(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-506970(P2021-506970A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】高トランス含量を有するシクロヘキサンジメタノール製造方法及びそれによって製造されたシクロヘキサンジメタノール
(51)【国際特許分類】
C07C 29/149 20060101AFI20210125BHJP
C07C 31/27 20060101ALI20210125BHJP
C07C 29/56 20060101ALI20210125BHJP
B01J 23/62 20060101ALI20210125BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210125BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/27CSP
C07C29/56 C
B01J23/62 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-552657(P2020-552657)
(86)(22)【出願日】2018年12月21日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月15日
(86)【国際出願番号】KR2018016516
(87)【国際公開番号】WO2019125071
(87)【国際公開日】20190627
(31)【優先権主張番号】10-2017-0178151
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョン グォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギ ドン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジュ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ホ ソン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
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4H006AA02
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4H006FC20
4H006FE10
4H039CA60
4H039CB40
4H039CJ10
(57)【要約】
シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)水素化反応過程で調節される特定の条件、添加剤の投入、反応物の添加によって高トランス含量を有するようにすることができるシクロヘキサンジメタノール製造方法及びそれによって製造されたシクロヘキサンジメタノールCyclohexane dimethanol、CHDM)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒及び前記触媒に対して1:1乃至5の重量比で含むシクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応を行って製造される
ことを特徴とするシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項2】
前記水素化反応で均一系添加剤及び不均一系添加剤から選択される少なくとも1種以上をさらに含む
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項3】
前記均一系添加剤は炭酸水素アンモニウム(Ammonium Bicarbonate、NH4HCO3)、水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide、NaOH)、炭酸カリウム(Potassium carbonate、K2CO3)及び水素化ホウ素ナトリウム(Sodium borohydride、NaBH4)からなる群から選択された少なくとも1種以上であって、前記不均一系添加剤はジルコニア、チタニア、セリア、シリカ及びマグネシアからなる群から選択された少なくとも1種以上を含む
請求項2に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項4】
前記均一系添加剤は前記触媒に対して1:0.05乃至1の重量比で含む
請求項2に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項5】
前記不均一系添加剤は前記触媒に対して1:0.5乃至3の重量比で含む
請求項2に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項6】
前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応の温度は200乃至280℃の範囲で行われる
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項7】
前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応の圧力は50乃至150barの範囲で行われる
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項8】
前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応時間は1乃至8時間の間行われる
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項9】
前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)はシス、トランス、及びそれらの混合形態から選択された反応物で用いられる
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項10】
前記シクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の収率は85乃至99%の範囲である
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項11】
前記触媒はルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、スズ(Sn)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1種以上を含む
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項12】
