Gold(Agilent)またはBL21DE3 Gold(Agilent)中に形質転換した。単一コロニーを選択し、カナマイシンを補充したLuria Broth(Teknova)で増殖させ、37℃で18時間、250rpmでインキュベートした。1リットルのTerrific Broth(Teknova)に、カナマイシンを補充して、これらの継代培養から接種し、振盪しながら37℃で4時間増殖させた。タンパク質発現は、600nmでの光学密度が1.0に到達したのち、1mMのIPTGで誘導した。タンパク質は37℃で4時間または30℃で18時間発現させた。細胞は遠心分離により6000gで収穫し、精製まで−20℃で保存した。凍結細胞ペレット(約15〜25g)は室温で30分間解凍し、0.2mg/mlの組換えリゾチーム(Sigma)を補充したBugBusterHTタンパク質抽出試薬(EMD Millipore)に1グラムの細胞ペーストあたり5mlで懸濁させ、室温で振盪器上1時間インキュベートした。ライセートは、遠心分離により74600gで25分間浄化した。上澄みは、AKTA−AVANTクロマトグラフィーシステムを使用して、流速4ml/分で氷に浸した5mLのQiagen Ni−NTAカートリッジ上に注いだ。他のNi−NTAクロマトグラフィーステップはすべて流速5ml/分で実施した。Ni−NTAカラムは、0.5MのNaClおよび10mMのイミダゾールを含有する50mMのTris−HClバッファー(バッファーA)、pH7.0、25.0mlにおいて平衡させた。負荷後、カラムは100mlのバッファーA、続いて10mMのイミダゾール、1%CHAPSおよび1%のn−オクチル−β−D−グルコピラノシド洗剤を含有する50mMのTris−HClバッファー、pH7.0を100ml、ならびに100mlのバッファーAで洗浄した。タンパク質は250mMのイミダゾールを補充したバッファーAで溶出させ、PBS(Gibco)で平衡させた調製用ゲル濾過カラム、TSK Gel G3000SW 21.5×600mm(Tosoh)上に負荷した。ゲル濾過クロマトグラフィーは、AKTA−AVANTクロマトグラフィーシステムを使用して、流速10ml/分、PBS中室温で実施した。
【0174】
受容体媒介細胞内送達の基準として、微小管破壊薬をPSMAまたはEGFR結合Centyrinに連結することにより、Centyrinコンジュゲートを調製した。微小管破壊薬は細胞質で活性であるため、効率的細胞内送達は細胞傷害性アッセイを使用して評価することができる。抗PSMA Centyrinは、ソルターゼタグを通じてvc−MMAFにコンジュゲートした。ソルターゼタグへのコンジュゲーションでは、細菌ペレットを解凍し、組換えヒトリゾチーム(EMD、カタログ番号71110)を補充したBugBusterHT(EMD、カタログ番号70922)に再懸濁し溶解させた。溶解は室温で穏やかに攪拌しながら進行し、その後、プレートは42℃まで移して宿主タンパク質を沈澱させた。デブリは遠心分離によりペレット化し、上澄みは、ソルターゼ触媒標識化のために新しいブロックプレートに移した。Gly3−vc−MMAF(Concortis)、タグなしソルターゼA、およびソルターゼバッファー(Tris、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム)を含有するマスター混合物を2×濃度で調製し、等容量で溶解物上澄みに添加した。標識化反応は室温で2時間進行し、その後、タンパク質は、Ni−NTAマルチトラップHPプレート(GE カタログ番号28−4009−89)を使用して精製した。タンパク質コンジュゲートは、イミダゾール含有溶出バッファー(50mMのTris pH7.5、500mMのNaCl、250mMのイミダゾール)を用いてステップ溶出により回収し、濾過殺菌し、細胞ベースの細胞傷害性アッセイのために直接使用した。
【0175】
二価抗EGFR Centyrinは、ペプチドリンカーで隔てられた抗EGFR Centyrin、P155R8−G3(配列番号1)の2つのコピーを、1〜4個のシステイン残基を用いてアルブミン結合ドメイン(ABDcon12、配列番号7)(米国特許出願公開第2013/0316952号明細書)に遺伝的に連結することによりコードした。Centyrinは、表5に収載されているが、ヨドアセチルPEG4−MMAF(IAA−MMAF、
図4、Concortis)にコンジュゲートした。コンジュゲーションでは、CentyrinをPBS中100μMまで希釈し、10mMのTCEPで還元した。次に、タンパク質は硫酸アンモニウムで沈澱させ、追加の硫酸アンモニウムで洗浄し、TCEPを確実に除去し、PBSに再溶解させた。還元されたタンパク質は、室温で4.5時間、100mMのホウ酸バッファー(pH=9.0)中システインあたり4または8倍過剰なIAA−MMAFと反応させた。反応はN−エチルマレイミドを添加することによりクエンチして、未反応のシステインはどれもキャップし、タンパク質は重力流によりニッケルNTA Superflow樹脂(Qiagen)上で精製し、Zebaカラム(Thermo)でPBS中に交換し;エンドトキシンはEndoBindR樹脂(BioDTech)を用いて取り除いた。
【0177】
細胞株におけるPSMA発現の定量化
前立腺がん細胞株(LNCaP、VCAP、MDA−PCa−2B、およびPC3)をATCC(Manassas、VA)から入手して、推奨される増殖培地を使用して培養した。PSMA発現レベルはフローサイトメトリーにより定量化した。細胞はAccutase(MP Biomedicals、Santa Ana、CA)を用いて基質から持ち上げ、PE(Clone GCP−05、20μg/mL、Abcam、Cambridge、MA)またはアイソタイプ対照(R&D Systems、Minneapolis、MN)にコンジュゲートした飽和レベルの抗PSMA抗体で1時間染色した。過剰な抗体はすすいで流し、蛍光はBD FACs Caliburを使用して記録した。抗体結合は、Quantibriteビーズ(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して製造業者の指示通りに定量化した。PSMA発現は、PSMA特異的抗体(それぞれの抗体は2つのPSMA受容体に結合することができると仮定する)について測定されたシグナルからアイソタイプ対照由来のバックグランドシグナルを引くことにより決定した。
図5は、代表的なヒストグラムを示し、表6は4つの細胞株によるPSMA定量化をまとめている。
【0179】
PSMA+細胞上の抗PSMA Centyrin薬物コンジュゲートの選択的細胞傷害性
Centyrin−vcMMAFコンジュゲートの細胞傷害性は、LNCaP、VCAP、MDA−PCa−2B、およびPC3細胞においてインビトロで評価した。細胞は、96ウェル黒色プレートに24時間蒔き、次に、Centyrin−vcMMAFコンジュゲートの可変用量で処置した。細胞は、66〜72時間Centyrin薬物コンジュゲート(CDC)と一緒にインキュベートさせておいた。CellTiterGlo(Promega、Madison、WI)を、製造業者の説明書に従って使用して毒性を評価した。発光値をExcelに取り込み、グラフ解析のためにPrism中にペーストした。データはX=Log(x)を使用して変換し、次に、3パラメータモデルを適用し非線形回帰を使用して解析してIC50を決定した。
【0180】
表7は、細胞株のパネルによるvcMMAFにコンジュゲートされたいくつかのCentyrinについてのIC50値を示している。CDCは、高レベルのPSMAを発現することが知られている株であるLNCaP細胞で最も強力であった。CDCは、もっと低いレベルのPSMAを有する前立腺がん株である、MDA−PCa−2BおよびVCAP細胞でも活性であった。PSMA陰性細胞株である、PC3細胞では活性は観察されず、選択性を示していた。IC50は、それぞれの細胞上に存在する抗原の数と相関しており、最大のPSMA発現を有する細胞株である、LNCaP上で最良の活性が観察された。
【0182】
EGFR+細胞上の抗EGFR Centyrin薬物コンジュゲートの細胞傷害性
Centyrin−PEG4−MMAFコンジュゲートの細胞傷害性は、NCI−H292およびNCI−H1573細胞においてインビトロで評価した。細胞は、96ウェル黒色プレートに24時間蒔き、次に、Centyrin−PEG4−MMAFコンジュゲートの可変用量で処置した。細胞は、66〜72時間Centyrin薬物コンジュゲート(CDC)と一緒にインキュベートさせておいた。CellTiterGloを使用して毒性を評価した。発光値をExcelに取り込み、グラフ解析のためにPrism中にペーストした。データはX=Log(x)を使用して変換し、次に、3パラメータモデルを適用し非線形回帰を使用して解析した。
【0183】
表6は、A)NCI−H292細胞またはB)NCI−H1573細胞における1、2、3、または4つの薬物分子を有するCentyrin−薬物コンジュゲートの処置に続く相対的細胞生存を示している。すべてのコンジュゲートが細胞死をもたらし、毒性の程度は、分子あたりの薬物の数に相関していた。
【0184】
H292腫瘍異種移植片におけるインビボ有効性
NCI−H292細胞は、RPMI+10%FBSにおいて増殖させ、メスCharles River SCIDベージュマウス(n=8/群)の皮下に移植した(50%マトリゲルに希釈させた2×10
6細胞)。腫瘍が約200mm
3に達すると、マウスに、4.7mg/kg CentyrinまたはCentyrin−薬物コンジュゲートを静脈内投与した。それぞれのCentyrinは半減期延長のためのアルブミン結合ドメインを含有していた。全部で3つの用量は、1週間にわたって1、3、6日目にマウスに注射された。腫瘍はキャリパーを使用して週2回測定し、腫瘍が2000mm
3を超えた時点で屠殺した。群腫瘍測定は、4頭を超えるマウスが残った場合に報告される。
【0185】
図7は、処置群ごとの平均腫瘍量を示している。非標的化Centyrin−薬物コンジュゲートも非コンジュゲートCentyrinも腫瘍量には有意な影響を与えなかった。これとは対照的に、著明な腫瘍増殖抑制が、抗EGFR Centyrin−薬物コンジュゲートで処置したマウスで見られた。腫瘍後退または増殖抑制は、抗EGFR Centyrin−薬物コンジュゲートで処置した群に対する投与開始後4週よりも長く観察された。