前記触媒は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ゼオライト、酸化亜鉛、デンプン、合成ポリマーからなる群から選択された少なくとも1つの担体を含む
請求項1に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の前記シクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法で
前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の異性化反応過程が含まれる
するシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法で製造された
ことを特徴とするシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)。
【請求項15】
前記シクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)のトランス比率は60乃至95%の範囲である
請求項14に記載のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高トランス含量を有するシクロヘキサンジメタノール製造方法及びそれによって製造されたシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)に関し、さらに詳細には、シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)水素化反応過程で調節される特定の条件、添加剤の投入、反応物の添加によって高トランス含量を有するようにすることができるシクロヘキサンジメタノール製造方法及びそれによって製造されたシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロヘキサンジメタノール(CHDM、1,4−cyclohexanedimethanol)はポリエステル或いはポリアミド樹脂の生産のための基礎原料であって、現在、商業的にはアジアではSKケミカル、三菱商事、及び新日本理化の合弁企業であるSK NJC社が生産しており、全世界的にはIndorama[(旧)Eastman]社が全体市場を先取りしている。CHDM市場は高付加価値のポリエステル樹脂に対する需要が増加の趨勢を示しており、今後も増加する見込みであるため、安定した需給が必要である。現在、CHDM生産量はIndoramaが100KTA、SK NJCが20KTAの規模を保有しており、SK NJCでは2018年度までに60KTAに増産する計画があることが知られており、最近では既存保有の2つの生産ラインで1つの生産ラインを増設したことが知られている。
【0003】
文献によれば、PTA(Purified terephthalic acid)を用いてCHDMを製造する方法には大きく分けて3つの方法がある。第一、Sumitomo seika chemicalのPTAを水溶液相でNaOHでionizationした後、SaltにしてPTA溶解度を増加させて水素添加反応する方法がある。この合成法は、低温でPTA溶解度の増加によって水添反応温度を下げられるメリットを持つが(40〜130℃)、反応後、HClで中和処理してNa
+イオンを回収する工程が必須として要求され、残存のNa
+Saltが反応後のPETG重合に影響を及ぼすだけでなく、NaClを含有するBrine溶液は廃水処理コストを過度に発生させて生産工程の経済性に悪影響を及ぼすことが知られている。第二、IndoramaとSK NJCで製造する方法で、PTAをesterificationによってDMT(Dimethyl terephthalate)製造後、DMCD(Dimethyl cyclohexane dicarboxylate)を経てCHDMを製造する工程である。該当工程はDMCDでCHDMを生産する際、CUやCrベースの触媒を用いるので、触媒の価格面では比較的安価であるが、全体としては3ステップ(PTA→DMT→DMCD→CHDM)製造工程であるため、工程面で不利である。これに対して、第三のPTAでCHDAを経てCHDMを生産する工程は、CHDA水素化反応時に活性金属として貴金属であるルテニウムを使用するので、触媒の価格面では不利であるが、2ステップ工程(PTA→CHDA→CHDM)で最終生成物であるCHDMが得られるので、工程短縮で製品原価を低減し、工程技術の競争力を確保できれば、経済性の面では有利であると判断される。
【0004】
しかし、かかる従来のCHDA水素化反応を利用してCHDMを製造する場合も高トランス含量を有するCHDMを得る方法が開示されたことはなく、これに対する要求が依然として続いているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上記のような従来技術の問題点と過去から求められてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0006】
本願発明の目的は、シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応過程で反応条件、添加剤又は多様なトランス含量の反応物を用いたシクロヘキサンジメタノール製造方法によって重合原料として使用する時、結晶性高分子の耐熱性を増加させることができるように、高トランス含量を有するシクロヘキサンジメタノール及びそれによって製造されたシクロヘキサンジメタノールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本願発明によるシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法は、
触媒及び触媒に対して1:1乃至5の重量比で含むシクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応を行って製造され得る。
【0008】
本発明による好ましい一例で、前記水素化反応で均一系添加剤及び不均一系添加剤から選択される少なくとも1種以上をさらに含むことができる。
【0009】
ここで、本発明による好ましい一例で、前記均一系添加剤は炭酸水素アンモニウム(Ammonium Bicarbonate、NH
4HCO
3)、水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide、NaOH)、炭酸カリウム(Potassium carbonate、K
2CO
3)及び水素化ホウ素ナトリウム(Sodium borohydride、NaBH
4)からなる群から選択される少なくとも1種以上であって、前記不均一系添加剤はジルコニア、チタニア、セリア、シリカ及びマグネシアからなる群から選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0010】
本発明による好ましい一例で、前記均一系添加剤は前記触媒に対して1:0.05乃至1の重量比で含むことができる。