【0186】
[実施例7]EGFR結合Centyrinを用いたターゲティングによるPEG−PLGAナノ粒子の細胞内送達
ポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)ナノ粒子(NP)は、感染症およびがんの処置に成功したことで、生物的適合性および有効性を示している[1〜7]。PLGAは、ポリ(ガンマグルタミン酸)(PGA)またはポリ乳酸(PLA)と比べて、大きな加水分解安定性およびより速い分解速度を示している。PLGA−NPによるsiRNAノックダウンおよび治療有効性にはある程度成功したが、効力を改善するためには克服しなければならない特異的ターゲティングおよび細胞内エンドソーム脱出についての障壁がまだ存在する。PEG−PLGA NPは、小分子化学療法薬ならびに核酸の送達に使用されてきた[8、10]。PEG−PLGA NPについてのターゲティングの適用を使用して、薬物および核酸カーゴを送達することができ、これにより、事実上システムの用途が広くなる[11、12]。
【0187】
Centyrin−官能化PEG−PLGA NPの合成
Centyrin−官能化PEG−PLGA NPを合成するステップは以下の通りである。
1)PEG−PLGAナノ粒子上のわずかな割合のアミンをフルオロフォア−AF647で官能化する
2)残りのアミンをアジドで官能化する
3)残りのすべての(未反応)アミンを無水コハク酸で消費する
4)脱塩カラムを経てPEG−PLGAナノ粒子を精製し未反応のフルオロフォアおよびアジドを取り除く
5)CentyrinをMal−PEG4−DBCOとコンジュゲートし、クリックケミストリーによりCentyrinをPEG−PLGA−Centyrinナノ粒子の表面にコンジュゲートする
6)Superdex 200カラムを経て最終産物を精製し未反応のCentyrinを取り除く
【0188】
以下は上のステップの詳細な概要である。
1)アミンをフルオロフォアで官能化する。30mol% NH2−PEG−PLGA(Phosphorex、Inc.)を1対1で50mMの炭酸水素ナトリウムバッファー、pH8.5に希釈する。アミン反応性フルオロフォアを、アミン対フルオロフォアの最終モル比が1対1になるように添加する。1.4mg/mlで1mlのPEG−PLGAには、1.4mgのまたは93.3ナノモルのNPが存在する。試料中のアミンのパーセントは、試料中28ナノモルのアミン(93.3nモル
*30%アミノ化)である。20mMのストックから28ナノモルのAF647を達成するには、1.4μLを1mLの懸濁液に添加する。反応は、室温で30分間、900rpmで振盪しながらサーモミキサー上でインキュベートした。
2)残りのアミンをNHS−PEG4−アジドで官能化する。ステップ1からのこの反応は、アジドを添加する前に精製する必要はない。反応の完了を保証するため、アジドは最初のアミン含有量の10倍モル過剰に添加する。アジド付加の計算は:
28ナノモル
*10倍モル過剰=必要なアジドの280ナノモル
280ナノモル/100mM=ナノ粒子懸濁液に直接添加される2.8μLのアジド試料
2.8μLのアジド架橋剤をナノ粒子反応に添加し反応は室温で1時間、900rpmで振盪しながら進めておく。
3)無水コハク酸を添加して残りのアミンをすべて取り除く。1μLのIM無水コハク酸をPEG−PLGA−AF647−Centyrin反応に添加し、室温で30分間、950rpmで振盪しながらサーモミキサー上でインキュベートする。
4)脱塩によるPEG−PLGA−AF647−Centyrin精製。現在GE HiPrep26/10脱塩カラムを有するAKTA Avantがこのステップのために使用される。
5)DBCO−PEG−マレイミドを用いたCentyrin官能化、続いてCentyrin−DBCOおよびNP−アジドとのクイック反応
a.ルーチンな還元、沈澱および架橋剤との反応に続くCentyrin官能化ステップ。Centyrin−DBCOコンジュゲートは10kDa MWCO Amicon上で7〜10mg/mL最終濃度まで濃縮される。このステップについての計算では、十分なCentyrin−DBCOが添加されることを保証するため30モル%のアジドが存在すると仮定されている。さらに、ナノ粒子の約3倍モル過剰なDBCO産物を添加することが推奨される。28ナノモルのアジドが存在する(1.4ミリグラムprepから30モル%のアジド)。Centyrin−DBCOが7mg/mL(約570μM)である場合、84ナノモルのCentyrinが添加されて3倍モル過剰を達成する(84ナノモル/570μモル=147μLのCentyrinが添加される)。コンジュゲートCentyrinからの過剰なDBCO架橋剤の精製のためにGE HiPrep26/10脱塩カラムが使用される。
b.Centyrin/PEG−PLGAクリック反応。50〜100kDa MWCO Amiconを使用して、PEG−PLGA粒子をその元の容積に戻す(5〜10分間で2500×rcf回転で通常は十分である)。1mLのナノ粒子試料を取り、新しいエッペンドルフチューブに移す。反応は室温で約4時間または4〜10℃で一晩実行することができる。前の選択肢を選んだ。
6)最終産物の精製
小prepグレードSuperdex 200カラムを使用して、標的化NPの混合物の成分を未反応Centyrin−DBCOから分離する。NPを含有する画分を収集し、プールして、直接実験に使用した。NP収率の20%の消失を想定した。すべてのNPの蛍光を比較し正規化して蛍光が濃度を正確に示すことを保証する。
(
図8:SEC精製後のAF647標識PEG−PLGA−NPのサイズ分布)
【0189】
Centyrin−標的化PEG−PLGA NPの結合および内部移行の定量的評価
PEG−PLGAナノ粒子は83−Centyrinで官能化した。NP完全性およびサイズは動的光散乱法により確認される(
図8)。NPサイズ範囲は100〜120nm(z−平均径)であった。
【0190】
受容体に結合する標的化NPの特異性は、変動する受容体密度での、EGFR発現細胞株のパネルへの83−標的化PEG−PLGA NPの相対的結合を測定することにより評価した(パネルは陰性細胞株H520を含む)。対照NPは、非標的化(Certyrinなし)NPを含む。ATCCから入手した細胞株は、類表皮癌A431(>1,000,000受容体/細胞)、H358気管支肺胞上皮癌(約100k受容体/細胞)、肺腺癌HCC827(約800k受容体/細胞)、H292肺腺癌(約200k受容体/細胞)、およびH520肺癌(陰性細胞株)であった。その手順は、細胞をRPMI培地100μl中1e6細胞/mlで入手し、37℃、1時間のインキュベーションでNPを添加することを含む。プレートは回転下に置いた。インキュベーションに続いて、試料を洗浄し、フローサイトメトリーによる分析のためにFACSバッファーに再懸濁させた。細胞株のそれぞれはFSC/SSCによりゲートを開閉した。細胞株ごとにゲート(生存可能で分析に適していると見なされる細胞の領域)は同じであった。細胞はFL−4チャネルによりAF647について分析した。AF647シグナルの増加は、より大きな結合および内部移行事象を示している。
図9は、EGFR発現細胞株への83−Centyrin標的化NPの用量依存結合および内部移行を示している。さらに、この用量依存結合はEGFR受容体密度と相関している。標的化NPは、陰性非EGFR発現細胞株、H520への結合は示さない。さらに、非標的化NPは細胞株へのいかなる結合も示さない。
【0191】
図9は、EGFR発現細胞株のパネルでの37℃、1時間のインキュベーション後のAF647標識83−Centyrin標識PEG−PLGA NPの受容体密度依存性ならびに用量依存性結合および内部移行を示している。FACSを使用して、Centyrin−NPからのAF647シグナルを定量的に測定した。
【0192】
撮像によるCentyrin標的化PEG−PLGA NPの結合および内部移行の定性的評価
本実験の目的は、Opera共焦点画像処理システムを使用してEGFR+細胞株を撮像することを介してCentyrin標識NPの内部移行を調べることである。特に、蛍光83v2−PEG−PLGA NPを、A431、HCC827、H292、H358およびH520と一緒にインキュベートする(FACSベースの定量化のためには同じパネルの細胞を使用する)。5つの細胞株のそれぞれをT150フラスコで培養し、37℃インキュベーターから引き出した。細胞用の培地は、RPMI+10%FBSであった。細胞培地は取り除いてフラスコは1×dPBSで静かにすすいだ。これに続いて、細胞は、T150フラスコ底から取り外されたことが分かるまで、5mLの0.25%トリプシンへのクイック曝露を使用して引き離された(おおよそ2〜7分間)。ゆるんだ細胞を観察すると、8mLの細胞培地(RPMI 1640+Glutamax、10%のFBS)をフラスコに添加した。細胞は15mLのコニカルチューブに移し、室温で5分間、1000rpmで回転させた。チューブ中の上澄みは吸引し、残りの細胞は計数するために5mLのRPMI 1640バッファーに再懸濁した。細胞計数を実施し、細胞は96ウェルプレートにおいて種々の濃度に希釈した。10000細胞/ウェルの細胞密度は、細胞が、処置前の20時間のインキュベーション後表面の70%を覆うように選択した。次の日、培地は吸引し、希釈試料は最初にそのウェルに添加し、容積はRPMI 1640細胞培地を使用して100μLに合わせた。試料は、光脱色を防ぐために蓋をして、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション時間に続いて、プレートは4℃で3分間、1500rpmで回転させ、冷FACSバッファーで2回洗浄した。細胞は約20分間ヘキスト染色し、核染色させておいた。これに続いて、細胞は1回洗浄し、150μlのFACSバッファーに再懸濁して、次に撮像した。
【0193】