【0011】
本発明による好ましい一例で、前記均一系添加剤は前記触媒に対して1:0.5乃至3の重量比で含むことができる。
【0012】
本発明による好ましい一例で、前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応の温度は200乃至280℃の範囲で行われ得る。
【0013】
本発明による好ましい一例で、前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応の圧力は50乃至150barの範囲で行われ得る。
【0014】
本発明による好ましい一例で、前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応時間は1乃至8時間の間行われ得る。
【0015】
本発明による好ましい一例で、前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)はシス、トランス、及びそれらの混合形態から選択された反応物で用いられ得る。
【0016】
本発明による好ましい一例で、前記シクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の収率は85乃至99%の範囲であり得る。
【0017】
本発明による好ましい一例で、前記触媒はルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)白金(Pt)、スズ(Sn)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0018】
本発明による好ましい一例で、前記シクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法で前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の異性化反応過程が含まれ得る。
【0019】
一方、本発明は、上記のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法で製造されたシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)を提供する。
【0020】
本発明による好ましい一例で、前記シクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)のトランス比率は60乃至95%の範囲以内であり得る。
【発明の効果】
【0021】
以上で説明したように、本発明は、シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応過程で反応条件、添加剤又は多様なトランス含量の反応物を用いたシクロヘキサンジメタノール製造方法によって重合原料として使用する時、結晶性高分子の耐熱性を増加させることができるように、高トランス含量を有するシクロヘキサンジメタノールを獲得できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のシクロヘキサンジメタノールの製造過程で反応温度によるCHDA水素化反応活性グラフである。
【
図2】本発明のシクロヘキサンジメタノールの製造過程でNH
4HCO
3の導入によるCHDAの水素化反応活性グラフである。
【
図3】本発明のシクロヘキサンジメタノールの製造過程でジルコニアとチタニアの導入によるCHDAの水素化反応活性グラフである。
【
図4】本発明のシクロヘキサンジメタノールの製造過程でジルコニア導入によるCHDAの水素化反応の結果を示すグラフである。
【
図5】本発明のシクロヘキサンジメタノールの製造過程でジルコニア導入によるCHDAの水素化反応の結果を示すグラフである。
【
図6】本発明のシクロヘキサンジメタノールの製造過程で多様なトランス含量のCHDAを用いた水素化反応の結果を示すグラフである。
【
図7】本発明のシクロヘキサンジメタノールの製造過程で多様なトランス含量のCHDAを用いた水素化反応の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
後述する本発明に対する説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように十分に詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の技術的思想及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。
【0024】
したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0025】
また、本明細書で特に言及しない限り、“置換”乃至“置換された”は、本発明の作用基のうち1つ以上の水素原子がハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又は−I)、ハイドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換又は非置換されたアルキル基、置換又は非置換された脂環族有機基、置換又は非置換されたアリール基、置換又は非置換されたアルケニル基、置換又は非置換されたアルキニル基、置換又は非置換されたヘテロアリール基、及び置換又は非置換されたヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基に置換されたことを意味し、前記置換基らは互いに連結されて環を形成することもできる。
【0026】
本発明で、前記“置換”は特に言及しない限り、水素原子がハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のアルコキシ基、炭素数6乃至20のアリールオキシ基などの置換基に置換されたことを意味する。
【0027】
また、前記“炭化水素基”は特に言及しない限り、線状、分枝状又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基を意味し、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などは線状、分枝状又は環状であり得る。
【0028】
また、本明細書で特に言及しない限り、“アルキル基”とは、C1乃至C30アルキル基を意味し、“アリール基”とは、C6乃至C30アリール基を意味する。本明細書で、“ヘテロ環基”とは、O、S、N、P、Si及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1つ乃至3つ含有する基を意味し、例えば、ピリジン、チオフェン、ピラジンなどを意味するが、これに限定されない。
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0029】