図10:AF647標識83−Centyrin(60×)の細胞結合および内部移行は、EGFR発現細胞株である、HCC827へのCentyrin特異的結合を示している。20x:C2f3、C5f1、C8f2;60x:C2f7、C5f2、C8f
青色=100〜2000(0.5)、赤色=10〜100(0.5)、赤色還元=10〜2000(0.5)
【0194】
画像データにより、EGFR発現細胞株、HCC827への83Centyrin標的化NPの結合および内部移行が確かめられる。標的化NPは、陰性細胞株、H520への結合を示さず、特異性が確かめられる。さらに、非標的化NPは、HCC827細胞株へも陰性細胞株へも結合を示さない。より少ない受容体数の細胞株であるH292が示すAF647シグナルははるかに少ない。
【0195】
[実施例8]EGFRCentyrinコンジュゲートアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の調製および選択的細胞内送達
Centyrinを使用して、受容体媒介取込みにより、目的の標的細胞をオリゴヌクレオチドの特異的な標的とすることができる。本明細書に記載されるように、いくつかのCentyrinが第2世代2’OメチルギャップマーASOにコンジュゲートされており、得られたコンジュゲートはインビトロ遺伝子ノックダウンについて特徴付けられている。Centyrinは、EGFR受容体およびCD8受容体への標的を含む。Centyrinを用いたASOの標的化取込みの目標は、非特異的PS−ASO媒介取込みを減らし、受容体媒介取込みによるASOの効力を増強することになる。
【0196】
方法:
Centyrin−ASOコンジュゲートの合成および特徴付け
【表8】
【0197】
コンジュゲートは、MALAT1 ASOの5’末端のDBCO末端基およびC終端にアジド官能基を有するCentyrinを用いてクリックケミストリーコンジュゲーションにより合成された。ギャプマー構成中の2’Oメチル PS ASOは、統合化DNA技術(IDT)から得られ、CentyrinはGoldberg et al[1]に従って表現し精製した。タンパク質のそれぞれに付加されたASOの量は、開始ASO質量約2.0mgを用いて単一ASO対2つのCentyrinモル比に基づいて計算した。Tencon−MALAT1 ASOでは、アニオン交換CaptoQカラムを精製のために使用した。1mLのCaptoQカラムはAKTA Avant(HiTrap CaptoQ 1ml、GE healthcare life sciences、17−5470−51)上で調製した。詳細は、カラム容量0.962ml、20mM Tris pH6.5のバッファーA、および20mM Tris pH6.5、2MのNaClのバッファーBである。精製のために使用される方法:a.5CVのバッファーAを使用して1ml/分でカラムを平衡する、b.サンプルポンプを使用して試料を注入する、c.20%B(5CV)のステップ勾配、35cvにわたる70%Bまでの線形勾配、100%(5CV)でのステップ勾配および最後に0%(8CV)でのステップ勾配を使用してサンプルを溶出する、d.96ウェルプレートにおいてすべての画分を1mL収集する。画分は、分析してASO単独、ASOコンジュゲートおよびCentyrin画分を決定するために陰イオンLC−MSにより分析した。コンジュゲート物質に関連する画分はプールし、1mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)に対して4時間の透析によりバッファー交換し、−80℃で一晩凍結し、2〜3日間凍結乾燥した。83−MALAT1 ASOでは、2ステップの精製方法を用い、最初はアニオン交換CaptoQカラム、続いてhis−トラップ精製方法で、高イミダゾール濃度で溶出させた。アニオン精製方法は、Tencon−MALAT1コンジュゲートについてと同じである。his−トラップ精製方法は、HiTrapブルーHP 1ml(GEhealthcare life sciences、17−0412−01)を利用し、カラム容量0.962ml、50mM Tris pH7.5、500mMのNaCl、10mMのイミダゾールのバッファーA、および250mMのイミダゾールのバッファーBであった。溶出プロトコールは、20CVにわたる100%バッファーB、続いて5CVにわたる100%Bのステップ勾配を含み、1.0mlの画分を96ウェルディーププレートにおいて収集した。収集した画分の分析、透析、および凍結乾燥法は上で詳述されている。CD8−368−MALAT1 ASOでは、hisトラップによる1ステップ精製を用い、詳細な点は上に収載されている。このコンジュゲートでは、画分を上に記載される通りに、プールし、透析し、凍結乾燥した。
【0198】
粗生成物、精製からの画分、および最終精製物質は、分子量の精度についてLC−MS陰イオンにより特徴付けた。分析は、Agilent Model G6230 MS−TOF質量分析計上で実施した。装置は陰電子スプレーイオン化モード(negative electro-spray ionization mode)で操作し、m/z 700〜3200までをスキャンした。LC条件は、Agilent Infinity II 1290装置上で実施し、Waters XBridge C8、2.5μmの粒子、2.1×50mm;カラム温度75℃、バッファーA=25mMのトリエチルアミン、570mMの1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、10%メタノール、バッファーB=アセトニトリル;流速=0.3mL/分;勾配0〜2分 1%B、2〜12分 1 50%B、12〜15分 75%Bを含んだ。質量分析装置設定は、負極性、700〜3200amu質量範囲;スプレー電圧3750V;ソース温度350℃;乾燥ガス流 12l/分;噴霧器35psi;シースガス300℃;シースガス流 11l/分;ノズル電圧1200V;フラグメンター(fragmentor)250Vを含んだ。MSスペクトルは、7000〜33000Daの最大エントロピーアルゴリズムを使用して相互にデコンボリュート(de-convolute)した。タンパク質コンジュゲートはすべて陰イオンLC−MS上で分析した。LC−MSスペクトルは、Tencon−MALAT1 ASOでは、5.659分で質量19121.29Da(6.5e6)、83−MALAT1 ASOでは6.02分で質量19214.45Da(3.2e6)、およびCD8−368MALAT1 ASOでは4.851分で質量7574.05Da(2e4)および6.094分で質量18318.5Da(1e7)を示した。
【0199】
図11:A)19214Daで正確な分子量および単一種を示すMALAT1−83コンジュゲートのLC−MS、B)19121.3DaでのMALAT1−TenconコンジュゲートのLC−MS
図13:18318.5Da(理論的質量=18320Da)でのMALAT1−CD8 368コンジュゲートのLC−MS
【0200】
Centyrin−MALAT1 ASOコンジュゲートを使用するA431細胞におけるMALAT1 mRNAサイレンシング
A431はJanssen細胞バンキングシステムから入手し、Hepesおよび10%のFBSを備えたRPMIで増殖させた。細胞は、ASOおよびCentyrin−ASOコンジュゲートでの処置前に、24時間2500細胞/ウェルで96ウェル平底プレートに播種した。90%よりも大きな生存率を有する継代6および7の細胞を使用した。PCRでは、細胞はPLAキット(タンパク質クワント(Quant)試料溶解キット(PLA)、25mL.部品番号4448536、ロット番号00358254、有効期限:2017−02−02)を使用して溶解した。cDNA合成では、2μlのライセートを18μlのcDNA合成ミックス(High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit、Life Technologies:10×RT(部品番号4368813、ロット番号002837))と混合した。cDNAが得られたのち、4℃で保存し、PCRステップのために使用した。PCRでは、試料は、viiA7を使用して384ウェルプレートにおいて2通り分析した。PCRでは、2.5μlのcDNAを7.5μlのPCRミックス(TaqMan(登録商標)fast Gene Expression Master Mix 番号4444557、Life Technologies、ロット1504065、有効期限24Apr16)およびPPIB用のプライマー(20×PPIB Vic primer−Applied Biosystems 番号Hs00168719 PN4448490 750μl 20×、ロット150715−001 H03、有効期限07/2017)と混合し、ハウスキーピング遺伝子、および標的遺伝子であるMALAT1(20×MALAT1 FAM標識プライマー、PN 4351370、有効期限01/2022 68G12、ロットP170113−003 G11)を増幅した。qPCRサイクリングパラメータは、1サイクル50℃で120秒間、94.5℃で10分間、95℃で15秒間、続いて60℃で1分間の順に40サイクルであった。デルタデルタCt法を使用して、MALAT1の遺伝子ノックダウンを測定し、技術的複製物には30%CV基準を提供した。閾値は0.2に設定した(増幅曲線の対数期)。
【0201】
図12:自由取込みによりASOまたはCentyrin−ASOで処置したA431細胞においてrt−PCRによって測定されたMALAT1遺伝子発現。PCRは処置72時間後に測定した。2つの生物学的実験からの複製物は平均をとった。
【0202】
CD8−368標的化Centyrinを有するMALAT1 KDでは、活性化された初代T細胞を使用した。T細胞は、Janssen細胞バンキングシステムから入手し、Hepesおよび10%の熱不活化FBSを備えたRPMIで増殖させた。ヒトCD3+T細胞(hema Careから入手、カタログPB08NC−3、ロット17041560)は、IL−2を使用して1〜2週間ごとに活性化した(最終濃度20U/ml)。90%の生存率の細胞を播種し同じ日に処置した(懸濁細胞以降)。100,000細胞/ウェルの細胞播種密度を使用して、十分なPCRシグナルを保証した(T細胞中のmRNA含有量は他の細胞株と比べて低い)。PCRの方法は、A431細胞の方法と類似しており、例外はハウスキーピング遺伝子がgapdh(20×gapdh 20×GapDH VIC標識プライマーHs02758991_g1、Applied Biosystems)であった。