上述のように、従来のシクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応技術で高トランス含量のシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)製造に対する限界があった。
【0030】
よって、本発明では、触媒及び触媒に対して1:1乃至5の重量比で含むシクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応を行って製造されるシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造方法を提供して上記の問題点に対する解決を模索した。
【0031】
本発明によれば、前記触媒の種類は特に限定されず、好ましくはルテニウムベースの触媒であり得る。
【0032】
また、一般に活性成分であるルテニウムが担持される担体は、触媒の機能を持つ物資を分散させて安定して担って維持する固体であって、触媒機能物質の露出表面積が大きくなるように高度に分散させて担持するために、通常、多孔性であるか面積の広い物質である。かかる担体は、機械的、熱的、化学的に安定であるべきであるが、担体の種類は限定されず、通常、担体として使用できるあらゆる担体を含み、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ゼオライト、酸化亜鉛、デンプン、合成ポリマーなどであることができ、好ましくはシリカであり得るが、これに限定されない。
【0033】
また、前記水素化触媒は前記活性成分として8族の遷移金属を含むことができ、好ましくはルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、スズ(Sn)などから選択される1種以上を含むことができる。
【0034】
具体的には、本発明によれば、前記水素化反応では特定の反応条件で行われる場合、均一系添加剤及び不均一系添加剤から選択される少なくとも一種以上を含んでシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する場合、又は特定の比率のトランス含量を有する反応物を添加する方法でトランス比率が60乃至95%の範囲を含むシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造することができ、好ましくは65乃至85%の範囲を含むシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造することができる。
【0035】
まず、本発明によれば、前記水素化反応で特定の反応条件として、水素化反応の温度は200乃至280℃の範囲、反応の圧力は50乃至150barの範囲及び反応時間は1乃至8時間の間行われる条件を含む。
【0036】
かかる水素化反応が行われる反応器の種類は、本発明の属する技術分野において用いられ得るものであれば特に限定されず、回分式反応器又は連続式反応器のいずれも使用可能である。また、前記反応器は反応中に発生する熱を制熱する制熱装置を含むことができる。
【0037】
ここで、本発明で、前記水素化反応温度は200℃乃至280℃の範囲で行われることができ、好ましくは210℃乃至270℃の範囲であることができ、より好ましくは230℃乃至250℃の範囲であり得る。特に、前記反応温度が200℃未満の場合はCHDAの水素化反応が十分に活性化されないため、CHDMの選択度及び収率が十分でない問題が生じる場合があり、前記温度範囲が280℃を超える場合は副反応によるCHDMの収率が減少する場合があるので上記の範囲がよい。
【0038】
前記水素化反応圧力は50乃至150barの範囲で行われることができ、好ましくは70乃至120barの範囲であることができ、より好ましくは90乃至120barの範囲であり得る。特に、前記反応圧力が50bar未満の場合は反応に参加する水素が十分に溶媒に存在せず活性低下の問題が生じる場合があり、前記反応圧力が150barを超える場合は工程安定性の問題が生じる場合があるので上記の範囲がよい。
【0039】
また、前記水素化反応時間は1乃至8時間内で行われることができ、好ましくは、前記水素化反応時間は1時間乃至6時間内で行われ得る。特に、前記反応時間が1時間未満の場合は反応が十分に起きず、CHDMの収得に問題が生じる場合があり、前記反応時間が8時間を超える場合は追加の副反応によるCHDM減少と反応の効率性の問題が生じる場合があるので、上記の範囲がよい。
【0040】
次に、本発明による前記水素化反応では、前記均一系添加剤及び/又は不均一系添加剤が含まれ得る。
【0041】
本発明によれば、前記均一系添加剤は溶媒に溶解される物質であって、炭酸水素アンモニウム(Ammonium Bicarbonate、NH
4HCO
3)、水酸化ナトリウム(Sodium hydroxide、NaOH)、炭酸カリウム(Potassium carbonate、K
2CO
3)及び水素化ホウ素ナトリウム(Sodium borohydride、NaBH
4)からなる群から選択された少なくとも1種以上であることができ、好ましくは炭酸水素アンモニウム(Ammonium Bicarbonate、NH
4HCO
3)であり得る。
【0042】
ここで、前記均一系添加剤が炭酸水素アンモニウム(Ammonium Bicarbonate、NH
4HCO
3)である場合は、前記触媒に対して1:0.05乃至1の重量比で含むことができる。特に、前記炭酸水素アンモニウムが前記触媒に対して0.05重量比未満で含まれる場合は所望の収率又は選択度を有するCHDMの収得が難しい場合があり、前記触媒に対して0.05重量比未満で含まれる場合は反応速度が減少される問題が生じ得るので、上記の範囲がよい。
【0043】
また、前記不均一系添加剤は溶媒に溶解されない物質であって、金属酸化物であるジルコニア、チタニア、セリア、シリカ及びマグネシアからなる群から選択された少なくとも1種以上を含むことができ、好ましくはジルコニア又はチタニアであり得る。
【0044】
ここで、前記不均一系添加剤がジルコニア(ZrO
2)である場合は前記触媒に対して1:0.5乃至3の重量比で含むことができる。特に、前記ジルコニアが前記触媒に対して0.5重量比未満で含まれる場合は所望の収率又は選択度を有するシクロヘキサンジメタノール(CHDM)の収得が難しい場合があり、前記触媒に対して3重量比を超えて含まれる場合は反応速度が減少される問題が生じ得るので、上記の範囲がよい。
【0045】
最後に、本発明による前記水素化反応で、前記反応物は単独又は混合形態が含まれ得る。
本発明によれば、前記反応物はシス、トランス及びそれらの混合されたシクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)から選択されることができ、好ましくは高トランス含量のシクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)が含まれ得る。
【0046】