【0203】
図14:自由取込みによりASOまたはCentyrin−ASOで処置した一次T細胞においてrt−PCRによって測定されたMALAT1遺伝子発現。PCRは処置96時間後に測定した。データは単一実験から捕らえた。
【0204】
[実施例9]ヒトEpCAMおよびそのコンジュゲートに結合するCentyrinの選択および特徴付け
ヒトEpCAMに結合するCentyrinについてのパニング
CISディスプレイを使用して、TCL7、TCL9、およびTCL14ライブラリーからEpCAM結合Centyrinを選択した。インビトロ転写および翻訳(ITT)では、3μgのライブラリーDNAを、全容量50μLで、0.1mMの完全アミノ酸、1×S30プレミックス成分、および15μLのS30抽出液(Promega)と一緒に30℃でインキュベートした。1時間後、375μLのブロッキング液(1×TBS pH7.4、0.01%のI−block(Life Technologies、番号T2015)、100μg/mlのニシン精液DNA)を添加し、反応は氷上で15分間インキュベートした。ITT反応は、Fcドメインに融合させたビオチン化組換えヒトEpCAM(R&D Systems、カタログ番号XXX)と一緒にインキュベートした。ビオチン化組換えタンパク質および結合ライブラリーメンバーは、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジン被覆磁気ビーズ上で捕捉した。結合していないライブラリーメンバーは、TBSTおよびTBSを用いた連続洗浄により取り除いた。洗浄後、DNAは10分間で85℃まで加熱することにより標的タンパク質から溶出させ、パニングのさらなるラウンドのためにPCRにより増幅させた。高親和性バインダーは、それぞれのラウンド中400nMから100nMまで標的EpCAMの濃度を連続して下げ、洗浄厳密性を高めることにより単離した。
【0205】
パニングに続いて、選択されたFN3ドメインはPCRにより増幅し、リガーゼ非依存性クローニング部位を含むように改変されたpETベクター中にサブクローニングし、標準分子生物学技法を使用する大腸菌(E.coli)における可溶性発現のためにBL21−GOLD(DE3)(Stratagene)細胞に形質転換した。C終端ポリヒスチジンタグをコードする遺伝子配列をそれぞれのFN3ドメインに付加し、精製および検出を可能にした。培養物は、IPTGを1mMまで添加する前に37℃、1mLの96ウェルブロックにおいて100μg/mLのカルベニシリンを補充したTB培地で0.6〜0.8の光学密度まで増殖させ、その時点で温度は30℃まで下げた。細胞は遠心分離によりおおよそ16時間後に収穫し、−20℃で凍結させた。細胞溶解は、それぞれのペレットを0.6mLのBugBuster(登録商標)HT溶解バッファー(Novagen EMD Biosciences)中で振盪させながら室温で45分間インキュベートすることにより達成した。
【0206】
細胞ベースのスクリーニング
パニングで同定されたCentyrinは、EpCAMを高レベルで発現する癌細胞株である、A431細胞への結合についてもスクリーニングした。Centyrinライセートは、2%FBS−PBSにおいて1対100で希釈し、8×10
4の解離させたA431細胞を含有する96ウェルプレートに添加した。氷上での1時間インキュベーション後、培地を取り除き、細胞は100μLの2%FBS−PBSに再懸濁した。次に、抗Centyrinウサギ抗体pAb25を10μg/mLまで添加し、氷上で1時間インキュベートした。培地を取り除き、細胞は100μLの2%FBS−PBSに再懸濁し、ロバ抗ウサギ−F(ab’)2−PEコンジュゲート(Jackson Immunoresearch、カタログ番号711−116−152)を1対200希釈で添加した。氷上での1時間インキュベーション後、培地を取り除き、細胞は250μLの2%FBS−PBSに再懸濁した。結合はBD FACSCalibur装置上でフローサイトメトリーにより分析した。バックグランド(pAb25および二次抗体のみを有する細胞)より10×を超えるMFIを有するCentyrinを細胞バインダーと分類した。
【0207】
標的化送達における評価のために、スクリーニングデータ、タンパク質発現、および生物物理学的特徴付けの組合せに基づいて(表X)、EpCAMに対するパニングからCentyrinを3つ選択した。
【0208】