ここで、特に、前記シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)はトランス含量が5乃至99の範囲を持つことができる。好ましくは前記CHDAのトランス含量が50乃至99であることができ、より好ましくは、前記CHDAのトランス含量が60乃至95であり得る。
【0047】
場合によっては、相対的に低いトランス含量を含むシクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)を異性化させた反応物を含むことができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例(example)を提示する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が下記の実験例によって限定されるわけではない。
【0049】
[実施例]
<実施例1>回分式反応器型の触媒反応器によるCHDA水素化反応
ルテニウム−スズ/アルミナ触媒を用いてCHDAの水素化反応を行った。CHDAの水素化反応のために、反応器として300℃、150barでも耐えられる回分式反応器を選定した。該当反応器はパージング(purging)のための窒素と水素化反応のための水素が導入され、反応のための攪拌が可能な装備である。下記表1のように、反応実験は回分式反応器に反応物であるCHDA4.05g、触媒1.125g、溶媒であるD.I.Water250gを入れ、3〜5barの窒素で2回パージ、約5barの水素で2回パージを行った後、水素雰囲気(約15bar)で攪拌(100RPM)を実施しながら反応温度である270℃まで上げる。反応温度に到達すると、水素を反応圧力である100barまで注入した後、攪拌速度を1000RPM上げて反応を実施した。
【0050】
CHDAの水素化反応の遂行中に、固相触媒を除いた反応物及び生成物が含まれた溶液はサンプリングポートを用いてサンプリングし、サンプリングされた液体はFID(Flame Ionization Detector)検出器が装着されたガスクロマトグラフィー装置を用いて分析した。前記ルテニウム−白金−スズ/アルミナ触媒上でCHDA水素化反応を6時間の間行った。
【0051】
【表1】
【0052】
<実施例2〜7>
上記表1のような含量を有する添加剤を投入した点を除けば、上記実施例1と同様にCHDA水素化反応を行った。
【0053】
[実験例]
1.反応温度の変化によるCHDA水素化反応の活性
実施例1のCHDA水素化反応過程で反応条件として6時間の間反応温度210乃至270℃に昇温させながらCHDA反応活性の推移を測定した後、その結果を
図1及び下記表2に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
図1及び表2に示すように、温度が増加するに伴い、トランス(trans)含量は持続的に増加した。ただし、反応温度が約230℃以上では副反応でCHDA収率が減少したが、これは温度増加(230℃以上)による熱分解(thermal cracking)反応の加速化によるものであると判断される。
【0056】
2.反応温度の変化によるCHDA水素化反応の活性
実施例1のCHDA水素化反応過程を行った後に、filtrationによって生成された溶液(CHDM in D.I.Water)を回収し、このように回収された反応物を250℃、100bar、1000RPMの条件で無触媒で6時間の間の時間の変化による反応活性の推移及びCHDMのトランス比率を測定してその結果を下記表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
上記表3に示したように、トランス含量は約2%程度上昇したことを確認した。
【0059】
3.多様な添加剤によるCHDA水素化反応の活性
実施例1のCHDA水素化反応を行うが、上記表1による含量比を含む添加剤としてNH
4HCO
3,ZrO
2及びTiO
2をそれぞれ添加し、反応条件として3時間の間反応温度を250℃に設定した後、CHDAの水素化反応の活性推移を測定した後、その結果を
図2及び
図3にそれぞれ示した。
【0060】
図2乃至
図3に示したように、実施例2乃至実施例5のような含量比を含む添加剤が投入される場合は、CHDMの選択度及び反応速度は多少減少したが、展開剤としてNH
4HCO
3が投入された実施例2及び実施例3の場合は、トランス含量が増加し、ZrO
2又はをTiO
2添加した実施例4及び実施例5の場合は、トランス含量の影響が実施例2及び実施例3に比べて相対的に少なかった。よって、実施例2乃至実施例5のような含量比を含む添加剤が投入される場合はCHDMのトランス含量の上昇に肯定的な影響を及ぼすことがわかった。
【0061】
4.添加剤として過量のジルコニアが導入されたCHDA水素化反応の活性
実施例1のCHDA水素化反応過程を行うが、6時間の間230℃の反応条件で上記表1による添加剤としてジルコニアを触媒に対して1倍数乃至3倍数で投入してCHDAの水素化反応の活性による転化率、選択度及びトランス含量の変化結果を
図4乃至
図5にそれぞれ示した。
【0062】
図4乃至
図5に示したように、触媒量に対してジルコニアが1倍導入された実施例6の場合はシナジー効果として、反応活性が維持され、CHDMのトランス(trans)含有量が増加することを確認し、触媒量に対してジルコニアが3倍導入された実施例7の場合は反応速度が多少減少したが、結果として、CHDMのトランス(trans)含有量は増加することがわかった。
【0063】
5.反応物の種類によるCHDA水素化反応の活性
実施例1のCHDA水素化反応過程を行うが、下記表4のTrans−CHDA6.0%(T*I社からcis−CHDAを購買),Trans−CHDA10%,Trans−CHDA23.5%(S*chemical社からCHDAを購買),Trans−CHDA35%,Trans−CHDA50%,Trans−CHDA62.5%(S*chemical社のCHDAを購買した後、異性化を行う)及びTrans−CHDA98.0%(T*I社からtrans−CHDAを購買)を反応物として用いて水素化反応実験を行った後、その結果を下記表4及び
図6乃至
図7に示した。
【0064】
【表4】
【0065】
上記表4及び
図6乃至
図7に示したように、トランス比率が6%乃至35%で含むCHDAの場合(sample1乃至4)に比べてトランス比率が50%以上のCHDAの場合(sample5乃至7)に相対的に高トランス含量を有するCHDMを収得した。すなわち、高トランス(trans)含量のCHDAを反応物として用いるほど、高いトランス(trans)含量を有するCHDMが得られることを確認した。
【0066】
以上、本発明の実施例による図面を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば上記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能である。
【国際調査報告】