C終端システインで修飾されている3つのCentyrinをコードする遺伝子は、DNA2.0から入手し、これを使用して上に記載される通りにタンパク質を発現し精製した。Centyrinは、システイン−マレイミド化学反応を通じてvc−MMAFにコンジュゲートした(Brinkley, Bioconjugate Chemistry 3: 2-13, 1992)。Centyrin−vcMMAFコンジュゲートの細胞傷害性は、A431、HT29、およびLNCaP細胞においてインビトロで評価した。細胞を96ウェル黒色プレートに24時間蒔き、次に種々の用量のCentyrin−vcMMAFコンジュゲートで処置した。細胞は、Centyrin薬物コンジュゲート(CDC)と一緒に66〜72時間インキュベートした。CellTiterGloを使用して、上記の通りに、毒性を評価した。蛍光値はExcelに取込み、そこから蛍光値を取り込んでグラフ解析のためにPrism中にペーストした。データはX=Log(x)を使用して変換し、次に3パラメータモデルを適用し非線形回帰を使用して解析してIC50を決定した。
【0210】
45のCentyrinの追加のパネルは後に、CDCとしての活性について評価した。C終端ソルターゼタグを有するCentyrinをコードする遺伝子を得て、タンパク質を発現させ精製した。Centyrinは、ソルターゼ酵素およびGly3−vcMMAFを使用してハイスループットコンジュゲーションによりvcMMAFにコンジュゲートした。CDCの細胞傷害性は、上に記載されるCellTiterGloアッセイを使用してCOLO205細胞において評価した。それぞれのCDCは3つの濃度(20、2、および0.2nM)で試験した。ISOP130R5CP6_A06に匹敵するまたはそれよりも強力な活性を有する6つのCDCが同定された。これらは、総投与量応答でさらに特徴付けた(表Y)。Centyrin ISOP130R5CP6_F01およびISOP130R5CP7_G02は、ISOP130R5CP6_A06よりも強力であると判定された。これらは、ISOP130R5CP6_E08と共に、融解温度を決定する示差走査熱量測定でも特徴付けた。
【0212】
抗EpCAM Centyrinの操作
代表的なEpCAM結合Centyrin ISOP130R5CP6_A06の「アラニンスキャン」変異体をコードする遺伝子は、DNA2.0から入手し、これを使用して上に記載される通りにタンパク質を発現し精製した。単一アラニン変異体をBCおよびFGループの非アラニン位置のそれぞれで、全部で15作製した。Centyrinは、上記の通りにソルターゼ反応を介してvcMMAFにコンジュゲートし、精製した。COLO205細胞は約72時間コンジュゲートを用いて処置し、細胞傷害性はCellTiterGloを用いてモニターした。
【0214】
試験された位置の多くがアラニンへの突然変異に寛容であり、活性に対してほとんど効果を示さなかった。最大の効果は位置Tyr25、Arg26、Pro27、Leu81、Pro82、およびTyr85で見られ、これらのアミノ酸がEpCAM結合において重要な役割を果たしていることが示唆される。これらの残基は大部分が、同定されたEpCAMバインダーにおいて保存されており、EpCAMへの結合におけるその役割がさらに支持される。
【0215】
配列番号
配列番号1=P155R8−G3
【0229】
配列番号8=P233FR9P1001_H3−1
【0233】
配列番号10=P233FR9_H10
【0235】
配列番号11=P229CR5P819_H11
【0241】
配列番号14=ISOP130R5CP6_A06_cys
【0243】
配列番号15=ISOP130R5CP7_G04_cys
【0245】
配列番号16=ISO124R5AB_D6_cys
【0247】
配列番号17=ISOP130R5CP7_G02srt
【0249】
配列番号18=ISOP130R5CP6_E08srt
【0251】
配列番号19=ISOP130R5CP6_A06srt
【0253】
配列番号20=ISOP130R5CP6_F01srt
【0255】
配列番号21=ISOP130R5CP6_F02srt
【0257】
配列番号22=ISOP130R5CP7_F11srt
【0259】
配列番号23=ISOP130R5CP6_A02srt
【0261】
配列番号24=ISOP130R5CP6_A06_K23A
【0263】
配列番号25=ISOP130R5CP6_A06_H24A
【0265】
配列番号26=ISOP130R5CP6_A06_Y25A
【0267】
配列番号27=ISOP130R5CP6_A06_R26A
【0269】
配列番号28=ISOP130R5CP6_A06_P27A
【0271】
配列番号29=ISOP130R5CP6_A06_G28A
【0273】
配列番号30=ISOP130R5CP6_A06_R30A
【0275】
配列番号31=ISOP130R5CP6_A06_V78A
【0277】
配列番号32=ISOP130R5CP6_A06_T79A
【0279】
配列番号33=ISOP130R5CP6_A06_L81A
【0281】
配列番号34=ISOP130R5CP6_A06_P82A
【0283】
配列番号35=ISOP130R5CP6_A06_S83A
【0285】
配列番号36=ISOP130R5CP6_A06_Y84A
【0287】
配列番号37=ISOP130R5CP6_A06_Y85A
【0289】
配列番号38=ISOP130R5CP6_A06_S86A